以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態における車体構造を示す図である。図2は、図1の車体構造に含まれる支持構造を示す図である。車体構造100は、図1に示すように車体前部に搭載された支持構造102と、例えば車体の一部を構成するダッシュパネル104と、ダッシュサイドパネル106a、106bと、フロアパネル108とを備える。ダッシュパネル104は、エンジンルームと車室内とを区画する部材である。ダッシュサイドパネル106a、106bは、ダッシュパネル104を相互間で支持する一対の部材であり、ダッシュパネル104の車幅方向の両端部に取付けられている。フロアパネル108は、ダッシュパネル104の一部とともに車体の床面を構成している。
ダッシュパネル104の車室内側には、乗員に視認される意匠面を有する内装部品となる図示しないインストルメントパネルが配置されている。このダッシュパネル104とインストルメントパネルとで仕切られた空間には、上記支持構造102が搭載されている。
支持構造102は、ステアリング懸架部品、インパネ支持部品およびオプション部品を支持する構造を有する。ステアリング懸架部品は、ステアリングホイールやステアリングシャフト、ステアリングコラムなど全車両に搭載されるステアリング部品である。このステアリング懸架部品は、乗員がステアリングホイールを操作する際に、ステアリングサポートメンバに捩れ荷重(トルク)を生じさせる可能性がある部品である。インパネ支持部品は、インストルメントパネルに付属するメーター類、オーディオ類などのインパネを構成する部品である。このインパネ支持部品の中には、重量の大きな部品も含まれ、操作荷重というよりも、その部品の自重を支える支持が必要な部品である。オプション部品は、車体構造が同じであっても、車両のグレードや使用者の要求に応じて搭載される場合と搭載されない場合とがある仕様部品(例えば電動パワーモータ、電動パワーコントローラ)である。
支持構造102は、図示のように、車両前後方向にほぼ平行に配置された長さの異なる2本のステアリングサポートメンバ、すなわち第1ステアリングサポートメンバ(前側ステアリングサポートメンバ110)および第2ステアリングサポートメンバ(後側ステアリングサポートメンバ112)を備えている。支持構造102はまた、これらのステアリングサポートメンバ110、112を結合する中間ブラケット114a、114bも備える。
さらに、支持構造102は、車体の運転席側に位置する、補強部品としてのリンフォース116およびブレース118と、図示しないステアリングコラムを取付けるためのブラケット(以下、コラム取付用ブラケット120)を備える。なお、図中には、車体の助手席側に位置していて、前側ステアリングサポートメンバ110からダッシュパネル104に向かって延びる他のリンフォース122も示されている。
前側ステアリングサポートメンバ110は、図1に示すように、車幅方向に延びていて、両端110a、110bが車体側面のダッシュサイドパネル106a、106bに固定されている。前側ステアリングサポートメンバ110は、その近傍に配置された上記インパネ支持部品およびオプション部品を主に支持する。
後側ステアリングサポートメンバ112は、図1および図2に示すように、前側ステアリングサポートメンバ110の後方に前側ステアリングサポートメンバ110とほぼ平行に延びている。後側ステアリングサポートメンバ112は、両端が車体側面のダッシュサイドパネル106a、106bに到達せず、車体の運転席側に位置している。後側ステアリングサポートメンバ112は、その端部近傍に結合された中間ブラケット114a、114bを介して、前側ステアリングサポートメンバ110に結合されている。
また、後側ステアリングサポートメンバ112は、上記ステアリング懸架部品を支持し、車体側方から見てステアリング懸架部品の重心と重なる位置に配置されている。なお、ステアリング懸架部品の重心の位置は、車体の設計やレイアウト時に算出され確定する。例えば、後側ステアリングサポートメンバ112は、この確定されたステアリング懸架部品の重心と重なるように長さが調整された中間ブラケット114a、114bを介して、前側ステアリングサポートメンバ110に結合されることになる。
リンフォース116は、図示のように、後側ステアリングサポートメンバ112から前側ステアリングサポートメンバ110を跨いで、車体前面のダッシュパネル104(あるいはカウルトップパネル)まで直線状に延びている。また、リンフォース116が前側ステアリングサポートメンバ110を跨いでいるので、リンフォース116の重量は前側ステアリングサポートメンバ110で支持される。
次に、図3および図4を参照して上記ブレース118およびコラム取付用ブラケット120について説明する。図3は、図2の支持構造102の一部を拡大して概略的に示す図である。図3(a)は、車体側面側から支持構造102の下方を見た状態を示す図である。図3(b)は、車両中央側から支持構造102の下方を見た状態を示す図である。但し、図3(a)および図3(b)では各部材の一部を省略して概略的に示している。図4は、図3の支持構造102とステアリング懸架部品との配置関係を模式的に示す図である。なお、図4では、便宜上、ステアリング懸架部品としてステアリングホイール124およびステアリングシャフト126を模式的に破線で示している。なお、ステアリングコラムは図示していないが、ステアリングシャフト126を覆うように配置される。
