JP2013040166A - 褥瘡予防材及びこれを含む褥瘡予防用タンパク質水溶液 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膚弾性を向上させることができ、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができる褥瘡予防材を提供することを目的とする。
【解決手段】GAGAGS配列(1)と、下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)とを有する人工タンパク質(A)からなる褥瘡予防材であって、(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸の数×100]が5〜60%である褥瘡予防材。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
【選択図】なし

Description

本発明は、褥瘡予防材及びこれを含む褥瘡予防用タンパク質水溶液に関する。
褥瘡を予防する方法としては、皮膚弾性を向上する方法、圧負荷を分散させる方法、除圧する方法等が一般的である。除圧のために充分な体位変換や体の清拭等の介護がなされている場合には、いわゆる床擦れと称される褥瘡の発症がかなりの割合で予防できるものの、現在の公共的又は在宅での介護の現状では理想的な人的介護を求めるには限界がある。
このような現状から、装具面での褥瘡発症の予防を図るために、幾つかの提案がなされている。一般的に、寝具用のマット素材として利用されている発泡ポリウレタン等にあっては、その硬度の硬いものは部分的に体位の圧力が集中しがちで、褥瘡の発症を誘発する傾向がある。一方、柔らかい場合には圧力分散の効果があって、仙骨部位等への圧力集中は排除できるものの、患者の体位が沈み込むとともに屈曲してしまい、他の障害を誘発する等、いずれも二律背反的な技術的不完全さを有している(例えば、特許文献1及び2)。
また、皮膚弾性の向上により予防する方法がある。皮膚には、褥瘡になりやすい褥瘡後発部位と、褥瘡になりにくい褥瘡非好発部位がある。褥瘡好発部位(仙骨部、踵骨)は、弾性繊維(エラスチンやコラーゲン)が少なく、加齢とともに弾性繊維が減少し、皮膚弾性が低下する部位である。褥瘡非好発部位(腹部)は、好発部位よりも弾性繊維が多く、皮膚弾性が高いため、褥瘡になりにくいとされている(例えば、非特許文献1)。
そこで、褥瘡好発部位の皮膚弾性を向上させるために、特許文献3のような光生体刺激を用いた皮膚弾性の向上が用いられている。しかしながら、この方法は、褥瘡非好発部位の皮膚弾性と同程度にまで皮膚弾性を向上させることができるものではなく、褥瘡予防にはあまり効果がない。
また、弾性繊維であるエラスチンペプチドを経口投与して皮膚弾性を向上させる方法もある(非特許文献2)が、持続的な皮膚弾性の向上には繋がらない。
特開平5−076663号公報 特開平9−271424号公報 特表2006−501960号公報
J Tissue Viability,2001,11(2),59−63 神尾美智子著、「豚由来エラスチンペプチドの長期摂取が皮膚に及ぼす影響」、社団法人日本栄養・食糧学会発行「第62回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集」、平成20年4月1日、発表コードA00169−00004−10627
本発明は皮膚弾性を向上させることができ、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができる褥瘡予防材を提供することを目的とする。
本発明の褥瘡予防材は、GAGAGS配列(1)と、下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)とを有する人工タンパク質(A)からなる褥瘡予防材であって、(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸の数×100]が5〜60%である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
本発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性を向上させることができ、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができる。
また、本発明の褥瘡予防用タンパク質水溶液は、皮膚に注入することにより、皮膚弾性を向上させることができ、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができる。
本発明において、人工タンパク質(A)は、動物由来成分を排除するために、人工的に製造されるものであり、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって製造できる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、人工タンパク質(A)を作製できるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明の褥瘡予防材は、GAGAGS配列(1)と、下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)とを有する人工タンパク質(A)からなる褥瘡予防材であって、人工タンパク質(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸の数×100]が5〜60%である褥瘡予防材である。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
人工タンパク質(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸の数×100]が5〜60%であるタンパク質であるが、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、9〜55%が好ましく、さらに好ましくは20〜55%である。
人工タンパク質(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求める。
