JP2013052511A - 農業用被覆材 - Google Patents

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和義 池永
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Abstract

【課題】透明性、断熱保温性に優れるうえ、透湿性を損なわず耐候性やカール抑制性にも優れる農業用被覆材を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 ポリビニルアルコール系フィルムと、網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなる農業用被覆材であり、接着剤層がポリビニルアルコール系フィルムの全面に対して20〜70%の割合で存在することを特徴とする農業用被覆材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ビニルアルコール系フィルム、とりわけ延伸ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着された積層体からなる農業用被覆材に関し、更に詳しくは、透明性、断熱保温性に優れるうえ、透湿性を損なわず耐候性やカール抑制性にも優れる農業用被覆材に関するものである。
従来より、農業用被覆材として、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどが用いられており、施設栽培用ハウス、例えばビニルハウス等の外側を被覆するためのシートや内張りカーテン、農作物の上に保温性や害虫防止のために被覆するトンネル用シートあるいはべたがけ用シートなど、様々なところで利用されている。中でも、施設栽培用ハウスの外側を被覆するためのシートやべたがけシートに用いる場合においては保温と防霜のため、内張りカーテンに用いる場合においては保温と防滴のため、透明性と透湿性を損なわず耐候性に優れるといった性能が求められる。
上記農業用被覆材としては、例えば、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、これと疎水性樹脂薄層シートとがポリウレタン系接着剤、とりわけポリエステルポリウレタン系接着剤により接着積層された農業用被覆材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開昭63−319148号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、接着剤として用いているポリエステルポリウレタン系接着剤が、屋外環境下においては、水分と紫外線により加水分解されて劣化し、長期の使用で剥離を起こしてしまうなど、近年の要求性能、特に耐候性に対してまだまだ満足のいくものではなかった。
また、特許文献1においては、接着剤をドライラミネーターにより塗布していることから、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルム全面に塗布しているものであり、これにより得られる複合シートでは、透湿性を損なうこととなり、調湿性と防霜性の点からも農業用被覆材としての改良が求められるものであった。更に、接着剤を全面に塗布しているため、湿度変化の影響により複合シートがカールしてしまうといった不具合も懸念される。
そこで、本発明ではこのような背景下において、透明性、断熱保温性に優れるうえ、透湿性を損なわず耐候性やカール抑制性にも優れる農業用被覆材を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなる農業用被覆材において、接着剤をビニルアルコール系フィルムの全面に塗布するのではなく、部分的に塗布することにより透湿性を損なうことなく、耐候性やカール抑制性に優れた効果を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなる農業用被覆材であり、接着剤層がビニルアルコール系フィルムの全面に対して20〜70%の割合で存在する農業用被覆材に関するものである。
本発明の農業用被覆材は、透明性、断熱保温性に優れるうえ、透湿性を損なわず耐候性やカール抑制性にも優れた効果を有するものであり、農業用被覆材として、特にビニルハウス等の施設栽培用ハウスの外側を被覆するためのシート、内張りカーテン、トンネル用シート、べたがけ用シート等に有効に用いられる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなる農業用被覆材である。
かかるビニルアルコール系フィルムは、ビニルアルコール系樹脂より製膜されてなるものであり、ビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂や、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を挙げることができる。
以下、各ビニルアルコール系フィルムについて詳細に説明する。
まず、ポリビニルアルコール系樹脂より製膜されてなるポリビニルアルコール系フィルムについて説明する。
本発明で用いられるポリビニルアルコール系フィルムは、未延伸のポリビニルアルコール系フィルムであっても、または延伸ポリビニルアルコール系フィルムであってもよいが、流れ方向の引っ張り強度の点で延伸ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく、特には引っ張り強度と耐久性の点で二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。前記の延伸ポリビニルアルコール系フィルムは、未延伸ポリビニルアルコール系フィルムを製造した後、延伸処理、好ましくは二軸延伸処理することにより延伸ポリビニルアルコール系フィルムを製造することができる。
