JP2013057373A - デュアルクラッチ式自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クラッチC1,C2の断接状態を逆転させる変速中においてエンジン制御で適用される要求トルクに基づき両クラッチトルクを制御する一方、変速中にアクセルが踏み増しされたとき、要求トルクのステップ的な増加に対して遅れをもって追従する実エンジントルクの立ち上がりに近似して増加するように要求トルクをフィルタ回路29でなまし処理し、処理後の要求トルクに基づきクラッチトルクを制御する。
【選択図】図3
Description
このような並行軸式の自動変速機の不具合を解決すべく、所謂デュアルクラッチ式自動変速機が実用化されている。このデュアルクラッチ式自動変速機は、エンジンなどの走行動力源に対して、第1クラッチを介して複数の奇数変速段からなる第1歯車機構を連結すると共に、第2クラッチを介して複数の偶数変速段からなる第2歯車機構を連結し、これらの2系統の駆動経路を選択的に介してエンジンからの駆動力を駆動輪側に伝達し得るように構成されている。
一方、エンジン回転速度を指標としてクラッチトルクを制御する特許文献1の技術とは別に、エンジントルクを指標とする技術も実施されている。指標としてエンジントルクを用いるのは、両クラッチがエンジンからのトルクを分担して伝達しており、この点についてはクラッチ断接状態の逆転によりトルク分担が変化する変速中でも相違ないことを鑑みたものである。
このような状況では実エンジントルク、換言すれば両クラッチを介して実際に伝達されているトルクが低いにも拘わらず、それよりも高い要求トルクに基づきクラッチトルクが制御されることになる。結果として、クラッチの滑りの抑制のためにそれぞれのクラッチトルクがステップ的に増加方向に設定されて、両クラッチが共に接続方向に急速に制御されることによりショックを発生するという問題があった。
言うまでもなく、エンジン回転速度を指標としてクラッチトルクを制御する特許文献1の技術では以上の不具合は解決できないことは明らかである。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、変速中にアクセル踏み増しがなされても両クラッチの断接状態をショックなく円滑に逆転でき、もって良好な変速フィーリングを実現することができるデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置を提供することにある。
従って、変速中において要求トルクに対して実エンジントルクが追従遅れを生じている期間であっても、両クラッチを介して実際に伝達されているトルクに対して略一致するなまし処理後の要求トルクに基づきクラッチの伝達トルクが制御される。このため、それぞれの伝達トルクは過剰な要求トルクに基づき増加方向にステップ的に制御されることなく、なまし処理後の要求トルクの増加と対応するように緩やかに増加方向に制御される。よって、クラッチの急接によるショックを防止した上で、変速中のアクセル踏み増しに起因するクラッチ滑りを抑制して円滑に変速を完了でき、良好な変速フィーリングを実現することができる。
以下、本発明を具体化したデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置の第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置を示す全体構成図である。車両には走行動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)1が搭載されている。エンジン1は、加圧ポンプによりコモンレールに蓄圧した高圧燃料を各気筒の燃料噴射弁に供給し、各燃料噴射弁の開弁に伴って筒内に噴射する所謂コモンレール式機関として構成されている。
言うまでもないが、変速機2の変速段は上記に限ることなく任意に変更可能である。
周知のようにデュアルクラッチ式変速機は、奇数変速段と偶数変速段とを相互に独立した動力伝達系として設け、何れか一方で動力伝達しているときに他方を次に予測される次変速段に予め切り換えておくことで、動力伝達を中断することなく次変速段への切換を完了するシステムである。
これにより変速機2は、相互に独立したクラッチC1及び歯車機構G1からなる動力伝達系とクラッチC2及び歯車機構G2からなる動力伝達系とを備えている。
