JP2013060675A - 固綿の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】嵩保持性とクッション性に加えて、反発性と嵩回復性も備えた固綿であり、かつ軽量化が図れる固綿の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリエステル短繊維と、バインダー短繊維とを混合し、熱処理を施すことにより、バインダー短繊維のバインダー成分により構成繊維同士を熱接着させて固綿を得る方法であって、バインダー短繊維は、非晶性共重合ポリエステルと結晶性ポリエステルとが複合してなる複合型繊維であり、該非晶性共重合ポリエステルは流動開始温度が90〜130℃であるバインダー成分であり、ポリエステル短繊維は、潜在捲縮能を有し、熱接着のための熱処理が施されることにより、スパイラル捲縮を発現し、その発現する捲縮数が12〜20ケ/25mmであり、熱接着のための熱処理温度が160〜210℃であることを特徴とする固綿の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、軽量でありながら、反発性と嵩回復性に優れたに優れた固綿を製造する方法に関するものである。
家具のクッション材、建築用資材、床材、車両内装用基材等の用途で、嵩保持性とクッション性に優れた繊維製品からなるクッション材が提案されている。このような繊維製品としては、主体となる合成繊維あるいは天然繊維の短繊維を、接着性樹脂を用いて接着処理を施した、いわゆる固綿が挙げられる。
接着処理の具体的な方法としては、バインダー繊維を用いたサーマルボンド法(例えば、特許文献1)や、エマルジョンバインダーを用いたレジンボンド法が一般的に知られている。
近年、嵩保持性とクッション性を有する固綿について、さらに、反発性や嵩回復性といった性能を付加したいという要望がある。すなわち、加重をかけた際に、その加重がかかった部分が容易に凹まない反発性と、加重を解除した後に、元の嵩高な状態に戻る嵩回復性である。
特開2005−200789号公報
嵩保持性とクッション性に加えて、反発性と嵩回復性を備えた固綿を得ようと試みた場合、例えば、固綿の密度を高くする方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、固綿の重量が大きくなり、また、通気度が低下する傾向にあるとともに、コスト的にも不利となる。
本発明は、嵩保持性とクッション性に加えて、反発性と嵩回復性も備えた固綿であり、かつ軽量化が図れる固綿の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリエステル短繊維と、バインダー短繊維とを混合し、熱処理を施すことにより、バインダー短繊維のバインダー成分により構成繊維同士を熱接着させて固綿を得る方法であって、
バインダー短繊維は、非晶性共重合ポリエステルと結晶性ポリエステルとが複合してなる複合型繊維であり、該非晶性共重合ポリエステルは流動開始温度が90〜130℃であるバインダー成分であり、
ポリエステル短繊維は、潜在捲縮能を有し、熱接着のための熱処理が施されることにより、スパイラル捲縮を発現するものであり、熱接着のための熱処理温度で発現する捲縮数が12〜20ケ/25mmであり、
熱接着のための熱処理温度を160〜210℃とすることを特徴とする固綿の製造方法
を要旨とするものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、ポリエステル短繊維とバインダー短繊維とを用意し、これらを混合して得られた混綿ウェブに熱処理を施して、固綿を得る。
本発明において用いられるポリエステル短繊維は、バインダー成分を介して熱接着するための熱処理による影響を受けないために、融点220℃以上のポリエステルによって構成されるものが好ましい。例えば、ポリブチレンテレフタレート短繊維、ポリエチレンテレフタレート短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維等が挙げられ、なかでも融点が高いことと汎用性に優れることからポリエチレンテレフタレート短繊維を好ましく用いることができる。
ポリエステル短繊維は、得られる固綿の軽量性、嵩保持性、クッション性の観点から三次元的なスパイラル捲縮を発現するものであり、熱を付与することによりスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有するものであって、熱接着のための熱処理が施される際に、潜在捲縮能が顕在化されてスパイラル捲縮を発現する繊維を用いる。なお、ポリエステル短繊維は、二次元的な機械捲縮が付与されたものであってもよい。
