JP2013077135A - タッチパネル用シート部材、タッチパネルおよび表示装置 - Google Patents

タッチパネル用シート部材、タッチパネルおよび表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
ペンや指で入力するときのタッチ感や筆記感が改善されたタッチパネル用シート部材を提供する。
【解決手段】
タッチパネルのタッチ面に積層されるシート部材であって、該シート部材表面の下記測定方法における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が、0.05以下であることを特徴とする、タッチパネル用シート部材。
(測定方法)
23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンを、荷重200g、速度100mm/secで、シート部材表面を移動させて測定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、タッチパネルのタッチ面に積層されるシート部材、該シート部材が積層されたタッチパネル、および該タッチパネルを備えた表示装置に関する。詳しくは、指タッチによるタッチ感と筆記感が改善されたシート部材に関する。
タッチパネルのタッチ面に表面材あるいは保護フィルム等を装着して、タッチ面を保護したり、視認性を向上させたり、あるいはペン入力時の筆記感を改善することが提案されている(特許文献1〜3)。
特に、特許文献3には、入力ペンと表面材との動摩擦係数と静摩擦係数を特定の範囲に調整することによりペン入力時の筆記感を向上させることが開示されている。
特開平6−180628号公報 特開2003−15822号公報 特開2003−296008号公報
上記特許文献3は、その実施態様によれば、表面材と入力ペンとの動摩擦係数を小さくし、静摩擦係数を動摩擦係数の2〜4倍程度に調整することにより、入力ペンによる筆記感を向上させるというものである。
しかしながら、静摩擦係数が動摩擦係数の2〜4倍程度になると、書き始めの引っかかり感が大きくなり過ぎて、必ずしも筆記感が良好とは言えない。
また近年、指入力用の静電容量式タッチパネルが急速に普及しているが、上記特許文献に記載されている表面材では、指入力時のタッチ感や筆記感が満足できるものではない。
指入力時のタッチ感とは、指でタッチパネルの表面を押したときの感触のことである。タッチパネル表面がガラスのような硬質なものであると、ボタンを押したような感じがなく操作がしづらい。逆にタッチパネル表面が柔らか過ぎると、指に感じる反発感がなく、やはりボタンを押したような感じがなく操作がしづらい。指入力時のタッチ感を良好にするためには、タッチパネル表面に適度な弾力が必要となる。
指入力時の筆記感とは、指でタッチパネル表面に文字を書く際の感触のことである。タッチパネル表面がガラスのような硬質なものであると、指がすべり過ぎて文字を書いているような感触が得られない。逆にタッチパネル表面の摩擦が大きすぎると、書き始めに指が引っかかり、また文字を書いている途中で指がスムーズに動かないため、文字の入力がしづらくなる。指入力時の筆記感を良好にするためには、タッチパネル表面の摩擦を適切に制御する必要がある。
従って、本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、ペンや指で入力するときのタッチ感や筆記感が改善されたタッチパネル用シート部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、本発明のシート部材がタッチ面に積層されたタッチパネル、および該タッチパネルを備えた表示装置を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)タッチパネルのタッチ面に積層されるシート部材であって、該シート部材表面の下記測定方法における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が、0.05以下であることを特徴とする、タッチパネル用シート部材。
(測定方法)
23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンを、荷重200g、速度100mm/secで、シート部材表面を移動させて測定する。
2)前記静摩擦係数(μs)が0.40未満である、前記1)のタッチパネル用シート部材。
3)シート部材が基材上に自己修復性を有する樹脂層を有し、該樹脂層表面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が0.05以下である、前記1)または2)のタッチパネル用シート部材。
4)前記樹脂層表面における傷の消失時間が5秒以下である、前記3)のタッチパネル用シート部材。
5)前記タッチパネルが静電容量式タッチパネルである、前記1)〜4)のいずれかのタッチパネル用シート部材。
6)前記タッチパネルが指入力用タッチパネルである、前記1)〜5)のいずれかのタッチパネル用シート部材。
7)前記樹脂層が、有機ケイ素化合物および/またはフッ素系化合物を含有する、前記3)〜6)のいずれかのタッチパネル用シート部材。
8)前記有機ケイ素化合物が、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、およびポリジメチルシロキサン系共重合体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である、前記7)のタッチパネル用シート部材。
9)前記樹脂層の厚みが10〜60μmである、前記3)〜8)のいずれかのタッチパネル用シート部材。
10)前記基材がポリエステルフィルムである、前記3)〜9)のいずれかのタッチパネル用シート部材。
11)前記1)〜10)のいずれかのタッチパネル用シート部材をタッチ面に積層してなるタッチパネル。
12)前記タッチパネルが静電容量式である、前記11)のタッチパネル。
13)前記タッチパネルが指入力用である、前記11)または12)のタッチパネル。
14)前記11)〜13)のいずれかのタッチパネルを備えた表示装置。
本発明によれば、ペンや指で入力するときのタッチ感や筆記感が改善されたタッチパネル用シート部材を提供することができる。特に、本発明は、指入力用の静電容量式タッチパネルに好適なシート部材を提供することができる。
本発明のタッチパネル用シート部材はタッチパネルのタッチ面に積層されるものであり、入力時にペンや指で直接にタッチされるものである。