ポリビニルアルコール系フィルムの原料となるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールのいずれでもよく、該ポリビニルアルコールは酢酸ビニルを単独重合し、更にそれをケン化して製造される。
また、変性ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルと他の不飽和単量体との重合体をケン化して製造されたり、ポリビニルアルコールを後変性したりして製造される。中でも本発明では、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
上記で他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
また、後変性の方法としては、ポリビニルアルコールをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることも好ましく、かかる側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ケン化度が80モル%以上のものが好ましく、更には90〜100モル%、特には99〜100モル%が有利である。かかるケン化度が低すぎると耐水性が低下する傾向がある。
また、4重量%水溶液の粘度としては2.5〜100mPa・s(20℃)が好ましく、更には3〜70mPa・s(20℃)、特には5〜60mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が劣る傾向があり、高すぎると製膜性が低下する傾向がある。
尚、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
更に、かかるポリビニルアルコール系樹脂はフィルムの着色防止、強度低下防止のために樹脂中に含有される酢酸ナトリウムの量を0.8重量%以下、好ましくは0.5重量%以下に調整するのが有利である。かかる酢酸ナトリウムの含有量の調整については、メタノール等のアルコール又は水により洗浄する方法等が一般的である。
そして、ポリビニルアルコール系フィルムは、上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いて製膜することにより製造されるが、かかるポリビニルアルコール系樹脂のみからなる場合以外にも、かかるポリビニルアルコール系樹脂に、可塑剤、界面活性剤、フィラーなどを適宜配合して製膜することにより製造することも好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピリングリコール等のアルキレングリコール類やトリメチロールプロパン等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂に配合される可塑剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは20重量部以下である。上記可塑剤の配合量が多すぎると、フィルムの腰がなくなり扱いにくくなる傾向がある。
上記界面活性剤は、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜装置であるドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性の向上を目的として配合される。上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、剥離性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを用いることが好適である。
上記界面活性剤の含有量については、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、0.03〜3重量部であることがより好ましい。上記界面活性剤の含有量が少なすぎると、製膜装置のドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性が低下して製造困難となる傾向があり、逆に多すぎるとブリードアウトし、例えば表面が白化するなどの表面性が低下する原因となる傾向がある。
上記フィラーとしては、例えば、澱粉(各種未加工品だけでなく、エーテル化、酸化、変性品でも良い)やポリメチルメタクリレート等の有機粉末、タルク、雲母、シリカ等の無機粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、澱粉が好適に用いられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂に配合されるフィラーの配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜10重量部、特に好ましくは0.5〜8重量部である。フィラーの配合量が少なすぎると、ブロッキングしやすい傾向があり、逆に多すぎると、フィルム強度が低下する傾向がある。
さらに、本発明の効果を妨げない範囲で、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消泡剤、防錆剤、紫外線吸収剤、さらには他の水溶性高分子化合物(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉等)等の他の添加剤を適宜配合してもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムを製造するに当たっては、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上にポリビニルアルコール系樹脂溶液を流延してフィルムを形成したり、あるいは押出機を用いて、Tダイ法、インフレーション法により押出製膜される。
