JP2013055094A - π電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途 - Google Patents

π電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】前駆体膜を変換して得られた半導体膜の導電率の向上。その有機膜を電極と有機半導体の間に配置することで、電極と半導体層の接触抵抗を低減すること。その結果として、接触抵抗が改善された高性能の電気特性を得ることが可能な電子デバイス用インク組成物ならびにそれを用いた電子デバイス、電界効果トランジスタ、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】電子デバイス用インク組成物であって、少なくともπ電子共役系化合物前駆体と、前記π電子共役系化合物のドーパントと、前記π電子共役系化合物前駆体とドーパントを溶解させる溶媒を含有することを特徴とするインク組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は脱離可能な溶解性基を有するπ電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途、およびその製造方法に関する。
本発明の電子デバイス用インク組成物は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機エレクトロニクス用素材として有用である。
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。
有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への半導体薄膜形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
これまでに、低分子の有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対しきわめて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経るのが一般的である。また、大気安定性にも乏しいため、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスでデバイスを作製できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
最近では、アセン系の縮合多環材料の一つである2,7−ジアルキル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンが、高い溶解性を有し、スピンコート、キャストなどで塗布可能であり、比較的低温の熱処理により、ペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm/V・s程度)を示すことが報告されている。
しかしながら、上記化合物は液晶相を有し、液晶相への転移温度が100℃程度と比較的低く、製膜後の熱処理により膜構造の変化が生じ得るため、有機半導体デバイス作製におけるプロセス適応性に問題がある。
また、有機半導体層の溶解性が高いと、その後のデバイス製造工程において耐溶剤性が低くなるという課題を持つ。
このようななか、溶媒溶解性の高い低分子化合物を半導体前駆体(以下前駆体)とし、これを溶剤などに溶解し塗布プロセスで膜を形成し、その後、半導体に変換して有機半導体膜を得、電界効果トランジスタを作製する方法が報告されている。
例えば、ペンタセンあるいは類似の芳香族炭化水素(非特許文献1)、ポルフィリン(非特許文献2)、オリゴチオフェン(非特許文献3)等を用いた例がある。
上記のペンタセンやポルフィリンは変換後の半導体分子が酸素や水に対して安定ではないため、大気下での取り扱いが難しいという課題はあるものの、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスによる製膜が可能で、比較的高い移動度を示し、かつ、耐溶剤性や耐熱性が高くなるという利点がある。
本発明者らは、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で有機半導体膜を製膜できる溶解性を示し、成膜後は簡単な不溶化処理により不溶化し、その後のデバイス製造の後工程におけるダメージを軽減すると共に、不溶化処理後は良好な半導体特性を示すようになる有機半導体前駆体材料の開発を試みてきた。鋭意検討の結果、良好な移動度を有する縮合多環系の有機半導体材料の開発(特許文献1)、および、溶媒溶解性の高い前駆体の開発(特許文献2,3,4)を報告している。前駆体から半導体へ変換させる方法としては、例えば熱エネルギーを与える方法がある。
上記のような低分子の結晶性有機半導体材料を用いて、高性能のトランジスタを作製するための指針として、チャネル領域の有機半導体層の結晶粒を大きく成長させて結晶粒界によるキャリアのトラップや散乱の影響を少なくすることや、チャネル領域となるゲート絶縁層と有機半導体層との界面におけるキャリアトラップの影響を少なくすることが知られている。
また、有機薄膜トランジスタにおいては、低電圧領域、または、チャネル長が短くなると電極と有機半導体間の接触抵抗が課題となることが知られている。ここでいう接触抵抗とは、ソース/ドレイン電極とチャネル領域の有機半導体層との間の抵抗を意味し、これを低減することが、しきい値電圧の低減や素子性能安定化のために必要となる。
大きな接触抵抗の原因としては、無機材料である電極と有機半導体との接合界面で、オーミック接合が形成されにくく、ショットキー接合となりやすいことが挙げられている。
ここで、オーミック接合面、及び、ショットキー接合面は、有機半導体層とソース/ドレイン電極との間に形成される面であり、有機半導体層を形成する材料のフェルミ準位と、電極を形成する材料のフェルミ準位との関係により決定される。
具体的には、有機半導体がp型半導体である場合には、有機半導体材料のフェルミ準位が電極材料のフェルミ準位よりも高いときには有機半導体層と電極との接合面はオーミック接合面となり、逆に、有機半導体材料のフェルミ準位が電極材料のフェルミ準位よりも低いときには有機半導体層と電極との接合面はショットキー接合面となると説明される。
しかし、有機物と金属の接合界面の状態については今も研究段階であり、詳細は明らかとなっていない。また、電極と有機半導体との接合界面そのものの特性ではなく、接合界面に隣接している有機半導体領域の電気伝導性が低いことが接触抵抗の起源となることも知られている。これは、有機材料そのものが無機材料に比べ電気伝導率が低いことが大きな理由である。
また、デバイス作製プロセス上、接合界面に隣接する領域の半導体層のキャリア移動度がチャネル領域に比べて小さくなる場合がある。例えば、ボトムコンタクト型素子においては、素子作製の際にソース/ドレイン電極を形成した後に有機半導体層を形成させる工程を含むため、絶縁膜と電極の異種表面上で有機半導体の小さな結晶粒を数多く生成させることになり、有機半導体結晶粒を大きく揃えられず電気伝導率が低くなることがある。また、トップコンタクト型素子においては、電極材料の形成プロセス時に有機半導体層がダメージを受けることも報告されている。