本発明のタッチパネル用シート部材(以下、シート部材と言う)は、その表面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が0.05以下であることを特徴とする。0.05以下とはマイナスの場合、つまり、動摩擦係数が静摩擦係数より大きい態様も含んでいる。ここで、シート部材の表面とは、ペンや指で直接タッチされる面を指す。
本発明における静摩擦係数および動摩擦係数は、23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンを、荷重200g、速度100mm/secで、シート部材表面を移動させて測定される。
摩擦係数の測定装置としては、例えば、新東科学(株)製の表面性測定機(商品名「トライボギア」、タイプ「14FW」)を用いることができる。
本発明のシート部材表面における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)は、0.04以下が好ましく、0.03以下がより好ましい。 シート部材表面における静摩擦係数(μs)は、書き始めの引っかかりを小さくすると言う観点から0.40未満が好ましく、0.35未満がより好ましく、特に0.30未満が好ましい。下限は0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましい。
シート部材表面における動摩擦係数(μk)は、良好な筆記感を得るという観点から、0.05〜0.50の範囲が好ましく、0.07〜0.40の範囲がより好ましく、特に0.10〜0.30の範囲が好ましい。
[シート部材]
本発明のシート部材の好ましい態様として、静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)が上記範囲に調整された表面層が基材上に積層されたものが挙げられる。表面層は、樹脂を主成分として含む樹脂層であることが好ましい。
本発明のシート部材の更に好ましい態様として、基材上に表面層として自己修復性を有する樹脂層(以下、自己修復性樹脂層と言う)が積層されたものが挙げられる。
タッチパネルの表面保護のために、ハードコートフィルムを装着することが知られているが、ハードコートフィルムのハードコート層は、通常高硬度(鉛筆硬度がH〜6H程度)に設計されており、ペンや指でのタッチ入力時のタッチ感や筆記感は好ましいものではない。これに対して、自己修復性樹脂層は一般的に軟質樹脂で構成されており、タッチ感や筆記感がよくなる傾向にあり、自己修復性樹脂層表面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)を0.05以下とすることにより、良好なタッチ感と筆記感が得られる。特に、自己修復性樹脂層は、指入力時のタッチ感や筆記感に優れる。
以下、基材上に表面層として自己修復性樹脂層が積層されたシート部材について詳細に説明する。
[自己修復性樹脂層]
自己修復性とは、一度生じた傷が時間経過によって消失する性質を言う。自己修復性は、例えば、23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、JIS K5600(1999年制定)『引っ掻き硬度(鉛筆法)』に従って、HB鉛筆、荷重750gにて自己修復性樹脂層表面に傷を形成し、傷が入ってから消失するまでの時間を測定することによって評価することができる。
本発明において自己修復性を有するとは、上記試験法にて測定された傷の消失時間が30秒以下であることを意味する。
一般に自己修復性樹脂層は通常軟質樹脂で構成されているため、静摩擦係数(μs)は大きくなる傾向にあり、静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)との差(μs−μk)も大きくなる傾向にある。
基材上に自己修復性樹脂層が積層されたシート部材の自己修復性樹脂層表面における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)との差(μs−μk)を0.05以下に調整する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
イ) 自己修復性樹脂層に、カプロラクトンとイソシアネートの反応によるウレタン結合を有する樹脂を含有させる。
ロ) 自己修復性樹脂層に、有機ケイ素化合物および/またはフッ素系化合物を含有させる。
ハ) 自己修復性樹脂層の自己修復性(傷の消失時間)を調整する。
ニ) 自己修復性樹脂層の厚みを調整する。
上記手段は単独もしくは組み合わせて用いることができるが、特に2以上の手段を組み合わせることが好ましい。以下、上記手段について詳細に説明する。
[イ)の自己修復性樹脂層に含有させるウレタン結合を有する樹脂]
カプロラクトンとイソシアネートの反応によるウレタン結合を有する樹脂については、詳しくは後述する。
[(ロ)の自己修復性樹脂層に含有させる有機ケイ素化合物]
上記ロ)において有機ケイ素化合物としては、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系共重合体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。
[ポリシロキサン系化合物]
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、または該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等を使用することができる。
[ポリジメチルシロキサン系化合物]
ポリジメチルシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(例えば、東亞合成(株)製GUV−235)などが挙げられる。
[ポリジメチルシロキサン系共重合体]
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などに製造することができるが、生産性を考慮すると高分子開始剤法、高分子連鎖移動法を用いるのが好ましい。
高分子開始剤法を用いる場合には、下記の化1で表される高分子アゾ系ラジカル重合開始剤を用いて他のビニルモノマーと共重合させることにより、効率よくブロック共重合体を合成することができる。
またペルオキシモノマーと不飽和基を有するポリジメチルシロキサンとを低温で共重合させて過酸化物基を側鎖に導入したプレポリマーを合成し、該プレポリマーをビニルモノマーと共重合させる二段階の重合を行うこともできる。
高分子連鎖移動法を用いる場合は、例えば、下記の化2に示すようなシリコーンオイルにHS−CHCOOHやHS−CHCHCOOH等を付加してSH基を有する化合物とした後、該SH基の連鎖移動を利用して該シリコーン化合物とビニルモノマーとを共重合させることでブロック共重合体を合成することができる。
更にポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を合成するには、例えば、下記の化3に示す化合物、すなわちポリジメチルシロキサンのメタクリルエステルなどとビニルモノマーを共重合させることにより容易にグラフト共重合体を得ることができる。
Figure 2013077135
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ポリジメチルシロキサンとの共重合体に用いられるビニルモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート,n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセチトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコールなどを挙げることができる。
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、通常溶液重合によって製造される。このような溶液重合では、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤などが単独または混合溶剤として用いられる。
また、必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリルなどの重合開始剤を併用する。重合反応は50〜150℃で3〜12時間行うのが好ましい。
また、ポリジメチルシロキサン系共重合体の合成において、イソシアネート基を有するモノマー(例えば、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート)と水酸基を有するモノマー(例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート)を用いることによって、活性エネルギー線硬化性のポリジメチルシロキサン系共重合体を得ることができる。
[(ロ)の自己修復性樹脂層に含有させるフッ素系化合物]
上記ロ)において、フッ素系化合物としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキル第四級アンモニウム塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物などのフルオロアルキル基を有する化合物;ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキル第四級アンモニウム塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物などのペルフルオロアルキル基を有する化合物;フルオロカーボン基を有する化合物;テトラフルオロエチレン重合体;フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステル;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと他モノマーの共重合体が挙げられる。
[(ハ)自己修復性樹脂層の自己修復性(傷の消失時間)の調整]
自己修復性樹脂層表面における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)との差(μs−μk)を0.05以下に調整するという観点から、自己修復性樹脂層の自己修復性(傷の消失時間)が比較的小さくなるように調整することが好ましい。
自己修復性樹脂層の傷消失時間は、前述したようにJIS K5600(1999年制定)に従った試験方法で測定して5秒以下が好ましく、3秒以下がより好ましい。傷消失時間の下限は、目視で傷が消失していることが認識できる程度の時間であり、例えば0.1秒程度である。
また、自己修復性樹脂層の傷消失時間を5秒以下とすることにより、自己修復性としての商品価値(傷が付いたとしても瞬時に消失するという視覚的魅力)が高いものとなる。
自己修復性樹脂層の傷消失時間を上記のように比較的小さくするという観点から、詳しくは後述するが、自己修復性樹脂層を構成する樹脂としてポリウレタン系樹脂を含有させることが好ましい。更にポリウレタン系樹脂の中でもポリカプロラクトン成分を含むポリウレタン系樹脂が好ましい。
[(ニ)自己修復性樹脂層の厚みを調整]
自己修復性樹脂層表面における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)との差(μs−μk)を0.05以下に調整するという観点から、自己修復性樹脂層の厚みは比較的小さい方が好ましく、具体的には60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、特に40μm以下が好ましい。下限の厚みは10μm以上が好ましく、13μm以上がより好ましく、特に15μm以上が好ましい。
[自己修復性樹脂層を形成する樹脂組成物]
自己修復性樹脂層を形成するための樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系透明ゴム状樹脂、シリコーン系ゴム状樹脂、オレフィン系やスチレン系のエラストマー等の軟質合成樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明における自己修復性樹脂層は、熱硬化性樹脂組成物あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた樹脂層であることが好ましい。上記熱硬化性樹脂組成物あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前述の有機ケイ素化合物および/またはフッ素系化合物を含有することが好ましく、特に有機ケイ素化合物を含有することが好ましい。
[熱硬化性樹脂組成物]
熱硬化性樹脂組成物は、ポリカプロラクトンを含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。このような組成物は、熱を与えることによってポリカプロラクトンを含有する化合物の水酸基とイソシアネート基を含有する化合物のイソシアネート基がウレタン結合を生起してポリウレタン系樹脂を生成する。
また、熱硬化性樹脂組成物として、ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂を少なくとも含む組成物も好ましく用いられる。