熱を付与することによってスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮能を有する繊維としては、収縮特性の異なる2種の重合体をサイドバイサイドに貼合わせた複合型の繊維、単一のポリマーで構成され、繊維製造時に糸条の片側からのみ冷却して繊維内で収縮特性に変化を持たせた繊維が挙げられる。また、繊維製造工程における延伸配向後に急激に張力緩和を行うことで捲縮を付与した後に熱処理で捲縮を固定させた繊維が挙げられる。
ポリエステル短繊維が、熱処理により顕在化するスパイラル捲縮の捲縮数は、得られる固綿の軽量性、嵩保持性、クッション性の観点から、12〜20ケ/25mmである。ここでいう顕在化するスパイラル捲縮の捲縮数とは、熱接着のための熱処理温度で発現する捲縮数であって、ポリエステル短繊維を無加重下の状態で、所定の温度に設定した熱風乾燥機内で4分間処理して、スパイラル捲縮を顕在化させ、この顕在化した捲縮数をJIS L1015 8.12.1 に準じて測定した値という。
熱処理によりスパイラル捲縮が顕在化する前の材料段階でのポリエステル短繊維の捲縮数は、5〜12ケ/25mmが好ましく、なかでも7〜10ケ/25mmがより好ましい。捲縮数が5ケ/25mm以上とすることにより、混綿ウェブを作成する際、カード機での解繊時等において繊維が脱落しにくく、生産性が安定する。一方、12ケ/25mm以下とすることにより、カード機での解繊、混綿工程でネップ等が発生しにくく、斑のない品位の高い固綿を得ることができる。また、材料段階でのポリエステル短繊維の捲縮率は、12〜30%が好ましく、なかでも16〜27%がより好ましい。捲縮率が12%以上とすることにより、混綿ウェブを作成する際、カード機での解繊時等において繊維が脱落しにくく、生産性が安定する。一方、捲縮率を30%以下とすることにより、カード機での解繊、混綿工程でネップ等が発生しにくく、斑のない品位の高い固綿を得ることができる。
ポリエステル短繊維の横断面形状(セクション)は、特に限定しないが、中空部を有する中空繊維であると、得られる固綿の嵩高性が向上するため好ましい。
ポリエステル短繊維の繊度は、3.3デシテックス以上であることが好ましく、なかでも4.4デシテックス以上がより好ましい。繊度が3.3デシテックス以上とすることにより、繊維が有する捲縮形態の保持性が強くなるため、得られる固綿の嵩高性が向上しやすい。上限は特に限定しないが、30デシテックス程度でよい。繊度が大きくなるにつれて、より嵩高性や反発性は向上する傾向となるが、剛直なものにある傾向にあるため、固綿の用途に応じて適宜選択すればよい。
ポリエステル短繊維の繊維長は特に限定するものではないが、32〜76mmが好ましく、なかでも44〜64mmがより好ましい。
本発明におけるバインダー短繊維は、非晶性共重合ポリエステルと結晶性ポリエステルとが複合してなる複合形態である。複合形態としては、バインダー成分として機能する非晶性共重合ポリエステルが、繊維表面の一部を構成するものであればよく、貼り合わせ型や芯鞘型等が挙げられるが、芯鞘型複合形態を好ましく用いる。鞘部に配されたバインダー成分がより効率よくバインダーとしての機能が発揮することができ、また、芯部に配された結晶性ポリエステルは、熱処理後は、繊維形態を維持し、得られる固綿の嵩保持性や嵩回復性にも寄与し、強度の高いものとなる。
バインダー短繊維を構成する結晶性ポリエステルは、示差走査熱量測定をした際に描かれるDSC曲線において、明確な結晶融点を示すものであり、DSC曲線のピークのこう配が大きく、融解開始温度と融解終了温度との差が約10℃程度のものである。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、本発明においては、ポリエチレンテレフタレートを好ましく用いられる。
バインダー短繊維を構成する非晶性共重合ポリエステルは、バインダー成分として機能するものであり、流動開始温度が90〜130℃である。非晶性共重合ポリエステルは、非晶性であるため、示差走査熱量測定をした際に描かれるDSC曲線においてもピークの形状が明確に現われない。
本発明では、バインダー成分である非晶性共重合ポリエステルは、ジカルボン酸としてテレフタル酸とイソフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールから構成されるもので、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸共重合量が25〜45モル%のものを好ましく用いることができる。
