JP2013121964A - 癌の予防および治療処置におけるニトロキシドまたはそのプロドラッグの使用 - Google Patents

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マリー デルーカ、アン
Murali Krishna Cherukuri
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Abstract

【課題】癌の予防または治療用の医薬組成物の提供。
【解決手段】ニトロキシドまたはそのプロドラッグを含有する、癌を発症するリスクのある動物、または癌を有する動物における癌の予防または治療用医薬組成物であって、前記癌は前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグによる予防または治療に感受性である医薬組成物。該ニトロキシドとしては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(テンポール)であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明はニトロキシドおよびそのプロドラッグならびに癌の予防および治療処置におけるそれらの使用に関する。
発明の背景
癌は、主要な世界的健康問題である。ヒトの腫瘍の非常に多くが効果的に処置するのが難しいので、苦しんでいる患者は、身体的に心理的にそして経済的に苦しめられ、早く死亡することが避けられない。また、苦しんでいる患者の家族や友人に対しても、社会全体に対しても非常に大きな負担が生じる。従って、癌を予防する、癌の発症を遅らせる、および/または癌の進行を遅くすることを可能にすることは全ての者に利益をもたらすであろう。
世界中での広範囲にわたる研究は癌の処置を向上させてきたが、進歩は遅く既知の治癒法はない。しかしながら、近代分子生物学の技術は、癌発生の遺伝学的側面の我々の理解に寄与してきた。例えば、正常に機能している細胞を死なせるかまたは不死にさせる、すなわち癌性にする原因となる出来事のカスケードを妨げることによって細胞の機能を調節する生成物をコードする遺伝子の一般的なクラスを代表する癌抑制遺伝子p53は、腫瘍発生を抑制する転写因子をコードすることが示されている。p53癌抑制遺伝子における突然変異は、腫瘍遺伝子を抑制する転写因子の生成に影響を与えることが示されている。例えば、転写因子が生成されないか、あるいは効果のないまたは部分的に効果のある転写因子が生成される。事実、p53癌抑制遺伝子はヒトの癌において遺伝子損傷が最もよく起こる位置であり(Levine et al., Nature 351:453-456(1991); およびHollstein et al., Science 253:49-53(1991))、全てのヒトの腫瘍の半数以上にp53の点突然変異または欠失が表れている(Chang et al., Am.J.Gastroenterol. 88:174-186(1993))。p53遺伝子における突然変異はまた、腫瘍形成の高い危険性と関連する家族性常染色体優性疾患であるリー−フラウメニ症候群と関連付けられている(Srivastava et al., Nature 348:747-749(1990))。p53蛋白質はまた、DNA損傷後の細胞周期のG1期での遮断を促進し
、これによりDNA損傷を修復するための時間を与えることにより(Pietenpol et al., Nature 365:17-18(1993); およびKuerbitz et al., PNAS USA 89:7491-7495(1992))、あるいはアポトーシスを引き起こすことにより(Yonish-Rouach et al., Nature 352:345-347(1991))、DNAに損傷を与える薬剤に対する細胞応答における役割を果たす。
p53遺伝子の更なる研究を可能とするために、組換えDNA技術を用いてげっ歯類のモデルが作製されている。あるモデルでは、げっ歯類はp53遺伝子が破壊されているかまたは「ノックアウト」(p53 -/-)されて機能しない突然変異p53対立遺伝子のホモ接
合(p53 -/-)であり、若齢のときに様々な腫瘍を非常に発症し易い(Donehower et al., Nature 356:251-221(1992))。別のモデルでは、げっ歯類は野性型と突然変異p53対立遺
伝子とのヘテロ接合(p53 +/-)であり、生後10〜20カ月で腫瘍を発症するが、ホモ接
合の突然変異p53げっ歯類よりもかなり長く生きる(Harvey et al., Nature/Genetics 5:225-229(1993))。これらのげっ歯類を、ジメチルニトロソアミンのような発癌物質に暴露したり、あるいは身体全体へ放射線を照射することは、腫瘍形成を促進する(Harvey et
al. (1993), 前記; およびLee et al., Oncogene 12:3731-3736(1994))。
ニトロキシドは、低分子量であり、金属に依存せず、無毒でありアレルギーを引き起こ
さない安定な化合物であり、さらに酸素との低反応性、水溶液への高い溶解度、および細胞膜を通り抜ける能力によって特徴づけられる。特定の器官または細胞小器官へのニトロキシドのターゲッティングを容易にするために、ニトロキシドの親油性は様々な有機置換基の付加によって制御することができる。
ニトロキシドは、致死量のフリーラジカルおよび酸化種(oxidative species)(例えば
、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルおよびヒドロペルオキシド)への短時間の暴露による細胞毒性のような急性の不利な影響から、すなわち酸化防止剤として作用することにより、細胞および動物を保護することが示されている(米国特許第5,
462,946号)。細胞培養液中で、ニトロキシドは低酸素性の細胞を電離放射線に対
して敏感にさせる一方で、矛盾するように思われるが、電離放射線から好気性の細胞を保護することが示されている。さらに細胞培養液中で、ニトロキシドはパラコートおよび抗新生物薬剤の急性細胞毒性効果から細胞を保護することが示されている。動物においては、ニトロキシドは放射線によって誘発された脱毛症から保護し、体重の減少を引き起こすことが示されている。ニトロキシドは、肺成人呼吸窮迫症候群、乳児のレンズ核変性および肺硝子膜症、白内障、酸素療法または高圧酸素治療に関連するような酸化的ストレス、心筋梗塞に関連するような再灌流損傷(reperfusion injury)、卒中などの発作、すい臓炎、腸潰瘍および臓器移植から保護するために用いられ得ることが報告されている。
今回、驚くべきかつ予想外なことに、ニトロキシドおよびそのプロドラッグが癌の予防および治療処置(すなわち、癌の予防、癌の発症を遅らせること、および癌の進行を遅くすること)に有用であることが見出された。従って、本発明の目的は、癌の予防および治療処置方法を提供することである。本発明の他の目的は、この方法において使用するための組成物を提供することである。本発明のこれらのならびにその他の目的および利点、また付加的な発明の特徴は、本明細書における発明の記載から明らかとなるであろう。
発明の要旨
