JP2013023743A - 非磁性鋼線材又は棒鋼、及びその製造方法 - Google Patents

非磁性鋼線材又は棒鋼、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低い比透磁率と冷間加工性(低変形抵抗)を両立できる高Mn非磁性鋼を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、C:0.40〜0.8%(質量%の意味。以下、化学組成について同じ。)、Si:0.50%以下(0%を含まない)、Mn:8〜25%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.030%以下(0%を含まない)、Al:0.010〜0.10%、N:0.0010〜0.020%を含み、残部が鉄及び不可避不純物であり、固溶状態のN量が0.001%以下(0%を含む)であると共に、組織がオーステナイト単相組織であり、結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の個数が、全オーステナイト結晶粒に対して80%以上である非磁性鋼線材又は棒鋼である。
【選択図】なし

Description

本発明は、加工性に優れた、すなわち加工時の変形抵抗の小さい高Mn非磁性鋼線材及び棒鋼に関する。
オーステナイト系ステンレス鋼は、非磁性構造部材として種々の用途に使用されているが、加工による変形抵抗の急激な増加が問題となる場合が多い。すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼は、部品加工時に導入される加工歪み量の増加に伴い、加工誘起マルテンサイト変態することが問題となる。オーステナイト系ステンレス鋼のオーステナイト相が加工誘起マルテンサイト変態すると、強磁性のα’マルテンサイト相が生成するため、比透磁率が著しく上昇する。従って、オーステナイト系ステンレス鋼を加工する際は、加工誘起α’マルテンサイト変態を抑制すべく、温間又は熱間加工されるか、或いは冷間加工後に溶体化再熱処理を施して、組織を再びオーステナイト単相にして比透磁率を復元(低下)する方法がとられてきた。しかし、これらの方法では生産性を劣化させるという問題があった。
これに対して、高Mn非磁性鋼は、加工歪みを付与してもオーステナイト相が非磁性のεマルテンサイト相に変態するため、比透磁率は極めて低いままで保持できる。また、高Mn非磁性鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比べて安価であるため、近年、非磁性構造材料としての用途が拡大しつつある。しかし、高Mn非磁性鋼は、高強度で、且つ加工硬化率が非常に高いため、加工中に変形抵抗が急激に増大し、鍛造金型の割れ、或いは鋼材の加工割れが発生しやすいという問題があった。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼の用途に高Mn非磁性鋼を用いる場合には、加工性に優れること、すなわち加工時の変形抵抗が低いことが望まれていた。
例えば特許文献1〜4には、高Mnのオーステナイト鋼に関する技術が開示されている。
特許文献1には、防弾性に優れた高Mnオーステナイト鋼鈑に関する技術が開示されている。特許文献1では、オーステナイトと10〜60体積%の加工誘起マルテンサイトからなる複相組織を有することによって、鋼鈑の強度を増大させて変形を抑えることに加えて、変形が進行した際には、その変形によって運動エネルギーを吸収させ、防弾性を確保している。すなわち、当該技術では初めから強度の高いマルテンサイト相を存在させると共に、変形時にも加工誘起マルテンサイトを生じやすい鋼材としているため、衝撃吸収の用途には有効であるものの、複雑な構造部品への加工は困難である。
特許文献2には、熱間加工性と耐食性に優れた非磁性鋼材に関する技術が開示されている。本技術では、耐食性及び熱間加工性に難点がある高Mn非磁性鋼の表面に、オーステナイト系ステンレス鋼を鋳ぐるむことによって、熱間加工性と耐食性を改善している。また、当該技術では高強度を達成することを目的としている。内層の高Mn非磁性鋼の成分は、オーステナイト安定化だけでなく、強度を上昇させるために調整されている。
特許文献3には、局部延性に優れた高Mn非磁性鋼の製造方法が開示されている。当該技術では、介在物の形態と鋼の清浄度を制御することによって切欠感受性を減少させ、局部延性を改善している。但し、特許文献3の鋼成分は、オーステナイト安定化だけでなく、強度を上げるために調整されている。
特許文献4には、高強度、高降伏比の高マンガン非磁性鋼の製造方法が開示されている。当該技術では、高マンガン非磁性鋼の強度を確保するための成分、圧延・冷却方法が規定されており、特に強度の増加に有効なNを確保するため、高Mn化と冷却速度の調整が行われている。特許文献4も、前記特許文献2及び3と同様に、鋼の強度を上昇させるように調整された技術である。
特開2004−137579号公報 特開平06−057379号公報 特開平06−088124号公報 特開昭62−202023号公報
