JP2013091885A - ポリイミド繊維、その製造方法及び繊維用ポリイミド樹脂 - Google Patents
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Abstract
Description
前記ポリイミド樹脂を原料として紡糸する工程と、
を含んでいる。
本発明のポリイミド繊維は、ポリイミド樹脂を繊維状に加工してなるポリイミド繊維である。このポリイミド繊維は、その用途に応じて、例えば長いフィラメント状の単繊維の形態でもよいし、短いファイバー状の単繊維に撚りをかけた紡績糸の形態でもよく、さらに不織布の形態でもよい。また、本発明のポリイミド繊維は、その用途に応じて、例えば中空糸の形態としてもよい。なお、本発明で定義する「ポリイミド繊維」とは、その直径の平均(平均繊維径)に対する長さの比が約10以上であるポリイミド樹脂の形態をいう。
ここで、ポリイミド繊維の原料となるポリイミド樹脂について説明する。ポリイミド繊維を構成するポリイミド樹脂は、上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有する。ポリイミド樹脂が上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有することによって、ポリイミド繊維に十分な柔軟性、伸縮性、低吸湿性、透湿性、断熱性を付与できる。
一般式(1)及び(2)で表される構成単位において、基Arを形成するための原料となる芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジシクロへキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(HBPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA、別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等を使用することができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
一般式(1)で表される構成単位において基R1がジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基である場合、例えば、上記式(3)で表されるジアミノシロキサンから誘導されたジアミノシロキサン残基を挙げることができる。特に、基R1としては、ポリイミド樹脂に可溶性を付与するために、式(3)中のR3及びR4がそれぞれ2価の炭化水素基であり、R5〜R8がそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、平均繰り返し数であるm1が5〜15であるものが好ましい。
基R1が脂肪族ジアミンから誘導される2価のジアミン残基である場合、基R1を形成するための原料としては、分子内に環状構造を有する脂肪族ジアミン、炭素数24〜48の範囲内にある脂肪族ジアミン、又はダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミンが好ましく、より好ましくは炭素数24〜48の範囲内にあるダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミンがよい。ここで、環状構造とは、芳香族環以外の脂肪族環状構造を意味し、環内に不飽和結合を有していてもよい。また、脂肪族ジアミンの炭素数が24未満であると可溶性が低下し取り扱いが困難になる場合がある。上記のような脂肪族ジアミンを選択し、脂肪族ジアミンの割合を増加させることによって、ポリイミド繊維において、機能性繊維素材として求められる諸特性、例えば柔軟性、伸縮性、低吸湿性、透湿性及び断熱性を向上させる効果が得られる。具体的には、上記脂肪族ジアミンの割合を増加させることによって、ポリイミド繊維の柔軟性や伸縮性を大幅に向上させることができる。また、上記脂肪族ジアミンの割合が多くなると、ポリイミド鎖同士の間に空間が生じて比較的空気を多く含んだ状態となるため、ポリイミド繊維に優れた低吸湿性、透湿性及び断熱性を付与することができる。以上のような理由から、本発明では、式(1)におけるmの値を0.5以上、好ましくは0.7以上とする。mの値が0.5未満では、機能性繊維素材として求められる上記諸特性を向上させる効果が十分に得られない。このように、ポリイミド樹脂中に脂肪族ジアミン骨格を導入することにより、得られるポリイミド樹脂に機能性繊維素材として有利な特性を与えることができる。
ポリイミド樹脂は、上記芳香族テトラカルボン酸無水物、上記ジアミン成分[ジアミノシロキサン及び/又は脂肪族ジアミン、及びその他のジアミン化合物(必要な場合)]を溶媒中で反応させ、前駆体樹脂であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