通常は製膜用の原液として、固形分濃度が15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のポリビニルアルコール系樹脂−水の組成物を調製する。
上記で調製したポリビニルアルコール系樹脂−水の組成物は製膜機(押出機)に連動させるか、あるいは一旦ペレット化、フレーク化してから後製膜機に供給され押出製膜される。
尚、ポリビニルアルコール系樹脂−水の組成物の調製と製膜操作を同一の押出機を用いて行うこともできるが、L/Dを大きくしたり、多軸押出機を使用したり、ギアポンプを利用する等、均一な混和と製膜安定性に留意する必要がある。
ポリビニルアルコール系フィルムの製膜法については、上記ポリビニルアルコール系樹脂−水の組成物を押出機に供給して、その後Tダイからドラム、エンドレスベルト等の金属面上に流延して、乾燥させることによりフィルムを形成する方法が好ましい。また、必要に応じて、乾燥の後、熱処理が行われる。
押出機内での混練温度は55〜140℃が好ましく、更には55〜130℃が好ましい。かかる温度が低すぎるとフィルム肌の不良を招く傾向があり、高すぎると発泡現象を招く傾向がある。
ここで、上記製膜ベルトとは、一対のロール間に架け渡されて走行する無端ベルトを有し、Tダイから流れ出たフィルム形成材料を無端ベルト上に流延させるとともに乾燥させるものである。上記無端ベルトは、例えば、ステンレススチールからなり、その外周表面は鏡面仕上げが施されているものが好ましい。
また、上記製膜ドラムとは、回転するドラム型ロールのことであり、Tダイから流れ出たフィルム形成材料を1個以上の回転ドラム型ロール上に流延し乾燥させるものである。
乾燥温度について、製膜ベルトを用いる場合は、通常、70〜160℃であることが好ましく、特には80〜150℃、更には80〜100℃が好ましい。乾燥温度が低すぎると乾燥不足となりドラムまたはベルトからの剥離が重くなる傾向があり、高すぎると水分率が低くなりすぎ、フィルムが脆くなる傾向がある。
かくして未延伸のポリビニルアルコール系フィルムが得られ、かかるポリビニルアルコール系フィルムを用いることもできるが、本発明においては、更に延伸処理を施し、延伸ポリビニルアルコール系フィルム、好ましくは二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルム、特に好ましくは逐次二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムとして用いる。
かかる二軸延伸については、縦方向の延伸倍率が1.5〜5倍、特には2〜4.5倍、更には2.5〜4倍であることが好ましく、横方向の延伸倍率が1.5〜5倍、特には2〜4.5倍、更には2.5〜4倍であることが好ましい。該縦方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難く、高すぎるとフィルムが縦方向へ裂けやすくなる傾向がある。又、横方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難く、高すぎるとフィルムが破断する傾向がある。
かかる逐次二軸延伸を行うに当たっては、上記ポリビニルアルコール系フィルムの含水率を5〜30重量%、好ましくは20〜30重量%に調整しておくことが好ましく、上記で得られた乾燥前のポリビニルアルコール系フィルムを引き続き乾燥して含水率を調整したり、含水率5重量%未満のポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施して含水率を調整したりする方法等がある。
かかる含水率が低すぎると延伸倍率を充分に高めることができない傾向があり、高すぎると同様に延伸工程で縦横の延伸倍率を高めることができなくなる傾向がある。
更に、二軸延伸を施した後は、熱固定を行うことが好ましく、かかる熱固定の温度は、ポリビニルアルコール系樹脂の融点ないし融点より40℃低い温度までの範囲から選択することが好ましい。熱固定温度が低すぎると寸法安定性が悪く、収縮率が大きくなる傾向があり、一方高すぎるとフィルムの厚み変動が大きくなる傾向がある。ポリビニルアルコール系樹脂が酢酸ビニル単独重合体のケン化物である場合の熱固定温度は、例えば160〜230℃である。また、熱固定時間は1〜30秒間であることが好ましく、より好ましくは5〜10秒間である。
次に、エチレン−ビニルアルコール共重合体より製膜されてなるエチレン−ビニルアルコール系フィルムについて説明する。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、エチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化して得られるものであればよく、かかるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体には、加熱溶融時の安定性向上のために共重合成分としてビニルシラン化合物を0.0002〜0.2モル%含有させることもできる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共重合性単量体、例えば、プロピレン、ブチレン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステル;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。
本発明において、エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は10〜60モル%であり、良好な延伸性を得る観点からは、エチレン含有量は15〜55モル%であることが好ましく、さらには25〜50モル%モル%であることが特に好ましい。