近年、地球環境負荷低減の目的で、加工方法に対するニーズが熱間加工から冷間加工へ変化しつつある。冷間加工は、製造工程でのCO2削減、及び歩留まり向上のメリットがある反面、変形抵抗が高くなるため、コスト高になるという問題がある。従来の高Mn非磁性鋼はいずれも高強度を志向しており(上記特許文献2〜4など)、冷間で構造部品に加工することは困難であった。特に、高Mn非磁性鋼において低い比透磁率を維持したままで変形抵抗(特に冷間加工時の変形抵抗)を下げるという技術は、従来提案されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低い比透磁率と冷間加工性(低変形抵抗)を両立できる高Mn非磁性鋼を提供することを目的とする。
上記課題を達成した本発明は、C:0.40〜0.8%(質量%の意味。以下、化学組成について同じ。)、Si:0.50%以下(0%を含まない)、Mn:8〜25%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.030%以下(0%を含まない)、Al:0.010〜0.10%、N:0.0010〜0.020%を含み、残部が鉄及び不可避不純物であり、固溶状態のN量が0.001%以下(0%を含む)であると共に、組織がオーステナイト単相組織であり、結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の個数が、全オーステナイト結晶粒に対して80%以上である非磁性鋼線材又は棒鋼である。本発明の非磁性鋼線材又は棒鋼は、窒化化合物量が0.0025%以上であることが好ましい。
本発明の非磁性鋼線材又は棒鋼は、必要に応じて更に(a)Cr:0.3%以下(0%を含まない)及び/又はMo:1%以下(0%を含まない)、(b)Ti:0.25%以下(0%を含まない)、Nb:0.25%以下(0%を含まない)、V:0.25%以下(0%を含まない)、及びB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種、(c)Cu:1%以下(0%を含まない)及び/又はNi:1%以下(0%を含まない)を含有することも好ましい。
本発明は、上記いずれかの化学組成を有する鋼を、1050〜1250℃で加熱した後、800〜1000℃で10〜180分保持し、続いて0.5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで冷却する非磁性鋼線材又は棒鋼の製造方法も包含する。
本発明によれば、特にMn量を確保した上で固溶N量を抑制するとともに、オーステナイト結晶粒を整粒化しているため、鋼線材又は棒鋼そのものの比透磁率が低いことに加えて、冷間加工後でも低い比透磁率を実現できるとともに、冷間加工時の変形抵抗を抑制できる。
本発明の非磁性鋼線材及び棒鋼(以下では、鋼線材および棒鋼をまとめて、単に「鋼線材」と呼ぶ)は、Mn量を確保した上で固溶N量を抑制するとともに、オーステナイト結晶粒を整粒化している点に特徴を有している。Mn量を確保した上で固溶N量を抑制することで、オーステナイトを安定化したまま冷間加工時の動的歪み時効を抑制できる。またオーステナイト結晶粒を整粒化することによって、加工誘起マルテンサイト変態の抑制と、不均一変形による加工硬化を抑制でき、冷間加工時の変形抵抗を低減できる。以下に詳述する。
通常、オーステナイト安定化元素であるMnを増加させると、Nの固溶度が増加するため、容易に固溶Nが増加する。但し、Nもオーステナイト安定化元素であるため、オーステナイト単相鋼を得るためには、固溶Nを増加させることは有効であった。しかし、固溶Nは、冷間加工時の動的歪み時効を発生させ、変形抵抗を増加させる作用がある。冷間加工時に動的歪み時効が発生すると、変形抵抗の顕著な増加と、変形能の劣化が生じやすくなるため、冷間加工が困難になる。だからといって、変形抵抗を低減するために固溶Nを低減するだけではオーステナイトの安定度が低下することによって加工誘起マルテンサイト変態しやすくなるため、却って変形抵抗が増加してしまう。つまり、変形抵抗低減のためには、オーステナイトを安定化させたままで(すなわち、室温でオーステナイト単相を維持すると共に、加工中に加工誘起マルテンサイト変態させることなく)固溶Nを低減する必要がある。本発明者らが検討した結果、Mn量を増加させてオーステナイトを安定化するとともに、AlNなどの窒化化合物を形成させることによって固溶N量を低減することが有効であり、さらに前記窒化化合物によってオーステナイト結晶粒径を均一化(整粒化)でき、この整粒化によって加工中の変形抵抗を低減できることを見出した。
加工誘起マルテンサイト変態の発生メカニズムは、以下のように推察できる。すなわち、加工誘起マルテンサイト変態は、変形の不均一さによって局部的に変形応力が高くなることによって発生する。より大きな結晶粒は粒内のC、Mn濃度にばらつきがあり、またより小さな結晶粒は微細化強化機構によって硬いため、より大きな結晶粒はより小さな結晶粒からの変形を局所的に受けやすい。したがって、より大きな結晶粒では、加工誘起マルテンサイト変態が発生しやすく、加工中の変形抵抗が増加する。また、結晶粒度の分布が広いと加工硬化率が上がるため、変形抵抗が増加しやすい。