ブレース118は、図1に示すフロアパネル108から直線状に延びていて、図3(b)および図4に示すように、後側ステアリングサポートメンバ112の軸線を通るように同メンバ112に接続されている。すなわちブレース118は、同心上に後側ステアリングサポートメンバ112の車両中央側に下方から取付部118aを介して接続されている。
コラム取付用ブラケット120には、図3(a)および図4に示すように、後側ステアリングサポートメンバ112の直下に、ステアリングコラムの車両後方側締結点(取付点128a、128b)が設けられている。この取付点128a、128bにステアリングコラムが締結された際には、ステアリングコラムの重量は後側ステアリングサポートメンバ112で支持される。
また、コラム取付用ブラケット120は、前側ステアリングサポートメンバ110まで延びていて、前側ステアリングサポートメンバ110の近傍に車両前方側締結点(取付点128c、128d)が設けられている。これらの取付点128a、128b、128c、128dにステアリングコラムが締結された場合、ステアリングコラムの重量の殆どは、車両後方側の取付点128a、128bで受けている。そのため、車両前方側の取付点128c、128dには、例えばステアリングコラムの位置を安定させる程度の荷重が作用するのみである。車両前方側の取付点128c、128dでは、図3(b)および図4に示すコラム取付用ブラケット120に設けられた孔部に、ステアリングシャフト126を貫通する丸棒130を挿入することでステアリングシャフト126を固定している。よって、ステアリングコラムは、コラム取付用ブラケット120に3点で固定されている。
以下、図5および図6を参照して、ステアリング懸架部品およびオプション部品を支持構造102で支持した場合について説明する。ここでは、まず、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112が受ける荷重の向きについて主に説明する。
図5は、図2の支持構造102にステアリング懸架部品およびオプション部品を取付けた状態を示す図である。図6は、図5の支持構造102を側面から見た状態を示す図である。図6では、ステアリング懸架部品の重心Gと、前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした捩れ(回転方向の荷重)による円運動(矢印A)とに加えて、円運動に伴う車両前後方向の荷重の向き(矢印B)および車両上下方向の荷重の向き(矢印C)を示した。なお、図中、ステアリング懸架部品は、ステアリングシャフト126を代表的に示した。また、オプション部品は、電動パワーモータ132および電動パワーコントローラ134(図6参照)を代表的に示した。
支持構造102では、図5に示すように、後側ステアリングサポートメンバ112の車幅方向の幅を、ステアリングシャフト126および電動パワーモータ132を車幅方向に沿って覆う幅とした。また、中間ブラケット114a、114bは、上記したように後側ステアリングサポートメンバの端部に結合されている。このため、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112と中間ブラケット114a、114bとで閉断面が形成される。
また、支持構造102では、図6に示すように、後側ステアリングサポートメンバ112の直下でステアリングシャフト126が車両後方側の取付点128aおよび取付点128b(図3および図4参照)を介して締結されている。
後側ステアリングサポートメンバ112は、上記したようにステアリングシャフト126に代表されるステアリング懸架部品の重心Gと重なっている。このため、後側ステアリングサポートメンバ112には、ステアリングシャフト126の重量による鉛直下方向の力が作用する。一方、前側ステアリングサポートメンバ110には、この鉛直下方向の力やステアリングシャフト126の振動などに起因して捩れが作用する。この捩れは、前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした捩れ(回転方向の荷重)として、後側ステアリングサポートメンバ112に作用する(図6中、矢印Aで示す円運動)。つまり、後側ステアリングサポートメンバ112には、前側ステアリングサポートメンバ110に作用する捩れの受け手としての役割が設定される。なお、ステアリング懸架部品の重心Gは、後側ステアリングサポートメンバ112の軸線と一致するのが理想的であるが、後側ステアリングサポートメンバ112の車両側面視での断面の内部に位置していればよい。
