図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1の正面断面図に示すように、構造部材としての梁10は、木製部材としての梁本体12と、梁本体12を貫通する貫通孔14と、貫通孔14の周囲に設けられた燃え止まり部としての管部材16とを有している。貫通孔14は、50〜100mm程度の孔径を有しており、設備配管を通して配置するために設けられている。
梁本体12は、荷重を支持する荷重支持部としての木製の梁心材18と、梁心材18の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層20と、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層22とによって構成されている。すなわち、燃え代層22は、梁本体12の表層を構成し、燃え止まり層20は、燃え代層22の内側に配置され、梁心材18は、燃え止まり層20の内側に配置されている。燃え止まり層20は、熱吸収性を有する。
図1には、一般木材によって形成された板部材30と、モルタルによって形成された板部材32とを交互に配置することにより、燃え止まり層20を形成している例が示されている。図1に示すように、貫通孔14は、梁本体12の右側面24から左側面26へ、燃え代層22、燃え止まり層20、梁心材18、燃え止まり層20、燃え代層22をこの順に貫通している。梁心材18は、鉄筋コンクリート等の耐火部材によって形成された床版28を支持し、床版28は、燃え代層22、燃え止まり層20、及び梁心材18の上面を覆っている。
管部材16は、モルタルによって形成されており、図1のA−A矢視図である図2(a)、及び図1のB−B断面図である図2(b)に示すように、管部材16の外面と、梁心材18に形成された貫通孔36の内面との間には、モルタル、耐火性を有する材料等の充填材34が充填されている。管部材16は、梁本体12の内部(燃え止まり層20の内側)に配置されている。
梁10は、例えば、図3(a)〜(d)の正面断面図に示す手順によって組み立てる。まず、図3(a)に示すように、貫通孔36へ、この貫通孔36と略等しい長さの管部材16を挿入する。そして、梁心材18の左右側面から管部材16の左右端部が突出しないようにして、貫通孔36内へ管部材16を配置する。
次に、図3(b)に示すように、貫通孔36の内面と、管部材16の外面との間に、充填材34を充填し硬化させる。次に、図3(c)に示すように、燃え止まり層20を構成する部材を接着剤等によって梁心材18に接着し、梁心材18の側面と下面とを取り囲むようにして燃え止まり層20を形成する。このとき、管部材16の開口部38を塞がずに管部材16の端面40を燃え止まり層20で覆うようにする。次に、図3(d)に示すように、燃え代層22を構成する部材を接着剤等によって燃え止まり層20に接着し、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲むようにして燃え代層22を形成する。
次に、第1の実施形態の作用と効果について説明する。図1に示すように、梁本体12では、火災が発生したときに火炎が燃え代層22に着火し、燃え代層22が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層22は炭化する。これにより、燃え代層22の外側から内側(梁心材18)への熱伝達を炭化した燃え代層22が遮断する。また、燃え代層22の外側から内側(梁心材18)へ進入する熱を燃え止まり層20が吸収する。また、燃え代層22の外側から内側(梁心材18)への火炎及び熱の進入が燃え止まり層20によって抑えられる。これらにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材18の温度上昇を抑制することができ、梁心材18を燃焼させずに燃え代層22もしくは燃え止まり層20で燃え止まらせることができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材18を着火温度未満に抑え、梁心材18を燃焼させずに燃え止まらせて、構造部材として機能させることができる。