そこで、本発明では、Alなどの窒化化合物形成元素によって固溶Nを減少させると共に、AlNなどの窒化化合物によって結晶粒を整粒化することを試みた。その結果、鋼を適切な温度に加熱及び保持すると、AlNが均一に分散し、固溶Nの低減効果に加えてオーステナイト粒の異常成長を抑制できることが分かった。結晶粒を整粒化したオーステナイト単相鋼は、変形が均一に進行するため、加工誘起マルテンサイト変態に必要な歪み量を増大でき、また冷間加工に伴う加工硬化を低減できる。すなわち、本発明ではMn量を確保することによってオーステナイトを安定化し、AlN等によって固溶Nを低減して動的歪み時効を抑制し、さらにAlN等によるオーステナイト結晶粒の整粒化によって変形抵抗を十分に低減した高Mn非磁性鋼を実現することができた。
固溶N量を抑制するためには、特にN量とAl量を適切に調整することが重要である。
Nが鋼中に固溶すると、変形時の転位の移動を妨げる動的歪み時効を発生させ、変形抵抗が増加し、割れが発生する。またN量が過剰になると窒化化合物量が増加しすぎて却って変形能が低下する。従ってN量を、0.020%以下と定めた。N量の上限は、好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.016%以下(特に0.010%以下)である。加工性の観点からはN量は少なければ少ない程好ましいが、製造上N量を0%にすることは難しい。また、本発明ではAlN等の窒化化合物によってオーステナイト粒を整粒化し、加工時の変形抵抗低減効果を得るために、N量はある程度必要である。そこでN量を0.0010%以上と定めた。N量の下限は、好ましくは0.0020%以上であり、より好ましくは0.003%超(更に好ましくは0.0035%以上、特に0.0040%以上)である。
Alは、溶製中の脱酸元素として有効なだけでなく、熱間圧延(又は鍛造)後の冷却時にAlNとして析出させることができ、固溶Nの低減による動的歪み時効の抑制と、オーステナイト結晶粒の整粒化による冷間加工時の変形抵抗の抑制に有効な元素である。そのような効果を有効に発揮させるとともに、溶製中の脱酸不足によるガス欠陥の発生を防ぐため、Al量を0.010%以上と定めた。Al量の下限は、好ましくは0.015%以上であり、より好ましくは0.020%以上である。一方、Al量が過剰になると、鋼材が脆化しやすくなり、冷間加工性が劣化する。そこでAl量は0.10%以下と定めた。Al量の上限は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
本発明では、固溶N量は0.001%以下とする。固溶Nは、オーステナイト安定化の作用も有するが、動的歪み時効による変形抵抗の増加と、割れの原因になる元素である。本発明ではC、Mnによってオーステナイトを安定化できるため、固溶N量は極力低減し、冷間加工性を向上させている。固溶N量は、好ましくは0.0005%以下であり、より好ましくは0.0003%以下である。固溶N量は、N量と、Al等の窒化化合物形成元素の量と、後述する製造条件を適切に調整することによって、0%とすることもできる。
本発明の鋼線材の組織は、冷間加工性と低い比透磁率を両立させるため、オーステナイト単相とする。オーステナイト相以外の相としてフェライト、マルテンサイト、ベイナイト、セメンタイトが挙げられる。しかし、オーステナイト相以外の相が多くなると、比透磁率を上昇させてしまうだけでなく、組織中で硬さと変形能が不均一になるため、変形抵抗の増加、割れの発生が促進されるなどの弊害がある。このような弊害を避けるため、全組織に占めるオーステナイト組織の割合は、通常95面積%以上である。オーステナイト相は、好ましくは97面積%以上、より好ましくは99面積%以上(特に100面積%)である。
本発明の鋼線材の組織は、オーステナイト単相組織であることに加え、結晶粒径が組織全体に亘って整っていることも重要である。結晶粒径にばらつきがあると、比較的大きな粒の界面に歪みが集中しやすく、変形初期から加工誘起マルテンサイト変態が起こりやすくなる。組織全体の結晶粒径をほぼ同じ程度に統一することによって、組織全体が均一に変形し、加工誘起マルテンサイト変態を抑制できる。組織中のオーステナイト結晶粒はほぼ同じ大きさであることが理想であるが、結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の個数が、全オーステナイト結晶粒の個数に対して80%以上であれば、加工初期の加工誘起マルテンサイト変態を抑制できる。結晶粒径が30μm未満の範囲で結晶粒の大きさが揃っていたとしても、粒径が微細すぎて変形抵抗が上昇する。また、結晶粒径が80μmを超える範囲で結晶粒の大きさが揃っていたとしても、変形の局在化によって加工誘起マルテンサイト変態が発生する。そこで、本発明では結晶粒径が30〜80μmの範囲で、オーステナイト粒の大きさをそろえることとした。結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の個数は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。なお、結晶粒径は、円相当直径を意味する。
