JP2013055127A - 磁性薄膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】スパッタリング法等により形成される不規則なA1構造を有するFe−Pt系合金薄膜を、熱処理以外の方法により規則化させてL1構造を有するFe−Pt系合金磁性薄膜にすることができる手段を提供すること。
【解決手段】Fe−Pt合金に特定量のPを単独で配合するか或いは特定量のCu又は特定量のCu及びAgと共に配合すると、電子線照射により、熱処理することなく、規則化を行うことができるFe−Pt系合金薄膜を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ハードディスク等に代表される磁気記録媒体において有用な磁性薄膜及びその製造に使用しうるスパッタリングターゲット材に関する。
ハードディスク等に代表される磁気記録媒体は、従来、水平磁気記録方式が採用されていたが、近年、記録容量の増加の要求が強まり、現在では、より高密度化が可能な垂直磁気記録方式が主流となっている。
記録容量を高密度化するためには、磁性層中に記録されている磁区を小さくする必要があり、垂直磁気記録方式は、水平記録方式よりも磁区を小さくすることができ、より高密度化が可能となる。
磁気記録は、磁区の磁化方向に行われるが、高密度化が進むにつれ磁区が小さくなり、周囲温度の変化による熱揺らぎエネルギーでさえも磁化方向が反転し、記録が消去されることがある。磁化方向の変化は、磁化されている磁区がもつ磁気異方性エネルギー(磁気異方性エネルギー密度Ku×磁区の体積V)が熱揺らぎエネルギーよりも小さくなり磁化方向を維持することができなくなる場合に起こる。
熱揺らぎエネルギーによる磁化方向の変化を抑制しつつ高密度記録を達成するためには、磁性層の磁気異方性エネルギーKuの大きな磁性材料を使用する必要がある。
磁気異方性エネルギーKuの大きな磁性材料として、L1構造を有するFe−Pt合金が知られており、現在、該合金の利用が盛んに進められている。
Fe−Pt系合金は、スパッタリング法等で成膜した場合、不規則なA1構造(fcc構造)となり、この状態では大きな磁気異方性エネルギーが得られないため、規則化させてL1構造(fct構造)にする必要がある。Fe−Pt系合金膜の規則化は、通常、熱処理により行われるが、Fe−Pt二元合金を規則化する場合、最低でも500〜600℃の熱処理温度が必要であり、成膜に際して一般に使用されているガラス基板やアルミ基板などの基板は、該温度で変形するため使用することができないという問題がある。
そのために、Fe−Pt系合金の規則化温度を低下させることが種々試みられており、例えば、特開2008−60347号公報には、400℃以下の熱処理温度で規則化が可能な磁性薄膜が開示されている。
特開2008−60347号公報
本発明の目的は、スパッタリング法等により形成される不規則なA1構造を有するFe−Pt系合金薄膜を、熱処理以外の方法により規則化させてL1構造を有するFe−Pt系合金磁性薄膜にすることができる手段を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、今回、Fe−Pt合金に特定量のPを単独で配合するか或いは特定量のCu又は特定量のCu及びAgと共に配合すると、電子線照射により、熱処理することなく、Fe−Pt系合金薄膜の規則化を行うことができることを発見し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、薄膜の組成が1at%より多く5at%以下のP、35〜60at%のFe及び35〜60at%のPtからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜を提供するものである。
本発明は、また、薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPt及び2〜22at%のCuからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜を提供するものである。
本発明は、さらに、薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPtならびに2〜22at%のCu及びAgからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜を提供するものである。
本発明の磁性薄膜では、Fe−Pt系合金薄膜を電子線照射により規則化することができるため、スパッタリング法などの薄膜化に際して従来使用することができなかった熱変形しやすい基板を使用することが可能となり、また、従来の熱処理では難しかった規則化すべき個所や面積を自由に選択することができる。
比較例1の合金薄膜の電子線照射前のX線回折図 比較例7の合金薄膜の電子線照射前のX線回折図 