JP2013104519A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】作用する荷重の状態によらず、外輪(パワーローラ)とトラニオンとの間の相対的な位置ずれを抑制でき、安定した変速比制御を行なうことができるトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】このトロイダル型無段変速機は、トラニオン15Aに設けられたテーパ状の第1の溝212と、この第1の溝212に係合されるピン210と、外輪28Aに設けられた第2の溝230と、この第2の溝230に配され且つピン210に対してこれを第1の溝212に対して押し付ける付勢力を付与する付勢部材200とから成る支承部300を有し、該支承部300は、ピン210と第1の溝212との係合部で、パワーローラ11に加わるトルクを支承可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図5および図6に示すように構成されている(図5に2つのキャビティ221,222が示される)。図5に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図6参照)が回転自在に挟持されている。
図5中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図5の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図6は、図5のE−E線に沿う断面図である。図6に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図6においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、パワーローラ11を支持する支持板部16の長手方向(図6の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸(軸部)23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、ラジアルニードル軸受99を介して各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図6の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図5の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図6で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の軸方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という。)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図6の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図6の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面(トラクション面)11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、動力の伝達に供される各部材、すなわち入力側ディスク2、出力側ディスク3およびパワーローラ11等が、押圧装置12が発生する押圧力(推力)に基づいて弾性変形する。この弾性変形に伴って、各ディスク2,3が軸方向に変位する。また、押圧装置12が発生する押圧力は、トロイダル型無段変速機により伝達するトルクが大きくなる程大きくなり、それに伴って各部材の弾性変形量も多くなる。したがって、上記トルクの変動に拘らず、入力側、出力側各内側面2a、3aと各パワーローラ11の周面11aとの接触状態を適正に維持するために、これら各パワーローラ11を上記各トラニオン15に対し、上記各ディスク2,3の軸方向に変位させる機構が必要になる。
上述の例では、パワーローラ11が、トラニオン15に対して変位軸23の基端部23aを中心に揺動可能な構成になっていることにより、パワーローラ11をトラニオン15に対して各ディスク2,3の軸方向に変位させることができる。
また、変位軸23を用いない別の構造として、図8に示すように、支持板部16を有するトラニオン15に代えて、パワーローラ側に向かって凸になる円筒状凸面34を有する支持梁部16Aを備えるトラニオン15Aを備え、且つ、上述の外輪28に代えて、円筒状凸面34に係合される円筒状凹面38を備える外輪28Aを備えているトロイダル型無段変速機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記円筒状凸面34の中心軸は、枢軸14の中心軸と平行でかつ当該枢軸14の中心軸より入力側ディスク2および出力側ディスク3の中心軸(回転軸)から離れた位置に配置されている。また、円筒状凹面38は、円筒状凸面34に略当接可能な曲率半径を有するものになっている。
また、外輪28Aには、上述の変位軸23の先端部23bに相当する支持軸23Aが一体に設けられ、この支持軸23Aがパワーローラ11の回転中心部を貫通して配置されている。
