JP2013027398A - 心機能のレギュレータとしてのホスファターゼインヒビタープロテイン−1 - Google Patents

心機能のレギュレータとしてのホスファターゼインヒビタープロテイン−1 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒトを含む動物の心筋収縮性を調節する方法において採用されてもよい、ホスファターゼインヒビタープロテイン−1の新規な形態を包含するポリペプチドをコードする新規なヌクレオチド配列及びその機能的な断片の提供。
【解決手段】インヒビタープロテイン−1(I−1)の新規な突然変異型をコードする新規な核酸。特に、突然変異型I−1はPKC−αの変性したリン酸化部位を包含する。さらに、新規な核酸を包含するベクター、新規なタンパク質に対する抗体、並びにこれらに関連する診断及びスクリーニング方法。
【選択図】図3

Description

(関連出願/特許及び参照による援用)
本出願は、2006年2月10日に出願された米国特許仮出願第60/772,327号に係る優先権を主張するものであり、この出願の内容を参照して本明細書に組み込む。
本明細書において引用する特許出願及び特許の各々、並びに特許出願及び特許の各々において引用される各々の資料又は参考文献(各々の発行済み特許の出願・審査期間のものを含む;「特許出願引用資料」)、及びこれらの特許出願及び特許のいずれかに対応する及び/又はその優先権を主張するPCT及び国外出願の各々、及び特許出願引用資料の各々において引用される又は参照される資料の各々は、参照により明白に本明細書中に組み込まれる。より一般的には、資料又は参考文献は、特許請求の範囲に先立つ「参考文献リスト」又は本明細書自体のいずれかにおいて、本明細書中で引用され、これらの資料又は参考文献の各々(「本明細書で引用される参考文献」)、並びに本明細書で引用される参考文献の各々の中で引用される各々の資料又は参考文献(製造者の仕様書、指示書等を含む)は、参照により明白に本明細書中に組み込まれる。
(政府の支援に関する記載)
以下の発明は、合衆国政府の一部助成によって作成された。従って、米国政府は、本発明における一定の権利を有する。助成金はアメリカ国立衛生研究所により、助成番号HL−64018、HL−26057及びHL−77101のもとに出資された。
心不全の病態でプロテインキナーゼC−α(PKC−α)活性が上昇することが既に認められており(米国特許出願公報第20050066381号)、ホスファターゼインヒビタープロテイン−1(I−1)が心筋収縮性の鍵となるレギュレータであって、I−1がプロテインホスファターゼ1(PP−1)の活性を阻害することにより心筋収縮性を調節するということも知られている。さらに、I−1のPP−1阻害活性がリン酸化によって調節されるということも知られている。I−1のスレオニン35がプロテインキナーゼAによってリン酸化されると、PP−1の活性が阻害され、心筋収縮性が改善される(Pathak, A., et al. 2005 Circ Res 15:756-66)。セリン67(S67)がPKCαによるリン酸化部位であることは知られていて、構成的に非リン酸化の状態に似たS67I−1突然変異体(例えば、S67A)では野性型I−1に比べてリン酸化が減少することも知られている。しかしながら、インビトロ試験の条件ではPP−1活性の如何なる阻害も示さなかった。
心不全(うっ血性心不全とも呼ばれる)は、心筋の収縮性が低下する状態であり、心臓が効率よく血液を送り出す能力が低下する。アメリカ人だけで1,000万人以上に発症していると推定される。心不全は、ほとんどの場合において慢性であり、長期にわたる疾患であり、医療行為及び人材のための費用が過度に費やされる。特に、心不全による他の体内臓器への影響は、患者の生産的な生活を全体的に低下させることに関しても、治療費の面でも深刻なものになり得る。この疾患は、心臓の右側、左側又は両側に現れる。心臓のポンプ作用が鈍ると、血液が体内の他の領域に鬱血するようになり、多くの臓器及び臓器系が酸素と栄養素の欠如による累積損傷を受けるようになる。
心不全は、多くの原因が根本にあり得るもので、加齢とともに起こりやすくなる。厄介なことに、心不全の患者には明らかに目立った症状を示さない患者もあり、深刻な臓器障害の予防又はその発生率を低下させるための早期診療の恩恵を受けることなく深刻な末梢的な疾患を発症させてしまうこともある。定期的なスクリーニング及び早期検出により、患者は病気の進行を遅らせる生活習慣及び食習慣へ変更することを選択できる。大規模なスクリーニングのための方法、並びに著しい臓器障害が起こる前の早期かつ正確な検出及び心不全の進行を予知する能力が明らかに必要とされている。さらに、特に高齢の患者については、製剤の摂取スケジュールのコンプライアンスに頼りきらない長期にわたる治療の選択肢も必要である。
従って、本発明は、ヒトを含む動物の心筋収縮性を調節する方法において採用されてもよい、ホスファターゼインヒビタープロテイン−1の新規な形態を包含するポリペプチドをコードする新規なヌクレオチド配列及びその機能的な断片を提供する。当該技術分野で公知の技術を用いて、ヌクレオチド配列が心臓細胞に挿入され、発現状態が誘発される。遺伝物質は、長期にわたる発現能力のために宿主の遺伝物質へ組み込むことを目的として又はより短期間で一時的な発現の必要性を目的として、挿入されてもよい。さらに、特により急性な発症の場合には、発現産物自体が、I−1の新規な形態を含む新規ポリペプチドの形態で、調節剤として、直接又は間接的に投与されてもよい。
一態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を包含する構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供するものである。本発明の一態様では、その単離された核酸が配列番号3で示される配列を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性)を有するアミノ酸配列をコードするものであって、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供して、ここで核酸分子は構成的に非リン酸化状態の75位のアミノ酸をコードするものである。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は、配列番号3で示される配列、又は配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一のヌクレオチド分子を包含する。
別の態様では、本発明は配列番号6で示されるアミノ酸配列を包含する構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号4で示される配列を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性)を有するアミノ酸配列をコードするものであって、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供して、ここで核酸分子は構成的に非リン酸化状態の75位のアミノ酸をコードするものである。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は、配列番号4で示される配列、又は配列番号4で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一のヌクレオチド分子を包含する。
さらに別の態様では、本発明は配列番号5で示されるアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。
さらに別の態様では、本発明は配列番号6で示されるアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。
別の態様では、本発明は配列番号12で示されるアミノ酸配列を包含する構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又はその構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号10で示される配列を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号12で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性)を有するアミノ酸配列をコードして、構成的に非リン酸化状態の75位のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号10で示される配列、又は配列番号10で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一のヌクレオチド分子を包含する。
別の態様では、本発明は配列番号16で示されるアミノ酸配列を包含する構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号15で示される配列を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性)を有するアミノ酸配列をコードして、構成的に非リン酸化状態の67位及び75位のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号15で示される配列、又は配列番号15で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一のヌクレオチド分子を包含する。
別の態様では、本発明は配列番号18で示されるアミノ酸配列を含む構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号17で示される配列を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性)を有するアミノ酸配列をコードするして、構成的に非リン酸化状態の67位及び75位のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を提供する。本発明の一実施態様では、単離された核酸分子は配列番号17で示される配列、又は配列番号17で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一のヌクレオチド分子を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号5若しくは6で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片の有効量を対象の心臓細胞に導入すること、それにより対象の心筋収縮性を低下させることを含有してなる、対象の心筋収縮性を低下させる方法を提供する。
別の態様では、本発明は、配列番号5若しくは6で示されるアミノ酸配列を含有してなる単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片の有効量を投与すること、それにより対象の心筋収縮性を低下させることを含有してなる、対象の心筋収縮性を低下させる方法を提供する。
別の態様では、突然変異型が野性型ホスファターゼインヒビター−1プロテインのPKC−αによるリン酸化部位に構成的に非リン酸化状態のアミノ酸を少なくとも一つ包含する、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする配列を包含する核酸分子を、ホスファターゼ活性を低下させるのに有効な量で対象の心臓細胞に導入すること、それにより心不全を有する対象を治療することを含有してなる、心不全の対象を治療する方法を提供する。別の実施態様では、前記ホスファターゼインヒビター−1プロテインの前記突然変異型において、少なくとも一つの構成的に非リン酸化状態のアミノ酸は、67位でA(アラニン)、D(アスパラギン酸)若しくはC(システイン)、又は75位のA、D若しくはCである。さらに別の実施態様では、核酸分子が、配列番号3、配列番号4,配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17からなる群より選択される配列を含有してなる核酸分子と少なくとも90%の相同性を有していて、ここでは核酸分子は67位又は75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードする。さらに別の態様ではホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型が、配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号16及び配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有する。そのタンパク質の突然変異型をコードする核酸分子は、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17からなる群より選択されるものであってもよい。ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型は、完全長タンパク質又は構成的に非リン酸化状態のその断片であってもよい。別の実施態様では、その方法はさらに核酸を得ることを包含する。
別の実施態様では、本発明の方法はさらに、突然変異型が野性型ホスファターゼインヒビター−1プロテインのPKAによるリン酸化部位に構成的に非リン酸化状態のアミノ酸を少なくとも一つ包含する、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする配列を包含する核酸分子を、ホスファターゼ活性を低下させるのに有効な量で導入すること、それにより心不全を有する対象を治療することを包含する。さらに別の態様では、前記ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型において、その少なくとも1つの構成的にリン酸化状態のアミノ酸が、35位でD(GATも同様に考えられるが、アスパラギン酸、GAG)又はE(GAAも同様に考えられるが、グルタミン酸、GAG、)である。さらに別の実施態様では、その核酸分子が、配列番号19で示される配列を含む核酸分子に少なくとも90%の相同性を有するものであり、35位の構成的にリン酸化状態のアミノ酸をコードするものである。さらに別の実施態様では、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型が配列番号20で示されるアミノ酸を包含するものである。そのタンパク質の突然変異型をコードする核酸分子は配列番号19で示される配列を包含していてもよい。ホスファターゼインヒビタープロテインの突然変異型は、完全長タンパク質又は構成的にリン酸化状態のその断片でもよい。
別の態様では、本発明は、配列番号21で示されるアミノ酸を包含するポリペプチドをコードする核酸分子又はその断片を、ホスファターゼ活性を低下させるのに有効な量で、対象の心臓に導入すること、それにより心不全を有する対象を治療することを包含する、心不全を有する対象を治療する方法を提供する。別の実施態様では、その核酸分子は、ポリペプチドが配列番号21で示されるPKC−αによるリン酸化部位で切断されている、少なくとも配列番号21で示される配列の1〜65位のアミノ酸を包含するポリペプチドをコードする配列を包含する。ポリペプチドは、さらに別の実施態様において、配列番号21の67位又は75位で切断されていてもよい。I−1のこれらの切断された形態は、PP−1の阻害に関する機能を保つものである。
本発明の別の実施態様では、核酸分子はさらにコード配列に作動可能に連結されたプロモーターを包含する。さらに別の実施態様では、そのプロモーターは構成的プロモーターである。さらに別の実施態様では、そのプロモーターは、複数の組織で発現されるものであり、その組織の一つが心筋組織である。プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)、心筋特異的なトロポニンT、ミオシン重鎖及びミオシン軽鎖からなる群のいずれかからの調節配列を包含していてもよい。
本発明の方法の別の実施態様では、核酸分子は、ウイルス粒子を含有してなるウイルス送達システムを投与することにより導入される。さらに別の実施態様では、そのウイルス粒子はレンチウイルス粒子又はアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を包含する。
本発明の方法の別の実施態様では、その核酸配列は、心筋の短縮、弛緩の時定数の減少及びカルシウムシグナルの減衰の促進並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される状態をもたらすのに有効な量で導入される。さらに別の実施態様では、核酸は、収縮末期圧−径関係の改善に有効な量で導入される。
本発明の方法の別の実施態様では、心不全を有する対象は、心不全の他に、虚血、不整脈、心筋梗塞、心収縮異常及びCa2+代謝異常並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される疾患も有する。さらに別の実施態様では、対象がヒトである。
本発明の方法の別の実施態様では、対象の心臓の冠状血管を通る血流が制限されて、核酸分子が冠状動脈の内腔へ導入される。さらに別の実施態様では、冠状静脈からの流出量が制限されている間も心臓はポンプとして機能する。さらに別の実施態様では、冠状血管を流れる血流は完全に制限される。制限される冠状血管は、左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、大冠状静脈(GCV)、中心静脈(MCV)又は前室間静脈(AIV)を包含していてもよいが、これらに限定されるものではない。さらに別の実施態様では、核酸分子は、冠状血管の虚血プレコンディショニングの後に導入される。さらに別の実施態様では、核酸分子は、心臓からの大動脈の血流が制限されている間に対象の心臓に注入され、それによって核酸分子が心臓に流入される。
本発明の方法の別の実施態様では、投与は、血流が冠状動脈へとリダイレクトするように心臓からの大動脈流を制限する;核酸分子を心臓の内腔、大動脈又は冠状動脈口に注入して核酸分子を冠状動脈へ供給する;心臓からの大動脈血流が制限されている間も心臓をポンプとして機能させる;及び大動脈血流を回復させる段階を包含する。さらに別の実施態様では、核酸分子はカテーテルで心臓に注入される。さらに別の実施態様では、核酸分子は、心臓の筋肉へ直接的に注入される。さらに別の実施態様では、その方法は、対象における心機能のパラメーターを評価することを包含する。心機能のパラメーターは、心拍数、心臓代謝、心収縮性、心室機能、Ca2+代謝及び筋小胞体Ca2+ATPアーゼ活性の1つ又はそれ以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
別の態様では、本発明は、対象から心臓のホスファターゼインヒビター−1プロテインのサンプルを採取すること、及び少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位の存在を検出すること、それにより対象の心不全を診断又は予知することを含有してなる、心不全の診断又は予知方法を提供する。別の実施態様では、その少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位が心臓のホスファターゼインヒビター−1プロテインの75位のT残基又は67位のS残基である。
別の態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片を含有してなる組換えベクターを提供する。さらに別の態様では、本発明は、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片を含有してなる組換えベクターを提供するものである。
別の態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含有してなる単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤を含有してなる医薬組成物を提供する。さらに別の態様では、本発明は配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
別の態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤を含有してなる医薬組成物。さらに別の態様では、本発明は、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤を含有してなる医薬組成物を提供する。さらに、一実施態様では、核酸分子は、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、及び単純ヘルペスウイルス1からなる群より選択されるウイルスベクター中に存在する。
別の態様では、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片に対して作られた抗体を提供する。別の態様では、本発明は、配列番号6で示されるアミノ酸を包含する単離されたポリペプチドまたは構成的に非リン酸化状態のその断片に対して作られた抗体を提供する。さらに別の態様では、本発明は、そのような抗体を包含する診断用試薬を提供する。
