JP2013093469A - リアクトル、リアクトルの固定構造、コンバータ、及び電力変換装置 - Google Patents

リアクトル、リアクトルの固定構造、コンバータ、及び電力変換装置 Download PDF

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Abstract

【課題】設置対象への位置決めが容易かつ正確にできるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1は、コイル2とこのコイル2が配置される磁性コアとを有する組合体10と、組合体10を収納するケース4とを備える。ケース4は、リアクトル1の設置対象における載置面に対向される底板部40と、底板部40と結合され、組合体10の周囲を囲む側壁部41とを備える。この底板部40と側壁部41との結合箇所近傍の角部には、切欠6が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトル、そのリアクトルを設置対象に固定する固定構造、リアクトルを利用したコンバータ及び電力変換装置に関する。特に、インバータケースなどの設置対象への位置決めが容易にできるリアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルを開示している。このリアクトルは、コイルと、コイルが配置される環状の磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填される封止樹脂とを備える。このリアクトルは、一般に、通電時に発熱するコイルなどを冷却するために、冷媒の流れるインバータケースといった設置対象に固定されて利用される。このリアクトルの設置対象への固定は、例えばリアクトルケースの一部にボルトの挿通孔を、設置対象にボルトのねじ穴を形成しておき、挿通孔にボルトを貫通させると共に、ねじ穴にボルトをねじ込むことで行われる。
特開2010-050408号公報
しかし、リアクトルの設置対象への固定作業について、更なる作業効率の改善が求められている。上述した固定作業では、リアクトル側に設けた挿通孔と設置対象に設けたねじ穴とを正確に位置合わせする必要がある。ところが、従来の設置対象におけるリアクトルの載置面は平面でしかないため、この挿通孔とねじ穴の位置合わせが必ずしも容易ではない。そのため、両者の位置合わせに時間を要し、より効率的にリアクトルを設置対象上の適正な位置に位置決めできる技術が求められている。
そこで、本発明の目的の一つは、設置対象へのリアクトルの位置決めが容易かつ正確にできるリアクトルを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記リアクトルを用いたリアクトルの固定構造を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記リアクトルを用いたコンバータ及び電力変換装置を提供することにある。
本発明者は、設置対象に位置決め用のガイドを設け、このガイドが有する当接面にリアクトルを当て止めすることで、設置対象上の適正位置にリアクトルを配置することを検討した。その際、設置対象上においてリアクトルが設置される面(載置面)と上記ガイドが有する当接面とで形成される隅部には、通常、隅Rが形成され、この隅Rがリアクトルと当接面との接触が阻害されることがあることに着目した。そして、リアクトルと当接面との接触を確実に行うためのリアクトルの具体的構成を見出すことで本発明を完成するに至った。
本発明のリアクトルは、コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを備える。このリアクトルにおいて、 前記ケースは、底板部と、前記底板部と結合され、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを備える。そして、前記底板部と前記側壁部との結合箇所近傍の角部には切欠が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、例えば、リアクトルの設置対象における設置面に突部が存在する場合、この突部にリアクトルの角部近傍で切欠のない箇所を当接すれば、突部と設置面との隅部に隅Rなどの障害物が存在しても、切欠によりリアクトルと障害物との干渉を回避することができる。そのため、リアクトルを設置対象に容易に配置することができる。
本発明のリアクトルの一形態として、底板部は、リアクトルの設置対象における載置面に対向し、ケースは、設置対象が有するガイドの当接面に対して前記リアクトルを位置決めする位置決め部を備え、その位置決め部は、前記切欠を有することが挙げられる。
この構成によれば、設置対象に位置決め用のガイドを設け、このガイドにリアクトルの位置決め部を当接すれば、リアクトルを設置対象上の適正位置に容易に配置させることができる。そのため、リアクトルを設置対象に効率的に位置決めすることができる。特に、設置対象におけるリアクトルの載置面と、位置決めガイドにおけるリアクトルとの当接面とで形成される隅部には、隅Rが形成されることがある。リアクトルの底板部と側壁部との結合箇所近傍の角部に切欠を形成しておけば、リアクトルの位置決め部を、隅Rに干渉されることなく、当接面に当て止めすることができる。
本発明のリアクトルの一形態として、前記位置決め部において、前記載置面と当接面に接する各対向面がいずれも前記底板部に形成され、前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることが挙げられる。
この構成によれば、底板部のみに切欠を設けることで、リアクトルの位置決め部が隅Rに干渉することを回避できる。
本発明のリアクトルの一形態として、前記位置決め部において、前記載置面と当接面に接する各対向面がいずれも前記側壁部に形成され、前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることが挙げられる。
この構成によれば、側壁部のみに切欠を設けることで、リアクトルの位置決め部が隅Rに干渉することを回避できる。
本発明のリアクトルの一形態として、前記位置決め部において、前記載置面に接する対向面が前記底板部に形成され、前記当接面に接する対向面が前記側壁部に形成され、前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることが挙げられる。
この構成によれば、例えば、底板部及び側壁部の少なくとも一方に切欠を形成していなくても、底板部と側壁部との結合形態により切欠を形成することができる。
本発明のリアクトルの一形態として、前記底板部が金属で構成され、前記側壁部が樹脂で構成されていることが挙げられる。
