JP2013008931A - 半導体発光素子 - Google Patents

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一陽 堤
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Abstract

【課題】発光層の品質を高めるとともに、発光効率を向上させることができる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】サファイア基板1上に、GaNバッファ層2、n型GaN層3、InGaN/GaN中間バッファ層4、MQW活性層5、p型AlGaN層6、p型GaN層7が順に積層されている。InGaN/GaN中間バッファ層4は、複数のInGaN膜と複数のGaN膜とが交互に積層された超格子構造を有し、InGaN膜のIn組成比率はn型GaN層3からMQW活性層5に向かって段階的に増加していくように構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、n型窒化物半導体層と発光層との間に中間バッファ層を備えた半導体発光素子に関する。
従来、Inの組成比が異なる2つの窒化物半導体層の格子定数の違いを緩和するために、Inの組成比を徐々に変化させた傾斜層を、中間バッファ層として2つの窒化物半導体層の間に設ける技術が開示されている。このように傾斜層を設けることによって、窒化物半導体層内部の欠陥を減少させて、発光効率を向上させることができる。
例えば、特許文献1には、InGaNからなるIn組成傾斜層のInの組成比率の変化量を、MQW活性層内のIn組成比率の小さいInGaN層の近傍では小さくして、In組成比率の大きいInGaN層近傍では大きくしている。これにより、MQW活性層内のInGaN層にキャリアを閉じ込めることが容易になり、半導体発光素子の発光効率が向上する。
また、n型GaN層とMQW活性層との間に、超格子構造を有する超格子層が形成された半導体発光素子が提案されている。
超格子層は、InGaN層とGaN層とが積層した構造を有している。この超格子層を、MQW活性層とn型GaN層との間に中間バッファ層として挿入することで、MQW活性層に欠陥が導入されることを抑制している。
このように、下地GaN層とMQW活性層との間に中間バッファ層を形成することによって、半導体発光素子の光出力の向上が図られていた。
特開2007−158101号公報
しかしながら、特許文献1に示されるIn組成傾斜層では、In組成傾斜層が厚いと、格子歪を吸収しきれず、格子にずれが生じる。このため、In組成傾斜層内での格子不整合が起こってしまう。
また、InGaN/GaN超格子層を用いる場合は、MQW活性層の発する光がInGaN/GaN超格子層のInGaN層で吸収されることを抑制するために、InGaN/GaN超格子層のInGaN層に含まれるInの組成比率は、MQW活性層のウエル層よりも低く抑えられる。この場合には、以下のような問題が発生する。
図12(a)、(b)の右側には、下地GaN層上に、In組成が一定のInGaN/GaN超格子層が形成され、その上に発光層(MQW活性層)が配置された構成が示されている。左側には、各InGaNのIn組成の割合を棒グラフで示している。
図12(a)では、InGaN/GaN超格子層のInGaN層を14aで、GaN層を14bで、発光層のウエル層を15aで示す。各InGaN層14aのIn組成は一定である。また、図12(b)では、InGaN/GaN超格子層のInGaN層を24aで、GaN層を24bで、発光層(MQW活性層)のウエル層を25aで示す。各InGaN層24aの組成は一定である。図12(a)、(b)ともに、ウエル層は、最下層のみが示されている。
図12(a)のように、InGaN層14aのIn組成をウエル層15aのIn組成よりも十分小さくすると、光の吸収を回避することができるが、一方で、発光層のウエル層15aとはIn組成が大きく異なり、格子サイズが不連続となる。このため、発光層とInGaN/GaN超格子層との間に大きな格子歪が発生し、格子欠陥発生の可能性が高くなる。
他方、発光層とInGaN/GaN超格子層との間の格子歪を小さくしようとすると、図12(b)のように、InGaN/GaN超格子層のInGaN層24aのIn組成を大きくし、ウエル層25aのIn組成に近づければ良い。しかし、下地GaN層とInGaN層24aとの間のIn組成の差が大きくなり、格子サイズが不連続となる。このため、下地GaN層とInGaN/GaN超格子層との間に大きな格子歪が発生し、格子欠陥の可能性が高くなる。図12(b)の場合、さらに、次のような問題も発生する。
