JP2013010892A - 抗菌透明膜形成用組成物と抗菌透明膜及びそれを備えたプラスチック基材並びに表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の抗菌透明膜形成用組成物は、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の抗菌性を有する金属微粒子と、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の親水性微粒子と、平均分散粒径が10nm以上かつ100μm以下の水中油型エマルジョン樹脂とを含有している。
【選択図】なし
Description
この汎用材料に抗菌性を付与する手段としては、汎用材料中に抗菌剤を分散させることにより、複合材料とする方法が一般的である。
例えば、有機物に抗菌性を有する金属微粒子を含有させた有機−無機複合材料(非特許文献1、2)、積層構造中に抗菌剤を含む樹脂層を含むハードコートフィルム等が提案されている(特許文献1)。
そのため、繊細な色調や可視光線の透過性が要求される部材等に抗菌膜を形成することが難しいという問題点があった。
前記親水性酸化物微粒子は、導電性を有する金属酸化物微粒子であることが好ましい。
さらに、親水性微粒子を導電性を有する金属酸化物微粒子とすれば、上記の抗菌透明膜に導電性を付与することができる。したがって、部材に、導電性、透明性かつ抗菌性に優れた抗菌透明導電膜を付与することができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の抗菌透明膜形成用組成物は、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の抗菌性を有する金属微粒子と、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の親水性微粒子と、平均分散粒径が10nm以上かつ100μm以下の水中油型エマルジョン樹脂とを含有してなる組成物である。
上記の抗菌性を有する金属微粒子としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、水銀(Hg)等の金属微粒子の他、これらの金属の化合物からなる微粒子、これらの混合物、これらの金属のうち1種以上を無機微粒子に担持させた複合微粒子も含む。
ここで、金属微粒子の平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下であれば、この抗菌透明膜形成用組成物を用いて塗膜を形成する際に、抗菌性を有する金属微粒子と親水性微粒子とが膜中にて、一次粒子が繋がることで鎖状構造体等の多様な構造体を形成することにより、金属微粒子の凝集を防止することができる。また、金属微粒子の表面積が大きくなるので、抗菌性が発現し易くなり、しかも透明性を維持することができる。
このように、金属微粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とすることで、透明性と抗菌性を併せ持つ膜を形成することができる。
ここで、金属微粒子の含有率が0.01質量%未満では、抗菌性が十分に発現しないので好ましくなく、一方、含有率が1.0質量%を超えると、金属微粒子による着色が生じてしまい、外観における色調が変色するので好ましくない。
この親水性微粒子としては、親水性を有する微粒子であればよく、特に限定されない。このような親水性微粒子としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)等の親水性金属微粒子、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ホウ素(B2O3)等の親水性非金属酸化物微粒子、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、酸化亜鉛(ZnO),五酸化アンチモン(Sb2O5)等の親水性金属酸化物微粒子、アルミノケイ酸塩、アンチモン含有酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)、スズ含有酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)等の親水性金属複合酸化物が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、この親水性微粒子は、水系分散媒中に単独で分散した場合、良好に分散することが好ましい。
含有率が0.1質量%未満の場合には、微粒子同士の繋がりが悪くなり、十分な導電性が発現しない虞があるので好ましくない。一方、含有率が20質量%を超えると、微粒子による着色が生じる虞があり、この着色は得られた抗菌透明膜の外観を悪化させるので好ましくない。
これらの性質を有する親水性微粒子は、その微粒子自体が互いに繋がることで鎖状構造体等の多様な構造体を形成し易く、また、他の親水性微粒子となじみがよく、抗菌性を有する金属微粒子と繋がって鎖状構造体等の多様な構造体を形成し易いという優れた性質を有している。