非晶性共重合ポリエステルと結晶性ポリエステルとの質量比は、後述するポリエステル繊維とバインダー短繊維との比率や、固綿全体に対してバインダー成分の占める比率を考慮して適宜選択すればよいが、30/70〜70/30程度がよく、より好ましくは、40/60〜60/40である。
バインダー短繊維の繊度は、6.6デシテックス以下が好ましく、なかでも4.4デシテックス以下がより好ましい。繊度が6.6デシテックス超えると、固綿に占めるバインダー短繊維の構成本数が相対的に減少することから、熱処理前の混綿ウェブ中にバインダー短繊維の構成本数も相対的に減少し、バインダー成分が存在する箇所をより多くの箇所に細かく均一に分散させにくい傾向となり、強固な接着力が得らにくく、得られる固綿は、嵩保持性および反発性や嵩回復性に乏しくなる傾向にある。繊度の下限は、特に限定しないが、1デシテックス程度でよい。
バインダー短繊維の捲縮形態および繊維長は特に限定するものでなく、捲縮数7〜12ケ/25mm、捲縮率9〜15%、繊維長32〜76mmであることがカード機での解繊、混綿の面から好ましい。
本発明は、上記したポリエステル短繊維とバインダー短繊維とを混合し、熱処理を施すことにより、バインダー短繊維のバインダー成分を溶融させて構成繊維同士を熱接着させて固綿を製造する。
ポリエステル短繊維とバインダー短繊維とを混合する際の質量比率は、70/30〜30/70(ポリエステル短繊維/バインダー短繊維)とするのが好ましく、そのなかで60/40〜40/60がさらに好ましい。
ポリエステル短繊維の質量比率が70%を超えると、バインダー短繊維の質量比率が低くなり、バインダー成分による強固な接着が形成されず嵩保持性の高い固綿布が得られない。一方、ポリエステル短繊維の質量比率が30%未満になると、嵩保持力が弱くなり、軽量性に乏しい不織布となる。
熱処理の際の熱処理温度を160〜210℃とし、180〜200℃とすることが好ましい。熱処理温度が160℃未満であると、例えば、流動開始温度が120〜130℃のバインダー成分を用いた場合、バインダー成分は一部が軟化しているのみであり、バインダー成分全てが十分に溶融軟化していないため、バインダー成分としての機能を十分に発揮することができず、繊維同士を強固に接着できないため、本発明が目的とする固綿を得にくい。すなわち、一部のバインダー成分のみが機能するのではなく、ほぼ全てのバインダー成分が十分に溶融軟化してその機能を十分に発揮しなければ、構成繊維間の接着強力が劣り、加重をかけた際にその重みに耐えられず、繊維間の空隙を保持する役割を担うことができない。本発明では、バインダー成分である流動開始温度が90〜130℃の非晶性共重合ポリエステルに対して、160〜210℃の熱処理が施すことにより、バインダー成分の一部を軟化するのではなく、バインダー成分のほぼ全てを溶融軟化させることにより、固綿内の構成繊維間における接点で、強固に接着された接着点を形成し、荷重が加わった場合でも、繊維間の空隙を保持した状態を維持することができるため、反発性を有する固綿となり、また、荷重が解除されれば、もとの嵩高な状態に回復することができる。また、例えば、結晶性のバインダー成分であれば、熱処理温度は、その結晶性のバインダー成分が有する融点よりも10℃程度高い温度に熱処理温度を設定するのが通常であるが、本発明に用いるバインダー成分は、明確な融点を持たない非晶性であるため、ポリマーの軟化点よりも10℃程度高い温度で熱処理を施すのではなく、160〜210℃の温度範囲(50℃の範囲内)から、混合するポリエステル短繊維の性能や熱処理機の性能等に応じて、自由に熱処理温度を選定することができ、十分な接着強度を得ることができる。また、熱処理温度が160℃未満であると、ポリエステル短繊維が、目的とするスパイラル捲縮が顕在化しにくい傾向となる。なお、熱処理温度が210℃を超えると、ポリエステル短繊維が熱の影響を受けて劣化しやすくなり、顕れた捲縮形態が劣化するため所望の嵩高で軽量な固綿が得られにくくなる。
熱処理は、熱風乾燥機、連続熱処理機等の公知の熱処理機を用いればよい。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
1.融点
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。
2.流動開始温度
フロテスター(島津製作所CFT−500型)を用い、加重100Kgf/cm、ノズル径0.5mmの条件で、初期温度50℃より10℃/分の割合で昇温していき、ポリマーがダイから流出し始める温度として求めた。
3.極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
