以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、補給スクリューを設けた補給路に空気を流入させる空気経路を設ける限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、現像室と攪拌室を縦方向に配置する縦攪拌型のみならず、現像室と攪拌室を水平又は斜めに配置した現像装置でも実施できる。現像剤担持体を1本用いる現像装置のみならず、2本、3本用いる現像装置でも実施できる。
二成分現像剤を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/直接転写型、モノクロ/フルカラーの区別無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置120は、感光ドラム100の周囲に、帯電ローラ101、露光装置121、現像装置102、転写ローラ103、ドラムクリーニング装置104を配置している。
感光ドラム100は、帯電極性が負極性の感光層をアルミニウムシリンダの基体上に形成して構成され所定のプロセススピードで矢印a方向に回転する。帯電ローラ101は、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム100の表面を、負極性の暗部電位VDに一様に帯電する。
露光装置121は、画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、感光ドラム100の表面に画像の静電像を書き込む。暗部電位VDに帯電した感光ドラム100の表面電位が露光を受けて明部電位VLに低下することで、負極性に帯電したトナーが付着可能となる。
現像装置102は、後述するように、感光ドラム100に形成された静電像を反転現像してトナー像を形成する。転写ローラ103は、感光ドラム100に当接して記録材に対するトナー像の転写部T1を形成する。転写ローラ103に正極性の直流電圧を印加することにより、感光ドラム100に担持されたトナー像が記録材Pへ転写される。
記録材カセット122から引き出された記録材Pは、分離ローラ123で1枚ずつに分離して、レジストローラ124へ送り出される。レジストローラ124は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、感光ドラム100のトナー像にタイミングを合わせて転写部T1へ記録材Pを送り出す。
トナー像を転写された記録材Pは、感光ドラム100から曲率分離して定着装置105へ送り込まれ、加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、機体外部へ排出される。転写を逃れて感光ドラム100に残った転写残トナーは、ドラムクリーニング装置104に回収される。
<現像装置>
図2は現像装置の模式的な構成の説明図である。図3は現像装置の模式的な平面図である。
図2に示すように、現像装置102は、現像容器200に収容した二成分現像剤(現像剤)を現像スクリュー204と攪拌スクリュー205とによって混合攪拌しつつ搬送して、現像剤のトナーとキャリアとをそれぞれマイナス、プラスに摩擦帯電させる。現像装置102は、摩擦帯電した現像剤を回転する現像スリーブ201に担持させて感光ドラム100と対向する現像領域へ搬送する。負極性の直流電圧Vdcに交流電圧Vacを重畳した振動電圧を現像スリーブ201に印加することにより、現像スリーブ201に担持された現像剤のうちトナーのみが感光ドラム100の静電像(非露光部)に移転して、静電像がトナー像に反転現像される。振動電圧の交流電圧Vacは矩形波であり、周波数は3[kHz]、ピークトゥピーク電圧は1.5[kV]である。
現像剤担持体の一例である現像スリーブ201は、現像剤を担持して回転する。現像スクリュー204は、現像スリーブ201に現像剤を供給しつつ現像スリーブ201に沿って現像剤を搬送する。攪拌室207は、現像室206の下方に配置される。攪拌スクリュー205は、現像スリーブ201に対向配置される。現像室206にて現像スリーブ201に担持された現像剤は、攪拌室207にて現像スリーブ201から回収される。