本発明のポリイミド繊維の原料として用いるポリイミド樹脂のガラス転移温度は30〜250℃の範囲内であることが好ましく、45〜200℃の範囲内であることがより好ましい。また、原料として用いるポリイミド樹脂の熱分解開始温度は、大気中での5%重量減少温度(Td5)として、300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。原料として用いるポリイミド樹脂が、上記のようなガラス転移温度及び熱分解開始温度を有することによって、ポリイミド樹脂を繊維状に溶融成形する場合の温度領域を広くとることができる。従って、ポリイミド樹脂を繊維状に成形加工しやすく、さらに、優れた耐熱性を有するポリイミド繊維が得られる。ポリイミド樹脂のガラス転移温度及び熱分解開始温度は、主として原料として使用するジアミノシロキサン又は脂肪族ジアミンの種類とその使用量により調節できる。
本発明のポリイミド繊維の原料として用いるポリイミド樹脂の分子量(重量平均)は、ガラス転移温度以上、熱分解開始温度(大気中での5%重量減少温度)未満の溶融温度範囲において、溶融粘度を適切な範囲に調節しやすくする観点から、例えば100〜500,000の範囲内が好ましく、1,000〜200,000の範囲内がより好ましい。
原料のポリイミド樹脂の溶融粘度は、溶融紡糸を行う場合の繊維化を容易にするため、例えばガラス転移温度以上、熱分解開始温度(大気中での5%重量減少温度)未満の溶融温度範囲において、10,000Pa・s以下であることが好ましく、1,000Pa・s以下であることがより好ましい。
原料のポリイミド樹脂の弾性率は、ポリイミド繊維に十分な柔軟性及び伸縮性を与えるために、例えば1,000MPa以下であることが好ましく、750MPa以下であることがより好ましい。ポリイミド樹脂の弾性率を上記範囲内とすることによって、ポリイミド繊維を、例えばスポーツウェア、水着、断熱衣料(防寒用、軍事用、消防用等)、下着などの衣料素材として利用する場合に優れた柔軟性と伸縮性が得られる。
原料として用いるポリイミド樹脂(フィルム状)の透湿率は、ポリイミド繊維及びこれを用いる繊維製品に十分な透湿性を付与する観点から、例えば50g/m2・24h以上であることが好ましく、100g/m2・24h以上がより好ましい。ポリイミド樹脂の透湿率を上記範囲内とすることによって、ポリイミド繊維を、例えばスポーツウェア、水着、断熱衣料(防寒用、軍事用、消防用等)、下着などの衣料素材として利用する場合に優れた透湿性が得られる。
原料として用いるポリイミド樹脂(フィルム状)の吸湿率は、ポリイミド繊維及びこれを用いる繊維製品に十分な低吸湿性(撥水性)を付与する観点から、例えば1%以下であることが好ましく、0.3%以下がより好ましい。ポリイミド樹脂の吸湿率を上記範囲内とすることによって、ポリイミド繊維を、例えばスポーツウェア、水着、断熱衣料(防寒用、軍事用、消防用等)、下着などの衣料素材として利用する場合に優れた低吸湿性(撥水性)が得られる。
原料として用いるポリイミド樹脂(フィルム状)の熱伝導率は、ポリイミド繊維及びこれを用いる繊維製品に十分な保温性・断熱性を付与する観点から、例えば0.15W/m・K以下であることが好ましく、0.10W/m・K以下がより好ましい。ポリイミド樹脂の熱伝導率を上記範囲内とすることによって、ポリイミド繊維を、例えばスポーツウェア、水着、断熱衣料(防寒用、軍事用、消防用等)、下着などの衣料素材として利用する場合に優れた保温性や断熱性が得られる。
原料として用いるポリイミド樹脂(フィルム状)は、ポリイミド繊維及びこれを用いる繊維製品に十分な通気性(ガス透過性)を付与する観点から、次に例示する程度の気体透過度を有することが好ましい。
酸素ガス;100cm3/m2・24h・atm以上が好ましく、5,000cm3/m2・24h・atm以上がより好ましい。
窒素ガス;100cm3/m2・24h・atm以上が好ましく、5,000cm3/m2・24h・atm以上がより好ましい。
二酸化炭素ガス;100cm3/m2・24h・atm以上が好ましく、5,000cm3/m2・24h・atm以上がより好ましい。
エチレン(C2H4)ガス;100cm3/m2・24h・atm以上が好ましく、5,000cm3/m2・24h・atm以上がより好ましい。
ポリイミド樹脂の気体透過度を上記範囲内とすることによって、ポリイミド繊維を、例えばスポーツウェア、水着、断熱衣料(防寒用、軍事用、消防用等)、下着などの衣料素材や、例えば絆創膏、人工皮膚、人工臓器等の医療用素材として利用する場合に優れた通気性(ガス透過性)が得られる。
