JP2013103930A - メイラード反応阻害剤 - Google Patents

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奈奈江 金澤
Shigeki Mitani
茂樹 三谷
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Abstract

【課題】本発明の課題は、皮膚の老化の予防、改善に安全性、安定性、有効性の面で優れた、メイラード反応阻害剤を配合した皮膚外用剤又は食品の提供。
【解決手段】ベルゲニア・リグラタBergenia ligulata(Wall.)Eng.(Saxifragaceae)の根の溶媒抽出物、フトモモSyzygium jambos(L.)Alstonの枝葉の溶媒抽出物、ツバキ科チャ属チャノキ植物(Thea sinensis L.=Camelliasinensis(L.)O.Kuntze)の花の溶媒抽出物、ザクロ科(Punica granatum)植物の花の溶媒抽出物、ホホバ[Buxus chinensin(Link 1822)、Simmondsia California(Nuttall 1844)、Simmondsia chinensis(Schneider 1907)]の葉の溶媒抽出物、サボテン科ウチワサボテン属(Opuntia)植物の抽出物、ヒラタケ科ヒラタケ属(Pleurotus)キノコの抽出物にこれまでに確認されていなかった機能、すなわち皮膚の老化を防止するメイラード反応阻害作用を有することを見出し、また上記の抽出物よりなる群の1種又は2種以上を含有することによりメイラード反応阻害剤として応用すること、さらに皮膚外用剤または食品にも使用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明品は、皮膚の老化を防止する植物由来のメイラード反応阻害剤及び、更に皮膚外用剤または食品への応用に関するものである。
女性は今も昔もシミやシワの改善・美白・保湿など美容に関しては特に強い関心を持っている。特に日本人の平均寿命が最近60年間で30歳も伸びた現在では、アンチエイジングに対する需要が高まってきている。
皮膚老化の要因としては、紫外線、ストレス、不規則な生活など様々であるが、生体内における老化の重要な反応経路としてメイラード反応がある。メイラード反応とは非酵素的タンパク糖化反応であり、生体内の数々の生理機能を司っているアミノ酸又はタンパク質と還元糖が結合し、黄褐色の物質を形成する反応である。また、アマドリ化合物と呼ばれるタンパク質と糖の結合物はメイラード反応の初期段階反応物質である。更にこの反応は脱水、重合を経て蛍光を持つ黄緑色の物質を形成し、これが終末糖化物質になる。
皮膚の真皮においてはコラーゲンやエラスチンがこのメイラード反応によって架橋を起こし、本来の保水力や弾力性を失ってしまい、これがシワやたるみの原因の一つとなる。しかし、メイラード反応を阻害する薬剤は、アミノグアニジンをはじめとするほんの一握りしか知られておらず、またその阻害効果もあまり強くないのが現状である。
特開2006−62987号 特開平11−106336号
発明が解決しようとする課題
本発明は、植物由来の新規で生体に安全性の高いメイラード反応阻害剤を含有する皮膚外用組成物を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
そこで、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、安全性の高い、ベルゲニア・リグラタBergenia ligulata(Wall.)Eng.(Saxifragaceae)の根の溶媒抽出物、フトモモSyzygium jambos(L.)Alstonの枝葉の溶媒抽出物、ツバキ科チャ属チャノキ植物(Thea sinensis L.= Camelliasinensis(L.)O.Kuntze)の花の溶媒抽出物、ザクロ科(Punica granatum)植物の花の溶媒抽出物、ホホバ[Buxus chinensin(Link 1822)、Simmondsia california(Nuttall 1844)、Simmondsia chinensis(Schneider 1907)]の葉の溶媒抽出物、サボテン科ウチワサボテン属(Opuntia)植物の抽出物、ヒラタケ科ヒラタケ属(Pleurotus)キノコの抽出物よりなる群の1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤又は食品が、老化の防止、改善効果に優れた作用を有することを見出し本発明を完成するに至った。
発明の効果