本発明は、癌の予防および治療処置方法を提供する。この方法は、癌を発症するリスクのある、または癌を有する動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに、前記癌を予防または治療するのに十分な量のニトロキシドまたはそのプロドラッグをそれぞれ投与することを含み、前記癌は前記ニトロキシドまたは前記のそのプロドラッグによる予防または治療に感受性(susceptible)である。好ましくは、ニトロキシドまたはそのプロドラッ
グは、脂環式または複素環式化合物である。より好ましくは、ニトロキシドまたはそのプロドラッグは式Iまたは式IIの化合物である。
式中、RはH、OH、OZ、O・、=OおよびYからなる群より選ばれ、Yは求核剤との反応によってH、OH、O・または=Oに変換され得る脱離基であり、ZはC1−20
脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる。好ましくは、上記芳香族基は5または6員構造を含み、当該5または6員構造を構成する原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる。上記芳香族基における好ましいヘテロ原子としては、窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素が挙げられる。上記非炭素/非酸素部分は、好ましくはホウ素、硫黄、リンおよび窒素からなる群より選ばれる一種を含む。R、R、RおよびRは、独立して、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基および上記の多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、C1−20脂環式基、上記の非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30である。RとRまたはRとRは、各原子が独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる一または二以上の原子を介して連結されていてもよい。R、R、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル基、C1−20アルデヒド基(aldehydic group)、C1−20ケト基、第一級アミノ
基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルファト基、スルフィト基、スルホナト基、スルフィナト基、スルフェナト基、スルファマト(sulfamato)基、金属含有基(当該金属は、好ましくは遷移金属およびランタニドからなる群より
選ばれる)、シリコーン基、ハライド、C1−20エステル含有基、カルボキシル基、ホスファト基、ホスフィノ基、ホスフィナト基、ホスホナト基、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基および上記の多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、C1−20脂環式基、上記の非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30である。R、R、RおよびRのいずれかは、合成または天然由来のポリマーに共有結合によりまたは非共有結合により結合していてもよい。式Iにおいて、RおよびRのうちの一つとRおよびRのうちの一つとは、残りのR基が結合している2個の炭素原子が二重結合で結合するように存在しなくてもよい。式Iにおいてnは0〜20であり、式IIにおいてnは1〜20である。Xはヘテロ原子であり、R10およびR11は独立してC1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、これらはそれぞれ前記の通りであり、C1−20脂肪族/芳香族基、ヘテロ原子基、C1−20エーテル含有基、C1−20ケト基、C1−20アルデヒド基、カルボキサミド基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、セレン含有基、スルファト基、スルフィト基、スルフェナト基、スルフィナト基およびスルホナト基からなる群より選ばれる。R10およびR11は脂肪族基および/または芳香族基を介して連結されていてもよく、あるいはR10および/またはR11は炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる一種を含んでいてもよい。さらに本発明によって、上述した方法において使用するためのニトロキシドまたはそのプロドラッグを含有する組成物が提供される。
図1は、時間(日数)に対する腫瘍が発生していない動物の生存率(%)を示すグラフであり、グラフ中、白い円は対照実験の動物を示し、黒い円はニトロキシドで処置した動物を示す。 図2は、対照群1、対照群2、テンポール(Tempol)/1年の群、およびテンポール/全寿命の群についての腫瘍の総数/群(n=20)を示すグラフである。
発明の詳細な説明
本発明は、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトにおける癌の予防および治療処置方法を提供する。上記癌は、(i)癌抑制遺伝子または(ii)癌原遺伝子における遺伝子欠陥(genetic defect)(例えば、点突然変異、挿入または欠失)に起因するものであってよく、当該遺伝子欠陥はホモ接合またはヘテロ接合のいずれであってもよく、(i)癌抑制遺伝子における場合、癌抑制遺伝子がもはや腫瘍形成を抑制しないか、または抑制効果が低下しているような遺伝子欠陥、または(ii)癌原遺伝子における場合、癌原遺伝子が癌遺伝子に変換され、癌を引き起こすような遺伝子欠陥に起因する癌であってよい。ヒトが癌を発症しやすくなるようにする遺伝性の遺伝子欠陥の例としては、毛細血管拡張性運動失調、カウデン病、トレ症候群、ガードナー症候群、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ブルーム症候群、ファンコーニ症候群、ワーマー症候群、チェディアック−東症候群、網膜芽細胞腫、ベックウィズ−ヴィーデマン症候群、および神経芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような遺伝性の遺伝子欠陥に起因する癌に加えて、DNAに損傷を与える種々の薬剤によっても遺伝子欠陥は誘発され得る。例えば、酸化剤(例えば、電離放射線および/またはフリーラジカル由来の酸素)が、哺乳類における癌誘発に導くDNA突然変異を増加させることを示す多くの研究が発表されている(例えば、Helbock et al., PNAS USA 95:288-293 (1998); Kreutzer et al., PNAS USA95:3578-3582 (1998); Valentine et al., Biochemistry 37:7030-7038 (1998); McBride et al., Biochemistry 30:207-213 (1991); Reid et al., Princess Takamatsu Symp. 22:221-229 (1991);およびKlaunig et al., Environ.