なお、かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
また、かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には99%以上である。
なお、ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体が、ケン化度の異なる2種類以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
さらに、本発明の目的を阻外しない範囲内で加熱溶融時の安定性を向上させるためにエチレン−ビニルアルコール共重合体にホウ素化合物をブレンドすることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)であることが好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体にホウ素化合物をブレンドする場合、ホウ素化合物の含有量は、好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたエチレン−ビニルアルコール共重合体を得ることができる。ホウ素化合物の含有量が少なすぎると添加効果が小さく、多すぎるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体の好適なメルトフローレート(MFR)(230℃、2160g荷重下)は、通常1〜50g/10分であり、より好適には3〜40g/10分、更に好適には5〜30g/10分である。これらのエチレン−ビニルアルコール共重合体は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いて、エチレン−ビニルアルコール系フィルム(延伸前エチレン−ビニルアルコール系フィルム)を製膜するわけである。
かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体には、本発明の目的を阻外しない範囲内で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、硼酸等の架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤等の各種添加剤、ポリアミド、ポリオレフィン、高吸水性樹脂等の各種樹脂を配合してもよい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いて、エチレン−ビニルアルコール系フィルムを製膜する際には、主に溶融成形が用いられる。以下に溶融成形方法について説明する。
かかる溶融成形時の条件としては、特に限定されないが、通常はノンベント、スクリュータイプ押出機を用い、溶融温度190〜250℃で押出製膜される。通常、圧縮比2.0〜4.5のスクリューを用い、Tダイス、または丸ダイスを用いて製膜される。
かくしてエチレン−ビニルアルコール系フィルムが得られるわけであるが、該フィルムに対しては、更に、二軸延伸、好ましくは逐次二軸延伸を施すことにより、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルムとすることができる。
かかる二軸延伸の面積倍率については、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上、特に好ましくは9倍以上であることが、機械強度の観点から重要である。延伸する方法としては、ダブルバブル法、テンター法、ロール法等の一軸または二軸延伸する方法等公知の延伸方法を採用することができ、二軸延伸の場合は、同時延伸、逐次延伸のいずれの方式も採用出来る。
また、延伸前の原反フィルムに予め含水させておくことで容易な連続延伸が可能となり、延伸前の原反フィルムの水分率としては、2〜30重量%が好ましく、特には5〜30重量%が好ましく、更には10〜30重量%が好ましい。水分率が少なすぎると、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるために、グリップ近辺での破れが生じやすくなることがある。一方、水分率が高すぎると、延伸された部分の弾性率が低く、未延伸部分との差が十分でなく、延伸斑が残りやすくなることがある。
かかる延伸温度に関しては、延伸前の原反フィルムの水分率によって多少異なるが、一般に50〜130℃の範囲が適応可能である。特に同時二軸延伸においては、70〜100℃の範囲において、厚み斑の少ない二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルムが得られやすく、逐次二軸延伸においては、ロールでの長手方向の延伸において70〜100℃、テンターでの幅方向の延伸において80〜120℃の温度範囲で行うことにより、厚み斑の少ない二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルムが得られやすい。
そして、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルムの製造に関するさらに重要な因子としては、延伸後の熱処理と、その熱処理の結果として得られる二軸延伸エチレン−ビニルアルコール系フィルムの密度および水分率がある。熱処理は、エチレン−ビニルアルコールの融点より5℃〜40℃低い温度で、5〜20秒間行われることが好ましい。熱処理温度が低すぎると、耐久性が得られないことがあり、熱処理温度が高すぎると、部分的に延伸効果が低減されることがある。