4.繊度
JIS L1015 8.5.1 A法に準じて測定した。
5.繊維長
JIS L1015 8.4.1 C法に準じて測定した。
6.強度、伸度
JIS L1015 8.7.1 C法に準じて測定した。
7.捲縮数
JIS L1015 8.12.1 に準じて測定した。なお、ポリエステル短繊維の熱処理後に発現するスパイラル捲縮については、ポリエステル短繊維を無加重下の状態で、所定の温度に設定した熱風乾燥機内で4分間処理して、スパイラル捲縮を顕在化させ、この顕在化した捲縮数をJIS L1015 8.12.1 に準じて測定した。
8.捲縮率
JIS L1015 8.12.2 に準じて測定した。
9.固綿の特性値および評価方法
(1)目付(g/m
得られた固綿を一中夜常温で放置した後に100mm×100mm角に切りだしたサンプルを10個準備し、個々の重量を測定し四捨五入にて10の位にまとめて個々の目付とし、さらに10個の平均値を目付の代表値とした。
(2)厚み(mm)
(1)のサンプルを使用して、1.96KPaの加重をかけて10分経過後に中央部の厚みを測定し、四捨五入にて1の位にまとめて個々の厚みT(mm)とし、さらに10個の平均値を厚みの代表値とした。
(3)密度(Kg/m
目付および厚みのデーターをもとに算出し、四捨五入にて小数点以下1の位にまとめて個々の密度とし、さらに10個の平均値を密度の代表値とした。
(4)重加重嵩保持率(%)
得られた固綿を一中夜常温で放置した後に100mm×100mm角に切りだしたサンプルを5個準備し、個々の厚みT(mm)を測定した。
個々のサンプルに6.54KPaの加重をかけて1時間経過後に中央部の厚みを測定し、四捨五入にて1の位にまとめて個々の厚みT(mm)とし、式1にて算出した値を四捨五入にて小数点以下1位まとめ個々の保持率とし、さらに5個の平均値を四捨五入にて小数点以下1の位にまとめ保持率の代表値とした。なお、重荷重嵩保持率が90%以上のものを、嵩保持性に優れた固綿とした。
重加重嵩保持率(%) =[(T−T)/T0]× 100 (%)
(5)嵩回復率(%)
上(4)の測定方法において、重荷重厚みを測定したサンプルの加重をはずし常温中で1時間放置した後に、上(2)に記載の方法で厚みを測定し、四捨五入にて1の位にまとめて個々の厚みT(mm)とし、式2にて算出した値を四捨五入にて小数点以下1位まとめ個々の保持率とし、さらに5個の平均値を四捨五入にて小数点以下1の位にまとめ保持率の代表値とした。なお、嵩回復率が98%以上のものを、嵩保持性およびクッション性に優れた固綿とした。
嵩回復率(%) =[(T0−T2)/T0]×100
(6)繰り返し圧縮嵩保持率(%)
得られた固綿を一中夜常温で放置した後に100mm×100mm角に切りだしたサンプルを5個準備し、個々の厚みT(mm)を測定した。これらのサンプルを、圧縮試験機(大栄科学精器製作所製)にて、常温下で80000回の50%圧縮繰り返し処理をし、常温で1時間放置した後に個々の厚み(T)を測定し、下式にて算出した値を四捨五入にて小数点以下1位まとめ個々の保持率とし、さらに5個の平均値を四捨五入にて小数点以下1位まとめ保持率の代表値とした。繰り返し圧縮嵩保持率が80%以上のものを、嵩保持性およびクッション性に優れた固綿とした。
繰り返し圧縮嵩保持率 = [(T0−T3)/T0]×100
実施例1
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを用い、ポリマーBとして、流動開始温度95℃、極限粘度0.56のイソフタル酸を40mol%共重合したポリエステルを用いた。複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量489g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数560の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.39倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長51mm、強度3.1cN/dtex,伸度45%、捲縮数10.0ケ/25mm、捲縮率11.0%の芯鞘型複合短繊維を得た。得られた芯鞘型複合短繊維をバインダー短繊維とした。