Health Perspect. 106(Suppl.):289-95 (1998)参照)。
遺伝子「ノックアウト」モデルは、当該分野で公知の方法に従って、遺伝子欠陥を作製することができ(Joyner et al., Nature 338:153-156 (1989); Donehower et al. (1992)
前記, およびHarvey et al. (1993), 前記も参照)、本発明に従ってニトロキシドまたはそのプロドラッグにより、そのような欠陥により生じる癌を予防することができるか、その発症を遅らせることができるか、および/またはその進行を遅くすることができるか否かを決定するために用いることができる。このようなモデルは、さらに、どのニトロキシドまたはそのプロドラッグが、所定の癌の予防および治療処置において特に有効であるか、ならびにどの量で有効であるかを決定するために使用することができる。毛細血管拡張性運動失調の遺伝子「ノックアウト」モデルが作製されている(Barlow et al., Cell 86:159-171 (1996)).
本発明の方法は、癌を発症するリスクのある、または癌を有する(例えば、癌を促進するまたは引き起こす、誘発されたもしくは遺伝性の遺伝子欠陥のような遺伝子欠陥または遺伝子欠陥の傾向を有する)動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに、前記癌を予防または治療するのに十分な量のニトロキシドまたはそのプロドラッグをそれぞれ投与することを含み、前記癌は前記ニトロキシドまたは前記のそのプロドラッグによる予防または治療に感受性である。「ニトロキシド」とは、一または二以上のニトロキシド基(すなわち、N−O・基)を含む化合物を意味する。「プロドラッグ」とは、ニトロキシド基に変換され得る少なくとも一つの官能基を含み、それによりプロドラッグがニトロキシドに変化する化合物を意味する。
癌が遺伝子欠陥により引き起こされる場合、当該遺伝子欠陥は、好ましくは、癌調節遺伝子(cancer regulatory gene)または癌抑制遺伝子に影響を及ぼすものである。癌調節遺伝子は、癌を引き起こす遺伝子を増加調節(up-regulate)または低下調節(down-regulate)する遺伝子である。このような遺伝子の例としては、ABELおよびBCL2が挙げられる。癌抑制遺伝子は、p53遺伝子のような、腫瘍形成を抑制する遺伝子であり、p53遺伝子が好ましい。
投与されるニトロキシドまたはそのプロドラッグは、好ましくは脂環式または複素環式化合物である。より好ましくは、脂環式または複素環式ニトロキシドまたはそのプロドラッグは式Iまたは式IIの化合物である。
式中、RはH、OH、OZ、O・、=OおよびYからなる群より選ばれ、Yは求核剤との反応によってH、OH、O・または=Oに変換され得る脱離基であり、ZはC1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる。好ましくは、上記芳香族基は5または6員構造を含み、当該5または6員構造を構成する原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる。上記芳香族基における好ましいヘテロ原子としては、窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素が挙げられる。上記非炭素/非酸素部分は、好ましくはホウ素、硫黄、リンおよび窒素からなる群より選ばれる一種を含む。R、R、RおよびRは、独立して、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基および上記の多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、C1−20脂環式基、上記の非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30である。RとRまたはRとRは、各原子が独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる一または二以上の原子を介して連結されていてもよい。R、R、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル基、C1−20アルデヒド基、C1−20ケト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルファト基、スルフィト基、スルホナト基、スルフィナト基、スルフェナト基、スルファマト基、金属含有基(当該金属は、好ましくは遷移金属およびランタニドからなる群より選ばれる)、シリコーン基、ハライド、C1−20エステル含有基、カルボキシル基、ホスファト基、ホスフィノ基、ホスフィナト基、ホスホナト基、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基および上記の多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、C1−20脂環式基、上記の非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30である。R、R、RおよびRのいずれかは、合成または天然由来のポリマーに共有結合によりまたは非共有結合により結合していてもよい。式Iにおいて、RおよびRのうちの一つとRおよびRのうちの一つとは、残りのR基が結合している2個の炭素原子が二重結合で結合するように存在しなくてもよい。式Iにおいてnは0〜20であり、式IIにおいてnは1〜20である。Xはヘテロ原子であり、R10およびR11は独立してC1−20脂肪族基、上記の単環式芳香族基、上記の二環式芳香族基、上記の多環式芳香族基、C1−20脂肪族/芳香族基、ヘテロ原子基、C1−20エーテル含有基、C1−20ケト基、C1−20アルデヒド基、カルボキサミド基、シアノ基、
アミノ基、カルボキシル基、セレン含有基、スルファト基、スルフィト基、スルフェナト基、スルフィナト基およびスルホナト基からなる群より選ばれる。R10およびR11は脂肪族基および/または芳香族基を介して連結されていてもよく、あるいはR10および/またはR11は炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる一種を含んでいてもよい。上記脂肪族基は分枝鎖状、置換および/または不飽和であってよい。上記脂肪族基が置換されている場合、好ましくはヘテロ原子で置換されており、当該ヘテロ原子は、好ましくは酸素、リン、セレン、硫黄および窒素からなる群より選ばれる。上記芳香族基は置換されていてもよい。上記芳香族基が置換されている場合、好ましくはヘテロ原子で置換されており、当該ヘテロ原子は、好ましくは、窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる。上記脂環式基は置換および/または不飽和であってよい。上記脂環式基が置換されている場合、好ましくはヘテロ原子で置換されている。上記アミノ基も置換されていてもよい。上記アミノ基が置換されている場合、好ましくはC1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基およびC1−20脂環式基(これらは全て前記の通りである)からなる群より選ばれる3個までの置換基で置換されている。上記の多くの置換基について炭素数の範囲を特定しているが、特定した範囲外の炭素数を含有する置換基も本発明の方法に関して有効であり得るので、このような炭素数の範囲は単に好ましい範囲である。