原料として用いるポリイミド樹脂(フィルム状)は、ポリイミド繊維及びこれを用いる繊維製品に十分な熱耐久性を付与する観点から、長期耐熱性を有することが好ましい。長期耐熱性は、大気下、200℃、3000時間熱処理後のポリイミド樹脂(フィルム状)の試験片の5%重量減少温度(Td5)が、熱処理前の試験片の5%重量減少温度に対して、±5%以内の変化率であればよい。
ポリイミド繊維を例えば縫合糸、絆創膏、人工皮膚、人工臓器等の医療用素材として利用するためには、原料のポリイミド樹脂は、柔軟性、伸縮性に加え、生体適合性を有することが必要である。
ポリイミド繊維の伸度は、衣料素材や医療素材として十分な伸縮性を得るために、例えば30%以上であることが好ましく、50〜2,000%の範囲内がより好ましい。ポリイミド繊維の伸度は、主として、原料となるポリイミド樹脂中の基R1で表されるジアミノシロキサン又は脂肪族ジアミンから誘導される2価のジアミン残基の量[つまり、上記一般式(1)中のmの値]によって調節できる。
本発明のポリイミド繊維は、上記ポリイミド樹脂を繊維状に加工することによって製造できる。ポリイミド樹脂を繊維化する方法は、特に限定されるものではなく、例えば溶融紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法、エレクトロスピニング法等の方法で繊維化することができる。上記繊維化の方法の中でも、上記ポリイミド樹脂の溶融加工性と貧溶媒中での良好な紡糸性や、実用面での高い生産性と低コスト化の観点から、溶融紡糸法又は湿式紡糸法が好ましい。なお、以下の説明で使用する溶液状のポリイミド樹脂としては、ポリイミド樹脂の合成(アミド化反応及びイミド化反応)を行った溶液の状態のまま利用してもよいし、ポリイミド樹脂を任意の溶媒に溶解させて調製してもよい。
溶融紡糸法によるポリイミド繊維の製造手順の代表例として、以下の手順A及び手順Bを挙げて説明する。
手順Aは、例えば溶液状のポリイミド樹脂を乾燥する乾燥工程、乾燥後のポリイミド樹脂を凍結粉砕する粉砕工程、粉砕物(ペレット)を溶融させて繊維化する紡糸工程、を含むことができる。
手順Bは、例えば溶液状のポリイミド樹脂を貧溶媒中で沈殿させて沈殿物を分取する分別工程、沈殿物を乾燥する乾燥工程、乾燥後のポリイミド樹脂を所定の形状に成形した後、切断してペレットに細分化する成形工程、切断物(ペレット)を溶融させて繊維化する紡糸工程、を含むことができる。
湿式紡糸は、例えば以下の手順Cによって行うことができる。
手順Cは、例えば溶液状のポリイミド樹脂を貧溶媒(凝固液)中に紡出させて繊維化する紡糸工程と、必要に応じて、繊維を乾燥する乾燥工程と、を含むことができる。
エレクトロスピニング法によるポリイミド繊維の製造手順の代表例として、以下の手順D、手順E及び手順Fを挙げて説明する。
手順Dは、例えば溶液状のポリイミド樹脂をエレクトロスピニング法によって繊維化する紡糸工程、を含むことができる。この紡糸工程は、ポリイミド溶液に高電圧を印加することによって、電荷の反発力を利用してノズルから噴射させて紡糸する。紡糸工程は、必要に応じ、延伸加工を含むことができる。
手順Eは、例えば溶液状のポリイミド樹脂を乾燥する乾燥工程、乾燥後のポリイミド樹脂を凍結粉砕する粉砕工程、粉砕物(ペレット)を溶融させてエレクトロスピニング法によって繊維化する紡糸工程、を含むことができる。ここで、乾燥工程及び粉砕工程は、上記手順Aと同様であるため、説明を省略する。
手順Fは、例えば溶液状のポリイミド樹脂を貧溶媒中で沈殿させて分取する分別工程、沈殿物を乾燥する乾燥工程、乾燥後のポリイミド樹脂を所定の形状に成形した後、切断してペレットに細分化する成形工程、切断物(ペレット)を溶融させてエレクトロスピニング法によって繊維化する紡糸工程、を含むことができる。ここで、分別工程、乾燥工程及び成形工程は、上記手順Bと同様であるため、説明を省略する。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC−8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
長期耐熱性の評価は、以下の手順で行った。まず、ポリイミド溶液をガラス基板上に塗布し、80℃で15分間乾燥してフィルム状にしたサンプルから、試験片(縦×横×厚さ=200mm×300mm×35μm)を作製した。この試験片を大気下で、200℃、3000時間熱処理後に、サンプルの5%重量減少温度(Td5)を測定して、熱処理前の試験片の5%重量減少温度に対して変化率が±5%以内となるサンプルを合格とした。
熱分解開始温度は、以下の手順で測定した。上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルから、10〜20mgの試験片を取り出し、空気雰囲気下で、熱重量分析(TG)装置にて一定の速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、5%重量減少温度(Td5)を求めた。
