JP2013043352A - 積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルム - Google Patents

積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】ハードコート層との初期接着力と耐湿接着力の両方に優れ、干渉ムラが抑制された積層ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】基材ポリエステルフィルム(S層)の片面に樹脂層(C層)を有する積層ポリエステルフィルムであり、該樹脂層(C層)がエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、該エチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が、樹脂層(C層)の単位面積あたり、30〜300μg/mであり、かつ、幅1m×長さ1mの区間において、樹脂層(C層)側表面の波長400〜700nmにおける表面反射率が以下を満たす積層ポリエステルフィルム。(a)λminが450〜600nm、(b)Rminが4.0〜6.0%、(c)λminの最大値と最小値の差が30nm以下。λminは波長400〜700nmにおける表面反射率が極小値となる波長(nm)を、Rminは波長λminの時の反射率(%)を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、接着性に優れた積層ポリエステルフィルムに関し、特にタッチパネル・成型加飾などに用いられるハードコート用フィルムの基材として用いたときに、ハードコート層との接着力に優れ、さらに干渉ムラが抑制された良好な外観を有する積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムに関する。さらに詳しくは、活性線硬化型樹脂からなるハードコート層との初期接着性と接着力耐久性の両方が優れており、かつ広範囲に渡って干渉縞の発生が抑制できる安定性・生産性に優れた積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムに関するものである。
ポリエステルフィルムはその優れた機械特性、電気的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、耐薬品性などから各種工業材料用途、包装材料用途、磁気材料用途等に使用されている。特にポリエステルフィルムの表面硬度や耐擦過性を補完する目的で表面にハードコート層を設け、耐スクラッチ性や耐摩耗性を向上させたハードコートフィルムは、それらの主な用途である液晶ディスプレイやプラズマディスプレイといったフラットパネルディスプレイの表面保護フィルムや反射フィルム、タッチパネル、表示板、銘板、窓貼り、表面加飾材などの拡大により、近年益々大きな市場に成長しつつあり、将来に渡っても大きな成長が見込まれている。
これらハードコート層を有するポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層する事で得る事が出来るが、ハードコート層と基材ポリエステルフィルム間の屈折率差により生じる光の干渉ムラ(ある角度から見た時に部分的に見られる虹彩状反射模様)による外観の悪化やハードコート層との接着性に課題があった。干渉ムラについては、近年はLCDなどの大画面ディスプレイやスマートフォンなどの高精細タッチパネル用途にも用いられることから、広範囲に渡って干渉ムラが少ない、極めて良好な外観特性が求められてきている。さらに、近年、特にスマートフォンなどの携帯機器用途に使用されるハードコートフィルムの市場が伸張しており、高温多湿地域、寒冷地での結露などにも耐えうる様な高温高湿度下、他での高い接着力の耐久性が要求されている。また、上記に加えて、ハードコートフィルムの生産性向上の観点から、ハードコート層形成用塗布液の速乾性やレベリング性の向上により生産速度が上がる中、ハードコート層と積層膜間の初期接着性の向上についての要求も大きく、具体的には硬化のための活性線量が少なくても良好な接着性を有する生産性が高いハードコート用フィルムが求められている。
上記のハードコートフィルムおよびハードコート用フィルムに対する要求を満たすために、ポリエステルフィルム上に特定の構成の積層膜を設けることが一般的に用いられている。この積層膜については、干渉ムラを抑制するための屈折率制御およびハードコート層との接着性の両方の機能を有することが必要となる。干渉ムラは、一般的に活性線硬化型のアクリル樹脂からなるハードコート層とポリエステルフィルム層の屈折率差により発生すると考えられており、干渉ムラを低減するために、ポリエステルフィルム上に積層膜を設け、ハードコート層/積層膜間の反射光と、積層膜/ポリエステルフィルム層間の反射光がうち消し合う事で干渉ムラを防止している。この方法では2つの反射光を逆位相としてうち消し合うことが必要であり、積層膜の屈折率の設計最適化のみならず、積層膜の厚みを極めて均一に管理する事が必要であるが、フィルムの場所(幅方向、長手方向)による干渉ムラのバラツキを抑制することは困難であり、調整のためにフィルム製造時およびハードコート加工時に頻繁な調整が必要になる等の問題があった。また、接着力の耐久性を増すためには、温度・湿度に強くかつハードコート層との接着力が強い積層膜組成とする必要があるが、耐久性を向上させる手法として、例えば樹脂のガラス転移温度を上げる事や樹脂そのものの耐水性向上や架橋成分による補強等が検討されているが、これらの手法はハードコート層との反応性を悪化させる傾向があり、その結果初期接着力が悪化し、ハードコートの硬化工程での生産性があがらない等の問題があった。
これら上述の問題を改善するために、種々の積層膜が検討されている。(特許文献1,2,3)
特許文献1では、特定の構成を有するポリエステルフィルムに平均粒径が200〜700nmの粒子と水溶性有機チタンまたは水溶性有機ジルコニウムといった金属化合物を含有する積層膜が設けられたフィルムについて開示されている。該文献では、干渉ムラの抑制と接着性向上の両方を、平均粒径が200〜700nmといった大粒径粒子による積層膜表面の凹凸構造により達成しているが、この方法では、大粒径粒子の影響でハードコートフィルムの透明感、クリア感に欠けるという外観上の問題があった。
特許文献2では、特定のガラス転移温度と組成を有する2種類のポリエステル樹脂と架橋剤を含有する積層膜が設けられたフィルムについて開示されている。しかしながらこの方法では、積層膜中にガラス転移温度が高い剛直な成分を有し、かつ多量の架橋剤を含有することから、積層時ならびに延伸時での積層膜厚均一性が悪化する傾向があり、大面積での干渉ムラバラツキを抑制することが困難であった。また、該処方では接着力の耐久性は向上するが、初期接着力が悪化するため、ハードコート層の硬化工程の速度を上げることが困難となる生産性の問題があった。
特許文献3では、剛直なフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂を含有する積層膜が設けられたフィルムについて開示されている。しかしながらこの方法では、特定の高い屈折率を有するハードコート層では干渉ムラが抑制されるが、一般的なハードコート層を設けた場合に干渉ムラが悪化するという問題があった。また、耐久性向上のためポリエステル樹脂中の成分を限定しているため、特許文献2と同様に、初期接着力が悪化し硬化工程の速度を上げることが困難となる生産性の問題があった。
特開2011−1457号公報 特開2007−253512号公報 国際公開第2009/145075号パンフレット
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、ハードコート層との初期接着力と耐湿接着力の両方に優れ、さらに干渉ムラが抑制された良好な外観を有する積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムを提供する事である。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を用いるものである。
(1).基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片面に樹脂層(C層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層(C層)が下記化学式(1)にて表されるエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、樹脂層(C層)における該エチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が、樹脂層(C層)の単位面積あたり、30〜300μg/mであり、かつ、幅1m×長さ1mの区間において、幅方向の中央部、両端部の3箇所、長手方向の中央部、両端部の3箇所のそれぞれの組み合わせ計9点について測定した樹脂層(C層)側表面の波長400〜700nmにおける表面反射率が以下(a)〜(c)を満たす積層ポリエステルフィルム。
(a)上記9測定点のすべてにおいて、λminが480〜600nmの間に存在すること。
(b)上記9測定点のすべてにおいて、Rminが4.0〜6.0%であること。
(c)上記9測定点のλminにおいて、λminの最大値(9測定点の内、最も波長が長いもの)と最小値(9測定点の内、最も波長が短いもの)の差が30nm以下であること
ただし、λminは波長400〜700nmにおける表面反射率が極小値となる波長(nm)を、Rminは波長λminの時の反射率(%)を示す。
化学式(1) R−O−CHCH−OH R=C(2n+1) n=1〜4
(2).前記樹脂層(C層)の厚みが70〜110nmである(1)に記載の積層ポリエステルフィルム。
(3).前記エチレングリコールモノアルキルエーテルがエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテルおよびエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルからなる群から選ばれる1以上のエチレングリコールモノアルキルエーテルである(1)または(2)に記載の積層ポリエステルフィルム。
(4).前記樹脂層(C層)がポリエステル樹脂を主成分としており、前記ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、樹脂層(C層)中に含まれる界面活性剤の含有量が0.5重量部以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(5).前記樹脂層(C層)が、少なくとも1以上のナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有する樹脂を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
(6).(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを巻き取ってなる積層ポリエステルフィルムロールであって、以下の方法で検査した時の欠陥個数が1.0個/m以下である積層ポリエステルフィルムロール。
積層ポリエステルフィルムロールから、積層ポリエステルフィルムを連続的に引出すことによって走行させ、走行するフィルム面に対して、距離150mmの位置に設置したLED光源から入射角15°にてフィルム位置での照度30,000lxにて照射し(光線入射面は樹脂層(C層)が設けられた側の表面とする)、その正反射光(反射角15°の反射光)をフィルムからの距離200mmの位置に設置した、フィルム流れ方向速度が50m/分時の分解能が幅方向0.16mm、長手方向0.12mm、画素サイズ10μm、検出光0.31lx・sを1024階調に分解する感度を有したCCDカメラにて検出した。検出した信号を長手方向に微分処理を実施し、幅6ピクセル(幅約1mm)以上、長手方向2ピクセル(長さ約0.24mm以上)、微分後の信号閾値が100階調以上の欠陥個数をフィルムロール全幅・全長に渡ってカウントし、フィルムの面積1m当たりの欠陥数に換算した。