別の態様では、本発明は、配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び本発明の本方法による使用のための説明書を含有してなる、心不全を有する対象を治療するためのキットを提供する。さらに、そのキットは、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含有してなるホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする単離された核酸分子を包含する。
別の態様では、本発明は、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含有してなるポリペプチドをコードする配列を包含する単離された核酸分子又はその断片、及び本発明の方法による心不全を有する対象を治療するための説明書を含有してなる、心不全を有する対象を治療するためのキットを提供する。
より詳細には、本発明は、以下の(1)〜(63)に関する。
(1)配列番号5で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子であって、当該核酸分子が75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードするものである、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(2)配列番号3で示されるヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子及び配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有する核酸分子からなる群より選択される、前記(1)に記載の単離された核酸分子。
(3)配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子であって、当該核酸分子が75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードするものである、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(4)配列番号4で示されるヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子及び配列番号4で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有する核酸分子からなる群より選択される、前記(3)に記載の単離された核酸分子。
(5)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含有してなる単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(6)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(7)前記(1)又は(3)に記載の単離された核酸分子の有効量を対象の心臓細胞に導入すること、それにより対象における心筋収縮性を低下させることを含有してなる、対象において心筋収縮性を低下させる方法。
(8)前記(5)又は(6)に記載の単離されたポリペプチドの有効量を投与すること、それにより対象における心筋収縮性を低下させることを含有してなる、対象において心筋収縮性を低下させる方法。
(9)野性型ホスファターゼインヒビター−1プロテインのPKC−αによるリン酸化部位に少なくとも1つの構成的に非リン酸化状態のアミノ酸を含有してなる、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする配列を含有してなる核酸分子を、ホスファターゼ活性を低下させる有効量で対象の心臓細胞に導入することを含有してなる、心不全を有する対象を治療する方法。
(10)少なくとも1つの構成的に非リン酸化状態のアミノ酸が、前記ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型の67位でアラニン(A)、アスパラギン酸(D)若しくはシステイン(C)、又は75位でアラニン(A)、アスパラギン酸(D)若しくはシステイン(C)である、前記(9)に記載の方法。
(11)核酸分子が、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17からなる群より選択される配列を含有してなる核酸分子と少なくとも90%の相同性を有している、及び核酸分子が67位若しくは75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードする、前記(9)に記載の方法。
(12)ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型が、配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12,配列番号16及び配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有してなる、前記(9)に記載の方法。
(13)核酸分子が、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10,配列番号15及び配列番号17からなる群より選択される配列を含有してなる、前記(9)に記載の方法。
(14)野性型ホスファターゼインヒビター−1プロテインのPKAによるリン酸化部位に少なくとも1つの構成的にリン酸化状態のアミノ酸を含有してなる、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする配列を含有してなる核酸分子を、ホスファターゼ活性を低下させる有効量で導入することにより、心不全を有する対象を治療することをさらに含有してなる、前記(9)に記載の方法。
(15)少なくとも1つの構成的にリン酸化状態のアミノ酸が、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型の35位においてアスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)である、前記(14)に記載の方法。
(16)核酸分子が、配列番号19で示される配列を含有してなる核酸分子と少なくとも90%の相同性を有するものであり、35位の構成的にリン酸化状態のアミノ酸をコードするものである、前記(15)に記載の方法。
(17)ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含有してなる、前記(14)に記載の方法。
(18)核酸分子が、配列番号19で示される配列を含有してなる、前記(14)に記載の方法。
(19)ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型が、完全長タンパク質又は構成的に非リン酸化状態のその断片である、前記(9)に記載の方法。
(20)ホスファターゼインヒビター−1プロテインが完全長タンパク質又は構成的に非リン酸化状態のその断片である、前記(14)に記載の方法。
(21)配列番号21で示されるアミノ酸配列を含有してなるポリペプチドをコードする核酸分子又はその断片を、ホスファターゼ活性を低下させる有効量で心不全を有する対象の心臓細胞に導入することによりその対象を治療することを含有してなる、心不全を有する対象を治療する方法。
(22)核酸分子が、少なくとも配列番号21で示される1〜65位のアミノ酸を含有して配列番号21のPKC−αによるリン酸化部位で切断されているポリペプチドをコードする配列を含有する、前記(21)に記載の方法。
(23)ポリペプチドが、配列番号21で示される67位又は75位の辺りで切断されている、前記(22)に記載の方法。
(24)核酸分子が配列番号22で示される配列を含有してなる、前記(21)に記載の方法。
(25)さらに、核酸分子が、コード配列に作動可能に連結したプロモーターを含有してなる、前記(9)に記載の方法。
(26)プロモーターが構成的プロモーターである、前記(25)に記載の方法。
(27)プロモーターが複数の組織で発現するものであり、その組織の1つが心筋組織である、前記(25)に記載の方法。
(28)プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)、心筋特異的なトロポニンT、ミオシン重鎖及びミオシン軽鎖からなる群のいずれか由来の調節配列を含有してなる、前記(25)に記載の方法。
(29)核酸分子が、ウイルス粒子を含有してなるウイルス送達システムを投与することにより導入されるものである、前記(9)に記載の方法。
(30)ウイルス粒子が、レンチウイルス粒子又はアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を含有してなる、前記(29)に記載の方法。
(31)核酸分子が、心筋の短縮、弛緩の時定数の減少及びカルシウムシグナルの減衰の促進並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される状態をもたらすのに有効な量で導入される、前記(9)に記載の方法。
(32)核酸分子が、収縮末期圧−径関係の改善に有効な量で導入される、前記(9)に記載の方法。
(33)心不全を有する対象が、心不全の他に、虚血、不整脈、心筋梗塞、心収縮異常及びCa2+代謝異常並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される疾患も有する、前記(9)に記載の方法。
(34)対象がヒトである、前記(9)に記載の方法。
(35)対象の心臓の冠状血管を通る血流が制限されて、核酸分子が対象の冠状動脈の内腔に導入される、前記(9)に記載の方法。
(36)冠状静脈の血液流出が制限されている間も心臓がポンプとして機能する、前記(35)に記載の方法。
(37)冠状血管を流れる血流が完全に制限される、前記(35)に記載の方法。
(38)制限される冠状血管が、左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、大冠状静脈(GCV)、中心静脈(MCV)及び前室間静脈(AIV)からなる群のいずれかを含有してなる、前記(37)に記載の方法。
(39)核酸分子が、冠状血管の虚血プレコンディショニングの後で導入される、前記(35)に記載の方法。
(40)対象の心臓からの大動脈の血流が制限されている間に核酸分子を心臓に注入することにより核酸分子を心臓に流入させる、前記(35)に記載の方法。
(41)投与が、血流を冠動脈へリダイレクトするように心臓からの大動脈血流を制限する;核酸分子を心臓の内腔、大動脈又は冠状動脈口に注入して核酸分子を冠状動脈へ供給する;心臓からの大動脈血流が制限されている間も心臓をポンプとして機能させる;及び
大動脈の血流を回復させる:段階を含有してなる、前記(39)に記載の方法。
(42)核酸分子がカテーテルで心臓に注入される、前記(41)に記載の方法。
(43)核酸分子が心臓の筋肉に直接的に注入される、前記(41)に記載の方法。
(44)さらに対象における心機能のパラメーターを評価することを含有してなる、前記(41)に記載の方法。
(45)心機能のパラメーターが、心拍数、心臓代謝、心収縮性、心室機能、Ca2+代謝及び筋小胞体Ca2+ATPアーゼ活性及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記(44)に記載の方法。
(46)対象から心臓のホスファターゼインヒビター−1プロテインのサンプルを採取すること;及び少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位の存在を検出すること、それにより対象の心不全を診断又は予知することを含有してなる、対象の心不全を診断又は予知する方法。
(47)少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位が、前記の心臓のホスファターゼインヒビター−1プロテインの75位のスレオニン(T)残基又は67位のセリン(S)残基である、前記(46)に記載の方法。
(48)前記(1)又は(3)に記載の単離された核酸分子を含有してなる組換えベクター。
(49)前記(5)又は(6)に記載の単離されたポリペプチド又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有してなる医薬組成物。
(50)前記(1)又は(3)に記載の単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有してなる医薬組成物。
(51)単離された核酸分子が、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス及び単純ヘルペスウイルス1からなる群より選択されるウイルスベクター中に存在する、前記(50)に記載の医薬組成物。
(52)前記(5)又は(6)に記載の単離されたポリペプチドに対してもたらされる抗体。
(53)前記(52)に記載の抗体を含有してなる診断用試薬。
(54)さらに、核酸分子を入手することを含有してなる、前記(9)〜(47)のいずれかに記載の方法。
(55)配列番号5又は配列番号6で示されるアミノ酸配列を含有してなる構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子、又は構成的に非リン酸化状態のその断片、及び前記(9)に記載の方法により心不全を有する対象を治療するための説明書を含有してなる心不全を有する対象を治療するためのキット。
(56)配列番号20で示されるアミノ酸配列を含有してなるホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型をコードする単離された核酸分子、及び前記(14)に記載の方法により心不全を有する対象を治療するための説明書をさらに含有してなる、前記(55)に記載のキット。
(57)配列番号21で示されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子又はその断片、及び前記(21)に記載の方法により心不全を有する対象を治療するための説明書を含有してなる、心不全を有する対象を治療するためのキット。
(58)配列番号12で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸であって、当該核酸分子が75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(59)配列番号10で示されるヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子及び配列番号10で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド分子からなる群より選択される、前記(58)に記載の単離された核酸分子。
(60)配列番号16で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸であって、当該核酸分子が67位及び75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(61)配列番号15で示されるヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子及び配列番号15で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド分子からなる群より選択される、前記(60)に記載の単離された核酸分子。
(62)配列番号18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸であって、当該核酸分子が67位及び75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードする、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
(63)配列番号17で示されるヌクレオチド配列を含有してなる核酸分子及び配列番号17で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド分子からなる群より選択される、前記(62)に記載の単離された核酸配列。
本発明の他の態様は、以下の開示において説明されるものであり、本発明の範囲に含まれる。
記述される特定の態様により本発明が限定されることを意図しないが、実施例の態様で示される詳細な説明は、添付の図面と組み合わせて理解されてもよく、参照して本明細書に取り込まれるものである。本発明の多様な好ましい特徴及び態様は、限定するものではない実施例の態様で、及び以下の添付の図面を参照して記述されている。
図1は、組み換え型I−1プロテインの−(A)I−1の組み換え型タンパク質の概略図。ヒトI−1cDNAを、GST−融合タンパク質として発現するようにpGEX−6P3ベクター中にクローンした。(B)各々、表示順に配列番号34〜38、及び(C)各々、表示順に配列番号34、39、38及び40。(B)及び(C)は、組み換え型突然変異体(S67A、T75A、S67A/T75A、S67D、T75D及びS67D/T75D)と並べてI−1野生型を示しているシーケンスアラインメント。 図2は、PKC−αによる又はPKAによるI−1のリン酸化(即ち、放射性標識したリンタンパク質)を表現している、PKC−α及びPKAによる組み換えヒトインヒビター−1のリン酸化のオートラジオグラフ。PKC−αアッセイに関し、対照サンプル(C)は、PKC−α、Ca2+(EGTAの存在)、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスフォ−L−セリン及びホスファチジルセリンを欠いているが、他の全てのアッセイ化合物を含有する。PKAアッセイに関し、対照サンプル(C)は、PKA及びcAMPを欠いているが、他の全てのアッセイ化合物を含有する。反応は、0.25mM[γ32P]ATP(0.4mCi/nmol)の添加により開始した。 図3は、組み換えアデノウィルスベクター、I−1を発現する組み換えアデノウィルス種の概略図。cDNAを、pSHUTTLE-IRES-hrGFP-1ベクター中にpGEX−6P−3ベクターからサブクローニングして、そして相同的組み換え法によりAdEasy−1ウィルスバックボーンに挿入した。 図4は、PKC−αによるI−1及びI−1(S67A)のリン酸化の経時変化。PKC−αは、I−1及びI−1(S67A)をin viroでリン酸化するために用いた。表示した時間において、各混合物から20μlを回収して、12%のSDS-PAGEゲル上に分離して、ニトロセルロース膜に転写した。A)放射性標識したリンタンパク質を表したオートラジオグラフ。B)I−1及びI−1(S67A)の総タンパク質を検出するために、同じ膜をAC1抗体(1:1000)でプローブした。C)異なる時間におけるタンパク質(Bに存在する場合、両方のバンドにおける)に対する32P−取り込みの比率(Aの両方のバンドにおける)を示すプロットであり、濃度測定法により定量化して、バックグラウンドの補正を行った。データは、4回の独立した実験の平均±S.D.を表す。いくつかの場合、S.D.はシンボルの大きさより小さい。**、P<0.01;***、P<0.001。 図5は、リン酸化部位の判定。−(A)カラムから溶出する放射活性の大部分を含有するピーク50及び51を有する、HPLC画分によりナンバリングされたトリプシンペプチドの分離を示す逆相HPLC。(B)ヒトI−1配列(配列番号33)のアミノ酸73〜82に対応する、質量1366.90Daのリン酸化ペプチドを示す、MALDI-TOF MSスペクトル。 (C)エドマン分解の各サイクルにおけるアミノ酸の位置に対して溶出する放射活性のプロットであり、大多数の同位体が4番目のアミノ酸とともに溶出することを示している。これは、MALDI-TOFデータにおいて検出されたペプチド72KKMTRITPTMK82(配列番号33)と一致する。直線グラフは、平均±S.D.(n=計数された3ラウンドのcpm)。多くの場合、S.D.はシンボルの大きさよりも小さい。(D)確認された配列(配列番号33)の3番目のアミノ酸における同位体のエドモン分解検出。 図6は、in vitroでのPKC−αのリン酸化は、Ser67及びThr75が精製したヒトI−1上の主要なPKC−α部位であることを示した。−精製したヒトI−1、I−1(S67A)、I−1(T75A)及びI−1(S67A/T75A)プロテインは、外因性のPKC−αにより異なる時にリン酸化した。(A)放射性標識したリンタンパク質を示すオートラジオグラフ。(B)同じ膜を、ACI抗体(1:1000)を用いることによるI−1及びI−1突然変異プロテインを検出するために用いた。(C)I−1及びI−1突然変異プロテインへの32P−取り込み量を示すプロットであり、濃度測定法により定量化して、Aに示される対応するリン酸化の時点でバックグラウンドの補正を行った。(D)45分でのI−1及びその突然変異体に関連する放射活性を示す棒グラフ。濃度測定法により定量化して、I−1に対して標準化して示した。棒は、3回の独立した実験の平均±S.D.を表す。**、P<0.01;***、P<0.001。 図7は、2次元電気泳動による精製したヒトインヒビター−1のリン酸化状態の分析。2次元ゲルは、pI値が4.9及び4.7(右から左へ)のタンパク質のスポットの左への移動シフト(I−1のPKC−αのリン酸化により誘発される)を表す。