以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
図1は、本発明の実施の形態による組電池の異常検出装置および当該異常検出装置が適用される電気システム200の構成を示す概略ブロック図である。
図1を参照して、電気システム200は、たとえばハイブリッド自動車や電気自動車等の電力によって車両駆動力を発生可能な機構を備えた車両に搭載される。電気システム200は、組電池10と、組電池10の異常検出装置100と、負荷12とを備える。
組電池10は、直列接続された複数個の電池セルCL(1)〜CL(n)を含む(n:2以上の整数)。組電池10は、直流電力を負荷12へ供給する。また、組電池10は負荷12から供給される直流電力によって充電される。
図2は、負荷12の構成例を示す回路図である。
図2を参照して、負荷12は、コンバータ50と、インバータ60と、交流電動機70と、制御装置80とを含む。
交流電動機70は、たとえば、ハイブリッド自動車または電気自動車等の電動車両の駆動輪を駆動するためのトルクを発生する駆動用電動機である。交流電動機70は、一般的には、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成される。また、この交流電動機70は、ハイブリッド自動車では、エンジンにて駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよい。さらに、交流電動機70は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。
交流電動機70は、代表的には、3相の永久磁石モータで構成される。U,V,W相の3つのコイルの一端が中点に共通接続されて構成される。
図3には、交流電動機70の動作領域が示される。図3の横軸は交流電動機70の回転数Nmを示し、縦軸は交流電動機70のトルクTmを示す。交流電動機70の動作状態は、回転数およびトルクの組合せによって定義される。
図3を参照して、交流電動機70の最大出力線71は、T=Tmax(上限トルク)の直線、N=Nmax(上限回転数)の直線、および、T<TmaxかつN<Nmaxの領域での曲線から構成される。最大出力線71の曲線部分は、上限出力パワーに対応する。交流電動機70のトルクおよび回転数が最大出力線71の内側となるように、交流電動機70の動作指令値は設定される。
再び図2を参照して、システムリレーSR1は、組電池10および電力線BLとの間に接続され、システムリレーSR2は、組電池10および電力線NLの間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置80からの信号SEによりオンオフされる。平滑コンデンサC1は、電力線BLおよびNLの間に接続される。電力線PLおよびNLの間の直流電圧VLは、電圧センサ11bによって検出される。一方、組電池10全体の出力電圧Vbは、電圧センサ11aによって検出される。電圧センサ11a,11bによる検出値は、制御装置80へ送出される。
コンバータ50は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)Q1,Q2とを含む。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
コンバータ50は、いわゆる昇圧チョッパ回路の構成を有する。スイッチング素子Q1,Q2のオンオフは、制御装置80からのスイッチング制御信号S1,S2に応答して制御される。
インバータ60は、スイッチング素子Q3〜Q8によって構成された、一般的な三相インバータである。インバータ60の各相アームのスイッチング素子の中間点は、交流電動機70のU,V,W相の3つのコイルと接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオンオフは、制御装置80からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。
コンバータ50は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオンオフするように制御される。コンバータ50は、昇圧動作時には、組電池10から供給された直流電圧VLを直流電圧VHへ昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1を介して、電力線PLへ供給することにより行なわれる。
また、コンバータ50は、降圧動作時には、直流電圧VHを直流電圧VLに降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2を介して、電力線BLへ供給することにより行なわれる。これらの昇圧動作または降圧動作における電圧変換比(VHおよびVLの比)は、上記スイッチング周期に対するスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)により制御される。なお、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定すれば、VH=VL(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
