JP2013060707A - 場所打ち杭の孔内水位安定化システム - Google Patents

場所打ち杭の孔内水位安定化システム Download PDF

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Abstract

【課題】 地下水位が高い現場や杭孔を掘削する位置とタンクの設置位置とが離れている現場であっても、杭孔内の安定液の水位を安定させることができる場所打ち杭の孔内水位安定化システムを提供すること。
【解決手段】 掘削孔Hに安定液を供給する供給手段4と、掘削孔Hから掘削土砂とともに泥水を排出する排出手段5と、杭孔H内に供給した安定液の水位を検知する水位検知手段6と、これらを制御する制御手段7と、を備えた場所打ち杭の孔内水位安定化システム1において、供給手段4は、安定液を貯留する安定液槽40と、この安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す給水ポンプ42と、安定液槽40から杭孔H内まで達する供給経路44と、を有し、この供給経路44の給水ポンプ側となる基端近傍に逆止弁44bを設けるとともに、杭孔H側となる先端近傍に電動弁44aを設け、両弁間の供給経路44内に安定液を貯留可能とした。
【選択図】 図2

Description

この発明は、地中に場所打ち杭を構築する際に地盤に掘削した孔の孔壁崩壊を防ぐために供給する安定液の水位を安定化させる場所打ち杭の孔内水位安定化システムに関するものである。
従来、構造物の建設場所において、構造物の支持に耐え得る支持層まで到達する杭を、地面に孔を掘って鉄筋籠を挿入し、そこにコンクリートを打設することにより構築する場所打ち杭の構築工法として、アースドリル工法、リバースサーキュレーション工法、BH工法などが知られている。杭孔の掘削は、被圧地下水層などを突き破って掘り進んでいくこととなるため、掘削孔内に地下水が流入し易く、その流入に伴って周辺の孔壁が崩壊してしまうという問題があり、これらの工法では、掘削孔内に安定液(分離しない水溶液であって水より比重が重くセメント成分と化学反応しないベントナイト水溶液などの泥水、又は清水、以下同じ)を注水してその水頭圧で地下水の流入を防止して掘削孔内の孔壁崩壊を防ぎながら杭孔を掘削していく。
しかし、いずれの工法においても、杭孔を掘り進むに従って、孔壁として現れる地下層も砂礫層や粘土層などというように刻々と変化して行き、水の浸透性が著しく相違するため、安定液の孔内水位を一定に保つことが難しいという問題があった。
このような問題を解決するため、特許文献1には、掘削孔90内に安定液80の水位検知手段30を配置し、この水位検知手段30で安定液80の下限水位を検知したときに供給ポンプ22を作動させて、安定液80をタンク21から掘削孔90に供給し、上限水位を検知したときに供給ポンプ22を停止して安定液80の供給を停止するとともに、制御装置40により、供給ポンプ22の作動開始後の安定液80の供給継続時間を計測し、供給ポンプ22が予め定めた所定時間後に作動を停止しないときに、異常と判定して異常信号を送信し、異常の発生を外部装置に通知する水位管理システムが開示されている(特許文献1の図4等参照)。
また、特許文献2には、掘削孔90内における安定液80の基準水位を設定する安定液の基準水位設定装置であって、掘削孔90に充填した安定液80の水位を所定時間毎に基準位置からの距離で測定する水位センサ2と、この測定結果に基づき基準水位を設定する設定制御装置10と、を備え、設定制御装置10は、水位センサ2による測定量と前回の測定量との差分を演算する差分演算手段と、前記差分演算手段の差分が0となる測定量が連続して所定回得られたとき、当該水位を基準水位として記憶手段に設定する設定手段と、を有することを特徴とする安定液の基準水位設定装置が開示されている(特許文献2の図1等参照)。
しかし、特許文献1や特許文献2に開示されている水位管理システムでは、自動で安定液の供給・停止を行なう自動給水システムに関しては、フロート式や超音波式の水位センサを用いて、下限水位まで減少したときに安定液の供給を開始し、上限水位まで貯留されたときに安定液の供給を停止する点では、従来の自動給水システムと何ら変わりなく、孔内水位の変動が大きく、孔壁崩壊のおそれを払拭することができない点については解決がなされていないという問題がある。
特に、地下水位が比較的高く、地表面から杭上端までの距離が短く、安定液の注水高さに余裕を持たせることができない場合、地層やその亀裂などから安定液が漏れて孔内水位が低下してしまい孔壁崩壊のおそれが高まったり、給水停止が間に合わず安定液が地表面にあふれたりすることを防ぐことが困難であった。また、駅周辺や都心近郊などの現場では、安定液を溜めて置く貯留槽の設置スペースが限られており、杭孔を掘削する位置と、安定液の貯留槽の設置位置とが離れている場合(200m〜300m離れている場合も多々ある)が多く、給水ポンプが起勣してから杭孔に供給されるまでのタイムラグが長くなって、そのタイムラグの間に孔内水位が更に大きく変動してしまうという問題があり、前述の特許文献1や特許文献2に開示されている水位管理システムでは、これらの問題を解決することができなかった。