[ポリカプロラクトンを含有する化合物]
ポリカプロラクトンは、下記化4で表される構造を有する。また、ポリカプロラクトンを含有する化合物は少なくとも1以上の水酸基を含有する必要がある。水酸基は、ポリカプロラクトンを含有する化合物の末端にあることが好ましい。
Figure 2013077135
上記化4の中でも、2〜4官能の水酸基を有するポリカプロラクトンが好ましく、特に2〜3官能の水酸基を有するポリカプロラクトンが好ましい。
上記2〜4官能の水酸基を有するポリカプロラクトンとしては、下記化5で表されるポリカプロラクトンジオール類、下記化6で表されるポリカプロラクトントリオール類、その他4官能のポリカプロラクトンポリオール類が挙げられる。
また、下記化7で表されるラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性ポリカプロラクトンも好ましく用いられる。
Figure 2013077135
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[イソシアネート基を含有する化合物]
イソシアネート基を含有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などのポリイソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。
[ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂]
ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂とは、一分子鎖内に上述したポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂であって、少なくとも1以上の水酸基を有する樹脂である。水酸基は、樹脂の末端にあることが好ましい。
イソシアネート基は水酸基と反応してウレタン結合を生起させるので、熱によってポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂の分子鎖内および/または分子鎖間を架橋させることができる。
[熱硬化性組成物の具体例]
以下、本発明に好ましく用いられる熱硬化性組成物の具体例を説明する。但し、本発明はこれらの具体例に限定されることはない。
(1)ポリジメチルシロキサン系共重合体、ポリカプロラクトンを含有する化合物、ポリシロキサン系化合物、およびイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物。
(2)ポリカプロラクトン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体、ポリシロキサン系化合物、およびイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物。
上記のポリカプロラクトン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体は、例えば前述のポリジメチルシロキサン系共重合体を重合する際に、上記化7で表されるラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性ポリカプロラクトンを添加して共重合することによって得ることができる。
(3)ポリシロキサン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体、ポリカプロラクトンを含有する化合物、およびイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物。
上記ポリシロキサン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体は、例えば、前述のポリジメチルシロキサン系共重合体を重合する際に、前述のポリシロキサン系化合物を際に添加して共重合することによって得ることができる。
(4)ポリカプロラクトン成分がグラフトされたポリシロキサン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体、およびイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物。
上記ポリカプロラクトン成分がグラフトされたポリシロキサン成分が組み込まれたポリジメチルシロキサン系共重合体は、例えば、ポリジメチルシロキサン系共重合体を重合する際に、上記化7で表されるラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性ポリカプロラクトン、および前述のポリシロキサン系化合物を添加して共重合することによって得ることができる。
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、例えばウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば下記の化合物が挙げられる。
a)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
c)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカーボネートジオールおよびヒドロキシ変性(メタ)アクリレートとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、
d)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ヒドロキシ変性(メタ)アクリレートおよびポリカプロラクトン含有多官能アルコールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、
e)1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと長鎖アルキルアルコールおよびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
f)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート。
これらのウレタン(メタ)アクリレートは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のウレタン(メタ)アクリレートの中でも、ポリカプロラクトン成分を含むものが好ましい。
