JP2013091814A - 被処理物の焼入装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷却槽100が、パレット80の下降位置における冷却油102に下方を向く循環流102a,102bを起生させる少なくとも一対の攪拌装置104a,104bが配置されて成り、吊下げ治具は、長手方向に複数の掛止溝262aを均等間隔に設けて掛止溝262aに歯車の取付孔Wh内周縁上部を少なくとも2点で支持する櫛歯状の横長トレー280と、横長トレー280の両端に設けられパレット80に立設した一対の支持部に掛止される掛止部270a、270bとを備えている。
【選択図】図5
Description
例えば、バスケット内に多数の環状部材等の被処理物を積み重ねて三次元に配置された被処理物を熱処理する場合、当該被処理物に対して冷却液の流れを均等に導くことができないと、バスケット尚の各被処理物の冷却速度が不均一となり、各環状部材等の被処理物に生じる変形や歪の量のバラツキが大きくなる。
このため、被処理物を載置した載置台が浸漬される冷却槽内には、下方から上方に向く冷却液の循環流が形成される。
この結果、吊下げ状態で保持された被処理物は、冷却液中での安定性が悪く揺動や煽り(あおり)が生ずるので焼入性能に差が生じ、焼入歪みが大きくなる問題を有していた。
前記取付孔を有する被処理物を載置台に縦向きに吊下げ保持する吊下げ治具を備え、前記冷却槽は、載置台の下降位置における冷却油に下方を向く循環流を起生させる攪拌装置が配置されて成り、前記冷却油の流れ方向を前記吊り下げ治具に懸張保持される被処理物の吊下げ方向と同一方向になるように構成したことを特徴とする。
かかる構成によれば、被処理物を櫛歯状横長トレーの複数の掛止溝に均等間隔で支持されるので、被処理物間の間隙を通過する冷却油は流速、流量共に一定となり、各被処理物間の焼入歪差を無くすことができる。
かかる構成によれば、上下段に配置される櫛歯状の横長トレーに均等間隔に設けた複数の掛止溝に複数の被処理物が掛止されるので、被処理物間を通過する冷却油の流速、流量共に一定となるとともに、櫛歯状のため各被処理物を安定支持でき、上下段に配置しても冷却油の流れによって支持位置が変更されることなく、大量の被処理物を均一に焼入れ処理可能になる。
かかる構成によれば、被処理物の取付孔内周縁上部を少なくとも2点で懸張保持することによって、簡単な構造で安定的な吊り下げが可能になる。さらに、前述のように冷却槽内では、載置台下降位置に下方を向く潤滑流が起生されて、被処理物の吊下げ方向と同一方向になり姿勢が安定化されるため焼入歪みを低減することができる。
かかる構成によれば、被処理物の厚さが内周側と外周側とで相違し、外周側が厚く、内周側が薄い場合には、隣接する被処理物間を通過する冷却油の速度によって、冷却斑が生じるが、前述のように隣接する被処理物を近接配置することで、隣接する被処理物間を抜ける冷却油の流れを抑制して、被処理物間を抜ける冷却油による冷却速度差を抑制することができる。すなわち、一番狭くなっている外周側間を通過する冷却油の油量を抑制して、被処理物の外周に沿って冷却油を流すようにすることで、前述のようなリム部間を通過する冷却油による冷却斑を低減できる。
これにより、被処理物間の間隙を通過する冷却油は流速、流量共に一定となるので、各被処理物間の焼入歪差を無くすことができる。
また、冷却油は、吊下げ治具により縦向きに吊下げ保持される被処理物に沿って下方に循環するので、被処理物の吊下げ姿勢が安定化されるため焼入歪みを低減することができる。
本発明の実施形態に係る被処理物として、例えばファイナルドライブギャとなる歯車Wが採用されている。
前記搬入パージ室12には、後述する吊下げ治具により複数の歯車Wが吊下げ保持された搬送台(パレット)80を搬入する搬送装置200が接続されており、搬入パージ室12の入口側には外気と遮断する搬入扉12aが開閉可能に設けられている。
前記搬入パージ室12から浸炭加熱炉10内部に搬出されたパレット80上の歯車Wは、搬出パージ室14側に向けて移送される過程で浸炭ガスの雰囲気中の各ゾーンで800℃、900℃、900℃に加熱されつつ浸炭処理が行われる。