現像スリーブ201は、現像容器200の感光ドラム100に対向した位置に回転自在に設けられ、SUS、アルミニウムなどの非磁性材料によって薄肉円筒状に形成されている。現像スリーブ201の直径は、24.5[mm]である。規制ブレード203は、現像スリーブ201と350[μm]の間隔を空けて対向し、マグロール202の磁束によって現像スリーブ201に拘束された余剰の二成分現像剤を掻き落として、層厚を350[μm]に規制する。
現像スリーブ201の内側には、表面の周方向に複数の磁極を配置した非回転のマグロール202が設置されている。二成分現像剤は、マグロール202の磁極間に形成される磁束によって現像スリーブ201の表面に拘束されて担持され、感光ドラム100との対向部で磁極に応答して磁気ブラシを形成して感光ドラム100を摺擦する。
現像室206内の現像剤は、現像スクリュー204により奥側から手前側に搬送される過程で、マグロール202の磁力によって現像室206から現像スリーブ201に汲み上げられる。現像スリーブ201に担持されて現像領域を通過した現像剤は、現像容器200内に戻され、マグロール202による磁気的な斥力を受けて現像スリーブ201表面から剥離されて撹拌室207へ落下する。撹拌室207内の現像剤は、現像スリーブ201から落下した現像剤を合流させつつ、攪拌スクリュー205により攪拌を受けつつ、図中の手前側から奥側へ搬送される。
図3に示すように、攪拌スクリュー205は、第二開口部217を通じて受け渡された現像剤に現像スリーブ201から回収された現像剤を合流させつつ搬送する。隔壁218によって仕切られた現像室206と攪拌室207とは、現像室206の上流側の第一開口部216と下流側の第二開口部217とで連通して、現像剤の循環経路を形成する。攪拌スクリュー205は、攪拌室207に配置され、現像スリーブ201から現像剤を回収しつつ、第二開口部217を通じて受け渡された現像剤とともに搬送して、第一開口部216を通じて現像室206へ循環させる。
現像室206の下方に攪拌室207が配置され、現像スクリュー204の下方に攪拌スクリュー205が配置される。現像スクリュー204は、現像室206に現像スリーブ201の軸方向に沿ってほぼ平行に配置され、現像室206内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に搬送する。攪拌スクリュー205は、撹拌室207内に現像スクリュー204と平行に配置されて、撹拌室207内の現像剤を現像スクリュー204の搬送方向と反対方向に搬送する。現像スクリュー204と攪拌スクリュー205の搬送によって、現像剤は、隔壁218の両端の第一開口部216及び第二開口部217を通って現像容器200内で循環される。
現像スクリュー204及び攪拌スクリュー205は、いずれも420[rpm]の回転速度で回転する。現像スクリュー204及び攪拌スクリュー205の螺旋羽根は、30[mm]の周期でスクリュー軸を中心にした螺旋構造をなし、螺旋の外周半径は10[mm]である。
<現像剤補給装置>
二成分現像剤は、トナーとキャリアと少量の外添加剤を混合分散して構成される。トナーは、結着樹脂、着色剤、そして必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子と、コロイダルシリカ微粉末等の外添剤が添加されている着色粒子とを有する。トナーは、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は5[μm]以上、8[μm]以下が好ましい。ここでは、トナーの体積平均粒径は7[μm]である。
キャリアは、例えば表面酸化或いは未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、あるいは酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造方法は特に制限されない。キャリアは、体積平均粒径が20〜50[μm]、好ましくは30〜40[μm]であり、抵抗率が105[Ωm]以上、好ましくは106[Ωm]以上である。ここでは、体積平均粒径が40[μm]、抵抗率が5×105[Ωm]、100[mT]磁場下における磁化量が0.31Wb/m2]のキャリアを用いた。
