JP2013026239A - リアクトル - Google Patents

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Abstract

【課題】組立作業性に優れるリアクトル、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】リアクトルは、コイル2と、コイル2が配置される磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体10を収納するケース4とを具える。ケース4は、金属材料から構成される底板部40と、組合体10の周囲を囲む側壁部41とを具え、側壁部41は絶縁性樹脂により構成される。底板部40には、複数の貫通孔401hが設けられており、側壁部41に一体に形成された複数の突起41pを各貫通孔401hに挿通した後、その先端部分を溶融し、溶融前の先端部分よりも大きい太径部を形成する。太径部が底板部40に掛止されることで、底板部40と側壁部41とは一体化される。
【選択図】図3

Description

本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトル及びその製造方法に関するものである。特に、組立作業性に優れるリアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、一対のコイル素子を有するコイルと、コイルが配置され、閉磁路を構成する環状の磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填される封止樹脂とを具えるものを開示している。
ケースは、通常、アルミニウムやその合金からなり、組合体の機械的保護を図る他、放熱経路に利用される。このケースは、一般に、底板と、底板から立設する側壁とが一体に成形された一体化物である。従って、リアクトルを製造する場合、上記組合体を持ち上げ、ケースの開口部から挿入する。
特開2010-263088号公報
このようなリアクトルの組立作業において、その作業性を向上することが望まれている。
コイルは、代表的には銅からなり、磁性コアは、代表的には鉄や鋼などからなることから、コイルとコアとの組合体は、重量物である。従来のリアクトルでは、上記重量物の組合体をケースの上方の開口部から挿入するしかなく、組立作業性に劣る。
そこで、本発明の目的の一つは、組立作業性に優れるリアクトルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、リアクトルを容易に組み立てられるリアクトルの製造方法を提供することにある。
本発明は、ケースを底板と側壁とが一体成形された成形物とするのではなく、底板部と側壁部とを別部材とすると共に、一方の構成材料を溶融して形成した部分により、両者を一体化する構成とすることで、上記目的を達成する。
本発明のリアクトルは、コイルと、上記コイルが配置される磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとの組合体を収納するケースとを具える。上記ケースは、上記リアクトルが設置対象に設置されたときに当該設置対象に接する底板部と、上記底板部とは独立した部材であり、上記組合体の周囲を囲む側壁部と、上記底板部と上記側壁部とを一体化する複数の固定部とを具える。上記底板部及び上記側壁部における相互の接触箇所が異種の材料により構成されている。上記各固定部は、上記底板部及び上記側壁部のうち、一方の部材の接触箇所の構成材料から構成された軸部と太径部とを有する。上記各軸部はそれぞれ、他方の部材の接触箇所に設けられた複数の貫通孔内における上記一方の部材側に配される。上記各太径部は、上記軸部に連続して設けられ、上記貫通孔の最小径よりも大きい部分を有する。そして、少なくとも上記太径部は、上記構成材料が溶融されて形成されている。
上記構成を具える本発明リアクトルは、例えば、以下の本発明リアクトルの製造方法により製造することができる。本発明のリアクトルの製造方法は、コイルと磁性コアとの組合体をケースに収納してリアクトルを製造する方法に係るものであり、以下の準備工程と、組合体配置工程と、側壁部配置工程と、一体化工程とを具える。
準備工程:上記ケースの構成部品として、上記リアクトルが設置対象に設置されたときに当該設置対象に接する底板部と、上記底板部とは独立した部材で枠状の側壁部とを準備する工程。
組合体配置工程:上記底板部に上記組合体を配置する工程。
側壁部配置工程:上記底板部に配置された上記組合体の周囲を囲むように上記側壁部を配置する工程。
一体化工程:上記底板部と上記側壁部とを一体化する工程。
上記準備工程では、上記底板部及び上記側壁部において相互の接触箇所が異種の材料により構成されたものを用意する。また、上記底板部及び上記側壁部のうち、一方の部材は、その接触箇所に複数の突起が設けられたものを用意し、他方の部材は、その接触箇所に上記各突起が挿通される複数の貫通孔が設けられたものを用意する。
上記側壁部配置工程では、上記各貫通孔に上記各突起をそれぞれ挿入することで、上記底板部及び上記側壁部の相互の位置決めを行う。
上記一体化工程では、上記各貫通孔に挿通された突起のうち、少なくとも先端部分を溶融して、溶融前の上記先端部分よりも大きい太径部を形成する。
本発明リアクトルに具えるケースは、底板部と側壁部とが別部材であり、上記本発明製造方法に規定するように、コイルと磁性コアとの組合体を底板部に配置してから、底板部と側壁部とを一体化して、組合体をケースに収納した状態にすることができる。従って、従来のケースを用いた場合のように重量物の組合体をケースの高さよりも高く持ち上げる必要がなく、本発明リアクトルや本発明製造方法は組立作業性に優れる。
かつ、本発明リアクトルや本発明製造方法では、底板部及び側壁部のうち、一方の部材の構成材料を溶融して接着材料として利用すると共に、この溶融して再度固化した材料からなる上記太径部を他方の部材に掛止する構造により、底板部と側壁部とを一体化する。即ち、本発明リアクトルや本発明製造方法では、底板部と側壁部との両者を一体化する部材として、両者の構成材料を利用することから、例えば、ボルトやネジといった別部材を利用する場合に比較して、部品点数が少ない上に、別部材を逐一配置したり、締め付ける工程が不要であり、例えば、別途接着剤を利用する場合に比較して、塗布工程や硬化工程などが不要である。これらの点からも本発明リアクトルや本発明製造方法は、組立作業性に優れる。また、上述のように一方の部材を溶融すると共に、両者を掛止する構造であることで、底板部と側壁部とを確実に固定でき、両者の接続箇所における信頼性が高い。更に、ボルトやネジを用いる場合、ボルトやネジを締結するためにネジ加工を施した締結部を側壁部などに設ける必要があり、締結部のスペースを確保するために、ケースの小型化に限界があった。本発明リアクトルでは、底板部と側壁部との一体化にボルトやネジを使用しないため、上記締結部が不要である。この点から、本発明リアクトルは、側壁部などの設計の自由度が高められる上に、ケースの小型化を図ることができる。また、本発明製造方法は、上記本発明リアクトルを容易に組み立てられる。
更に、本発明リアクトルでは、底板部と側壁部とが別部材であることで、それぞれを別個に製造でき、製造形態の自由度、構成材料の選択の幅が大きい。例えば、上記組合体が接触又は近接される底板部をアルミニウムなどの金属材料により構成すると、当該底板部を放熱経路として利用でき、放熱性に優れたリアクトルとすることができる。上記組合体の周囲に配置される側壁部を樹脂といった一般に金属材料よりも軽い材料であって、金属材料よりも電気絶縁性に優れるもの、例えば、絶縁性樹脂により構成すると、軽量なリアクトルとしたり、コイルとケースとの間の絶縁性を高められたり、側壁部の内周面と組合体のコイルの外周面との間隔を狭くできるため小型なリアクトルとしたりすることができる。また、側壁部が樹脂製である場合、(1)軽量であることで底板部への配置が容易である、(2)金属材料よりも低温で溶融し易く、上記太径部を形成し易い、といった点から、リアクトルの組立作業性に優れる。