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、特開2002−256053号公報、特開2004−35599号公報、特開2004−244426号公報、特開2005−162908号公報等に記載されており、これらを参照して合成することができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを含むことが好ましい。
重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の単官能性のもの、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等の二官能性のもの、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性のものが挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメートなどが挙げられる。
[基材]
本発明のシート部材に用いることができる基材としては、ガラス板、各種樹脂板(アクリル板、ポリカーボネート板等)、各種プラスチックフィルムが挙げられる。これらの基材の中でも、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられ、更にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、基材フィルムは、上記の樹脂からなる層が2層以上積層された積層プラスチックフィルムであってもよい。
基材としてガラス板や樹脂板を用いる場合は、その厚みは0.3〜5mm程度が適当であり、0.5〜3mmの範囲が好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いる場合は、その厚みは30〜300μmの範囲が適当であるが、強度や加工適性等の観点から50〜250μmの範囲が特に好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いる場合は、自己修復性樹脂層との密着力を強化するために易接着層を有するプラスチックフィルムが好ましく用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、易接着層を有していることが好ましい。
易接着層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂で形成することができるが、特にポリエステル樹脂を用いることが、密着力および屈折率の調整の観点から好ましい。
易接着層は、更に架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤が好ましく用いられる。
易接着層は、更に易滑性向上のために、無機微粒子を含有することが好ましい。無機微粒子としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。
易接着層の厚みは、5〜300nmの範囲が好ましく、10〜250nmの範囲がより好ましく、特に15〜200nmの範囲が好ましい。
[タッチパネル]
タッチパネルは、その動作方式から、抵抗膜式、静電容量式、光学式、超音波式、電磁誘導式などが知られている。中でも、抵抗膜式は製造コストの観点から広く採用されている。近年、静電容量式タッチパネルはスマートフォンやタブレット型パーソナルコンピュータ用途で広く使用されており、これらの市場拡大につれて需要が拡大している。
タッチパネルへの入力は、通常、ペンあるいは指で行われる。本発明のシート部材はタッチパネルのタッチ面に積層され、そして、シート部材が積層されたタッチパネルはシート部材を介してタッチ入力される。
本発明のシート部材はタッチパネルのタッチ面に積層されることにより、ペンあるいは指でタッチ入力するときの筆記感が改善される。特に指入力時のタッチ感や筆記感が改善される。
静電容量式タッチパネルは、入力操作において指とタッチパネルを構成する透明導電膜との間の静電容量の変化を読み取ることで入力位置を検出するものであり、指入力用のタッチパネルである。
本発明のシート部材は、静電容量式タッチパネルに好適であり、更に指入力用タッチパネルに好適である。
本発明のシート部材は、タッチパネルのタッチ面に積層するに際し、粘着剤層を介して貼り付けることができる。
シート部材をタッチパネルに貼り付けるのに用いられる粘着剤層は、厚みは5〜50μm程度が適当であり、10〜30μmの範囲が好ましい。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来から知られている粘着剤を用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられ、これらの中でもアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
[表示装置]
本発明のシート部材が積層されたタッチパネルは、各種表示装置に搭載することができる。例えば、携帯電話・スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機などの表示装置に搭載される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における測定方法と評価方法を以下に示す。
(1)静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μk)の測定
23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンを用いて、荷重200g、速度100mm/secでシート部材表面を移動させたときの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)を、新東科学(株)製の表面性測定機(商品名「トライボギア」、タイプ「14FW」)にて測定した。測定はそれぞれ3回行い、その平均値を採用した。
<測定条件>
・測定長さ;100mm
・出力機;コンピューターに自動検出
・荷重変換器容量;2000g
・サンプリング速度;2ms
・静摩擦係数;最初のピーク点の荷重から計算
・動摩擦係数;測定長さ100mmの中の最後の20mmの平均荷重から計算。
(2)樹脂層の自己修復性の評価
23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、JIS K5600(1999年制定)『引っ掻き硬度(鉛筆法)』に従って樹脂層表面に傷を形成し、ハイスピードカメラ(サンプルの真上に設置)にて傷が入ってから消失するまでの時間を計測した。測定は3回行い、その平均値を採用した。