浸炭加熱炉10の後方に配置される降温ゾーンでは、前記歯車Wを焼入処理前の温度とすべく850℃まで降温して均熱する。
冷却槽100の内部には略100℃の冷却油102が充填されており、冷却槽100の略中央には、浸炭加熱炉10から搬出パージ室14に搬出されたパレット80上の歯車Wを下降させて冷却槽100内部の冷却油102中に浸漬させるためのエレベータ15が配置されている。
冷却槽本体110の天板112上面には、前記エレベータ15が昇降する昇降軸線18の両側に2基の攪拌装置104a,104bが略対称位置に設置されている。
2基の攪拌装置104a,104bの下方には、2台のモータM1,M2によって同方向に回転駆動される一対の攪拌羽根105a,105bが冷却槽本体110の高さ方向略中間位置に設けられている。
すなわち、上記ダクトとして、冷却槽本体110の底面中央には、昇降軸線18に沿う一対の中央ダクト108a、一対の攪拌羽根105a,105bの両外側に対応する冷却槽本体110の底面には上方に案内する底部ダクト108b,108cが左右対称に配設されている。
また、冷却槽本体110の天板112裏面にも、下方側から天板112の裏面側と平行になる湾曲面を形成した一対の上部ダクト108d,108eが左右対称に配設されている。
この上昇流は一対の上部ダクト108d,108eに案内されて略中央で冷却流同士がぶつかり合い、昇降軸線18に沿って下方に向く流れが形成され、下方に向く流れは、中央の分岐板109と中央ダクト108aによって左右に分岐する流れが形成される。
この状態を得るために、エレベータが下降動作を開始する前に冷却槽の冷却油内に予め循環流を起生させておくことで、循環油の流速がエレベータの下降速度と同一速度に達することになり、焼入性能を向上させる効果があることが判る。
図7は昇降装置の下降開始時期と攪拌装置の回転開始時期を示すタイムチャートである。
図7において、エレベータ15の下降開始時期は、パレット80が浸炭加熱炉10から搬出パージ室14に搬入された後、搬出パージ室14の中間扉14aが閉じ始めた時点P1で攪拌装置104a,104bの回転指令信号により、攪拌羽根105a,105bが回転を開始する。これにより、冷却槽100内では冷却油102にエレベータ15の昇降軸線18に沿って下方に向く循環流102a,102bが起生される。
すなわち、エレベータ15の下降動作の開始により、パレット80が冷却油102中に浸漬される迄に冷却槽100内の冷却油102には所定流速の循環流102a,102bが起生されているので、下方に向く循環流102a,102bはエレベータ15の下降速度と一致する流速に達している。
そして、前記循環流102a,102bは、図3に示すように所定間隔を保ってパレット80上に吊下げ保持された歯車Wの両側および各歯車W間を下方に向けて流れるとともに前記パレット80を支持した格子状の支持台16(図2参照)を上方から下方に通過する。
このように、前記パレット80上に櫛歯状横長トレーの複数の掛止溝に均等間隔で吊下げ支持された歯車Wの両側には、エレベータ15によって下降移動する支持台16と同方向に冷却油102の循環流が形成されるので、吊下げ保持されている歯車Wは冷却油の抵抗で左右に振れることがなく姿勢が安定化されるため焼入歪みを低減することができる。
次いで、冷却油内でエレベータ15を約10分間停止させて歯車Wが焼入処理されると、再び約7〜8秒間で元の搬出パージ室14まで上昇し、前記搬出パージ室14から搬出用の搬送装置220上に搬出される。
図3において、250は吊下げ治具となる吊り具であって、吊り具250は、下端に歯車Wの取付け孔Wh上端内周縁を側面から2点で挿通掛止する保持爪253a,253b(点線)が間隔調整可能に設けられており、上端にはフック254a,254bが固定されている。
このように、吊り具250によって縦向きに懸張保持される歯車Wの両側面には、冷却槽100の内部における2基の攪拌装置104a,104bの起動によって下方に向く矢印で示す循環流102a,102bが起生される。
次に、複数の歯車Wを均等間隔で吊下げ保持する吊下げ治具の他の例となる櫛歯状の横長トレー280に付き図4を参照して説明する。
一方側の横長帯板280aの上端縁264aには複数の掛止溝262aが均等間隔で形成されており、図示しない下端縁側にも上端縁264aの掛止溝262aと対称形状の掛止溝が形成されている。
