JP2013012279A - Hdd用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度に優れたHDD用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ダイレクトプレス法により作製した円盤状のガラス基板前駆体を用いたHDD用ガラス基板の製造方法であって、前記ガラス基板前駆体の表面を4〜10μmの固定砥粒を用いて研削する粗ラッピング工程と、前記ガラス基板前駆体の表面を4μmより小さい固定砥粒を用いて研削する精密ラッピング工程と、前記ガラス基板前駆体の表面を処理する化学処理工程と、を含み、前記粗ラッピング工程と前記精密ラッピング工程との間に前記化学処理工程を行うことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法。前記化学処理工程において除去されるガラス基板前駆体の深さが、1〜3μmであることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、HDD用ガラス基板の製造方法に関する。
磁気情報記録装置は、磁気、光及び光磁気等を利用することによって、情報を情報記録媒体に記録させるものである。その代表的なものとしては、例えば、ハードディスクドライブ装置等が挙げられる。ハードディスクドライブ装置は、基板上に記録層を形成した情報記録媒体としての磁気ディスクに対し、磁気ヘッドによって磁気的に情報を記録する装置である。このような情報記録媒体の基材、いわゆるサブストレートとしては、ガラス基板が好適に用いられている。
また、近年のハードディスクドライブ装置は、その記録密度が向上していることにより、そのハードディスクに使用されるガラス基板に対する強度や平滑性に優れたものが要求されてきている。
ガラスの強度は理論値的には非常に高いが、一方で実際の強度はガラス中に存在するクラックにより低いことが分かっている。このような問題に対して、特許文献1には磁気ディスクに用いられるガラス基板に存在するクラックを除去する方法として、HFなどによるエッチング(化学処理)工程を施すことが開示されている。
また、ガラス基板の強度を向上させる方法として、化学強化と呼ばれるイオン交換による圧縮応力層を形成することによりガラス強度を向上させることが知られている。近年においては、例えば特許文献2には、化学強化によって表面の平滑性が悪化することを防止するために化学強化後に研磨工程を施すことによって圧縮応力層を除去した基板などが開示されている。
しかしながら、上述のような化学処理、化学強化工程を施したガラス基板であっても、強度に劣るものが多く存在していた。
特開2007−102842号公報 特許第4209316号
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、その解決すべき課題は、強度に優れたHDD用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、HDD用ガラス基板の製造工程におけるコアリング工程、内外加工工程、粗ラッピング工程、精密ラッピング工程、化学処理工程のそれぞれ施すべき順序に着目し、鋭意検討を行った。この結果、コアリング工程、内外加工工程、粗ラッピング工程、精密ラッピング工程の順で製造工程を備え、さらに前記粗ラッピング工程、精密ラッピング工程との間に化学処理工程を備えることによって、ガラス基板に対して応力のばらつきが生じにくく、その結果割れ強く強度の高いHDD用ガラス基板が得られることを見出した。
すなわち本発明は、ダイレクトプレス法により作製した円盤状のガラス基板前駆体を用いたHDD用ガラス基板の製造方法であって、前記ガラス基板前駆体の中心に穴をあけるコアリング工程と、前記ガラス基板前駆体の内周端面および外周端面を面取りする内外加工工程と、前記ガラス基板前駆体の主表面を研削する粗ラッピング工程と精密ラッピング工程と、をこの順で含み、前記粗ラッピング工程と精密ラッピング工程との間に、ガラス基板前駆体の表面を処理する化学処理工程を含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法である。
また、前記化学処理工程が、フッ化水素と水との混合液からなるエッチング液に浸漬させることにより、前記ガラス基板前駆体の表面をエッチングする工程であることが好ましい。
更に、前記HDD用ガラス基板の製造方法において、前記化学処理工程において除去されるガラス基板前駆体の深さが1〜3μmであることが好適である。