また、図6に矢印Aで示す円運動の変位は、例えば図示のように、車両前後方向(矢印B)の成分と車両上下方向(矢印C)の成分とを有する。このように、後側ステアリングサポートメンバ112に捩れが作用した際には、前側ステアリングサポートメンバ110が捩れ方向の中心となる。このため、後側ステアリングサポートメンバ112が受ける荷重の向きを特定できる。
さらに、前側ステアリングサポートメンバ110に作用する捩れの受け手を後側ステアリングサポートメンバ112と明確にすることで、車体全幅に橋渡されている前側ステアリングサポートメンバ110は、捩れの影響を受け難くなる。このため、前側ステアリングサポートメンバ110には、電動パワーモータ132および電動パワーコントローラ134などのオプション部品や、図示しないメーター類およびオーディオ類などのインパネ支持部品などの部品支持に特化した役割を持たせることができる。
以下、図7を参照して、比較例の車体構造について説明する。図7は、比較例の車体構造に含まれる支持構造102Aを示す図である。比較例の支持構造102Aは、1本のステアリングサポートメンバ140を有し、ステアリングコラムハンガー142を介してステアリング懸架部品として代表的に示されたステアリングシャフト144を支持している点で、上記車体構造100の支持構造102と異なる。なお、ステアリングサポートメンバ140には、オプション部品として代表的に示された電動パワーモータ146も支持されている。
支持構造102Aは、図示のように、ステアリングサポートメンバ140から車両前後方向に延びているステアリングコラムハンガー142を有する。支持構造102Aでは、ステアリングサポートメンバ140を跨いで車両前後方向に位置するシャフト締結部(締結点148a、148b)と、ステアリングシャフト144を跨いで車幅方向に位置する不図示の締結点とを有する。
つまり、支持構造102Aでは、ステアリングサポートメンバ140に取付けられたステアリングコラムハンガー142に合計4箇所の上記締結点を形成し、このステアリングコラムハンガー142を通じて、ステアリングシャフト144がステアリングサポートメンバ140に固定されている。
このように、比較例の車体構造では、ステアリングサポートメンバ140を跨いで車両前後方向にステアリングコラムハンガー142が延びているので、支持バランスを保つことはできる。しかし、この支持構造102Aでは、ステアリングサポートメンバ140を軸とした片持ち構造となっているので、ステアリングサポートメンバ140およびステアリングコラムハンガー142への負担が大きくなる。
さらに、ステアリングサポートメンバ140を軸とした片持ち構造では、例えばステアリング懸架部品にかかる荷重や振動などに起因した捩れがステアリングサポートメンバ140に発生してしまう。この捩れは、図中矢印Dで示すように、ステアリングサポートメンバ140を中心として作用する。なお、図中斜線で示した領域Eは、この捩れに伴って補強が必要となる領域を示している。
このため、比較例の車体構造では、ステアリングサポートメンバ140の径を大きくしたり、また、ステアリングコラムハンガー142の形状を拡大したり、板厚を大きくしたりするなど大掛かりな補強が必要となり、重量の増加が避けられない。
これに対して、本実施形態の車体構造100では、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112にかかる負荷の向きが特定でき、荷重の受け方に対し、明確な役割分担を持たすことが可能となる。
すなわち、上記したように、ステアリング懸架部品の重心付近に後側ステアリングサポートメンバ112を配置させることで、ステアリング懸架部品の重量などの荷重は後側ステアリングサポートメンバ112で支持される。また、後側ステアリングサポートメンバ112は、中間ブラケット114a、114bを通じて前側ステアリングサポートメンバ110と結合していることから、前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした回転方向の荷重の受け手となる。一方、ステアリング懸架部品からの負荷が軽減された前側ステアリングサポートメンバ110は、衝突荷重などの車体前後方向に負荷される荷重と、オプション部品およびインパネ支持部品の重量など車体上下方向に負荷される荷重との受け手と特定できる。
このため、車体構造100では、支持強度が不足している場合であっても、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112が受ける荷重の向きを考慮した最小限の補強で支持強度を高めることが可能となる。その結果、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112の径を細くし、また板厚も薄くでき、車体構造100の重量を軽減できる。したがって、この車体構造100によれば、支持強度を保ってステアリングサポートメンバの変形の低減や振動の抑制を図りながら、軽量化を図ることができる。