図13は、発光層のウエル層に用いられるInGaNのIn組成と発光ピーク波長との関係を示すものである。縦軸が発光ピーク波長(nm)を、横軸がIn組成(%)を示す。また、点線で示されたIn組成は、青色(波長455nm)発光のIn組成に対応している。
図12(b)の場合のように、InGaN/GaN超格子層のInGaN層に含まれるInの組成比率と、発光層のInGaNウエル層のInの組成比率とが近いものであれば、斜線で示されるPの部分の発光がInGaN/GaN超格子層のInGaN層に吸収されてしまう可能性があり、発光効率の低下に繋がる。
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、発光層の品質を高めるとともに、発光効率を向上させることができる半導体発光素子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、下地GaN層と、前記下地GaN層上に形成された中間バッファ層と、前記中間バッファ層上に形成されるとともにInGaNウエル層を含む発光層とを少なくとも備え、前記中間バッファ層は、複数のInGaN膜と複数のGaN膜とが交互に積層された超格子構造を有し、前記InGaN膜のIn組成比率は前記下地GaN層から前記発光層に向かって段階的に増加していくことを主要な特徴とする。
本発明によれば、中間バッファ層は、複数のInGaN膜と複数のGaN膜とが交互に積層された超格子構造を有し、InGaN膜のIn組成比率は下地GaN層から発光層に向かって段階的に増加していくように構成される。これにより、中間バッファ層は、下地GaN層と格子整合し、発光層とも格子整合するため、格子欠陥の発生を抑制することができる。したがって、発光層の結晶品質を高めることができ、発光効率も向上する。
本発明の半導体発光素子の一実施例の断面を示す図である。 図1の構成におけるInGaN/GaN中間バッファ層の構成を示す図である。 図2のInGaN/GaN中間バッファ層でGaN膜厚と光出力の関係を示す図である。 本発明の半導体発光素子の製造工程における手順を示す図である。 図4においてInGaN/GaN中間バッファ層の製造手順を詳細に示した図である。 InGan層における成長温度とInとの関係を示す図である。 光励起評価を行った素子構造の断面を示す図である。 図7の構成で光励起評価を行った結果を示す図である。 図1の構成で発光評価を行った結果を示す図である。 格子歪を説明するための概念図である。 In組成が一定のInGaN/GaN中間バッファ層のGaN膜厚と光出力との関係を示す図である。 In組成が一定のInGaN/GaN超格子層においてIn組成と格子歪との関係を示す図である。 発光ピーク波長とInGaN層のIn組成との関係を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。構造に関する図面は模式的なものであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
図1は、本発明の半導体発光素子の一実施例の断面構造を示す。サファイア基板1上に、GaNバッファ層2、n型GaN層3、InGaN/GaN中間バッファ層4、MQW活性層5、p型AlGaN層6、p型GaN層7が順に積層されている。p型GaN層7〜InGaN/GaN中間バッファ層4までとn型GaN層3の一部は、メサエッチングされており、露出したn型GaN層3上にn電極9が、p型GaN層7上にはp電極8が形成されている。
サファイア基板1は、単結晶のサファイアによって構成された成長用基板である。
GaNバッファ層2は、低温で結晶成長させたGaNによって構成されており、サファイア基板1とn型GaN層3との格子定数の不整合を緩和する機能を有する。
n型GaN層3は、n型クラッド層の役割を有する。n型GaN層3は、MQW活性層5よりもバンドキャップエネルギーが大きくなるように構成される層であり、MQW活性層5にキャリアを閉じ込める機能を有する。
InGaN/GaN中間バッファ層4は超格子層であり、複数のInGaN層と複数のGaN層とが交互に積層された構造を有する。
また、InGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層に含まれるInの組成比率は、MQW活性層5のウエル層に含まれるInの組成比率よりも小さい。これは、MQW活性層の発する光がInGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層で吸収されることを抑制するためである。
