以下、この発明の実施形態に係る電源システム及び燃料電池車両について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る電源システム10は、逆流防止用のダイオード111が接続された第1電源装置としての燃料電池スタック(FCスタック、FC、又は燃料電池ともいう。)11(発電装置)と、第2電源装置としてのバッテリ12(蓄電装置)と、DC/DCコンバータ13と、を含む電源装置100と、負荷103とを備えて構成されている。負荷103は、モータ負荷101とエアポンプ負荷102とを備えて構成される。モータ負荷101は、駆動モータインバータ15と駆動モータ22とを備えて構成され、エアポンプ負荷102は、エアポンプインバータ14とエアポンプ21とを備えて構成されている。
この実施形態に係る電源システム10は、負荷103に車両駆動用の駆動モータ22を含むように構成しているので、燃料電池車両として機能する。
電源装置100は、燃料電池車両としての電源システム10に具備され、この燃料電池車両としての電源システム10は、より詳細には、図2に示すように、さらに、制御装置25と、発電電流Ifcを検出する出力電流センサ27と、駆動モータ22のU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwを検出する相電流センサ28と、駆動モータ22の角度センサ29と、バッテリ12のSOC値を検出して出力するSOCセンサ106と、バッテリ電流Ibとバッテリ電圧Vbを出力する電流・電圧センサ108と、FCスタック11を構成するセルの各セル電圧Vcellと、合成電圧である燃料電池電圧Vfcを出力する電圧センサ110(セル電圧センサ及び合成電圧センサ)とを備えて構成されている。
FCスタック11は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒及びガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒及びガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
FCスタック11のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である圧縮空気がエアポンプ21(反応ガス供給手段)から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略:反応ガス供給手段)から供給されている。
アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子がアノードから外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
エアポンプ21は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとしてFCスタック11のカソードに供給する。このエアポンプ21を駆動するモータ(図示略)の回転数は、制御装置25から出力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータ等からなるエアポンプインバータ14により制御されている。
電源システム10では、リチウムイオン電池等のバッテリ12に代わる蓄電装置として、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ等からなるキャパシタを備えてもよい。
DC/DCコンバータ13は、例えばチョッパ型のDC/DCコンバータであって、図2に示すように、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路31と、3相のリアクトル32と、平滑コンデンサ33とを備えて構成されている。
なお、DC/DCコンバータ13を簡略化して示す図1においては、3相のうち1相分のみのスイッチング素子とリアクトル32のみを図示している。
ブリッジ回路31は、3相の駆動モータインバータ15を構成する3相のブリッジ回路51と構成が同様であって、例えば各相毎に対となっているハイ側(ハイサイド)及びロー側(ローサイド)トランジスタAH、ALと、ハイ側及びロー側トランジスタBH、BLと、ハイ側及びロー側トランジスタCH、CLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタAH、BH、CH(上アームスイッチング素子)はコレクタが2次側正極端子P2に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタAL、BL、CL(下アームスイッチング素子)はエミッタが2次側負極端子N2に接続されてローサイドアームを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタAH、BH、CHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタAL、BL、CLのコレクタに接続され、各トランジスタAH、AL、BH、BL、CH、CLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDAH、DAL、DBH、DBL、DCH、DCLが接続されている。
このブリッジ回路31は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイサイドアームの各トランジスタAH、BH、CHがオン且つローサイドアームの各トランジスタAL、BL、CLがオフとなる状態と、ハイサイドアームの各トランジスタAH、BH、CHがオフ且つローサイドアームの各トランジスタAL、BL、CLがオンとなる状態とが、交互に切り替えられる。
平滑コンデンサ33は、2次側正極端子P2及び2次側負極端子N2間に接続されている。
3相のリアクトル32は、各リアクトル32の一端がブリッジ回路31の各相毎のコレクタ−エミッタ間、つまり各トランジスタAH、ALのコレクタ−エミッタ間及び各トランジスタBH、BLのコレクタ−エミッタ間及び各トランジスタCH、CLのコレクタ−エミッタ間のそれぞれに接続され、各リアクトル32の他端は互いに1次側正極端子P1に接続されている。
DC/DCコンバータ13は、図2に示すように、電位の異なる3つの各ラインL1、L2、L3(例えば、L1の電位>L2の電位>L3の電位)に対して、1次側が第2ラインL2と第3ラインL3とに接続され、2次側が第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されている。つまり、第1ラインL1は2次側正極端子P2に接続され、第2ラインL2は1次側正極端子P1に接続され、第3ラインL3は1次側負極端子N1及び2次側負極端子N2に接続されている。
この発明は、1相のみのスイッチング素子と1個のリアクトルからなる1相のDC/DCコンバータにより実施することもできる。そこで、以下の説明では、理解の便宜のために、基本的には、図1に示す1相のDC/DCコンバータ13であるものとして説明する。
すなわち、図1に示すように、DC/DCコンバータ13は、トランジスタLTとダイオードLDを含むローサイドアームLAと、このローサイドアームLAに直列に接続され、トランジスタHTとダイオードHDを含むハイサイドアームHAと、ローサイドアームLAとハイサイドアームHAとの直列接続点とFCスタック11とバッテリ12との直列接続点との間に接続されたリアクトル32とを備えて構成されるものとする。
このDC/DCコンバータ13は、昇圧モードによる負荷103の駆動モードとして、(1)バッテリ12のみによる駆動モード{EV(電動車両)モードともいう。}、(2)FCスタック11のみによる駆動モード{便宜的にFCモード又はFC駆動モードという。}、及び(3)バッテリ12及びFCスタック11による駆動モード{便宜的にHV(Hybrid)モード又はHV駆動モードという。}の各駆動モードに制御装置25により切り換えられる。
また、DC/DCコンバータ13は、(4)制御装置25によりオフ状態に切り換えられ(便宜的にOFFモード、又はOFF駆動モードという。)、このとき、負荷103は、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52(電圧は、Vfc+Vb)により駆動される。
さらに、DC/DCコンバータ13は、(5)負荷103を構成する駆動モータ22(エアポンプ21が電動機式である場合にはその回生電力も含む)の回生電力をバッテリ12に充電させる降圧モードで制御装置25により動作される(回生モードという。)。
EVモード(昇圧モード)では、DC/DCコンバータ13の1次側電圧はバッテリ12の出力電圧(バッテリ電圧)Vbとされ、昇圧された2次側電圧V2(V2=Vm)が、駆動モータインバータ15の入力側に印加される。
FCモード(昇圧モード)では、DC/DCコンバータ13の1次側電圧は、FCスタック11の出力電圧Vfcとされ、昇圧された2次側電圧V2が、駆動モータインバータ15の入力側に印加される。
HVモード(昇圧モード)では、DC/DCコンバータ13の1次側電圧は、バッテリ12の出力電圧Vb又はFCスタック11の出力電圧Vfcが適宜切り換えられ、昇圧された2次側電圧V2が駆動モータインバータ15の入力側に印加される。
OFFモード(直列電源モード)では、DC/DCコンバータ13は、スイッチングしないオフ状態とされ、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52の直列電圧(Vfc+Vbat)が駆動モータインバータ15の入力側に2次電圧V2(V2=Vfc+Vb、正確には、ダイオード111の順方向電圧をVdとすると、V2=Vfc+Vb+Vd)として印加される。
回生モード(降圧モード)では、DC/DCコンバータ13は、駆動モータ22で発生した回生電圧が駆動モータインバータ15により直流の回生電圧とされ、この直流の回生電圧をバッテリ電圧Vbまで降圧してバッテリ12に印加する。
DC/DCコンバータ13の動作(昇圧動作、降圧動作、OFF動作)について詳しく説明する。
EVモード時には、FCスタック11が非発電状態(停止状態)において、図3Aに示すように、制御装置25により、まず、ハイサイドアームHAのトランジスタHTがオン(ON)且つローサイドアームLAのトランジスタLTがオフ(OFF)とされ、バッテリ12から入力される電流によってリアクトル32が直流励磁されて磁気エネルギが蓄積される一方、平滑コンデンサ33に蓄積されているエネルギ(電力)が負荷103に供給される。
次に、図3Bに示すように、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフ(OFF)とされ、リアクトル32に流れる電流が遮断されることを原因とする磁束の変化を妨げるようにしてリアクトル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生し、リアクトル32に蓄積された磁気エネルギによる誘導電圧がバッテリ12の出力電圧Vbに上積みされて1次側の入力電圧、すなわちバッテリ電圧Vbよりも高い昇圧電圧が2次側である負荷103及び平滑コンデンサ33に印加される。この切換動作に伴って発生する電圧変動は平滑コンデンサ33により平滑化され、平滑後の昇圧電圧が2次側から出力され、負荷103に印加され電力として供給される。
FCモード時には、バッテリ12から負荷103に対して電力が供給されることなく、図4Aに示すように、制御装置25により、まず、ハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフ且つローサイドアームLAのトランジスタLTがオンとされ、FCスタック11から入力される電流によってリアクトル32が直流励磁されて磁気エネルギが蓄積される一方、平滑コンデンサ33に蓄積されているエネルギ(電力)が負荷103に供給される。
次に、図4Bに示すように、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフとされ、リアクトル32に流れる電流が遮断されることを原因とする磁束の変化を妨げるようにしてリアクトル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生し、リアクトル32に蓄積された磁気エネルギによる誘導電圧がFCスタック11の電圧Vfcに上積みされて1次側の入力電圧、すなわちFC電圧Vfcよりも高い昇圧電圧が2次側である負荷103及び平滑コンデンサ33に印加される。この切換動作に伴って発生する電圧変動は平滑コンデンサ33により平滑化され、平滑後の昇圧電圧が2次側から出力され、負荷103に印加され電力として供給される。