実施例1の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例2の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例3の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例4の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例5の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例6の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例7の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例8の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例9の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例10の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例11の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例12の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例1の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例2の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例3の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例4の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例5の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例6の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例7の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 比較例8の合金薄膜の電子線照射後のX線回折図 実施例1の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例2の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例4の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例6の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例7の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例8の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例9の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例11の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 実施例12の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例2の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例3の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例4の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例5の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例6の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 比較例7の電子線照射後の合金薄膜の表面状態(SEM) 照射電流:1×10−7A時の実施例9の電子線照射後の合金薄膜の表面状態 照射電流:1×10−8A時の実施例9の電子線照射後の合金薄膜の表面状態 照射電流:1×10−9A時の実施例9の電子線照射後の合金薄膜の表面状態 照射電流:1×10−10A時の実施例9の電子線照射後の合金薄膜の表面状態
以下、本発明の磁性薄膜について、さらに詳細に説明する。
本発明の一態様によれば、35〜60at%、好ましくは40〜60at%、さらに好ましくは40〜55at%のFe及び35〜60at%、好ましくは40〜60at%、さらに好ましくは40〜55at%のPtをベースとし、これに1at%より多く5at%以下のPを添加し、残部の不可避不純物と併せて合計で100at%となるようにしてなる三元系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部をA1構造からL1構造に変化させることができる磁性薄膜が提供される。
Pの添加量(含有量)が1at%以下の場合、得られる合金薄膜に電子線を照射しても実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができず、反対に、Pの添加量(含有量)が5at%を越えた場合にも、同様に、得られる合金薄膜に電子線を照射しても実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができない。しかして、Pの添加量(含有量)は、好ましくは1.2〜4.5at%、さらに好ましくは1.5〜4.5at%とすることができる。
本発明の別の態様によれば、30〜60at%、好ましくは35〜60at%、さらに好ましくは35〜55at%のFe及び30〜60at%、好ましくは35〜60at%、さらに好ましくは35〜55at%のPtをベースとし、これに2at%より多く10at%以下のPと2〜22at%のCuを添加し、残部の不可避不純物と併せて合計で100at%となるようにしてなる四元系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部をA1構造からL1構造に変化させることができる磁性薄膜が提供される。