上記本発明リアクトルの一形態として、上記各貫通孔は、段差形状であり、上記一方の部材側の領域が小径孔で構成され、上記各貫通孔における上記一方の部材から離れた側の領域が大径孔で構成されており、上記太径部が上記大径孔を塞ぐように配された形態が挙げられる。
上記形態では、貫通孔がいわゆる段付き孔になっていることで、各太径部を各貫通孔内に収納させて、当該貫通孔から露出しない形態とすることができる。この場合、貫通孔を具える他方の部材の外面を平坦にできる。
上記本発明リアクトルの一形態として、上記底板部が金属材料により構成され、上記側壁部が絶縁性樹脂から構成されており、上記各貫通孔が上記底板部に設けられ、上記各固定部が上記絶縁性樹脂により構成された形態が挙げられる。
側壁部の全体が絶縁性樹脂により構成されることで、上記形態は、上述のようにコイルとの絶縁の確保、小型化、軽量化を図ることができる。また、側壁部が複雑な形状であっても射出成形などで容易に成形できるため、上記形態は、側壁部の生産性に優れる。更に、上記形態は、底板部が金属材料により構成されることで、上述のように底板部を放熱経路に利用でき、放熱性に優れる。そして、上記形態では、絶縁性樹脂を溶融して太径部を形成することから、金属材料を溶融する場合と比較して、低温でかつ短時間で太径部を具える固定部を形成できる。また、一般に、金属材料は樹脂よりも融点が高いため、絶縁性樹脂のみを確実に、かつ十分に溶融可能であることから、太径部を十分に形成でき、上記形態は、底板部と側壁部との接続箇所の信頼性が高い。
本発明リアクトルの一形態として、上記ケースに充填された封止樹脂を更に具える形態が挙げられる。
本発明リアクトルは、封止樹脂を具えていない形態とすることができるが、上記形態のように封止樹脂を具えることで、材質によっては封止樹脂を底板部と側壁部との接着材料に利用できる。この場合、例えば、固定部を、封止樹脂を硬化するまでの仮止めとして利用でき、固定部の個数の低減や各固定部の細径化などを図ることができる。その他、封止樹脂を具える上記形態は、(1)封止樹脂を介して底板部などにコイルの熱を伝達でき、放熱性を向上できる、(2)コイルとコアとの組合体の機械的保護や外部環境からの保護を図ることができる、(3)使用時の振動を吸収して騒音を防止できる、などの効果を有する。この形態では、底板部と側壁部との間にシール部材を配置すると、未硬化樹脂の漏出を効果的に防止できて好ましい。
その他、本発明リアクトルの一形態として、上記底板部の一面に形成されて、当該底板部に上記コイルを固定する接合層を具える形態が挙げられる。
上記形態は、接合層によりコイルが底板部に固定されることで、封止樹脂の有無を問わず、ケースに対する所定の位置にコイルを固定できる。また、本発明リアクトルは、底板部と側壁部とが別部材であるため、側壁部を取り外した状態で接合層の形成が可能であり、接合層の形成作業が行い易い。これらの点から、上記形態は、作業性に優れる。また、上記形態は、コイルと底板部との間に接合層が介するだけであるため、ケース底面とコイルとの間隔が小さく、小型なリアクトルとすることができる。
上記接合層を具える形態として、上記接合層が放熱層と、絶縁性接着剤により構成された接着層とを具える多層構造であり、上記底板部が金属材料により構成された形態が挙げられる。上記接着層は、上記コイルに接する側に配置され、上記放熱層は、上記底板部に接する側に配置される。
上記形態では、(1)底板部が熱伝導性に優れるアルミニウムなどの金属材料で構成されている点、(2)この底板部に接着層によりコイルが十分に固定されている点、(3)放熱層を有する点から、放熱層及び底板部を介してコイルの熱を外部に効率よく伝達できる。従って、上記形態は、封止樹脂の有無、封止樹脂の材質によらず、放熱性に優れる。また、コイルと接触する接着層が絶縁性材料により構成されることで、放熱層や底板部が一般に導電性を有する金属材料から構成された場合でも、コイルと底板部との間を絶縁できることから、放熱層を含めた接合層を薄くすることができる。このことから、上記形態は、放熱性に優れる上に小型である。
上記放熱層の少なくとも一部は、熱伝導率が2W/m・K超の材料により構成されることが好ましい。
このような高熱伝導率の材料で放熱層の少なくとも一部が形成されていることで、放熱性により一層優れたリアクトルとすることができる。
本発明リアクトルは、組立作業性に優れる。本発明リアクトルの製造方法は、本発明リアクトルを生産性よく製造することができる。
実施形態のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態のリアクトルの概略を示す分解斜視図である。 実施形態のリアクトルに具える底板部と側壁部とが一体化される前の状態を示す分解斜視図である。 実施形態のリアクトルに具える底板部と側壁部とを一体化する工程を説明する工程説明図である。 実施形態のリアクトルに具えるコイルと磁性コアとの組合体の概略を示す分解斜視図である。
以下、図面を参照して、実施形態のリアクトルを説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、以下の説明では、リアクトルを設置したときに設置側を下側、その対向側を上側として説明する。
≪リアクトルの全体構成≫
リアクトル1は、コイル2と、コイル2が配置される磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体10を収納するケース4とを具える。ケース4は、底板部40(図2)と、底板部40から立設する側壁部41とを具え、底板部40と対向する側が開口した箱体である。リアクトル1の最も特徴とするところは、ケース4を構成する底板部40と側壁部41とが一体成形されておらず独立した別部材であり、かつ底板部40及び側壁部41のうち、一方の構成材料を溶融して形成した部分を利用して底板部40と側壁部41とを一体にしている点にある。以下、ケース4をまず説明し、その他の構成を順次説明する。
[ケース]
ケース4の説明は、図2〜図4を参照して行う。ケース4は、平板状の底板部40と、底板部40に立設する枠状の側壁部41とを具え、上述のように底板部40と側壁部41とは別部材である。そして、この例では、側壁部41の構成材料を溶融して形成した太径部41f(図4(C))が底板部40に掛止されて、底板部40と側壁部41とが一体化されている。
(底板部)
底板部40は、ここでは矩形状板であり、四隅のそれぞれから突出した取付部400を有する。
上記各取付部400にはそれぞれ、設置対象にケース4を固定するボルト(図示せず)が挿通されるボルト孔400hが設けられている。即ち、底板部40自体が設置対象に固定される構成である。各取付部400は、後述する側壁部41の各取付部411に接触する箇所であり、ボルト孔400hは、側壁部41のボルト孔411hに連続するように設けられている。ボルト孔400h,411hは、ネジ加工が成されていない貫通孔、ネジ加工がされたネジ孔のいずれも利用でき、個数なども適宜選択することができる。
底板部40の外形は適宜選択することができる。例えば、側壁部41が取付部を具えておらず、底板部40のみが取付部400を具える形態とする場合、底板部40の取付部400が側壁部の外形から突出するように底板部40の外形を形成する。或いは、側壁部41のみが取付部411を有し、底板部40が取付部を有しない形態とする場合、側壁部41の取付部411が底板部40の外形から突出するように側壁部41の外形を形成する。
また、底板部40は、側壁部41との接触箇所に複数の貫通孔401hが設けられている。ここでは、各貫通孔401hは、各取付部400の取付孔400hの近傍にそれぞれ設けられており、底板部40は、合計四つの貫通孔401hを具える。
各貫通孔401hはいずれも、同一形状で同じ大きさであり、図4に示すように底板部40の対向する二面、即ち、ケース4を組み立てたときに内側に配置される内面40iから、同外側に配置される外表面40oに貫通する円筒孔である。貫通孔401hの形状は、円形以外の非円形状でもよく、例えば、三角形状や矩形状、星形状などの多角形状、楕円状などの曲面形状、歯車状などの異形状などが挙げられる。その他、貫通孔401hは、長孔としてもよい。円筒孔は、ドリルなどを用いて容易に形成でき、生産性に優れ、上述の非円形状や長孔の場合、後述する固定部41Fとの接触面積を大きくし易く、接続強度の向上を図ることができる。非円形状の孔や長孔などは、所望の形状のパンチを用いて、打ち抜くことで形成できる。
