JP2013007480A - 緩み止めナット - Google Patents

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Abstract

【課題】
生産性に優れ、かつ、強力な緩み止め効果を奏し得る緩み止めナットを提供する。
【解決手段】
上記課題は、第1締結回転部2Aと締結部材締結面2Bと第1締結回転部2Aに雌ネジ2Dと押圧受面2Cを備えた第1ナット2と、 第2締結回転部3Aと第2対向面3Bとこの第2対向面3Bに設けた径小の円筒状の厚みと長さを有する薄肉筒体部3Cと、その先端を押圧面3C−2として薄肉筒体部3Cには雌ネジ3D−1、3D−2を備えた第1ナット2とからなり、第1ナット2で、被締結部材を締付けた後に、第2ナット3の薄肉筒部3Cを第1ナット2の押圧受面2C側に圧接させてその薄肉筒体部3Cを圧縮変形させることで、前記第2締結回転部に対し前記薄肉円筒部がねじり圧縮されて前記薄肉円筒部が変形して雌ネジ3D−2のネジ山と雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山がそれぞれ異なって圧接させる構成とすることによって、達成できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、振動や衝撃が加えられる構造物に使用するのに好適な緩み止めナットに関するものである。
従来の緩み止めナットとしては、第1ナットと第2ナットとからなり、前記第1ナットには、ネジ孔の周りにテ―パー状の外周面を有する凸部が形成され、前記凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させ、かつ、前記第2ナットには、第1ナットの凸部が嵌合する凹部がネジ孔周りをテ―パー状にして形成され、前記凹部の内周面を前記ネジ孔と同心状とするテ―パー状に形成したものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、下部ナットのボルトの入る周辺を円周上に傾斜凹部を設けて、上部ナットのボルトの入る周辺を円周上に凸部を設けて、下部ナットと上部ナットの二つのナットのボルトの周辺の一部分の傾斜凹部に対して凸部のねじ込み締結では、上部ナットで締付けた力が直に下部ナット全部のナットの緩み止め効果としては充分な力で伝達されいので、下部ナットの上面の全体を上部ナットの下面の全体で押圧することによって、従来の緩み止めナットは成り立つものである。従来の緩み止めナットはボルト周辺の一部分が下部ナットの傾斜凹部に上部ナットの凸部をねじり入れる構造によってナットの緩み止めとすることは一般的な方法であって、このねじり入れた部分がネジに当接させて締付けることによって、上部ナットと下部ナットの二つのナットの緩み止めとする作用効果は充分なナットの緩み止め効果ではない(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本締め用ナットとロック用ナットの共回りを防止しながら両ナットを閉め合わせるために、ロック用ナットの締め付け方向の先端に環状突部を軸方向端面の面積よりも小さく形成して両ナットの座面を突き合わせるように締め付けるようにしたものが知られている。(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、上部1と下部2との間に形成された凹部3とから構成された緩み止めナットであって、その緩み止めナットを、ボルトに嵌めて締めた後、さらに、上部1を約10度〜15度回転させることで、凹部3が伸びてネジ山を変形させることにより緩みを止めるようにしたネジ山の変形緩み止めナットとなっており、このネジ山の変形緩み止めナットは上部1と下部2の二つのネジ部が働いて、ナットの緩み止めるようにしたものが知られている。(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、ナットの後方端側に設定された締付トルクで溝部が剪断により破断し、その破断後にはロックナットとして併用される定トルクを得るために溝部を設けたもので、特に溝部はナットの緩み止めとなる作用をするものではないものが知られている。(例えば、特許文献5参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本願の発明者が発明したもので、締付座面形成部と締付回転部との間に形成された薄肉部と締付座面形成部の内部にネジ無し部を設けてネジの緩み止めの効果を向上したものが知られている。(例えば、特許文献6参照。)。
特開平11−6516号公報 特開2007−107716 特開2003−227508 特開昭61−96212 実公昭60‐6654 特開2009−63162
上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させる必要があり、製作性が悪いという問題がかった。また、上記に記載の緩み止めナットでは、偏心による二つの部品の組合せであるので、実用に際しては偏心を作りだすため製造に精度を要すために手間がかかり、二つの部品の組合せによる経時変化等の問題を生じ易く、品質管理も大変になるという課題もあった。
なお、上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットのネジ孔の周りに微少量偏心させたテ―パー状の外周面を有する凸部に、第2ナットのネジ孔と同心状のテ―パー状の凹部を雄ネジ体の雄ネジに螺合して第1ナットに挿入とすると、第2ナットの凹部が拡大変形して雌ネジ孔が拡張変形して第2ナットが緩み易くなる課題があった。
上記特許文献2に記載された緩み止めナットでは、ボルト周辺の一部分が下部ナットの傾斜凹部に上部ナットの凸部をねじり入れて、下部ナットの上面の全体が上部ナットの下面の全体を押圧する構成では下部ナットと上部ナットがボルトに対して下部ナットの傾斜凹部を上部ナットの凸部で圧接する力が下部ナットの上面の全体と上部ナットの下面の全体が押圧することで制限されて小さくなるために、充分なナットの緩み止め効果が得られないという課題があった。
上記特許文献3に記載された緩み止めナットでは、本締め用ナットの上からロック用ナットを取付けたとき本締め用ナットとロック用ナットが共回りして緩むのを防止するために、本締め用ナットの座面にロック用ナットの先端部が当る面積を小さくして、本締め用ナットにロック用ナットが強く当てるようにした発明であって、この発明はロック用ナットの軸の長さ方向の長さについては全く記載されていない。本締め用ナットの座面に締付力を集中して両ナットを締め合わせるために、ロック用ナットの締め付け方向の先端に環状座面の面積を軸方向端面の面積よりも小さく形成したものであって、特許文献3の発明ではロック用ナットの軸方向の長さについて全く記載されてない。従って、軸の長さ方向の作用、効果についての記載は全くなく、また、ロック用ナットの軸の長さによる働きや効果は発見されていない。また、特許文献3の明細書に記載ある図3から図5の例の形状からもロック用ナットの軸の長さ方向の長さがナットの緩み止めになる発明には至っていない課題があった。
上記特許文献4に記載された緩み止めナットでは、上部1と下部2との間に凹部3を設け、この凹部3の作用による緩み止め効果を得たものであるが、このようにすると上部1と凹部3との間、また、下部2と凹部3との間が一体であって、上部1と下部2を締付けてその凹部3がボルトに圧接する効果は認められるが、上部1と凹部3と下部2が一体であると互いに厚みが異なる接続部が盛り上がるように干渉して、ボルトに対して雌ネジが緩む方向に働き緩み止めとなる効果は少なくなる(本願の発明者が試作試験して確認している)ので、充分な緩み止めとなる効果が得られないという課題があった。
上記特許文献5は、薄肉部が破断して圧縮することによって、薄肉部の締付けが完了していることを確認する(薄肉部を薄くすることで、薄肉部を破断させることにより、一定の締付トルクを得る)ようにしたものであって、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささり緩み止めになるこ とは認められるが、破壊してしまうほど薄肉部が薄いので、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささる前に、締付けると浮き上がってしまうため、緩み止めナットの効果は殆んど得られないものであるという課題があった。
特許文献6は、本願発明者が発明したものであって、緩み止めナットとして働く部分が一つになっていて、緩み止めとなるのは一つのナットの緩み止め作用に基づいているので充分に向上したナットの緩み止め効果を得ることができないという課題があった。
本発明の目的は、上記従来の緩み止めナットの問題点に鑑み、振動や衝撃が加わる構造物に使用しても強力な緩み止め効果を奏し得てナットの緩み止めとなる構造が簡単で製作性に優れた緩み止めナットを提供するにある。
本発明の目的の緩み止めナットは、雄ネジ体の外周に形成された雄ネジ部に螺合させる第1ナットと、この第1ナットに隣接した状態で前記雄ネジ体の雄ネジ部に螺合される第2ナットとからなる緩み止めナットにおいて、
前記第1ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部と、この第1締結回転部の外端面に形成された部材締結面と、前記第1締結回転部の内端面側に形成された前記第2ナットに対向する押圧受面と、前記第1締結回転部内の中央に設けけられて前記雄ネジ体が螺合する雌ネジとを備える構成とし、
かつ、前記第2ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部と、この第2締結回転部の内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面と、この第2対向面の中央に設けられて前記第2締結回転部より径小の薄肉円筒部とその薄肉円筒部の先端を押圧面として、前記雄ネジ体の雄ネジに螺合する雌ネジとを備える構成とし、
しかも、前記第1ナットの部材締結面で、締結部材を締め付けた後、前記第2ナットの第2締結回転部を前記第1ナットの押圧受面に向って締付けて前記薄肉円筒部をねじり圧縮変形させても前記薄肉円筒部は破損することなく、
前記薄肉円筒部がねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部内に形成された雌ネジのネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように圧接させることによりナットの緩み止めとなってる部分と、第2締付回転部の雌ネジと雄ネジ体の雄ネジ部が圧接した部分とがナットの緩み止めとなるように働く部分とからなるナットの緩み止めと、第1ナットと第2ナットによって生じる二重ナットの緩み止めを得たことを特徴とする緩み止めナットによって、達成される。なお、本発明の記載中において雄ネジ体とは、ボルトなどのように軸体(シャフト)の外周に雄ネジを形成したものをいう。また、薄肉円筒部とは円筒状の厚みと長さを有することをいう。
さらに、前記薄肉円筒部の長さLをそのネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内にすると共に、薄肉円筒部の厚みHをそのネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内にしたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
さらに、第1ナットと第2ナットとを一体の部材から薄肉円筒部の厚みHよりも薄くした連成部で前記第1ナットの押圧受面と前記第2ナットの前記薄肉円筒部の押圧面とを連成させて構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
さらに、第1ナットと第2ナットとを一体の部材から連成した連成部を設けた連成部から破断させて、第2ナットの薄肉円筒部との連成部の破断した先端を押圧面として、第1ナットの連成部の破断した面を押圧受面となるように構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
さらに、第2ナットの薄肉円筒部を外部の障害物から保護する共に、第1ナットの雌ネジ孔の拡張を防止するようにした保護部を第1ナットに設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
さらに、第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接する際に、前記薄肉円筒部のねじり圧縮変形を容易にするところの凹溝を、前記薄肉円筒部の外周面に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
さらに、第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接してもその前記薄肉円筒部を破損することなく圧縮変形させた際に、前記薄肉円筒部の端面の破損を防止するところの補強部を、前記薄肉円筒部の外周部に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットにすることによって達成されるものである。
前記手段に記載した本発明によれば、振動や衝撃が加わる構造物に使用しても強力な緩み止め効果を奏し得てナットの緩み止めとなる構造が簡単で製作性に優れた緩み止めナットを提供することができるものである。なお、詳述すれば次の通りである。
本発明の請求項1の発明によれば、上述した従来例の緩み止めナットのように、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させるという製造や品質管理の困難性の高い構造としなくともよい。また、次のような簡単に構成した構造によって、しかも、第2ナットの雌ネジ孔の拡張変形して第2ナットが弛み易くなることを防止した生産性にも優れた緩み止めナットは、
雄ネジ体の外周に形成された雄ネジ部に螺合させる第1ナットと、この第1ナットに隣接した状態で前記雄ネジ体の雄ネジ部に螺合される第2ナットとからなる緩み止めナットにおいて、
前記第1ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部と、この第1締結回転部の外端面に形成された部材締結面と、前記第1締結回転部の内端面側に形成された前記第2ナットに対向する押圧受面と、前記第1締結回転部内の中央に設けけられて前記雄ネジ体が螺合する雌ネジとを備える構成とし、
かつ、前記第2ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部と、この第2締結回転部の内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面と、この第2対向面の中央に設けられて前記第2締結回転部より径小の薄肉円筒部とその薄肉円筒部の先端を押圧面として、前記雄ネジ体の雄ネジに螺合する雌ネジとを備える構成とし、
しかも、前記第1ナットの部材締結面で、締結部材を締め付けた後、前記第2ナットの第2締結回転部を前記第1ナットの押圧受面に向って締付けて前記薄肉円筒部をねじり圧縮変形させても前記薄肉円筒部は破損することなく、
前記薄肉円筒部がねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部内に形成された雌ネジのネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように圧接させることによりナットの緩み止めとなってる部分と、第2締付回転部の雌ネジと雄ネジ体の雄ネジ部が圧接した部分とがナットの緩み止めとなるように働く部分とからなるナットの緩み止めと、第1ナットと第2ナットによって生じる二重ナットの緩み止めを得たことを特徴とする緩み止めナットにすることによるものである。
従って、本発明は、第1ナットと第2ナットとの間でも普通に一般に言う二重ナットの緩み止め作用効果を発生するナットの緩み止め作用効果と、更に、第2ナット内部の第2締結回転部と前記薄肉円筒部とで発生するナットの緩み止め作用効果によるナットの緩み止め効果によって極めて有効な緩み止めナットとなる相乗効果を発揮する緩み止めナットが得られることによるもので、第1ナットと第2ナットとの接触面積が少なく、そして前記薄肉円筒部は弾性力を有してねじり圧縮変形しているので第1ナットが振動や衝撃を受けて第1ナットが緩もうとすると第2ナットの前記薄肉円筒部の前記雄ネジ体の雄ネジに螺合する弾性力を有している部分がねじり圧縮変形している雌ネジが雄ネジを雌ネジで圧接するように働くので、第1ナットから第2ナットに振動や衝撃が伝わる間に振動や衝撃を消去して、第1ナットと第2ナットの緩みを防止することができる優れた強力な緩み止め防止効果を奏し得る構造が簡単にして製作性にも優れた緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項2の発明によれば、前記薄肉円筒部の長さLをそのネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内にすると共に、薄肉円筒部の厚みHをそのネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内にしたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項3の発明によれば、第1ナットと第2ナットとを一体の部材から薄肉円筒部の厚みHよりも薄くした連成部で前記第1ナットの押圧受面と前記第2ナットの前記薄肉円筒部の押圧面とを連成させて構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項4の発明によれば、第1ナットと第2ナットとを一体の部材から連成した連成部を設けた連成部から破断させて、第2ナットの薄肉円筒部との連成部の破断した先端を押圧面として、第1ナットの連成部の破断した面を押圧受面となるように構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項5の発明によれば、第2ナットの薄肉円筒部を外部の障害物から保護する共に、第1ナットの雌ネジ孔の拡張を防止するようにした保護部を第1ナットに設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項6の発明によれば、第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接する際に、前記薄肉円筒部のねじり圧縮変形を容易にするところの凹溝を、前記薄肉円筒部の外周面に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の請求項7の発明によれば、第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接してもその前記薄肉円筒部を破損することなく圧縮変形させた際に、前記薄肉円筒部の端面の破損を防止するところの補強部を、前記薄肉円筒部の外周部に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナットを提供できた。
本発明の一実施形態例を示す、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを、雄ネジ体に螺合させない状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示す緩み止めナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例の緩み止めナットの第2ナットのみで被締結部材を締結した状態を示す要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 図4の右側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナットの正面図である。 図6の左側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットの寸法図である。 本発明の他実施形態例その1を示し、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットで被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その3を示し、緩み止めナットの第2ナットの拡大正面図である。 本発明の他実施形態例その4を示し、緩み止めナットで被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その5を示す、第1ナットと第2ナットに連成して一体に設けた緩み止めナットを、雄ネジ体に螺合させない状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その5を示す緩み止めナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その5を示す、緩み止めナットの正面図である。 図16の右側面図である。 本発明の他実施形態例その5の応用例を示す、緩み止めナットの正面図である。 本発明の一実施形態例図8で示す緩み止めナット及び従来例の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果を示す図である。 本発明の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法を説明する図である。 図19で説明した従来例(例えば特許文献1)のP1.P2特性を測定した緩み止めナットの構造を示す図である。
