JP2013101428A - 建物輪郭抽出装置、建物輪郭抽出方法及び建物輪郭抽出プログラム - Google Patents

建物輪郭抽出装置、建物輪郭抽出方法及び建物輪郭抽出プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】空中写真画像及びDSMに基づく建物輪郭の抽出において、建物の周囲の環境は建物ごと、及び1つの建物の周りにおいても違いがある。
【解決手段】位置推定部20は、抽出対象領域における建物の概略位置に関し、DSMデータに基づいて、建物に応じた大きさの地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める。領域分割部22は抽出対象領域を、それぞれ凸部領域より小さい領域であり、DSMデータから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する。概略形状抽出部24は位置推定領域にて、属性が類似性を有する一群の小片領域を統合して建物の概略形状を抽出する。輪郭決定部26は概略形状に基づいて、多角形で表される建物輪郭を求める。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物輪郭抽出装置、建物輪郭抽出方法及び建物輪郭抽出プログラムに関する。
都市モデルの生成などにおいて、航空機などから撮影した高分解能の空中写真画像や、上空からレーザスキャナなどを用いて取得したDSM(Digital Surface Model:数値表層モデル)データを利用して建物(屋根)の輪郭を認識することが行われる。しかし、空中写真画像は建物輪郭以外にも様々な情報を含んでいるため、空中写真画像から輪郭を精度良く認識することは容易ではない。一方、DSMデータは洗練された情報であるが、建物輪郭の認識に十分な高精度かつ高密度で得ることが難しい。DSMが粗いことは、特に、建物の密集する都市領域において精度のよい建物輪郭の認識を困難にする。
従来は、作業者がステレオ図化機を用いてステレオ画像から建物輪郭を求める方法や、建物が存在する範囲を作業者が指定し、その範囲で画像認識処理によって建物輪郭を抽出する半自動的な方法など人手を要する方法が主流である。しかし、人手による作業は効率が低いという問題や、品質が作業者に依存しその保証が難しいという問題点がある。
そこで、自動的に建物輪郭を認識する方法の研究開発が行われている。現状では、画像からエッジを検出し、エッジに対応する線分の抽出、及び当該線分の結合等により建物の屋根輪郭を取得する手法や、建物を予め認識して、領域拡張(Region Growing)やレベルセット(Level Set)等の画像分割アルゴリズムにより建物の屋根輪郭を探索する手法、あるいは、既存の建物の形状モデルを上記輪郭探索手法に組み込み、自動整形で建物の屋根輪郭を生成する複合的な処理手法等が研究されている。
特開2003−323640号公報 再表2009/131108号公報
エッジ抽出により屋根輪郭を取得する手法では、屋根輪郭のエッジを全て検出することは難しく、また屋根輪郭ではないエッジも検出されることから、屋根輪郭を精度良く取得することは容易ではない。特に、建物の密集地域においてその困難さは増す。
一方、画像分割による屋根輪郭を探索する手法では、建物領域と建物以外の領域とでの画像の色、テクスチャ、及びDSMの高さの違いによって輪郭を探索する。そのため、日照、陰影、植生、及びデータノイズ等の影響により、建物領域と建物以外の領域とを区別できず輪郭を正確に取得できないことがある。
概して、画像は複雑な地表面環境を反映する様々な情報を含み、かつ、場所によって千差万別である。既存の建物輪郭抽出手法は、個々の建物、及び建物に隣接する周辺領域から構成される局所領域環境の違いや、同じ建物における局所領域環境内の各部分の違いを十分に考慮しておらず、対象地域の全ての建物に対して単純な処理で輪郭抽出を行っている。この点に輪郭抽出の精度が実用に適したレベルに達していない原因があるものと思量する。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、好適な精度で建物輪郭を自動的に抽出することを可能とする建物輪郭抽出装置、建物輪郭抽出方法及び建物輪郭抽出プログラムを提供することを目的とする。
本発明に係る建物輪郭抽出装置は、建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定部と、前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割部と、前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出部と、前記概略形状に基づいて、多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定部と、を有する。