<GAGAGS配列(1)が占める割合>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、人工タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、人工タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてGAGAGS配列(1)の占める割合を算出する。
GAGAGS配列(1)の占める割合(%)=[{GAGAGS配列(1)の数×6}/{(A)の全アミノ酸の数}×100
本発明においては、人工タンパク質(A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合が上記範囲であることで、(A)が適度な分解性を有し、皮膚弾性を向上させることができ、長期的に皮膚弾性を維持することができる。
人工タンパク質(A)は、GAGAGS配列(1)を有するが、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(1)が連続する個数は、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜50個であり、特に好ましくは2〜10個である。
本発明において、人工タンパク質(A)は、下記アミノ酸配列(X)を少なくとも1個及び/又は下記アミノ酸配列(X’)を少なくとも1個有するものである。
アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X)としては、細胞親和性及び皮膚弾性を向上する観点から、VPGVG配列(2)及び/又はGVGVP配列(3)が好ましい。
アミノ酸配列(X’)として、具体的には、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)、GKGRP配列(9)及びGRGRP配列(10)等が挙げられる。
アミノ酸配列(X’)は、細胞親和性及び皮膚弾性を向上する観点から、GKGVP配列(7)、GKGKP配列(8)、及びGRGRP配列(10)からなる群より選ばれる1種以上の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(7)及び/又はGKGKP配列(8)である。
人工タンパク質(A)は、細胞親和性、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有することが好ましい。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)の全アミノ酸の0.1〜20%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
ポリペプチド鎖(Y)は、具体的には、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列である。(なお、b〜dは、それぞれ、アミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である)。
人工タンパク質(A)1分子中に、ポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、(VPGVG)b配列、(GVGVP)c配列及び(GAHGPAGPK)d配列からなる群から選ばれる1種を有してもよく、2種以上を有してもいい。
また、人工タンパク質(A)中にアミノ酸配列(X)が同種類のポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、(X)の連続する個数b〜dが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、b〜dが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよい。
ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞親和性の観点から、(VPGVG)b配列及び/又は(GVGVP)c配列が好ましい。
ポリペプチド鎖(Y)は、アミノ酸配列(X)が2〜200個連続した(上記b〜dが2〜200)ポリペプチド鎖であるが、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、連続する個数は2〜100個(上記b〜dが2〜100)が好ましく、さらに好ましくは2〜50個(上記b〜dが2〜50)、特に好ましくは2〜40個(b〜dが2〜40個)である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)は、(Y)中の全アミノ酸の0.1〜20%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であり、具体的には、アミノ酸配列(X)が連続したポリペプチド鎖(Y)において、アミノ酸配列(X)の一部又は全部がアミノ酸配列(X’)に置き換わったポリペプチド鎖である。
ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中の全アミノ酸のうちリシン及び/又はアルギニンで置換された割合は、人工タンパク質(A)の水溶性、細胞親和性及び皮膚弾性を向上する観点から、0.5〜10%が好ましく、さらに好ましくは1〜5%である。
ポリペプチド鎖(Y’)であるかどうかは、人工タンパク質(A)の配列中の全てのK及びRを、他のアミノ酸(G、A、V、P又はH)に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(Y)となるかによって判断する。
人工タンパク質(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数は、皮膚弾性を向上及び長期的に維持する観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜80個であり、特に好ましくは1〜60個である。
人工タンパク質(A)中に、(X)の種類及び/又は連続する個数が異なる(Y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、(Y)の個数はその合計である。(Y’)も同様である。
人工タンパク質(A)が、ポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(Y’)を合計2個以上有する場合は、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖との間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(Z)を構成するアミノ酸の数は、細胞親和性の観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個である。(Z)として、具体的には、VAAGY配列(11)、GAAGY配列(12)及びLGP配列等が挙げられる。
(A)中の(Z)の含有量(重量%)は、(A)の分子量を基準として、細胞親和性の観点から、0〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜10重量%である。
人工タンパク質(A)中の両末端の各ポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(T)を有していてもいい。(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、GAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及び(X’)では無いペプチド配列である。(T)を構成するアミノ酸の数は、細胞親和性の観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは1〜50個、特に好ましくは1〜40個である。(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(13)等が挙げられる。
(A)中の(T)の含有量(重量%)は、(A)の分子量を基準として、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、0〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
人工タンパク質(A)は、上記(T)以外に、発現させた(A)の精製または検出を容易にするために、(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおける人工タンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
人工タンパク質(A)は、1分子中にアミノ酸配列(X)又は(X’)を少なくとも1個有していればよいが、細胞親和性、皮膚弾性を向上する及び長期的に維持する観点から、(A)中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)は、(A)の分子量を基準として35〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは45〜93重量%である。
また、人工タンパク質(A)1分子中のGAGAGS配列(1)の含有量(重量%)は、細胞親和性、皮膚弾性を向上及び長期的に維持する観点から、(A)の分子量を基準として、5〜65重量%が好ましく、さらに好ましくは7〜55重量%である。
人工タンパク質(A)中のGAGAGS配列(1)の含有量と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<GAGAGS配列(1)の含有量と、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量の測定法>
特定のアミノ酸残基で切断出来る切断方法から2種類以上を用いて、人工タンパク質(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、人工タンパク質(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてGAGAGS配列(1)、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量を算出する。
GAGAGS配列(1)の含有量(重量%)=[{GAGAGS配列(1)の分子量}×{GAGAGS配列(1)の数}]/{(A)の分子量}×100
アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)=[{アミノ酸配列(X)の分子量}×{アミノ酸配列(X)の数}+{アミノ酸配列(X’)の分子量}×{アミノ酸配列(X’)の数}]/{(A)の分子量}×100
人工タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(Y)及び/又は(Y’)並びにGAGAGS配列(1)及び/又はポリペプチド鎖(S)を含む場合、皮膚弾性の向上及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)とGAGAGS配列(1)及びポリペプチド鎖(S)とが交互に化学結合していることが好ましい。
また、ポリペプチド鎖(Y)及び/又は(Y’)並びにポリペプチド鎖(S)を含む場合、ポリペプチド鎖(S)を構成するGAGAGS配列(1)の数と、ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)を構成するアミノ酸配列(X)及び(X’)の数との比[配列(1):{(X)及び(X’)}]は、皮膚弾性の向上及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、1:1〜1:12が好ましく、さらに好ましくは1:1〜1:4である。
タンパク質ポリマー(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子量は、皮膚弾性を向上する及び長期的に皮膚弾性を維持する観点から、15〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは30〜150kDaであり、特に好ましくは40〜120kDaである。
好ましい人工タンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(A1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(3)である人工タンパク質