(7).(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)の上に、さらにハードコート層を積層せしめた、ハードコートフィルム。
(8).(1)〜(5)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、樹脂層(C層)が、基材ポリエステルフィルム(S層)が製造される工程の中で設けられ、かつ以下(d)〜(g)に記載の塗液が基材ポリエステルフィルム(S層)に塗布されることで樹脂層(C層)が形成される積層ポリエステルフィルムの製造方法。
(d)塗液が、ポリエステル樹脂を含有すること。
(e)塗液が、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群から選ばれる1以上の架橋剤を含有すること。
(f)ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、前記架橋剤の含有量の総和が30〜100重量部であること。
(g)ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、塗液中の界面活性剤の含有量が0.5重量部以下であること。
(h)塗液がエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、かつ塗液中のエチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が、塗液全体に対して、1〜10重量%であること
(i)沸点が100℃未満の溶剤の含有量が、塗液全体に対して、10重量%以下であること。
(j)塗液の周波数2Hzおよび5Hzにおける動的表面張力が、いずれも30〜55mN/mであること。
(9).以下の工程をその順に有する(8)に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法。
(塗布工程)基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片面に前記塗液を塗布する工程。
(加熱乾燥工程)基材ポリエステルフィルム(S層)に塗布された塗液を加熱乾燥することによって、樹脂層(C層)を形成せしめ、加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度を75〜95℃の範囲にせしめる工程。
(延伸工程)樹脂層(C層)が形成された基材ポリエステルフィルム(S層)を、90〜115℃の温度の熱風を吹き付けながらフィルム幅方向に3.0〜5.0倍に延伸し、積層ポリエステルフィルムを得る工程。
(10).(9)に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法で得られる積層ポリエステルフィルムを巻き取る積層ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、前記加熱乾燥工程が以下の熱風加熱乾燥工程および熱風制御工程を有し、かつ前記延伸工程後の積層ポリエステルフィルムを巻き取る積層ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(熱風加熱乾燥工程)熱風によって塗液を加熱乾燥する工程。
(熱風制御工程)加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面温度を温度計にて計測し、得られた計測値に応じて、熱風加熱乾燥工程の熱風の風速および/又は温度を制御することによって、加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度を75〜95℃の範囲内にせしめる制御工程。
本発明によれば、特にタッチパネル・成型加飾などに用いられるハードコート用フィルムの基材として用いたときに、ハードコート層との接着力に優れ、さらに干渉ムラが抑制された良好な外観を有する積層ポリエステルフィルムおよびハードコートフィルムを提供することができる。
本発明に係る積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)側の反射率グラフの一例である。 DSC曲線の模式図である。
本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片側に樹脂層(C層)が積層される事が必要である。樹脂層(C層)が無い場合は、フィルム上に積層されるハードコート等の機能層との接着性が不足する。
本発明における樹脂層(C層)は、ハードコート層と本発明にかかる積層ポリエステルフィルム間の界面での反射光が可視光領域で最も小さくなるように設計する必要がある。ハードコートフィルムの干渉ムラは、空気/ハードコート層界面での反射光とハードコート層/フィルム層界面の反射光が干渉する事により発生するため、ハードコート層/フィルム層界面の反射光を極力小さくすることが、干渉ムラを抑制することために必要となる。上記の様な特性を有するために本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、樹脂層(C層)側の表面反射率が極小値となる波長λminが480〜600nmの間に存在する事が必要であり、好ましくは500nm〜580nmの間に存在する事である。波長λminが可視光領域の中心に近い480〜600nmの範囲にある場合は、干渉ムラが見えにくく良好であるが、上記の範囲を外れる場合は干渉ムラが悪化する。反射率が極小となる波長λminは、空気層/樹脂層(C層)間界面の反射光と樹脂層(C層)/基材ポリエステルフィルム(S層)界面の反射光が互いに逆位相となって打消し合っていると考えられ、両者の光が進む光路長の差(樹脂層の厚み×樹脂層の屈折率)が波長480〜600nmの1/2となる様に樹脂層(C層)の組成及び厚さを調整することで達成される。
また、本発明において、樹脂層(C層)側の表面反射率が極小値となる波長λminでの反射率Rminが4.0%以上6.0%以下であり、好ましくは4.5%以上5.5%以下である。Rminが上記の範囲を外れる場合は、干渉ムラが悪化する。樹脂層(C層)と基材ポリエステルフィルム(S層)の屈折率差、および樹脂層(C層)とハードコート層との屈折率差の両方が共に小さい事が、ハードコート層/樹脂層(C層)間および樹脂層(C層)/基材ポリエステルフィルム(S層)間界面での反射率が小さくなるため好ましく、また両者の反射率が近い方が干渉による反射光の低減効果が大きく好ましい。一般的なハードコート層の屈折率は1.45〜1.55、基材ポリエステルフィルム(S層)の屈折率は1.60〜1.70であり、その範囲において上記の干渉ムラが良い状態を保つためには、積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)側の反射率Rminが前述の範囲となることが必要である。
λminおよびRmin値を上記の範囲とする方法として、具体的には樹脂層(C層)の屈折率を1.55〜1.60の範囲に、樹脂層(C層)の厚みを70〜110nmの範囲で、その組み合わせを調整することが好ましい方法として挙げられる。なお、具体的な方法については後述する。
本発明において、積層ポリエステルフィルムの全幅1m×長さ1mの区間において、幅方向3カ所(両端部および中央部)、長手方向3カ所(両端および中央部)の組み合わせ計9点について測定した樹脂層(C層)側表面の表面反射率が極小となる波長λminの最大値と最小値の差が30nm以下であることが必要であり、好ましくは20nm以下、更に好ましくは15nm以下である。λminの最大値と最小値の差が30nmを越えると、ハードコート後のフィルムの外観、特に場所による干渉ムラのバラツキが目立ち外観に劣る。また、波長λmin時の反射率Rminの最大値と最小値の差が0.3%以下である事が好ましく、さらに好ましくは0.2%以下である事が好ましい。Rminの差が0.3%を越えるとハードコート後のフィルムの外観、特に干渉ムラの場所によるバラツキが悪化する傾向がある。これらλminおよびRminの位置による差を小さくする方法は特には限定されないが、例えば樹脂層(C層)の膜厚均一性の観点から、樹脂層(C層)は塗液を塗布、乾燥する方法により形成される事が好ましく、更に塗液組成や樹脂層(C層)の厚みが均一となるような塗布方法や加熱乾燥方法を用いることが好ましい。なお、これら樹脂層(C層)を構成する塗液組成や、塗布方法および加熱乾燥方法についての詳細は後述する。
本発明における樹脂層(C層)はポリエステル樹脂を主成分とし、該ポリエステル樹脂の少なくとも1種類がナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有している事が好ましい。ポリエステル樹脂にフルオレン骨格および/またはナフタレン骨格を付与せしめることでポリエステル樹脂の高屈折率化が可能となり、上述の樹脂層(C層)表面での反射率Rminを好適な範囲とする事ができる。また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げることが出来るため、接着力の耐湿熱特性が向上し好ましい。本発明におけるポリエステル樹脂とは、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するポリエステル樹脂を指し、以下のI)またはII)の方法によって得ることができる。また、I)とII)を併用する方法(ジカルボン酸成分、グリコール成分、および1以上のアルコール性の官能基(ヒドロキシル基)と1以上のカルボキシル基を有する成分を構成成分とし、これらを重縮合反応せしめる方法)を用いても良い。
I)ジカルボン酸成分と、グリコール成分とを構成成分とし、両者を重縮合反応せしめる方法。
II)1以上のアルコール性の官能基(ヒドロキシル基)と、1以上のカルボキシル基を有する成分を構成成分とし、重縮合反応せしめる方法。
上記I)の方法においては、ナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を用いるか、ナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を有するグリコール成分を用いることで、上記ナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂を得ることが出来る。また、上記II)の方法においては、ナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を有し、1以上のアルコール性の官能基(ヒドロキシル基)と1以上のカルボキシル基を有する成分を用いることで、上記ナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂を得ることが出来る。
ナフタレン骨格又はフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分としては、例えば、9,9−ビス(t−ブトキシカルボニルメチル)フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)エチル]フルオレン、9,9−ビス[1−(t−ブトキシカルボニル)エチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−シクロヘキシルエチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−フェニルエチル]フルオレン、9,9−ビス[1−(t−ブトキシカルボニル)プロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)プロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルエチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルプロピル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)ブチル]フルオレン、9,9−ビス[2−(t−ブトキシカルボニル)−1−メチルブチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(t−ブトキシカルボニル)ペンチル]フルオレン、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