上記方法は、科学的目的および研究目的のためにin vitroの利用に適用することができ、そのような目的には、本発明の方法に従ってニトロキシドまたはそのプロドラッグを投与することによってどのタイプの癌を処置することができるかを決定することが含まれる。しかしながら、上記方法は、特にin vivoの適用に、例えば、癌の予防、癌の発症を遅
らせること、および/または癌の進行を遅くすることに有用である。
ニトロキシドまたはそのプロドラッグを動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与するための多くの適切な方法があり、特定の化合物を投与するのに二以上の経路を用いることができ、ある特定の経路が別の経路よりも迅速かつ効果的な処置を提供し得ることが当業者には理解されるであろう。従って、上記の方法は単に例示であり、これに限定されるものではない。
癌を引き起こすまたは促進する、誘発されたおよび/または遺伝性の遺伝子欠陥を有する動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与する用量は、癌を予防する、その発症を遅らせる、および/またはその進行を遅くするために十分な量であることが必要である。上記用量は、用いられる特定の化合物の効力、ならびに動物の年齢、種、状態および体重を含めた種々のファクターにより決定されることが当業者には理解されるであろう。上記用量はまた、投与経路、投与のタイミングおよび頻度、ならびに特定の化合物の投与に伴うかもしれない悪影響を及ぼす副作用の有無、性質および程度、ならびに所望の生理学的効果により決定される。
適切な用量および投与計画は、当業者に知られている常法の範囲決定法(range-finding
technique)により決定することができる。通常、化合物の最適な用量より低い低用量で
処置を開始する。その後、最適の効果が得られる状況に達するまで用量を徐々に増加させる。本発明の方法は、典型的には、上記化合物の一または二以上を体重1kg当たり約0.1から約100mgの用量で投与することを含む。
本発明はまた、ニトロキシドまたはそのプロドラッグ、好ましくは脂環式または複素環式ニトロキシドまたはそのプロドラッグ、より好ましくは上記式Iまたは式IIの化合物を含有する組成物を提供する。式IまたはIIの化合物は、当該分野でよく知られた方法に従って合成することができる。例えば、Rosantzev, "Synthesis of Individual Radicals,"
Chapter III, pp. 67-89, および"Synthesis of Some Stable Radicals and the Most I
mportant Intermediates," Chapter IX, pp. 203-247, In Free Nitroxyl Radicals, Plenum Press (1970)参照。好ましくは、上記組成物は、医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物である。いかなる適当な担体も使用することができ、典型的には、その化学的−物理的性質(溶解度、組成物中の他の成分との反応性の程度など)、および投与経路を考慮して選択されるであろう。以下で説明する医薬組成物に加えて、本発明の方法の化合物は、例えば、シクロデキストリン包接錯体のような包接錯体、またはリポソームとして製剤化できることが当業者には理解されるであろう。
本発明の医薬組成物において使用する医薬的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸のような鉱酸、および酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸およびアリールスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)のような有機酸に由来する酸付加塩が挙げられる。
本明細書に記載する医薬的に許容される賦形剤、例えば、ビヒクル、佐剤、担体または希釈剤は当業者によく知られており、一般に容易に入手可能である。医薬的に許容される担体は活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用される条件下で有害な副作用または毒性を有していないものであることが好ましい。
賦形剤の選択は、一部は特定の化合物により、ならびに組成物を投与するために用いられる特定の方法により決定される。従って、本発明の医薬組成物の適当な製剤としては広範なものがある。以下に示す経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、直腸投与および膣投与用の製剤は単に例示であり、これらに限定されるものではない。本発明の方法によれば、これらの製剤の中で注射可能な製剤が好ましい。注射可能な組成物用の効果的な医薬担体の要件は当業者によく知られている(Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, BankerおよびChalmers編, 238-250頁, (1982),およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 第4版, 622-630頁 (1986)参照)。このような注射可能な組成物は、静脈内、腫瘍内(intratumorally)(腫瘍内に)または腫瘍周囲(peritumorally)(腫瘍の外側
近くに)投与することが好ましい。説明した注射可能な組成物の種々のものが腫瘍内投与および腫瘍周囲投与に適していることが、当業者には理解されるであろう。
局所投与製剤は当業者によく知られている。このような製剤は、本発明において皮膚に適用するために適している。
経口投与に好適な製剤は、(a)有効量のニトロキシドまたはそのプロドラッグを希釈剤(例えば、水、食塩水またはオレンジジュース)に溶解したような液剤;(b)それぞれ所定量のニトロキシドまたはそのプロドラッグを固体または顆粒として含有するカプセル、薬袋(sachet)、錠剤、舐剤(lozenge)およびトローチ;(c)散剤;(d)適当な液