インナクラッチC1及びアウタクラッチC2にはそれぞれ油圧シリンダ3が接続され、両油圧シリンダ3は電磁弁4が介装された油路5を介して油圧供給源6に接続されている。電磁弁4の開弁時には油圧供給源6から油路5を介して油圧シリンダ3に作動油が供給され、油圧シリンダ3が作動して対応するクラッチC1,C2が接続状態から切断状態に切り換えられる。一方、電磁弁4が閉弁すると、作動油の供給中止により油圧シリンダ3が作動しなくなることから、クラッチC1,C2は図示しないプレッシャスプリングにより切断状態から接続状態に切り換えられる。
また、変速機2の奇数変速段の歯車機構G1及び偶数変速段の歯車機構G2にはそれぞれギヤシフトユニット7が設けられている。図示はしないがギヤシフトユニット7は、歯車機構G1,G2内の各変速段に対応するシフトフォークを作動させる複数の油圧シリンダ、及び各油圧シリンダを作動させる複数の電磁弁を内蔵している。ギヤシフトユニット7は油路8を介して上記した油圧供給源6と接続されており、各電磁弁の開閉に応じて油圧供給源6からの作動油が対応する油圧シリンダに供給され、その油圧シリンダが作動してシフトフォークを切換操作すると、切換操作に応じて対応する歯車機構G1,G2の変速段が切り換えられる。
E/G―ECU11の入力側には、エンジン1の回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ22、アクセルペダル26の操作量θaccを検出するアクセルセンサ27、車速Vを検出する車速センサ28などのセンサ類が接続されている。E/G―ECU11の出力側には、図示はしないが、エンジン1に付設されたコモンレール蓄圧用の加圧ポンプや各気筒の燃料噴射弁などのデバイス類が接続されている。
なお、このようにエンジン1側と変速機2側とに個別にECU11,12を設けることなく、共通のECUによりエンジン1及び変速機2を共に制御するようにしてもよい。
また、T/M−ECU12は、例えばレバー位置センサ24によりチェンジレバー9のDレンジ(ドライブレンジ)への切換が検出されているときには自動変速モードを選択し、アクセル操作量θacc及び車速センサ28により検出された車速Vに基づき、図示しないシフトマップから決定した目標変速段を達成すべく変速制御を実行すると共に、目標変速段への変速に先だって車両の加減速などから予測した次変速段へのプリセレクトを行う。
このような変速時のクラッチ断接状態の逆転は、切断側のクラッチトルク(伝達トルク)を100-0%に連続的に低下させると共に、接続側のクラッチトルクを0-100%に連続的に増加させることで行われる。また、変速中のクラッチトルクは上記E/G―ECU11から入力される要求トルクに基づき制御され、例えば変速中にアクセルが踏み増しされると、要求トルクの増加に応じて双方のクラッチトルクが増加側に制御されてクラッチ滑りの抑制が図られる(変速中クラッチ制御手段)。
そこで、本実施形態では、E/G―ECU11側から入力される要求トルクの立ち上がりをフィルタ処理により緩慢化する対策を講じており、以下、当該対策について詳述する。
フィルタ回路29は、以下に述べる特性に設定されている。
E/G―ECU11側では、運転者の要求トルクを達成するようにレール圧制御や燃料噴射制御を実行しているが、これらのエンジン制御の応答性に起因し、要求トルクに対して実エンジントルクは遅れをもって追従している。このため従来技術を示す図6のように、T/M−ECU12側では、変速中にアクセル踏み増しにより破線で示す要求トルクがステップ的に増加したとき、実線で示す実エンジントルクは追従せずに遅れをもって立ち上がり、両者間に過渡的に大きな差が生じてショック発生の要因となる。本実施形態では、このときの実エンジントルクの立ち上がり特性に基づき、この特性に近似して要求トルクをなまし処理できるようにフィルタ回路29の特性が設定されている。
但し、実エンジントルクに近似できるものであれば、フィルタ回路29の設定はこれに限るものではない。例えば、立ち上がりの緩急に対しては時定数で対応する他に、移動平均や単位時間当たりの増加量を限定するなど手法で対応してもよいし、増加過程に対しては、一次遅れフィルタに代えて二次遅れフィルタを用いてもよい。
以上のように設定されたフィルタ回路29により要求トルクがなまし処理されることにより、変速中にアクセルの踏み増しがなされると、E/G―ECU11側から入力される要求トルクはステップ的に増加するものの、図3のタイムチャートに破線で示すようにフィルタ後の要求トルクは、実線で示す実エンジントルクの立ち上がり特性に近似するようにより緩やかに増加する。