本発明によれば、強度に優れたHDD用ガラス基板の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法によって製造されるHDD用ガラス基板の一例を示す斜視図である。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係るHDD用ガラス基板の製造方法は、円盤状のガラス基板前駆体を用いた磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記ガラス基板前駆体の中心に穴をあけるコアリング工程と、前記ガラス基板前駆体の内周端面および外周端面を面取りする内外加工工程と前記ガラス基板前駆体の主表面を研削する粗ラッピング工程と精密ラッピング工程と、をこの順で含み、前記粗ラッピング工程と精密ラッピング工程との間に、ガラス基板前駆体の表面を処理する化学処理工程を含むことを特徴とする。
本実施形態におけるHDD用ガラス基板の製造方法としては、例えば、ダイレクトプレス工程及びコアリング加工工程、内外加工工程、粗ラッピング工程、端面研磨工程、化学処理工程、精密ラッピング工程、化学強化工程、主表面研磨工程、洗浄工程を順に備える方法等が挙げられる。なお、主表面研磨工程は、2工程を含むことが好ましく、それぞれ第1研磨工程と第2研磨工程とを含む。
そして、本発明における製造方法の工程順序は、前記粗ラッピング工程と前記精密ラッピング工程との間に化学処理工程を備えていれば、前記工程順番以外の方法で行うものであってもよい。例えば、第2研磨工程と洗浄工程の順番が入れ替わったものであってもよい。さらに、これら以外の工程を備える方法であってもよい。
また、洗浄工程については、粗研磨工程の後に行っても、精密研磨工程の後に行ってもよく、さらに粗研磨工程及び精密研磨工程の後にそれぞれ一度ずつ行ってもよい。
本発明者らは、従来のHDD用ガラス基板の製造方法において製造されたガラス基板が割れしまう原因を調査した。その結果、割れた基板は、クラックの有無や内部応力の強さが原因ではなく、応力ばらつきが大きさであることが判明された。さらに原因を調査したところ、製造工程の順序に原因があることが判明された。
従来のHDD用ガラス基板の製造方法において、粗ラッピング工程はコアリング工程前に施されていることがあった。そこで、コアリング工程及び内外加工工程の後に粗ラッピングを施すと、応力バランスに改善がみられた。また、このような順序で粗ラッピングを施すと加工効率を上げることができ、好適である。しかしながら、このような順序にてガラス基板を製造したが、それでも一部のガラス基板において強度が不足しているものが存在することを発見した。
発明者らはさらに原因を調査した結果、コアリング工程及び内外加工工程と、粗ラッピング工程の間に化学処理工程を施していたことが原因であることが判明された。
つまり、コアリング及び内外加工工程後に化学処理工程を行うと、下記のような問題が発生する。
内外加工工程、すなわち面取り加工は金属製の冶具を用いてガラス基板の端部に内外加工面が形成される工程である。このときガラス基板は一部が吸着され、回転しながら加工される。面取り加工はラッピングや研磨に比べ強い加工圧にて多くの取り代を取り去っている。よって、ガラス前駆体から出るガラススラッジ(加工されたガラスくず)や加工機から出る不純物が多く存在している。これらが付着物として吸着部などの強い力で固定されている部分を中心に基板に固着する。
面取り加工後は、一般的に水洗浄などにより基板は洗浄される。しかしながら、固着した付着物は除去できずに残る。これらの付着物が残存したままHF(フッ化水素)などにより表面を処理する工程を行うと、固着している部分とそうでない部分で化学処理によりエッチングされる量が大きく異なってくる。ガラスくずが固着していた場合はガラス基板ではなくガラスくずがエッチングされる。また、金属製の付着物の場合HFなどでは一般的な金属の溶解はガラスに比べると遅いため、固着していない部分との差はかなり大きくなる。付着部と付着がない部分のエッチング量が異なると平坦度の悪化、そして応力ばらつきが発生するなどの悪化が見られた。特に、この化学処理工程の後に化学強化工程を行った場合には更なる応力ばらつきが発生することも問題となる。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、コアリング工程及び面取り工程を行った後、一度粗ラッピング工程にてそれら付着物を除去し、HFなどによりクラックを除去する。その後化学処理にて悪くなった平坦度を精密ラッピングにて修正すれば、応力ばらつきがなく、強度に優れたガラス基板を得られる。