<測定条件>
・引っ掻き装置;鉛筆引っ掻き試験機(KT−VF2391)
・鉛筆;HB鉛筆(“ユニ”三菱鉛筆製)
・荷重;750g
・引っ掻き速度;10mm/s
<カメラの撮影条件>
・光源;LuminarAce LA−150UXのリングライトをカメラ先端に設置
・カメラ;VW−6000(キーエンス株式会社)
・sample rate;10pps
・exposhure time;20000μs。
(3)指入力によるタッチ感と筆記感の官能評価
実施例および比較例で得られたシート部材を静電容量式タッチパネルが搭載されたタブレット型パーソナルコンピューターのタッチ面に、厚みが25μmのアクリル系粘着剤層を介して貼り付け、該シート部材を介して指でタッチ入力したときのタッチ感と筆記感を官能評価した。官能評価は10人で行い、以下の基準で評価した。
○;10人中6人以上が良好と判断した場合。
△;10人中3〜5人が良好と判断した場合。
×;10人中2人以下が良好と判断した場合。
[実施例1]
<ポリシロキサンの合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、エタノール106質量部、テトラエトキシシラン320質量部、脱イオン水21質量部、および1質量%塩酸1質量部を仕込み、85℃で2時間保持した後、昇温しながらエタノールを回収し、180℃で3時間保持した。その後、冷却し、粘調なポリシロキサンを得た。
<ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部、およびメチルイソブチルケトン50質量部、ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬(株)製の「VPS−0501」)20質量部、メタクリル酸メチル30質量部、メタクリル酸ブチル26質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、メタクリル酸1質量部および1−チオグリセリン0.5質量部を仕込み、80℃で8時間反応させて、固形分50質量%のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体を得た。
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
上記のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体75質量部、上記のポリシロキサン10質量部、および水酸基を有するポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセル308」)15質量部を配合(混合)した組成物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−170N」)を25質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
<シート部材の作製>
易接着層が積層された厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の易接着層面に、上記の熱硬化性樹脂組成物をスリットダイコーターにて、厚み(硬化後の厚み)が25μmとなるように塗工した。塗工後、熱風装置にて90℃で120秒間乾燥し、次いで150℃で90秒間加熱して、PETフィルム上に自己修復性樹脂層を形成してシート部材を得た。
[実施例2]
下記の熱硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にしてシート部材を得た。
<ポリシロキサン成分の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、エタノール106質量部、メチルトリメトキシシラン270質量部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシラン23質量部、脱イオン水100質量部、1質量%塩酸1質量部、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部を仕込み、ポリシロキサンを合成した。これをメチルイソブチルケトンにより50質量%に調整してポリシロキサン成分とした。
<ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部および酢酸イソブチル50質量部を仕込み、110℃まで昇温した。別に、メタクリル酸メチル20質量部、カプロラクトンメタクリルエステル(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM−5」)32質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート17質量部、上記のポリシロキサン成分10質量部、片末端メタクリル基ポリジメチルシロキサン(東亞合成化学工業(株)製の「AK−32」)20質量部、メタクリル酸1質量部および1,1−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル2質量部を混合し、この混合モノマーを上記トルエンおよび酢酸イソブチルの混合液に2時間かけて滴下した。その後8時間反応させて、固形分50質量%のポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を得た。
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
上記ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−170N」)を25質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
[実施例3]
下記の熱硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にしてシート部材を得た。
<ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部およびメチルイソブチルケトン50質量部を仕込み、80℃まで昇温した。別に、メタクリル酸メチル27質量部、ポリカプロラクトンメタクリルエステル(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM−5」)35質量部、片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製の「X−22−174DX」)20質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート17質量部、メタクリル酸1質量部およびアゾビス−2−メチルブチロニトリル(日本ヒドラジン工業(株)製の「ABN−E」)1質量部を混合し、この混合モノマーを上記トルエンおよびメチルイソブチルケトンの混合液に2時間かけて滴下した。その後6時間反応させて、固形分50質量%のポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を得た。