また、ナフタレン骨格および/又はフルオレン骨格を有するグリコール成分としては9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ) 10−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、1,4−ジヒロドキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明において、ナフタレン骨格を有さない又はフルオレン骨格を有さない芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸成分やグリコール成分についても使用する事ができる。かかる芳香族のジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。また、かかる脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができるが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができるがこれに限定されるものではない。
本発明における樹脂層(C層)に含有されるポリエステル樹脂は、樹脂層(C層)を塗布による方法にて形成するという観点においては、水溶性であることが好ましい。ポリエステル樹脂を水溶性とするためには、ポリエステル樹脂の側鎖などにカルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物などの親水成分を導入することが好ましい。かかる親水成分の導入は、ジカルボン酸成分として、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分や、3価以上の多価カルボン酸成分を用いることによって、達成することができる。
スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分としては、例えばスルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸等の多価カルボン酸の他、酸無水物を用いることもできる。具体的には、1,2,4,5−ブタンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
しかし近年のフラットパネルディスプレイ用途に代表されるような耐湿接着性の要求される用途においては、ポリエステル樹脂の親水成分としてスルホン酸塩基を用いた場合には、スルホン酸塩基の親水性の強さによって、被接着物との高温高湿条件下での接着性が低下することがある。そのため、ポリエステル樹脂が、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸が、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸および多価カルボン酸成分の量に対して10モル%以下とすることが好ましく、さらに5モル%以下であることより好ましい。
よって、本発明では、ポリエステル樹脂に親水性(水溶性)を付与する手段として、スルホン酸塩基成分に加えて、3価以上の多価カルボン酸成分を共重合することが好ましい。3価以上の多価カルボン酸成分を共重合することによって、ポリエステル樹脂の側鎖にカルボキシル基を導入する事ができる。また、該カルボキシル基をアンモニアや、水酸化ナトリウム等にて中和することにより、カルボン酸塩基としても良い。カルボン酸塩基とすることにより、親水性をさらに高めることができる。なお、多価カルボン酸成分の共重合に際しては、ジカルボン酸成分とグリコール成分を反応させたポリエステルポリオール(ポリエステルオリゴマー)に、3価以上の多価カルボン酸無水物を反応させることでポリエステル樹脂の側鎖にカルボキシル基を導入する方法を用いることが好ましい。かかる方法を用いることによって、ポリエステル樹脂の側鎖にカルボキシル基をより効率的に導入する事ができる。3価以上の多価カルボン酸成分の含有量が、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸および多価カルボン酸成分の量に対して5〜30モル%が好ましい。
本発明における樹脂層(C層)のポリエステル樹脂のガラス転移点(以下、Tgと略すことがある)は、50〜170℃であることが好ましく、より好ましくは50〜150℃である。Tgが50℃未満では耐湿接着性が悪化し易く、逆に150℃を越えると後述するインラインコート法において樹脂層(C層)を均一に塗設できないことがある。Tgを上記範囲内とするには、ナフタレンおよび/又はフルオレン骨格を有する成分の含有量を調整する他、芳香族ジカルボン酸成分を用いることで達成可能となる。
またポリエステル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは30mgKOH/g以上である。酸価を上記範囲内とすることにより、接着性、特に耐湿接着性を良好にすることができる。酸価を上記範囲とするためには、フルオレン共重合ポリエステル樹脂の重合時において、ポリエステルポリオールに反応させる多価カルボン酸無水物の量を調整することによって得られる。
本発明における樹脂層(C層)において、ハードコート層との接着性や耐湿性を向上させるために、樹脂層(C層)を形成する塗液中に、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤からなる群から選ばれる1以上の架橋剤を含有することが好ましく、ハードコート層との接着性の観点からメラミン系架橋剤が特に好ましい。
本発明で用いられるメラミン系架橋剤は、特には限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。またメラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
また、本発明における樹脂層(C層)を形成する塗液中に、本発明の特性を損なわない範囲でメラミン系以外の架橋剤を添加する事もでき、特にハードコート層との耐湿接着性向上の観点から、オキサゾリン系架橋剤、およびカルボジイミド系架橋剤が好ましい例として挙げられる。オキサゾリン系架橋剤は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。また、カルボジイミド系架橋剤は、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではない。このようなカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、ウレア変性カルボジイミド等を挙げることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
本発明における樹脂層(C層)を形成する塗液中に含有される架橋剤成分の含有量は、ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜60重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜50重量部である。含有量が20重量部未満である場合は、接着力に劣る場合があり、60重量部を越えると塗布欠陥が増加する傾向がある。
本発明において、樹脂層(C層)中に下記化学式(1)にて表されるエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、かつ含有量が、樹脂層(C層)の単位面積あたり、30〜300μg/mであり、好ましくは50〜150μg/mである。エチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が30μg/m未満の場合はハードコート層との初期接着力が低下する事があり、また300μg/mを越える場合は、ハードコート層との耐湿接着力が低下する事がある。
化学式(1) R−O−CHCH−OH R=C(2n+1) n=1〜4
上記化学式(1)にて表されるエチレングリコールモノアルキルエーテルは極性基である水酸基と極性が低いアルキル基を分子の両端側に有する構造で、親水性・疎水性の両方の特性を有する事から、樹脂層(C層)を形成する樹脂中の分子鎖間に安定して存在しやすく、分子鎖の可動性が向上している状態と推測される。その結果、樹脂層(C層)上にハードコート層を積層・硬化する工程において、前記樹脂層(C)を形成する樹脂とハードコート層を積層する樹脂との反応性が上がり、初期接着力が向上すると考えられる。一方、エチレングリコールモノアルキルエーテルには水酸基も有するため、水との親和性も高くなり、耐湿熱環境下では樹脂層に含水し易い状態になっていると推測され、樹脂層中の含有量が規定量を超える場合はハードコート層との耐湿接着力が低下すると考えられる。
また、前記エチレングリコールモノアルキルエーテルにおけるアルキル基について、炭素数が多いアルキル基である場合は、前記親水性・疎水性のバランスが疎水性側に強い状態となるため、ハードコート層との接着性が劣る事がある。 またエチレングリコールモノアルキルエーテルの沸点が上昇するため、熱処理工程における樹脂層(C層)中への含有量調整が難しくなり、樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキを低減し、後述する樹脂層(C層)の欠陥数を低減するために必要な含粒量を、樹脂層(C層)を形成する塗液中に含有する事が困難となる等の問題が生じる事がある。前記化学式(1)に該当するエチレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル(沸点142℃)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(沸点150℃)、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル(沸点153℃)、エチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル(沸点161℃)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点171℃)等が挙げられ、中でもエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが、その沸点および親水性と疎水性のバランスから、ハードコート層との接着性および樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキ低減および樹脂層(C層)の欠陥数の低減の観点で好ましい。
本発明において、樹脂層(C層)表面における下記実施例の[測定方法](4)項に記載の方法で測定した欠陥個数が1.0ヶ/m以下が好ましく、さらには0.7ヶ/m以下、特に0.3ヶ/m以下が好ましい。塗布欠陥個数が1.0ヶ/mを越える場合は、ポリエステルフィルムの外観が劣るため好ましくない。なお、本発明における欠陥個数は、検査機を用いて検査を実施した個数であるが、この方法にて検出できる塗布欠陥は、暗室で15Wの三波長蛍光灯を用いて±15°の範囲で目視観察した時に視認可能な幅1mm以上の塗布欠陥個数とほぼ等しい。
樹脂層(C層)表面における欠陥個数を上述の範囲とする方法は特には限定されないが、例えば、樹脂層(C層)を形成する塗液の動的表面張力を周波数2Hz、5Hzのいずれにおいても35〜55mN/mに調製する事が好ましい方法として挙げられる。また、さらに好ましい範囲としては40〜50mN/mである。動的表面張力が55mN/mを越える場合は、塗液が均一になりにくく欠陥数が増加する傾向があり、30mN/m未満である場合は、基材ポリエステルフィルム(S層)との接着性が劣る傾向がある。なお、2Hzと5Hzの2つの周波数にて動的表面張力を上記値の範囲内とする事で、塗液をフィルムに塗布・計量する際の塗液の流動速度が異なる場合でも一定の表面張力とする事で、欠陥個数を低減する事ができる。更に、上記動的表面張力の範囲とすることで、樹脂層(C層)の塗布後の厚みが均一化され、樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキも同時に低減する事が可能となる。