また、内外加工工程の後に粗ラッピングと精密ラッピング工程の間を連続して行うと、その後の化学処理工程を施したとしても、一度悪化させてしまった平坦度を修正することができなくなり、最終的にガラス基板の品質が悪くなる。そして、平坦度が悪化した状態で化学強化を行うと応力ばらつきが発生するのである。
従って、内外加工工程後に粗ラッピングにて一度主表面を研削し、その後HF等による化学処理工程にてガラス基板のクラックを除去し、さらに精密ラッピングにて平坦度修正を行えば、クラックも応力ばらつきも発生していないガラス基板を得ることができる。さらにこのようなガラス基板に化学強化を行えば、安定したイオン交換が行えるので更なる強度改善が行えるのである。
<HDD用ガラス基板>
図1は、本発明の製造方法によって製造されるHDD用ガラス基板の一例を示す斜視図である。本発明の製造方法によって製造されるHDD用ガラス基板は、ハードディスクドライブ装置等の情報記録装置において情報記録媒体の基板として用いられるものである。このようなHDD用ガラス基板は、図1に示されるように円盤形状であり、その中心に孔1Hが形成されている。HDD用ガラス基板1の表面とは、表主表面1A、裏主表面1B、内周端面1C、および外周端面1Dを意味する。
本発明のHDD用ガラス基板1の大きさや形状は特に限定されず、たとえば0.8インチ、1.0インチ、1.8インチ、2.5インチ、または3.5インチである。HDD用ガラス基板1の厚さは、破損防止の観点からたとえば0.30〜2.2mmであることが好ましい。なお、HDD用ガラス基板1の厚さは、ガラス基板上の点対象となる任意の複数の点で測定した値の平均によって算出される。本発明のHDD用ガラス基板1の代表的な一例を示すと、HDD用ガラス基板の外径が約64mmであり、内径が約20mmであり、厚さが約0.8mmである。なお、一般的に2.5インチ型のハードディスクには、外径が65mmのHDD用ガラス基板を用いる。
本発明のHDD用ガラス基板を構成する材料は、アルミノシリケートガラスが好適に用いられる。かかるアルミノシリケートガラスの組成は、58質量%〜75質量%のSiO2、5質量%〜23質量%のAl、3質量%〜10質量%のLiO、4質量%〜13質量%のNaOを主成分として含有するものである。
<HDD用ガラス基板の製造方法>
本発明のHDD用ガラス基板の製造方法は、ダイレクトプレス法により作製した円盤状のガラス基板前駆体を用いるものであって、該ガラス基板前駆体の中心に穴をあけるコアリング工程と、ガラス基板前駆体の内周端面および外周端面を面取りする内外加工工程とを少なくとも含み、コアリング工程と内外加工工程との間に、ガラス基板前駆体の表面を処理する化学処理工程を含むことを特徴とする。
本発明のHDD用ガラス基板を製造する方法は、このようにコアリング工程と内外加工工程との間に化学処理工程を行う限り、他の工程を含むことができる。ここで、他の工程としては、たとえば溶融ガラスを円盤状に加工するダイレクトプレス工程、ガラス基板前駆体の平行度および厚みなどを調整するラッピング工程、粗研磨工程で行なう研磨よりもガラス基板前駆体の平滑性を高める研磨を行なう研磨工程、ガラス基板前駆体の表裏の両面を洗浄する洗浄工程等を挙げることができる。
なお、本発明のHDD用ガラス基板の製造方法は、ダイレクトプレス法によって製造されるものに限定され、フロート法によって製造されるものは含まれない。なぜなら、フロート法によってHDD用ガラス基板を製造する場合は、その表面に微小なクラックが発生しにくいため、化学処理工程を行なうことによって強度を向上させる必要がないからである。
以下においては、本発明のHDD用ガラス基板を図2のフローチャートにしたがって作製するときの各工程を説明する。なお、適宜簡易的な洗浄を行なってもよいし、コアリング加工工程と、化学処理工程と、内外加工工程とをこの順で含む限り、これらの各工程の間にさらにラッピング工程や洗浄工程、研磨工程を含んでいてもよいし、その他の工程の順序を適宜変更しても差し支えない。
(ダイレクトプレス工程)
まず、ガラス素材を溶融させて溶融ガラスを準備する。この溶融ガラスを下型に流し込み、上型によってプレス成形することにより円盤状のガラス基板前駆体を得る。このようにして溶融ガラスからガラス基板前駆体を得る工程のことをダイレクトプレス工程と呼ぶ。
(コアリング加工工程)