上記したオーステナイト粒の整粒化は、特にAlN等の窒化化合物量を確保することによって実現可能である。オーステナイト整粒化効果を有効に発揮するため、窒化化合物量は0.0025%以上であることが好ましく、より好ましくは0.0030%以上であり、さらに好ましくは0.0035%以上である。一方、窒化化合物量が過剰になると、結晶粒の整粒化効果は大きくなり、均一なオーステナイト単一組織が得られるという点では有利であるものの、過剰な窒化化合物は冷間加工時の破壊の起点として作用するようになり、変形能が劣化する。そこで、窒化化合物量は0.02%以下であることが好ましく、より好ましくは0.018%以下であり、さらに好ましくは0.016%以下である。なお、窒化化合物にはAlNが含まれることはもちろんのこと、後記するTi、Nb、V、Bを用いる場合には、これらの窒化物も含まれる。
また、上述した通り、本発明ではMn量を適切に調整している。Mnは重要なオーステナイト形成元素である。特にMnは、固溶強化能が比較的小さいため、25%まで添加しても変形抵抗をそれほど増加させない。N量を極力少なくする本発明においては、Mnの添加量は後述するCとのバランスによって決定され、その量は8〜25%とする。Mn量が8%未満であると、オーステナイトが不安定になりやすく、だからといってオーステナイト安定化のためにC量を増量するとセメンタイトが析出しやすくなり、比透磁率の上昇、冷間加工性の劣化を招く。一方、Mn量が25%を超えると、C量は低くできるものの、Mnによる固溶強化の影響が顕著になり始め、変形抵抗が増加しやすく、変形能の劣化を引き起こす。Mn量の下限は、好ましくは9.0%以上であり、より好ましくは10.0%以上である。Mn量の上限は、好ましくは22.5%以下であり、より好ましくは20.0%以下である。
本発明の鋼線材は、上記したN、Al、Mnの他、基本成分としてC、Si、P、Sを含む。
Cは、オーステナイトを室温で安定化させるための重要な元素である。特に本発明では、オーステナイト安定化作用を有するNを極めて低位に抑えており、CとMnによってオーステナイトを安定化させるため、C量は0.40%以上と定めた。C量が0.40%未満であると、Mnを多量に添加してもオーステナイトが不安定になり、加工誘起マルテンサイトが生成することによって強度が上昇しやすくなる。オーステナイト安定化のためには、Cは多ければ多いほど良いが、0.8%を超えて含有させると炭化物が生成しやすくなり、オーステナイト単相組織を得ることが困難となり、比透磁率の上昇、冷間加工性の劣化を招く。そこでC量は0.8%以下と定めた、C量の下限は、好ましくは0.45%以上であり、より好ましくは0.50%以上である。C量の上限は、好ましくは0.75%以下であり、より好ましくは0.70%以下である。
Siは、製造時にセメンタイトが生成することを抑制する作用を有する元素であり、必須添加元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Si量は0.05%以上が好ましく、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.10%以上である。一方、Siはオーステナイトを固溶強化させて変形抵抗を増加させると共に変形能を劣化させるだけでなく、固溶Cの活量を高め、固溶Cによる変形抵抗の増加を促進させる作用があり、Si量の過剰添加は加工性の観点からは有害となる場合がある。但し、本発明ではオーステナイト結晶粒径のばらつきを抑制することによって変形が局所に集中することを防止し、鋼材自体の加工硬化を抑制できるため、Siによる変形抵抗の増加は緩和でき、Si量は0.50%以下とする。Si量の上限は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Pは、加熱又は熱間加工時にオーステナイト粒界に移動、偏析しやすく、加工時の割れを促進させるため低く抑える必要がある元素である。経済性と効果を勘案して、P量は0.03%以下とする。P量は好ましくは0.025%以下であり、より好ましくは0.02%以下(特に0.015%以下)である。P量は、少なければ少ない程好ましく、製造条件を工夫することにより極力少なくすることができるが、その量を0%にすることは困難である。
Sは、Pと同様にオーステナイト粒界に偏析しやすく、加工時の割れを促進させるため低く抑える必要がある元素である。経済性と効果を勘案して、S量は0.030%以下とする。S量は好ましくは0.025%以下であり、より好ましくは0.02%以下(特に0.015%以下)である。S量は、少なければ少ない程好ましく、製造条件を工夫することにより極力少なくすることができるが、その量を0%にすることは困難である。
本発明の鋼線材の基本成分は、上述の通り(C、Si、Mn、P、S、Al、N)であり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物が鋼中に含まれることは当然に許容される。さらに、本発明の鋼線材は、必要に応じて下記の元素を含むことも好ましい。