樹脂層(C層)を形成する塗液中の動的表面張力を上述の範囲にする方法として、前記化学式(1)で表されるエチレングリコールモノアルキルエーテルが塗液全体に対して1〜10重量%含有する事が好ましい方法として挙げられる。エチレングリコールモノアルキルエーテルは前述した通り、極性基である水酸基と極性が低いアルキル基を分子の両端側に有する構造で、親水性・疎水性の両方の特性を有する事から、主溶媒である水や樹脂成分との親和性に優れ、塗液の表面張力を低下させる効果を有している。その結果、前述した樹脂層(C層)とハードコート層との接着性を高める事に加えて、樹脂層(C層)を塗布した際の塗布液の厚みを均一化させ、樹脂層(C層)の欠陥数を低減させたり、樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキを低減する事も可能となる。含有量が1重量%未満である場合は、動的表面張力を十分に低下出来ず、樹脂層(C層)中の欠陥数や樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキが増加する事があり、また10重量%を越えた場合は、樹脂層(C層)への残存量が増加し、ハードコート層との耐湿接着性が低下する事もあり好ましくない。
樹脂層(C層)を形成する塗液中の動的表面張力を低下させ、欠陥個数を低減させるために、塗液中に界面活性剤を添加させても良く、その含有量はポリエステル樹脂100重量部に対して0.5重量部以下が好ましい。本発明で添加する界面活性剤は、特に限定される物ではなく、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、イオン性界面活性剤(例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドなど)、フッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられ、これらを1種あるいは2種以上を混合して用いても良い。中でもフッ素界面活性剤が樹脂層(C層)の均一性および塗布欠陥抑制にすぐれており好ましい。しかしながら、界面活性剤が樹脂層(C層)に残存することで、樹脂層(C層)とハードコート層の初期接着性が低下したり、耐湿接着性が悪化する傾向が見られるため、含有量は可能な限り少ない方が好ましい。界面活性剤量を可能な限り少量とした場合や、あるいは界面活性剤を使用しない場合でも、上述したエチレングリコールモノアルキルエーテルを添加した場合は、塗液の動的表面張力を低下させることが出来、さらに製膜での熱処理工程にて蒸発する事から最終的な樹脂層(C層)に残存する量を低減し、所定の範囲内とする事が可能となり好ましい。
また、さらに動的表面張力を所定の範囲に制御するために、エチレングリコールモノアルキルエーテル以外の水溶性溶剤を併用することもでき、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。ただし、沸点が100℃未満の低沸点溶剤を使用した場合は、塗液を循環使用中に低沸点溶剤が揮発し、塗液濃度が徐々に変動する事があり、ハードコート層積層用途のように、樹脂層(C層)の膜厚均一性を厳しく管理する必要がある用途については、長期生産時の性能バラツキが悪化するため好ましくない。 また、含有する場合でもその含有量を10重量%以下とする事が好ましく、さらには5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
本発明における樹脂層(C層)において、ハードコート層との接着性を高めるためにアクリル樹脂を混合してもよい。アクリル樹脂は、該アクリル樹脂を構成するモノマー成分として、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて(共)重合される。アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は特に限定されるものではないが、好ましくは0〜90℃、より好ましくは10〜80℃である。Tgが低いアクリル樹脂を用いた場合は耐熱接着性が劣る傾向があり、逆に高すぎる場合は造膜性が劣ることがある。また、該アクリル樹脂は粒子径が100nmの水分散体つまりエマルションであることが好ましく、更には粒子径が60nm以下の水分散体であることがより好ましい。アクリル樹脂が水に完全に溶解する場合はハードコートとの耐湿接着力に劣る場合があり、また粒子径が100nmより大きなエマルションではフィルムの外観が悪化し積層ポリエステルフィルムとして不適切となる。アクリル樹脂の混率については、樹脂層(C層)を形成する塗液中のポリエステル樹脂100重量部に対して、アクリル樹脂を10〜50重量部混合する事が好ましく、さらには20〜40重量部を混合する事がこの好ましい。アクリル樹脂の含有量が10重量部未満である場合は、接着力向上の効果が不十分である場合があり、また50重量部を越えると、反射率Rminが低下し干渉ムラが悪化する傾向がある。
本発明において、樹脂層(C層)中に微粒子を含有させることで、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので更に好ましい。使用する微粒子としては、本発明効果を阻害しない範囲内で特に限定されないが、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、“テフロン”(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられ、これら粒子のいずれを用いてもあるいは複数種を併用してもよい。これら粒子の数平均一次粒径(以下、単に平均一次粒径ということがある。)は、10〜600nmの範囲内であることが好ましい。ここで平均一次粒径とは、JIS H7008(2002)において単一の結晶核の成長によって生成した粒子と定義される一次粒子の粒子径の平均である。粒子の平均一次粒径は、より好ましくは20〜500nmの範囲内、さらに好ましくは20〜400nmの範囲内である。なお粒子には、単分散粒子を用いても、複数の粒子が凝集した凝集粒子を用いてもよい。また、場合によっては平均一次粒径の異なる複数種の粒子を併用してもよい。粒子の添加量は、C層の厚みや樹脂組成、平均一次粒径、求められる易滑性や用途などによって適切に調節設計されるべきであるが、樹脂層(C層)全体を100重量部とした時に0.05〜8重量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲内である。平均一次粒径が10nm未満である場合や粒子添加量が0.05重量部未満である場合は、易滑性や耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、平均一次粒径が600nmを越える場合や粒子添加量が8重量部を越える場合は粒子が脱落したり、外観が悪化する傾向がある。
更に本発明にかかる積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されてもよい。
本発明の樹脂層(C層)を基材ポリエステルフィルム(S層)に積層するにあたり、樹脂層(C層)を形成する塗布層を塗布する方法が好ましい方法として挙げられるが、かかる塗布方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程とは別工程で塗布を行う方法、いわゆるオフラインコーティング方法と、ポリエステルフィルムの製造工程中に塗布を行い、樹脂層(C層)が積層された積層ポリエステルフィルムを一気に得る、いわゆるインラインコーティング方法の両方を用いる事が可能である。本発明ではコストの面や、塗布厚みの均一化の面からインラインコーティング方法を採用することが好ましく、その場合に用いる塗液の溶剤は、環境汚染や防爆性の点から水系であることが最も好ましい。
本発明の積層フィルムの製造方法としては、前記インラインコーティング法を用いて、以下の工程を1から4とこの順にて実施する方法が、前述した樹脂層(C層)の特性を発現させ、かつ生産性を高めるために好ましい方法として挙げられる。
1.基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片面に樹脂層(C層)を形成する塗液を塗布する塗布工程。
2.基材ポリエステルフィルム(S層)に塗布された塗液を加熱乾燥することによって、樹脂層(C層)を形成せしめる加熱乾燥工程。
3.樹脂層(C層)が形成された基材ポリエステルフィルム(S層)を延伸する延伸工程。
4.延伸された積層フィルムを加熱し、熱処理を行う熱処理工程。
前記1項に記載の塗布工程における塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法などを用いることができるが、樹脂層(C層)の厚みムラを低減するためにはグラビアコート法およびバーコート法が好ましく、特に好ましくは計量バーによるバーコート方式である。バーコートにて使用される上記計量バーの直径は特には限定されないが通常10〜30mmの範囲である。また、計量のための溝は、ワイヤーを円筒形の部材に巻き付けたワイヤーバー方式でもよいし、部材表面に螺旋状溝を掘った方式のものを用いても良い。なお、計量バーは振れ量が150μm以下、更に好ましくは100μm以下であるものを用いることで、塗布均一性が安定するため好ましい。
前記2項に記載の加熱乾燥工程において、加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度を75〜95℃の範囲に調整する事が好ましい。75℃未満である場合は加熱が不十分となり引き続き実施される延伸工程でのフィルム破れが発生しやすい傾向が見られ、また95℃を越える場合は、樹脂層(C層)の延伸時の均一性が損なわれて、樹脂層(C層)表面のλmin値のバラツキが大きくなる傾向があり好ましくない。本発明においては、樹脂層(C層)中に、ナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有する様な剛直な樹脂を有したり、架橋剤成分を多量に有する塗液を使用する事があるが、そうした場合に延伸時に樹脂層(C層)の均一延伸が困難である傾向がある。加熱延伸工程において、加熱後のフィルム表面温度を前記の範囲としたときに樹脂層(C層)の均一性が良化する理由としては、明確には解明されていないが、樹脂層(C層)を形成する塗液中含有されているエチレングリコールモノアルキルエーテルおよびエチレングリコールモノアルキルエーテルが取り込んでいる溶媒中の水が、樹脂層(C層)延伸時の潤滑剤の役割を果たし、延伸が容易化となっていると推測される。よって、加熱乾燥時の温度が高すぎると延伸時の樹脂層(C層)中に含有される水分量が減少したり、エチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が水との共沸により減少したりする事で、樹脂層(C層)の延伸均一性が悪化すると考えられる。
また、加熱乾燥工程における加熱乾燥方法については特には限定されず、例えば熱風を吹き付ける方法や非接触式のヒーターで加熱する方法などが挙げられるが、熱風を吹き付ける方法が加熱乾燥効率や加熱時の均一性の観点から好ましい。また、加熱乾燥工程終了後の樹脂層(C層)表面を非接触温度計にて測定し、該測定結果が上述の温度範囲となるように決められた目標値に制御されるように、加熱乾燥工程における熱風の風速および/又は温度を制御する(目標温度より高くなった場合は風速を落とすか温度を下げる、低くなったときは風速を上げるか温度を上げる)方法を用いることが、長時間連続生産時の塗布厚みの変動抑制の観点で好ましい。ハードコート層との接着性を向上させるために樹脂層(C層)を形成する塗液中には前述のように架橋剤が多く含有される事があり、そうした場合には計量バーやグラビアが長期の連続生産による目詰まりにより経時で塗布厚みが減少する傾向がある。また、インラインコート法では通常オーブンにて加熱乾燥後に横延伸を実施するが、両端部はクリップに把持されるため、塗布は中央部のみに実施される。このため塗布されている中央部と塗布されていない端部で延伸時のフィルム温度に差があり、温度の高い未塗布の端部がより延伸される状態となっている。計量バーなどの目詰まりのため、塗布厚みがわずかに薄くなると横延伸時の中央部(塗布部)のフィルム温度が上昇するため中央部が延伸されやすくなり、中央部の横延伸の実効倍率が上昇するため、横延伸後の樹脂層厚みが低下する傾向がある。よって、計量バー等の目詰まりにより塗布量が減少した事と併せて、樹脂層(C層)の厚みがさらに減少し、樹脂層(C層)厚みの長期での均一性が損なわれる事がある。そこで、加熱乾燥工程終了後のフィルム温度を一定に制御する事が、長期での樹脂層(C層)の膜厚が安定し好ましい。
