JP2013054969A5 - - Google Patents
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本発明は、非水電解液電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池等のような非水電解液電池は、エネルギー密度が高く、また非水電解液として揮発性の有機溶媒が用いられる。そのため、非水電解液電池が高温環境に置かれた場合や過充電・過放電が起こった場合等の異常発熱時に、非水電解液の気化による電池内圧の上昇によって電池が破裂・膨張したり、また非水電解液や正極活物質の燃焼によって電池が発火・発煙する等の問題がある。これらの問題を解消するため、従来の非水電解液電池では、種々の方法により、電池の難燃化が図られている。特許文献1(特開2000−173619号)には、炭素材料を含む負極板の表面に、難燃化剤を塗布して難燃化剤層を形成することにより、電池を難燃化する技術が開示されている。
電極板の表面に難燃化剤層を形成することにより、非水電解液電池の内部温度の上昇による電池の発火や破裂をある程度抑制できる。しかしながら、電極板の表面に形成された難燃化剤層の存在により、電極と非水電解液との間のイオン伝導性が阻害され、電池特性が低下する問題があった。
本発明の目的は、電極板の表面に難燃化剤層を形成しても電池性能を大幅に低下させることない非水電解液電池を提供することにある。
本発明が改良の対象とする非水電解液電池は、正極集電体の表面及び裏面の少なくとも一方に正極活物質層が形成され、正極活物質層の表面に、多孔質のバインダにより結着された固体の難燃化剤を含む難燃化剤層が形成された正極板を備える。正極集電体は、アルミニウム等の電導性の高い金属材料で構成されている。正極活物質層は、正極集電体に対して正極活物質がバインダによって結着されて形成されている。この正極活物質層のバインダは、後述する多孔質のバインダと同じ成分でも異なる成分でもよい。
難燃化剤としては、融点が90℃以上の環状ホスファゼン化合物を用いる。融点が90℃以上のホスファゼン化合物は、電池の正常時(内部温度が90℃未満)では、固体状態が維持されるため、ホスファゼン化合物が電池特性に影響を与え難い。そしてこの難燃化剤は、電池の異常発熱時(内部温度が90℃超)では、難燃化剤の一部または全部が液状となって、正極活物質層付近で発生するラジカルまたは活性種をトラップする機能を発揮する。難燃化剤層は、このような難燃化剤を含むため、燃焼の素となるラジカルまたは活性種の連鎖反応を正極活物質層の表面で抑制することができる。
難燃化剤として用いる環状ホスファゼン化合物は、一般式(NPR2)3または(NPR2)4で表される、一般式中のRが、ハロゲン元素または一価の置換基であり、一価の置換基が、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基である環状ホスファゼン化合物が好ましい。このような化学構造を有する環状ホスファゼン化合物は、90℃以上の融点を有するので、電池の正常時(内部温度が90℃未満)では、固体状態(ホスファゼン化合物が電池特性に影響を与え難い状態)を維持することができる。また、融点が90℃を超えて発火温度に達成する前に一部または全部が液体状(発火を抑制できる状態)になり易いからである。
理論的には、難燃化剤の含有量を多くすれば多くするほど電池の難燃性は高くなる。そこで電池の難燃性の強化を最優先に考えると、難燃化剤の含有量を正極活物質の重量に対して10重量%以上とすることが好ましいと本願発明者は考えていた。しかしながら、難燃化剤の含有量が多くなると、難燃性は向上するものの、難燃化剤の存在それ自体がイオン透過性を阻害する要因となっており、電池特性が低下する。研究の結果、難燃化剤として融点が90℃以上の環状ホスファゼン化合物を用い、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、環状ホスファゼン化合物の含有量を、正極活物質の重量に対して3.5〜7.5重量%とし、ポリフッ化ビニリデンの含有量を、難燃化剤の重量に対して15〜25重量%とすると、必要な難燃性を確保して、しかも電池性能が大幅に低下することがないことを発明者は見出した。本発明はこの研究結果に基づくものである。難燃化剤として用いる環状ホスファゼン化合物の含有量をこのような数値範囲にすると、正極板中のイオン透過性は殆ど阻害されることがなく(電池性能を大幅に低下させることなく)、非水電解液電池を実用上問題のない程度に難燃化することができる。しかも、難燃化剤の含有量が少なくなるため、非水電解液電池の難燃性を高めるためのコストを下げることができる。なお、環状ホスファゼン化合物の含有量が3.5重量%未満の場合は、難燃化剤の含有量が少ないために必要な難燃性を発揮できない。また、環状ホスファゼン化合物の含有量が7.5重量%超の場合は、必要十分な難燃性は発揮できるものの、環状ホスファゼン化合物の存在により難燃化剤層内の空孔体積が小さくなるためイオン透過性が低下するおそれがある。
