JP2013044073A - 人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】煩雑なプロセスを踏まずに、メランジ調の外観を達成したスエード調の人工皮革を提供する。
【解決手段】人工皮革は、極細繊維からなる繊維シート基体と高分子弾性体がバインダーとして付与されてなる人工皮革において、人工皮革シート基体表層部の起毛工程において、表層部の研削量を少量に抑え、表層に極細繊維からなる立毛部と高分子弾性体露出部を混在させ、さらに分散していない短い立毛繊維束を表層に発生させることにより、表層において極細繊維からなる立毛部と表層の高分子弾性体露出部の境を明瞭化し、メランジ調の外観を達成した人工皮革。
【選択図】なし

Description

本発明は、煩雑なプロセスを踏まずにメランジ調の外観を達成したスエード調の人工皮革およびその製造方法に関するものである。
ここに、メランジ調とは、従来、染色挙動の異なる成分の繊維、例えば、ポリエステル繊維とナイロン繊維等を混綿し、それぞれの繊維が異なった色に染色されることにより、製品表層を均一な色相ではなく、色の異なる繊維が混合した霜降りのような異色効果を発現した外観のことである。
人工皮革の種類は、近年、消費者要求の多様化から、表面を起毛したスエード調の人工皮革や、表層に高分子弾性体を付与した銀付きの人工皮革など多種多様化している。スエード調の人工皮革は、表面起毛部による均一な手触り感やライティングエフェクトが高品位として評価され、乗物用座席の上張材、インテリア、靴、鞄および手袋など様々な用途に使用されている。
一方で、単に均一な外観だけでなく、様々な色調や新規な外観への要求が強くなってきており、いわゆるメランジ調と呼ばれる、異色効果を表現できるような人工皮革を有することは、素材バリエーション拡大につながり、技術開発および販売戦略上重要である。
スエード調の人工皮革でメランジ調の外観を得る手段として、染色挙動の異なるポリエステル繊維とポリアミド繊維を特定の比率で混綿した繊維シート基体に、高分子弾性体を付与し、これを分散染料や酸性染料等の1種また2種類以上の染料で染色する方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案では、ポリエステル繊維にポリアミド繊維を混合し、分散染料で染色を行うことにより、高分子弾性体であるポリウレタンや混合されたポリアミド繊維が染料で汚染されるため、還元洗浄が必須の上、さらにポリアミド繊維の酸性染料染色工程もあり、工程が長くなるという課題がある。
また別に、極細繊維とその極細繊維より大きな単繊維繊度を有する繊維を混綿させることにより、メランジ調の外観を発現させる方法も提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、メランジ調品位の達成は可能であるが、単繊維繊度の異なる異種の繊維の混綿工程が必須であった。
このように混綿プロセスによるメランジ調品位達成手段については多く提案されているが、2種類以上の繊維の混合工程が必要であり、異なる繊維を混合しない生産プロセス簡略化まで含めたメランジ調品位の達成手段は、これまで提案されていない。
特開昭57−66190号公報 特開2000―248271号公報
そこで本発明の目的は、極細繊維からなる繊維シート基体と高分子弾性体がバインダーとして付与されてなる人工皮革において、人工皮革シート基体の表層部の起毛工程において表層部の研削量を少量に抑え、表層に極細繊維からなる立毛部と高分子弾性体露出部を混在させ、さらに分散していない短い立毛繊維束を表層に発生させることによって、表層における極細繊維からなる立毛部と高分子弾性体露出部の境を明瞭化し、メランジ調の外観を達成した人工皮革を提供することにある。
また、本発明で得られる人工皮革は、従来の染色挙動の異なる繊維の混綿や、前記の異なる成分での染色等の煩雑なプロセスを必要とせず、さらには混綿後の品種切替時に繊維のコンタミを防ぐために過度な清掃も必要とせず、1種類の繊維から形成された、従来よりも簡略化したプロセスでメランジ調の外観を達成したものである。
本発明の他の目的は、人工皮革シート基体の起毛工程において、極細繊維と高分子弾性体が強固にバインドされた人工皮革シートの表層部の研削量を少量に抑えることにより、上記特性の人工皮革を効率良く製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体がバインダーとして付与された人工皮革において、従来の混綿や異成分染料による染色等煩雑なプロセスなしで、メランジ調の外観を達成するためには、人工皮革シート基体の表層部の起毛工程において表層部の研削量を少量に抑え、表層に極細繊維からなる立毛部と高分子弾性体露出部を混在させ、さらに分散していない短い立毛繊維束を表層に発生させることにより、表層における極細繊維からなる立毛部と表層の高分子弾性体露出部の境を明瞭化させることを達成できることを見いだし、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の人工皮革は、極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体がバインダーとして付与されてなる人工皮革において、人工皮革の表層が、前記立毛繊維からなる部分と前記高分子弾性体が露出した部分からなり、前記高分子弾性体の露出した部分が表層の5%〜50%を占める表層構造からなる人工皮革である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の人工皮革の表層に、長径が50μm以上300μm以下であって、極細繊維が分散していない極細繊維束が1.0mm単位当たりに1つ以上存在していることである。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の極細繊維は2種類以上の単繊維繊度の異なるポリエステル系繊維からなるものである。
また、本発明の人工皮革の製造方法は、極細繊維からなる繊維シート基体と高分子弾性体がバインダーとして付与されてなる人工皮革の製造方法において、前記極細繊維からなり、繊維密度が0.150g/cm以上0.500g/cm以下である前記繊維シート基体に、高分子弾性体が繊維シート基体質量に対して10質量%以上120質量%以下付与され、極細繊維が高分子弾性体により強固にバインドされた人工皮革シート基体の表層部を100μm以下で研削し、表層における極細繊維からなる立毛部と露出した高分子弾性体部の境を明瞭化することを特徴とするものである。