前記3項の延伸工程において、樹脂層(C層)が形成された基材ポリエステルフィルム(S層)を、90〜115℃の温度の熱風を吹き付けながらフィルム幅方向に3.0〜5.0倍に延伸する事が好ましい。温度が90℃未満である場合は、延伸時にフィルム破れが発生する事があり、115℃を越える場合は、前記加熱乾燥時の状況と同様に樹脂層(C層)の均一延伸が困難である傾向があり好ましくない。また、延伸倍率が3.0倍未満である場合は、幅方向のフィルム強度が不足したり、厚みムラが悪化する傾向がみられ、5.0倍を越える場合は、破れにより生産性が悪化する事があり、好ましくない。
前記4項の熱処理工程においては、温度200℃〜240℃の熱風を5〜60秒間吹き付ける方法が好ましい。本工程においては、基材ポリエステルフィルム(S層)の結晶化を進めることで構造を固定化し、熱寸法安定性や耐薬品性や耐熱性を向上させる事に加えて、樹脂層(C層)中のエチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量を上述した好ましい範囲に調製する事が可能となる。熱処理工程の温度および時間については、上記の範囲内で必要な特性に応じて調整する事ができる。
本発明にかかる基材ポリエステルフィルム(S層)を構成するポリエステルは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが特に好ましい。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
上述したポリエステルの極限粘度(JIS K7367(2000)に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲内である。
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。特に、紫外線カット能を付与するにはポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが、380nmでの紫外線カット性、色調などの点及び後述するポリエステルのM+P、M/P( Mはフィルム中に残存する触媒金属元素の濃度(ミリモル% ) 、P はフィルム中に残存するリン元素の濃度(ミリモル% ) を示す。) の制御による分散性向上の効果発現度合いの点からベンゾオキサジン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種単独であるいは2種以上一緒に併用することができる。またHALSや酸化防止剤等の安定剤を併用することもでき、特にリン系の酸化防止剤を併用することが好ましい。
ここでベンゾトリアゾール系の化合物としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−アミルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を例示することができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等をあげることができる。
ベンゾオキサジン系化合物としては、例えば2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベンゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等を例示することができる。
本発明における、基材ポリエステルフィルム(S層)は二軸配向ポリエステルフィルムである事が好ましい。ここで言う「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5〜5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了させることにより、得ることができる。
本発明における基材ポリエステルフィルム(S層)の屈折率は、樹脂層(C層)表面との界面における屈折率差が小さくなるように、1.63〜1.69であることが好ましく、1.65〜1.67がより好ましい。これら屈折率は基材ポリエステルフィルム(S層)の長手方向と幅方向の屈折率の平均値であり、ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、中間液としてジヨードメタンを用い、アッベ屈折計により測定する事が出来る。長手方向と幅方向の屈折率を上記の範囲とする方法は特には限定されないが、一般的には二軸延伸時の延伸倍率や温度により調製が可能である。
また、本発明で用いられる基材ポリエステルフィルム(S層)は、S層自身が2層以上の積層構造体であっても良い。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部と有する複合体フィルムであって、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができ、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。本発明の主目的とするディスプレイ用途においては、S層中には粒子などを含有しない方が透明性などの光学特性上好ましい。基材となるS層の層厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは38〜250μmである。
次に本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法を、基材ポリエステルフィルム(S層)としてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルムを用いた場合を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
S層を構成する極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製した。この未延伸フィルムを70〜100℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向を指し「長手方向」ともいう)に2.5〜5.0倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面に空気中でコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に樹脂層(C層)を構成する水系塗剤を塗布する。この塗布された積層フィルムをクリップで把持して乾燥ゾーンに導き、塗布層を乾燥させた後に75〜95℃の温度まで加熱乾燥を行い、引き続き連続的に90〜115℃の加熱ゾーンで横方向(フィルムの進行方向とは直交する方向を指し「幅方向」ともいう)に3.0〜5.0倍延伸し、続いて200〜240℃の加熱ゾーンで5〜60秒間熱処理を施し、100〜200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向の完了した基材ポリエステルフィルム(S層)上に樹脂層(C層)が積層されたポリエステルフィルムを得る。なお、上記熱処理中に必要に応じて3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの端部をカットした後に巻き取り中間製品とし、その後スリッターを用いて所望の幅にカット後、円筒状のコアに巻き付け所望の長さのポリエステルフィルムロールを得ることができる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルム両端部にエンボス処理を施しても良い。
次に本発明にかかる積層ポリエステルフィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムについて述べる。
本発明において、ハードコート層を構成する材料は特に限定されるものではなく、可視光線を透過するものであればよいが、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂などである。特に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂は、耐擦傷性、生産性などの点で好適に用いることができる。
ハードコート層の構成成分として用いられる活性線硬化型樹脂は、該活性線硬化型樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフィド、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4− (メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いる。
また、これら多官能(メタ)アクリル系化合物とともに、活性線硬化型樹脂の硬度、透明性、強度、屈折率などをコントロールするため、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジメタリルフタレート、ジアリルビフェニレート、あるいはバリウム、鉛、アンチモン、チタン、錫、亜鉛などの金属と(メタ)アクリル酸との反応物などを用いることができる。これらは1種もしくは2種以上を用いてもよい。
なお、「(メタ)アクリル系化合物」という記載は、「メタアクリル(メタクリルともいう)系化合物およびアクリル系化合物」を略して表示したものであり、他の化合物についても同様である。
活性線硬化型樹脂を硬化させる方法として、例えば、紫外線を照射する方法を用いることができるが、この場合には、前記化合物に対し、0.01〜10重量部程度の光重合開始剤を加えることが望ましい。
本発明に用いる活性線硬化型樹脂には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を配合することができる。
本発明において活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点から有利である。
本発明におけるハードコート層の屈折率は、樹脂層(C層)表面との界面における屈折率差が小さくなるよう調整されることで、干渉縞の原因となる光反射を抑制することが出来る。かかるハードコート層の屈折率は、1.45〜1.55であることが好ましく、1.48〜1.53がより好ましい。またハードコート層の厚みは、使用用途などによって適切に調節設計されるべきものであり、特に限定されるものではないが、通常は1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。ハードコート層の厚みがかかる好ましい範囲であるとハードコート性が十分に発現し、一方、ハードコート層の硬化時の収縮によりフィルムがカールすることもない。
本発明においては、ハードコート層の表面に、ちらつきを抑えるための反射防止層を設けたり、また、汚れ防止のための防汚処理を施すことが好ましい。
特に、本発明では、ハードコート層の上に反射防止層たる高屈折率ハードコート層および低屈折率層をこの順に積層し、これを反射防止フィルムとして用いても良い。反射防止層は特に限定されるものではないが、低屈折率化合物の積層やフッ化マグネシウムや酸化ケイ素などの無機化合物のスパッタリングや蒸着などにより形成することができる。防汚処理については、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などによる防汚処理を施すことができる。
前記のようなハードコートフィルムの各界面で生じる干渉ムラは、ハードコート層側の分光反射率スペクトルのうねり振幅を小さくすることで低減させることができる。本発明にかかる積層ポリエステルフィルムを用いた光学フィルムにおいては、前述した樹脂層(C層)を有するポリエステルフィルムとハードコート層との積層構成を用いることで、干渉縞のないハードコートフィルムを形成することができるのでより好ましい。