特開2010−265637号公報 特開2010−265638号公報
そこで、この発明は、前記従来の技術の問題を解決し、地下水位が高い現場や杭孔を掘削する位置と安定液の貯留槽の設置位置とが離れている現場であっても、安定液が地表に溢れたり安定液の水位が下がり過ぎて孔壁崩壊のおそれが高まったりすることがなく、杭孔内の安定液の水位を安定させることができる場所打ち杭の孔内水位安定化システムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、場所打ち杭の掘削孔に安定液を供給する供給手段と、前記掘削孔から掘削土砂とともに泥水を排出する排出手段と、前記杭孔内に供給した安定液の水位を検知する水位検知手段と、これらを制御する制御手段と、を備えた場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記供給手段は、安定液を貯留する安定液槽と、この安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する供給経路と、を有し、この供給経路の給水ポンプ側となる基端近傍に逆止弁を設けるとともに、杭孔側となる先端近傍に電動弁を設け、前記両弁間の供給経路内に安定液を貯留可能としたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、第2の供給手段を備え、この第2の供給手段は、安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す第2の給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する第2の供給経路と、を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記制御手段は、前記水位検知手段で検知した測定水位に基づいて前記供給手段の供給量及び前記排出手段の排出量をフィードバック制御することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記フィードバック制御はPID制御であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記制御手段は、商用電源と発電機との切り換えが可能な電源切換盤から無停電電源装置を介して電源供給されていることを特徴とする。
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、場所打ち杭の掘削孔に安定液を供給する供給手段と、前記掘削孔から掘削土砂とともに泥水を排出する排出手段と、前記杭孔内に供給した安定液の水位を検知する水位検知手段と、これらを制御する制御手段と、を備えた場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記供給手段は、安定液を貯留する安定液槽と、この安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する供給経路と、を有し、この供給経路の給水ポンプ側となる基端近傍に逆止弁を設けるとともに、杭孔側となる先端近傍に電動弁を設けて、前記両弁間の供給経路内に安定液を貯留可能としたので、制御手段で安定液の水位が低下したと判断してから給水ポンプを駆動させても、供給経路内に貯留していた安定液を直ぐに供給可能であり、地下水位が高い現場や杭孔を掘削する位置と安定液の貯留槽の設置位置とが離れている現場であっても、安定液が地表に溢れたり安定液の水位が下がり過ぎて孔壁崩壊のおそれが高まったりすることがなく、杭孔内の安定液の水位を安定させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、第2の供給手段を備え、この第2の供給手段は、安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す第2の給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する第2の供給経路と、を有するので、前記作用効果に加え、いずれか一方の供給手段を通常稼動させておき、制御手段で安定液の水位が低下したと判断してからもう一方の供給手段を駆動させることで、更に応答性の速い安定液の供給が可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