次に、コアリング加工工程で、ガラス基板前駆体の中心部に穴を開ける。穴開けは、カッター部にダイヤモンド砥石等を備えたコアドリル等で研削することで中心部に穴を開ける。穴の大きさは、ガラス基板前駆体の外径によって適宜変更することができ、たとえば外形が65mmのガラス基板前駆体の中心部には20mmの内径の孔(中心部の孔1Hの直径)を開ける。
(内外加工工程)
次に、内外加工工程において、上記のガラス基板前駆体の外周端面および内周端面の面取り加工を行なう。これにより化学処理工程で発生したガラス基板前駆体の端面の微小な不均一性を除去する。
(粗ラッピング工程)
上記のガラス基板前駆体の表裏の両面に対し、ラッピング加工を施す。ここで、粗ラッピング加工では、たとえば両面ラッピング装置によって行なう。これによりガラス基板前駆体の全体形状、平行度、平坦度および厚みを予備的に調整することができる。
(端面研磨工程)
続いて、端面研磨工程では、研磨砥粒として酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いたブラシ研磨法により、ガラス基板前駆体の外周端面および内周端面を研磨する。ブラシ研磨法ではガラス基板前駆体を回転させながら外周端面および内周端面を研磨する。上記の内周側端面に対し、さらに磁気研磨法による研磨を行なうことにより、ガラス基板前駆体の内周端面を鏡面状態に加工する。そして、最後にガラス基板前駆体の表面を水で洗浄する。
なお、端面研磨工程は、それぞれ内径研磨工程及び外径研磨工程に分けることができる。
(化学処理工程)
上記のガラス基板前駆体をフッ化水素と水との混合液からなるエッチング液に浸漬させることにより、ガラス基板前駆体の表面および端面をエッチングする。このようにガラス基板前駆体の表面をエッチングすることにより、粗ラッピング工程でガラス基板前駆体の表面に形成された欠陥やクラックを取り除くことができ、ガラス基板前駆体の強度を向上させることができる。上記のエッチング液としては、HF、NHF、NaF等を挙げることができ、硫酸や硝酸などの酸と併用しても差し支えない。
なお、上記のエッチング液への浸漬中あるいは浸漬後の引き上げ作業中に、ガラス基板前駆体の端面の部位ごとにエッチングされる度合いが変化する。よってエッチングされる厚みは1〜3μmであることが好ましい。それ以下であるとクラックが除去できず、それ以上であるとエッチングが過剰に行われ平坦度修正しきれない。
(精密ラッピング工程)
次いで、精密ラッピング工程では、固定砥粒研磨パッドを用いてガラス基板前駆体の表裏を研削する。かかる精密ラッピング工程は、遊星歯車機構を利用した両面研削機と呼ばれる公知の研削機を使用して研削することができる。この両面研削機は、上下に配置された円盤状の上定盤と下定盤とが互いに平行に備えられており、上定盤および下定盤が対向するそれぞれの面にガラス基板前駆体の表裏を研削するための複数のダイヤモンドペレットが貼り付けてある。
上定盤と下定盤との間には、下定盤の外周に円環状に設けられたインターナルギアと下定盤の回転軸の周囲に設けられたサンギアとに結合して回転する複数のキャリアがある。このキャリアには、複数の穴が設けられており、この穴にガラス基板をはめ込んで配置する。なお、上定盤、下定盤、インターナルギア、およびサンギアは別駆動で動作することができ、上定盤および下定盤が互いに逆方向に回転する。
そして、ダイヤモンドペレットを介して定盤に挟まれているキャリアが、複数のガラス基板を保持した状態で、自転しながら定盤の回転中心に対して下定盤と同じ方向に公転する。このように動作する研削機において、上定盤とガラス基板前駆体の間および下定盤とガラス基板前駆体との間に研削液を供給することによりガラス基板前駆体の表裏の研削を行なうことができる。
この両面研磨機を使用する際、ガラス基板に加わる定盤の加重及び定盤の回転数を所望の研削状態に応じて適宜調整する。精密ラッピング工程においては、第1ラッピング工程および第2ラッピング工程の2回に分けてラッピングを行なうことが好ましい。
上記の定盤による加重を大きくするか、または定盤の回転数を速くすると、ガラス基板前駆体の研削量は多くなるが、加重を大きくしすぎるとガラス基板前駆体の面粗さが悪くなるため好ましくない。また、定盤の回転数が速すぎると平坦度が良好とならない。また加重が小さすぎたり、定盤の回転数が遅すぎたりしても、研削量が少なくなるため製造効率が低くなる。
この精密ラッピング工程において、固定砥粒を使用する理由は、遊離砥粒を用いるとクラック部に砥粒が挟まり、結果クラックが除去しきれず残るためである。また、平坦度の修正は遊離砥粒を用いても実現できないためである。