かくして本発明で用いられるビニルアルコール系フィルムが得られるが、ビニルアルコール系フィルムの膜厚は10〜100μmであることが好ましく、更には15〜50μm、特には20〜30μmが好ましい。かかる膜厚が薄すぎると強度が低く耐候性が低下する傾向があり、厚すぎるとフィルム重量が重くなってビニルハウスの補強が必要になったり、作物の生長を阻害する傾向がある。
また、ビニルアルコール系フィルムの全光線透過率としては、作物の生長を阻害しない点で50%以上、特には70%以上、更には90%以上であることが好ましい。なお、全光線透過率の上限値としては通常99%である。
ビニルアルコール系フィルムの破断強度としては、耐候性の点で23℃、50%RHにおいて、150MPa以上であることが好ましく、更には250MPa以上であることが好ましい。なお、破断強度の上限値としては、通常、350MPaである。
ビニルアルコール系フィルムの透湿性は、調湿と結露防止の点で、40℃、90%RHにおいて50g/m・24hr・25μm以上であることが好ましく、更には70g/m・24hr・25μm以上であることが好ましい。なお、透湿性の上限値としては通常7000g/m・24hr・25μmである。
ビニルアルコール系フィルムの表面張力は、結露防止の点で、20dyne/cm以上、特には30dyne/cm以上、更には40dyne/cm以上が好ましい。なお、表面張力の上限値としては、通常、73dyne/cmである。
本発明で用いられる網状樹脂シートとしては、網状の形態を有するものであればよいが、中でも特に、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンフィルム、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのプラスチックスフィルムを延伸し、この延伸フィルムにヤスリやその他の手段により傷をつけて割裂し(スプリットし)、これを拡巾したものを縦・横に連続的に積層・熱融着したメッシュ状の不織布、いわゆるワリフや、同様のプラスチックフィルムを延伸し、この延伸フィルムをマイクロスリットしたフラットヤーンを縦横方向に織って、熱融着や接着剤等により一体化した織布等が挙げられる。
上記の網状樹脂シートの空隙率としては、透湿性、透明性、強度の点で10〜70%であることが好ましく、更には20〜60%、特には30〜50%であることが好ましい。空隙率が低すぎると吸湿時の寸法変化の差が大きすぎて農業用被覆材がカールしたり、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムとの剥離が生じたりする傾向があり、大きすぎると農業用被覆材の耐水強度が不足し、長期間の使用に耐え難くなる傾向がある。
また、網状樹脂シートの目付量としては、5〜60g/mであることが好ましく、更には10〜50g/m、特には20〜40g/mであることが好ましい。かかる目付量が少なすぎると強度が不足し耐候性が低下する傾向があり、多すぎると透明性が低下し透過光量が不足し、作物の生育を阻害する傾向がある。
また、網状樹脂シートの厚さについては、通常30〜200μm、好ましくは40〜150μm、特に好ましくは50〜100μmである。
市販品としては、例えば、ワリフでは日本石油株式会社製の「日石ワリフ」等、織布ではダイヤテックス株式会社製の「ふわふわ#30」等がある。
本発明においては、前記のポリビニルアルコール系フィルムと前記の網状樹脂シートとが接着剤により接着積層される。
本発明に用いられる接着剤としては、耐候性と貼り合わせの容易さの点から熱溶融性樹脂からなる接着剤であることが好ましい。
上記熱溶融性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル系樹脂、クロロプレンゴム系樹脂、等が挙げられる。中でもポリオレフィン系樹脂、特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが、接着性の点で好ましい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体であり、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられるが、中でも無水マレイン酸が好ましい。
具体的な酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸α−オレフィン共重合ポリエチレン等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。
また、不飽和カルボン酸又はその無水物の量をコントロールするに当たっては、該酸変性ポリオレフィン系樹脂と相溶する未変性のポリオレフィン樹脂や他の変性ポリオレフィン樹脂とブレンドし、全オレフィン系樹脂に対する不飽和カルボン酸又はその無水物の量としても良い。
更に、耐候性向上を目的として、かかる接着剤に耐候安定剤を配合しても良い。
本発明において、前記ビニルアルコール系フィルムと前記網状樹脂シートとを接着剤を介して接着するに際しては、接着剤層がビニルアルコール系フィルムの全面に対して20〜70%の割合で存在させることが必要であり、好ましくは30〜60%、特に好ましくは40〜50%である。かかる割合が低すぎると接着力が不足し、長期間の使用によって剥離などの不具合を生じることとなり、高すぎると透湿性と透明性を損なうこととなる。
本発明においては、接着剤層を全面に存在させないことにより、ビニルアルコール系フィルムの透湿性を損なうことなく接着性に優れ耐久性に優れた効果を有することになるのである。
また、本発明においては、接着剤層が、筋状及び/又は帯状に形成されていたり、網状に形成されていたり、点状或いは円状に部分的に形成されていたりしてもよいが、中でも網状樹脂シートの縦または横方向に筋状及び/又は帯状に形成されていたり、或いは網状に形成されていることが、生産性とカール防止性の点で好ましく、特には縦方向(長手方向、MD方向)に筋状及び/又は帯状に形成されていることが製造の容易さの点で好ましい。