上記のような接触抵抗を低減するためには、ソース/ドレイン電極と有機半導体層との接合界面の抵抗を低減することと、接合部に隣接する有機半導体材料の電気伝導率を向上させる必要がある。
このような接触抵抗の課題に対し、無機材料で行なわれているようなドーピングを適用すると接触抵抗の低減に寄与することが知られている。
例えば、アモルファスシリコン層または多結晶シリコン層を用いた電界効果トランジスタの製造中に、ソースおよびドレイン接触部の近傍に位置するシリコン層にリンまたはホウ素を注入することによって、接触領域のドーピングが行なわれる。シリコンネットワークには、リンまたはホウ素原子が組み込まれ、それらがドナー(電子供与性材料)またはアクセプター(電子受容性材料)として機能した結果、伝導に寄与するキャリア密度が増加し、ドープされた領域中のシリコンの電気伝導率が上昇する。
同様に、多数の有機半導体材料についても、適切な不純物を注入(ドーピング)することによって電気伝導率を向上できることが知られている。ここで、ドーピングとはアクセクターまたはドナーをドーパントとして有機半導体に導入することを意味する。少量のアクセプター材料(ドナー材料)が、有機半導体に導入されると、添加されたドーパントは化学反応を起こし、正の(負の)電荷、すなわち、ホール(電子)を生成させる。アクセプターがドープされた輸送層の場合はp型ドーピングであり、ドナーがドープされた層の場合はn型ドープピングという(いずれの用語も無機半導体のドーピングと同様に用いられる)。アクセプターは高い電子親和力を有する化合物で、ドナーは低いイオン化ポテンシャルを有する化合物であるといえる。
上記のようなドーピングの方法や、ドーピングされた有機材料を用いて、電極と有機半導体層との接触抵抗を低減する方法としては、例えば、非特許文献4、特許文献5、6に開示されているものが挙げられる。
非特許文献4では、アクセプター性のドーパントを電極と有機半導体層の間に導入することで、接触抵抗を低減できることを報告している。
特許文献5では、有機半導体層と無機材料からなる電極の間にドーピングされた有機材料の層(中間層)を導入する手法を開示している。ドーピングされた中間層は、電極との界面において電子濃度または正孔濃度を大きく向上させているため、電極とオーミック接触することができるとしている。また、中間層の主成分と有機半導体層の主成分を同一にした場合、中間層と有機半導体層の接合力も向上することを報告している。
特許文献6では、有機半導体及び/または有機導電体の前駆体の層を形成し、半導体層及び/または導電層を形成する方法を開示している。前駆体自体にドーパントとなるようなものを所望により混合することで、前駆体が半導体材料へ変換すると同時にドーパントが作用し、導電性を発現できるとしている。
しかしながら、特許文献5には結晶性有機材料にドーピングして導電率を高めた有機膜を形成する方法については充分に明らかになっているとはいえない。
前述のように、結晶性有機材料を用いて電気伝導率の高い有機膜を作製するためには、結晶粒の制御を行ない移動度を向上させることが必要である。加えて、ドーピングによって電子/正孔濃度を向上させることで、ドーピングされた有機膜の導電率は向上する。したがって、あらかじめドーピング材とドープされる有機材料を混合したのち、ドープされた有機膜を形成する場合には、おおきな結晶粒の成長とドーピングによるキャリア密度の向上を両立するという課題がある。このことは、前駆体を変換して結晶性の有機膜を形成する場合にもいえることで、前駆体の変換および結晶成長の制御が重要となる(非特許文献5)。
前駆体から半導体への変換は、重量変化や体積変化を伴う脱離反応で、変換後の分子間の凝集力が構造形成の駆動力となり、脱離反応に伴って結晶成長することが特徴である。
一般的に、半導体層形成材料のインク液中への易溶解性は嵩高な分子構造に依存しがちであり、付与後のインク層の導電性は、逆に、纏まりある分子構造による易凝集性、高密度化に依存しがちであるので、インクへの溶解性と、このインクを用い形成した半導体層の導電性は、普通相容れないが、この点を、前駆体材料の加熱変換とドーパントのみにより解決しようとしても、ドーパントの使い方が適切でないとすると、満足な結果を得るのは難かしいことが多い。
特許文献6記載の方法でドーパントを前駆体膜中に混合させても、半導体が結晶成長する際にドーパントが結晶核の発生源となって結晶粒界の多い膜を形成することが懸念される。そのため、ドーパントによって半導体膜中のキャリア密度を増加させても、結晶粒界におけるキャリア散乱の影響が大きくなり、結果として充分な電気伝導率が得られない可能性がある。このような問題を避ける方法としては、結晶粒界の少ない半導体層を形成した上で、ドーピングすることが考えられる。
非特許文献6に記載の方法は、半導体層を形成後、ドーパントとなるアクセプター性の材料を真空蒸着によりマスク蒸着することで、半導体膜の表面近傍にドーピングを行なっている。しかしながら、この方法は真空プロセスにより行なわれるため、簡便で低コストなプロセスとはいえない。また、ドーピング後に電極を積層することにより、電極と半導体の接合界面におけるドーピングは可能であるが、半導体膜の深さ方向に渡って均質にドーピングできるのか明らかではない。有機薄膜トランジスタの性能指標としては、高い電流を流すことも重要であるが、接触抵抗を低減させるために導入したドーピングされた有機膜の導電率を均質に制御することが重要である。また、ドーピングされた有機膜とチャネル領域の半導体層の接合部が充分に低抵抗でなければならないことはいうまでもない。
以上のように、これまで結晶性有機半導体材料について均質にドーピングされた有機膜の製造方法について充分な知見があるとはいいがたい。同様に、前駆体から形成された結晶性有機膜に均質にドーピングする方法について充分な知見はない。また、そのような電気導電率を制御した有機膜を、簡便なプロセスかつ、費用効率の高い方法で実現する方法はいまだ明らかとなっていない。
そこで、本発明は、前駆体膜を変換して得られた半導体膜の導電率の向上を目的とする。
その有機膜を電極と有機半導体の間に配置することで、電極と半導体層の接触抵抗を低減することを目的とする。その結果として、接触抵抗が改善された高性能の電気特性を得ることが可能な電子デバイス用インク組成物ならびにそれを用いた電子デバイス、電界効果トランジスタ、およびその製造方法を提供すること目的とする。