発明者は、難燃化剤だけでなく、バインダの材質及び量も電池性能に影響があると考えてバインダの材質と量について研究した結果、難燃化剤層を形成するために用いる多孔質のバインダとして、ポリフッ化ビニリデンが好ましいことと、ポリフッ化ビニリデンの含有量を、難燃化剤の重量に対して15〜25重量%とすることが効果的であることを見出した。ポリフッ化ビニリデンの含有量をこのような数値範囲にすると、難燃化剤層の内部にイオンの透過性を確保するために必要な多数の空孔を形成することができ、バインダ自体がイオン透過性を阻害することがなく、また難燃化剤が存在してもイオン透過性の低下を抑制することができる。なおポリフッ化ビニリデンの含有量が15重量%未満の場合は、バインダ機能が低下するおそれがある。また、ポリフッ化ビニリデンの含有量が25重量%超の場合は、難燃化剤層自体が厚くなってイオン透過性を低下させるおそれがある。
なお、バインダとして十分な結着力を得るためには、ポリフッ化ビニリデンとしては、重量平均分子量が約20万〜35万のポリフッ化ビニリデンを用いるのが好ましい。本明細書において重量平均分子量とは、高分子の総重量で平均した分子量を示す。 ポリフッ化ビニリデンの重量平均分子量が20万を下回る場合は、樹脂の凝集力が不足し、難燃化剤層の結着力が不足する場合があり、ポリフッ化ビニリデンの重量平均分子量が、35万を超える場合は、難燃化剤を溶剤に分散させる際に粘度が高くなり易く、スラリー作成時の混合工程に支障をきたす場合がある。
本発明は、リチウムイオン二次電池に適用できるのは勿論である。
本発明は、リチウムイオン二次電池に適用できるのは勿論である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1(A)は、本発明の非水電解液電池の実施の形態であるリチウムイオン二次電池の内部を透視状態で示した概略図であり、図1(B)は図1(A)のIB−IBの断面図である。このリチウムイオン二次電池(ラミネート電池)1は、正極リード端子3aを備える正極板3と、負極リード端子5aを備える負極板5と、正極板3と負極板5との間に配置されたセパレータ7と、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液9とを備える。正極板3、負極板5およびセパレータ7は、積層されて積層体からなる極板群11を構成する。極板群11は、正極リード端子3aおよび負極リード端子5aが外部に接続可能な状態でケース13内に収納されている。ケース13内は、非水電解液9が充填された状態で真空になっている。本例では、このようなリチウムイオン二次電池1を、以下のように作製した。
[正極板の作製]
正極板の正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用意する。このリチウムコバルト複合酸化物と、導電剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、質量比90:5:5で混合し、これをN−メチルピロリドンの溶媒に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としてアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、プレス加工を施して、正極シートを作製した。
正極板の正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用意する。このリチウムコバルト複合酸化物と、導電剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、質量比90:5:5で混合し、これをN−メチルピロリドンの溶媒に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としてアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、プレス加工を施して、正極シートを作製した。