上記の精密ラッピング工程を終えた後のガラス基板前駆体の主表面の面粗さは、Raが0.05〜0.4μmであることが好ましく、主表面の平坦度は、1〜5μmであることが好ましい。このような面状態とすることにより、後の第1研磨工程での研磨の効率を高めることができる。
<化学強化工程>
前記精密ラッピング工程の次に、化学強化工程としてガラス基板前駆体表面に圧縮応力層を形成させる。具体的には、ガラス素板を化学強化処理液に浸漬させる方法等が挙げられる。該方法によって、ガラス素板の表面、例えば、ガラス素板表面から5μmの領域に圧縮応力層を形成することができる。そして、圧縮応力層を形成することで耐衝撃性、耐振動性及び耐熱性等を向上させることができる。
つまり、加熱された化学強化処理液にガラス素板を浸漬させることによって、ガラス素板に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンをそれよりイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンに置換するイオン交換法によって行われる。イオン半径の違いによって生じる歪みにより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス素板の表面が強化される。
化学強化工程の処理液に使用した塩は公知のものを使用することができる。塩としては硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩などがあげられる。またイオン交換されるイオンとしてはナトリウムやカリウムなどである。その中でもカリウムが最も良い。硝酸カリウムは融点が低いので扱いやすく、かつカリウムイオンの交換によりばらつきなくイオン交換ができる。
化学強化工程は、加熱された化学強化処理液にガラス基板を浸漬することによってガラ
ス基板に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンをそれより
イオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンによって置換するイオン交換
法によって行われる。イオン半径の違いによって生じる歪みより、イオン交換された領域
に圧縮応力が発生し、ガラス基板の表面が強化される。
化学強化処理液は、上記の成分が融解する温度よりも高温になるよう加熱される。一方
、化学強化処理液の加熱温度が高すぎると、ガラス基板の温度が上がりすぎ、ガラス基板
の変形を招く恐れがある。このため、化学強化処理液の加熱温度はガラス基板のガラス転
移点(Tg)よりも低い温度が好ましく、ガラス転移点−50℃よりも低い温度とするこ
とが更に好ましい。
なお、加熱された化学強化処理液に浸漬される際の熱衝撃によるガラス基板の割れや微
細なクラックの発生を防止するため、化学強化処理液への浸漬に先立って、予熱槽でガラ
ス基板を所定温度に加熱する予熱工程を有していても良い。
(主表面研磨工程)
主表面研磨工程は、第1研磨工程および第2研磨工程によってガラス基板前駆体の表裏を研磨する。第1研磨工程は、精密ラッピング工程でガラス基板前駆体の表裏に残留した傷や歪みを除去するために行ない、第2研磨工程は、ガラス基板前駆体の表裏を鏡面加工するために行なう。
まず、第1研磨工程では、ポリッシャーがスウェードパッドである研磨パッドを上記の両面研磨機にセットし、ガラス基板前駆体の表裏を研磨する。そして、上記ガラス基板前駆体の表面に付着している研磨剤を洗浄によって除去する。
続いて、第2研磨工程では、ガラス基板前駆体に対し、軟質ポリッシャー(スウェード)である研磨パッドを用いて、ガラス基板前駆体の表裏を研磨する。なお、第2研磨工程で用いる研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウムよりも微細なシリカ砥粒を用いることが好ましい。
(洗浄工程)
上記の研磨を終えたガラス基板に対し、中性洗剤および純水にて洗浄し乾燥させることが好ましい。このような洗浄を行なうことにより、ガラス基板前駆体に付着した異物を洗い流すことができる他、HDD用ガラス基板の表面を安定にし、長期の保存安定性に優れたものとすることができる。以上のようにしてHDD用ガラス基板を作製することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2.5インチのアルミノシリケートガラスを用いて、下記実施例又は比較例で記載した工程を施してガラス基板の製造を行った。なお、基板の厚みは表面研磨後に0.8mmとなるようにガラス基板の板厚を調整した。