以下、本発明の実施形態例と従来例の緩み止めナットについて、図1〜図21に基づき詳説する。
図1〜図8に示す本発明の一実施形態例の緩み止めナット1は、図1に示すように、雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合される第1ナット2と、この第1ナット2に組合わせて設けた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合される第2ナット3とからなる、第1ナット2及び第2ナット3を形成している。
第1ナット2は、図1〜図2及び図7に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部2Aと、この第1締結回転部2Aの外端面に形成された部材締結面2Bと、第1締結回転部2Aの内端面側に形成された第2ナット3に対向する第1対向面2C−2と、第1締結回転部2A内の中央に設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ2Dと、前記第1対向面2C−2に設けられ、かつ、後述する第2ナット3の薄肉円筒部3Cが入るところの凹部2Eの内底を押圧受面2Cとして、押圧受面2Cに一体に保護部2Fを備える構成としてある。第1締結回転部2Aの外周は、図7に示すように、六角形状としてある。また、凹部2Eは、図1と図2と図7からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状としてある。
第2ナット3は、図1〜図2及び図に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部3Aと、この第2締結回転部3Aの内端面側に形成されて第1ナット2の第1対向面2C−2と対向する第2対向面3Bと、この第2対向面3Bに設けた円筒状の厚みHと長さLを有する薄肉円筒部3Cと、更に、薄肉円筒部3Cの先端には押圧面3C−2を設けて、この薄肉円筒部3C及び第2締結回転部3A内の中央に連続して設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ3D−1、3D−2を少なくとも備える構成としてある。第2締結回転部3Aの外周は、図5に示すように、六角形状としてある。なお、第2締結回転部3A内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−1と表示し、かつ、円筒状の厚みHと長さLを有する薄肉円筒部3C内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−2と表示することとする。
第1ナット本体2の第1対向面2C−2に設けた凹部2E内に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cを圧接させた際に、その薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2Eの押圧受面2Cに圧接可能となるように、薄肉円筒部3Cと凹部2Eの大きさが設定される。また、第1ナット2及び第2ナット3は、市販品M8ナットの材料などを加工することにより製作される。すなわち、第1ナット2は、市販品M8ナットの材料の一側面を切削又は型加工することで凹部2Eを設けることにより、かつ、第2ナット3は、市販品M8ナットの材料の外周の一部が径小となるように切削又は型加工することで薄肉円筒部3Cを設けることより、それぞれを簡単に製作できる。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図2に示すように、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第1ナット2の部材締結面2Bにより被締結部材Y、Zを締付けた後に、第1ナット2に突き合せた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第2ナット3の薄肉円筒部3Cを、第1ナット2の第1対向面2C−2側に移動させることで、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cを圧接させてその薄肉円筒部3Cをねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形しながら雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるようになる。このときの薄肉円筒部3Cは圧縮して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接しても破損しない形状の厚みH寸法と幅L寸法にしてある。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図1及び図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1を、第1対向面2C−2から凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って内径が縮小するようにした傾斜面とすると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cは、図4と図5からわかるように、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1を薄肉円筒部3C内の中央に設けた雌ネジ3D−2の中心軸線と水平となる円筒状とし、しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの外径Dは、第1ナット2の凹部2E内の押圧受面2Cに圧接させてもその薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。
また、押圧面3C−2が押圧受面2Cに圧接した時に押圧面3C−2の周囲には押圧面3C−2が、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1に当って雌ネジ孔の拡張変形するのを防止するために、押圧面3C−2と内周壁2E−1との間には隙間が生じるように設定してある。
なお、この凹部2Eの設定に当っては、第1ナット2と第2ナット3との締付締結作業が完了した際に、第1対向面2C−2と第2対向面3Bとの間にも隙間が必要である。
本発明において試作品の実験結果から明らかになったことは、第1ナット2の凹部2Eは、図1と図2と図7からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状としてあることは、
薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2の雌ネジ2Dが拡張変形したり、その周辺に張力が加わって雌ネジ2Dのネジ孔の部分が変化して緩み止めナットの緩み止め効果を悪くすることが実験結果から判ったので、その変化を防止する強度を増すために第1ナット2の押圧受面2Cの外周部分を円錐台状、又は、後記する円周状に保護部2Fを設けて補強すると共に、さらに、この補強部分の保護部2Fは薄肉円筒部3Cに外部から障害物が当らないように保護する役目もするものである。
第2ナット3は第2締結回転部3Aの先に長さLをそのネジのネジピッチの150%〜700%にして雌ネジ3D−2と平行に薄肉円筒部3Cを設けることによって、第2締結回転部3Aを締付けると薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2は第1ナット2の押圧受面2Cに当り薄肉円筒部3Cはねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cの長さLが短くなるように変形して、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1のネジ山を挟むように変形して雌ネジ3D−2と雄ネジ部W1は圧接されて雄ネジ部W1から雌ネジ3D−2の動きが阻止されて薄肉円筒部3C内でのネジの緩み止め作用効果が発生される。
さらに、この薄肉円筒部3Cをねじり圧縮することで薄肉円筒部3C内では雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1を挟むように圧接して弾性変形するが、第2締結回転部3A内では雌ネジ3D−1のネジ山は雄ネジ部W1を挟むようには圧接変形しないことによって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内とでは雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−1と雌ネジ3D−2が圧接したときの働きが異なってくる。従って、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで雌ネジと雄ネジの圧接の仕方が異なる作用を生じるものであり、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとでは一般に言う普通の緩み止め仕掛けを有しない二つのナットを用いた、一般のナットによる二重ナットと同じようなナットの緩み止め作用効果が発生する。
ことによって、第3図のように本発明の一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y,Zを締結した状態であっても、一つのナットに締結回転部と薄肉円筒部を設けると、図19の特性線S3のように締付トルクに対して戻しトルクが同じくなるようなナットの緩み止め効果を生じることを、本願発明者が発見して発明したものであって、図19の特性線S3に示すような優れたナットの緩み止め効果が得られるものである。
さらに、その結果を説明すると、第2ナットのみの第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するネジ部の緩み止め効果は、締付トルクに対し戻しトルクは図19に示す特性線S3になり締付トルクに対する戻しトルクは同値を示して、第2ナットのみで標準締付トルク13Nmの時点で13.0Nmとなり、防止策なし(防止策なしとはナットに緩み止めとなる仕掛けを設けないナットを意味する。)の場合のR特性は図19の如く標準締付トルク13Nmの時点で10,1Nmとなって、緩み止め防止策なしの場合よりも28.7%も上回っているので、第2ナットのみでの緩み止め効果が向上していることが明らかである。従って、第1ナットに第2ナットを組み合わせた締結部材を締付けた状態で振動や衝撃を与えると、始めは第1ナットが緩み始めるので、本発明では第2ナットの薄肉円筒部3Cのねじり圧縮変形部を第1ナットの押圧受面2Cで押すように働くので、薄肉円筒部3Cのねじり圧縮変形部の雄ネジに雌ネジが強く圧接するように働くようになって、第2ナットは緩まなくなる、よって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内との間に生じるネジ部の緩み止めの効果が向上するので、第2ナットの緩み止め効果が発揮されるものである。従って、本発明は第1ナットに第2ナットを組み合わせも第2ナットによるナットの緩み止め効果と振動や衝撃に耐ええる効果が得られると同時に、第1ナットの第2ナットの接触面積が小さいので、この部分は振動や衝撃を消去する作用も発生するので第1ナットから第2ナットは緩まない効果が得られるものである。
従って、本発明が成り立つ原理は第1ナット2と第2ナット3との間でも普通に一般に言う二重ナットの緩み止め作用効果を発生するナットの緩み止め作用効果と、更に、本発明は前記した第2ナット3の内部で発生する第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するナットの緩み止め作用効果によるナットの緩み止め効果によって極めて有効な緩み止めナットとなる相乗効果を発揮する緩み止めナットが得られることによって本発明は成り立つものである。
なお、本発明の二重ナットとは、従来一般に工事現場等で昔から使用している緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個用いて緩み止めとして使用していることを云うもので、始めに第1のナットを締付けた後に、次に第2のナットを締付けることによって、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って、雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することによってナットの緩み止めとなるナットの緩み止めのことを云う。
従って、このようにした緩み止めナットの第2締結回転部3Aの薄肉円筒部3Cの厚みHと薄肉円筒部3Cの長さLは次のような範囲であれば望ましいものである。
薄肉円筒部3Cの厚みHが薄すぎると薄肉円筒部3Cが破損したり、薄肉円筒部3Cが雄ネジに対する雌ネジが圧接する力が弱くなり薄肉円筒部3Cの雄ネジに対して雌ネジの緩み止めの働きが小さくなりナットの緩み止め作用効果がなくなってこの発明は成り立たなくなるものである。また、薄肉円筒部3Cの厚みHが薄くても薄肉円筒部3Cが破損しない厚みHであれば、薄肉円筒部3Cは圧縮されても薄肉円筒部3Cは雄ネジ体の雄ネジに噛合っているので、薄肉円筒部3Cの圧縮度を増せば薄肉円筒部3Cは破損することなく雄ネジ体の軸が破断するようになるものでもある。
また、薄肉円筒部3Cの厚み寸法Hが厚すぎると薄肉円筒部3Cが圧縮しても変形しなくなるので、雄ネジに対して雌ネジが挟むように圧接しなくなり薄肉円筒部3Cのみでの雄ネジに対して雌ネジの緩み止め作用効果が得られないが、薄肉円筒部3Cの厚みHは薄肉円筒部3Cを圧縮して雄ネジを雌ネジが挟むように変形するものであれば薄肉円筒部3Cの厚み寸法Hは厚ければ厚いほど緩み止めナットの緩み止め効果は向上するものである。
従って、薄肉円筒部3Cの厚みHは材質によって異なり、鉄類系では、そのネジの呼び径の7%〜25%の範囲以内で、ステンレス類系ではそのネジの呼び径の5%〜20%の範囲以内で、それぞれ設定するとよい。
また、第2ナット3の薄肉円筒部3Cは薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ部W1に当る部分の長さ部分の薄肉円筒部3Cの長さLは、その長さ部分が雄ネジ部W1に接する部分となり、第2締結回転部3Aを締付けると、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の部分の長さが長ければ長いほど雄ネジと雌ネジが接触する部分が大きくなるが、その前記接触部分の長さが短すぎると雄ネジを雌ネジで挟むように接触する部分が少なくなるので、雄ネジに対して雌ネジの動きを阻止する働きが少なくなるので、その長さは最小では、そのネジのネジピッチの150%の長さがなければ薄肉円筒部3Cでのネジの緩み止め作用効果が発揮されない、また、前記接触部分の長さが長すぎると雄ネジから雌ネジが浮き上がってしまうので、雌ネジが雄ネジを挟むように圧接する部分が少なくなるので、雄ネジに対して雌ネジの動きを阻止する働きが少なくなる恐れを生じるので、その長さは最大ではそのネジのネジピッチの700%に設定する必要がある。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1を構成する第1ナット2と第2ナット3の具体的寸法関係は、図8に示すようになっている。すなわち、第1ナット2は、第1締結回転体部2Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの入口径を11.0φに、第1ナット2の凹部2Eの内底の押圧受面2Cの径を10.7φに、第1ナット2の凹部2Eの入口(第1対向面2C−2)から第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cまでの深さを2.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの横幅寸法を3.8mmに、第1ナット2全体の横幅寸法を6.6mmに、内周壁2E−1の傾斜角度Rを約5度となるように、それぞれ設定してある。
また、第2ナット3は、図8に示すように、第2締結回転部3Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、薄肉円筒部3Cの外径寸法Dを10.5φに、薄肉円筒体部3Cの長さLを3.5mmに、第2締結回転部3Aの横幅寸法を3.6mmに、第2ナット3全体の横幅寸法を7.1mmに、薄肉円筒部3Cの厚みHを1.25mmに、それぞれ設定してある。第2ナット本体3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの径は、M8ネジ径と同じ径としてある。第2ナット3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの雌ネジのピッチは、1.25mmとしてある。また、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cの厚みH及び長さLは、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに、第2ナット3の薄肉筒部3Cが圧接することによって、その薄肉円筒部3Cが圧縮変形しても、その薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。また、この第1ナット2と第2ナット3の締付締結作業完了後において、押圧面3C−2が押圧受面2Cに押圧後は第2対向面3Bと第1対向面2C−2との間には隙間が生じるように設定してある。
また、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの厚みH及び長さLは、第2ナット3の材質が、鉄類系か、ステンレ類系等かによっても異なる。そこで、第2ナット3の材質に応じて、薄肉円筒体部3Cの厚みHを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1の呼び径の5%〜25%の範囲で、かつ、薄肉円筒部3Cの長さLを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1のネジピッチの150%〜700%の範囲以内で適宜設定するようにしている。なお、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1を構成する第2ナット3の第2締結回転部3Aから、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1に移る面部分は傾斜させても、僅かな弧状として丸みを持たせるようにしてもよく、また、その角には丸みがあってもよい。また、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1に対して直角に設けた薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2の面は多少傾斜していてもよく、また、その角は特性が変らない程度であれば角面取りがあってもよく、又は、丸みを設けてあっても本発明は成り立つものである。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の第1締結回転部2Aを工具等で回転させることで被締結部材Y、Zを締付けた後、第2ナット3の第2締結回転部3Aを工具等で回転させることで第2ナット3の薄肉円筒体部3Cを第1ナット2の凹部2E内に第2ナット3の薄肉円筒部3Cを入れると、図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cが圧接することでその薄肉円筒部3Cがねじれながら圧縮変形して、雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間とが弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられる。
ことによって、上記構成の一実施形態例の緩み止め1では、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cが圧接して第2ナット3の薄肉円筒部3Cがねじれ圧縮変形して薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接すること、及び、第2ナット3の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの作用によること、更に、第1ナット2と第2ナット3との間での重なるナットの緩み止めとなる相乗効果が生じていることによって、後述の図19の特性線S1、S2に示すような、強力な緩み防止効果を生じさせることができる。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2E内で圧縮変形した第2ナット3の薄肉円筒部3Cは変形して弾性力を有していることと、第1ナット2の凹部2Eと第2ナット3の薄肉円筒部3Cが別体であり、かつ、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第1ナット2の押圧受面2Cとの接触面が少ないことが相俟って、第1ナット2から第2ナット3への、雄ネジ体Wや被締結部材Y、Zに加えられた振動や衝撃の伝達がしにくくなっている。
