JP2013122087A - 高周波焼入れ用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

高周波焼入れ用鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】造塊による高周波焼入れ用鋼の高周波焼入れ時の焼割れ発生抑制方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.30〜0.70%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.50%以下、Cr:0.75〜1.6%、Mo:0.15〜0.35%、残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成とし、偏析部における下記式(1)式で求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)で求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)を5.00未満とする。DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4・・・(1)
【選択図】図3

Description

本発明は、高周波焼入れ用鋼材およびその製造方法に関するものである。
従来、鋼材に対して高周波焼入れを行い、鋼材の強度を高めたり、高硬度化することが、例えば軸受鋼などの用途において行われている。このような高周波焼入れにより鋼材の強度や硬度を高めようとする場合に問題となるのが、高周波焼入れ時の焼割れである。この焼割れを防止するためには、まず、偏析の少ない鋼材を用いる必要がある。
ところで、上記の軸受鋼などの用途では、軸受けのサイズの大型化にともない大断面の鋳片を用いて製造する必要がある。この場合、連続鋳造材でなく造塊材を用いることにより鋳片の大断面化に対応しなければならない。
かような造塊材において、偏析を抑制する技術として、特許文献1には、鋳型上部に押湯部を設けるキルド鋼の造塊に際し、押湯部下端における鋳型短辺長さHと押湯部溶鋼体積V、溶鋼と接触する押湯枠表面積A,押湯枠の総括厚みl、押湯枠の総括熱伝導率λとが特定の関係を満足するようにして造塊を行なう技術が開示されている。
また、特許文献2には、偏析を少なくする金属の造塊方法として、鋳型上部に金属製の押し湯枠を設け、この押し湯枠の上端部まで溶湯を注入することにより、押し湯枠上端部近傍の溶湯を凝固させることで鋳塊を閉塞し、その後、鋳塊を鋳型から取り出し、鋳型内相当位置および押し湯枠内相当位置の鋳塊内部に未凝固の溶湯が存在する時期に、鋳塊の下端部から上端部に向けて、溶質成分の濃化した溶湯を順次しごき出すように、鋳塊の側面を全長にわたり圧下する方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、溶鋼中のMnおよびPの含有量(%)の積を求め、この積値が0.60/偏析係数で求まる値よりも小さくなる、造塊法を選択し、MnおよびPの偏析に起因する異常組織の発生を抑止する方法が開示されている。
特許第2668479号公報 特許第3925233号公報 特公昭54−29974号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている、鋳造時に押し湯枠を設けて偏析を少なくする方法では、大きなマクロ偏析を少なくすることはできても、ミクロ偏析を改善するには不十分である。
また、特許文献2に開示されている、鋳塊の側面を全長にわたって圧下する方法では、これを実施するための装置が大掛かりとなるため、大量生産には不向きである。
さらに、特許文献3に開示されている方法は、MnおよびPの偏析を抑制するものであり、例えば軸受鋼などのMoやCrなどを含む場合において偏析を抑制する方途を与えるものではなかった。
上記したいずれの技術においても、例えば軸受け鋼に必須の高周波焼入れ時の焼割れを防止するための手段を具体的に与えるところはなく、その提供が希求されていた。
そこで、本発明は、この問題を解決し、ミクロ偏析を制御して高周波焼入れ時の焼割れが確実に防止される、造塊法による高周波焼入れ用鋼材を提供すると共に、造塊法による場合であっても大掛かりな装置を必要とせずに、該高周波焼入れ用鋼材を製造するための方法について提案することを目的とする。
発明者らは、造塊法により鋳造された鋼材に、適切な温度並びに時間の下で均熱拡散焼鈍を施し、ミクロ偏析をDI(偏析部)/DI(マトリックス)を指標として該指標が5.00未満となるまで低減することより、高周波焼入れ時の焼割れが格段に減少できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
1.造塊法により鋳造され、さらに鍛造及び/又は圧延が施されてなる高周波焼入れ用鋼材であって、質量%で、C:0.30〜0.70%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.50%以下、Cr:0.75〜1.6%およびMo:0.15〜0.35%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、かつ偏析部における下記式(1)にて求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)にて求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。

DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4 ・・・(1)
但し、式中のC、Mn、Si、Cr、Mo、Ni、CuおよびVは、各元素の含有量(質量%)
2.前記成分組成が、さらに、質量%で、Ni:1.8%以下を含有することを特徴とする前記1に記載の高周波焼入れ用鋼材。
3.質量%で、C:0.30〜0.70%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.50%以下、Cr:0.75〜1.6%、Mo:0.15〜0.35%を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成である鋼塊を造塊法により鋳造し、鋳造後の鋼塊を、該鋼塊の融点(℃)×0.85〜融点(℃)×0.99の温度範囲にて均熱拡散焼鈍を行い、偏析部における下記式(1)式で求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)で求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)を5.00未満とすることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材の製造方法。

DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4 ・・・(1)
但し、式中のC、Mn、Si、Cr、Mo、Ni、CuおよびVは、各元素の含有量(質量%)
4.前記成分組成が、さらに、質量%で、Ni:1.8%以下を含有することを特徴とする前記3に記載の高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
5.前記均熱拡散焼鈍は、前記鋼塊に対し圧延および/または鍛造を施した後に行うことを特徴とする前記3または4に記載の高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
本発明によれば、造塊法により鋳造した後の鋼におけるミクロ偏析について、高周波焼入れ時の焼割れが回避できる規定を具体的に与えることができるため、高周波焼入れにより鋼材を高強度化あるいは高硬度化する場合に、非常に有用である。
高周波焼入により焼割れが発生した箇所におけるEPMAマッピングの例を示す写真である。 造塊から高周波焼入に至るプロセスにおけるフローを示す図である。 DI(偏析部)/DI(マトリックス)と焼割れ発生率との関係を示すグラフである。
まず、本発明の高周波焼入れ用鋼は、高周波焼入れにより転送面の硬化処理が行なわれる軸受鋼としての用途に適している。したがって、本発明では、軸受用途を念頭におき、成分組成を限定した。以下、本発明における各成分含有量の限定理由から順に説明する。
なお、以下の説明において各元素の含有量に関する「%」表示は、すべて「質量%」を意味する。
C:0.30〜0.70%
Cは、鋼の強度を高め高周波焼入れによる硬化組織の疲労特性、とりわけ、鋼材を軸受鋼として適用した場合に、高周波焼入れにより強化が行われる転送面の耐転動疲労寿命特性を向上するのに有効な元素であり、本発明では0.30%以上含有させる。一方、0.70%を超えて含有すると、素材の鋳造中に巨大共晶炭化物が生成し、耐焼割れ性の低下を招く。以上のことから、C量は0.30〜0.70%とする。
Si:0.15〜0.35%
Siは、脱酸剤として、また、固溶強化により鋼の強度を高め、高周波焼入れによる硬化組織の疲労特性、とりわけ、鋼材を軸受鋼として適用した場合に、高周波焼入により強化が行われる転送面の耐転動疲労寿命特性を向上するために添加される元素であり、本発明では、0.15%以上添加する。しかし、0.35%超の添加は、鋼中の酸素と結合し、酸化物として鋼中に残存して転動疲労寿命特性の劣化を招く。さらに、偏析部に濃化した場合には、共晶炭化物を生成し易くする。以上のことから、Siの上限は0.35%とする。
Mn:0.5〜1.0%
Mnは、焼入れ性を向上し、鋼の強靭性を高め、鋼材の疲労特性、特に、耐転動疲労寿命特性を向上するために添加される元素であり、本発明では、0.5%以上添加する。しかし、1.0%を超える添加は、転動疲労寿命特性を低下させる。また、偏析部に濃化した場合には、非金属介在物を生成し易くする。以上のことから、Mnの上限は1.0%とする。
P:0.030%以下
Pは、鋼の母材靭性、転動疲労寿命を低下させる有害な元素であり、できるかぎり低減することが好ましい。特に、Pの含有量が0.030%を超えると、母材靭性および転動疲労寿命の低下が大きくなる。よって、Pは0.030%以下とする。好ましくは、0.020%以下である。なお、工業的にはP含有量を0%とすることは困難であり、0.002%以上で不可避に含有されることが多い。
S:0.030%以下
Sは、非金属介在物であるMnSとして鋼中に存在する。軸受鋼は転動疲労の起点となり易い酸化物が少ないため、MnSが鋼中に多量に存在すると転動疲労寿命の低下を招く。従って、できるかぎり低減することが好ましく、本発明では、0.030%以下とする。好ましくは、0.020%以下である。なお、工業的にはS含有量を0%とすることは困難であり、0.0001%以上で不可避に含有されることが多い。
Al: 0.50%以下
Alは、脱酸剤として、また、窒化物を生成させてオーステナイト粒を微細化し、靭性並びに転動疲労寿命特性を向上させるために添加される元素であり、添加してもよい。この効果を発現させるためには、0.005%以上添加することが好ましい。しかし、0.50%を超えて添加すると、粗大な酸化物系介在物が鋼中に存在するようになり、鋼の転動疲労寿命特性の低下を招く。以上のことから、Al含有量の上限は0.50%とする。好ましくは、0.45%以下である。
Cr:0.75〜1.6%
Crは、Mnと同様に鋼の強靭性を高め、鋼材の耐転動疲労寿命特性を向上するために添加する元素であり、本発明では、0.75%以上添加する。しかし、1.6%を超える添加は、共晶炭化物を生成させ易くするため、転動疲労寿命特性を低下させるため、Crの上限は1.6%とする。
Mo:0.15〜0.35%
Moは、焼入れ性や焼戻し後の強度を高め、鋼の転動疲労寿命特性を向上する元素であり、0.15%以上添加する。しかし、0.35%を超える添加は、V偏析、逆V偏析あるいは中心偏析部にMoの濃化層を形成し、Moの偏析度を悪化させ、鋼材の耐転動疲労寿命特性の低下をまねくため、Moの上限は0.35%とする。
さらに、上記した基本成分に加えて、以下に示す成分を適宜添加することが可能である。
Ni:1.8%以下
Niは、焼入れ性や焼戻し後の強度を高め、鋼の転動疲労寿命特性を向上する元素であり、必要とする強度に応じて選択して添加することができる。このような効果を得るためには、Niは0.005%以上添加することが好ましい。しかし、Niは1.8%を超えて添加すると、却って鋼の被削性が低下するため、Niは1.8%を上限として添加することが好ましい。
本発明の高周波焼入れ用鋼材においては、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
さらに、本発明の高周波焼入れ用鋼材では、偏析部における下記式(1)で求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)で求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満である必要がある。

DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4 ・・・(1)
但し、式中のC、Mn、Si、Cr、Mo、Ni、CuおよびVは、各元素の含有量(質量%)
発明者らは、造塊法により鋳造されたものを用いる場合、高周波焼入れ時に焼割れが発生する率が高い理由を調査し、成分元素の偏析によるものであることがわかった。図1には、高周波焼入により焼割れが発生した箇所におけるEPMAマッピングの例を示す。図1に例示されるように、焼割れが発生した箇所においては、S,P、C,Moの偏析が認められた。ここで、図1中のS/S、P/P、Mo/Moは、偏析度を意味するものであり、面分析を行った領域のうち、S,P,Mo強度値が高い部分を横切る線上にてライン分析を実施し、それぞれ元素の最大値S、P、Moと平均値S、P、Moとから求められる値である。
さらに、発明者らは、偏析が発生している箇所で焼割れが発生し易い理由が、偏析部では合金元素の濃化によりその他の部分よりも焼入れ性が高まり、偏析部とマトリックス部とで焼入れ性の差が大きくなることが、高周波焼入による焼割れの原因であるとの知見を得た。そこで、焼入れ性の指標として一般的に用いられているDI値、つまり上記(1)式で求められるDI値について、偏析部における値をマトリックスにおける値に対して大きくしすぎないようにすれば、焼割れが発生する危険は減少することを見出した。
以下、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満と特定する、知見を得るに至った実験結果について説明する。
C:0.45%、Si:0.25%、Mn:0.75%、P:0.010%、S:0.001%、Ni:0.01%、Cr:1.05%およびMo:0.25%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる、成分組成の鋼塊を造塊法によって鋳造し、得られた鋼塊を図2に示す製造方法に従って高周波焼入れ用鋼材とした。
すなわち、造塊法によりトップ部1334mm×1226mm、ボトム部1278mm×862mm、高さ2700mmの鋼塊を鋳造し、得られた鋼塊に対して均熱温度および均熱時間を変化させて均熱拡散焼鈍を行い、その後、450mm角×6000mmあるいは600mm角×6000mmに熱間圧延し、熱間鍛造により1000mmφの円柱状鋼片に据え込んだ。得られた円柱状鋼片の径方向中心部にポンチング加工により穿孔し、さらにローリング鍛造により外径2500mmφ、内径2300mmφのリング状に成形した。ここで、同一の均熱拡散焼鈍を行なったものについて10個ずつのリング状の成形品を作製した。
得られた鋼材の、リングの内径部に対して高周波焼入れを施した。ここで、このような方法にて成形されたリングの内径部に対して高周波焼入れを行なう場合、リング内径部は、造塊時に特に偏析が生じやすい鋼塊の中心部相当の位置となる。よって、偏析による焼割れが特に生じやすい。
そして、高周波焼入れ後の焼入部からEPMAマッピング用試験片を採取し、偏析部分について上記(1)式で求められるDI(偏析部)の値を求めた。ここで(1)式中の偏析部の各元素の含有量は、EPMAライン分析により各元素のピークの含有量とし、また、マトリックス中の各元素の含有量は、EPMAライン分析により、偏析部以外の部分の含有量の平均値とした。
また、リング状の成形品について高周波焼入れ後の焼割れの有無を目視で確認し、焼割れが発生したものについては、焼割れ部分から試験片を採取し、焼割れが発生していないものについては、任意の位置から径方向断面組織観察用の試験片を採取し、径方向断面に対して塩酸エッチングを行ってから観察して偏析の最も大きい箇所を特定し、この箇所からEPMAマッピング用試験片を採取した。
次いで、DI(偏析部)/DI(マトリックス)で焼割れ発生率を整理した。ここで、割れ発生率は、各拡散焼鈍条件につきリング状の成形品10個中の焼割れ発生した成形品の個数から求めた。そして、ひとつの拡散焼鈍条件につき成形品10個のうち、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が最大の値を示した成形品のDI(偏析部)/DI(マトリックス)を、その拡散焼鈍条件において得られたDI(偏析部)/DI(マトリックス)の代表値とし、この代表値で割れ発生率を整理した。その結果を図3に示す。図3から、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満であれば、割れ発生率は0%とできることがわかった。