平滑コンデンサC0は、電力線PL上の直流電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧(直流電圧VH)を検出し、その検出値を制御装置80へ出力する。
インバータ60は、制御装置80からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作によって、交流電動機70のトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように交流電動機70を駆動する。
トルク指令値Trqcomは、電動車両の車両状態(車速、路面勾配等)およびユーザのペダル操作に応じて、電動車両が所望の駆動力あるいは制動力を出力するように設定される。たとえば、電動車両の回生制動時には、交流電動機70のトルク指令値Trqcomは負に設定される(Trqcom<0)。この場合には、インバータ60は、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、交流電動機70が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を平滑コンデンサC0を介してコンバータ50へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
電流センサ74は、交流電動機70に流れる電流(相電流)を検出し、その検出値を制御装置80へ出力する。なお、三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置してもよい。
回転角センサ(レゾルバ)75は、交流電動機70のロータ回転角ANGを検出し、その検出した回転角ANGを制御装置80へ送出する。制御装置80では、回転角ANGに基づき交流電動機70の回転数Nmを算出できる。なお、回転角センサ75については、回転角ANGを制御装置80にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
制御装置80は、電子制御ユニット(ECU)により構成され、予め記憶されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、負荷12の動作を制御する。
制御装置80は、トルク指令値Trqcom、電圧センサ11bによって検出された直流電圧VL、電圧センサ13によって検出された直流電圧VHおよび電流センサ74によって検出されるモータ電流iv,iw、回転角センサ75からの回転角ANG等に基づいて、コンバータ50およびインバータ60の動作を制御する。すなわち、コンバータ50およびインバータ60を上記のように制御するためのスイッチング制御信号S1〜S8を生成して、コンバータ50およびインバータ60へ出力する。
具体的には、制御装置80は、電力線PLの直流電圧VHをフィードバック制御し、直流電圧VHが電圧指令値に一致するようにスイッチング制御信号S1,S2を生成する。また、制御装置80は、交流電動機70がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、スイッチング制御信号S3〜S8を生成してインバータ60へ出力する。さらに、制御装置80は、負荷12の起動/停止に応答して、システムリレーSR1,SR2のオンオフを制御する。
このように、本実施の形態による組電池の異常検出装置が適用される電気システム200は、交流電動機70が、電力変換器(図2の例では、コンバータ50およびインバータ60)を介した、組電池10との間の電力変換によって駆動制御されるように構成されている。したがって、組電池10から入出力される電流(バッテリ電流)Ibの挙動は、負荷に含まれる交流電動機70の動作状態に応じて変化する。
次に、組電池10の異常検出のための構成について詳細に説明する。
再び図1を参照して、異常検出装置100は、電池セルCL(1)〜CL(n)にそれぞれ対応して設けられた検知ユニット20(1)〜20(n)と、伝送回路25と、異常監視回路30とを含む。
検知ユニット20(1)〜20(n)へは、対応する電池セルCL(1)〜CL(n)のそれぞれの出力電圧Vc(1)〜Vc(n)が入力される。検知ユニット20(1)は、異常監視回路30から開始トリガTRGを与えられるのに応答して作動して、電池セルCL(1)の出力電圧Vc(1)と所定の判定電圧Vxとを比較する。そして、検知ユニット20(1)は、電圧比較結果に従って、検出信号OD(1)を出力する。具体的には、検知ユニット20(1)は、出力電圧Vc(1)が判定電圧Vxよりも低下すると(Vc(1)<Vx)、論理ハイレベル(以下、単にHレベルとも表記する)の検出信号OD(1)を出力する。一方、検知ユニット20(1)は、出力電圧Vc(1)が判定電圧Vxを下回っていないとき(Vc(1)≧Vx)には、論理ローレベル(以下、単にLレベルとも表記する)の検出信号OD(1)を出力する。
検知ユニット20(2)は、前段の検知ユニット20(1)から検出信号OD(1)が出力されるのに応答して動作して、電池セルCL(2)の出力電圧Vc(2)と所定の判定電圧Vxとを比較する。そして、検知ユニット20(2)は、検知ユニット20(1)での電圧比較結果と、自身での電圧比較結果との論理和を取る態様で、検出信号OD(2)を出力する。
