JP2013026041A - リチウムイオン二次電池用正極集電体、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池用正極集電体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の片面または両面に形成された表面層と、を備えるリチウムイオン二次電池用正極集電体であって、前記表面層は、Ta、W、Mo、V、Cr、およびNbよりなる群から選択される1種以上からなる金属から構成されるとともに、前記表面層の表面に酸化処理が施されることにより前記表面層の少なくとも最表面が酸化されていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
さらに、本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極集電体の製造方法によれば、前記した特性を有する集電体を容易かつ確実に製造することができる。
なお、各図に示した構成の寸法・縮尺は、説明の便宜上誇張して示している。
なお、リチウムイオン二次電池の詳細な構成については、後記する。
集電体30は、図1に示すように、後記する正極100の基材であり、電気を取り出すための端子である。そして、集電体30は、基材10と、基材10の表面に形成された表面層20と、から構成される。
なお、表面層20には、Al、O等、その他不可避的不純物を本発明の効果を妨げない範囲で含有していてもよいが、前記のような効果を発揮するためには、Ta、W、Mo、V、Cr、およびNbよりなる群から選択される1種以上が表面層20中に占める割合は90原子%以上であることが好ましい。
なお、表面層20の最表面とは、詳細には、集電体30の表面であり、金属層21の表面のうち基材10が存在する側(界面)とは反対側の表面である。
表面層20の厚さが2nm未満であると、表面層20の全体が酸化した場合でもピンホールが生じ易く、下地のAl箔1と電解液とが直接接触してしまい、耐食性が不十分になる。表面層の厚さが概ね5nmを超えると、表面層20の全体は酸化されず、表面のみが酸化層22となり、残りが金属層21となった状態となるが、この場合にも、酸化していない金属層21の導電性は充分であり、かつ最表面が耐食性に優れる緻密な酸化物層22で覆われているために問題は生じない。
一方、表面層20の厚さが50nmを超えると、耐食性への効果は飽和するにもかかわらず製造に時間がかかることになり、生産性の観点から問題が生じる。
表面層20の厚さとしては、望ましくは2.5〜45nm、さらに望ましくは3〜40nmである。
なお、表面層20の「少なくとも最表面」が酸化されているとは、表面層20(金属層21)の最表面が酸化処理により酸化されていれば、本発明の効果を発揮するという意図であり、金属層21の最表面だけでなく金属層21内部も酸化されていてもよい。したがって、金属層21全体が酸化されて酸化物層22となり、表面層20が酸化物層22のみで構成されていてもよい。
ここで、表面層20の形成にはスパッタリング等の気相成膜法を用いるが、Al酸化物層2の存在しないAl箔1上に直接表面層20を形成しても、得られる表面層20が緻密なものとなり難いため、表面層20の膜厚を厚くすることにより集電体30の耐食性を確保する必要がある。一方、Al酸化物層2上に表面層20を形成する場合、気相成膜時にAl酸化物層2上の核形成密度が高いことから得られる膜(表面層20)は緻密なものとなり、表面層20が比較的薄くても、得られる集電体30は充分な耐食性を発揮する。
ここで、Al酸化物層2の厚さが1nm未満であると、Al箔1の表面を均一に覆っていないために、表面層20を緻密化させる効果が少ない。一方、Al酸化物層2の厚さが10nmを超えると、基材10であるAl箔1と正極活物質層40の間の電子伝導を阻害し、電池の内部抵抗が増大するため望ましくない。よって、Al酸化物層2の厚さは、1〜10nm、さらに望ましくは、2〜7nmである。
正極100は、二次電池を構成する主要部材の一つであり、対となる負極とともに電極として機能するものである。また、正極100は、電解液を介してリチウムイオンを吸蔵あるいは放出することで、二次電池の充放電反応を担っている。
そして、正極100は、図1に示すように、前記した集電体30と、集電体30の表面に形成された正極活物質層40と、で構成されている。
以下、実施形態に係る集電体30の製造方法について、図2を参照しながら説明する。実施形態に係る集電体30の製造方法は、表面層形成工程を行うことを特徴としている。また、その前提としてアルミニウム箔製造工程を行う。