積層方法については、例えば、(1)接着剤を適宜溶媒に溶解しいずれかの基材上に塗布した後他方の基材を貼り合わせる方法や、(2)接着剤を押出機より溶融押出し両基材を貼り合わる押出ラミネーション法、等が挙げられる。中でも、生産性と広幅の製品が得られる点から(2)押出ラミネーション法が好ましい。
押出ラミネーションに際しては、熱可塑性樹脂を押し出し機等を用いて溶融し、T−ダイ法で溶融膜状に薄く押し出し、接着剤としてポリビニルアルコール系フィルム上に製膜させ、その上から網状樹脂シートを供給し金属ロール等で押さえることにより貼り合わせることもできるが、本発明においては、T−ダイ法で溶融膜状に押し出す際、部分的に熱可塑性樹脂が出ない(目詰め状態になる)部分を周期的に設けることによって接着剤層を筋状及び/又は帯状に形成し、この筋状及び/又は帯状に形成された接着剤層によってビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとを貼り合わせることが好ましい。このように筋状及び/又は帯状に接着剤層を形成することにより、接着剤層がある部分とない部分が幅方向に周期的に形成され、接着剤層のない部分はビニルアルコール系フィルムの状態となっているため、その部分を通じて水蒸気が透過することとなり農業用被覆材として透湿性に優れることとなる。
また、接着剤層の厚みについては、30〜100μmであることが好ましく、特には50〜80μmであることが好ましい。かかる膜厚が薄すぎると接着力が不足し、長期間の使用に耐え難くなる傾向があり、厚すぎると透明性が損なわれたり、農業用被覆材が重くなって作物の生長を阻害したりする傾向がある。
かくして、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤を介して接着された積層体からなる本発明の農業用被覆材が得られる。
本発明の農業用被覆材の厚みとしては、最も厚いところで30〜500μmであることが好ましく、特には50〜400μm、特には100〜300μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると農業用被覆材としての強度が低く耐候性が低下する傾向があり、厚すぎると重量が重くなって施設栽培用ハウスの補強が必要になったり、作物の生長を阻害する傾向がある。
また、ビニルアルコール系フィルムと接着剤層と網状樹脂シートとの厚み比については、通常1:1〜10:1〜10であり、好ましくは1:1〜5:1〜5、特に好ましくは1:2〜4:2〜4である。
本発明の農業用被覆材は、特に施設栽培用ハウス、例えばビニルハウスの外側を被覆するためのシートや内張カーテン、トンネル用シート、べたがけ用シート等に有効に用いられる。中でも、施設栽培用ハウス内の保温・除湿・防滴のための内張カーテンとして非常に有用である。
ところが、通常、施設栽培用のハウス内においては、内外の気温差によって凝縮した水滴がハウス内面に付着し、この水滴が施設栽培用の内張カーテンの上に落下し、そのために内張カーテン上に大きな水たまりができ、水の重みにより、所謂金魚鉢現象と呼ばれる現象が生じることが知られている。内張カーテンは、換気等の必要から日常的に開閉しているが、金魚鉢現象が見られると、内張カーテンの開閉を困難にし作業性が非常に悪くなる。また内張カーテンの耐久性を損い、水分の重さに耐え切れずに内張カーテンが破れ、その際には農作物に損害を与えるという問題もある。
そこで、本発明の農業用被覆材においては、上記で得られるビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤を介して接着された積層体の少なくともビニルアルコール系フィルムが、50cm角あたりに少なくとも1個の小孔を有するものであることが好ましく、特に好ましくは3〜100個、更に好ましくは5〜50個、殊に好ましくは10〜30個であり、これにより上記金魚鉢現象を抑制することができる。
かかる小孔については、その形状に円形、楕円形等の他、スリット形状など適宜選択されるが、容易に小孔を形成できる点からスリット孔が有利である。スリット孔の長さは、通常5〜30mmであり、好ましくは5〜20mm、特に好ましくは7〜15mmである。かかるスリット孔の長さが短すぎると孔にゴミや藻が付着し目詰まりを起こしやすくなる傾向があり、長すぎると積層体が破れやすくなったり、水滴が落下しやすくなったりする傾向がある。また、施設栽培用ハウス内の内張りカーテンに使用する場合、ハウス内の暖房による暖気が、スリット孔の場合、逃げにくい構造になり、暖房効率の向上にもなる。
本発明においては、上記小孔を予めビニルアルコール系フィルムに形成させておき、かかるビニルアルコール系フィルムを上記網状樹脂シートと積層してもよいし、また、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとを積層して積層体とした後、かかる積層体に小孔を形成させてもよい。中でも、後者のほうが金魚鉢現象の抑制の点から好ましい。
なお、小孔を予めビニルアルコール系フィルムに形成させておく場合には、ビニルアルコール系フィルムの製造後に引き続き、小孔形成用の工程を設けてオンラインにて行ってもよく、また、一旦巻き取られたビニルアルコール系フィルムを巻きだして、オフラインにて小孔を形成させてもよい。
更に、本発明においては、上記小孔はスリット孔であることが有利であるが、かかるスリット孔は、ビニルアルコール系フィルムを少なくとも貫通していればよいが、好ましくは積層体を貫通していることが好ましく、スリット孔のスリット面同士は、通常、ほんの隙間が生じる程度であり、静置状態では通常接しているものであるが、水の通過は行われるものであればよい。また、スリット孔は、上述の筋状及び/又は帯状に形成された接着剤のライン方向と平行に形成することが積層体自体の強度を維持できる点で好ましい。