他の本発明に係る建物輪郭抽出装置においては、前記概略形状抽出部は、前記小片領域の統合において、前記スペクトル情報に基づいて植生領域と判断した前記小片領域を除外する一方、前記位置推定領域に対する前記概略形状の面積の割合が予め定めた閾値未満となる場合には、当該位置推定領域における前記植生領域の除外を行わずに前記概略形状の拡張を図る。
別の本発明に係る建物輪郭抽出装置においては、前記輪郭決定部は、前記概略形状において曲率が極値となる点を頂点とする多角形を原始輪郭として抽出する原始輪郭抽出部と、前記原始輪郭の各辺の位置を当該辺の近傍にて画像勾配が最大となるエッジ位置に基づいて修正し、当該辺と隣接する辺との角度を予め想定した複数の候補角度のうち最も近いものに修正し、前記原始輪郭を整形して前記建物輪郭を求める輪郭整形部と、を有する。
さらに別の本発明に係る建物輪郭抽出装置においては、前記輪郭整形部は、前記辺のうち互いに平行で所定間隔以下のものを1つの辺に合併する。
本発明に係る建物輪郭抽出方法は、建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定ステップと、前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割ステップと、前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出ステップと、前記概略形状に基づいて多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定ステップと、を有する。
本発明に係る建物輪郭抽出プログラムは、建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定手順と、前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割手順と、前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出手順と、前記概略形状に基づいて多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定手順と、をコンピュータに実行させる。
本発明によれば、好適な精度で建物輪郭を自動的に抽出することが可能となる。
本発明の実施形態に係る建物輪郭抽出装置の概略のブロック図である。 本発明の実施形態に係る建物輪郭抽出装置の概略の処理の流れを説明する模式図である。 抽出対象領域の空中写真画像の一例を示す模式図である。 図3の建物群に対応して領域認識・抽出処理で得られる建物オブジェクトの一例を示す模式的な平面図である。 図3の建物群に対応してPPM抽出処理で得られるPPMの一例を示す模式的な平面図である。 図4に示す建物オブジェクトと図5に示すPPMとに対応した建物成分PPMの合成結果を示す模式的な平面図である。 図6に示す合成結果に対し領域拡張による建物概略形状の整形処理を行った後の建物概略形状を示す模式的な平面図である。 輪郭整形部による処理を説明する模式的な平面図である。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る建物輪郭抽出装置10の概略のブロック図である。建物輪郭抽出装置10は、処理部12、表示部14、記憶部16及び操作部18を含んで構成される。
処理部12は、位置推定部20、領域分割部22、概略形状抽出部24及び輪郭決定部26を含んで構成される。また、輪郭決定部26は原始輪郭抽出部30及び輪郭整形部32を含んで構成される。
例えば、建物輪郭抽出装置10は、コンピュータを用いて構成することができ、そのCPUが処理部12を構成し、位置推定部20、領域分割部22、概略形状抽出部24及び輪郭決定部26は当該CPUにより実行されるプログラムによって実現できる。
記憶部16は、コンピュータに内蔵されるROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶部16は、位置推定部20、領域分割部22、概略形状抽出部24及び輪郭決定部26の処理プログラムを含む各種プログラムや各種データを記憶し、処理部12との間でこれらの情報を入出力する。また、記憶部16は処理部12が実行する処理で生成される各種の出力ファイルを記憶する。
表示部14は液晶モニタ等の画像表示装置であり、操作部18はキーボードやマウスなどで構成される。
建物輪郭抽出装置10は、表層データであるDSMデータと、航空機等から撮影された空中写真画像に基づいて得られるオルソ画像(正射投影画像)データとを入力データとし、それらから建物の輪郭(平面形状)を求める。
位置推定部20は、建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に相当する建物オブジェクト(位置推定領域)を求める。位置推定部20は、主としてDSMデータに基づいて、建物に応じた大きさの地上表層の凸部ごとに、当該凸部を内包した領域を建物オブジェクトとして定める。
