以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照して、実施形態に係る多針ミシン(以下、単にミシンという)1の構成について説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側をそれぞれ、ミシン1の上側、下側、正面側、背面側、左側、右側とする。
図1に示すように、ミシン1の本体20は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、平面視逆U字形に形成され、ミシン1全体を支持する。支持部2の上面には、前後方向に伸びる左右一対のガイド溝25がある。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着されている。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒31(図3参照)が左右方向に等間隔で配置されている。10本の針棒31のうち、縫製位置にある1本の針棒が、針棒ケース21の内部に設けられた針棒駆動機構32(図3参照)によって上下方向に摺動される。針棒31の下端には、縫針35(図3参照)が着脱可能である。
針棒ケース21の右側面下部には、カバー38が設けられている。カバー38の内側には、イメージセンサ保持機構(図示せず)が取り付けられている。イメージセンサ保持機構は、イメージセンサ50(図3参照)を備える。イメージセンサ50は、周知のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ50のレンズ(図示せず)は、ミシン1の下方に向けられている。
アーム部4の前後方向中央部の右側には、操作部6が設けられている。操作部6は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)7と、タッチパネル8と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。LCD7には、例えば、ユーザが指示を入力するための操作画像といった各種情報が表示される。タッチパネル8は、ユーザからの指示を受け付けるために用いられる。LCD7に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル8の箇所を、ユーザが、指又はタッチペンを用いて押圧操作すること(以下、この操作を「パネル操作」という)によって、縫製される模様及び縫製条件といった各種条件を選択又は設定できる。スタート/ストップスイッチ41は、縫製の開始又は停止を指示するためのスイッチである。
アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられている。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示せず)が設けられている。釜は、下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示せず)がある。釜駆動機構(図示せず)は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針35(図3参照)が挿通される針穴36が設けられている。
アーム部4の上面の背面側には、左右一対の糸駒台12が設けられている。一対の糸駒台12には、針棒31の数と同じ10個の糸駒13を設置可能である。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19等を経由して、針棒31の下端に装着された各縫針35の針孔(図示せず)に供給される。
アーム部4の下方には、刺繍枠移動機構11(図2参照)のYキャリッジ23が設けられている。刺繍枠移動機構11は、様々な種類の刺繍枠84(図2参照)を着脱可能に支持する。刺繍枠84は、縫製対象物(加工布など)39を保持する。刺繍枠移動機構11は、X軸モータ132(図3参照)及びY軸モータ134(図3参照)を駆動源として、刺繍枠84を前後左右に移動させる。
図2を参照して、刺繍枠84と刺繍枠移動機構11とについて説明する。刺繍枠84は、外枠81と、内枠82と、左右1対の連結部89とを備える。刺繍枠84は、外枠81と内枠82とで縫製対象物39を挟持する。ユーザは、外枠81と内枠82とで挟持される縫製対象物39の部分を変えることで、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置を変更することができる。連結部89は、平面視矩形の中央部が矩形に切り抜かれた形状の板部材である。一方の連結部89は、内枠82の右部に螺子95によって固定され、他方の連結部89は、内枠82の左部に螺子94によって固定されている。ミシン1には、図2に例示された刺繍枠84の他、大きさ及び形状が異なる複数種類の他の刺繍枠84を装着可能である。図2に例示された刺繍枠84は、ミシン1で使用可能な刺繍枠84のうち、左右方向の幅(左右の連結部89間の距離)が1番大きな刺繍枠84である。
縫製可能領域86は、例えば、図示しない公知の検出器(例えば、特開2004−254987号公報参照)の出力信号に基づき、刺繍枠84の種類に応じて、ミシン1のCPU61(図3参照)により、内枠82の内側に自動的に設定される。又は、ユーザがパネル操作で使用する刺繍枠84を選択し、その刺繍枠84に応じた縫製可能領域86が設定されてもよい。
刺繍枠移動機構11は、ホルダ24と、Xキャリッジ22と、X軸駆動機構(図示せず)と、Yキャリッジ23と、Y軸移動機構(図示せず)とを備える。ホルダ24は、刺繍枠84を着脱可能に支持する。ホルダ24は、取付部91と、右腕部92と、左腕部93とを備える。取付部91は、左右方向に長い平面視矩形の板部材である。右腕部92は、前後方向に伸びる板部材であり、取付部91の右端に固定されている。左腕部93は、前後方向に伸びる板部材である。左腕部93は、取付部91の左部において、取付部91に対する左右方向の位置を調整可能に固定される。右腕部92は、刺繍枠84の一方の連結部89と係合し、左腕部93は、他方の連結部89と係合する。
Xキャリッジ22は、左右方向に長い板部材であり、一部分がYキャリッジ23の正面から前方に突出している。Xキャリッジ22には、ホルダ24の取付部91が取り付けられる。X軸駆動機構(図示せず)は、直線移動機構(図示せず)を備える。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、X軸モータ132を駆動源として、Xキャリッジ22を左右方向(X軸方向)に移動させる。
Yキャリッジ23は、左右方向に長い箱状である。Yキャリッジ23は、Xキャリッジ22を左右方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構(図示せず)は、左右一対の移動体(図示せず)と、直線移動機構(図示せず)とを備える。移動体は、Yキャリッジ23の左右両端の下部に連結され、ガイド溝25(図1参照)を上下方向に貫通している。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、Y軸モータ134を駆動源として、移動体をガイド溝25に沿って前後方向(Y軸方向)に移動させる。移動体に連結されたYキャリッジ23と、Yキャリッジ23に支持されたXキャリッジ22とは、これに伴って前後方向(Y軸方向)に移動する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84をXキャリッジ22に装着した状態では、縫製対象物39は、針棒31と、針板16(図1参照)との間に配置される。
図3を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図3に示すように、ミシン1は、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60と、イメージセンサ50とを備える。以下、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60について順に詳述する。
縫針駆動部120は、主軸モータ122と、駆動回路121と、針棒ケース用モータ45と、駆動回路123とを備える。主軸モータ122は、針棒31を上下方向に往復移動させる。駆動回路121は、制御部60からの制御信号に従って主軸モータ122を駆動する。針棒ケース用モータ45は、針棒ケース21を左右方向に移動させる。駆動回路123は、制御部60からの制御信号に従って針棒ケース用モータ45を駆動する。
縫製対象駆動部130は、X軸モータ132と、駆動回路131と、Y軸モータ134と、駆動回路133とを備える。X軸モータ132は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84(図2参照)を左右方向に移動させる。駆動回路131は、制御部60からの制御信号に従ってX軸モータ132を駆動する。Y軸モータ134は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84を前後方向に移動させる。駆動回路133は、制御部60からの制御信号に従ってY軸モータ134を駆動する。
操作部6は、タッチパネル8と、駆動回路135と、LCD7と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。駆動回路135は、制御部60からの制御信号に従ってLCD7を駆動する。
制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらは信号線65によって相互に接続されている。I/O66には、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、イメージセンサ50とがそれぞれ接続されている。以下、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64とについて詳述する。