本例は、正極シートの表面に、バインダとして重量平均分子量が28万のポリフッ化ビニリデンと、N−メチルピロリドンからなる溶媒と、融点が112℃の環状ホスファゼン化合物[株式会社ブリヂストン製のホスライト(登録商標)]を混合した合剤を塗布して塗工層を形成し、硬化したバインダが多孔質となるように定めた乾燥条件で塗工層を乾燥した。具体的な乾燥条件は、乾燥温度を100〜120℃、乾燥時間を120秒と定めた。使用した環状ホスファゼン化合物の化学構造は、一般式(NPR2)3で表され、かつRがフェノキシ基で表される。正極シートの表面に形成された乾燥後の塗布層は、特に図示しないが、内部に多数の連続する空孔が形成された多孔質層となっている。このような塗布層が形成された正極シートを10cm×20cmに切り取り、アルミニウム箔の集電タブを溶接して正極板3を作製した。これにより正極板3の表面には、正極活物質層が形成され、さらに正極活物質層の表面には難燃化剤層が形成される。
[負極板の作製]
負極活物質として、人造黒鉛を用意する。この人造黒鉛と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、質量比90:10で混合し、これをN−メチルピロリドンの溶媒に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、銅箔の負極集電体に塗布して乾燥した後、プレス加工を施して、負極シートを作製した。この負極シートを10cm×20cmに切り取り、切り取ったシートにニッケル箔の集電タブを溶接して負極板5を作製した。
負極活物質として、人造黒鉛を用意する。この人造黒鉛と、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、質量比90:10で混合し、これをN−メチルピロリドンの溶媒に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、銅箔の負極集電体に塗布して乾燥した後、プレス加工を施して、負極シートを作製した。この負極シートを10cm×20cmに切り取り、切り取ったシートにニッケル箔の集電タブを溶接して負極板5を作製した。
[積層体の作成]
このように作製した正極板3と負極板5との間に、ポリエチレンからなるセパレータシート(セパレータ7)を挟んで、正極板3、負極板5およびセパレータ7を積層して電池容量が8Ahになるように積層体11を作製した。
このように作製した正極板3と負極板5との間に、ポリエチレンからなるセパレータシート(セパレータ7)を挟んで、正極板3、負極板5およびセパレータ7を積層して電池容量が8Ahになるように積層体11を作製した。
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート50体積%とジメチルカーボネート50体積%とからなる混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、濃度が1mol/LになるようにLiPF6 を溶解させて電解質溶液(非水電解液9)を調製した。
エチレンカーボネート50体積%とジメチルカーボネート50体積%とからなる混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、濃度が1mol/LになるようにLiPF6 を溶解させて電解質溶液(非水電解液9)を調製した。
[電池の組立]
熱融着フィルム(アルミラミネートフィルム)からなる一端が開口した外装材(後にケース13となる)の中に、作製した積層体11を挿入し、さらに調製した非水電解液9を外装材中に注入した。その後、外装材中を真空にして、すばやく外装材の開口部をヒートシールして、平板状のラミネート電池の構造を有する非水電解液電池(リチウムイオン二次電池)1を作製した。
熱融着フィルム(アルミラミネートフィルム)からなる一端が開口した外装材(後にケース13となる)の中に、作製した積層体11を挿入し、さらに調製した非水電解液9を外装材中に注入した。その後、外装材中を真空にして、すばやく外装材の開口部をヒートシールして、平板状のラミネート電池の構造を有する非水電解液電池(リチウムイオン二次電池)1を作製した。
[難燃性の評価/釘刺し試験]