底板部を金属で構成することにより、設置対象に対して効率的な放熱ができる。側壁部を樹脂で構成することで、複雑形状の側壁部も容易に成形できる。
一方、本発明のリアクトルの固定構造は、コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを有するリアクトルと、このリアクトルが固定される設置対象とを備える。この固定構造において、前記設置対象は、前記リアクトルが設置される載置面と、前記載置面と交差する面で、前記リアクトルと接触することでリアクトルを載置面上に位置決めする当接面とを有する。前記ケースは、前記載置面に対向される底板部と、前記底板部と結合され、前記組合体の周囲を囲む側壁部と、前記当接面に対して前記リアクトルを位置決めする位置決め部とを備える。そして、この位置決め部は、前記底板部と前記側壁部との結合箇所近傍の角部に形成された切欠を有することを特徴とする。
この構成によれば、リアクトルの位置決め部を設置対象の当接面に当て止めすることで、リアクトルを設置対象の適正位置に位置決めすることができる。
また、本発明のコンバータは、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを備え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータである。このコンバータにおいて、上記リアクトルを上述した本発明のいずれかのリアクトルとすることを特徴とする。
この構成によれば、本発明のリアクトルを用いることで、リアクトルの設置対象への固定作業を効率的に行うことができ、コンバータを組み立てる際の作業性に優れる。
その他、本発明の電力変換装置は、入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを備え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置である。
この電力変換装置において、上記コンバータを、上述した本発明のコンバータとすることを特徴とする。
この構成によれば、本発明のコンバータを用いることで、リアクトルの設置対象への固定作業を効率的に行うことができ、電力変換装置を組み立てる際の作業性に優れる。
本発明のリアクトル及びリアクトルの固定構造によれば、リアクトルを設置対象に容易に位置決めできる。
本発明のコンバータ及び本発明の電力変換装置は、本発明のリアクトルを用いることで、製造作業性に優れる。
実施形態1に係る本発明リアクトルの斜視図である。 実施形態1に係る本発明リアクトルの平面図である。 図1のB-Bにおける位置決め部の部分拡大断面図である。 実施形態1に係る本発明リアクトルの分解斜視図である。 実施形態1に係る本発明リアクトルを構成する組合体の分解斜視図である。 実施形態2に係る本発明リアクトルの斜視図である。 図6のB-Bにおける切欠の3つの態様を示す部分拡大断面図である。 実施形態3に係る本発明リアクトルの斜視図である。 ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。 本発明コンバータを備える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面において同一符号は同一部材を示す。なお、以下の説明では、リアクトルを設置対象に固定したときの設置側を下側、その対向側を上側として説明する。
[実施形態1]
図1〜図5を参照して、本発明の実施の形態1を説明する。
〔全体構成〕
リアクトル1は、図1、2に示すように、コイル2とコイル2が配置される磁性コア3との組合体10と、組合体10を収納するケース4とを備える。このリアクトル1は、冷媒が循環されるインバータケースなどの設置対象100の上面(載置面100s)に載置され、載置面100s上に設けられたガイド110の当接面110Gに当て止めすることで所定位置に位置決めされる(図2)。この位置決めを正確に行うことができるよう、リアクトル1は、ケース4における底板部40と側壁部41との結合箇所近傍に位置決め部4aを有し、その位置決め部4aに切欠6を有する(図3)。以下、ケース4から順に各構成部材をより詳細に説明する。なお、図2は、位置決め部4aとガイド110との配置関係を明確にする便宜上、底板部40の輪郭を実線で示し、側壁部や端子金具などの他の構成要素は破線で示している。
〔ケース〕
ケース4は、図1、3に示すように、上記コイル2と磁性コア3との組合体10が収納される容器で、平板状の底板部40と、底板部40に立設する枠状の側壁部41とを備える。本例では、底板部40と側壁部41が個別の部材である構成を例として説明する。
(底板部)
底板部40は、ケース4の底部を構成する板材で、リアクトル1を設置対象に固定した際、一面が設置対象の載置面100sに対向して配置され、他面が組合体10の搭載面となる。通常、底板部40の一面は載置面100s上に接触状態で配置される。
この底板部40の形状は、組合体10の形状や、設置対象100への取付部(後述)の構成に応じて適宜選択できる。本例では、略矩形板を利用しており、この矩形板におけるコイル2の軸方向に沿った辺を横辺、同軸方向と直交する方向に沿った辺を縦辺とする。
この底板部40の周縁部には、位置決め部4aが形成されている。より具体的には、一方の縦辺と一方の横辺の各々に、位置決め部4aが形成されている。位置決め部4aは、設置対象100に設けられたガイド110(図2)の当接面110Gに当て止めされることで、リアクトル1を設置対象100の載置面100sの適正位置に位置決めするために用いる部位で、本例では、細長い矩形状の突片で構成している。リアクトル1を平面視した際、本例の位置決め部4aは、後述する側壁部41の輪郭から突出している。位置決め部4aは、側壁部41にも設けることができるが、そのようなリアクトルは、後述する他の実施形態で説明する。
位置決め部4aの外縁は、直線部を有することが好ましい。位置決め部4aの外縁の形状は、ガイド110の当接面110Gの形状に対応する形状であれば、特に限定されず、曲線部を有しても構わないが、直線部を有する形状であれば、ガイド110の当接面を平面とできるため、ガイド110を容易に形成することができる。
位置決め部4aの数は、リアクトル1(本例では底板部40)を平面視した輪郭線のうち、互いに交差する線に沿った少なくとも2箇所に設けることが好ましい。この構成により、例えば、リアクトル1の縦と横といった2箇所以上をガイド110に対して位置決めすることができ、載置面100s上の適正位置にリアクトル1を確実に位置決めすることができる。本例のように、底板部40の縦辺と横辺の合計2箇所に位置決め部4aを形成した場合、底板部40は、コイル2の軸方向沿いの直線に対して、左右非対称の形状となっている。