このような目的を達成するための本発明の電子デバイス用インク組成物は、少なくともπ電子共役系化合物にドーピング可能なドーパントと、前記π電子共役系化合物前駆体とドーパントおよび前駆体材料を溶解させる溶媒を含有すること特徴とする。前記インク組成物を用いた電子デバイスならびに電界効果トランジスタは、前記インク組成物を塗布して溶媒を乾燥させた後、熱エネルギーにより前駆体を半導体に変換させ、結晶性有機膜を形成するため、簡便なプロセスで作製することができる。前記インク組成物が含有するドーパントはその量が適切に制御されているため、半導体膜形成時の結晶成長を阻害することがなく、半導体膜の移動度を高くすることができる。加えて、半導体膜形成と同時にインクに含有していたドーパントによりドーピングされ、キャリア密度を向上させることができる。
即ち上記課題は、次の(1)〜(9)項に記載のインク組成物、有機膜及びFET(電界効果トランジスタ)を含む本発明により解決される。
(1)「電子デバイス用インク組成物であって、少なくともπ電子共役系化合物前駆体と、前記π電子共役系化合物のドーパントと、前記π電子共役系化合物前駆体とドーパントを溶解させる溶媒を含有することを特徴とするインク組成物。」
(2)「前記π電子共役系化合物前駆体が、下記一般式(I)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体からなり、これに外部刺激を付与することで、前記π電子共役系化合物前駆体からのX−Yの脱離によって、下記一般式(II)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体が得られることを特徴とする前記(1)項に記載のインク組成物;
Figure 2013055094
Figure 2013055094
〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表わし、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わし、RからR10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕」
(3)「前記π電子共役系化合物前駆体のX及びYの一方が水素であり、他方が水酸基又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、前記(1)項又は(2)項に記載のインク組成物。」
(4)「前記π電子共役系化合物前駆体の前記エステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)、(IV)、(V)のいずれかであることを特徴とする、前記(3)項に記載のインク組成物;
Figure 2013055094
Figure 2013055094
Figure 2013055094
〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕。」
(5)「前記ドーパントのモル濃度が前記π電子共役系化合物前駆体のモル濃度に対し、5%以下であることを特徴とする、前記(1)項乃至(4)項のいずれかに記載のインク組成物。」
(6)「前記ドーパントが、酸、ルイス酸、ハロゲン、有機酸、遷移金属化合物、電子受容性分子のいずれかであることを特徴とする、前記(1)項乃至(5)項のいずれかに記載のインク組成物。」
(7)「前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載のインク組成物を支持体上に付着させた後、外部刺激を付与することにより前記一般式(II)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体から構成された有機膜。」
(8)「前記外部刺激が光または熱エネルギーであることを特徴とする前記(7)項に記載の有機膜。」
(9)「前記(7)項又は(8)項に記載の有機膜を用いた電界効果トランジスタ。」
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスを用いて前駆体を塗布形成後、加熱変換してなる半導体膜について、以降の実施例で説明するように、ドーパントを含まない前駆体膜から形成されたものと比較して、導電率が向上していることが確認された。電界効果トランジスタにおいて、上記有機膜を電極と有機半導体層の間に配置することで、電極と半導体層の接合部の抵抗を低減したトランジスタを作製することが可能となる。
本発明に用いる電子共役系化合物は耐溶剤性や耐熱性が高いため、ドーピングされた半導体膜にドーピングされていない同じ材料の半導体膜を容易に接続することができる。同じ結晶性材料を接続するため膜の連続性を分子レベルで均質にすることが可能で、電極からチャネル領域までの抵抗を充分に低くすることが可能となる。
本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の単結晶の顕微鏡観察写真である。 本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(VI)の変換膜であるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)を含む有機膜のSEM写真である。 本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の真空蒸着膜のSEM写真である。 本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を示す図である。 本発明の実施例1で作成したインクサンプル1〜4の偏光顕微鏡観察結果の写真である。 本発明の実施例1で作成したインクサンプル1〜4の電流電圧測定結果のグラフである。 本発明の実施例2で作成したインクサンプル5〜7の偏光顕微鏡観察結果の写真である。 本発明の実施例2で作成したインクサンプル5〜7の電流電圧測定結果のグラフである。
以下、本発明について実施の形態を示して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
ここで本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体および該化合物前駆体から得られるπ電子共役系化合物について、具体的に説明する。
[π電子共役化合物前駆体および該前駆体から得られるπ電子共役系化合物]
本発明のπ電子共役化合物前駆体は、下記一般式(I)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体であることが好ましい。
Figure 2013055094
〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合し、X−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表わし、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わし、RからR10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕
X及びYとしては、水素とエステル構造を有する基の組合せが好ましい。中でも、カルボン酸エステルと水素、炭酸エステルと水素、キサントゲン酸エステルと水素の組合せが好ましく、特に次の一般式(III)、(IV)、(V)のいずれかと水素の組合せが好ましい。
Figure 2013055094
Figure 2013055094
Figure 2013055094
〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕
一般式(I)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして脱離する結果、新たにアルカン部位が生成し、一般式(II)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
Figure 2013055094
上記一般式(I)〜(V)中の、R〜R11における置換若しくは無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アルキルチオ基としては、例えば上記アルキル基の結合位に酸素原子又は硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが挙げられる。
〜R11における置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール、ベンゾジチアゾール等が挙げられる。これらはさらに上記の置換若しくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、又はフッ素、塩素、ヨウ素及び臭素のハロゲン基を置換基として有していてもよい。
特にR及びRに上記アルキル基又はアリール基を導入することにより、棒状の分子形状となり、結晶が2次元的に成長しやすくなるため、結晶性の連続膜が得やすくなる。さらにアリール基を導入した場合、前記一般式(II)の状態において分子の共役系の拡大により材料のイオン化ポテンシャルが浅くなり、ホール輸送特性が向上する。
一般式(I)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の合成方法は特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。手順としては、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、X及びYで表わされる脱離ユニットを導入すればよい。
例えば、一般式(I)において、Xがエステル構造を有する基でYが水素の場合、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、カルボニル化合物へ誘導し、さらにグリニヤール試薬をはじめとする求核試薬との反応によりアルコール体とし、このアルコール体を酸塩化物や酸無水物等と反応させれば、目的とするカルボン酸エステルが得られる。
Figure 2013055094
また、上記アルコール体を、塩基を用いて二硫化炭素と反応させた後、ハロゲン化アルキル等のアルキル化試薬と反応させれば、目的とするキサントゲン酸エステル体を得ることができる。
Figure 2013055094
また、上記アルコール体を、クロロギ酸エステルで処理することにより、炭酸エステル体を得ることができる。
Figure 2013055094
なお、上記カルボニル化合物は、公知の種々の反応により合成することができ、例えば次の(a)〜(d)の反応が挙げられる。
(a)次の式で示されるVilsmeier反応
Figure 2013055094
(b)次の式で示される、アリールリチウム化合物と、DMF、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、各種酸塩化物、各種酸無水物等をはじめとするホルミル化又はアシル化試薬との反応
Figure 2013055094
(c)次の式で示される、Gatterman反応
Figure 2013055094
(d)次の式で示される、Friedel−Crafts反応
Figure 2013055094
上記式中、Rはアルキル基を、harはハロゲンを表わし、R〜R11は一般式(I)の場合と同様である。また、Xが水素でYがエステル構造を有する基の場合にも、同様の反応により容易に合成することができる。
上記のようにして得られたπ電子共役化合物前駆体は、反応に使用した触媒、無機塩、未反応原料、副生成物等の不純物を除去して使用される。精製操作は再結晶、各種クロマトグラフィー法、昇華精製、再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。不純物の混入は半導体特性に悪影響を及ぼすため、可能な限り高純度にすることが望ましい。溶解性に優れた材料では、これら精製方法の制約が少なくなり、結果的に半導体特性にも好影響を与える。
一般式(I)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、次の式で示すように、一般式(I)中のX−Yの脱離によりアルカン部位が生成し、一般式(II)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
Figure 2013055094
この際、X−Yの組合せが、水素とカルボン酸エステルの場合には、カルボン酸分子が脱離し、X−Yの組合せが水素とキサントゲン酸エステルの場合には、キサントゲン酸部位が脱離した後、さらに分解して、硫化カルボニルとチオール化合物として除去される。X−Yの組合せが水素と炭酸エステルの場合には、やはり脱炭酸が起こる。
上記X−Yの脱離により生成する、一般式(II)で表わされるジチエノベンゾジチオフェン誘導体では、脱離前の一般式(I)で表わされる構造と比べて、共役系が拡大すると共に平面性が得られるため結晶性が向上し、半導体部材として使用可能な良好な電荷輸送特性が発現する。
同時にX−Yの脱離前後では溶剤に対する溶解性が劇的に変化する。一般式(I)ではジチエノベンゾジチオフェンユニットの側鎖(R、R、R、X、Y及び、R、R、R、X、Yを含む部位)が分子に良好な溶解性を付与するのに対し、一般式(II)ではそのような効果が小さくなり、非常に溶解性が低下する。
脱離反応を行なうために印加するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、上記脱離反応には、官能基の構造に依存するが、加熱が必要となることが多い。
脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40〜500℃の範囲が好ましく、さらに前駆体の合成の熱安定性を考慮するとより好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
上記の酸または塩基は脱離反応の触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行なってもよいし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
