JP2013030316A - 酸化物超電導導体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の酸化物超電導導体10は、金属製の基材1と、基材1上に設けられた単層または複数層からなる中間層2と、中間層2上に設けられた酸化物超電導層3と、を備え、中間層2を構成する全ての層21、22が、電気伝導性の酸化物よりなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、拡散防止層102を略してIBAD法による中間薄膜103がこれらを兼ねる構造として、基材101の上にIBAD法によるGZO膜(Gd2Zr2O7層)を形成後、キャップ層104を形成し、酸化物超電導層105を積層した構造も提供されている。
前記構造の酸化物超電導導体100において、一例として、拡散防止層102は数10nm〜100nm程度の厚さに形成され、IBAD法によるMgO層は5nm程度の厚さに形成され、キャップ層104は400nm程度の厚さに形成され、酸化物超電導層105は数μm程度の厚さに形成されている。また、IBAD法によるGZO膜は1μm程度の厚さに形成されている。
また、銀の安定化層106と銅の安定化層107は、図5に示すように、酸化物超電導層105の一部において超電導状態から常電導状態に遷移しようとして臨界電流Icの低い部分が発生したときに、酸化物超電導層105の電流を転流させるバイパスとして機能させるための目的で設けられている。
酸化物超電導層105の電流を、安定化層106、107側だけでなく、基材101側にも逃がすことができれば安定化層106、107の厚さを薄くすることが可能であると考えられるが、従来知られている拡散防止層102、中間薄膜103、キャップ層104はいずれも絶縁体より構成されており、基材101側に酸化物超電導層105の電流を逃がすことはできない。
本発明の酸化物超電導導体は、中間層を構成する全ての層が電気伝導性の酸化物より構成されていることにより、酸化物超電導層の一部が超電導状態から常電導状態へと遷移(クエンチ)しようとした場合にも酸化物超電導層の電流を、中間層を介して金属製の基材へ転流させることができる。これにより、酸化物超電導層上に積層される安定化層を薄膜化でき、酸化物超電導導体を薄型化できる。
この場合、中間層がペロブスカイト型酸化物より構成されることにより、中間層の上に成膜される酸化物超電導層の結晶配向性を向上でき、良好な超電導特性を発現させることができる。
本発明の酸化物超電導導体において、前記電気伝導性の酸化物が、LaNiO3、SrFeO3のいずれかあるいは両方であることが好ましい。
この場合、酸化物超電導層を構成する酸化物超電導体との格子定数が近いLaNiO3、SrFeO3より中間層が形成されるため、中間層上に形成される酸化物超電導層の結晶配向性をさらに向上でき、より良好な超電導特性の酸化物超電導導体となる。
この場合、中間層の結晶配向性を向上させることができる。
本発明の酸化物超電導導体において、前記中間層が、イオンビームアシスト蒸着法により形成された配向層と、該配向層上に形成されたキャップ層と、から構成されることもできる。
この場合、結晶配向性が良好な中間層上に形成されるキャップ層の結晶配向性も良好となり、このキャップ層上に形成される酸化物超電導層の結晶配向性も良好となる。したがって、超電導特性の良好な酸化物超電導導体を提供できる。
本発明の酸化物超電導導体は、中間層を構成する全ての層が電気伝導性の酸化物より構成されているため、酸化物超電導層の一部でクエンチが発生した場合にも、酸化物超電導層の電流を、安定化層のみならず、中間層を介して基材へも転流させることができる。したがって、従来の酸化物超電導積層体において必要とされていたよりも薄い膜厚の安定化層としても、酸化物超電導層を電気的に安定化することができる。そのため、従来の酸化物超電導導体のように、銅の安定化層を用いずに、銀または銀合金からなる安定化層のみとすることが可能である。このように安定化層を薄膜化することができるため、酸化物超電導導体を薄型化することが可能となる。
図1は本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導導体を模式的に示す概略断面斜視図である。
本実施形態の酸化物超電導導体10は、テープ状の基材1上に、配向層21とキャップ層22からなる中間層2と、酸化物超電導層3と、安定化層5がこの順に積層されて構成されている。
基材1の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
本実施形態の酸化物超電導導体10において、基材1と酸化物超電導層3との間に配される中間層2を構成する全ての層(配向層21およびキャップ層22)は、電気伝導性の酸化物より構成されている。ここで、本発明において、中間層2を構成する材料は、25℃における電気抵抗率が10mΩcm以下であることが好ましい。
なお、本発明において、配向層21とはIBAD法により形成された層を表し、IBAD法により形成された配向層21と、IBAD法以外の成膜法で形成されたキャップ層22とが同一の材質で構成される場合もあり、この場合は、配向層21とキャップ層22の2層構成であるものとする。
中間層2の厚さは100〜1000nm程度とされる。