横長帯板280a,280b両端の上下端縁には、パレット80に立設した図示しない一対の支持部に掛止する掛止部270a,270bが形成されている。これら掛止部270a,270bは、左右の横長帯板280a,280b上下端縁に形成された所定幅の掛止溝265a,265b,266a,266bによって構成されている。
これらの掛止溝262a,262bは、歯車Wの中心部に形成された取付け孔Whの内周縁上部が少なくとも2点で支持されるようになっている。
すなわち、2点間の距離は、一対の横長帯板280a,280b間を連結する図示しない連結部材の長さで決まるもので、歯車Wの取付け孔Wh内周縁上部を支持する掛止溝262a,262b間の幅となる。
すなわち、取付け孔Whの内周縁上部を支持する2点間の距離は、安定性を保つために歯車Wの外径および取付け孔Whの内径によって決められる。
図5は、吊下げ治具の櫛歯状横長トレーに均等間隔で吊下げ保持された歯車と冷却油の流れの関係を示す斜視図、図6は吊下げ治具に均等保持される歯車間における冷却油の流れの関係を示す説明図である。
すなわち、複数の歯車Wが櫛歯状横長トレー280の掛止溝262aに支持された状態では、隣接する歯車W間においてリム部の間隔が一番狭く、取付け孔Wh周縁の薄肉部間に広い空間が形成される。
従って、歯車W間において、リム部間を通過する冷却油の油量によって焼入性能が決められる。このように適正な油量を得るために、櫛歯状横長トレー280の長手方向に形成される掛止溝262aの間隔が決められる。
外周側が厚く、内周側が薄い場合には、隣接する歯車W間を通過する冷却油の速度によって、冷却斑が生じるが、前述のように隣接する歯車W間を近接配置することで、隣接する歯車W間を抜ける冷却油の流れを抑制して、被処理物間を抜ける冷却油による冷却速度差を抑制することができる。
これにより、歯車W間の間隙を通過する冷却油は流速、流量共に一定となるので、各被処理物間の焼入歪差を無くすことができる。
15 エレベータ(昇降装置)
80 パレット(載置台)
100 冷却槽
102 冷却油
102a,102b 循環流
104a,104b 攪拌装置
250 吊り具(吊下げ治具)
262a,262b 掛止溝
270a,270b 掛止部
280 横長トレー(吊下げ治具)
W 歯車(被処理物)
Wh 取付孔
Claims (5)
- 取付孔を有する被処理物であって、加熱処理後の該被処理物を昇降装置の下降により冷却槽内の冷却油に浸漬させて焼入れを行う被処理物の焼入装置において、
前記取付孔を有する被処理物を載置台に縦向きに吊下げ保持する吊下げ治具を備え、前記冷却槽は、載置台の下降位置における冷却油に下方を向く循環流を起生させる攪拌装置が配置されて成り、前記冷却油の流れ方向を前記吊下げ治具に懸張保持される被処理物の吊下げ方向と同一方向になるように構成したことを特徴とする被処理物の焼入装置。 - 前記吊下げ治具は、長手方向に複数の掛止溝を均等間隔に設けて前記掛止溝に前記被処理物の取付孔内周縁上部を支持する櫛歯状の横長トレーと、該横長トレーの両端に設けられ前記載置台に立設した支持部に掛止される掛止部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の被処理物の焼入装置。
- 前記吊下げ治具は、前記載置台の支持部に前記横長トレーの両端を水平に掛止する掛止部が上下段に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の焼入装置。
- 前記吊下げ治具は、下方を向く循環流の流れが起生された冷却槽内の下降位置における前記載置台に、前記被処理物の取付孔内周縁上部を少なくとも2点で懸張保持する吊り具を有していることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の焼入装置。
- 前記被処理物を横長トレー方向に近接配置して、隣接する被処理物の間を抜ける前記冷却油の流れが抑制されるように前記被処理物が支持されることを特徴とする請求項2に記載の被処理物の焼入装置。
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