〈実施例1〉
上記アルミノシリケートガラスにコアリング工程を施した後に、内外加工工程、粗ラッピング工程、内径研磨工程、化学処理工程、精密ラッピング工程、外径研磨工程、化学強化工程、第1研磨工程、第2研磨工程の順にHDD用ガラス基板の製造を行った。
化学処理工程では常温のフッ化水素水溶液(1%)に基板を浸漬させ、1μmの表面を除去した。
粗ラッピング工程にてガラス基板の主表面を30μm研削除去した。
化学強化工程は硝酸カリウムを400℃まで加熱して溶融した処理液に3時間基板を浸漬させた。
主表面研磨は2段階に分けて行い、第1研磨工程では酸化セリウムを用いて30μmの取り代で主表面を研磨し、主表面上の応力層を取り除いた。第2研磨工程ではコロイダルシリカ20nmの粒径にて研磨を行い、基板の粗さを仕上げた。取り代は2μmであった。
〈実施例2〉
化学強化工程を施さなかったこと以外は上記実施例1と同様にガラス基板を製造した。
〈比較例1〉
化学処理工程と精密ラッピング工程との順序を入れ替えた以外は上記実施例1と同様にガラス基板を製造した。
〈比較例2〉
上記アルミノシリケートガラスにコアリング工程を施した後に、内外加工工程、化学処理工程、粗ラッピング工程、内径研磨工程、精密ラッピング工程、外径研磨工程、化学強化工程、第1研磨工程、第2研磨工程の順にHDD用ガラス基板の製造を行った。なお、各工程の条件は実施例1と同じように製造した。
(応力ばらつき試験)
応力ばらつきは、基板の中心を0、半径をrとした際に、3/4>r>3/5の範囲における応力値(nm)をPA−100(フォトニックラティス社製)を用いて測定し、そのばらつき(σ)の値を以下のように評価した。
◎:0.25nm未満
○:0.25nm以上0.3nm未満
×:0.3nm以上
(落下衝撃耐性試験)
各基板を製膜後、ハードディスクドライブに組み込み、耐衝撃性試験を行った。この割れ試験は、基板をドライブに組み込んで落下させてそれぞれ荷重を変更しながらテストを行い、基板が割れなかった荷重の設定値を測定した。
実施例1〜2および比較例1〜2の試験結果を表1に示す。
Figure 2013012279
表1の結果から明らかなように、実施例1は、コアリング工程、内外加工工程、粗ラッピング工程、精密ラッピング工程の順で製造工程を備え、さらに前記粗ラッピング工程、精密ラッピング工程との間に化学処理工程を備えたため、応力ばらつきがそれほど発生せず、強度に優れたガラス基板を得ることができた。また、上記実施例1から化学強化工程を省いて製造したガラス基板に置いても応力ばらつきに問題は発生しなかった。
また、化学処理工程を精密ラッピング工程の後に施して製造した比較例1は応力ばらつきが顕著にみられ、強度に劣る結果となった。また、化学処理工程を粗ラッピング工程の前に施した比較例2についても同様に応力ばらつきが顕著にみられ、強度に劣る結果となった。
1 ガラス基板前駆体
1A 表主表面
1B 裏主表面
1C 内周端面
1D 外周端面
1H 孔

Claims (3)

  1. 円盤状のガラス基板前駆体を用いたHDD用ガラス基板の製造方法であって、
    前記ガラス基板前駆体の中心に穴をあけるコアリング工程と、
    前記ガラス基板前駆体の内周端面および外周端面を面取りする内外加工工程と、
    前記ガラス基板前駆体の主表面を研削する粗ラッピング工程と精密ラッピング工程と、をこの順で含み、
    前記粗ラッピング工程と精密ラッピング工程との間に、ガラス基板前駆体の表面を処理する化学処理工程を含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記化学処理工程が、フッ化水素と水との混合液からなるエッチング液に浸漬させることにより、前記ガラス基板前駆体の表面をエッチングする工程であることを特徴とする請求項1に記載のHDD用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記化学処理工程において除去されるガラス基板前駆体の深さが1〜3μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のHDD用ガラス基板の製造方法。
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