I−1の脱リン酸化に対するPI値は5.1(n=3)である。I−1サンプルにおける2−Dゲル画像の対応する部分を示した。 図8は、2−Dゲル電気泳動が、Ser67及びThr75がヒトI−1における主要なPKC-αのリン酸化部位であることを裏付ける−I−1サンプルの2次元ゲルからの関連する領域の拡大が示さた。(A)リン酸化したI−1の野生型は、PI値が5.1、4.9及び4.7(右から左へ)の独立した3つのタンパク質スポットとして表れる。(B)及び(C)PI値が5.1及び4.9の2つのスポットは、I−1のSer67又はThr75をアラニンで置換した場合に、観察された。(D)Ser67及びThr75の同時突然変異体は、タンパク質の移動シフトの何れもを失くした。PI値が5.1の単一のスポットが2−Dゲルに表れる。点で示す円は、野生型と比較して、各I−1突然変異体におけるリン酸化種の予測位置を示した。各2−Dゲルは、異なるリン酸化アッセイからの精製したタンパク質を用いて、3回実施した。 図9は、I−1又はI−1突然変異体のPKC−α及びPKAのリン酸化のPP1活性に及ぼす影響。−プロットは、(A)脱リン−I−1(黒塗り四角)、PKC−αリン−I−1(黒塗り三角)、PKA−リン−I−1(白抜き四角)、及びPKC−α+PKA−リン−I−1(白抜き三角);(B)PKC−α−リン酸化:I−1(S67A)(黒塗り四角)、I−1(T75A)(黒塗り三角)、及びI−1(S67A/T75A)(黒塗り丸)、並びにPKA−リン酸化:I−1(S67A)(白抜き四角)、I−1(T75A)(白抜き三角)、及びI−1(S67A/T75A)(白抜き丸)の存在下で観測された、PP1におけるI−1の阻害活性を示す。各I−1種に関連する活性(nmol/分/ml)は、I−1又はその突然変異体の非存在下での活性に対して標準化した。定量化した値は、2通りに実施した異なる7回の実験の平均を表す(平均±S.D.)。 図10は、in vivoでのI−1の2次元のウェスタンブロット。pI(等電点)及び分子量に基づき分離したタンパク質を示す2次元のウェスタンブロットである。2−Dゲルの囲まれた領域を拡大したものを、図の下部に示す。 図11は、基底の心筋細胞の収縮性(T75D突然変異体)。棒グラフは、I−1におけるT75D突然変異体に応じた心臓収縮性の変化(経時的)を示す。筋細胞収縮率を+dL/dtmaxで表し、筋細胞弛緩率を−dL/dtmaxで表し、生じた収縮力をFSで表す。 図12は、基底の心筋細胞の収縮性(S67D突然変異体)。棒グラフは、I−1におけるS67D突然変異体に応じた心臓収縮性の変化(経時的)を示す。筋細胞収縮率を+dL/dtmaxで表し、筋細胞弛緩率を−dL/dtmaxで表し、生じた収縮力をFSで表す。 Thr75でのI−1のPKC−αのリン酸化は、心筋細胞の収縮性を低下させる。(A)500のMOIで感染後24時間のマウス心筋細胞の画像。右の画像は、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現を示す。(B)I−1抗体(AC1;1:1000)−Ad.I−1WT及びAd.I−1(T75D)で感染した心筋細胞溶解物中にタンパク質の過剰発現を検出した。同じ膜をはがし取り、PPI(santa Cruz、1:1000)に対してプローブした。同じゲルの上部のクマシー染色では、等しいタンパク質のローディング及びバンドパターンを明示する。(C)Ad.GFP(連続線)、Ad.I−1WT(破線)及びAd.I−1(T75D)(薄色連続線)における心筋細胞の典型的なトレース。90%弛緩までの時間、収縮率(FS%)、及び収縮と弛緩の最大比(dL/dtmax)を棒グラフの形態で示す。6つの心臓からの総細胞数:121(Ad.GFP)、90(Ad.I−1WT)及び91(Ad.I−1(T75D))。値は平均±S.D.を表す。 Ser67及び/又はThr75でのI−1のリン酸化は、心筋細胞の機能を低下させる。(A)500のMOIでのアデノウィルス感染後24時間の成熟マウス心筋細胞の画像。I−1(AC1;1:1000)に特異的な抗体は、1)GFP;2)I−1WT;3)I−1(S67D);4)I−1(T75D)及び5)I−1(S67D/T75D)で感染した筋細胞中のタンパク質の過剰発現を検出するために用いた。ゲルの上部はクマシー・ブルーで染色して、等しいタンパク質のローディングを明示する。(B)アデノウィルス感染の心筋細胞の収縮率(FS%)及び収縮と弛緩の最大比(dL/dtmax、μm/秒)を棒グラフの形態で示す。 図15は、Ad.I−1(S67D)、Ad.I−1(T75D)及びAd.I−1(S67D/T75D)で感染した筋細胞のPKA活性への影響。−0.1μMのホルスコリンで処理した感染した心筋細胞の収縮率(FS%)及び収縮と弛緩の最大比(dL/dtmax、μm/秒)を棒グラフの形態で示す。 図16は、Thr75でのI−1のリン酸化のSR Ca2+−移送のCa2+親和性への影響。(A)プロットは、I−1野生型、I−1(T75D)及び培養した心筋細胞に発現したGFPタンパク質に関して測定した、広範囲の[Ca2+]におけるSR Ca2+−移送の初期速度を示す。データは、Ad.I−1WT、Ad.I−1(T75D)及びAd.GFPサンプルに対して算出したVmaxを標準化した。曲線は、Origin Lab 5.1プログラムにより得られたS字状フィットを表す。符号は、2通りにアッセイした、Ad.GFP(黒塗り四角)、Ad.I−1WT(白抜き丸)及びAd.I−1(T75D)(黒塗り丸)で感染した、3つの独立してホモジナイズされた心筋細胞の平均を示す。(B)免疫ブロットは、総SERCA2a(Affinity Bioreagents、1:1000)、総PLN及びカルセクエストリン(内因性のローディング対照として(Affinity Bioreagents、1:1000))を示す。 Ser67及び/又はThr75におけるインヒビター−1のリン酸化のSR Ca2+−移送のCa2+親和性への影響。プロットは、(A)AD.GFP;(B)Ad.I−1WT;(C)Ad.I−1(S67D)で感染した心筋細胞におけるSERCA Ca2+−送達の初期速度の評価の結果を示す。符号は、2通りにアッセイした、基底又はホルスコリン処理下の独立した心臓由来の、3つのホモジナイズされた筋細胞の平均を示す。 Ser67及び/又はThr75におけるインヒビター−1のリン酸化のSR Ca2+−移送のCa2+親和性への影響。プロットは、(D)Ad.I−1(T75D);(E)Ad.I−1(S67D/T75D)で感染した心筋細胞におけるSERCA Ca2+−送達の初期速度の評価の結果を示す。符号は、2通りにアッセイした、基底又はホルスコリン処理下の独立した心臓由来の、3つのホモジナイズされた筋細胞の平均を示す。(F)グラフは、各群に対する基底及びホルスコリン処理下のEC50の平均値を示す。***、P<0.001は、基底下の各群vs.GFPの比較を示す。#、p<0.05;##、p<0.01、は、ホルスコリン下の各群vs.GFPの比較を示す。 図18は、Thr75でのI−1のPKC−αのリン酸化は、PP1活性を増強する。(A)棒グラフは、AD.GFP(黒塗り棒)、Ad.I−1WT(白抜き棒)又はAd.I−1(T75D)(灰色棒)で感染した心筋細胞溶解物(1μg)にてアッセイした全ホスファターゼ活性を示す。オカダ酸(10nM)を細胞溶解物に添加して、タイプ1及び2Aのホスファターゼ活性を差別化した。定量化した値は、2通りにアッセイした4つの独立した細胞溶解物の平均を表し、Ad.GFPに対して標準化した(平均±SEM)。(B)棒グラフは、精製した組換えI−1野生型(黒塗り棒)、PKC−αでリン酸化したI−1(S67A)(白抜き棒)及びI−1(T75D)(灰色棒)に関して測定したPP1c(0.5ng)の活性を示す。値は、I−1野生型に対して標準化した。エラーバーは、各々につき2通りの、独立した5回の実験に対するSEM値を示す。 図19は、PKA刺激によるアデノウィルス感染筋細胞におけるプロテインホスファターゼ−1活性の阻害率を示す。棒グラフは、Ad.GFP(黒棒);Ad.I−1WT(白棒);Ad.I−1(S67D)(薄灰色棒);Ad.I−1(T75D)(灰色棒);及びAd.I−1(S67D/T75D)(濃灰色棒)を過剰発現する、ホルスコリンで処理した筋細胞溶解物にてアッセイした総ホスファターゼ活性を示す。棒は、2通りにアッセイした独立した3つの筋細胞溶解物の平均を表す(平均±SEM)。 Ser67及びThr75が前もってリン酸化されている場合、PKAによってリン酸化されるI−1の能力が変化する。
発明の詳細な説明
定義
本明細書では、「核酸分子」又は「核酸配列」という用語は、ポリペプチドをコードする読み取り枠を含むポリヌクレオチドを意味するものであり、さらにイントロン及び望ましい調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター等)のような非コード配列も含む。本発明の核酸配列は、選択された目的のために特定の遺伝子をコードできる。その遺伝子は、宿主細胞に対して内因性であるか又は宿主細胞に組換えによって導入されたもので、例えば、エピソームに保持されたプラスミド若しくはゲノム中に安定に組み込まれたプラスミド(若しくはその断片)のようなものであってもよい。
本明細書では、「単離された」という用語は、前述の物質が通常存在する環境から取り除かれたことを意味する。従って、単離された生物由来物質は、細胞成分すなわちその物質が存在する若しくは生成される細胞の成分を含んでいないものであり得る。核酸分子の場合、単離された核酸は、PCR産物、ゲル上のmRNAのバンド、cDNA、又は制限断片を含む。単離された核酸分子は、プラスミド、コスミド、及び人工染色体等に挿入された配列を含む。従って、組換え核酸は単離された核酸を構成するものであってもよい。単離されたタンパク質は、他のタンパク質、核酸又はその両方に付随するものであってよく、細胞中又はそれが膜結合タンパク質であれば細胞膜に付随するものであってよい。単離された物質は、精製されていてもよいがその必要はない。
本明細書では、核酸(ヌクレオチド)配列に対して「相補的」という用語は、塩基対を適合させることにより二本鎖構造を形成できる塩基の配列を意味する。例えば、G−T−A−Cに対して相補的な配列は、C−A−T−Gとなる。
本明細書では、「ホスファターゼインヒビター−1プロテイン」又は「I−1プロテイン」は、例えば、GenBankアクセション番号NM_006741により表されるタンパク質であって、プロテインホスファターゼ−1の活性を阻害することにより心筋収縮性を調節するタンパク質を意味する。
ホスファターゼインヒビター−1プロテイン又はI−1プロテインに関して、「野性型」という用語は、ホスファターゼインヒビタープロテイン−1(I−1)、サブユニット1Aをコードする配列番号7で示されるヌクレオチド配列、及び配列番号8で示されるポリペプチド配列、並びに対立遺伝子多型のような(前述のポリペプチド配列と同様の機能特性及び結合親和性を有する)I−1プロテインをコードする他のいずれかの核酸配列を意味する。
野性型I−1には、タンパク質のいわゆる「機能的な誘導体」も含まれる。「機能的な誘導体」は、本発明のポリペプチド若しくは核酸の「化学的誘導体」、「断片」、「多型体」又は「変異体」も意味する。機能的な誘導体は、少なくとも本発明に従って実用可能なタンパク質の機能の部分を保持しているものである。当該技術分野では、遺伝コードの縮退により数多くの異なる核酸配列が同一のアミノ酸配列をコードできることが周知となっている。さらに、タンパク質又はポリペプチドが元の機能を保持するようにアミノ酸に保守的な変化を加えることも当該技術分野では周知である。両方の場合で、全ての置換が本開示に含まれる。
本発明の範囲には、本明細書において単離された核酸分子の機能的に同等な物質も含まれる。遺伝コードの縮退は、特定のコドンと同じアミノ酸を特定することで同じタンパク質を生成させる他のコドンとの置換を可能にする。メチオニンとトリプトファンを除き、公知のアミノ酸が1つ以上のコドンによりコードされることから、核酸配列は実質的に異なり得る。しかしながら、そのコードされたアミノ酸配列は保存される。
さらに、核酸配列は、そのヌクレオチド配列によりコードされる、本明細書に記載のアミノ酸配列を変えないものであれば、5’−末端及び/又は3’−末端への少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、又は置換によって生じたヌクレオチド配列を包含していてもよい。例えば、本発明の核酸分子は、その5’−末端及び/又は3’−末端に制限エンドヌクレアーゼの認識部位を付加されたものでもよい。
コドンを欠失させるか、又は1つ若しくはそれ以上のコドンを縮重コドン以外のコドンで置換して、非修飾の核酸分子により生成されたポリペプチドと実質的に同様の実用性若しくは活性を有する、構成的に修飾されたポリペプチドを生成することが可能である。当該技術分野で認識されているように、核酸分子間の差異が遺伝コードの縮退と関連がないとしても、2つのポリペプチドが産生されれば、その2つのポリペプチドは機能的に同等である。
I−1の「化学的誘導体」は、通常タンパク質の一部ではない化学的な部分をさらに含む。ペプチドの目標としたアミノ酸残基を、選択した側鎖又は末端残基と反応できる有機誘導体化剤と反応させることにより、分子中にタンパク質若しくはペプチドの共有結合修飾を導入してもよい。
「断片」という用語は、I−1のアミノ酸配列から派生したポリペプチドであって、それが派生した完全長のポリペプチドよりも短いものを意味する。断片は、例えば、完全長タンパク質のタンパク質分解的切断により産出されたものであってもよい。また、断片は、タンパク質をコードするDNA配列を適切に修飾して、1つ若しくはそれ以上のアミノ酸をそのC−末端、N−末端、及び/又は天然の配列の中の1つ若しくはそれ以上の部位において欠失させることによる、組換え的に得られるものであってもよい。断片は、天然のI−1の機能的な部分を保持する。
本発明の範囲に含まれる別の機能的な誘導体は、1つ又はそれ以上のアミノ酸の欠失、又は付加若しくは置換された天然のポリペプチドに関連するアミノ酸を含む「変異体」ポリペプチドである。さらなるアミノ酸が付加された及び/又は追加のアミノ酸で置換された変異体は、天然のI−1の機能的な部分を保持する。欠失、挿入及び/又は置換されたアミノ酸残基を有するタンパク質の機能的な誘導体は、当該技術分野で通常の技術を有する者に周知の標準的な技術(例えば、部位特異的突然変異誘発(Adelman et al., 1983, DNA 2:183)によって用意されるものであってよい。または、アミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を有するタンパク質は、当該技術分野で周知の方法を用いて、直接的な化学合成法により容易に用意されるものであってもよい。
本明細書では、「突然変異体」という用語は、野性型の配列に比べて変化したアミノ酸配列がもたらす及びI−1ポリペプチドの機能的な変化がもたらす、遺伝子の突然変異を含む遺伝子を翻訳したI−1のポリペプチドを意味する。
本明細書では、「ホスファターゼ活性」という用語は、一般的に使用されるモデルタンパク質の基質であるMyBPへのホスファターゼの活性を意味する。本明細書では、ミエリン塩基性タンパク質(MyBP)は、プロテインホスファターゼ活性の変化の測定において基質(結合パートナー)として採用される(32Pで標識したもの)。
本明細書では、「構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビターI−1プロテイン」又は「構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビターI−1プロテインの断片」というような「構成的に非リン酸化状態の」という語句は、全ての生理条件下で少なくとも1つの特定のアミノ酸の位置が継続的にリン酸化していないような、ホスファターゼインヒビターI−1プロテイン、又はその断片を意味する。特定の実施態様では、断片は、67位若しくは75位又はその両方の少なくとも1つのアミノ酸の位置を保持するものであり、特定の残基のリン酸化可能な水酸基を除去又は置換するような変異も含む。「ホスファターゼインヒビター−1プロテインの構成的に非リン酸化状態のアミノ酸」とは、I−1プロテインのポリペプチド鎖又はその断片のアミノ酸で、全ての生理条件下で、すなわち特定の残基のリン酸化可能な水酸基を除去又は置換するアミノ酸残基の変異を介して、非リン酸化状態のアミノ酸を意味する。
本明細書では、「PKC−αによるリン酸化部位」という用語は、プロテインキナーゼC、アイソフォームα(PKC−α)によりリン酸化される特定のアミノ酸を意味する。PKAのように、PKCはセリン/スレオニンに特異的なプロテインキナーゼであり、基質中のセリン又はスレオニン残基(特に、残基中のOH基を)リン酸化する。
本明細書では、「PKAによるリン酸化部位」という用語は、プロテインキナーゼA(PKA、cAMP−依存性プロテインキナーゼとしても知られる)によりリン酸化される特異的なアミノ酸を意味する。それぞれのPKAは、2つの調節サブユニット及び2つの触媒サブユニットからなるホロ酵素である。低濃度のcAMPの下では、ホロ酵素は変化せず、触媒能を発揮しない。cAMP濃度が上昇すると(例えば、アデニル酸シクラーゼの特定のGタンパク質共役受容体による活性化、cAMPを分解するホスホジエステラーゼの阻害)、cAMPは調節サブユニットの2つの結合部位に結合して、触媒サブユニットを解離する構造の変化を起こす。遊離した触媒サブユニットは、セリン又はスレオニン残基でのATPの末端リン酸塩のタンパク質基質への転移を触媒することができる。
本明細書では、「治療」という用語は、薬剤を、統計的に有意な程度まで若しくは当業者に検出可能な程度まで、疾患、症状若しくは病気に関連するパラメーターを改善する、又は病気の進行を阻止するのに有効な量、方法及び/又は様式で投与することを意味する。投与する有効な量、方法又は様式は、対象によって様々であり、対象に合わせて調整してもよい。例えば、投与の方法は、ウイルス又はウイルス様の粒子による送達を含む。病気の進行を阻止することにより、治療は、罹患した若しくは診断された対象又は病気を有している疑いのある対象における病気の悪化を防ぐことができるだけでなく、病気のリスクがある若しくは病気を有している疑いのある対象における病気の発症又は症状を予防することもできる。
本明細書では、「心不全」という用語は、心臓が身体の必要に応じて十分にポンプする能力に欠陥を有するいずれかの病気を意味する。多くの場合、心不全は、心臓細胞の興奮収縮連関の様々な段階における1つ又はそれ以上の細胞レベルの異常によって引き起こされ、多くの原因から生じる心筋収縮性の異常によって最も頻繁に発症する。最も一般的な原因には、心筋の虚血性障害、心臓からの血流への過度な機械的抵抗、弁膜機能の不全による心室への過負荷、心筋の感染若しくは炎症、又は先天性の心筋収縮不全などが挙げられる(Braunwald, E. 2001 Harrison's Principles of Internal Medicine, 15th ed., pp1318-29)。
本明細書では、「心筋症」という用語は、心筋(すなわち、心臓の筋肉)の機能低下を意味する。心筋症は、外因性(例として、初期の病状が、例えば、虚血によって引き起こされるような、心筋そのものの外側にある)又は内因性(例えば、心筋の衰弱は特定できる外因によるものではない)であり得る。
本明細書では、心筋収縮性のような「収縮性」という用語は、心筋の能力を意味する。多くの場合で、心筋繊維が一定の繊維の長さで収縮する本質的な能力と定義される。
本明細書では、「収縮末期圧−径関係」(収縮末期圧容積関係としても知られる)という用語は、以下の一次関係を意味する(Grossman, W., et al. 1977 Circulation 56:845-52):

ES=mVES+b

ES及びVESは、それぞれ収縮末期圧及び容積、mはこれらの関係を表す線の傾き、bはVES=0のときの圧を示す。また、式は:

ES=m(VES−V

と表すこともでき、PES=0のとき、V=−b/mである。収縮末期圧−径関係は一般的にヒトの心室収縮力の強力な指標であると考えられている。
本明細書では、「心臓細胞」という用語は、(a)対象に存在する心臓の一部、(b)ex vivoで維持される心臓の一部、(c)心臓組織の一部、又は(d)対象の心臓から単離された細胞を意味する。例えば、細胞は、心筋細胞又は平滑筋細胞のような心臓細胞であってよい。また、本発明の心臓細胞には、例えば、毛細血管、動脈又は他の血管のような心臓の内皮細胞も含まれる。
本明細書では、「心臓」という用語は、対象に存在する心器官又は対象の外のex vivoで維持される心器官を意味する。
本明細書では、「心臓組織」という用語は、対象の心臓由来の組織を意味する。
本明細書では、「血流を制限する」という用語は、血管を通る血液の流れ、例えば、末梢大動脈及びその分枝への血流、を実質的に阻止することを意味する。例えば、心臓から出る血流の少なくとも約50%が制限される、好ましくは、心臓から流れ出る血液の約75%、そしてより好ましくは、約80%、90%又は100%が制限される。血流は、大動脈及び肺動脈を、例えば、鉗子で、閉塞させることにより制限できる。
本明細書では、「入手する(obtaining)」という用語は、核酸若しくはタンパク質を合成する、購入する又はその他獲得することを意味する。