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
上記のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体85質量部および実施例1で使用したポリシロキサン15質量部を配合(混合)した組成物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−170N」)を30質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
[実施例4]
下記の熱硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にしてシート部材を得た。
<ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部およびメチルイソブチルケトン50質量部を仕込み、80℃まで昇温した。別に、メタクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸ブチル26質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、実施例2で使用したポリシロキサン成分10質量部、メタクリル酸1質量部、片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製の「X−22−174DX」)20質量部、およびアゾビス−2−メチルブチロニトリル(日本ヒドラジン工業株式会社製,ABN−E)1質量部を混合し、この混合モノマーを上記トルエンおよびメチルイソブチルケトンの混合液に2時間かけて滴下した。その後6時間反応させて、固形分50質量%のポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を得た。
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
上記ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体85質量部および4官能カプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセル410D」)15質量部を配合(混合)した組成物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−170N」)を36質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
[実施例5]
<ウレタンアクリレートの合成>
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン78質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのTMPアダクト変性タイプ(大日本インキ化学工業(株)製の「バーノックDN−950」)40質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFA3」)58質量部、ジブチルスズジラウレート0.02質量部、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部を仕込み、70℃まで昇温した。その後、同温度で3時間保持して反応を終了し、固形分50質量%のウレタンアクリレートを得た。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)>
上記で得られたウレタンアクリレートを84質量部、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(東亞合成(株)製の「GUV−235」)を15質量部、および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製の「ダロキュア1173」)を1質量部配合した。
<シート部材の作製>
易接着層が積層された厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の易接着層面に、上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をスリットダイコーターにて、厚み(硬化後の厚み)が25μmとなるように塗工した。塗工後、熱風装置にて90℃で120秒間乾燥し、次いで紫外線を照射してPETフィルム上に自己修復性樹脂層を形成してシート部材を得た。
[実施例6]
下記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例5と同様にしてシート部材を得た。
<ウレタンアクリレートの合成>
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えたフラスコに、キシレン92質量部、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−212」)100質量、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFA3」)92質量、ジブチルスズジラウレート0.02質量部、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部を仕込み、70℃まで昇温した。その後、同温度で3時間保持して反応を終了し、固形分50質量%のウレタンアクリレートを得た。
<活性エネルギー線硬化性ポリジメチルシロキサン系共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部、メチルイソブチルケトン50質量部およびポリジメチルシロキサンマクロモノマー(チッソ株式会社製の「FM0721」)20質量部を仕込み、113℃還流下で、メチルメタクリレート30質量部、ブチルメタクリレート30質量部、イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製の「カレンズMOI」)20質量部、および2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル5質量部からなる混合溶液を2時間かけて滴下した。その後、同温度で5時間保持して重合を終了し、固形分50重量%の共重合体溶液を得た。