(1)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)中のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有する人工タンパク質
(1−1)GVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y11)の1個のアミノ酸がKで置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)(Y’11)と、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)を有する人工タンパク質
具体的には、下記人工タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)4配列(5)を12個及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、(GAGAGS)2配列(14)が化学結合した分子量が約80kDaの配列(28)の人工タンパク質(SELP8Kポリマー)
(ii)(GAGAGS)2配列(14)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子量が約82kDaの配列(15)の人工タンパク質(SELP0Kポリマー)
(2)GVGVP配列(3)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y1)とGAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S1)とを有する人工タンパク質
具体的には、下記人工タンパク質が含まれる。
(i)(GAGAGS)8配列(16)及び(GVGVP)8配列(17)をそれぞれ12個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子量が約90kDaの配列(18)の人工タンパク質(SELP3ポリマー)
(ii)(GAGAGS)8配列(16)及び(GVGVP)40配列(19)をそれぞれ5個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子量が約110kDaの配列(20)の人工タンパク質(SELP6.1ポリマー)
(A2)アミノ酸配列(X)がVPGVG配列(2)である人工タンパク質
(1)VPGVG配列(2)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y2)とGAGAGS配列(1)を有する人工タンパク質
(i)GAGAGS配列(1)、(VPGVG)4配列(24)及び(VPGVG)8配列(25)をそれぞれ40個有し、これらが配列(24)、配列(1)、配列(25)の順に結合したブロックが40個化学結合してなる構造を有する分子量約200kDaの配列(26)の人工タンパク質(ELP1.1ポリマー)
本発明の褥瘡予防材は、上記人工タンパク質(A)からなるものである。本発明の褥瘡予防材には、動物由来の血清等が含まれていないので、抗原性が低いと推察される。また、人工タンパク質(A)は生物由来配列を有するので、生体適合性が高いと推察される。さらに、人工タンパク質(A)は大腸菌等の細菌により、安価に大量生産できるので、褥瘡予防材を容易に入手できる。
本発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性を向上させることができ、また、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができるので、褥瘡予防材として有効である。さらに、本発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性を向上させるだけでなく、皮膚柔軟性も向上することができる。
本発明の褥瘡予防用タンパク質水溶液は、褥瘡予防材である人工タンパク質(A)及び水を含むものである。
褥瘡予防用タンパク質水溶液中の人工タンパク質(A)の含有量(重量%)は、皮膚弾性の向上及び皮膚への注入しやさの観点から、0.01〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15重量%である。
水としては、特に限定するものではなく、皮膚へ注入するため、滅菌されたものが好ましい。滅菌方法としては、0.2μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌したイオン交換水等が挙げられる。
褥瘡予防用タンパク質水溶液中の水の含有量(重量%)は、皮膚弾性の向上及び皮膚への注入しやすさの観点から、70〜99.99重量%が好ましく、さらに好ましくは83.4〜99.9重量%、次にさらに好ましくは83.7〜99.4、特に好ましくは85〜99.3である。
本発明の褥瘡予防用タンパク質水溶液は、人工タンパク質(A)及び水以外に無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
無機塩として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
褥瘡予防用タンパク質水溶液中の無機塩の含有量(重量%)は、人間の体液と同等にするというの観点から、褥瘡予防用タンパク質水溶液の重量を基準として0.5〜1.3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1重量%、特に好ましくは0.85〜0.95重量%である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
褥瘡予防用タンパク質水溶液中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、皮膚弾性を向上する観点から、褥瘡予防用タンパク質水溶液の重量を基準として0.10〜0.30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.12〜0.28重量%、特に好ましくは0.14〜0.26重量%である。
褥瘡予防用タンパク質水溶液のpHは、褥瘡予防材の安定性及び皮膚に注入した際の安全性の観点から、6.8〜8.8が好ましく、さらに好ましくは7.3〜8.3である。