本発明の皮膚外用剤又は食品は、優れたメイラード反応阻害作用を有し、シワやたるみといった皮膚の老化の防止、改善効果に優れ、若々しい肌の状態を維持することができる。
本発明で用いられる[ベルゲニア・リグラタBergenia ligulata(Wall.)Eng.(Saxifragaceae)、ヒンズー名:pashanbheda(パシャンベ)]とは、ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属の植物で、ヒマラヤからインド北部に自生する。インドの伝統医学であるアーユルベーダにて、咳、発熱、下痢などの治療に用いられてきた。本発明の使用部位は根茎である。また、以前にベルゲニア・リグラタ抽出物の老化防止や活性酸素消去作用等が報告されている(特開2004−3 15492、特開2004−315491)。
本発明で用いられるフトモモ(Syzygium jambos(L.)Alston)とは、フトモモ科(Myrtaceae)フトモモ属の植物で、熱帯各地に広く栽培されている。果実は食用とされ、葉は解熱剤として用いられてきた。本発明の使用部位は枝葉である。また、以前にフトモモのエラスターゼ阻害作用、チロシナーゼ活性阻害作用、テストステロンー5α−レダクターゼ阻害作用等が報告されている(特開2003−055189、特開2003−055190、特開2006−257057)。
本発明で用いられるツバキ科チャ属チャノキ植物(Thea sinensis L.=Camelliasinensis(L.)O.Kuntze)とは、中国原産で、九州で野生化している常緑小低木である。近年茶に含まれるカテキンが注目されたことで、再び茶への関心が広がってきており、例えば特定保健用食品の認可を受けた茶関連商品も多く見られるようになってきた。また、飲食用に留まらず、その用途は医薬品や化粧品にも広がっている(特許文献1−3)。本発明の使用部位は花である。また、以前にチャノキの花の抽出物のヒアルロニダーゼ活性阻作用、コラーゲン産生促進作用等が報告されている(特開2008−280320、特開2008−280319、特開2008−280318、特開2008−280317)。
本発明で用いられるザクロとは、ザクロ科(Punica granatum)ザクロ属に属する植物である。果実は、食用品、飲用品として広く世間で用いられ、また最近ではザクロの果汁に前立腺がんの細胞を死滅させる成分が含まれていることが分かり、医学会からも注目を集めている(名古屋市立大学2006年9月28日、日本癌学会にて発表)。本発明の使用部位は花である。また、以前にザクロの花の抽出物のエストロゲン様作用が報告されている(特開2008−127373)。
本発明で用いられるホホバ[Buxus chinensin(Link 1822)、Simmondsia california(Nuttall 1844)、Simmondsia chinensis(Schneider 1907)]とは、米国西南部(アリゾナ州、カリフォルニア州)及びメキシコ北部(ソノーラ、バハ地方)の乾燥地帯に自生する常緑性の灌木である。雌雄異株で、樹高60cm〜180cmでなかには3mに達するものもある。現在は、栽培化され、米国、メキシコの他、イスラエル、オーストラリア、アルゼンチン等の乾燥地帯でも栽培されている。本発明の使用部位は葉である。また、以前にホホバ葉抽出物のヒアルロニダーゼ阻害作用等が報告されている(特開2003−034644、特開2000−154135)。
本発明で用いられるサボテン科ウチワサボテン属(Opuntia)植物とは、サボテン科(Cactaceae)ウチワサボテン属(Opuntia)に分類され、オウガタホウケン(Opuntia ficus−indica)(=Cactus ficus−indica)(=Cactus opuntia)、キンブセン(Opuntiatuna)(=Cactus polyanthus)、タンシウチワ(Opuntia vulgaris)(=Opuntia monacantha)(=Cactus urumbeba)、(Opuntia streptacantha)などが代表的なものとして上げられる。一般的にカナダ南部やアメリカ大陸、メキシコなどの中米で自生しており、メキシコでは食用とされる他、血糖降下剤としても使用されている。本発明の使用部位は茎節である。また、以前に繊維芽細胞増殖促進作用やメラニン合成抑制作用、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害作用等が報告されている(特開2002−68933、特開2009−263254、特開2005−008539)。