次に、上記得られた共重合体溶液200質量部に、トルエン80質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製の「アロニックスM305」)80質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部を仕込み、70℃まで昇温した。その後、同温度で5時間保持して反応を終了し、固形分50質量%の活性エネルギー線硬化性ポリジメチルシロキサン系共重合体を得た。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)>
上記のウレタンアクリレートを78質量部、上記の活性エネルギー線硬化性ポリジメチルシロキサン系共重合体を12質量部、アクリロイルモルホリンを9質量部、および光開始剤(チバガイギー株式会社製,イルガキュア184)を1質量部配合した。
[比較例1]
下記の熱硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にしてシート部材を得た。
<熱硬化性樹脂組成物>
水酸基価50のアクリルポリオール100質量部とヘキサメチレンジイソシアネート20質量部とシリカ系微粒子7質量部からなる混合液を十分に攪拌することにより熱硬化性樹脂組成物を調製した。
[比較例2]
下記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例5と同様にしてシート部材を得た。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性タイプ、大日本インキ化学工業(株)社製、商品名:バーノックDN−950)50質量部、セチルアルコール(日本油脂(株)社製、商品名:NAA−44)9質量部およびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)社製、商品名:プラクセルFA3)41質量部からなるウレタンアクリレート87.8質量部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)社製、商品名:M−5400)9質量部と、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(光重合開始剤)3質量部と、ポリシロキサン系化合物(ビックケミー(Byk−chemie)社製、商品名:BYK−333)0.2質量部とからなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
[評価]
上記で作製した実施例と比較例のシート部材について、静摩擦係数、動摩擦係数、自己修復性(傷の消失時間)、指入力時のタッチ感と筆記感を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2013077135
表1の結果から、実施例は、静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が0.05以下である自己修復性樹脂層が積層されたシート部材であり、指入力時のタッチ感と筆記感が良好であることが分かる。
一方、比較例は、静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が0.05より大きい自己修復性樹脂層が積層されたシート部材であり、指入力時のタッチ感と筆記感が劣っている。
また、本発明の実施例における自己修復性樹脂層の自己修復性(傷の消失時間)は、5秒以下であり、自己修復性としての商品価値(傷が付いたとしても瞬時に消失するという視覚的魅力)が高いものである。

Claims (14)

  1. タッチパネルのタッチ面に積層されるシート部材であって、該シート部材表面の下記測定方法における静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が、0.05以下であることを特徴とする、タッチパネル用シート部材。
    (測定方法)
    23℃、50%(相対湿度)の雰囲気下で、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンを、荷重200g、速度100mm/secで、シート部材表面を移動させて測定する。
  2. 前記静摩擦係数(μs)が0.40未満である、請求項1のタッチパネル用シート部材。
  3. シート部材が基材上に自己修復性を有する樹脂層を有し、該樹脂層表面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(μs−μk)が0.05以下である、請求項1または2のタッチパネル用シート部材。
  4. 前記樹脂層表面における傷の消失時間が5秒以下である、請求項3のタッチパネル用シート部材。
  5. 前記タッチパネルが静電容量式タッチパネルである、請求項1〜4のいずれかのタッチパネル用シート部材。
  6. 前記タッチパネルが指入力用タッチパネルである、請求項1〜5のいずれかのタッチパネル用シート部材。
  7. 前記樹脂層が、有機ケイ素化合物および/またはフッ素系化合物を含有する、請求項3〜6のいずれかのタッチパネル用シート部材。
  8. 前記有機ケイ素化合物が、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、およびポリジメチルシロキサン系共重合体からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項7のタッチパネル用シート部材。
  9. 前記樹脂層の厚みが10〜60μmである、請求項3〜8のいずれかのタッチパネル用シート部材。
  10. 前記基材がポリエステルフィルムである、請求項3〜9のいずれかのタッチパネル用シート部材。
  11. 請求項1〜10のいずれかのタッチパネル用シート部材をタッチ面に積層してなるタッチパネル。
  12. 前記タッチパネルが静電容量式である、請求項11のタッチパネル。
  13. 前記タッチパネルが指入力用である、請求項11または12のタッチパネル。
  14. 請求項11〜13のいずれかのタッチパネルを備えた表示装置。
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