記制御手段は、前記水位検知手段で検知した測定水位に基づいて前記供給手段の供給量及び前記排出手段の排出量をフィードバック制御するので、前記作用効果に加え、杭孔内の安定液の水位を更に安定させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記フィードバック制御はPID制御であるので、前記作用効果に加え、積分動作や微分動作により更に安定した水位制御が可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかに記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、前記制御手段は、商用電源と発電機との切り換えが可能な電源切換盤から無停電電源装置を介して電源供給されているので、前記作用効果に加え、停電時において商用電源と発電機との切り換えの僅かな時間も制御手段に電源供給が可能であるため、システムがダウンすることなく、安全に運転可能である。
リバースサーキュレーション工法の工程を説明する説明図であり、(a)〜(h)の順に工程が進む。 実施例に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システムの全体構成を示す構成説明図である。
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
本発明の場所打ち杭の孔内水位安定化システムは、場所打ち杭の杭孔掘削時の孔壁保護のために注水される安定液の水位を所定高さに維持するために用いられるものであり、実施の形態に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システムを、リバースサーキュレーション工法により場所打ち杭を構築する際に用いる場合で説明する。
はじめに、図1を用いて、リバースサーキュレーション工法の工程について簡単に説明する。図1は、リバースサーキュレーション工法の工程を説明する説明図であり、(a)〜(h)の順に工程が進む。
先ず、杭構築位置の地表に杭径よりも150mm〜200mm程度大きい外径を有する鋼製管からなるスタンドパイプをバイブロハンマーなどを用いて振動させながら圧入して立設する。
次に、スタンドパイプ内をハンマーグラブなどを用いて先行掘削してスペースを作る。そして、このスペースに掘削用の回転ビット、ドリリングパイプを装備したうえ、スタンドパイプ上端にロータリーテーブルを装着し、このロータリーテーブルを用いて回転ビットを緩やかに回転させて掘り進んで行く。前述のドリリングパイプは、後述の排水管に接続されており、このドリリングパイプ内を掘削した土砂が水と一緒に逆循環方式で吸い上げられることにより排土される。
杭孔の掘削が完了すると、鉄筋籠を吊り込んで挿入し、スライム処理を施した後、トレミー管を用いて底部からコンクリートを打設し、スタンドパイプを引き抜いた後、杭頭上方の空間を土砂等で埋め戻すことで場所打ちコンクリート杭が構築される手順となっている。
このようにリバースサーキュレーション工法により場所打ち杭を構築する場合は、地下水位と水頭差が原則2.0m以上となるように安定液の水位を保つことで、その静水圧を0.02N/mm以上に保って地下水流入を防ぎ、杭孔の孔壁を保護することが必要であり、本実施の形態に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システムは、この安定液の水位管理に用いられるものである。
次に、実施の形態に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システムの全体構成を、図2を用いて説明する。
本実施の形態に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システム1は、孔内水位制御システム2と、孔内水位監視システム3とから主に構成され、場所打ち杭の掘削孔内の安定液の水位を管理して安定化させる機能を有している。
(孔内水位制御システム)
孔内水位制御システム2は、掘削孔H内に安定液を供給する供給手段4と、掘削孔H底部から水と一緒に掘削土砂を揚重・排出する排出手段5と、掘削孔H内の安定液の水位を検知する水位検知手段6と、これらを制御する制御手段7などから構成され、掘削孔H内の安定液の水位を制御して安定化させる機能を有している。
供給手段4は、安定液を貯留する安定液槽40と、この安定液槽40から安定液を杭孔H内に送り出す第1の給水ポンプ41と、第2の給水ポンプ42と、これらの給水ポンプ41,42から杭の掘削孔H内まで給水・送泥する供給経路である第1の給水管43,第2の給水管44などから構成されている。
第1の給水ポンプ41と、第2の給水ポンプ42は、単純な電源のON/OFF動作のみで駆動・停止する、泥水を送り出すことが可能な一般的な給水ポンプであり、図に示すように、停電時に使用する発電機と通常使用する商用電源とを切り換える電源切換盤にポンプ起動盤を介して接続されており、万が一停電になった場合でも一定時間安定液の供給が行なえる仕組みとなっている。なお、このポンプ起動盤は、少ない電力でポンプのモーターを起動させることができる装置である。
給水管43,44は、安定液槽40から杭孔H内へ通じる管である点では共通するが、本実施の形態では、第1の給水ポンプ41と第1の給水管43がメインの供給手段となっており、第2の給水ポンプ42及び第2の給水管44は、補助の供給手段となっている。
また、第1の給水管43には、特に電動弁等は設けられていないが、第2の給水管44には、給水方向先端側に電動弁44aが設けられ、給水方向基端側である給水ポンプ42付近に逆止弁44bが設けられている。
この電動弁44aは、弁の開閉量を調整して供給量を調節できる構成でも構わないが、泥が詰まって動作不良になることを考慮し、本実施の形態では、後述の制御手段7の指令により動作する、全開又は全閉のみのシンプルな電磁弁から構成されている。
このように第2の給水管44は、泥水の給水方向先端側に電動弁44aが、給水方向基端側に逆止弁44bが設けられているため、常時管内を安定液で満たすことが可能となっており、後述の制御手段7の指令で電動弁44aを開放すると、タイムラグが殆ど無く即座に安定液を掘削孔H内に送泥することが可能となっている。
排出手段5は、前述のドリリングパイプを通じて掘削土砂と泥水とを一緒に吸引・揚重する排水ポンプ50と、ドリリングパイプ上端に接続され、図示しない土砂分離機までの泥水の排出経路である排水管51と、から主に構成されている。
この排水ポンプ50は、サクションポンプと呼ばれる大型の自吸式ポンプであり、後述の制御手段7からの指令で動作する電動弁50aで、ポンプ吸引側にエアーを混入してその分泥水の吸い上げ量を減少させることにより、泥水の吸い上げ量を調整可能となっている。
なお、自吸式ポンプに備えられたバキュームポンプ(真空ポンプ)に接続する系統の一部を大気に開放して吸気圧を弱くすることにより、泥水の吸い上げ量を調整する構成とすることもできる。
水位検知手段6は、後述の制御手段7に接続する水位センサ60などからなり、この水位センサ60は、レーザ光線を水面に照射して、反射して返ってくるまでの時間に基づいて水位を測定するレーザ式センサである。
勿論、従来のフロート式、超音波式、静電容量式、圧力式、電極式などの他の方式の水位センサであっても構わないが、後述のフィードバック制御に用いられる所定時間ごとに所定の計測レベル範囲内でリアルタイムの安定液の水位を計測可能であることが要求される。
なお、安定液に清水を使用する場合は、レーザ式だと計測精度が落ちるためフロート式、超音波式等の他の方式の水位センサを用いるとよい。
制御手段7は、マイクロプロセッサを有するPLC(programmable logic controller)などからなる親子2つの制御盤70,71から主に構成され、所定のプログラムに従って、前述の供給手段4、排出手段5、水位検知手段6を制御して、安定液の水位を制御する機能を有している。制御盤が親子2局に分かれているのは、背景技術で述べたように駅周辺や都心近郊などの現場において、前述の土砂分離機(図示せず)、安定液槽40、給水ポンプ41,42などが配置された泥水プラント設置場所と、場所打ち杭の施工位置とが離れている場合に対応するためである。
制御盤70,71は、それぞれ無停電電源装置を介して前述の電源切換盤に接続されており、電源切換盤で停電時に商用電源から発電機に切り換える際の時間も安定して電源供給を受けられるようになっている。
この親局制御盤70は、前述の第2の給水管44の電動弁44aと、排水ポンプ50の電動弁50aと、水位センサ60とに接続され、これらを制御し、子局制御盤71は、ポンプ起動盤に接続され、このポンプ起動盤を通じて第1の給水ポンプ41と第2の給水ポンプ42を制御する構成となっている。そして、親局制御盤70と子局制御盤71は、互いに接続され、親局制御盤70の指令に基づいて連携して制御可能となっている。
また、制御盤70,71には、緑、黄、赤色の3色のランプを点灯・消灯可能な状態表示灯72、73がそれぞれ接続され、後述の動作に従って安定液の水位の状態等を表示可能となっている。
なお、制御盤としてPLCを例に挙げて説明したがPC(Personal Computer)などのコンピュータでも代替可能である。しかし、比較的大電流である動力電源を制御するため、PLCの方が、安全性、安定性が高くて好ましい。
(孔内水位監視システム)
次に、孔内水位監視システム3について説明する。
孔内水位監視システム3は、水位検知手段8と、その制御手段9などから構成され、杭孔H内の水位を監視するとともに、異常時に予め定めた所定のメールアドレスに警報メールを発信する機能を有している。