ここで、支持強度を確保するために径を大きくした既存のステアリングサポートメンバには、レイアウト面で問題があった。一例として、ステアリングサポートメンバは、曲げたり凹ませたり、管の径を一部変化させたりすると、コストがかかる上に、その変化点を起点として支持剛性が低下してしまう。
そのため、支持強度やコストを考慮して、ステアリングサポートメンバは、一直線に繋ぐことが好ましい。しかし、車幅方向全体に延びるステアリングサポートメンバをレイアウトする際には、電装部品や空調部品を避け、さらに運転席側では衝突時に車両前側に乗員の膝が入り込んできた場合にステアリングサポートメンバに接触しないようにするなど、衝突要件も回避する必要がある。よって、径の大きなステアリングサポートメンバを一直線上に繋ぐ際に、レイアウトおよび性能をともに満足させることは困難であった。
これに対して、車体構造100では、前側ステアリングサポートメンバ110の径を細くできるので、一直線上の前側ステアリングサポートメンバ110を設定しながら、レイアウトの自由度の幅を拡大できる。
また、車体構造100では、上記したように、捩れの影響を受け難い前側ステアリングサポートメンバ110には、インパネ支持部品やオプション部品などの部品支持に特化した役割を持たすことができる。ここでは、前側ステアリングサポートメンバ110の近傍にオプション部品である電動パワーモータ132および電動パワーコントローラ134を配置している(図6参照)。このように、インパネ支持部品やオプション部品が前側ステアリングサポートメンバ110の近傍で支持されると、前側ステアリングサポートメンバ110には、鉛直方向の荷重が追加される。なお、前側ステアリングサポートメンバ110近傍でかかる鉛直方向の荷重に起因して、前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした回転方向の荷重が後側ステアリングサポートメンバ112にかかる可能性は小さい。
つまり、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112への負担を最小限に抑え、前側ステアリングサポートメンバ110に明確化された補強方向、すなわち鉛直方向に小規模の補強を行うだけで十分な支持強度を得られる。また、補強が小規模で済むことから補強自体も容易となる。
さらに、車体構造100では、オプション部品を追加する際の対応が容易となる。オプション部品を追加する場合としては、例えば、試作段階で衝突荷重などによってステアリングサポートメンバが強度不足で折れてしまった場合や、同一構造の車両で上記電動パワーモータ132や電動パワーコントローラ134などの重量物に仕様の有無がある場合などが挙げられる。
オプション部品(特に、重量の大きな部品)を追加した場合、既存の手法では、ステアリングサポートメンバへの負荷の仕方が変わり、ステアリングサポートメンバの変形や振動の挙動にも影響が及んでしまう。このため、オプション部品を追加することで、車体構造に大掛かりな設計変更が必要となっていた。
これに対して、車体構造100では、前側ステアリングサポートメンバ110近傍にオプション部品(例えば、電動パワーモータ132および電動パワーコントローラ134)を配置した場合、後側ステアリングサポートメンバ112への影響は殆どない。このため、車体構造100では、新たな補強を準備する必要はなく、前側ステアリングサポートメンバ110に電動パワーモータ132および電動パワーコントローラ134の重量を支持させるための鉛直方向の補強を行うことで、支持強度を高めることができる。
また、車体構造100では、上記したように、前側ステアリングサポートメンバ110および後側ステアリングサポートメンバ112と中間ブラケット114a、114bとで閉断面が形成される(図5参照)。閉断面が形成されたことで、後側ステアリングサポートメンバ112には自由端が生じない。また、図5に示すように、車幅方向に沿った中間ブラケット114a、114bの間に、ステアリング懸架部品およびオプション部品の車幅方向の形状が位置している。なお、閉断面を形成する前後のステアリングサポートメンバ110、112と中間ブラケット114a、114bとで、例えば比較例のステアリングコラムハンガー142(図7参照)と同等の役割を果たすことができる(形状は既存のものよりも大きい)。
このため、車体構造100では、車幅方向においてステアリングホイール124にかかるステアリングシャフト126の軸を中心とした回転方向の荷重(捩れ)に対して、無駄なく効果的に支持強度を保つことができる。
また、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112を車体側面のダッシュサイドパネル106a、106bまで延ばさないので、内部レイアウトの自由度を拡大させ、さらに、車体パネルのデザインの自由度を拡大できる。仮に、後側ステアリングサポートメンバ112をダッシュサイドパネル106a、106bまで延ばしてしまうと、後側ステアリングサポートメンバ112に被さるインストルメントパネルのデザインが制約されてしまう。
