JP2013079721A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり軸受の内・外輪軌道面や保持器摺動面などに形成されたDLC膜の耐剥離性を向上させ、DLC膜本来の特性を発揮することで、耐焼き付き性、耐摩耗性、および耐腐食性に優れ、軸受部材間の金属接触に起因する損傷などを防止できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受1は、外周に内輪軌道面2aを有する内輪2と、内周に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間を転動する複数の転動体4とを備え、曲面である内輪軌道面2aや外輪軌道面3aに硬質膜8が成膜されてなり、この硬質膜8は、CrとWCとを主体とする傾斜組成の第1混合層と、この上に成膜されるWCとDLCとを主体とする傾斜組成の第2混合層と、この上に成膜されるDLCを主体とする表面層とからなる構造の膜であり、第2混合層における水素含有量が10〜45原子%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、内輪軌道面、外輪軌道面、転動体表面、保持器摺接面にダイヤモンドライクカーボンを含む硬質膜を成膜した転がり軸受に関する。
硬質カーボン膜は、一般にダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCと記す。また、DLCを主体とする膜/層をDLC膜/層ともいう。)と呼ばれている硬質膜である。硬質カーボンはその他にも、硬質非晶質炭素、無定形炭素、硬質無定形型炭素、i−カーボン、ダイヤモンド状炭素など、様々な呼称があるが、これらの用語は明確に区別されていない。
このような用語が用いられるDLCの本質は、構造的にはダイヤモンドとグラファイトが混ざり合った両者の中間構造を有するものである。ダイヤモンドと同等に硬度が高く、耐摩耗性、固体潤滑性、熱伝導性、化学安定性、耐腐食性などに優れる。このため、例えば、金型・工具類、耐摩耗性機械部品、研磨材、摺動部材、磁気・光学部品などの保護膜として利用されつつある。こうしたDLC膜を形成する方法として、スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的蒸着(以下、PVDと記す)法、化学的蒸着(以下、CVDと記す)法、アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング(以下、UBMSと記す)法などが採用されている。
従来、転がり軸受の軌道輪の軌道面、転動体の転動面、保持器摺接面などに対し、DLC膜を形成する試みがなされている。DLC膜は、膜形成時に極めて大きな内部応力が発生し、また高い硬度およびヤング率を持つ反面、変形能が極めて小さいことから、基材との密着性が弱く、剥離しやすいなどの欠点を持っている。このため、転がり軸受における上記各面にDLC膜を成膜する場合には、密着性を改善する必要性がある。
例えば、中間層を設けてDLC膜の密着性改善を図ったものとして、鉄鋼材料で形成された軌道溝や転動体の転動面に、クロム(以下、Crと記す)、タングステン(以下、Wと記す)、チタン(以下、Tiと記す)、珪素(以下、Siと記す)、ニッケル、および鉄の少なくともいずれかの元素を含む組成の下地層と、この下地層の構成元素と炭素とを含有し、炭素の含有率が下地層の反対側で下地層側より大きい中間層と、アルゴンと炭素とからなりアルゴンの含有率が0.02質量%以上5質量%以下であるダイヤモンドライクカーボン層とが、この順に形成されてなる転動装置が提案されている(特許文献1参照)。また、同様に中間層を設けて密着性改善を図ったものとして、転がり軸受の保持器表面に複数層の被膜を成膜し、最表面層の被膜と、保持器との間に、所定の硬度の中間層を介在させた保持器が提案されている(特許文献2参照)。
また、アンカー効果によりDLC膜の密着性改善を図ったものとして、軌道面にイオン衝撃処理により10〜100nmの高さで平均幅300nm以下の凹凸を形成し、この軌道面上にDLC膜を形成した転がり軸受が提案されている(特許文献3参照)。
その他、保持器母材表面に所定の処理を経た硬化層が形成され、硬化層の表面にこれより高硬度の硬質膜がコーティングされ、硬質膜表面に固体潤滑効果を有する軟質膜がコーティングされた保持器や、その製造方法などが提案されている(特許文献4および特許文献5参照)。
特許第4178826号 特開2006−300294号公報 特許第3961739号 特開2005−147306号公報 特開2005−147244号公報
しかしながら、転がり軸受において転動体を案内する内・外輪の軌道面は、その形状が平面ではなく曲面であり、主曲率と副曲率が組み合わさった形状等のものもある。また、転動体の転動面は、円筒ころの場合は円周面、玉の場合は球面となる。また、保持器の摺接面は、転動体と接触する面(保持器ポケット面)や軌道輪と接触する面であり、その形状は曲面となる。以上のような形状の面にDLC膜を成膜すると、その膜構造や成膜条件によっては、膜内の残留応力が大きくなり、成膜直後に剥離するおそれがある。また、成膜直後には剥離しなくとも、軸受使用時において、転がり接触などの負荷、衝撃力、局所的な摺動発熱による熱衝撃などの負荷を受けると剥離するおそれがある。
DLC膜が剥離すると、DLC膜本来の優れた特性を発揮することができない。また、軸受部材間で金属接触が起こり、該部材が摩耗することで転動面に摩耗粉が介入し軌道面損傷などに繋がる。また、グリース潤滑の場合は金属新生面の触媒作用によってグリース劣化を促進させることがある。
上記各特許文献の技術は、硬質膜の剥離防止などを図ったものであるが、得られた転がり軸受の実用性を向上させるべく、DLC膜を適用する際の膜構造や成膜条件には更なる改善の余地がある。特に、高い接触応力を受ける転がり軸受の軌道面や、強い衝撃力を受ける保持器摺動面において、長期にわたり耐剥離性を向上させるには、静的な密着性や機械的特性のみでなく、疲労特性も重要になり、これも踏まえた膜構造などの改善が望まれる。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、転がり軸受の内・外輪軌道面や保持器摺動面などに形成されたDLC膜の耐剥離性を向上させ、DLC膜本来の特性を発揮することで、耐焼き付き性、耐摩耗性、および耐腐食性に優れ、軸受部材間の金属接触に起因する損傷などを防止できる転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の転がり軸受は、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、上記内輪軌道面と上記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、上記転動体を保持する保持器とを備えてなる転がり軸受であって、上記内輪、上記外輪、上記転動体、および上記保持器から選ばれる少なくとも一つの軸受部材が鉄系材料からなり、該鉄系材料からなる上記軸受部材の面であり、かつ、上記内輪軌道面、上記外輪軌道面、上記転動体の転動面、および上記保持器の摺接面から選ばれる少なくとも一つの面に硬質膜が成膜されてなり、上記硬質膜は、上記面の上に直接成膜されるCrとタングステンカーバイト(以下、WCと記す)とを主体とする第1混合層と、該第1混合層の上に成膜されるWCとDLCとを主体とする第2混合層と、該第2混合層の上に成膜されるDLCを主体とする表面層とからなる構造の膜であり、上記第1混合層は、上記面側から上記第2混合層側へ向けて連続的または段階的に、該第1混合層中の上記Crの含有率が小さくなり、該第1混合層中の上記WCの含有率が高くなる層であり、上記第2混合層は、上記第1混合層側から上記表面層側へ向けて連続的または段階的に、該第2混合層中の上記WCの含有率が小さくなり、該第2混合層中の上記DLCの含有率が高くなる層であり、上記第2混合層における水素含有量が10〜45原子%であることを特徴とする。