例えば、MQW活性層5のウエル層に含まれるInの組成比率は10%よりも大きく、30%以下の範囲であり、InGaN/GaN中間バッファ層のInGaN層に含まれるInの組成比率は10%以下である。
MQW活性層5は、発光層であり、ウエル層とバリア層とが交互に積層された構造を有する。ウエル層は、バリア層よりもInの組成比率が大きい薄膜層(例えば、InGaN)である。一方、バリア層は、ウエル層よりもInの組成比率が小さい薄膜層(例えば、GaN)である。また、ウエル層及びバリア層は、多重量子井戸構造(MQW構造)を形成する。
p型AlGaN層6はp型クラッド層の役割を有する。p型AlGaN層6は、MQW活性層5よりもバンドキャップエネルギーが大きくなっており、MQW活性層5にキャリアを閉じ込める機能を有する。
p型GaN層6は、コンタクト層の役割を有し、p電極8とオーミックコンタクトが取られる。
ここで、超格子層であるInGaN/GaN中間バッファ層4の構成について、図2を用いて詳しく説明する。図2の右側には、下地GaNとなるn型GaN層3上に配置されているInGaN/GaN中間バッファ層4の積層構造を示す。InGaN/GaN中間バッファ層4は、InGaN層41a、42a、43a、44a、45aとGaN層4bとで構成される。InGaN層41a上に、GaN層4b、InGaN層42a、GaN層4b、InGaN層43a、GaN層4b、InGaN層44a、GaN層4b、InGaN層45a、GaN層4bと、InGaN層とGaN層とが交互に積層されている。
図2の例では、5つのInGaN層と5つのGaN層による構成としたが、これに限定されるものではなく、より多くのInGaN層とGaN層のペアを用いても良い。一方、MQW活性層5は、InGaNウエル層5aとGaNバリア層5bとが交互に積層された多重量子井戸構造となっている。
図2の左側には、各層に対するIn組成比率を棒グラフで表したものが示されている。下地GaNとなるn型GaN層3、InGaN/GaN中間バッファ層4のGaN層4b、及びMQW活性層5のGaNバリア層5bは、In組成比率が0である。InGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層41a、42a、43a、44a、45aについては、図のように、n型GaN層3からMQW活性層5にかけて、In組成比率が段階的にあるいは直線的に増加していくように構成されている。ただし、InGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層45aのIn組成比率は、MQW活性層5のInGaNウエル層5aのIn組成比率よりも小さい。なお、InGaN層41a、42a、43a、44a、45aの各膜厚は同じである。
以上のように、InGaN/GaN中間バッファ層4を、複数のInGaN層と複数のGaN層とを交互に積層して構成し、かつInGaN層のIn組成比率を下地GaN層側からMQW活性層側にかけて、段階的に増加させていくことにより以下の効果が発生する。
In組成比率が徐々に変化していき、InGaN/GaN中間バッファ層の最後のInGaN層のIn組成比率がMQW活性層のウエル層のIn組成比率と近くなる。このため、下地GaN層とInGaN/GaN中間バッファ層の間、及びInGaN/GaN中間バッファ層とMQW活性層との間で格子サイズに不連続な部分が発生しない。すなわち、格子歪が、徐々に緩和され格子欠陥ができにくくなり、高品質な発光層の成膜が可能となる。
また、図12(b)のように、発光層とInGaN/GaN超格子層と間の格子歪を小さくするために、InGaN/GaN超格子層のIn組成比率を上げると、図13に示すように、光の吸収が大きくなる。しかし、本発明のInGaN/GaN中間バッファ層4では、In組成比率を徐々に増加させているので、MQW活性層とIn組成比率が近いInGaN層のトータルの厚みは、従来の図12(b)等と比較して非常に小さくなるので、光吸収が抑制される。
次に、図1、図2の構成を用いて、InGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN膜厚とGaN膜厚を変化させて光出力を測定した結果を図3に示す。ここで、図2に示したように、MQW活性層5は膜厚3nmのInGaNウエル層と膜厚5nmのGaNバリア層による構成とし、InGaNウエル層のIn組成比率は14%とした。