Cr及びMoはいずれも、オーステナイト安定化作用を有する元素である。特にCrは、オーステナイト安定化作用に加えて、オーステナイトの変形能を向上させるのに有効であり、Moはオーステナイト粒の微細化によって靭性を向上させるのに有効である。このような作用を有効に発揮させるため、Cr量は0.01%以上が好ましく、Mo量は0.05%以上が好ましい。Cr及びMoは、単独で用いても良いし、併用しても良い。Cr量の下限は、より好ましくは0.03%以上であり、さらに好ましくは0.08%以上である。Mo量の下限は、より好ましくは0.08%以上であり、さらに好ましくは0.10%以上である。一方、Cr量及びMo量が過剰となると、オーステナイト安定化作用が飽和するだけでなく、鋼材強度が上昇するため、冷間加工が困難になる。Cr量の上限は、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。Mo量の上限は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。
Ti、Nb、V及びBはいずれも窒化化合物形成元素であり、固溶Nの低減とオーステナイト粒の整粒化に作用する元素であり、1種または任意に選択される2種以上を含有することによってこのような作用が発揮される。このような作用を有効に発揮するため、Ti量、Nb量、V量はいずれも0.005%以上が好ましく、より好ましくは0.010%以上である。B量は、0.0005%以上が好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。一方、これら元素の含有量が増加するにつれて前記作用は増大するが、過剰になると硬質の炭化物が多量に生成して冷間加工性を劣化させる。そこでTi、Nb、V量は、いずれも0.25%以下が好ましく、より好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。B量は、好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.0080%以下、さらに好ましくは0.0060%以下である。
CuおよびNiは、いずれもオーステナイトを室温で安定させる作用、及びオーステナイト相の積層欠陥エネルギーの増加によって靭性を向上させる作用を有する元素である。このような作用を発揮するため、Cu及びNiをそれぞれ単独で用いても良いし、併用しても良く、Cu量及びNi量はいずれも0.08%以上が好ましく、より好ましくは0.10%以上である。一方、これらの元素が過剰になると、鋼材強度が上昇して冷間加工が困難になる。そこで、Cu量及びNi量は、いずれも1%以下が好ましく、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。
本発明の鋼線材を実現するためには、鋼線材の製造工程において加熱温度、保持温度及び保持時間、冷却停止温度及び冷却停止温度までの冷却速度を適切に調整することが有効である。前記加熱温度は、1050〜1250℃であり、これはオーステナイト化温度であり、且つAlNなどの窒化化合物が分解する温度である。前記保持温度は800〜1000℃、前記保持時間は10〜180分であり、これらはAlNなどの窒化化合物が均一分散しながら析出できる温度及び時間である。また前記冷却停止温度は400℃以下であり、前記冷却停止温度までの冷却速度は0.5℃/秒以上であり、これらはセメンタイトが析出しない条件である。上記した熱処理は、上記1050〜1250℃で加熱中に鋼材を熱間加工し、その後上記条件で保持及び冷却することによって達成しても良いし、熱間・冷間加工した鋼材に上記の加熱、保持、冷却を施すことによって達成しても良い。なお、前記熱間加工とは、再結晶温度以上での加熱を伴う加工処理であり、熱間圧延や熱間鍛造などの塑性加工が例示できる。また、熱間圧延などの塑性加工時に鋼線材の温度が前記した保持温度範囲に入ったとしても、当該加工中の時間は保持時間には算入されない。当該加工が終了した後に前記した条件で保持および冷却することで本発明の鋼線材を実現できる。上記した条件について、それぞれ以下に詳細に説明する。
加熱温度を1050〜1250℃とすることによって、炭化化合物、窒化化合物を分解できる。1050℃未満の場合、前記分解が十分に起こらず、冷却後に均一なオーステナイト単一組織が得られないなどの弊害を招く。また、加熱中に熱間加工する場合、加熱温度が1050℃未満であると、鋼の変形抵抗が十分に低下していないため、所望の加工が困難となる。炭化化合物、窒化化合物の分解の観点、及び鋼の変形抵抗の低減の観点からは、加熱温度は高いほど良く、上限は特に限定されないが、加熱温度が高くなりすぎると鋼端部にだれが生じることによる鋼の取り扱い性の劣化、又は変形抵抗が低くなりすぎることによる過剰加工等の問題が生じる。そこで、加熱温度の上限は1250℃とする。加熱温度の上限は、好ましくは1225℃以下であり、より好ましくは1200℃以下である。加熱温度の下限は、好ましくは1075℃以上であり、より好ましくは1100℃以上である。