すなわち、検出信号OD(1)がHレベルであるときには、検知ユニット20(2)は、Vc(2)≧Vxであっても、Hレベルの検出信号OD(2)を出力する。これに対して、検出信号OD(1)がLレベルであるときには、検知ユニット20(2)は、Vc(2)と判定電圧Vxとの比較結果に従って、すなわち、VC(2)<VxのときはHレベルの検出信号OD(2)を出力する一方で、VC(2)≧VxのときにはLレベルの検出信号OD(2)を出力する。
図4は、第i番目の検知ユニット20(i)の構成例を示すブロック図である。図2には、i=2〜nの検知ユニット20(i)の構成が示される。
図4を参照して、検知ユニット20(i)は、電圧比較器21と、論理ゲート22とを有する。電圧比較器21は、検知ユニット20(i)に対応する電池セルCL(i)の出力電圧Vc(i)と,所定の判定電圧Vxとを比較して、Vc(i)<Vxとなったときには、出力電圧をHレベルに設定する一方で、Vc(i)≧Vxのときには出力電圧をLレベルに設定する。
論理ゲート22は、電圧比較器21の出力信号と、前段の検知ユニット20(i−1)からの検出信号OD(i−1)の間の論理和(OR)演算結果を、検知ユニット20(i)の検出信号OD(i)として出力する。
再び図1を参照して、各検知ユニット20(検知ユニット20(1)〜20(n)を包括的に表記するもの。以下同じ)での電圧比較結果が反映された検出信号OD(検出信号OD(1)〜OD(n)を包括的に表記するもの。以下同じ)は、論理和演算を行ないながら、次段の検知ユニット20へ順次伝達される。この結果、検知ユニット20(1)〜20(n)は、開始トリガTRGに応答して順次動作する。
各検知ユニット20の動作時間は同様であるから、結果的には、一定周期で対応の電池セルCL(1)〜CL(n)の出力電圧Vc(1)〜Vc(n)が、順番に判定電圧Vxとの比較される。そして、最終段の検知ユニット20(n)が出力する検出信号OD(n)は、開始トリガTRGに応答した、電池セルCL(1)〜CL(n)と判定電圧Vxとの一連の電圧比較において、出力電圧が判定電圧Vxよりも低下した電池セルが存在するか否かを示す信号である。
伝送回路25は、最終段の検知ユニット20(n)が出力した検出信号OD(n)を、フォトカプラ等で絶縁した上で、最終的な判定信号FVを生成する。すなわち、判定信号FVは、開始トリガTRGに応答して生成されて、異常監視回路30へ入力される。上述のように、判定信号FVは、電池セルCL(1)〜CL(n)のいずれかで出力電圧が判定電圧Vxよりも低下する異常(以下、「セル電圧低下異常」とも称する)が発生しているか否かを示す。具体的には、電池セルCL(1)〜CL(n)のいずれかで出力電圧が判定電圧Vxよりも低下したときには、判定信号FVはHレベルに設定される。一方で、電池セルCL(1)〜CL(n)の全ての出力電圧が判定電圧Vxを下回っていないときには、判定信号FVはLレベルとされる。
電流センサ15は、組電池10を通過するバッテリ電流Ibを検出する。電池セルCL(1)〜CL(n)が直列接続されているので、バッテリ電流Ibは、電池セルCL(1)〜CL(n)に共通である。電流センサ15によって、バッテリ電流Ibの電流値を求めることができる。その一方で、異常検出装置100では、電池セルCL(1)〜CL(n)の出力電圧Vc(1)〜Vc(n)については、電圧値を検出するための電圧センサは配置されておらず、判定電圧Vxとの電圧比較結果のみが取扱われる。すなわち、異常検出装置100は、電池セル毎の電圧監視に関して、多数の電池セルCL(1)〜CL(n)の電圧値(アナログ値)を検出する電圧センサを非配置とする簡易な構成とされていることが理解される。
異常監視回路30は、上位ECU(たとえば、制御装置80)からの開始指示信号STRに応答して電池セルCL(1)〜CL(n)の異常検出動作を実行する。すなわち、開始指示信号STRに応答して、検知ユニット20(1)へ与えられる開始トリガTRGを生成する。
さらに、異常監視回路30は、開始トリガTRGに応答して返送された判定信号FVと、電流センサ15の出力のサンプリング値とに基づいて、上記電圧低下異常の発生時には、内部抵抗の過上昇(以下、単に「内部抵抗異常」とも称する)が発生しているか否かを判定する。
そして、異常監視回路30は、電池セルCL(1)〜CL(n)の異常検出結果(少なくとも、セル電圧低下異常および内部抵抗異常に関する検出結果を含む)を示す信号RSLを、上位ECUへ出力する。
なお、本実施の形態における内部抵抗異常の検出と直接関連しないために図示は省略しているが、各電池セルの出力電圧Vc(1)〜Vc(n)が、上限電圧(判定電圧Vxよりも高い)を超えているかどうかを判定する検知ユニット(図示せず)をさらに設けることが好ましい。これにより、電池セルCL(1)〜CL(n)の各々の過充電側の電圧異常についても監視可能に、異常検出装置100を構成することができる。
次に、異常監視回路30による内部抵抗異常の検出について詳細に説明する。なお、異常監視回路30は、代表的にはECUによって構成することが可能であり、予め格納されたプログラムの実行によるソフトウェア処理および/または予め作製された専用の電子回路(図示せず)によるハードウェア処理によって、以下に説明する異常検出動作を実行するように構成される。
図5は、異常監視回路30による内部抵抗異常の検出手法を説明する概念図である。
図5を参照して、電池セルの内部抵抗は、バッテリ電流Ibによって生じる、開放電圧Voからの電圧降下によって検出できる。すなわち、電池セルの出力電圧Vcは、内部抵抗に相当する傾きに従って、バッテリ電流Ibの増大に応じて低下することとなる。