本発明によれば、従来のような煩雑なプロセスを踏まずに、メランジ調の外観を有したスエード調の人工皮革が得られる。すなわち、表層における極細繊維からなる立毛部と露出した高分子弾性体部分の境を明瞭化することができる。
上記の煩雑なプロセスとは、メランジ調の外観を達成するために、染色挙動の異なる繊維の混綿、前記繊維の異なる成分での染色、さらには異なる繊維の除去作業等のプロセスを意味し、本発明は前述のプロセスを必要とせずに、1種類の繊維から形成される人工皮革において、表層の立毛繊維と高分子弾性体露出部の存在割合、また立毛繊維の構造を制御することにより、メランジ調の外観の達成にいたったものである。
図1は、本発明の実施例1で得られた人工皮革の表層を示し、立毛繊維からなる部分と高分子弾性体が露出した部分からなる表層の高分子弾性体が露出している部分の割合を説明するための図面代用写真である。 図2は、比較例1で得られた人工皮革の表層を示し、立毛繊維からなる部分と高分子弾性体が露出した部分からなる表層の高分子弾性体が露出している部分の割合を説明するための図面代用写真である。 図3は、本発明の実施例1で得られた人工皮革の表層を示し、極細繊維が分散していない極細繊維束を説明するための図面代用写真である。 図4は、メランジ調の外観イメージを例示説明するための平面模式図であり、図4aは微細な霜降り模様の模式図であり、図4bは粗い霜降り模様の模式図である。
<人工皮革>
本発明の人工皮革は、極細繊維からなる表面に立毛を有する繊維シート基体と高分子弾性体で形成され、人工皮革の表層が極細繊維からなる立毛部と表層の高分子弾性体露出部の境が明瞭化された人工皮革である。
本発明の人工皮革は、その表層において、高分子弾性体の露出した部分の割合(面積)が表層の5%〜50%を占める表層構造からなることが重要である。高分子弾性体が露出した部分の割合(面積)が5%より少ないと表面が立毛繊維で覆われた均一な外観となり、逆に割合(面積)が50%より多くなると極細繊維で構成される立毛繊維からなる部分が少なくなり、人工皮革が持つ従来のソフトな触感が失われる。高分子弾性体が露出した部分の割合は、メランジ調の外観とソフトな触感のバランスから10%以上40%以下が好ましい。
また、本発明の人工皮革の製造方法は、極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体がバインダーとして付与された人工皮革シート基体において、後述するように、極細繊維束が高分子弾性体によって強固にバインドされている面を、好ましくは100μm以下で少量研削することにより、分散していない短い立毛繊維束を表層に発生させることが重要であり、それにより初めて、表層が立毛繊維からなる部分と高分子弾性体露出部分の境が明瞭化することができ、これにより色相差の違いからメランジ調の外観を達成するのである。
本発明の人工皮革は、高強力なものとするために不織布に、織物が挿入され、一体化されてた繊維シート基体をもちいることができる。織物を構成する単糸としては、ポリエステル繊維やポリアミド繊維などの合成繊維からなる単糸が挙げられるが、染色堅牢度の点から極細繊維と同素材であることが好ましい。このような単糸の形態としては、フィラメントヤーンや紡績糸などが挙げられるが、高物性を維持するために、強撚糸が好ましく用いられる。単糸として、紡績糸は表面毛羽の脱落が多く、欠点となるため、フィラメントヤーンを用いることが好ましい。
本発明の人工皮革において用いられる極細繊維は、人工皮革としての性能、すなわち柔軟性、触感、外観品位および強力特性などを高めるために、単繊維繊度は1.0dtex以下0.001dtex以上の極細繊維であることが好ましく、より好ましくは0.5dtex以下0.005dtex以上である。またさらに、色調差を発生させるために2種類以上のポリマーからなる極細繊維または同一成分で単繊維繊度の異なる極細繊維が混綿されていても良い。
本発明で用いられる極細繊維を構成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエステルエラストマー等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66およびポリアミドエラストマ等のポリアミド系、ポリウレタン系、ポレオレフィン系およびアクリルニトリル系など、繊維形態を有するポリマーならば使用可能であるが、実用性能の点からポリエステル系とポリアミド系のポリマーが好ましく使用される。
本発明の人工皮革において繊維シート基体として用いられる好適に不織布としては、短繊維を、カードやクロスラッパーを用いて積層繊維ウェブを形成させた後に、ニードルパンチやウォータージェットパンチを施して得られる短繊維不織布、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、および抄紙法で得られる不織布などを採用することができる。中でも短繊維不織布は、立毛繊維長が均一なものが得られるため本発明で好ましく用いられる。
また、不織布の形成は、ニードルパンチが不織布の厚みに制限されず、不織布の方向に対し垂直方向に繊維を配向させることができるため好ましく用いられる。
本発明で用いられる繊維シート基体の厚みは、0.6mm以上3.9mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0mm以上3.0mm以下である。厚みが0.6mmより小さいと人工皮革の柔軟な風合いが損なわれ、3.9mmより大きいとニードルパンチ等での繊維絡合工程で、針折れが多発し、操業安定性が低下することがある。
本発明の人工皮革において用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマーおよびスチレン・ブタジエンエラストマー等を用いることができるが、柔軟性とクッション性の観点から、ポリウレタンが好ましく用いられる。
また、高分子弾性体には、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系等のエラストマー樹脂、アクリル樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル樹脂等が含まれていても良い。また、高分子弾性体は、有機溶剤中に溶解していても、水中に分散していてもどちらでもよい。
また、本発明において極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体が付与された人工皮革シート基体において、高分子弾性体の付与量および極細繊維密度は、人工皮革シート基体の極細繊維が強固にバインドされた面を得るのに重要である。