[測定方法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各種物性の測定方法を記載する。
(1)分光反射率
(A)試料のサンプリング方法
幅方向1m×長手方向1m長のサンプルから幅方向3ヶ所(中央と両端部)、長手方向3ヶ所(中央と両端部)の組み合わせ9点について幅方向150mm×長手方向200mmのサンプルを切り出し反射率測定用サンプルとした。
(B)反射率の測定方法
反射率の測定は、測定面の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛みこまないように(A)の方法で採取したサンプルの中央部に、サンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、該サンプルの中央部から約40mm角のサンプル片に切り出し、分光光度計(島津製作所(株)製 UV2450、鏡面反射率測定ユニットを使用)にて入射角5°での分光鏡面反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl板を用いた。反射率は波長400〜700nmの範囲で測定し、反射率が極小と成る波長をλmin(nm)、波長λmin(nm)での反射率をRmin(%)とした。
前記(A)で採取した9点すべてにおいて測定を実施し、λmin値について最大値(9測定点の内、最も波長が長いもの)と最小値(9測定点の内、最も波長が短いもの)の差を計算し、λmin差を得た。
結果の判定は両者ともに以下基準で実施し、S,Aは良好、Bは実用レベル、Cは不合格である。なお、両面に樹脂層(C)層を有する場合は、少なくとも片面側のλmin値が小さい方での結果で判定を実施した。
S:λminの差15nm以下
A:λminの差15nmを越えて20nm以下
B:λminの差20nmを越えて30nm以下
C:λminの差30nmを越える。
(2)樹脂層(C層)の単位面積あたりのエチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量
フィルムサンプルを10mm×10mmの長方形に切り出した。該サンプルを全体重量が50〜100mgの範囲になる様に、サンプル枚数を調整し、22mLバイアルに入れ密栓した。このバイアルを下記条件にて200℃で30分間加熱し、発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計にて分析した。なお、装置と測定条件については、下記に詳細を記載する。得られたピークおよび質量分析結果から、発生ガス成分の同定をおこなった。また定量については、得られたガスクロマトグラフでの該当ピークの定量イオンピーク面積を、あらかじめ標品を測定する事により得られたピーク面積と含有量の検量線に当てはめて発生ガスの量を定量した。得られたガス量(μg)を測定に使用したサンプルの樹脂層(C層)の表面積(m)で除して、樹脂層(C層)の単位面積あたりのエチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量(μg/m)とした。(樹脂層(C層)が両面に設けられている場合は、測定に使用したフィルムサンプルの面積を2倍して、樹脂層(C層)の表面積当たりの含有量とする。)
<装置と測定条件>
ガスクロマトグラフ:6890シリーズ(Hewlett Packard社製)
カラム :CP−Volamine(カラム No.5002547) 60m×0.32mm,F.T−μm
インジェクション :ヘッドスペースオートサンプラー7000(TEKMAR社製):<バイアルサイズ 22mL、サンプルループサイズ 0.5mL、加熱温度 200℃、加熱時間 30分、移送ライン温度 200℃、インジェクト時間 0.3分>
カラムオーブン温度:40℃で5分保持後、10℃/分で240℃まで昇温、240℃到達後10分間保持。
質量分析計 :JMS−AMSUN200(JEOL社製):<IONIZATION /POLARITY:EI+、IONIZATION VOLTAGE: 70eV、ION SOURCE TEMP.:220℃、INTERFACE TEMP.:240℃、APPLIED VOLTAGE:10kV、SCAN RANGE:m/z 20−400、CYCLE TIME:100msec>。
(3)樹脂層(C層)の層厚み
幅方向1m×長手方向1m長のサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点を測定サンプルとして用いた。フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO染色、OsO 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で断面構造が目視可能な以下の条件にて観察し、その断面写真からC層の厚みを測定した。測定値は、4点の平均値を用いた。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法
・倍率:30万倍。
(4)樹脂層(C層)の欠陥個数
積層ポリエステルフィルムロールから、積層ポリエステルフィルムを連続的に引出すことによって走行させ、走行するフィルム面に対して、距離150mmの位置に設置したLED光源から入射角15°にてフィルム位置での照度30,000lxにて照射し(光線入射面は樹脂層(C層)が設けられた側の表面とする)、その正反射光(反射角15°の反射光)をフィルムからの距離200mmの位置に設置した、フィルム流れ方向速度が50m/分での分解能が幅方向0.16mm、長手方向0.12mm、画素サイズ10μm、検出光0.31lx・sを1024階調に分解する感度を有したCCDカメラにて検出した。検出した信号を長手方向に微分処理を実施し、幅6ピクセル(幅約1mm)以上、長手方向2ピクセル(長さ約0.24mm以上)、微分後の信号閾値が100階調以上の欠陥個数をフィルムロール全幅・全長に渡ってカウントし、フィルムの面積1m当たりの欠陥数に換算した。評価は以下の基準で行い、S,Aが良好、Bは実用レベル、Cを不合格とした。
S :0.3ヶ/m以下(残存個数/測定個数)
A :0.3ヶ/mを越えて、0.7ヶ/m以下
B :0.7ヶ/mを越えて、1.0ヶ/m以下
C :1.0ヶ/mを越える。
(5)塗液の動的表面張力
樹脂層(C層)に用いる塗液の動的表面張力は動的表面張力計(英弘精機(株)製 SITA f10)を用い、液温が25℃の時の周波数2Hz、5Hzにおける動的表面張力を測定した。
(6)ハードコート層との初期接着力評価
(A)ハードコートフィルムの調整
ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂(日本合成化学工業(株)製 紫光UV−1700B[屈折率:1.50〜1.51])を積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)表面上にバーコーターを用いて硬化後の膜厚が1.5μmとなるように均一に塗布した。次いで、ハードコート層の表面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H03−L31)で、積算照射強度が150mJ/cm、300mJ/cmとなるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層されたハードコートフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
(B)初期接着性
上記ハードコートフィルムのハードコート層に、1mmのクロスカットを100個入れた。作業は、下記の点を除きJIS K5600−5−6(1999)の7項の手順に従って行った。
・試験条件及び試験数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.1項に規定にかかわらず、試験条件は23℃、相対湿度65%とした。また、試験数は1とした。
・試験板の養生:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.2項に規定にかかわらず、養生条件は、23℃、相対湿度65%とし、養生時間は1時間とした。
・カット数:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.3項に規定にかかわらず、カット数は11とした。
・カットの間隔:JIS K5600−5−6(1999)の7.1.4項に規定にかかわらず、カットの間隔は1mmとした。
・手動手順による塗膜の切込み及び除去:JIS K5600−5−6(1999)の7.2.5項の規定は準用しないものとする。すなわち、はけを用いたブラッシングは行わないものとする。また、JIS K5600−5−6(1999)の7.2.6項は第2段落の規定(「テープの中心を、図3に示すように角カットの一組に平行な方向で格子の上に置き、格子の部分にかかった箇所と最低20mmを超える長さで、指でテープを平らになるようにする」)のみ準用し、他の規定は準用しないものとする。なお、テープはセロハンテープ(ニチバン(株)製 セロテープ(登録商標)CT405AP)を用いるものとする。
また、テープの貼付けは、ハンドローラー((株)オーディオテクニカ製 HP515)を用いて、荷重19.6N/mでローラー移動速度5cm/秒で3往復させ押しつけることによって行った。次いで、テープをハードコート層表面方向に対して90度方向に秒速10cm/秒の早さで引きはがし、ハードコート層に設けた格子の残存個数により5段階評価を行った。5以上を初期接着性がきわめて良好、4以上を良好、3を実用レベル、2以下を初期接着性が不良とした。
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(7)ハードコート層との耐湿熱接着力評価
(6)項の方法にて調製したハードコートフィルムを温度80℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽中に250時間放置し、耐湿熱接着試験用サンプルを得た。得られた耐湿熱接着試験用サンプルについて、(6)(B)と同様の方法で、接着性試験を行い、残存した格子の個数により5段階評価を行い、耐湿熱接着指数とした。5以上を耐湿熱接着性がきわめて良好、4以上を良好、3を実用レベル、2以下を耐湿熱接着性が不良とした。
5 :100/100(残存個数/測定個数)
4 :90/100以上、100/100未満
3 :80/100以上、90/100未満
2 :50/100以上、80/100未満
1 :50/100未満。
(8)干渉ムラ
(6)項と同様の方法でハードコートフィルムを得た。次いで、得られたハードコートフィルムから、幅方向1m、長手方向1mのサンプルを採取した。 得られたサンプルから幅方向2ヶ所(両端部)、長手方向2ヶ所(両端部)の組み合わせ計4点から8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(松下電器産業(株)製 3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉縞の程度を観察し、以下の評価を行った。実用レベルのものはBとし、S,Aのものは良好、Cは不合格とした。なお、干渉ムラは(1)(A)と同様の方法にてハードコートフィルムロールからサンプリングした。結果の判定は以下基準で実施し、S,Aが良好、Bが実用レベル、Cが不合格である。
S :いずれのサンプルも干渉ムラがほぼ見えない
A :一部および/またはすべてのサンプルにおいて干渉ムラがわずかに見える。
B :一部および/またはすべてのサンプルにおいて弱い干渉ムラが見える。
C :一部および全てのサンプルにおいて干渉ムラが強い。
(9)加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度
樹脂層(C層)を形成する塗布層の加熱乾燥工程において、該工程直後に非接触式温度計(optris社製CTLT20、光学分解能20:1、放射率(ε)を0.95に設定)のセンサーヘッドを樹脂層(C層)側表面からの距離が200mmとなる様に設置し、樹脂層(C層)側表面のフィルム温度を測定した。