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62のプログラム記憶エリア(図示せず)に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアと、模様記憶エリアとを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、メインプログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。模様記憶エリアには、模様(以下、刺繍模様ともいう)を縫製するためのデータである縫製データが記憶されている。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが必要に応じて設けられる。EEPROM64には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータが記憶されている。EEPROM64には、さらに、各針棒31と、各針棒31の下端に装着される縫針35の針孔(図示せず)に供給される上糸15の色とが対応付けて記憶されている。縫製データは、EEPROM64に記憶されていてもよい。
図1から図3を参照して、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に縫目を形成するミシン1の動作について説明する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84は、刺繍枠移動機構11に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒31のうち1本が選択される。刺繍枠移動機構11によって、刺繍枠84が所定の位置に移動される。主軸モータ122によって主軸(図示せず)が回転駆動されると、針棒駆動機構32及び天秤駆動機構(図示せず)が駆動され、選択された針棒31及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータ122の回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針35と天秤19と釜とが同期して駆動され、縫製対象物39に縫目が形成される。
図2を参照して、本実施形態の縫製データについて説明する。本実施形態の縫製データは、図2に示す刺繍座標系100の座標データを含む。刺繍座標系100は、Xキャリッジ22を移動させるX軸モータ132及びY軸モータ134の座標系である。刺繍座標系100の座標データは、基準(例えば、Xキャリッジ22)に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。Xキャリッジ22には、縫製対象物39を保持する刺繍枠84が装着される。従って、刺繍座標系100の座標データは、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。本実施形態では、刺繍座標系100とワールド座標系とを予め対応させている。ワールド座標系は、空間全体を示す座標系である。ワールド座標系は、撮影対象物の重心等の影響を受けることのない座標系である。
図2に示すように、刺繍座標系100は、ミシン1の左から右に向かう方向がX軸プラス方向であり、ミシン1の前から後に向かう方向がY軸プラス方向である。本実施形態では、刺繍枠84の初期位置は、刺繍座標系100の原点(X、Y、Z)=(0、0、0)とされている。刺繍枠84の初期位置は、刺繍枠84に対応する縫製可能領域86の中心点が、針落ち点と一致する位置である。針落ち点とは、針穴36(図1参照)の鉛直上方に配置された縫針35(図3参照)が、縫製対象物39の上にある状態から針棒31を下方向に移動させた際に、縫針35が縫製対象物39に刺さる点である。本実施形態の刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84をZ方向(ミシン1の上下方向)には移動させないので、縫製対象物39の厚みが無視できる範囲であれば、縫製対象物39の上面のZ座標はゼロとされる。
ROM62に記憶されている縫製データの座標データは、刺繍模様の初期配置を規定する。刺繍模様の初期配置は、刺繍模様の中心点が刺繍座標系100の原点、つまり縫製可能領域86の中心点と一致するように設定されている。縫製データの座標データは、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置が変更された場合に適宜補正される。本実施形態では、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置は、後述するメイン処理に従って決定される。以下の説明では、刺繍模様(より詳細には、刺繍模様の中心点)の位置及び刺繍模様の角度は、刺繍座標系100で表されるデータを用いて、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対して設定される。
図2を参照して、イメージセンサ50(図3参照)の撮影範囲について説明する。イメージセンサ50が撮影位置に配置された場合、イメージセンサ50の刺繍座標系100のXY平面における撮影範囲は、イメージセンサ50のレンズ中心の真下となる点を中心とする、左右方向の長さが約80mmであり前後方向の長さが約60mmの矩形範囲である。本実施形態の撮影位置は、イメージセンサ50のレンズ中心が、針穴36の直上に配置される位置である。図2に示すように、イメージセンサ50が撮影位置に配置され、且つ、刺繍枠84が初期位置に配置された場合の撮影範囲180は、刺繍座標系100の原点を中心とする矩形範囲となる。
図4を参照して、標識110について説明する。図4の上側、下側、左側、右側をそれぞれ、標識110に描かれた模様の上側、下側、左側、右側として説明する。標識110は、白色で薄板状の基材シート108の上面に模様が描かれたものである。基材シート108は、例えば、縦が約2.5cm、横が約2.5cmの正方形状である。基材シート108の上面には、第一円101と、第二円102と、第一中心点111と、第二中心点112とが描かれている。第二円102は、第一円101の上方に配置される。第二円102の直径は、第一円101の直径よりも小さい。第一中心点111は、第一円101の中心である。第二中心点112は、第二円102の中心である。基材シート108の上面には、さらに、線分103から106が描かれている。線分103と、線分104とは、第一中心点111と第二中心点112とを通る仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分105と、線分106とは、第一円101の第一中心点111を通り、線分103に直交する仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分103から106は、それぞれ、基材シート108の外縁端まで描かれている。
基材シート108の裏面には透明の粘着剤が塗着されている。従って、基材シート108を縫製対象物39上に貼付することが可能である。通常、基材シート108は剥離紙(図示せず)に貼着された状態になっている。ユーザは、剥離紙から基材シート108を剥がして使用する。
図5から図20を参照して、ミシン1において実行されるメイン処理について説明する。本実施形態のメイン処理では、刺繍枠84(図2参照)による縫製対象物39の保持位置を変更しながら、隣接する位置に順に複数の模様が縫製される場合、縫製対象物上に貼り付けられた標識110の画像を利用して、連続する二つの模様の位置合わせが正確に行われる。特に、隣接する位置に順に縫製される少なくとも三つの模様のうち、何れかの模様に隣接した位置に、縫製順序がその模様よりも二つ以上後の他の模様がある場合、連続して縫製されるわけではないが隣接するこれら二つの模様間の位置合わせも、縫製対象物上に貼り付けられた標識110の画像を利用して行われる。
なお、以下の説明では、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が異なる状態で連続して縫製される複数の模様がある場合、既に縫製された模様に隣接する位置に次に縫製される模様を、前の模様の連続模様ともいう。隣接する位置に順に縫製される少なくとも三つの模様のうち、何れかの模様に隣接した位置に縫製される、縫製順序がその模様よりも二つ以上後の他の模様を、非連続隣接模様ともいい、非連続隣接模様に対応する何れかの模様を、基準模様ともいう。また、図6に示す模様150を四分割することで得られる四つの模様151、152、153、154が夫々異なる保持位置で順に縫製されることで、全体として一つの模様150が形成される場合を例にして処理を説明する。この例では、模様152は模様151の連続模様である。模様153は、模様152の連続模様である。模様154は、模様153の連続模様であり、更に、模様151を基準模様とする非連続隣接模様でもある。
図5に示すメイン処理は、ユーザがメイン処理を開始する指示を入力した場合に実行される。メイン処理を開始する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。メイン処理を実行するためのプログラムは、ROM62(図3参照)に記憶されており、CPU61によって実行される。以下の説明において、イメージセンサ50が生成した画像データによって表される画像を、撮影画像と言う。以下で例示する各種画面及びメッセージは、駆動回路135に制御信号が出力されることによってLCD7に表示される。例示する各種画面において、各図の左右方向及び上下方向を、それぞれ画面の左右方向及び上下方向と言う。
図5に示すように、メイン処理ではまず、変数Nに1が設定され、設定された変数NはRAM63に記憶される(S1)。変数Nは、ユーザによって選択された模様の数をカウントするための変数である。変数Nは、選択された模様の縫製順序に対応する。CPU61は、N番目の模様が選択されるまで待機する(S2:NO、S2)。S2では、まず、図7に例示する選択画面200がLCD7に表示される。選択画面200は、例えば、模様表示欄201、模様情報欄202、模様選択欄203、SETキー204を含む。