本発明の褥瘡予防用タンパク質水溶液は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)本発明の褥瘡予防材及び水を4〜25℃で混合し、褥瘡予防用タンパク質水溶液(B)とする。(B)中には必要により塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
本発明の褥瘡予防用タンパク質水溶液は、皮膚内に注入して使用することができる。
注入方法としては、皮膚内に注入できれば特に制限はないが、褥瘡予防の観点から、注射針等で皮膚内に確実に注入することが好ましい。
以下に実施例として本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部は重量部を意味する。
<実施例1>
[SELP8Kポリマーの生産]
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPT0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、配列(28)の人工タンパク質(A)であるSELP8Kポリマーを生産する方法を示す。
○SELP8Kポリマーの培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)インキュベートした。培養液がOD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、40mlを42℃に前もって温めたフラスコに移し、同じ温度で約2時間インキュベートした。インキュベートした培養液を氷上で冷却し、培養液のOD600を測定した。大腸菌を遠心分離で集めた。集菌した大腸菌からタンパク質ポリマーを取り出すために、超音波破砕(4℃、30秒×10回)をして溶菌した。
この大腸菌により産生されたタンパク質ポリマーを、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した後、ポリフッ化ビニリデン膜にトランスファーした。その後、一次抗体に抗ラビットSELP8K抗体、2次抗体に抗ラビットIgG HRP標識抗体(GEヘルスケア社製)を用いたウエスタンブロット分析を行なった。該生成物の見かけ分子質量は約80kDaであった。よってSELP8K生産株は、見かけ分子質量80kDaの抗ラビットSELP8K抗体反応性を有するSELP8Kポリマーを生成したことが分かった。
○SELP8Kポリマーの精製
上記で得たSELP8Kポリマーを、菌体溶解、遠心分離による不溶性細片の除去、及びアフィニティークロマトグラフィーにより大腸菌バイオマスから精製した。このようにして、分子質量が約80kDaの人工タンパク質(A)であるSELP8Kポリマー(A1−1)を得た。(A1−1)を褥瘡予防材として用いた。
○SELP8Kポリマーの同定
得られたSELP8Kポリマー(A1−1)を下記の手順で同定した。
抗ラビットSELP8K抗体及びC末端配列の6×Hisタグに対する抗ラビット6×His抗体(Roland社製)を用いたウエスタンブロットにより分析した。見かけ分子質量80,000のタンパク質バンドが、各抗体に抗体反応性を示した。また得られたタンパク質をアミノ分析供した結果、該生成物が、グリシン(43.7重量%),アラニン(12.3重量%),セリン(5.3重量%),プロリン(11.7重量%)及びバリン(21.2重量%)に富むものであった。また、該生成物はリジンを1.5重量%含んでいた。下記の表1は、精製された生成物の組成と、合成遺伝子配列から推測された予測理論組成との相関関係を示す。
したがって、SELP8Kポリマー(A1−1)はGVGVP配列(3)が8個連続したポリペプチド鎖(Y)においてVのうち1個がKに置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)のポリペプチド鎖(Y’11)を13個及びGAGAGS配列(1)が4個連続した(GAGAGS)4配列(9)のポリペプチド鎖(Y11)を12個有し、これらが交互に化学結合してなる配列(28)の人工タンパク質であることを確認した。
Figure 2013040166
○褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製
褥瘡予防材であるSELP8Kポリマー(A1−1)100mgを900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS、インビトロジェン社、リン酸濃度:1.68g/L、pH7.8)に溶解し、SELP8Kポリマー(A1−1)の10重量%水溶液(B−1)を作製した。
<実施例2>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「SELP8Kポリマー(A1−1)150mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「850μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、SELP8Kポリマー(A1−1)の15重量%水溶液(B−2)を作製した。
<実施例3>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「SELP8Kポリマー(A1−1)10mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「990μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、SELP8Kポリマー(A1−1)の1重量%水溶液(B−3)を作製した。
<実施例4>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「SELP8Kポリマー(A1−1)1mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「999μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、SELP8Kポリマー(A1−1)の0.1重量%水溶液(B−4)を作製した。
<実施例5>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「SELP8Kポリマー(A1−1)250mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「750μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、SELP8Kポリマー(A1−1)の25重量%水溶液(B−5)を作製した。