電池セルの内部抵抗が上昇すると、図5に示したIb−Vc直線の傾き(負値)が急になり、同一のバッテリ電流Ibにおける出力電圧Vcが低下することになる。そして、内部抵抗異常を検出する閾値に相当する内部抵抗の境界値を定めることにより、内部抵抗が当該境界値の下で出力電圧Vc=Vxとなったときの電流Ixを求めることができる。
このように求めた電流Ixは、電池セルCL(1)〜CL(n)のいずれかの出力電圧が判定電圧Vxを下回ったときのバッテリ電流Ibと比較することによって、内部抵抗異常検出の判定電流とすることができる。すなわち、セル電圧低下異常の検出時には、バッテリ電流Ib<Ixのときには内部抵抗異常を検出する一方で、Ib≧Ixのときには内部抵抗異常を検出しないようにすることで、各電池セルの出力電圧値を取得するための電圧センサを非配置とする構成の異常検出装置100によっても、異常検出動作において、内部抵抗異常の発生有無を判定することができる。
しかしながら、出力電圧Vcはバッテリ電流Ibによって変わってくるので、電圧値を用いることなくバッテリ電流Ibと判定電流Ixとの比較によって内部抵抗異常の有無を判定するには、セル電圧低下異常が発生したタイミングにおけるバッテリ電流Ibを判定電流Ixと比較することが必要である。
ここで、判定電流Ixと比較されるバッテリ電流Ibは、電流センサ15の出力値を異常監視回路30によってサンプリングすることによって得られる。したがって、セル電圧低下異常の検出タイミングと、バッテリ電流Ibのサンプリングタイミングとにずれが存在していると、このタイミングずれによって内部抵抗異常が正確に検出できなくなるおそれがある。特に、バッテリ電流Ibを過小に検出することによって、内部抵抗異常を誤検出することが懸念される。
一方で、検知ユニット20(1)〜20(n)の動作周期に対応させて電流センサ15の出力値をサンプリングする構成とすることは、高速の電流サンプリング動作を必要とするだけでなく、各検出信号OD(1)〜OD(n)を異常監視回路30へ入力することが必要となるため、入出力信号線の増加による構成の複雑化および装置の高コストを招く。したがって、簡易化された構成を有する本実施の形態による異常検出装置100では、このような高速サンプリングを回避した電流サンプリングの下で、内部抵抗異常の誤検出を防止するために、以下のような検出手法を採用する。
図6は、本発明の実施の形態による組電池の異常検出装置における、セル抵抗異常の検出手法を説明するタイミングチャートである。
図6を参照して、上位ECUより異常監視回路30へ開始指示信号STRが与えられることに応答して、開始トリガTRGが発生されると、電池セルCL(1)〜CL(n)の一連の異常検出動作が実行される。
異常監視回路30は、開始指示信号STRが与えられても、交流電動機70の動作状態が所定の条件を満たしている場合には、開始トリガTRGを発生しない。後述するように、この所定条件は、バッテリ電流のリップルに影響を与える交流電動機70の動作状態に応じて定められる。
開始トリガTRGが発生されると、図1で説明したように、検知ユニット20(1)〜20(n)が順次動作する。そして、各電池セルCL(1)〜CL(n)の出力電圧と判定電圧Vxとの電圧比較が、時刻Tv1〜Tvnの間にそれぞれ実行される。すなわち、時刻Tv1〜Tvnは、検知ユニット20(1)〜20(n)のそれぞれにおける電圧サンプリングタイミングに相当する。
さらに、時刻Tvnで検知ユニット20(n)による電圧比較が完了した後、伝送回路25を経由して、時刻Tvcに判定信号FVが異常監視回路30へ到達する。時刻Tv1〜TVnの所要時間T1は、検知ユニット20(1)〜20(n)の動作時間および検出信号OD(1)〜OD(n−1)の伝達時間に相当する。また、時刻Tvn〜Tvcの所要時間T2は、伝送回路25での所要時間(たとえば、フォトカプラによる伝送遅れ時間を含む)に相当する。
ただし、本実施の形態による異常検出装置100の構成では、時刻Tv1〜Tvnのそれぞれを異常監視回路30から直接把握することはできない。ただし、上記の所要時間T1,T2は、予め把握しておくことが可能である。したがって、開始トリガTRGの発生タイミングを基に、電圧サンプリングの実行が想定される期間Ta〜Tb(以下、電圧サンプリング期間とも称する)を設定することができる。
電流サンプリングは、上述の電圧サンプリング期間Ta〜Tbにおいて、サンプリング周期ΔTi毎に所定回数繰返し実行される。図6の例では、所定回数は3回であり、サンプリング周期ΔTi毎の時刻Ti1,Ti2,Ti3のそれぞれにおいて電流サンプリングが実行される。さらに、初回の電流サンプリング時刻Ti1は、電圧サンプリング期間の開始時刻Taからの遅れが(ΔTi/2)以下となるように設けられる。たとえば、Ti1は、Taよりも(ΔTi/2)後に設定される。また、最終の電流サンプリング時刻Ti3は、電圧サンプリング期間の終了時刻Tbまでの時間が(ΔTi/2)以下となるように設けられる。たとえば、Ti3は、Tbよりも(ΔTi/2)前に設定される。
サンプリング周期ΔTiおよび、初回の電流サンプリングタイミング(時刻Ti1)と電圧サンプリングの開始タイミング(時刻Ta)との関係を適切に設定することにより、電圧サンプリング期間である時刻Ta〜Tbよりも、ΔTi/2以下である所定時間だけ内側の期間内に、電流サンプリングタイミングTi1〜Ti3が設定される。