上記した加熱の後、800〜1000℃で10〜180分保持することによって、AlNなどの窒化化合物を均一に分散して析出させることができ、固溶Nを低減できると共に、オーステナイト結晶粒を整粒化できる。保持温度が1000℃を超える場合、窒化化合物が十分に析出できないため、固溶Nの低減とオーステナイト整粒化の効果が得られず、変形抵抗の増加を招きやすい。一方、保持温度が800℃未満では、窒化化合物の析出に時間がかかりすぎ、上記した10〜180分の時間では固溶Nを十分に低減できない。また、窒化化合物が析出する前にオーステナイトが成長してしまい、オーステナイト結晶粒の整粒化が困難となる場合がある。保持温度の下限は、好ましくは825℃以上であり、より好ましくは850℃以上であり、上限は好ましくは975℃以下であり、より好ましくは950℃以下である。
窒化化合物の析出による固溶Nの低減とオーステナイト整粒化の効果を得るためには、保持時間は10分以上とする。保持時間が長いほど、固溶Nの低減に有効である。保持時間は、好ましくは20分以上であり、より好ましくは30分以上である。一方、保持時間が長くなりすぎると、固溶Nの低減には有効であるが、窒化化合物の凝集により結晶粒の整粒効果が十分に得られなくなる。そこで、保持時間は180分以下とする。保持時間は、好ましくは150分以下であり、より好ましくは120分以下である。
ここで、「保持」には鋼材の温度を一定温度に保持する場合の他、鋼材の温度が低下しても800〜1000℃の範囲を10〜180分かけて通過する場合も含む。具体的には、カバー、ヒーターなどを用いれば、空冷によって自然に鋼材の温度が低下するのを回避でき、上記温度及び時間で保持することができる。
上記した加熱及び保持の後は、0.5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで冷却することによって、室温でオーステナイト単相組織を得ることができる。冷却速度が0.5℃/秒未満の場合、又は冷却停止温度が400℃を超える場合、オーステナイト結晶粒界上に炭化物が形成されるため、冷間加工性と磁気特性が劣化する。0.5℃/秒以上の冷却速度であれば、炭化物の析出は抑制され、オーステナイト組織は冷却速度によって特に変化しないので、冷却速度は速いほど良い。冷却速度は、好ましくは0.8℃/秒以上であり、より好ましくは1.0℃/秒以上である。生産性などを勘案すると冷却速度の上限は100℃/秒程度である。また冷却停止温度は、好ましくは375℃以下であり、より好ましくは350℃以下である。冷却停止温度の下限は特に限定されず、例えば室温(20℃程度)である。なお、前記した冷却停止温度が室温よりも高い場合、冷却停止温度から室温までの冷却は特に限定されず、例えば空冷すれば良い。
本発明の鋼線材は、安定したオーステナイト組織を有し、冷間加工性に優れる。また比透磁率が低く、冷間加工後の比透磁率も低いまま維持できる。例えば、本発明の鋼線材を軸方向に冷間加工で60%圧縮(圧縮率が60%)した際の変形抵抗は1500MPa以下(好ましくは1450MPa以下)とでき、且つ前記圧縮後に割れが生じていない。また、本発明の鋼線材の比透磁率は、例えば1.3以下(好ましくは1.2以下)であり、且つ冷間加工後の比透磁率も1.3以下(好ましくは1.2以下)とできる。したがって、本発明の鋼線材は、これまでオーステナイト系ステンレス鋼で製造されてきたリフティングマグネット、各種電動機・発電機、変圧器、ガス遮断機、リニアモーターカー軌道設備、核融合炉用部材、ソレノイドバルブなどの非磁性構造部品に好適に利用でき、従来よりも安価に製造でき、生産性を向上できる。また、これまで変形抵抗が高く熱間加工によって加工されていた高Mn非磁性鋼部品を冷間加工によって製造でき、部品製造工程におけるCO2の排出量削減と生産性向上に貢献できる。さらに、従来のオーステナイト系ステンレス鋼は不動態皮膜の形成により、摩擦圧接に代表される固相接合ができなかったが、本発明の鋼線材は固相接合が可能であるため、例えば磁性のある鋼と摩擦圧接することによって、磁性材と非磁性材のハイブリッド部品を製造でき、幅広い用途に利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1、2に示す化学組成の供試鋼150kgを真空誘導炉で溶解し、上面φ245mm、下面φ210mm、高さ480mmの形状のインゴットに鋳造した。続いて、下記製造方法(1)又は(2)の方法で棒鋼を得た。表中、鋼種1A〜2Lは製造方法(1)、鋼種2M〜2Vは製造方法(2)によって製造した。
製造方法(1)
1.1200℃に加熱し、上記インゴットから155mm角のビレットに熱間鍛造して冷却。
2.ビレットの端部を切断し、ダミービレット(155mm角×長さ(9〜10)m)に溶接。
3.溶接後のビレットを950〜1200℃に加熱し、750〜1050℃でφ45mmの丸棒に熱間圧延。熱間圧延後、750〜1050℃で1〜500分保持。その後、20〜500℃までを0.3〜12.0℃/秒で冷却。
製造方法(2)
1.1200℃に加熱し、上記インゴットから155mm角のビレットに熱間鍛造して冷却。