配向層21を構成する電気伝導性の酸化物としては、ペロブスカイト型酸化物が挙げられる。IBAD法によりペロブスカイト型酸化物を成膜することにより、形成される配向層21は2軸配向したペロブスカイト型酸化物の中間薄膜から形成される。一例として、配向層21は、基材1上に複数の結晶粒が粒界を介し接合された多結晶薄膜として構成され、各結晶粒の内部においては、それら結晶粒を構成するペロブスカイト結晶が、それらの結晶軸のc軸を基材1の表面に対し個々に垂直に向け、ペロブスカイト結晶の結晶軸のa軸をほぼ一方向に揃えて配置されている。
上述のペロブスカイト型酸化物の多結晶薄膜からなる配向層21は、IBAD法における結晶配向度を表す指標である結晶軸分散の半値幅Δφ(FWHM)の値を小さくできるため、特に好適である。
配向層21の厚さは20〜500nmとされ、配向性と生産性の観点から、30〜200nmの範囲とすることが好ましい。配向層21の厚さが薄すぎると配向度が悪化するおそれがあり、配向層21の厚さが厚すぎると生産性が低下するおそれがある。
キャップ層22を構成する電気伝導性の酸化物としては、前記した配向層21と同様にペロブスカイト型酸化物が挙げられ、具体的には、LaNiO325℃における電気抵抗率:35μΩcm)、SrFeO3(25℃における電気抵抗率:1500μΩcm)、ReO3(25℃における電気抵抗率:12μΩcm)、CaFeO3、SrCoO3、SrRuO3、CaRuO3、CaNbO3、SrNbO3、SrMoO3、CaMoO3が挙げられる。これらのペロブスカイト構造の酸化物よりキャップ層22が形成されることにより、電気伝導性を有し、且つ、結晶配向性も良好なキャップ層22とすることができる。
PLD法によるキャップ層22の成膜条件としては、基材温度約400〜850℃、約1〜120Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
キャップ層22の厚さは50〜800nmとされ、良好な配向度が得られるため、100〜400nmの範囲とすることが好ましい。
酸化物超電導層3は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法(PLD法)が好ましい。酸化物超電導層3の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
安定化層5は、導電性が良好な金属からなるものが好ましく、具体的には、銀又は銀合金、銅などからなるものが例示できる。安定化層5は1層構造でも良いし、2層以上の積層構造であってもよい。
安定化層5は、公知の方法で積層できる。安定化層5が1層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成する方法が挙げられる。また、安定化層5が2層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成し、その上に銅テープなどを貼り合わせるなどの方法を採用できる。
図2に示す装置は、テープ状の基材1を保持する基材ホルダ35と、テープ状の基材1をその長手方向に走行するための走行系(図示略)と、その表面が基材1の表面に対して斜めに向いて対峙するようにターゲットホルダ31Aに支持されたターゲット31と、ターゲット31にイオンを照射するスパッタビーム照射装置32と、基材1の表面に対して斜め方向からイオン(希ガスイオンと酸素イオンの混合イオン)を照射するイオン源33とを有しており、これらの各装置は真空容器(図示略)内に配置されている。
また、イオン源33の一例構成として、容器の内部に、引出電極とフィラメントとArガス等の導入管とを備えて構成され、容器の先端から希ガス等のイオンをビーム状に平行に照射できる装置を用いることができる。なお、イオン源33において、アシストイオンビーム電圧とアシストイオンビーム電流値を適宜調整し、アシストイオンビームのエネルギーを調整することができる。
また、アシストイオンビームを照射するイオン源の稼働条件としてイオンビーム電圧を例えば300Vとすると、イオンビーム電流値は300mA〜650mAの範囲を選択できる。
また、アシストイオンビーム電圧は、200〜600Vの範囲が好ましい。アシストイオンビーム電圧をこの範囲とすることで、得られる配向層4の結晶軸分散の半値幅をより小さくすることができる。
配向層21を成膜する際の成膜温度については、300〜1000℃の範囲を選択できる。
以下の表1に、酸化物超電導導体の各層を構成する材料の物質名と格子定数(Å)を示し、各物質と酸化物超電導層3を構成する材料の一例であるGd1Ba2Cu3O7−x(以下、GdBCOと略記する)との格子ミスマッチの関係を対比して示す。
表1の格子ミスマッチ(格子不整合)は、(ae−as)/as×100%の式(ae:エピタキシャル層(上層)の格子定数、as:基板の(下層)の格子定数)に従い計算した。
また、電気伝導性のペロブスカイト型酸化物LaNiO3、SrFeO3により中間層2が構成されていることにより、酸化物超電導層3の結晶配向性を良好としつつ、酸化物超電導層3の一部でクエンチが発生した場合に、酸化物超電導層3の電流を安定化層5側だけでなく、中間層2を介して基材1側へと転流させることができる。従って、安定化層5を従来の酸化物超電導導体よりも薄くすることができるので、薄型で良好な超電導特性の酸化物超電導導体10を提供できる。