Pの添加量(含有量)が2at%以下の場合、得られる合金薄膜に電子線を照射しても
実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができず、反対に、Pの添加量(含有量)が10at%を越えると、得られる合金薄膜に電子線を照射しても実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができないか、できたとしても、十分な保磁力が得られない。しかして、Pの添加量(含有量)は、好ましくは2.5〜8at%、さらに好ましくは2.5〜7at%とすることができる。また、Cuの添加量(含有量)が2at%未満の場合、保磁力がCuを添加しない場合と変わらず、逆に、Cuの添加量(含有量)が22at%を越えると、十分な保磁力が得られない。しかして、Cuの添加量(含有量)は、好ましくは2.5〜20at%、さらに好ましくは2.5〜15at%とすることができる。
本発明の本態様に従いFe−Pt系合金にPに加えてCuを添加することにより、成膜後の薄膜に電子線を照射して規則化したとき、c面配向の強いL1構造を有する磁性薄膜を得ることができる。
本発明のさらに別の態様によれば、30〜60at%、好ましくは35〜60at%、さらに好ましくは35〜55at%のFe及び30〜60at%、好ましくは35〜60at%、さらに好ましくは35〜55at%のPtをベースとし、これに2at%より多く10at%以下のPと合計で2〜22at%のCu及びAgを添加し、残部の不可避不純物と併せて合計で100at%となるようにしてなる五元系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部をA1構造からL1構造に変化させることができる磁性薄膜が提供される。
Pの添加量(含有量)が2at%以下の場合、得られる合金薄膜に電子線を照射しても実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができず、反対に、Pの添加量(含有量)が10at%を越えると、得られる合金薄膜に電子線を照射しても実質的に薄膜の結晶構造の規則化を行うことができないか、できたとしても、十分な保磁力が得られない。しかして、Pの添加量(含有量)は、好ましくは2.5〜8at%、さらに好ましくは2.5〜7at%とすることができる。また、Cu及びAgの合計添加量(含有量)が2at%未満の場合、保磁力がCu及びAgを添加しない場合と変わらず、逆に、Cu及びAgの添加量(含有量)が22at%を越えると、十分な保磁力が得られない。しかして、Cu及びAgの合計添加量(含有量)は、好ましくは2.5〜20at%、さらに好ましくは2.5〜15at%とすることができる。
また、Cu及びAgを組合せて使用する場合のCuとAgの相対的割合には特に制限はなく、広い範囲にわたって変えることができるが、Cu/Agの原子比で、一般に1/21〜21/1、特に1/19〜19/1、さらに特に1/14〜14/1であることが好ましい。
本発明の本態様に従いFe−Pt系合金にPに加えてCuとAgを添加することにより、成膜後の薄膜に電子線を照射して規則化したとき、c面配向の強いL1構造からランダム配向に近いL1構造を有する磁性薄膜を得ることができる。したがって、Agの添加量を変えることにより、形成される薄膜の規則化後の結晶配向をコントロールすることができる。
Fe−Pt系合金薄膜は、通常、熱処理により不規則相であるA1構造(fcc構造)から規則相であるL1構造(fct構造)に変化するが、本発明の合金薄膜は、電子線照射により照射した個所及びその近傍のみをL1構造に変化させることができるので、基板に対する制約が少なくなり、かつ合金薄膜を任意形状でしかも合金薄膜の希望する特定の部位のみを選択的に不規則相であるA1構造から規則相であるL1構造に変化させることができる。
本発明の合金薄膜は、上記の三、四又は五元系合金をスパッタリングターゲット材として用い、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法により薄膜状に成膜することにより製造することができる。
スパッタリング法による合金薄膜の製造は、例えば、高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法等により行なうことができ、具体的には、例えば、スパッタリング装置に、所定のスパッタリングターゲット材と薄膜を成膜する基板をセットし、基板を加熱しない又は約400℃まで基板を加熱して行うことができる。
その際に使用されるスパッタリングターゲット材は、Fe−Pt−Pの三元系、Fe−Pt−P−Cuの四元系又はFe−Pt−P−Cu−Agの五元系合金からなる単一の焼結ターゲット材であってもよく、或いは例えば、Ptスパッタリングターゲット上に、Fe−Cu合金チップ、Cu−Ag合金チップ、Fe−Cu−Ag合金チップ、Fe−P合金チップ、Fe−Cu−P合金チップ、Fe−Cu−Ag−P合金チップ等の少なくとも1種を前記の組成割合となるようにして載せるか又は埋め込んだ複合ターゲット材であってもよい。また、Fe、P、Cu又はAgを単体で複合ターゲットの一部として使用することもできる。