図7には、異常監視回路30による内部抵抗異常検出を実現するための機能ブロック図が示される。図7に示される各ブロックの機能は、異常監視回路30によるソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実現される。
図7を参照して、異常監視回路30は、リップル判定部31と、電流サンプリング部32と、最大値抽出部34と、修正量設定部36と、電流比較部38とを含む。
リップル判定部31は、交流電動機70の動作状態が所定の条件を満たしているか否かを判定する。所定条件は、バッテリ電流Ibのリップル(以下、電流リップル)が大きくなるような交流電動機70の動作状態に対応して予め定められる。そして、リップル判定部31は、所定条件の成立時には、開始指示信号STRが与えられても、開始トリガTRGを発生しない。一方で、リップル判定部31は、所定条件の不成立時には、開始指示信号STRが与えられるのに応じて開始トリガTRGを生成する。
電流サンプリング部32、最大値抽出部34、修正量設定部36、および電流比較部38は、開始トリガTRGの生成に応答して、一連の異常検出動作を実行する。
電流サンプリング部32は、開始トリガTRGに応答して、図6に示したタイミングに従って所定のサンプリング周期ΔTi毎に、電流センサ15によって検出されたバッテリ電流Ibをサンプリングする。これにより、図6に示したように、電流サンプリング値I(Ti1),I(Ti2),I(Ti3)が取得される。最大値抽出部34は、電流サンプリング部32によって抽出された電流サンプリング値I(Ti1)〜I(Ti3)のうちの最大値を抽出して、最大電流Imaxを出力する。
修正量設定部36は、図5に示した判定電流Ixに対する修正電流Idを設定する。この修正電流Idは、バッテリ電流Ibのリップル成分に起因して、上述した、セル電圧低下異常の検出と、バッテリ電流Ibのサンプリングとの間のタイミングずれによってもたらされる、電流変化量の最大値を想定したものである。そして、本来の判定電流Ix(図5)を修正電流Idによって修正した電流値(Ix−Id)が、電流比較部38に入力される。
電流比較部38は、判定信号FVがHレベルに設定されたとき、すなわち、いずれかの電池セルで出力電圧が判定電圧Vxよりも低下したときに、内部抵抗異常の有無を示す異常検出信号RSLを出力する。
電流比較部38は、最大値抽出部34からの最大電流Imaxと、修正された判定電流(Ix−Id)とを比較する。そして、Imax<(Ix−Id)のときに、内部抵抗異常を検出して異常検出信号RSLをHレベルに設定する。一方、Imax≧(Ix−Id)のときには、電流比較部38は、異常検出信号RSLをLレベルに設定するので、内部抵抗異常は検出されない。
ここで、図8を用いて修正電流Idの設定について説明する。上述のように、修正電流Idは、バッテリ電流Ibの電流リップル(交流成分)に対応するために設定される。
図8は、電圧および電流の検出タイミングのずれに起因して生じる電流変動を説明する概念図である。
図8を参照して、バッテリ電流Ibのリップル成分によって、電池セルの出力電圧Vcが変化している下で、時刻TvにおいてVc<Vxが検出されたものとする。すなわち、時刻Tvは、セル電圧低下異常の検出タイミングに相当する。
一方で、電流サンプリングタイミングTiは、時刻Tvとは無関係に、所定のサンプリング周期ΔTiに従って設定されている。したがって、電圧検出タイミングである時刻Tvおよび電流検出タイミングである時刻Tiの間には、検出ずれTdが存在する。そして、この検出ずれTdによって、電流リップルの位相差に伴う電流変動Iddが発生することになる。
ここで、バッテリ電流Ibのリップル成分を正弦波電流と仮定とすると、検出ずれTdによる電流変動Iddは下記(1)式で示されることが理解される。
Idd=Ipp・sin(π−(Td/Ts)・π) …(1)
(1)式において、Ippは、正弦波電流と仮定した電流リップルのピーク−ピーク値(振幅の2倍)に相当し、Tsは電流リップルの周期に相当する。
電流変動Iddについては、電流検出タイミングTiの位相によって、プラス側およびマイナス側のいずれにも発生し得るが、本実施の形態では内部抵抗が閾値よりも上昇する異常の誤検出防止を目的とするため、電流変動Iddについては電流の過小検出する方向についてのみを考慮すればよい。このような観点において、(1)式中における、電流変動Iddの最大値をどのように設定すればよいかについて検討する。
1回の異常検出動作において、図6に示したように3回の電流サンプリングが、時刻Ti1〜Ti3に行なわれる。そして、時刻Taから時刻Tbまでの間に、電池セルCL(1)〜CL(n)の電圧比較が実行される。
したがって、電池セルの出力電圧と判定電圧との比較の結果セル電圧低下異常が検出される、図8の電圧検出タイミングTvは、電圧サンプリング期間である時刻Ta〜Tbの間のいずれかに存在するようになっている。
この結果、電圧検出タイミングTvと、電流サンプリングタイミングTiとのずれの最大値が、サンプリング周期の半周期(ΔTi/2)となることが理解できる。したがって
、Td=(ΔTi/2)を(1)式に代入することによって、判定電流Ixに対する修正電流Idを設定することができる。