<実施例6>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「SELP8Kポリマー(A1−1)0.1mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「999.9μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、SELP8Kポリマー(A1−1)の0.01重量%水溶液(B−6)を作製した。
<実施例7>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「SELP0Kをコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(15)の人工タンパク質(A)であるSELP0Kポリマー(A1−2)を得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「SELP0Kポリマー(A1−2)」を用いる以外は同様にして、SELP0Kポリマー(A1−2)の10重量%水溶液(B−7)を作製した。
<実施例8>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「SELP3をコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(18)の人工タンパク質(A)であるSELP3ポリマー(A1−4)を得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「SELP3ポリマー(A1−4)」を用いる以外は同様にして、SELP3ポリマー(A1−4)の10重量%水溶液(B−8)を作製した。
<実施例9>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「ELP1.1をコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(26)のELP1.1ポリマーを得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「ELP1.1ポリマー」を用いる以外は同様にして、ELP1.1ポリマーの10重量%水溶液(B−9)を作製した。
<実施例10>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「SELP6.1をコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(20)のSELP6.1ポリマーを得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「SELP6.1ポリマー」を用いる以外は同様にして、SELP6.1ポリマーの10重量%水溶液(B−10)を作製した。
<比較例1>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に変えて「エラスチンペプチド(日本バイオコン株式会社、品名:タラエラスチン)」を用いる以外は同様にして、エラスチンペプチドの10重量%水溶液(B’−1)を作製した。
<比較例2>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「エラスチンペプチド10mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「990μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、エラスチンペプチドの1重量%水溶液(B’−2)を作製した。
<比較例3>
「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に変えて「コラーゲンペプチド(新田ゼラチン株式会社製、品名:コラーゲンペプチド)」を用いる以外は同様にして、コラーゲンペプチドの10重量%水溶液(B’−3)を作製した。
<比較例4>
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)100mg」に変えて「コラーゲンペプチド10mg」とし、「900μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」に変えて「990μLの4℃のリン酸緩衝液(PBS)」とする以外は同様にして、コラーゲンペプチドの1重量%水溶液(B’−4)を作製した。
<比較例5>
リン酸緩衝液(PBS)を水溶液(B’−5)とした。
<比較例6>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「SELP3.1をコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(27)のSELP3.1ポリマーを得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「SELP3.1ポリマー」を用いる以外は同様にして、(GAGAGS)4配列(9)及び(GVGVP)2配列(22)をそれぞれ15個有する分子量が40kDaの配列(27)のSELP3.1ポリマーの10重量%水溶液(B’−6)を作製した。
<比較例7>
実施例1の「SELP8Kポリマーの生産」において、「SELP8Kをコードしたプラスミド」に代えて「SLP4.1をコードしたプラスミド」とする以外は同様にして、配列番号(23)のSLP4.1ポリマーを得た。
実施例1の「褥瘡予防用タンパク質水溶液の作製」において、「SELP8Kポリマー(A1−1)」に代えて「SLP4.1ポリマー」を用いる以外は同様にして、(GAGAGS)6配列(21)及び(GVGVP)2配列(22)をそれぞれ29個有する分子量が120kDaの配列(23)のSLP4.1ポリマーの10重量%水溶液(B’−7)を作製した。
○健常モルモットを用いた皮膚弾性及び皮膚柔軟性試験