本工程は、図2(a)に示すように、アルミニウム板を圧延して所定厚さおよび所定面積を有するAl箔1を製造する工程である。ここで、アルミニウム板から製造するAl箔1の最終的な厚さは、箔強度および二次電池の体積容量の観点から、1〜100μmとすることが好ましい。
本工程は、図2(b)に示すように、Al箔1上の片面または両面に表面層20を形成する工程である。本工程では、気相成膜法を用いてAl箔1上の片面または両面に成膜元素であるTa、W、Mo、V、Cr、およびNbよりなる群から選択される1種以上からなる金属を堆積させて金属層21を形成し、その後、酸素プラズマを照射することによって金属層21の少なくとも最表面を酸化させることにより酸化物層22を形成する。なお、気相成膜法とは、気相中で基材表面に原子を析出堆積させて固体の薄膜を形成する成膜法のことをいう。
しかし、自然酸化膜がAl箔1の表面に形成されている場合、箔の保存環境等によって自然酸化皮膜の厚さが変わり膜の均一性が悪く、箔の面内で性能に差がでる虞がある。したがって、所定金属のスパッタリング成膜前(表面層形成工程前)に、チャンバ内の圧力を調整しAl箔1に直流電圧(出力100W)を3分間印加して自然酸化皮膜を除去した後、RF(高周波)スパッタリングによりアルミナ(Al2O3)ターゲットをAl箔1の表面に堆積させることにより均一な酸化皮膜をAl酸化物層2として形成することがより望ましい。
なお、Al酸化物層2の厚さは、後述する表面層の緻密性と、箔の電子伝導性の観点から1〜10nmとすることが望ましい。
酸素プラズマ処理の条件としては、O2:1〜30sccm、チャンバ内圧力:0.1〜5torr、印加出力RF:50〜1000Wとすることが好ましい。
また、前記したアルミニウム箔製造工程と、表面層形成工程と、を行った後に、正極活物質層形成工程を行うことで、集電体30を備える正極100を製造することができる。
本工程は、図2(c)に示すように、表面層20上に正極活物質層40を形成する工程である。本工程では、活物質を導電助剤とバインダとともに溶媒中で混合し、当該混合物を表面層20上に塗布し、乾燥して正極活物質層40を形成する。ここで、活物質としては例えばLiCoO2を、導電助剤としては例えばアセチレンブラックを、バインダとしては例えばポリフッ化ビニリデンを、溶媒としては例えば1−メチルー2−ピロリドン等を用いることができ、これらの成分の配合比は特に限定されない。また、乾燥温度は、例えば100〜150℃とする。なお、正極活物質層40の厚さは、二次電池の体積容量の観点から0.1〜100μmとすることが好ましい。
また、Al箔1と表面層20との間に厚さ1〜10nmのAl酸化物層2を形成させることにより、表面層20をより緻密に形成することができる。
実施形態に係る正極100は、当該正極100と図示しない負極との間にセパレータを挟んでこれらを巻回し、電解液が充填された円筒状・角型・ラミネート型ケースに密閉収納することで、二次電池を構成することができる。以下、正極100以外の二次電池の構成について、簡単に説明する。
以下、実施形態に係る正極100を備える二次電池の充放電時における動作について、正極100が奏する作用を踏まえながら説明する。
アルミニウム箔製造工程は、実施例1〜12(No.1〜12)と比較例1〜11(No.13〜23)とで同様の処理を行った。すなわち、アルミニウム板を圧延して縦50mm×横50mm×厚さ15μmのアルミニウム箔を製造した。
表面層形成工程は、比較例1、2を除いて、いずれも同様の方法にて実施した。すなわち、アルミニウム箔上にスパッタリングによってTa、W、Mo、V、Cr、Nb、Mg、Ni、Zr、または、Hfからなる金属層を形成した。スパッタリングターゲットにそれぞれTa、W、Mo、V、Cr、Nb、Mg、Ni、Zr、または、Hfの金属ターゲットを使用し、Ta、W、Mo、V、Cr、Nb、Mg、Ni、Zr、または、Hfからなる金属層を形成した。なお、スパッタリング時にターゲットに与えるエネルギーと成膜時間の値を変えることで、金属層の膜厚を制御した。
また、比較例2については、金属層の成膜を実施せずに同様の酸素プラズマ処理を実施した。
前記した表面層形成工程の直後に、各層の成分と深さをXPSを用いて前記方法により測定した。
前記のように作製した集電体上に活物質層を形成し、リチウムイオン二次電池用の正極を作製した。活物質であるLiCoO2、導電助材となるアセチレンブラック、バインダとなるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)と、溶媒となるNMP(N−メチルピロリドン)を所定の割合で混合してスラリーとしたものを集電体上に塗布し、120℃の大気中で乾燥させることにより、活物質層(片面の厚さ:約75μm)を形成した。