さらに、位置決め部4aには、切欠6が形成されている(図3)。この切欠6は、設置対象100の一部を構成するガイド110の当接面110Gに位置決め部4aを確実に当て止めできるようにするための構成である(図2、3)。リアクトル1を設置対象100の載置面100s上の適正位置に位置決めする際、ガイド110の当接面110Gと設置対象100の載置面100sは、通常、直交されている。両面は、例えば設置対象100の構成材料を切削することにより形成されるため、両面が突き合わされる隅部には、隅Rが形成されることが多い。そこで、位置決め部4aが隅Rと干渉することなくガイド110の当接面110Gに接触できるようにするため、底板部40の下面(載置面100sとの対向面)と底板部40の厚み方向に沿った外周面(当接面110Gとの対向面)の各延長面で構成される角部に切欠6を形成している。この切欠6は、位置決め部4aが隅Rとの接触を回避できれば、大きさや形状は限定されない。本例では、底板部40の下面と底板部40の厚み方向に沿った外周面の各延長面で構成される角部を平面状に面取りして、直角三角形状の切欠6を形成している。例えば、隅Rの円弧の径は0.5mmであり、切欠6を構成する前記直角三角形の一辺のサイズは1mm程度である。
その他、底板部40は、組合体10の搭載面の外周部に枠状の接合領域40fを備えている。接合領域40fは、底板部40を側壁部41と結合するための領域である。この接合領域40fには、ボルト孔400hを設けることが好ましい。後述するように、側壁部41にもボルト穴(図示略)を形成しておき、上記ボルト孔400hとボルト穴を位置合わせして、そこに底板部40の下面側からボルト49を挿入することで、底板部40と側壁部41とを連結することができる。本例では、接合領域40fの合計4箇所にボルト孔400hを形成している。このボルト49による底板部40と側壁部41との接合を行う際、底板部40と側壁部41との間に後述するパッキン45を配することが好ましい。このパッキン45は、底板部40と側壁部41との接合箇所から後述する封止樹脂が未硬化の状態において漏洩することを抑制する。
さらに、接合領域40fの四隅などの複数箇所には、それぞれから舌片状に突出した取付部(図示略)を設けても良い。各取付部にはそれぞれ、設置対象100にケース4を固定するボルト(図示略)が挿通されるボルト孔(図示略)が設けられている。設置対象の載置面100sにもボルト穴を設けておき、取付部のボルト孔と載置面100sのボルト穴を位置合わせしてボルトを通すことで、リアクトル1を設置対象100に固定することができる。なお、図1,2に示す例では、底板部40が下方となる設置状態を示すが、底板部40が上方、或いは側方となる設置状態も有り得る。
(側壁部)
側壁部41は、リアクトル1を組み立てた際、組合体10の周囲を囲むように配置される部材である。本例の側壁部は、両端部が開口した略矩形の筒状体であり、上方側の開口部が開放され、下方側の開口部が上述した底板部40により塞がれる。この側壁部41は、リアクトル1を設置対象100に設置したときに下方側となる領域が上記底板部40の外形にほぼ沿った略矩形状で、中間部の領域がコイル2と磁性コア3との組合体10の外周面に沿った曲面を含む立体形状であり、上方側の開口部がほぼコイル2を取り囲む大きさの矩形状である。
側壁部41のうち、底板部40に接合される下方側の領域は、上方側の領域に比べて厚く形成されている。この下方側の領域の側面には、ねじ穴用突部41bが構成されている。このねじ穴用突部41bは、上述した底板部40と連結するためのボルト穴が下方から上方に向かって形成されている。本例では、4箇所のねじ穴用突部41bを備えている。
さらに、上記下方側の領域の下面には、後述するパッキン45を嵌め込む環状の嵌合溝が形成されている(図3)。この溝内にパッキン45を嵌め込んでおくことで、側壁部41と底板部40との接合箇所を封止する。
その他、側壁部41と底板部40との接合は、接着剤により行っても良い。例えば、上記のパッキン溝にパッキン45の代わりに接着剤を導入し、この接着剤により側壁部41と底板部40とを接合しても良い。接着剤用の溝を有しない場合、側壁部41の下面と底板部40の接合領域40fとを接着剤で接合すれば良い。
〔端子台〕
側壁部41の一部は、端子金具8を固定する端子台47として機能する。上記側壁部41の両端面は、磁性コア3の一部である外側コア部32(図4、5)の外形に対応した形状、つまり丸みを帯びた台形柱状に成形されている。この両端面の一方のうち、その上方側に一対の端子金具8が並列状態で一体化されている。この端子金具8は、コイル2を構成する巻線2wの端部に接続される溶接面81と、電源などの外部装置側と接続するための接続面82と、溶接面81と接続面82とを繋ぐ連結部(図示略)とを備える長尺の板材であり、適宜な形状に屈曲されている。本例では、溶接面81がほぼ上下方向に沿っており、接続面82と連結部とがほぼ水平方向に伸びる略L形の端子金具8であり、溶接面81が側壁部41の内側に、接続面82が側壁部41の外側に配置される。側壁部41と端子金具8との結合は、本例の場合、インサート成形により、樹脂製の側壁部41と金属製の端子金具8とを一体に成形している。勿論、側壁部41の一部に端子金具8を一体成形するのではなく、側壁部41に別途成形した端子台(端子金具)を後付けすることもできる。巻線2wの導体部分と端子金具8との接続には、TIG溶接などの溶接の他、圧着などが利用できる。端子金具8の形状は、例示であり、適宜な形状のものが利用できる。
(ケースの材質)
ケース4の構成材料は、金属や樹脂が好適に利用できる。ケース4の材料を金属とすると、金属材料は一般に熱伝導率が高いことから、放熱性に優れたケースとすることができる。具体的な金属は、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウム(熱伝導率:156W/m・K)やその合金、銅(398W/m・K)やその合金、銀(427W/m・K)やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304:16.7W/m・K)が挙げられる。上記アルミニウムやマグネシウム、及びその合金を利用すると、軽量なケース4とすることができ、リアクトル1の軽量化に寄与することができる。特に、アルミニウムやその合金は、耐食性にも優れるため、車載部品に好適に利用することができる。金属材料によりケース4を形成する場合、ダイキャストといった鋳造の他、プレス加工などの塑性加工により形成することができる。