また、InGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層41a〜45aのIn組成比率は、InGaN層41aのIn組成比率を1%とし、InGaN層42aを2%、InGaN層43aを3%、InGaN層44aを4%、InGaN層45aを5%とし、1%ずつ直線的に増加させた。
図3の縦軸は光出力を、横軸はInGaN/GaN中間バッファ層4のInGaN層の膜厚を示す。図3の菱形はGaN層4bの膜厚が2nmの場合を、四角はGaN層4bの膜厚が5nmの場合を、三角はGaN層4bの膜厚が8nmの場合を示す。この3種類の厚さのGaN層4bに対して、InGaN層41a〜45aの膜厚を1nm、2nm、4nm、8nm、12nmと変化させた。
GaN層4bの膜厚が2nmの場合のデータが、W11、W12、W13、W14、W15であり、W11がInGaN層膜厚1nm、W12がInGaN層膜厚2nm、W13がInGaN層膜厚4nm、W14がInGaN層膜厚8nm、W15がInGaN層膜厚12nmである。GaN層4bの膜厚が5nmの場合のデータが、W21、W24であり、W21がInGaN層膜厚1nm、W24がInGaN層膜厚8nmである。GaN層4bの膜厚が8nmの場合のデータが、W31、W34であり、W31がInGaN層膜厚1nm、W34がInGaN層膜厚8nmである。また、縦軸の光出力は、W11のデータにより正規化されている。
図3のグラフからわかるように、光出力が1以上を維持しているのは、GaN層の膜厚が2nmと5nmの場合である。また、InGaN層の膜厚を15nmまでの範囲で変化させたときに、光出力が特に良くなっているのは、GaN層の膜厚が2nmの場合である。GaN層の膜厚が2nmの場合のデータW11〜W15のうち、特にW13が良い出力を示しており、W11と比較して5%の輝度上昇となった。W11〜W15のデータを見ると、GaN層膜厚よりもInGaN層膜厚の方が厚くなれば、光出力の向上に寄与するものと考えられる。InGaN層膜厚は、2nmよりも大きく8nm以下の範囲が好ましい結果となっている。
本発明に係る中間バッファ層と比較するために、In組成が一定のInGaN/GaN超格子層を用いて、半導体発光素子の光出力が向上するGaN膜厚を調べた。図11に、In組成が一定のInGaN/GaN超格子層のInGaN膜厚とGaN膜厚の変化による光出力を示す。
半導体発光素子は、図1の構成において、InGaN/GaN中間バッファ層4をIn組成が一定のInGaN/GaN超格子層に替えた構造とした。また、InGaN/GaN超格子層のIn組成比率は5%とした。
図11の縦軸は光出力を、横軸はIn組成が一定のInGaN/GaN超格子層におけるGaN膜厚の厚さ(nm)を示す。なお、上記の構造の発光素子において、InGaN/GaN超格子層を挿入しない場合の光出力により正規化した値が、縦軸の光出力に示される。
最初のP1は、InGaN/GaN超格子層が設けられていない場合であるので、その値は1である。また、P2は超格子層におけるInGaN膜厚/GaN膜厚が1nm/2nm、P3はInGaN膜厚/GaN膜厚が1nm/5nm、P4はInGaN膜厚/GaN膜厚が2nm/6nm、P5はInGaN膜厚/GaN膜厚が2nm/20nmである。
図11からわかるように、InGaN/GaN超格子層のInGaN膜厚/GaN膜厚が、1nm/5nmのときに光出力が最大になっており、InGaN/GaN中間バッファ層の挿入で、中間バッファ層がない場合と比較して、光出力は5%程度上昇していることがわかる。超格子層のInGaN膜厚≦超格子層のGaN膜厚であれば、光出力の上昇が期待できる。
このように、In組成が一定のInGaN/GaN超格子層では、GaN膜厚をInGaN膜厚より厚くし、InGaN膜厚/GaN膜厚の最適な比率が求められる。
次に、図1の構成で、かつ図2の構成のInGaN/GaN中間バッファ層4を有する半導体発光素子の製造方法を図4、5を参照して以下に説明する。図4、5は半導体発光素子の製造過程における手順を示す図である。
サファイア基板1上にGaNバッファ層2を形成する。具体的には、図4のT0に示すように、サファイア基板1の温度を約450℃の状態にし、窒素(N)及びトリメチルガリウム(TMG)などをガス室内に供給し、結晶を気相成長させて、低温GaN結晶からなるGaNバッファ層2を形成する。
なお、結晶を気相成長させる方法としては、有機金属気相成長(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapour Deposition)法などが挙げられる。
