JP2013121271A - 回転電機 - Google Patents

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義仁 三箇
Yoshinari Asano
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Abstract

【課題】電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を低減できる回転電機を提供する。
【解決手段】ティース33の一つの対向面36は、軸Pを中心とした仮想円弧A1に沿う円弧形状と、円弧形状に対して回転子1の回転方向とは反対側において仮想円弧A1よりもバックヨーク30側に近い凹形状37とを有する。凹形状37上のうち固定子3の中心から最も遠い最深点37aは、延在部31の周方向における中心31aから回転方向とは反対側の(30/p)度までの領域内に位置する。
【選択図】図2

Description

本発明は回転電機に関し、特に回転電機が有する固定子の形状に関する。
特許文献1には電動モータが記載されている。当該電動モータは界磁子とアマーチュアを有している。界磁子は一対の永久磁石を有している。アマーチャは10個のティースを有し、当該ティースの先端には切り欠き溝が形成されている。当該切り欠き溝は、回転軸に沿って見て、回転軸を通る所定の直線に対して左右対称となる位置にそれぞれ設けられる。
また本発明に関する技術として特許文献2が開示されている。
特開2003−47184号公報 特開2006−211896号公報
特許文献1ではモータに生じる電磁加振力については考慮されていない。特許文献1では10極のティースに対して2個の永久磁石が例示されており、他の次数に比べて振動の要因となりやすい電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を適切に抑制することはできない。極数及びティースの個数の比と(2p+1)次の高調波成分との関連については実施の形態で述べる。
そこで、本発明は、電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を適切に低減できる回転電機を提供することを目的とする。
本発明にかかる回転電機の第1の態様は、固定子(3)及び回転子(1)を備え、前記回転子は、軸(Q3)を中心とした径方向において前記固定子に対して前記軸側で前記固定子と対面する外周面(11)と、前記軸の周りで環状に配置され、前記軸を中心とした周方向において交互に極性の異なる磁極を発生する2p(pは自然数)個の磁極面(11a〜11d)を前記外周面に形成する複数の永久磁石(12)とを有し、前記固定子は、前記軸を中心とした環状のバックヨーク(30)と、各々が、前記バックヨークから前記回転子へと前記径方向に沿って延在する延在部(31)と、前記延在部の前記バックヨークとは反対側の一端において前記回転子の前記外周面と対面する対向面(36)とを有する3p個のティース(33)と、前記延在部に集中巻きで巻回される巻線(34)とを有し、一の前記ティースの前記対向面は、前記軸を中心とした仮想円弧(A1)に沿う円弧形状と、前記円弧形状に対して前記回転子の回転方向とは反対側において前記仮想円弧よりも前記バックヨーク側に近い凹形状(37)とを有し、前記凹形状上のうち前記固定子の中心から最も遠い最深点(37a)は、前記延在部の前記周方向における中心から、前記回転方向とは反対側の(30/p)度までの領域内に位置する。
本発明にかかる回転電機の第2の態様は、第1の態様にかかる回転電機であって、前記凹形状(37)は、前記最深点(37a)と前記固定子の中心(Q3)を通る直線(B1)に対して対称である。
本発明にかかる回転電機の第3の態様は、第1又は第2の態様にかかる回転電機であって、前記凹形状(37)は円弧に沿う形状を有する。
本発明にかかる回転電機の第4の態様は、第1又は第2の態様にかかる回転電機であって、前記凹形状(37)は前記仮想円弧(A1)上の2点(37b)と前記最深点(37a)とが直線で繋がる形状を有する。
本発明にかかる回転電機の第5の態様は、第1又は第2の態様にかかる回転電機であって、前記凹形状(37)は、前記回転子(1)側に突出する複数の突部を有する櫛歯形状を有し、前記突部の前記回転子側の端面は前記仮想円弧(A1)に沿う。
本発明にかかる回転電機の第6の態様は、第5の態様にかかる回転電機であって、前記突部の前記周方向における幅は、前記最深点(37a)に比べて前記凹形状の前記周方向の両側で広く、前記突部の前記径方向における幅は前記最深点に比べて前記凹形状の前記周方向の両側で狭い。