また、貫通孔401hは、図4(A)に示すように段差形状であり、ケース4を組み立てたときに側壁部41の底面41d側となる領域に直径が小さい小径孔401nを具え、側壁部41の底面41dから離れた側となる領域に、小径孔401nよりも直径が大きい大径孔401fを具える段付き孔である。即ち、底板部40の内面40i側の領域に小径孔401nが設けられ、外表面40o側の領域に大径孔401fが設けられている。段付き孔は、公知の方法により形成可能であり、代表的には、切削加工、プレス加工、適宜鍛造加工などを利用することで形成できる。
小径孔401n及び大径孔401fは、同軸に配置された大小の円筒孔であり、各直径はそれぞれ、その軸方向において一様である。そのため、小径孔401nの直径が貫通孔401hの最小径となる。小径孔401n及び大径孔401fの直径、軸方向の長さは適宜選択することができる。直径が大きいほど、後述する固定部41Fが大きくなり、底板部40と側壁部41との接続強度を高められ、直径が小さいほど、固定部41Fの細径化によりケース4の小型化を図ることができる。なお、小径孔401nと大径孔401fとを異なる形状としてもよい。
貫通孔401hの段差は、三つ以上としてもよい。また、小径孔401nを円筒孔ではなく、底板部40の内面40i側から大径孔401fに向かって先細りするテーパー孔としてもよい。この場合、後述する突起41pを挿入し易い。また、この場合、テーパー孔の最小径よりも大径孔401fの直径を大きくすることで段差を設けられる。大径孔401fも、小径孔401nから底板部40の外表面40oに向かって広がるテーパー孔としてもよい。この場合、大径部401fの体積を大きくできる。
貫通孔401hの個数及び配置位置は、適宜選択することができる。貫通孔401hの個数が多いと、固定部41Fの個数が多くなることから、接続強度を高められ、固定部41Fの個数を少なくすると、後述する太径部41fの形成作業を低減でき、一体化作業の作業性に優れる。
そして、各貫通孔401h内には、図4(C)に示すように側壁部41の構成材料で構成された固定部41Fが配されている。固定部41Fは、小径孔401nに配される軸部41aと、大径孔401fに配される太径部41fとを具え、太径部41fの直径は、軸部41aの直径よりも大きい。従って、太径部41fは、貫通孔401hにおいて小径孔401nと大径孔401fとの段差部分に掛止される。この掛止により、底板部40と側壁部41とが一体化される。固定部41Fのより詳しい構成及び形成方法は、後述する。
(側壁部)
側壁部41は、矩形枠状体であり、一方の開口部を底板部40により塞いでケース4を組み立てたとき、上記組合体10の周囲を囲むように配置され、他方の開口部が開放される。この例では、側壁部41の外形は、開口側領域がコイル2と磁性コア3との組合体10の外周面に沿った形状(ここでは平面と曲面とを組み合せた形状)であり、リアクトル1を設置対象に設置したときに設置側となる領域が、上記開口側領域よりも外方に突出した段差形状で、上記底板部40の外形に沿った形状である。側壁部41の形状は、適宜変更することができる。
側壁部41の設置側領域は、底板部40と同様に、四隅のそれぞれから突出する取付部411を具え、各取付部411には、ボルト孔411hが設けられて、取付箇所を構成している。底板部40と側壁部41とを組み合せてケース4を形成した場合、この取付部400は、側壁部41の取付部411と重なる。ボルト孔411hは、側壁部41の構成材料のみにより形成してもよいし、別材料からなる筒体を配置させて形成してもよい。例えば、側壁部41を樹脂で構成する場合、上記筒体として、真鍮、鋼、ステンレス鋼などの金属からなる金属管を利用すると強度に優れ、樹脂のみから構成される場合に比較してクリープ変形を抑制できる。ここでは、金属管を配置してボルト孔411hを形成している。
そして、このケース4は、組み立てた状態において、図4(C)に示すように、底板部40の内面40iに接触する側壁部41の底面41dから突出し、底板部40の各貫通孔401h内に配置された固定部41Fを具えることを最大の特徴とする。
各固定部41Fは、側壁部41の構成材料により構成されている。また、各固定部41Fは、上述の段付き孔からなる貫通孔401hの内周形状に沿って、当該貫通孔401hの内周面に接して設けられている。そのため、各固定部41Fも段差形状であり、小径孔401nに配された円柱状の軸部41aと、軸部41aに連続して設けられ、大径孔401fに配された円柱状の太径部41fとを具える。軸部41aの直径は、その軸方向に一様であり、小径孔401nの直径に実質的に等しい。太径部41fの直径は、その軸方向に一様であり、大径孔401fの直径に実質的に等しく、かつ貫通孔401hの最小径(実質的に軸部41aの直径)よりも大きい。この太径部41fは、大径孔401fを塞ぐように設けられている。そして、ケース4を組み立てた状態において、軸部41aと太径部41fとの段差と貫通孔401hの段差とが互いに掛止され、底板部40と側壁部41とが接続される。
太径部41fの外表面は、ここでは、底板部40の外表面40oと面一な平面で形成されている。つまり、太径部41fは、底板部40の外表面40oから突出していない。そのため、底板部40の外表面40oは、その全面が設置対象に接触可能である。或いは、太径部41fの外表面は、底板部40の外表面40oよりも凹んだ適宜な形状、例えば、断面円弧状の湾曲面とすることができる。この場合も、底板部40の外表面40oに太径部41fによる出っ張りが無いため、外表面40oの全面が設置対象に接触可能である。太径部41fの外表面の形状は、溶融に利用する治具100の形状により適宜変更することができ、太径部41fの少なくとも一部が貫通孔401hの最小径よりも大きくなるように形成するとよい。
固定部41Fの少なくとも一部は、側壁部41の構成材料を溶融して再度固化して形成されている。ここでは、少なくとも太径部41fは、側壁部41に予め設けられた突起41pの先端部分が溶融されて形成された箇所である。軸部41aは、太径部41fの形成時の溶融条件によって、上記突起41pのままの場合、突起41pの一部又は全部が溶融されて形成された箇所の場合のいずれも有り得る。
固定部41Fを形成するために、底板部40に組み付ける前の状態の側壁部41は、図3,図4(A),図4(B)に示すように底面41dから底板部40側に向かって突出した複数の突起41pを有する。
各突起41pは、側壁部41と底板部40とを組み付けたとき、底板部40の各貫通孔401hをそれぞれ挿通するように、底面41dにおいて貫通孔401hの形成位置に対応した位置に設けられている。
ここでは、各突起41pはいずれも、同様の形状、大きさで、軸方向の直径が一様な円柱状であり、その直径は、底板部40に設けられた貫通孔401hの小径孔401nの直径(或いは最小径)よりも若干小さい。従って、底板部40の貫通孔401hに突起41pを挿通し易く、図4(B)に示すように突起41pを挿通した状態では、小径孔401nと突起41pとの間に若干の隙間が設けられる。突起41pの直径を小径孔401nの直径よりもある程度小さくしてもよいが、突起41pの直径と小径孔401nの直径との差が小さいことで、側壁部41の突起41pを底板部40の貫通孔401hに挿通したとき、底板部40と側壁部41とを精度良く位置決めできる。
突起41pの外形は、貫通孔401hの小径孔401nに挿通可能であれば、その内周形状に沿った形状でなくてもよく、例えば、角柱状などとしてもよい。
各突起41pの長さは、図4(B)に示すように、溶融前において、底板部40の貫通孔401hに挿通したとき、先端部分が大径孔401fから十分に突出するように、貫通孔401hの軸方向の長さよりも長くすることが好ましい。
なお、貫通孔401hと挿通した突起41pとの間に比較的大きな隙間ができる場合、例えば、突起41pの直径が小径孔401nの直径よりも小さい場合や突起41pの外形と貫通孔401hの小径孔401nとが相似で無い場合などでは、突起41pの溶融量を多くして、溶融した材料により、上記隙間を埋めることができる。この場合、突起41pを十分に長くするとよい。