また、梁10では、火災時において、貫通孔14へ進入した火炎及び熱の梁心材18への進入が、燃え止まり部としての管部材16によって抑えられ、管部材16で燃え止まるので、梁本体12に貫通孔14を形成したことによる耐火性の低下を低減できる。また、燃え止まり層20によって、貫通孔14へ進入しようとする熱が貫通孔14の入口部で吸収されるので、貫通孔14へ進入する熱を低減することができる。
また、梁10に形成された貫通孔14に設備配管を通して配置することにより、梁10の下に設備配管を配置する必要がなくなり、建物の階高を低く抑えることができる。これにより、仕上げ工事、躯体工事、設備工事等に関わる建設イニシャルコストを低く抑えることができる。また、同じ建物高さにおいて、多くの階を設けることができる。また、同じ階数を有する建物において、建物の容積を減らすことができ、設備機器によってコントロールする空間を減らすことができるので、設備・環境負荷低減によるランニングコストを低く抑えることができる。
また、燃え止まり部としての管部材16が梁本体12の内部に配置されているので、燃え止まり部を設けることによって梁10の美観が損なわれることを防ぐことができる。
以上、第1の実施形態について説明した。なお、第1の実施形態では、燃え代層22及び梁心材18を木製とした例を示したが、燃え代層22及び梁心材18は、木材によって形成されていればよい。例えば、燃え代層22及び梁心材18は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
また、第1の実施形態では、燃え止まり層20を、熱吸収性を有する層とした例を示したが、燃え止まり層20は、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる層であればよい。例えば、燃え止まり層20は、難燃性を有する層や熱の吸収が可能な層であればよい。
難燃性を有する層としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入層が挙げられる。熱の吸収が可能な層は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。また、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを組み合わせて(例えば、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを交互に配置して)燃え止まり層20を形成してもよい。
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
また、第1の実施形態では、燃え止まり部としての管部材16をモルタルによって形成した例を示したが、管部材16は、所定の時間、燃え止まる材料によって形成されていればよい。管部材16は、難燃性材料によって形成するのが好ましい。例えば、管部材16は、難燃性や熱吸収性を有する部材であればよく、先に挙げた燃え止まり層20の形成を可能とする材料を用いることができる。管部材16を、熱吸収性を有する部材とすれば、貫通孔14へ進入した熱を吸収することにより、燃え止まり部としての管部材16での燃え止まり効果を向上させることができる。
また、燃え止まり部を耐火塗料としてもよい。すなわち、梁心材18に形成された貫通孔36の内面に耐火塗料を塗布することによって燃え止まり部を形成してもよい。また、管部材16を繊維補強モルタル(合成樹脂や鋼繊維などを混合して補強されたモルタル)によって形成してもよい。
また、図4の正面断面図に示す梁42ように、管部材16の内側に木製の燃え代層44を形成するようにしてもよい。燃え代層44は、燃え代層22と同様の材料を用いることができる。このようにすれば、燃焼し炭化した燃え代層44により、燃え代層44の外側から内側(梁心材18)への熱伝達と酸素供給とを、炭化した燃え代層44が遮断する。また、燃え代層44の外側から内側(梁心材18)へ進入する熱を管部材16が吸収する。また、燃え代層44の外側から内側(梁心材18)への火炎及び熱の進入が管部材16によって抑えられる。図4において、炭化による十分な燃え止まり効果が得られる厚さを燃え代層44が有していれば、管部材16を設けずに、燃え代層44を燃え止まり部としてもよい。