なお、金魚鉢現象を抑制する方法として、従来からも内張カーテンに小孔を設けることは行われてきたが、小孔を設けるに際しては熱針を用いて行うなど手間のかかるものであり、パンチやスリット等の簡易な方法では小孔部分の強度が弱くなり、小孔部分が拡大したり、被覆材全体の強度も弱くなるなど、容易に小孔、特にスリット孔を形成することができなかったところ、本発明においては、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤を介して接着された積層体からなる農業用被覆材であるため、簡易な方法により小孔、特にスリット孔を形成せしめても、金魚鉢現象を抑制できることはもとより、農業用被覆材全体の強度劣化も生じないといった効果をも有するものである。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<実施例1>
〔ポリビニルアルコール系フィルム〕
ポリビニルアルコール(ケン化度99.7モル%、4%水溶液粘度23mPa・s(20℃))の50%水溶液をT−ダイから押出してフィルム化し、乾燥しながら縦方向に3倍延伸後、テンターで横方向に3倍延伸し、ついで220℃で15秒間熱固定した。これにより、厚み25μmの二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムを得た。
〔網状樹脂シート〕
高密度ポリエチレンの両面に、高圧法低密度ポリエチレンを積層させ、インフレーション法にて2種3層フィルムを形成し、このフィルムを所定幅にスリットした後、一軸延伸して得られた、幅1.25mmのフラットヤーンを、織機を用いて、経糸の目合いを幅間隙部2mm、緯糸を7.5本/25.4mmで平織りの織布を形成した後、その織布を熱ロール上に接触させて、経緯糸の交差点を熱融着させた網状樹脂シート(ダイヤテックス株式会社製 「ふあふあ#30」、目付量30g/m、空隙率32%、)を用意した。
〔接着剤〕
接着剤として酸変性低密度ポリエチレン(三菱化学製 「モディックM545」)を用意した。
〔農業用被覆材〕
上記接着剤を用い、樹脂温度が130℃になるように設定し、且つ、T−ダイに部分的に接着剤が出ない部分を3.5mm間隔で周期的に設けて、接着剤が筋状に出るようにし、貼り合わせた後の接着剤層の厚みが70μmになるように接着剤の吐出量を調整した押出ラミネート装置を用いて、上記二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムと上記網状樹脂シートとのラミネートを行い、農業用被覆材を得た。得られた農業用被覆材の厚みは最も厚いところで170μm、接着剤層の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの全面に対する割合は40%であった。
得られた農業用被覆材について、以下の評価を行った。
(透湿性)
透湿性試験は、規格試験法(JIS Z−0208)の透湿カップを用いてウェットカップ法で測定した(ASTM E 96 B類似法)。透湿カップの中に塩化カルシウムの代わりに蒸留水を20g入れる以外は、JIS Z−0208にある方法でサンプルをカップに取り付けた。サンプルを取り付けたカップをカトー社製恒温恒湿機「SE−43CI−A−C型」に入れ、23℃、70%RHと40℃、90%RHの環境に置き、それぞれの透湿度を24時間おきに4回測定し、その平均を算出した。
(耐候性)
耐候性試験は、岩崎電気社製、促進耐候性試験機「スーパーキセノンテスターXER−W73型」を使用し、照射時間10時間、結露時間10時間、暗黒時間10時間、照射時にシャワーを18分間かけ、シャワーの間隔は1.7時間、照射時の放射照度60W/m、ブラックパネル温度は照射時65℃、暗黒時50℃、相対湿度は照射時70%RH、暗黒時90%RH、ドラム回転数は1rpmの条件で行い、剥離にかかる時間を観察した。
(カール抑制性)
得られた農業用被覆材を30cm角の正方形に切り出し、カトー社製、恒温恒湿機を用いて60℃、80%RHで10時間曝露した後、60℃、20%RHで10時間曝露し、更に20℃、50%RHで1週間調温調湿して、サンプルの凸部を下にし、MD方向(流れ方向:長手方向)とTD方向(幅方向)の端部の反り上がりの高さを物差しで計測した。
<実施例2>
実施例1と同じ二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムと網状樹脂シートを使用して、貼り合わせた後の接着剤層の厚みが50μmになるように接着剤の吐出量を調整した押出ラミネート装置を用いた以外は、実施例1と同じ条件でラミネートを行い、農業用被覆材を得た。得られた農業用被覆材の厚みは最も厚いところで150μm、接着剤層の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの全面に対する割合は40%であった。
得られた農業用被覆材について、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例3>
〔ポリビニルアルコール系フィルム〕
ポリビニルアルコール(ケン化度99.7モル%、4%水溶液粘度23mPa・s(20℃))の20%水溶液をT−ダイから押出してフィルム化し、乾燥した。これにより、厚み25μmの無延伸ポリビニルアルコールフィルムを得た。
〔農業用被覆材〕
上記の無延伸ポリビニルアルコールフィルムを使用した以外は、実施例1と同じ条件でラミネートを行い、農業用被覆材を得た。得られた農業用被覆材の厚みは最も厚いところで170μm、接着剤層の無延伸ポリビニルアルコールフィルムの全面に対する割合は40%であった。