模様表示欄201の中心点は、刺繍座標系100の原点に対応する。模様表示欄201の左右方向、上下方向は、夫々、刺繍座標系100のX軸方向、Y軸方向に対応する。模様表示欄201には、現在選択されている模様(図7の例では模様151)が、その模様が縫製される範囲を表す図形とともに表示される。本実施形態では、模様が縫製される範囲を表す図形を矩形161で表す。模様が選択された時点では、模様は初期配置の状態で、つまり模様の中心点が模様表示欄201の中心点に位置するように表示される。この時、矩形161は、模様表示欄201の左右方向に平行な辺と、模様表示欄201の上下方向に垂直な方向に平行な辺とを備える。模様情報欄202には、例えば、矩形161の大きさと、初期配置からの移動量、回転角度、必要な刺繍糸の色数が表示される。
模様選択欄203には、ROM62又はEEPROM64に記憶されている縫製データに基づき、ミシン1で縫製可能な複数の模様(図7の例では、図6に示す模様150を構成する模様151〜154)が表示される。ユーザは、これらの中から、所望の模様(例えば、模様151)をパネル操作によって選択する。その後SETキー204が選択されると、N番目の模様が選択されたと判断される(S2:YES)。この場合、ROM62又はEEPROM64から、選択されたN番目の模様に対応する縫製データが取得され、RAM63に記憶される(S3)。
最初の処理では、変数Nは1であるから(S4:YES)、続いて、刺繍座標系100における1番目の模様の配置が決定される(S5)。具体的には、S3で取得された1番目の模様151の縫製データが、ユーザにより指示された模様の編集内容に従って公知の方法により補正されることで、1番目の模様が縫製される保持位置における縫製対象物39に対する1番目の模様の配置が決定される。S5ではまず、図8に例示する編集画面210が表示される。編集画面210は、例えば、模様表示欄211、模様情報欄212、模様編集欄213を含む。模様表示欄211は、模様表示欄201と同様である。
模様編集欄213は、8方向の矢印キーを含む移動キー群214、回転キー215等、模様の編集を指示する各種キーを含む。ユーザは、模様編集欄213に表示されたキーをパネル操作によって選択することによって、模様の編集を指示することができる。例えば、ユーザは、移動キー群214に含まれる8つの方向キーのいずれかをパネル操作することで、模様を初期配置から所望の移動量だけ移動させることができる。また、ユーザは、回転キー215が選択されると表示される画面(図示略)において、模様の中心点を中心として、模様を初期配置から所望の角度だけ回転させることができる。ユーザは、その他、編集画面210を介して、模様の大きさの変更、模様の反転等の編集も可能である。模様情報欄212には、模様の移動や回転が指示された場合、指示された移動量や回転角度が表示される。模様表示欄211には、編集内容を反映した模様が表示される。なお、図8の例では、模様151に対する編集は行われていない。
模様の編集後、ユーザが模様編集欄213右下のEDIT ENDキー216を選択すると、それまでに指示された編集内容が確定され、公知の方法でその模様の縫製データが補正され、RAM63に記憶される。更に、編集後の模様と、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを含む画面(図示略)がLCD7に表示される。縫製開始キーは、模様の縫製を開始することを指示するキーである。模様つなぎキーは、次の模様をつなげて縫製するための模様つなぎ設定処理の実行を指示するキーである。模様つなぎ設定処理は、S2で選択されたN番目の模様に隣接する位置に、N+1番目の模様が続けて縫製される場合であって、N番目の模様及びN+1番目の模様全体が縫製可能領域86よりも広い範囲に縫製される場合に必要となる。
CPU61は、模様つなぎキー及び縫製開始キーのいずれかが選択されない間は待機する(S11:NO、S12:NO、S11)。ユーザは、画面に表示された編集後の模様を確認し、そのまま縫製を進めたい場合は、模様つなぎキーではなく、縫製開始キーを選択することで、縫製開始指示を入力する(S11:NO、S12:YES)。この場合、1番目の模様の縫製が実行される(S13)。具体的には、S5で必要に応じて補正された1番目の模様の縫製データに従って、駆動回路131及び駆動回路133に制御信号が出力され、刺繍枠84が移動される。駆動回路121に制御信号が出力され、主軸モータ122が駆動される。これにより、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に1番目の模様151の縫目が形成された後、図5に示すメイン処理は終了する。
一方、模様つなぎキーが選択された場合(S11:YES)、模様つなぎ設定処理が行われる(S20、図9)。模様つなぎ設定処理では、第一基準と追加基準が設定される。第一基準とは、この時点の処理対象であるN番目の模様と、隣接した位置に次に縫製されるN+1番目の模様(N番目の模様の連続模様)との相対的な配置関係を決定するための、N番目の模様に関する基準である。追加基準とは、N番目の模様を基準模様とする非連続隣接模様がある場合に、N番目の模様に対する非連続隣接模様の隣接方向を特定するための基準である。
図9に示すように、模様つなぎ設定処理では、まず、図10に例示する第一設定画面220がLCD7に表示される(S201)。図10に示すように、第一設定画面220は、例えば、模様表示欄221と、指示キー欄222を含む。模様表示欄221には、処理対象のN番目の模様に重ねて、指定された第一基準が表示される。追加基準も指定された場合には、指定された追加基準も重ねて表示される。指示キー欄222は、例えば、第一指定キー群223、追加指定キー群225、CLOSEキー227を含む。
第一指定キー群223は、第一基準を指定するための12個の第一指定キーを含む。本実施形態では、第一図形に含まれる線分231及び点232が、第一基準として指定される。第一図形は、N番目の模様が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では、N番目の模様が収まる最小矩形230である。最小矩形230は、矩形枠状に配置された第一指定キー群223の中央部に表示される。線分231は、最小矩形230を構成する四辺のいずれかから選択される。点232は、線分231の両端の点及び線分231の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、線分231と点232の12種類の組み合わせに対応して、12個の第一指定キーが設けられており、選択されたいずれかの第一指定キーに対応する線分231と点232の組み合わせが、第一基準として設定される。
追加指定キー群225は、追加基準を指定するための4個の追加指定キーを含む。前述の第一図形に含まれる線分235が、追加基準として指定される。本実施形態では、線分235は、最小矩形230を構成する四辺のいずれかから選択される。本実施形態では、最小矩形230を構成する四辺に対応して、4個の追加指定キーが設けられており、選択されたいずれかの追加指定キーに対応する線分235が、追加基準として設定される。CLOSEキー227は、第一基準と追加基準の指定が終了した場合に選択される。
第一設定画面220の表示後(S201)、第一指定キー群223のいずれかの第一指定キーが選択されたか否かが判断される(S202)。いずれかの第一指定キーが選択されると(S202:YES)、第一指定キーによって指定された第一基準(線分231及び点232)が設定され、RAM63に記憶される(S203)。N番目の模様に対応する最小矩形230における第一基準(線分231及び点232)の配置は、その模様の縫製データ(図5に示すメイン処理のS5で模様が編集され、縫製データが補正された場合は、補正後の縫製データ)に基づき、刺繍座標系100の座標で特定可能である。なお、この時点の刺繍座標系100は、N番目の模様に対応する保持位置(以下、第N保持位置という)に対して設定されている。特定された第N保持位置における線分231及び点232の配置は、RAM63に記憶される。
また、S203では、模様表示欄221に、N番目の模様と最小矩形230が表示され、指定された位置に線分231及び点232が付加される。図10は、模様151に対応する最小矩形230の右辺とその中点に対応する第一指定キー224が指定された場合の例である。本実施形態では、第一基準を視認しやすいように、最小矩形230は黒色で、線分231は青色で、点232は水色で、それぞれ表示される。最小矩形230の配置は、刺繍座標系100で表されるN番目の模様の縫製データから特定される。
第一指定キーが選択されない場合(S202:NO)及び前述のように第一基準が設定された後(S203)、いずれかの追加指定キーが選択されたか否かが判断される(S204)。ユーザは、図6に示す模様150を最終的な縫製結果として得たい場合、模様151〜154を、図6に示す配置で順に縫製していく。よって、1番目の模様である模様151を縫製する際、模様151に続けて模様151の右隣に縫製される2番目の模様152だけでなく、その後、4番目に縫製される模様154も、模様151の下側に隣接することを認識している。つまり、模様154は、模様151を基準模様とする非連続隣接模様である。このような場合、模様154を模様151に対しても正確に位置合わせして縫製するために、ユーザは追加指定キーを用いて模様151に対する模様154の隣接方向を特定する。
いずれかの追加指定キーが選択されると(S204:YES)、追加指定キーによって指定された追加基準が設定され、RAM63に記憶される(S205)。N番目の模様に対応する最小矩形230における追加基準(線分235)の配置は、第一基準と同様、その模様の縫製データに基づき、刺繍座標系100の座標で特定可能である。特定された線分235の配置は、RAM63に記憶される。また、S205では、模様表示欄221に、N番目の模様、最小矩形230、第一基準に加え、指定された位置に線分235が表示される。図10は、模様151に対応する最小矩形230の下辺に対応する追加指定キー226が指定された場合の例である。つまり、模様151を基準模様とする他の模様が、模様151の下辺に隣接する方向に存在すると指定されている。本実施形態では、追加基準を視認しやすいように、線分235は緑色で表示される。