上記と同様の方法により、Cu箔上(厚さ:約15μm)にグラファイトを活物質とするスラリーを塗布・乾燥(グラファイト層の片面の厚さ:約50μm)してリチウムイオン二次電池用の負極を作製し、正極と組み合わせることによって内部抵抗測定用の電池セルを作製した。
作製した電池セルについて、所定のコンディショニング(調整)充放電処理を行った後、電池の初期内部抵抗を測定した。内部抵抗測定には、Solartron社製の周波数応答アナライザ(FRA)1255Bを用いて周波数1MHz〜0.1Hzまでの交流インピーダンス測定を行った。
また、作製した電極の耐食性を評価するため、30サイクルの充放電試験を行い、その後、再度交流インピーダンス測定によって電池の内部抵抗を測定した。
初期内部抵抗について、150Ω以下と小さいものを『○』、未処理箔と同等(150Ωを越えて300Ω以下)のものを『△』、未処理箔よりも抵抗が大きい(300Ωを超える)ものを『×』と判定した。
また、サイクル試験後、内部抵抗の増加が100Ω以下のものを耐食性が良好であるとして『○』、100Ωを超えるものを『△』とした。
そして、初期およびサイクル試験後の両方で『○』と判定できるものを合格(総合判定が『○』)とした。なお、初期およびサイクル試験後の判定のうち、一つでも『△』があれば総合判定を『△』(不合格)、一つでも『×』があれば総合判定を『×』(不合格)とした。
また、比較例2は、表面層を設けていないアルミニウム箔の表面に酸素プラズマ処理を行ったものであるが、箔表面の変質を抑制する耐食層が設けられていないために、充放電によって箔の変質が起こり、サイクル試験後の抵抗が増大する結果となった。
また、比較例3〜6については、表面層に含有される金属元素が、本発明に規定したものとは異なるものであり、酸化による体積膨張が小さいものであるため、膜にピンホールが存在し、アルミニウム箔の腐食を抑制する充分な効果がなかった。
また、比較例7〜11については、金属層の成膜後に酸素プラズマ処理を実施していないため、表面の酸化皮膜にピンホールが多く存在し、充分な耐食性を発揮できなかった。
2 Al酸化物層(アルミニウム酸化物層)
10 基材
20 表面層
21 金属層(Ta、W、Mo、V、Cr、Nb)
22 金属酸化物層
30 リチウムイオン二次電池用正極集電体(集電体)
40 正極活物質層
100 リチウムイオン二次電池用正極(正極)
Claims (5)
- 純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の片面または両面に形成された表面層と、を備えるリチウムイオン二次電池用正極集電体であって、
前記表面層は、Ta、W、Mo、V、Cr、およびNbよりなる群から選択される1種以上からなる金属から構成されるとともに、前記表面層の表面に酸化処理が施されることにより前記表面層の少なくとも最表面が酸化されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極集電体。 - 前記表面層は、厚さが2〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極集電体。
- 前記アルミニウム箔と前記表面層との間に、厚さ1〜10nmのアルミニウム酸化物からなる層が存在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極集電体。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極集電体と、
前記リチウムイオン二次電池用正極集電体の前記表面層を覆う正極活物質層と、
を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極集電体の製造方法であって、
前記アルミニウム箔の表面に、Ta、W、Mo、V、Cr、およびNbよりなる群から選択される1種以上からなるスパッタリングターゲットを用いて前記表面層を形成させた後、前記表面層の表面に酸素プラズマを照射することにより、前記表面層の少なくとも最表面を酸化させる工程を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極集電体の製造方法。
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