2.ビレットを1150℃に加熱し、900℃でφ45mmの丸棒に熱間鍛造。熱間鍛造後、900℃で60分保持。20℃まで3.0℃/秒で冷却。
Figure 2013023743
Figure 2013023743
Figure 2013023743
Figure 2013023743
なお、表3、4における実験No.は、用いた鋼種と同じ記号を用いており、例えば1B−1〜1B−17は、いずれも鋼種1Bを用いており、これらはそれぞれ製造条件を変化させた例である。
冷間加工性の評価
前記棒鋼を切削加工し、直径25mm、長さ37.5mmの圧縮試験片を作製した。1600tonプレス機を用い、該試験片の端面を拘束した状態で、室温、歪み速度10/秒の冷間鍛造によって試験片軸方向に圧縮率60%で圧縮し、機械構造用部品の冷間鍛造材を作製した。なお、加工歪み速度は、加工中(塑性変形中)の歪み速度の平均値である。また、圧縮率は、前記試験片の圧縮方向長さをH0、圧縮後の冷間鍛造材の圧縮方向長さをHとした時、100×(H0−H)/H0で算出される値である。
冷間加工性は、60%圧縮した際の最大変形抵抗、及び圧縮試験後に実体顕微鏡(倍率20倍)で表面状態を観察したときの割れの有無によって判断した。
磁性評価方法
前記製造方法で得られた棒鋼のD/4位置(Dは棒鋼の直径)から、5mm角の比透磁率測定用試験片を切り出した。また、前記冷間加工性評価試験後の試験片のD/4位置から同様に5mm角の比透磁率測定用試験片を切り出した。振動試料型磁力計を用いて、冷間加工前後の比透磁率をそれぞれ調べた。
固溶N量及び窒化化合物量の評価方法
固溶N量の値は、JIS G1228に準拠して測定し、鋼中の全N量から全窒化化合物量を差し引いて算出した。
1.鋼中の全N量は、不活性ガス融解法−熱伝導度法を用いる。供試鋼素材からサンプルを切り出し、サンプルをるつぼに入れて、不活性ガス気流中で融解してNを抽出し、熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定した。
2.鋼中の全窒化化合物量は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法を用いる。供試鋼素材からサンプルを切り出し、10%AA系電解液(鋼表面に不働態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中で、定電流電解を行なう。約0.5gサンプルを溶解させ、不溶解残渣(N化合物)を穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過する。不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウム及び純Cuチップ中で加熱して分解し、ろ液に合わせる。この溶液を水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させる。フェノール、次亜塩素酸ナトリウム及びペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、光度計を用いて、その吸光度を測定した。上記の方法によって求めた鋼中の全N量から全N化合物量を差し引くことで鋼中の固溶N量を算出した。
オーステナイトの面積率及び粒度測定
オーステナイトの面積率、及び結晶粒度分布を以下のようにして測定した。
1.前記棒鋼を、長手方向に垂直な断面で切断した。
2.前記切断後の棒鋼を樹脂に埋め込み、エメリー紙、ダイヤモンドバフ、電解研磨で順に研磨し、試料表面を鏡面仕上げした。
3.電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、加速電圧20kV、観察倍率400倍で観察し、画像を撮影した。
4.結晶方位解析装置(EBSP)を用いて画像解析し、オーステナイト面積率と結晶粒度分布を求めた。前記結晶粒度分布は、横軸をオーステナイト結晶粒径、縦軸を結晶粒の個数基準の頻度とするものであり、該結晶粒度分布により結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の、全オーステナイト結晶粒に対する割合(個数基準)を求めた。
結果を表5、6に示す。
Figure 2013023743
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実験No.1A、1B−2、1B−3、1B−5、1B−8、1B−9、1B−12〜1B−16、1C〜1Z、2M〜2Vは、化学組成及び製造条件が本発明の要件を満たしており、冷間加工性及び比透磁率(冷間加工前後)が共に良好である。一方、上記以外の実験No.では、化学組成及び製造条件の少なくともいずれかが本発明の要件を満たさないため、冷間加工性及び比透磁率の少なくともいずれかが劣化している。
1B−1は、加熱温度が低かった例であり、窒化化合物が十分に分解できず、整粒効果が不十分のため、冷間加工中の加工硬化が顕著となり、変形抵抗が高く、且つ割れが発生した。1B−4は、保持温度が低く、窒化化合物の析出の駆動力が低いため、60分では十分に窒化化合物が析出せず、固溶Nが多くなり、冷間加工中の変形抵抗が高く、且つ割れが発生した。