追加指定キーが選択されない場合(S204:NO)及び前述のように追加基準が設定された後(S205)、CLOSEキー227が選択されたか否かが判断される(S206)。CLOSEキー227が選択されない場合(S206:NO)、処理はS202に戻る。CLOSEキー227が選択されると(S206:YES)、図9に示す模様つなぎ設定処理は終了し、図5に示すメイン処理に戻る。
図5に示すように、メイン処理では、模様つなぎ設定処理(S20)の後、LCD7に縫製開始キーを含む画面(図示略)が表示され、N番目の模様の縫製開始指示が行われたか否かが判断される(S21)。CPU61は、縫製開始キーが選択されるまで待機する(S21:NO、S21)。縫製開始キーが選択されると(S21:YES)、N番目の模様の縫製データに従って、N番目の模様の縫製が実行される(S22)。縫製実行時のミシン1の動作はS13と同様である。
次に、図示しないが、次の模様(N+1番目の模様)を縫製するための処理に進むか否かを確認するメッセージと、OKキーとキャンセルキーとがLCD7に表示される。キャンセルキーが選択された場合、又は所定時間内(例えば、5分以内)にOKキーが選択されない場合(S23:NO)、次の模様の処理には進まず、メイン処理は終了する。OKキーが選択された場合(S23:YES)、続いて標識検出処理が行われる(S30、図11)。標識検出処理は、縫製が終了したN番目の模様に対応する第N保持位置において、N番目の模様の第一基準に応じて配置された標識110を含む撮影画像の画像データを取得し、第N保持位置における標識110の配置と、第一基準とを対応付ける処理である。
図11に示すように、標識検出処理ではまず、イメージセンサ50が撮影位置に移動され、イメージセンサ50による針穴36(図1参照)付近の撮影が開始される(S300)。続いて、刺繍枠84が、第一基準に応じて設定される縫製対象物39上の標識110を配置すべき位置(以下、第一位置という)が撮影範囲180(図2参照)内に収まる位置に移動され、LCD7に第一位置が特定された画像が表示される(S301)。第一位置は、第一基準に含まれる線分231の配置、又は線分231及び点232の配置に基づいて、第N保持位置における縫製可能領域86内で、次の模様(連続模様)との隣接部位近傍の位置に決定されればよい。
本実施形態では、2個の標識110を用いて処理が行われる。そこで、第一位置は、第N保持位置における縫製可能領域86内で、第一基準に含まれる線分231上、且つ線分231の両端から標識110のサイズ(縦又は横の長さ)離れた位置にある領域として決定される。なお、領域のサイズは、標識110のサイズよりも大きく(例えば、標識110のサイズの1.5倍)設定されると、標識110を貼り付けやすいので好ましい。図10に示すように1番目の模様151の第一基準が設定された場合、図12に示すように、模様151に対応する第1保持位置に設定される縫製可能領域861内で、最小矩形230Aの右辺上でその両端から標識110のサイズだけ離れた位置にある領域110A、110Bが、第一位置として決定される。前述のように、第1保持位置における刺繍座標系100において、線分231を示す座標は特定されているので、この座標のデータと模様151の縫製データに基づいて、領域110A、110Bを示す座標も特定することができる。
S301では、まず、刺繍枠84が、前述のように決定された二つの第一位置(領域110A、110B)のうち一方(例えば、領域110A)がイメージセンサ50の撮影範囲180内に収まる位置に移動され、LCD7に第一位置(領域110A)が特定された画像が表示される。具体的には、図13に例示する標識配置画面250がLCD7に表示される。図13に示すように、標識配置画面250は、模様表示欄251と、配置指示欄252を含む。模様表示欄251は、前述の模様表示欄221(図10参照)と同じである。配置指示欄252は、メッセージ欄253、合成画像254、OKキー256を含む。
合成画像254は、イメージセンサ50から出力される針穴36付近の撮影画像に、赤色の矩形255が付与された画像である。1個目の標識110を検出する処理では、赤色の矩形255は、針穴36付近の画像における、標識配置位置を示す領域110A、110Bのうち一方(領域110A)に対応する位置に表示される。メッセージ欄253には、標識110を矩形255の内側の領域に配置した後、OKキー256を選択することをユーザに促すメッセージが表示される。ユーザは、配置指示欄252を確認しながら、縫製対象物39上の矩形255の内側の領域に収まるように標識110を貼り付ける。OKキー256が選択されない間は、イメージセンサ50による撮影画像を用いて合成画像254を更新して表示する処理が繰り返される(S302:NO、S301)。
ユーザが矩形255の内側に標識110を貼り付けたことを確認し、OKキー256を選択すると(S302:YES)、イメージセンサ50から出力された画像データが取得され、第一画像データとして、RAM63に記憶される(S303)。次に、矩形255の内側に対応する部分の画像から標識110を検出する処理が実行される(S304)。S304では、矩形255の内側に対応する部分の画像から標識110が検出された場合、標識110に含まれる第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系100の座標が特定される。
標識110の検出及び座標の特定は、公知の方法(例えば、特開2010−246885号公報参照)を用いて実行される。具体的には、標識110の第一中心点111及び第二中心点112について、例えばハフ変換処理を用いて、イメージセンサ50による撮影画像の座標系である画像座標系における二次元座標が算出される。その後、画像座標系の二次元座標がワールド座標系の三次元座標に変換される。前述のように、本実施形態では、刺繍座標系100と、ワールド座標系とは対応付けられているので、画像処理によって算出されたワールド座標系の三次元座標に基づき、刺繍座標系100の座標が算出される。
S304で標識110が検出されていない場合(S305:NO)、標識110を矩形255内に配置することをユーザに指示するメッセージがLCD7に表示され(S306)、処理はS301に戻る。標識110が検出された場合(S305:YES)、検出された標識110が、2個目の標識110であるかが判断される(S307)。本実施形態のミシン1は、領域110A、110Bに対応する位置に貼り付けられた2個の標識110を検出して、標識110の配置と、第N保持位置における第一基準の配置とを対応付ける。よって、検出された標識110が、1個目の標識110である場合(S307:NO)、駆動回路131と、駆動回路133とに制御信号が出力され、2個目の標識110を検出するための位置に刺繍枠84が移動される(S308)。具体的には、領域110A、110Bのうち、1個目の標識110の処理で使用されたのとは別の領域(領域110B)がイメージセンサ50の撮影範囲180に収まる位置に、刺繍枠84が移動される。
処理はS301に戻り、2個目の標識110を検出するための処理が実行される(S301〜S306)。なお、2個目の標識110の処理のS301では、赤色の矩形255は、領域110Bに対応する位置に表示される。同様にして、2個目の標識110が検出されると(S307:YES)、検出された2個の標識110の座標と第一基準(線分231及び点232)の座標とから、第N保持位置での第一基準に対する標識110の配置(位置及び角度)が特定され、第一標識配置として、RAM63に記憶される(S309)。つまり、2個の標識110を夫々含む2種類の画像の第一画像データに基づいて、第一標識配置が特定される。
標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかを含む。本実施形態のミシン1は、標識110の配置として、2つの標識110の第一中心点111の刺繍座標系100の座標に基づき、標識110の位置及び角度を検出する。標識110の位置は、例えば、2つの標識110のうちの一方の第一中心点111の刺繍座標系100の座標で表される。標識110の角度は、2つの標識110のうちの一方の標識110の第一中心点111から他方の標識110の第一中心点111に向かうベクトルと、刺繍座標系100のX軸とがなす角で表される。2つの標識110の区別は、例えば、各標識110における第一中心点111に対する、第二中心点112の相対位置に基づき判断される。S309では、第N保持位置における2個の標識110の第一中心点111の座標と、模様つなぎ設定処理(図9)のS203で特定されRAM63に記憶されている第N保持位置における第一基準(線分231及び点232)を示す座標とを対応付けることによって、第一標識配置が特定される。図11に示す標識検出処理は終了し、図5に示すメイン処理に戻る。
図5に示すように、メイン処理では、標識検出処理(S30)の後、N番目の模様に対する非連続隣接模様があるか否かが判断される(S31)。具体的には、RAM63に、模様つなぎ設定処理(S20)で設定された追加基準が記憶されていなければ、非連続隣接模様はないと判断される(S31:NO)。この場合、次の模様(N+1番目の模様)の処理に移行するために、RAM63に記憶されている変数Nの値が1インクリメントされる(S41)。
その後、LCD7には、刺繍枠84に対する縫製対象物39の保持位置を変更する、つまり、縫製対象物39を刺繍枠84から外して張り替えるようユーザに指示するメッセージとOKキーを含む画面(図示略)が表示される(S42)。この時、保持位置の変更は、縫製対象物39上において、第一位置(図12に示す領域110A、110B)に対応する2箇所に2個の標識110が貼り付けられた状態で実行される。すなわち、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が変更されても、縫製対象物39に対する標識110の配置は変更されない。ユーザが保持位置を変更し、OKキーを選択すると、処理はS2に戻る。