突起41pの形成箇所は、底板部40と側壁部41とが接続できれば、側壁部41において底板部40との接触箇所(ここでは底面41d)の任意の箇所に設けられる。ここでは、側壁部41の取付部411において、後述するシール部材6が配置されるシール溝416よりも外周縁寄りに突起41pを設けているが、シール溝416よりも内周側に突起41pを設けてもよい。この場合、側壁部41の設置側領域の出っ張りを小さくし易く、当該設置側領域の小型化を図ることに寄与すると期待される。
一方、側壁部41の開口側領域には、組合体10に具える各外側コア部32(後述)の上面を覆うように庇状部を具える。従って、ケース4に収納された組合体10は、図1に示すようにコイル2が露出され、磁性コア3は実質的にケース4の構成材料に覆われる。上記庇状部を具えることで、(1)耐振動性の向上、(2)ケース4(側壁部41)の剛性の向上、(3)磁性コア3(外側コア部32)の外部環境からの保護や機械的保護、(4)組合体10の脱落防止(当て止め)、といった種々の効果が得られる。上記庇状部を省略して、コイル2と、一方或いは両方の外側コア部32の上面との双方が露出される形態としてもよい。更に、この例に示す側壁部41は、一方(図2において手前側)の庇状部を、コイル2を構成する巻線2wの各端部がそれぞれ接続される一対の端子金具8を固定する端子台410として利用する。
ここでは、図2に示すように側壁部41に凹溝410cが形成されており、凹溝410cに端子金具8が嵌め込まれる。この端子金具8の上方が端子固定部材9により覆われ、端子固定部材9はボルト91により側壁部41に固定されて端子台410を構成する。
なお、側壁部41を絶縁性樹脂で構成する場合、端子固定部材9及びボルト91の使用に代えて、端子金具8をインサート成形することにより、側壁部、端子金具8、端子台を一体とした形態とすることができる。この形態は、部品点数及び組立工程数が少なく、リアクトルの生産性に優れる。
(材質)
底板部40と側壁部41とは別部材であることから、それぞれを異種材料により構成することができる。特に、本発明リアクトルでは、ケース4が組み立てられた状態において底板部40及び側壁部41における相互の接触箇所が少なくとも異種材料により構成され、かつ、一方の接触箇所の構成材料を溶融して形成された太径部41fを含む固定部41Fにより、底板部40及び側壁部41の両者を一体化する。従って、各接触箇所の構成材料には、一方の材料を溶融する際、他方の材料は溶融しない、という性質を有するものを利用することができる。
底板部40及び側壁部41のそれぞれにおいて、接触箇所とそれ以外の箇所とが異なる材質でもよいが、接触箇所を含めた全体が一様な材料で構成されていると、成形し易く、底板部40及び側壁部41の製造性に優れて好ましい。
底板部40の構成材料は、放熱経路に利用できるように、熱伝導率が高い材料、例えば、金属材料といった導電性材料が好ましい。特に、底板部40はコイル2の近傍に配置されることから、非磁性金属が好ましい。
具体的な金属は、例えば、アルミニウム(熱伝導率:237W/m・K)やその合金、マグネシウム(156W/m・K)やその合金、銅(398W/m・K)やその合金、銀(427W/m・K)やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304:16.7W/m・K)が挙げられる。上記アルミニウムやマグネシウム、その合金は非磁性である上に、軽量であり、ケースの構成材料に利用することでリアクトルの軽量化に寄与することができる。特に、アルミニウムやその合金は、耐食性に優れ、マグネシウムやマグネシウム合金は制振性に優れるため、車載部品に好適に利用できる。金属材料により底板部40を形成する場合、ダイキャストといった鋳造やプレス加工(代表的には打ち抜き)、適宜切削などにより形成することができる。
底板部40を導電性材料により形成する場合、アルマイト処理などを施して、その表面に極薄い絶縁被膜(厚さ:1μm〜10μm程度)を具えた形態とすると、コイル2との間の絶縁性を高められる。
或いは、底板部40の構成材料は、放熱性に優れる樹脂が挙げられる。例えば、窒化珪素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、ムライト、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスを含有する樹脂が挙げられる。セラミックス及び樹脂の双方が絶縁性材料であると、底板部40とコイル2との間の絶縁性を高められる。樹脂は後述する側壁部41の構成材料に列挙するものが利用できる。
或いは、底板部40の構成材料は、上記セラミックスが挙げられる。セラミックスから構成された底板部40は、電気絶縁性、耐熱性、放熱性に優れる。
側壁部41の構成材料は、コイル2の周囲に配置されることから、電気絶縁性及び耐熱性に優れる材料が好ましい。例えば、樹脂、特に絶縁性樹脂が挙げられる。具体的な樹脂は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン6、ナイロン66、液晶ポリマーなどが挙げられる。上記列挙した樹脂のように熱可塑性樹脂とすると、太径部41fを容易に形成できて好ましい。また、側壁部41を構成する樹脂も上述のセラミックスからなるフィラーを含有する形態とすると、放熱性を高められる。
或いは、側壁部41の構成材料は、金属材料とすることができる。
従って、ケース4の構成材料の組み合せは、(α)底板部40が金属材料、側壁部41が樹脂(特に絶縁性樹脂)、(β)双方が金属材料、(γ)双方が樹脂、(δ)底板部40が樹脂、側壁部41が金属材料、といういずれの形態も取り得る。
上記形態(α)では、側壁部41の突起41pが樹脂で構成されることで、突起41pを容易に溶融することができ、組立作業性に優れる。また、上記形態(α)は、突起41pの溶融の際、底板部40が溶融する恐れが実質的にない。更に、この形態(α)は、金属製の底板部40により放熱性に優れ、側壁部41を絶縁性樹脂とすることで、絶縁性に優れる上に小型、軽量化を図ることができる。
上記形態(β)は、放熱性、及び強度に優れるケースとすることができる。上記形態(γ)は、特に絶縁性樹脂とする場合、絶縁性に優れる上に、軽量で小型なケースとすることができる。上記形態(δ)は、コイル2と磁性コア3との組合体10の外周に配置される側壁部41が金属材料であることで強度に優れる上に、材質によっては磁気シールドとして機能することができ、樹脂製の底板部40により軽量化を図ることができる。
ここでは、底板部40をアルミニウム、側壁部41をPBT樹脂により構成している(上記形態(α)を採用)。従って、底板部40の熱伝導率が側壁部41よりも十分に高く、放熱性に優れる。また、ここでは、図1に示すようにリアクトル1を組み立てた状態において、コイル2と側壁部41とを近接させており、コイル2の外周面と側壁部41の内周面との間隔が0mm〜1.0mm程度と非常に狭い。
[コイル]
コイル2は、図5を主に参照して説明する。コイル2は、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a,2bと、両コイル素子2a,2bを連結するコイル連結部2rとを具える。各コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数の中空の筒状体であり、各軸方向が平行するように並列(横並び)され、コイル2の他端側(図5では右側)において巻線2wの一部がU字状に屈曲されてコイル連結部2rが形成されている。この構成により、両コイル素子2a,2bの巻回方向は同一となっている。
なお、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子の巻線の一端部同士を溶接や半田付け、圧着などにより接合されたコイルとすることができる。
巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を具える被覆線を好適に利用できる。導体は、平角線が代表的であり、その他、横断面が円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状のものを利用できる。平角線は、(1)占積率が高い、(2)底板部40に形成された接合層42(後述)との接触面積を広く確保し易い、(3)端子金具8との接触面積を広く確保し易い、といった利点がある。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用し、各コイル素子2a,2bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルである。また、ここでは、各コイル素子2a,2bは、端面形状が長方形の角部を丸めた形状であるが、円形状など、適宜変更することができる。
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、コイル2の一端側(図5では左側)においてターン形成部分から適宜引き延ばされて、代表的にはケース4の外部に引き出される(図1)。巻線2wの両端部は、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、銅やアルミニウム、その合金といった導電材料からなる端子金具8の一端部81(図1,2)が半田や溶接、圧着などにより接続される。この端子金具8を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。なお、端子金具8の形状は一例であり、一端部81の形状を平板状ではなくU字状にするなど適宜変更することができる。
[磁性コア]
磁性コア3の説明は、図5を参照して行う。磁性コア3は、各コイル素子2a,2bに覆われる一対の内側コア部31と、コイル2が配置されず、コイル2から露出されている一対の外側コア部32とを有する。各内側コア部31はそれぞれ、各コイル素子2a,2bの内周形状に沿った外形を有する柱状体(ここでは、直方体の角部を丸めた形状)であり、各外側コア部32はそれぞれ、一対の台形状面を有する柱状体である。磁性コア3は、離間して配置される内側コア部31を挟むように外側コア部32が配置され、各内側コア部31の端面31eと外側コア部32の内端面32eとを接触させて環状に形成される。これら内側コア部31及び外側コア部32により、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。
内側コア部31は、磁性材料からなるコア片31mと、代表的には非磁性材料からなるギャップ材31gとを交互に積層して構成された積層体であり、外側コア部32は、磁性材料からなるコア片である。
各コア片は、磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体を利用できる。上記成形体は、例えば、Fe,Co,Niといった鉄族金属、Fe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-AlなどのFe基合金、希土類金属やアモルファス磁性体といった軟磁性材料からなる粉末を用いた圧粉成形体、上記粉末をプレス成形後に焼結した焼結体、上記粉末と樹脂との混合体を射出成形や注型成形などした成形硬化体が挙げられる。その他、コア片は、金属酸化物の焼結体であるフェライトコアなどが挙げられる。成形体は、複雑な立体形状のコア片や磁性コアでも容易に形成できる。
圧粉成形体の原料には、上記軟磁性材料(特に金属材料)からなる粒子の表面に絶縁被膜を具える被覆粒子からなる被覆粉末を好適に利用できる。被覆粉末を成形後、通常、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で熱処理を施すことで圧粉成形体が得られる。絶縁被膜は、代表的にはシリコーン樹脂やリン酸塩からなるものが挙げられる。ここでは、各コア片は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
ギャップ材31gは、インダクタンスの調整のためにコア片間に設けられる隙間に配置される板状材である。ギャップ材31gの構成材料は、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、コア片よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料が挙げられる。或いは、ギャップ材31gとして、セラミックスやフェノール樹脂などの非磁性材料に磁性粉末(例えば、フェライト、Fe,Fe-Si,センダストなど)が分散した混合材料からなるものを用いると、ギャップ部分の漏れ磁束を低減できる。エアギャップとすることもできる。コア片の材質によってはギャップ材を具えていない形態とすることができる。コア片やギャップ材の個数は、リアクトル1が所望のインダクタンスとなるように適宜選択することができる。また、コア片やギャップ材の形状は適宜選択することができる。
上記コア片同士の一体化やコア片31mとギャップ材31gとの一体化には、例えば、接着剤や接着テープなどを利用できる。内側コア部31の形成に接着テープを用い、内側コア部31と外側コア部32とを接着剤で接合する形態としてもよい。
或いは、絶縁性材料からなる熱収縮チューブや常温収縮チューブを利用して、内側コア部31を一体化してもよい。これらの絶縁性チューブは、コイル素子2a,2bと内側コア部31との間の絶縁材としても機能する。
その他、この例に示す磁性コア3は、内側コア部31の設置側の面(図5では下面)と外側コア部32の設置側の面(同)とが面一になっておらず、外側コア部32の設置側の面が内側コア部31よりも突出し、かつコイル2の設置側の面(同)と面一である。従って、コイル2と磁性コア3との組合体10の設置側の面は、両コイル素子2a,2b及び外側コア部32とで構成され、コイル2及び磁性コア3の双方が後述する接合層42(図2)に接触する。また、組合体10の設置側の面がコイル2及び磁性コア3の双方で構成されることで底板部40との接触面積が十分に大きく、リアクトル1は、設置したときの安定性にも優れる。更に、コア片を圧粉成形体で構成することで、外側コア部32において内側コア部31よりも突出した箇所は磁束の通路に利用できる。
[インシュレータ]
この例に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3との間に介在されるインシュレータ5を更に具える。インシュレータ5を具えることで、リアクトル1は、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
インシュレータ5は、図5に示すように内側コア部31の外周に配置される周壁部51と、各コイル素子2a,2bの端面と外側コア部32の内端面32eとの間に介在される一対の枠板部52とを具える。
周壁部51は、コイル素子2a,2bと内側コア部31との間を絶縁する部材であり、内側コア部31の軸方向と直交方向に分割された一対の断面]状の分割片から構成される。周壁部51は、上記形状により、内側コア部31の外周に容易に配置できる。この例に示す周壁部51は、内側コア部31に配置したとき、内側コア部31の一部が露出される形状であるが、分割片を組み合せたときに内側コア部31の全周を覆う筒状体としてもよく、適宜形状を変更することができる。
各枠板部52はそれぞれ、各内側コア部31がそれぞれ挿通可能な一対の開口部(貫通孔)を有するB字状の平板部材である。この例に示す枠板部52は両開口部の中間部に仕切り板52bを具え、枠板部52をコイル2に組み付けたとき、仕切り板52bは両コイル素子2a,2b間に介在される。また、一方(図5では右側)の枠板部52は、コイル連結部2rが載置され、コイル連結部2rと外側コア部32との間を絶縁するための台座52pを具える。
この例では、周壁部51と枠板部52とが別個である形態を説明したが、枠板部と周壁部を構成する筒片とが一体成形され、コイル2の軸方向に分割可能な一対の分割片からなるインシュレータとすることができる。各分割片には、互いに係合する係合部を具えると、相互の位置決めを容易にできる。或いは、周壁部51を省略して枠板部52のみとし、内側コア部31の外周には、例えば、上述した熱収縮チューブなどの絶縁性チューブ、絶縁テープや絶縁紙により形成した絶縁被覆層を具える形態としてもよい。