上記転動体が玉であり、上記内輪軌道面および上記外輪軌道面が、上記転動体を案内する円曲面であることを特徴とする。
上記転動体が玉であり、上記保持器の摺接面が、上記転動体との摺接面である上記玉を保持するポケット面であることを特徴とする。
上記硬質膜は、表面粗さRa:0.01μm以下、ビッカース硬度Hv:780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材として、ヘルツの最大接触面圧0.5GPaの荷重を印加して接触させ、0.05m/sの回転速度で30分間、上記相手材を回転させたときの該硬質膜の比摩耗量が200×10−10mm/(N・m)未満であることを特徴とする。
上記表面層は、スパッタリングガスとしてアルゴン(以下、Arと記す)ガスを用いたUBMS装置を使用して成膜した層であり、炭素供給源として黒鉛ターゲットと炭化水素系ガスとを併用し、上記Arガスの上記装置内への導入量100に対する上記炭化水素系ガスの導入量の割合が1〜5であり、上記装置内の真空度が0.2〜0.8Paであり、基材となる軸受部材に印加するバイアス電圧が70〜150Vである条件下で、上記炭素供給源から生じる炭素原子を、上記第2混合層上に堆積させて成膜されたものであることを特徴とする。
なお、基材に対するバイアスの電位は、アース電位に対してマイナスとなるように印加しており、例えば、バイアス電圧150Vとは、アース電位に対して基材のバイアス電位が−150Vであることを示す。
上記表面層は、上記第2混合層との隣接側に緩和層部分を有し、該緩和層部分は、上記炭化水素系ガスの導入量の割合、上記装置内の真空度、および上記バイアス電圧の少なくとも1つを、連続的または段階的に変化させて形成された部分であることを特徴とする。
上記硬質膜の膜厚が0.5〜3μmであり、かつ該硬質膜の膜厚に占める上記表面層の厚さの割合が0.7以下であることを特徴とする。
上記内輪、前記外輪、上記転動体を形成する鉄系材料が、それぞれ、高炭素クロム軸受鋼、炭素鋼、工具鋼、または、マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。また、上記内輪、上記外輪、または上記転動体において、上記硬質膜が形成される面の硬さが、ビッカース硬さでHv650以上であることを特徴とする。
上記保持器を形成する鉄系材料が、冷間圧延鋼板、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、または、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
上記硬質膜が形成される面において、上記硬質膜形成前に、窒化処理により窒化層が形成されていることを特徴とする。
上記内輪、上記外輪、または上記転動体において、上記硬質膜が形成される面の表面粗さRaが、0.05μm以下であることを特徴とする。また、上記保持器において、上記硬質膜が形成される摺接面の表面粗さRaが、0.5μm以下であることを特徴とする。
上記転がり軸受は、グリースが封入されていることを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、鉄系材料からなる軸受部材の面に、DLCを含む所定の膜構造を有する硬質膜が成膜されてなる。各面上に直接成膜される第1混合層は、Crを含むので鉄系材料と相性がよく、WやSiと比較して密着性に優れる。また、WCは、CrとDLCとの中間的な硬さや弾性率を有するので、第1混合層、第2混合層、ともにWCを含む傾斜組成とすることにより、成膜後の残留応力の集中が発生し難い。また、第1混合層および第2混合層が、傾斜組成であるので、異なる材質を物理的に結合する構造となっている。さらに、硬質膜の第2混合層における水素含有量が10〜45原子%であるので、高い接触応力を受ける軌道面や転動面、強い衝撃力を受ける保持器摺動面において、長期間にわたり剥離を防止できる。
上記構造により、該硬質膜は、曲面である内・外輪軌道面や転動体の転動面、平面でない保持器摺接面に形成されながら耐剥離性に優れ、DLC本来の特性を発揮できる。この結果、本発明の転がり軸受は、耐焼き付き性、耐摩耗性、および耐腐食性に優れ、苛酷な潤滑状態でも軌道面や保持器摺接面などの損傷が少なく長寿命となる。
本発明の転がり軸受の一例を示す断面図である。 本発明の転がり軸受の他の例を示す断面図である。 本発明の転がり軸受の他の例を示す断面図である。 図3の保持器の拡大図である。 硬質膜の構造を示す模式断面図である。 UBMS法の成膜原理を示す模式図である。 AIP機能を備えたUBMS装置の模式図である。 摩擦試験機を示す図である。 スラスト型転動疲労試験機を示す図である。 軸受寿命試験に用いた試験機を示す図である。 微動摩耗試験機を示す図である。 軸受寿命試験に用いた試験機を示す図である。 GDS分析結果の一例を示す図である。 図13における第2混合層(WC/DLC層)部分の拡大図である。 GDS分析における水素量出力値とERDA分析で測定した水素量の関係(検量線)を示す図である。
本発明の転がり軸受は、内輪、外輪、転動体、および保持器から選ばれる少なくとも一つの軸受部材が鉄系材料からなるものである。硬質膜を成膜する箇所は、(1)鉄系材料からなる上記軸受部材の表面であり、その中でも、(2)内輪軌道面、外輪軌道面、転動体の転動面、および保持器の摺接面から選ばれる少なくとも一つの面である。これらの面は、主に平面でない曲面である。該硬質膜は、鉄系材料からなる部材同士が接触する面に成膜することが好ましい。
本発明の転がり軸受を図1〜図4に基づいて説明する。図1は内・外輪軌道面に硬質膜を成膜した転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図を、図2は転動体の転動面に硬質膜を成膜した転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図を、図3は保持器のポケット面に硬質膜を成膜した転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図を、図4は図3の保持器の拡大図をそれぞれ示す。