健常モルモット♀ std Hartley(日本エスエルシー社製)7週齢を麻酔下で除毛し、実施例1で得られたSELP8Kポリマー(A1−1)の10重量%水溶液(B−1)を背部皮膚内(10×10mm)に50μl注入した。注入部にガーゼをのせ、ガーゼをナイロン糸で注入部周囲と固定した。
その後、10日、30日後にキュートメーター(インテグラル社製)を用いて、注入部の皮膚弾性ならびに皮膚柔軟性を測定した。
評価は、キュートメーターで測定した皮膚弾性及び皮膚柔軟性の実測値を下記式にあてはめ、褥瘡非好発部位である腹部の皮膚弾性及び皮膚柔軟性を100%とした場合に、注入部の皮膚が腹部の皮膚弾性及び皮膚柔軟性にどれだけ近似しているかで行った。結果を表2に示す。
注入部の皮膚弾性(%)=(注入部の皮膚弾性実測値/腹部の皮膚弾性実測値)×100
注入部の皮膚柔軟性(%)=(注入部の皮膚柔軟性実測値/腹部の皮膚柔軟性実測値)×100
上記「健常モルモットを用いた皮膚弾性ならびに皮膚柔軟性試験」において、「実施例1で得られたSELP8Kポリマー(A1−1)の10重量%水溶液(B−1)」に変えて、実施例2〜10及び比較例1〜7の水溶液(B−2)〜(B−10)及び(B’−1)〜(B’−7)を用いる以外は同様にして、皮膚弾性及び皮膚柔軟性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2013040166
表2の結果より、注入10日後の皮膚弾性は、本発明の褥瘡予防材を使用した実施例1〜10は95%以上であり、リン酸緩衝液だけの比較例5よりも非常に高く、本発明の褥瘡予防材は皮膚弾性を向上できることがわかる。また、エラスチンペプチドやコラーゲンペプチドを用いた比較例1〜4において、比較例1は95%と高いものの、褥瘡予防材の水溶液中の濃度が同濃度である実施例1及び7〜10の方が99%以上と極めて高く、本願発明の褥瘡予防材の方が皮膚弾性を向上させる効果が極めて高いことがわかる。また、注入30日後の皮膚弾性の結果は、実施例1〜10が93%以上と高い皮膚弾性を維持しているのに対し、比較例1〜4は80%以下であり、10日後よりも極めて低下していた。
また、褥瘡予防材の水溶液中の濃度が同濃度である実施例1及び7〜10と、GAGAGS配列(1)が占める割合が60%よりも多い比較例6及び7との比較から、GAGAGS配列(1)が占める割合が60%以下であることで、皮膚弾性を向上する効果が極めて高いことが分かる。さらに、皮膚柔軟性も向上でき、褥瘡予防材として優れることが分かる。
以上のことから、本願発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性を向上させることができ、皮膚弾性が向上した状態を長期的に維持することができることがわかる。さらに、本発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性だけでなく、皮膚柔軟性も向上させることができることがわかる。
本発明の褥瘡予防材は、皮膚弾性の向上に優れている。さらに、皮膚柔軟性の向上にも優れている。したがって、褥瘡を予防する褥瘡予防材として有効である。

Claims (8)

  1. GAGAGS配列(1)と、下記アミノ酸配列(X)及び/又は下記アミノ酸配列(X’)とを有する人工タンパク質(A)からなる褥瘡予防材であって、
    (A)の全アミノ酸中のGAGAGS配列(1)が占める割合[{(A)中のGAGAGS配列(1)の数×6}/(A)の全アミノ酸の数×100]が5〜60%である褥瘡予防材。
    アミノ酸配列(X):VPGVG配列(2)、GVGVP配列(3)及びGAHGPAGPK配列(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜2個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されたアミノ酸配列。
  2. GAGAGS配列(1)の個数とアミノ酸配列(X)及び(X’)の合計個数との比率{配列(1):アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計}が1:1〜1:12である請求項1に記載の褥瘡予防材。
  3. 人工タンパク質(A)1分子中の、アミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量が、(A)の分子量を基準として35〜95重量%であり、GAGAGS配列(1)の含有量が(A)の分子量を基準として5〜65重量%である請求項1又は2に記載の褥瘡予防材。
  4. 人工タンパク質(A)が、アミノ酸配列(X)の1種が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)及び/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、
    (A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個である請求項1〜3のいずれかに記載の褥瘡予防材。
    ポリペプチド鎖(Y’):(Y)の全アミノ酸の0.1〜20%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
  5. 人工タンパク質(A)が、GAGAGS配列(1)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(S)を有する請求項1〜4のいずれかに記載の褥瘡予防材。
  6. タンパク質ポリマー(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子量が15〜200kDaである請求項1〜5のいずれかに記載の褥瘡予防材。
  7. 人工タンパク質(A)が、(GAGAGS)4配列(5)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(6)を有する人工タンパク質(A11)である請求項1〜6のいずれかに記載の褥瘡予防材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の褥瘡予防材及び水を含む褥瘡予防用タンパク質水溶液であって、褥瘡予防用タンパク質水溶液の重量を基準として、褥瘡予防材が0.01〜30重量%、水が70〜99.99重量%である褥瘡予防用タンパク質水溶液。
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