本発明で用いられるヒラタケ科ヒラタケ属(Pleurotus)とは、ヒラタケ科のキノコを用い、ヒラタケ科のキノコとしては、タモギタケ、ヒラタケ、エリンギ及びエノキタケを用いる。これらキノコは古くから食用とされており、本発明の使用部位は茎部分と傘部分とからなる子実体はもちろんのこと、石槌部分も含む。また、人口栽培されたキノコ及び液体培養した菌子体を用いることもできる。また、タモギタケは以前に抗酸化作用、チロシナーゼ活性阻害作用等が報告されている(特開2009−126863)。
本発明で用いられる抽出物の調製方法は、特に限定されないが、生または乾燥した原料を種々の溶媒を用い、低温から加温下において抽出する方法があげられる。
具体的に抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステルが例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。
本発明で使用する抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、抽出物をカラムクロマト法、向流分配法等により、分画、精製して用いることもできる。
更に、上記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。
(抽出物製造例1)ベルゲニア・リグラタ抽出物の製法
ベルゲニア・リグラタの根茎の乾燥物200gに精製水3kgを加え、80℃にて5時間攪拌抽出する。冷後、ろ過し、抽出物約2600gを得る。この抽出物を減圧下約200gまで濃縮した後、合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムにて処理し、水洗浄後、水−エタノール溶出液を得る。溶出液を減圧濃縮し、固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Aを得る。
(抽出物製造例2)フトモモ抽出物の製法
フトモモの枝葉の乾燥物20gに50vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Bを得る。
(抽出物製造例3)チャノキの花の抽出物の製法
チャノキの花の乾燥物20gに50vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Cを得る。
(抽出物製造例4)ザクロの花の抽出物の製法
ザクロの花の乾燥物20gに50vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Dを得る。
(抽出物製造例5)ホホバの葉の抽出物の製法
ホホバの葉の乾燥物20gに50vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Eを得る。
(抽出物製造例6)ウチワサボテン属植物抽出物の製法
ウチワサボテン属植物の茎節の乾燥物20gに50vol%エタノール溶液400gを加え、50℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Fを得る。
(抽出物製造例7)ヒラタケ属キノコ抽出物の製法
ヒラタケ属キノコの子実体、石槌部分の乾燥物20gに水400gを加え、80℃にて1時間抽出し、冷後、ろ過して抽出物を製する。この抽出物の固形抽出分を1.0%に調整し、抽出物Gを得る。
本発明で用いられるベルゲニア・リグラタの根の抽出物、フトモモの枝葉の抽出物、ツバキ科チャ属チャノキ植物の花の抽出物、ザクロ科植物の花の抽出物、ホホバの葉の抽出物、サボテン科ウチワサボテン属植物の抽出物、ヒラタケ科ヒラタケ属キノコの抽出物としては、それぞれ香栄興業株式会社製のパシャンベエキス、ローズアップルリーフエキス、シラカバ葉抽出液、チャ花エキス、ザクロ花エキス、ホホバリーフエキス、サボテンエキス、タモギチオネイン▲R▼(タモギタケ抽出物)、フィトチオネン▲R▼(エルゴチオネイン高含有エキスであるタモギタケ抽出エキス)を用いることもできる。
本発明の抽出物は、皮膚外用剤に配合できるが、その配合量は特に規定するものではない。配合する製品の種類、性状、品質、期待する効果の程度により異なるが、抽出物として、0.0001〜10.0%、好ましくは0.001〜5.0%、より好ましくは0.5〜2.0%配合するのがよい。
本発明の皮膚外用剤は、上記抽出物の他に通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、油分、湿潤剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤の他、細胞賦活剤、皮脂分泌調整剤、消炎剤、収斂剤、抗酸化剤、美白剤、活性酸素抑制剤、抗アレルギー剤等、さらに生理活性作用を有する動植物抽出物及びこれらの抽出分画、精製物を必要に応じて適宜配合し、剤型に応じて常法により製造することができる。