領域分割部22は建物輪郭の抽出対象領域を、建物オブジェクトより細かい小片領域に分割する。各小片領域は、DSMデータから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む当該領域の属性が当該領域内で実質的に一様となる領域であり、互いに極めて類似した高さ特徴及びスペクトル特徴を属性として有するピクセルの塊である。この意味で、当該小片領域をここでは、純粋なピクセル集団(Pure Pixel Mass:PPM)と称する。PPMの大きさはPPMを構成するピクセルの属性の幅を緩く設定すれば大きくなり、逆に狭く設定すれば小さくなることが期待される。このような調整により、PPMの大きさは、建物オブジェクトと比較して微小であり、一方、ピクセルよりは十分に大きくなるように設定される。
概略形状抽出部24は、建物オブジェクトに対応する領域にて、属性が類似性を有する一群のPPMを統合して建物の概略形状を抽出する。
輪郭決定部26は、PPMの集合で表される建物概略形状に基づいて、多角形で表される建物輪郭を求める。例えば、原始輪郭抽出部30は、建物概略形状において曲率が極値となる点を頂点とする多角形を整形処理のベースとなる輪郭(原始輪郭)として抽出し、これに対して輪郭整形部32が整形処理を施して建物輪郭が決定される。例えば、輪郭整形部32は、原始輪郭の各辺の位置を当該辺の近傍にて画像勾配が最大となるエッジ位置に基づいて修正し、当該辺と隣接する辺との予め想定した角度である複数の候補角度のうち最も近いものに修正する等の整形処理を行う。
図2は、建物輪郭抽出装置10の概略の処理の流れを説明する模式図である。
DSMは地上の建物や植生等の地物を含んだ地表の標高を表す。これに対して、DTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)は、地物を含まない地表の標高を表す。DTMは、例えば、DSMデータ40が表すDSMに対して、モフォロジカルフィルタリングを施すことで得ることができる。さらに、地点毎にDSMデータ40からDTMデータ42を減算する正規化処理を行って、DSMに含まれるDTMの影響を除去し、地物のみの高さを表すNDSM(Normalized Digital Surface Model)データ44を生成する。このNDSMでは、地表面は基本的に高さ0となり、地物は有意な高さを有する。
ここで、NDSMにて有意な高さを与えられる地物には建物以外のものも含まれる。その中でも樹木等の植生は建物に相当する高さとなり得るため、位置推定部20による建物の認識及び、建物オブジェクトの抽出を行う処理S50などにおいてノイズ要因となる。そこで植生領域の抽出処理S52にて植生領域データ48を生成し、処理S50等にて建物輪郭の抽出対象領域から植生領域を除外するために用いる。
植生領域の抽出処理S52は、オルソ画像データ46と、NDSMデータ44とを用いて、オルソ画像中における植生領域を特定する。これにより、植生領域を示す情報を含んだ植生領域データ48が生成される。例えば、植生領域データ48は、植生領域では値“1”を有し、非植生領域では値“0”を有する画像データとして定義することができる。
オルソ画像データ46として、赤(R)、緑(G)、青(B)、近赤外(NIR)の複数成分からなるマルチスペクトル画像を用いた場合には、樹木の葉が近赤外光を強く反射する性質から植生領域を検知することができる。例えば、R成分のピクセル値D及びNIR成分のピクセル値DNIRを用いて次式で算出されるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)が所定の閾値以上の領域を植生領域と判定することができる。
NDVI=(DNIR−D)/(DNIR+D
また、植生領域であるか否かは、屋根や屋上は比較的大きな水平距離にわたって平滑な面が広がるのに対し、植生領域では、比較的小さい空間周期で高さの変動が生じる。この違いを植生領域の判別に利用することができる。具体的には、NDSMデータの隣接点間での勾配の分散が所定の閾値を超える領域を植生領域と判断することができる。また、高さの変動が航空機等から撮影した画像に生じるテクスチャに基づいて判別することも可能である。
建物の認識・抽出処理S50は位置推定部20により行われる。位置推定部20は処理S50として、まず、NDSMデータ44を用いて、高さ情報による地表面と地物の分離及び地物の抽出を行う。その際、植生領域データ48を用い植生領域と判断した地物を除去する。そして、画像データの領域分割による建物の存在位置の特定とその大体の領域の抽出等を行い、建物オブジェクトを決定する。領域分割処理は、地表の凸部のうち植生除去後に残ったものが互いに分離されるように抽出対象領域を分割する。この領域分割処理のアルゴリズムとしては例えば、ウォーターシェッド(watershed)セグメンテーションや、マーカーベースド(marker-based)・ウォーターシェッドセグメンテーションなどを用いることができる。図3は、抽出対象領域の空中写真画像の一例を示す模式図であり、複数の建物70が並んでいる様子を示している。図4は、図3の建物群に対応して領域認識・抽出処理S50で得られる建物オブジェクトの一例を示す模式的な平面図であり、建物70を大体包含する程度の大きさの領域が建物オブジェクト72として得られる。建物オブジェクト72は互いに分離して設定される。一方、その形状は建物70の形状とは一般的には一致していない。