現像装置102では、静電像の現像に伴って現像スリーブ201から感光ドラム100へトナーが移転して現像剤中のトナーのみが消費される。現像装置102は、画像形成に伴いトナーが消費されていくので、消費されたトナーを補うために、トナーを含んだ補給用の現像剤を補給するための補給口208を備えている。補給口208の位置は、補給したトナーが十分な攪拌による摩擦帯電を経ないままに現像スリーブ201に担持されないような位置に設定される。補給口208は、その最適な位置として、現像室206の下流側(特許文献1参照)又は撹拌室の上流側(図3)に設けられている。
現像装置102では、補給路215の補給口208に現像剤補給装置220が接続され、現像過程において消費されたトナーを現像剤補給装置220から補給している。制御部225は、現像容器200内部に設けられた透磁率センサ(223:図2)によって現像剤の平均透磁率を検知し、その値から現像剤に占めるトナーの重量比率を算出する。そして、その値が8%を下回る場合には、切り出しスクリュー222を制御して現像剤の補給を行う。補給用の現像剤は、重量比でトナー90%、キャリア10%である。補給用の現像剤は、現像剤補給装置220のホッパ221の底から、切り出しスクリュー222によって切り出されて、補給口208から補給路215へ落下する。切り出しスクリュー222が回転して、ホッパ221内の補給用の現像剤が補給口208まで移送される。
補給路215は、現像剤の循環経路に一端が連通し、他端側に現像剤の補給装置220が接続される。補給スクリューの一例である補給剤搬送部211は、補給路215に配置され、現像剤補給装置220から補給された現像剤を搬送して循環経路の現像剤に合流させる。補給口208から補給される現像剤は、現像装置102内の現像剤の循環経路に合流する前に、循環経路の外部に設けられた補給剤搬送部211によって搬送される。補給剤搬送部211は、未だ現像装置102内を循環する現像剤に混合されていない補給用の現像剤のみを搬送するために設けられた螺旋羽根である。補給剤搬送部211は、攪拌スクリュー205の一部として形成され、補給口208から補給された補給剤を搬送して、現像容器200内を循環している現像剤の循環経路に合流させる。
補給用の現像剤は、重量比率で10%のキャリアを含むため、現像剤補給装置220から補給を続けると、次第に現像容器200内を循環する現像剤が増えてくる。所定量を超えて循環する現像剤は、現像室206の下流側に設けたオーバーフロー用の排出開口209を通じて現像容器200から溢れ出して回収される。
<縦攪拌型の現像装置>
画像形成装置120においては、省スペースを達成するために装置本体の小型化が進む一方で、高画質化の要望も強い。そのため、現像装置102は、現像容器200内を隔壁218によって上下に区画し、現像スクリュー204を配置した現像室206と攪拌スクリュー205を配置した攪拌室207とを上下に配置して、縦撹拌型の構成を採用している。縦撹拌型の現像装置102は、現像室206と撹拌室207とが垂直方向に配置されているため、水平方向の占有スペースが小さくて済む。画像形成装置120では、感光ドラム100を有する画像形成部が1つなのでスペース節約効果は限られているが、複数の画像形成部を水平方向に並列搭載するタンデム方式のカラー画像形成装置の場合、水平方向の占有スペースを大幅に減らして小型化が可能となる。
縦攪拌型の現像装置102では、現像スリーブ201に担持されて現像領域で現像に供された後、現像領域において現像に供されないで残った現像剤が現像スリーブ201の回転に伴って撹拌室207側に回収される。このため、現像室206内には、常に撹拌室で十分攪拌された現像剤のみが存在して、現像スリーブ201には、均一なトナー濃度で安定した帯電量の現像剤が供給される。これにより、従来の横攪拌型の現像装置に比較して、現像剤の撹拌が不十分なために起こる主走査方向の画像ムラや濃度ムラが少なくなり、均一で再現性の高い画像を出力できる。
しかし、縦撹拌型の現像装置102では、現像室206を攪拌搬送される過程で現像剤が現像スリーブ201に担持されて攪拌室207へ流出し続けるため、現像室206を進むほど、現像室206を循環する現像剤量が減ってくる。撹拌室207から現像室206へ受け渡された現像剤のすべてが現像室206において現像スクリュー204の下流端に到達するわけではなく、途中で現像スリーブ201に供給され、感光ドラム100の現像領域を通過後、撹拌室207に回収される成分が存在する。現像スクリュー204から現像スリーブ201への現像剤の受け渡しは、現像スリーブ201の長手方向のほぼ全域にわたってなされる。