上記のように作製した非水電解液電池(ラミネート電池)1について、難燃性(電池の安全性)を評価した。難燃性の評価は、釘刺し試験により行った。釘刺し試験では、まず、25℃の環境下で、4.2〜3.0Vの電圧範囲で、0.1mA/cm2の電流密度による充放電サイクルを2回繰り返し、さらに4.2Vまで電池の充電を行った。その後、同じ25℃の温度条件下で、軸部の直径が3mmのステンレス鋼製の釘を、速度0.5cm/sで電池の側面の中心に垂直に突き刺すことにより、電池の内部温度、発火・発煙の有無および電池の破裂・膨張の有無を確認した。
上記のように作製した非水電解液電池(ラミネート電池)1について、難燃性(電池の安全性)を評価した。難燃性の評価は、釘刺し試験により行った。釘刺し試験では、まず、25℃の環境下で、4.2〜3.0Vの電圧範囲で、0.1mA/cm2の電流密度による充放電サイクルを2回繰り返し、さらに4.2Vまで電池の充電を行った。その後、同じ25℃の温度条件下で、軸部の直径が3mmのステンレス鋼製の釘を、速度0.5cm/sで電池の側面の中心に垂直に突き刺すことにより、電池の内部温度、発火・発煙の有無および電池の破裂・膨張の有無を確認した。
[電池特性の評価/高率放電試験]
作製した非水電解液電池(ラミネート電池)1について、電池特性を評価した。電池特性の評価は、高率放電試験により行った。高率放電試験では、まず、上記の釘刺し試験と同じ条件で充放電サイクルを繰り返して4.2Vまで電池の充電を行った。充電した後、電流24A、終止電圧3.0Vの定電流放電を行った。これにより得られた放電容量を高率放電容量とした。
作製した非水電解液電池(ラミネート電池)1について、電池特性を評価した。電池特性の評価は、高率放電試験により行った。高率放電試験では、まず、上記の釘刺し試験と同じ条件で充放電サイクルを繰り返して4.2Vまで電池の充電を行った。充電した後、電流24A、終止電圧3.0Vの定電流放電を行った。これにより得られた放電容量を高率放電容量とした。
非水電解液電池1において、難燃化剤(環状ホスファゼン化合物)の含有量と電池の難燃性との関係を確認した。具体的には、環状ホスファゼン化合物(ホスライト)の含有量を変化させた実験例1〜7について、電池の内部温度、発火・発煙および破裂・膨張を確認した。なお、環状ホスファゼン化合物の含有量は、正極活物質層を構成する正極活物質100重量%に対する環状ホスファゼン化合物の重量%として示す。この場合、難燃化剤層に含まれるバインダの含有量は、難燃化剤100重量%に対して20重量%に定めた。難燃性の評価結果は表1に示すとおりである。
表1に示すように、環状ホスファゼン化合物を含有しない例(実験例1)及び環状ホスファゼン化合物を1.0重量%含有する例(実験例2)ではいずれも、電池の内部温度が200℃を超え(電池の発火温度領域に達し)、また電池の発煙および膨張が確認された。また、ホスファゼン化合物を2.5重量%含有する例(実験例3)では、電池の内部温度が電池の発火温度領域には達していないものの、電池の膨張が確認された。これに対して、環状ホスファゼン化合物を3.5〜10.0重量%含有する例(実験例3〜7)では、電池温度が150℃未満となり(電池の発火温度領域に達せず)、電池の発火・発煙および電池の破裂・膨張は確認されなかった。これらの結果から、環状ホスファゼン化合物を3.5〜10.0重量%含有する非水電解液電池では、内部短絡時の熱暴走を抑えることができ、非水電解液電池の安全性が高まることが分かった。すなわち、環状ホスファゼン化合物の含有量が3.5重量%未満では、電池の熱暴走を抑える効果が不十分であることが分かった。したがって、環状ホスファゼン化合物の含有量は、正極活物質100重量%に対して少なくとも3.5重量%とするのが好ましい。なお、環状ホスファゼン化合物が1.0〜2.5重量%で難燃性が得られなかったのは、電難燃化剤の含有量が電池を難燃化するのに最低限必要な含有量を満たしていないことによるものと考えられる。
次に、非水電解液電池1において、難燃化剤(環状ホスファゼン化合物)の含有量と電池特性との関係を確認した。具体的には、環状ホスファゼン化合物の含有量を変化させた実験例8〜14について、高率放電容量を確認した。この場合も環状ホスファゼン化合物の含有量は、正極活物質層を構成する正極活物質100重量%に対する環状ホスファゼン化合物の重量%として示し、難燃化剤層に含まれるバインダの含有量は、難燃化剤100重量%に対して20重量%に定めた。電池特性の評価結果は表2に示すとおりである。