HVモード時には、制御装置25により、図3A、図3BのEVモードと図4A、図4BのFCモードが適宜切り換えられて負荷103に電力が供給される。
EVモード時の回生モード時には、例えば駆動モータ22の回生時等における2次側から1次側への回生動作時には、図5Aに示すように、制御装置25により、まず、ハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフ且つローサイドアームLAのトランジスタLTがオンとされ、2次側から入力される電流によってリアクトル32が直流励磁されて磁気エネルギが蓄積されるとともに、バッテリ12が充電される。
次に、図5Bに示すように、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオン且つローサイドアームLAのトランジスタLTがオフとされ、リアクトル32に流れる電流が遮断されることを原因とする磁束の変化を妨げるようにしてリアクトル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。このリアクトル32に蓄積された磁気エネルギによる誘導電圧は、ハイサイドアームHAのダイオードHDを通じて、バッテリ12に充電される。なお、降圧電圧は、ハイサイドアームHAのトランジスタHTのデューティ比D{オン期間/(オン期間+オフ期間)}によって決定される(Vb=D×Vm、Vmは、モータ電圧であり、2次側電圧V2に等しい。)。ここでのPWM制御では、周波数(周期)が一定fpwm(1/fpwm=2π)としている。よって、例えば、バッテリ電圧Vbが一定と考えれば、2次側電圧V2は、DC/DCコンバータ13のデューティ比Dにより決定することができる。
FCモード(HVモード)時の回生モード時において、FCスタック11の発電が継続されている場合には、図6A、図6Bに示すように、駆動モータ22に係る負荷103からの回生電力とともにFCスタック11の余剰電力が平滑コンデンサ33の充放電を介してバッテリ12に充電されるように制御される。
OFFモードは、図7に示すように、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフとされるので、リアクトル32に電流が流れない。負荷103には、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52(直列電池回路)から負荷電流IL(IL=Ifc=Ib)として電力が供給される。
上述したように、DC/DCコンバータ13は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えばPWM信号の1周期2πにおけるハイサイドアームHAのトランジスタHTのオンの比率として定義されるスイッチングデューティに応じて、ハイサイドアームHAのトランジスタHTとローサイドアームLAのトランジスタLTとのオン/オフを切り換える。
なお、ハイサイドアームHAのトランジスタHTと、ローサイドアームLAのトランジスタLTとは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
FCスタック11は、正極側及び負極側に配置されたコンタクタ56とコンデンサ11bとを介して第2ラインL2と第3ラインL3とに接続され、バッテリ12は正極側及び負極側に配置されたコンタクタ54を介して第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されている。これにより、第1ラインL1と第3ラインL3との間でFCスタック11とバッテリ12とは直列に接続されて直列電源52(直列接続直流電源、高電圧直流電源、直列電池回路)を形成している。
第1ラインL1及び第3ラインL3から負荷(例えば、駆動モータ22等)に電力が出力されるようにして第1ラインL1と第3ラインL3とは駆動モータインバータ15に接続されている。
図1及び図2に示すように、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されている。
3相の駆動モータ22の駆動回路としての駆動モータインバータ15は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路51を備えて構成されている。
ブリッジ回路51は、DC/DCコンバータ13を構成する3相のブリッジ回路31と同様に結線され、各相毎に対をなすハイ側及びロー側U相トランジスタUH、ULと、ハイ側及びロー側V相トランジスタVH、VLと、ハイ側及びロー側W相トランジスタWH、WLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタUH、VH、WHはコレクタがDC/DCコンバータ13の2次側正極端子P2に接続されてハイサイドアームHAを構成し、各トランジスタUL、VL、WLはエミッタがDC/DCコンバータ13の2次側負極端子N2に接続されてローサイドアームLAを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームHAの各トランジスタUH、VH、WHのエミッタはローサイドアームLAの各トランジスタUL、VL、WLのコレクタに接続され、各トランジスタUH、UL、VH、VL、WH、WLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDUH、DUL、DVH、DVL、DWH、DWLが接続されている。
この駆動モータインバータ15は、制御装置25から出力されてブリッジ回路51の各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えば駆動モータ22の駆動時には、各相毎に対をなす各トランジスタのオン(導通)/オフ(遮断)状態を切り替えることによって、電源システム10から出力される直流電力を3相交流電力に変換し、3相のステータ巻線への通電を順次転流させることで、各相のステータ巻線に交流のU相電流Iu及びV相電流Iv及びW相電流Iwを通電する。一方、例えば駆動モータ22の回生時には、駆動モータ22から出力される3相交流電力を直流電力に変換してDC/DCコンバータ13に供給し、バッテリ12の充電及びDC/DCコンバータ13に接続された負荷102に対する給電等を行う。
なお、駆動モータ22は、ブラシレス永久磁石式同期モータとされており、駆動モータインバータ15から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪側から駆動モータ22側に駆動力が伝達されると、駆動モータ22は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギを電気エネルギとして回収する。
制御装置25は、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティを制御するデューティ制御をおこなうとともに、駆動モータインバータ15の電力変換動作を制御する。
制御装置25には、FCスタック11の出力電流Ifcを検出する出力電流センサ27と、駆動モータインバータ15と駆動モータ22との間において3相の各相電流Iu、Iv、Iwを検出する相電流センサ28と、駆動モータ22の回転子の回転角(つまり、所定の基準回転位置からの回転子の磁極の回転角度であって、駆動モータ22の回転軸の回転位置)を検出する角度センサ29との各センサから出力される検出信号等が入力されている。
制御装置25は、消費電力算出部61と、目標電力配分設定部62と、目標電流設定部63と、デューティ制御部64と、駆動モータ制御部65とを備えて構成されている。
消費電力算出部61は、電源システム10から電力が供給される負荷103(例えば、電源システム10の外部の負荷である駆動モータ22及び車両用補機等、及び電源システム10の内部の負荷であるエアポンプインバータ14等)の総消費電力(要求電力)を算出する。
目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、FCスタック11の状態(例えば、発電指令に応じたFCスタック11の状態変化の変化率等)と、バッテリ12の残容量SOC値と等に基づき、電源システム10の直流電源52を形成するFCスタック11とバッテリ12との電力配分、つまり消費電力算出部61により算出された総消費電力をFCスタック11から出力される電力とバッテリ12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分を設定する。
例えば駆動モータ22の駆動時における電力配分は、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティ(つまり、PWM信号の1周期2πにおけるハイサイドアームHAのトランジスタHTのオンの比率)に応じた値となり、スイッチングデューティDはFCスタック11の電圧(Vfc)とバッテリ12の電圧(Vb)とにより以下に示すように記述される。
D=Vfc/(Vfc+Vb)
これにより、以下に示すようにスイッチングデューティDによってFCスタック11の電圧(Vfc)とバッテリ12の電圧(Vb)との比が記述される。
Vb/Vfc=(1−D)/D
FCスタック11の電圧(Vfc)とバッテリ12の電圧(Vb)とは、例えば図8に示すように、それぞれFCスタック11の電流(出力電流Ifc)及び電力とバッテリ12の電流(Ib)及び電力と所定の対応関係(それぞれ、IV特性120、IV特性122という。)を有することから、スイッチングデューティDにより、FCスタック11の動作点(例えば、電圧又は電流又は電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧又は電流又は電力)との比が記述される。
この場合、FCスタック11のIV(電流電圧)特性120と、バッテリ12のIV(電流電圧)特性122とを、図8に示すように、同一の電流軸及び同一の電圧軸を有する座標上に重ねたときに、両電流電圧特性120、122が交差するようにFCスタック11のIV特性120とバッテリ12のIV特性122とを設定する。
そうすると、後に、図20A〜図20Cを参照して詳しく説明するが、図9に示すように、電圧比がFCスタック11のFC電圧Vfcとバッテリ12のバッテリ電圧Vbとの比が5:5近傍で最もバッテリ12とFCスタック11との合計損失Psumloss[kW]が少なくなり、システム電力効率Psumη[%]が高くなる。なお、図9において、横軸は、バッテリ電圧VbとFC電圧Vfcとの直列電圧を、仮に10[V]と分かり易く設定したときのバッテリ電圧Vbatを示している。FC電圧Vfcとバッテリ12のバッテリ電圧Vbとの電圧配分(電圧比)が5:5から、4:6あるいは6:4と離れていくに従い合計損失Psumlossが増加し、合計効率Psumηが低下する点に留意する必要がある。
また、目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の回生時においては、FCスタック11の状態(例えば、発電指令に応じたFCスタック11の状態変化の変化率等)と、バッテリ12のSOC値(残容量)と、駆動モータ22の回生電力と等に基づき、FCスタック11と駆動モータインバータ15との電力供給側の電力配分、及び、バッテリ12と負荷(例えば、車両用補機及びエアポンプインバータ14等)との電力受給側の電力配分を設定する。
目標電流設定部63は、駆動モータ22の駆動時においては、スイッチングデューティDにより、FCスタック11の動作点(例えば、電圧又は電流又は電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧又は電流又は電力)との比が記述されることから、FCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点とDC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDと負荷103の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、FCスタック11の出力電流Ifcに対する目標電流を取得する。