体中の懸濁剤;および(e)適切な乳剤で構成することができる。液状製剤は、水、アルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコール)のような希釈剤を含んでいてもよく、医薬的に許容される界面活性剤、懸濁化剤、または乳化剤を添加しても添加しなくてもよい。カプセルの形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、および不活性充填剤(例えば、ラクトース、ショ糖、リン酸カルシウムおよびトウモロコシデンプン)を含有する通常の硬カプセルタイプまたは軟カプセルタイプであってよい。錠剤の形態は、ラクトース、ショ糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、およびその他の賦形剤、着色料、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香料、ならびに薬理学的に適合性の
賦形剤のうちの一または二以上を含んでいてよい。舐剤の形態は、ニトロキシドまたはそのプロドラッグ、香料(例えば、ショ糖)およびアラビアゴムまたはトラガントを含有していてよく、ゼラチンおよびグリセリンのような基剤、またはショ糖およびアラビアゴム中にニトロキシドまたはそのプロドラッグを含有する香錠(pastille)、ニトロキシドまたはそのプロドラッグに加えて、当該分野で公知の賦形剤を含有するエマルジョン、ゲルなどが含まれる。
ニトロキシドおよびそのプロドラッグは、単独でまたは他の適当な成分と組み合わせて、エアロゾル剤に製剤化して吸入法により投与することができる。これらのエアロゾル剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容される噴射剤を加圧したものに含ませてもよい。これらはまた、ネブライザー(nebulizer)またはアトマイザー(atomizer)のような非加圧製剤の医薬として製剤化してもよい。このようなスプレー剤はまた、
粘膜に噴霧するために使用してもよい。
非経口投与に好適な製剤には、水性および非水性の等張性無菌注射溶液が含まれ、この溶液は、酸化防止剤、緩衝剤、制菌剤、および当該製剤を投与対象者の血液と等張にする溶質を含有していてもよく、そして懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および保存剤を含んでいてもよい水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。ニトロキシドまたはそのプロドラッグは、水、食塩水、デキストロースおよび関連する糖の水溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールおよびヘキサデシルアルコール)、グリコール(
例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド
、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、およびアセチル化脂肪酸グリセリドを含めた、無菌の液体または液体の混合物のような医薬担体中の生理的に許容される希釈剤中で、医薬的に許容される界面活性剤(例えば、石けんおよび洗剤)、懸濁化剤(例えば、ペクチン、カルボマー(carbomer)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体)、乳化剤およびその他の医薬佐剤の一または二以上を添加して、または添加することなく投与することができる。
非経口投与製剤に使用することのできる油としては、石油、動物油、植物油、または合成油が挙げられる。油の具体例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン(petrolatum)、鉱油が挙げられる。非経口投与製剤に使用するのに適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルが好適な脂肪酸エステルの例である。
非経口投与製剤に使用するのに好適な石けんとしては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗剤としては、(a)カチオン性洗剤、例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウムおよびハロゲン化アルキルピリジニウム、(b)アニオン性洗剤、例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリドスルフェート、およびスルホスクシネート、(c)非イオン性洗剤、例えば、脂肪アミンオキシド(fatty amine oxide)、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレ
ンコポリマー、(d)両性洗剤、例えば、アルキル−b−アミノプロピオネートおよび2−アルキル−イミダゾリン第四級アンモニウム塩、および(e)それらの混合物が挙げられる。
非経口投与製剤は、典型的には、約0.5〜約25重量%のニトロキシドまたはそのプロドラッグを溶液中に含有する。保存剤および緩衝剤を使用してもよい。注射部位の刺激
を最小限にする、またはなくすために、このような組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤の一または二以上を含有してもよい。このような製剤中の界面活性剤の量は、典型的には、約5〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、およびプロピレンオキシドのプロピレングリコールへの縮合により形成された疎水性ベースにエチレンオキシドが付加した高分子量付加物が挙げられる。この非経口投与製剤は、単位投与量または多回投与量を封入したアンプルおよびバイアルのような容器中に入れて提供することができ、また、使用直前に例えば注射用水等の無菌液状賦形剤を加えるだけでよいような凍結乾燥条件下に保存することができる。用時調製の注射溶液および懸濁液は、前記で説明したような種類の無菌の散剤、顆粒および錠剤から調製することができる。
さらに、ニトロキシドまたはそのプロドラッグは、乳化基剤または水性基剤のような種々の基剤と混合することにより坐剤に製剤化することもできる。膣投与に好適な製剤は、ニトロキシドまたはそのプロドラッグに加え当該分野で適当なものとして知られる担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫剤(foam)または噴霧剤の剤形としてもよい。
本発明を、以下の実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
この実施例は、p53 -/- マウスへのニトロキシドの投与が腫瘍の発症を遅らせることを実証している。