インシュレータ5の構成材料には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料が利用できる。インシュレータ5の形成には、射出成形などの成形方法が好適に利用できる。
[接合層]
その他、この例に示すリアクトル1では、上記ケース4の底板部40の内面40iにおいて、少なくともコイル2の設置側の面が接触する箇所に接合層42(図2)を更に具える。
接合層42は、絶縁性材料からなる単層構造とすると容易に形成できる上に、底板部40が金属製でも、コイル2と底板部40との間を絶縁できる。絶縁性材料からなる多層構造とすると、絶縁性をより高められる。同材質の多層構造とする場合、一層あたりの厚さを薄くしても、絶縁を確保できる。一方、異種材質の多層構造とすると、コイル2と底板部40との両者の絶縁性、両者の密着性、コイル2から底板部40や設置対象への放熱性などの複数の特性を兼備できる。
接合層42は、その合計厚さが厚いほど絶縁性を高められ、薄いほど放熱性を高められる傾向にある。構成材料にもよるが、例えば、接合層42の合計厚さを2mm未満、更に1mm以下、特に0.5mm以下とすることができる。
接合層42は、少なくともコイル2の設置側の面が十分に接触可能な面積を有していれば、特に形状は問わない。ここでは、接合層42は、図2に示すように、組合体10の設置側の面、即ち、コイル2及び外側コア部32の双方の設置側の面がつくる形状に沿った形状としている。従って、コイル2及び外側コア部32の双方が接合層42に接触する。
特に、接合層42は、コイル2の設置側の面が接する表面側に絶縁性材料からなる接着層を具え、底板部40に接する側に熱伝導性に優れる材料からなる放熱層を具える多層構造であることが好ましい。ここでは、接合層42は、接着層と放熱層とを具える。
接着層は、接着強度及び絶縁性に優れる材料、代表的には絶縁性接着剤を好適に利用できる。例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが利用できる。接着層の形成は、例えば、放熱層の上に塗布したり、スクリーン印刷を利用したりすることが挙げられる。接着層或いは接合層42全体にシート状接着剤を利用してもよい。ここでは、接着層は、絶縁性接着剤の単層構造としている。
放熱層は、放熱性に優れる材料、好ましくは熱伝導率が2W/m・K超の材料を好適に利用できる。放熱層は、熱伝導率が高いほど好ましく、3W/m・K以上、特に10W/m・K以上、更に20W/m・K以上、とりわけ30W/m・K以上の材料により構成されることが好ましい。
放熱層の構成材料として、金属元素,B,及びSiの酸化物、炭化物、及び窒化物から選択される一種の材料といったセラミックスなどの非金属無機材料を利用すると、放熱性及び電気絶縁性の双方に優れて好ましい。より具体的なセラミックスは、窒化珪素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ほう素(BN)、炭化珪素(SiC)などが挙げられる(いずれも熱伝導率:20W/m・K以上)。上記セラミックスにより放熱層を形成するには、例えば、PVD法やCVD法といった蒸着法を利用したり、上記セラミックスの焼結板などを用意して、適宜な接着剤により、底板部40に接合したりすることが挙げられる。
或いは、放熱層の構成材料に、上記セラミックスからなるフィラーを含有する絶縁性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂)を利用すると、放熱性及び電気絶縁性の双方に優れる放熱層が得られる。特に、上記絶縁性樹脂が接着剤であると、放熱層と接着層との密着性に優れ、この放熱層を具える接合層は、コイル2と底板部40との間を強固に接合できる上に、絶縁性にも優れる。接着層及び放熱層を構成する接着剤を異種としてもよいが、同種である場合、密着性に優れる上に接合層の形成が容易である。上記フィラー入りの絶縁性接着剤により接合層全体を形成しても勿論よい。この場合、接合層は、単一種の材質からなる多層構造となる。特に、接合層の全体を熱伝導率が2W/m・K超の絶縁性材料で構成すると、放熱性により優れるリアクトルとすることができる。上記フィラー入り樹脂により放熱層を形成するには、例えば、底板部40に塗布したり、スクリーン印刷したりなどすることで容易に形成できる。
或いは、放熱層は、放熱性に優れるシート材とし、適宜な接着剤により底板部40に接合することでも形成できる。
放熱層は、単層構造でも多層構造(二層、或いは三層以上)でもよい。多層構造とする場合、少なくとも一層の材質を異ならせてもよい。例えば、放熱層は、熱伝導率が異なる材質からなる多層構造とすることができる。
放熱層を具える形態は、放熱層により放熱性を確保できるため、封止樹脂を具える形態とする場合、利用可能な封止樹脂の選択の自由度を高められる。例えば、フィラーを含有していない樹脂など、熱伝導性に劣る樹脂を封止樹脂に利用できる。
ここでは、放熱層は、アルミナからなるフィラーを含有するエポキシ系接着剤により形成されている(熱伝導率:3W/m・K以上)。従って、ここでは、接合層全体が絶縁性接着剤により構成されている。また、ここでは、放熱層は、上記フィラー入り接着剤からなる二層構造で形成され、一層の厚さを0.2mm、合計0.4mmとしている(接着層との合計厚さ:0.5mm)。
[封止樹脂]
ケース4内に絶縁性樹脂からなる封止樹脂(図示せず)を充填した形態とすることができる。封止樹脂の充填量は、適宜選択することができる。例えば、巻線の端部を封止樹脂から露出させると、端子金具8との接続作業が行い易い。コイル2の一部を封止樹脂から露出させた形態としてもよい。
上記封止樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂を利用する場合、当該封止樹脂を底板部40と側壁部41との接着材料に利用でき、両者を強固に固定できるため、上記固定部41Fによる底板部40と側壁部41との接続構造を、封止樹脂を充填するまでの仮止めとして利用できる。また、絶縁性及び熱伝導性に優れるフィラー、例えば、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、ムライト、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを含有する封止樹脂とすると、放熱性を更に高められる。
封止樹脂を充填した形態では、未硬化の樹脂が底板部40と側壁部41との間から漏洩することを防止できるように、合成ゴムなどからなる環状のシール部材6(図2〜図4)を具えることが好ましい。この例では、図4に示すように側壁部41の底面41dにシール部材6が嵌め込まれる環状のシール溝416を設けている。シール溝416の深さは、シール部材6の厚さよりも若干浅くしている。そのため、底板部40と側壁部41とを一体にする前の状態において、シール溝416にシール部材6を嵌め込むと、図3に示すようにシール部材6の一部がシール溝416から突出する。底板部40と側壁部41とを一体する際、上記シール溝6の突出部分を底板部40で押し潰すように側壁部41を取り付けることで(図4(C))、シール部材6は、弾性変形して底板部40と側壁部41とを封止し、上記漏洩を効果的に防止できる。
≪リアクトルの製造≫
上記構成を具えるリアクトル1は、代表的には、組合体の準備,側壁部の準備,底板部の準備⇒組合体の底板部への配置⇒側壁部の配置⇒ケースの組立(一体化)⇒封止樹脂の充填という工程により製造することができる。
[組合体の準備]
まず、コイル2と磁性コア3との組合体10の作製手順を説明する。具体的には、図5に示すようにコア片31mやギャップ材31gを積層して内側コア部31を構成し、その外周に周壁部51を配置して、コイル素子2a,2bに挿入する。内側コア部31は、コア片31mとギャップ材31gとを接着剤で一体化したり、コア片31mとギャップ材31gとの積層物の外周に接着テープを巻回して一体化したりしてもよいし、一体化しなくてもよい。ここでは、接着テープで一体化した内側コア部31を用いている。