高分子弾性体の好適な使用割合については、繊維シート基体質量に対する高分子弾性体質量は、10質量%以上120質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上80質量%以下である。高分子弾性体重量が10質量%より少ないと、人工皮革シート基体の起毛工程において研削量を少量に調整しても、繊維の脱落が大きく、表層部に極細繊維からなる立毛部と表層部に露出した高分子弾性体部の境が明瞭化しないという傾向を示す。一方で、高分子弾性体重量が120質量%より多くなると、研削量を少量に調整しても表層部の大半が高分子弾性体からなるため、明瞭なメランジ調の外観が得られないという傾向を示す。
人工皮革シート基体において、極細繊維からなる繊維シート基体の繊維密度は、0.150g/cm以上0.500g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.180g/cm以上0.350g/cm以下である。繊維密度が0.150g/cm未満では、人工皮革シート基体の起毛工程後の表層の大半が高分子弾性体からなるため、明瞭なメランジ調の外観が得られないという傾向を示す。また、繊維密度が低く、工程張力で人工皮革シート基体が伸び、加工安定性が乏しくなることがある。一方で、繊維密度が0.500g/cmより高いと、繊維密度が高いため、その隙間を埋める高分子弾性体の付与量が少なくなるため、起毛工程後に表層部に露出した高分子弾性体部が少なくなり明瞭なメランジ調の外観が得られないという傾向を示す。前記極細繊維密度は、繊維の絡合工程、熱収縮、カレンダー加工等を適宜適用して、調整することができる。
本発明において、明瞭なメランジ調の外観を得るためには、人工皮革の表層の高分子弾性体の露出した部分の割合に加え、高分子弾性体が分散していない極細繊維束が表層に存在していることも重要である。分散していない極細繊維束は、研削工程での研削量を抑えることにより、人工皮革シート基体表層部から極細繊維が持ち出されないため、表層の立毛繊維長を短く抑えることができ、極細維が短く、表層で分散しない状態(凝集した状態)となる。一方、研削量が多いと人工皮革シート基体表層部の高分子弾性体を削り、人工皮革シート基体表層部の極細繊維も表層に持ち出され、立毛繊維長が長くなり、表層で分散するため、高分子弾性体の露出部との境の明瞭化に乏しく、優美なメランジ調外観が失われる傾向を示す。
また、人工皮革の表層に形成される分散していない極細繊維束の大きさは、長径が50μm以上300μmであることが好ましく、より好ましくは100μm以上250μm以下極細である。前記の極細繊維束は、繊維シート基体の繊維絡合工程で、繊維が厚み方向に持ち込まれ、絡合が進行する過程で形成されるものであり、その厚み方向に形成された繊維束が高分子弾性体付与により固定される。そのため、極細繊維束の形状は円形ではなく、工程中の寸法変化(長さが伸びるため)に影響され、楕円形状になる傾向があるため、繊維束の大きさは長径で評価した。
さらに、人工皮革の表層に形成される分散していない極細繊維束数は、1.0mm単位当たりに少なくとも1つ以上存在していることが好ましく、2つ以上13以下存在しているこがより好ましい態様である。表層に全く短く分散していない繊維がないと、人工皮革の表層に存在する立毛部が分散しているため、高分子弾性体が露出した部分との境の明瞭化が乏しく、異色性に乏しくなる傾向となる。分散していない極細繊維束数が13より多いと人工皮革シートの表層のほとんどが短い分散していない繊維束のみで形成されるため、表層の高分子弾性体露出部分が少なく異色性に乏しくなる傾向であり好ましくない。
本発明で云う表層部は、研削工程で研削される人工皮革シート基体の厚み方向の領域であり、人工皮革シート基体の表面から厚み方向に350μmの部分を意味する。研削できる人工皮革シート基体の領域は、研削工程での人工皮革シート基体にかかる圧力、研削工程で使用するサンドペーパーのメッシュサイズ、およびサンドペーパーの回転速度を変更することにより、適宜調整することは可能である。しかしながら、350μmより多く研削すると、サンドペーパーの目詰まりが頻発するため、人工皮革シート基体の研削ムラが発生しやすいなど、加工安定性が低下する傾向がある。
また、淡色系の染料で繊維を染色する場合、高分子弾性体を濃色にして、人工皮革表層の極細繊維からなる立毛部と表層部に露出した高分子弾性体部のコントラストを増加させるために、必要に応じて高分子弾性体にカーボンブラック等の顔料を入れることにより、高分子弾性体の色相を濃色系に調整することが可能であり、極細繊維の染料および高分子弾性体への添加物を自由に組み合わせることにより、メランジ調の色調を適宜変化させることが可能である。また、酸化防止剤、耐光剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤および防臭剤等の添加剤が配合されていてもよい。これらの添加剤の添加は特に1つの工程に限定されず、高分子弾性体付与時に高分子弾性体溶液に配合されていても良く、また染色時に染料に配合されていても良い。
<人工皮革の製造方法>
次に、本発明の人工皮革を製造する方法について説明する。
本発明において、極細繊維束が絡合してなる繊維シート基体である不織布を得る手段としては、海島型複合繊維等の極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維から直接不織布を製造することは実質的に困難であることから、まず極細繊維発生型繊維から不織布を製造し、この不織布における極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることにより、極細繊維束が絡合してなる不織布を得ることができる。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分に用い、海成分を溶剤など用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがあるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物(繊維絡合体)の強度にも資する点から、海島型複合用口金を用いた海島型複合繊維が特に好ましく用いられる。