したがって、本発明では、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満であることを必須要件とした。なお、本発明は、Niを積極的に添加していない場合もあり、また、Cu、Vは積極的に添加しないものであるが、Ni、Cu、V無添加鋼であっても不可避的不純物として、これらがそれぞれ0.1%以下の範囲で含有されることを許容するため、DI値を求めるにあたっては、鋼中のNi、Cu、V含有量についても求め、式(1)中にNi、Cu、V含有量の値として用いているものとする。
上記の例では、DI(偏析部)/DI(マトリックス)を高周波焼入れ後の成形材において求めたが、これは割れが発生した場合に偏析部の位置の特定が極めて容易となるためである。すなわち、高周波焼入れ前の鋼材や成形品においてDI(偏析部)/DI(マトリックス)を測定する場合は、マクロ試験などにより、まず大まかに偏析位置を特定する作業が必要となる点が繁雑である。しかも、DI(偏析部)/DI(マトリックス)の値自体は、高周波焼入れの前後で実質的に同じであった。これは高周波焼入れに伴う加熱保持時間が通常数秒〜数分程度、最長でも30分程度の処理であり、したがって成分の拡散が問題となるレベルではないためと考えられる。
次に、本発明の高周波焼入れ用鋼材の製造方法について説明する。
上述した成分組成となる鋼を溶製した後、これを造塊法により鋳造して鋼塊とする。鋳造後の鋼塊に対して均熱拡散焼鈍を行うことによって、上記のDI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満を満足させる。
ここで、均熱拡散焼鈍に際しては、均熱温度を、鋼塊の融点(℃)×0.85〜融点(℃)×0.99の温度範囲とする。なぜなら、均熱温度が融点×0.85より低いと、偏析元素の拡散が十分とならず、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満を達成できない。また、均熱拡散焼鈍時間が長くなり、生産性が阻害される。一方、均熱温度が融点×0.99より高いと、濃化偏析部が再溶解する危険性が高くなる。したがって、造塊後の鋼塊を鋼塊の融点(℃)×0.85〜融点(℃)×0.99の温度範囲で均熱拡散焼鈍する必要がある。
なお、この温度範囲での必要な均熱時間は、鋼の成分組成毎に異なるが、均熱時間が長ければ長い程、DI(偏析部)/DI(マトリックス)は1に近い値となるため、上記式(1)を満足するようになる必要均熱時間を実験により求めておけばよい。
この均熱拡散焼鈍は、造塊後の鋼塊に圧延や鍛造を施した後に行ってもよい。
表1に示す成分組成である鋼を公知の転炉精錬、真空脱ガス法により溶製し、造塊法によりトップ部1334mm×1226mm、ボトム部1278mm×862mm、高さ2700mmの鋼塊を鋳造した。得られた鋼塊に対して表2に示す均熱温度および均熱時間にて均熱拡散焼鈍を行い、その後、図2で示したように450mm角×6000mmあるいは600mm角×6000mmに熱間圧延し、さらに、熱間鍛造により1000mmφの円柱状鋼片とした。得られた円柱状鋼片の径方向中心部にポンチング加工により穿孔し、さらにローリング鍛造により外径2500mm、内径2300mmのリング状に成形し、これを高周波焼入れ用の素材とした。
得られた素材の、リングの内径部に対して高周波焼入れを施した。高周波焼入れは、焼入れ深さが3mmとなる条件で行った。その後、リング内径部について目視にて焼割れの発生の有無を確認した。
また、高周波焼入れ部から、EPMAマッピング用試験片を採取し、EPMAマッピングにより、偏析部およびマトリックスのDI値を求め、各サンプルについて、DI(偏析部)/DI(マトリックス)の値を求めた。ここで、焼割れが発生したものについては、焼割れ発生部からEPMAマッピング用試験片を採取した。焼割れが発生していないものについては、任意の位置から径方向断面組織観察用の試験片を採取し、径方向断面に対して塩酸エッチングを行なってから観察して偏析の最も大きい箇所を特定し、この箇所からEPMAマッピング用試験片を採取した。
表2に、焼割れの有無の確認結果、DI値(マトリックス)、DI(偏析部)/DI(マトリックス)を示す。
DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満とした本発明の高周波焼入れ用鋼は、焼割れの発生が認められなかったが、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00以上である比較例においては、焼割れの発生が認められた。また、DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満の鋼材を得るためには均熱拡散焼鈍における均熱時間を調整すればよいことが表2(たとえば素材No.3〜6)から分かるが、表2の素材No.4と7より、均熱温度を(鋼材の融点(℃)×0.85〜融点(℃)×0.99の範囲内で)調整してもよいことが分かる。