なお、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合って、その噛合った部分の雌ネジのネジ山と雄ネジとの隙間が小さいので圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、また、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことは、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット3は緩み難くなっている。また、第1ナット2が緩むときは、第2ナット3の薄肉円筒部3Cのねじり圧縮した雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2を圧縮するように働くので第1ナット2は緩まなくなって、振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2側に凹部2Eを、かつ、第2ナット3側に薄肉円筒部3Cを形成するのみであって、上述した従来例のように、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させなくともよいので、生産性や製作性に優れている。しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナット2の押圧受面2Cに圧接させることで、薄肉円筒部3Cを圧縮変形させることにより、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるため、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第2締結回転部3Aとの間で、二重ナットのような緩み止め効果が生じると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cが弾性を有しているので、その薄肉円筒部3Cがスプリングワッシャの作用を奏し得るという利点を備えた緩み止めナット1が得られる。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1によれば、生産性に優れ、しかも、第1ナット2の押圧受面2Cに第2ナット3でなる薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2を押圧させてその薄肉円筒部3Cをねじれ圧縮変形させた際、第1ナット2の押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cが圧接して雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられることと、第2ナット3の前記で説明した第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとのナット緩み止め効果と、更に、第1ナット2と第2ナット3との関係による重なる緩み止めとなる相乗効果により、図19の特性線S1、S2に示すように、強力な緩み防止効果を奏し得る緩み止めナットが得られる。
次に、図19及び図20に基づき、本発明の上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と上述した従来例(本発明の説明中での従来例とは、図21で示すように、従来から知られている特許文献1記載の発明を云う。)の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果と測定方法を説明する。
図19は、上記一実施形態例を示す緩み止めナット1(本発明の一実施形態例による発明品)及び上述した従来例の緩み止めナット(従来品)につき、標準締付トルク(規定値)に対する戻しトルクを測定した結果を示した図であって、横軸を締付トルク(Nm)とし、かつ、縦軸を戻しトルク(Nm)としてある。
図19において、特性線S1は、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材を締付けた状態にした後、第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図19において、特性線S2は、図2に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみに工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。図19において、特性線S3は、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図19において、特性線P1は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図19において、特性線P2は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図19において、特性線Qは、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線(一点鎖線)を示している。
従来、実用的な振動や衝撃力を長時間与えて緩み止めナットの緩みを確かめることが、実際上は、時間や経費がかさんでしまい困難なために、緩み止めナットの緩み具合を読み取る簡易的試験として、締付トルクに対し戻しトルクがどれほど有するかによって判断することが一般に行われている。
そこで、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と上述した従来例の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法は、図20に示すところの測定方法で行うようにした。その測定方法は、図20に示すように、始めに、万力4でボルト(雄ネジ体)5を動かないように固定した上に被締結部材Yを乗せる。さらに、その被締結部材Yの上からワッシャ6を介して供試品であるM8二重ナット7をボルト(雄ネジ体)5に嵌める。さらに、そのM8二重ナット7の締付回転部にトルクレンチ8を取り付ける。その後、そのトルクレンチ8を右回転して規定値までトルクを加えた時の、そのトルクを締付トルクとして測り、かつ、逆に、そのトルクレンチ8を左回転して動き始めた時のトルクを戻しトルクとして測ることによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにした。
そして、図20に示すところの測定方法において、トルクレンチを右回転してM8二重ナットに加えるトルクの規定値を、標準締付トルクとしてある。標準締付トルクした理由は、ネジ(従来のナット)の呼び径の大きさによって、標準締付トルクが異なり、例えば、M6で5Nm、M8で13Nm、M10で25Nmなどのように標準締付トルクが規定されるので、従来、ナットは、全て少なくとも、標準締付トルクの規定値までは締付けるようにしているからである。
図20において、供試品であるM8二重ナット7に変えて、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1を設置し、あるいは、上述した従来例の緩み止めナットを設置することによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにすることで、図19の測定結果がえられた。
図19の特性線S1からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具(締付工具)を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約22.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図19の特性線P1からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約17.3Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2と第2ナット3を締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、28.9%以上も上回ることがわかる。
さらに、図19の特性線S2からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約14.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図19の特性線P2からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約12.0Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、19.1%以上も上回ることがわかる。
このことから云える事は、実際に緩み止めナットを使用して振動や衝撃等で緩み始めるのは後から締付け取付けた第2ナットから緩み始めるので、この第2ナットが緩み難いことが振動や衝撃に耐えられることで実用上において重要である。
さらに、上記一実施形態例の緩み止めナット1では、図19に示すように、特性線S1及び特性線S2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線を示す特性線Qよりも上方に位置しており、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させる場合でも、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させる場合でも、大きな戻りトルクが得られることがわかる。
更に、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態の場合の締付トルク及び戻しトルクは、図19の特性線S3に示すようになり、上記従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材を締付けた状態にした後、第2ナットのみに工具をかけてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルクに対する戻しトルクの大きさは図19の特性線P2よりも遥かに上回っているので、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた場合であっても、緩み止めとなる効果が大きいことがわかる。
その点、図19に示すように、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けて、その第2ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクを示す図19の特性線P2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる図3の第2ナット3のみの実施形態例にして測定したトルク特性線S3と同じ仮想トルク線を示す特性線Qよりも下方に位置しており、上述した従来例の緩み止めナットでは、上記一実施形態例の緩み止めナット1のような大きな戻しトルクが得られないことがわかる。
以上のように、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、上述した従来例の緩み止めナットよりも優れたナットの緩み止めを防止する効果が得られると共に、市販品のナットの材料からも切削加工や型加工によって簡単に製作することができて、品質管理も容易となり、かつ、生産性が向上する。なお、上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、圧縮変形した薄肉筒体部3Cの外周が第1ナット2の凹部2Eによって覆われた状態になるので、第2ナット3の締結完了時は薄肉筒体部3Cを外部の障害物から保護することができるものである。
さらに、従来例の二つからなる緩み止めナットは、第1ナットのテ―パ状の外周面を有する微少量偏心させた凸部に、第2ナットの凹部の内周面をネジ孔と同心状に設けたテ―パ状の凹部をねじり入れると、第2ナットのネジ孔周りが拡張変形するので第2ナットが緩み易くなる。これによって、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に雌ネジが嵌っての隙間が大きくなってガタツキが大きくなり雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に雌ネジが圧接する働きが小さくなることによって、ナットの緩み止めとなる効果が少なくなるように推測される。
図9は本発明の他実施形態例その1の緩み止めナット1Xを示す。図9において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。この発明が上記一実施形態例の緩み止めナット1と異なるのは第1ナット2Xの凹部2Eの内周壁2E−1から押圧受面2Cに至る部分の内周壁2E−1を直進面として図9に示すように、第1ナット2Xの第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。このようにして、薄肉円筒部3Cを外部から受ける障害物から保護するものである、また、このようにすれば、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2Xの雌ネジ2Dが拡張変形したり、その周辺に張力が加わっても雌ネジ2Dのネジ孔の部分の変化を少なくして強度を増すために円周状に覆った保護部2Fを設けて雌ネジ2Dのネジ孔周辺を補強することと、この補強部分は薄肉円筒部3Cに外部からの障害物が当らないように保護する役目もするものである。
図10及び図11は、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20を示す。図10及び図11において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20と上記一実施形態例の緩み止めナット1とは、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cと第1ナット2の第1対向面に設けた凹部2Eの形状を異にするのみで、他は全く同一である。
すなわち、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20は、図10及び図11に示すように、第1ナット21と第2ナット22とからなり、その第2ナット22の薄肉円筒体部3Cの先端外周部に、その薄肉円筒部3Cの先端面の破損を防止するためのリング状の補強部23を設け、しかも、図11に示すように、第1ナット21の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。それに対して、上記一実施形態例の緩み止めナット1は、図1及び図2に示すように、第1ナット2と第2ナット3とからなり、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの先端外周部にリング状の補強部23を設けず、しかも、第1ナット2の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの形状が円錐台状となるようにその凹部2Eの内側壁2E−1を傾斜面としている。
本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20によれば、図11に示すように、第2ナット22の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が、第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに、強く圧接するようになり、しかも、薄肉円筒部3Cが第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに強く圧接することで、その薄肉円筒部3Cの外周3C−1が圧縮変形しても、その押圧面3C−2から薄肉円筒部3Cが破損するのを補強部23によって阻止されるようにしてある。
図12は、本発明の他実施形態例その3の緩み止めナット30を示す。図12において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その3の緩み止めナット30と上記一実施形態例の緩み止め1とは、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの外周面3C−1の形状が異にしているのみで、他は全く同一である。
すなわち、本発明の他実施形態例その3の緩み止めナット30(図12参照)は、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2と同じ構造とした第1ナット(図示せず)と、第2ナット31とからなり、第2ナット31の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナットの押圧受面2C側に押し付けた際に、薄肉円筒部3Cの圧縮変形を容易にするリング状の凹溝32、32Aを、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1に一個以上設けるようにしている。それに対して、図1から図3に示す上記一実施形態例の緩み止めナット1では、第2ナット3の薄肉筒部3Cの外周面3C−1にはリング状の凹溝32、32Aを設けていない。
本発明の他実施形態例その3の緩み止めナット30によれば、凹溝32、32Aによって、薄肉円筒部3Cに厚い部分と薄い部分が形成された状態になるので、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナットの押圧受面2Cに押し付けた際に、その薄肉円筒部3Cの圧縮変形が容易に行えるようになる。
本発明において、第1ナット2、2X、21、31の凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの厚みは、第1ナット2、2X、21、31を締付けたときに第1ナット本体2、2X、21、31の締付け保持機能が有効に働く厚みを有する厚みとしている。
図13は、本発明の他実施形態例その4の緩み止めナット40を示す。図13において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その4の緩み止めナット40は、第1ナット41と第2ナット42とからなっている。
本発明の他実施形態例その4の緩み止めナット40の第1ナット41は、図13に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部2Aと、この第1締結回転部2Aの外端面に形成された部材締結面2Bと、第1締結回転部2Aの内端面側に形成された第2ナット42に対向する押圧受面2Cと、第1締結回転体部2A内の中央に設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ2Dとを備える構成とし、第2ナット42に対向する押圧受面2Cに、第2ナット42の薄肉円筒部3Cが入る保護部2Fを有した凹部2Eを、上記一実施形態例その1の緩み止めナット1の第1ナット2のように設けていない。
また、本発明の他実施形態例その4の緩み止めナット40の第2ナット42は、図13に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3と同じように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部3Aと、この第2締結回転部3Aの内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面3Bと、この第2対向面3Bに設けた円筒状の厚みHと長さLを有する薄肉円筒部3Cと、この薄肉円筒部3C及び第2締結回転部3A内の中央に連続して設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ3D−1、3D−2を、少なくとも備える構成としてある。
本発明の他実施形態例その4の緩み止めナット40によれば、第1ナット41の第1締結回転部2Aを工具等で回転させることで被締結部材Y、Zを締付けた後、第2ナット42の第2締結回転部3Aを工具等で回転させることで第2ナット42の薄肉円筒部3Cを第1ナット41の押圧受面2Cに直接圧接させると、図13に示すように、第2ナット42の薄肉円筒部3Cがねじり圧縮変形して、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形しながら雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接するようになる。