本発明にかかる回転電機の第7の態様は、第1から第6の何れか一つの態様にかかる回転電機であって、前記対向面(36)の少なくとも一つは、前記軸に垂直な第1断面において前記凹形状(37)を有し、前記軸に垂直で前記第1断面とは異なる第2断面において、その全面が前記仮想円弧(A1)に沿う第2円弧形状を有する。
本発明にかかる回転電機の第8の態様は、第7の態様にかかる回転電機であって、前記対向面(36)の前記少なくとも一つは、前記第1断面に対して前記第2断面とは反対側に位置して前記軸に垂直な第3断面において、前記第2円弧形状を有する。
本発明にかかる回転電機の第9の態様は、第7又は第8の態様にかかる回転電機であって、前記バックヨーク(30)及び前記ティース(33)は前記軸に沿う軸方向において連結される複数のコア部(35A,35B)から形成され、前記第1断面及び前記第2断面は、複数のコア部のうちそれぞれ第1及び第2のコア部に位置し、前記第1のコア部において、前記ティース(33)の全ての前記対向面(36)が前記凹形状(37)を有し、前記第2のコア部において、前記ティースの全ての前記対向面が前記第2円弧形状を有する。
本発明にかかる回転電機の第10の態様は、第7又は第8の態様にかかる回転電機であって、前記バックヨーク(30)及び前記ティース(33)は、前記軸に沿う軸方向に積層される複数の電磁鋼板から形成され、前記複数の電磁鋼板は互いに同一形状を有し、前記複数の電磁鋼板の各々において、前記ティースのうち少なくも一つ(33B)に属する前記対向面は前記凹形状を有し、他の少なくとも一つ(33A)に属する前記対向面は前記第2円弧形状を有し、前記複数の電磁鋼板の各々は、前記軸方向で見て、その一つ下層の電磁鋼板を120/p度回転した形状と一致する。
本発明にかかる回転電機の第1の態様によれば、回転電機の電気装荷が大きくなるにつれて、(2p+1)次の電磁加振力が最大となる位置が、延在部の周方向における中心から回転方向とは反対側の(360/3/p/4)度までの領域内で変化する。本回転電機によれば、最深点が当該領域に位置するので、適切に(2p+1)次の電磁加振力の最大値を低減することができる。
本発明にかかる回転電機の第2の態様によれば、(2p+1)次の電磁加振力は、その最大値の近辺において、その最大値を中心として周方向で対称である。よって、(2p+1)次の電磁加振力の波形に応じてこれを低減することができる。
本発明にかかる回転電機の第3の態様によれば、凹形状が滑らかに変化するので、他の次数の電磁加振力の増大を招きにくい。
本発明にかかる回転電機の第4の態様によれば、2点及び中心以外は凹形状が滑らかに変化するので、他の次数の電磁加振力の増大を招きにくい。
本発明にかかる回転電機の第5の態様によれば、突部の端面が仮想円弧に沿うので、当該端面と回転子との間でエアギャップを測定しやすい。
本発明にかかる回転電機の第6の態様によれば、固定子との間の平均的な磁気抵抗を最深点において高めることができ、しかもその平均的な磁気抵抗が周方向で滑らかに変化する。よって、他の次数の電磁加振力を低減しつつ、(2p+1)次の電磁加振力を低減できる。
本発明にかかる回転電機の第7の態様によれば、第2断面において対向面の全面が軸を中心とした円弧に沿うので、エアギャップを測定しやすい。
本発明にかかる回転電機の第8の態様によれば、軸方向において互いに離れた断面においてエアギャップを測定することができるので、回転子の傾きを調整しやすい。
本発明にかかる回転電機の第9の態様によれば、従来の第2形状を有する第2コア部を用いることができる。
本発明にかかる回転電機の第10の態様によれば、同一形状の電磁鋼板を用いつつも、第7又は第8の態様にかかる回転電機を実現することができる。
回転電機の概念的な構成の一例を示す断面図である。 一つのティースの概念的な構成の一部の一例を示す断面図である。 回転子が振れ回りを伴って回転する様子を示す図である。 回転子が振れ回りを伴って回転する様子を示す図である。 回転子が振れ回りを伴って回転する様子を示す図である。 回転子が振れ回りを伴って回転する様子を示す図である。 電磁加振力の一例を示す図である。 回転電機の概念的な構成の一例を示す断面図である。 一つのティースの概念的な構成の一例を示す図である。 一つのティースの概念的な構成の一例を示す図である。 一つのティースの概念的な構成の一例を示す図である。 固定子用コアの概念的な構成の一例を示す断面図である。 固定子用コアと回転子との概念的な構成の一例を示す斜視図である。 固定子用コアの概念的な構成の一例を示す断面図である。 固定子用コアの概念的な構成の一例を示す断面図である。
第1の実施の形態.