なお、本実施形態では予め植生領域データ48として記憶されている画像データを用いて植生領域を除去しているが、領域認識・抽出処理S50にてオルソ画像データ46とNDSMデータ44から都度植生領域の画像データを求め、これを用いて植生領域を除去してもよい。
PPMの抽出処理S54は領域分割部22により行われる。それぞれの建物はそれ自体の全体としてのスペクトル特徴等の属性が相違し得るだけでなく、或る建物の部分ごとの属性も変動し得る。また或る建物に隣接する領域の属性も建物の周囲に沿って一様ではなく、例えば、1つの建物の隣接領域は庭、道路、樹木、日向、日陰など多種であることが多い。そのような多様な状態が存在する建物及び周辺領域を単純に建物か否かにステレオタイプに領域分割しようとすると、その判断基準は巨視的・概観的なものとなり、例えば、建物領域を抽出する際に周辺領域の一部も紛れ込んだり、その逆の現象が生じたりする可能性がある。この点、建物輪郭の抽出対象領域をPPMに分割する処理は、微視的な判断基準に基づく領域分割であり、PPMでは多様な状況を好適に区分けし易い。すなわち、或る建物の成分とほかの地物の成分(植生、道路等)、及び異なる建物の成分とを高精度に分離し得る。ここで、或る建物の屋根も複数の建物成分PPMに分割されるが、それらは互いの類似性に基づいてまとめて、独立したものとして抽出することが可能である。そこで、領域分割部22にて一旦、PPMに分割し、しかる後、後述するPPMの統合を行う。
図5は、図3の建物群に対応してPPM抽出処理S54で得られるPPMの一例を示す模式的な平面図であり、既に述べたようにPPM74は基本的に建物オブジェクト72より小さい領域となるように設定される。
処理S50にて建物オブジェクトが求められ、また処理S54にてPPMが求められると、建物成分を合成して概略形状を抽出する処理S56が概略形状抽出部24により行われる。当該処理S56は、建物オブジェクトに対応する領域にて、属性が類似性を有する一群の建物成分PPMを統合して建物の概略形状を抽出する。類似性を有する一群のPPMは例えば、それらの属性の分散が予め実験や経験に基づいて定めた閾値以下であることなどにより判定することができる。また、属性のうち高さ情報に関しては、屋根を構成する水平な、又は傾斜した平面の勾配をパラメータとして想定し、最小二乗法を用いて当該想定屋根面にあるPPM群を抽出することが考えられる。また、PPMの位置が建物オブジェクトの中央に近い程、建物成分である可能性が高く、縁に近づくほど周辺領域である可能性が高まると考えられることから、上述の分散の計算や最小二乗法において縁に近いほど誤差を重く評価してもよい。
図6は、図4に示す建物オブジェクトと図5に示すPPMとに対応した建物成分PPMの合成結果を示す模式的な平面図である。同図では、1つの建物に対応するPPM群76を太線で囲んで示しており、当該太線が建物の概略形状となる。
ここで、概略形状抽出部24は、植生領域データ48を参照して植生領域と思われるPPMを合成対象から除外して上述の処理を行う。そのため、植生領域の抽出処理S52の誤差により、実際は建物成分であるPPMが誤って植生として除去された状態で合成が行われ得る。このような場合に対処するために、概略形状抽出部24は、領域拡張による建物概略形状の整形処理S58を行う。
当該整形処理S58では、処理S56で求めた概略形状の建物オブジェクトに対する面積の割合が予め定めた閾値未満となる場合に、当該建物オブジェクトにおける植生領域の除外を行わずに再度、高さ属性やスペクトル属性の幅を緩和してPPMの合成処理を行うことにより概略形状の拡張を図る。
図7は図6に示す合成結果に対し当該整形処理S58を行った後の建物概略形状を示す模式的な平面図である。図6において、建物オブジェクトの面積Sに対する概略形状の面積Sの比の値S/Sが閾値未満と判断されたPPM群76bが整形処理S58の対象とされる。図7では拡張された概略形状78が得られた様子を示している。
各PPMは基本的には不規則な形状であり、それを合成して処理S56,S58で求められた概略形状も個々のPPMの大きさに応じた曲がりや凹凸を含み、直線からなる一般的な建物輪郭とは相違する。輪郭決定部26は次に述べる処理S60〜S64により、概略形状に基づいて多角形で表される建物輪郭を求める。