このため、現像室206内において現像スクリュー204により搬送される現像剤の量は、上流側から下流側に行くに従い徐々に減少する。このため、従来の横攪拌型の現像装置に比較して、現像室206の下流側で循環する現像剤が少なくなって現像剤の流れが外乱に影響を受け易くなっている。
特に、現像剤の流動性が低下すると、現像剤の循環速度が低下する一方、現像スリーブ201を介して現像室206から攪拌室207へ流出する速度は一定であるため、現像室206の下流側の現像剤量は一段と減少する。その結果、現像室206の長手方向において現像剤の偏りが形成され、現像室206の下流側の現像剤量が所定水準を割り込むと、現像スリーブ201に対する現像剤の供給状態が不安定になる。現像剤のコート状態に不均一なムラができて変動する。この不均一が原因となって、現像されるトナー像の濃度が現像スリーブ201の下流側ほど不安定になる。
現像剤量の多い上流側では、現像スリーブ201への現像剤の供給量が安定していて、トナー像の濃度は一定に保たれるが、現像剤量の少ない下流側では、現像スリーブ201への現像剤の供給量が不足してトナー像に濃度ムラが生じ易くなる。
ここで、現像容器200内の現像剤の総量を増やせば、現像室206の下流側における現像スリーブ201への現像剤の供給量は安定する。しかし、撹拌室207の下流側では、撹拌室207の端部に溜まった現像剤の圧力により下から上へと押し上げられるようにして現像剤が現像室206へ汲み上げられている。現像容器200内の現像剤の総量が増えると、攪拌室207の下流側でせき止められる現像剤の剤圧が高くなりすぎて、現像スリーブ201の周囲の隙間から現像剤が現像容器200から外へ漏れ出して出力画像が汚れる問題が発生してしまう。このため、単純に現像容器200内の現像剤量を増やすだけでは、問題を解決できない。
この問題に対する対策として、特開平11−84874号公報には、現像スクリュー204による現像剤の搬送力を区間により変化させることで、現像室206の現像剤の片寄りを緩和する提案がされている。しかし、実験してみたところ、この方法では、現像室の下流側で循環する現像剤量が不足する問題が十分に解決されない。現像室の下流側で循環する現像剤量が不足する原因は他にも存在するからである。環境の温度湿度の変化や、トナー濃度の変化、現像剤の入れ替え、現像剤の経年劣化によって、現像剤の嵩密度や流動特性が変化すると、現像室206における現像剤の片寄りが著しくなる場合がある。また、現像装置102内の気圧・気流の変化によっても、現像室206における現像剤の片寄りが著しくなることが確認されている。
そこで、以下の実施例では、このような現状に鑑みて、補給口208付近の気密性を緩和することによって、現像室206の下流を流れる現像剤量を一定以上に保ち、その結果として、現像スリーブ201への現像剤の供給不足を解消させている。
<実施例1>
図4は実施例1の現像装置を用いた実験の説明図である。図5は実施例1の通気孔の効果の説明図である。
図3に示すように、実施例1では、補給路215は、攪拌室207の上流側に連通して配置され、攪拌スクリュー205と同軸で、同一ピッチ同一径の螺旋翼を用いた補給剤搬送部211が配置されている。空気経路の一例である通気孔210は、補給路215に空気を流入させる。通気孔210は、補給路215と現像剤の循環経路との接続部とは別に、補給路215に空気が流入可能である。通気孔210は、現像剤補給装置220が補給剤搬送部211へ現像剤を補給する位置と、補給された現像剤が補給剤搬送部211に搬送されて循環経路の現像剤に合流する位置との間の補給路215に設けた。
通気孔210は、補給剤搬送部211付近の天井部に形成した直径5[mm]の円形の孔である。通気孔210は、補給口208付近の負圧を解消させて、現像室206の下流側における現像剤の循環量の低下を防ぐ役割を担う。
図2を参照して図4に示すように、現像装置102を単体で取り出し、現像容器200の天井部226を透明樹脂板に置き換えて現像室206の現像剤の流れを外側から観察可能にした。不図示の現像剤補給装置220を補給路215の補給口208に接続して通常の画像形成を想定して現像剤の補給を行わせつつ、並行して現像スリーブ201から相当量のトナーを静電気的にはぎ取らせた。この状態で、現像装置102を運転実験させて、現像室206の現像剤の流れの経時変化を外側から観察した。