得られた農業用被覆材について、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例1>
実施例1と同じ二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムと網状樹脂シートを使用して、T−ダイから接着剤が帯状に出るようにした押出ラミネート装置を用いてラミネートを行い、農業用被覆材を得た。得られた農業用被覆材の厚みは最も厚いところで170μm、接着剤層の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの全面に対する割合は100%であった。
得られた農業用被覆材について、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例2>
実施例1と同じ二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムと網状樹脂シートを使用して、接着剤としてポリエステル系/イソシアネート二液型ポリウレタン系接着剤(100/5(重量比))(東洋モートン株式会社製「AD−506S/AD−RT」)を用い、ドライラミネーターにより、上記二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム上に塗布量4.5g/m(乾燥基準)で塗布し、網状樹脂シートと貼り合せ、農業用被覆材を得た。得られた農業用被覆材の厚みは最も厚いところで105μm、接着剤層の二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの全面に対する割合は100%であった。
得られた農業用被覆材について、実施例1と同様の評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2013052511
<実施例4>
実施例1で得られた農業用被覆材から、幅2m、長さ4mのサイズの農業用被覆材を試験片として切り出し、かかる試験片に対して、長さ10mmのスリット孔を15cm四方間隔で形成した。
得られたスリット孔が設けられた試験片について、以下の評価を行った。
(1)幅方向の両端に、成人男性3名を配置し、両端から試験片を引っ張ったが、スリット孔が拡大したり、試験片が破れたりする等の不具合は生じなかった。
(2)長さ方向の両端に、成人男性3名を配置し、両端から試験片を引っ張ったが、スリット孔が拡大したり、試験片が破れたりする等の不具合は生じなかった。
(3)試験片を水平に展張して、その上から散水を行い、水たまり現象(金魚鉢現象)の状態を再現したが、実用に支障をきたすような水たまり現象(金魚鉢現象)は生じなかった。
上記結果より、接着剤層が部分的に、特に筋状に形成されている実施例品では、透湿性を保持したまま耐久性及びカール抑制に優れているのに対して、接着剤層が全面に形成されている比較例品ではカール抑制性が得られず、また、二液型ポリウレタン系接着剤を用いた比較例2においては耐候性及びカール抑制性ともに良好なものが得られていないことがわかる。また、比較例品においては、接着剤層が全面に塗布されているため、透湿性の低下を招くものである。
更に、上記実施例1に対してスリット孔を設けたものについて、幅方向、長さ方向の強度を評価したところ、スリット孔を設けているにもかかわらず強度は維持されているものであり、また、金魚鉢現象の抑制効果も有しているものであることがわかる。
本発明の農業用被覆材は、透明性、断熱保温性に優れるうえ、透湿性を損なわず耐候性やカール抑制性にも優れるものであり、特に施設栽培用ハウス、例えばビニルハウスの外側を被覆するためのシートや内張カーテン、トンネル用シート、べたがけ用シート等に有効に用いられる。また、建築資材として透湿防水シートとしての応用も考えられる。

Claims (9)

  1. ビニルアルコール系フィルムと、網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなる農業用被覆材であり、接着剤層がビニルアルコール系フィルムの全面に対して20〜70%の割合で存在することを特徴とする農業用被覆材。
  2. 接着剤層が、網状樹脂シートの縦または横方向に筋状及び/又は帯状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の農業用被覆材。
  3. 接着剤が、熱溶融性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載の農業用被覆材。
  4. 熱溶融性樹脂が、酸変性ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3記載の農業用被覆材。
  5. ビニルアルコール系フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の農業用被覆材。
  6. ビニルアルコール系フィルムが、二軸延伸ビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の農業用被覆材。
  7. 網状樹脂シートが、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の農業用被覆材。
  8. 積層体の少なくともビニルアルコール系フィルムが、50cm角あたりに少なくとも1個の小孔を有するものであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の農業用被覆材。
  9. 小孔が、長さ5〜30mmのスリット孔であることを特徴とする請求項8記載の農業用被覆材。
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