その他、ケース4の構成材料には、樹脂や、樹脂とセラミックスの混合材料が利用できる。ケースの構成材料を、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂などの樹脂といった非金属材料とすると、これらの非金属材料は一般に電気絶縁性に優れるものが多いことから、コイル2とケース4との間の絶縁性を高められる。また、これらの非金属材料は上述した金属材料よりも軽く、リアクトル1を軽量にできる。上記樹脂に、熱伝導率α(W/m・K)の高いセラミックスからなるフィラーを混合した形態とすると、放熱性を向上することができる。セラミックスの具体例としては、窒化珪素(Si3N4):20W/m・K〜150W/m・K程度、アルミナ(Al2O3):20W/m・K〜30W/m・K程度、窒化アルミニウム(AlN):200W/m・K〜250W/m・K程度、窒化ほう素(BN):50W/m・K〜65W/m・K程度、炭化珪素(SiC):50W/m・K〜130W/m・K程度などが挙げられる。樹脂を用いてケース4を形成する場合、射出成形を好適に利用することができる。
底板部40及び側壁部41の構成材料は同種の材料とすることができる。この場合、両者の熱伝導率は等しくなる。この両者を同一の材料とすれば、底板部40と側壁部41とを一体に成形することもできる。また、底板部40及び側壁部41を個別に形成して後から一体に接合する場合、両者が同種の材料であれば、接合し易い。一方、底板部40及び側壁部41は異種材料で構成することもできる。この場合、底板部40の熱伝導率が側壁部41の熱伝導率よりも大きくなるように、両者の構成材料を選択すると、底板部40に配置されるコイル2及び磁性コア3の熱を設置対象に効率よく伝達できる。ここでは、底板部40をアルミニウムにより構成し、側壁部41をPPS樹脂により構成している。
〔組合体〕
(コイル)
コイル2は、図1、図4、図5を適宜参照して説明する。コイル2は、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a,2bと、両コイル素子2a,2bを連結するコイル連結部2rとを備える。各コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数で、軸方向から見た形状(端面形状)がほぼ矩形状である。これら両コイル素子2a,2bは、各軸方向が平行するように横並びに並列されており、コイル2の他端側(図4では紙面右奥側)において巻線2wの一部がU字状に屈曲されてコイル連結部2rが形成されている。この構成により、両コイル素子2a,2bの巻回方向は同一となっている。
巻線2wは、銅やアルミニウムといった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線が好適である。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用している。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減できて電気絶縁性を高められる。両コイル素子2a,2bは、上記被覆平角線をエッジワイズ巻きにして、中空の角筒状に形成されている。巻線2wは、導体が平角線からなるもの以外に、断面が円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状のものを利用できる。平角線は、断面が円形状の丸線を用いた場合よりも占積率が高いコイルを形成し易い。なお、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子を形成する巻線の端部を溶接などにより接合して一体のコイルとした形態とすることができる。
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、コイル2の一端側(図1において紙面左手前側)においてターン形成部分から適宜引き延ばされてケース4の外部に引き出される(図1)。引き出された巻線2wの両端部は、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、上述した端子金具8が接続される。この端子金具8を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示略)が接続される。
(磁性コア)
磁性コア3の説明は、主に図5を参照して行う。磁性コア3は、各コイル素子2a,2bがそれぞれ配置される一対の内側コア部31と、コイル2が配置されず、コイル2から露出されている一対の外側コア部32とを有する。ここでは、各内側コア部31はそれぞれ直方体状であり、各外側コア部32はそれぞれ、丸みを帯びた台形状面を有する一対の角柱状体である。磁性コア3は、離間して配置される内側コア部31を挟むように外側コア部32が配置され、各内側コア部31の端面31eと外側コア部32の内端面32eとを接触させて環状に形成される。これら内側コア部31及び外側コア部32により、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。
内側コア部31は、磁性材料からなるコア片31mと、代表的には非磁性材料からなるギャップ材31gとを交互に積層して構成された積層体であり、外側コア部32は、磁性材料からなるコア片である。各コア片は、磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体が利用できる。
上記成形体は、例えば、Fe,Co,Niといった鉄族金属、Fe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-AlなどのFe基合金、希土類金属やアモルファス磁性体といった軟磁性材料からなる粉末を用いた圧粉成形体、上記粉末をプレス成形後に焼結した焼結体、上記粉末と樹脂との混合体を射出成形や注型成型などした成形硬化体が挙げられる。その他、コア片は、金属酸化物の焼結体であるフェライトコアなどが挙げられる。成形体は、種々の立体形状の磁性コアを容易に形成することができる。
圧粉成形体は、上記軟磁性材料からなる粉末の表面に絶縁被膜を備えるものを好適に利用することができ、この場合、当該粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。絶縁被膜は、代表的には、シリコーン樹脂やリン酸塩からなるものが挙げられる。
内側コア部31の材質と外側コア部32の材質とを異ならせた形態とすることができる。例えば、内側コア部31を上記圧粉成形体や上記積層体とし、外側コア部32を上記成形硬化体とすると、内側コア部31の飽和磁束密度を外側コア部32よりも高め易い。ここでは、各コア片は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