GaNバッファ層2上にn型GaN層3を形成する。具体的には、図4のT1に示すように、サファイア基板1の温度を約1060℃となるまで上昇させるとともに、アンモニア(NH)、水素(H)、窒素(N)、トリメチルガリウム(TMG)及びモノシラン(SiH)などをガス室内に供給し、n型GaN層3を形成する。
次に、n型GaN層3上に超格子構造を有するInGaN/GaN中間バッファ層4を形成する。具体的には、図5のように行う。図5は、図4のステップのT2の部分を詳細にしたものである。サファイア基板1の温度を約850℃となるまで下降させるとともに、アンモニア(NH)、窒素(N)、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルインジウム(TMI)及びモノシラン(SiH)などをガス室内に供給し、InGaN層41aを形成する(T21)。なお、このとき、ガス室内に供給されるトリメチルインジウム(TMI)の流量は約125sccmである。また、アンモニア(NH)、窒素(N)、トリエチルガリウム(TEG)及びモノシラン(SiH)などをガス室内に供給し、GaN層4bを形成する(T22)。
次に、図5のように、サファイア基板1の温度を約840℃になるまで降下させるとともに、InGaN層41aの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、InGaN層42aを形成する(T23)。また、上記第1回目のGaN層4bの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、第2回目のGaN層4bを形成する(T24)。
続けて、図5のように、サファイア基板1の温度を約830℃になるまで降下させるとともに、InGaN層41aの作製のときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、InGaN層43aを形成する(T25)。また、上記第1回目のGaN層4bの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、第3回目のGaN層4bを形成する(T26)。
次に、図5のように、サファイア基板1の温度を約822℃になるまで降下させるとともに、InGaN層41aの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、InGaN層44aを形成する(T27)。また、上記第1回目のGaN層4bの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、第4回目のGaN層4bを形成する(T28)。
さらに、図5のように、サファイア基板1の温度を約815℃になるまで降下させるとともに、InGaN層41aの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、InGaN層45aを形成する(T29)。また、上記第1回目のGaN層4bの作製ときと同様の原材料ガスやキャリアガスを用い、第5回目のGaN層4bを形成する(T210)。
このように、InGaN層41a〜45a及び5つのGaN層4bを交互に積層することによって、超格子構造を有するInGaN/GaN中間バッファ層4を形成する。
ここで、図6に示すように、InGaN層におけるIn組成比率は、InGaN成膜温度によって制御することができる。図6は、あらかじめ、InGaN成膜温度とIn組成(%)との関係を測定した結果である。このときのトリメチルインジウム(TMI)の流量は125sccmとした。図6のように、InGaN成膜温度が約850℃ではIn組成比率は1%、約840℃ではIn組成比率は2%、約830℃ではIn組成比率は3%、約822℃ではIn組成比率は4%、約815℃ではIn組成比率は5%となっている。このように、InGaN成膜温度を下げていくことにより、In組成比率を高くすることができ、成膜温度780℃付近では、In組成比率を約14%にまで高めることができる。
したがって、以上説明したように5段階に温度を下げて、InGaN層41a〜45aを形成すると、InGaN層41a〜45aのIn組成比率が1%から1%ずつ段階的に増加して5%に到達する層構造が形成される。
InGaN/GaN中間バッファ層4上にMQW活性層5を形成する。具体的には、図4のT3及び図5に示すように、サファイア基板1の温度を約780℃となるまで下降させるとともに、アンモニア(NH)、窒素(N)、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルインジウム(TMI)などをガス室内に供給し、ウエル層を形成する。次に、サファイア基板1の温度を約820℃となるまで上昇させるとともに、アンモニア(NH)、水素(H)、窒素(N)及びトリメチルガリウム(TMG)などをガス室内に供給し、バリア層を形成する。このように、バリア層及びウエル層を交互に積層することによって、量子井戸構造(MQW構造)を有するMQW活性層5を形成する。