また、図示を省略するが、図6の場合と同様に、支持軸23Aとパワーローラ11の支持軸23Aが貫通する貫通孔の間には、支持軸23Aに対してパワーローラ11を回転自在に支持するラジアル軸受が配置されている。また、パワーローラ11を貫通した支持軸23Aの先端部には、パワーローラ11の抜け止用のCリングが固定され、スラスト玉軸受24を構成する外輪28A、保持器27、転動体26、内輪としてのパワーローラ11がそれぞれ分解せずに互いに回転自在に接合された状態に支持されている。
このようなトラニオン15Aおよび外輪28Aを有するトロイダル型無段変速機においては、上述のように押圧装置の押圧力によりに入力側ディスク2、出力側ディスク3、パワーローラ11等が弾性変形するとともに、これらが伝達するトルクの変化に対応して弾性変形量が変化した場合に、トラニオン15Aの支持梁部16Aの円筒状凸面34に対して、外輪28Aがパワーローラ11と一体に両ディスク2,3の軸方向に関する揺動変位することによって、入力側ディスク2の内側面2a、出力側ディスク3の内側面3aとパワーローラ11の周面11aとの接触状態を適正に維持することができる。
ところで、以上のようなトロイダル型無段変速機の運転時には、パワーローラ11に作用するスラスト力Fpr(図8参照)によりトラニオン15Aがポケット部Pを閉じる方向に弾性変形し(図8の矢印X参照)、また、パワーローラ11と各ディスク2,3との間で動力を伝達するためのトラクション接触部C1,C2にそれぞれ、図6および図7に示すような接線方向の力Ftが発生し、これら2点での力Ftを合わせた力2Ftがパワーローラ11に作用する(図8参照)。
したがって、従来構造では、これらの荷重による変形を考慮して、トラニオン15Aとパワーローラ11との間に隙間を設けつつ(通常、パワーローラ外輪28Aの外周部とトラニオン15Aの内端面との間には、トラニオン15Aの変形を考慮して0.2mm程度の隙間が設けられる)、パワーローラ11をトラニオン15Aに対して支持するようにしている。
例えば特許文献1では、図9に示すように、トラニオン15Aのポケット部Pの内側に設けた段差部100と外輪28Aの外周部とを当接させて支持する構造となっており、そのため、トラニオン15Aのポケット部Pを閉じる方向の弾性変形(図11の矢印X参照)に伴って外輪28Aの外周部がトラニオン15Aにより挟み込まれないように、トラニオン15Aの内端面幅(左右の段差部100間の距離)W(図9の(a)参照)が外輪28Aの外径に対して大きく設定されている。
特開2008−25821号公報
しかしながら、図9に示すように、トラニオン15Aのポケット部Pの内側に設けた段差部100と外輪28Aの外周部とを当接させて支持する構造では、スラスト力Fprがパワーローラ11に殆ど作用しない無負荷に近い状態において、外輪28Aの外周部とトラニオン15Aの段差部100との間に隙間が生じる(トラニオン15Aの内端面幅Wが外輪28Aの外径に対して大きく設定されていることに起因する)ため、外輪28A(パワーローラ11)とトラニオン15Aとの間の相対的な位置ずれにより、変速の安定性が損なわれる(変速比制御に悪影響が及ぶ)虞がある。
さらに具体的に説明すると、上述のように、トロイダル型無段変速機を搭載した車両の運転時には、図8に示すように、パワーローラ11にはディスク2,3から、加速時と減速時(エンジンブレーキ作動時)とで逆方向の力(トロイダル型無段変速機の技術分野で周知の「2Ft」)が加わる。そして、この力2Ftにより、パワーローラ11が外輪28Aとともに支持梁部16Aの軸方向に変位する。この変位の方向は、アクチュエータによるトラニオン15Aの変位方向と同じであり、例えば変位量が0.1mm程度であっても、変速動作が開始させる可能性を生じる。そして、このような原因で変速動作が開始された場合には、運転動作と直接関連しない変速動作となり、何れ修正させるにしても、運転者に違和感を与える。特に、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが低い状態で、上述のような運転者が意図しない変速が行われると、運転者に与える違和感が大きくなり易い。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたものであり、作用する荷重の状態によらず、外輪(パワーローラ)とトラニオンとの間の相対的な位置ずれを抑制でき、安定した変速比制御を行なうことができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に傾転するとともに、前記各パワーローラをスラスト軸受を介して回転自在に支持する複数のトラニオンとを備え、前記スラスト軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪と外輪との間で転動する転動体を備え、前記トラニオンは、前記パワーローラ側を向く面に円筒状凸面が形成され、前記円筒状凸面の中心軸が、前記枢軸の中心軸と平行でかつ当該枢軸の中心軸より前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸から離れた位置に配置され、前記外輪は、外側面に設けられた円筒状凹面と前記トラニオンの円筒状凸面とを係合させることにより前記トラニオンに対し、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸方向に関する揺動変位を可能に支持されているトロイダル型無段変速機において、前記トラニオンおよび前記外輪の互いに対向する部位の一方に設けられたV字状の第1の溝と、この第1の溝に係合される係合部材と、前記トラニオンおよび前記外輪の互いに対向する部位の他方に設けられた第2の溝と、この第2の溝側から前記係合部材に対してこれを前記第1の溝に対して押し付ける付勢力を付与する付勢部材とを備える支承部が設けられ、該支承部は、前記係合部材と前記第1の溝との係合部で前記ディスクの回転に伴って前記パワーローラに加わるトルクを支承可能であるとともに、前記トラニオンの変形時に前記係合部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2の溝側に変位可能であることを特徴とする。
上記構成によれば、係合部材とV字状の第1の溝との係合部でパワーローラに加わるトルク(パワーローラの2Ftの力(パワーローラからトラニオンへ加わる2Ftの力))を支承するので、外輪(パワーローラ)とトラニオンとの間の相対的な位置ずれを抑えて、変速比ずれを改善できる。さらに、パワーローラを支持するための係合部材が付勢部材によりV字状の第1の溝に対して押し付けられているので、トラニオンの変形(スラスト力Fpr(図8参照)による変形)の際には、付勢部材によって係合部材が第2の溝内にオフセット(相対変位)することにより係合部材が挟み込まれるのを防止でき、したがってそれに伴うパワーローラの揺動抵抗の増加を軽減できる。
また、上記構成において、前記第1の溝は、前記トラニオン側に設けられてもよく、あるいは、前記外輪側に設けられてもよい。また、前記係合部材は、円柱形状を成すピンであってもよく、あるいは、第1の溝と係合する端部が横断面形状が半面状の部材であってもよい。
また、上記構成において、V字状の第1の溝の傾斜面は、直線であっても曲線であってもよく、また第1の溝の底部は小さな円弧状等に形成されていてもよい。
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、付勢部材を介した係合部材とV字状の第1の溝との係合によりパワーローラに加わるトルクを支承するので、作用する荷重の状態によらず、外輪(パワーローラ)とトラニオンとの間の相対的な位置ずれを抑制することができ、安定した変速比制御を行なうことができるとともに、トラニオンの変形の際の係合部材の挟み込みによるパワーローラの揺動抵抗の増加を軽減できる。
本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の分解斜視図である。 図1の平面PLで切断した際の断面図である。 (a)は支承部の縦断面図であり、(b)は図2のXの拡大断面図である。 係合部材の変形例を示す図3の(b)に対応する断面図である。 従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。 図4のE−E線に沿う断面図である。 ディスクとパワーローラとの位置関係を模式的に示す従来例の平面図である。 トラニオンおよびパワーローラに作用する力およびそれに伴う変形を概略的に示す断面図である。 (a)は従来例に係るトラニオンの断面図、(b)はトラニオンと外輪とを組み付けた状態の断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の特徴は、トラニオンに対するパワーローラ(外輪)の支承構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図5から図9と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1〜図3は、本発明の実施形態を示している。図示のように、本実施形態のトロイダル型無段変速機は、ディスク2,3(図5参照)の回転に伴ってパワーローラ11に加わるトルクを支承可能な支承部300を、外輪28Aとトラニオン15Aの支持梁部16Aとの嵌め合い部に有する。具体的には、この支承部300は、特に図3に明確に示すように、外輪28Aの円筒状凹面38と対向するトラニオン15Aの支持梁部16Aの円筒状凸面34の部位16aに設けられたV字状の第1の溝212と、この第1の溝212に係合される係合部材としての円柱形状のピン210と、トラニオン15Aの支持梁部16Aの円筒状凸面34と対向する外輪28Aの円筒状凹面38の部位28aに設けられた第2の溝(横断面形状が矩形の長溝)230と、この第2の溝230の底面に形成された円柱状の凹部240内に配され且つピン210に対してこの第2の溝230側からこれを第1の溝212に対して押し付ける付勢力を付与する付勢部材200とを備えている。
この場合、溝212,230およびピン210は、支持梁部16Aの中央部近傍に位置されており、支持梁部16Aの軸方向(長手方向)と略直交する方向(支持梁部16Aの幅方向)に延びている。第1の溝212は、支持梁部16Aの円筒状凸面34に沿って円弧状に延びており、その横断面形状はV字状(三角形状)に形成されている。また、凹部240および付勢部材200は、第2の溝230の長手方向に間隔をおいて複数個設けられる(本例の場合、3個)。付勢部材200は、弾性部材を含み、本実施形態では圧縮コイルバネとなっている。なお、ピン210は、その円弧状の周面により第1の溝212と係合している。