本発明のπ電子共役化合物前駆体は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、メシチレン、安息香酸エチル、ジクロロベンゼン及びキシレン等をはじめとする汎用溶剤への溶解性が高いため、これらの溶剤に溶解させてインク化することができる。さらに該インクを支持体上に付着させた後、溶剤を揮発させることによって絶縁部材となる構造体を形成することができる。
支持体への付着方法としては、例えば孔版印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法例えばグラビア印刷法、インクジェット法、平版印刷法、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、ドクターブレード法、ディスペンス法等の公知の印刷手法が挙げられる。また、これらの手法により、パターニングされた膜や大面積の膜を作製することができ、さらにインク濃度や付着量を変えることにより、膜厚を適宜調整することができる。作製するデバイスに応じて、最適な印刷方法と溶媒の組み合わせを選択すればよい。
このようにして得られた本発明のπ電子共役化合物前駆体を利用した部材を、加熱処理をはじめとする外部刺激により、一般式(II)で表わされる有機半導体材料へと変換しエレクトロニクスデバイスに用いる。局所的にエネルギー印加を行なって部分的に一般式(I)から一般式(II)へ変換することにより、半導体領域と絶縁体領域のパターニングを行なうことも可能である。
さらに、溶解性の高い本発明のπ電子共役化合物前駆体が、溶解性の低い一般式(II)で表わされるπ電子共役化合物へ変換できることは、デバイス作製工程上、非常に有利となる。一般式(II)で表わされる有機半導体材料に変換した後は、さらにその上に絶縁材料や電極材料等を、湿式プロセスを用いて構成することが容易になり、後工程によるプロセスダメージを抑えることが可能となる。
これらの薄膜、厚膜、或いは結晶は、光電変換素子、薄膜トランジスタ(TFT)素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能するので、本発明のπ電子共役化合物前駆体を用いて多様な有機電子デバイスを作製することが可能である。
ここで本発明で用いるジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体からの変換について、理解を容易にするために具体例を開示し説明する。ただし、具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
本発明で用いるジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体からの変換過程について、例えばTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)によって、重量変化および発熱・吸熱ピークから変換過程をモニターすることができる。
Figure 2013055094
上記ジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体(VI)を5℃/minの速度で昇温したところ、190〜250℃で、ペンタン酸2分子に相当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、さらに昇温すると363℃に吸熱ピークが観測された。これは、別に合成したジチエノベンゾチオフェン誘導体化合物(VII)の融点に一致した。
[ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体からの変換膜]
以下にジチエノベンゾチオフェン誘導体からの変換膜の作製方法について一例を示す。
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(VI)のクロロホルム溶液インク(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体膜を得た。その後、不活性雰囲気で230度5分の加熱を行なうことで、外部エネルギーを与え、前記ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(VI)からジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)および脱離成分(VIII)に変換された膜を得た。
ここで、図1にジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の単結晶の顕微鏡観察写真を示す。さらに、図2に、上記製造方法によって製造されたジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(VI)の変換膜であるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)を含む有機膜のSEM写真を示す。さらに、比較のため、他の有機膜の製造方法として、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の真空蒸着膜のSEM写真を図3に示す。
面外・面内X線回折によって、図2と図3の薄膜では、一致した回折ピークを有していることが明らかとなっている(図示を省略)。そのため、変換膜はジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)を主として含む膜であることが明らかとなっている。
図1に示すように、溶液成長乃至気相成長で得られたジチエノベンゾジチオフェン誘導体の単結晶には、その製法における晶癖が見られる。たとえばジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)では、板状結晶であり、θ1=約130度の角度を有している。これはジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の単結晶の結晶格子から推定できる角度である。
図2の本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体からの変換膜では、同一方向のドメインができており、クラックまたは前駆体変換による晶癖が見えている。
θ2=約130度の角度を有しており、本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体からの変換膜であることを意味している。図3で示したジチエノベンゾジチオフェン誘導体(VII)の真空蒸着膜を異なることは明らかであり、ドメインの大きさ、ドメインの形、ドメインが形成する角度の様子に差異が見られる。また、本発明で製造された有機膜は、真空蒸着膜と異なる特性(たとえば、トランジスタ特性)を有する。