本明細書では、「ウイルス送達システム」という用語は、例えば、非ウイルス配列を含む核酸配列を哺乳動物の細胞に導入することができるウイルス若しくはウイルス様粒子を意味する。ウイルス送達システムそのものは、ウイルス複製能力を有していてもいなくてもよい。
他の定義は本開示の文中において説明されるものである。
本発明のさらなる実施態様
ホスファターゼインヒビター−1及びその突然変異体
微調整されたプロテインキナーゼ及びプロテインホスファターゼ活性の調節は、グリコーゲン代謝、タンパク質合成、細胞分裂、神経シグナル伝達及び筋収縮を調節するものであり、鍵となる様々なリンタンパク質の基質のリン酸化状態の制御に不可欠である。第二メッゼンジャーcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)と1型ホスファターゼ(PP1)の間のクロストークは、内因性リンタンパク質、インヒビター−1(I−1)のレベルで生じ、cAMPシグナル伝達のカスケードを増幅させる。
I−1は、ウサギの骨格筋で最初に確認されたが、哺乳類の組織に広く発現し、生物種間で高度に保存されている。Thr35でPKAによりリン酸化された熱安定性タンパク質(Mr18,700)は、活性化してPKA媒介のタンパク質リン酸化を高めながらPP1を強く阻害する。インヒビター−1のThr35はCa2+/カルモジュリン依存タンパク質2B(PP−2B、カルシニューリン)及びプロテインホスファターゼ2A(PP−2A)によって脱リン酸化されるが、PP−2BはCa2+の存在下で中心的な役割を果たす。cAMP及びカルシウムにより相互に調節されたインヒビター−1の可逆性のリン酸化は、2つの主要な第二メッセンジャーの作用に関連して、多数の細胞内プロセスの調節をもたらす。
心筋において、PP1のI−1による調節は、基礎的な収縮能及びβアドレナリン刺激への心臓の応答の両方において役割を果たすということが示されている。アドレナリン作動薬、イソプロテレノールの陽性変力作用は、心臓の収縮状態に関わる重要なタンパク質の脱リン酸化を阻止することによる、心筋収縮性を増強させるPP1活性の阻害をもたらすものであるI−1のリン酸化を伴う。興味深いことに、I−1(T35D;AA1−65)の構成的活性型は、心臓を圧負荷により引き起こされる肥大化から保護しただけでなく、心不全を有する前の心機能を救った、これはI−1が心不全の治療における有望な候補であることを提示している。
I−1のThr35におけるリン酸化に加えて、Ser67もまたin vivoで実質的にリン酸化することがわかった。線条体脳組織におけるプロリン指向性キナーゼ、Cdk5及びにニューロンcdc2様プロテインキナーゼ、NCLKの両方がI−1のSer67をリン酸化することができる。Cdk5によるリン酸化がI−1の活性に影響しない一方で、NCLKは阻害活性を増強する。最近になって、マウス及びウサギの心臓で発現する主要なアイソザイムであるPKC−αもまたSer67をリン酸化することが発見された、そしてこれはPP1活性を高めながら、PP1と相互に作用するI−1の活性を50%まで低下させることができる。
PKC−α及びPP1の活性が共にヒト及び実験的心不全において増強されるとすると、本発明は、ヒトI−1がPKC−αによりさらなる部位(Thr75)でリン酸化するという発見に、一部において基づくものである。本明細書で提示するデータは、このキナーゼがSer67をリン酸化するのと同程度にThr75をリン酸化するということを示している、さらに両方の残基は互いに独立してリン酸化される。広範な動態解析は、これらのPKC−α部位のどちらもがPP1の触媒サブユニットの活性を阻害しないことを示す。さらに、これらのリン酸化したどちらの部位もI−1のPKA媒介の阻害作用を妨げない。この新規なリン酸化部位の発見は、心不全の治療のための新しい薬剤及び治療、特に、病態の下で上昇したPP1、PKA及びPKC−αの活性の間の相互作用に基づいた新しい治療の方法を提供するものである。
従って、心不全を有する対象を治療する方法は、PKC−αのリン酸化活性を阻害することを包含すると考えられる。さらに、PKC−αのリン酸化活性を阻害することに加えて、PKAのリン酸化活性を増強することも含まれると考えられる。
本発明の実施態様による治療方法は、対象の心臓細胞に、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型であって、野性型におけるPKC−αによるリン酸化部位の、構成的に非リン酸化状態の若しくは非リン酸化状態に似た少なくとも1つのアミノ酸を包含する突然変異型をコードする配列を含有してなる核酸を導入することを包含する。
より特異的な実施態様では、突然変異型は対象の残基(例えば、S67及び/又はT75)のリン酸化可能な水酸基を取り除く又は置換するような突然変異を包含するものである。より特異的な実施態様では、T75及び/又はS67残基は置換若しくは欠失していてもよい。
例えば、突然変異型は、構成的に非リン酸化状態のアミノ酸であって、野性型タンパク質のPKC−αによるリン酸化部位のアミノ酸を少なくとも1つ含んでいてもよい。特異的な実施態様では、少なくとも1つのアミノ酸が、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型の65位のアラニン(A)、アスパラギン酸(D)若しくはシステイン(C)、又は75位のアラニン(A)、アスパラギン酸(D)若しくはシステイン(C)である。アミノ酸の置換は、同様の電荷(電荷を持たない)に基づいて、同類置換を選択すること、及びサイズ(バルクの欠如)に基づいて選択されてもよい。
別の特異的な実施態様では、突然変異型は、野性型タンパク質のPKAによるリン酸化部位の、構成的にリン酸化状態の少なくとも1つのアミノ酸を含有してなる。例えば、その少なくとも1つのアミノ酸は、ホスファターゼインヒビター−1プロテインの突然変異型の35位のアスパラギン酸(D)若しくはグルタミン酸(E)であってよい。また、アミノ酸の置換は同様の電荷(負)及びサイズ(バルクの欠如)に基づいて選択されてよい。
T35突然変異体を使用するようなリン酸化状態に似ていることが残基に好ましい実施態様では、突然変異はグルタミン酸又はアスパラギン酸に関する残基の置換を包含すると考えられる。
核酸分子
本発明の核酸分子は、DNA分子(例えば、線状、環状、cDNA又は染色体)及びRNA分子(例えば、tRNA、rRNA、mRNA)及びヌクレオチド類似体を用いて生成したDNA又はRNAの類似体を含む。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってよいが、有利には二本鎖DNAである。本発明の核酸分子は、その核酸が由来する生物の染色体DNAにおいてその核酸分子に天然的に隣接する配列(つまり、核酸分子の5’及び3’末端に位置する配列)を含まない核酸分子を含む。さらに、cDNA分子のような単離された核酸分子は、組換え技術によって生成された場合は実質的に他の細胞物質を含まなくてもよい、又は化学的に合成された場合は実質的に化学的前駆体若しくは他の化学物質を含まなくてもよい。
本発明の核酸分子、例えば、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17で示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、標準的な分子生物学の技術及び本明細書に開示する配列情報を用いて単離することができる。例えば、核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーション法若しくはクローニング法を用いて単離できる(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E.F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, (1989)に記述のように)、又は例えば配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17で示される配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応により単離することもできる。本発明の核酸は、cDNA、mRNA、又その他にもゲノムDNAを、標準的なPCR増幅技術法によるテンプレート及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーとして用いて増幅することができる。別の実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、例えば、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号15及び配列番号17で示されるヌクレオチド配列に相補的な核酸分子を包含する。
本発明は同様に、本明細書に記載される核酸分子を含む組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)を特徴とする。
ポリペプチド
本発明の別の態様は、ポリペプチドを特徴とする。
当業者が、天然の遺伝子によりコードされるアミノ酸と同一のアミノ酸をコードする核酸を遺伝コードの縮退により突然変異(例えば、置換)させることができるということはよく理解されている。これは、特定の生物で発現するように核酸のコドンの使用法を改善するのに望ましいものであり得る。さらに、当業者が保存アミノ酸の置換をコードする核酸を突然変異(例えば、置換)させることができるということもよく理解されている。さらに、当業者が、天然の遺伝子産物と比較して実質的に機能に影響を与えることなく、ある程度まではアミノ酸を置換、付加又は欠失させることができるということもよく理解されている、いずれの場合も本発明の範囲内に含まれる。
一実施態様では、本発明のポリペプチドは配列番号5、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号16及び配列番号18で示されるアミノ酸配列を有する。
配列相同性
配列間の相同性若しくは配列同一性(本明細書においてこれらの用語はほぼ同じ意味で使われる)は以下のように計算される。2つのアミノ酸配列若しくは2つの核酸配列の相同率を決定するために、配列を最適な比較ができるように並べる(例えば、最適なアラインメントのためにアミノ酸若しくは核酸配列の第一若しくは第二の1つ若しくは両方にギャップを挿入することができ、非相同な配列は比較目的から無視されてよい)。好ましい実施態様では、比較目的で並べられた参照配列の長さは、少なくともその参照配列の30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%及び100%である。そして、対応するアミノ酸の位置若しくはヌクレオチドの位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第一の配列における位置に、第二の配列の対応の位置と同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドがあれば、その分子はその位置において同一である(本明細書で使われるアミノ酸又は核酸の「同一性」はアミノ酸又は核酸の「相同性」とほぼ同じ意味である)。これら2つの配列間の同一性の割合は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入されたギャップの数及びそれぞれのギャップの長さを考慮して、その配列間で共有される同一な位置の数の関数で表される。
配列の比較及び2つの配列間の相同率の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成される。好ましい実施態様では、2つのアミノ酸配列の間の相同率は、Blossum62マトリクス又はPAM250マトリクスのいずれか、並びに16、14、12、10、8、6若しくは4のギャップ加重及び1、2、3、4、5若しくは6の長さ加重を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているニードルマン・ヴンシュ((1970)J. Mol. Biol. 48:44-453)のアルゴリズムを用いて決定される。さらに別の好ましい実施態様では、2つのヌクレオチド配列の相同率は、NWSギャップDNA.CMPマトリックス並びに40、50、60、70又は80のギャップ加重及び1、2、3、4、5又は6の長さ加重を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムを用いて決定される。特に好ましいパラメータの組み合わせ(及び他に特に規定がなければ用いるべき1つ)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸張ペナルティ、5のフレームシフト・ギャップペナルティのBlossum62スコアリングマトリクスである。
2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間の相同率は、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているメイヤーとミラー(E. Meyers and W. Miller, (1989) CABIOS, 4:11-17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
遺伝子導入/送達
導入は、望ましい結果を達成するいずれかの既知若しくは未知の技術によってなされると考えられる。本明細書に記載される核酸は、遺伝子治療のプロトコルの一部として使用される遺伝子コンストラクトに組み込まれてもよい。in vivoの遺伝子導入の方法は、当該技術分野で公知である。手法には、組換えレトロウイルス、アデノウイルス(例えば、複製欠損した第一世代、又は欠如した(gutted)第二世代のアデノウイルス)アデノ随伴ウイルス(例えば、ウイルスカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10又はAAV11カプシドのようなAAVカプシドであってよい;当業者であれば、同様の若しくは類似の機能を果たす未確認の他の異性体が存在し得るということは公知であろう;又は2つ若しくはそれ以上のAAVカプシドの成分を含んでいてもよい、米国特許第6,491,907に記載)、レンチウイルス及びおそらく単純ヘルペスウイルス1、又は組換え細菌性若しくは真核性プラスミドを含む。レンチウイルス粒子及び他のウイルス粒子を産生するために、目的の薬剤をコードする核酸はパッケージングシグナルに作動可能に連結される。核酸はウイルスの構造タンパク質を発現する細胞にパッケージされる。例えば、細胞はウイルスの構造タンパク質をコードするがパッケージングシグナルを欠く核酸を含んでいてもよい。
アデノ随伴ウイルスは、第19染色体に部位特異的に組み込まれることができる非病原性ヒトパルボウイルスである(Fisher et al., Nature Medicine (1997))。しかしながら、ウイルスの複製は、アデノウイルスのようなヘルパーウイルスを必要とする(Fisher et al., Nature Medicine (1997))。AAVコード領域は、非ウイルス遺伝子に置き換えることができて、修飾されたウイルスは分裂及び非分裂の細胞の両方に感染させるために利用できる(Xiaoet al., J. Virol. (1996); Kaplitt et al., Ann. Thorac. Surg. (1996))。AAVの調製及び使用のための具体的な方法は、Fisher et al., Nature Medicine (1997) Xiao et al., J. Virol. (1996), Kaplitt et al., Ann. Thorac. Surg. (1996)に記載されている。
二重のパルボウイルスベクター(パルボウイルスのカプシド(例えば、AAVカプシド)を含有するパルボウイルス粒子)及び異種のヌクレオチド配列をコードする自己相補的なベクターゲノム(すなわち、ベクターゲノムは二量体の逆位反復性である)を含む、種々の組換えAAVゲノムの構造は、国際公開第01/092551号公報に記載されている。
ウイルスベクターは細胞に直接的に導入される;
プラスミドDNAは、例えばカチオン性リポソーム(リポフェクチン)又は誘導体化物(例えば、抗体結合型)、ポリリシン複合体、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ又は他の細胞内のキャリアのようなものを用いて送達されてもよい、更にはin vivoでは遺伝子コンストラクト又はCaPO沈殿物が直接的に注入されてもよい。
心臓血管組織への遺伝子導入は、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)若しくはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターによって駆動される、強力な、組織特異的でない遺伝子発現カセットを伴うアデノウイルス(Ad)ベクターを首尾よく用いている。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)及び肝細胞成長因子(HGF)のような血管新生因子を送達するウイルスベクターでの心臓細胞の導入を含む臨床試験が継続されている。ウイルスの大動脈内若しくは冠動脈内の注入は、動物モデルのin vivoで行われている。嚢胞性線維症の研究により知られているように、機能の改善のために1つの組織の全ての細胞の導入が必要とされているわけではない。
組織特異的なプロモーターは、心筋の遺伝子発現の特異性を高めるために使用されている(Rothmann, et al., Gene Ther. (1996))。心臓へ導入される遺伝子の発現を制限する別の方法は、心筋へのウイルスベクターの直接的な注入を含む(Gutzman, et al., Cric. Res. (1993); French, et al., (1994), Circulation. (1994))。別の試みは、プロテイナーゼ処理と組み合わせた心膜内へのウイルスベクターの注入を含むものであった(Fromes, et al., Gene Ther. (1999))。これらの操作は、強いウィルスベクターの拡散の欠如による難点もあったが、局所的な遺伝子送達を達成した。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる心筋遺伝子送達の効果はin vitroでラット新生仔の培養細胞を用いて確認され、浸漬されたラット乳頭筋を用いたex vivoシステムでも確認された(Maeda, et al., J. Mol. Cell. Cardiol. (1998))。ex vivoでのAAVベクター導入に続く心臓の同系移植がマーカー遺伝子の発現が高い効率で達せられるということが報告されている(Svensson et al., Circulation. (1999))。高レベルのin vivoでの心筋指向性(cardiotopic)遺伝子導入を高い一貫性で(心筋細胞の平均60〜70%)達成した方法は、例えば米国特許出願公報第20020032167号に記載されている。ウイルスベクターの他の調製及び使用方法は、国際公開第96/13597号公報、同96/33281号公報、同97/15679号公報及びTrapnell, et al., Curr. Opin. Biotechnol. (1994); Ardehali, et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. (1995); Dalesandro, et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. (1996); Sawa, et al., Circ (1995); Lee, et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. (1996); Yap, et al., Circ. (1996); 及びPellegrini, et al., Transpl. Int. (1998)に記載されている。
また、対象のポリヌクレオチドは、非ウイルス性送達媒体を用いて投与されてもよい。本明細書では、「非ウイルス性送達媒体」(本明細書においては「非ウイルス性ベクター」とも言われる)は、裸の若しくは凝縮したポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド及びカチオン化合物(例えば、硫酸デキストラン)の剤形)及びウイルス粒子のようなアジュバントと混合した裸の若しくは凝縮したポリヌクレオチド(すなわち、その目的のポリヌクレオチドはウイルス粒子には含まれないが、その形質転換体は裸のポリヌクレオチド及びウイルス粒子の両方からなる(例えば、アデノウイルス粒子)(例として、Curiel, et al. Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. (1992)を参照されたい))を含有する化学的な剤形を含むことを意味する。従って、「非ウイルス性送達媒体」は、ポリヌクレオチドに加えて目的のポリヌクレオチドを含まないウイルス粒子からなるベクターを含んでいてもよい。