ここで、「一次粒子同士が繋がる」とは、一次粒子同士が接触しているのみならず、一次粒子間に3nm以下の間隙がある場合も含む。その理由は、一次粒子間に3nm以下の間隙があっても、トンネル効果等により導電性が維持され、また抗菌性を有する金属微粒子の凝集を防ぐことができるからである。
親水性微粒子(一次粒子)が1つずつ一本の鎖のように繋がって並んだ一本鎖の構造体が、複数本配列した状態、複数本が集合して絡み合った状態、これら両方の状態が混ざった状態、のいずれかの状態となったものである。抗菌性を有する金属微粒子は、これら一本鎖の構造体に担持されるか、あるいは一本鎖の構造体中に存在している。
親水性微粒子(一次粒子)が1つずつ一本の鎖のように繋がって並んだ一本鎖の構造体が、この一本鎖が途中で分岐して枝分かれした状態、分岐して枝分かれした分岐鎖同士が集合して絡み合った状態、これら両方の状態が混ざった状態、のいずれかの状態となったものである。抗菌性を有する金属微粒子は、この分岐鎖状構造体に担持されるか、あるいは分岐鎖状構造体中に存在している。
親水性微粒子(一次粒子)が1つずつ一本の鎖のように繋がって並んだ一本鎖の構造体が、この一本鎖が幾重にも分岐して網目状となった状態、この一本鎖同士が互いに絡み合って全体が網目状となった状態、これら両方の状態が混ざった状態、のいずれかの状態となったものである。抗菌性を有する金属微粒子は、この網目状構造体に担持されるか、あるいは網目状構造体中に存在している。
このような半導体金属酸化物粒子としては、例えば、アンチモン含有酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)微粒子、スズ含有酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)微粒子、酸化スズ(SnO2)微粒子等が挙げられる。
これらの親水性微粒子の中でも、鎖状構造体等の多様な構造体が形成し易く、導電性も有する点で、アンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子、スズ含有酸化インジウム(ITO)微粒子が好ましい。
この水中油型エマルジョン樹脂は、極性溶媒中に分散粒径が10nm以上かつ100μm以下にて分散しているエマルジョン樹脂であればよく、特に限定されない。ここで、極性溶媒とは、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール等のグリコール類(2価アルコール類)、水を80質量%以上含有する水性分散媒を意味する。
このような水中油型エマルジョン樹脂を用いることにより、本実施形態の抗菌性を有する金属微粒子と親水性微粒子が抗菌透明膜形成用組成物中に良好な状態で分散し、塗膜にする際に、一次粒子が繋がることで鎖状構造体等の多様な構造体が形成し易くなる。
これらの中でも、マレイン化ポリタジエン、マレイン化脂肪酸エステル、マレイン化油、アルキド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢ビコポリマー、エポキシ樹脂等の水分散性または水溶性の樹脂が好ましく、より好ましくは水性ポリエステル樹脂、ポリスチレンラテックス、紫外線硬化型アクリル樹脂エマルジョンである。水中油型エマルジョン樹脂は市販されているものもある。
平均分散粒径を上記の範囲に制御することにより、エマルジョン樹脂粒子、親水性微粒子、抗菌性を有する金属微粒子が、抗菌透明膜形成用組成物中に安定して均一に分散させることができる。
水中油型エマルジョン樹脂粒子の平均分散粒径が、親水性微粒子および抗菌性を有する金属微粒子の平均一次粒子径よりもある一定以上大きい場合には、水中油型エマルジョン樹脂が親水性微粒子や抗菌性を有する金属微粒子間に存在することにより、水中油型エマルジョン樹脂が、親水性微粒子や抗菌性を有する金属微粒子が凝集することを防止すると考えられる。
本実施形態の抗菌透明膜形成用組成物の製造方法としては、上記の抗菌性を有する金属微粒子、親水性微粒子、水中油型エマルジョン樹脂を均一に混合させることができればよく、特に限定されず、公知の撹拌方法を用いることができる。
抗菌性を有する金属微粒子の製造方法としては、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の抗菌性を有する金属微粒子が得られる方法であれば、種類を問わず用いることが可能である。例えば、アトマイザー法、粉砕法、還元法等、いずれも用いることができる。
この方法では、抗菌性を有する金属を含む塩を水系溶媒中に溶解することにより、溶液中に金属イオンの水和物を生成し、次いで、この溶液中の金属イオンを物理的化学的手段により還元することで、溶液中に金属微粒子が分散した金属粒子分散液を得ることができる。この分散液においては、金属微粒子の分散状態を安定化させるために、クエン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の分散剤を添加してもよい。
本実施形態の親水性微粒子は、公知の方法で得ることができる。得られた親水性微粒子は水系分散液に安定的に分散させておくことが好ましい。
この親水性微粒子を水系分散液中にて安定的に分散させるためには、親水性微粒子同士が適当に反発することにより互いに凝集しないように、適当な表面電荷を帯びていることが好ましい。