雄性および雌性p53 -/- マウス(129/Sv-Trp5ntml Tyj系統)は、ジャクソンラボラトリーズ(Jackson Labs) (Bar Harbor, Maine)から購入した。これらのマウスは、急速な腫瘍の形成および増殖のために生後数カ月以内に一様に死ぬ。マウスは7〜8週齢で実験室に到着し、5日間順化され、対照群(n=8;平均体重=24.6g)と処置群(n=9;平均体重=25.0g)とに無作為に分けられた。両群共に、自由に餌および水を摂取できるようにした。対照群の水には砂糖(4g/100ml)を添加し、これに対して、処置群の水には砂糖(4g/100ml)および最終濃度が58mMとなるように4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(テンポール)を添加した。マウスは、目に見える腫瘍小結節、脾臓の全体量の増大または著しい呼吸困難の徴候が最初に出たときに殺した。結果を図1に示す。図1は時間(日数)に対する腫瘍が発生していない動物の生存率を示すグラフであり、図1において黒い円は対照群を示し、白い円は処置群を示す。p53 -/- マウスにテンポールを毎日投与することにより、対照群と比較して処置群の寿命を約48%延長した。テンポールで処置したマウスは最終的には腫瘍を発症したが、腫瘍形成の発症は対照群と比較して遅かった。
実施例2
この実施例は、正常なC3H雌性マウスへ全寿命にわたってニトロキシドを投与すると、当該マウスにおける癌の発生率が減少することを実証している。
雌性C3Hマウスは、フレデリックキャンサーリサーチセンター−アニマルプロダクション(Frederick Cancer Research Center-Animal Production)のフレデリック医学博士(Frederick, MD)から提供された。マウスを6週齢で受けとり、次のように無作為に群に分
けた(n=20/群)。通常の餌および水を与えられた対照群1;通常の餌および砂糖(4g/100ml)を添加した水を与えられた対照群2;通常の餌および砂糖(4g/100ml)と最終濃度が58mMとなるようにテンポールを添加した水を1年間与えられ
、その後通常の餌および水に換えたテンポール/1年の群;通常の餌および砂糖(4g/100ml)と最終濃度が58mMとなるようにテンポールを添加した水を全寿命にわたって与えられたテンポール/全寿命の群。全ての群は、自由に餌と水を摂取できるようにした。全ての群をその全寿命にわたって観察した。マウスは、目に見える腫瘍小結節、脾臓の全体量の増大または著しい呼吸困難の徴候が最初に出たときに殺した。腫瘍の存在を組織学的に確認した。
結果を図2に示す。図2は、様々な群についての腫瘍の総数を示すグラフである。飲料水中のテンポールを1年間にわたって投与することにより、両方の対照群と比較して処置されたマウスにおける癌の発生率が劇的に減少し、飲料水中に存在するテンポールを全寿命にわたって投与することにより、さらに癌の発生率が減少した(対照群と比較して4倍の減少)。ニトロキシド処置は、癌の発生率を効果的に減少させた。
本明細書において引用した全ての刊行物は、各刊行物を言及により組み込むと個々に特に述べ、そしてその全体を本明細書に説明したのと同程度に言及により本明細書に組み込まれるものである。
好適な実施態様を強調して本発明を説明したが、当業者には、好適な実施態様を変更し得ることが自明であろう。本発明は、本明細書で特に説明した以外の方法でも実施できることを意図している。従って、以下の請求の範囲の精神および範囲内に包含される全ての変形を本発明は含む。
ニトロキシドは、致死量のフリーラジカルおよび酸化種(oxidative species)(例えば、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルおよびヒドロペルオキシド)への短時間の暴露による細胞毒性のような急性の不利な影響から、すなわち酸化防止剤として作用することにより、細胞および動物を保護することが示されている(米国特許第5,462,946号)。細胞培養液中で、ニトロキシドは低酸素性の細胞を電離放射線に対して敏感にさせる一方で、矛盾するように思われるが、電離放射線から好気性の細胞を保護することが示されている。さらに細胞培養液中で、ニトロキシドはパラコートおよび抗新生物薬剤の急性細胞毒性効果から細胞を保護することが示されている。ニトロキシドの一種、テンポール(Tempol)は、in vitroで新生物細胞系に対して細胞毒性を有することが示されている(Monti et al., PAACR, 36:387(1995), およびMonti et al., PAACR, 38:193(1997))。動物においては、ニトロキシドは放射線によって誘発された脱毛症から保護し、体重の減少を引き起こすことが示されている。ニトロキシドは、肺成人呼吸窮迫症候群、乳児のレンズ核変性および肺硝子膜症、白内障、酸素療法または高圧酸素治療に関連するような酸化的ストレス、心筋梗塞に関連するような再灌流損傷(reperfusion injury)、卒中などの発作、すい臓炎、腸潰瘍および臓器移植から保護するために用いられ得ることが報告されている。
図1は、時間(日数)に対する腫瘍が発生していない動物の生存率(%)を示すグラフであり、グラフ中、い円は対照実験の動物を示し、い円はニトロキシドで処置した動物を示す。 図2は、対照群1、対照群2、テンポール(Tempol)/1年の群、およびテンポール/全寿命の群についての腫瘍の総数/群(n=20)を示すグラフである。
本発明は以下を提供する。
[1] 癌を発症するリスクのある、または癌を有する動物に、前記癌を予防または治療するのに十分な量のニトロキシドまたはそのプロドラッグを投与することを含む、動物における癌の予防または治療処置方法であって、前記癌は前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグによる予防または治療に感受性である方法。
[2] 前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグが脂環式または複素環式化合物である[1]記載の方法。
[3] 前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグが式IまたはII:

(式中、R はH、OH、OZ、O・、=OおよびYからなる群より選ばれ、Yは求核剤との反応によってH、OH、O・または=Oに変換され得る脱離基であり、ZはC 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C 1−20 脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、R 、R 、R およびR は、独立して、C 1−20 アルキル基、C 2−20 アルケニル基、C 2−20 アルキニル基および−CH −[CR’R”] −CH からなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基および多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C 1−20 脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30であり、R とR またはR とR は、各原子が独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる一または二以上の原子を介して連結されていてもよく、R 、R 、R およびR は、独立して、水素、ヒドロキシル基、C 1−20 アルデヒド基、C 1−20 ケト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルファト基、スルフィト基、スルホナト基、スルフィナト基、スルフェナト基、スルファマト基、金属含有基、シリコーン基、ハライド、C 1−20 エステル含有基、カルボキシル基、ホスファト基、ホスフィノ基、ホスフィナト基、ホスホナト基、C 1−20 アルキル基、C 2−20 アルケニル基、C 2−20 アルキニル基および−CH −[CR’R”] −CH からなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基および多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C 1−20 脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30であり、R 、R 、R およびR のいずれかは、合成または天然由来のポリマーに共有結合によりまたは非共有結合により結合していてもよく、式Iにおいて、R およびR のうちの一つとR およびR のうちの一つとは、残りのR基が結合している2個の炭素原子が二重結合で結合するように存在しなくてもよく、式Iにおいてnは0〜20であり、式IIにおいてnは1〜20であり、Xはヘテロ原子であり、R 10 およびR 11 は独立してC 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C 1−20 脂肪族/芳香族基、ヘテロ原子基、C 1−20 エーテル含有基、C 1−20 ケト基、C 1−20 アルデヒド基、カルボキサミド基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、セレン含有基、スルファト基、スルフィト基、スルフェナト基、スルフィナト基およびスルホナト基からなる群より選ばれ、R 10 およびR 11 は脂肪族基および/または芳香族基を介して連結されていてもよく、あるいはR 10 および/またはR 11 は炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる一種を含んでいてもよい。)の化合物である[2]記載の方法。
[4] 前記脂肪族基が分枝鎖状、置換および/または不飽和の脂肪族基である[3]記載の方法。
[5] 前記脂肪族基が、酸素、リン、セレン、硫黄および窒素からなる群より選ばれる一種で置換されている[4]記載の方法。
[6] 前記芳香族基が、5または6員環を含み、当該5または6員環を構成する5または6個の原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる[3]記載の方法。
[7] 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる[6]記載の方法。
[8] 前記の金属含有基の金属が遷移金属およびランタニドからなる群より選ばれる[3]記載の方法。
[9] 前記芳香族基が置換されている[6]記載の方法。
[10] 前記芳香族基がヘテロ原子で置換されている[9]記載の方法。
[11] 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる[10]記載の方法。
[12] 前記脂環式基が置換および/または不飽和の脂環式基である[3]記載の方法。
[13] 前記脂環式基がヘテロ原子で置換されている[11]記載の方法。
[14] 前記アミノ基が置換されている[3]記載の方法。
[15] 前記アミノ基が、C 1−20 脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基およびC 1−20 脂環式基からなる群より選ばれる3個までの置換基で置換されている[14]記載の方法。
[16] 前記芳香族基が、5または6員環を含み、当該5または6員環を構成する5または6個の原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる[15]記載の方法。
[17] 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる[16]記載の方法。
[18] 前記芳香族基が置換されている[15]記載の方法。
[19] 前記芳香族基がヘテロ原子で置換されている[18]記載の方法。
[20] 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる[19]記載の方法。
[21] 前記の非炭素/非酸素部分がホウ素、硫黄、窒素およびリンからなる群より選ばれる[3]記載の方法。
[22] 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する[1]記載の方法。
[23] 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である[22]記載の方法。
[24] 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する[2]記載の方法。
[25] 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である[24]記載の方法。
[26] 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する[3]記載の方法。
[27] 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である[26]記載の方法。
本明細書において引用した全ての刊行物は、各刊行物を言及により組み込むと個々に特に述べ、そしてその全体を本明細書に説明したのと同程度に言及により本明細書に組み込まれるものである。

Claims (27)

  1. 癌を発症するリスクのある、または癌を有する動物に、前記癌を予防または治療するのに十分な量のニトロキシドまたはそのプロドラッグを投与することを含む、動物における癌の予防または治療処置方法であって、前記癌は前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグによる予防または治療に感受性である方法。