表2に示すように、環状ホスファゼン化合物を含有しない例(実験例8)の高率放電容量を100%とすると、環状ホスファゼン化合物の含有量が3.5〜7.5重量%の例(実験例9〜11)では、いずれも高率放電容量が90%以上に維持された。これに対して、環状ホスファゼン化合物の含有量が10.0〜15.0重量%の例(実験例12〜14)では、いずれも高率放電容量が90%に満たなかった。これらの結果は、電池特性をある程度高く維持するには、環状ホスファゼン化合物の含有量を3.5〜7.5重量%の範囲に定めるのが好ましいことを示している。上述した表1の結果から、電池の難燃化の観点だけを考慮すれば、環状ホスファゼン化合物の含有量の上限は定めなくてもよい。しかしながら、表2の結果から、環状ホスファゼン化合物の含有量が10〜15重量%では電池特性が低下する。したがって、難燃化剤の含有量に対する電池性能をも考慮すれば、環状ホスファゼン化合物の含有量の上限を7.5重量%とするのが好ましい。環状ホスファゼン化合物の含有量が3.5〜7.5重量%で電池特性が維持されるのは、含有量が3.5〜7.5重量%の環状ホスファゼン化合物がイオン透過性を阻害しないことによるものと考えられる。また、環状ホスファゼン化合物の含有量が10.0重量%超で電池特性が低下するのは、環状ホスファゼン化合物の存在により難燃化剤層内の空孔体積が小さくなるためイオン透過性が低下することによるものと考えられる。
さらに、非水電解液電池1において、バインダ(ポリフッ化ビニリデン)の含有量と電池特性との関係を確認した。具体的には、ポリフッ化ビニリデンの含有量を変化させた実験例15〜23について、高率放電容量を確認した。なお、ポリフッ化ビニリデンの含有量は、難燃化剤(環状ホスファゼン化合物)100重量%に対するポリフッ化ビニリデンの重量%として示している。この場合、難燃化剤層に含まれる難燃化剤の含有量は、正極活物質層に含まれる正極活物質100重量%に対して3.5重量%に定めた。電池特性の評価結果は表3に示すとおりである。
表3に示すように、ポリフッ化ビニリデンを含有しない例(実験例15)の高率放電容量を100%とすると、ポリフッ化ビニリデンの含有量が10重量%の例(実験例16)及びポリフッ化ビニリデンの含有量が30〜60重量%の例(実験例20〜23)では、いずれも高率放電容量が90%に満たなかった。これに対して、ポリフッ化ビニリデンの含有量が15〜25重量%の例(実験例17〜19)では、いずれも高率放電容量が90%以上に維持された。これらの結果は、電池特性を維持するには、ポリフッ化ビニリデンの含有量を15〜25重量%の範囲に定めるのが好ましいことを示している。ポリフッ化ビニリデンの含有量を15〜25重量%で電池特性が維持されるのは、難燃化剤層の内部に多数の空孔が形成され、イオン透過性を有する多孔質層が形成されることによるものと考えられる。また、ポリフッ化ビニリデンの含有量が10重量%で電池特性が低下するのは、難燃化剤層内の空孔体積が小さくなったことによりイオン透過性が低下したことが考えられる。また、ポリフッ化ビニリデンの含有量が30〜60重量%の場合に電池特性が低下するのは、難燃化剤層自体が厚くなったことによりイオン透過性を低下したことが考えられる。
上記実施の形態及び実施例では、極板群11を積層体そのもので構成したが、積層体を捲回して捲回極板群とした円柱状リチウムイオン二次電池にも本発明は当然にして適用することができる。
以上、本発明の実施の形態および実施例について具体的に説明した。しかしながら、本発明は、これらの実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく変更が可能であるのは勿論である。
本発明によれば、難燃化剤層に含まれる難燃化剤として環状ホスファゼン化合物の含有量を、正極活物質層の重量に対して3.5〜7.5重量%とし、且つ難燃化剤を結着させる多孔質のバインダとしてポリフッ化ビニリデンの含有量を、難燃化剤の重量に対して15〜25重量%とすることにより、難燃化剤層を形成しても、電池性能を大幅に低下させることがない非水電解液電池を提供することができる。
1 非水電解液電池(リチウムイオン二次電池)(ラミネート電池)
3 正極板
5 負極板
7 セパレータ
9 非水電解液
11 極板群
13 ケース
3 正極板
5 負極板
7 セパレータ
9 非水電解液
11 極板群
13 ケース
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