「非ウイルス性送達媒体」は、送達されるポリヌクレオチドがカプシドに包まれたものでない若しくはウイルス粒子の中に含まれるものでない、細菌プラスミド、ウイルスゲノム又はその一部、並びにウイルスゲノムの一部、及び細菌プラスミド及び/又はバクテリオファージの一部を包含するコンストラクトを含むものである。この用語はまた、天然の及び合成のポリマー及び共重合体も含み、さらに脂質ベースの媒体をも含む。脂質ベースの媒体には、Felgner, et al.(米国特許第5,264,618号、同第5,459,127号;PNAS 84:7413-7417 (1987);Annals N.Y. Acad. Sci. (1995))により開示されたようなカチオン性リポソームも含まれ;それらもまた中性若しくは負に帯電したリン脂質又はSchreier, et al.(米国特許第5,252,348号及び同第5,766,625号)により開示された人工のウイルスエンベロープを含むその混合物も含まれてもよい。
非ウイルス性送達媒体はポリマーベースの担体を含む。ポリマーベースの担体は、天然及び合成ポリマー並びに共重合体を含んでいてもよい。好ましくは、ポリマーは、生分解性であるか、又は対象から容易に除去できるものであってもよい。天然のポリマーは、ポリペプチド又は多糖を含む。合成ポリマーは、分子が縮合剤にもなり得るポリリシン及びポリエチレンイミン(PEI; Boussif, et al., PNAS 92:7297-7301 (1995))を含むが、これらに限定されない。これらの担体は、水、エタノール、食塩水及びこれらの混合液のような分散液中に溶解、分散若しくは懸濁されてもよい。当該技術分野で公知の様々な合成ポリマーを使用することが可能である。
ウイルス送達システムのユニットを含む調製物は、当該技術分野で公知の種々の方法のいずれかにより対象の心臓細胞に(in vivo又はin vivoで)送達できる。
臨床設定において、治療遺伝子の遺伝子送達システムは、それぞれが当該技術分野でよく知られている数ある方法のいずれかによって患者に導入され得る。例えば、遺伝子送達システムの医薬調製物は、例えば静脈注射により全身に導入され、そして標的細胞におけるタンパク質の特異的な形質導入が、主に、遺伝子送達媒体、受容体遺伝子の発現を制御する転写調節配列による細胞型若しくは組織型の発現又はその組み合わせにより与えられる形質転換の特異性によって生じる。他の実施態様では、組換え遺伝子の初期の送達は、極めて局所的になされる動物への導入により制限される。例えば、遺伝子送達媒体はカテーテル(米国特許第5,328,470号を参照されたい)又は定位的注入(例えば、Chen, et al. PNAS 91:3045-3057 (1994))により導入され得る。
投与経路は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入又は経口摂取)、経皮(局所)、及び経粘膜的を含む。また、例えば、動脈内、筋肉内、心膜内、又は静脈内へのような注入も考えられる。
一実施例では、調製物は直接心臓組織へ注入される。米国出願第10/914,829号で、直接的な注入のプロトコルについて記載されている。心筋へのウイルスベクターの直接的な注入又は適用は、心臓へ伝達された遺伝子の発現を制限できる(Gutzman et al., Cric. Res. (1993); French et al., Circulation (1994))。また、調製物は細胞へex vivoで提供されてもよい。次いで目的のタンパク質を含有する細胞(例えば、I−1の突然変異体)は、患者に投与される。
別の実施例では、調製物は1又はそれ以上の冠状動脈の内腔へ導入される。環状動脈からの血液の通過は制限されてもよい。調製物は順行性の送達をされて、動脈内に1〜5分間(例えば、1〜3分間)存在してもよい。
他の実施例では、国際公開第01/091803号公報に記載されているように、調製物は支持マトリックス(例えば、縫合物、外科的に埋め込まれた物質、移植物等)に接着されて、局部組織及び/又は血管環境に制御された若しくは制御されない放出を提供する。
非ウイルス性媒体は類似の方法で送達されてもよい。
医薬組成物
本発明の単離された核酸分子又はポリペプチドは、例えば、ヒトのような対象への投与に適した医薬組成物に組み込まれる。このような組成物は通常ポリペプチド又は核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」とは、薬学的投与に適合する、いずれかのそして全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことを意味する。そのような媒体及び薬剤が薬学的に活性な基質用に使用されることは知られている。いずれかの従来の媒体又は薬剤がその活性な化合物と適合できない場合を除いて、そのような媒体は本発明の組成物において使用され得る。また、その組成物には、補足的に活性な化合物を組み込むこともできる。
医薬組成物は、目的の投与経路に適合するように製剤化される。非経口、皮内、又は皮下への適用に使用される溶媒又は懸濁液は、以下の成分を含有する:注射用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸又は重硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩のような緩衝剤及び塩化ナトリウム若しくはデキストロースのような等張圧調整剤。pHは、塩酸若しくは水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整され得る。非経口調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てのシリンジ、又は複数回投与のバイアルに入れてもよい。
注射的使用に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び減菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈投与に関して、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、クレモフォール(Cremophor EL)(登録商標)(BASF, Parsippany, NJ)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合に、組成物は無菌で、容易に注射できる程度に流動性であるべきである。製造及び保存条件下で安定で、また微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)を含む、溶媒又は分散媒質、及びそれらの適切な混合物であってよい。
適切な流動性は、例えばレシチンなどの被覆物の使用によって、分散物の場合は最適な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等のような、様々な抗菌及び抗真菌剤によって達成できる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによって、注射可能な組成物の持続的吸収を生じさせることができる。
注射可能な滅菌溶液は、活性な化合物(例えば、本明細書に記載の単離された拡散分子)を最適な量で上に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに適切な溶媒に組み込むことにより調製されて、次いでろ過滅菌されてよい。一般的に、分散物は、塩基性の分散媒及び上に列挙した他の成分を含有する滅菌媒体に治療用の薬剤を組み込むことにより調製される。注射可能な滅菌溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、減圧下で乾燥させて凍結乾燥させる方法であり、前もってろ過滅菌された溶液からの付加的な所望の成分の何れかを加えた有効成分の粉末が得られる。
全身的な投与は、経粘膜的又は経皮的に行われる。経粘膜的又は経皮的投与に関して、浸透すべきバリアに対して適切な浸透剤が製剤中に用いられる。そのような浸透剤は一般的に知られているものであり、例えば、経粘膜的投与のための洗浄剤、胆汁塩、フシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は、鼻腔用スプレー又は座薬を用いることによりなされる。経皮的投与に関して、活性化合物は、当該技術分野で公知の軟膏(ointments、salves)、ゲル 又はクリームに製剤化される。
治療用薬剤は、植込錠及びマイクロカプセル化した送達システムを含む、放出制御製剤のような、体内からの迅速な排出を防ぐ担体(複数も)と共に調製されてもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸のような生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかなものである。また、材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.より商業的に入手可能である。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染させた細胞を標的にしたリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者にとって公知の方法によって調製することができる。
医薬組成物は、容器、パック又はディスペンサーに投与に関する説明書と共に含まれていてよい。遺伝子治療構築物の医薬製剤は、遺伝子送達媒体が埋め込まれた徐放性マトリックスを包含するものであってもよい。組換えパルボウイルス、特に、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、例えば、治療用のウイルスベクターが支持マトリックス上で乾燥される(すなわち、接着される)、脱水又は乾燥の工程(すなわち、不完全又は完全な乾燥、凍結乾燥)に続く遺伝子治療のための(上記の)核酸配列(すなわち、遺伝子及びDNA配列)の送達に使用できる。有用な支持マトリックスは、包装及び対象への輸送のための外科的に埋込み可能な物質(すなわち、縫合物、外科的な移植物質、埋込み型可能な装置等)を含み、それにより支持マトリックスに接着したrAAVによって遺伝子治療法の送達を可能にする。詳しくは国際公開第01/091803号公報に記載されている。または、完全な遺伝子送達システムが、組換え細胞(例えば、レトロウイルスベクター)から無傷で産生された場合、その医薬調製物は遺伝子送達システムを産生する1つ又はそれ以上の細胞を包含することができる。
送達される核酸分子は、DNA−又はRNA−リポソーム錯体製剤としても製剤化できる。そのような錯体は、カチオン電荷(静電相互作用)の方法によって遺伝物質(DNA又はRNA)に結合する脂質の混合物を包含する。本発明で使用されるカチオン性リポソームは、3.β−[N−(N’,N’−ジメチル−アミノエタン)−カルバモイル]−コレステロール(DC−Chol)、1,2−ビス(オレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニオ−プロパン)(DOTAP)(例えば、国際公開第98/07408号公報を参照されたい)、リシニルホスファチジルエタノール−アミン(L−PE)、リポスペルミンのようなリポポリアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(ドデシルオキシ)−1−プロパンアミニウムブロマイド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、N(1,2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA)、DOSPA、DMRIE、GL−67、GL−89、リポフェクチン及びリポフェクタミン(Thiery, et al., Gene Ther. (1997); Felgner, et al., Annals N.Y. Acad. Sci. (1995); Eastman, et al., Hum. Gene Ther. (1997))を含む。また、米国特許第5,858,784号に記載のポリヌクレオチド/脂質製剤も本明細書に記載の方法において使用され得る。多くのこれらの脂質は、例えば、Boehringer−Mannheim及びAvanti Polar Lipids(バーミンガム、アラバマ)より商業的に入手可能である。また、米国特許第5,264,618号、同5,223,263号及び同5,459,127号において開示されたカチオン性リン脂質も含まれる。使用され得る他の好適なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール等を含む。コレステロールが含まれてもよい。
投与
上述の医薬組成物は、罹患血管(例えば、動脈)又は臓器(例えば、心臓)に注入され得る。治療の実施態様の一方法において、心臓の冠状動脈を通る血流が制限され、ウイルス送達システムが冠状動脈の内腔に導入される。特定の態様では、冠状静脈からの血流が制限されている間も心臓はポンプとして機能する。別の特定の実施態様では、心臓からの大動脈血流が制限されている間にウイルス送達システムが注入されて、それによりウイルス送達システムが流入し心臓に送達される。他の実施態様では、冠状血管の血流が完全に制限され、特にそのような態様で制限された冠状血管は、左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、大冠状静脈(GCV)、中心静脈(MCV)又は前室間静脈(AIV)を包含する。ある特定の実施態様では、ウイルス送達システムは、冠状血管の虚血プレコンディショニングの後に導入される。
別の実施態様では、ベクターを包含するウイルス送達システムは、血流が冠状動脈へリダイレクトするように心臓からの大動脈血流を制限する;ベクターが冠状動脈へ流入するようにベクターを心臓の内腔、大動脈又は冠状動脈口へ注入する;心臓からの大動脈血流が制限されている間も心臓をポンプとして機能させる;及び大動脈の血流を回復させる段階を包含する方法により心臓に注入される。より特異的な実施態様では、ベクターはカテーテルで心臓に注入され、さらに特異的な実施態様ではベクターは心臓の筋肉へ直接的に注入される。
PKC−αの活性が心不全の病態において上昇すると考えれば、PKC−α阻害は、心不全の治療のための薬学的標的を構成するものである。従って、PKC−αのアンタゴニスト又はPKC−αの活性を阻害する作用を有する薬剤を本発明の核酸又はポリペプチドと組み合わせて投与される。心筋収縮性の低下が望ましいような状況では、PKC−αのアゴニストとして作用する薬剤の追加投与が指示される。
治療の評価
本発明の治療方法は、心機能又は心筋細胞機能(例えば、心拍数、心臓代謝、心収縮性、心室機能、Ca2+代謝及び筋小胞体Ca2+ATPアーゼ活性などが挙げられるが、これらに限定されない)に関するパラメーターにおける治療による影響を評価して判断する。
また、治療は、対象への影響によって(例えば、治療の分野において熟練した者が特定の治療に関連すると認識するパラメーターによって)も評価され得る。例えば、心不全の治療において典型的なパラメーターは心機能及び/又は肺機能に関するものであってよい。心臓のパラメーターは、脈拍、EKGシグナル、内腔の喪失、心拍数、心収縮性、心室機能、例えば、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室収縮期圧(LVSP)、Ca2+代謝、例えば、細胞内のCa2+濃度若しくはピーク又は静止Ca2+濃度、力の発生、心臓の弛緩及び圧力、力−収縮頻度関係、心臓細胞の生存率若しくはアポトーシス又はイオンチャンネル活性、例えば、ナトリウムカルシウム交換、ナトリウムチャンネル活性、カルシウムチャンネル活性、カリウムナトリウムATPアーゼポンプ活性、ミオシン重鎖の活性、トロポニンI、トロポニンC、トロポニンT、トロポミオシン、アクチン、ミオシン軽鎖キナーゼ、ミオシン軽鎖1、ミオシン軽鎖2又はミオシン軽鎖3、IGF−1受容体、PI3キナーゼ、AKTキナーゼ、ナトリウム−カルシウム交換体、カルシウムチャンネル(L及びT)、カルセクエストリン又はカルレティキュリンを含む。評価は、例えば、治療前、治療後若しくは治療中の、血管造影(例えば、量的な血管造影)及び/又は血管内エコー(IVUS)の実施を含んでいてもよい。
心不全の診断/予知方法
さらに、本明細書においては、対象から心筋のホスファターゼインヒビター−1プロテインのサンプルを採取して、少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位の存在を検出することによる、さらに具体的には、その少なくとも1つのリン酸化されたPKC−αのリン酸化部位はT75又はS67を包含している、対象の心不全を診断又は予知するものである。
キット
本発明の単離された核酸分子又はポリペプチドは、キットにおいて提供される。キットは、(a)核酸分子又はポリペプチド(例えば、核酸分子又はポリペプチドを含む組成物)、及び(b)情報的物質を含むが、これらに限定されない。情報的物質は、説明的、教示的、販売手段として又は本明細書に記載の方法及び/又は本明細書に記載の方法のための本発明の核酸分子又はポリペプチドの使用に関する他の物質を含んでもよい。例えば、情報的物質は心不全に関するものであってよい。
一実施態様において、情報的物質は、例えば、好適な投与量、投与形態又は投与方法(例えば、本明細書に記載の投与量、投与形態又は投与方法)のような、本明細書に記載の方法を実施する好適な手段における本発明の核酸分子又はポリペプチドの投与の指示書を含んでいてもよい。別の実施態様では、情報的物質は、好適な対象(例えば、ヒト(例えば、心不全に罹患している又はリスクのあるヒト)に本発明の核酸分子又はポリペプチドを投与するための指示書を含んでいてもよい。例えば、その物質は、本発明の核酸分子又はポリペプチドを心筋症に罹患している又はリスクのある対象に投与するための指示書を含んでいてもよい。
本発明の単離された核酸分子又はポリペプチドに加えて、キットの組成物は、溶媒若しくは緩衝剤、安定剤、防腐剤、及び/又は心不全の治療のための第二の薬剤のような他の成分を含んでいてもよい。または、その他の成分は、キットに、しかし本発明の核酸分子又はポリペプチドとは異なる組成物又は容器に含まれてもよい。そのような実施態様では、キットは、本発明の核酸分子若しくはポリペプチドをその他の成分と混ぜるため、又は本発明の核酸分子又はポリペプチドを他の成分と共に使用するための指示書を含んでいてもよい。
本発明の核酸分子又はポリペプチドは、例えば、液体、乾燥させた若しくは凍結乾燥させた形態のような形態の何れかで提供されてもよい。好ましくは、本発明の核酸分子又はポリペプチドは実質的に純粋及び/又は無菌である。本発明の核酸分子又はポリペプチドが溶液で提供される場合、その溶液は水溶液であり、滅菌溶液であることが好ましい。本発明の核酸分子又はポリペプチドが乾燥した形態で提供される場合、通常は適切な溶媒を加えることにより再構成される。その溶媒、例えば滅菌水若しくは緩衝液は、キットに含まれていてもよい。
キットは、本発明の核酸分子又はポリペプチドを含有する組成物のための容器を1つ又はそれ以上含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、そのキットはその組成物のための個別の容器、仕切り又はコンパートメント及び情報的物質を含むものである。例えば、組成物は、瓶、バイアル又はシリンジに収容されてよく、情報的物質はプラスチックスリーブ又は包みに収容されてよい。他の実施態様では、キットの個別の要素は、単一の分割されていない容器に収容される。例えば、組成物は、ラベルの形でその情報的物質が添付された瓶、バイアル又はシリンジに収容される。いくつかの実施態様では、キットは、個々の容器を複数(例えば、1パック)含み、それぞれは薬剤の1つ又はそれ以上の剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)の単位を含む。例えば、キットは複数のシリンジ、アンプル、ホイル包装又はブリスター包装を含み、それぞれが本発明の核酸分子又はポリペプチドの1単位用量を含有する。キットの容器は、気密及び/又は防水性でもよい。キットは、例えば、ステント、シリンジ又は有用な送達デバイスのような組成物の投与に適したデバイスを含んでもよい。
抗体
配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を包含する単離されたポリペプチドに選択的に結合する抗体も同様に意図される。抗体を調製する方法は免疫学における当業者に公知である。本明細書では、「抗体」という用語は、無傷の抗体分子のみならず免疫原−結合能を保持する抗体分子の断片も意味する。そのような断片もまた当該技術分野で公知であり、通常in vivo及びin vitroの両方で採用される。従って、本明細書では「抗体」とは、無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、公知の活性フラグメントであるF(ab’)及びFabも意味する。無傷の抗体のFcフラグメントを欠くF(ab’)及びFabフラグメントはより迅速に循環から除去され、無傷の抗体のより低い非特異的な組織結合性を有していてもよい(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325(1983))。本発明の抗体は、完全に天然な抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、単鎖V領域のフラグメント(scFv)、融合ポリペプチド、及び特殊な抗体を包含する。