輪郭決定部26を構成する原始輪郭抽出部30は、建物概略形状のコーナーを検出し、建物輪郭の候補を抽出する処理S60を行う。具体的には、原始輪郭抽出部30は、概略形状を表す曲線(輪郭曲線)の曲率に基づいて頂点を定義して多角形を求め、これをおおもとの候補輪郭(原始輪郭)として抽出する。例えば、原始輪郭抽出部30は、まず、曲率が極値となる点を頂点候補として求める。次に、頂点候補が建物輪郭の頂点として適切か否かを判定し、不適切なものを頂点候補から除外し、残った頂点候補を頂点とする多角形を候補輪郭とする。
この判定において原始輪郭抽出部30は、輪郭曲線上にて頂点候補Cの左右の近傍に位置する点C,CとしてCからの直線距離がそれぞれ所定値rである点を選び、直線CとCとがなす角度αを算出する。そしてαが所定閾値αより大きい場合はCを頂点候補から削除する。閾値αは直線CとCとが同一直線をなすと推定できるような値に設定することができ、少なくとも90°より大きく設定される。
また、上述のαに基づく判定に代えて曲率の絶対値|ρ|に基づいて頂点候補の妥当性を判定することもできる。具体的には、αが閾値αより大きい場合を検出する判定に代えて|ρ|が所定閾値より小さい場合を検出する判定を行うことができる。
また、上述のαに基づく判定において、点C,CをCの近傍で|ρ|が最小値となる点を選んでも良い。
原始輪郭は輪郭整形部32により整形される。輪郭整形部32は、原始輪郭の各辺をなす線分(候補線分)の位置及び方向を調整する処理S62を行う。具体的には、原始輪郭の各辺の位置を当該辺の近傍にて画像勾配が最大となるエッジ位置に基づいて修正し、また、当該辺と隣接する辺との角度を予め想定した複数の候補角度のうち最も近いものに修正する。
次に輪郭整形部32は、候補線分の合併処理及びコーナー決め等の処理S64を行い建物輪郭を決定する。候補線分の合併処理では、候補線分のうち互いに平行で所定間隔以下のものを1つの候補線分に合併する。
図8は処理S62及びS64を説明する模式的な平面図である。図8において、点線の矩形が建物の実際の輪郭90を表している。ここでは、当該輪郭線をエッジ、つまり当該線上にて画像勾配が最大になるものとし、また輪郭90は矩形、すなわちその隣接する辺同士は直交するものと仮定している。
図8(a)には当該輪郭90に対する原始輪郭92を実線の多角形で表している。処理S62により、原始輪郭92の頂点C(k),C(k+1)を両端とする辺L(k)は、当該辺L(k)上での画像勾配が最大になるように位置を調整される。位置の調整は例えば、当該辺に直交する方向に行う。また最大値となる位置を探索する範囲(移動範囲)は例えば、建物の大きさから許容される移動幅を定めて当該幅内に限定することが好適である。例えば、当該移動幅は50cm程度とする等、画像の解像度等に応じて設定することができる。辺L(k)上での画像勾配としてL(k)に沿った方向における平均値が計算される。当該平均値として、簡易に辺L(k)上に設定したいくつかの代表点での平均を求めてもよい。例えば両端の点C(k),C(k+1)と中点P(k)とでの画像勾配の平均値を当該辺L(k)の画像勾配として、これが最大となる位置を探索する。図8(b)は各辺の位置の調整後の状態を示しており、例えば、辺L(k)の位置は線分L(k)に移動する。線分L(k)を含む直線をl(k)で表している。
さらに処理S62によって線分L(k)の方向が調整される。本実施形態においては輪郭90の隣接する辺同士は直交することを想定しているので、線分L(k)に対しその前後に接続している線分L(k-1),L(k+1)がなす候補角度として90゜を設定する。なお、原始輪郭抽出部30にて頂点候補のうち一つの直線(多角形の辺)の中間にあると推定されるものを除外する上述の処理を行わない場合は、候補角度としてさらに0°を設定してもよい。
線分L(k)の方向調整後の線分をL(k)と表す。角度の調整は例えば、或る線分Lの方向を基準として行うことができる。この場合、当該基準とする線分Lはそれ自体をLとし、当該Lから順次、隣接する線分Lについてその方向を調節しLを求める。例えば、L(k)とL(k+1)との角度は、それらが位置する直線l(k)とl(k+1)とのなす角度で定義する。上述の画像勾配が最大となることに基づいていずれの候補角度とするかが選択され、例えば、L(k)の中点を回転中心として直線l(k)の方向を変え、L(k)が位置する直線l(k)を得る。図8(c)は各候補線分の向きの調整後の状態を示している。
なお、角度調整の基準とした辺の方向θをパラメータとし、調整後の各線分Lでの画像勾配の総和が最大となるようにθを決定してもよい。
上記処理S62による整形では輪郭90の1つの辺に、互いに平行な複数の候補線分Lが生じ得る。図8(c)の候補線分94a,94bがその例である。処理S64はそのような平行な複数の候補線分を1つの候補線分に合併する。例えば、合併後の候補線分は、画像勾配が最大となる位置に設定することができ、候補線分を含む直線lも当該位置に設定される。図8(d)は候補線分94a,94bを合併して候補線分96とした状態を示している。合併を行う平行な線分間の距離の閾値は例えば、50cm程度以下とすることができる。また、当該閾値は画像の解像度等に応じて設定することができる。