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。海成分として用いられる成分は、組み合わる島成分と溶解性または分解剤による分解性を異にし、さらに島成分との相溶性が小さいものが好ましく用いられる。その中でも紡糸工程の安定性の面から、島成分がポリエステル及びナイロンで海成分がポリスチレンや共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
海島型複合繊維の島成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどからなる各種合成繊維を用いることができるが、強度、寸法安定性、耐光性および染色性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート等からなるポリエステル繊維が好ましく用いられる。
本発明で用いられる繊維シート基体としての不織布を得る方法としては、前述のとおり、繊維ウェブをニードルパンチやウォータージェットパンチにより絡合させる方法、スパンボンド法、メルトブロー法および抄紙法などを採用することができ、中でも前述のような極細繊維束の様態とする上で、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等の処理を経る方法が好ましく用いられる。本発明では、前述のとおり、これらを施して得られる短繊維不織布、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、および抄紙法で得られる不織布などを採用することができる。中でも短繊維不織布は、立毛繊維長が均一等良好なものが得られるため、特に好ましく用いられる。
また、繊維シート基体として用いられる不織布と織物の積層一体化には、ニードルパンチやウォータジェットパンチ等が、繊維の絡合性の面から好ましく用いられる。それらの中でも、ニードルパンチがシート厚みに制限されず、繊維シート基体方向に対し垂直方向に繊維を配向させることができるため好ましく用いられる。
ニードルパンチで使用される針には、バーブの本数は1〜9本であることが好ましい。バーブの本数を1本以上とすることにより、効率的な繊維の絡合が可能となる。一方、バーブの本数を9本以下とすることにより、繊維損傷を抑えることができる。バーブ数が9本より多くなると、繊維損傷が大きくなり、また針跡がシート基体に残り製品の外観不良になることがある。繊維の絡合性と製品外観への影響を考慮すると、バーブ本数は1本以上、4本以下がより好ましい。
さらに、バーブのトータルデプス(バーブの先端部からバーブ底部までの長さ)は、0.05〜0.10mmであることが好ましい。バーブのトータルデプスを0.05mm以上とすることにより、繊維束への十分な引掛かりが得られるため効率的な繊維絡合が可能となる。また、バーブのトータルデプスが0.10mmより大きいと繊維の繊維シート基体内部への持ち込みは多いが、繊維シート基体に針跡を残し、品位が低下するため、好ましくない。バーブ部の強度と繊維絡合のバランスを考慮すると、バーブのトータルデプスは、0.06mm以上0.08mm以下であることが好ましい。
上記の針を用いて、ニードルパンチすることにより、人工皮革表層に長径が50μm以上300μm以下の繊維束を繊維シート基体厚み方向に配向させることができる。
繊維束の長径は、極細繊維発生型繊維の直径および針のバーブサイズを調整することにより、適宜調整することができる。本発明者らの研究によれば、バーブのトータルデプスが70μmの針で、直径20μmの極細繊維発生型繊維は、一度のニードルパンチで、13本程度繊維シート基体内に持ち込まれ、繊維シート基体の厚み方向に垂直な面で半裁した面には220μm程度の広がりを持つ、繊維束断面が観測できることが分かっている。この繊維シート基体の厚み方向に配向した繊維が、人工皮革シート基体の表層部を少量研削したときに、短い分散していない繊維を発現する上で重要である。
また、不織布と織物を絡合一体化させる場合は、繊維シート基体(不織布)に予備的な絡合が与えられていることが、不織布と織物をニードルパンチで不離一体化させる際のシワ発生をより防止するために望ましい態様である。このように、ニードルパンチにより、あらかじめ予備的絡合を与える方法を採用する場合には、そのパンチ密度は20本/cm以上で行なうことが効果的であり、好適には100本/cm以上のパンチ密度で予備絡合を与えるのがよく、より好適には300本/cm〜1300本/cmのパンチ密度で予備絡合を与えることである。予備絡合が、20本/cm未満のパンチ密度では、不織布の幅が、織物との絡合時およびそれ以降のニードルパンチにより、狭少化する余地を残しているため、幅の変化に伴い、織物にシワが生じ平滑な繊維シート基体を得ることができなくなることがあるからである。また、予備絡合のパンチ密度が1300本/cmより多くなると、一般的に不織布自身の絡合が進みすぎて、織物を構成する繊維との絡合を十分に形成するだけの移動余地が少なくなるので、不織布と織物が強固に絡合した不離一体構造を実現するには不利となるからである。
本発明において、織物の有無に関わらず、ニードルパンチにより繊維を絡合させるに際しては、パンチ密度の範囲を300本/cm〜6000本/cmとすることが好ましく、1000本/cm〜3000本/cmとすることがより好ましい態様である。
不織布と織物の絡み合わせには、不織布の片面もしくは両面に織物を積層するか、あるいは複数枚の不織布の間に織物を挟んで、ニードルパンチによって繊維同士を絡ませ、繊維シート基体とすることができる。
また、ウォータージェットパンチ処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで水を噴出させることが好ましい。
ニードルパンチ処理あるいはウォータジェットパンチ処理後の極細繊維発生型繊維不織布の見掛け密度は、0.15〜0.30g/cmであることが好ましい。見掛け密度を0.15g/cm以上とすることにより、十分な形態安定性と寸法安定性を有する人工皮革が得られる。一方、見掛け密度を0.30g/cm以下とすることにより、高分子弾性体を付与するための十分な空間を維持することができる。
このようにして得られた極細繊維発生型繊維からなる不織布は、緻密化の観点から、乾熱もしくは湿熱またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