このように、本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体からジチエノベンゾジチオフェン誘導体に変換された有機膜は、真空蒸着法などで別の方法で製造された膜と異なる場合があり、膜の形状、種々の解析方法から容易に本発明で用いられる変換膜であるかどうか判断できる。
脱離反応を行なうために印加するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、上記脱離反応には、官能基の構造に依存するが、加熱が必要となることが多い。
脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40〜500℃の範囲が好ましく、さらに前駆体の合成の熱安定性を考慮するとより好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
前記のように、上記の酸または塩基は脱離反応の触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行なってもよいし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
[電子デバイス]
本発明の特定化合物は、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明の特定化合物を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
「トランジスタ構造」
図4の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。
本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の特定化合物を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)および図示しない支持体(基質)上にゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
「製膜方法:有機半導体層」
(インク組成、溶媒)
本発明のインク組成物に用いられる溶媒は、次のように決めることができる。
例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。すなわち、前記前駆体を含む塗工液のための溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が500℃以下であることが好ましい。しかし、揮発性が高ければ高いほどよいという訳ではない。沸点50℃以上のものが好ましい。まだ充分に確認した訳ではないが、伝導性には、前駆体が有する脱離性基の単なる離脱のみでなく、分子相互間の接触のための配置状態変化も重要なためかも知れない。つまり、塗工膜中に存在する前駆体は、それが有する脱離性基が除去されたのち、ランダム状態から、分子の向き又は位置の少なくとも部分的変化により分子同士の隣接化、接触や再配列、凝集、結晶化等が生じるための時間が必要なためかも知れない。
いずれにしても、溶媒としては具体的には、前駆体が有する例えば脱離性基としての極性のカルボエステル基に親和性のあるメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒に加えて、本体構造部分と比較的親和性のあるトルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
また、インク液(塗工液)には、さらに、本発明の目的達成を損なわない程度で、カルボエステル基分解促進のための揮発性又は自己分解性の酸、塩基材料を含んでしてもよい。また、トリクロロ酢酸(加熱によりクロロホルムと炭酸ガスに分解)、トリフロロ酢酸(揮発性)のような強酸性の溶媒は、弱いルイス酸であるカルボエステル基の追い出しに効果があるので好ましく用いられる。
〔ドーパント〕
本発明に用いることのできるドーパントは、酸化型又は還元型のいずれか一方の導電性付与剤であってもよく、その両方であってもよい。両方を用いる場合には、ソース電極とドレイン電極は同じタイプの導電性付与剤により形成されていることが好ましい。
ここで、酸化型の導電性付与剤とは、有機半導体膜に作用させることにより有機半導体膜を酸化させて電気伝導度を向上させる効果を有するものであり、p型の導電性付与剤ということもある。一方、還元型の導電性付与剤とは、有機半導体膜を還元させて電気伝導度を向上させるものであり、n型の導電性付与剤ということもある。
本発明に用いられる酸化型の導電性付与剤としては、酸素、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3、SbF5等のルイス酸、ヨウ素、塩素、臭素、ICl、ICl3、IBr、IF3等のハロゲン、HF、HC1、HNO3、H2SO4、HClO4、FSO3H、ClSO3H、CF3SO3Hなどのプロトン酸、酢酸、蟻酸、アミノ酸などの有機酸、FeCl3、FeOCl、TiCl4、ZrCl4、HfCl4、NbF5、NbCl5、TaCl5、MoCl5、WF5、WCl6、UF6、LnCl3(Ln=La、Ce、Nd、Pr、などのランタノイドとY)などの遷移金属化合物、Cl−、Br−、I−、ClO4−、PF6−、AsF5−、SbF6−、BF4−、スルホン酸アニオンなどの電解質アニオンなどを挙げることができる。
一方、還元型の導電性付与剤としては、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、バリウム、カルシウム、マグネシウム、銀、ユーロピウム、ベリリウム等の金属原子、原子団などが挙げられる。
また、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、たとえばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料をドーパントとして用いてもよい。
本発明組成物で得られる効果を損なわない限りにおいて、適宜その他の添加物、例えば、キャリア発生剤、導電性物質、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、浸透剤、濡れ調製剤、レオロジー調整剤などを加えてもよい。
(濃度、割合)
本発明のインク組成物における前駆体の添加量は、通常0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.05重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲で使用するのがよい。
本発明のインク組成物におけるドーパントの添加量は、前記π電子共役系化合物前駆体に対しモル比で、通常10mol%以下、好ましくは5mol%以下、より好ましくは0.1mol%の範囲で使用するのがよい。本発明のインク組成物は、その他の添加物は含有してもよいが、含有しなくても本発明の効果が得られる。