なお、図6に示したように、上記成長温度で成膜した場合のMQW活性層5のウェル層に含まれるInの組成比率は14%である。
MQW活性層5上にp型AlGaN層6を形成する。具体的には、図4のT4に示すように、サファイア基板1の温度を約1000℃となるまで上昇させるとともに、アンモニア(NH)、水素(H)、窒素(N)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)及びドーパント材であるマグネシウム(CpMg)などをガス室内に供給してp型AlGaN層6を形成する。次に、図4のT5に示すように、サファイア基板1の温度を約1000℃に保ち、アンモニア(NH)、水素(H)、窒素(N)、トリメチルガリウム(TMG)及びドーパント材であるマグネシウム(CpMg)などをガス室内に供給し、p型GaN層7を形成する。
次に、p型GaN層7〜InGaN/GaN中間バッファ層4までとn型GaN層3の一部をメサエッチングし、露出したn型GaN層3の表面上にn電極9を蒸着又はスパッタにより形成する。一方、p型GaN層7の表面にp電極8を蒸着又はスパッタにより形成する。
次に、図7に示す構造を用いて光励起評価を行った。図7の構成は、図1の半導体発光素子の一部までを作製したものである。図1と同じ符号は、同じ構成を示す。サファイア基板1上に、GaNバッファ層2、n型GaN層3、InGaN/GaN中間バッファ層4、MQW活性層5までが積層されている。MQW活性層5の表面に励起光を照射し、MQW活性層5から発生するPL(フォトルミネッセンス)光を測定した。MQW活性層5は、前述のように、膜厚3nmのInGaNウエル層と膜厚5nmのGaNバリア層による構成とし、InGaNウエル層のIn組成比率は14%とした。
本発明に係るInGaN/GaN中間バッファ層4の特性を評価するために、In組成がMQW活性層5に向かって段階的に増加するInGaN/GaN中間バッファ層4を用いた場合の測定をXとした。InGaN/GaN中間バッファ層4として、図2のように、InGaN層41a〜45aと5つのGaN層4bが交互に積層された構造を使用した。また、InGaN層41aのIn組成比率が2%、InGaN層42aのIn組成比率が4%、InGaN層43aのIn組成比率が6%、InGaN層44aのIn組成比率が8%、InGaN層45aのIn組成比率が10%と、2%ずつ段階的に増加していく構造を用いた。ここで、InGaN層41a〜45aの各膜厚は8nm、GaN層4bの膜厚は2nmである。
一方、図7において、比較対象として、本発明に係るInGaN/GaN中間バッファ層4に代えて、In組成が一定のInGaN/GaN超格子層を用いた場合の測定をYとした。また、InGaN/GaN中間バッファ層4を取り除いて中間バッファ層を用いなかった場合の測定をZとした。これらの測定は、複数回行った。
この測定結果を図8に示す。PL光の強度は、Xの測定が最も良く、Zの測定が最も悪い結果となった。このように、本発明のInGaN/GaN中間バッファ層を用いると、MQW活性層5の品質が向上していることがわかった。
図9は、図1の半導体発光素子の構造にして、n電極9とp電極8にDC電源を接続し、素子に電流を流したときの光出力を示すものである。図8の場合と同様に、X、Y、Zの構造にして発光を測定した。光出力は、それほど差がないように見えるが、これは素子内部で、MQW活性層5からの光を吸収している可能性があるため、厳密な評価が行えない。
図10は、格子不整合の状態を模式的に示す図である。図10(a)では、下地GaN層30上に、InGaNによるIn組成傾斜層40を形成し、In組成傾斜層40上にMQW活性層50を形成したものである。In組成傾斜層40は、上述した特許文献1に示された組成傾斜層と同じものであり、In組成が非線形に変化している構造を有している。
図中の四角の枠は格子を表し、矢印は格子に加わる歪圧力を示す。In組成傾斜層40は、格子歪を吸収するためのものである。しかし、In組成傾斜層40のような構成では、InGaN層が厚いと、格子歪を吸収しきれず格子にずれが生じる。このため、In組成傾斜を行っても、傾斜層内での格子不整合が起こってしまう。この状態が模式的に示されている。これは、弾性定数、格子定数より格子整合の限界値が存在するためである。なお、格子歪を吸収できなくなってしまうと、MQW活性層50と格子整合しない。一度格子欠陥が発生してしまうと、その格子欠陥は上層まで引き継がれる。