一実施態様では、配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、又は構成的に非リン酸化状態のその断片を包含する単離されたポリペプチドに結合する抗体はモノクローナルである。あるいは、その抗体はポリクローナル抗体である。また、ポリクローナル抗体の調製及び使用は、当業者に公知である。さらに、本発明は、一組の重鎖及び軽鎖が第1
の抗体から得られるものであり、他方の組の重鎖及び軽鎖が異なる第2の抗体から得られる、ハイブリッド抗体も含む。ハイブリッドは、ヒト化重鎖及び軽鎖を用いて形成されてもよい。このような抗体は、度々「キメラ」抗体とも言われる。
一般に、無傷の抗体は「Fc」及び「Fab」領域を含むと考えられている。Fc領域は、補体活性化に関与するが、抗原結合には関与しない。Fc’領域が酵素的に切断された又はFc’領域なしに産生される抗体、指定された「F(ab’)」フラグメントが、無傷の抗体の両方の抗原結合部位を保持する。同様に、Fc’領域が酵素的に切断された又はFc’領域なしに産生される抗体、指定された「F(ab’)」フラグメントが、無傷の抗体の1つの抗原結合部位を保持する。Fab’フラグメントは、共有結合している抗体軽鎖と抗体重鎖の一部を含み、「Fd」と示される。Fdフラグメントは、抗体特異性の主な決定要因である(単一のFdフラグメントは、抗体特異性を変化させることなく10までの異なる軽鎖と結びつく)。単離されたFdフラグメントは、免疫原性エピトープに特異的に結合する能力を保つ。
抗体は、当業者に公知の方法のいずれかにより、配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、若しくはその構成的に非リン酸化状態の断片、又はその免疫原性の断片を包含する単離されたポリペプチドを利用して、免疫原として産生される。抗体を入手する1つの方法は、好適な宿主動物に免疫原で免疫を与えて、ポリクローナル又はモノクローナル抗体産生のための標準的な手順に従うことである。免疫原は、細胞表面上の免疫原提示を容易にする。好適な宿主の免疫化は、数多くの方法で実施できる。配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、若しくはその構成的に非リン酸化状態の断片、又はその免疫原性の断片を包含する単離されたポリペプチドをコードする核酸配列は、宿主の免疫細胞によって取り込まれる送達媒体により宿主に提供することができる。言い換えると、細胞は、細胞表面上に受容体を発現し、宿主において免疫反応を起こす。あるいは、配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、若しくはその構成的に非リン酸化状態の断片、又はその免疫原性の断片を包含する単離されたポリペプチドをコードする核酸配列が、in vitroにおいて細胞に発現して、続いて受容体が単離されて、抗体が発生した好適な宿主へ受容体が投与されてもよい。
また、配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列、又はその構成的に非リン酸化状態の断片を包含する単離されたポリペプチドに対する抗体は、所望であれば、抗体ファージディスプレイライブラリから得てもよい。バクテリオファージは、細菌に感染して、その細菌中で増殖することができて、ヒト抗体遺伝子と組み合わせた場合にヒト抗体タンパクを提示するように改変されてもよい。ファージディスプレイ法は、ファージがその表面にヒト抗体タンパクを「ディスプレイ(提示)」するように作成される過程である。ヒト抗体遺伝子ライブラリー由来の遺伝子がファージの個体群に挿入される。それぞれのファージは、異なる抗体に対する遺伝子を運び、それにより異なる抗体をその表面に提示する。
当該技術分野で公知の方法のいずれかにより作成された抗体は、次いで宿主から精製されてもよい。抗体の精製法は、塩析沈殿法(例えば、硫酸アンモニウムで)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン又は陰イオン交換カラムで、好ましくは中性のpHで処理し、イオン強度の増加の勾配を変えて溶出する)、ゲルろ過クロマトグラフィー(ゲルろ過HPLCを含む)、及びプロテインA、プロテインG、ヒドロキシアパタイト及び抗免疫グロブリンのような親和性樹脂でのクロマトグラフィーを含んでいてもよい。
抗体は、その抗体を発現するように設計されたハイブリドーマ細胞から産生される。ハイブリドーマの作成方法は当該技術分野で公知である。ハイブリドーマ細胞は適切な培地で培養され、使用済みの培地は抗体源として使用されてもよい。目的の抗体をコードするポリヌクレオチドは、その抗体を産生するハイブリドーマから入手することができ、次いでその抗体は合成的に又は組換え的にこれらのDNA配列から産生されてもよい。大量の抗体を産生するためには、腹水を入手することが一般的にはより便利である。腹水を生じさせる方法は、通常ハイブリドーマ細胞を免疫学的に未熟な組織適合性又は免疫耐性の哺乳動物、特にマウスへ注入することを含む。予め適切な組成物(例えば、プリスタン)を投与することにより哺乳動物は腹水の産生の準備ができる。
本発明の方法により製造されるモノクローナル抗体(Mabs)は、当該技術分野で公知の方法により「ヒト化」される。「ヒト化」抗体とは、少なくとも部分的な配列が当初の形態からよりヒト免疫グロブリンに似た状態に改変された抗体である。抗体のヒト化の技術は、非ヒト動物の(例、マウスの)抗体を産生する場合に特に有用である。ネズミの抗体をヒト化するための方法は、例えば、米国特許第4,816,567号、同5,530,101号、同5,225,539号、同5,585,089号、同5,693,762号、及び同5,859,205号に記載されている。
本発明は、続く補助実験及び実施例を参照することにより、より完全に理解されるものである。しかしながら、実施例は本発明の特定の態様を説明しようとするものであり、請求項によって示される本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
(実施例)
本発明者らは精製したタンパク質を用いて、I−1のPKC−αによるリン酸化の実験を行った。ヒトI−1又はSer67をアラニンで置換したI−1突然変異体をコードするcDNAをクローンして発現した。得られた組換えタンパク質を精製してGST標識を除去した。精製したタンパク質のPKC−αリン酸化では、32Pの突然変異体への取り込みは減少するが、他にPKC−αリン酸化部位があることを示唆していて、I−1の野生型と比べて完全には阻止しないことを示した。この推定PKC−α部位を同定するために、リン酸化状態のヒトI−1をエドマン分解と組み合わせてマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析に付した。これらの分析は、スレオニン75がヒトI−1上の新規なPKC−α部位であると証明した。このデータを確認するために、Thr75(T75A)及びSer67+Thr75(S67A/T75A)をアラニンで置換したI−1突然変異体を作製した。
I−1及びその突然変異体のPKC−α処理は、S67A又はT75Aのどちらかへの32P取り込みの減少及びS67A/T75Aへ取り込まないことを示した。二次元電気泳動による更なる分析は:1)Thr75はPKC−α部位である;そして2)Ser67及びThr75はヒトI−1上のPKC−αによるたった1つのリン酸化状態の残基である:ことを証明した。Thr75リン酸化の機能的意義を究明するために、プロテインホスファターゼ・アッセイを行った。PKAによるI−1又はI−1突然変異体のリン酸化は、PP1の阻害と関連していた。しかしながら、I−1のPKC−αのリン酸化はその活性に影響がなかった。更に、PKC−αのリン酸化は、PKAによるI−1の阻害機能に影響がなかった。
材料
PKC−α、PKA及びcAMPは Upstate BIotyechnology より購入した。ホスファチジルセリンは Avanti Polar-Lipids から入手した。pGEX 6P−3プラスミド、グルタチオンセファロース4B、PreScission Protease 及び Immobiline DryStrips、IPG Buffer pH4−7は、Amersham Biosciences から入手した。Quick-Change II 部位特異的突然変異生成キット及びBL21 CodonPlus(DE3)-RIPL Competent Cells はStratagene から入手した。ジアシルグリセロール、アンピシリン及びIPTGは Sigma Aldrich から入手した。SYPRO Ruby Protein Gel Stain は Cambrex から入手した。T4リガーゼ、EcoRI 及び Not I 制限酵素は New England Biolabs から購入した。タンパク質脱塩スピンカラム及び B-PER GST 溶解タンパク質精製キットは Pierce から購入した。〔γ−32P〕ATPは Perkin Elmer から入手した。抗−ACIは、特注した(Affinity Bioreagents)マウスI−1のN−末端配列(MEPDNSPRKIQFTVP15)(配列番号24)に対する、アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体である。抗−GSTウサギポリクローナル抗体は Affinity Bioreagents から入手した。
方法
インヒビター−1突然変異プロテインの生成
ヒトI−1cDNA(GenBank Accession#U48707)をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子のC−末端側にフレームを一致させて、pGEX−6P−3ベクターでクローン化した(図1A)。順方向クローニングプライマーは:5’−CAGAGAATTCCATGGAGCAAGACAACAGCCC−3’(配列番号25)(EcoR I 制限酵素部位は下線付き;フレームをあわせた発現のためのスペーサーヌクレオチドは陰影付き;開始コドンはイタリック体)であり、そして逆方向クローニングプライマーは:5’−CAGAGCGGCCGCTCAGACCGAGTTGGCTCCCTー3’(配列番号26)(Not I制限酵素部位は下線付き;終止コドンはイタリック体)であった。PreScission プロテアーゼ切断部位は、引き続くGST標識の除去を促進するために、GSTとI−1遺伝子の間に位置していた。I−1 cDNAの突然変異を、Quick-Chenge II 部位特異的突然変異生成キットを用いて、pGEX−6P3ベクター中で得た。
Ser67をAlaへ突然変異するために用いたプライマーは:5’−TCCACTTTGGCAATGGCACCACGGCAACGGAAGAA−3’(配列番号27)(アラニンコドンは下線付き)及びその相補体であった(図1B)。Thr75をAlaに突然変異するためのプライマーは:5’−CGGCAAAAGATGGCAAGGATCACACCCAC−3’(配列番号28)(アラニンコドンは下線付き)及びその相補体であった。I−1(S67A)をThr75をAlaに突然変異するためのテンプレートとして用い;I−1(T75A)に関して上記した(図1B)プライマーの同じセットを用いて、I−1(S67A/T75A)を生成した。Ser67をAspへ突然変異するために用いたプライマーは:5’−TCCACTTTGGCAATGGACCCACGGCAACGGAAGAA−3’(配列番号29)(アスパラテートコドンは下線付き)及びその相補体であった(図1C)。Thr75をAspに突然変異するためのプライマーは:5’−CGGCAAAAGAAATGGACAGGATCACACCCAC−3’(配列番号30)(アスパラテートコドンは下線付き)及びその相補体であった(図1C)。I−1(S67D/T75D)を、上記(図1C)のように、段階方法で生成した。
これらのそれぞれのプラスミドで、BL21CodonPlus(DE3)-RIPLコンピテント細胞をトランスフェクトして、アンピシリン含有(150μg/ml)LB寒天プレート上で生育した。個々のコロニーを、3−mlのLB−アンピシリン(50μg/ml)出発培地に接種して、37℃で16時間生育した。これらの培地1mlを100mlのLB−アンピシリンに接種して25℃で2時間生育した。この時点で、無菌のIPTGを最終濃度が0.1μMになるように添加して、培地を25℃で更に4時間生育した。次いで細胞をペレットとして、GST−I−1融合タンパク質をB−PER GST融合タンパク質精製キットを用いて精製した。GST融合タンパク質を、50mMのTris−HCl(pH7.0)に対して広範に透析して、PreScission プロテアーゼと共に4℃で4時間培養した。タンパク質切断後に、予洗したグルタチオンセファロース4Bを4℃で4時間又は1晩用いて、PreScission 酵素及びGSTタグを培地から除去した。精製後の切断範囲及びタンパク質の収率を評価するために、Laemmli(24)の記載のようにして、15%のポリアクリルアミドゲルを用いるSDS−PAGEによってサンプルを分析した。タンパク質の濃度を Micro Bc アッセイ(Pierce)によって測定した。
in vitroのリン酸化分析
7μgのI−1又はI−1突然変異タンパク質を含有する150μlの緩衝液中、35℃で反応を実施した。組み替え型I−1又はI−1(S67A)、I−1(T75A)、I−1(S67A/T57A)突然変異体をPKC−αでリン酸化した。PKC−α(3μg/ml)でリン酸化するために、最終濃度は、50mMのTris−HCL(pH7.0)、5mMのMgCl、5mMのNaF、0.5mMのCaCl、0.3mMのホスファチジルセリンそして0.02mMの1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスフォ−L−セリンであった。リン酸化反応は0.025mMの〔γ−32P〕ATP(0.4mCi/nmol)を添加して開始した。指定された時間に、各混合物から20μlを回収し、SDSサンプル緩衝液(5強度)を4μl加えて反応を停止した。二次元電気泳動を行うために、タンパク質25μg(ある場合は35μg)を100μlの緩衝液中で、35℃にて45分間(ある場合は1晩)、上記のようにして、PKC−α(4ug/ml)によりリン酸化した。全ての場合に、Ca2+(1mMのEGTAの存在中)、ホスファチジルセリン、ジアシルグリセロール及びPKC−αは対照サンプル用の混合物に入れなかった。
組み替え型I−1又はI−1(S67D/T75D)突然変異体(7μg)をPKAでリン酸化した。PKA(0.1μg)リン酸化は、50mMのTris−HCL(pH7.0)、5mMのMgCl、5mMのNaF、1mMのEGTA、1μMのcAMP及び0.25mMの〔γ−32P〕ATP(0.4mCi/nmol)又は400μMのATPの存在下で実施した。1時間後に、SDSサンプル緩衝液を培地に加えて反応を停止しした。対照サンプル用には、PKA及びcAMPを反応培地に入れなかった。I−1種中への〔32P〕−リン酸の量はSDS−PAGE及びオートラジオグラフィー、又はトリクロロ酢酸(20%、w/v)沈殿に次いで透析によって測定した。データの濃度測定はImageQuant 5.2ソフトウェアーを用いて行った。
最初の実験では、PKC−αでリン酸化されたI−1は、オートラジオグラフにおいてリンタンパク質のダブレットとして移動して観察された。更なる検討で、これはPKAではなくPKC−αによるリン酸化で生じることが明らかになった(図2)。このダブレットは各2つのPKC−αリン酸化部位がAlaに突然変異されるときに、さらに観測された(図4及び6)。興味深いことに、リン酸化緩衝液中では、I−1ダブレットは、PKC−α活性化因子である、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスフォ−L−セリン(DAG)の存在と関連していた(データは示していない)。この事実はタンパク質の正味荷電の変化、及びそれによるSDSの結合減少によるものであろう。
インヒビター−1上の更なるリン酸化部位の同定
新規なPKC−αによるリン酸化部位を同定するために、10ugのGST−I−1(精製したI−1)を上記のように50μgのPKC−αリン酸化緩衝液中で微量の[γ−32P]ATPの存在下で37℃で4時間培養した。反応混合物を12%SDS−PAGEに付して、ゲルを室温で1晩SYPO Rubyで染色した。32P−標識GST−I−1バンドを同定し、ゲルから切り取って、トリプシン消化した。Vydac C18逆相HPLCカラムを用いてトリプシンペプチドを分離して、その画分を直ちにチェレンコフ(Cerenkov)カウンティングによって32Pについてアッセイした。放射性のピークをマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析及びエドマン分解に付した。実験したペプチドの質量をI−1ヒト配列由来の予測ペプチドに対して合致させるためにGPMAWプログラムを用いた。
免疫ブロット解析
I−1種を12%のポリアクリルアミドゲルを用いるSDS−PAGEで分離した。分離した後、タンパク質をニトロセルロース膜(穴径0.1um、Schleicher & Schuell Bioscience)に湿潤転写(180mAで3時間)によって転写した。非特異的な結合部位を、0.1%のツイーン20を含有するトリス緩衝食塩水(pH7.4)中の5%の粉乳を用いて、室温で1〜2時間ブロックした。膜を抗I−1の一次抗体(1:1000)又は抗GST(1:1000)で室温で3時間又は4℃で1晩プローブした。一次抗体を可視化するために、二次ペルオキシダーゼ標識抗体(Amersham Bioscience)を、拡張した化学発光による検出システム(Supersignal West Pico Chemiliminescent, Pierce)と組合わせて用いた。このバンドの光学密度をImageQuant 5.2 ソフトウェアーで解析した。
二次元電気泳動
精製したI−1又はPKC−α又はPKAによるリン酸化I−1及び突然変異体(Protein Desalting Spin Columns を用いて一度脱塩した)を7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%のCHAPS、10mMのDTT、1%のIPG4−7緩衝液及び0.01%のブロモフェノールブルーよりなる再水和緩衝液中で可溶化した。可溶化したタンパク質を18cmのImmobiline(登録商標)Drystrips(pH4〜7NL)に塗布して室温で1晩培養した。再水和等電点電気泳動法(IEF)を、Genomic Solutions Investigator 2-D Electrophoresis Sysstem上で、1枚に対して50mAで60,000ボルト時で実施した。第二次元は12.5%のスラブゲル上、500Vで14時間実施した。ゲルを固定して、蛍光染色(SYPRO Ruby)で室温にて1晩染色した。SYPRO染色したゲルを、FLA-3000 Imager(Fuji Medical Systems, Stanford, CT)を用いて475nmの蛍光光線及び黄色520nmのフィルターでスキャンした。比較するために、2−Dゲルを同時に処理し次いで、スポットを座標軸の標準集合に局在化させるためにProImageソフトウェアを用いた。それにより、ゲルを互いに比較できて、実験操作によるタンパク質スポットの移動パターンを容易に検出できる。
マウス心臓ホモジネート由来のトリクロロ酢酸沈殿タンパク質のサンプルDeSteak Solubilization緩衝液中で可溶化した後、等電点電気泳動を行うために11cmのIPGストリップに塗布した。12.5%のポリアクリルアミドゲルを用いるSDS−PAGEを用いて二次元でタンパク質を分離した後、タンパク質をニトロセルロース膜(穴径、0.1um)に、湿潤転写(180mAで3時間)によって転写した。ここでI−Dゲルの免疫ブロット解析を行うために、前記と同じ操作を適用した。
インヒビター−1の単離
Shenolikar et al(25) の記載に修正を加えた方法によって、マウス心筋からI−1を単離した。すなわち、液体窒素中で凍結した組織(1.5g)を乳鉢で粉砕して、2mlの氷冷したリン酸緩衝食塩水(pH7.2)中で、Polytron のホモジナイザーでホモジナイズした。直ちに、5mlの1.5%(w/v)トリクロロ酢酸を加えて、ホモジネートを4℃で1時間撹拌した後、9,000rpmで30分遠心分離した。上澄液をトリクロロ酢酸15%(w/v)液に調節し、4℃で1晩撹拌して、18,000rpmで30分遠心分離した。ペレットを0.5MのTris−HCl、pH8.0(原抽出量の1/20)に再懸濁し、10分沸騰して、上記のように遠心分離した。1MのNaOHを用いて、上澄液のpHを〜7に調整して、サンプルを2−D電気泳動に付した。
プロテインホスファターゼ活性アッセイ
プロテインホスファターゼ活性のアッセイを、50mMのTris−HCl(pH7.0)、0.1mMのNaEDTA、5mMのDTT、0.01%のBrij35、そして随意に0.5ngのPP1(New England BioLabs)を含有する50μlの反応混合物中で実施した。10ulの標準基質32P−標識化Myelin Basic Protein (MyBP)(最終濃度は50μM)を添加して反応を開始した。32P−MyBP基質を生成するために、商業ベースに精製されているMyBPを、製造会社(New England BioLabs)の説明書に従って、1モル当たり化学量論的に2〜4モルのリン酸エステルになるようにPKAで予めリン酸化して、4℃で貯蔵した。30℃で10分間反応した後、200ulの20%トリクロロ酢酸を加えて反応を停止し、氷上で冷却して、遠心分離した。上澄液からの200ulをシンチレーション測定して、アッセイ液中に放出された[32P]の量を測定した。混合物からPPIを抜いたブランク反応を同時に実施した。