本発明の皮膚外用剤の剤型は、任意であり、化粧水などの可溶化系、乳液、クリームなどの乳化系、または、軟膏、分散液、粉末系などの従来皮膚外用剤に用いられる何れの剤型でもかまわない。また、一般皮膚化粧料に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料等を包含するものである。用途も、化粧水、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧料、ファンデーション等のメークアップ化粧料、シャンプー、リンス、石けん、ボディーシャンプーなどのトイレタリー製品、浴用剤等を問わない。
次に実施例をあげて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(試験例1)メイラード反応阻害作用の測定
製造例1〜7に示した抽出物A〜G、抽出物Cと抽出物A、D、Gの1:1の混合物について、メイラード反応(終末糖化物質形成)阻害作用を測定した。また、陽性対象として塩酸アミノグアニジンを用いた。各濃度に精製水にて希釈した試験溶液50μLに、100mMリン酸水素ナトリウム(最終濃度50mM)250μL、2Mグルコース(最終濃度200mM)50μL、4mg/mL牛血清アルブミン(最終濃度800μg/mL)100μL、水50μLを加え60℃で30時間反応をさせる。反応終了後、ヒートブロックからチューブを取り出し、4℃にて冷却後、ボルテックスで攪拌。新しいエッペンチューブに反応させた液を100μL入れ、そこにトリクロロ酢酸溶液を10μL入れる。再度ボルテックスで攪拌し、次に冷却遠心(4℃、15000rpm、4分)を行った後、上清を吸引除去し、アルカリ性リン酸緩衝液(−)400μLで溶解する。200μLを蛍光測定用96穴プレートに移し、蛍光プレートリーダー励起波長360nm、蛍光波長460nmで蛍光を測定した。阻害率は検出された蛍光値を用いて以下の計算方法により算出した。得られた阻害率と抽出物濃度から50%阻害活性濃度(IC50:mg/mL)を算出した。
阻害率(%)=[(反応−未反応)−(試料−ブランク)]/(水−未反応)×100
Figure 2013103930
評価結果
表1の通り、本発明の各植物抽出物にはメイラード反応阻害作用を有することが確認された。また、抽出物A、D、Gはそれぞれ抽出物Cと混合することにより、メイラード阻害能が高くなることが確認された。
(試験例2)皮膚外用剤の効果
30〜60歳の女性70名をパネルとし、表2記載の抽出物配合外用組成物を、毎日朝と夜の2回、12週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による美肌効果の結果を表3に示す。
Figure 2013103930
使用後の効果を下記の判定基準に基づいて判定した。
(判定基準)
有効:使用前と比較して明らかな効果が認められた
やや有効:使用前と比較して効果がみとめられた
効果なし:使用前とほぼ同程度であった
Figure 2013103930
表3から明らかなように、抽出物単品でも効果を実感することができるが、抽出物Cと抽出物A、D、Gをそれぞれ混合することにより、優れた抗老化効果を有することが認められた。
本発明は、皮膚の老化を防止する化粧品、医薬部外品、医薬品への応用が期待できる。

Claims (3)

  1. ベルゲニア・リグラタBergenia ligulata(Wall.)Eng.(Saxifragaceae)の根の溶媒抽出物、フトモモSyzygium jambos(L.)Alstonの枝葉の溶媒抽出物、ツバキ科チャ属チャノキ植物(Thea sinensis L.= Camelliasinensis(L.)O.Kuntze)の花の溶媒抽出物、ザクロ科(Punica granatum)植物の花の溶媒抽出物、ホホバ[Buxus chinensin(Link 1822)、Simmondsia california(Nuttall 1844)、Simmondsia chinensis(Schneider 1907)]の葉の溶媒抽出物、サボテン科ウチワサボテン属(Opuntia)植物の抽出物、ヒラタケ科ヒラタケ属(Pleurotus)キノコの抽出物よりなる群の1種又は2種以上を含有することを特徴とするメイラード反応阻害剤。
  2. 請求項1に記載のメイラード反応阻害剤を含んでなる、皮膚外用剤。
  3. 請求項1に記載のメイラード反応阻害剤を含んでなる、食品。
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