一方、RAM63に追加基準が記憶されており、N番目の模様に対する非連続隣接模様がある場合(S31:YES)、追加検出処理が行われる(S40、図14)。追加検出処理は、第N保持位置において、N番目の模様に設定された追加基準に応じて配置された標識110を含む画像を取得し、第N保持位置における標識110の配置と、追加基準の配置とを対応付ける処理である。標識110の配置位置と、標識110に対応付けられる基準が異なる以外、図14に示す追加検出処理のS401〜S409の処理内容は、前述の標識検出処理のS301〜S309の処理内容とほぼ同じである。よって、以下では、異なる処理の内容を主に説明し、同じ処理の内容については説明を簡略化又は省略する。
図14に示すように、追加検出処理では、刺繍枠84が、追加基準に応じて設定される縫製対象物39上の標識110を配置すべき位置(以下、第二位置という)が撮影範囲180(図2参照)内に収まる位置に移動され、LCD7に第二位置が特定された画像を含む画面が表示される(S401)。このとき表示される画面は、図13に示す標識配置画面250と同様である。第二位置は、追加基準に含まれる線分235の配置に基づいて、第N保持位置における縫製可能領域86内で、N番目の模様に対する非連続隣接模様との隣接部位近傍の位置に決定されればよい。
本実施形態では、第二位置は、第N保持位置における縫製可能領域86内で、追加基準である線分235上、且つ線分235の両端から標識110のサイズだけ離れた位置にある領域として決定される。なお、領域のサイズは、標識110のサイズよりも大きく(例えば、標識110の大きさの1.5倍)設定されると、標識110を貼り付けやすいので好ましい。図10に示すように1番目の模様151の追加基準が設定された場合、図12に示すように、模様151に対応する最小矩形230Aの下辺上で下辺の両端から標識110のサイズだけ離れた位置にある領域110C、110Dが第二位置として決定される。前述のように、1番目の模様151に対応する第一保持位置における刺繍座標系100において、線分235を示す座標は特定されているので、この座標のデータと模様151の縫製データに基づいて、領域110C、110Dを示す座標も特定することができる。
標識110が第二位置のうち一方(例えば、領域110C)に配置され、OKキー256が選択されると(S402:YES)、イメージセンサ50から出力された画像データが取得され、第二画像データとして、RAM63に記憶される(S403)。その後、2個の標識110を検出するまでの処理は、標識検出処理(図9)と同じである。もう一方の第二位置(領域110D)に配置された2個目の標識110も検出されると(S407:YES)、検出された2個の標識110の座標と追加基準(線分235)の座標とから、第N保持位置での追加基準に対する標識110の配置(位置及び角度)が特定され、第二標識配置として、RAM63に記憶される(S409)。つまり、2個の標識110を夫々含む2種類の画像の第二画像データに基づいて、第二標識配置が特定される。S409では、第N保持位置における2個の標識110の第一中心点111(図4参照)の座標と、模様つなぎ設定処理(図9)のS205で特定されRAM63に記憶されている第N保持位置における追加基準(線分235)を示す座標とを対応付けることによって、第二標識配置が特定される。図14に示す追加検出処理は終了し、図5に示すメイン処理に戻る。
図5に示すように、メイン処理では、追加検出処理の後(S40)、変数Nの値が1インクリメントされる(S4)。その後、刺繍枠84に対する縫製対象物39の保持位置を変更するようユーザに指示するメッセージとOKキーを含む画面(図示略)が表示される(S42)。S40で追加検出処理が行われた後にS42の処理が行われる場合には、保持位置の変更は、縫製対象物39上において、第一位置に対応する2箇所と、第二位置に対応する2箇所に、合計4個の標識110が貼り付けられた状態で実行される。図12に示す例では、ユーザは、模様151に対応する第一保持位置に設定された縫製可能領域861内で、第一位置である領域110A、110Bと、第二位置である領域110C、110Dに4個の標識110を貼り付けた後、模様152を縫製できる縫製可能領域862に対応する第二保持位置に、縫製対象物39を張り替えればよい。ユーザが、保持位置を変更し、OKキーを選択すると、処理はS2に戻る。
S41で変数Nが2とされた後のS2の処理では、再び選択画面200(図7参照)がLCD7に表示される。2番目の模様(例えば、模様152)が選択されると(S2:YES)、その模様の縫製データが取得される(S3)。2番目以降の模様が処理対象の場合、変数Nは1ではないため(S4:NO)、配置決定処理が行われる(S10、図15)。図6に示す模様151〜154を順に縫製する例では、2番目以降の模様は全て、前の模様(N−1番目の模様)の連続模様である。配置決定処置では、連続模様に対応する第N保持位置において、前の模様に対する連続模様の位置合わせが行われ、連続模様の配置が決定される。この時、連続模様が、既に縫製された基準模様の非連続隣接模様でもある場合には、基準模様にも正確に隣接するように、非連続隣接模様の縫製データが補正される。
図15に示すように、配置決定処理ではまず、図16に例示する第二設定画面260が表示される(S101)。第二設定画面260は、第二基準を設定するための画面である。第二基準とは、この時点の処理対象であるN番目の模様(N−1番目の模様の連続模様)と、既に隣接した位置に縫製されている前の模様(N−1番目の模様)との相対的な配置関係を決定するための、N番目の模様に関する基準である。図16に示すように、第二設定画面260は、例えば、模様表示欄261と、指示キー欄262を含む。模様表示欄261には、前の模様とこの時点の処理対象である連続模様とが設定された配置関係で表示される。指示キー欄262は、第二指定キー群263と、OKキー267を含む。
第二指定キー群263は、第二基準を指定するための12個の第二指定キーを含む。本実施形態では、第二図形に含まれる線分271及び点272が、第二基準として指定される。第二図形は、連続模様が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では、連続模様が収まる最小矩形270である。最小矩形270は、矩形枠状に配置された第二指定キー群263の中央部に表示される。線分271は、最小矩形270を構成する四辺のいずれかから選択される。点272は、線分271の両端の点及び線分271の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、線分271と点272の12種類の組み合わせに対応して、12個の第二指定キーが設けられており、選択されたいずれかの第二指定キーに対応する線分271と点272の組み合わせが、第二基準として設定される。指示キー欄262のOKキー267は、前の模様(N−1番目の模様)とその連続模様(N番目の模様)の配置関係を確定する際に選択されるキーである。
第二設定画面260の表示後(S101)、第二指定キー群263のいずれか第二指定キーが選択されたか否かが判断される(S102)。いずれかの第二指定キーが選択されると(S102:YES)、第二指定キーによって指定された第二基準(線分271及び点272)が設定され、RAM63に記憶される(S103)。N番目の模様に対応する最小矩形270における第二基準(線分271及び点272)の配置は、その模様の縫製データに基づき、刺繍座標系100の座標で特定可能である。なお、この時点の刺繍座標系100は、N番目の模様(N−1番目の模様の連続模様)に対応する第N保持位置に対して設定されている。特定された第N保持位置における線分271及び点272の配置は、RAM63に記憶される。
第一基準および第二基準に基づいて、前の模様(N−1番目の模様)とその連続模様(N番目の模様)との間の相対的な配置関係が決定され、RAM63に記憶される(S104)。決定された前の模様と連続模様の配置関係は、LCD7に表示される(S105)。S105では、模様表示欄261に、線分231及び点232が重ねて表示された前の模様(N−1番目の模様)に対して、第二指定キーで指定された第二基準に応じた配置関係で、連続模様(N番目の模様)と第二基準が表示される。より具体的には、前の模様とその連続模様は、第一基準の線分231の延伸方向が第二基準の線分271と重なり、且つ、第一基準の点232が、第二基準の点272と重なるように配置される。図16の例では、1番目の模様151の連続模様である2番目の模様152について、第二基準として、模様152に対応する最小矩形270の左辺が線分271として指定され、その中点が点272として指定されている。よって、模様表示欄261では、模様151に対応する最小矩形230の右辺(線分231)に模様152の左辺(線分271)が重なり、最小矩形230の右辺の中点(点232)に最小矩形270の左辺の中点(点272)が重なるように配置された模様151、152が表示されている。
第二指定キーが選択されない場合(S102:NO)、及び配置関係が表示された後(S105)、第二設定画面260において、OKキー267が選択されたか否かが判断される(S106)。OKキー267が選択されなければ(S106:NO)、処理はS102に戻る。前の模様とその連続模様との間の相対的な配置関係がOKキー267の選択によって確定されると(106:YES)、前の模様(N−1番目の模様)に対する標識検出処理(図11)で、前の模様と連続模様(N番目の模様)との隣接部位近傍の第一位置に配置された2個の標識を検出する処理が行われる。まず、イメージセンサ50から出力された画像データが、第三画像データとして取得される(S111)、取得された第三画像データによって表される画像全体を検出対象として、標識110の検出処理が実行される(S112)。標識110の検出は、前述の標識検出処理(図11)のS304と同様に、公知の方法を用いて実行される。標識110が検出された場合には、例えば、標識110の第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系の座標が算出される。