また、第1の実施形態では、管部材16の外面と貫通孔36の内面との間に、モルタル、耐火性を有する材料等の充填材34を充填した例を示したが、充填材34は、管部材16の外面と貫通孔36の内面との間の隙間を塞いで、管部材16の外面と貫通孔36の内面との間から火炎や熱が進入するのを防ぐものであればよい。充填材34を難燃性材料とするが好ましい。また、管部材16の外面を貫通孔36の内面に密着するように設けてもよい。例えば、梁心材18に形成された貫通孔36へ管部材16を嵌入してもよい。
また、第1の実施形態では、図3(a)に示すように、梁心材18に形成した貫通孔36へ管部材16を挿入することにより貫通孔14の周囲に管部材16を設けた例を示したが、図5(a)〜(d)の正面断面図に示す梁48の組み立て手順によって、貫通孔14の周囲に管部材46を形成するようにしてもよい。梁48の組み立ては、まず、図5(a)に示すように、梁心材18に形成した貫通孔36へ、この貫通孔36よりも長い柱状の型枠部材50を挿入する。そして、梁心材18の左右側面から型枠部材50の左右端部を突出させて、管部材46に必要とされる厚さと等しい大きさの隙間を、型枠部材50の外面と貫通孔36の内面との間に形成するようにして、貫通孔36内へ型枠部材50を配置する。
次に、図5(b)に示すように、型枠部材50の外面と、貫通孔36の内面との間に形成された隙間にモルタルを打設し硬化させて、管部材46を形成する。次に、図5(c)に示すように、型枠部材50を脱型した後に、燃え止まり層20を構成する部材を接着剤等によって梁心材18に接着し、梁心材18の側面と下面とを取り囲むようにして燃え止まり層20を形成する。このとき、管部材16の開口部54を塞がずに管部材46の端面52を燃え止まり層20で覆うようにする。次に、図5(d)に示すように、燃え代層22を構成する部材を接着剤等によって燃え止まり層20に接着し、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲むようにして燃え代層22を形成する。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図6の正面断面図、図6のC−C矢視図である図7(a)、及び図6のD−D断面図である図7(b)に示すように、構造部材としての梁56に形成された貫通孔14の周囲には、燃え止まり部としてのロックウールからなるウール状部材58が設けられている。ウール状部材58は、貫通孔36内に配置された鋼管60の外面と、貫通孔36の内面との間に詰め込まれて配置されている。すなわち、ウール状部材58は、管状の保持部材としての鋼管60によって、貫通孔14の周囲(貫通孔36の内面)に保持されている。ウール状部材58及び鋼管60は、梁本体12の内部(燃え止まり層20の内側)に配置されている。
梁56は、例えば、図8(a)〜(d)の正面断面図に示す手順によって組み立てる。まず、図8(a)に示すように、梁心材18に形成した貫通孔36へ、この貫通孔36と略等しい長さの鋼管60を挿入する。そして、梁心材18の左右側面から鋼管60の左右端部が突出しないようにして、貫通孔36内へ鋼管60を配置する。
次に、図8(b)に示すように、貫通孔36の内面と、鋼管60の外面との間に、ウール状部材58を詰め込んで燃え止まり部を形成する。次に、図8(c)に示すように、燃え止まり層20を構成する部材を接着剤等によって梁心材18に接着し、梁心材18の側面と下面とを取り囲むようにして燃え止まり層20を形成する。このとき、鋼管60の開口部62を塞がずに鋼管60の端面64を燃え止まり層20で覆うようにする。次に、図8(d)に示すように、燃え代層22を構成する部材を接着剤等によって燃え止まり層20に接着し、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲むようにして燃え代層22を形成する。
次に、第2の実施形態の作用と効果について説明する。図6に示すように、梁56では、火災時において、貫通孔14へ進入した火炎及び熱の梁心材18への進入が、燃え止まり部としてのウール状部材58によって抑えられ、ウール状部材58で燃え止まるので、梁本体12に貫通孔14を形成したことによる耐火性の低下を低減できる。
また、ウール状部材58は塊として拡縮するので、火災時の乾燥収縮などにより梁本体12の形状が変化して、貫通孔36の内面内側に隙間が形成されるような場合においても、ウール状部材58の塊が外側(梁心材18側)へ向かって拡がってこの隙間を塞ぐことができる。また、鋼管60を設けることにより、貫通孔14へ進入した火炎や熱が燃え止まり部(ウール状部材58)に直接当たることを防ぎ、燃え止まり部での燃え止まり効果を向上させることができる。