この所定マップは、例えば図10に示すように、FCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDの複数の値毎に対して設定されたFCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(D(1)、…、D(k)、…)と、負荷103の総消費電力の複数の値毎に対して設定されたFCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(P(1)、…、P(k)、…)とを備えている。
DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDの複数の値毎に対して設定された対応関係では、スイッチングデューティDに応じた比率でFCスタック11の動作点の増大に伴いバッテリ12の動作点が増大傾向に変化するように設定されている。
また、負荷103の総消費電力の複数の値毎に対して設定されたFCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係では、FCスタック11の動作点に応じた電力とバッテリ12の動作点に応じた電力との和が負荷103の総消費電力と等しくなるような動作点の組み合わせが設定されている。
目標電流設定部63は、FCスタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、消費電力算出部61により算出された負荷の総消費電力に応じた対応関係P(k)と目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じたDC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDに応じた対応関係D(k)との交点をFCスタック11及びバッテリ12の動作点とし、この動作点に応じたFCスタック11の電流(出力電流Ifc)を目標電流として出力する。
また、目標電流設定部63は、例えば駆動モータ22の回生時においては、目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じて、FCスタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流として零あるいは正の値を出力する。
デューティ制御部64は、FCスタック11とバッテリ12との実際の電力配分(実電力配分)が目標電力配分設定部62により設定された電力配分(目標電力配分)に一致するようにして、例えば出力電流センサ27から出力されるFCスタック11の出力電流Ifcの検出値が目標電流設定部63から出力されるFCスタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流に一致するようにして、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDを制御する。
デューティ制御部64は、例えば、電流偏差算出部71と、フィードバック処理部72と、PWM信号生成部73とを備えて構成されている。
電流偏差算出部71は、出力電流センサ27から出力されるFCスタック11の出力電流Ifcの検出値と、目標電流設定部63から出力されるFCスタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流との電流偏差を算出して出力する。
フィードバック処理部72は、例えばPID(比例積分微分)動作により、電流偏差算出部71から出力される電流偏差を制御増幅して電圧指令値を算出する。
PWM信号生成部73は、フィードバック処理部72から出力される電圧指令値に応じた出力電流IfcをFCスタック11から出力するために、DC/DCコンバータ13のハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力する。
駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)を行うものであり、運転者のアクセル操作及び駆動モータ22の回転数等に基づくトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧Vu、Vv、Vwを算出し、各相出力電圧Vu、Vv、Vwに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51へゲート信号であるPWM信号を入力すると共に、実際に駆動モータインバータ15から駆動モータ22に供給される各相電流Iu、Iv、Iwの検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるように制御をおこなう。
また、駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の回生時においては、角度センサ29から出力される駆動モータ22の回転子の回転角θmの出力波形に基づいて同期がとられたパルスに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させ、駆動モータ制御部65から出力される3相交流電力を直流電力に変換する。このとき、駆動モータ制御部65は、ブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号のデューティに応じた回生電圧のフィードバック制御をおこない、所定の電圧値を駆動モータインバータ15の1次側つまりDC/DCコンバータ13の2次側正極端子P2と2次側負極端子N2との間に出力する。
つまり、制御装置25は、例えば駆動モータ22の駆動時(力行時)においては、FCスタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流と一致するようにしてフィードバック制御をおこなうことによって、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDを制御することにより電源システム10の動作モードを、EVモード、FCモード、HVモード、又はOFFモードのうちの1つの選択しながら連続的に制御する。
例えばDC/DCコンバータ13の昇圧比が2〜3程度の値となる状態で、スイッチングデューティDが最大となる電源システム10の動作モードは、バッテリ12の出力のみが駆動モータインバータ15及びエアポンプインバータ14に供給されるEVモードとされる。
そして、EVモードからスイッチングデューティDが低下傾向に変化することに伴い、電源システム10の動作モードは、HVモードに推移する。
さらに、スイッチングデューティDが最小まで低下傾向に変化することに伴い、電源システム10の動作モードは、FCモードに推移する。
また、制御装置25は、例えば駆動モータ22の回生時においては、FCスタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流(零あるいは正の値)と一致するようにしてフィードバック制御をおこなうとともに、回生電圧のフィードバック制御をおこなうことによって、DC/DCコンバータ13のスイッチングデューティDを制御する。例えばFCスタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が零とされる電源システム10の動作モードは、駆動モータインバータ15の回生電力によりバッテリ12が充電される回生モード(図5A、図5B)となる。
また、例えばFCスタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が正の値とされる電源システム10の動作モードは、駆動モータインバータ15の回生電力及びFCスタック11の出力がエアポンプインバータ14及びバッテリ12に供給されてバッテリ12が充電される回生モード(図6A、図6B)となる。
なお、制御装置25は、例えば、燃料電池車両の運転状態や、FCスタック11のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度(水素ストイキ比)や、FCスタック11のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、FCスタック11のカソードに供給される反応ガスに含まれる酸素の濃度(酸素ストイキ比)や、FCスタック11のカソードから排出される排出ガスに含まれる酸素の濃度や、FCスタック11の発電状態、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、FCスタック11の電圧Vfcや、FCスタック11の出力電流Ifcや、FCスタック11の内部温度等に基づき、FCスタック11へ供給される反応ガスの圧力及び流量に対する指令値を出力し、FCスタック11の発電状態を制御する。
また、制御装置25は、FCスタック11の発電状態等に応じてコンタクタ56のオン/オフを切り換え、FCスタック11と第2ラインL2及び第3ラインL3との接続を制御する。
さらに、制御装置25は、バッテリ12のSOC値等に応じてコンタクタ54のオン/オフを切り換え、バッテリ12と第1ラインL1及び第2ラインL2との接続を制御する。
上述したように、この発明の実施形態による電源システム10によれば、FCスタック11とバッテリ12とが直列に接続されてなる直列電源52に対して単一のDC/DCコンバータ13を備えるだけで複数の動作モードを切り換えることができ、例えばFCスタック11とバッテリ12毎に個別にDC/DCコンバータを備える場合に比べて、構成に要する費用を削減すると共にサイズを小型化することができる。
さらに、この発明の実施形態による燃料電池車両の電源システム10によれば、単一のDC/DCコンバータ13のみを備えることで電源システム10の構成に要する費用を削減すると共にサイズを小型化することができることに加えて、FCスタック11とバッテリ12とが直列に接続されることから、例えばFCスタック11とバッテリ12とが並列に接続される場合に比べて、駆動モータインバータ15の動作電圧を増大させ、且つ、電流を低下させることができ、駆動モータ22及び駆動モータインバータ15のサイズを小型化することができると共に運転効率を向上させることができ、燃料電池車両の電源システム10の構成に要する費用を削減すると共にサイズを小型化することができる。
また、DC/DCコンバータ13の異常時(例えば、開放故障時等)であっても、直列電源52から駆動モータインバータ15に電源を供給することができ、燃料電池車両を走行させることができる。
[第1実施例]
次に、DC/DCコンバータ13のOFFモードを有効に利用する第1実施例の動作について、制御装置25により実行される図11のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS11において、燃料電池車両として機能している電源システム10がアイドル停止中では無いか否かが判定される。燃料電池車両として機能している電源システム10がアイドル停止中では無いか否かの判定は、基本的には、要求負荷が所定値以上(駆動モータ22の消費電力が、所定電力消費量以上)であって、且つ車速が所定値以上である場合には、アイドル停止中では無いと判定される(ステップS11:YES)。
次に、ステップS12において、燃料電池車両として機能している電源システム10が回生中では無いか否かが判定される。回生中で無いか否かの判定は、例えば、各相電流センサ28に流れる各相電流の向きと大きさによって各相電流の向きが力行中の向き(ハイサイドトランジスタから駆動モータ22を通じてローサイドトランジスタに流れる向き)か否か(回生中の向き、すなわちローサイドダイオードから駆動モータ22を通じてハイサイドダイオードに流れる向き)により判定することができる。
回生中では無いと判定した場合には(ステップS12:YES)、ステップS13において、FCスタック11が発電可能状態にあるか否かを判定する。FCスタック11が発電可能状態にあるか否かは、例えば、EVモードによる走行中であってFCスタック11での発電停止中である場合には発電可能状態ではないと判定される(ステップS13:NO)。FCスタック11の起動時であって暖機が十分ではない場合にも発電可能状態ではないと判定される(ステップS13:NO)。すなわち、発電継続中(燃料ガス及び酸化剤ガスが供給され、FCスタック11から出力電流(発電電流)Ifcが引かれている状態)である場合に発電可能状態にあると判定する(ステップS13:YES)。
発電可能状態にある場合には、ステップS14、S15、S16において、バッテリ12のSOC値が判定される。