<回転電機>
図1に例示するように、本回転電機は回転子1と固定子3とを備える。なお図1では、回転軸Pに垂直な所定の断面における回転電機の概念的な構成の一例が示されている。また以下では、回転軸Pを中心とした径方向を単に径方向と呼び、回転軸Pを中心とした周方向を単に周方向と呼び、回転軸Pに沿う方向を軸方向と呼ぶ。
回転子1と固定子3とは径方向においてエアギャップを介して互いに対面する。より詳細には、固定子3は回転子1に対して回転軸Pとは反対側において回転子1と対向する。なお、ここでは回転軸Pは固定子3の中心Q3に相当すると把握する。
回転子1は外周面11を有している。外周面11は径方向において固定子3とエアギャップを介して対面する。図1の例示では、外周面11は回転子用コア10によって形成されている。回転子用コア10は軟磁性体(例えば鉄)で構成され、例えば略円柱状の形状を有している。よって図1の例示では外周面11は略円形状を有している。
また回転子1は複数の永久磁石12を備えている。複数の永久磁石12は例えば希土類磁石(例えばネオジム、鉄およびホウ素を主成分とした希土類磁石)であって、回転軸Pの周りで環状に配置される。図1の例示では、複数の永久磁石12は回転子用コア10に設けられた格納孔に格納される。また図1の例示では、各永久磁石12は直方体状の板状形状を有している。各永久磁石12は、周方向における自身の中央において、その厚み方向が径方向に沿う姿勢で配置される。なお各永久磁石12は必ずしも図1に示す形状で配置される必要はない。各永久磁石12は、例えば軸方向に見て、回転軸Pとは反対側(以下、外周側とも呼ぶ)若しくは回転軸P側(以下、内周側とも呼ぶ)へと開口するV字形状、又は外周側若しくは内周側へと開口する円弧状の形状を有していてもよい。
複数の永久磁石12は周方向において交互に異なる磁極を発生する2p(pは自然数)個の磁極面を外周面11に形成する。図1の例示では、4個の永久磁石12が設けられており、これら4個の永久磁石12が周方向において交互に異なる極性の磁極面を外周面11に向けて配置される。これにより、外周面11には4個の磁極面11a〜11dが形成される。例えば、正極の磁極面を外周面11に向けて配置された2つの永久磁石12が、それぞれ外周面11に正極の磁極面11a,11cを形成し、負極の磁極面を外周面11に向けて配置された2つの永久磁石12がそれぞれ外周面11に負極の磁極面11b,11dを形成する。
図1の例示では4つの永久磁石12(いわゆる4極の回転子1)が例示されているが、回転子1は2個の永久磁石12を有していてもよく、6個以上の永久磁石12を有していてもよい。また図1の例示では、4つの永久磁石12の各々が一つの磁極面を形成しているが、例えば一つの磁極面が複数の永久磁石12によって形成されていてもよい。言い換えれば、図1における永久磁石12の各々が複数の永久磁石に分割されていてもよい。
図1の例示では、回転子用コア10には永久磁石12の周方向における両側において空隙13,14が形成されている。空隙13は永久磁石12の両側から外周面11側に延在する。空隙13は、永久磁石12の外周側の磁極面と内周側の磁極面との間で磁束が短絡することを抑制する。同じ磁極面に近接して設けられる空隙13,14についてみれば、空隙14は空隙13に対して磁極中心側に位置している。また空隙14の径方向における幅は磁極中心に向かうに従って低減する。かかる空隙14によって外周面11の磁束密度の形状をより正弦波に近づけることができる。なお、空隙13,14は互いに離間することなく、連続していても良い。
回転子用コア10は例えば軸方向に積層された電磁鋼板で構成されてもよい。これにより回転子用コア10の軸方向における電気抵抗を高めることができ、以って回転子用コア10を流れる磁束に起因した渦電流の発生を低減することができる。また回転子用コア10は、意図的に電気的絶縁物(例えば樹脂)を含んで形成される圧粉磁心によって構成されてもよい。絶縁物が含まれているので圧粉磁心の電気抵抗は比較的高く、以って渦電流の発生を低減できる。