以上、第2の実施形態について説明した。なお、第2の実施形態では、ウール状部材58をロックウールとした例を示したが、ウール状部材58は、所定の時間、燃え止まり効果を発揮できる材料であればよく、難燃性材料が好ましい。例えば、ウール状部材58をグラスウールやセラミックウール等としてもよい。
また、第2の実施形態では、保持部材を鋼管60とした例を示したが、保持部材は、火炎や熱が貫通孔14へ進入したときに、所定の時間、ウール状部材58を保持し続けられる材料であればよく、難燃性材料が好ましい。他の保持方法でウール状部材58を貫通孔14の周囲に保持してもよいし、詰め込むだけでウール状部材58を貫通孔14の周囲に保持できれば、保持部材は無くてもよい。また、ダクトや配水管等の貫通孔14内に通される設備配管などを、保持部材として併用してもよい。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図9の正面断面図、図9のE−E矢視図である図10(a)、及び図9のF−F断面図である図10(b)に示すように、構造部材としての梁66に形成された貫通孔14の周囲には、燃え止まり部としての発泡性塩化ビニルパイプからなる管状の熱発泡性部材68が設けられている。また、熱発泡性部材68は、梁本体12の内部(燃え止まり層20の内側)に配置されている。熱発泡性部材68の外面と、貫通孔36の内面との間には、モルタル、耐火性を有する材料等の充填材34が充填されている。
次に、第3の実施形態の作用と効果について説明する。図11(a)の正面断面図に示すように、貫通孔14内に設備配管70が配置されている状態で火災が発生した場合、図11(b)の正面断面図に示すように、熱が加えられることにより熱発泡性部材68は発泡して設備配管70に向かって拡がる(矢印72)。これにより、熱発泡性部材68は、体積が大きくなることによって断熱性が向上する。よって、火災時において、貫通孔14へ進入した火炎及び熱の梁心材18への進入が、燃え止まり部としての熱発泡性部材68によって抑えられ、熱発泡性部材68で燃え止まるので、梁本体12に貫通孔14を形成したことによる耐火性の低下を低減できる。
また、火災時の乾燥収縮などにより梁本体12の形状が変化して、貫通孔36の内面内側に隙間が形成されるような場合においても、熱発泡性部材68が外側(貫通孔36の内面)へ拡がってこの隙間を塞ぐことができる。
以上、第3の実施形態について説明した。なお、第3の実施形態では、熱発泡性部材68を発泡性塩化ビニルパイプとした例を示したが、熱が加えられることにより体積が大きくなって、所定時間、燃え止り効果を発揮するものであればよい。難燃性材料によって形成するのが好ましい。また、管状の熱膨張性部材を貫通孔14の周囲に設けても熱発泡性部材68と同様に燃え止り効果を得ることができる。
また、第3の実施形態では、熱発泡性部材68の外面と、貫通孔36の内面との間に、モルタル、耐火性を有する材料等の充填材34を充填した例を示したが、充填材34は、熱発泡性部材68の外面と、貫通孔36の内面との間の隙間を塞いで、熱発泡性部材68の外面と、貫通孔36の内面との間からの火炎、熱、及び酸素の何れかの進入を防ぐものであればよい。難燃性材料によって形成するのが好ましい。熱発泡性部材68は発泡するので、充填材34を設けなくても、火災時において、熱発泡性部材68の外面と貫通孔36の内面との間からの火炎、熱、及び酸素の何れかの進入を防ぐことができるが、充填材34を設ければ、火災が発生していない通常時において、熱発泡性部材68の外面と貫通孔36の内面との間からの熱の進入等を防ぐことができる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図12(a)の正面断面図に示すように、梁76では、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さを、他の部分の燃え止まり層20よりも厚くしている。すなわち、貫通孔14周辺の燃え止まり層20を層厚としている。図12(a)には、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さをモルタル部材74の分だけ内側に厚くしている例が示されている。