バッテリ12の充電状態は、図12に示すように、予め決定されている。例えば、SOC値(充電状態、残容量)が50[%]の中央値(目標SOC値)にあることが蓄電量の最適値とされ、中央値を挟むSOC1(所定値1)〜SOC2(所定値2)の間が蓄電量の適正範囲(中央適正範囲、最適範囲)とされ、中央適正範囲より大きいSOC2(所定値2)〜SOC4(所定値4)の間が蓄電量は若干多いが上側適正範囲とされ、中央適正範囲より小さいSOC3(所定値3)〜SOC1(所定値1)の間が蓄電量は若干少ないが下側適正範囲とされる。
そこで、ステップS14において、バッテリ12のSOC値が、中央適正範囲(最適範囲)にあるか否かが判定される(SOC1≦SOC≦SOC2)。
中央適正範囲(最適範囲)にはないと判定されたとき(ステップS14:NO)、ステップS15において、上側適正範囲にあるか否かが判定される(SOC2<SOC≦SOC4)。
上側適正範囲にはないと判定されたとき(ステップS15:NO)、ステップS16において、下側適正範囲にあるか否かが判定される(SOC3≦SOC≦SOC1)。
下側適正範囲にもないと判定されたとき(ステップS16:NO)、ステップS23にて、OFFモード制御ではない通常制御(昇降圧制御モード)に戻る。
一方、ステップS15の判定において、SOC値が上側適正範囲内にあると判定されたとき(ステップS15:YES)、ステップS17において、DC/DCコンバータ13に流すべき電流値Iconvを算出する。
図13は、SOC値[%]とDC/DCコンバータ13に流すべき電流値であるコンバータ電流値Iconvとの対応関係を示す特性124(マップ)を示している。SOC値が50[%]より多い場合には、リアクトル32から流れ出るコンバータ電流値Iconvの値をSOC値の増加に応じて増加させる。
すなわち、ステップS17においては、図14に示すように、DC/DCコンバータ13のハイサイドアームHAのトランジスタHTのオンオフを繰り返すことで、バッテリ電流IbをFCスタック11の発電電流Ifcより大きくし、バッテリ12による放電電流をFCスタック11の発電電流Ifcよりも大きくすることで、負荷電流ILにおけるバッテリ電流Ibの割合を大きくし放電優先としてバッテリ12のSOC値を低減する方向に制御するようにコンバータ電流値Iconvを算出する(Iconv=Ib−Ifc)。
さらに、ステップS18において、図15に示す回生期待値Rexを参照して、補正係数α1を算出し、ステップS17で算出したコンバータ電流値Iconvを補正する。
回生期待値Rexは、現在より所定時間前までの間での回生の頻度が多且つた場合には大きくなり、また、現在から所定時間後までの予想回生頻度がナビ情報等により下り区間が多いと判定された場合には、大きくなる。
補正係数α1は、特性126に示すように、回生期待値Rexが大きくなるほど、バッテリ12への充電量が多くなることが期待されるので、その分、余分に、バッテリ12の放電量が大きくなるように、すなわち図14に示すコンバータ電流値Iconvが大きくなるように補正する値となる。回生期待値Rexが0値近傍では補正係数α1は、1.0値、回生期待値Rexが0から大きくなるにつれて補正係数α1は、1より徐々に大きな値となるように設定されている。
ステップS19において、制御装置25は、補正後のコンバータ電流値IconvをIconv=α1×Iconvとして、FC電流Ifcをフィードバック制御(デューティ制御)する(Ifc=Ib−α1×Iconv)。
次に、上述したステップS16の判定において、SOC値が下側適正範囲内にあると判定されたとき(ステップS16:YES)、ステップS20において、DC/DCコンバータ13に流すべきコンバータ電流値Iconvを算出する。
図13は、SOC値[%]とDC/DCコンバータ13に流すべき電流値であるコンバータ電流値Iconvとの対応関係を示す特性124(マップ)を示している。SOC値が50[%]より少ない場合には、リアクトル32に流し込むコンバータ電流Iconv値をSOC値の低下に応じて低減させる。
すなわち、ステップS20においては、図16に示すように、DC/DCコンバータ13のローサイドアームLAのトランジスタLTのオンオフを繰り返すことで、バッテリ電流IbをFCスタック11の発電電流Ifcより小さくし、バッテリ12による放電電流をFCスタック11の発電電流Ifcよりも小さくすることで、負荷電流ILにおけるバッテリ電流Ibの割合を小さくして放電を抑制し、バッテリ12のSOC値の低減率が小さくなる方向に制御するようにコンバータ電流値Iconvを算出する(Iconv=Ifc−Ib)。
さらに、ステップS21において、図17に示す回生期待値Rexを参照して、補正係数α2を算出し、ステップS20で算出したコンバータ電流値Iconvを補正する。
回生期待値Rexは、現在から所定時間前までの回生の頻度が多かった場合には、大きくなり、また、現在から所定時間後までの予想回生頻度がナビ情報等により下り区間が多いと判定された場合には、大きくなる。
補正係数α2は、特性128に示すように、回生期待値Rexが大きくなるほど、バッテリ12への充電量が多くなることが期待されるので、回生電力がより多くバッテリ12に充電されるようにコンバータ電流値Iconvが小さくなるように補正する値となる。回生期待値Rexが0値近傍では補正係数α2は、1.0値、回生期待値Rexが0から大きくなるにつれて補正係数α1は、1.0より徐々に小さな値となるように設定されている。
ステップS21において、制御装置25は、補正後のコンバータ電流値IconvをIconv=α2×Iconvとし、ステップS22において、FC電流Ifcをフィードバック制御(デューティ制御)する(Ifc=Ib+α2×Iconv)。
このように、バッテリ12のSOC値が目標SOC値(図13例では、50[%])より小さいときに、充電をすることが好ましいが、充電する際に、回生が期待される場合には、コンバータ電流値Iconvを小さな値とすることができるので、コンバータ損失Pconvlossを小さくすることができる。
なお、コンバータ損失Pconvloss(熱損失)は、図18の特性130に示すように、DC/DCコンバータ13に流れる電流(コンバータ電流値Iconv)が大きい程、大きくなる。
一方、ステップS14の判定において、バッテリ12のSOC値が適正範囲内にある場合には(ステップS14:YES)、ステップS24において、制御装置25は、コンバータ損失Pconvlossをゼロ値とすべく、DC/DCコンバータ13をオフ状態(非動作状態であるOFFモード)に制御する。
この場合、図19Aに示すように、直列電源52として動作するFCスタック11とバッテリ12には同一値の電流が流れ、負荷電流IL(IL=Ifc=Ib)が負荷103に供給される。
この場合、図20A、図20Bの特性132、134に示すように、バッテリ12のバッテリ損失Pbloss[kW]及びFCスタック11のFC損失Pfcloss[kW]は、バッテリ電力Pbat及びFC電力Pfcに対してそれぞれ2次関数的に増加するので、同一値の電力Peとすることにより総合損失を小さくでき、電源装置100を最小化することができる。なお、通常、バッテリ12のバッテリ電圧VbとFCスタック11の発電電圧Vfcが異なるが、同一であるものとすると、図20A、図20Bに示すように同一の電力Pe[kW]となり、バッテリ損失PblossとFC損失Pfclossとの和を略最小にすることができる。
より具体的に説明すると、理解の便宜のためにFCスタック11とバッテリ12で合計出力を100[W]と考える。そして、例えば、図20Cに示すように、バッテリ電力PbatとFC電力Pfcとが、それぞれ、[Pbat,Pfc]=[99W,1W](第1ケース)、[Pbat,Pfc]=[40W,60W](第2ケース)、[Pbat,Pfc]=[50W,50W](第3ケース)の出力割合であるときのバッテリ損失PblossとFC損失Pfclossの合計損失Psumloss[kW]について説明する。
ここで、バッテリ12の内部抵抗をRbat、FCスタック11の内部抵抗をRfcと置き、仮に、バッテリ電圧VbとFC電圧(FCスタック電圧)VfcとをV[V]と置けば、上記第1〜第3ケースの合計損失Psumlossは、以下のように表される。
第1ケース:(99/V)2×Rbat+(1/V)2×Rfc
第2ケース:(40/V)2×Rbat+(60/V)2×Rfc
第3ケース:(50/V)2×Rbat+(50/V)2×Rfc
さらに、バッテリ12の内部抵抗RbatとFCスタック11の内部抵抗Rfcがほぼ等しく、抵抗Rcであるとすると、Rbat=Rfc=Rcと置ける。この場合、上記第1〜第3ケースの合計損失Psumlossは、以下のように表される。
第1ケース:(99/V)2×Rc+(1/V)2×Rc
=(9802)/(V2)×Rc
第2ケース:(40/V)2×Rbat+(60/V)2×Rfc
=(5200)/(V2)×Rc
第3ケース:(50/V)2×Rbat+(50/V)2×Rfc
=(5000)/(V2)×Rc
従って、図20Cに示すように、[Pbat,Pfc]=[99W,1W](第1ケース)や[Pbat,Pfc]=[40W,60W](第2ケース)の出力割合であるときに比較して、[Pbat,Pfc]=[50W,50W](第3ケース)の出力割合であるときのバッテリ損失PblossとFC損失Pfclossの合計損失Psumloss[kW]が最も低くなり、逆に効率は最も高くなることが分かる。
なお、図19Bに示すように、エアポンプ負荷102(図1参照)等の補機負荷を、バッテリ12に並列に接続した電源システム10A(燃料電池車両)においても、所定の力行時(ステップS11〜S14まで全てYES)において、エアポンプ負荷102の大きさは、駆動モータ22を含む負荷101の数分の1以下となるので(Ifc≒Ib)、一定以上の電力節減効果が得られることから、図19Bに示す構成におけるDC/DCコンバータ13のOFF駆動モードもこの発明に含まれる。
図21は、上述した第1実施例の動作イメージを示すタイムチャートである。
時点t1〜t2の間では、SOC値が低め(50[%]以下)であるので、FC電流Ifcがバッテリ電流Ib(放電電流)より大きくされる(図16参照)。時点t2〜t3の間では、回生中であり、バッテリ電流Ibは、充電電流となっている(図5A、図5B、図6A、図6B)。時点t3〜t4の間では、SOC値が適正範囲(SOC1≦SOC≦SOC2)であるので、DC/DCコンバータ13を完全にOFFモード(非動作状態)に制御することで、FC電流Ifcとバッテリ電流Ibが、要求負荷Psysに対応した同一値(同一の過度特性)になっている(図7)。時点t6以降では、SOC値が多めであるので、バッテリ電流Ibの値がFC電流Ifcの値より大きくなっていることが分かる(図14)。
[第1実施例のまとめ]
以上説明したように、上述した第1実施例の電源システム10は、FCスタック11と、FCスタック11の正側に、直列に、負側が接続されるバッテリ12と、下アームスイッチング素子としてのトランジスタLTを含むローサイドアームLAと、このローサイドアームLAに直列に接続され、上アームスイッチング素子としてのトランジスタHTを含むハイサイドアームHAと、前記ローサイドアームLAと前記ハイサイドアームHAとの直列接続点とFCスタック11とバッテリ12との直列接続点との間に接続されたリアクトル32と、からなるDC/DCコンバータ13と、FCスタック11の負側とバッテリ12の正側との間に接続される負荷103と、を有する。
制御装置25(制御手段)は、DC/DCコンバータ13を、スイッチング動作を行わない非動作状態(OFFモード)に制御するとともに、FCスタック11とバッテリ12との直列電源52から負荷103に電力を供給する制御を行うようにしたので、DC/DCコンバータ13を非動作状態にして、すなわち、DC/DCコンバータ13がスイッチングしていない状態にして、直列電源52から負荷103に電力を供給できるので、スイッチング損失をゼロに維持しつつ負荷103に電力を供給することができるシステム電力効率の高い電源システム10、10A(燃料電池車両)を構築することができる。
図7例の電源システム10の負荷103の接続(図1参照)形態では、負荷電流ILと同一のバッテリ電流Ib及び発電電流Ifcが流れる(IL=Ib=Ifc)。図19B例の電源システム10Aの負荷101、102の接続形態では、バッテリ電流Ibが負荷電流ILと負荷電流IL1の合成電流(Ib=IL1+IL)となり、発電電流Ifcは、負荷電流ILと同一の電流(IL=Ifc)となる。よって、Ib=IL1+Ifcとなるが、OFFモードにおいて、DC/DCコンバータ13のスイッチング損失をゼロ値にできる。図7例及ぶ図19B例のいずれの電源システム10、10Aの場合にも、負荷103(101、102)の変化に対してバッテリ12及びFCスタック11を追従させることができる。