(10)ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)
セイコー電子工業(株)製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続した装置を用いて測定を実施した。試料(樹脂固形物)10mgをアルミニウムパンに調整し、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素にて急冷処理を実施した。その後20℃/分の速度で昇温しながら測定を実施し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線より以下方法によりガラス転移温度(Tg)を算出した。ガラス転移温度(Tg)近傍に、DSC曲線に沿って2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線とDSC曲線の交点からガラス転移温度(Tg)を算出した。(図1参照)。
各実施例・比較例で用いる樹脂等の調製法を参考例として示す。
[参考例1] ポリエステル樹脂(A1)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸40モル部、テレフタル酸50モル部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム5モル部、グリコール成分としてエチレングリコール95モル部、ジエチレングリコール5モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で5時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。
その後、3価以上の多価カルボン酸成分であるトリメリット酸5モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A1)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは105℃であった。
<ポリエステル樹脂(A1)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸 40モル部
・テレフタル酸 50モル部
・5−スルホイソフタル酸ナトリウム 5モル部
・トリメリット酸 5モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール 95モル部
・ジエチレングリコール 5モル部
[参考例2] ポリエステル樹脂(A2)の調製
窒素ガス雰囲気下でジカルボン酸成分としてテレフタル酸85モル部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム5モル部、グリコール成分としてエチレングリコール100モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160〜240℃で5時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。
その後、3価以上の多価カルボン酸成分である1,3,5−トリメリット酸10モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220〜280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A2)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは75℃であった。
<ポリエステル樹脂(A2)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・テレフタル酸 85モル部
・5−スルホイソフタル酸ナトリウム 5モル部
・1,3,5−トリメリット酸 10モル部
(グリコール成分)
・エチレングリコール 100モル部。
[参考例3] ポリエステル樹脂(A3)の調製
窒素ガス雰囲気下で、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル75モル部、グリコール成分として9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン90モル部、エチレングリコール10モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)をジカルボン酸エステル誘導体100万重量部に対して100重量部添加して、160〜200℃で5時間エステル化反応を行った後、メタノールを留出させた。更に240℃、0.2MPaの減圧下で30分反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。
次にポリエステルポリオールに、3価以上の多価カルボン酸成分である1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物25モル部を仕込み、反応温度160〜180℃で3時間反応を行い、ポリエステル樹脂(A3)を得た。該ポリエステル樹脂のTgは130℃であった。
<ポリエステル樹脂(A3)の組成>
(ジカルボン酸成分および多価カルボン酸成分)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸 75モル部
・1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸 25モル部
(グリコール成分)
・9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン 90モル部
・エチレングリコール 10モル部。
[参考例4] アクリル樹脂(B)の調製
窒素ガス雰囲気下、減圧状態で溶媒となる水300部中に乳化剤(Qa−1)としてp−ドデシルベンゼンスルホン酸Na1重量部、モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)(Qb−1)65重量部、アクリル酸エチル(EMA)(Qb−2)30重量部、N−メチロールアクリルアミド(N−MAM)(Qb−3)3重量部、アクリル酸(AA)(Qb−4)2重量部を乳化重合反応器に仕込み、これに過硫酸ナトリウム(開始剤)を全モノマー成分100万重量部に対して100重量部添加して、30〜80℃で10時間反応を行った後、アンモニア水溶液(アルカリ)でpH7.0〜9.0となるよう調整を行った。その後、70℃の減圧下において未反応モノマーを除去、濃縮しアクリルエマルション35%を得た。アクリルエマルションの平均粒子径は45nm、Tgは55℃であった。
<アクリル樹脂(B)の組成>
・メタクリル酸メチル 65重量部
・アクリル酸エチル 30重量部
・N−メチロールアクリルアミド 3重量部
・アクリル酸 2重量部。
[参考例5] ポリエチレンテレフタレートペレット(PET)の調製
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
[実施例1]
参考例5の方法で得られたポリエチレンテレフタレートペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。なお、この時キャスティングドラムの反対面から温度10℃の冷風を長手方向に8段設置した間隙2mmのスリットノズルから風速20m/sでフィルムに吹き付け、両面から冷却を実施した。
この未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向(一軸延伸)フィルムとした。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとした。
次いで、樹脂層(C層)を形成するために、下記塗液を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。
<塗液>
ポリエステル樹脂固形分を100重量部とした時に以下成分と、塗液として以下の溶媒を含有する、ポリエステル樹脂固形分換算の濃度が5.0重量%である水溶液。また、本塗液を加熱乾燥して得た樹脂固形物の屈折率は1.58であった。
(成分)
ポリエステル樹脂(A1):100重量部
メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”MW12LF:有効成分70重量%、イソプロピルアルコール(沸点82.5℃)17重量%含有):50重量部(有効成分換算)
粒径140nmのコロイダルシリカ:1.5重量部
(溶媒)
エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点171℃):3.0重量%
水 :92.0重量%
樹脂層(C層)を塗布した1軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。なお、加熱乾燥工程終了部分にて上記(9)項の方法にて、樹脂層(C層)側のフィルム温度を測定し、該温度が85℃になるように乾燥工程での熱風の風速を自動制御により調整した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて15秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、面方向の平均屈折率1.660(長手方向1.649、幅方向1.671)の基材ポリエステルフィルム(S層)に、樹脂層(C層)が積層された厚さ125μm、ヘイズ0.7%(JIS K7105(1981))の積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムは、スリット工程にて上記積層補ポリエステルフィルムの中央部を幅1000mmとなるように速度50m/分で切断しながら、内径152.5mm、外径167mmのガラス繊維強化プラスチックからなるコアに巻き取り、樹脂層(C層)を巻内面とした幅1000mm、長さ1500mの積層ポリエステルフィルムロールを得た。なお、スリット工程にて前記(4)項に記載の塗布欠陥個数の評価を実施した。
得られた積層フィルムの特性を表3に示す。樹脂層(C層)表面反射率のλmin、Rminともに目標範囲であり、かつλminのバラツキも非常に少なく良好な状態であり、ハードコート層を積層した後の干渉ムラの状態も非常に良好であった。また、ハードコート層との初期接着力および耐湿接着力ともに、紫外線積算照射強度が150mJ/cmと低い状態でも非常に良好な、生産性にも優れたおり、ハードコート用フィルムとして好適であった。
[実施例2〜30,比較例1〜17]
樹脂層(C層)の組成並びにフィルムの製造条件を、表1−1、表1−2、表2の通りとした以外は実施例1に従い積層ポリエステルフィルムロールを得た。得られた積層ポリエステルフィルムロールの特性を表3に示す。なお、実施例25は加熱乾燥工程終了時のフィルム温度による加熱乾燥工程の風速制御を無しとした。また、表1−1、表1−2中の各種架橋剤および界面活性剤の成分は以下の通り。
オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”WS500:有効成分40重量%、1−メトキシ−2−プロパノール(沸点119℃)38重量%含有)
カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル(株)製“カルボジライト”V−04:有効成分40重量%))
フッ素系界面活性剤(互応化学(株)社製“プラスコート”RY2:有効成分10重量%、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル70重量%含有)
<接着性>