上記の焼結ターゲット材及び合金チップは、Fe、Pt、P、Cu及びAgを適宜所定の割合で組み合わせ、焼結法で製造する場合、各元素の粉末を所定量混合し、混合粉を圧粉し真空または不活性ガス雰囲気下で焼結、または混合粉をホットプレス法や、放電焼結法等により焼結体を作製、その後焼結体を切削等により製造することができる。通常、焼結に使用する純度は、95%以上、特に99%以上のものが好適で、粉末の粒径は500μm以下が好適である。また溶解法で製造する場合は、ガス炉、高周波溶解炉等の適当な金属溶解炉内で溶融し、必要に応じて、型に鋳造し、切削することにより仕上げることにより製造することができる。溶融時の雰囲気は空気で充分であるが、必要に応じて、不活性ガス雰囲気又は真空を用いてもよい。原料として使用されるFe、Pt、P、Cu及びAgは、粒状、板状、塊状等の形態で市販されているものを使用することができるが、通常、純度が99.5%以上、特に99.9%以上のものが好適である。
一方、薄膜を析出させるための基板としては、例えば、結晶ガラス板、ホウケイ酸ガラス板、石英ガラス板、アルミニウム板、MgO板、Si板等が挙げられる。
かくして基板上に形成される合金薄膜は、一般に5〜200nm、好ましくは5〜150nmの範囲内の膜厚を有することができる。
得られる合金薄膜は、通常、不規則なA1構造(fcc構造)を有しており、電子線を照射することにより、規則的なL1構造(fct構造)に変えることができる。
電子線照射は、一般に、電子を電場で加速した電子線を対象物に照射することにより行なうことができる。電子線照射に使用し得る装置としては、例えば、電子線照射装置や、EPMA、SEM、電子線描画装置、電子線露光装置等が挙げられる。
本発明の磁性薄膜は、特に粒子状にする等の特殊な処理を行わなくても高い保磁力を有しているが、場合により、SiO等の無機物と組み合わせることによりグラニュラー構造を形成させた薄膜とすることもできる。
本発明の磁性薄膜は、高い保磁力が要求されるハードディスク等の磁気記録媒体として
有利に使用することができる。上記の如くして形成された磁性薄膜からの磁気記録媒体の製造は、例えば、非磁性基板上に軟磁性層を設けた基板を用い、その上に本発明の磁性薄膜を上記の如くして成膜し、さらにその上に、必要に応じて、保護層、潤滑層等を積層することにより行なうことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜12及び比較例1〜8
Ptターゲット上に、Fe、Pt、P、Cu及びAgがほぼ下記表1に示す割合となるようにして、Fe−P焼結合金チップ、Fe−Cu−P焼結合金チップ、Cuチップ、Agチップ及び/又はAg−P焼結合金チップを載せ複合ターゲット材を作製した。また、Fe、Pt、P、Cu及びAgがほぼ下記表1に示す割合のFe−Pt−Cu−P焼結スパッタリングターゲット材及びFe−Pt−P焼結スパッタリングターゲット材を準備した。
上記の複合ターゲット材又は焼結スパッタリングターゲット材をRFマグネトロンスパッタ装置にセットし、ホウケイ酸ガラス基板上に膜厚約70nmで成膜し、実施例及び比較例のための合金薄膜試料を作製した。
作製した合金薄膜の組成を波長分散型蛍光X線分析装置にて分析した。その結果を下記表1に示す。
成膜直後の基板上の合金薄膜を目視で観察すると、比較例8の膜は大気中に放置するだ
けで基板からの剥離が確認され、その後の処理に耐えられないことから、その後の調査は実施しなかった。
合金薄膜の結晶構造をX線回折により調査した。図1に代表として比較例1の合金薄膜の電子線照射前のX線回折試験結果を示す。
図1に示すように、成膜直後の膜は、(111)面のピークを確認することができるが、その他のピークは確認することができず、不規則構造であるA1構造となっていることがわかる。実施例1〜12及び比較例2〜6の合金薄膜も、ピーク強度に差はあるものの同様の結果となっていることが確認される。
Pを15.3at%という多量で含有する比較例7の合金薄膜は、他の合金薄膜と異なり、(111)面のピークがブロードになり、膜が非晶質のような状態で観察され、Pを多量に添加した場合、膜の性質が他と異なっている。図2に比較例7の合金薄膜のX線回折結果を示す。
Pを比較例7よりもさらに多量に含有する比較例8の合金薄膜もまた、(111)面のピークがブロードなっており、図1と比較しても明瞭に確認できないことが確認された。
次いで、実施例1〜12及び比較例1〜8の合金薄膜に、JEOL社製EPMAを用い、加速電圧20kV、照射電流4〜7×10−7A、電子線径φ3〜5μm及び照射時間8〜10msecの条件下で、ステージ移動により約□5mmになるよう電子線照射した。
実施例1〜12の合金薄膜の電子線照射後のX線回折結果を図3〜14に示す。
図3〜図14の結果から、実施例1〜12の電子線照射後の合金薄膜には、いずれも、L1構造の(001)面のピークが認められた。ただし、P単独添加の実施例1及び2の電子線照射後の合金薄膜は、(001)面のピークが非常に弱く、X線回折図だけでは規則化の有無は確認できなかった。
Cu及びPの両方を含有する実施例3〜11の電子線照射後の合金薄膜はすべて、L1構造の(001)面のピークが認められた。成膜直後のA1構造にはない(001)面のピークが確められたことから、電子線照射により合金薄膜が規則化することが確認できた。Cu及びPにさらにAgを含有する実施例12の電子線照射後の合金薄膜では、c面配向気味のものが、ランダム配向に変化した。
また、実施例6や10の電子線照射後の合金薄膜ように、通常ピーク強度が最も強いとされる(111)面のピークよりも(001)面のピーク強度のほうが高い試料も存在した。c面配向が強い場合、(001)面のピーク強度も強くなる。通常、c面に配向制御する場合、下地層としてRuやMgO層を薄く成膜する方法が用いられるが、上記の結果は、本発明の合金薄膜の場合、非晶質のガラス基板に下地層を形成しなくても、c面配向を強くすることができることを示している。