標識110が検出されない場合(S113:NO)、刺繍枠84の内側の全領域が検出対象範囲として設定され、処理が完了したかが判断される(S114)。検出対象範囲として設定されていない領域がある場合(S114:NO)、駆動回路131及び駆動回路133に制御信号が出力され、検出対象範囲として設定されていない領域が、イメージセンサ50の撮影範囲180に収まる位置に、刺繍枠84が移動される(S115)。処理はS111に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。このようにして刺繍枠84の内側の領域が順に処理され、標識110が検出されないまま全領域の処理が完了した場合(S114:YES)、2個の標識110が検出できないことを報知するエラーメッセージがLCD7に表示される(S116)。この場合、ユーザは、2個の標識110が刺繍枠84の内側の領域にあるか否かを確認する。処理はS111に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。
標識110が検出された場合には(S113:YES)、それが2個目の標識110か否かが判断される(S117)。なお、本実施形態では、図12に示す例のように、前の模様(模様151)に対して連続模様(模様152)以外に非連続隣接模様がある場合、領域110A〜110Dに4個の標識110が貼り付けられる。よって、変更後の保持位置によっては、刺繍枠84の内側の領域に3個以上の標識110が配置されることがありうる。よって、S117では、例えば、前の模様(N−1番目の模様)に対する標識検出処理(図11)でRAM63に記憶された2個の標識110の第一中心点111の座標から、2個の標識110間の配置関係を特定し、これらの配置関係を満たす2個の標識110が検出された場合に、2個目の標識110が検出されたと判断すればよい。
検出されたのが2個目の標識110ではない場合(S117:NO)、処理はS114に進み、前述のように、標識110が検出されるまで、刺繍枠84を移動させて刺繍枠84の内側の領域内で画像を取得し、2個目の標識110を検出する処理が行われる。処理が繰り返され、2個目の標識が検出された場合(S117:YES)、検出された第N保持位置における標識110の刺繍座標系100の座標と、RAM63に記憶されている第一標識配置とから、第N保持位置における第一基準の配置が特定され、第一基準配置としてRAM63に記憶される(S118)。つまり、第一画像データに基づき特定された第一標識配置と、第三画像データとに基づいて、第一基準配置が特定される。
例えば、図12に示すように、保持位置が、縫製可能領域861に対応する前の模様(模様151)が縫製された時の第一保持位置から、縫製可能領域862に対応する連続模様(模様152)が縫製される第二保持位置に変更された場合、RAM63には既に第一標識配置が記憶されている。すなわち、第一保持位置における第一基準と、標識110との対応関係が特定されている。また、保持位置が模様152に対応する第二保持位置に変更された時点で、第二保持位置での刺繍座標系100が設定され、前述のS111〜S118の処理で標識110の座標が特定されている。従って、第一保持位置における第一基準(線分231及び点232)の座標を第二保持位置における座標に座標変換すれば、第二保持位置における第一基準の座標が特定できる。つまり、第二保持位置における第一基準の配置(第一基準配置)が特定できる。
続いて、S118で特定された第一基準配置と、N−1番目の模様(前の模様)とN番目の模様(連続模様)との相対的な配置関係と、これらの模様の縫製データに基づいて、第N保持位置における縫製対象物39に対するN番目の模様(N−1番目の模様の連続模様)の配置が決定される(S121)。より詳細には、第N保持位置における刺繍座標系100の第一基準(線分231及び点232)の座標と、第一基準と第二基準(線分271及び点272)との配置関係とに基づき、N番目の模様の縫製データを補正することで、第N保持位置におけるN番目の模様の縫製対象物39に対する配置が決定される。S121で、第一基準配置と、N−1番目の模様(前の模様)とN番目の模様(連続模様)との間の配置関係と、これらの模様の縫製データに基づいて決定される連続模様の配置を、第一配置という。
N番目の模様の配置が決定されると(S121)、処理対象のN番目の模様が、縫製済みの他の模様を基準模様とする非連続隣接模様に該当するか否かが判断される(S122)。この判断は、例えば次のように行われる。メイン処理(図5)において、S20の模様つなぎ設定処理の後、S22で縫製が行われた模様については、その初期配置の縫製データと、その模様に設定された第一基準及び第二基準とが、縫製済みの模様を特定するためのデータとして、RAM63に記憶される。模様つなぎ設定処理が複数回実行され、複数の模様が順につなげて縫製された場合は、縫製が行われる度、複数の模様のデータが順に蓄積される。S122では、1番目の模様の初期配置の縫製データを基に、各模様に設定された第一基準と第二基準に基づいて、同じ刺繍座標系100でN番目の模様までつなげて配置した場合、N−1番目の模様以外にもN番目の模様と境界が接する他の模様があれば、N番目の模様はその模様の非連続隣接模様であると判断できる。
N番目の模様が縫製済みの他の模様の非連続隣接模様には該当しない場合(S122:NO)、標識110をはがし、保持位置はそのまま維持するようユーザに指示するメッセージ(図示略)がLCD7に表示される(S123)。ただし、ここではがすように指示されるのは、前の模様との隣接部位近傍の第一位置に貼り付けられた標識110のみである。その後、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを含む画面(図示略)がLCD7に表示される。図15に示す配置決定処理は以上で終了し、処理は図5のメイン処理に戻る。図5に示すように、メイン処理では、配置決定処理の後(S10)、縫製開始キーが選択された場合(S11:NO、S12:YES)、N番目の模様の縫製が実行され(S13)、メイン処理は終了する。一方、ユーザは、更に他の模様をつなげて縫製したい場合、模様つなぎキーを選択する(S11:YES)。この場合、処理はS20に進み、更に次の模様をつなげるための処理が続けられる。
図6に示す模様150を最終的に形成する例では、2番目の模様152の配置決定処理の後(図5のS10)、3番目の模様153をつなげるための模様つなぎ設定処理が行われる(S11:YES、S20)。この場合、図17に示すように、ユーザは模様152に対応する最小矩形230Bの下辺とその中点を、模様153とつなげるための第一基準の線分231及び点232として指定する(図9のS203)。模様152に対する非連続隣接模様はないので、追加基準は指定されずに模様つなぎ設定処理は終了する。縫製可能領域862に対応する第二保持位置で模様152が縫製された後(図5のS22)、標識検出処理(S30)では、図17に示すように、第一基準に応じた第一位置である領域110E、110Fに2個の標識110が貼り付けられ、検出される。そして、第二保持位置での刺繍座標系100における第一基準(線分231及び点232)に対する標識110の配置が、第一標識配置として特定される(図11のS309)。その後、模様153を縫製するため、標識110が領域110C、110D、110E、110Fに貼り付けられたままの状態で、保持位置が、縫製可能領域863に対応する第三保持位置に変更される(図5のS42)。
3番目の模様153の配置決定処理(図5のS10)で、模様153に対応する最小矩形230Cの上辺とその中点が第二基準の線分271及び点272として指定されると(図15のS103)、図17に示すように、模様152と模様153の相対的な配置関係が、線分231と線分271とが重なり、点232と点272とが重なる配置に決定される(S104)。領域110E、110Fに貼り付けられた2個の標識110が検出され、第一基準配置として、第三保持位置に対応する刺繍座標系100の座標で、模様152の第一基準(線分231及び点232)の配置が特定される(S118)。更に、第三保持位置における縫製対象物39に対する模様153の第一配置が決定される(S121)。模様153は模様151、152の非連続隣接模様には該当しないので(S121:NO)、領域110E、110Fの標識110ははがされ、領域110C、110Dの標識110は貼り付けられたまま、且つ、保持位置は第三保持位置のままで、3番目の模様153の配置決定処理は終了する。
4番目の模様154を模様153につなげるための模様つなぎ設定処理が行われる(図5のS11:YES、S20)。この場合、図18に示すように、ユーザは模様153に対応する最小矩形230Cの左辺とその中点を、模様154とつなげるための第一基準の線分231及び点232として指定する(図9のS203)。模様153に対する非連続隣接模様はないので、追加基準は指定されずに模様つなぎ設定処理は終了する。縫製可能領域863に対応する第三保持位置で模様153が縫製された後(図5のS22)、標識検出処理(S30)では、図18に示すように、第一基準に応じた第一位置である領域110G、110Hに2個の標識110が貼り付けられ、検出される。そして、第三保持位置での刺繍座標系100における第一基準(線分231及び点232)に対する標識110の配置が、第一標識配置として特定される(図11のS309)。その後、模様154を縫製するため、標識110が領域110C、110D、110G、110Hに貼り付けられたままの状態で、保持位置が、縫製可能領域864に対応する第四保持位置に変更される(図5のS42)。