極細繊維発生型繊維から海成分である易溶解性ポリマーを溶解して、極細繊維とする。海成分である易溶解性ポリマーを溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンであればトルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒が用いられ、海成分がポリ乳酸や共重合ポリエステルであれば水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いることができる。また、極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維(極細化可能繊維)からなる不織布を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
本発明において、高分子弾性体として、ポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、ポリウレタンを、水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液としても用いられる。
高分子弾性体を溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に、不織布と織物からなる繊維シート基体を浸漬するに際して、高分子弾性体溶液を不織布と織物が含まれる繊維シート基体に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。溶剤系のポリウレタン溶液の場合は、非溶解性の溶剤に浸漬することにより凝固させることができる。また、ゲル化性を有する水分散型ポリウレタン液の場合は、ゲル化させた後、乾燥する乾式凝固方法等で凝固させることができる。乾燥にあたっては、繊維シート基体および弾性重合体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
海成分の溶解除去は、繊維シート基体に高分子弾性体を付与する前、繊維シート基体に高分子弾性体を付与した後、あるいは起毛処理後のいずれの段階で行ってもよい。
前述の極細繊維発生加工と高分子弾性体付与加工の順序については、高分子弾性体付与前に、極細繊維発生加工を行う場合は、極細繊維と高分子弾性体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に高分子弾性体溶液を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが人工皮革の柔軟性を得る上で好ましい態様である。
また、本発明において極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体が付与された人工皮革シート基体において、高分子弾性体の付与量および極細繊維密度は、人工皮革シート基体の極細繊維束が高分子弾性体により強固にバインドされた面を得る上で重要である。
高分子弾性体の好適な使用割合については、繊維シート基体質量に対する高分子弾性体質量は10質量%以上120質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上100質量%以下である。高分子弾性体重量が10質量%より少ないと、人工皮革シート基体の起毛工程において研削量を少量に調整しても、繊維の脱落が大きく、表層部に極細繊維からなる立毛部と表層部に露出した高分子弾性体部分の境が明瞭化しないことがある。一方、高分子弾性体質量が120質量%より多いと、研削量を少量に調整することにより表層部に極細繊維からなる立毛部と表層部に露出した高分子弾性体部分の境は明瞭化するが、人工皮革の風合いが硬くなる。
人工皮革シート基体において、極細繊維からなる繊維シート基体の繊維密度は、0.150g/cm以上0.500g/cm以下が好ましく、より好ましくは0.180g/cm以上0.350g/cm以下である。繊維密度が0.150g/cm未満では、人工皮革シート基体の起毛工程後に極細繊維からなる立毛部と表層部に露出した高分子弾性体部分の境は明瞭化するが、表層部に存在する繊維束が少なく、従来の人工皮革の有するソフトな風合いが得られない。一方、繊維密度が0.500g/cmより高いと、繊維密度が高いことから、その隙間を埋める高分子弾性体の付与量が少なくなるため、起毛工程後に表層部に露出した高分子弾性体部分が少なくなり明瞭なメランジ調の外観が得られない。
極細繊維束が強固にバインドされている表層部の製造手段は、高分子弾性体と極細繊維の接着面積を増加させればよく、該極細繊維との親和性が高い高分子弾性体の選定、高分子弾性体の付量の調整、極細繊維発生型繊維の島数の減少など適宜調整することができる。
特に、高分子弾性体付与前に、ポリビニルアルコール等で補強された海成分除去後の繊維シート基体においては、高分子弾性体が溶媒置換により付与される場合、ポリビニルアルコール等の補強成分が繊維シート基体内部から表層へマイグレーションするため、繊維シート基体内部には極細繊維に付着していたポリビニルアルコール等の補強成分が無く、繊維シート基体内部は高分子弾性体が強固に極細繊維束をバインドしている構造をとる。そのため、人工皮革シート基体を厚み方向に半裁した場合、半裁面は高分子弾性体と極細繊維が強固にバインドされた状態であり、該半裁面を研削することでも、極細繊維束が強固にバインドされている表層部を製造することができる。
また、極細繊維発生型繊維に高分子弾性体付与した後に、極細繊維発生型繊維の海成分を除去するプロセスをとることで、極細繊維が高分子弾性体で保持されており、分散ししていない状態で高分子弾性体が極細繊維束をバインドして、表層に極細繊維からなる立毛部と表層に露出した高分子弾性体部分の境を明瞭化させることも可能である。
本発明の人工皮革は、少なくとも片面が立毛されていることが重要である。立毛処理は、得られた人工皮革シート基体を、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて研削することにより行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一な立毛を形成することができる。使用するサンドペーパーは、JIS規定の100番〜600番の範囲とすることが好ましい態様である。一般的に、サンドペーパーの目が粗い程、繊維は切断されやすくなる傾向であり、粗くなりすぎると、繊維の研削量が長手方向にバラツキが大きくなる。分散していない短い立毛繊維を、得られた人工皮革シート表層に均一に発現させるには、150番〜400番が最も好ましく用いられる。