この場合、制御装置25は、バッテリ12のSOC値が所定の目標SOC値範囲内(上述した適正範囲SOC1〜SOC2)で、DC/DCコンバータ13を非動作状態(OFFモード)に制御するとともに、FCスタック11とバッテリ12との直列電源52から負荷103に電力を供給する制御を行うようにすることで、バッテリ12のSOC値を目標SOC値範囲(状態1)に維持しつつシステム電力効率の高い電源システム10、10Aを構築することができる。
なお、電源システム10の負荷103が、上例のように駆動モータ22を含む燃料電池車両である場合、制御装置25は、駆動モータ22から回生電力の発生が予測される場合には、DC/DCコンバータ13を前記非動作状態から前記動作状態に切り換えることで、動作状態となったDC/DCコンバータ13により前記回生電力をバッテリ12に効率よく充電することができ、電力効率を向上させることができる。回生電力の取りこぼしを防止することができ、システム効率のよい燃料電池車両とすることができる。
[第2実施例]
この第2実施例では、図22に示すように、電源システム10Bは、基本的には、FCスタック11とバッテリ12を直列に接続した直列電源52とこの直列電源52に並列に接続されるDC/DCコンバータ13とからなる電源装置100と、この電源装置100に対して並列に接続される駆動モータインバータ15と駆動モータ22とからなる負荷101{第1負荷、主負荷又はモータ負荷(M負荷という。)ともいう。図1参照}と、第2負荷(補機負荷ともいう。)202とから構成される。電源システム10Bは、駆動モータ22を有する負荷101を含むので、燃料電池車両として機能する。モータ負荷101と第2負荷202とは、電源装置100に対して並列に接続されている。
ここで、第2負荷202の具体例を示す電源システム10Bの各種適用例について説明する。
図23に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、エアポンプインバータ14とエアポンプ21とからなるエアポンプ負荷(AP負荷ともいう。)102とされる。この電源システム10Bは、図1に示した電源システム10と等価である。
図24に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、2次電圧V2を降圧するDC/DCコンバータ(第2DC/DCコンバータ)204と、降圧電圧により駆動されるエアポンプ負荷102とされる。エアポンプ負荷102もエアポンプインバータ14とエアポンプ21とから構成される。
なお、図24に示すエアポンプ負荷102と図23に示すエアポンプ負荷102とは、入力電圧が異なるものであるが動作は同一であるので、理解の便宜のために、同一の符号をつけている。以下、空調用機器206等でも同様である。
図25に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と空調用機器206とされる。空調用機器206は、インバータ式の空調装置とされることが好ましい。
図26に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102及び空調用機器206とされる。
図27に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102とDC/DCコンバータ204を通じて駆動される空調用機器206aとされる。
図28に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102aと、DC/DCコンバータ204及びDC/DCコンバータ208を通じて駆動される空調用機器206bとされる。
図29に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102aと、DC/DCコンバータ208aを通じて駆動される空調用機器206baされる。
図30に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と、空調用機器206と、ダウンバータ210を通じて充電される低圧バッテリ212とされる。低圧バッテリ212には、図示しない付属品(アクセサリ)として、ナビゲーション装置、音楽プレーヤ、テレビジョン、ラジオ、及びリアカメラ等の付属品負荷が接続される。
図31に示す電源システム10Bにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102a及び空調用機器206bと、DC/DCコンバータ204及びダウンバータ210aを通じて充電される低圧バッテリ212とされる。
次に、この第2実施例に適用される2つの動作モードについて説明する。
図32は、第2実施例の第1動作モード(OFFモード)の説明図である。モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態(燃料電池車両が停止中の状態)において、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフとされ、リアクトル32に電流が流されない。第2負荷202には、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52から負荷電流IL(IL=Ifc=Ib)として電力が供給される。この第1モード(OFFモード)では、図18を参照して説明したように、DC/DCコンバータ13のコンバータ損失Pconvlossは、ゼロ値とされることに留意する(V2=Vfc+Vb、IL=Ib=Ifc)。
図33A、図33Bは、第2実施例の第2動作モード(充電モード)の説明図である。第2動作モード(充電モード)では、モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態において、1周期2πの間に、制御装置25により図33Aの状態と図33Bの状態が切り換えられ、この切り換え動作が継続される。
図33Aの状態では、制御装置25によりローサイドアームLAのトランジスタLTがオンとされ、FCスタック11からリアクトル32にエネルギが蓄積される一方、平滑コンデンサ33によりバッテリ12が充電されるとともに、第2負荷202に電力が供給される。
図33Bの状態では、制御装置25によりローサイドアームLAのトランジスタLTがオフとされる。これにより、FCスタック11からリアクトル32を通じダイオードHDを通じてバッテリ12に充電電流が供給されるとともに、平滑コンデンサ33に電流が供給され、さらに第2負荷202に電力が供給される。
図33A、図33Bに示す充電モードでは、FCスタック11の発電電圧VfcがDC/DCコンバータ13により昇圧された2次電圧V2とされている。
図32に示した第1動作モード(OFFモード)、及び図33A、図33Bに示した第2動作モード(充電モード)のいずれのモードにおいても、FCスタック11が発電状態とされ、このFCスタック11から第2負荷202に電力が供給される。
この場合において、第2モード(充電モード)における充電電流Ichgは、DC/DCコンバータ13の効率であるコンバータ効率Cη[%]と、バッテリ12の効率である充電効率Bη[%]とを考慮した最大効率Tηmax[%]となる充電電流Ichgに設定される。
図34Aに示すように、DC/DCコンバータ13のコンバータ効率Cηは、0[A]から所定コンバータ電流値Iconvp[A]までコンバータ効率Cη[%]は、鉄損と銅損の影響によりゼロ値から急激に上昇し、所定電流値Iconvp以上では、銅損のみとなるのでコンバータ効率Cηは僅かに上昇する特性216になっている。
一方、図34Bに示すように、バッテリ12の充電効率Bη[%]は、充電電流Ichgの増加に応じて内部抵抗の影響による減少が大きくなる特性218になっている。
よって、充電電流Ichgに対するコンバータ効率Cηと充電効率Bηを考慮した総合効率Tη[%]は、概ねこれらの乗算結果に等しく、図34Cの特性220に示すように、ほぼ所定コンバータ電流値Iconvp[A]に対応する所定充電電流値Ichgp[A](Iconvp=Ichgp)において、最大効率Tηmax[%]になる。
よって、図33A、図33Bを参照して説明した、モータ負荷101が殆どゼロ状態で第2負荷202のみが存在する充電モード(昇圧時充電モード)では、バッテリ12の充電電流Ichgが、所定充電電流値Ichgpとなる発電電流IfcとなるようにFCスタック11の端子間電圧である発電電圧Vfc(図8参照)を制御装置25によりフィードバック制御することが好ましい。
上述した第2実施例の動作例について、制御装置25により実行される図35のフローチャートを参照して説明する。
ステップS31において、制御装置25によりモータ負荷101と第2負荷202の合計負荷(総合負荷)である要求負荷(システム要求負荷)Psysが、所定値(所定電力)Pth1以下であるか否かが判定される。
ここでの所定値は、駆動モータ22の電力消費量がゼロ値あるいはゼロ値に近い所定電力消費量以下であって、第2負荷202が所定補機負荷以上であり、燃料電池車両として機能している電源システム10Bの負荷としては比較的に小さな負荷に対応する。
要求負荷Psysが所定値Pth1以下である場合(ステップS31:YES)、ステップS32において、車速Vsがゼロ値を含む所定値(所定車速)Vth1以下(Vs≦Vth1)であるか否かが判定される。車速Vsが所定値Vth1以下である場合(ステップS32:YES)、次に、ステップS33において、バッテリ12のSOC値が所定値(所定SOC値、所定残容量値)SOCth1以上(SOC≧SOCth1)、例えば50[%](SOCth1=50[%])以上であるか否かが判定される。
SOC値が所定値SOCth1以上である場合(ステップS33:YES)、ステップS34において、OFFモードでの直列電源52の出力電力{(Vfc+Vb)×Ib=(Vfc+Vb)×Ifc}が要求負荷Psys、この場合、理解の便宜のためにモータ負荷101をゼロ値とし、第2負荷202の要求負荷Psysに対応するバッテリ電流Ib(放電電流)となるように、FCスタック11の発電電流Ifc(Ifc=Ib=IL)を決定する。
FCスタック11において、一般的には、発電電流Ifcは、図36に実線で示すIV特性120(図8のIV特性120を再掲)から発電電圧Vfcを設定することで決定される。例えば、発電電圧Vfcを、Vfc0、Vfc1、Vfc2、Vfc3と設定することで、発電電流Ifcを、Ifc0、Ifc1、Ifc2、Ifc3と決定することができる。なお、FCスタック11の発電電圧Vfcの設定は、周知のように、例えば、図示しない直流基準電源にチョッピング型のDC/DCコンバータ(不図示)の入力側を接続し、DC/DCコンバータの出力側をFCスタック11に接続し、前記DC/DCコンバータのスイッチングデューティを前記直流基準電源の電圧に応じて設定するようにすればよい。
その状態において、ステップS35において、ステップS24と同様に、制御装置25は、コンバータ損失Pconvlossをゼロ値とすべく、DC/DCコンバータ13をオフ状態(非動作状態であるOFFモード)に制御する。
この場合、図32のOFFモードの動作状態に示すように、直列電源52として動作するFCスタック11とバッテリ12には同一値の電流が流れ、負荷電流IL(IL=Ifc=Ib)が負荷103に供給される。
図20A、図20Bの特性132、134及び図20Cの第3ケースとして示したように、バッテリ12のバッテリ損失Pbloss[kW]及びFCスタック11のFC損失Pfcloss[kW]は、それぞれ消費電力であるバッテリ電力Pbat及びFC電力Pfcに対して2次関数的に増加するので、同一値の電力とすることにより、合計損失Psumloss(Psumloss=Pbatloss+Pfcloss)及び電源装置100を最小化することができる。
その一方、上述したステップS33の判定において、SOC値が所定値未満である場合(ステップS33:NO)、ステップS36において、図34Cに示した充電効率Tηが最大充電効率Tηmaxとなる充電電流値Ichgpを流せる充電モードとなるような発電電流IfcでDC/DCコンバータ13及びFCスタック11を作動させる。すなわち、充電電流Ichgが充電電流値IchgpとなるようにFCスタック11の発電電流Ifc(Ifc=IL+Ichgp)を決定する。
図37は、上述した第2実施例の動作イメージを示すタイムチャートである。