そのため、薄肉円筒部3Cは、雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合ってその噛合った部分の隙間が小さいので圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、また、第1ナット41と第2ナット42との接触面積が小さいことは、第1ナット41から第2ナット42に振動や衝撃が伝達しにくく第2ナット42は緩み難くなっているので雄ネジ体Wや被締結部材Y、Zに振動や衝撃が加えられても緩むことない。
さらに、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40では、第1ナット41の押圧受面2Cに、第2ナット42の薄肉円筒部3Cが入る保護部2Fを有した凹部2Eを設ける必要性がないので、第1ナット41として、市販品のナットを加工することなく、その市販品のナットをそのまま流用することもできるため、さらに生産性が向上する。
しかも、第2ナット42の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナット41の押圧受面2Cに直に圧接させることで、薄肉円筒部3Cはねじり圧縮されて第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間においても、第2締結回転部3A内の雄ネジ部W1に対する雌ネジ3D−1が圧接する作用は第2締結回転部3Aは変形しないので雌ネジ3D−1のネジ山は雄ネジ部W1を雌ネジ3D−1で挟むようには圧接変形しないことと、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内とでは雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−1と雌ネジ3D−2が圧接したときの働きが異なってくる作用によって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとでは一般に言う普通の緩み止め作用を有しない二つのナットを用いた、一般のナットによる二重ナットと同じようなネジの緩み止め作用効果が発生することによることと、この第1ナット41と第2ナット42との間でも二重ナットによる緩み止め作用効果が生じるので、その相乗効果によって、緩み止めナットとなるものである。また、第2ナット42の薄肉円筒部3Cが締付け状態で弾性を有しているので、その薄肉円筒部3Cがスプリングワッシャの作用を奏し得るものである。
さらに、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40であっても、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させて被締結部材Y、Zを締付けた後に、その雄ネジ体Wから第2ナット42を取り外し、再度、第2ナット42を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた後、その第2ナット本体42の薄肉円筒部3Cを第1ナット41の押圧受面2Cに直に圧接させることによっても、強力な緩み止め効果が保持されている。したがって、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40でも、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1から外して、何回も使用することが可能である。
さらに、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40では、図13に示すように、最初に第1ナット41を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させて被締結部材Y、Zを締付けた後に、第2ナット42を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させてその第2ナット42の薄肉筒体部3Cを第1ナット41の押圧受面2Cに圧接させるようにしているが、これに限定されない。すなわち、最初に第1ナット41を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させて被締結部材Y、Zを締付けた後に、取外して、部材締結面2B側と押圧受面2C側を逆に取付けて、その側面に、第2ナット42の薄肉円筒部3Cを圧接(押圧)するようにしてもよい。
さらに、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40において、第2ナット42の薄肉筒体部3Cの押圧面3C−2の部分を半円形状とすれば、第1ナット41の押圧受面2Cと第2ナット42の薄肉円筒体部3Cの押圧面3C−2との接触面積をより小さくすることが可能であって、第1ナット41で受けた振動や衝撃が2ナット42に伝達しにくくなるので、緩み止め効果をより向上させることができる。
さらに、本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット40において、第2ナット42の押圧面3C−2が圧接する第1ナット41の押圧受面2Cが多少は傾斜していても問題なく、緩み止め効果が得られる。
図14は、本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50を示す。図14において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50は、第1ナット51と第2ナット52とからなり、第2ナット52の第2対向面3Bに設けた薄肉円筒部3Cの先端側と第1ナット51の押圧受面2C側とが、薄肉円筒部3Cの厚さHよりも薄い連成部Uにより連成されるように、第2ナット52と第1ナット51を一体形成すると共に、第2ナット52の薄肉円筒部3Cの先端側を第1ナット51の押圧受面2C側に向かって締付けた際、連成部Uを破断させて、その破断した連成部Uの薄肉円筒部3Cの先端側を、第1ナット51の押圧受面2C側に圧接させることで、薄肉円筒部3Cを雄ネジ体Wの軸方向にねじり圧縮変形させて薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山に圧接させる構成としたものである。
本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50の第1ナット51は、本発明の一実施形態例の第1ナット2のように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部2Aと、この第1締結回転部2Aの外端面に形成された部材締結面2Bと、第1締結回転部2Aの内端面側に形成された第2ナット52に対向する押圧受面2Cと、第1締結回転部2A内の中央に設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ2Dとを備える構成としてある。
また、本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50の第2ナット52は、本発明の一実施形態例の第2ナット3のように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部3Aと、この第2締結回転部3Aの内端面側に形成された第1ナット本体51に対向する第2ナット52の第2対向面3Bと、この第2対向面3Bに設けた薄肉円筒部3Cと、この薄肉円筒部3C及び第2締結回転部3A内の中央に連続して設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ3D−1、3D−2を備える構成としてある。
本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50では、第2ナット52の第2対向面3Bに設けた薄肉円筒部3Cの先端側と第1ナット51の押圧受面2C側とを連成する連成部Uを、第2ナット本体52の薄肉円筒部3Cの先端側と第1ナット51の押圧受面2Cとの間に溝Gが形成される如く第2ナット本体52と第1ナット51を一体形成することにより、作られる(図14参照)と共に、第2ナット本体52の第2締結回転部3A内に形成される雌ネジ3D−1及び薄肉円筒部3C内に形成される雌ネジ3D−2並びに第1ナット51の第1締結回転部2A内に形成される雌ネジ2Dは、雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合するように同じ仕様で作られている。
本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50は、最初に第1ナット51の第1締結回転部2Aを工具等で回転させることによって部材締結面2Bで被締結部材Y、Zを締付けた後、第1ナット51と第2ナット52は、ある締付トルクになるまで締付けると連成部Uは破断するように連成部Uの外径寸法を設定しておいて、更に、締付トルクを増しても前記薄肉円筒部3Cは破損することなく、雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形しながら雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジの山を挟むように圧接させるようになる。このときの薄肉円筒部3Cは圧縮して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接しても破損しない形状の厚みHと長さLにしてある。
本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50は、緩み止め効果が増すように薄肉円筒部3Cの外径Dと長さLを設定しておいて、ある目標の締付トルクで第2締結回転部3Aを締付けると連成部Uが破断するように連成部Uの厚み外径寸法D1の厚みを設けておいて、連成部Uの溝外径D1を薄肉円筒部3Cの外径Dよりも小さくした連成部Uは第2ナット52を締付けることにより第1ナット51を目標の締付トルクまで締付けると連成部Uが破断するようにするもので、更に、第2ナット52を締付けると締付トルクによって薄肉円筒部3Cの部分で緩み止め効果がでるように薄肉円筒部3Cの厚みHを設定するものである。
従って、本発明が成り立つ原理も前記実施例で説明してきたものと同じように、第1ナット51と第2ナット52との間でも普通に一般に言う二重ナットの緩み止め作用効果を発生するナットの緩み止めとなる作用効果と、更に、第2ナット52内部の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するナットの緩み止めとる作用効果によるナットの緩み止め効果によって,極めて有効な緩み止めナットとなる相乗効果を発揮する緩み止めナットが得られることによる働きによって、本発明の緩み止めナットを得ることができるものである。
また、図16で示すように表示部Pは着色等によって設けておけば、表示線がずれることで一眼で締付けが完了しているか否かがわかる説明例でもある。
さらに、本発明の他実施形態例その5を示す緩み止めナット50では、第1ナット51の押圧受面2Cに、第2ナット52の薄肉円筒部3Cが入る凹部2Eを設けなくてもよく、第1ナット51及び第2ナット本体52を一体の材料から容易に一体形成できるので、製作が容易であって、生産性に優れている。
しかも、第2ナット52の薄肉円筒部3Cの先端側の切れた面を押圧面3C−2として、第1ナット本体51の切れ面を押圧受面2Cとして切れ面同士を直に圧接させることで、薄肉円筒部3Cはねじり圧縮されて第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間においても、第2締結回転部3A内の雄ネジ部W1に対する雌ネジ3D−1が圧接する作用は第2締結回転部3Aは変形しないので雌ネジ3D−1のネジ山は雄ネジ部W1を雌ネジ3D−1で挟むようには圧接変形しないことと、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内とでは雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−1と雌ネジ3D−2が圧接したときの働きが異なってくる作用によって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとでは、前記に説明しているように、一般に言う普通の緩み止め作用を有しない二つのナットを用いた、一般のナットによる二重ナットと同じようなナットの緩み止めとなる作用効果が発生することと、この第1ナット51と第2ナット52との間でも二重ナットによる緩み止め作用効果が生じるので、その相乗効果によって、ナットの緩み止めとなるものである。また、前記に説明しているように、第2ナット52の薄肉円筒部3Cが締付け状態で弾性を有しているので、その薄肉円筒部3Cがスプリングワッシャの作用を奏し得るものである。
なお、上記構成の他実施形態例その5を示す緩み止めナット50の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合って、その噛合った部分の隙間が小さいので圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、また、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことは、第1ナット51から第2ナット52に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット52は緩み難くなっている。また、第1ナット51が緩むときは第2ナット52の薄肉円筒部3Cのねじり圧縮した雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2で圧縮するように働くので第1ナット51は緩まなくなって、第1ナット51から第2ナット52に振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
さらに、第1ナット本体51と第2ナット52が連成部Uで一体に連成しているので、第1ナット51の押圧受面2Cは連成部Uが切離れた面になる、また、第2ナット52の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2においても連成部Uの切離した面が薄肉円筒部3Cの先端となって押圧面3C−2となるものである。
さらに、本発明の他実施形態例その5を示す緩み止めナット50であっても、第1ナット本体51と第2ナット52を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させて被締結部材Y、Zを締付けた後に、その雄ネジ体Wから第2ナット52を取り外し、再度、第2ナット52を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた後、その第2ナット52の薄肉円筒部3C押圧面3C−2を第1ナット51の押圧受面2Cに直に圧接させることもできるので雄ネジ体Wの雄ネジ部W1から第1ナット51と第2ナット52を外しても緩み止めナット50は、第2ナット52の薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有しているので何回も使用することが可能である。
さらに、本発明の他実施形態例その5で示す緩み止めナット50では、前記実施例と同じく二つを別々に構成した緩み止めナットよりも次のような利点があるものである。
(イ) 第1ナット51と第2ナット52が一体形成だから緩み止めナット50が製作し易く生産性が良い。
(ロ) 第1ナット51と第2ナット52に表示部などを設けておくと第1ナット51をある必要トルクで締付けた後、連成部Uを破断させて第2ナット52をさらに締付けることで薄肉円筒部3Cを効果的に働かせるようにできて緩み止めナット50の緩み止め効果を向上することができる。
(ハ) 連成部Uの溝外径D1を設定して締付トルクの大小で連成部Uが破断することによる表示部Pを設けておくと、第1ナット51と第2ナット52の締付トルクの管理が目安で容易にできるので緩み止めナットの締め忘れなどの事故を防止できる。
(二) 緩み止めナット50は一度使用して切り離し後も切れ面が凹凸があってもこすり合わせると、合わせ面は馴染み多少斜めであっても第1ナット51と第2ナット52は使用できる。
(ホ) 連成部Uの外径寸法D1の設定によって締付トルクに対して戻しトルクの大きさを決めて設
定することができる。
図18は、本発明の他実施形態例その5の緩み止めナット50の応用例を示すもので、図18においては第1ナット51の部材締結面2Bを被締結部材Y、Zに接し易くするために、部材締結面2B部を大きく設けたことと、連成部Uを設けるのに第1ナット51と第2ナット52の連成部を外径側と内径側の両面に溝Gを設けるものでそれ以外の他は緩み止めナット50と同一である。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第1ナット2、2X、21、41、51の外形状及び第2ナット3、3X、22、31、42、52の外形状を、六角形状としているが、締付工具が使用できる形状であれば良く、丸形状でも良い。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナット3、3X、22、31、42、51の薄肉筒部3Cは弾性を有しているので一度使用した緩み止めナットを繰り返し使用しても性能が低下しないので何回しても使用できることを確かめているものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、本発明が成り立つ一つの要因は次の通りでもある。すなわち、一般に工事現場等で昔から使用している従来の緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個使用して、始めに一つの第1のナットを締付けた後に、もう一つの第2のナットを締付けることによって、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することからナットの緩み止めとなる作用が発生するものである。
しかし、従来例で説明した図21で示す例えば特許文献1のものは、その前記ナットの緩み止めとなる作用に更に、軸の径方向に偏心を有することで偏心部を軸の径方向に強く圧接させることによって前記ナットの緩み止めとなる作用よりも緩み止めとなる作用を増している効果はある緩み止めナットであるが、後から締付ける凹みを有する第2ナットは、第1ナットの凸部に嵌ると第2ナットのネジ孔が拡張変形する方向に力が働き第2ナットのネジ孔が拡張変形するためか、第2ナットのみでは著しく、締付トルクに対して戻しトルクの特性が低下する欠点を有するものである。
本発明は昔から使用している従来の一般の普通の二つのナットの組合せによる二重ナットの作用と同じで、この発明では第1ナット2、2X、21、41、51と第2ナット3、3X、22、31、42、52による緩み止め作用と、更に、第2ナット3、3X、22、31、42、52のみによる図3に示す実施形態の第2ナット3、3X、22、31、42、52のみの特性によって、図19で示すように、締付トルクに対して戻しトルクは特性線S3のように向上することによって、遥かに前記従来例(図21で示す)特許文献1のP1、P2特性よりも優れた特性を得ることが可能となったものである。
従って、第2ナットに薄肉円筒部3Cを設けることで、第2ナットは第2締結回転部3Aに対し薄肉円筒部3Cがねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cが変形して、第2ナットの雌ネジのネジ山と雄ネジ体のネジ山がそれぞれ異なって圧接して生じる第2ナットの内部の緩み止め効果を有することによって、第2ナット3、3X、22、31、42、52の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間で雌ネジ3D−1、3D−2のネジ山と雄ネジ体Wの雄ネジW1との間にナットの緩み止めとなる作用が生じるものである。
本発明の緩み止めナットは第1ナットと第2ナットによる二重ナットの緩み止め効果と第2ナットの内部の第2締結回転部と薄肉円筒部との間で発生する緩み止め作用効果による、この二つの緩み止めとなる相乗効果が働くことによって、ナットの緩み止めナットの緩み止めとなる効果を向上させることができる発明である。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、第1ナット2、2X、21、41、51及び第2ナット3、3X、22、31、42、52の材質及び形状を限定することなく、材質及び形状を適宜選定することで、緩み止め効果をさらに一層向上させることが可能である。
1 本発明の一実施形態例の緩み止めナット
1X 本発明の一実施形態例その1を示す緩み止めナット
2 第1ナット
2X 本発明の他実施形態例その1の第1ナット
2A 第1締結回転部
2B 部材締結面
2C 押圧受面
2C-2 第1対向面
2D 雌ネジ
2E 凹部
2E−1 内周壁
2F 保護部
3 第2ナット
3X 本発明の他実施形態例その1の第2ナット
3A 第2締結回転部
3B 第2対向面
3C 薄肉円筒部
3C−1 外周面
3C−2 押圧面
3D−1、3D−2 雌ネジ
20 本発明の他実施形態例その2を示す緩み止めナット
21 本発明の他実施形態例その2の第1ナット
22 本発明の他実施形態例その2の第2ナット
23 補強部
30 本発明の他実施形態例その3を示す緩み止めナット