研削工程は、人工皮革シート基体の表層が極細繊維からなる立毛部と表層に露出した高分子弾性体部分の境を明瞭化するために重要な工程であり、人工皮革シート基体の表層部の研削量を5μm以上100μm以下にすることが好ましく、10μm以上70μm以下がより好ましい態様である。表層部の研削が5μmより小さいと、表層に立毛が存在しないため、従来の人工皮革の有するソフトな触感が失われてしまう。逆に研削量が100μmより多いと高分子弾性体を削り、人工皮革シート基体内部の繊維も表層に持ち出され、立毛繊維長が長くなり、繊維長の長い繊維が表層を分散するため、高分子弾性体の露出部が減少し、優美なメランジ調外観が失われてしまう。
本発明において、メランジ調の外観とは、均一な色合いでなく、2色以上の色相が混在し、異なる色が霜降り状に存在することにより、異色性が発現された外観を意味する。前記の異なる色の混合割合が細かくなるほど、微細な霜降り模様(メランジ調の外観)が形成され、異なる色の混合割合が粗くなると、粗い霜降り模様(メランジ調の外観)となる。本発明では、人工皮革の繊維密度と高分子弾性体付与量を調整することにより、適宜好適なメランジ調の外観を調整することができる。人工皮革の繊維密度を高くすることにより、人工皮革の表層は立毛繊維部が多くなり、高分子弾性体露出部分の領域が微細となるため、微細な霜降り模様となる。一方、人工皮革の繊維密度を低く、または高分子弾性体付与量を高くすることにより、高分子弾性体の露出領域が大きくなり、粗い霜降り模様を達成することができる。
図4に、本発明でいうところのメランジ調についての外観イメージを示す。
図4aは、前述の本発明の人工皮革の繊維密度を向上させることで達成した、微細な霜降り模様の模式図を示し、図4bは、繊維密度を低く、または高分子弾性体付与量を高くすることで達成した、粗い霜降り調の模様の模式図を示す。前記霜降り模様の形状は、きめ細やかな色彩を得たい場合は図4aを、また遠方からの観測でも明瞭な異色性を発現させたい場合に図4bのような霜降り模様に調整すれば良く、市場の要求に応じ適宜、調整を行えばよい。
さらに、本発明の人工皮革は、人工皮革シート基体の高分子弾性体により強固に極細繊維束がバインドされている表層部を研削することが重要である。そのために、前述の高分子弾性体と極細繊維束が強固にバインドされている人工皮革シート基体の表層部を100μm以下で少量研削することにより、人工皮革の表層に、長径が50μmm以上300μm以下であって、極細繊維が分散していない極細繊維束を1.0mm単位当たりに1つ以上存在させるのである。
得られた人工皮革シートの染色は、分散染料、塩基性染料やその他反応性染料を用い、人工皮革の風合いを柔軟にするためにも高温高圧染色機により行うことが好ましい。染色温度は80℃〜150℃が好ましく、110℃以上がより好ましい態様である。必要に応じて、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤および耐光剤等の仕上げ処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも染色と同浴でも良い。
本発明においては、バインダーである高分子弾性体の付与後の人工皮革シート基体において、極細繊維束が高分子弾性体によって強固にバインドされている表層部を5μm以上100μm以下で少量研削することにより、得られた人工皮革表層において、高分子弾性体の露出した部分が表層の5%〜50%を占める表層構造にして、メランジ調の外観を生じさせる人工皮革が得られる。
さらに、本発明の人工皮革は、その表層において、短い立毛繊維束を表層に対し垂直方向に発生させることにより、極細繊維からなる立毛部と表層に露出した高分子弾性体部分の境を明瞭化した人工皮革である。
本発明の人工皮革は、煩雑なプロセスを踏まずにメランジ調の外観を達成したスエード調の人工皮革であり、従来のスエード調の人工皮革が用いられた用途である家具、椅子および車両内装材から衣料用途、さらには鞄、靴、雑貨、壁紙やカーテン等まで幅広く好適に用いることができる。また、表層の立毛繊維は短く、強固に高分子弾性体でバインドされているため、耐摩耗性にも優れた特性を示すことも特徴である。
次に、実施例を挙げて、本発明の人工皮革とその製造方法について、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[測定方法および評価用加工方法]
(1)人工皮革の表層の高分子弾性体が露出した部分の割合算出方法
人工皮革の表面を、走査型電子顕微鏡(SEMキーエンス社製VE−7800型)で100倍の倍率で観察し、観測される表面全体(1.0mm)中で、高分子弾性体が露出した部分、すなわち、立毛繊維が観測されない領域の面積(図1と図2に示すAの領域)を画像解析ソフトウェアのimageJにて測定し、観測した面積(1.0mm)に対し、高分子体弾性体が露出した部分の面積の割合を算出し、ランダムで観測した表層のSEM写真10枚の平均値で高分子弾性体が露出した部分存在比率を評価した。画像解析ソフトウェアは面積の測定ができるものであれば、前述のソフトウェア以外のものを用いても評価可能である。
(2)人工皮革の表層に対し、分散していない繊維束の個数
人工皮革の表面を、走査型電子顕微鏡(SEMキーエンス社製VE−7800型)で100倍の倍率で観察し、観測される表面全体(1.0mm)中で、表層に分散していない極細繊維束の有無を、評価し、また分散していない繊維束が観測された場合(図3に示すB)、その繊維束の長径をSEM画像から測定し、ランダムで観測した表層部のSEM写真10枚中において、観測された長径50μm以上300μm以下の繊維束の個数の平均値で評価した。また、観測された繊維束の個数(平均値)が1.0未満のものは、分散していない繊維束は表層には存在していないとして評価した。
(3)表面品位評価
対象者10名の官能検査により評価する。8名以上が異色性(メランジ調の外観)と判定したものを(二重丸)、5〜7名が判断したものを(一重丸)、3〜4名が判定したものを(三角)、2名以下が判断したものを(バツ)と各々区分した。二重丸と一重丸を、合格とした。前述判定では、従来のスエード調表面品位に近いものが低い判定となる。
[実施例1]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率57/43で溶融紡糸した後、延伸、捲縮し、その後、51mmの長さにカットして単繊維繊度4.1dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
<繊維シート基体(不織布)>