合併処理を行うと、輪郭90の辺ごとに直線lが1つ定まる。このl(k)とl(k+1)との交点を新たなコーナーCと定義し、コーナーCで定義される多角形を、建物輪郭の抽出結果とする。
また、上述の処理に用いる空中写真画像は、航空機以外に高分解能衛星から取得した画像を用いることもできる。また、DSMは、空中から撮影したステレオ画像から取得したもの以外に、航空機等から地上へレーザを照射して取得したものであってもよい。
以上、実施形態を用いて説明した本発明によれば、航空機等の画像及びDSMデータを利用し、建物の2次元外周輪郭の自動抽出が行われる。その処理は、個々の建物における局所領域環境の違いに対応し、精度良い形状・位置での建物輪郭の抽出を可能とする。例えば、本発明の建物輪郭抽出装置等は建物密集地域においても建物輪郭の抽出が可能である。また、本発明による建物輪郭抽出処理は、パラメータの設定の仕方やデータノイズの影響を受けにくい。
10 建物輪郭抽出装置、12 処理部、14 表示部、16 記憶部、18 操作部、20 位置推定部、22 領域分割部、24 概略形状抽出部、26 輪郭決定部、30 原始輪郭抽出部、32 輪郭整形部。

Claims (6)

  1. 建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定部と、
    前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割部と、
    前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出部と、
    前記概略形状に基づいて、多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定部と、
    を有することを特徴とする建物輪郭抽出装置。
  2. 請求項1に記載の建物輪郭抽出装置において、
    前記概略形状抽出部は、前記小片領域の統合において、前記スペクトル情報に基づいて植生領域と判断した前記小片領域を除外する一方、前記位置推定領域に対する前記概略形状の面積の割合が予め定めた閾値未満となる場合には、当該位置推定領域における前記植生領域の除外を行わずに前記概略形状の拡張を図ること、を特徴とする建物輪郭抽出装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の建物輪郭抽出装置において、
    前記輪郭決定部は、
    前記概略形状において曲率が極値となる点を頂点とする多角形を原始輪郭として抽出する原始輪郭抽出部と、
    前記原始輪郭の各辺の位置を当該辺の近傍にて画像勾配が最大となるエッジ位置に基づいて修正し、当該辺と隣接する辺との角度を予め想定した複数の候補角度のうち最も近いものに修正し、前記原始輪郭を整形して前記建物輪郭を求める輪郭整形部と、
    を有することを特徴とする建物輪郭抽出装置。
  4. 請求項3に記載の建物輪郭抽出装置において、
    前記輪郭整形部は、さらに、前記辺のうち互いに平行で所定間隔以下のものを1つの辺に合併すること、を特徴とする建物輪郭抽出装置。
  5. 建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定ステップと、
    前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割ステップと、
    前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出ステップと、
    前記概略形状に基づいて多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定ステップと、
    を有することを特徴とする建物輪郭抽出方法。
  6. 建物輪郭の抽出対象領域における建物の概略位置に関し、地物を含んだ地上表層の標高を表す表層データに基づいて、前記建物に応じた大きさの前記地上表層の凸部毎に、当該凸部を内包した位置推定領域を定める位置推定手順と、
    前記抽出対象領域を、それぞれ前記凸部領域より小さい領域であり、前記表層データから得られる高さと空中写真画像から得られるスペクトル情報とを含む属性が当該領域内で一様となる複数の小片領域に分割する領域分割手順と、
    前記位置推定領域にて、前記属性が類似性を有する一群の前記小片領域を統合して前記建物の概略形状を抽出する概略形状抽出手順と、
    前記概略形状に基づいて多角形で表される前記建物輪郭を求める輪郭決定手順と、
    をコンピュータに実行させるための建物輪郭抽出プログラム。
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