これに対して、本発明のInGaN/GaN中間バッファ層では、図12(b)のように、InGaN層41a〜45aだけでなく、GaN層4bを間に挟むことで、緩和の抑制を行いながら、InGaN層41a〜45aのIn組成を変化させている。このため、InGaN/GaN中間バッファ層は、上下に配置された半導体層と結晶の不整合を発生させずに、発光層のInGaN結晶の格子サイズに徐々に変化させることが可能となる。これにより、格子欠陥の低減、結晶品質の向上を達成することができる。
また、本発明に係る中間バッファ層は、InGaN/GaN超格子層であり、InGaN膜厚をGaN膜厚よりも厚くしている。InGaN膜厚を厚くすると、Inが熱で動きやすくなる。このため、例えば、製造工程中に、熱によりInが分離して中間バッファ層がダメージを受けることがある。そこで、耐熱性を高めるために、InGaN層にAlを添加して、AlInGaN層としても良い。この場合、中間バッファ層は、AlInGaN/GaN超格子層となる。Alを添加することにより、InGaN中のInが固定される。また、Alの組成比率は1%以下で、Inを固定する効果が現れる。例えば、Inの組成比率を20%〜25%の高比率とした場合に、Alの組成比率を1%にすれば、In流動防止効果が現れた。
また、外部への光取り出し効率を向上させるために、サファイア基板1上に、開口部を有する凹凸のある絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に半導体層を結晶成長させるようにしても良い。この場合、絶縁膜の凹部(開口部)内には、GaNバッファ層2が形成され、GaNバッファ層2及び絶縁膜上にn型GaN層3が形成される。
絶縁膜は、発光波長に対して透明であり、かつ絶縁膜の屈折率は、サファイア基板1の屈折率とほぼ等しい材料であることが望ましい。例えば、保護膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、チタン酸化膜、アルミナ膜などで形成する。絶縁膜の開口部の形状は、三角形、菱形、六角形、円形、ストライプ等、選択横方向エピタキシャル成長(ELO)を阻害しないパターン形状ものが用いられる。
上記のように構成すると、サファイア基板1の裏面もしくはエピタキシャル成長層の上面から光を取り出す際、絶縁膜とエピタキシャル成長層の界面に凹凸が生じるため、光が散乱もしくは回折され、エピタキシャル成長層−異種基板界面の屈折率差によって全反射されていた光が、外部へ効率よく取り出されることになる。本発明に係る中間バッファ層は、発光層の品質を向上させ、発光出力を増大させたが、InGaN膜厚を厚くしたために、光の吸収が少し大きくなる可能性があった。しかし、上記のように開口部を有する凹凸のある絶縁膜を挿入することにより、光の取り出し効率を上げることができる。
1 サファイア基板
2 GaNバッファ層
3 n型GaN層
4 InGaN/GaN中間バッファ層
5 MQW活性層
6 p型AlGaN層
7 p型GaN層
8 p電極
9 n電極

Claims (5)

  1. 下地GaN層と、
    前記下地GaN層上に形成された中間バッファ層と、
    前記中間バッファ層上に形成されるとともにInGaNウエル層を含む発光層とを少なくとも備え、
    前記中間バッファ層は、複数のInGaN膜と複数のGaN膜とが交互に積層された超格子構造を有し、前記InGaN膜のIn組成比率は前記下地GaN層から前記発光層に向かって段階的に増加していくことを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記InGaN膜の膜厚は、前記GaN膜の膜厚よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記GaN膜の膜厚は、2nm〜5nmの範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記複数のInGaN膜のうち、最もIn組成比率が高いInGaN膜よりも前記InGaNウエル層のIn組成比率が大きいことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  5. 前記複数のInGaN膜には、Alが添加されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
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