次に、第4の実施形態の作用と効果について説明する。図12(a)の正面断面図に示すように、梁76では、熱吸収性を有する燃え止まり層20により、貫通孔14へ進入しようとする熱が貫通孔14の入口部で吸収されるので、貫通孔14へ進入する熱を低減することができる。また、貫通孔14の周辺の燃え止まり層20の厚さを厚くすることにより、貫通孔14へ進入しようとする熱を貫通孔14の入口部で効果的に吸収することができる。貫通孔14の径が大きい場合に特に有効となる。
以上、第4の実施形態について説明した。なお、第4の実施形態では、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さをモルタル部材74の分だけ内側に厚くしている例を示したが、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さが、他の部分の燃え止まり層20よりも厚ければよい。例えば、図12(b)の正面断面図に示すように、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さをモルタル部材74の分だけ外側に厚くしてもよいし、図12(c)の正面断面図に示すように、貫通孔14の周辺に位置する部分の燃え止まり層20の厚さをモルタル部材74の分だけ外側に厚くして、このモルタル部材74の外面が燃え代層22の左右側面26、24と面一になるようにしてもよい。
また、第4の実施形態では、第1の実施形態で示した梁10を構成する貫通孔14の周辺に位置する燃え止まり層20の厚さを厚くした例を示したが、第4の実施形態は、第2及び第3の実施形態に適用することができる。すなわち、梁42、56、66を構成する貫通孔14の周辺に位置する燃え止まり層20の厚さを厚くしてもよい。
以上、第1〜第4の実施形態について説明した。なお、第1〜第4の実施形態では、木製部材としての梁本体12を、梁心材18、燃え止まり層20、及び燃え代層22によって構成された3層構造の部材とした例を示したが、梁本体は、梁心材18と燃え代層22とを有していればよい。例えば、図13の正面断面図に示す梁78のように、梁心材18と、梁心材18の側面と下面とを取り囲む燃え代層22とによって梁本体80が構成された2層構造の部材としてもよい。
梁78では、火災が発生したときに、火炎が燃え代層22に着火し、燃え代層22が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層22は炭化する。これにより、燃え代層22の外側から内側(梁心材18)への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層が遮断し、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材18の温度上昇を抑制することができ、梁心材18を燃焼させずに燃え止まらせることができる。なお、燃え止まり効果を発揮できる燃え代層22の厚さ(例えば、40mm程度)を確保できれば、梁心材18と燃え代層22とは、異なる材料によって形成してもよいし、同じ材料によって形成してもよい。すなわち、梁本体80を1本の木材によって構成し、この梁本体80の表層を燃え代層22としてもよい。
また、第1〜第4の実施形態では、燃え止まり部(管部材16、ウール状部材58、熱発泡性部材68)を、梁本体12の内部(燃え止まり層20の内側)に配置した例を示したが、図14の正面断面図に示す梁82のように、木製部材としての梁本体12を貫通するように燃え止まり部を配置してもよい。図14では、貫通孔14の周囲全域に鋼管60が設けられている。そして、梁本体12を貫通するように形成された貫通孔84(中間部分が貫通孔36によって構成されている)の内面と、鋼管60の外面との間にウール状部材58を詰め込んで燃え止まり部を形成している。このようにすれば、梁82の施工が完了した後に貫通孔14を形成した場合においても、燃え止まり部(ウール状部材58)を設けることができる。
梁82は、例えば、図15(a)、(b)の正面断面図に示す手順によって組み立てる。まず、図15(a)に示すように、貫通孔84へ、この貫通孔84と略等しい長さの鋼管60を挿入する。そして、梁本体12の左右側面から鋼管60の左右端部が突出しないようにして、貫通孔36内へ鋼管60を配置する。次に、図15(b)に示すように、貫通孔84の内面と、鋼管60の外面との間にウール状部材58を詰め込んで燃え止まり部を形成する。図15に示した組み立て手順において、燃え止まり層20及び燃え代層22は、貫通孔36に鋼管60を配置した後に、取り付けるようにしてもよい。