この水位検知手段8は、前述の水位センサ60と同構成の水位センサ80などからなり、前述の水位センサ60と併せてダブルチェックすることで、孔H内の水位検知の正確性を期している。なお、更に、正確性を期すため、所定の水位を超えたか否かのみ検知可能な故障しにくい電極方式の水位計を別途設け、この水位計で後述の警戒水位などの所定の絶対水位を検知するようにしてもよい。
制御手段9は、所定のプログラムがインストールされた一般的なノート型のPC90からなり、このPC90は、無停電電源装置を介して前述の電源切換盤に接続されている。また、PC90は、水位センサ80に接続され、水位センサ80の発信する電気信号から水位を割り出し、記憶装置に記憶するとともに、工事担当者などの所定の工事関係者のメールアドレス等(携帯電話を含む)を記憶し、水位センサ80が孔内水位が後述の警戒水位以下となったことを検知した場合に警報メールを一斉発信するようになっている。
なお、PC90と親局制御盤70とは、双方向通信可能に接続され、互いに水位センサ60,80の計測値が入力可能となっている。
次に、図2を用いて孔内水位安定化システム1の動作について説明する。
(通常時)
通常時の孔内水位安定化システム1は、制御手段7により、孔内水位制御システム2の水位センサ60から得られる孔内水位の計測値と目標水位との偏差に基づいて、第1の給水ポンプ41の制御時間あたりの駆動時間(duty比)を算出し、ON/OFFの間欠運転で制御(PWM制御)するとともに、排水ポンプ50の電動弁50aを制御してバルブの開度を変更することで所望の排出量に調整する。
なお、この目標水位は、地下水位との水頭差が原則2.0m以上となるように杭の高さや掘削位置の地下水位、地質などを総合的に勘案して設定される。
これらの制御・調整は、水位センサ60により所定時間ごとに孔内水位を計測することでフィードバックしながら継続運転される。このように、第1の給水ポンプ41や排水ポンプ50の制御は、計測値と目標水位との偏差に基づいてフィードバック制御すればよいが、本実施例に係る孔内水位安定化システム1では、安定液の水位が目標水位付近で安定するようPID制御により制御されている。
つまり、制御手段7により、水位センサ60の計測水位と目標水位との偏差の一次関数に基づいて供給量、排出量を算出し(比例動作)、この供給・排出動作でも依然として目標水位まで達しない残留偏差を矯正するため、偏差の積分値に比例するように矯正値を算出し(積分動作)、この矯正値によるオーバーシュートなどを防止するため、供給・排出量の変化の大きさに比例した補正値を算出し(微分動作)、これらの合計値に実際の供給量、排出量がなるように、第1の給水ポンプ41の間欠運転、排水ポンプ50の電動弁50aを制御している。
このため、積分動作や微分動作により実際の安定液の水位を目標水位近傍で推移させることができ、安定した水位制御が可能となる。
このような通常時は、本実施例の孔内水位安定化システム1は、制御盤70,71からの指令により前述の状態表示灯72,73に緑のランプを点灯させ、異常がない旨の表示をする。
(水位低下時)
本実施例の孔内水位安定化システム1は、水位センサ60の計測水位と目標水位との偏差が所定値より大きくなったとき、或いは、この偏差の拡大速度が速く(拡大の角度が大きく)なったとき、即ち、偏差の時間による微分値が所定値より大きくなったときは、制御手段7は、水位低下時と判断し、以下の動作を行う指令を出す。
子局制御盤71により補助供給手段である第2の給水ポンプ42をポンプ起動盤を通じて駆動させるとともに、親局制御盤70により電動弁44aを開放し、電動弁50aを制御して排出量減少させる。また、親局制御盤70、子局制御盤71それぞれから指令を発して状態表示灯72,73に黄色のランプを点灯させ、作業員及び工事担当者に孔内水位が低下している旨を知らせる。
(異常時)
また、本実施例の孔内水位安定化システム1は、水位センサ60の計測水位が基準水位を下回った場合、第1の給水ポンプ41、第2の給水ポンプ42を駆動させた状態のまま排水ポンプ50を停止し、状態表示灯72,73にそれぞれ赤色のランプを点灯させる。
この基準水位は、地下水位などから作業中止の基準として定められた水位であり、赤ランプの点灯を見た作業員及び工事担当者は、掘削などの他の作業を中止し、孔内水位の回復を最優先とする。
更に、水位センサ60の計測水位が基準水位より下の警戒水位を下回った場合、前述の孔内水位監視システム3により、工事関係者に警報メールが一斉発信される。警報メールを受け取った工事関係者は、関係各署に連絡するとともに、公衆の安全確保を図る。また、水位低下の原因を究明し、対策を講じ、周辺地盤への影響の有無を確認する。