また図1の例示では、外周面11が回転子用コア10によって形成されているものの、永久磁石12によって形成されていてもよい。言い換えれば、回転子1は埋込型の回転子でなくてもよく、永久磁石12が回転子用コアの表面に取り付けられる表面取付型の回転子であってもよい。
固定子3は固定子用コア35と電機子巻線34とを備えている。固定子用コア35は軟磁性体(例えば鉄)で構成され、バックヨーク30と3p個のティース33とを備えている。バックヨーク30は回転軸Pを中心とした環状の形状を有している。3p個のティース33は回転軸Pを中心として放射状に配置されている。バックヨーク30は、ティース33の径方向における両端のうち回転子1とは反対側の一端同士を連結する。
電機子巻線34は径方向を軸としてティース33に集中巻きで巻回される。なお、本願では特に断らない限り、電機子巻線は、これを構成する導線の一本一本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指す。これは図面においても同様である。また、巻き始め及び巻き終わりの引き出し線、及びそれらの結線も図面においては省略した。
かかる回転電機において、電機子巻線34に適切に電流を流すことで、固定子3は回転子1へと回転磁界を印可することができる。回転子1は印加された回転磁界に応じて回転する。ここでは、回転子1は図において反時計回りの方向に回転する。
次に、図2も参照して、ティース33の形状について更に詳細に説明する。図2は、一つのティース33とこれと対向する回転子1の一部とを模式的に示している。
ティース33は延在部31と対向面36とを有している。延在部31はバックヨーク30から回転軸Pへと径方向に沿って回転子1側へと延在する。対向面36はバックヨーク30とは反対側の延在部31の端面であって、回転子1と径方向で対面する面である。図2の例示では、対向面36は鍔部32によって形成されている。鍔部32はバックヨーク30とは反対側で延在部31と連続している。また鍔部32は延在部31から周方向の互いに反対の二方向に広がっている。かかる鍔部32によって、電機子巻線34の巻き崩れを抑制することができる。
対向面36は円弧形状38と凹形状37とを有している。円弧形状38は、固定子3の中心Q3を中心とした仮想円弧A1に沿う形状である。凹形状37は、円弧形状38に対して回転子1の回転方向とは反対側において、仮想円弧A1よりもバックヨーク30に近い形状である。換言すれば、凹形状37は仮想円弧A1に対してバックヨーク30側に後退している。更に言い換えれば、凹形状37は仮想円弧A1に対して回転軸Pよりも遠い側で凹む。
したがって、凹形状37における回転子1と固定子3との間のエアギャップは、円弧形状38における回転子1と固定子3との間のエアギャップよりも広い。
また凹形状37のうち回転軸Pから最も遠い最深点37aは、周方向において次で説明する領域θに位置する。即ち、当該領域θは、延在部31の周方向における中心31aと、回転軸Pを中心として当該中心31aを回転子1の回転方向とは反対側に(30/p)度回転して得られる位置とによって規定される。
この形状によって、(2p+1)次の電磁加振力を適切に低減することができる。以下、(2p+1)次の電磁加振力について説明する。
<回転子の回転動作と電磁加振力>
上述したように回転子1は固定子3によって印加される回転磁界に応じて回転する。より詳細には、回転子1は振れ回りを伴って回転する。ここでいう振れ回りとは回転子1の中心Q1が固定子3の中心Q3の周りを回転する公転動作を意味する。かかる振れ回りは、回転子1が停止した状態における中心Q1と中心Q3とのずれ、回転子1の重量バランス、回転子1が駆動する負荷(例えば不図示の圧縮機)の重量バランス、或いは不図示のシャフトの剛性などに起因して生じる。