ガラス転移温度は、以下の手順で測定した。まず、熱機械分析装置(Bruker製、4000SA)を用いて、上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルから、試験片(幅2mm×長さ30mm)を作製した。この試験片をチャック間距離15mmにて、荷重2g、昇温速度5℃/分の条件で試験片の長さ方向の熱膨張量を測定し、その変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。
溶融粘度は、キャピログラフ1D(東洋精機製作所製)を用いて測定した。長径5mm以下のポリイミド粒子をキャピログラフ1Dのシリンダー内に充填後、220℃における溶融粘度を測定した。
弾性率、伸度及び強度は、以下の手順で測定した。まず、テンションテスター(オリエンテック製テンシロン)を用いて、上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルから、試験片(幅12.7mm×長さ127mm)を作製した。この試験片を用い、50mm/minで引張り試験を行い、25℃における引張り弾性率、引張り伸度及び引張り強度を求めた。
吸湿率は、以下の手順で測定した。上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルから、試験片(幅4cm×長さ20cm)を3枚用意し、105℃で1時間乾燥した。乾燥後直ちに23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(wt%)=[(吸湿後重量−乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
光透過率は、上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルについて、紫外・可視分光分析(日本分光社製、UV−vis V−550)を用いて測定した。
透湿度は、JIS Z0208に準拠したカップ法により測定した。透過面積2.826×10−3m2のアルミニウム製の透湿カップ内に吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を入れ、上記フィルム状のサンプルによって封入した。その後、40℃、90RH%の試験条件下で24時間毎の秤量操作を繰り返し、カップの質量増加を水蒸気の透過量として評価した。
気体透過度は、以下の手順で測定した。上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルについて、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製・ヤナコテクニカルサイエンス社製)及びガスクロマトグラフィーを用いて、差圧1atmとして、23℃、65%RHにおける酸素、窒素、二酸化炭素、エチレンの透過度を測定した。
厚み方向の熱伝導率は、以下の手順で測定した。上記長期耐熱性の評価と同様にして調製したフィルム状のサンプルから、試験片(長さ20mm×幅20mm)を作製し、白金による蒸着、黒化処理を行った後、レーザーフラッシュ法による厚み方向の熱拡散率(NETZSCH社製キセノンフラッシュ
アナライザー LFA 447 Nanoflash)、示差走査熱量測定(DSC)による比熱、水中置換法による密度をそれぞれ測定し、これらの結果をもとに熱伝導率(W/m・K)を算出した。
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸無水物(別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
BAFL:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
PSX−A:下記式で表されるジアミノシロキサン(但し、m1の数平均値は1〜20の範囲内であり、重量平均分子量は740である)
1000mlのセパラブルフラスコに、38.81gのBTDA(0.1205モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、71.30gのPSX−A(0.09635モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、9.89gのBAPP(0.0241モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液aを得た。ポリイミド溶液aにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は、95,000であった。