次に、インシュレータ5の枠板部52及び外側コア部32とでコイル2と内側コア部31との組物を挟むように枠板部52及び外側コア部32を配置して、組合体10を形成する。このとき、内側コア部31の端面31eは、枠板部52の開口部から露出されて外側コア部32の内端面32eに接触する。
[側壁部の準備]
射出成形などにより所定の形状に形成した側壁部41の凹溝410c(図2)に、端子金具8(図2)、端子固定部材9(図2)を順に配置してボルト91(図2)を締め付け、端子金具8が固定された側壁部41を用意する。端子金具8は、ケース4を組み立てた後に側壁部41に固定してもよい。また、上述のように、端子金具8が側壁部に一体に成形されたものを用意してもよい。封止樹脂を具える形態では、側壁部41のシール溝416にシール部材6を嵌め込む(図3,図4(A))。
[底板部の準備]
図2に示すようにアルミニウム板を所定の形状に打ち抜いて底板部40を形成し、一面に所定の形状の接合層42をスクリーン印刷により形成して、接合層42を具える底板部40を用意する。
[組合体の底板部への配置]
上記接合層42の上に、組み立てた組合体10を載置し、その後、接合層42を適宜硬化して組合体10を底板部40に固定する(図3)。
接合層42により、コイル2を底板部40に密着できると共に、コイル2と外側コア部32との位置が固定され、ひいては一対の外側コア部32に挟まれた内側コア部31も位置が固定される。従って、内側コア部31と外側コア部32とを接着剤で接合したり、コア片31mやギャップ材31gを接着剤や接着テープなどで接合して一体化していなくても、接合層42により、内側コア部31及び外側コア部32を具える磁性コア3を環状に一体化できる。特に、この例では、接合層42が接着剤により構成されることで、組合体10は、接合層42に強固に固定される。
[側壁部の配置]
図3に示すように組合体10の外周面を囲むように組合体10の上方から側壁部41を被せ、底板部40の上に配置する。このとき、図4(A)に示すように底板部40の各貫通孔401hに突起41pをそれぞれ挿通するように側壁部41を配置する。各貫通孔401hに各突起41pをそれぞれ挿通することで、底板部40と側壁部41との相互の位置決めを行える。
側壁部41を配置すると、図4(B)に示すように、底板部40の内面40iと側壁部41の底面41dとが接触すると共に、底板部40の各貫通孔401hにそれぞれ挿通された突起41pは、その先端部分が底板部40の外表面40oから突出した状態になる。なお、この例では、側壁部41の底面41dが当たり止めとなる他、上述の庇状部も当たり止めとなり、これらを位置決めに利用できる。
[ケースの組立(一体化)]
上記突起41pにおいて底板部40の外表面40o(貫通孔401h)から突出している先端部分を溶融して再度固化して太径部41fを成形し、底板部40と側壁部41とを固定部41Fにより一体化して、ケース4を組み立てる。具体的には、図4(B)に示すように、突起41pの先端部分に溶融用の治具100を押し当てて突起41pの少なくとも先端部分を溶融する。この先端部分は底板部40から突出していることから、溶融用の治具100を容易に接触できる上に、当該先端部分を効率よく溶融できる。
溶融用の治具100は、例えば、突起41pに接触して突起41pを加熱する接触加熱部を有する市販品を利用できる。より具体的には、高周波の電流により短時間で加熱可能で、溶融後、圧縮空気を吹き付けることで急速冷却が可能な溶着用工具を好適に利用できる。接触加熱部は、形成する太径部41fの形状、大きさに応じて、適宜な形状、大きさのものを用意するとよい。ここでは、図4(B)に示すように、太径部41fの外表面が底板部40の外表面40oと面一な平面となるように、接触加熱部は、端面が平坦な形状のものを用いた。
加熱時間や電流値などの形成条件は、太径部41fの大きさなどに応じて適宜選択することができる。突起41pの先端部分だけでなく、それ以上を溶融してもよい。この場合、上述したように、溶融して再度固化した材料により突起41pと貫通孔401hの小径孔401nとの隙間を埋められるため、大径孔401fと太径部41fとだけでなく、小径孔401nと軸部41aとも密着させることができる。
その他、溶融方法は、例えば、振動溶着、超音波溶着などを利用できる。
突起41pの先端部分を溶融すると、底板部40に設けられた貫通孔401hの大径孔401fの空間に突起41pの構成樹脂が入り込む。大径孔401fの形状に沿って、かつ大径孔401fを塞ぐように太径部41fを形成する。また、太径部41fの外表面は、治具100の端面により形成する。溶融した樹脂が再度硬化することで、突起41pと同程度の大きさの軸部41aと、溶融前の突起41pの先端部分よりも大きい太径部41fとを具える段差形状の固定部41Fが形成される。そして、太径部41fが、底板部40の小径孔401nと大径孔401fとの段差に掛止されて、底板部40と側壁部41とは接続される。
上記工程により、図1に示すように箱状のケース4が組み立てられると共に、ケース4内に組合体10が収納された状態とすることができ、封止樹脂を有していない形態のリアクトル1が得られる。なお、この形態では、この後、巻線2wの端部と端子金具8とを電気的に接続するとよい。
[封止樹脂の充填]
ケース4内に封止樹脂(図示せず)を充填して硬化することで、封止樹脂を具えるリアクトル1を形成することができる。上述のようにシール部材6を押し潰すように底板部40と側壁部41とを固定しているため、このシール部材6により、未硬化の樹脂が漏れ出ることがない。なお、この形態では、巻線2wの端部と端子金具8との接合を封止樹脂の充填後に行ってもよい。
≪用途≫
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。
≪効果≫
上記構成を具えるリアクトル1は、底板部40と側壁部41とが独立した別部材であることから、重量物の組合体10ではなく、軽量の側壁部41を動かして底板部40に組み付けることで、組合体10をケース4に収納することができる。特に、リアクトル1では、側壁部41が軽量な樹脂製であることで、ハンドリング性に優れる。従って、リアクトル1は、組立作業性に優れる。
かつ、リアクトル1では、底板部40と側壁部41との一方(ここでは側壁部41)の構成材料を溶融して、当該構成材料により形成した太径部41fを底板部40に掛止することで底板部40と側壁部41との両者を一体にするため、ボルトやネジ、接着剤といった一体化のための別部材が不要であり、これらの配置工程や塗布工程、硬化工程も不要である。この点からも、リアクトル1は、組立作業性に優れる。また、ボルトやネジを用いないことで、側壁部41にボルトやネジの締結部を設ける必要が無く、この点から、リアクトル1を小型にすることができる。
更に、リアクトル1は、ケース4を具えていながらも、側壁部41が絶縁性樹脂により構成されているため、軽量である上に、コイル2と側壁部41とを近接配置できるため、小型にできる。かつ、リアクトル1は、底板部40が金属材料により構成されているため放熱経路に利用でき、放熱性に優れる。
その他、リアクトル1は、熱伝導率が2W/m・K超といった熱伝導性に優れる放熱層を含む接合層42が底板部40とコイル2との間に介在されることで、使用時、コイル2の熱を、放熱層を介して、冷却ベースといった設置対象に効率よく伝達できる。上述の例では、磁性コア3も接合層42に接触することで、磁性コア3からも放熱できる。また、接合層42の少なくともコイル2との接触箇所(この例では接合層42の全体)が絶縁性材料により構成されていることから、接合層42の厚さが例えば0.1mm程度と非常に薄くてもコイル2と底板部40との間の絶縁性を確保できる。更に、接合層42の全体が絶縁性接着剤により構成されることで、コイル2や磁性コア3と接合層42との密着性に優れる。加えて、巻線2wとして、被覆平角線を利用することで、コイル2と接合層42との接触面積が十分に広い。このように(1)放熱層を有する、(2)接合層42が薄い、(3)コイル2と接合層42との密着性に優れる、(4)コイル2と接合層42との接触面積が広いことで、コイル2などの熱を効率よく底板部40に伝えられ、リアクトル1は放熱性に優れる。また、上述のように接合層42が薄いことからも、コイル2と底板部40との間隔を狭められるため、リアクトル1を小型にできる。