以下ではまず、振れ回りを伴う回転子1の回転について従来の回転電機を用いて説明する。図3〜図6の例示では、回転子1が振れ回りを伴って回転する様子の一例を示している。図3〜図6の例示では、回転子1を簡略して示し、また回転子1の中心Q1と固定子の中心Q3とのずれは実際には0.1mm程度であるものの、このずれを誇張して示している。
図3〜図6の例示では、従来の固定子におけるティース33の内接円を破線で示している。従来の固定子におけるティース33の対向面36は仮想円弧A1に沿う形状を有している。また図X(Xは5,6又は7)は、図(X−1)に対して回転子1が反時計回り方向に90度回転した場合の様子を示している。図3〜6に示すように、回転子1は、その中心Q1が固定子3の中心Q3の周りを回転しつつ(即ち公転しながら)、中心Q1の周りを自転する。
さて、回転磁界によって回転する回転子1においては、図3〜6に示すように、回転子1が自転すれば回転子1の中心Q1もほぼ同じ角度だけ回転する。つまり、回転子1の自転と公転とがほぼ同期する。例えば図3から図4へと回転子1が90度自転したときには、中心Q1も中心Q3の周りを90度回転する。
例えばこのような振れ回りを伴う回転子1の回転によって、本回転電機には電磁加振力が生じる。これは次の理由による。即ち、図3〜6に例示する振れ回りを伴った回転によって、エアギャップによる磁気抵抗が不均一となり、これによって回転子1と固定子3との間の磁束密度に高調波成分が生じる。電磁加振力は磁束密度の2乗に基づいて表現されるので、磁束密度の高調波成分によって電磁加振力にも高調波成分が生じる。
このような電磁加振力のうち、特に(2p+1)次の高調波成分は他の次数に比べて振動や騒音を招く。(2p+1)次の電磁加振力は分布巻では問題のない程度に生じるところ、電機子巻線34が集中巻で巻回された場合に、より増大して生じる。よって集中巻で巻回される本回転電機において特に(2p+1)次の電磁加振力の低減が望まれる。
図7は、従来の回転電機に生じる(2p+1)(ここでは5)次の高調波成分のシミュレーション結果を示している。横軸は回転子1の回転角度である。つまり、回転子1がある回転角度に位置する時点において回転電機に生じる(2p+1)次の電磁加振力がプロットされており、順次に回転角度を変えて(2p+1)次の電磁加振力がプロットされている。また図7においては、4つの曲線が示されている。これらの曲線の別は電気装荷の大小による。図7の例示では、電機子巻線34に流れる電流の振幅が共通して3アンペアであり、負荷が大きくなることによって電気装荷が増大する影響を示す。具体的には当該電流の位相が20度、40度、60度、80度である場合のシミュレーション結果が、それぞれ実線、破線、一点鎖線、二点鎖線で示されている。
図8は、図7の結果の固定子3との位置関係を示すべく、図7の結果を回転子1上で表現したものである。図8の例示から理解できるように、5次の電磁加振力は、回転角において約60度ごとに最大値を採る。これは極数とスロット数との比が2対3であることに由来することを本願出願人は確認している。例えば極数が8でありスロット数が6である場合には9次の電磁加振力は回転角度の18カ所でピークを採り、その相互間でボトムを採る形状を有する。したがって、図7のような関係を採らない。
さて、図8から理解できるように、5次の電磁加振力の最大値は、電気装荷の大小に応じて、延在部31の周方向における中心31aから、回転子1の回転方向とは反対側の15度までの領域(即ち領域θ)内を変動する。
一方、本実施の形態にかかる回転電機によれば、凹形状37の最深点37aが当該領域内に存在する。したがって、5次の電磁加振力の最大値に応じて、固定子3と回転子1とのエアギャップを増大させることができる。これにより、5次の電磁加振力の最大値を効率的に低減することができる。
なお図1の例示では、全てのティース33の対向面36が凹形状37を有しているものの、必ずしもこれに限らない。ティース33の何れか一つが有していても良い。ただし、ティース33の全ての対向面36が凹形状37を有していれば、(2p+1)次の電磁加振力の低減効果を高めることができる。