4番目の模様154の配置決定処理では、(図5のS10)で、図18に示すように、模様154に対応する最小矩形230Dの右辺とその中点が第二基準の線分271及び点272として指定されると(図15のS103)、模様153と模様154の相対的な配置関係が、線分231と線分271とが重なり、点232と点272とが重なる配置に決定される(S104)。領域110G、110Hに貼り付けられた2個の標識110が検出され、第一基準配置として、第四保持位置に対応する刺繍座標系100の座標で、模様153の第一基準(線分231及び点232)の配置が特定される(S118)。更に、第四保持位置における縫製対象物39に対する模様154(最小矩形230D)の第一配置が決定される(S121)。
続いて、RAM63に記憶された模様151、152、153の縫製データと、模様154の縫製データと、各模様に設定された第一基準及び第二基準とから、模様154は模様151に対する非連続隣接模様であると判断される(S122:YES)。この場合、配置補正処理が行われる(S130、図19)。図19に示すように、配置補正処理では、処理対象のN番目の模様が縫製済みの他の模様を基準模様とする非連続隣接模様の場合に、刺繍枠84の内側の領域全体を対象として、基準模様の縫製後の追加検出処理(図5のS40)で基準模様と非連続隣接模様(N番目の模様)との隣接部位近傍の第二位置に配置された2個の標識110を検出する処理が行われる。具体的には、まず、イメージセンサから出力された画像データが、第四画像データとして取得される(S131)。
その後のS132〜S137で、2個の標識110を検出する処理の内容は、配置決定処理(図15)のS112〜S117と同じであるため、説明は省略する。なお、図18に示す例のように、この処理が行われる時には、第二位置である領域110C、110D以外に、処理対象の模様(模様154)と前の模様(模様153)との隣接部位近傍の第一位置である領域110G、110Hにも、標識110が貼り付けられている。よって、刺繍枠84の内側の領域に4個の標識110が配置される。よって、S137では、例えば、縫製済みの基準模様(図18の例では模様151)に対する追加検出処理(図14)でRAM63に記憶された2個の標識110の第一中心点111の座標から、2個の標識110間の配置関係を特定し、この配置関係を満たす2個の標識110が検出された場合に、2個目の標識110が検出されたと判断すればよい。
処理が繰り返され、2個目の標識が検出された場合(S137:YES)、検出された第N保持位置における標識110の刺繍座標系100の座標と、RAM63に記憶されている第二標識配置とから、第N保持持位置における追加基準の配置が特定され、追加基準配置としてRAM63に記憶される(S138)。つまり、第二画像データに基づき特定された第二標識配置と、第四画像データとに基づいて、追加基準配置が特定される。
例えば、図18に示すように、基準模様である1番目の模様151が縫製された時の縫製可能領域861に対応する第一保持位置で、RAM63には既に第二標識配置が記憶されている。すなわち、第一保持位置における追加基準と、標識110との対応関係が特定されている。また、保持位置が4番目の模様154に対応する第四保持位置に変更された時点で、第四保持位置での刺繍座標系100が設定され、前述のS131〜S138の処理で標識110の座標が特定されている。従って、第一保持位置における追加基準(線分235)の座標を第四保持位置における座標に座標変換すれば、第四保持位置における追加基準の座標が特定できる。つまり、第四保持位置における追加基準の配置(追加基準配置)が特定できる。
続いて、S138で特定された追加基準配置と、縫製済みの基準模様と非連続隣接模様であるN番目の模様との配置関係と、これらの模様の縫製データに基づいて、第N保持位置における縫製対象物39に対するN番目の模様の配置が決定される(S139)。より詳細には、第N保持位置における刺繍座標系100の追加基準(線分235)の座標と、基準模様と非連続隣接模様との間の配置関係とに基づき、N番目の模様の縫製データを補正することで、第N保持位置におけるN番目の模様の縫製対象物39に対する配置が決定される。S139で、追加基準配置と、基準模様と非連続隣接模様との間の配置関係と、これらの模様の縫製データに基づいて決定される非連続隣接模様の配置を、第二配置という。
なお、非連続隣接模様と対応する基準模様との間の配置関係は、S122の判断時と同様、1番目の模様の初期配置の縫製データを基に、各模様に設定された第一基準と第二基準に基づいて、同じ刺繍座標系100でN番目の模様までつなげて配置した場合、追加基準(線分271)においてN番目の模様と境界が接する他の模様が基準模様として特定される。そして、特定された基準模様と非連続模様との配置関係から特定することができる。
S139で第二配置が決定されると、この第二配置と、配置決定処理(図15)のS121で決定された第一配置とに基づいて、N番目の模様の縫製データが補正される(S140)。
第一配置は、前述のように、縫製済みの前の模様とその次に縫製される連続模様との隣接部位近傍の第一位置に配置された標識110の画像データ(第一画像データ及び第三画像データ)を用いて決定される。従って、第一配置によれば、少なくとも三つの模様が順に縫製される間に誤差が蓄積したり、縫製対象物39に縫い縮みや捩れが生じたりしても、前の模様に対しては、連続模様が正確に隣接するように位置合わせすることができる。しかし、この連続模様が、前の模様よりも先に縫製された他の模様(基準模様)の非連続隣接模様でもある場合には、誤差の蓄積や、縫い縮み、捩れ等によって、第一配置にある非連続隣接模様は、基準模様には正確に隣接しない場合がある。
一方、第二配置は、縫製済みの基準模様と非連続隣接模様との隣接部位近傍の第二位置に配置された標識110の画像データ(第二画像データ及び第四画像データ)を用いて決定される。従って、第二配置によれば、少なくとも三つの模様が順に縫製される間に誤差が蓄積したり、縫製対象物39に縫い縮みや捩れが生じたりしても、基準模様に対しては、非連続隣接模様が正確に隣接するように位置合わせすることができる。その一方で、この非連続隣接模様は、一つ前に縫製された前の模様の連続模様でもあるが、第二配置にある非連続隣接模様は、誤差の蓄積や、縫い縮み、捩れ等によって、前の模様には正確に隣接しない場合がある。
図18では、模様154の第一配置、第二配置が、夫々、最小矩形230D、230Eで示されている。図18に示すように、第一配置に対応する最小矩形230Dは、前の模様153の第一基準(最小矩形230Cの線分231と点232)に模様154の第二基準(最小矩形230Dの線分271と点272)が重なるように配置されている。つまり。最小矩形230Dは、右辺を介して最小矩形230Cの左辺に正確に隣接する。しかし、最小矩形230Dの上辺は、本来重なるはずの、模様151に対応する最小矩形230Aの下辺から離れてしまっている。
一方、第二配置に対応する最小矩形230Eは、基準模様151の追加基準(最小矩形230Aの線分235)に、模様154の上辺が重なるように配置されている。つまり。最小矩形230Eは、上辺を介して最小矩形230Aの下辺に正確に隣接する。しかし、最小矩形230Eの右辺は、本来重なるはずの、前の模様153に対応する最小矩形230Cの左辺から離れてしまっている。このように、第一配置、第二配置のいずれか一方だけでは、誤差の蓄積や、縫い縮み、捩れ等によって、模様154を、基準模様である模様151及び前の模様153の両方に正確に隣接させることができない場合が生じうる。
そこで、本実施形態では、S140において、第一配置と第二配置とに基づいて、非連続隣接模様であるN番目の模様が、前の模様(N−1番目の模様)にも、基準模様にも正確に隣接するように変形される。つまり、第一配置と第二配置とに基づいてN番目の模様の縫製データが補正される。
具体的には、第一配置にあるN番目の模様に対応する最小矩形230(図18の例では最小矩形230D)の四つの頂点281、282、283、284のうち、第二基準として指定された線分271の両端に位置する二つの頂点281、282と、元々基準模様(図18の例では模様151)から離間した位置にある頂点283が、第N保持位置に対応する刺繍座標系100の座標で特定される。また、第二配置にあるN番目の模様に対応する最小矩形230(図18の例では最小矩形230E)の四つの頂点286、287、288、289のうち、基準模様と重なる線分(図18の例では最小矩形230Eの上辺)の両端に位置する二つの頂点286、289の頂点の座標も特定される。なお、点281と286は、同一の座標で特定される点である。点281(286)、282、283、289を頂点とする四角形230F(図20参照)が特定される。
このようにして特定された四角形230Fが、変形後のN番目の模様が縫製される範囲とされる。そして、S121で決定された第一配置にあるN番目の模様に対応する、点281、282、282、284を頂点とする最小矩形(図18の例では最小矩形230D)が、点281(286)、282、283、289を頂点とする四角形230Fに変形される。これに応じて、第一配置におけるN番目の模様の縫製データに含まれる全ての針落ち点を示す座標が、公知の任意の方法で座標変換される。座標の変換には、例えばアフィン変換が採用可能であるが、他のいかなる公知の方法が採用されてもよい。
なお、S140では、第一配置に対応するN番目の模様の縫製データに代えて、第二配置に対応するN番目の模様の縫製データが補正されてもよい。この場合、例えば、図18の例において、第二配置にある模様154に対応する最小矩形230Eを、点281(286)、282、288、289を頂点とする四角形に変形させて、第二配置におけるN番目の模様の縫製データに含まれる全ての針落ち点を示す座標をアフィン変換で変換してもよい。また、模様154を前の模様153及び基準模様151の両方に正確に隣接させるためには、模様153の最小矩形230Cの左辺と模様151の最小矩形230Aの下辺に模様154の右辺と上辺が重なる必要があるが、模様154の下辺と左辺は、他の模様と隣接しない。よって、変形後の模様154が縫製される範囲を示す四角形の4つの頂点のうち、点281(286)、282、289以外の1点は、他の点(例えば、点283と点288を結ぶ線の中間点)とされてもよい。