また、以上の説明から明らかなように、従来技術の制御装置に比較してT/M−ECU12にフィルタ回路29を追加するだけであり、E/G―ECU11の出力情報(実エンジントルク及び要求トルク)は何ら変更していない。このためE/G―ECU11を仕様変更する必要は一切なく、T/M−ECU12側にフィルタ回路29を追加するだけの小変更により対応でき、最小限のコストで実施することができる。
実エンジントルクの立ち上がり特性は切換点Tを境界として2つのトルク領域に区分されており、実線で示すように実エンジントルクはアクセル踏み増しの開始から切換点Tに達するまでの領域E1で急激に増加し、切換点Tを越えた領域E2では緩やかに増加する。このような立ち上がり特性は、切換点T以上の領域E2での急激に実エンジントルクを増加させると甚だしい排ガス特性の悪化を招くことを考慮した対策である。そして、図中に二点差線で示した第1実施形態のフィルタ後の要求トルクでは、切換点Tを境界とする双方の領域E1,E2で要求トルクを実エンジントルクに近似させることはできない。そこで、以上の点を考慮した対策を第2実施形態として以下に説明する。
本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置の構成は、図1,2に基づき述べた第1実施形態のものと同様であり、相違点はフィルタ回路29の機能にある。そこで、共通する構成の箇所は同一部材番号を付して説明を省略し、相違点であるフィルタ回路29の機能について詳述する。
本実施形態のフィルタ回路29は、上記切換点Tを境界とする双方の領域E1,E2の実エンジントルクの立ち上がり特性に基づき、2種のフィルタ特性が設定されている。具体的にはフィルタ回路29は、切換点T未満の領域E1での実エンジントルクの急激な増加に近似して要求トルクをなまし処理する第1の時定数、及び切換点T以上の領域E2での実エンジントルクの緩やかな増加に近似して要求トルクをなまし処理する第2の時定数が設定され、これらの時定数を任意に切換可能に構成されている。フィルタ回路29の時定数の切換は切換点Tを閾値として実行され、切換点T未満の領域E1では第1の時定数が用いられ、切換点T以上の領域E2では第2の時定数が用いられる。
なお、本実施形態では、実エンジントルクの2段階の立ち上がり特性に対応してフィルタ回路29に2種の時定数を設定したが、エンジン仕様に応じて実エンジントルクの立ち上がり特性が3段階以上になる場合には、それに応じて時定数を設定すればよい。
12 T/M−ECU(変速中クラッチ制御手段)
29 フィルタ回路(フィルタ手段)
C1,C2 クラッチ
G1,G2 歯車機構
E1,E2 領域
Claims (2)
- 複数の変速段からなる一対の歯車機構をそれぞれクラッチを介して走行動力源側と接続し、一方のクラッチを接続して対応する一方の歯車機構の変速段を介した動力伝達中に他方の歯車機構を予め次変速段に切り換えるプリセレクトを実行し、該プリセレクト後に上記両クラッチの断接状態を逆転させて上記次変速段への切換を完了するデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置において、
上記クラッチの断接状態を逆転させる変速中に、上記走行動力源の制御に適用される運転者の要求トルクに基づき両クラッチの伝達トルクをそれぞれ制御して、切断側のクラッチの伝達トルクを連続的に低下させ、接続側のクラッチの伝達トルクを連続的に増加させると共に、該変速中のアクセル踏み増しによる上記要求トルクの増加に応じて、クラッチ滑りを防止すべく上記両クラッチの伝達トルクを増加方向に制御する変速中クラッチ制御手段と、
上記アクセル踏み増しによる要求トルクの増加に対して遅れをもって追従する上記走行動力源の実トルクの立ち上がり特性と近似するように、上記要求トルクをなまし処理するフィルタ手段とを備え、
上記変速中クラッチ制御手段は、上記フィルタ手段によるなまし処理後の要求トルクに基づき上記両クラッチの伝達トルクを制御することを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置。 - 上記フィルタ手段は、上記走行動力源の実トルクの立ち上がり特性が複数のトルク領域毎に異なるとき、各トルク領域での立ち上がり特性に対応して順次上記要求トルクをなまし処理することを特徴とする請求項1記載のデュアルクラッチ式自動変速機の制御装置。
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