ギャップ材31gは、インダクタンスの調整のためにコア片31m間に設けられる隙間に配置される板状材であり、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、上記コア片よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料により構成される(エアギャップの場合もある)。その他、ギャップ材31gとして、セラミックスやフェノール樹脂などの非磁性材料に磁性粉末(例えば、フェライト、Fe,Fe-Si,センダストなど)が分散した混合材料からなるものを用いると、ギャップ部分の漏れ磁束を低減できる。エアギャップとすることもできる。
コア片やギャップ材の個数は、リアクトル1が所望のインダクタンスとなるように適宜選択することができる。また、コア片やギャップ材の形状は適宜選択することができる。
その他、内側コア部31の外周に、絶縁性材料からなる被覆層(図示略)を設けた構成とすると、コイル2と内側コア部31との間の絶縁性を高められる。上記被覆層は、例えば、熱収縮チューブや常温収縮チューブ、絶縁性テープや絶縁紙などを配置することで設けられる。上記収縮チューブを内側コア部31の外周に配置したり、絶縁性テープなどを貼り付けたりすることで、絶縁性を高めることに加えて、コア片とギャップ材とを一体化することもできる。
磁性コア3では、内側コア部31の設置側の面と外側コア部32の設置側の面とは、面一になっていない。具体的には、リアクトル1を設置対象に設置したとき、外側コア部32において設置側となる面(以下、コア設置面と呼ぶ。図5において下面)が内側コア部31において設置側となる面よりも突出している。また、外側コア部32のコア設置面は、コイル2において設置側となる面(以下、コイル設置面と呼ぶ。図5において下面)と面一となるように、外側コア部32の高さ(リアクトル1を設置対象に設置した状態において、当該設置対象の表面に対して垂直な方向(ここでは、コイル2の軸方向に直交する方向であり、図5において上下方向)の長さ)を調整している。従って、磁性コア3は、リアクトル1を設置した状態において、側面から透視すると、H字状である。また、コア設置面及びコイル設置面が面一であることから、コイル2のコイル設置面だけでなく、磁性コア3のコア設置面も、後述する絶縁層42(図4)に接触することができる。更に、磁性コア3を環状に組み立てた状態において、外側コア部32の側面(図5において紙面手前及び奥の面)は、内側コア部31の側面よりも外方に突出している。従って、磁性コア3は、リアクトルを設置した状態において(図5では下方を設置側とした状態において)、上面又は下面から透視しても、H字状である。このような三次元形状の磁性コア3は、圧粉成形体とすることで形成が容易である上に、外側コア部32において内側コア部31よりも突出した箇所をも磁束の通路に利用できる。
〔その他〕
上述したリアクトル1の構成に加え、以下のインシュレータ、封止樹脂、パッキン、及び絶縁層の少なくとも一つを必要に応じて備えても良い。
(インシュレータ)
インシュレータ5は、コイル2と磁性コア3との間に介在されて、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高める(図5)。インシュレータ5は、内側コア部31の外周に配置される周壁部51と、コイル2の端面(コイル素子のターンが環状に見える面)に当接される一対の枠状部52とを備えた構成が挙げられる。
周壁部51は、ここでは、一対の断面]状体により構成され、各周壁部51は互いに接触せず、内側コア部31の外周面の一部のみに配置される構成としている。周壁部51は、内側コア部31の外周面の全周に沿って配置される筒状体とすることもできるが、コイル2と内側コア部31との間の絶縁距離を確保することができれば、図5に示すように、内側コア部31の一部が周壁部51により覆われない形態としてもよい。また、ここでは、周壁部51は、表裏に貫通する窓部を備えるものを利用している。
内側コア部31の一部が周壁部51から露出されることで、周壁部51の材料を低減することができる。また、封止樹脂を備える形態とする場合、上記窓部を有する周壁部51としたり、内側コア部31の全周が周壁部51により覆われない構成とすることで、内側コア部31と封止樹脂との接触面積を大きくすることができる上に、封止樹脂を流し込むときに気泡が抜け易く、リアクトル1の製造性に優れる。
枠状部52は、平板状で、各内側コア部31がそれぞれ挿通される一対の開口部を有しており、内側コア部31を導入し易いように、内側コア部31の側に突出する短い筒状部を備える。また、一方の枠状部52には、コイル連結部2rが載置され、コイル連結部2rと外側コア部32との間を絶縁するための台座52fを備える。
インシュレータの構成材料には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料が利用できる。
(封止樹脂)
ケース4内、つまりケース4の内側と組合体10との間に絶縁性樹脂からなる封止樹脂(図示略)を充填した形態とすることができる。この場合、巻線2wの端部は、ケース4の外部に引き出して、封止樹脂から露出させる。封止樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。また、封止樹脂として、絶縁性及び熱伝導性に優れるフィラー、例えば、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、ムライト、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを含有すると、放熱性を更に高められる。
(封止部材)
底板部40と側壁部 41が個別の部材の場合、両者の接合箇所に封止部材45を配することが好ましい(図4)。封止部材45を用いることで、硬化前の上記封止樹脂が前記接合箇所から漏洩することを抑制できる。この封止部材45の具体例としては、底板部の接合領域40fの形状にほぼ対応した環状のパッキン45が挙げられる。この封止部材45を所定の接合箇所に容易に位置決めするには、底板部40と側壁部41の接合箇所となる各表面の少なくとも一方に封止部材45の嵌合溝を形成しておくことが好ましい。
(絶縁層)
底板部40において、組合体10の搭載面、つまりコイル2のコイル設置面及び外側コア部32のコア設置面が接触する箇所に絶縁層42を備えることが好ましい(図4)。これにより、コイル2と底板部40、外側コア部32と底板部40との絶縁を確保することができる。絶縁層42は、熱伝導率が2W/m・K超の絶縁性材料により構成されていることが好適である。この熱伝導率は高いほど好ましく、3W/m・K以上、特に10W/m・K以上、更に20W/m・K以上、とりわけ30W/m・K以上であることが好ましい。