最深点37aと回転軸Pとの間の距離は長い方が望ましい。エアギャップが大きくなれば、(2p+1)次の電磁加振力の最大値の低減量が高まるからである。
なお図8の例示では、極数が4であり、スロット数が6である場合のシミュレーション結果であるので、5次の電磁加振力の最大値はそれぞれティースの中心から15度の範囲内に位置する。極数が2pであり、スロット数が3pである場合には、その相似を考慮すれば、(2p+1)次の電磁加振力の最大値はそれぞれティースの中心から30/n度の範囲内に位置することが理解できる。
図1,2に例示するように、凹形状37は最深点37aと固定子3の中心Q3とを通る直線B1に対して対称であってもよい。なぜなら、(2p+1)次の電磁加振力はその最大値を中心とする一周期内において、ほぼ対称となるからである。これにより、(2p+1)次の電磁加振力の波形に応じてこれを低減することができる。
図1の例示では、凹形状37は所定の円弧に沿う円弧形状を有している。この所定の円弧は仮想円弧A1の半径よりも小さい半径を有する。凹形状37が円弧形状を有しているので、固定子3と回転子1とのエアギャップが、円弧形状38と凹形状37との間の境界を除いて、周方向において滑らかに変化する。したがって、凹形状37において当該エアギャップが急峻に変化する場合に比べて、他の次数の電磁加振力の増大を抑制できる。
<対向面36の形状の他の例>
図9に例示するティース33は対向面36の形状という点を除いて図2に例示するティース33と同様である。対向面36は、凹形状37に対して円弧形状38とは反対側において仮想円弧A1に沿う形状39を更に有していてもよい。これによっても上述と同様にして、(2p+1)次の電磁加振力を低減できる。
図10に例示するティース33は、対向面36の形状という点を除いて図2に例示するティース33と同様である。図10の対向面36において、凹形状37は、仮想円弧A1状の二点37bと最深点37aとを繋ぐ直線形状を有している。なお図10の例示では、円弧形状38と凹形状37とは二点37bの一方を介して互いに連続している。
かかる対向面36の形状でも、最深点37aと回転子1との間のエアギャップが、従来の回転電機における当該エアギャップよりも広い。よって、第1の実施の形態と同様に電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を低減することができる。しかも、最深点37a、および円弧形状38と凹形状37との境界(即ち二点37bの一方)以外は対向面36の形状が滑らかに変化するので、他の次数の電磁加振力の増大を招きにくい。
図11に例示するティース33は、対向面36の形状という点を除いて図2に例示するティース33と同一である。対向面36は軸方向から見て回転子1側に突出する複数の突部を有する櫛歯形状を有している。当該突部の回転子1側の端面は仮想円弧A1に沿っている。
また図11の例示では、各突部の周方向における幅は、凹形状37の中央に比べてその両側で広く、各突部の径方向における幅(深さ)は凹形状37の中央に比べてその両側で狭い(浅い)。これにより、対向面36と回転子1との間の平均的なエアギャップが、周方向において例えば図2の凹形状37と略同一形状を有する。
かかる対向面36の形状によっても、対向面36と回転子1との間のエアギャップが、最深点37aの付近において従来の回転電機における当該エアギャップよりも広い。なお、ここでいう最深点37aとは、凹形状37の周方向における中央付近において突部の根元に相当する。したがって、第1の実施の形態と同様に電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を低減することができる。また平均的なエアギャップが図1の凹形状37に沿う形状を有していれば、他の次数の高調波成分の増大を抑制することができる。しかも、突部の端面が仮想円弧A1に沿うので、対向面36と回転子1との間のエアギャップを測定しやすい。
第2の実施の形態.