31 本発明の他実施形態例その3の第2ナット
32、32A 凹溝
40 本発明の他実施形態例その4を示す緩み止めナット
41 本発明の他実施形態例その4の第1ナット
42 本発明の他実施形態例その4の第2ナット
50 本発明の他実施形態例その5示す緩み止めナット
51 本発明の他実施形態例その5の第1ナット
52 本発明の他実施形態例その5の第2ナット
D 外径
D1 溝外径
H 薄肉円筒部の厚み
L 薄肉円筒部の長さ
G 溝
U 連成部
P 表示部
Y、Z 被締結部材
W 雄ネジ体
W1 雄ネジ部
上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させる必要があり、製作性が悪いという問題がった。また、上記に記載の緩み止めナットでは、偏心による二つの部品の組合せであるので、実用に際しては偏心を作りだすため製造に精度を要すために手間がかかり、二つの部品の組合せによる経時変化等の問題を生じ易く、品質管理も大変になるという課題もあった。
上記特許文献5は、薄肉部が破断して圧縮することによって、薄肉部の締付けが完了していることを確認する(薄肉部を薄くすることで、薄肉部を破断させることにより、一定の締付トルクを得る)ようにしたものであって、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささり緩み止めになることは認められるが、破壊してしまうほど薄肉部が薄いので、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささる前に、締付けると浮き上がってしまうため、緩み止めナットの効果は殆んど得られないものであるという課題があった。
さらに、その結果を説明すると、第2ナットのみの第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するネジ部の緩み止め効果は、締付トルクに対し戻しトルクは図19に示す特性線S3になり締付トルクに対する戻しトルクは同値を示して、第2ナットのみで標準締付トルク13Nmの時点で13.0Nmとなり、防止策なし(防止策なしとはナットに緩み止めとなる仕掛けを設けないナットを意味する。)の場合のR特性は図19の如く標準締付トルク13Nmの時点で10,1Nmとなって、緩み止め防止策なしの場合よりも28.7%も上回っているので、第2ナットのみでの緩み止め効果が向上していることが明らかである。従って、第1ナットに第2ナットを組み合わせ締結部材を締付けた状態で振動や衝撃を与えると、始めは第1ナットが緩み始めるので、本発明では第2ナットの薄肉円筒部3Cのねじり圧縮変形部を第1ナットの押圧受面2Cで押すように働くので、薄肉円筒部3Cのねじり圧縮変形部の雄ネジに雌ネジが強く圧接するように働くようになって、第2ナットは緩まなくなる、よって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内との間に生じるネジ部の緩み止めの効果が向上するので、第2ナットの緩み止め効果が発揮されるものである。従って、本発明は第1ナットに第2ナットを組み合わせも第2ナットによるナットの緩み止め効果と振動や衝撃に耐ええる効果が得られると同時に、第1ナット第2ナットの接触面積が小さいので、この部分は振動や衝撃を消去する作用も発生するので第1ナットから第2ナットは緩まない効果が得られるものである。
なお、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合って、その噛合った部分の雌ネジのネジ山と雄ネジとの隙間が小さいので圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、また、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことは、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット3は緩み難くなっている。また、第1ナット2が緩むときは、第2ナット3の薄肉円筒部3Cのねじり圧縮した雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2圧縮するように働くので第1ナット2は緩まなくなって、振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
なお、上記構成の他実施形態例その5を示す緩み止めナット50緩み止めナット1と同じように、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合って、その噛合った部分の隙間が小さいので圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、また、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことは、第1ナット51と第2ナット52との関係でも同じことが生じて、52第1ナット51から第2ナット52に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット52は緩み難くなっている。また、第1ナット51が緩むときは第2ナット52の薄肉円筒部3Cのねじり圧縮した雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2で圧縮するように働くので第1ナット51は緩まなくなって、第1ナット51から第2ナット52に振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
さらに、本発明の他実施形態例その5を示す緩み止めナット50であっても、第1ナット本体51と第2ナット52を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させて被締結部材Y、Zを締付けた後に、その雄ネジ体Wから第2ナット52を取り外し、再度、第2ナット52を雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた後、その第2ナット52の薄肉円筒部3C押圧面3C−2を第1ナット51の押圧受面2Cに直に圧接させることもできるので雄ネジ体Wの雄ネジ部W1から第1ナット51と第2ナット52を外しても緩み止めナット50は、第2ナット52の薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有しているので何回も使用することが可能である。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナット3、3X、22、31、42、5の薄肉筒部3Cは弾性を有しているので一度使用した緩み止めナットを繰り返し使用しても性能が低下しないので何回しても使用できることを確かめているものである。
本発明の緩み止めナットは第1ナットと第2ナットによる二重ナットの緩み止め効果と第2ナットの内部の第2締結回転部と薄肉円筒部との間で発生する緩み止め作用効果による、この二つの緩み止めとなる相乗効果が働くことによって緩み止めナットの緩み止めとなる効果を向上させることができる発明である。
本発明は、振動や衝撃が加えられる構造物に使用するのに好適な緩み止めナットに関するものである。
従来の緩み止めナットとしては、第1ナットと第2ナットとからなり、前記第1ナットには、ネジ孔の周りにテ―パー状の外周面を有する凸部が形成され、前記凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させ、かつ、前記第2ナットには、第1ナットの凸部が嵌合する凹部がネジ孔周りをテ―パー状にして形成され、前記凹部の内周面を前記ネジ孔と同心状とするテ―パー状に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、下部ナットのボルトの入る周辺傾斜凹部を設け、かつ、上部ナットのボルトの入る周辺凸部を設けて、この凸部を傾斜凹部にねじ込むようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本締め用ナットとロック用ナットの共回りを防止しながら両ナットを締合わせるために、ロック用ナットの締付け方向の先端に環状突部を軸方向端面の面積よりも小さく形成して両ナットの座面を突き合わせることで締付けるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、上部1と下部2との間に形成された凹部3とから構成された緩み止めナットであって、その緩み止めナットを、ボルトに嵌めて締めた後、さらに、上部1を約10度〜15度回転させることで、凹部3が伸びてネジ山を変形させることにより緩みを止めるようにしたネジ山の変形緩み止めナットとなっており、このネジ山の変形緩み止めナットは上部1と下部2の二つのネジ部が働いて、ナットの緩み止めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、ナットの後方端側に設定された締付トルク剪断により破断し、その破断後にはロックナットとして併用される定トルクを得るため溝部を設けたものが知られている(例えば、特許文献5参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本願の発明者が発明したもので、締付座面形成部と締付回転部との間に形成された薄肉部と締付座面形成部の内部にネジ無し部を設けてネジの緩み止めの効果を向上させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献6参照。)。
特開平11−6516号公報 特開2007−107716号公報 特開2003−227508号公報 特開昭61−96212号公報 実公昭60−6654号公報 特開2009−63162号公報
上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させる必要があり、製作性が悪いという問題がった。また、上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、偏心による二つの部品の組合せであるので、実用に際しては偏心を作りだすため製造精度を要すために手間がかかり、かつ、二つの部品の組合せによる経時変化等の問題が生じ易く、品質管理も大変になるという問題もあった。
さらに、上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットのネジ孔の周りに微少量偏心させたテ―パー状の外周面を有する凸部に、第2ナットのネジ孔と同心状のテ―パー状の凹部を雄ネジ体の雄ネジに螺合して挿入とすると、第2ナットの凹部が拡大変形して雌ネジ孔が拡張変形して第2ナットが緩み易くなるという問題があった。
上記特許文献2に記載された緩み止めナットでは、下部ナットのボルトの入る周辺に設けた傾斜凹部に、上部ナットのボルトの入る周辺に設けた凸部をねじり入れて、下部ナットの上面の全体が上部ナットの下面の全体を押圧する構成であるので、下部ナットの傾斜凹部を上部ナットの凸部で圧接する力が下部ナットの上面の全体と上部ナットの下面の全体が押圧することで制限されて小さくなるために、充分なナットの緩み止め効果が得られないという問題があった。
上記特許文献3に記載された緩み止めナットは、本締め用ナットとロック用ナットが共回りして緩むのを防止するために、本締め用ナットの座面にロック用ナットの先端部が当る面積を小さくすることで、本締め用ナットにロック用ナットが強く当たるようにしたものであって、ロック用ナットの締め付け方向の先端に設けた環状座面の面積を、本締め用ナットの軸方向端面の面積よりも小さく形成したにすぎず、充分なナットの緩み止め効果が得られないという問題があった。
上記特許文献4に記載された緩み止めナットでは、上部1と下部2との間に凹部3を設け、この凹部3の作用による緩み止め効果を得るようにしたものであるが、このようにすると上部1と凹部3との間、また、下部2と凹部3との間が一体であって、上部1と下部2を締付けてその凹部3がボルトに圧接する効果は認められるが、上部1と凹部3と下部2が一体であると互いに厚みが異なる接続部が盛り上がるように干渉して、ボルトに対して雌ネジが緩む方向に働き緩み止めとなる効果少なくなる(本願の発明者が試作試験して確認している)ので、充分な緩み止めとなる効果が得られないという課題があった。
上記特許文献5に記載された緩み止めナットは、薄肉部が破断して圧縮することによって、薄肉部の締付けが完了していることを確認する(薄肉部を薄くすることで、薄肉部を破断させることにより、一定の締付トルクを得る)ようにしたものであって、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささり緩み止めになることは認められるが、破壊してしまうほど薄肉部が薄いので、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささる前に、締付けると浮き上がってしまうため、緩み止め効果は殆んど得られないものであるという問題があった。
特許文献6に記載された緩み止めナットは、本願発明者が発明したものであって、緩み止めナットとして働く部分が一つになっていて、緩み止めとなるのは一つのナットの緩み止め作用に基づいているので充分に向上したナットの緩み止め効果を得ることができないという問題があった。
本発明の目的は、上記従来の緩み止めナットの問題点に鑑み、振動や衝撃が加わる構造物に使用しても強力な緩み止め効果を奏し得てナットの緩み止めとなる構造が簡単で製作性に優れた緩み止めナットを提供するにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、雄ネジ体の外周に形成された雄ネジ部に螺合させる第1ナットと、この第1ナットに隣接した状態で前記雄ネジ体の雄ネジ部に螺合される第2ナットとからなり、前記第1ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部と、この第1締結回転部の外端面に形成された部材締結面と、前記第1締結回転部の内端面側に形成された前記第2ナットに対向する第1対向面と、前記第1締結回転部内の中央に設けられて前記雄ネジ体が螺合する雌ネジを備える構成とし、かつ、前記第2ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部と、この第2締結回転部の内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面と、この第2対向面の中央に設けられて前記第2締結回転部より径小の薄肉円筒部と、この薄肉円筒部及び前記第2締結回転部内の中央に連続して設けられて前記雄ネジ体の雄ネジ部が螺合する雌ネジとを備える構成とし、しかも、前記第2ナットの薄肉円筒部の先端を押圧面とし、かつ、前記第1ナットの第1対向面に前記薄肉円筒部が入る凹部を形成し、この凹部の内底を、前記薄肉円筒部の押圧面が圧接する押圧受面とすると共に、さらに、前記第1ナットの部材締結面で、被締結部材を締付けた後、前記第2ナットの薄肉円筒部の先端の押圧面を、前記第1ナットの押圧受面に圧接させて前記第2ナットの薄肉円筒部を、破損させることなくねじり圧縮変形させることにより、前記薄肉円筒部内に形成された雌ネジのネジ山で、前記雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように圧接させる構成とした緩み止めナットにおいて、前記第2ナットの薄肉円筒部の押圧面が前記第1ナットの凹部の押圧受面に圧接した時、前記第1ナットの第1対向面と前記第2ナットの第2対向面との間及び前記凹部の内周壁と前記薄肉円筒部との間に隙間が生じる構成としたことを特徴とするものである。なお、本発明の記載中において雄ネジ体とは、ボルトなどのように軸体(シャフト)の外周に雄ネジを形成したものをいう。また、薄肉円筒部とは、円筒状の厚みと長さを有するものをいう。
さらに、請求項2の発明は、前記薄肉円筒部の長さを前記薄肉円筒部の雌ネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内に設定すると共に、薄肉円筒部の厚みを前記薄肉円筒部の雌ネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内に設定してなることを特徴とするものである。
本発明の請求項1、2の両発明によると、次の(1)〜(4)の効果が得られる。
(1)薄肉円筒部3Cの押圧面が凹部内底の押圧受面に圧接した時、凹部の内周壁2E−1と薄肉円筒部との間に隙間が生じる構成とすることで、薄肉円筒部の押圧面を押圧受面に圧接させても、薄肉円筒部の押圧面が凹部の内周壁に当たらないため、凹部の内周壁が外周方向に薄肉円筒部によって押されることがないので、第1ナットの雌ネジ孔が拡張変形して第1ナット2が弛み易くなることを防止し得る。
(2)しかも、薄肉円筒部の押圧面が凹部内底の押圧受面に圧接した時、前記第1ナットの第1対向面と前記第2ナットの第2対向面との間及び前記凹部の内周壁と前記薄肉円筒部との間に隙間が生じる構成とすることにより、薄肉円筒部先端の押圧面と凹部の内底の押圧受面とが圧接しても、第1ナットの第1対向面と第2ナットの第2対向面が接触せず、かつ、凹部の内周壁と薄肉円筒部が接触しないため、第1ナットと第2ナットとの接触面積が少なくなると共に、薄肉円筒部は弾性力を有してねじり圧縮変形していることによって、第1ナットが振動や衝撃を受けて第1ナットが緩もうとすると、第2ナットの薄肉円筒部の雌ネジが雄ネジ体の雄ネジ部に螺合して弾性力を有している部分のねじり圧縮変形している雌ネジが雄ネジ部を圧接するように働くため、第1ナットから第2ナットに振動や衝撃が伝わる間に振動や衝撃が消去される。そのために、第1ナットから第2ナットに振動や衝撃が伝達しにくくなるので、第2ナットは緩み難くなっている。
(3)その上、第1ナットの凹部内底の押圧受面に第2ナットの薄肉円筒部先端の押圧面を圧接させてその薄肉円筒部をねじれながら圧縮変形させることにより、薄肉円筒部の雌ネジのネジ山が弾性変形して雌ネジのネジ山が雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように強く圧接することによって発生する緩み止め効果と、第2ナットの第2締結回転部の雌ネジと第2ナットの薄肉円筒部の雌ネジが、雄ネジ体の雄ネジに異なって圧接することによって発生する緩み止め効果と、第1ナットと第2ナットとの間で発生する二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果によって、強力な緩み止め防止効果を奏し得る。
(4)さらに、第1ナット2は、市販品ナットの材料の一側面を切削若しくは型加工することにより凹部2Eを設けることで、かつ、第2ナット3は、市販品ナットの材料の外周の一部が径小となるように切削若しくは型加工することにより薄肉円筒部3Cを設けることで、それぞれを簡単に製作することができ、製作性が優れていると共に、品質管理も容易となって生産性を向上させることができる。
また、本発明の請求項2の発明によると、前記薄肉円筒部の長さを前記薄肉円筒部の雌ネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内にすると共に、薄肉円筒部の厚みを前記薄肉円筒部の雌ネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内にしたので、薄肉円筒部は、圧縮して雄ネジ体の雄ネジ部に圧接しても破損することなく、かつ、雄ネジ部から雌ネジが浮き上がってしまうことで、雄ネジ部を雌ネジで挟むように接触する部分が少なくなるのを阻止して、雄ネジ部に対して雌ネジの動きを阻止する働きを奏し得ると共に、雄ネジ体を破断させることのない緩み止めナットが得られる。
本発明の一実施形態例を示す、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを、雄ネジ体に螺合させない状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示す緩み止めナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例の緩み止めナットの第2ナットのみで被締結部材を締結した状態を示す要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 図4の右側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナットの正面図である。 図6の左側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットの寸法図である。 本発明の他実施形態例その1を示し、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットで被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例の緩み止めナット及び従来例の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果を示す図である。 本発明の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法を説明する図である。 従来例の緩み止めナットの構造を示す図である。
以下、本発明の実施形態例を、図1〜図14に基づき、具体的に説明する