図1に示すように、転がり軸受1は、外周に内輪軌道面2aを有する内輪2と、内周に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間を転動する複数の転動体4とを備える。転動体4は保持器5により一定間隔で保持されている。シール部材6により、内・外輪の軸方向両端開口部がシールされ、軸受空間にグリース7が封入されている。グリース7としては、転がり軸受用の公知のグリースを使用できる。
図1(a)の転がり軸受では、内輪2の外周面(内輪軌道面2aを含む)に硬質膜8が形成されており、図1(b)の転がり軸受では、外輪3の内周面(外輪軌道面3aを含む)に硬質膜8が形成されている。該硬質膜8を内・外輪に形成する場合は、少なくともその軌道面に形成してあればよい。よって、各図に示すように内輪外周面全体、外輪外周面全体に形成する、または、内・外輪の全体に形成してもよい。
また、図2の転がり軸受では、転動体4の転動面に硬質膜8が形成されている。図2の転がり軸受は深溝玉軸受であることから、転動体4は玉であり、その転動面は球面全体である。図に示した態様以外の転がり軸受として、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受を用いる際に、該硬質膜8をその転動体に形成する場合は、少なくとも転動面(円筒外周など)に形成してあればよい。
図1および図2に示すように、深溝玉軸受の内輪軌道面2aは、転動体4である玉を案内するため、軸方向断面が円弧溝状である円曲面である。同様に、外輪軌道面3aも、軸方向断面が円弧溝状である円曲面である。この円弧溝の曲率半径は、一般的に鋼球径をdwとすると、0.51〜0.54dw程度である。また、図に示した態様以外の転がり軸受として、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受を用いる場合では、これらの軸受のころを案内するため、内輪軌道面および外輪軌道面は、少なくとも円周方向で曲面となる。その他、自動調心ころ軸受などの場合、転動体としてたる型ころを用いるので、内輪軌道面および外輪軌道面は、円周方向に加えて、軸方向についても曲面となる。本発明の転がり軸受は、内輪軌道面および外輪軌道面が、以上のいずれの形状であってもよい。
硬質膜8の成膜対象となる軸受部材である内輪2、外輪3、および転動体4は、鉄系材料からなる。この鉄系材料としては、軸受部材として一般的に用いられる任意の鋼材などを使用でき、例えば、高炭素クロム軸受鋼、炭素鋼、工具鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼などが挙げられる。
内輪2、外輪3、または転動体4において、硬質膜が形成される面の硬さが、ビッカース硬さでHv650以上であることが好ましい。Hv650以上とすることで、硬質膜(下地層)との硬度差を少なくし、密着性を向上させることができる。
内輪2、外輪3、または転動体4において、硬質膜が形成される面の表面粗さRaは、0.05μm以下であることが好ましい。表面粗さRaが0.05μmをこえると、粗さの突起先端に硬質膜が形成され難くなり、局所的に膜厚が小さくなる。
図3の転がり軸受では、保持器5の摺接面に硬質膜8が成膜されている。他の軸受構成は、図1に示す軸受と同様である。図4に示すように、保持器5は、波型鉄板保持器であり、後述の鉄系材料を用いてプレス成形した2つの部材5a、5aを組み合わせて製作され、転動体4である玉を保持する保持器ポケット5bが形成されている。保持器ポケット5bの内周面(ポケット面)が転動体4との摺接面であり、該ポケット面に硬質膜8が形成されている。硬質膜8は、軌道輪(内輪2または外輪3)との摺接面および転動体4との摺接面から選ばれる少なくとも一つの摺接面に形成してあればよい。また、この保持器5の摺接面に加えて、図1および図2で示した内輪軌道面2a、外輪軌道面3a、転動体4の転動面などにも併せて硬質膜を成膜してもよい。
硬質膜8の成膜対象となる保持器5は、鉄系材料からなる。この鉄系材料としては、保持器材として一般的に用いられる任意の材料を使用でき、例えば、冷間圧延鋼板、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。
保持器5において、硬質膜8が成膜される摺接面の硬さが、ビッカース硬さでHv190以上が好ましく、Hv450以上であることがより好ましい。Hv450以上とすることで、硬質膜(下地層)との硬度差を極力少なくし、密着性を向上させることができる。
保持器5において、硬質膜8が形成される摺接面の表面粗さRaは、0.5μm以下であることが好ましい。表面粗さRaが0.5μmをこえると、粗さの突起先端に形成される硬質膜が、摺動時の局所的な応力集中により剥離しやすい。また、汚れが十分に落ち難いので汚れの上に形成された硬質膜は容易に剥離することがある。
各部材(内輪、外輪、転動体、保持器)の硬質膜が形成される面において、硬質膜形成前に、窒化処理により窒化層が形成されていることが好ましい。窒化処理としては、基材表面に密着性を妨げる酸化層が生じ難いプラズマ窒化処理を施すことが好ましい。また、窒化処理後の表面の硬さがビッカース硬さでHv1000以上であることが、硬質膜(下地層)との密着性をさらに向上させるために好ましい。
本発明における硬質膜の構造を図5に基づいて説明する。図5は、図1(a)の場合における硬質膜8の構造を示す模式断面図である。図5に示すように、該硬質膜8は、(1)内輪2の内輪軌道面2a上に直接成膜されるCrとWCとを主体とする第1混合層8aと、(2)第1混合層8aの上に成膜されるWCとDLCとを主体とする第2混合層8bと、(3)第2混合層8bの上に成膜されるDLCを主体とする表面層8cとからなる3層構造を有する。本発明では、硬質膜の膜構造を、上記のような3層構造とすることで、急激な物性(硬度・弾性率等)変化を避けるようにしている。
第1混合層8aが、軌道面や転動面、保持器の摺接面に直接成膜される下地層である。第1混合層8aは、Crを含むので基材となる鉄系材料製の軸受部材との相性がよく、W、Ti、Siなどを用いる場合と比較して基材との密着性に優れる。特に、軸受軌道輪材料として使用される高炭素クロム軸受鋼との密着性に優れる。また、第1混合層8aに用いるWCは、CrとDLCとの中間的な硬さや弾性率を有し、成膜後の残留応力の集中も発生し難い。
また、第1混合層8aが、内輪2側から第2混合層8b側に向けてCrの含有率が小さく、かつ、WCの含有率が高くなる傾斜組成であるので、内輪2と第2混合層8bとの両面での密着性に優れる。また、該混合層内において、CrとWCとが物理的に結合する構造となっており、該混合層内での破損などを防止できる。さらに、第2混合層8b側ではWC含有率が高められているので、第1混合層8aと第2混合層8bとの密着性に優れる。
第2混合層8bが、下地層と表面層との間に介在する中間層となる。第2混合層8bに用いるWCは、上述のように、CrとDLCとの中間的な硬さや弾性率を有し、成膜後の残留応力の集中も発生し難い。第2混合層8bが、第1混合層8a側から表面層8c側に向けてWCの含有率が小さく、かつ、DLCの含有率が高くなる傾斜組成であるので、第1混合層8aと表面層8cとの両面での密着性に優れる。また、該混合層内において、WCとDLCとが物理的に結合する構造となっており、該混合層内での破損などを防止できる。さらに、表面層8c側ではDLC含有率が高められているので、表面層8cと第2混合層8bとの密着性に優れる。