絶縁層42の具体的な構成材料は、例えば、金属元素,B,及びSiの酸化物、炭化物、及び窒化物から選択される一種の材料といったセラミックスなどの非金属無機材料が挙げられる。より具体的なセラミックスは、ケースの構成材料として述べた各種セラミックスが挙げられる。これらのセラミックスは、放熱性に優れる上に、電気絶縁性にも優れる。上記セラミックスにより絶縁層42を形成する場合、例えば、PVD法やCVD法といった蒸着法を利用することができる。或いは、上記セラミックスの焼結板などを用意して、適宜な接着剤により、底板部40に接合することでも、絶縁層42を形成することができる。
或いは、絶縁層42の構成材料は、上記セラミックスからなるフィラーを含有する絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。絶縁性樹脂に上記放熱性及び電気絶縁性に優れるフィラーを含有することで、放熱性及び電気絶縁性に優れる絶縁層42を構成することができる。また、フィラーを含有する樹脂を利用した場合でも、底板部40に当該樹脂を塗布などすることで、絶縁層42を容易に形成できる。その他、絶縁層42を絶縁性樹脂により構成する場合、特に、接着剤とすると、コイル2や外側コア部32と底板部40との密着性を高められて好ましい。上記フィラーの含有の有無に関わらず、上記絶縁性樹脂を用いて絶縁層42を形成する場合、例えば、スクリーン印刷を利用すると容易に絶縁層42を形成することができる。或いは、絶縁性樹脂からなるシート状接着剤又は絶縁性樹脂に上記フィラーを含有したシート状接着剤を利用すると、絶縁層42をより簡単に形成することができる。
ここでは、絶縁層42は、アルミナからなるフィラーを含有するエポキシ系接着剤により形成されている(熱伝導率:3W/m・K)。また、絶縁層42は、上記接着剤層の二層構造で形成され、一層の厚さを0.2mm、合計0.4mmとしている。絶縁層42は、コイル設置面及びコア設置面が絶縁層42に十分に接触できる面積を有していれば特に形状は問わない。本例での絶縁層42は、図4に示すように、コイル2のコイル設置面及び外側コア部32のコア設置面がつくる輪郭形状にほぼ沿った形状としている。
〔組立手順と固定構造〕
上記構成を備えるリアクトル1は、以下のようにして組み立てることで、設置対象に対するリアクトルの固定構造を構築することができる。
まず、コイル2と磁性コア3との組合体10を形成する。具体的には、図5に示すようにコア片31mやギャップ材31gを積層して内側コア部31を形成し、この外周にインシュレータ5の周壁部51を配置させた状態で、各コイル素子2a,2bに挿入する。両コイル素子2a,2bの端面及び内側コア部31の端面31eをインシュレータ5の枠状部52及び外側コア部32で挟むように、コイル2に枠状部52及び外側コア部32を配置して、組合体10を形成する。内側コア部31の端面31eは、枠状部52の開口部から露出されて外側コア部32の内端面32eに接触する。
上記コア片31mやギャップ材31gは接着剤やテープなどにより接合して一体化してもよいが、ここでは、接着剤を利用しない形態としている。また、一対の周壁部51は、互いに係合する構成ではないが、内側コア部31と共にコイル素子2a,2b内に挿入され、更に外側コア部32が配置されることで、コイル素子2a,2bの内周面と内側コア部31との間に配置された状態が維持され、脱落することが無い。
一方、図4に示すようにアルミニウム板を所定の形状に打ち抜いて底板部40を形成し、一面に所定の形状の絶縁層42をシート状接着剤により形成する。この絶縁層42の上に、上述のようにして組み立てた組合体10を接着して固定する。絶縁層42が接着剤により構成されることで、組合体10を底板部40に強固に固定することができる。
他方、射出成形などにより所定の形状に構成した側壁部41を、上記組合体10の外周面を覆うように組合体10の上方から被せ、ボルト49により、底板部40と側壁部41とを一体化する。その際、側壁部41の下面に設けられた嵌合溝には、封止部材45(パッキン)を嵌め込んでおく。ボルト49は、底板部40に形成されたボルト孔400hに下面側から挿入し、さらに側壁部41のねじ穴にねじ込むことで、底板部40と側壁部41とを接合する。この工程により、図1に示すように箱状のケース4が組み立てられると共に、ケース4内に組合体10が収納された状態とすることができる。
さらに、ケース4から突出する巻線2wの端部に端子金具8の溶接面81を溶接する。この工程により、封止樹脂を設けないリアクトル1が形成される。
一方、ケース4内に封止樹脂(図示略)を充填して硬化させることで、封止樹脂を備えるリアクトル1が形成される。
このようなリアクトル1を、設置対象100であるインバータケースに固定する。インバータケースは、リアクトルが載せられる水平方向の載置面100sと、この載置面100sから立設された一対のガイド110とを備える(図2)。本例での各ガイド110は、薄い直方体状のブロックで、載置面100s上の離れた位置に配置されている。各ガイドは、載置面100sに対して直交する当接面110Gを有し、各ガイド110の当接面110G同士が互いに直交するように配置されている。この載置面100sとガイドは、インバータケースの素材を切削することで形成されている。そのため、互いに直交する載置面100sと当接面110Gとの隅部には、通常、隅Rが形成されている(図3)。
このような各当接面110Gに対してリアクトル1の位置決め部4aを当接する。具体的には、リアクトル1を載置面100s上に載せてガイド110側に向けてスライドさせ、縦辺側の位置決め部4aを一方の当接面110Gに、横辺側の位置決め部4aを他方の当接面110Gに当て止めする。その際、位置決め部4aには、隅Rとの干渉を回避するための切欠6が設けられているため、底板部40が隅Rと接触することはない。その結果、底板部40の下面(載置面100sとの対向面)は載置面100sに接触され、底板部40の厚さ方向に沿った外周面(当接面110Gとの対向面)は当接面110Gに接触される。それにより、リアクトル1の縦辺方向と横辺方向の位置が規定されるため、リアクトル1を容易かつ正確にインバータケース上の適正位置に配置することができる。
リアクトル1が載置面100s上の適正位置に位置決めできたら、このリアクトル1をボルト(図示略)にてインバータケースに固定する。
〔用途〕
上記構成を備えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。
〔作用・効果〕
リアクトル1は位置決め部4aを備え、設置対象100はガイド110を備えるため、位置決め部4aをガイド110に当接するという簡単な動作にて、リアクトル1を固定対象100上の適正位置に位置決めできる。
位置決め部4aは切欠6を有するため、固定対象100の載置面100sとガイド110の当接面110Gとの隅部に形成される隅Rと底板部40との干渉を回避できる。それにより、底板部40が隅Rに接触することはなく、位置決め部4aを確実に当接面110Gに当て止めすることができる。それに伴って、リアクトル1を正確に適正位置に位置決めできる。