  2. 前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグが脂環式または複素環式化合物である請求項1記載の方法。
  3. 前記のニトロキシドまたはそのプロドラッグが式IまたはII:
    (式中、RはH、OH、OZ、O・、=OおよびYからなる群より選ばれ、Yは求核剤との反応によってH、OH、O・または=Oに変換され得る脱離基であり、ZはC1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、R、R、RおよびRは、独立して、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基および多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30であり、RとRまたはRとRは、各原子が独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる一または二以上の原子を介して連結されていてもよく、R、R、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル基、C1−20アルデヒド基、C1−20ケト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルファト基、スルフィト基、スルホナト基、スルフィナト基、スルフェナト基、スルファマト基、金属含有基、シリコーン基、ハライド、C1−20エステル含有基、カルボキシル基、ホスファト基、ホスフィノ基、ホスフィナト基、ホスホナト基、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基および−CH−[CR’R”]−CHからなる群より選ばれ、ここでR’は水素、C1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基および多環式芳香族基からなる群より選ばれ、R”は水素、C1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂環式基、非炭素/非酸素部分、炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれ、m≦30であり、R、R、RおよびRのいずれかは、合成または天然由来のポリマーに共有結合によりまたは非共有結合により結合していてもよく、式Iにおいて、RおよびRのうちの一つとRおよびRのうちの一つとは、残りのR基が結合している2個の炭素原子が二重結合で結合するように存在しなくてもよく、式Iにおいてnは0〜20であり、式IIにおいてnは1〜20であり、Xはヘテロ原子であり、R10およびR11は独立してC1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基、C1−20脂肪族/芳香族基、ヘテロ原子基、C1−20エーテル含有基、C1−20ケト基、C1−20アルデヒド基、カルボキサミド基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、セレン含有
    基、スルファト基、スルフィト基、スルフェナト基、スルフィナト基およびスルホナト基からなる群より選ばれ、R10およびR11は脂肪族基および/または芳香族基を介して連結されていてもよく、あるいはR10および/またはR11は炭水化物、脂質、核酸および蛋白質からなる群より選ばれる一種を含んでいてもよい。)の化合物である請求項2記載の方法。
  4. 前記脂肪族基が分枝鎖状、置換および/または不飽和の脂肪族基である請求項3記載の方法。
  5. 前記脂肪族基が、酸素、リン、セレン、硫黄および窒素からなる群より選ばれる一種で置換されている請求項4記載の方法。
  6. 前記芳香族基が、5または6員環を含み、当該5または6員環を構成する5または6個の原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる請求項3記載の方法。
  7. 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる請求項6記載の方法。
  8. 前記の金属含有基の金属が遷移金属およびランタニドからなる群より選ばれる請求項3記載の方法。
  9. 前記芳香族基が置換されている請求項6記載の方法。
  10. 前記芳香族基がヘテロ原子で置換されている請求項9記載の方法。
  11. 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる請求項10記載の方法。
  12. 前記脂環式基が置換および/または不飽和の脂環式基である請求項3記載の方法。
  13. 前記脂環式基がヘテロ原子で置換されている請求項11記載の方法。
  14. 前記アミノ基が置換されている請求項3記載の方法。
  15. 前記アミノ基が、C1−20脂肪族基、単環式芳香族基、二環式芳香族基、多環式芳香族基およびC1−20脂環式基からなる群より選ばれる3個までの置換基で置換されている請求項14記載の方法。
  16. 前記芳香族基が、5または6員環を含み、当該5または6員環を構成する5または6個の原子のそれぞれが独立して炭素およびヘテロ原子からなる群より選ばれる請求項15記載の方法。
  17. 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる請求項16記載の方法。
  18. 前記芳香族基が置換されている請求項15記載の方法。
  19. 前記芳香族基がヘテロ原子で置換されている請求項18記載の方法。
  20. 前記ヘテロ原子が窒素、酸素、硫黄、リンおよびホウ素からなる群より選ばれる請求項19記載の方法。
  21. 前記の非炭素/非酸素部分がホウ素、硫黄、窒素およびリンからなる群より選ばれる請求項3記載の方法。
  22. 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する請求項1記載の方法。
  23. 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である請求項22記載の方法。
  24. 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する請求項2記載の方法。
  25. 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である請求項24記載の方法。
  26. 前記癌が、癌調節遺伝子または癌抑制遺伝子の遺伝子欠陥に起因する請求項3記載の方法。
  27. 前記癌抑制遺伝子がp53遺伝子である請求項26記載の方法。
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