第2混合層8bは、非粘着性の高いDLCをWCによって第1混合層8a側にアンカー効果で結合させる層であり、強い衝撃力を受け疲労を伴う、または、高面圧で疲労を伴うような苛酷条件でも高い密着性を発現させるためには、この層中のDLCおよびWC両方の機械的特性や疲労特性が重要と考えられる。そこで、本発明者らは、実験を重ねて第2混合層(WC/DLC)の成膜条件の最適化を行った結果、第2混合層中の水素含有量を、一般的なスパッタリング条件で行なった場合と比べて極端に多くすることによって、強い衝撃力を受け疲労を伴う環境下や、転がり接触により高い接触応力を受け疲労を伴う環境下において、剥離寿命を著しく向上できることを見出した。
第2混合層における水素含有量は、10〜45原子%とする。15〜45原子%とすることがより好ましい。第2混合層における水素含有量が10原子%より少ない場合、機械的特性は十分であるので静的な密着性は高いが、疲労特性が劣るため転がり接触下などでは剥離し易い。一方、水素含有量が45原子%をこえると、その機械的特性が不十分となり、硬質膜が、衝撃力や、転がり接触の高面圧に耐えられずに大きく変形し、隣接する層に応力が集中するため長寿命は発現しにくい。
ここで、本発明における「第2混合層における水素含有量」は、GDS分析(グロー放電発光分光分析)で求めた水素含有量(原子%)である。GDS分析は深さ方向と元素量の関係を調べることができる分析であり、各元素の検量線を用意すれば定量が可能である。水素量検量線は、水素の絶対量測定が可能なERDA分析(弾性反跳粒子検出法)を用いて作成した。また、水素以外の構成元素の検量線についてはEDX分析を用いて作成した。詳細を以下に示す。
図13にGDS分析結果の一例を、図14に図13における第2混合層(WC/DLC層)部分の拡大図をそれぞれ示す。横軸のスパッタ時間は、表面からの深さを表している。WC/DLC層は、CピークとWピークが共存する範囲であり、この共存範囲内の水素ピークの最大値(原子%)を本発明における「第2混合層における水素含有量」として定義している。なお、縦軸の「原子%」は、GDS分析における水素量出力値(V)から下記の方法で算出している。
GDS分析における水素量出力値(V)は、試験片材質の違いによって異なるため、第2混合層(WC/DLC層)を構成しているDLCとWCそれぞれについて水素量検量線を作成する必要がある。そこで、DLC単層膜試験片およびWC単層膜試験片について、WC/DLC層の成膜条件に合わせた条件でメタンガス導入量を調整することで水素含有量の異なる試験片を作製し、ERDA分析とGDS分析を行なった。GDS分析における水素量出力値(V)とERDA分析で測定した水素量(原子%)の関係(検量線)の一例を図15に示す。GDS分析における水素量出力値は水素量と直線関係があることが分かる。上記DLC水素量検量線で求めた水素含有量と、上記WC水素量検量線で求めた水素含有量とは異なるため、これら両方の検量線で求めた水素含有量の平均をとることで、任意の水素量出力値(V)に対応する水素含有量(原子%)が算出できる。
表面層8cは、DLCを主体とする膜である。表面層8cにおいて、第2混合層8bとの隣接側に、緩和層部分8dを有することが好ましい。これは、第2混合層8bと表面層8cとで成膜条件パラメータ(炭化水素系ガス導入量、真空度、バイアス電圧)が異なる場合、これらパラメータの急激な変化を避けるために、該パラメータの少なくとも1つを連続的または段階的に変化させることで得られる緩和層部分である。より詳細には、第2混合層8bの最表層形成時の成膜条件パラメータを始点とし、表面層8cの最終的な成膜条件パラメータを終点として、各パラメータをこの範囲内で連続的または段階的に変化させる。これにより、第2混合層8bと表面層8cとの急激な物性(硬度・弾性率等)の差がなくなり、第2混合層8bと表面層8cとの密着性がさらに優れる。なお、バイアス電圧を連続的または段階的に上昇させることで、DLC構造におけるグラファイト構造(sp)とダイヤモンド構造(sp)との構成比率が後者に偏っていき、硬度が傾斜(上昇)する。
硬質膜8の膜厚(3層の合計)は0.5〜3.0μmとすることが好ましい。膜厚が0.5μm未満であれば、耐摩耗性および機械的強度に劣る場合があり、3.0μmをこえると剥離し易くなる。さらに、該硬質膜8の膜厚に占める表面層8cの厚さの割合が0.7以下であることが好ましい。この割合が0.7をこえると、第2混合層8bにおけるWCとDLCの物理結合するための傾斜組織が不連続な組織となりやすく、密着性が劣化する可能性が高い。
硬質膜8を以上のような組成の第1混合層8a、第2混合層8b、表面層8cからなる3層構造とすることで、耐剥離性に優れる。
硬質膜8の物性としては、表面粗さRa:0.01μm以下、ビッカース硬度Hv:780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材として、ヘルツの最大接触面圧0.5GPaの荷重を印加して接触させ、0.05m/sの回転速度で30分間、上記相手材を回転させたときの該硬質膜の比摩耗量が200×10−10mm/(N・m)未満であることが好ましい。この摩擦摩耗試験の形態は、相手材表面粗さが小さいため、軸受内の摩耗形態に近い凝着摩耗形態であり、該試験で比摩耗量が200×10−10mm/(N・m)未満であれば、軌道面や保持器摺接面で発生する局所的なすべりに対しても摩耗低減に効果がある。
また、押し込み硬さの平均値と標準偏差値との合計が25〜45GPaであることが好ましい。この範囲であると、軌道面内や保持器摺接面内に硬質な異物が介入した場合に発生するアブレッシブ摩耗にも高い効果を発揮する。
また、スクラッチテストにおける臨界剥離荷重が50N以上であることが好ましい。スクラッチテストにおける臨界剥離荷重の測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。臨界剥離荷重が50N未満である場合には、高荷重条件で軸受を使用した場合に硬質膜が剥離する可能性が高い。また、臨界剥離荷重が50N以上であっても、本発明のような膜構造でなければ場合によっては容易に剥離することもある。
本発明の転がり軸受において、以上のような構造・物性の硬質膜を形成することで、軸受使用時に転がり接触などの負荷(高い接触応力)を受けた場合や、衝撃力や局所的な摺動発熱による熱衝撃を受けた場合でも、該膜の摩耗や剥離を防止でき、苛酷な潤滑状態でも軌道面や保持器摺接面などの損傷が少なく長寿命となる。また、グリースを封入した転がり軸受において、金属新生面が露出すると、触媒作用によりグリース劣化を促進させるが、本発明の転がり軸受では、硬質膜により金属接触による軌道面、転動面、保持器摺接面などの損傷を防止できるので、このグリース劣化も防止できる。
以下、硬質膜の形成方法について説明する。硬質膜は、軸受部材の成膜面に対して、下地層8a、混合層8b、表面層8cをこの順に成膜して得られる。