上記で得られた海島型複合繊維の原綿を用いて、カード工程およびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウェブを形成し、バーブのトータルデプスが75μmの針を用いて、3150本/cmのパンチ本数でニードルパンチして、目付が375g/mで、厚みが2.1mmの繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
上記で得られた繊維シート基体を96℃の温度の熱水で収縮させた後、PVA(ポリビニルアルコール)濃度12%水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、繊維シート基体の質量に対するPVA質量が43質量%の繊維シート基体を得た。得られた繊維シート基体を、トリクロロエチレン中に浸漬して海成分を溶解除去し、ポリエチレンテレフタレートからなる単繊維繊度が0.14dtexの極細繊維からなる脱海繊維シート基体を得た。このようにして得られた極細繊維からなる脱海繊維シート基体を、固形分濃度12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いでDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、島成分からなる極細繊維の質量に対するポリウレタン質量が50質量%、極細繊維密度が0.195g/cmの人工皮革基シート基体を得た。
このようにして得られた人工皮革シート基体を厚さ方向に垂直に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手240番のエンドレスサンドペーパーで表層部を30μm研削し、立毛面を形成させ、厚み0.46mmの人工皮革シートを得た。このようにして得られた人工皮革シートを、分散染料を用いて液流染色機を用いて、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、表層の立毛繊維と高分子弾性体露出による、微細なコントラストが確認でき、異色性のあるメランジ調の外観とスエード調人工皮革のソフトな手触りを兼ね備えた新規な表層であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸、捲縮し、その後、51mmの長さにカットして単繊維繊度4.2dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
<繊維シート基体(不織布および織物の絡合体)>
上記のようにして得られた海島型複合繊維の原綿を用いて、カード工程およびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウェブを形成し、織物貼り合わせ後の急激な幅変化による織物しわを抑えるために100本/cmのパンチ本数でニードルパンチした。
固有粘度(IV)0.65であるポリエチレンテレフタレートの単成分からなる単糸で撚数2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を経糸と緯糸として、織密度が経96本/2.54cm、緯76本/2.54cmである平織物を織製し、得られた平織物を、前記の積層繊維ウェブの上下に重ねて、積層体とした。次いで、得られた積層体を3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチして、目付が710g/mで、厚みが3.0mmの繊維シート基体を得た。ニードルパンチには、実施例1で使用した針を用いて加工した。
<人工皮革>
実施例1において、繊維シート基体に付与するPVA付量を7.5質量%とし、ポリウレタンの固形分濃度を11%とし、半裁面の研削量を60μmと変化させたことの他は、実施例1と同様に作成し、島成分からなる単繊維繊度0.21dtexの極細繊維と前記織物の合計質量に対するポリウレタン質量が30質量%、極細繊維と織物からなる繊維密度が0.313g/cmで、厚みが0.89mmの人工皮革シートを得た。
このようにして得られた人工皮革シートを実施例1同様に染色し、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1同様に、メランジ調の外観とスエード調人工皮革のソフトな手触りを兼ね備えた新規な表層であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸、捲縮し、その後、51mmの長さにカットして単繊維繊度4.2dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。また別に、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が200島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率50/50で溶融紡糸した後、延伸、捲縮し、その後、51mmの長さにカットして単繊維繊度4.6dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。上記のようにして得られた2種の原綿を質量比率7:3の割合で混綿した。
<繊維シート基体(不織布)>
上記のようにして混綿して得られた原綿を用いたこと以外は、実施例2と同様に加工を実施し、目付が428g/mで、厚みが2.1mmの繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
実施例1において、繊維シート基体に付与するPVA付量を9.5質量%、半裁面の研削量を50μmと変化させた他は、実施例1と同様に作成し、島成分からなる単繊維繊度0.33dtexと0.01dtexの繊維からなる極細繊維質量に対するポリウレタン質量が33質量%、極細繊維密度が0.275g/cmで厚みが0.46mmの人工皮革シートを得た。
このようにして得られた人工皮革シートを実施例1と同様にして染色し、人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、2種類の極細繊維と高分子弾性体の3色からなるメランジ調の外観とスエード調人工皮革のソフトな手触りを兼ね備えた新規な表層であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分として5−ナトリウムイソフタル酸8モル%を共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率70/30で溶融紡糸した後、延伸、捲縮し、その後、51mmの長さにカットして単繊維繊度が4.7dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(繊維シート基体)>