たとえば、発生し得る最大の電流リップルに対応させて、ピーク−ピーク値Ipp(振幅)および周期Tsを予め設定することができる。特に、修正電流Idが内部抵抗異常の誤検出を防止するために判定電流Ixを低下させる方向に作用する点を考慮すると、負荷(モータ)の仕様に照らして想定されるIppの最大値およびTsの最小値を用いて、修正電流Idを設定することができる。
電流比較部38は、時刻Ti1〜Ti3での電流サンプリング値I(Ti1)〜I(Ti3)のうちの最大値(最大電流Imax)が、修正された判定電流(Ix−Id)よりも低いときに内部抵抗異常を検出する。このため、最大電流Imaxに対する電流変動Iddについて、式(1)中のTdについて、検出ずれの最大値であるサンプリング周期の半周期(ΔTi/2)と置くことによって、電流リップルの影響を最大限に見積もったときの電流変動Iddを算出することができる。なぜなら、図6に示したように、電流サンプリング期間Ta〜Tbよりも(ΔTi/2)以下の所定時間ずつ内側の期間内に電流サンプリングタイミングを設けることにより、時刻Tv1〜Tvnのいずれにおいてセル電圧低下異常が検出された場合でも、その電圧検出タイミング(図8のTv)とその前後での電流サンプリングタイミングとのずれは、必ず(ΔTi/2)以下となるからである。
このように、異常監視回路30では、判定電流Ixに対する修正電流Idを設けることによって、電圧および電流の検出タイミングのずれに起因した、電流リップルの影響によって電流値が過小に検出されることによる内部抵抗上昇の誤検出が防止される。したがって、誤検出を防止する観点からは、ピーク−ピーク値Ippの想定される最大値に合わせて、修正電流Idを大きい値に設定することが好ましい。一方で、修正電流Idを過大にすると、内部抵抗異常の検出精度が低下する。
電流リップルの周波数は、コンバータ50およびインバータ60でのスイッチング周波数、および、交流電動機の回転数に応じた周波数の成分を有する。また、電流リップルのピーク−ピーク値Ippは、負荷12に含まれる車両駆動力発生用の交流電動機70の動作状態によって変化する。したがって、修正電流Ixに対して電流リップルの大きさが変化することにより、内部抵抗異常を誤検出する虞がある。
図9には、バッテリ電流のリップルと内部抵抗異常検出との関係を説明する概念的な波形図が示される。
図9を参照して、バッテリ電流Ibのリップルは、交流電動機70の動作状態に応じて変化する。ただし、リップル電流を除いたバッテリ電流Ibの平均値(図9中の点線)は、判定電流Ixよりも大きく、内部抵抗異常は発生していないものとする。
しかしながら、電池セルVcの出力電圧が変動して、判定電圧Vxよりも低下した際に、時刻ta,tb,tcでは、リップルの影響によってバッテリ電流Ibの瞬時値が低下しているため、Ib<(Ix−Id)が成立してしまう。これにより、内部抵抗異常が誤検出されてしまうことが理解される。このように、電流リップルが大きい状態では、サンプリングタイミングのずれによる電流変動の影響が大きくなるので、バッテリ電流Ibのサンプリング値と、判定電流(Ix−Id)との比較に基づいて、内部抵抗異常を検出することが困難となる。
一般的には、バッテリ電流Ibのリップルは、大電流時、すなわち、交流電動機70の出力電力(モータ電力)が大きくなったときに大きくなる。図10には、モータ電力とバッテリ電流との関係を示す概念的な波形図が示される。
図10を参照して、モータ電力Pmが閾値Ptを超える期間Tyにおいて、バッテリ電流Ibのリップルが大きくなっていることが理解される。したがって、モータ電力Pmが閾値Ptよりも大きい場合には、誤検出を防止するために、異常検出動作を禁止することが好ましい。
一方で、発明者は、図10の期間Txのように、モータ電力が比較的小さくても、リップルが期間T2と同等に大きくなるケースがあることを発見した。特に、交流電動機70の動作状態として、回転数NmおよびトルクTmに基づいて、電流リップルが大きくなる条件を抽出することができることを見出した。
図11は、交流電動機の動作状態(回転数・トルク)とバッテリ電流との関係の一例を示す波形図である。図11には、交流電動機70の出力による車両加速時の動作波形が示される。
図11を参照して、車両加速のために交流電動機70のトルクTmを増大することによって、回転数Nmが上昇する。この際に、回転数が低回転から高回転に上昇する途中で、電流リップルが大きくなる期間(Tz)が存在する。図11の動作例では、回転数Nmが滑らかに上昇するように、トルクTmの推移が設定されているため、図11の後半部分では、交流電動機70は、低トルク・高回転の状態となる。
モータ電力Pm(図10)は、回転数NmおよびトルクTmの積に比例する。したがって、モータ電力は上記後半部分と期間Tzとで同等である。しかしながら、電流リップルについては、期間Tzにおいて特に大きくなっていることが理解される。
高トルク時には、組電池10からの出力電流が増加することによって、電流リップルも増大し易くなる。さらに、低回転数時には、交流電動機70の回転数に応じた、電流リップルの周波数成分が、コンバータ50、インバータ60および交流電動機70によって構成されるLC回路の共振周波数に近付くことによって、電流リップルの振幅が大きくなる。
このように、交流電動機70の特定の回転数領域(範囲)において、電流リップルが大きくなる場合には、当該回転数領域において、異常検出動作を禁止することが好ましい。なお、本実施の形態では、低回転数領域において、バッテリ電流Ibのリップルが大きくなっているが、負荷12の構成に応じて、電流リップルが大きくなる回転数領域は変化する場合がある。