表面層8cの形成は、スパッタリングガスとしてArガスを用いたUBMS装置を使用してなされることが好ましい。UBMS装置を用いたUBMS法の成膜原理を図6に示す模式図を用いて説明する。図中において、基材12は、成膜対象の軸受部材である内輪、外輪、転動体、または保持器であるが、模式的に平板で示してある。図6に示すように、丸形ターゲット15の中心部と周辺部で異なる磁気特性を有する内側磁石14a、外側磁石14bが配置され、ターゲット15付近で高密度プラズマ19を形成しつつ、上記磁石14a、14bにより発生する磁力線16の一部16aがバイアス電源11に接続された基材12近傍まで達するようにしたものである。この磁力線16aに沿ってスパッタリング時に発生したArプラズマが基材12付近まで拡散する効果が得られる。このようなUBMS法では、基材12付近まで達する磁力線16aに沿って、Arイオン17および電子が、通常のスパッタリングに比べてイオン化されたターゲット18をより多く基材12に到達させるイオンアシスト効果によって、緻密な膜(層)13を成膜できる。
表面層8cは、この装置を利用して、炭素供給源として黒鉛ターゲットと炭化水素系ガスとを併用し、上記Arガスの上記装置内への導入量100に対する上記炭化水素系ガスの導入量の割合を1〜5とし、上記装置内の真空度を0.2〜0.8Paとし、基材となる軸受部材に印加するバイアス電圧を70〜150Vとした条件下で、上記炭素供給源から生じる炭素原子を、第2混合層8b上に堆積させて成膜されたものとすることが好ましい。この好適条件について以下に説明する。
炭素供給源として黒鉛ターゲットと炭化水素系ガスとを併用することで、第2混合層8bとの密着性を向上させることができる。炭化水素系ガスとしては、メタンガス、アセチレンガス、ベンゼンなどが使用でき、特に限定されないが、コストおよび取り扱い性の点からメタンガスが好ましい。
上記炭化水素系ガスの導入量の割合を、ArガスのUBMS装置内(成膜チャンバー内)への導入量100(体積部)に対して1〜5(体積部)とすることで、表面層8cの耐摩耗性などを悪化させずに、第2混合層8bとの密着性の向上が図れる。
UBMS装置内(成膜チャンバー内)の真空度は上記のとおり0.2〜0.8Paであることが好ましい。より好ましくは、0.25〜0.8Paである。真空度が0.2Pa未満であると、チャンバー内のArガス量が少ないため、Arプラズマが発生せず、成膜できない場合がある。また、真空度が0.8Paより高いと、逆スパッタ現象が起こり易くなり、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
基材となる軸受部材に印加するバイアス電圧は上記のとおり70〜150Vであることが好ましい。より好ましくは、100〜150Vである。バイアス電圧が70V未満であると、緻密化が進行せず、耐摩耗性が極端に悪化するので好ましくない。また、バイアス電圧が150Vをこえると、逆スパッタ現象が起こり易くなり、耐摩耗性が悪化するおそれがある。また、バイアス電圧が高すぎると、表面層が硬くなりすぎ、軸受使用時に剥離しやすくなるおそれがある。
また、スパッタリングガスであるArガスの導入量は40〜150ml/minであることが好ましい。より好ましくは50〜150ml/minである。Arガス流量が40ml/min未満であると、Arプラズマが発生せず、成膜できない場合がある。また、Arガス流量が150ml/minよりも多いと、逆スパッタ現象が起こり易くなるため、耐摩耗性が悪化するおそれがある。Arガス導入量が多いと、成膜チャンバー内でAr原子と炭素原子の衝突確率が増す。その結果、膜表面に到達するAr原子数が減少し、Ar原子による膜の押し固め効果が低下し、膜の耐摩耗性が悪化する。
第1混合層8aおよび第2混合層8bの形成も、上記のスパッタリングガスとしてArガスを用いたUBMS装置を使用してなされることが好ましい。第1混合層8aを形成する際には、ターゲット15として、CrターゲットおよびWCターゲットを併用する。また、第2混合層8bを形成する際には、(1)WCターゲット、および、(2)黒鉛ターゲットおよび炭化水素系ガスを用いる。各層の形成毎に、それぞれに用いるターゲットを逐次取り替える。
第1混合層8aは、連続的または段階的に、WCターゲットに印加するスパッタ電力を上げながら、かつ、Crターゲットに印加する電力を下げながら成膜する。これにより第2混合層8b側に向けてCrの含有率が小さく、かつ、WCの含有率が高くなる傾斜組成の層とできる。
第2混合層8bは、連続的または段階的に、炭素供給源となる黒鉛ターゲットに印加するスパッタ電力を上げながら、かつ、WCターゲットに印加する電力を下げながら成膜する。これにより表面層8c側に向けてWCの含有率が小さく、かつ、DLCの含有率が高くなる傾斜組成の層とできる。
第2混合層8b中の水素含有量を上記範囲(10〜45原子%)とするため、炭素供給源として黒鉛ターゲットと炭化水素系ガスとを併用し、該炭化水素系ガスの導入量の割合を、通常のスパッタリング条件と比較して多くする。例えば、炭化水素系ガスの導入量の割合を、ArガスのUBMS装置内(成膜チャンバー内)への導入量100(体積部)に対して5〜40、より好ましくは10〜40(体積部)とする。第2混合層成膜時における装置内の真空度、バイアス電圧などの他の条件は、上述の表面層の好適な成膜条件と同様である。
DLC膜などの硬質膜は膜内に残留応力があり、残留応力は膜構造や成膜条件、基材形状の影響を受け大きく異なる。実験を重ねた結果、基材形状の影響が大きいことが判明した。例えば、平面では成膜直後の剥離もなくスクラッチテストでの臨界剥離荷重も大きい硬質膜が、転がり軸受の内・外輪軌道面や、転がり軸受の保持器ポケット面のような曲面では成膜直後に剥離する場合や、成膜直後には剥離しなくとも、使用時に剥離しやすいものである場合がある。本発明者らは、鋭意検討の結果、曲面である転がり軸受の内・外輪軌道面、転動体の転動面、保持器摺接面(ポケット面など)に形成する硬質膜を、上述のように、(1)Cr/WCの第1混合層(組成傾斜)、(2)WC/DLCの第2混合層(組成傾斜)、(3)DLCの表面層とからなる所定の構造に限定し、かつ、第2混合層の水素含有量を所定範囲にすることで、高い接触応力を受ける場合などでも耐剥離性の大幅な向上が図れ、該硬質膜の剥離を防止できることを見出した。
[平板および内・外輪への成膜]
本発明の転がり軸受に形成する硬質膜として、所定の基材に対して硬質膜を形成し、該硬質膜の物性に関する評価した。また、同様の硬質膜を転がり軸受の内輪軌道面および外輪軌道面に実際に成膜し、該軸受の評価を行なった。
硬質膜の評価用に用いた基材、UBMS装置、スパッタリングガスは以下のとおりである。
(1)基材材質:各表に示す基材
(2)基材寸法等:各表に示す表面粗さの円板(φ48mm×φ8mm×7mm、平面に成膜)
(3)UBMS装置:神戸製鋼所製;UBMS202/AIP複合装置
(4)スパッタリングガス:Arガス
第1混合層(下地層)の形成条件を以下に説明する。成膜チャンバー内を5×10−3Pa程度まで真空引きし、ヒータで基材をベーキングして、Arプラズマにて基材表面をエッチング後、CrターゲットとWCターゲットに印加するスパッタ電力を調整し、CrとWCの組成比を傾斜させた層を形成した。基材に印加するバイアス電圧は、150Vである。この層は、基材側から第2混合層側に向けてCrの含有率が小さく、かつ、WCの含有率が高くなる層である。なお、Cr/WC以外の混合層とする場合は、対応するターゲットを用いる以外は、同条件で形成した。