更に、側壁部41を取り外した状態で底板部40に接合層42を形成できることから、接合層42を容易に形成でき、リアクトル1は、生産性に優れる。
[変形例1]
上記実施形態では、底板部40に設けられた各貫通孔401hを段付き孔としたが、段差がなく、孔の軸方向に沿って直径が一様な孔とすることができる。この場合、太径部41fを底板部40の外表面40o上に形成するとよい。即ち、この形態では、太径部41fは、外表面40oから突出して設けられ、外表面40o自体を掛止する。この形態では、側壁部41に具える突起41pの長さを貫通孔401hの長さよりも十分に長くしておき、外表面40o上に太径部41fを形成可能な適宜な形状の接触加熱部を利用するとよい。この形態は、固定部41Fの形成状態を目視などで容易に確認でき、検査などを行い易い。
[変形例2]
上記実施形態は、全ての貫通孔401hの形状、大きさを同様のものとしたが、一部の貫通孔の形状や大きさを異ならせることができる。例えば、一部の貫通孔の軸部や太径部を大きなものとすることで、底板部40と側壁部41との接続強度を高められる。
[変形例3]
上記実施形態では、底板部40が金属材料、側壁部41が樹脂により構成された形態(α)を説明したが、底板部及び側壁部の双方が金属材料からなる形態(β)とすることができる。具体的には、底板部をアルミニウムやその合金とし、側壁部をステンレス鋼といったアルミニウムやその合金よりも融点が高く、強度に優れる金属とすることが挙げられる。この形態では、融点が低い構成材料からなる底板部に複数の突起を設けておき、側壁部に、例えばフランジ部を設けると共に、このフランジ部に上記各突起が挿通される複数の貫通孔(好ましくは段付き孔)を設け、貫通孔に挿通した突起を溶融して、太径部を具える固定部を形成することが挙げられる。即ち、この形態では、突起を有していた底板部の構成材料により固定部を形成する。金属板に突起を設けるには、切削の他、鍛造、鋳造などを利用することができる。この形態では、上述のようにコイルと磁性コアとの組合体の上方から側壁部を底板部に配置した後、底板部に設けられた突起は、側壁部のフランジ部に設けられた貫通孔から上向きに配置される。そのため、この形態は、突起の溶融作業をリアクトルの上方から行え、溶融作業を行い易い。
[変形例4]
或いは、底板部40及び側壁部41の双方が樹脂からなる形態(γ)とすることができる。特に、この形態では放熱性を高めるために底板部の構成樹脂を上述したフィラー入り樹脂とすることが好ましい。この形態では、底板部及び側壁部を構成する樹脂のうち、太径部(突起)を構成する一方の樹脂を他方の樹脂よりも低融点とし、一方の樹脂を溶融中に他方の樹脂が溶融しないものを選択するとよい。また、この形態では、底板部及び側壁部のいずれの構成樹脂により太径部を形成してもよい。
[変形例5]
或いは、底板部40が樹脂、側壁部41が金属材料からなる形態(δ)とすることができる。この形態も、変形例3と同様に、底板部に複数の突起を設けておき、側壁部に上記各突起が挿通される複数の貫通孔(好ましくは段付き孔)を具えるフランジ部を設け、底板部の構成材料により固定部を形成するとよい。この形態では、底板部が樹脂であるため、射出成形などにより、突起を有する底板部を容易に成形できる。また、この形態は、変形例3と同様に、上向きに配置された突起をリアクトルの上方から溶融可能であり、溶融作業が行い易い。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、底板部及び側壁部の接触箇所のうちの一方の接触箇所のみが樹脂で形成され、その他の箇所が全て金属材料で構成された形態にすることができる。
本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータといった電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明リアクトルの製造方法は、上記本発明リアクトルの製造に好適に利用することができる。
1 リアクトル 10 組合体 100 治具
2 コイル 2a,2b コイル素子 2r コイル連結部 2w 巻線
3 磁性コア 31 内側コア部 31e 端面 31m コア片 31g ギャップ材
32 外側コア部 32e 内端面
4 ケース
40 底板部 40i 内面 40o 外表面 401h 貫通孔 401f 大径孔
401n 小径孔
41 側壁部 41F 固定部 41f 太径部 41a 軸部 41d 底面 41p 突起
416 シール溝
400,411 取付部 400h,411h ボルト孔 410 端子台 410c 凹溝
42 接合層
5 インシュレータ 51 周壁部 52 枠板部 52b 仕切り板 52p 台座
6 シール部材
8 端子金具 81 一端部
9 端子固定部材 91 ボルト

Claims (5)

  1. コイルと、前記コイルが配置される磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースとを具えるリアクトルであって、
    前記ケースは、前記リアクトルが設置対象に設置されたときに当該設置対象に接する底板部と、前記底板部とは独立した部材であり、前記組合体の周囲を囲む側壁部と、前記底板部と前記側壁部とを一体化する複数の固定部とを具え、
    前記底板部及び前記側壁部における相互の接触箇所が異種の材料により構成されており、
    前記各固定部は、
    前記底板部及び前記側壁部のうち、一方の部材の接触箇所の構成材料から構成されており、
    他方の部材の接触箇所に設けられた複数の貫通孔内における前記一方の部材側に配される軸部と、
    前記軸部に連続して設けられ、前記貫通孔の最小径よりも大きい部分を有する太径部とを有し、
    少なくとも前記太径部は、前記構成材料が溶融されて形成されていることを特徴とするリアクトル。
  2. 前記各貫通孔は、段差形状であり、前記一方の部材側の領域が小径孔で構成され、前記各貫通孔における前記一方の部材から離れた側の領域が大径孔で構成されており、
    前記太径部は、前記大径孔を塞ぐように配されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記底板部は、金属材料により構成され、前記側壁部は、絶縁性樹脂から構成されており、
    前記各貫通孔は、前記底板部に設けられ、
    前記各固定部は、前記絶縁性樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
  4. 前記ケースに充填された封止樹脂を更に具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル。
  5. コイルと磁性コアとの組合体をケースに収納してリアクトルを製造するリアクトルの製造方法であって、
    前記ケースの構成部品として、前記リアクトルが設置対象に設置されたときに当該設置対象に接する底板部と、前記底板部とは独立した部材で枠状の側壁部とを準備する準備工程と、
    前記底板部に前記組合体を配置する組合体配置工程と、
    前記底板部に配置された前記組合体の周囲を囲むように前記側壁部を配置する側壁部配置工程と、
    前記底板部と前記側壁部とを一体化する一体化工程とを具え、
    前記準備工程では、
    前記底板部及び前記側壁部において相互の接触箇所が異種の材料により構成され、かつ前記底板部及び前記側壁部のうち、一方の部材の接触箇所に複数の突起が設けられ、他方の部材の接触箇所に前記各突起が挿通される複数の貫通孔が設けられたものを用意し、
    前記側壁部配置工程では、
    前記各貫通孔に前記各突起をそれぞれ挿入することで、前記底板部及び前記側壁部の相互の位置決めを行い、
    前記一体化工程では、
    前記各貫通孔に挿通された突起のうち、少なくとも先端部分を溶融して、溶融前の前記先端部分よりも大きい太径部を形成することを特徴とするリアクトルの製造方法。
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