この場合、現像剤の流動性の低下は観察されず、2.5時間の連続運転を行っても、現像室206の下流側の現像剤の剤面高さは、実験開始時とほとんど変わらず、現像スリーブ201に対する現像剤の供給不良も発生しなかった。
次に、現像スリーブ201からのトナーのはぎ取りも、現像剤補給装置220による現像剤の補給も行なわずに、現像装置102のみを連続運転させて、現像剤の劣化を意図的に進行させて、現像室206の現像剤の流れの経時変化を外側から観察した。
この場合、現像剤の劣化の進行に伴う流動性の低下が観察され、現像室(206:図2)の下流側の現像剤の剤面高さは最初の20mmから2.5時間で7mmを割り込み、同時に、現像スリーブ201に現像剤の担持ムラが観察されるようになった。
次に、補給路215に直径5mmの通気孔(単なる貫通孔)210を形成して、現像剤を入れ替えて同様の実験を繰り返した。現像スリーブ201からのトナーのはぎ取りも、現像剤補給装置220による現像剤の補給も行なわずに、現像装置102のみを連続運転させて、現像室206の現像剤の流れの経時変化を外側から観察した。
この場合、現像剤の劣化の進行に伴う流動性の低下が観察されたが、現像室206の下流側の現像剤の剤面高さは2.5時間で15mm以上あり、その時点では現像スリーブ201に現像剤の担持ムラが観察されなかった。また、煙を用いた観察によって、現像装置の運転中に通気孔210を通じて空気が引き込まれていることが確認された。
以上の予備実験により、通気孔210は、空気を流入させることで、現像剤の劣化に伴う現像室206の下流側の現像剤量の減少を遅らせて、現像スリーブ201への現像剤の供給不良を遅らせる効果があることが確認された。また、現像スリーブ201への現像剤の供給不良は、現像室206内に存在する現像剤の量に依存しており、現像剤量の少ない区間において、現像スリーブ201への供給不良が生ずることが確認された。
具体的には、現像スリーブ201への現像剤の供給不良が発生する限界の現像剤の剤面高さが存在しており、剤面高さが限界値を下回った区間において現像剤の担持ムラが発生する。連続運転の初期で現像剤の流動性が良好な期間、現像スリーブ201の現像剤の担持ムラは発生しないが、トナー消費の少ない連続運転を通じて現像剤の流動性が低下すると、現像室206の下流側から現像スリーブ201への現像剤の供給不良が生じ始める。そして、補給路215に通気孔210を形成することで、現像剤の流動性の低下は抑制できないものの、流動性が低下しても現像室206の下流側における剤面の低下を遅らせて現像剤の担持ムラを発生しにくくする効果がある。
以上を踏まえ、現像室206下流側における現像スリーブ201への現像剤の供給性を定量化する実験を行った。図5に示すように、現像スリーブ201に対する現像剤の供給性は、横軸に耐久時間、縦軸に現像室206内の隔壁218からの剤面高さをとり、剤面高さが限界値7mmを下回るまでの連続運転時間で定義した。剤面高さの測定箇所は現像室206の下流側で、現像スリーブ201の現像可能領域の端部とした。横軸の耐久時間とは、現像も補給も行なわずに、現像装置102のみを連続で駆動させた際の時間を指す。
なお、現像装置102の補給口208は、完全に塞いだ状態とし、通気孔210を開けた場合を実施例1とし、通気孔210を塞いだ状態を従来例として比較した。連続運転の開始時には、新品の現像剤を、両条件とも現像装置102に300[g]充填して条件を揃えた。
図5に示すように、通気孔210を塞いだ従来例では、連続運転時間が2.5[hr]を経過したところで、現像スリーブ201上に現像剤の供給不良が確認された。一方、通気孔201を開けた実施例1においては、従来例の倍の5.0[hr]経過したところで、現像スリーブ210上に現像剤の供給不良が確認された。
したがって、通気孔210を開けることで、現像スリーブ201に対する現像剤の供給性が2倍に改善されることが確認された。また、連続運転の開始から2.5時間の期間、同じ300[g]の現像剤量であっても、実施例1では、現像室206の下流部の剤面高さが従来例に比べて約4[mm]高くなっていた。
そして、現像装置102においては、現像室206の下流側の剤面高さの限界値は7[mm]であった。通気孔210を塞いだ場合、充填する現像剤量を300[g]よりも多くすると、2.5[hr]よりも早い時期に、現像剤が現像容器200から溢れ出てしまった。