図1〜図8に示す本発明の一実施形態例の緩み止めナット1は、図1に示すように、雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合される第1ナット2と、この第1ナット2に組合わせて設けた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合される第2ナット3とから形成されている。
第1ナット2は、図1〜図2及び図6〜図7に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部2Aと、この第1締結回転部2Aの外端面に形成された部材締結面2Bと、第1締結回転部2Aの内端面側に形成されて後述する第2ナット3の第2対向面3Bに対向する第1対向面2C−2と、この第1対向面2C−2の中央に設けられて後述する第2ナット3の薄肉円筒部3Cが入るところの凹部2Eと、第1締結回転部2A内の中央に設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ2Dを備え、凹部2Eの内底を押圧受面2Cとする構成としてある。そして、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分は、凹部2Eに入った薄肉円筒部3Cを保護する保護部2Fとしている。しかも、第1締結回転部2Aの外周は、図7に示すように、六角形状としてある。また、凹部2Eは、図1と図2と図6からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状としてある。
第2ナット3は、図1〜図2及び図4〜図5に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部3Aと、この第2締結回転部3Aの内端面側に形成されて第1ナット2の第1対向面2C−2と対向する第2対向面3Bと、この第2対向面3Bの中央に設けられて第2締結回転部3Aより径小の薄肉円筒部3Cと、この薄肉円筒部3C及び第2締結回転部3A内の中央に連続して設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ3D−1、3D−2を少なくとも備え、薄肉円筒部3Cの先端を、第1ナット2の凹部2Eの内底に形成した押圧受面2Cに圧接する押圧面3C−2とする構成としてある。しかも、第2締結回転部3Aの外周は、図5に示すように、六角形状としてある。なお、第2締結回転部3A内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−1と表示し、かつ、後述する厚みH及び長さLを有する薄肉円筒部3C内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−2と表示することとする。
第1ナット本体2の第1対向面2C−2に設けた凹部2E内に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cを入れて第2ナット3の第2締結回転部3Aを第1ナット2に向かって締付けた際に、その薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2Eの押圧受面2Cに圧接可能となるように、薄肉円筒部3Cと凹部2Eの大きさが設定される。また、第1ナット2及び第2ナット3は、市販品M8ナットの材料などを加工することにより製作される。すなわち、第1ナット2は、市販品M8ナットの材料の一側面を切削又は型加工することで凹部2Eを設けることにより、かつ、第2ナット3は、市販品M8ナットの材料の外周の一部が径小となるように切削又は型加工することで薄肉円筒部3Cを設けることより、それぞれを簡単に製作できて製作性が優れていると共に、品質管理も容易となって生産性を向上させることができる。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図2に示すように、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第1ナット2の部材締結面2Bにより被締結部材Y、Zを締付けた後に、第1ナット2に突き合せた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第2ナット3の薄肉円筒部3Cを、第1ナット2の第1対向面2C−2側に移動させることで、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2を圧接させてその薄肉円筒部3Cをねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形しながら雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるようになる。このときの薄肉円筒部3Cは圧縮して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接しても破損しない形状の厚みH及び長さLにしてある。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図1及び図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1を、第1対向面2C−2から凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って内径が縮小するようにした傾斜面とすると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cは、図4と図5からわかるように、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1を薄肉円筒部3C内の中央に設けた雌ネジ3D−2の中心軸線と水平となる円筒状とし、しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの外径Dは、第1ナット2の凹部2E内の押圧受面2Cに圧接させてもその薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。
また、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2Eの押圧受面2Cに圧接した時に押圧面3C−2の周囲には、その押圧面3C−2が、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1に当って雌ネジ孔の拡張変形するのを防止するために、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2と凹部2Eの内周壁2E−1との間には隙間が生じるように設定してある。なお、第1ナット2の凹部2Eの設定に当っては、第1ナット2と第2ナット3との締付締結作業が完了した際に、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間にも隙間が必要である。
本発明試作品の実験結果によれば、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が、凹部2Eの押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2の雌ネジ2Dのネジ孔が拡張変形したり、その周辺に張力が加わって雌ネジ2Dのネジ孔の部分が変化したりして、緩み止めナットの緩み止め効果が悪くなることがわかった。そこで、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2Eは、図1図2と図6〜図7からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状とすることにより、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が、凹部2Eの押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2の雌ネジ2Dが拡張変形したりするのを防止する強度を増すように補強している。また、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分に該当する保護部2Fは、第1ナット2の雌ネジ2Dが拡張変形したりするのを防止する強度を増すように補強する役目をすると共に、凹部2Eに入った薄肉円筒部3Cを外部から障害物が当らないように保護する役目もするものである。
第2ナット3は第2締結回転部3Aの第2対向面の中央に、長さLを雌ネジ3D−2のネジピッチの150%〜700%の範囲以内に設定してなる薄肉円筒部3Cを、雌ネジ3D−2の中心軸線と平行に設けることによって、第2締結回転部3Aを締付けると、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2は第1ナット2の押圧受面2Cに当り薄肉円筒部3Cはねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cの長さLが短くなるように変形することで、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1のネジ山を挟むように変形して雌ネジ3D−2と雄ネジ部W1は圧接されて雄ネジ部W1から雌ネジ3D−2の動きが阻止されて薄肉円筒部3C内でのネジの緩み止効果が発生される。
さらに、この薄肉円筒部3Cをねじり圧縮することで薄肉円筒部3C内では雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1を挟むように圧接して弾性変形するが、第2締結回転部3A内では雌ネジ3D−1のネジ山は雄ネジ部W1を挟むようには圧接変形しないことによって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内とでは雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−1と雌ネジ3D−2が圧接したときの働きが異なってくる。したがって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで雌ネジ3D−1、3D−2と雄ネジ部W1の圧接の仕方が異なる作用生じるものであり、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとでは一般にいう普通の緩み止め仕掛けを有しない二つのナットを用いた、一般のナットによる二重ナットと同じようなナットの緩み止め効果が発生する。
上述したように、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1と薄肉円筒部3Cの3D−2とで、雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なる作用が生じることによって、第3図のように本発明の一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締結した状態であっても、一つのナットに締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cを設けると、後述する12の特性線S3のように締付トルクに対して戻しトルクが同じくなるようなナットの緩み止め効果を生じることを、本願発明者が見出した。このことにより、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみでも、後述する従来例の特性線P2よりも優れたナットの緩み止め効果が得られることを確認できた。
さらに第2ナットのみの第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するネジ部の緩み止め効果の実験結果によれば、締付トルクに対し戻しトルクは、図12に示す特性線S3のように、締付トルクに対する戻しトルクは同値を示しており、第2ナットのみでは、標準締付トルク13Nmの時点で戻しトルクが13.0Nmとなる。それに対して、緩み止め防止策なしの場合(緩み止め防止策なしとはナットに緩み止めとなる仕掛けを設けないナットの場合をいう。)の締付トルクに対する戻しトルクの特性は、図12の特性線Rのようになり、標準締付トルク13Nmの時点で戻しトルクが10.1Nmとなる。したがって、第2ナット3のみ場合でも、緩み止め防止策なしの場合よりも、戻しトルクが28.7%も上回り、第2ナットのみでの緩み止め効果が向上していることが明らかである。
したがって、第1ナットに第2ナットを組み合わせて被締結部材X、Yを締付けた状態で振動や衝撃を与えると、始めは第1ナット2が緩み始めるので、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第2ナットの薄肉円筒部3Cのねじり圧縮部分を第1ナット2の押圧受面2Cで押すように働くので、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に強く圧接するように働、第2ナットは緩まなくなる。そのために、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内との間に生じるネジ部の緩み止めの効果が向上するので、第2ナットの緩み止め効果が発揮されるものである。それゆえに、本発明は第1ナットに第2ナットを組み合わせも、第2ナットによるナットの緩み止め効果と振動や衝撃に耐える効果が得られると同時に、第1ナット2と第2ナットの接触面積が小さいので、この部分は振動や衝撃を消去する作用も発生するため、第1ナットから第2ナットは緩まない効果が得られるものである。
上述のように、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2と第2ナット3との間でも発生するところの普通に一般に言う二重ナットの緩み止め効果と、第2ナット3第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するナットの緩み止め効果によって、きわめて有効な緩み止めナットとなる相乗効果を発揮する緩み止めナットが得られる。なお、ここで、二重ナットとは、従来一般に工事現場等で昔から使用している緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個用いて緩み止めとして使用しているものいうこの二重ナットでは、始めに第1のナットを締付けた後に、次に第2のナットを締付けることで、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って、雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することにより、ナットの緩み止め効果が発生する。このナットの緩み止め効果のことを、本願明細書では、二重ナットによる緩み止め効果と称することとする。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1における第2ナット3の薄肉円筒部3Cの厚みH及び長さLは次のような第一から第六の点を考慮して、決められる。
すなわち、第一に、薄肉円筒部3Cの厚みHが薄すぎると薄肉円筒部3Cが破損したり、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接する力が弱くなったりするので、薄肉円筒部3Cによる緩み止めの働きが小さくなる。
第二に、薄肉円筒部3Cの厚みHが薄くても薄肉円筒部3Cが破損しない厚みHであれば、薄肉円筒部3Cが雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に噛合っているので、薄肉円筒部3Cの圧縮度を増せば薄肉円筒部3Cが破損することなく雄ネジ体Wの軸が破断するようになる。
第三に、薄肉円筒部3Cの厚みHが厚すぎると薄肉円筒部3Cが圧縮しても変形しなくなるので、雄ネジ部W1に対して薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が挟むように圧接しなくなり、薄肉円筒部3Cのみでの緩み止め効果が得られないが、薄肉円筒部3Cの厚みHは、薄肉円筒部3Cを圧縮して雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2が挟むように変形するものであれば、薄肉円筒部3Cの厚みHは厚ければ厚いほど、緩み止めナットの緩み止め効果は向上する。
第四に、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の長さLが短すぎると、雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2で挟むように接触する部分が少なくなり、雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−2の動きを阻止する働きが少なくなるので、薄肉円筒部3Cの長さを、最小では、ネジ3D−2のネジピッチの150%の長さがなければ、薄肉円筒部3Cでのネジの緩み止め効果が発揮されない。
第五に、雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2で挟むように接触する部分の長さが長すぎると、雄ネジ部W1から雌ネジ3D−2が浮き上がってしまうため、雌ネジ3D−2が雄ネジ部W1を挟むように圧接する部分が少なくなるので、雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−2の動きを阻止する働きが少なくなるため、薄肉円筒部3Cの長さLを、最大では、ネジ3D−2のネジピッチの700%に設定する必要がある。
第六に、薄肉円筒部3Cの厚みHは、材質によって異なり、鉄類系では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の呼び径の7%〜25%の範囲以内で、ステンレス類系では薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の呼び径の5%〜20%の範囲以内で、それぞれ設定するとよい。
さらに、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1を構成する第1ナット2と第2ナット3の具体的寸法関係は、図8に示すようになっている。すなわち、第1ナット2は、第1締結回転体部2Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの入口径を11.0φに、第1ナット2の凹部2Eの内底の押圧受面2Cの径を10.7φに、第1ナット2の凹部2Eの入口(第1対向面2C−2)から第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cまでの深さを2.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの横幅寸法を3.8mmに、第1ナット2全体の横幅寸法を6.6mmに、内周壁2E−1の傾斜角度Rを約5度となるように、それぞれ、設定してある。
さらに、第2ナット3は、図8に示すように、第2締結回転部3Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、薄肉円筒部3Cの外径寸法Dを10.5φに、薄肉円筒体部3Cの長さLを3.5mmに、第2締結回転部3Aの横幅寸法を3.6mmに、第2ナット3全体の横幅寸法を7.1mmに、薄肉円筒部3Cの厚みHを1.25mmに、それぞれ設定してある。第2ナット本体3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの径は、M8ネジ径と同じ径としてある。第2ナット3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの雌ネジのピッチは、1.25mmとしてある。また、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cの厚みH及び長さLは、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに、第2ナット3の薄肉筒部3Cが圧接することによって、その薄肉円筒部3Cが圧縮変形しても、その薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。しかも、この第1ナット2と第2ナット3の締付締結作業完了後において、押圧面3C−2が押圧受面2Cに押圧後は第2対向面3Bと第1対向面2C−2との間には、隙間が生じるように設定してある。