リアクトル1では、底板部40と側壁部41とを別部材とし、組み合せて一体とする構成であることから、側壁部41を取り外した状態で底板部40に絶縁層42を形成できる。従って、リアクトル1は、絶縁層42を容易に形成でき、生産性に優れる。また、絶縁層42を備える底板部40に組合体10を接合する際にも、側壁部41を取り外した状態とすることができるため、組合体10の底板部40への押し付けなどが行い易く、生産性に優れる。更に、底板部40と側壁部41とが別部材であることから、それぞれの材質を異ならせることができるため、構成材料の選択の幅を広げられる。
[実施形態2]
次に、側壁部自体、又は底板部と側壁部が接合される角部に位置決め部を設け、その位置決め部に切欠を設けた構成を図6、図7に基づいて説明する。本例は、位置決め部4bと切欠6の態様が実施形態1との主な相違点であるため、この相違点について以下に説明し、その他の構成は実施形態1と共通するため、説明を省略する。
実施形態1の位置決め部4bは、底板部40の一部を側壁部41の輪郭から突出させることで構成した。これに対し、本例では、リアクトル1を平面視した際、底板部の輪郭よりも側壁部41の一部が外側に突出しており、その突出箇所に位置決め部4bが形成される。
例えば、図6に示すように、側壁部41の下方側において、縦辺沿いの外周面と横辺沿いの外周面の各々の近傍、つまり側壁部の下縁部の直線箇所を位置決め部4bとしている。このような位置決め部4bであれば、側壁部41の外側面の一部を位置決め部4bとして利用でき、側壁部4bを局所的に外側に突出させることで位置決め部とする必要がない。この位置決め部4bには、図7に示すように、幾つかの態様の切欠6を形成することができる。いずれの態様においても、底板部40は一様な厚みの板材で構成されており、その外周縁部に切欠が設けられていない。
図7(A)の態様では、位置決め部4bには、側壁部41の下面から下方に突出する突条41pが形成され、側壁部41の下面近傍の断面形状がL状に形成されている。この突条41pは、断面形状が矩形で、その高さが底板部40の厚みより小さい。側壁部41と底板部40との接合は、側壁部41の下面のうち、突条41pのない面を底板部40の上面に当接させ、突条41pの内側面を底板部40の厚み方向に沿った外周面に当接させることで行う。つまり、側壁部41の突条41pを底板部40の外周縁部に係合するようにして側壁部41と底板部40との接合を行う。このようなリアクトル1を設置対象の載置面100sに載せ、位置決め部4bをガイド110の当接面110Gに押し付けた際、底板部40の下面の延長面、底板部40の外周面の一部、突条41pの下面及び突条41pの外側面の延長面とで囲まれる領域に矩形状の切欠6が形成されているため、その切欠6内に載置面100sと当接面110Gとの隅部に形成された隅Rが収納される。それにより、側壁部41の外周面をガイド110の当接面110Gに接触させることができ、リアクトルを載置面100s上の適正位置に容易にかつ確実に位置決めできる。また、この態様では、底板部40の外周縁部に突条41pが係合するため、底板部40と側壁部41との互いの位置決めも容易にできる。
図7(B)の態様では、位置決め部4bには、図7(A)で説明した突条41pがない構成である。つまり、側壁部41の下面は平面であるが、図7(A)で説明した突条41pの厚みに相当する分だけ底板部40の外周面よりも側壁部41の外周面が突出している。そのため、この位置決め部4bにおいても、側壁部41の下面、側壁部41の外側面の延長面、底板部40の外周面、及び底板部40の下面の延長面とで囲まれる領域に矩形状の切欠6が形成されているため、図7(A)の位置決め部4aと同様に、側壁部41の外周面をガイド110の当接面110Gに接触させることができ、リアクトルを載置面100s上の適正位置に容易にかつ確実に位置決めできる。
図7(C)の態様も図7(A)の態様と同様に、位置決め部4bには、側壁部41の下面から下方に突出する突条41pが形成されている。但し、この突条41pは、断面形状が台形状で、その高さは底板部40の厚みと同様である。また、この突条41pは傾斜面を有し、その傾斜面は側壁部41の外側下方に向けて配置される平面である。このような位置決め部4bも図7(A)の態様と同様に、突条41pを底板部40の外周面に係合させて側壁部41と底板部40とを接合する。その際、底板部40と側壁部41とで構成される角部、つまり傾斜面、側壁部41の外側面の延長面及び底板部40の下面の延長面(突条41pの下端を通る載置面100s)で囲まれる領域に断面形状が三角形の切欠6が形成されている。そのため、切欠6により隅Rと側壁部41との干渉を回避して、側壁部41の外周面をガイド110の当接面110Gに接触させることができ、リアクトルを載置面100s上の適正位置に容易にかつ確実に位置決めできる。
その他、図示していないが、図7(C)の突条41pの断面形状を三角形とし、高さを底板部の厚さ未満として、切欠に面する傾斜面が、突条の傾斜面とそれに連続する底板部40の傾斜面とで構成されるようにしても良い。或いは、突条の断面形状をダイヤ状の五角形とし、突条の高さを底板部の厚さと同じとして、載置面と当接面の各々に接する各対向面がいずれも突条に形成されるようにしても良い。これらのいずれの場合でも、三角形状の切欠により、ケースと隅Rとの干渉を回避して、リアクトルを載置面上の適正位置に容易かつ正確に位置決めできる。
[実施形態3]
次に、実施形態1とは異なる構成のリアクトルに位置決め部を設け、その位置決め部に切欠を設けた構成を図8に基づいて説明する。
このリアクトル1は、円筒状の一つのコイル2と、そのコイル2内に配置される円筒状の内側コア部31と、コイル2及び内側コア部31の外側を覆う外側コア部32と、これらコイル2、内側コア部31及び外側コア部32を収納する矩形容器状のケース4とを備える。
本例では、内側コア部31を圧粉成形体で構成し、外側コア部32を成形硬化体、つまり軟磁性粉末が分散混合された樹脂を硬化させたもので構成した。このリアクトル1は、コイル2内に内側コア部31を挿入した中間部品をケース4内に配置し、ケース4と中間部品との間に軟磁性粉末と樹脂との混合物を充填して、その樹脂を硬化させることで得られる。コイル2を構成する巻線2wの端部は、外側コア部32から上方に露出されている。
このようなリアクトル1のケース4の下縁部には位置決め部4cが形成されている。本例では、ケース4の底板部40と側壁部41とで構成される縦辺沿いの角部と横辺沿いの角部を位置決め部4cとし、各々に角部に切欠(図示略)を形成している。切欠は、矩形状の下縁部の隣接する2辺に形成している。切欠の態様としては、実施形態1、2のように、断面形状が三角形の切欠や、矩形の切欠が挙げられる。