リップル判定部31は、交流電動機70の回転数が所定範囲内であって、かつ、トルクが閾値よりも高い動作状態において、開始指示信号STRに応答した開始トリガTRGの生成を禁止する。これにより、図3中に示した、低回転数・高トルクの領域AR1における、内部抵抗異常の検出動作が禁止される。すなわち、リップル判定部31は、「禁止部」に対応する。
さらに、リップル判定部31は、図10で説明した大電力状態に対応させて、交流電動機70の電力が閾値(Pt)よりも大きい動作状態において、開始指示信号STRに応答した開始トリガTRGの生成を禁止することが好ましい。これにより、図3中に示した、大電力領域AR2における、内部抵抗異常の検出動作が禁止される。
なお、上記の領域AR1,AR2を規定するための判定値については、電流リップルの大きさを確認する実機実験の結果等に基づいて、予め設定することができる。
このように、本実施の形態による異常検出装置100では、交流電動機70の動作状態に応じて、電流リップルが大きくなる場合には、内部抵抗異常の検出を禁止する。したがって、組電池の電池セル毎の電圧監視機能として、電圧値を直接検出することなく所定の判定電圧との比較結果を検出するように簡易に構成された異常検出装置において、内部抵抗異常(過上昇)の誤検出を防止することでできる。特に、誤検出を防止するための判定電流Ixの修正値(修正電流Id)を過大にする必要がないので、異常検出動作の実行時における内部抵抗異常の検出精度を向上することができる。
また、図7の実施例では、異常監視回路30によって交流電動機70の動作状態に基づいて開始トリガTRGの生成を制御する構成を説明したが、上位ECU側で、交流電動機70の動作状態に応じて異常検出動作を禁止する構成とすることも可能である。この場合には、異常監視回路30が開始トリガTRGの生成を禁止するような動作状態において、上位ECU側が開始指示信号STRを生成しないようにすればよい。
あるいは、異常監視回路30において、開始トリガTRGについては開始指示信号STRに応じて常時生成する構成としても、同様の制御を実現することができる。たとえば、図7中に点線で示すように、リップル判定部31の判定結果を電流比較部38へ伝達するとともに、電流リップルが大きい動作状態のときには、電流比較部38の出力信号を、「内部抵抗異常なし」を示すように固定するように制御することによって、内部抵抗異常の検出を禁止することができる。
次に、本発明の実施の形態による組電池の異常検出装置による内部抵抗異常検出について、異常監視回路30による制御処理手順の形式でフローチャートを用いて説明する。
図12を参照して、異常監視回路30は、ステップS100により、上位ECUによって開始指示信号STRが発生されたか否かを判定する。たとえば、一定時間が経過する毎に開始指示信号STRは生成される。開始指示信号STRの非発生時(S100のNO判定時)には、以降のステップS105〜S170の処理は実行されない。
異常監視回路30は、開始指示信号STRが発生されると(S100のYES判定時)、ステップS105に処理を進めて、交流電動機70の動作状態に基づく、リップル判定を実行する。ステップS105による判定は、図7に示したリップル判定部31の機能に対応する。すなわち、交流電動機70の回転数が所定範囲内であって、かつ、トルクが閾値よりも高い動作状態において、ステップS105はYES判定とされる。あるいは、さらに、交流電動機70の電力が閾値(Pt)よりも大きい動作状態においても、ステップS105はYES判定とされる。
異常監視回路30は、電流リップルが大きい動作状態であると判定したとき(S105のYES判定時)には、開始トリガTRGを発生することなく処理を終了する。これにより、開始トリガTRGに応答して開始される一連の異常検出動作(ステップS110〜S170)の実行が禁止される。
異常監視回路30は、電流リップルが大きい動作状態ではないと判定したとき(S105のNO判定時)には、ステップS110により、異常検出動作の開始トリガTRGを生成する。開始トリガTRGが検知ユニット20(1)へ伝達されると、検知ユニット20(1)〜20(n)が順次動作することによる、電池セルCL(1)〜CL(n)と判定電圧Vxとの電圧比較が順次実行されることになる。
さらに、異常監視回路30は、ステップS120により、サンプリング周期ΔTiが経過する度にサンプリング処理を実行する。各サンプリングタイミングにおいて、電流センサ15の出力値をサンプリングすることにより、電流サンプリング値が取得される。
図13は、図12に示した電流サンプリング処理(S120)の詳細な制御処理手順を説明するフローチャートである。
図13を参照して、電流サンプリング処理において、異常監視回路30は、ステップS121により計時処理を行なうとともに、ステップS122により、時刻Ta(電圧サンプリング期間の開始)から、所定時間、代表的には、サンプリング周期の半周期(ΔTi/2)が経過したかどうかを判定する。(ΔTi/2)が経過するまで(S122のNO判定時)は、異常監視回路30は、ステップS121による計時処理を繰返す。
そして、所定時間(ここでは、(ΔTi/2))が経過すると、ステップS122がYES判定とされて、異常監視回路30は、ステップS123に処理を進めて、初回の電流サンプリングを実行する。この結果、電流センサ15の出力値をサンプリングすることにより、電流サンプリング値I(Ti1)が取得される。