時点t11〜t14の間で、アイドル停止が成立し、要求負荷Psysが比較的に小さく、且つSOC値が所定値(ここでは、50[%])以上であるので電源システム10Bは、DC/DCコンバータ13が非動作状態となるOFFモードで制御される。時点t14においてSOC値が所定値未満になろうとすると、ヒステリシスを持たせ、より高い所定値となるまで、充電電流値Ichgpとなるように、発電電流Ifcを制御する。
[第2実施例のまとめ]
以上説明したように、上述した第2実施例に係る電源システム10Bは、例えば、図22に示すように、FCスタック(発電装置)11と、FCスタック11の正側に、直列に、負側が接続されるバッテリ(蓄電装置)12と、下アームスイッチング素子としてのトランジスタLTを含むローサイドアームLAと、このローサイドアームLAに直列に接続され、上アームスイッチング素子としてのトランジスタHTを含むハイサイドアームHAと、ローサイドアームLAとハイサイドアームHAとの直列接続点とFCスタック11とバッテリ12との直接接続点との間に接続されたリアクトル32と、からなるDC/DCコンバータ13と、FCスタック11とバッテリ12との直列電源52に接続される複数の負荷(主負荷101、補機負荷202)と、を有する。
制御装置25(制御手段)は、DC/DCコンバータ13を、動作状態(昇降圧させるスイッチング状態)又は非動作状態(スイッチング動作を行わないOFFモード)に制御する。
制御装置25は、所定条件(例えば、主負荷101がゼロ又はゼロに近く、第2負荷202は、通常負荷になっている状態。)下に、前記DC/DCコンバータ13を非動作状態であるOFFモードに制御するとともに、直列電源52から主負荷101(モータ負荷)及び第2負荷202(補機負荷)のうち、少なくとも1つの負荷、この第2実施例では補機負荷である第2負荷202に電力を供給する制御を行う。
このように制御すれば、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52に対して並列にDC/DCコンバータ13と複数の負荷101、202とが接続される電源システム10Bにおいて、所定条件(図35のフローチャートでは、Psys≦Pth1、Vs≦Vth1、及びSOC≧SOCth1)下に、DC/DCコンバータ13を非動作状態に制御するとともに、直列電源52から複数の負荷101、202のうち、少なくとも1つの負荷である第2負荷202に電力を供給する制御を行うようにしたので、前記所定条件下では、スイッチング損失をゼロとして第2負荷202に電力を供給できるので、システム電力効率を向上させることができる。
この場合、前記所定条件は、バッテリ12のSOC値が所定SOC値範囲内、あるいは所定値SOCth1以上であることが好ましい。このように設定すれば、バッテリ12のSOC値を目標範囲内に維持しつつ、システム電力効率を向上させることができるので、例えばFCスタック11が発電不能状態となってもバッテリ12により一定の範囲で第2負荷202に電力を供給することが可能となり、電源システム10Bの信頼性を向上させることができる。
なお、制御装置25は、要求負荷Psysが所定負荷Pth1以下である場合に、バッテリ12のSOC値が所定SOC範囲の下限値(上例では、SOCth1)を下回る値となった場合に、DC/DCコンバータ13を動作状態に制御し、DC/DCコンバータ13の効率Cηとバッテリ12の充電効率Bηの合成効率Tηがピークとなる充電電流IchgpがFCスタック11からバッテリ12に流れるように制御してバッテリ12を充電するようにすることで、高効率下にバッテリ12のSOC値を所定SOC範囲内まで大きくすることができる。
この発明は、電源装置100の複数の負荷101、102に駆動モータ22に係るモータ負荷101が含まれ燃料電池車両を含む。
なお、前記所定条件が、アイドル停止条件であるとすると、アイドル停止時に、FCスタック11の発電電力を絞ることで、DC/DCコンバータ13を非動作状態にしても、直列電源52から第2負荷(比較的に小さい負荷)202に電力を供給できるので、スイッチング損失がゼロとなり、アイドル停止条件下でシステム電力効率の高い電源システム10B、燃料電池車両を構築することができる。
なお、この第2実施例でのアイドル停止条件の判定は、(1)車速Vs所定車速Vth1以下であって、(2)駆動モータ22の電力消費量が所定電力消費量以下、さらに(3)バッテリ12の充電状態SOC値が所定SOC値(SOCth1)以上であって、且つ(4)補機(計器等)負荷が所定補機負荷以上である場合の、上記の(1)〜(4)の4つの条件中、少なくとも(1)、(2)及び(4)の3の条件が満たされている場合に、車両が停止状態(アイドル停止状態)であると判定している。
[第3実施例]
この第3実施例では、図38に示すように、電源システム10Cは、基本的には、FCスタック11とバッテリ12を直列に接続した直列電源52とこの直列電源52に並列に接続されるDC/DCコンバータ13とからなる電源装置100と、この電源装置100に接続される駆動モータインバータ15と駆動モータ22とからなる負荷101(第1負荷、主負荷又はモータ負荷ともいう。図1参照)と、FCスタック11に接続される第2負荷(補機負荷ともいう。)202とから構成される。電源システム10Cは、モータ負荷101を含むので、燃料電池車両として機能する。
この第3実施例では、制御装置25は、後述するように、アイドル停止条件等の低負荷条件が成立した場合には、バッテリ12の放電電流であるバッテリIbをゼロ値(Ib=0)とし、第2負荷202の負荷電流IL2を賄う発電電流Ifcのみを発電することでDC/DCコンバータ13をOFFモードで動作させる。
ここで、第2負荷202の具体例を示す電源システム10Cの各種適用例について説明する。
図39に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、エアポンプインバータ14とエアポンプ21とからなるエアポンプ負荷102とされる。
図40に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、FCスタック11の発電電圧Vfcを降圧するDC/DCコンバータ(第2DC/DCコンバータ)204と、降圧電圧により駆動されるエアポンプ負荷102とされる。
図41に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と空調用機器206とされる。空調用機器206は、インバータ式の空調装置とされることが好ましい。
図42に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102及び空調用機器206とされる。
図43に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102とDC/DCコンバータ204を通じて駆動される空調用機器206とされる。
図44に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102と、DC/DCコンバータ204及びDC/DCコンバータ208を通じて駆動される空調用機器206とされる。
図45に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102と、DC/DCコンバータ208を通じて駆動される空調用機器206bとされる。
図46に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と、空調用機器206と、ダウンバータ210を通じて充電される低圧バッテリ212とされる。
図47に示す電源システム10Cにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102及び空調用機器206と、DC/DCコンバータ204及びダウンバータ210を通じて充電される低圧バッテリ212とされる。
次に、この第3実施例に適用される3つの動作モードについて説明する。
図48は、第3実施例の第1動作モード(OFFモード)の説明図である。モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態において、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフとされ、リアクトル32に電流が流されない。第2負荷202には、FCスタック11のみから負荷電流IL2(IL2=Ifc)として電力が供給される。この第1モード(OFFモード)では、図18を参照して説明したように、DC/DCコンバータ13のコンバータ損失Pconvlossは、ゼロ値とされることに留意する。
図49A、図49Bは、第3実施例の第2動作モード(放電モード、昇圧時モード)の説明図である。第2動作モード(放電モード)では、モータ負荷101にも電力が供給される状態において、1周期2πの間に、制御装置25により図49Aの状態と図49Bの状態が切り換えられ、この切り換え動作が継続され、モータ負荷101に供給される2次電圧V2は、バッテリ電圧VbがDC/DCコンバータ13により昇圧された電圧とされる。したがって、この第2動作モードでは、燃料電池車両としての電源システム10Cは、いわゆるEVモードでの走行が可能である。
図49Aの状態では、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオンとされ、バッテリ12からリアクトル32にエネルギが蓄積される一方、モータ負荷101には、平滑コンデンサ33から電力が供給される。また、FCスタック11から第2負荷202に電力が供給される。
図49Bの状態では、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフとされる。これにより、ローサイドアームLAのダイオードLD及びリアクトル32及びバッテリ12を通じてモータ負荷101に電力が供給されるとともに平滑コンデンサ33が充電される。FCスタック11から第2負荷に電力が供給される。
図50A、図50Bは、第3実施例の第3動作モード(充電モード、昇圧時モード)の説明図である。第3動作モード(充電モード)では、モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態において、制御装置25により1周期2πの間に、図50Aの状態と図50Bの状態が切り換えられ、この切り換え動作が継続され、バッテリ12を充電する平滑コンデンサ33間に生成される2次電圧V2は、発電電圧VfcがDC/DCコンバータ13により昇圧された電圧とされる。
図50Aの状態では、制御装置25によりローサイドアームLAのトランジスタLTがオンとされ、平滑コンデンサ33から流れ出るバッテリ12の充電電流Ib(Ib=Ic)とFCスタック11の発電電流Ifcの一部の発電電流Ifc3の合成電流によりリアクトル32にエネルギが蓄積される一方、FCスタック11から第2負荷202に発電電流Ifcの残りの一部の発電電流Ifc2による電力が供給される。モータ負荷101は、負荷無しの状態とされる。
図50Bの状態では、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフとされる。これにより、リアクトル32からバッテリ12に充電電流Ibが供給されるとともに、FCスタック11からリアクトル32を通じて平滑コンデンサ33が2次電圧V2で充電される一方、FCスタック11から第2負荷202に電力が供給される。モータ負荷101は、負荷無しの状態とされる。
図48に示した第1動作モード(OFFモード)、図49A、図49Bに示した第2動作モード(放電モード)、及び図50A、図50Bに示した第3動作モード(充電モード)いずれのモードにおいても、FCスタック11が発電状態とされ、このFCスタック11から第2負荷202に電力が供給される。
上述した第3実施例の動作例について、制御装置25により実行される図51のフローチャートを参照して説明する。
ステップS41において、制御装置25によりモータ負荷101と第2負荷202の合計負荷(総合負荷)である要求負荷(システム要求負荷)Psysが、所定値(所定電力)Pth2以下であるか否かが判定される。
ここでの所定値Pth2は、駆動モータ22の電力消費量がゼロ値、あるいはゼロ値に近いがEV走行可能な所定電力消費量以下であって、第2負荷202が所定補機負荷以上であり、燃料電池車両として機能している電源システム10Cの負荷としては比較的に小さな負荷に対応する。なお、所定値(所定電力)Pth1は、駆動モータ22の電力消費量がゼロ値で、第2負荷202が所定補機負荷以上の電力に対応する(Pth1<Pth2)。