本例の場合も、切欠によりケース4と隅Rとの干渉を回避して、ケース下方の外周面をガイドの当接面に接触させることで、リアクトル1を載置面上の適正位置に容易かつ正確に位置決めできる。
[実施形態4]
実施形態1〜3のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図9に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。なお、図9では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
コンバータ1110は、図10に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜3のリアクトルを備える。設置対象への位置決め作業性に優れるこれらのリアクトルを備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、組立作業性に優れる。
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1〜3のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜3のリアクトルなどを利用することもできる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、上記の各実施形態では、載置面上に突出したガイドを示したが、設置対象にリアクトルの下部を収納できる凹所を設け、その凹所の底面を載置面とし、凹所の内側面をガイドの当接面としても良い。
本発明のリアクトル、リアクトルの固定構造、コンバータ及び電力変換装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される電力変換装置やその構成部品に好適に利用することができる。
1 リアクトル
2 コイル 2a,2b コイル素子 2r コイル連結部 2w 巻線
3 磁性コア
31 内側コア部 31e 端面 31m コア片 31g ギャップ材
32 外側コア部 32e 内端面
4 ケース
4a,4b,4c 位置決め部
40 底板部 40f 接合領域
41 側壁部 41b ねじ穴用突部 41p 突条
42 絶縁層 45 封止部材(パッキン) 47 端子台 49 ボルト
400h ボルト孔
5 インシュレータ 51 周壁部 52 枠状部 52f 台座
6 切欠
8 端子金具 81 溶接面 82 接続面
10 組合体
100 設置対象 100s 載置面 110 ガイド 110G 当接面
1100 電力変換装置
1110 コンバータ 1111 スイッチング素子
1112 駆動回路 L リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両 1210 メインバッテリ 1220 モータ 1230 サブバッテリ
1240 補機類 1250 車輪

Claims (9)

  1. コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを備えるリアクトルであって、
    前記ケースは、
    底板部と、
    前記底板部と結合され、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを備え、
    前記底板部と前記側壁部との結合箇所近傍の角部には切欠が形成されていることを特徴とするリアクトル。
  2. 前記底板部は、リアクトルの設置対象における載置面に対向し、
    前記ケースは、前記設置対象が有するガイドの当接面に対して前記リアクトルを位置決めする位置決め部を備え、その位置決め部は、前記切欠を有することを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記位置決め部において、前記載置面と当接面に接する各対向面がいずれも前記底板部に形成され、
    前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記位置決め部において、前記載置面と当接面に接する各対向面がいずれも前記側壁部に形成され、
    前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリアクトル。
  5. 前記位置決め部において、前記載置面に接する対向面が前記底板部に形成され、前記当接面に接する対向面が前記側壁部に形成され、
    前記切欠は、両対向面の延長面で構成される角部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリアクトル。
  6. 前記底板部が金属で構成され、前記側壁部が樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリアクトル。
  7. コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを有するリアクトルと、このリアクトルが固定される設置対象とを備えるリアクトルの固定構造であって、
    前記設置対象は、
    前記リアクトルが設置される載置面と、
    前記載置面と交差する面で、前記リアクトルと接触することでリアクトルを載置面上に位置決めする当接面とを有し、
    前記ケースは、
    前記載置面に対向される底板部と、
    前記底板部と結合され、前記組合体の周囲を囲む側壁部と、
    前記当接面に対して前記リアクトルを位置決めする位置決め部とを備え、
    この位置決め部は、前記底板部と前記側壁部との結合箇所近傍の角部に形成された切欠を有することを特徴とするリアクトルの固定構造。
  8. スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを備え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
    前記リアクトルは、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
  9. 入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを備え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
    前記コンバータは、請求項8に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114730660A (zh) * 2019-12-12 2022-07-08 株式会社村田制作所 电抗器

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