第2の実施の形態においては、ティース33の少なくとも一つの対向面36の形状は、軸方向の第1断面において第1の実施の形態で述べた形状(例えば図2,10,11)を有し、軸方向の第2断面において仮想円弧A1に沿う形状を有している。以下、図12,13も参照して本回転電機の具体例について説明する。
例えば図13に示すように、固定子用コア35は固定子用コア部35A,35Bを有する。かかる固定子用コア部35Bにおいては、図1に例示するように3p個のティース33の全ての対向面36が第1の実施の形態で述べた形状を有し、固定子用コア部35Aにおいては、図12に例示するように、3p個のティース33の全ての対向面36が仮想円弧A1に沿う形状を有する。
かかる固定子用コア部35A,35Bが互いに軸方向で連結されて固定子用コア35が形成される。図13の例示では、例えば一つの固定子用コア部35Aと一つの固定子用コア部35Bとが軸方向で互いに連結される。
かかる固定子用コア部35Aにおいては、対向面36が仮想円弧A1に沿うので対向面36と回転子1との間のエアギャップを測定しやすい。図13の例示では、対向面36と回転子1との間のエアギャップを測定するエアギャップゲージ50も示されている。したがって、本回転電機によれば、固定子用コア部35Bによって電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を低減できるとともに、固定子用コア部35Aによって対向面36と回転子1との間のエアギャップを測定しやすい。
また図13に示すように、2つの固定子用コア部35Bが軸方向で一つの固定子用コア部35Aを挟む位置関係で、固定子用コア部35A,35Bが連結されてもよい。かかる固定子用コア35によれば、対向面36は、第1断面に対して第2断面とは反対側に位置して回転軸Pに垂直な第3断面において、仮想円弧A1に沿う形状を有する。なお、2つ以上の固定子用コア部35Aと2つ以上の固定子用コア部35Bとが軸方向で互いに交互に連結されてもよい。
かかる固定子用コア35によれば、軸方向における相互に反対側に位置する2カ所でエアギャップを測定することができる。よって、回転子1と固定子3との間の傾きを調整しやすい。
次に、固定子用コア35の他の例について説明する。ここでは、固定子用コア35は軸方向に沿う複数の電磁鋼板によって形成される。例えば各電磁鋼板は図14に示す形状を有している。図14に例示するように、3p個のティース33のうち少なくとも一つのティース33Bの対向面36は、第1の実施の形態で述べた形状を有し、他のティース33Aの対向面36は仮想円弧A1に沿う形状を有している。図14の例示では、一つのティース33Aと(3p−1)個のティース33Bが設けられている。
そして、本固定子用コア35は、図14に例示する電磁鋼板を以下で述べるように回転させつつ積層することで形成される。即ち、電磁鋼板の各々はその下層の電磁鋼板に対して120/p度回転した形状と一致する。例えば図15の電磁鋼板は、図14の電磁鋼板に対して、回転軸Pを中心として60度回転させたものである。
したがって、積層後の固定子用コア35において、所定の一つのティース33の対向面36は、所定の電磁鋼板において第1の実施の形態で述べた形状を有し、別の電磁鋼板において仮想円弧A1に沿う形状を有する。図14の例示では、連続する5枚の電磁鋼板において所定の一つのティース33の対向面36が第1の実施の形態で述べた形状を有し、その次の電磁鋼板において仮想円弧A1に沿う形状を有する。よって、電磁加振力の(2p+1)次の高調波成分を低減するとともに、対向面36と回転子1との間のエアギャップの測定を容易とすることができる。
しかも、同一形状の電磁鋼板を用いて固定子用コア35を形成できる。したがって、電磁鋼板を作成する際に用いる打ち抜き部材として、複数種類の打ち抜き部材を作成する必要がなく、製造を容易にできる。
1 回転子
3 固定子
11 外周面
11a〜11d 磁極面
20 永久磁石
30 バックヨーク
33,33A,33B ティース
35A,35B コア部
36 対向面
37 凹形状