この親水性微粒子の表面電荷の具体的な数値としては、例えば、pHが5以上かつ7以下の水中に分散した場合、−80mV以上かつ−20mV以下の範囲が好ましく、より好ましくは−60mV以上かつ−30mV以下の範囲である。
このような表面電荷を有する親水性微粒子を水熱合成法にて作製する場合には、反応前駆体に含まれるアルカリ成分および塩成分の含有率を制御することが重要である。
水中油型エマルジョン樹脂は特に限定されず、市販の水中油型エマルジョン樹脂で平均分散粒径が10nm以上かつ100μm以下のものを用いればよい。
抗菌性を有する金属微粒子及び親水性微粒子が水中油型エマルジョン樹脂中に分散した場合、エマルジョン樹脂の分散粒径が大きいので、抗菌性を有する金属微粒子と親水性微粒子は、エマルジョン樹脂粒子の周囲で凝集せずに分散している状態である。
最終的に分散媒が蒸発して完全に除去されるに伴い、この乾燥過程でエマルジョン樹脂粒子も破裂し、エマルジョン樹脂粒子に付着していた抗菌性を有する金属微粒子及び親水性微粒子は、親水性同士でなじみがよいことから互いに近接し合い、さらには互いに繋がり、最終的には一次粒子が繋がることで鎖状構造体等の多様な構造体を形成すると考えられる。
本実施形態の抗菌透明膜は、本実施形態の抗菌透明膜形成用組成物により形成された膜である。
本実施形態の抗菌透明膜は、基材上に上記の抗菌透明膜形成用組成物を塗工して塗膜を形成し、次いで、この塗膜を硬化させることにより形成することができる。
塗工方法としては、基材上に塗膜が所定の厚みで形成できる方法であればよく、例えば、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレー法、はけ塗り法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
膜厚を上記範囲とすることで、良好な透明性及び抗菌性を有する膜が得られる。
また、抗菌透明膜形成用組成物の親水性微粒子が導電性を有する金属酸化物微粒子の場合には、良好な透明性、抗菌性及び導電性を有する膜が得られる。
本実施形態のプラスチック基材は、その1つの面または複数の面に本実施形態の抗菌透明膜を備えている。例えば、プラスチックシートやプラスチックフィルムの場合には、シートやフィルムの一方の面または両面に、本実施形態の抗菌透明膜を備えている。
本実施形態のプラスチック基材によれば、本実施形態の抗菌透明膜を備えたので、良好な抗菌性及び透明性を得ることができる。また、親水性微粒子が導電性を有する金属酸化物微粒子である場合には、良好な導電性を得ることができる。
本実施形態の表示装置は、少なくとも表示面に、本実施形態の抗菌透明膜及び本実施形態のプラスチック基材のいずれか一方または双方を備えている。
表示装置としては、少なくとも表示面に抗菌性及び透明性が必要とされる表示装置であればよく、特に限定されず、例えば、タッチパネルディスプレイ、液晶表示ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、蛍光ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の表示装置が挙げられる。
例えば、表示装置の表示面に本実施形態の抗菌透明膜を形成する場合、上述した抗菌透明膜の形成方法と同様に、表示面に、例えば、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレー法、ローラー法、はけ塗り法等により上記の抗菌膜形成用組成物を塗工して塗膜を形成し、次いで、この塗膜を硬化させることにより形成することができる。
また、表示装置の表示面に本実施形態のプラスチック基材を取り付ける場合、上記の抗菌透明膜の形成方法と全く同様にして抗菌透明膜を形成したプラスチック基材を表示面に装着または貼着することにより形成することができる。
なお、ここでは、実施例及び比較例の抗菌透明膜形成用組成物として、抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を用いた。
「銀微粒子水分散液の作製」
硝酸銀0.1質量部とクエン酸0.1質量部を、蒸留水100質量部に溶解し、反応原液とした。
次いで、この反応原液を20℃に保ちつつ攪拌しながら、0.1%水素化ホウ素ナトリウム水溶液100質量部を徐々に加え、2時間反応させた後、エバポレータを用いて濃縮し、銀微粒子を3質量%含む銀微粒子水分散液(AD1)を得た。
得られた銀微粒子の平均一次粒子径は5nmであった。
塩化スズ五水和物(SnCl・5H2O)670質量部と塩化アンチモン(SbCl2)46.2質量部を、6N塩酸3000質量部に投入し溶解した。
次いで、得られた溶液を攪拌しながら25質量%のアンモニア水を200質量部加え、沈殿物を生成させた。
次いで、得られた沈殿物を濾過洗浄して塩化アンモニウム(NH4Cl)を除去し、さらに水を加えて固形分の濃度が1質量%となるように調整し、反応原料とした。
次いで、この反応原料をオートクレーブに入れて350℃にて5時間加熱し、その後、エバポレータを用いて濃縮し、アンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子を30質量%含むATO微粒子分散液(ATOS1)を得た。