このようにして、N番目の模様の縫製データが補正された後(S140)、全ての標識110をはがし、保持位置はそのまま維持するようユーザに指示するメッセージ(図示略)がLCD7に表示される(S141)。図19に示す配置補正処理は終了し、処理は図15の配置決定処理に戻る。図15の配置決定処理も終了し、処理は図5のメイン処理に戻る。その後、メイン処理では前述した通り、模様つなぎキーと縫製開始キーのいずれが選択されたかに応じて処理が行われる。
図18の例において、その後、模様つなぎキーではなく縫製開始キーが選択され、縫製開始が指示されると(S11:NO、S12:YES)、図20に示すように、縫製可能領域864に対応する第四保持位置で、四角形230F内に変形後の模様154が縫製され(S13)、メイン処理は終了する。
以上に説明したように、本実施形態のミシン1によれば、隣接した位置に順に縫製される少なくとも三つの模様のうち、連続して縫製される二つの模様(前の模様とその連続模様)については、これら二つの模様に夫々対応する保持位置で撮影された、二つの模様の隣接部位近傍の第一位置に配置された標識110を含む2種類の画像のデータ(第一画像データと第三画像データ)を用いて、連続模様に対応する保持位置における縫製対象物39に対する連続模様の配置(第一配置)が決定される。これにより、連続する二つの模様間の位置合わせを正確に行うことができる。
更に、少なくとも三つの模様のうち何れかの模様(基準模様)に隣接した位置に、縫製順序がそれよりも二つ以上後に縫製される他の模様(非連続隣接模様)がある場合には、これら二つの模様に夫々対応する保持位置で撮影された、二つの模様の隣接部位近傍の第二位置に配置された標識110を含む2種類の画像のデータ(第二画像データと第四画像データ)を用いて、非連続隣接模様に対応する保持位置における縫製対象物39に対する非連続隣接模様の配置の配置(第二配置)が決定される。
何れかの模様の非連続隣接模様は、他の模様の連続模様でもあるため、上記の通り、同じ模様に対して、第一画像データと第三画像データを用いた第一配置の決定も行われている。本実施形態のミシン1によれば、第一配置と第二配置との間に差がある、つまり、非連続隣接模様が縫製されるまでの間に、僅かな誤差が累積したり、加工布の縫い縮みや捩れが生じたりした場合でも、第一配置と第二配置とに基づいて、非連続隣接模様でもある連続模様の縫製データが補正されるので、非連続隣接模様を隣接すべき模様に正確に位置合わせすることができる。このように、本実施形態1のミシンによれば、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置を変更しながら複数の模様を縫製する場合に、縫製順序が連続しない模様間の位置合わせを正確に行うことができる。
更に、本実施形態では、ユーザは、連続して縫製される複数の模様について、前の模様と連続模様との間の配置関係を、パネル操作を介して第一基準及び第二基準を指定することで設定することができる。つまり、ユーザは、前の模様と連続模様との間の配置関係を、自分の希望通り、容易に設定することができる。また、何れかの模様に非連続隣接模様がある場合、パネル操作を介して追加基準を設定することで、自分の希望する方向に隣接する非連続隣接模様があることを容易に特定することができる。また、予め追加基準が特定されることで、CPU61は、適切なタイミングでユーザに第二位置に標識110を貼り付けるよう報知することができる。
本実施形態において、イメージセンサ50は、本発明の「撮影手段」に相当する。模様つなぎ設定処理(図9)のS203及び配置決定処理(図15)のS103で第一基準及び第二基準の指定を受け付ける処理を行うCPU61は、「設定取得手段」に相当する。標識検出処理(図11)のS303において、各模様に対応する保持位置で、第一位置に貼り付けられた標識110を含む画像の画像データを取得する処理を行うCPU61は、「第一画像データ取得手段」に相当する。追加検出処理(図14)のS403において、基準模様に対応する保持位置で、第二位置に貼り付けられた標識110を含む画像の画像データを取得する処理を行うCPU61は、「第二画像データ取得手段」に相当する。配置決定処理(図15)のS111において、次の模様に対応する保持位置で、第一位置に貼り付けられた標識110を含む画像の画像データを取得する処理を行うCPU61は、「第三画像データ取得手段」に相当する。配置補正処理(図19)のS131において、非連続隣接模様に対応する保持位置で、第二位置に貼り付けられた標識110を含む画像の画像データを取得する処理を行うCPU61は、「第四画像データ取得手段」に相当する。
配置決定処理のS121で、第一画像データと第三画像データに基づき特定された第一標識配置と、前の模様と連続模様との間の配置関係と、連続模様の縫製データに基づいて、連続模様に対応する保持位置における縫製対象物39に対する連続模様の配置(第一配置)を決定するCPU61は、「第一配置決定手段」に相当する。配置補正処理のS139で、第二画像データと第四画像データに基づき特定された第二標識配置と、基準模様と非連続隣接模様との間の配置関係と、非連続隣接模様の縫製データに基づいて、非連続隣接模様に対応する保持位置における縫製対象物39に対する非連続隣接模様の配置(第二配置)を決定するCPU61は、「第二配置決定手段」に相当する。配置補正処理のS140で、第一配置と第二配置とに基づいて、非連続隣接模様でもある連続模様の縫製データを補正するCPU61は、「縫製データ補正手段」に相当する。
本発明のミシンは、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示する種々の変更が加えられてもよい。
例えば、上記実施形態では、隣接した位置に順に縫製される複数の模様について、前の模様と連続模様との間の配置関係を特定するための第一基準と第二基準は、タッチパネル8からパネル操作によってユーザの指定によって設定される。しかしながら、図6に示す模様のように、刺繍枠84の最大の縫製可能領域86よりも大きな模様が複数の模様に分割されている場合には、複数の模様間の配置関係は予め決まっているといえる。よって、このような場合、複数の模様間の配置関係に関する設定は、予め定められ、分割された複数の模様の縫製データに含まれる形でROM62又はEEPROM64に記憶されていてもよい。なお、ミシン1が外部記憶装置(例えば、メモリカード)と接続可能なコネクタを備える場合、外部記憶装置に記憶された縫製データがミシン1に読み込まれ、使用されてもよい。
例えば、図6の模様151〜154の例では、模様151〜154の各々の縫製範囲を同一サイズの矩形とし、各模様の縫製データに、針落ち点の位置を示す座標データに加え、各模様に対応する矩形の位置を、X軸方向の行とY軸方向の列を有するマトリクス上の位置で示す情報を含めることができる。具体的には、模様151〜154は、夫々、1行1列目、1行2列目、2行2列目、2行1列目の要素として表される。この場合、全ての矩形が同一サイズなので、縫製データに含まれる矩形の位置を示す情報に基づいて矩形を配置すれば、模様151〜154を互いに隣接した位置に正確に配置することができる。この場合、ユーザが模様151〜154を順に縫製する都度、各模様をつなげるための第一基準及び第二基準の設定をする必要がない。また、縫製データに含まれる設定から、模様151と模様154とが、基準模様と非連続隣接模様の関係にあることが認識できるため、ユーザは追加基準を設定する必要もない。ミシン1は、縫製データに含まれる設定に基づき、自動的に適切な位置合わせを行うことができる。
また、大きな模様が複数の模様に分割された場合に限らず、隣接した位置に順に縫製される複数の模様間の配置関係に関してユーザが一度行った設定(例えば、第一基準及び第二基準)が、メイン処理が終了する時点で、ユーザの指示に応じて、又は自動的に、縫製データに対応付けてEEPROM64に記憶されてもよい。この場合、ミシン1は、ユーザが設定した配置関係をその後も使用して、自動的に適切な位置合わせを行うことができる。
上記実施形態では、二つの模様(前の模様と連続模様、及び基準模様と非連続隣接模様)が隣接する位置に縫製される例として、二つの模様の最小矩形が境界線を共有する例を説明した。しかし、二つの模様は、対応する最小矩形の辺の一部を共有する形態であってもよいし、互いに点で接する形態であってもよい。他に、例えば図21に示す、順に縫製される4つの模様166〜169のように、互いに1点で次の模様と接する場合にも、上記実施形態の処理が可能である。
模様の配置は、模様の位置及び角度の少なくとも一方を含んでいればよい。また、模様が縫製される範囲(縫製予定範囲)を表す図形は、必ずしも対応する最小矩形である必要はなく、例えば、模様が収まる円、楕円、多角形等のうちいずれかであってもよい。第一基準の線分231、第二基準の線分271は、これらの図形の輪郭線の一部であってもよい。第一基準の点232、第二基準の点272は、これらの図形に含まれる点であればよく、線分231、線分271上の任意の点であってもよいし、線分231、線分271上にない点であってもよい。
実施形態では複数の針棒31を有するミシン1が例示されているが、1本の針棒を有する工業用ミシン又は家庭用ミシンであってもよい。イメージセンサ50の種類、配置は適宜変更されてもよい。例えば、イメージセンサ50は、CCDカメラ等、CMOSイメージセンサ以外の撮影素子であってもよい。
標識110の数は、適宜変更可能である。つまり、標識110は、1つでも3以上の複数でもよい。複数の標識110に基づき模様の配置が特定される場合、1つの標識110が使用される場合に比べ、特に角度を精度よく特定することができる。画像データに基づき検出される標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかであればよい。標識110の構成は適宜変更されてよい。標識110の構成には、例えば、標識110の大きさと、材質と、デザインと、色とが含まれる。また、標識110の縫製対象物39への配置方法は貼り付けに限らず、ピンで留める等の方法であってもよい。標識110の配置を特定するための基準(上記実施形態では、標識110の第一中心点111)及び算出方法は、標識110の構成等を考慮して、適宜変更されてよい。