37a 最深点
38 円弧形状

Claims (10)

  1. 固定子(3)及び回転子(1)を備え、
    前記回転子は、
    軸(Q3)を中心とした径方向において前記固定子に対して前記軸側で前記固定子と対面する外周面(11)と、
    前記軸の周りで環状に配置され、前記軸を中心とした周方向において交互に極性の異なる磁極を発生する2p(pは自然数)個の磁極面(11a〜11d)を前記外周面に形成する複数の永久磁石(12)と
    を有し、
    前記固定子は、
    前記軸を中心とした環状のバックヨーク(30)と、
    各々が、前記バックヨークから前記回転子へと前記径方向に沿って延在する延在部(31)と、前記延在部の前記バックヨークとは反対側の一端において前記回転子の前記外周面と対面する対向面(36)とを有する3p個のティース(33)と、
    前記延在部に集中巻きで巻回される巻線(34)と
    を有し、
    一の前記ティースの前記対向面は、前記軸を中心とした仮想円弧(A1)に沿う円弧形状と、前記円弧形状に対して前記回転子の回転方向とは反対側において前記仮想円弧よりも前記バックヨーク側に近い凹形状(37)とを有し、
    前記凹形状上のうち前記固定子の中心から最も遠い最深点(37a)は、前記延在部の前記周方向における中心から、前記回転方向とは反対側の(30/p)度までの領域内に位置する、回転電機。
  2. 前記凹形状(37)は、前記最深点(37a)と前記固定子の中心(Q3)を通る直線(B1)に対して対称である、請求項1に記載の回転電機。
  3. 前記凹形状(37)は円弧に沿う形状を有する、請求項1又は2に記載の回転電機。
  4. 前記凹形状(37)は前記仮想円弧(A1)上の2点(37b)と前記最深点(37a)とが直線で繋がる形状を有する、請求項1又は2に記載の回転電機。
  5. 前記凹形状(37)は、前記回転子(1)側に突出する複数の突部を有する櫛歯形状を有し、前記突部の前記回転子側の端面は前記仮想円弧(A1)に沿う、請求項1又は2に記載の回転電機。
  6. 前記突部の前記周方向における幅は、前記最深点(37a)に比べて前記凹形状の前記周方向の両側で広く、前記突部の前記径方向における幅は前記最深点に比べて前記凹形状の前記周方向の両側で狭い、請求項5に記載の回転電機。
  7. 前記対向面(36)の少なくとも一つは、前記軸に垂直な第1断面において前記凹形状(37)を有し、前記軸に垂直で前記第1断面とは異なる第2断面において、その全面が前記仮想円弧(A1)に沿う第2円弧形状を有する、請求項1から6の何れか一つに記載の回転電機。
  8. 前記対向面(36)の前記少なくとも一つは、前記第1断面に対して前記第2断面とは反対側に位置して前記軸に垂直な第3断面において、前記第2円弧形状を有する、請求項7に記載の回転電機。
  9. 前記バックヨーク(30)及び前記ティース(33)は前記軸に沿う軸方向において連結される複数のコア部(35A,35B)から形成され、
    前記第1断面及び前記第2断面は、複数のコア部のうちそれぞれ第1及び第2のコア部に位置し、
    前記第1のコア部において、前記ティース(33)の全ての前記対向面(36)が前記凹形状(37)を有し、前記第2のコア部において、前記ティースの全ての前記対向面が前記第2円弧形状を有する、請求項7又は8に記載の回転電機。
  10. 前記バックヨーク(30)及び前記ティース(33)は、前記軸に沿う軸方向に積層される複数の電磁鋼板から形成され、
    前記複数の電磁鋼板は互いに同一形状を有し、
    前記複数の電磁鋼板の各々において、前記ティースのうち少なくも一つ(33B)に属する前記対向面は前記凹形状を有し、他の少なくとも一つ(33A)に属する前記対向面は前記第2円弧形状を有し、
    前記複数の電磁鋼板の各々は、前記軸方向で見て、その一つ下層の電磁鋼板を120/p度回転した形状と一致する、請求項7又は8に記載の回転電機。
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