PPIにおけるI−1阻害活性を測定するために、I−1の野生型及びその突然変異体(0.1mg/ml)を、上記のように400μMのATPの存在下30℃で1時間又は1晩リン酸化して、アッセイ培地からNaFを抜いた後、PKC−α又はPKAによるPPI活性アッセイに加えた。2つのキナーゼ、PKA及びPKC−αによる二重リン酸化を以下のように段階的に実施した。PKC−α培養後に、混合物からアリコートを回収して、EGTA(amM)、cAMP(1μM)、PRA(0.1ug)及びATP(400μM)を培地に加えた。PKAリン酸化反応を30℃で、PKC−α処理で用いたのと同じ時間培養した。次いで、PPIによる[32P]MyBPの脱リン酸化は、脱リン酸化又はリン酸化I−1又は数種のI−1突然変異体の存在下で観察した。
I−1アデノウイルスの生成
特定部位におけるI−1のリン酸化の機能的効果を評価するためのex vivo発現ベクターを生成するために、特定の突然変異(例えば、Thr75のASPへの突然変異(T75D))を生じるI−1cDNAを最初にpShuttle-IRES-hrGFP-1ベクターでクローンした。このベクターをAdEasy−1アデノウィルスのバックボーンベクターと相同的に組み替えした(図3)。そして、I−1野生型(Ad.I−1WT)、I−1突然変異体I−1(S67D)、I−1(T74D)、I−1(S67D/T75D)又は緑色蛍光タンパク質(Ad.GFP)をコードするアデノウイルスを生成するために、Ad-Easy XLシステムをい用いた。これは複製欠損性組み替えアデノウイルスをもたらし、I−1(例えば、T75D突然変異体)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)の両方を発現できる。このアデノウィルスを増幅し、精製(Adenovirus Mini Purification kit(Virapur)を用いて)して、標準的な手法によって力価を測定(Adeno-X Rapid Titer kit(Clontech)を用いて)した。
アデノウィルスによる遺伝子転写及び筋細胞収縮性
心臓収縮性における特定部位でのインヒビター−1のリン酸化の効果を特徴付けるために、成熟雄性SDラット(〜300グラム)由来の心室筋細胞を既に詳述されている(Fan et al.Circ. Res.(2004))ようにコラゲナーゼ消化によって単離した。ラットは、Institutional Animal Care and Use Committee at the University of Cincinnati で承認されているようにして扱われた。筋細胞を改良培養培地(M199、Gibco)中に再懸濁し、計数し、ラミニン被覆カバーグラス又はディッシュに載せて、加湿5%CO培養器中37℃で2時間、アデノウイルスで500倍感染濃度で感染させた。基底レベルでの、及び随意に、Forskolin(100nM、Sigma-Aldrich)治療下での筋細胞収縮を、感染24時間後に、Grass S5刺激(0.5Hz、四角波)で実行した。左室内径短縮率(FS%)、90%弛緩までの時間(ベースラインの%)及び収縮及び弛緩の最大比(dL/dTmax)を、video edge motion detector(Crescent Electronics)を用いて計算した。イムノブロッティングするために、培養した心筋細胞を採取して、既に記載されている(Fan et al.Circ. Res.(2004))ようにして溶解緩衝液中に4℃で30分間溶解した。
イムノブロッティングするために、培養した心筋細胞を採取して、50mMのTris−HCl(pH7.0)、10mMのNaF、1mMのEDTA、0.3mMのスクロース、0.3mMのPMSF、0.5mMのDL−ジチオスレイトール(DTT)及びプロテアーゼインヒビターカクテル(組織20グラム当たり1ml、Sigma)を含有する可溶化緩衝液中でPolytron を用いてホモジナイズした。プロテインホスファターゼ活性を測定するために、NaFを緩衝液から抜いた。
筋小胞体Ca2+の培養ラット心筋細胞への取り込み
ラット心筋細胞の感染24時間後に、細胞をPBSで2回洗浄し、採取して、50mMのカリウムリン酸緩衝液(pH=7.0)、10mMのNaF、1mMのEDTA、0.3mMのPMSF及び0.5mMのDTT中、4℃でホモジナイズした。ミリポアろ過技術及び45CaClを用い、既に記載されている(Kiss et al. Circ. Res. (1995)))ようにして、ホモジネート中の初期SRCa2+取り込み比を測定した。すなわち、100〜250μgのホモジネートを、40mMのイミダゾール(pH7.0)、95mMのKCl、5mMのNaN、5mMのMgCl、0.5mMのEGTA、及び5mMのMgCl3のKを含有する反応緩衝液中、37℃で培養した。初期取り込み比を、広いカルシウム値の範囲(pCa5〜8)にわたって測定した。心筋細胞へのカルシウムの取り込みを5mMのATPを添加して開始して、反応終了0、30、60及び90秒後にアリコートを0.45μmのミリポアフィルターでろ過した。特定45Ca2+取り込み値(最大Ca2+取り込み比、Vmax、及び半減最大Ca取り込み濃度、EC50)をOriginLab 5.1プログラムを用いて分析した。
オートラジオグラフィー及びデータ分析
上で簡単に述べたように、32PのI−1種への取り込み量をオートラジオグラフィーで測定した。湿潤転写後に、ニトロセルロース膜をBlue Lite Auttorad Films(IscBioExpress)に24時間又は48時間暴露して、Image Quant5.2ソフトウェアーを用いてデータの濃度分析を実施した。
統計
n検定について全ての値を平均±SEMで表した。対応のない値又は一方向ANOVAについては、必要に応じ、スチューデントt−検定で比較した。
、p<0.05;※※、p<0.01;※※※、p<0.001。
PKC−αによるI−1及びI−1突然変異体のリン酸化
記述のように、先行の研究はPKC−αがインヒビター−1(I−1)をSer67でリン酸化することを示している。I−1上に更なるリン酸化部位が存在するか否かを試験するために、Ser67がアラニンで置換されているI−1突然変異体を上記のようにインビトロでPKC−αでリン酸化した。図4は、I−1突然変異体(S67A)のPKC−αによるリン酸化は野生型I−1と比べると大幅に減少するが、完全にはなくならないということを示している。タンパク質当たりの32P取り込みの濃度分析は、完全に取り込んだ時点で(20〜45分)、I−1(S67A)が野生型に存在する放射活性レベル(100%)の40±8.6%を取り込んだことを明らかにした。いくつかの実験で、PKC−αの自己リン酸化に対応する、78Kdaに単一の更なるバンドが生じた。その他の放射活性バンドはどの実験においても検出されなかった。特異抗体(AC1、1:1000)はインヒビター−1のようにリン酸バンドを認識した(図4B)。従って、これらの結果は、I−1上に少なくとも1つのさらなるPKC−αリン酸化部位が存在することを示唆している。
リン酸化部位の決定
I−1上の更なるPKC−α部位(複数を含む)の位置を決定するために、組み替え型精製のI−1を精製して、[γ−32P]ATPの存在下、インビトロでPKC−αによりリン酸化した。32P標識化I−1をSDS−PAGEで精製して、トリプシンで消化した。逆相HPLCでトリプシンペプチドを精製すると、Vydac カラムから62%の放射活性を含有する2つのピーク、50及び51が溶出した。両方の分画をMALDI−TOF質量分析に付した。分画51から質量対応分析により、3つの可能性のあるリン酸化ペプチドが得られた。検出された質量(予測質量+リン酸基)は、1226.44、1494.45及び1572.68Daであり、これらは次のI−1配列のそれぞれと対応していた:62STLAMSPRQR71(配列番号31)、72KKMTRITPTMK82(配列番号23)、及び135KTAECIPKTHER146(配列番号32)(データは示していない)。同時に、ピーク50の分析で質量1366.46Daのペプチドを検出し、これは配列73KMTRITPTMK82(配列番号33)(ピーク51で見いだした同じ配列−(マイナス)最初のリジン)(データは示していない)。
リン酸基のアミノ酸の位置を同定する目的で、ピーク50より多くの放射活性を含有しているので、画分51にエドマン分解を行った。この分画にラジオシークエンスを15サイクル行うと、主要な放射活性シグナルが4番目のアミノ酸と共に溶出されることが示された(バックグラウンドより約370cpm上)(図5C)。MALDI質量対応に対するこの結果の更なる読み込みでは、たった1つのペプチド72KKMTRITPTMK82(配列番号23)が4位にリン酸化可能なアミノ酸を有していることを示した(図5B及び5C;リン酸アミノが網掛けで強調されている)。3番目のアミノ酸と共に少量のアイソトープ(120cpm)が溶出したが、これは恐らく、I−1(73KMTRITPTMK82(配列番号33))の72と73リジンの間での選択的なトリプシン切断によるものであろう。5位で検出されたアイソトープの量は、この技術の一般的な人工的産物(通常約50%)であり、前回の部位の残りに起因していた。4サイクル後には、ほぼ同じパーセントだけサイクル毎にcpmが減少した。配列73KMTRITPTMK82(配列番号33)に対応するペプチドは、その3番目のアミノ酸、Thr75でリン酸化されることが分かった(図5D)。従って、スレオニン75(Thr75)を、ヒトI−1上の新規なリン酸化部位として同定した。
PKC−αに対するリン酸化部位としてThr75の同一性を更に確認し、Ser67及びThr75がヒトI−1の唯一のPKC−αによるリン酸化部位であるか否かを究明するために、Thr75[I−1(T75A)]の及びSer67+Thr75の[(I−1(S67A/T75A)]アラニン置換突然変異体を上記のようにして作製した。図6(A及びC)で示されているように、I−1(T75A)突然変異体は、I−1野生型と比較すると、PKC−α培養によって有意に少ない32Pを取り込んだ。ACI抗体は、インヒビター−1のように、これら全てのリン酸バンドを認識した(図6B)。45分でのタンパク質当たりの32P取り込みの濃度分析は、I−1(T75A)が野生型のレベル(100%)の33.8±12.7%を取り込んだことを明らかにした(図6D)。I−1野生型はPKC−αで45分間リン酸化すると化学量論的に0.88モルPi/モルタンパク質となり、これに対してI−1(S67A)及びI−1(T75A)へのPiの取り込みは、それぞれ0.35及び0.30モルPi/モルタンパク質に減少した。図6A、6C、及び6Dは、in vitro経時変化反応におけるI−1野生型及び突然変異体への32Pの取り込みを、濃度単位として表して、示している。
結果は、Thr75が確かに、ヒトI−1上のPKC−α部位であることを示唆している。Thr75のAlaへの突然変異は、I−1(S67A)突然変異体と比較すると、32P取り込みの大幅な減少と関連しているが、この相違は統計的に有意ではない(図6D)。従って、PKC−αは、in vitroでそれがSer67をリン酸化するのと同程度にThr75でヒトI−1をリン酸化するものと考えられる。更に、Ser67及びThr75の両方のAlaへの突然変異は、I−1への32P取り込みをなくす(図6A、6C、及び6D)。これらのデータは、本明細書に記載されている条件下で、これらが精製したヒトI−1プロテイン上の2つの主要なPKC−αのリン酸化部位であることを示唆している。
二次元電気泳動によるI−1のPKC−αリン酸化の分析
オートラジオグラフィーの結果を更に確証するために、2−Dゲル電気泳動分析を用いてPKC−αリン酸化に起因するI−1における可能な移動度変化を検出した。2D−ゲル電気泳動はその等電点(pI)及び分子量に基づいてタンパク質を分離する。リン酸化はタンパク質のpI値がより酸性になるようにするが、その分子量に対しては殆ど影響を及ぼさない。非リン酸化状態のI−1ゲル画像の分析は、タンパク質が5.1のpI及び30kDまでの分子量の単一スポットとして2−Dゲル中に移動することを示めした(図7A)。PKC−αのリン酸化サンプルでは、それぞれ非リン酸化、1回のリン酸化、2回のリン酸化に対応する、pIが(右から左へ);5.1、4.9及び4.7の3つのスポットが見られた(図7B)。2Dゲル電気泳動に付したリン酸化状態のI−1の高濃度(35ug)は、更なるリン酸化によるシフトの何れも示さなかった。PKC−α、ATPの濃度の増加又は培養時間の持続によるインヒビター−1のリン酸化程度を増強する試みは、更なるリンタンパク質のスポットを何ら明らかにしなかった。他のタンパク質スポットはサンプル中に検出されなかった。
上の検討は、Thr75がPKC−αに対する新規なリン酸化部位であることを示したので、精製したヒトI−1野生型、I−1(S67A)、I−1(T75A)及びI−1(S67A/T75A)プロテインをPKC−αと培養して、同時に2−Dゲル電気泳動に付した。Ser67又はThr75の何れかをAlaに突然変異させる場合、ゲル中にpI値が5.1と4.9の2つのスポットだけが検出された(図8B及び8C)。これらのデータは、2つのPKC−α部位の1つをブロックすると、タンパク質中へのリン酸の取り込みを阻害して、リン酸化状態のI−1野生型で観察される3−スポットと異なって、2−スポットパターンをもたらすことを立証した(図8A)。更に、Ser67及びThr75の同時突然変異は完全にI−1の左への移動シフトの何れもをもなくし(図8D)、更に1)Thr75がヒトI−1のPKC−α部位であり;そして2)Ser67及びThr75は主なPKC−α部位であることを立証した。
I−1の機能に及ぼすPKC−αリン酸化の影響
過去の研究は、I−1インヒビターが、PKAによるリン酸化の上でのみPPIを阻害すると報告している(6〜8)。PKC−αがI−1を独立して2つの部位、Ser67及びThr75で同程度にリン酸化するという本知見に基づいて、I−1の機能に及ぼすPKC−αリン酸化の影響を実験した。この検討において、未処理のI−1野生型又はPKC−α、PKA又はPKC−α+PKAでリン酸化したI−1野生型をプロテインホスファターゼアッセイで用いた(図9A)。脱リン酸型I−1及びPKC−αリン酸化I−1の何れも、試験した濃度(0〜15nM)の何れにおいてもPPI活性を阻害しなかった。しかしながら、PKAリン酸化I−1は、過去の報告(7〜9)と一致して、PPIをIC50値3.2±0.08nMで阻害した。
PKC−αのリン酸化がPKAのリン酸化I−1の阻害機能に影響を及ぼすか否かを検討するために、I−1野生型を最初に上記のように、PKC−α次いでPKAでリン酸化した。図9Aに示すように、PKC−αによる前リン酸化はI−1のPKAによる阻害機能(IC50値4.9±0.74nM)に影響を及ぼさなかった。更に、次の突然変異体:I−1(S67A)、I−1(T75A)又はI−1(S67A/T75A)の何れもPKC−αによるリン酸化によってPPI機能に対して阻害効果を有していなかった(図9B)。
これらの結果を更に裏付けるために、I−1のリン酸化(9、12)に似せた、アスパラギン酸置換の突然変異体を上記のようにして、Thr75[I−1(T75D)]及びSer67+Thr75[I−1(S67D/T75D)]で作製した。これらの突然変異体の何れもPPI活性に対して阻害効果を有していなかった。従って、PKC−αはI−1を2つの異なった部位でリン酸化できるが、これらのリン酸化はPPI活性を阻害しない。しかしながら、PKAリン酸化によって、これらI−1種の全てはPPI活性を充分に阻害することができた(図9B)。
マウス心臓組織由来インヒビター−1のリン酸化状況の分析
インヒビター−1はインビボで、2つの部位、Thr35及びSer67だけでリン酸化されると過去に報告された。Thr75もインビボでリン酸化されるかについて検討する目的で、I−1に豊富な画分をマウスの心筋(1.5g)から、上記のようにして単離した。最終ペレット(最初のタンパク質の0.25%まで)を2Dゲル電気泳動に付した。電気泳動の第2次泳動後に、タンパク質をニトロセルロース膜上にエレクトロブロットして、I−1に対する抗体ACI(1:1000)と培養した。図10に示すように、pI値が5.1、4.9、4.7及び4.5(右から左に)の4つのスポットを確認した。膜の右部分にある縞はタンパク質の不完全な電気泳動によるものであって、免疫ブロッティングの増加した感受性に起因して観察された。
ProImageソフトウェアを用いるこの画像の分析は、pIが5.1のスポットが脱リン酸化組み替え型I−1に対応していることを示した。これらの結果は、I−1が塩基性条件下のインビボで3回翻訳後修飾されることを明らかにした。Thr35及びSer67がインビボでリン酸化されることが知られていて、I−1の等電点シフトが組み替えタンパク質を用いて観察されたものと同等であるとすると、この4つのスポットは脱リン酸化I−1及び1つ、2つ及び3つの部位(Thr35、Ser67及びThr75)でリン酸化されたI−1を表すと考えられる。
I−1の突然突然変異及び心臓収縮性
心臓収縮性に対するI−1の突然突然変異の効果を試験するために、成熟ラットの心筋細胞を、野生型I−1、又はI−1 T75Dの何れかを発現する組み替えアデノウィルスに、CMVプロモーターの制御下で感染させた。空のベクターを対照として用いた。Grass S5 刺激(0.5Hz、四角波)で刺激した後に、筋細胞収縮と筋細胞延長の比を測定した。I−1 T75Dの発現が、筋細胞収縮(+dL/dtmaxが29%まで減少した)と筋細胞弛緩(−dL/dtmaxが33%まで減少した)の比を有意に減少させた(図11)。更に、突然変異タンパク質を発現する筋細胞によって生じる総収縮力が35%又はそれ以上減少した。このデータは、T75におけるリン酸化が心臓における収縮機能を抑制することを示している。
心臓収縮性に及ぼすS67D突然変異の影響を試験するために、成熟ラットの心筋細胞を、野生型I−1、又はI−1 S67Dの何れかを発現する組み替えアデノウィルスに、CMVプロモーターの制御下で感染させた。空ベクターを対照として用いた。Grass S5 刺激(0.5Hz、四角波)で刺激した後に、筋細胞収縮と筋細胞延長の比を測定した。I−1 S67Dの発現が、筋細胞収縮(+dL/dtmaxが24%まで減少した)と筋細胞弛緩(−dL/dtmaxが28%まで減少した)の比を有意に減少させた(図12)。更に、この突然変異タンパク質を発現する筋細胞によって生じる総収縮力が35%又はそれ以上減少した(38%、図12)。このデータはS67におけるリン酸化が心臓における収縮機能にマイナスの影響を与えることを示している。
次に、成熟ラットの心筋細胞をI−1野生型アデノウィルス(Ad.I−1 WT)、又はThr75で構成的にリン酸化したI−1(Ad.I−1(T75D))の何れかに感染させた。GFP、Ad.GFPのみを発現するアデノウィルスを対照として用いた。緑色蛍光で判定すると、24時間後に感染効率がほぼ100%に達した(図13A)。Ad.I−1 WT及びAd.I−1(T75D)は、期待されたI−1の過剰発現を示したが、Ad.GFPで感染した細胞中には内因性のI−1は検出されなかった(図13B)。
Thr75でのI−1の構成的なリン酸化は、I−1感染の野生型又はGFPに感染の細胞の何れかと比較すると、筋細胞の収縮(dL/dtmax;31%)と弛緩(dL/dtmax;36%)の最大比、更に収縮率(33%)の顕著な減弱を引き起こした(図13C)。90%弛緩するまでの時間は、Ad.I−1(T75D)の感染筋細胞において有意に増加(22%まで)した。これらの知見は、Thr75におけるI−1のリン酸化が筋細胞の収縮性を有意に低下させることを示している。
次に、正常マウスの筋細胞を、Ad.GFP、Ad.I−1、Ad.I−1(S67D)、Ad.I−1(T75D)及びAd.I−1(S67D/T75D)に感染させた。24時間後に、アデノウィルスによる形質転換の効率を緑色蛍光及びウェスタンブロット免疫検出で判定した。図14に示すように、I−1の発現レベルは全群において同様であったが、過去の観察(Rodriguez et al. J.Biol.Chem.(2006)、El-Armouche et al. Cardiovasc. Res.(2001))と同じように、内因性のI−1はAd.GFPに感染した細胞では検出されなかった。細菌の知見(Rodriguez et al. J.Biol.Chem.(2006))と一致して、培養筋細胞におけるAd.I−1(T75D)の発現は、Ad.I−1 WTを発現する筋細胞と比較すると、収縮と弛緩(それぞれ、29%及び35.5%)の比、及び収縮率(29%)をも有意に減少した(図14B)。12(Ad,GFP)、6(Ad.I−1 WT)5(Ad.I−1(S67D))、8(Ad.I−1(T75D))、及び5(Ad.I−1(S67D/T75D)):の群当たりの総心臓数を用いて、15〜20の筋細胞/心臓を分析した。