さらに、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの厚みH及び長さLは、上述した第一から第六の点を考慮して、第2ナット3の材質に応じて、薄肉円筒体部3Cの厚みHを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1の呼び径の5%〜25%の範囲以内で、かつ、薄肉円筒部3Cの長さLを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1のネジピッチの150%〜700%の範囲以内で適宜設定するようにしている。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1によれば、第1ナット2の第1締結回転部2Aを工具等で回転させることで被締結部材Y、Zを締付けた後、第2ナット3の第2締結回転部3Aを工具等で回転させることで第2ナット3の薄肉円筒体部3Cを第1ナット2の凹部2E内に第2ナット3の薄肉円筒部3Cを入れると、図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cが圧接することでその薄肉円筒部3Cがねじれながら圧縮変形することにより、雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間とが弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられる。
そして、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が圧接して第2ナット3の薄肉円筒部3Cがねじれ圧縮変形して薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接することによる緩み防止効果と、第2ナット3の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの作用による、すなわち、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1と薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2とで、雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なることによる緩み防止効果と、第1ナット2と第2ナット3との間での二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果が生じているので、後述の図12の特性線S1、S2に示すような、強力な緩み防止効果を生じさせることができる。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2E内で圧縮変形した第2ナット3の薄肉円筒部3Cは変形して弾性力を有していることと、第1ナット2の凹部2Eと第2ナット3の薄肉円筒部3Cが別体であることと、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第1ナット2の押圧受面2Cとの接触面が少ないことが相俟って、第1ナット2から第2ナット3への、雄ネジ体Wや被締結部材Y、Zに加えられた振動や衝撃の伝達がしにくくなっている。
なお、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合ってその噛合った部分の雌ネジ3D−2のネジ山と雄ネジ部W1との隙間が小さいために、雌ネジ3D−2のネジ山と雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山が圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので、薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、図2示すように、第1ナット2と第2ナット3とが、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2と凹部2Eの押圧受面2Cが接触するだけであるために、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことにより、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット3は緩み難くなっている。また、第1ナット2が緩む時は、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2で圧縮するように働くので第1ナット2は緩まなくなって、振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2側に凹部2Eを、かつ、第2ナット3側に薄肉円筒部3Cを形成するのみであって、上述した従来例のように、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させなくともよいので、生産性や製作性に優れている。しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナット2の押圧受面2Cに圧接させることで、薄肉円筒部3Cを圧縮変形させることにより、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるため、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第2締結回転部3Aとの間で、二重ナットのような緩み止め効果が生じると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cが弾性を有しているので、その薄肉円筒部3Cがスプリングワッシャの作用を奏し得るという利点を備えた緩み止めナット1が得られる。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1によれば、生産性に優れ、しかも、第1ナット2の押圧受面2Cに第2ナット3でる薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2を押圧させてその薄肉円筒部3Cをねじれ圧縮変形させた際、第1ナット2の押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cが圧接して雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられることによる緩み止め効果第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なることによる緩み止め効果と、第1ナット2と第2ナット3とによる二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果により、図12の特性線S1、S2に示すように、強力な緩み止め効果を奏し得る緩み止めナットが得られる。
次に、図12及び図13に基づき、本発明の上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と図14に示す従来例の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果と測定方法を説明する。なお、従来例の緩み止めナットとは、図14に示すように、第1ナットと第2ナットとからなり、前記第1ナットには、ネジ孔の周りにテ―パー状の外周面を有する凸部が形成され、前記凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させ、かつ、前記第2ナットには、第1ナットの凸部が嵌合する凹部がネジ孔周りをテ―パー状にして形成され、前記凹部の内周面を前記ネジ孔と同心状とするテ―パー状に形成したものをいう。
12は、上記一実施形態例を示す緩み止めナット1上述した従来例緩み止めナッにつき、標準締付トルク(規定値)に対する戻しトルクを測定した結果を示した図であって、横軸を締付トルク(Nm)とし、かつ、縦軸を戻しトルク(Nm)としてある。
12において、特性線S1は、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材を締付けた状態にした後、第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
12において、特性線S2は、図2に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみに工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。図12において、特性線S3は、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
12において、特性線P1は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Yを締付けた状態にした後、第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
12において、特性線P2は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Yを締付けた状態にした後、第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
12において、特性線Qは、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線(一点鎖線)を示し、かつ、特性線Rは、緩み止め防止策なしの場合の締付トルクに対する戻しトルクの特性を示している。
従来、実用的な振動や衝撃力を長時間与えて緩み止めナットの緩みを確かめることが、実際上は、時間や経費がかさんでしまい困難なために、緩み止めナットの緩み具合を読み取る簡易的試験として、締付トルクに対し戻しトルクがどれほど有するかによって判断することが一般に行われている。
そこで、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と上述した従来例の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法は、図13に示すところの測定方法で行うようにした。その測定方法は、図13に示すように、始めに、万力4でボルト(雄ネジ体)5を動かないように固定した上に被締結部材Yを乗せる。さらに、その被締結部材Yの上からワッシャ6を介して供試品であるM8二重ナット7をボルト(雄ネジ体)5に嵌める。さらに、そのM8二重ナット7の締付回転部にトルクレンチ8を取り付ける。その後、そのトルクレンチ8を右回転して規定値までトルクを加えた時の、そのトルクを締付トルクとして測り、かつ、逆に、そのトルクレンチ8を左回転して動き始めた時のトルクを戻しトルクとして測ることによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにした。
そして、図13に示すところの測定方法において、トルクレンチを右回転してM8二重ナットに加えるトルクの規定値を、標準締付トルクとしてある。標準締付トルクした理由は、ネジ(従来のナット)の呼び径の大きさによって、標準締付トルクが異なり、例えば、M6で5Nm、M8で13Nm、M10で25Nmなどのように標準締付トルクが規定されるので、従来、ナットは、全て少なくとも、標準締付トルクの規定値までは締付けるようにしているからである。
13において、供試品であるM8二重ナット7に変えて、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1を設置し、あるいは、上述した従来例の緩み止めナットを設置することによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにすることで、図12の測定結果がられた。
12の特性線S1からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具(締付工具)を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約22.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図12の特性線P1からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約17.3Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2と第2ナット3を締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、28.9%以上も上回ることがわかる。
さらに、図12の特性線S2からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約14.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図12の特性線P2からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約12.0Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、19.1%以上も上回ることがわかる。
このことからいえることは、実際に緩み止めナットを使用して振動や衝撃等で緩み始めるのは後から締付け取付けた第2ナットから緩み始めるので、この第2ナット3が緩み難いことが振動や衝撃に耐えられることで実用上において重要である。
さらに、上記一実施形態例の緩み止めナット1では、図12に示すように、特性線S1及び特性線S2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線を示す特性線Qよりも上方に位置しており、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させる場合でも、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させる場合でも、大きな戻りトルクが得られることがわかる。
さらに、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態の場合の締付トルク及び戻しトルクは、図12の特性線S3に示すようになり、上記従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材を締付けた状態にした後、第2ナットのみに工具をかけてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルクに対する戻しトルクの大きさは、図12の特性線P2よりも遥かに上回っているので、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた場合であっても、緩み止めとなる効果が大きいことがわかる。
その点、図12に示すように、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けて、その第2ナットを回転させることにより得られる締付トルクに対する戻しトルクの大きさを示す特性線P2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる図3の第2ナット3のみの実施形態例にして測定した特性線S3と同じ仮想トルク線を示す特性線Qよりも下方に位置しており、上述した従来例の緩み止めナットでは、上記一実施形態例の緩み止めナット1のような大きな戻しトルクが得られないことがわかる。
以上のように、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、上述した従来例の緩み止めナットよりも優れたナットの緩み止めを防止する効果が得られると共に、市販品のナットの材料からも切削加工や型加工によって簡単に製作することができて、品質管理も容易となり、かつ、生産性が向上する。なお、上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、圧縮変形した薄肉筒体部3Cの外周が第1ナット2の凹部2Eによって覆われた状態になるので、第2ナット3の締結完了時は薄肉筒体部3Cを外部の障害物から保護することができるものである。
さらに、上述した従来例の二つからなる緩み止めナット(図14参照)は、第1ナットのテ―パー状の外周面を有する微少量偏心させた凸部に、第2ナットの凹部の内周面をネジ孔と同心状に設けたテ―パー状の凹部をねじり入れると、第2ナットのネジ孔周りが拡張変形するので第2ナットが緩み易くなる。これによって、雄ネジ体の雄ネジ部に雌ネジが嵌っての隙間が大きくなってガタツキが大きくなり雄ネジ体の雄ネジ部に雌ネジが圧接する働きが小さくなることによって、ナットの緩み止めとなる効果が少なくなるように推測される。
その点、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接した時、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間及び凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3Cの外周面3C−1との間に隙間が生じているので、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接させても、凹部2Eの内周壁2E−1が外周方向に薄肉円筒部3Cによって押されることがないため、第1ナット2の雌ネジ孔が拡張変形して第1ナット2が弛み易くなることがない。
しかも、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接した時、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間及び凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3Cの外周面3C−1との間に隙間が生じる構成とすることで、薄肉円筒部3C先端の押圧面3C−2と凹部2Eの内底の押圧受面2Cとが圧接しても、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bが接触せず、かつ、凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3Cが接触しないため、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が少ないと共に、薄肉円筒部3Cは弾性力を有してねじり圧縮変形しているので、第1ナット2が振動や衝撃を受けて第1ナット2が緩もうとすると、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合して弾性力を有している部分のねじり圧縮変形している雌ネジ3D−2が雄ネジ部W1を圧接するように働くため、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝わる間に振動や衝撃が消去される。そのために、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくくなるので、第2ナット3は緩み難くなっている。
次に、図9により、本発明の他実施形態例その1の緩み止めナット1Xを説明する。図9において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。この発明が上記一実施形態例の緩み止めナット1と異なるのは第1ナット2Xの凹部2Eの内周壁2E−1から押圧受面2Cに至る部分の内周壁2E−1を直進面として図9に示すように、第1ナット2Xの第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。これにより、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が押圧受面2Cに圧接した状態では、図9に示すように、薄肉円筒部3Cが、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分に該当する円筒状の保護部2Fで覆われるようになる。このようにすれば、第1ナット2Xの雌ネジ2Dの拡張変形を阻止するためにその雌ネジ2Dのネジ孔周辺を補強する役目と、薄肉円筒部3Cに外部からの障害物が当らないように保護する役目が果たされる。
さらに、図10及び図11により、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20を示す。図10及び図11において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20と上記一実施形態例の緩み止めナット1とは、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cと第1ナット2の第1対向面に設けた凹部2Eの形状を異にするのみで、他は全く同一である。
すなわち、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20は、図10及び図11に示すように、第1ナット21と第2ナット22とからなり、その第2ナット22の薄肉円筒体部3Cの先端外周部に、その薄肉円筒部3Cの先端面の破損を防止するためのリング状の補強部23を設け、しかも、図11に示すように、第1ナット21の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。それに対して、上記一実施形態例の緩み止めナット1は、図1及び図2に示すように、第1ナット2と第2ナット3とからなり、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの先端外周部にリング状の補強部23を設けず、しかも、第1ナット2の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの形状が円錐台状となるようにその凹部2Eの内側壁2E−1を傾斜面としている。