一方、ポリエステル短繊維として、中空サイドバイサイド複合短繊維(ユニチカ社製 <H38F>6.6T51、融点256℃、強度3.4cN/dtex,伸度60%、捲縮数9ケ/25mm、捲縮率22%)を用いた。なお、このポリエステル短繊維は、熱処理条件160℃×4分により12.7ケ/25mm、熱処理条件210℃×4分により16.4ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものであり、後述する熱接着条件(180℃×4分)では、13.9ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものである。
ポリエステル短繊維とバインダー短繊維の質量比を50/50として、カード機で解繊、混綿をおこない200g/mのカードウェブを得た。得られたウェブを4枚重ねにし、40mmの厚み規制をかけながら、180℃、風量60m/分、4分間の熱処理を熱風乾燥機を用いて施し、固綿を得た。
実施例2〜6、比較例1〜3
熱処理条件を表1に示す温度に変更した以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。なお、ポリエステル短繊維は、潜在捲縮が顕在化し、実施例2の熱処理温度(190℃)では15.1ケ/25mm、実施例3の熱処理温度(160℃)では12.7ケ/25mm、実施例4の熱処理温度(170℃)では13.2ケ/25mm、実施例5の熱処理温度(200℃)では16.7ケ/25mm、実施例6の熱処理温度(210℃)では16.4ケ/25mm、比較例1の熱処理温度(140℃)では9.8ケ/25mm、比較例2の熱処理温度(150℃)では10.5ケ/25mm(比較例2)、比較例3の熱処理温度(220℃)では10.0ケ/25mm(比較例3)のスパイラル捲縮を発現するものであった。
実施例7〜10
ポリエステル短繊維とバインダー短繊維の比率を表1に示す質量比率に変更した以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。
実施例11
ポリエステル短繊維として、サイドバイサイド複合短繊維(ユニチカ社製 <H38F>14T×51 融点256℃、強度2.8cN/dtex、伸度60%、捲縮数9.5ケ/25mm、捲縮率25%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。なお、このポリエステル短繊維は、熱処理条件160℃×4分により13.0ケ/25mm、熱処理条件210℃×4分により17.0ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものであり、熱接着条件(180℃×4分)では、15.0ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものである。
実施例12
ポリエステル短繊維として、サイドバイサイド複合短繊維(ユニチカ社製 <H38F>33T×51 融点256℃、強度3.3cN/dtex、伸度55%、捲縮数7ケ/25mm、捲縮率27%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。なお、このポリエステル短繊維は、熱処理条件160℃×4分により13.5ケ/25mm、熱処理条件210℃×4分により18.3ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものであり、熱接着条件(180℃×4分)では、15.8ケ/25mmのスパイラル捲縮を発現するものである。
実施例13
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを用い、ポリマーBとして、流動開始温度95℃、極限粘度0.56のイソフタル酸を40mol%共重合したポリエステルを用いた。複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量918g/min、紡糸速度1030m/minの条件で、ホール数639の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.17倍、延伸温度65℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度4.4dtex、繊維長51mm、強度3.2cN/dtex,伸度45%、捲縮数10.0ケ/25mm、捲縮率15.0%の芯鞘型複合短繊維を得た。
得られた芯鞘型複合短繊維をバインダー短繊維として用いたこと以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。
実施例14