上記の銀微粒子水分散液(AD1)1.5質量部と、上記のATO微粒子分散液(ATOS1)1.5質量部と、側鎖としてカルボキシル基を有するアクリルポリマーからなる紫外線硬化型樹脂水溶液 W101(固形分20質量%、分散粒径200nm;日本合成化学社製)70質量部と、光重合開始剤 イルガキュア500(チバスペシャルティケミカルズ社製)1質量部とを、脱イオン水16質量部とエタノール10質量部とを混合して得られた溶液に投入して分散し、実施例1の抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を得た。
実施例1に準じて銀微粒子水分散液(AD1)及びATO微粒子分散液(ATOS1)を作製した。
次いで、上記の銀微粒子水分散液(AD1)1.5質量部と、上記のATO微粒子分散液(ATOS1)1.5質量部と、ポリエステル樹脂水溶液 バイロナールMD−1100(固形分30%、分散粒径100nm;東洋紡社製)50質量部とを、脱イオン水37質量部とエタノール10質量部とを混合して得られた溶液に投入して分散し、実施例2の抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を得た。
実施例1に準じて銀微粒子水分散液(AD1)を作製した。
次いで、上記の銀微粒子水分散液(AD1)1.5質量部と、側鎖としてカルボキシル基を有するアクリルポリマーからなる紫外線硬化型樹脂水溶液 W101(固形分20質量%、分散粒径200nm;日本合成化学社製)70質量部と、光重合開始剤 イルガキュア500(チバスペシャルティケミカルズ社製)1質量部とを、脱イオン水17.5質量部とエタノール10質量部とを混合して得られた溶液に投入して分散し、表面親水性金属酸化物微粒子を含有しない比較例1の膜形成用組成物を得た。
実施例1に準じて銀微粒子水分散液(AD1)を作製した。
次いで、上記の銀微粒子水分散液(AD1)1.5質量部と、ポリエステル樹脂水溶液 バイロナールMD−1100(固形分30%、分散粒径100nm;東洋紡社製)50質量部とを、脱イオン水38.5質量部とエタノール10質量部とを混合して得られた溶液に投入して分散し、表面親水性金属酸化物微粒子を含有しない比較例2の膜形成用組成物を得た。
実施例1に準じてATO微粒子分散液(ATOS1)を作製した。
次いで、上記のATO微粒子分散液(ATOS1)1.5質量部と、側鎖としてカルボキシル基を有するアクリルポリマーからなる紫外線硬化型樹脂水溶液 W101(固形分20質量%、分散粒径200nm;日本合成化学社製)70質量部と、光重合開始剤 イルガキュア500(チバスペシャルティケミカルズ社製)1質量部とを、脱イオン水17.5質量部とエタノール10質量部とを混合して得られた溶液に投入して分散し、抗菌性を有する金属微粒子を含有しない比較例3の膜形成用組成物を得た。
「抗菌透明膜の形成」
実施例1に準じて抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を得た。
次いで、アクリル樹脂基板として、厚み2mmの透明なアクリル樹脂板材 デラグラス(旭化成社製)を用い、このアクリル樹脂基板上に、上記の抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を、バーコート法により乾燥膜厚が3μmとなるように塗布して、塗膜を形成した。
次いで、この塗膜を、高圧水銀ランプ(120W/cm)を用いて紫外線を300mJ/cm2の工ネルギーとなるように露光して硬化させ、アクリル樹脂基板上に塗膜を形成した。
塗膜の構造を、透過型電子顕微鏡(TEM)H−800(日立製作所社製)を用いて観察した。この塗膜の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を図1に示す。図1によれば、微粒子が一本の鎖のように繋がって一本鎖を形成し、さらに、この一本鎖が幾重にも分岐して網目状となった網目状構造体を形成しており、この網目状構造体により塗膜が構成されていることが確認された。
その結果、ATOの網目状構造体中に銀が組み込まれて、ATOと銀が網目状構造体を形成していることが確認された。
その結果、この塗膜の全光線透過率は89%、ヘーズ値は0.5%であった。一方、塗膜を形成していないアクリル樹脂基板そのものの全光線透過率は91%、ヘーズ値は0.2%であった。
また、塗膜の抗菌性試験を、日本工業規格JIS Z 2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準じて行った。その結果、大腸菌・黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌性能を有することが確認された。
以上により、実施例3の塗膜は、良好な導電性と透明性と抗菌性を有することが確認された。
「抗菌透明膜の形成」
実施例2に準じて抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を得た。
次いで、アクリル樹脂基板として、厚み2mmの透明なアクリル樹脂板材 デラグラス(旭化成社製)を用い、このアクリル樹脂基板上に、上記の抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物を、バーコート法により乾燥膜厚が3μmとなるように塗布して、塗膜を形成した。