Ad.I−1(S67D)の発現は、筋細胞の収縮(22.1%)及び弛緩(27%)の比、更に収縮率(25.3)においても、同様な減少を引き起こした(図14B)。Ad.I−1(T75D)を発現する筋細胞の機能的な性能はAd.I−1(S67D)を発現するものよりもより低下している傾向にあるが、その値に有意差があるとは言えない。興味深いことに、S67D及びT75Dにおける構成的な二重リン酸化I−1(Ad.I−1(S67D/T75D))の発現は、単一突然変異体のそれぞれによって示されるものと同様の結果をもたらした。Ad.I−1(S67D/T75D)は、収縮及び弛緩の最大速度を、それぞれ30%及び34.5%まで減少した。収縮率は、Ad.I−1 WTと比較すると、26.1%まで減少した(図2B)。これらの結果は、Ser67又はThr75の何れかのリン酸化が筋細胞の収縮性に対して同様な減少をもたらし、両方の部位が同時にリン酸化される場合に、収縮パラメータの更なる低下をもたらさないことを示している。
cAMP依存性キナーゼ経路の刺激が構成的にリン酸化状態のI−1突然変異体を発現する筋細胞の低下した機能を逆転できるか否かを評価するために、アデノウィルスで感染した心筋細胞を10nM〜1μMの濃度範囲のホルスコリンで処理した。驚くべきことに、高濃度のホルスコリンが、構成的なリン酸化部位(Ser67及び/又はThr75)を発現する筋細胞中だけに不整脈を誘発して、I−1WT又はGFPには誘発しなかった。従って、0.1μMを、不整脈を誘発せずに収縮性の刺激をもたらす最高濃度と定めた。Ad,GFPを発現する筋細胞のホルスコリン処理は、基礎レベルと比較して、収縮(38%)及び弛緩(51%)の速度、更に収縮率(8.5%)についても劇的な増加をもたらした(図15)。心臓の総数は以下の通りであった:10(Ad,GFP)、5(Ad.I−1 WT)、5(Ad.I−1(S67D))、6(Ad.I−1(T75D))、及び6(Ad.I−1(S67D/T75D))、15〜20の筋細胞/心臓で。
Ad.I−1 WTを発現する細胞中の能力の増加は対照細胞と同様であった(収縮及び弛緩の速度、及び収縮率がそれぞれ、36.5%、49%及び15.5%)。重要なことに、Ad.I−1(S67D)、Ad.I−1(T75D)又はAd.I−1(S67D/T75D)に感染した筋細胞の心臓機能も薬物処理によっても改善されるが、心臓パラメーターはAd.I−1 WT又はAd.GFPの何れかで観察された最大効果までは到達しなかった(図15)特筆すべきは、構成的にリン酸化状態のI−1感染の筋細胞に対するホルスコリンによる収縮の速度における増加率が、Ad.GFP及びAd.I−1 WTの感染物に見い出された増加率と近似していることで、PKA信号伝達経路で変化がないことを示している。従って、リン酸化状態のI−1突然変異体を発現する筋細胞の心臓収縮性は、ホルスコリン処理によりI−1WT及びGFP感染細胞と同様に増大して改善できるが、総括的な機能は対照細胞と比較すると低下したままである。
アデノウィルス感染心筋細胞における筋小胞体Ca 2+ の取り込み
Thr75におけるI−1のリン酸化に関連している低下した収縮性が、筋小胞体のカルシウム移送機能における変化に対応しているか否かを究明するために、インビボでの弛緩と収縮の間に存在するものと類似している、広範囲の[Ca2+]においてCa2+移送の初期速度を算定した。反応条件は以下の通りである:40mMのイミダゾール(pH=7.0)、95mMのKCl、5mMのNaN、5mMのMgCl、0.5mMのEGTA、及び5mMのK中、37℃で5mMのATPを用いる。Ca2+に対する移送システムの見掛けの親和性は、Ad.I−1 WT(EC50値=0.33±0.01μM;n=3)又はAd.GFP(0.28±0.006μM;n=3)に比較して、Ad.I−1(T75D)に感染した筋細胞において有意に低下した(EC50値=0.67±0.01μM;n=3;***p<0.001)(図16A)。しかしながら、Ca2+取り込みのVmaxはこの3群全ての間で同様であった。更に、これらの群において、筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA2a)及びホスホランバン(PLN)タンパク質レベルでは3群に違いがなかった(図16B)。これらのデータは、PKC−αによるI−1のThr75におけるリン酸化がSERCA2aのCa2+親和性の減少によって心臓収縮性の低下を誘発するであろうことを示している。
SRCa2+取り込みの基礎SRを、GFP(対照として)、及びI−1種:I−1WT、I−1(S67D)、I−1(T75D)又はI−1(S67D/T75D)を発現するアデノウィルスで感染した筋細胞由来のホモジネート中、SRへのCa取り込みを制限する条件下で算定した。最近の研究[10]と一致して、GFP又は野生型I−1を発現するアデノウィルスでの感染は、同様なSERCA EC50値(それぞれ、0.294±0.001μM及び0.336±0.013μM)を示した(図17A及び17C)。しかしながら、カルシウムについての見掛けの親和性は、I−1(S67D)、I−1(T75D)及びI−1(S67D/T75D)突然変異体を発現する筋細胞において有意に低下した(それぞれ、0.457±0.012μM、0.664±0.014μM及び0.611±0.005μM)(図17A及び17C)。図17に示したデータはそれぞれの群に対して計測したVmaxに標準化して、OriginLab 5.1プログラムを用いてS字状曲線に適応させてある。
従って、ヒトI−1アイソフォーム上のSer67及び/又はThr75のリン酸化は、心筋細胞におけるその後のPKA刺激の影響を和らげることが示された。一方又は両方の部位のリン酸化は、PKA活性化に続くPP1活性を充分に阻害するI−1の能力を同時に減弱し、全体的に減弱したSERCA 2aの移送機能及び心臓収縮性をもたらす。
予想通り、ホルスコリンによるPKA刺激はGFPを発現する筋細胞におけるCa2+についてのSR CA2+取り込みのEC50の有意な減少(EC50=0.17±0.029μM)と関連していて、この減少は野生型I−1を発現する心筋細胞で観測されたもの(EC50=0.147±0.005μM)と類似していた(図17B及び17C)。しかしながら、構成的にリン酸化したI−1突然変異体を発現する心筋細胞のホルスコリン処理は、それぞれの基底値からEC50値を改善することができ、カルシウムの取り込み速度はI−1WT及びGFP感染細胞と比べて低下したままであった。ホルスコリン処理によるI−1(S67D)、I−1(T75D)及びI−1(S67D/T75D)を発現する心筋細胞のEC50値はそれぞれ:0.234±0.005μM、0.342±0.016μM、及び0.334±0.053μMであった(図17A及び17C)。
従って、Ser67及び/又はThr75におけるI−1の構成的なリン酸化の結果は、低下したSRカルシウムの取り込み速度及び心筋細胞の機能と関連していた。低下したSRカルシウムの取り込み速度は基底及びホルスコリン刺激条件の両方における有意に高いSERCA EC50値を反映していた。ホルスコリンによるPKAの活性化はリン酸化Ser67及び/又はThr75のI−1を発現する筋細胞におけるCA2+−ATPアーゼの機能をI−1WT又はGFPを発現する筋細胞と同じ程度には改善しないが、EC50値の減少率は全ての群で同様に現れ、PKA信号伝達経路が変化しなかったことを示した。
カルシウムのSRへの取り込みが、心筋細胞の収縮性を調節する節点を示すので、リン酸化Ser67及び/又はThr75I−1で感染した心筋細胞の力学的性能はSRのカルシウム取り込み量を反映していた。Ser67及び/又はThr75の何れかにおけるI−1のリン酸化は、SERCA移送機能の有意な低下を誘発し、これらの値はホルスコリン処理の後でさえも低下したままであった。実際、感染した筋細胞のこれらの群におけるPKAの刺激は、SR CA2+の取り込み値をI−1WT群の基底レベルまで改善しただけである。これらの知見は、PKAの効果が、心筋細胞中でSer67又はThr75の何れかにおける構成的にリン酸化状態のI−1の突然変異体によって減弱することを示している。全てのサンプルで、Ca2+取り込みの最大速度(Vmax)について類似した値が測定された。
感染した心筋細胞におけるのプロテインホスファターゼ活性
心筋細胞の収縮性及びCa2+についてのSRCa2+移送システムの見掛けの親和性の低下が、Ad.I−1WT、Ad.I−1(T75D)、及びAd.GFPで感染した成熟ラットの心筋細胞におけるプロテインホスファターゼ活性レベルの検討を促した。Ad.GFP、Ad.I−1WT、又はAd.I−1(T75D)で感染した心筋細胞の溶解物(1μg)中で総ホスファターゼ活性をアッセイした。反応混合物は、50mMのTris−HCl(pH7.0)、0.1mMのNaEDTA、5mMのDTT、0.01%のBrij35、及び放射性標識化Myelin Basic Protein(50μM)を含有していた。I−1野生型を発現する細胞又は対照の細胞と比較すると、I−1(T75D)を発現する筋細胞中でホスファターゼ活性が16%まで増加した(図18A)。細胞性プロテインホスファターゼの2つの主要な種、PP1及びPP2Aの相対的寄与率を、PP2Aをより強く阻害するオカダ酸(Neumann et al. J. Mol Cell. Cardiol(1997))を10nMの濃度で存在させて、測定した。Ad.I−1(T75D)で感染した心筋細胞は、タイプ1のホスファターゼ活性を、Ad.I−1WT及びAd.GFPと比較すると、27%増加したが、タイプ2Aのホスファターゼ活性では変化がなかった(図18A)。図13Bで示したように、PPIのタンパク質レベルは全ての場合で同じであった。
タイプ1のホスファターゼ活性におけるThr75でのI−1のリン酸化の効果を、組み替えI−1野生型、又は前もってPKC−αでリン酸化した構成的にリン酸化状態のI−1、I−1(T75D)又はI−1(S67D)の何れかの存在下で、精製したPP1触媒サブユニット(PP1c)の活性を測定することによって確認した。両方の突然変異I−1プロテインが、I−1野生型と比較すると、それぞれ23%及び25%までPP1cの活性を有意に増加した(図18B)。これらをもとにすると、これらのデータは、PKC−αによるThr75におけるI−1のリン酸化が、単離した筋細胞及びインビボ系の両方においてPPI活性を増加することを明らかにした。
ホルスコリンによるPKA刺激の後は、総プロテインホスファターゼの阻害率が全ての群で類似していると思われるが(図19)、PP2Aインヒビターとして10nMのオカダ酸を用いて評価(Rodriguez et al. J. Biol. Chem.(2006)、Neumann et al. J. Mol Cell Cardio.(1997))する、Ad.I−1WTを発現する筋細胞による選択的PP1阻害性は、Ad.GFPで感染した細胞と比較すると、ホルスコリン処理によって有意に高くなった。タイプ1と2Aのホスファターゼ活性を差別化するために、オカダ酸(10nM)を細胞溶解物に加えた。この結果は、内因性のI−1のレベルが、PP1活性を完全に阻害するために充分に高くはなかったことを示している。その一方、3つの構成的にリン酸化状態のI−1突然変異体、I−1(S67D)、I−1(T75D)及びI−1(S67D/T75D)は、対照又は野生型で感染した細胞と比較すると、ホルスコリンによるPP1の有意に低い阻害性を示した。従って、Ser67又はThr75の何れかの構成的なリン酸化は、心筋細胞においてPKA刺激に続く、PP1の阻害する範囲を減少させた。
これら2つの部位はこの効果を誘発することにおいては同等であると思われ、両方の部位をリン酸化する時に更なる効果は観察されなかった。実際、これらの両方又は一方の部位のリン酸化は、PKA刺激に続くPPI活性を2倍まで高くして保持することをもたらした。これらのデータは、心不全において、減弱したβ−アドレナリンの信号伝達及び増加したPKCの信号伝達が、より高いPP1活性に好都合な、二重の損傷をもたらすであろうことを示している。I−1の二重の突然変異体(S67D/T75D)を発現する筋細胞におけるPP1阻害率は、S67D又はT75DのI−1突然変異体の何れかによって示されるものと類似していて、2つの部位の同時リン酸化は、PKA刺激後のPP1活性の阻害において更なる効果を呈しないことを示唆している。
PKAの基質になりうるその能力についてのSer67及びThr75でのI−1のリン酸化の効果
Ser67及びThr75の両方でのI−1のリン酸化が、Thr35におけるI−1のPKAによるリン酸化の能力を減少するか否かを検討するために、組み替えI−1野生型及びI−1(S67D/T75D)プロテインを[γ−32P]ATPの存在下でPKAとインビトロで培養した。図20に示したように、二重突然変異体は野生型に比べて20%低い放射性活性を取り込んで、突然変異体中と同程度にThr35はリン酸化されないことを示唆した。従って、Ser67及びThr75が前もってリン酸化されている場合、PKAによってリン酸化されるI−1の能力が変化したと考えられる。
纏めると、本明細書に記載されているデータは、心臓において、ヒトI−1アイソフォームにおけるSer67及び/又はThr75のリン酸化が、β−アドレナリンの信号伝達をある程度低下させて、これによって、PP1活性の異常な増加を維持することによる収縮性促進作用を減少するように働くであろうことを示唆している。
切断型I−1に最適化されたコドン
野生型I−1遺伝子は、高い出現頻度を有するレアコドンとして使用できること及び動物において発現を阻害できる、幾つかの逆シス作用性モチーフを含有することが見出された。従って、以下の配列番号13でコードされる切断型突然変異ヒトI−1プロテイン(T35D)を合成するために、(http://bip.weizmann.ac.il/index.html上で公開されて、例えば「Genetic Database」、M.J.Bishop ed.,Academic Press,(1999)に記載されている、以下のヒトコドン利用表に基づいて)標準的なコドン最適化を利用した。I−1 cDNAの切断はタンパク質の最初の65のアミノ酸をコードするようにする。
コドンの利用は人類遺伝子のコドン偏重に適合させて、高いコドン適応指標(codon adaptation index;CAI)値(0.99)をもたらした。コドンに最適化された(切断された)タンパク質は、より効率的なAAVのパッケージングのために、増加したGC含量(自然のヒト配列に比べて)を有している(データは示していない)。ある特定のシス作用性配列モチーフは除いた(例えば、スプライス部位、ポリAシグナル)。翻訳開始を増加するために、コザック配列を導入した。効率的な終止を保証するために、2つのSTOPコドンを加えた。
Figure 2013027398
表は、それぞれのコドンに対して、ヒトのコード領域におけるそれぞれのコドンの使用頻度(千分の一)(第一列)及び同義コドン間のそれぞれのコドンの相対頻度(第二列)を表す。
Figure 2013027398
配列番号13によってコードされるアミノ酸配列は、配列番号14として次のように表される:
Figure 2013027398
配列番号13でコードされるアミノ酸配列は、配列番号14として表される。
本明細書に記載のI−1突然変異体のコドンの最適化も同様に考えられる。
配列情報
本発明を説明し、定義づけして請求するために、「配列番号」の参照は、その配列と少なくとも90%の同一性を有するもので、特定の突然変異の何れかを維持する全ての配列を含むものと理解されたい。より具体的な実施態様では、配列と少なくとも95%の同一性を有するもので、特定の突然変異の何れかを維持する配列を含むと理解されたい。さらに具体的な実施態様では、それは99%及び100%の間の同一性を有するもので、特定の突然変異の何れかを維持する配列を含む。
ホモサピエンスプロテインホスファターゼI、インヒビターサブユニット1A、(PP1I1A)mRNAの野性型配列を次に示す(配列番号7)。cDNAに基づくナンバリングの手順に従った361位及び400位の間に突然変異に対するヌクレオチドの変化が生じる。コード配列の最初のAは、1として(172というよりも)示される。
Figure 2013027398
配列番号7で示されるアミノ酸配列は、次に配列番号8として表す。
Figure 2013027398
35位、67位及び75位のアミノ酸は太字及び下線で強調されている。
ヒト野性型PP−1は、既知又は未知の多形体として存在すると理解されている。例えば、アスパラギン又はリジンの残基のいずれかを包含していてよい8位のアミノ酸に基づく2つの多形体がある。前者は当該技術分野ではQ異性体として知られ、一方後者はK異性体として知られる。先の「定義」の部分に記載したように、当該技術分野において通常の技術を有する者には、本発明を実施及び定義づけするために、どちらの異性体が適切であるか、及びこれらの異性体が本質的に互換可能であるということは明らかである。同じように他にもこれらのような多形体が存在し得ることも明らかであり、本発明の範囲内にあるということも等しく意味する。
本明細書に記載の配列の説明のために、前記の配列番号7の172位のヌクレオチドは、1位に等しいと特記する。関連のコード配列は688位で終わる。前記の172位〜688位に定義されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの67位のアミノ酸に相当するコドンの位置は、本発明では、371、372、373、(TCT)、であり、75位のアミノ酸に相当するコドンの位置は、同様に394、395、396(ACA)である。
突然変異体「I−1 S67A」は、GCAにより置き換えられたコドンTCTを有するものであり、配列番号1で示される。突然変異体「I−1 S67D」は、GACにより置き換えられたコドンTCTを有するものであり、配列番号2で示される。突然変異体「I−1 T75D」は、GACにより置き換えられたコドンACAを有するものであり、配列番号3で示される。突然変異体「I−1 T75A」は、GCAに置き換えられたコドンACAを有するものであり、配列番号4で示される。
配列番号3によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号5で示される。配列番号4によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号6で示される。配列番号7によりコードされるアミノ酸は、配列番号8で示される。
突然変異体「I−1 S67C」は、コドンTGT又はTGCにより置き換えられたコドンTCTを有するものであり、配列番号9で示される。突然変異体「I−1 T75C」は、コドンTGT又はTGCにより置き換えられるコドンACAを有するものであり、配列番号10で示される。配列番号9によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号11で示される。配列番号10にコードされるアミノ酸配列は、配列番号12で示される。
単一の核酸分子が両方の位置での突然変異を包含することも考えられる。突然変異体「I−1 S67A/T75A」はGCAにより置き換えられたコドン67(TCT)及びGCAにより置き換えられたコドン75(ACA)を有するものであり、配列番号15で示される。配列番号15によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号16で示される。突然変異体「I−1 S67D/T75D」はGACにより置き換えられたコドン67(TCT)及びGACにより置き換えられたコドン75(ACA)を有するものであり、配列番号17で示される。配列番号17によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号18で示される。
突然変異体「I−1 T35D」はコドンGACにより置き換えられたコドンACCを有するものであり、配列番号19で示される。
配列番号19によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号20で示される。突然変異体「I−1 S67A/T35D」はGCAにより置き換えられたコドンTCT(371〜373)及びGACにより置き換えられたコドンACC(277〜279)を有するものであり、配列番号22で示される。配列番号22によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号21で示される。
配列番号1:
Figure 2013027398
配列番号2:
Figure 2013027398
配列番号3:
Figure 2013027398
配列番号4:
Figure 2013027398
配列番号5:
Figure 2013027398
配列番号6:
Figure 2013027398
配列番号9:
Figure 2013027398
配列番号10:
Figure 2013027398
配列番号11:
Figure 2013027398
配列番号12:
Figure 2013027398
配列番号15:
Figure 2013027398
配列番号16:
Figure 2013027398
配列番号17:
Figure 2013027398
配列番号18:
Figure 2013027398
配列番号19:
Figure 2013027398
配列番号20:
Figure 2013027398
配列番号21:
Figure 2013027398
配列番号22:
Figure 2013027398

Claims (1)

  1. 配列番号5で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子であって、当該核酸分子が75位の構成的に非リン酸化状態のアミノ酸をコードするものである、構成的に非リン酸化状態のホスファターゼインヒビター−1プロテインをコードする単離された核酸分子又は構成的に非リン酸化状態のその断片。
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