1B−6は、保持温度が高かったため、1B−7は、保持時間が短かったため、いずれも窒化化合物が十分に形成されず、固溶Nが高く、整粒効果が不十分のため、冷間加工中の加工硬化及び加工誘起マルテンサイト変態が顕著となり、変形抵抗が高く、且つ割れが発生した。
1B−10は、保持時間が長かったため、窒化化合物が凝集し整粒効果が不十分のため、冷間加工中の加工硬化及び加工誘起マルテンサイト変態が顕著となり、変形抵抗が高く、且つ割れが発生した。1B−11は、保持後の冷却速度が遅かったため、冷却中に炭化物が析出し、オーステナイト単相組織とならなかった。また、冷間加工中のマルテンサイト変態が顕著になって、変形抵抗が高くなり、割れが発生するとともに、冷間加工後の比透磁率が上昇した。1B−17は、冷却停止温度が高かった例であり、冷却後に炭化物が析出し、オーステナイト単相組織とならなかった。また、冷間加工中のマルテンサイト変態が顕著になって、変形抵抗が高くなり、割れが発生するとともに、冷間加工後の比透磁率が上昇した。
2AはC量が少なかったため、2DはMn量が少なかったため、いずれも室温でオーステナイトが不安定となり、組織の一部がマルテンサイトや炭化物になってオーステナイト分率が不十分となり、比透磁率が高くなった。また冷間加工中のマルテンサイト変態が顕著となり変形抵抗が高くなり、冷間加工後の比透磁率も高くなった。2Bは、C量が多かったため、組織の一部が炭化物になってオーステナイト分率が不十分となり、比透磁率が高くなった。また冷間加工中のマルテンサイト変態が顕著となり変形抵抗が高くなり、冷間加工後の比透磁率も高くなった。
2CはSi量が多かったため、2EはMn量が多かったため、いずれも固溶強化により変形抵抗が高くなり、冷間加工時に割れが発生した。
2Fは、P量が多かったため、結晶粒界のP濃度が高くなることによって加工性が劣化し、冷間加工時に割れが発生した。
2Gは、S量が多かったため、母相との強度差が大きいMnSの量が増加し、破壊の起点が増えることによって、冷間加工時の割れが発生した。
2HはAl量が少なかったため、2JはN量が少なかったため、いずれも窒化化合物が十分に形成されず、オーステナイト整粒効果が不十分で、冷間加工時の加工硬化が顕著となり、冷間加工時の変形抵抗が大きくなるとともに、割れが発生した。2Iは、Al量が多かったため、鋼中の固溶Al量が増加し、固溶強化(脆化)するため、冷間加工時の変形抵抗が高く、且つ加工性が劣化して割れが発生した。
2Kは、N量が多かったため、固溶N量が高く、動的歪み時効による加工硬化が顕著となり、冷間加工時の変形抵抗が高く、且つ割れが発生した。2Lは、N量が多く、固溶N量は低いが、窒化化合物が過剰に生成して粗大化するため、破壊の起点となり、冷間加工時に割れが発生した。

Claims (6)

  1. C :0.40〜0.8%(質量%の意味。以下、化学組成について同じ。)、
    Si:0.50%以下(0%を含まない)、
    Mn:8〜25%、
    P :0.03%以下(0%を含まない)、
    S :0.030%以下(0%を含まない)、
    Al:0.010〜0.10%、
    N :0.0010〜0.020%を含み、残部が鉄及び不可避不純物であり、
    固溶状態のN量が0.001%以下(0%を含む)であると共に、
    組織がオーステナイト単相組織であり、結晶粒径が30〜80μmであるオーステナイト結晶粒の個数が、全オーステナイト結晶粒に対して80%以上であることを特徴とする非磁性鋼線材又は棒鋼。
  2. 窒化化合物量が0.0025%以上である請求項1に記載の非磁性鋼線材又は棒鋼。
  3. 更に、Cr:0.3%以下(0%を含まない)及び/又はMo:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1又は2に記載の非磁性鋼線材又は棒鋼。
  4. 更に、
    Ti:0.25%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
    V :0.25%以下(0%を含まない)、及び
    B :0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の非磁性鋼線材又は棒鋼。
  5. 更に、Cu:1%以下(0%を含まない)及び/又はNi:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の非磁性鋼線材又は棒鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の化学組成を有する鋼を、
    1050〜1250℃で加熱した後、800〜1000℃で10〜180分保持し、続いて0.5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで冷却することを特徴とする非磁性鋼線材又は棒鋼の製造方法。
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