なお、孔内水位制御システム2の水位センサ60と、孔内水位監視システム3の水位センサ80との計測値に相違が生じた場合、状態表示灯72,73を点滅させるなどして、通知するようにする。このような場合、各水位センサを点検する。
このような実施の形態に係る場所打ち杭の孔内水位安定化システム1によれば、制御手段7により水位センサ60の測定水位と目標水位との偏差の増減から安定液の水位が低下したと判断してから補助の供給手段である第2の給水ポンプ42や電動弁44aを駆動させても、電動弁44aが掘削孔H近傍にあり、且つ、第2の排水管44内に安定液を貯留しているため、第2の排水管44内に貯留していた安定液を直ぐに掘削孔H内に供給可能であり、安定液の急激な水位の変動にも対応することができる。このため、地下水位が高い現場や杭孔を掘削する位置と安定液の貯留槽の設置位置とが離れている現場であっても、安定液が地表に溢れたり安定液の水位が下がり過ぎて孔壁崩壊のおそれが高まったりすることがなく、杭孔内の安定液の水位を安定させることができる。
以上のように、この発明の一実施の形態に係る孔内水位安定化システムを説明したが、孔内水位制御システム2の供給手段4、排出手段5、水位検知手段6、制御手段7などは、特許請求の範囲で他の既知の手段と代替可能であり、孔内水位監視システム3自体がなくても孔内水位安定化システムを稼動させることは可能である。
特に、供給手段4をメインの供給手段と補助の供給手段とからなるものを例示して説明したが、1つの供給手段としてもよいし、3つ以上の供給手段に分けても構わない。要するに、緊急時(異常時)を想定して十分な供給量を有する供給手段であり、少なくともいずれかの供給手段のうちの一つにおいて、給水管の基端側(給水ポンプ近傍)に逆止弁が設けられ、先端側(杭孔近傍)に電動弁が設けられていればよい。
また、安定液の水位が目標値より下回る場合で説明したが、同様に、地下水位の流入が止まらず、目標水位を上回ってしまう場合でも、基準水位、警戒水位をそれぞれ目標水位より所定上方に設定することで対応することが可能である。
1 孔内水位安定化システム
2 孔内水位制御システム
4 供給手段
40 安定液槽
41 (第1の)給水ポンプ
42 (第2の)給水ポンプ
43 (第1の)給水管(供給経路)
44 (第2の)給水管(供給経路)
44a 電動弁
44b 逆止弁
5 排出手段
50 排水ポンプ
51 排水管(排出経路)
6 水位検知手段
60 水位センサ
7 制御手段
3 孔内水位監視システム
8 水位検知手段
80 水位センサ
9 制御手段

Claims (5)

  1. 場所打ち杭の掘削孔に安定液を供給する供給手段と、前記掘削孔から掘削土砂とともに泥水を排出する排出手段と、前記杭孔内に供給した安定液の水位を検知する水位検知手段と、これらを制御する制御手段と、を備えた場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、
    前記供給手段は、安定液を貯留する安定液槽と、この安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する供給経路と、を有し、この供給経路の給水ポンプ側となる基端近傍に逆止弁を設けるとともに、杭孔側となる先端近傍に電動弁を設け、前記両弁間の供給経路内に安定液を貯留可能としたことを特徴とする場所打ち杭の孔内水位安定化システム。
  2. 請求項1に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、
    第2の供給手段を備え、この第2の供給手段は、安定液槽から安定液を杭孔内に送り出す第2の給水ポンプと、安定液槽から杭孔内まで達する第2の供給経路と、を有することを特徴とする場所打ち杭の孔内水位安定化システム。
  3. 請求項1又は2に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、
    前記制御手段は、前記水位検知手段で検知した測定水位に基づいて前記供給手段の供給量及び前記排出手段の排出量をフィードバック制御することを特徴とする場所打ち杭の孔内水位安定化システム。
  4. 請求項3に記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、
    前記フィードバック制御はPID制御であることを特徴とする場所打ち杭の孔内水位安定化システム。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の場所打ち杭の孔内水位安定化システムにおいて、
    前記制御手段は、商用電源と発電機との切り換えが可能な電源切換盤から無停電電源装置を介して電源供給されていることを特徴とする場所打ち杭の孔内水位安定化システム。
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