第2混合層(中間層)の形成条件を以下に説明する。成膜チャンバー内を5×10−3Pa程度まで真空引きし、Arプラズマにて基材表面(または上記下地層表面)をエッチング後、炭化水素系ガスであるメタンガスを供給しながら、WCターゲットと黒鉛ターゲットに印加するスパッタ電力を調整し、WCとDLCの組成比を傾斜させた層を形成した。基材に印加するバイアス電圧は、150Vである。この層は、第1混合層側から表面層側に向けてWCの含有率が小さく、かつ、DLCの含有率が高くなる層である。第2混合層における水素含有量(原子%)は、GDS分析(グロー放電発光分光分析)により上述の方法で求めた。なお、メタンガス導入比は、各表に示すとおりである。
表面層の形成条件は、各表に示すとおりである。
UBMS202/AIP複合装置の概要を図7に示す。図7はアークイオンプレーティング(以下、AIPと記す)機能を備えたUBMS装置の模式図である。図7に示すように、UBMS202/AIP複合装置は、円盤22上に配置された基材23に対し、真空アーク放電を利用して、AIP蒸発源材料21を瞬間的に蒸気化・イオン化し、これを基材23上に堆積させて被膜を成膜するAIP機能と、スパッタ蒸発源材料(ターゲット)24を非平衡な磁場により、基材23近傍のプラズマ密度を上げてイオンアシスト効果を増大すること(図6参照)によって、基材上に堆積する被膜の特性を制御できるUBMS機能を備える装置である。この装置により、基材上に、AIP被膜および複数のUBMS被膜(組成傾斜を含む)を任意に組合せた複合被膜を成膜することができる。この実施例では、基材とする軸受部材(内輪、外輪)に、第1混合層、第2混合層、表面層をUBMS被膜として成膜している。なお、外輪軌道面は、外輪の内周に位置するが、イオン化されたターゲットが回り込むことで成膜される。
実施例A1〜A10、A12、比較例A1〜A7、参考例A1〜A9
表1〜表3に示す基材をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置に取り付け、上述の形成条件にて各表に示す材質の第1混合層および第2混合層を形成した。その上に、各表に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。なお、各表における「真空度」は上記装置における成膜チャンバー内の真空度である。得られた試験片を以下に示す摩耗試験、硬度試験、膜厚試験、スクラッチテスト、およびスラスト型転動疲労試験(参考例以外)に供した。結果を各表に併記する。なお、表1下記の1)〜7)は、表2〜表7においても同じである。
実施例A11
日本電子工業社製:ラジカル窒化装置を用いてプラズマ窒素処理が施された基材(ビッカース硬さHv1000)をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置に取り付け、上述の形成条件にて表1に示す材質の第1混合層(Cr/WC)および第2混合層(WC/DLC)を形成した。その上に、表1に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。得られた試験片について、実施例A1と同様の試験に供し、その結果を表1に併記する。
<摩擦摩耗試験>
得られた試験片を、図8に示す摩擦試験機用いて摩擦試験を行なった。図8(a)は正面図を、図8(b)は側面図を、それぞれ表す。表面粗さRaが0.01μm以下であり、ビッカース硬度Hvが780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材32として回転軸に取り付け、試験片31をアーム部33に固定して所定の荷重34を図面上方から印加して、ヘルツの最大接触面圧0.5GPa、室温(25℃)下、0.05m/sの回転速度で30分間、試験片31と相手材32との間に潤滑剤を介在させることなく、相手材32を回転させたときに、相手材32と試験片31との間に発生する摩擦力をロードセル35により検出した。これより、比摩耗量を算出した。
<硬度試験>
得られた試験片の押し込み硬さをアジレントテクノロジー社製:ナノインデンタ(G200)を用いて測定した。なお、測定値は表面粗さの影響を受けない深さ(硬さが安定している箇所)の平均値を示しており、各試験片10箇所ずつ測定している。
<膜厚試験>
得られた試験片の硬質膜の膜厚を表面形状・表面粗さ測定器(テーラーホブソン社製:フォーム・タリサーフPGI830)を用いて測定した。膜厚は成膜部の一部にマスキングを施し、非成膜部と成膜部の段差から膜厚を求めた。
<スクラッチテスト>
得られた試験片について、ナノテック社製:レベテストRSTを用いてスクラッチテストを行ない臨界剥離荷重を測定した。具体的には、得られた試験片について、先端半径200μmのダイヤモンド圧子で、スクラッチ速度10mm/min、荷重負荷速度10N/mm(連続的に荷重を増加)で試験し、試験機画面で判定し、画面上の摩擦痕(摩擦方向長さ375μm、幅約100μm)に対し露出した基材の面積が50%に達する荷重を臨界剥離荷重として測定した。
<スラスト型転動疲労試験>
得られた試験片(φ48mm×φ8mm×7mm)について、図9に示す試験機を用いて、スラスト型転動疲労試験として、軸受の潤滑状態が苛酷な場合を想定した「低ラムダ条件」と、潤滑状態が良好な場合を想定した「高ラムダ条件」との2条件の試験を行い、硬質膜の転動疲労特性を評価した。「低ラムダ条件」は境界潤滑となるため、純粋な繰り返し転動疲労に加え接触による損傷が影響する。よって、硬質膜の耐摩耗性と密着性が要求される。各条件を以下に示す。
[低ラムダ条件]
潤滑油:VG2
ラムダ:0.6
最大接触面圧:2GPa
回転数:1000r/min
軌道径:φ20mm
転動体:サイズ7/32”、個数3、材質SUJ2、硬さHv750、表面粗さ0.005μmRa
油温度:70℃
打ち切り時間:なし
(1111hで負荷回数8乗回)

[高ラムダ条件]
潤滑油:VG32
ラムダ:9.2
最大接触面圧:3.5GPa
回転数:4500r/min
軌道径:φ20mm
転動体:サイズ7/32”、個数3、材質SUJ2、硬さHv750、表面粗さ0.005μmRa
油温度:70℃
打ち切り時間:300h
(247hで負荷回数8乗回)
図9に示すように、試験機は、転動体42が円板状の試験片41と軌道盤(51201)45との間で転動する構成であり、試験片41は調芯用ボール43を介して支持されている。また、図中44は、予圧のためのロータリーボールスプライン、46はヒータ、47は熱電対である。本試験機は、試験片41を取り付け直しても転走跡がずれない構造である。評価方法は、試験時間20h毎に試験片を取り外し、光学顕微鏡観察によって試験片からの硬質膜の剥離有無を確認する。例えば、20h確認時に剥離していれば寿命は20hとなる。20h確認時に剥離していなければ、再度試験片を取り付けて試験を継続する。寿命時間を表1および表2に併記する。また、寿命判定として、低ラムダ条件では、寿命が1500h以上のものを「○」、1500h未満のものを「×」として記録する。高ラムダ条件では、寿命が300h以上のものを「○」、300h未満のものを「×」として記録する。