したがって、上記構成によれば、ピン210とV字状の第1の溝212との係合部でパワーローラ11に加わるトルク(パワーローラ11の2Ftの力(パワーローラ11からトラニオン15へ加わる2Ftの力))を支承できるため、外輪28A(パワーローラ11)とトラニオン15Aとの間の相対的な位置ずれを抑えて、変速比ずれを改善できる。また、パワーローラ11を支持するためのピン210が付勢部材200によりV字状の第1の溝212に対して押し付けられているため、トラニオン11の変形(スラスト力Fpr(図8参照)による変形)の際には、付勢部材200によってピン210が第2の溝230内にオフセット(相対変位)することによりピン210が挟み込まれるのを防止でき、したがってそれに伴うパワーローラ11の揺動抵抗の増加を軽減できる。
図4は、係合部材の変形例を示している。図示のように、本変形例において、係合部材210Aは、その横断面形状がほぼピストル弾の形態を成し、前述した実施形態と同様に第1の溝212と係合する端部210aが半円状を成している。このような係合部材210Aであっても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、トラニオン15A側に第1の溝212が設けられ、外輪28A側に第2の溝230が設けられているが、外輪28Aと対向するトラニオン15Aの支持梁部16Aの部位16aに第2の溝230が設けられ、トラニオン15Aの支持梁部16Aと対向する外輪28Aの部位28aにV字状の第1の溝212が設けられてもよい。その場合、ピン210は外輪28A側の第1の溝212に配される。また、付勢部材200は、凹部240を設けずに、溝230内に設けるようにしてもよい。
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機に適用できる。
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
14 枢軸
15A トラニオン
24 スラスト玉軸受
26 転動体
27 保持器
28A 外輪
200 付勢部材
210 ピン(係合部材)
210A 係合部材
212 第1の溝
230 第2の溝
300 支承部

Claims (5)

  1. 互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に傾転するとともに、前記各パワーローラをスラスト軸受を介して回転自在に支持する複数のトラニオンとを備え、前記スラスト軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪と外輪との間で転動する転動体を備え、前記トラニオンは、前記パワーローラ側を向く面に円筒状凸面が形成され、前記円筒状凸面の中心軸が、前記枢軸の中心軸と平行でかつ当該枢軸の中心軸より前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸から離れた位置に配置され、前記外輪は、外側面に設けられた円筒状凹面と前記トラニオンの円筒状凸面とを係合させることにより前記トラニオンに対し、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸方向に関する揺動変位を可能に支持されているトロイダル型無段変速機において、
    前記トラニオンおよび前記外輪の互いに対向する部位の一方に設けられたV字状の第1の溝と、この第1の溝に係合される係合部材と、前記トラニオンおよび前記外輪の互いに対向する部位の他方に設けられた第2の溝と、この第2の溝側から前記係合部材に対してこれを前記第1の溝に対して押し付ける付勢力を付与する付勢部材とを備える支承部が設けられ、該支承部は、前記係合部材と前記第1の溝との係合部で前記ディスクの回転に伴って前記パワーローラに加わるトルクを支承可能であるとともに、前記トラニオンの変形時に前記係合部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2の溝側に変位可能であることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記第1の溝が前記トラニオン側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. 前記第1の溝が前記外輪側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  4. 前記係合部材は、円柱形状を成すピンであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
  5. 前記係合部材は、前記第1の溝と係合する端部が横断面形状が半面状の部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
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