以上のように、実施例1では、補給路215に通気孔210を設けることで、現像スリーブ201に対する現像剤の供給性が大きく改善される。通気孔210は、十分に空気を取り込むことができれば、大きさや形状についても特に限定はなく、他の機能を損なわない範囲で如何なる形状であっても効果が得られた。実施例1では直径5[mm]の円形の孔を設けた。
実施例1では、補給路215に通気孔210を設けることで、通気孔210が無い従来の現像装置に比べて2倍の長期間にわたって現像スリーブ201へ安定して現像剤が供給される。現像スリーブ201の現像剤の供給ムラに起因する画像の濃度ムラの発生を防ぐことが可能となる。
実施例1では、補給路215に通気孔210を設けることで、補給口208付近の負圧が解消され、現像室206の下流側における現像スリーブ201への現像剤の供給量が安定する。その結果、現像スリーブ201に対する現像剤の供給不足による画像品質の低下を防ぐことができる。
また、補給口208を通じたトナー補給精度に関しても、通気孔210を有しない従来の現像装置では、負圧によってホッパ221内のトナーが不規則に引き込まれており、本来補給したいトナー量を安定的に供給することに支障があった。
これに対して、実施例1では、補給路215に通気孔210を設けることで、負圧に起因する引き込みによってトナーの過補給と補給不足が繰り返される現象を解消できた。
以上説明したように、実施例1では、攪拌室の上流側に補給路を配置した縦攪拌型の現像装置において、現像剤の循環経路の現像剤の流れを観察する実験を行った。その結果、現像剤が補給されるごとに、循環経路を循環する現像剤の流れが大きく乱れることが観察された。そして、現像剤の補給装置が現像剤を補給する位置と補給された現像剤が循環経路の現像剤に合流する位置との間の補給路に開口を形成すると、現像剤を補給した際の現像剤の流れ状態が安定化する実験結果を得た。現像剤の流れの安定に伴って、開口を通じて空気が流入していることを確認した。補給路に空気を流入させる空気経路を設けることにより、「補給スクリューを設けた補給路を通じて現像剤が補給されるごとに循環経路を循環する現像剤の流れが乱れる現象」を軽減できることを実験的に証明した。
<通気孔の作用に関する考察>
図6は攪拌室の上流側で現像剤を補給する場合の空気の流れの説明図である。図7は補給路に通気孔を設けた場合の空気の流れの説明図である。図8は現像室の下流側で現像剤を補給する場合の空気の流れの説明図である。
現像装置の運転中、何らかの理由で現像装置内のある局所的な部分が周囲と比して負圧になった場合、負圧箇所に空気が引き込まれて気流が発生し、循環する現像剤の流れに影響を及ぼすと考えられる。負圧に起因する気流が、現像スクリュー及び攪拌スクリューによって制御される現像容器内の現像剤の正規の循環の流れを乱す原因となると考えられる。現像剤の流れが乱れると、現像室の長手方向における現像剤の片寄りが大きくなると考えられる。
図3に示すように、現像装置102では、トナーの飛散、漏れ等を防ぐ目的で、補給口208付近は密閉性が相応に高い。補給口208とそれに連結された現像剤補給装置220との結合部における気密性が相応に保たれているため、補給口208が完全に密閉されている状態と考えられる。このため、現像装置102においては、補給口208付近が負圧となる傾向にある。補給口208付近の空気が補給剤搬送部211によって吸引されることで、真空ポンプと類似の原理によって、補給口208付近が負圧となると考えられる。このとき、補給口208は、撹拌室207の最上流に位置しているため、負圧による気流に沿って、撹拌室207の上流や現像室206の下流にある現像剤が、補給口208付近に引き込まれる。
最初に、通気孔210が存在しなかった場合を想定する。攪拌スクリュー205駆動時、攪拌スクリュー205に連結されて補給用の現像剤を搬送する役割を担う補給剤搬送部211によって、補給剤搬送部211の周りの空気が攪拌室205に向かって吸引されて負圧が生じる。すると、負圧になった補給剤搬送部211周辺の空気を補うために、現像室206の下流側の空気が補給剤搬送部211に向かって吸引される。この時、同時に、現像室206の下流側の現像剤も一緒に補給剤搬送部211へ引き込まれる。