1000mlのセパラブルフラスコに、38.81gのBTDA(0.1205モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、44.55gのPSX−A(0.6025モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、24.73gのBAPP(0.6025モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液bを得た。ポリイミド溶液bにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は、80,000であった。
1000mlのセパラブルフラスコに、3.99gのBTDA(0.116モル)、62.68gのDDA(0.116モル)、140gのN−メチル−2−ピロリドン及び93gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、27gのN−メチル−2−ピロリドン及び67gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液cを得た。ポリイミド溶液cにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は75,700であった。
1000mlのセパラブルフラスコに、36.93gのBPDA(0.1255モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、74.32gのPSX−A(0.1004モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、8.75gのBAFL(0.0251モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液dを得た。ポリイミド溶液dにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は、25,000であった。
1000mlのセパラブルフラスコに、37.15gのBPDA(0.1263モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、74.76gのPSX−A(0.1010モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、8.09gのTFMB(0.0241モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液eを得た。ポリイミド溶液eにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は、25,000であった。
1000mlのセパラブルフラスコに、37.82gのODPA(0.1219モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、72.17gのPSX−A(0.09753モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、10.01gのBAPP(0.0244モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液fを得た。ポリイミド溶液fにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量は、28,421であった。
合成例1で得られたポリイミド溶液aを200℃で5時間乾燥し、ポリイミド固形物a’を得た。さらに、液体窒素を入れた容器にポリイミド固形物a’を入れて凍結粉砕し、最大長径が5mm以下のポリイミド粒子a”を得た。
長期耐熱性;合格、5%重量減少温度;421℃、ガラス転移温度;50℃、溶融粘度(220℃);10〜100Pa・s、弾性率;217MPa、伸度;427%、強度;20MPa、吸湿率;0.1%、波長500nmでの光透過率;90%、波長380nmでの光透過率;25%、透湿率;330g/m2・24h、気体透過度;1.4×105cm3/m2・24h・atm(O2)、4.2×104cm3/m2・24h・atm(N2)、1.1×106cm3/m2・24h・atm(CO2)、3.7×105cm3/m2・24h・atm(C2H4)、熱伝導率;0.07W/m・K
実施例1Aにおけるポリイミド溶液aの代わりに、ポリイミド溶液bを使用したこと以外、実施例1Aと同様にして、ポリイミド固形物b’を得、ポリイミド粒子b”を得たのち、ポリイミド繊維2を得た。ポリイミド繊維2の評価結果は、以下のとおりである。
長期耐熱性;合格、熱伝導率;0.1W/m・K
実施例1Aにおけるポリイミド溶液aの代わりに、ポリイミド溶液cを使用したこと以外、実施例1Aと同様にして、ポリイミド固形物c’を得、ポリイミド粒子c”を得たのち、ポリイミド繊維3を得た。