<軸受内外輪への成膜試験>
実施例、比較例の各条件で、6206転がり軸受(深溝玉軸受)の以下の内輪軌道面および外輪軌道面に実際に成膜を行い、成膜直後の各部材からの硬質膜の剥離を確認した。成膜チャンバーから取り出したときに剥離していなかったものを「○」、剥離していたものを「×」として記録し、結果を各表に併記する。
内輪:軌道面に硬質膜を成膜、材質SUJ2、硬さHv750、表面粗さ0.03μmRa
外輪:軌道面に硬質膜を成膜、材質SUJ2、硬さHv750、表面粗さ0.03μmRa
<軸受寿命試験>
上記成膜試験で硬質膜が成膜された内外輪を用いて、試験用の6206転がり軸受(深溝玉軸受)を組み立て、この試験用軸受を用いて図10の試験機より寿命試験を行った。図10に示すように、試験機は、負荷用コイルバネ53から負荷用玉軸受52を介して荷重を負荷されつつ、駆動プーリ54により回転する軸55を、一対の試験用軸受51で回転支持するものである。潤滑状態は良好な場合を想定している。試験条件を以下に示す。
内輪/外輪:上記成膜試験で硬質膜が成膜された内輪および外輪
転動体:サイズ3/8”、個数9、材質SUJ2、硬さHv750、表面粗さ0.005μmRa
潤滑油:VG56
ラムダ:3以上
最大接触面圧:3.3GPa
回転数:3000r/min(内輪回転)
計算寿命:L10寿命 127h
打ち切り時間:200h
試験時間20hと試験時間200hの試験を行ない、試験後の軌道面を光学顕微鏡観察を用いて部材からの硬質膜の剥離の有無を確認した。例えば、20h試験後に剥離していれば寿命は20hとなり、200h試験後に剥離していれば寿命は200hとなる。よって、寿命水準としては、20h、200h、200h以上の3水準となる。寿命時間を表1および表2に併記する。また、寿命判定として、寿命が200h以上のものを「○」、200h未満のものを「×」として記録し、結果を各表に併記する。
表1に示すように各実施例の硬質膜は、耐摩耗性や密着性に優れ、軸受使用時においても硬質膜の剥離を防止できた。一方、膜構造が異なる比較例A1〜A5では、耐剥離性などに劣る結果となった。また、膜構造(3層構造)は同等であるが、第2混合層における水素含有量が本発明の範囲にない比較例A6、A7では高ラムダ条件での耐剥離性に劣る結果となった。
実施例A13〜A18、比較例A8〜A10
本発明の硬質膜について以下の微動摩耗試験を行ない、フレッティング摩耗に対する耐性を評価した。試験片(φ48mm×φ8mm×7mm、平面に成膜)は、表4に示す条件で作製した。なお、各層の成膜は、表4に示す条件以外は実施例A1と同様の条件で行なった。
<微動摩耗試験>
図11は微動摩耗試験機を示す図である。図11に示すように微動摩耗試験機61を用い、グリース65を塗布した試験片62に、ラジアル荷重64を負荷された鋼球63を載せ、下記条件にて水平方向A−Bに往復動させたときの試験片62の摩耗深さと比摩耗量、および、鋼球63の摩耗量を測定した。

[測定条件]
グリース:カルシウム・リチウム石けん/鉱油グリース
ラジアル荷重:10kgf
最大接触面圧:2.5GPa
振動数:30Hz
往復動振幅:0.47mm
試験時間:4時間
表4に示すように、各実施例の硬質膜は、耐フレッティング性に優れることが分かる。また、相手材である鋼球の摩耗も抑制できた。一方、第2混合層における水素含有量が本発明の範囲にない比較例A8、膜構造が異なる比較例A9、A10では、耐フレッティング性に劣り、相手材である鋼球の摩耗量も多い結果となった。
[平板および保持器への成膜]
本発明の転がり軸受の保持器に成膜する硬質膜として、所定の基材に対して硬質膜を成膜し、該硬質膜の物性に関する評価をするとともに、同様の硬質膜を転がり軸受の保持器摺接面に実際に成膜し、該軸受の評価を行なった。
硬質膜の評価用に用いた基材は、各表の基材である。また、基材寸法、UBMS装置、スパッタリングガス、下地層および中間層の成膜条件は、上記[平板および内・外輪への成膜]の場合と同じである。
実施例B1〜B11、B13、比較例B1〜B9、参考例B1〜B8
表5〜表7に示す基材をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置に取り付け、上述の形成条件にて各表に示す材質の第1混合層および第2混合層を形成した。その上に、各表に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。なお、各表における「真空度」は上記装置における成膜チャンバー内の真空度である。得られた試験片を上記[平板および内・外輪への成膜]の場合と同じ摩擦摩耗試験、硬度試験、および膜厚試験に供した。結果を各表に併記する。
実施例B12
日本電子工業社製:ラジカル窒化装置を用いてプラズマ窒素処理が施された基材(ビッカース硬さHv1000)をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置に取り付け、上述の形成条件にて表5に示す材質の第1混合層(Cr/WC)および第2混合層(WC/DLC)を形成した。その上に、表5に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。得られた試験片について、実施例B1と同様の試験に供し、その結果を表5に併記する。
<軸受用保持器への成膜試験>
実施例、比較例の各条件で、6204転がり軸受(深溝玉軸受)用の以下の保持器摺接面(ポケット面)に実際に成膜を行い、成膜直後の保持器からの硬質膜の剥離を確認した。成膜チャンバーから取り出したときに剥離していなかったものを「○」、剥離していたものを「×」として記録し、結果を各表に併記する。
保持器:二つ割れの鉄板保持器(転動体との摺接面に硬質膜を成膜、保持器基材(材質、硬さ、表面粗さ)は各表のとおり)
<軸受寿命試験>
上記成膜試験で硬質膜が成膜された保持器を用いて、試験用の6204転がり軸受(深溝玉軸受)を組み立て、この試験用軸受を用いて図12の試験機より寿命試験を行った。図12に示すように、試験機は、負荷用コイルバネ73から荷重を負荷されつつ、プーリ72により回転する軸を、試験用軸受71で回転支持するものである。74はカートリッジヒータ、75は熱電対である。試験条件を以下に示す。
保持器:二つ割れの鉄板保持器(転動体との摺接面に硬質膜を成膜、保持器基材(材質、硬さ、表面粗さ)は各表のとおり)
試験用軸受:6204(ゴムシール)
潤滑:リチウムエステル系グリース(40℃における基油粘度 26mm2/s、混和ちょう度 260 )
封入量:15%(全空間容積比)
荷重:ラジアル荷重67N、アキシアル荷重67N
回転数:10000r/min(内輪回転)
温度:150℃
寿命形態は焼き付きであり、寿命到達とともに急激にトルクが上昇する。この試験ではモータの過負荷で試験機が停止するまでの時間(h)を寿命とした。結果を各表に併記する。また、寿命判定として、寿命が350h以上のものを「○」、200h以上350h未満のものを「△」、200h未満のものを「×」として記録し、結果を各表に併記する。
表5に示すように各実施例の硬質膜は、耐摩耗性や密着性に優れ、軸受使用時においても保持器からの硬質膜の剥離を防止できた。