上記のようにして得られた原綿を用いたこと以外は、実施例2と同様に加工を実施し、目付が765g/mで、厚みが3.2mmの繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
水分散型ポリウレタン液である非イオン系強制乳化型ポリウレタンエマルジョン(ポリカーボネート系)に、感熱ゲル化剤として硫酸ナトリウムをポリウレタン固形分対比4質量%添加し、ポリウレタン液濃度が10質量%となるように水分散型ポリウレタン液を調整した。上記のようにして得られた繊維シート基体に、その水分散型ポリウレタン液を付与し、乾燥温度120℃で5分間熱風乾燥して、島成分からなる極細繊維重量に対するポリウレタン質量が50質量%、極細繊維密度が0.265g/cmの人工皮革シート基体を得た。
上記のようにして得られたポリウレタン付の人工皮革シート基体を、90℃の温度に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理し、海島型複合繊維から海成分を溶解除去した。その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁機を用いて厚み方向に垂直に半裁し、半裁面を100μm研削して、立毛を形成させて人工皮革シートを作製した。このようにして得られた厚み0.68mmの人工皮革シートを、液流染色機を用いて、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で68mmの乾燥を行い、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1同様に、メランジ調の外観とスエード調人工皮革のソフトな手触りを兼ね備えた新規な表層であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
<原綿>
実施例1と同様にして、単繊維繊度が4.1dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<繊維シート基体(不織布)>
実施例1と同様にして繊維シート基体を得た。
<人工皮革用基体>
上記のようにして得られた繊維シート基体を用いて、研削工程における、人工皮革シート基体の表層部の研削量を200μmにし、厚みが0.43mmの人工皮革シートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして人工皮革用を得た。得られた人工皮革の表面は、表層部の研削量が200μmと多いため、人工皮革シート基体内部の繊維が表層に持ち出され、表層立毛繊維長が長く、分散しており、高分子弾性体の露出部も表層の3%と少なくなり、優美なメランジ調外観が失われた従来のスエード調の人工皮革の均一な表面であった。
[比較例2]
<原綿>
実施例2と同様にして、単繊維繊度が4.2dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<繊維シート基体(不織布)>
実施例1と同様にして繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
上記のようにして得られた繊維シート基体を用いて、研削工程における、人工皮革シート基体の表層部の研削量を250μmにし、厚み1.1mmの人工皮革シートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革は、表層部の研削量が250μmと多いため、人工皮革シート基体内部の繊維が表層に持ち出され、表層立毛繊維長が長く、分散しており、高分子弾性体の露出部も表層の1%と少なくなり、優美なメランジ調外観が失われた従来のスエード調の人工皮革の均一な表面であった。
[比較例3]
<原綿>
実施例1と同様にして、単繊維繊度が4.1dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(繊維シート基体)>
実施例1と同様にして繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
上記のようにして得られた繊維シート基体を用いて、実施例1において、繊維シート基体に付与するPVA付量を35質量%、ポリウレタンの固形分濃度を14%、表層部研削量を80μmと変更したこと以外は、実施例1と同様に作成した結果、PVA付量が少ないため、補強不足で繊維シート基体が工程張力で伸び、繊維密度が低下し、さらにポリウレタンの固形濃度が高いためポリウレタン付量も増えポリウレタン付量が大きくなり、島成分からなる前記極細繊維とバインダー成分として付与された前記ポリウレタンからなり、合計質量に対するポリウレタン質量が80質量%、極細繊維からなる繊維密度が0.140g/cmで厚みが0.55mmの人工皮革シートを得た。
得られた人工皮革シートを染色して得られた人工皮革は、人工皮革シートの繊維密度が小さく、高分子弾性体の露出部分が54%と大きくなり、優美なメランジ調外観が失われた従来のスエード調の人工皮革の均一な表面であるだけでなく、風合いが硬い表面であった。

Claims (5)

  1. 極細繊維からなる繊維シート基体に高分子弾性体がバインダーとして付与されてなる人工皮革において、人工皮革の表層が、前記極細繊維の立毛繊維からなる部分と前記高分子弾性体が露出した部分からなり、前記高分子弾性体の露出した部分が表層の5%〜50%を占める表層構造からなることを特徴とする人工皮革。
  2. 人工皮革の表層に長径が50μm以上300μm以下であって、極細繊維が分散していない極細繊維束が1.0mm単位当たりに1つ以上存在している請求項1記載の人工皮革。
  3. 極細繊維が2種類以上の単繊維繊度の異なるポリエステル系繊維からなる請求項1または2記載の人工皮革。
  4. 極細繊維からなる繊維シート基体に弾性重合体がバインダーとして付与されてなる人工皮革の製造方法において、前記極細繊維からなり繊維密度が0.150g/cm以上0.500g/cm以下である繊維シート基体に、前記高分子弾性体が繊維シート基体質量に対し、10質量%以上120質量%以下付与された人工皮革シート基体の表層部を、100μm以下で研削してなる請求項1〜3いずれかに記載の人工皮革の製造方法。
  5. 極細繊維からなる繊維シート基体が、ニードルパンチ方法より形成された不織布である請求項4記載の製造方法。
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