要求負荷Psysが所定値Pth2以下である場合(ステップS41:YES)、ステップS42において、車速Vsがゼロ値を含む所定値(所定車速)Vth1以下(Vs≦Vth1)であるか否かが判定される。車速Vsが所定値Vth1以下である場合(ステップS42:YES)、次に、ステップS43において、システム負荷Psysが所定負荷Pth1以下であるか否かが判定される。
システム負荷Psysが所定負荷Pth1以下である場合には(ステップS43:YES)、次に、ステップS44において、バッテリ12のSOC値が所定値(所定SOC値、所定残容量値)SOCth1以上(SOC≧SOCth1)、例えば50[%](SOCth1=50[%])以上であるか否かが判定される。
SOC値が所定値SOCth1以上である場合(ステップS44:YES)、ステップS45において、理解の便宜のためにモータ負荷101がゼロ値であるものとして、第2負荷202の要求負荷Psysに対応するようにFCスタック11の発電電力Pfc(Ifc=IL2、負荷電流IL2は、第2負荷202に流すべき電流である。)、すなわち、図8に示すIV特性120からFCスタック11の動作点(図8参照)を決定して、FCスタック11を発電させる。
次いで、ステップS46において、ステップS24、ステップS35と同様に、制御装置25は、コンバータ損失Pconvlossをゼロ値とすべく、DC/DCコンバータ13をオフ状態(非動作状態であるOFFモード)に制御する。
この場合、図48のOFFモードの動作状態に示すように、バッテリ12の電力は消費されず、FCスタック11からのみ第2負荷202に負荷電流IL2(IL2=Ifc)が供給される。
一方、ステップS43において、要求負荷Psysがモータ負荷101を含む所定負荷Pth2以下である場合には、ステップS47において、制御装置25は、DC/DCコンバータ13を動作させてバッテリ12の放電を許可し、図49A、図49Bに示した第2モード(放電モード)で電源システム10Cを動作させる。この場合、モータ負荷101は、バッテリ12のDC/DCコンバータ13による昇圧電圧である2次電圧V2により駆動される。
その一方、上述したステップS44の判定において、SOC値が所定値SOCth1未満である場合(ステップS44:NO)、ステップS48において、補正係数α3を算出する。補正係数α3は、SOC値が所定値SOCth1より小さくなるに従い値1より比例的に大きくされる。
次いで、ステップS49において、第2負荷電流である発電電流Ifc2に補正係数α3(α3>1)が乗算された発電電流If(If=Ifc2×α3=Ifc2+Ifc3)となるようにFCスタック11のFC電圧Vfcが設定される。
図53は、上述した第2実施例の動作イメージを示すタイムチャートである。
SOC値より下の特性において、太い実線は第2実施例によるものを示し、太い破線は比較例によるものを示している。
時点t21〜t23の間では要求負荷Psysが閾値負荷Pth1以下であるので、電源システム10Cは、DC/DCコンバータ13が非動作状態となるOFFモード(図48)で制御する。時点t23以降において、要求負荷Psysが閾値負荷Pth1を上回る値となったので、DC/DCコンバータ13を動作状態とし電源システム10Cを放電モード(図49A、図49B)で動作させる。
[第3実施例のまとめ]
以上説明したように、上述した第3実施例に係る電源システム10Cは、例えば、図38に示すように、FCスタック(発電装置)11と、FCスタック11の正側に、直列に、負側が接続されるバッテリ(蓄電装置)12と、下アームスイッチング素子としてのトランジスタLTを含むローサイドアームLAと、このローサイドアームLAに直列に接続され、上アームスイッチング素子としてのトランジスタHTを含むハイサイドアームHAと、ローサイドアームLAとハイサイドアームHAとの直列接続点とFCスタック11とバッテリ12との直接接続点との間に接続されたリアクトル32と、からなるDC/DCコンバータ13と、FCスタック11とバッテリ12との直列電源52に並列に接続される主負荷としてのモータ負荷101と、FCスタック11に並列に接続される補機負荷としての第2負荷202と、を有する。
制御装置25(制御手段)は、DC/DCコンバータ13を動作状態又は非動作(OFFモード)状態に制御するなか、所定条件下で、DC/DCコンバータ13を非動作状態に制御するとともに、第2負荷202の電力をFCスタック11で賄うように制御する。
この電源システム10Cでは、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52に対して並列にDC/DCコンバータ13とモータ負荷101が接続され、FCスタック11に第2負荷202が接続される。
制御装置25は、所定条件下(例えば、モータ負荷101がゼロ又はゼロに近く、第2負荷202は、通常負荷になっている状態)で、電源システム10CをDC/DCコンバータ13が非動作状態の図48に示すOFFモード状態に制御するとともに、第2負荷202の電力をこの第2負荷202に並列に接続されているFCスタック11で賄うようにしたので、上記の所定条件下では、スイッチング損失がゼロとなる分、システム電力効率を向上させることができる。
より詳しく説明すると、上記所定条件は、電源装置100に対する要求負荷Psys(要求電力)が所定値Pth1を下回る場合であり、電源装置100に対する要求負荷Psysが所定値Pth1を上回る場合には、負荷が大きくなった主負荷101への電力を、DC/DCコンバータ13を動作状態に遷移させ補機負荷202が接続されていないバッテリ12の電力で賄う(アシストする)ようにすることで、FCスタック11の負担を軽減することができる。
なお、制御装置25は、バッテリ12のSOC値が前記所定SOC値SOCTh1を下回る値となった場合に、DC/DCコンバータ13を動作状態に遷移させ(図50A、図50Bの充電モード)、第2負荷202の電力をFCスタック11の電力で賄うとともに、FCスタック11によりバッテリ12を充電することで、FCスタック11の電力の補助電力源としてのバッテリ12の電力(補助電力)の欠乏を防止することができる。
なお、補機負荷としての第2負荷202に、ナビゲーション装置等の付属品負荷及び空調用機器(空調機負荷)260が含まれるようにすると、システム電力効率の高い状態で前記付属品負荷及び前記空調機負荷を動作させることができる。
さらに、前記補機負荷としての第2負荷202として、FCスタック11に圧縮空気を供給するエアポンプ21を含み、エアポンプ21をFCスタック11に並列に接続されているようにしたので、バッテリ12の放電電力をエアポンプ21に供給する必要がなく、FCスタック11を発電させることができるため、システム電力効率が向上し、FCスタック11が開回路となることがないので、FCスタック11の劣化を防止することができる。
電源装置100が搭載され、主負荷が駆動モータ22である燃料電池車両は、電力効率を向上させることができる。
[第3実施例の変形例]
この第3実施例の変形例では、図54に示すように、電源システム10Dは、基本的には、FCスタック11とバッテリ12を直列に接続した直列電源52とこの直列電源52に並列に接続されるDC/DCコンバータ13とからなる電源装置100と、この電源装置100に対して並列に接続される駆動モータインバータ15と駆動モータ22とからなる負荷101(第1負荷、主負荷又はモータ負荷ともいう。図1参照)と、バッテリ12に並列に接続される第2負荷(補機負荷ともいう。)202とから構成される。電源システム10Dは、モータ負荷101を含むので、燃料電池車両として機能する。
この第3実施例の変形例では、制御装置25は、後述するようにアイドル停止等の低負荷条件が成立した場合には、FCスタック11の発電電流Ifcをゼロ値(Ifc=0)とし、第2負荷202の負荷電流IL2は、バッテリ12からのバッテリ電流Ibのみで賄う(IL2=Ib)ように制御することでDC/DCコンバータ13をOFFモードで動作させることができる。
ここで、第2負荷202の具体例を示す電源システム10Dの各種適用例について説明する。
図55に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、エアポンプインバータ14とエアポンプ21とからなるエアポンプ負荷102とされる。
図56に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、バッテリ電圧Vbを降圧するDC/DCコンバータ(第2DC/DCコンバータ)204と、降圧電圧により駆動されるエアポンプ負荷102とされる。
図57に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と空調用機器206とされる。空調用機器206は、インバータ式の空調装置とされることが好ましい。
図58に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102及び空調用機器206とされる。
図59に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102とDC/DCコンバータ204を通じて駆動される空調用機器206とされる。
図60に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102と、DC/DCコンバータ204及びDC/DCコンバータ208を通じて駆動される空調用機器206とされる。
図61に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102と、DC/DCコンバータ208を通じて駆動される空調用機器206bとされる。
図62に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、エアポンプ負荷102と、空調用機器206と、ダウンバータ210を通じて充電される低圧バッテリ212とされる。低圧バッテリ212には、図示しない付属品(アクセサリ)として、ナビゲーション装置、音楽プレーヤ、テレビジョン、ラジオ、及びリアカメラ等の付属品負荷が接続される。
図63に示す電源システム10Dにおいて、第2負荷202は、DC/DCコンバータ204を通じて駆動されるエアポンプ負荷102及び空調用機器206と、DC/DCコンバータ204及びダウンバータ210を通じて充電される低圧バッテリ212とされる。
次に、この第3実施例の変形例に適用される4つの動作モードについて説明する。
図64は、第1動作モード(OFFモード)の説明図である。モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態において、制御装置25により、ハイサイドアームHAのトランジスタHT及びローサイドアームLAのトランジスタLTがともにオフとされ、リアクトル32に電流が流れない。第2負荷202には、バッテリ12のみから負荷電流IL2(IL2=Ib)として電力が供給される。この第1モード(OFFモード)では、図18を参照して説明したように、DC/DCコンバータ13のコンバータ損失Pconvlossは、ゼロ値とされる。
図65A、図65Bは、第2動作モード{放電モード(EVモード)、昇圧モード}の説明図である。第2動作モード(放電モード)では、モータ負荷101が駆動され、1周期2πの間に、制御装置25により図65Aの状態と図65Bの状態が切り換えられ、この切り換え動作が継続される。
図65Aの状態では、制御装置25によりハイサイドLAのトランジスタHTがオンとされ、第2負荷202に電力を供給しているバッテリ12からリアクトル32にエネルギが蓄積されるとともに、平滑コンデンサ33からモータ負荷101に電力が供給される。
図65Bの状態では、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフとされる。これにより、リアクトル32とバッテリ12による昇圧された2次電圧V2がモータ負荷101に印加されるとともに平滑コンデンサ33が充電される。バッテリ12から第2負荷202には電流が供給され続けている。
すなわち、図65A、図65Bに示す放電モードでは、バッテリ12のみにより第2負荷202及びモータ負荷101を駆動する。電源システム10Dは、いわゆるEV走行を行うことができる。
図66A、図66Bは、第3動作モード(充電モード、昇圧モード)の説明図である。この第3動作モード(充電モード)では、モータ負荷101が駆動されていない状態、いわゆる負荷無しの状態において、制御装置25により1周期2πの間に、図66Aの状態と図66Bの状態が切り換えられ、この切り換え動作が継続され、バッテリ12を充電する平滑コンデンサ33間に生成される2次電圧V2は、発電電圧VfcがDC/DCコンバータ13により昇圧された電圧とされる。