現像剤が引き込まれる度合いは、補給剤搬送部211の付近と現像室206下流付近の気圧差に依存し、その気圧差は、密閉された補給口208付近の気密性に依存する。さらに、負圧を生ずる原因となる補給剤搬送部211は、撹拌室207の最上流に位置するため、負圧が生じなかった場合と比して撹拌室207の上流の現像剤量が増え、同時に、現像室206の下流側の現像剤量は減少する。このため、補給口208付近で発生する負圧は、現像室206の長手方向の下流で現像剤量が少ない問題を深刻にしていると考えられる。
現像室206の下流の現像剤量を増やすためには、現像装置102を循環する現像剤の総量を増やすことが考えられる。しかし、現像容器200に許容できる現像剤量には上限値が存在し、上限値を超えた場合、現像装置102の隙間から(特に撹拌室から現像室への現像剤汲み上げ部に多い)現像剤が容器の外へ溢れ出す別の問題が発生する。さらに、使用時間の累積に伴って現像剤の流動性が低下してくると、現像室206の長手方向における現像剤の片寄りが顕著になってくるため、現像剤容量の上限値も同時に低下する。そして、さらに現像剤の流動性の低下が進むと、ついには現像室206の下流で現像スリーブ201に対する現像剤の供給不良と、現像室206の上流側での現像剤の溢れが同時に発生する。
次に、通気孔210が存在する場合を想定する。この場合、補給剤搬送部211周辺の気密性が崩れるため、負圧が大幅に解消される。なぜなら、通気孔210を通じて現像容器200外部から積極的に空気が供給されるからである。この結果、現像室206の下流側の空気および現像剤が引き込まれることがなくなり、引き込まれていた分だけ現像室206下流側に存在する現像剤量が増える。このため、現像スリーブ201に対する現像剤の供給性が大幅に改善され、現像剤の供給と現像剤の溢れに対して、両方を満たす良好な現像剤バランスを長時間保つことが可能になる。
図6に示すように、現像装置の現像室の下流側と攪拌室の上流側とを模式的に示すとき、現像室側の現像剤受け渡し開始地点401から撹拌室側の現像剤受け渡し完了地点402へ向かって実線で示すように現像剤が移動する。これに伴って、破線で示すように、現像剤受け渡し開始地点401から現像剤受け渡し完了地点402へ向かって気流が発生する。通気孔が存在しない場合、補給路の端部403は密閉されているため、現像剤受け渡し完了地点402と補給路の端部403の間(この区間を区間1とする)で負圧が生じ、現像剤受け渡し完了地点402から補給路の端部403へと向かう気流が発生する。
同様に、撹拌室の下流側から現像剤受け渡し完了地点402(この区間を区間4とする)へ向かう気流と、現像剤受け渡し開始地点401から現像剤受け渡し完了地点402(この区間を区間2とする)へ向かう気流が発生する。同時に、現像室の上流側から現像剤受け渡し開始地点401(この区間を区間3とする)へと向かう気流も発生する。ここで、現像剤の搬送方向を考えると、区間2と区間3において、気流の流れと現像剤の搬送方向が同方向に揃う。結果として、区間2および区間3における現像剤の流れが加速され、現像剤受け渡し完了地点402付近に現像剤が留まり易くなり、現像室の下流側で現像剤量が減少する問題が発生すると考えられる。
そして、図6のダイアグラムを具体化した現像装置は、図7に示すように、区間1のどこかに空気経路410を設けることで気流が変化し、区間2および区間3における負圧による気流が抑えられ、正規の現像剤の循環が成立する。これにより、現像室206の下流側で現像剤量が減少して現像スリーブに対する現像剤の供給が不安定になる現象が発生しにくくなる。そして、区間1のどこかに空気経路410を設けることによる効果は、現像室206から現像スリーブを経由して攪拌室207へ現像剤が常時流れている縦攪拌型の現像装置においてとりわけ顕著である。
すなわち、横攪拌型の現像装置のように、現像剤が現像室から現像スリーブへと供給された後、再び現像室へと戻される現像装置も実用化されている。この場合、現像室から現像スリーブを経由して攪拌室へ流れる現像剤が存在しないため、現像室の現像剤量は常にほぼ一定であり、現像室の下流側において現像剤量が減少しにくくなる。このため、実施例1で説明したように、現像室から現像スリーブを経由して攪拌室へ現像剤が常時流れている現像装置では、現像室の長手方向における現像剤の偏りが大きくなる傾向がある。したがって、必ずしも縦撹拌型である必要はないものの、現像室から現像スリーブを経由して攪拌室へ現像剤が流れて、現像室の下流側において現像剤量が減少し易い現像装置のほうが、補給路に通気孔を設ける効果はより大きくなる。