樹脂層(C層)中にエチレングリコールモノアルキルエーテルを30〜300μg/m含有する場合は、ハードコート層塗布後の活性線照射量が少ない場合でも実用レベル以上な初期接着力と耐湿接着力を発現し、50〜150μg/mの場合は更に良好な接着性を示し、上記範囲を外れた場合(比較例1〜8,10,13,14,17)は初期接着性および/または耐湿接着性が悪化した。なお、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が低い場合や(実施例13〜16)、界面活性剤を含有している場合は(実施例24)、ハードコート層との耐湿接着性がやや劣る結果となった。また、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤を添加した場合(実施例22,23)は、実施例4との比較で分かるように耐湿接着性がさらに向上していた。エチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の構成については、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、n−プロピル基、エチル基の場合に良好な結果となったが、n−ヘキシル基の場合(比較例17)は、エチレングリコールモノアルキルエーテル量の含有量を上記に範囲とすることが困難となったり、後述する樹脂層(C層)表面の反射率が極小となる波長(λmin)値の場所による差異(バラツキ)が大きくなった。
<干渉ムラ>
表面全般に渡って見られる干渉ムラは、樹脂層(C層)表面の反射率が極小となる波長(λmin)値が480〜600nmの場合に実用範囲となり、500〜580nmの場合に良好な結果となった。また、波長λminにおける表面反射率Rmin値が4.0〜6.0%の場合に実用範囲となり、4.5〜5.5%の場合に良好な結果となった。λmin値が上記の範囲を外れた場合(比較例3,4,6,7,11,12,15)およびRmin値が上記の範囲を外れた場合(比較例15,16)については、表面全体に強い干渉ムラが見られた。ハードコートフィルム表面の部分的もしくは一部分に見られる干渉ムラについては、上記λmin値の差が30nm以下である場合に実用範囲となり、20nm以下で良好な結果となったが、30nmを越えた場合(比較例1,5,6,7,9,17)は、干渉ムラが悪化した。また、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂とアクリル樹脂を混合した場合(実施例26)では、広範囲に渡って干渉ムラがほとんど見られず非常に良好な外観となった。
<樹脂層(C層)を構成する塗液成分>
塗液中にエチレングリコールモノアルキルエーテルを塗液全体に対して1〜10重量%含有した場合に、樹脂層(C層)中のエチレングリコールモノアルキルエーテル量とλmin値の差(バラツキ)を上記の範囲内に制御しやすく好ましい結果となった。また、塗液に界面活性剤を0.5重量%含有した場合(実施例24)は、特に活性線の照射量を減少させた場合に耐湿接着性が実用範囲内だが悪化する傾向が見られ、塗液に沸点が100℃未満の溶剤であるイソプロピルアルコールを10重量%含有した場合(実施例25)は、製造時間が長くなるにつれて、前記λmin値の値が、実用許容範囲内だが上昇方向に変動する傾向が見られた。よって、界面活性剤は0.5重量%以下、沸点が100℃未満の溶剤は10重量%以下の含有量とする事が、より好ましい結果となった。
<フィルム製造条件>
樹脂層(C層)を形成する塗布層の加熱乾燥工程後の樹脂層(C層)側から測定したフィルムの温度を75〜95℃の範囲とした場合、および引き続き実施されるフィルムの延伸工程での熱風温度を90〜115℃の範囲とした場合に、樹脂層(C層)側表面のλmin値の場所による差異(バラツキ)を低減でき、かつ製造工程が安定化する結果となった。加熱乾燥後のフィルム温度が75℃未満であったり、延伸時の熱風温度が90℃未満であった場合(比較例10)は延伸工程での破れが発生しやすくなった。また、加熱乾燥後のフィルム温度が95℃を越えたり、延伸工程の熱風温度が115℃を越えた場合(比較例9)は、λmin値の場所による差異(バラツキ)が大きくなる傾向となった。さらに、加熱乾燥工程において、加熱乾燥工程後の樹脂層(C層)側のフィルム温度によって、加熱乾燥工程における熱風の風速を制御しなかった場合(実施例30)は製造時間が長くなるにつれて、実用許容範囲内だが、前記λmin値の値が下降方向に変動する傾向が見られた。
Figure 2013043352
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本発明にかかる積層ポリエステルフィルムは、ハードコート層を設けたときに干渉ムラが抑制された良好な外観特性を発現する事が可能であると共に、ハードコート層との初期接着性および耐湿接着性が優れ、生産性・安定性に優れたハードコート用フィルムとして有用である。特に、モバイル機器に使用される表面保護や反射防止フィルム、タッチパネル用フィルム、表面加飾フィルム等に好適に用いることができる。
1 樹脂層(C層)側の反射率曲線
2 反射率の極小値
3 DSC曲線
4 延長線
5 1/2直線
6 ガラス転移温度(Tg)

Claims (10)

  1. 基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片面に樹脂層(C層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層(C層)が下記化学式(1)にて表されるエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、樹脂層(C層)における該エチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が、樹脂層(C層)の単位面積あたり、30〜300μg/mであり、かつ、幅1m×長さ1mの区間において、幅方向の中央部、両端部の3箇所、長手方向の中央部、両端部の3箇所のそれぞれの組み合わせ計9点について測定した樹脂層(C層)側表面の波長400〜700nmにおける表面反射率が以下(a)〜(c)を満たす積層ポリエステルフィルム。
    (a)上記9測定点のすべてにおいて、λminが480〜600nmの間に存在すること。
    (b)上記9測定点のすべてにおいて、Rminが4.0〜6.0%であること。
    (c)上記9測定点のλminにおいて、λminの最大値(9測定点の内、最も波長が長いもの)と最小値(9測定点の内、最も波長が短いもの)の差が30nm以下であること
    ただし、λminは波長400〜700nmにおける表面反射率が極小値となる波長(nm)を、Rminは波長λminの時の反射率(%)を示す。
    化学式(1) R−O−CHCH−OH R=C(2n+1) n=1〜4
  2. 前記樹脂層(C層)の厚みが70〜110nmである請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記エチレングリコールモノアルキルエーテルがエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテルおよびエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルからなる群から選ばれる1以上のエチレングリコールモノアルキルエーテルである請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記樹脂層(C層)がポリエステル樹脂を主成分としており、前記ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、樹脂層(C層)中に含まれる界面活性剤の含有量が0.5重量部以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記樹脂層(C層)が、少なくとも1以上のナフタレン骨格および/またはフルオレン骨格を有する樹脂を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを巻き取ってなる積層ポリエステルフィルムロールであって、以下の方法で検査した時の欠陥個数が1.0個/m以下である積層ポリエステルフィルムロール。
    積層ポリエステルフィルムロールから、積層ポリエステルフィルムを連続的に引出すことによって走行させ、走行するフィルム面に対して、距離150mmの位置に設置したLED光源から入射角15°にてフィルム位置での照度30,000lxにて照射し(光線入射面は樹脂層(C層)が設けられた側の表面とする)、その正反射光(反射角15°の反射光)をフィルムからの距離200mmの位置に設置した、フィルム流れ方向速度が50m/分時の分解能が分解能が幅方向0.16mm、長手方向0.12mm、画素サイズ10μm、検出光0.31lx・sを1024階調に分解する感度を有したCCDカメラにて検出した。検出した信号を長手方向に微分処理を実施し、幅6ピクセル(幅約1mm)以上、長手方向2ピクセル(長さ約0.24mm以上)、微分後の信号閾値が100階調以上の欠陥個数をフィルムロール全幅・全長に渡ってカウントし、フィルムの面積1m当たりの欠陥数に換算した。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの樹脂層(C層)の上に、さらにハードコート層を積層せしめた、ハードコートフィルム。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、樹脂層(C層)が、基材ポリエステルフィルム(S層)が製造される工程の中で設けられ、かつ以下(d)〜(g)に記載の塗液が基材ポリエステルフィルム(S層)に塗布されることで樹脂層(C層)が形成される積層ポリエステルフィルムの製造方法。
    (d)塗液が、ポリエステル樹脂を含有すること。
    (e)塗液が、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群から選ばれる1以上の架橋剤を含有すること。
    (f)ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、前記架橋剤の含有量の総和が30〜100重量部であること。
    (g)ポリエステル樹脂の含有量を100重量部とした時に、塗液中の界面活性剤の含有量が0.5重量部以下であること。
    (h)塗液がエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、かつ塗液中のエチレングリコールモノアルキルエーテルの含有量が、塗液全体に対して、1〜10重量%であること
    (i)沸点が100℃未満の溶剤の含有量が、塗液全体に対して、10重量%以下であること。
    (j)塗液の周波数2Hzおよび5Hzにおける動的表面張力が、いずれも30〜55mN/mであること。
  9. 以下の工程をその順に有する請求項8に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法。
    (塗布工程)基材ポリエステルフィルム(S層)の少なくとも片面に前記塗液を塗布する工程。
    (加熱乾燥工程)基材ポリエステルフィルム(S層)に塗布された塗液を加熱乾燥することによって、樹脂層(C層)を形成せしめ、加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度を75〜95℃の範囲にせしめる工程。
    (延伸工程)樹脂層(C層)が形成された基材ポリエステルフィルム(S層)を、90〜115℃の温度の熱風を吹き付けながら幅方向に3.0〜5.0倍に延伸し、積層ポリエステルフィルムを得る工程。
  10. 請求項9に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法で得られる積層ポリエステルフィルムを巻き取る積層ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、前記加熱乾燥工程が以下の熱風加熱乾燥工程および熱風制御工程を有し、かつ前記延伸工程後の積層ポリエステルフィルムを巻き取る積層ポリエステルフィルムロールの製造方法。
    (熱風加熱乾燥工程)熱風によって塗液を加熱乾燥する工程。
    (熱風制御工程)加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面温度を温度計にて計測し、得られた計測値に応じて、熱風加熱乾燥工程の熱風の風速および/又は温度を制御することによって、加熱乾燥後の樹脂層(C層)側のフィルム表面の温度を75〜95℃の範囲内にせしめる制御工程。
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