図66Aの状態では、制御装置25によりローサイドアームLAのトランジスタLTがオンとされ、2次電圧V2とされている平滑コンデンサ33から流れ出るバッテリ12の充電電流IbとFCスタック11の発電電流Ifcの合成電流によりリアクトル32にエネルギが蓄積される一方、バッテリ12から第2負荷202に電力が供給される。モータ負荷101は、負荷無し(負荷ゼロ)の状態とされる。
図66Bの状態では、制御装置25によりハイサイドアームHAのトランジスタHTがオフとされる。これにより、FCスタック11及びリアクトル32からバッテリ12に充電電流Ibが供給されるとともに、FCスタック11からリアクトル32を通じて平滑コンデンサ33が2次電圧V2で充電される一方、バッテリ12から第2負荷202に電力が供給される。モータ負荷101は、負荷無し(負荷ゼロ)の状態とされる。
第4動作モードは、図示は省略するが、図3A、図3BのEVモード及び図4A、図4BのFCモードを切り換えるHVモードとされる。この場合、図3A、図3B、図4A、及び図4Bにおいて、負荷103は、モータ負荷101のみとされ、バッテリ12に第2負荷202が接続される。この第4動作モードでは、バッテリ12及びFCスタック11がDC/DCコンバータ13により昇圧モードで動作し、昇圧された2次電圧V2によりモータ負荷101を駆動するとともに、第2負荷202は、バッテリ12により駆動される状態となる。
図64に示した第1動作モード(OFFモード)、図65A、図65Bに示す第2動作モード(放電モード)、及び図66A、図66Bに示した第3モード(充電モード)、及び図示しない第4モード(HVモード)のいずれのモードにおいても、バッテリ12から第2負荷202に電力が供給される。
次に、上述した第3実施例の変形例の動作について、制御装置25により実行される図67のフローチャートを参照して説明する。
ステップS51において、制御装置25によりモータ負荷101と第2負荷202の合計負荷(総合負荷)である要求負荷(システム要求負荷)Psysが、所定値(所定電力)Pth1以下であるか否かが判定される。
ここでの所定値Pth1は、駆動モータ22の電力消費量がゼロ値あるいはゼロ値に近い所定電力消費量以下であって、第2負荷202が所定補機負荷以上であり、燃料電池車両としても機能する電源システム10Dの負荷としては比較的に小さな負荷に対応する。
要求負荷Psysが所定値Pth1以下である場合(ステップS51:YES)、ステップS52において、車速Vsがゼロ値を含む所定値(所定車速)Vth1以下(Vs≦Vth1)であるか否かが判定される。車速Vsが所定値Vth1以下である場合(ステップS52:YES)、次に、ステップS53において、バッテリ12のSOC値が所定値(所定SOC値、所定残容量値)SOCth1以上(SOC≧SOCth1)、例えば50[%](SOCth1=50[%])以上であるか否かが判定される。
SOC値が所定値SOCth1以上である場合(ステップS53:YES)、ステップS54において、OFFモードでの直列電源52の出力電力{(Vfc+Vb)×Ib=(Vfc+Vb)×Ifc}が要求負荷Psys、この場合、理解の便宜のためにモータ負荷101をゼロ値とし、第2負荷202の要求負荷Psysに対応する負荷電流IL2にバッテリ電流Ib(放電電流)を決定する。
次いで、ステップS55において、ステップS24と同様に、制御装置25は、コンバータ損失Pconvlossをゼロ値とすべく、DC/DCコンバータ13をオフ状態(非動作状態であるOFFモード)に制御する。
この場合、図64のOFFモードの動作状態に示すように、バッテリ12のみから第2負荷202に電力が供給される。FCスタック11は、非発電状態とされる。
次いで、ステップS56では、運転者のアクセル操作に基づくアクセルペダル開度θapが閾値開度(所定値、所定開度)θth1以上(θap≧θth1)になっているか否かが判定される。
そうでない場合には(ステップS56:NO)、ステップS51にもどる。
アクセルペダル開度θapが閾値開度θth1以上になっている場合には(ステップS56:YES)、ステップS57において、制御装置25は、電源システム10Dを図65A、図65Bを参照して説明したEVモード(放電モード)で動作させる。アクセルペダル開度θapがさらに大きく通常走行状態(モータ負荷103の通常負荷状態)になった場合には、図3A、図3BのEVモードと図4A、図4BのFCモードとを切り換えるHVモードでモータ負荷101及び第2負荷202を駆動する。
上述したステップS53の判定において、SOC値が所定値未満である場合(ステップS53:NO)、ステップS58において、ネット効率Nη[%]がピークとなるFCスタック11の発電出力Pfcpにより図66A、図66B示した充電モードでバッテリ12を充電する。バッテリ12は、第2負荷202に電力を供給する。
ここで、ネット効率Nη[%]がピークとなるFCスタック11の発電出力Pfcpとは、図68に示す特性224、226、228上のピーク点に対応する発電出力(発電電力)Pfcである。
ネット効率Nη[%]は、FCスタック11の使用電力[kW]を単位水素量[mol]で割った値で定義される。すなわち単位水素量当たりの使用電力として定義される。
特性224は、(Ifc×Vfc−補機負荷)/(反応水素量+パージ水素量)として算出される。
特性226は、(Ifc×Vfc−補機負荷−DC/DCコンバータ損失)/(反応水素量+パージ水素量)として算出される。
特性228は、(Ifc×Vfc−補機負荷−DC/DCコンバータ損失−バッテリ充電損失)/(反応水素量+パージ水素量)として算出される。
よって、ステップS58では、ネット効率Nηの特性228のピーク値に対応する発電電力PfcpでFCスタック11が発電される。
[第3実施例の変形例のまとめ]
以上説明したように、上述した第3実施例の変形例に係る電源システム10Dは、例えば、図54に示すように、FCスタック(発電装置)11と、FCスタック11の正側に、直列に、負側が接続されるバッテリ(蓄電装置)12と、下アームスイッチング素子としてのトランジスタLTを含むローサイドアームLAと、このローサイドアームLAに直列に接続され、上アームスイッチング素子としてのトランジスタHTを含むハイサイドアームHAと、ローサイドアームLAとハイサイドアームHAとの直列接続点とFCスタック11とバッテリ12との直接接続点との間に接続されたリアクトル32と、からなるDC/DCコンバータ13と、FCスタック11とバッテリ12との直列電源52に並列に接続される主負荷としてのモータ負荷101と、バッテリ12に並列に接続される補機負荷としての第2負荷202と、を有する。
制御装置25(制御手段)は、DC/DCコンバータ13を動作状態又は非動作(OFFモード)状態に制御するなか、所定条件下で、DC/DCコンバータ13を非動作状態に制御するとともに、第2負荷202の電力をバッテリ12で賄うように制御する。
この電源システム10Dでは、FCスタック11とバッテリ12の直列電源52に対して並列にDC/DCコンバータ13とモータ負荷101が接続され、バッテリ12に第2負荷202が接続される。
制御装置25は、所定条件下(例えば、モータ負荷101がゼロ又はゼロに近く、第2負荷202は、通常負荷になっている状態、Psys≦Pth1及びVs≦Vth1)で、電源システム10DをDC/DCコンバータ13が非動作状態の図64に示すOFFモード状態に制御するとともに、第2負荷202の電力をこの第2負荷202に並列に接続されているバッテリ12で賄うようにしたので、上記の所定条件下では、スイッチング損失がゼロとなる分、システム電力効率を向上させることができる。
なお、制御装置25は、バッテリ12のSOC値が前記所定値SOCth1を下回る値となった場合に、DC/DCコンバータ13を動作状態に遷移させ(図66A、図66Bの充電モード)、第2負荷202の電力をバッテリ12の電力で賄うとともに、FCスタック11の発電電力によりバッテリ12を充電することで、FCスタック11の電力の補助電力源としてのバッテリ12の電力(補助電力)の欠乏を防止することができる。
この場合、FCスタック11のネット効率Nη[%]がピークとなるFCスタック11の発電出力Pfcpとすることで、システム電力効率を一層向上させることができる。
なお、補機負荷としての第2負荷202に、ナビゲーション装置等の付属品負荷及び空調用機器(空調機負荷)260が含まれるようにすると、システム電力効率の高い状態で前記付属品負荷及び前記空調機負荷を動作させることができる。
さらに、前記補機負荷である第2負荷202として、FCスタック11に圧縮空気を供給するエアポンプ21を含み、エアポンプ21をバッテリ12に並列に接続されているようにしたので、FCスタック11の電力効率が向上する。
電源装置100が搭載され、主負荷が駆動モータ22である燃料電池車両は、電力効率を向上させることができる。
バッテリ12に並列に接続される第2負荷202として、図55等に示すように、FCスタック11に圧縮空気を供給するエアポンプ負荷102を含むことで、DC/DCコンバータ13を非動作状態から動作状態に遷移させるときにエアポンプ21を動作させておくことができ、FCスタック11を良好に発電状態に遷移させることができる。また、FCスタック11の発電を停止した状態であってDC/DCコンバータ13の非動作状態に、エアポンプ21を動作させることができるので、劣化制御や水滴除去のために行う反応ガスの供給を行うことができる。
図69は、上述した第3実施例の変形例の動作イメージを示すタイムチャートである。
SOC値より下の特性において、太い実線は第3実施例の変形例によるものを示し、太い破線は比較例によるものを示している。
時点t31〜t32及び時点t33〜t34の間では要求負荷Psysが閾値負荷Pth1以下であるので、電源システム10Dは、DC/DCコンバータ13が非動作状態となるOFFモード(図64)で制御する。時点t32〜t33の間では、時点t32でSOC値が閾値SOCth1を下回る値となったので、ネット効率Nηのピークの発電電力PfcpでFCスタック11を発電させ、バッテリ12を充電モード(図66A、図66B)充電することで効率を向上させている。
ここで、図8を参照して説明したようなバッテリ電圧VbのIV特性122とFC電圧VfcのIV特性120とが交差するような組み合わせを考える場合には、例えば図70に示すように、バッテリ電圧Vbatは、バッテリセルの個数(セル数)により一義的に決定され、FC電圧Vfcは、燃料電池セルの個数(セル数)により一義的に決定されることを考慮すれば、Vfc=Vbatとなるセル数を有する燃料電池スタック11及びバッテリ12を選択するようにすればよい。
また、電流出力を2倍にする場合には、図71及び図72に示すように、バッテリ12のバッテリ電圧Vbat及びFCスタック11のFC電圧Vfcをそれぞれ1/2に低下させた2並列の電源システム10Eとして構成することができる。その場合、バッテリ12及びFCスタック11のセル数は、それぞれ、図72に並列Vbat及び並列Vfcの特性として示すように、1/2になる。3並列化等、n並列化を図ることもできる。ただし、並列化した場合には、電圧は低くなるが電流が増加するので、コンバータ損失の増加に繋がる点に留意する。なお、並列化する際には、同じ特性のバッテリ12、及び同じ特性のFCスタック11を用いることが好ましい。
なお、この発明は上述した実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、例えば、以下に説明する種々の構成等を採り得ることはもちろんである。
第1に、第1〜第3実施例の電源システム10(図1)、10B(図22)、10C(図38)等において、バッテリ12と、ダイオード111及びFCスタック11と、を入れ替えた直列電源の電源システムとする。
第2に、第1〜第3実施例の電源システム10(図1)、10B(図22)、10C(図38)等において、ダイオード111及びFCスタック11を、エンジンにより駆動される発電機(第1電源装置としての発電装置)に代替した直列電源の電源システムを備えた、いわゆるレンジエクステンダーEVや、ハイブリッドEVに適用する。
第3に、第1〜第3実施例の電源システム10(図1)、10B(図22)、10C(図38)等において、ダイオード111及びFCスタック11を、車両外部の交流電源から充電器を通じて充電されるバッテリに代替した直列電源の電源システムを備えた、いわゆるプラグインEVに適用する。