本発明の転がり軸受は、内・外輪軌道面、転動体の転動面、保持器摺接面などに形成されたDLCを含む硬質膜の耐剥離性に優れ、DLC本体の特性を発揮できるので、耐焼き付き性、耐摩耗性、および耐腐食性に優れる。このため、本発明の転がり軸受は、苛酷な潤滑状態での用途を含め、各種用途に適用可能である。
1 転がり軸受(深溝玉軸受)
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8 硬質膜
8a 第1混合層
8b 第2混合層
8c 表面層
8d 緩和層部分
11 バイアス電源
12 基材
13 膜(層)
15 ターゲット
16 磁力線
17 Arイオン
18 イオン化されたターゲット
19 高密度プラズマ
21 AIP蒸発源材料
22 円盤
23 基材
24 スパッタ蒸発源材料(ターゲット)
31 試験片
32 相手材
33 アーム部
34 荷重
35 ロードセル
41 試験片
42 転動体
43 調芯用ボール
44 ロータリーボールスプライン
45 軌道盤
46 ヒータ
47 熱電対
51 試験用軸受
52 負荷用玉軸受
53 負荷用コイルバネ
54 駆動プーリ
55 軸
61 微動摩耗試験機
62 試験片
63 鋼球
64 ラジアル荷重
65 グリース
71 試験用軸受
72 プーリ
73 負荷用コイルバネ
74 カートリッジヒータ
75 熱電対

Claims (14)

  1. 外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、前記転動体を保持する保持器とを備えてなる転がり軸受であって、
    前記内輪、前記外輪、前記転動体、および前記保持器から選ばれる少なくとも一つの軸受部材が鉄系材料からなり、
    該鉄系材料からなる前記軸受部材の面であり、かつ、前記内輪軌道面、前記外輪軌道面、前記転動体の転動面、および前記保持器の摺接面から選ばれる少なくとも一つの面に硬質膜が成膜されてなり、
    前記硬質膜は、前記面の上に直接成膜されるクロムとタングステンカーバイトとを主体とする第1混合層と、該第1混合層の上に成膜されるタングステンカーバイトとダイヤモンドライクカーボンとを主体とする第2混合層と、該第2混合層の上に成膜されるダイヤモンドライクカーボンを主体とする表面層とからなる構造の膜であり、
    前記第1混合層は、前記面側から前記第2混合層側へ向けて連続的または段階的に、該第1混合層中の前記クロムの含有率が小さくなり、該第1混合層中の前記タングステンカーバイトの含有率が高くなる層であり、
    前記第2混合層は、前記第1混合層側から前記表面層側へ向けて連続的または段階的に、該第2混合層中の前記タングステンカーバイトの含有率が小さくなり、該第2混合層中の前記ダイヤモンドライクカーボンの含有率が高くなる層であり、
    前記第2混合層における水素含有量が10〜45原子%であることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記転動体が玉であり、前記内輪軌道面および前記外輪軌道面が、前記転動体を案内する円曲面であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  3. 前記転動体が玉であり、前記保持器の摺接面が、前記転動体との摺接面である該玉を保持するポケット面であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  4. 前記硬質膜は、表面粗さRa:0.01μm以下、ビッカース硬度Hv:780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材として、ヘルツの最大接触面圧0.5GPaの荷重を印加して接触させ、0.05m/sの回転速度で30分間、前記相手材を回転させたときの該硬質膜の比摩耗量が200×10−10mm/(N・m)未満であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の転がり軸受。
  5. 前記表面層は、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用いたアンバランスド・マグネトロン・スパッタリング装置を使用して成膜した層であり、
    炭素供給源として黒鉛ターゲットと炭化水素系ガスとを併用し、前記アルゴンガスの前記装置内への導入量100に対する前記炭化水素系ガスの導入量の割合が1〜5であり、前記装置内の真空度が0.2〜0.8Paであり、基材となる軸受部材に印加するバイアス電圧が70〜150Vである条件下で、前記炭素供給源から生じる炭素原子を、前記第2混合層上に堆積させて成膜されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の転がり軸受。
  6. 前記表面層は、前記第2混合層との隣接側に緩和層部分を有し、該緩和層部分は、前記炭化水素系ガスの導入量の割合、前記装置内の真空度、および前記バイアス電圧の少なくとも1つを、連続的または段階的に変化させて形成された部分であることを特徴とする請求項5記載の転がり軸受。
  7. 前記硬質膜の膜厚が0.5〜3μmであり、かつ該硬質膜の膜厚に占める前記表面層の厚さの割合が0.7以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の転がり軸受。
  8. 前記内輪、前記外輪、前記転動体を形成する鉄系材料が、それぞれ、高炭素クロム軸受鋼、炭素鋼、工具鋼、または、マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載の転がり軸受。
  9. 前記内輪、前記外輪、または前記転動体において、前記硬質膜が形成される面の硬さが、ビッカース硬さでHv650以上であることを特徴とする請求項8記載の転がり軸受。
  10. 前記保持器を形成する鉄系材料が、冷間圧延鋼板、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、または、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項記載の転がり軸受。
  11. 前記硬質膜が形成される面において、前記硬質膜形成前に、窒化処理により窒化層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項記載の転がり軸受。
  12. 前記内輪、前記外輪、または前記転動体において、前記硬質膜が形成される面の表面粗さRaが、0.05μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項記載の転がり軸受。
  13. 前記保持器において、前記硬質膜が形成される摺接面の表面粗さRaが、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の転がり軸受。
  14. 前記転がり軸受は、グリースが封入されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の転がり軸受。
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