規則化については、P添加量と(001)面の強度とが必ずしも一致していないが、P量が少ないか又はP量が多いと、(001)面のピーク強度が小さくなる傾向がみられる。
比較例1〜8の合金薄膜の電子線照射後のX線回折結果を図15〜22に示す。
図15〜図21から明らかなとおり、比較例1〜7の電子線照射後の合金薄膜はL1構造の(001)面のピークを確認することができなかった。
唯一異なるX線回折結果(図22)を示す比較例8の電子線照射後の合金薄膜は、L1構造の(001)面のピークを確認することができ、さらに(200)面のピークが強く出ていたことから規則化していると思われる。比較例8の合金薄膜は、成膜直後は非晶質もしくはそれに近い結晶構造であったものが、電子線照射することにより結晶化したと推定される。
(001)面のピークが強い実施例4、6〜9、11及び12の合金薄膜及びX線回折結果だけでは規則化の有無が十分確認できなかった実施例1及び2の合金薄膜ならびに(200)面ピークが確認できた比較例2〜7の合金薄膜の電子線照射後の磁気特性(面内保磁力と垂直保磁力)を測定した。その結果を下記表2に示す。
実施例1、2、4、6〜9、11及び12の電子線照射後の合金薄膜は、面内保磁力が1kOeを超えていない試料もあるが、垂直保磁力はいずれも1kOeを超えており、電子線照射により保磁力が向上していることがわかる。また、実施例1及び2の電子線照射後の合金薄膜は、X線回折では規則化を確認することができなかったが、保磁力が大きくなっている。基本的に、電子線照射により規則化すると垂直方向の保磁力が大きくなっており、c面配向気味の規則化になっている。
CuにさらにAgを添加した実施例12の電子線照射後の合金薄膜は、他の実施例のものよりも面内保磁力が大きくなっており、ランダム配向に近くなっていることがわかる。
他方、比較例2〜6の電子線照射後の合金薄膜は、1kOeを超えるものはなく、比較例2〜6の合金薄膜では、電子線照射により十分な保磁力をもつ磁性薄膜を形成しえないことがわかる。
また、比較例7の電子線照射後の合金薄膜は、X線回折で(001)面のピークを確認することができたが、保磁力の増加は小さいことから、P量が多すぎると、Pが規則化に寄与するとしても、磁気特性の向上には寄与しないと考えられる。
磁気特性調査を行った実施例及び比較例の電子線照射後の磁性薄膜のSEMによる表面観察結果を図23〜図35に示す。SEM写真撮影は、磁性薄膜表面の状態変化がほとんど起こらない条件下(照射電流が低く、かつ照射時間が短い条件下)で行った。
表面観察の結果、電子線照射後の表面はP量が少ないと線状の形態を示し、P量が多いと線状の形態が崩れ、ドット等の形態に変化することがわかった。比較例の磁性薄膜も同様の傾向を示している。
基本的に、規則化の有無、保磁力の大小に関わらず、電子線照射後の合金薄膜の表面状態は変化している。しかして、本発明の電子線照射後の合金薄膜の規則化や保磁力の増大は、単に電子線照射時の熱等の影響によるものではなく、電子線照射の効果そのものであると考えられる。
実施例9の合金薄膜については、さらに、照射電流値を変化させて電子線を照射し、膜の変化を調査した。処理条件は、加速電圧を20kV及び照射時間を10分に固定し、照射電流を1×10−10から1×10−7Aまで変化させた際の膜の表面状態変化を調査した。表面状態のSEM写真を図36〜39に示す。
合金薄膜の電子線照射した箇所は、照射電流値により大きさは変化するが、時間をかければ1×10−10Aでも表面状態が変化することがわかる。

Claims (7)

  1. 薄膜の組成が1at%より多く5at%以下のP、35〜60at%のFe及び35〜60at%のPtからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜。
  2. 薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPt及び2〜22at%のCuからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜。
  3. 薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPtならびに2〜22at%のCu及びAgからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金薄膜であって、電子線照射により薄膜の結晶構造の少なくとも一部がA1構造からL1構造に変化しうる磁性薄膜。
  4. 薄膜の組成が1at%より多く5at%以下のP、35〜60at%のFe及び35〜60at%のPtからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金よりなる薄膜形成用スパッタリングターゲット材。
  5. 薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPt及び2〜22at%のCuからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金よりなる薄膜形成用スパッタリングターゲット材。
  6. 薄膜の組成が2at%より多く10at%以下のP、30〜60at%のFe、30〜60at%のPtならびに2〜22at%のCu及びAgからなり、残りが不可避不純物であるFe−Pt系合金よりなる薄膜形成用スパッタリングターゲット材。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の磁性薄膜を使用してなる磁気記録媒体。
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