また、図8に示すように、撹拌室の最上流ではなく、現像室の最下流に密閉空間を伴った補給路と現像剤の搬送手段が配置される現像装置も実用化されている。この場合、現像室の最下流で負圧が発生するため、区間2における気流の流れと現像剤の搬送方向が逆方向になる。そのため、現像剤が現像剤受け渡し開始地点401付近に留まり易くなるので、現像室の下流側において現像剤量が減少する問題は軽減される。このため、実施例1で説明したように、攪拌室の上流側に密閉空間を伴った補給路と現像剤の搬送手段が配置される現像装置では、現像室の長手方向における現像剤の偏りが大きくなる傾向がある。したがって、撹拌室の最上流に負圧を生じる構成のほうが、補給路に通気孔を設ける効果はより大きくなる。
図3に示すように、補給路215が密閉空間であり、補給剤搬送部211の作動により負圧が生じることが問題の本質と考えられるため、撹拌室207の最上流に補給路215が接続されて補給口208が配置されている構成は必要条件ではない。しかし、縦撹拌型の現像装置102では、現像スリーブ201の上流側から最も遠い位置に補給口208を設けることが望ましいため、撹拌室207の最上流部に補給口208が備えられる傾向がある。そして、補給口208付近は、トナーの飛散を防ぐために、意図的に密閉空間が作り出されるので、補給剤搬送部211の作動に伴って負圧が生じることも必然となる。つまり、縦撹拌型の現像装置102であることは、必要条件ではないまでも、現像スリーブ201に対する現像剤の供給不足を生む十分条件になり易い。
<実施例2>
図3に示すように、実施例1の実験において、通気孔210からトナーが舞い上がる状況は観察されなかった。現像装置102の運転中、補給剤搬送部211は攪拌スクリューと一体に回転して補給路215の補給口208付近で負圧を発生しており、その負圧を解消するべく、通気孔210からは絶えず外部から空気が取り込まれている。そのため、補給剤搬送部211によって搬送される補給用の現像剤には、通気孔210から飛散させる力よりも、外部から取り込まれる空気と重力によって補給路215内に押し戻す力のほうが大きく作用するため、トナーが飛散しにくい。しかし、起動時や停止時において、取り込まれる気流が弱まると、トナーが飛散する可能性がある。
そのため、実施例2では、通気孔210は、現像剤を遮蔽するフィルターを介して補給口208の外側の空間に連通している。通気孔210は、空気を取り込むことが目的なので、十分に空気を取り込むことができる範囲であれば、通気孔210にトナーの飛散や溢れを防止するためのメッシュやフィルターを設けても、実施例1の効果に支障はない。
<実施例3>
図9は実施例3の現像装置における連通機構の説明図である。図10は補給路に通気孔を設けた場合の空気の流れの説明図である。
図9に示すように、空気経路の一例である連通機構212は、一端を補給路215に連通させ、他端を第二開口部217よりも上流側の攪拌室206に連通させている。それ以外の構成については実施例1と同一であるため、実施例1と共通する構成には、図3、図7と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
補給剤搬送部211が配置された補給路215と現像室206の下流側との間が連通機構212によって連通している。実施例1の通気孔(210:図3)と同様に、連通機構212の取り付け位置は、重力による現像剤の落下を回避するために、補給路215の天井部と現像室206の天井部との間に設けた。連通機構212は、現像室206の下流側と負圧発生箇所を連通させて、連通機構212の両端の気圧差を解消している。
実施例3では、実施例1にはない利点として、補給路215の負圧を解消するための空気を外部からではなく、同じ現像容器200の中から取り入れることで、現像容器200内に閉じた空気経路となっている。このため、現像容器200からの空気の吹き出しやトナー飛散を気にする必要がない。
図10に示すように、負圧発生と解消のメカニズムをダイアグラムで説明する。連通機構212に相当する空気経路410は、片側が区間1内にあって、もう片側が現像剤受け渡し開始地点401よりも上流にあるので、破線で示すような気流が作られる。つまり、区間2や区間4において、負圧による気流が変化し、現像剤受け渡し完了地点402へ現像剤が引き込まれる現象が抑えられると考えられる。