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の表面平滑な基材を用意した。
次に、図2に示す構造のイオンビームアシスト蒸着装置を用いてイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)を行い、テープ基材の表面に厚さ250nmのLaNiO3の配向層を形成した。
なお、IBAD法による配向層の形成は、LaNiO3のターゲットを用い、アシストイオンビームの電圧300V、電流値550mAとし、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対して55゜に設定し、成膜温度を750℃として行った。
更に、キャップ層上にパルスレーザ蒸着法により825℃にて、GdBa2Cu3O7−xの組成の厚さ1.2μmの酸化物超電導層を形成した。その後、スパッタ法により酸化物超電導層の上面に厚さ2μmのAgからなる安定化層を形成し、酸素アニールを500℃で行うことにより、酸化物超電導導体を得た。
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の表面平滑な基材を用意した。
次に、図2に示す構造のイオンビームアシスト蒸着装置を用いてイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)を行い、テープ基材の表面に厚さ250nmのLaNiO3の配向層を形成した。
なお、IBAD法による配向層の形成は、LaNiO3のターゲットを用い、アシストイオンビームの電圧300V、電流値550mAとし、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対して55゜に設定し、成膜温度を750℃として行った。
更に、キャップ層上にパルスレーザ蒸着法により825℃にて、GdBa2Cu3O7−xの組成の厚さ1.2μmの酸化物超電導層を形成した。その後、スパッタ法により酸化物超電導層の上面に厚さ2μmのAgからなる安定化層を形成し、酸素アニールを500℃で行うことにより、酸化物超電導導体を得た。
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の表面平滑な基材を用意した。
次に、図2に示す構造のイオンビームアシスト蒸着装置を用いてイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)を行い、テープ基材の表面に厚さ260nmのSrFeO3の配向層を形成した。
なお、IBAD法による配向層の形成は、SrFeO3のターゲットを用い、アシストイオンビームの電圧300V、電流値500mAとし、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対して55゜に設定し、成膜温度を700℃として行った。
更に、キャップ層上にパルスレーザ蒸着法により825℃にて、GdBa2Cu3O7−xの組成の厚さ1.2μmの酸化物超電導層を形成した。その後、スパッタ法により酸化物超電導層の上面に厚さ2μmのAgからなる安定化層を形成し、酸素アニールを500℃で行うことにより、酸化物超電導導体を得た。
Claims (6)
- 金属製の基材と、該基材上に設けられた単層または複数層からなる中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層と、を備え、
前記中間層を構成する全ての層が、電気伝導性の酸化物よりなることを特徴とする酸化物超電導導体。 - 前記電気伝導性の酸化物が、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
- 前記電気伝導性の酸化物が、LaNiO3、SrFeO3のいずれかあるいは両方であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導導体。
- 前記中間層を構成する少なくとも1層が、イオンビームアシスト蒸着法により形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一層に記載の酸化物超電導導体。
- 前記中間層が、イオンビームアシスト蒸着法により形成された配向層と、該配向層上に形成されたキャップ層と、から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体。
- 前記酸化物超電導層上に導電性の安定化層を備え、該安定化層がAgまたはAg合金のみからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体。
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---|---|---|---|---|
US20020198112A1 (en) * | 2001-06-22 | 2002-12-26 | Paranthaman M. Parans | Method of depositing an electrically conductive oxide buffer layer on a textured substrate and articles formed therefrom |
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