さらに、異常監視回路30は、ステップS124により、前回の電流サンプリングタイミングからの経過時間を測定する計時処理を実行する。そして、異常監視回路30は、ステップS125により、前回の電流サンプリングからサンプリング周期ΔTiが経過したか否かを判定する。サンプリング周期ΔTiが経過するまで(S125のNO判定時)は、異常監視回路30は、ステップS124による計時処理を繰返す。
異常監視回路30は、前回の電流サンプリングからサンプリング周期ΔTiが経過すると(S125のYES判定時)、ステップS126に処理を進めて、電流センサ15の出力値をサンプリングする。さらに、異常監視回路30は、電流サンプリング(S126)を行なった後、ステップS127に処理を進めて、電流サンプリングが所定回数実行されたか否かを判定する。電流サンプリングが所定回数実行された場合には(S127のYES判定時)には、異常監視回路30は、ステップS128に処理を進めて電流サンプリング処理を終了する。なお、電流サンプリングが所定回数実行されていない場合には(S127のNO判定時)には、異常監視回路30は、ステップS124〜S127の処理を繰返すことによって、サンプリング周期ΔTiに従って電流サンプリングを実行する。これにより、図6に示した時刻Ti1〜Ti3のそれぞれにおいて、電流サンプリングを実行できる。
再び図12を参照して、異常監視回路30は、ステップS120による電流サンプリング処理が終了すると、ステップS130に処理を進めて、取得された複数の電流サンプリング値のうちの最大値である最大電流Imaxを抽出する。これまで説明した例では、1回の異常検出動作毎に3回の電流サンプリング処理が実行されるので、電流サンプリング値I(Ti1)〜I(Ti3)のうちの最大値が最大電流Imaxとされる。
さらに、異常監視回路30は、ステップS140により、判定電流Ixに対する修正量Idを設定する。ステップS140に設定される修正量Idは、図8で説明したように、検出ずれTdの最大値である(ΔTi/2)による電流リップルに起因した電流変動をカバーするように、式(1)においてTd=(ΔTi/2)と置くことによって設定される。
異常監視回路30は、ステップS150では、判定信号FVによってセル電圧低下異常が検知された場合には、ステップS130で求められた最大電流Imaxと、修正された判定電流(Ix−Id)との比較により内部抵抗異常が発生しているかどうかを判定する。
異常監視回路30は、Imax<(Ix−Id)のとき(S150のYES判定時)には、ステップS160に処理を進めて、いずれかの電池セルで内部抵抗が閾値よりも上昇している、すなわち内部抵抗異常が発生していると判定として、「異常あり」の検出結果を出力する。一方で、Imax≧(Ix−Id)のとき(S150のNO判定時)には、異常監視回路30は、ステップS170に処理を進めて、内部抵抗異常が発生していないと判定して、「異常なし」の検出結果を出力する。なお、判定信号FVによってセル電圧低下異常が検知されない場合には、ステップS150はNO判定とされて、内部抵抗異常は発生していないと判定される。
あるいは、ステップS105のリップル判定については、ステップS150と併せて処理するように変形することも可能である。この場合には、ステップS105がYES判定(リップル大)であるときには、ステップS150の結果にかかわらず、処理がステップS170(「異常なし」を検出)に進められる。すなわち、ステップS105がNO判定であり、かつ、ステップS150がYES判定のとき(Imax<(Ix−Id))に限って、内部抵抗異常(S160)が検出されることになる。
このように、本実施の形態による組電池の異常検出装置は、電池セル毎の電圧監視機能について電圧値を直接検出しない簡易な構成において、電流センサ15の出力のサンプリングタイミングのずれに起因する誤検出を防止した上で、内部抵抗が所定レベルよりも上昇しているか否か(内部抵抗異常)を検出することができる。そして、バッテリ電流のリップルが大きい動作状態では、異常検出動作の実行を禁止するので、判定電流Ixを過剰に修正することなく、誤検出を防止することができる。
なお、以上の例では、1回の異常検出動作において3回の電流サンプリングを行なうこととしたが、電流サンプリング回数は3以上の複数回であれば任意の回数に設定することができる。
たとえば、図14には、1回の異常検出動作で4回の電流サンプリングを行なう変形例が示される。図14の変形例においても、電圧サンプリング期間の開始(Ta)からサンプリング周期の半周期(ΔTi/2)が経過した時刻から、電圧サンプリング期間の終了(Ta)から(ΔTi/2)だけ前の時刻までの間に、サンプリング周期ΔTiで電流サンプリングタイミングTi1〜Ti4を設定することにより、同様の異常検出手法、すなわち複数回の電流サンプリング値のうちの最大電流と、修正された判定電流(Ix−Id)との比較に基づいて、電圧および電流の検出タイミングのずれに起因する誤検出を防止した上で内部抵抗異常を検出することができる。
また、図15に示すように、図1に示した組電池10を1つの電池ブロックとして、このような電池ブロックを複数個(B0〜B7)組合せることによって、組電池10を構成してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。