本発明組成物は、例えば、前記含有量になるように、有機半導体材料とドーパントを溶媒に溶解もしくは分散させ、それぞれの材料の溶解度に応じた熱処理および攪拌することにより調製できるが、組成物の調製方法はこの限りではない。また、前述のように、その他の添加物を使用してもしなくてもよい。前記のその他の添加物を添加する場合には、未溶解成分を残さないように適宜添加するか、または未溶解成分をろ過などの処理により除去すればよい。
(膜厚など)
本発明の有機半導体膜とは、本発明のインク組成物から形成された薄膜であり、半導体素子の一つの構成要素である。半導体薄膜の膜厚は、必要な機能を損なわない限り薄いほど好ましく、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜1μmである。
〔変換プロセス〕
上記有機半導体膜は、前駆体からなる膜に対して外部エネルギーを印加し、前駆体を半導体に変換することによって形成することができる。前駆体膜および有機半導体薄膜の作成は、大気雰囲気下、水蒸気下、減圧下、真空下、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気下、あるいは水素などの活性ガス雰囲気下など、目的により適宜選択できるが、簡便な大気雰囲気下が好ましい。前駆体膜および有機半導体膜作成後は、溶媒を除去する工程を経てもよい。溶媒除去工程としては、加熱による熱処理、乾燥ガス雰囲気下、大気雰囲気下での自然乾燥など、目的により適宜選択できるが、簡便な自然乾燥が好ましい。
〔印刷法、ウェットプロセス〕
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、前記のように、スクリーン印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
〔電極〕
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
〔絶縁膜〕
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
〔HMDS等 有機半導体/絶縁膜界面修飾〕
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していてもよい。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していてもよい。
〔チオール等、有機半導体/電極界面修飾〕
電極表面の濡れ性の制御や有機半導体層との電気的接触を良好にすることを目的として、あらかじめ電極の表面処理を施してもよい。表面処理材料としては、例えばチオール化合物であり、具体的には、飽和もしくは不飽和アルキルチオール、パーフルオロアルキルチオール、置換又は無置換のベンゼンチオールなどが挙げられる。また、電荷注入層を適宜設けてもよい。
〔保護層〕
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
〔応用デバイス〕
上述した本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミック、電気泳動等の、従来公知の各種表示画像素子を駆動するための素子として好適に利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
本発明のディスプレイ装置は、例えば、液晶表示装置では液晶表示素子、EL表示装置では有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子、電気泳動表示装置では電気泳動表示素子などの表示素子を1表示画素として、該表示素子をX方向及びY方向にマトリックス状に複数配列して構成される。前記表示素子は、該表示素子に対して電圧の印加又は電流の供給を行なうためのスイッチング素子として、本発明の有機薄膜トランジスタを備えている。本発明のディスプレイ装置としては、前記スイッチング素子が前記表示素子の数、即ち表示画素数に対応して複数備えられる。
前記表示素子は、前記スイッチング素子の他に、例えば、基板、透明電極等の電極、偏光板、カラーフィルタなどの構成部材を備えるが、これらの構成部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知のものを使用することができる。
前記ディスプレイ装置が、所定の画像を形成する場合には、例えば、マトリックス状に配置されたスイッチング素子の中から任意に選択された前記スイッチング素子が、対応する前記表示素子に電圧の印加又は電流を供給するときのみスイッチがON又はOFFとなり、その他の時間はOFF又はONとなるように構成することにより、高速、高コントラストで、前記ディスプレイ装置の表示を行なうことができる。なお、前記ディスプレイ装置における画像の表示動作としては、従来から公知の表示動作により画像等が表示される。
例えば、前記液晶表示素子の場合には、液晶に対して電圧を印加することにより、該液晶の分子配列を制御して画像等の表示が行なわれる。また、前記有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子の場合には、有機若しくは無機膜で形成された発光ダイオードに電流を供給して該有機若しくは無機膜を発光させることにより画像等の表示が行なわれる。また、前記電気泳動表示素子の場合には、例えば、異なる極性に帯電された白及び黒色の着色粒子に電圧を印加して、電極間で前記粒子を所定方向に電気的に泳動させて画像等の表示が行なわれる。
前記ディスプレイ装置は、前記スイッチング素子を塗工、印刷等の簡易なプロセスにより作製可能であり、プラスチック基板、紙等の高温処理に耐えない基板を用いることができるとともに、大面積のディスプレイであっても、省エネルギー、低コストで前記スイッチング素子を作製可能となる。
また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、これら例は、本発明の基本を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。以下の例中、「部」及び「%」は、別段の断りない限り、「重量部」及び「重量%」を表わす。
[実施例1]
ジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体(VI)を使用して、表1に示すインクを作製した。溶媒にはトルエンを用い、ドーパントには、アクセプター性有機材料F4TCNQ(東京化成工業株式会社製)を用いた。
Figure 2013055094
次の方法でインクを基板に展開し、前駆体およびドーパントの混合膜を作製した。基板には、膜厚300nmの熱酸化膜付シリコンウェハーを使用した。酸化膜表面をUVオゾン処理で洗浄後、京セラケミカル製ポリイミド(CT4112)を塗布して、ポリイミド膜を形成した。その後、スピンコート法により上記インクを基板上に展開し、前駆体およびドーパントの混合膜を形成した。
上記で得られた膜をグローブボックス中のホットプレートで加熱して前駆体を変換させ、有機半導体膜を得た。図5にサンプル1〜4の偏光顕微鏡写真を示す。