Claims (5)

  1. 造塊法により鋳造され、さらに鍛造及び/又は圧延が施されてなる高周波焼入れ用鋼材であって、質量%で、C:0.30〜0.70%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.50%以下、Cr:0.75〜1.6%およびMo:0.15〜0.35%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、かつ偏析部における下記式(1)にて求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)にて求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)が5.00未満であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。

    DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4 ・・・(1)
    但し、式中のC、Mn、Si、Cr、Mo、Ni、CuおよびVは、各元素の含有量(質量%)
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、Ni:1.8%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ用鋼材。
  3. 質量%で、C:0.30〜0.70%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.50%以下、Cr:0.75〜1.6%、Mo:0.15〜0.35%を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成である鋼塊を造塊法により鋳造し、鋳造後の鋼塊を、該鋼塊の融点(℃)×0.85〜融点(℃)×0.99の温度範囲にて均熱拡散焼鈍を行い、偏析部における下記式(1)式で求められるDI値:DI(偏析部)とマトリックスにおける下記式(1)で求められるDI値:DI(マトリックス)との比DI(偏析部)/DI(マトリックス)を5.00未満とすることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材の製造方法。

    DI=(0.171+0.001×C+0.265×C2)×(1+Mn×3.3333)×(1+0.7×Si)×(1+2.16×Cr)×(1+3×Mo)×(1+0.365×Cu)×(1+0.363×Ni)×(1+1.73×V)×25.4 ・・・(1)
    但し、式中のC、Mn、Si、Cr、Mo、Ni、CuおよびVは、各元素の含有量(質量%)
  4. 前記成分組成が、さらに、質量%で、Ni:1.8%以下を含有することを特徴とする請求項3に記載の高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
  5. 前記均熱拡散焼鈍は、前記鋼塊に対し圧延および/または鍛造を施した後に行うことを特徴とする請求項3または4に記載の高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
JP2012239372A 2011-11-09 2012-10-30 高周波焼入れ用鋼材およびその製造方法 Active JP6102183B2 (ja)

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