次いで、この塗膜を、80℃にて10分間加熱して硬化させ、アクリル樹脂基板上に塗膜を形成した。
塗膜の評価を、実施例3に準じて行った。
得られた塗膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)H−800(日立製作所社製)を用いて観察した結果、微粒子が一本の鎖のように繋がって一本鎖を形成し、さらに、この一本鎖が幾重にも分岐して網目状となった網目状構造体を形成しており、この網目状構造体により塗膜が構成されていることが確認された。
得られた塗膜の全光線透過率は89%、ヘーズ値は0.5%であった。また、表面抵抗値は1.0×1010Ω/cm2であった。また、抗菌性試験により、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌性能を有することが確認された。
以上により、実施例4の塗膜は、良好な導電性と透明性と抗菌性を有することが確認された。
実施例1に準じて得られた抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物の替わりに比較例1に準じて得られた膜形成用組成物を用いた以外は、実施例3に準じて比較例4の塗膜を得、この塗膜の評価を実施例3に準じて行った。
得られた塗膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)H−800(日立製作所社製)を用いて観察した。この塗膜の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を図3に示す。図3によれば、塗膜中に銀微粒子の凝集体が存在していることが確認された。
以上により、比較例4の塗膜は、表面親水性金属酸化物微粒子を含有していないために、優れた抗菌性能を有するものの、導電性を有さないのは勿論のこと、透明性も劣っていることが確認された。
実施例2に準じて得られた抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物の替わりに比較例2に準じて得られた膜形成用組成物を用いた以外は、実施例4に準じて比較例5の塗膜を得、この塗膜の評価を実施例3に準じて行った。
得られた塗膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)H−800(日立製作所社製)を用いて観察した結果、塗膜中に銀微粒子の凝集体が存在していることが確認された。
以上により、比較例5の塗膜は、表面親水性金属酸化物微粒子を含有していないために、優れた抗菌性能を有するものの、導電性を有さないのは勿論のこと、透明性も劣っていることが確認された。
実施例2に準じて得られた抗菌性を有する透明導電膜形成用組成物の替わりに比較例3に準じて得られた膜形成用組成物を用いた以外は、実施例4に準じて比較例6の塗膜を得、この塗膜の評価を実施例3に準じて行った。
得られた塗膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)H−800(日立製作所社製)を用いて観察した。この塗膜の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を図4に示す。図4によれば、塗膜中に微粒子が一本の鎖のように繋がった鎖状構造体が形成されていることが確認された。
しかしながら、抗菌性試験により、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して抗菌性能を有さないことが確認された。
以上により、比較例6の塗膜は、抗菌性を有する金属微粒子を含有していないために、抗菌性能が劣っていることが確認された。
Claims (6)
- 平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の抗菌性を有する金属微粒子と、平均一次粒子径が3nm以上かつ30nm以下の親水性微粒子と、平均分散粒径が10nm以上かつ100μm以下の水中油型エマルジョン樹脂とを含有してなることを特徴とする抗菌透明膜形成用組成物。
- 前記水中油型エマルジョン樹脂の質量(ME)と前記金属微粒子及び前記親水性微粒子の合計質量(MM)との比(ME:MM)は、2:1〜40:1の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の抗菌透明膜形成用組成物。
- 前記親水性酸化物微粒子は、導電性を有する金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌透明膜形成用組成物。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の抗菌透明膜形成用組成物により形成されてなることを特徴とする抗菌透明膜。
- 請求項4記載の抗菌透明膜を備えてなることを特徴とするプラスチック基材。
- 少なくとも表示面に、請求項4記載の抗菌透明膜及び請求項5記載のプラスチック基材のいずれか一方または双方を備えてなることを特徴とする表示装置。
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