サンプル1はジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体(VI)単独のインクから作製した有機膜である。明るさが異なって見える領域が一つの結晶ドメインであり、この化合物の特徴は比較的大きな結晶ドメインを形成する点にあり、このことが移動度を向上させている一つの理由である。
これに対して、サンプル2ではサンプル1と膜質の異なる領域があることが確認できる。
これはドーパントとして用いたF4TCNQが凝集したため、また、F4TCNQが結晶核の発生源となった結果、微結晶の集合膜を形成したものと推測される。サンプル3、4については、サンプル1と同様の膜が形成できていることが確認できる。
上記で得られた膜に、200μmのギャップを持つ対向電極を真空蒸着法を用いて形成した。電極材料にはAgを用い、膜厚50nm形成した。その後、1E−2Pa以下の真空下において、対向電極間に電圧を印加し電流を計測して導電率を測定した。計測器にはアジレントテクノロジー社製B1500を使用した。測定結果を図6に、計算により求められた導電率を表2に示す。
図6から、印加電圧に対し電流値が線形に変化しており、オーミックな振る舞いをしていることがわかる。求められた導電率は、ドーパント濃度が低いほど高くなる傾向であることがわかる。ドーピングしていないサンプルに比べ、ドーピングしたサンプルはキャリア密度が向上した結果、導電率が高くなると推測される。しかしながら、ドーピング濃度が高いほど不純物としてのドープ材を多く含むため、サンプル2では大きな結晶成長を阻害したことが、また、サンプル3では不純物散乱の影響でキャリア移動が制限を受けたことが、ドーピングの効果を低下させているものと推測される。その結果、この中ではサンプル4がもっとも効果的にドーピングによるキャリア密度の向上と移動度を両立していて、導電率が最も大きくなったと考えられる。
Figure 2013055094
[実施例2]
ドーパントとして、ルイス酸であるFeCl(関東化学社製)を用いたことを除いて、実施例1と同様にして、表3に示すインクを作製した。
Figure 2013055094
その後、実施例1と同様にして、半導体膜を形成後、対向電極を形成して導電率を測定した。図7には偏光顕微鏡観察結果を、図8には電流電圧測定結果を、表4に導電率を示す。
偏光顕微鏡観察の結果、サンプル5ではジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体が変換していない(ドーパントが酸であるため、ダメージを受けた可能性がある)、もしくは、微結晶の集合膜となっていることがわかる。そのため、サンプル5の導電率はサンプル1に比べ低下する結果となった。
一方、サンプル6、7は導電率の大幅な向上が見られ、サンプル7の方が導電率が低い。
これは、実施例1と逆の傾向であるが、その原因としては、ドーパントのサイズが小さいため、不純物散乱の影響が小さく、ドーピング濃度が高い方が結果的に導電率が高くなったものと推測される。
Figure 2013055094
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁膜
6 基板
特願2009−171441号明細書 特開2009−275032号公報 特願2010−061591号明細書 特願2010−135664号明細書 特開2007−266298公報 特開2006−032914号公報
J.Am.Chem.Soc.124,p8812(2002) Appl.Phys.Lett.84,p2085(2004) J.Am.Chem.Soc.126,p1596(2004) Appl.Phys.Lett.91,p053508(2007) 小野昇監修「低分子有機半導体の高性能化」p139 サイエンス&テクノロジー株式会社

Claims (9)

  1. 電子デバイス用インク組成物であって、少なくともπ電子共役系化合物前駆体と、前記π電子共役系化合物のドーパントと、前記π電子共役系化合物前駆体とドーパントを溶解させる溶媒を含有することを特徴とするインク組成物。
  2. 前記π電子共役系化合物前駆体が、下記一般式(I)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体からなり、これに外部刺激を付与することで、前記π電子共役系化合物前駆体からのX−Yの脱離によって、下記一般式(II)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体が得られることを特徴とする請求項1記載のインク組成物。
    Figure 2013055094
    Figure 2013055094
    〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表わし、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わし、RからR10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕
  3. 前記π電子共役系化合物前駆体のX及びYの一方が水素であり、他方が水酸基又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインク組成物。
  4. 前記π電子共役系化合物前駆体の前記エステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)、(IV)、(V)のいずれかであることを特徴とする、請求項3に記載のインク組成物。
    Figure 2013055094
    Figure 2013055094
    Figure 2013055094
    〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表わす。〕
  5. 前記ドーパントのモル濃度が前記π電子共役系化合物前駆体のモル濃度に対し、5%以下であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のインク組成物。
  6. 前記ドーパントが、酸、ルイス酸、ハロゲン、有機酸、遷移金属化合物、電子受容性分子のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のインク組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のインク組成物を支持体上に付着させた後、外部刺激を付与することにより前記一般式(II)で表わされるジチエノベンゾチオフェン誘導体から構成された有機膜。
  8. 前記外部刺激が光または熱エネルギーであることを特徴とする請求項7に記載の有機膜。
  9. 請求項7又は8に記載の有機膜を用いた電界効果トランジスタ。
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