また、第1〜第4の実施形態では、構造部材を梁(梁10、42、56、66、76)とした例を示したが、これらの構造部材の構成は、梁、壁、梁や壁以外の構造部材全般に適用することができる。図16の側断面図には、第1の実施形態で示した梁10の構成を、構造部材として壁86に適用した例が示されている。また、第1〜第4の実施形態で示した構造部材(梁10、42、56、66、76)に形成された貫通孔14は、さまざまな用途に用いることができる。例えば、設備配管、設備配線、空調ダクト等を貫通孔14へ通して配置することができる。
また、第1〜第4の実施形態では、木製部材を梁本体12とした例を示したが、木製部材は、木製の梁心材18を有するものであればよい。例えば、第1〜第4の実施形態で示した梁10、42、56、66、76のように、木製部材を、一般木材によって形成された部材(板部材30)、及びモルタルによって形成された部材(板部材32)によって構成された燃え止まり層と、木製の梁心材とを有する梁本体としてもよいし、図17、18の正面断面図に示す梁88、90のように、木製の梁心材18の内部に形鋼92を配置したものであってもよい。
図17に示す梁88では、貫通孔14が、梁88の右側面94から左側面96へ、梁心材18、形鋼92のウェブ98、梁心材18をこの順に貫通している。また、図18に示す梁90では、梁心材18の側面と下面とに難燃層100が形成されており、貫通孔14が、梁90の右側面94から左側面96へ、難燃層100、梁心材18、形鋼92のウェブ98、梁心材18、難燃層100をこの順に貫通している。
また、第1〜第4の実施形態では、孔径が50〜100mm程度の貫通孔14を梁10、42、56、66、76に形成した例を示したが、これ以上の大きさの径(例えば、梁せいの1/3程度の径)の貫通孔14に対しても耐火性を発揮することができる。なお、貫通孔14を形成することによる貫通孔14周囲の強度低下が懸念される場合には、適宜、さまざまな方法で貫通孔14に構造補強を施す。例えば、図19、20の正面断面図に示すような補強方法を用いてもよいし、梁10、42、56、66、76の両側面に、貫通孔14と連通する貫通孔が形成された鋼板等の補強プレートを固定してもよい。
図19では、貫通孔14へ補強用の鋼管102を嵌入して接着固定し、貫通孔14の周辺に設けられて梁本体12を鉛直方向に貫通するボルト104によって、梁本体12を鉛直方向に締め付けている。図20では、梁本体12に斜めに挿入され平行に配置された一対の鉄筋106、108が、貫通孔14を挟み込むようにして設けられている。
また、第1〜第4の実施形態では、燃え止まり層20が、梁心材18の側面と下面とを取り囲むように配置され、燃え代層22が、燃え止まり層20の側面と下面とを取り囲むように配置されている例を示したが、燃え止まり層20は、梁心材18の外周を取り囲むように配置してもよいし、燃え代層22は、梁心材18の外周を取り囲むように配置された燃え止まり層20の外周を取り囲むように配置してもよい。
また、第1〜第4の実施形態では、貫通孔14の周囲に燃え止まり部(管部材16、ウール状部材58、熱発泡性部材68)を設けた例を示したが、「貫通孔14の周囲」とは、図1の管部材16、及び図9の熱発泡性部材68のように、貫通孔14の内面を形成するように設けられている場合と、図4の管部材16、及び図6のウール状部材58のように、貫通孔14の内面から離れた周辺に設けられている場合とが含まれる。
また、第1〜第4の実施形態で示した燃え止まり部(管部材16、ウール状部材58、熱発泡性部材68)を複数重ねて設けるようにしてもよい。この場合、同種の燃え止まり部を複数重ねて設けるようにしてもよいし、異種の燃え止まり部を複数重ねて設けるようにしてもよい。例えば、梁本体12を貫通するように第1の燃え止まり部を配置し、この第1の燃え止まり部の外面よりも外側かつ梁本体12の内部(燃え止まり層20の内側)に第2の燃え止まり部を配置してもよい。
以上、第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。