合成例1で得られたポリイミド溶液aを150℃で5時間乾燥し、ポリイミド固形物2a’を得た。さらに、液体窒素を入れた容器にポリイミド固形物2a’を入れて凍結粉砕し、最大長径が5mm以下のポリイミド粒子2a”を得た。
長期耐熱性;合格、5%重量減少温度;421℃、ガラス転移温度;48.6℃、溶融粘度(220℃);10〜100Pa・s、弾性率;217MPa、伸度;427%、強度;20MPa、吸湿率;0.1%、波長500nmでの光透過率;88%、波長400nmでの光透過率;26%、波長380nmでの光透過率;8.4%、透湿率;330g/m2・24h、気体透過度;1.4×105cm3/m2・24h・atm(O2)、4.2×104cm3/m2・24h・atm(N2)、1.1×106cm3/m2・24h・atm(CO2)、3.7×105cm3/m2・24h・atm(C2H4)、熱伝導率;0.07W/m・K
実施例1Bで得られたポリイミド粒子2a”を、更に200℃で2時間追加乾燥して、ポリイミド粒子3a”を得た。
実施例1Bで得られたポリイミド粒子2a”を、更に200℃で5時間追加乾燥して、ポリイミド粒子4a”を得た。
実施例1Bにおけるポリイミド溶液aの代わりに、ポリイミド溶液dを使用したこと以外、実施例1Bと同様にして、ポリイミド固形物d’を得、ポリイミド粒子d”を得たのち、ポリイミド繊維4を得た。ポリイミド繊維4の評価結果は、以下のとおりである。
長期耐熱性;合格、ガラス転移温度;50℃、弾性率;214MPa、伸度;145%、強度;8.3MPa、波長500nmでの光透過率;88%、波長400nmでの光透過率;53%、波長380nmでの光透過率;9.4%
実施例4で得られたポリイミド粒子d”を、更に200℃で5時間追加乾燥して、ポリイミド粒子4d”を得た。
実施例1Bにおけるポリイミド溶液aの代わりに、ポリイミド溶液eを使用したこと以外、実施例1Bと同様にして、ポリイミド固形物e’を得、ポリイミド粒子e”を得たのち、ポリイミド繊維5を得た。ポリイミド繊維5の評価結果は、以下のとおりである。
長期耐熱性;合格、5%重量減少温度;391℃、ガラス転移温度;37.6℃、弾性率;174MPa、伸度;212%、強度;6.4MPa、波長500nmでの光透過率;88%、波長400nmでの光透過率;82%、波長380nmでの光透過率;39%
実施例5で得られたポリイミド粒子e”を、更に200℃で5時間追加乾燥して、ポリイミド粒子4e”を得た。
実施例1Bにおけるポリイミド溶液aの代わりに、ポリイミド溶液fを使用したこと以外、実施例1Bと同様にして、ポリイミド固形物f’を得、ポリイミド粒子f”を得たのち、ポリイミド繊維6を得た。ポリイミド繊維6の評価結果は、以下のとおりである。
長期耐熱性;合格、ガラス転移温度;28.6℃、弾性率;40.9MPa、伸度;94%、強度;2.9MPa、波長500nmでの光透過率;88%、波長400nmでの光透過率;86%、波長380nmでの光透過率;60%
実施例6で得られたポリイミド粒子f”を、更に200℃で5時間追加乾燥して、ポリイミド粒子4f”を得た。
Claims (13)
- 前記構成単位の存在モル比mが、0.7〜1.0の範囲内、nが、0〜0.3の範囲内である請求項1又は2に記載のポリイミド繊維。
- 前記脂肪族ジアミンが、環状構造を有する脂肪族ジアミンである請求項1に記載のポリイミド繊維。
- 前記脂肪族ジアミンが、炭素数24〜48の範囲内にある脂肪族ジアミンである請求項1に記載のポリイミド繊維。
- 前記脂肪族ジアミンが、ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミンである請求項1に記載のポリイミド繊維。
- 前記ポリイミド樹脂のガラス転移温度が30〜250℃の範囲内であり、かつ大気中での5%重量減少温度(Td5)が300℃以上である請求項1から6のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
- 前記ポリイミド樹脂の透湿率が50g/m2・24h以上である請求項1から7のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
- 前記ポリイミド樹脂の熱伝導率が0.15W/m・K以下である請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
- 基Ar及び基R2中にケトン基を含まない請求項1から9のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
- 前記紡糸する工程を、溶融紡糸法、湿式紡糸法又はエレクトロスピニング法で行う請求項11に記載のポリイミド繊維の製造方法。
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