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを用い、ポリマーBとして、流動開始温度130℃、極限粘度0.57のイソフタル酸を33mol%共重合したポリエステルを用いた。複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量446g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数560の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.09倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長51mm、強度4.0cN/dtex,伸度45%、捲縮数10ケ/25mm、捲縮率12.0%の芯鞘型複合短繊維を得た。
得られた芯鞘型複合短繊維をバインダー短繊維として用いたこと以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。
実施例15〜16
熱処理時の厚み規制値を表1に記載した値に変更した以外は、実施例1と同様にして固綿を得た。
実施例17
実施例1で得られた200g/mのカードウェブを2枚重ねにし、20mmの厚み規制をかけながら、180℃、風量60m/分、4分間の熱処理を施して固綿を得た。
比較例4
実施例1で得られた200g/mのカードウェブを8枚重ねにし、40mmの厚み規制をかけながら、130℃、風量60m/分、4分間の熱処理を施して固綿を得た。
評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例で得られた固綿は軽量で嵩保持性およびクッション性に優れたものであった。なかでも実施例1〜2、5、11〜14の固綿は、特に優れたものであった。なお、実施例9の固綿は、バインダー短繊維の比率が低かったためバインダー成分による繊維間接着がやや弱くなり、他の実施例のものと比較して、嵩保持性およびクッション性のやや乏しいものとなった。実施例10の固綿は、ポリエステル短体繊維の比率が低かったため、他の実施例のものと比較して、固綿の嵩が減少し密度が高くなり軽量性のやや乏しいものとなった。
一方、比較例1、2の固綿は、熱処理温度が低かったため、ポリエステル短繊維の捲縮形態が十分に発現されず、バインダー成分が十分に機能せずに繊維間接着が弱くなり、嵩保持性およびクッション性の乏しいものとなった。比較例3の固綿は、熱処理温度が高すぎたためポリエステル短繊維の捲縮形態に劣化がおき、固綿の嵩が減少し密度が高くなり軽量性の乏しいものとなった。比較例4の固綿は、本発明の目的とする嵩高保持性およびクッション性を満足するには、固綿の目付を約2倍にする必要があり、軽量なものではなかった。

Claims (6)

  1. ポリエステル短繊維と、バインダー短繊維とを混合し、熱処理を施すことにより、バインダー短繊維のバインダー成分により構成繊維同士を熱接着させて固綿を得る方法であって、
    バインダー短繊維は、非晶性共重合ポリエステルと結晶性ポリエステルとが複合してなる複合型繊維であり、該非晶性共重合ポリエステルは流動開始温度が90〜130℃であるバインダー成分であり、
    ポリエステル短繊維は、潜在捲縮能を有し、熱接着のための熱処理が施されることにより、スパイラル捲縮を発現するものであり、熱接着のための熱処理温度で発現する捲縮数が12〜20ケ/25mmであり、
    熱接着のための熱処理温度を160〜210℃とすることを特徴とする固綿の製造方法。
  2. バインダー短繊維を構成するバインダー成分におけるジカルボン酸成分が、テレフタル酸とイソフタル酸とからなることを特徴とする請求項1記載の固綿の製造方法。
  3. ポリエステル短繊維の単糸繊度が3.3デシテックス以上、バインダー短繊維の単糸繊度が6.6デシテックス以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の固綿の製造方法。
  4. ポリエステル短繊維とバインダー短繊維との質量比が、70/30〜30/70(ポリエステル短繊維/バインダー短繊維)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固綿の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の固綿の製造方法により得られた固綿。
  6. 密度30Kg/m以下、6.54KPa加重下で1時間経過後の重荷重嵩保持率が90%以上、80000回50%圧縮繰り返し試験後の繰り返し圧縮嵩保持率が80%以上、6.54KPa加重除去後の嵩回復率が98%以上であることを特徴とする請求項5記載の固綿。
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