これに対して、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112の車幅方向の幅がダッシュサイドパネル106a、106bに到達せず、ステアリングシャフト126を覆う幅を有する。そのため、インストルメントパネルの形状を例えば奥行き感を与えるような車両前方に沿った形状にするなど自由度が拡大する。また、車体の車幅方向の外側に空調部品であるルーバーが設定され、その内部にルーバーに風を送るためのダクトが設定された場合であっても、車体構造100では、自由度の高いレイアウトが可能となる。
また、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112の幅をステアリング懸架部品の幅に留めたことで、前席のドア開口を広くとることができる。仮に、後側ステアリングサポートメンバ112を車幅方向の外側のダッシュサイドパネル106a、106bまで延ばしてしまうと、後側ステアリングサポートメンバ112を結合する部分までダッシュサイドパネル106a、106bを車両後方側に延ばさなければならず、ドア開口が縮小してしまう。
これに対して、車体構造100では、ダッシュサイドパネル106a、106bの車両前後方向の長さは、前側ステアリングサポートメンバ110との結合部となる両端110a、110bまでの長さを有すればよく、ドア開口の広い乗降性に優れたドア構造を形成できる。
また、車体構造100では、ステアリングサポートメンバが1本だけの従来の支持構造に対して、後側ステアリングサポートメンバ112を追加するなどして、従来の支持構造を本実施形態の支持構造102に置き換えて、車体全体の軽量化を図ってもよい。
さらに、車体構造100では、上記したように、後側ステアリングサポートメンバ112の直下にステアリングコラムの車両後方側の取付点128a、128bを設けている(図3および図4参照)。このため、ステアリング懸架部品に負荷される荷重を後側ステアリングサポートメンバ112で受けて、乗員に違和感を与えるステアリング振動を効果的に低減できる。
言い換えると、車体構造100では、ステアリング振動に対して、車両後方側のステアリングコラムの取付点128a、128bの直上に後側ステアリングサポートメンバ112を配置して固定している。このため、ステアリングコラムの取付点には、余分な捩れ荷重が生じない。よって、比較例で示したステアリングハンガー142を延ばして締結する手法に比べて、ステアリング振動は、堅固に固定されている後側ステアリングサポートメンバ112で直に受けるため、効果的かつ確実に振動を抑制できる。
また、車体構造100では、比較例のステアリングハンガー142の構造と異なり、上記コラム取付用ブラケット120を図4に示すように左右独立した四方を囲まれたブラケットとすることができ、最小寸法、最小重量で支持強度を保つことが可能となる。
さらに、車体構造100では、上記したように、後側ステアリングサポートメンバ112から前側ステアリングサポートメンバ110を跨いで車両前方のダッシュパネル104まで直線状に延びるリンフォース116を設けている。このため、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112が受ける前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした捩れ(回転方向の荷重)のうち、車両前後方向の変位(図6での矢印B参照)をリンフォース116で効果的に抑止することができる。
また、車体構造100では、リンフォース116が前側ステアリングサポートメンバ110を跨いでいるので、リンフォース116の重量を前側ステアリングサポートメンバ110で支持でき、後側ステアリングサポートメンバ112に新たな荷重がかかることを抑えられる。なお、リンフォース116の形状は、車両の高さ方向において水平に最短距離で繋ぐことが最良な構造である。このような形状のリンフォース116とすれば、最小寸法、最小重量での無駄のない補強が可能となる。なお、リンフォース116は直線状に延びているので、いわゆる突っ張り棒として確実に機能する。
また、車体構造100では、リンフォース116をステアリングシャフト126と同軸上に設けてもよい。このようにすれば、ステアリングホイール124にかかるシャフト軸を中心とした回転方向の荷重を最小限に抑制できる。
さらに、車体構造100では、上記したように、後側ステアリングサポートメンバ112の同心上にフロアパネル108から延びるブレース118を下方向から接続している。このため、車体構造100では、後側ステアリングサポートメンバ112が受ける前側ステアリングサポートメンバ110を中心とした捩れ(回転方向の荷重)のうち、車両の上下方向の変位(図6での矢印C参照)をブレース118で効果的に抑止することができる。なお、ブレース118は、フロアパネル108のうち上方に隆起したフロアトンネル部上から延ばして、ステアリングシャフト126の軸中心に近い位置で、後側ステアリングサポートメンバ112の下方から接続することが最良の構造となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。