本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20によれば、図11に示すように、第2ナット22の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が、第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに、強く圧接するようになり、しかも、薄肉円筒部3Cが第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに強く圧接することで、その薄肉円筒部3Cの外周3C−1が圧縮変形しても、その押圧面3C−2から薄肉円筒部3Cが破損するのを補強部23によって阻止されるようにしてある。
上記本発明の各実施形態例では、第1ナット2、2X、21凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの厚みは、第1ナット2、2X、21締付けたときに第1ナット2、2X、21締付け保持機能が有効に働く厚みとしている。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第1ナット2、2X、21外形状及び第2ナット3、3X、22外形状を、六角形状としているが、締付工具が使用できる形状であればく、丸形状でもい。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナット3、3X、22の薄肉円部3Cは弾性を有しているので一度使用した緩み止めナットを繰り返し使用しても性能が低下しないので何回でも使用できることを確かめているものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、 本発明が成り立つ一つの要因は次の通りでもある。すなわち、一般に工事現場等で昔から使用している従来の緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個使用して、始めに一つの第1のナットを締付けた後に、もう一つの第2のナットを締付けることによって、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することからナットの緩み止めとなる作用が発生するからである。
そして、図14の従来例の構造では、その前記ナットの緩み止めとなる作用と共に、軸の径方向に偏心を有することで偏心部を軸の径方向に強く圧接させることによって前記ナットの緩み止めとなる作用よりも緩み止めとなる作用を増している効果はあるが、後から締付ける凹みを有する第2ナットは、第1ナットの凸部に嵌ると第2ナットのネジ孔が拡張変形する方向に力が働き、第2ナットのネジ孔が拡張変形するため、第2ナットのみでは、著しく、締付トルクに対する戻しトルクの特性が低下する欠点を有するものである。
その点、上記本発明の各実施形態例では、昔から使用している従来の一般の普通の二つのナットの組合せによる二重ナットの作用と同じであるところの、第1ナット2、2X、21と第2ナット3、3X、22による緩み止め作用と、さらに、第2ナット3、3X、22のみによる図3に示す実施形態の第2ナット3、3X、22のみの特性によって、図12で示すように、締付トルクに対する戻しトルクは特性線S3のように向上することによって、上述した従来例(図14参照)の特性線P2(図12参照)よりも、優れた特性を得ることが可能となったものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナットに薄肉円筒部3Cを設けることで、第2ナットは第2締結回転部3Aに対し薄肉円筒部3Cがねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cが変形して、第2ナットの雌ネジのネジ山と雄ネジ体のネジ山がそれぞれ異なって圧接して生じる第2ナットの内部の緩み止め効果を有することによって、第2ナット3、3X、22の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間で雌ネジ3D−1、3D−2のネジ山と雄ネジ体Wの雄ネジW1との間にナットの緩み止めとなる作用が生じるものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例の緩み止めナット1、1X、20は、第1ナット2、2X、21と第2ナット3、3X、22による二重ナットの緩み止め効果と、第2ナット3、3X、22の内部の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間で発生する緩み止め効果による、この二つの緩み止めとなる相乗効果が働くことによって、緩み止めナットの緩み止めとなる効果を向上させることができるものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、第1ナット2、2X、21及び第2ナット3、3X、22の材質及び形状を限定することなく、材質及び形状を適宜選定することで、緩み止め効果をさらに一層向上させることが可能である。
1 本発明の一実施形態例の緩み止めナット
1X 本発明の実施形態例その1を示す緩み止めナット
2 第1ナット
2X 本発明の他実施形態例その1の第1ナット
2A 第1締結回転部
2B 部材締結面
2C 押圧受面
2C-2 第1対向面
2D 雌ネジ
2E 凹部
2E−1 内周壁
2F 保護部
3 第2ナット
3X 本発明の他実施形態例その1の第2ナット
3A 第2締結回転部
3B 第2対向面
3C 薄肉円筒部
3C−1 外周面
3C−2 押圧面
3D−1、3D−2 雌ネジ
20 本発明の他実施形態例その2を示す緩み止めナット
21 本発明の他実施形態例その2の第1ナット
22 本発明の他実施形態例その2の第2ナット
23 補強部
D 外径
H 薄肉円筒部の厚み
L 薄肉円筒部の長さ
Y、Z 被締結部材
W 雄ネジ体
W1 雄ネジ部
本発明は、振動や衝撃が加えられる構造物に使用するのに好適な緩み止めナットに関するものである。
従来の緩み止めナットとしては、第1ナットと第2ナットとからなり、前記第1ナットには、ネジ孔の周りにテ−パー状の外周面を有する凸部が形成され、前記凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させ、かつ、前記第2ナットには、第1ナットの凸部が嵌合する凹部がネジ孔周りをテ−パー状にして形成され、前記凹部の内周面を前記ネジ孔と同心状とするテ−パー状に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、下部ナットのボルトの入る周辺に傾斜凹部を設け、かつ、上部ナットのボルトの入る周辺に凸部を設けて、この凸部を傾斜凹部にねじ込むようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本締め用ナットとロック用ナットの共回りを防止しながら両ナットを締合わせるために、ロック用ナットの締付け方向の先端に環状突部を軸方向端面の面積よりも小さく形成して両ナットの座面を突き合わせることで締付けるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、上部1と下部2との間に形成された凹部3とから構成された緩み止めナットであって、その緩み止めナットを、ボルトに嵌めて締めた後、さらに、上部1を約10度〜15度回転させることで、凹部3が伸びてネジ山を変形させることにより緩みを止めるようにしたネジ山の変形緩み止めナットとなっており、このネジ山の変形緩み止めナットは上部1と下部2の二つのネジ部が働いて、ナットの緩みを止めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、ナットの後方端側に、設定された締付トルクで剪断により破断し、その破断後にはロックナットとして併用される定トルクを得るための溝部を、設けたものが知られている(例えば、特許文献5参照。)。
さらに、従来の緩み止めナットとしては、本願の発明者が発明したもので、締付座面形成部と締付回転部との間に形成された薄肉部と締付座面形成部の内部にネジ無し部を設けてネジの緩み止めの効果を向上させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献6参照。)。
特開平11−6516号公報 特開2007−107716号公報 特開2003−227508号公報 特開昭61−96212号公報 実公昭60−6654号公報 特開2009−63162号公報
上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させる必要があり、製作性が悪いという問題があった。また、上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、偏心による二つの部品の組合せであるので、実用に際しては偏心を作りだすための製造が精度を要すために手間がかかり、かつ、二つの部品の組合せによる経時変化等の問題が生じ易く、品質管理も大変になるという問題もあった。
さらに、上記特許文献1に記載の緩み止めナットでは、第1ナットのネジ孔の周りに微少量偏心させたテ−パー状の外周面を有する凸部に、第2ナットのネジ孔と同心状のテ−パー状の凹部を雄ネジ体の雄ネジに螺合して挿入とすると、第2ナットの凹部が拡大変形して雌ネジ孔が拡張変形して第2ナットが緩み易くなるという問題があった。
上記特許文献2に記載された緩み止めナットでは、下部ナットのボルトの入る周辺に設けた傾斜凹部に、上部ナットのボルトの入る周辺に設けた凸部をねじり入れて、下部ナットの上面の全体が上部ナットの下面の全体を押圧する構成であるので、下部ナットの傾斜凹部を上部ナットの凸部で圧接する力が、下部ナットの上面の全体と上部ナットの下面の全体が押圧することで制限されて小さくなるために、充分なナットの緩み止め効果が得られないという問題があった。
上記特許文献3に記載された緩み止めナットは、本締め用ナットとロック用ナットが共回りして緩むのを防止するために、本締め用ナットの座面にロック用ナットの先端部が当る面積を小さくすることで、本締め用ナットにロック用ナットが強く当たるようにしたものであって、ロック用ナットの締め付け方向の先端に設けた環状座面の面積を、本締め用ナットの軸方向端面の面積よりも小さく形成したにすぎず、充分なナットの緩み止め効果が得られないという問題があった。
上記特許文献4に記載された緩み止めナットでは、上部1と下部2との間に凹部3を設け、この凹部3の作用による緩み止め効果を得るようにしたものであるが、このようにすると上部1と凹部3との間、また、下部2と凹部3との間が一体であって、上部1と下部2を締付けてその凹部3がボルトに圧接する効果は認められるが、上部1と凹部3と下部2が一体であると互いに厚みが異なる接続部が盛り上がるように干渉して、ボルトに対して雌ネジが緩む方向に働き、緩み止めとなる効果が少なくなる(本願の発明者が試作試験して確認している)ので、充分な緩み止めとなる効果が得られないという問題があった。
上記特許文献5に記載された緩み止めナットは、薄肉部が破断して圧縮することによって、薄肉部の締付けが完了していることを確認する(薄肉部を薄くすることで、薄肉部を破断させることにより、一定の締付トルクを得る)ようにしたものであって、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささり緩み止めになることは認められるが、破壊してしまうほど薄肉部が薄いので、薄肉部の破断した部分が雄ネジに突きささる前に、締付けると浮き上がってしまうため、緩み止め効果は殆んど得られないものであるという問題があった。
特許文献6に記載された緩み止めナットは、本願発明者が発明したものであって、緩み止めナットとして働く部分が一つになっていて、緩み止めとなるのは一つのナットの緩み止め作用に基づいているので充分に向上したナットの緩み止め効果を得ることができないという問題があった。
本発明の目的は、上記従来の緩み止めナットの問題点に鑑み、振動や衝撃が加わる構造物に使用しても強力な緩み止め効果を奏し得てナットの緩み止めとなる構造が簡単で製作性に優れた緩み止めナットを提供するにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、雄ネジ体の外周に形成された雄ネジ部に螺合させる第1ナットと、この第1ナットに隣接した状態で前記雄ネジ体の雄ネジ部に螺合される第2ナットとからなり、
前記第1ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部と、この第1締結回転部の外端面に形成された部材締結面と、前記第1締結回転部の内端面側に形成された前記第2ナットに対向する第1対向面と、前記第1締結回転部内の中央に設けられて前記雄ネジ体が螺合する雌ネジを備える構成とし、
かつ、前記第2ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部と、この第2締結回転部の内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面と、この第2対向面の中央に設けられて前記第2締結回転部より径小の薄肉円筒部と、この薄肉円筒部及び前記第2締結回転部内の中央に連続して設けられて前記雄ネジ体の雄ネジ部が螺合する雌ネジとを備える構成とし、
しかも、前記第2ナットの薄肉円筒部の先端を押圧面とし、かつ、前記第1ナットの第1対向面に前記薄肉円筒部が入る凹部を形成し、この凹部の内底を、前記薄肉円筒部の押圧面が圧接する押圧受面とすると共に、
さらに、前記第1ナットの部材締結面で、被締結部材を締付けた後、前記第2ナットの薄肉円筒部の先端の押圧面を、前記第1ナットの押圧受面に圧接させて前記第2ナットの薄肉円筒部は、破損することなくねじり圧縮変形させることにより、前記薄肉円筒部内に形成された雌ネジのネジ山とネジ山の間とが弾性変形して、前記雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように圧接させた薄肉円筒部と前記第2締結回転部による前記第2ナットのみで緩み止め作用を有して、前記第2ナットの薄肉円筒部の押圧面前記第1ナットの凹部の押圧受面に圧接して、前記第1ナットと前記第2ナットの締付締結作業が完了した際に、
前記第1ナットの第1対向面と前記第2ナットの第2対向面との間及び前記凹部の内周壁と前記薄肉円筒との間及びその連成部に隙間が生じる構成としたことを特徴とするものである。なお、本発明の記載中において雄ネジ体とは、ボルトなどのように軸体(シャフト)の外周に雄ネジを形成したものをいう。また、薄肉円筒部とは、円筒状の厚みと長さを有するものをいう。
さらに、請求項2の発明は、前記薄肉円筒部の長さを前記薄肉円筒部の雌ネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内に設定すると共に、薄肉円筒部の厚みを前記薄肉円筒部の雌ネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内に設定してなることを特徴とするものである。
本発明の請求項1、2の両発明によると、次の(1)〜(4)の効果が得られる。
(1)薄肉円筒部3Cの押圧面が凹部内底の押圧受面に圧接した時、凹部の内周壁2E−1と薄肉円筒部との間に隙間が生じる構成とすることで、薄肉円筒部の押圧面を押圧受面に圧接させても、薄肉円筒部の押圧面が凹部の内周壁に当たらないため、凹部の内周壁が外周方向に薄肉円筒部によって押されることがないので、第1ナットの雌ネジ孔が拡張変形して第1ナット2が弛み易くなることを防止し得る。
(2)しかも、薄肉円筒部の押圧面が凹部内底の押圧受面に圧接した時、前記第1ナットの第1対向面と前記第2ナットの第2対向面との間及び前記凹部の内周壁と前記薄肉円筒部との間に隙間が生じる構成とすることにより、薄肉円筒部先端の押圧面と凹部の内底の押圧受面とが圧接しても、第1ナットの第1対向面と第2ナットの第2対向面が接触せず、かつ、凹部の内周壁と薄肉円筒部が接触しないため、第1ナットと第2ナットとの接触面積が少なくなると共に、薄肉円筒部は弾性力を有してねじり圧縮変形していることによって、第1ナットが振動や衝撃を受けて第1ナットが緩もうとすると、第2ナットの薄肉円筒部の雌ネジが雄ネジ体の雄ネジ部に螺合して弾性力を有している部分のねじり圧縮変形している雌ネジが雄ネジ部を圧接するように働くため、第1ナットから第2ナットに振動や衝撃が伝わる間に振動や衝撃が消去される。そのために、第1ナットから第2ナットに振動や衝撃が伝達しにくくなるので、第2ナットは緩み難くなっている。
(3)その上、第1ナットの凹部内底の押圧受面に第2ナットの薄肉円筒部先端の押圧面を圧接させてその薄肉円筒部をねじれながら圧縮変形させることにより、薄肉円筒部の雌ネジのネジ山が弾性変形して雌ネジのネジ山が雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように強く圧接することによって発生する緩み止め効果と、第2ナットの第2締結回転部の雌ネジと第2ナットの薄肉円筒部の雌ネジが、雄ネジ体の雄ネジに異なって圧接することによって発生する緩み止め効果と、第1ナットと第2ナットとの間で発生する二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果によって、強力な緩み止め防止効果を奏し得る。
(4)さらに、第1ナット2は、市販品ナットの材料の一側面を切削若しくは型加工することにより凹部2Eを設けることで、かつ、第2ナット3は、市販品ナットの材料の外周の一部が径小となるように切削若しくは型加工することにより薄肉円筒部3Cを設けることで、それぞれを簡単に製作することができ、製作性が優れていると共に、品質管理も容易となって生産性を向上させることができる。
また、本発明の請求項2の発明によると、前記薄肉円筒部の長さを前記薄肉円筒部の雌ネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内にすると共に、薄肉円筒部の厚みを前記薄肉円筒部の雌ネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内にしたので、薄肉円筒部は、圧縮して雄ネジ体の雄ネジ部に圧接しても破損することなく、かつ、雄ネジ部から雌ネジが浮き上がってしまうことで、雄ネジ部を雌ネジで挟むように接触する部分が少なくなるのを阻止して、雄ネジ部に対して雌ネジの動きを阻止する働きを奏し得ると共に、雄ネジ体を破断させることのない緩み止めナットが得られる。
本発明の一実施形態例を示す、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを、雄ネジ体に螺合させない状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示す緩み止めナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例の緩み止めナットの第2ナットのみで被締結部材を締結した状態を示す要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 図4の右側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナットの正面図である。 図6の左側面図である。 本発明の一実施形態例を示し、緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットの寸法図である。 本発明の他実施形態例その1を示し、緩み止めナットの第1ナットと第2ナットで、被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットの第2ナットの正面図である。 本発明の他実施形態例その2を示し、緩み止めナットで被締結部材を締結した状態における要部拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態例の緩み止めナット及び従来例の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果を示す図である。 本発明の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法を説明する図である。 従来例の緩み止めナットの構造を示す図である。
以下、本発明の実施形態例を、図1〜図14に基づき、具体的に説明する。
図1〜図8に示す本発明の一実施形態例の緩み止めナット1は、図1に示すように、雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合される第1ナット2と、この第1ナット2に組み合わせて設けた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合される第2ナット3とから形成されている。
第1ナット2は、図1〜図2及び図6〜図7に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部2Aと、この第1締結回転部2Aの外端面に形成された部材締結面2Bと、第1締結回転部2Aの内端面側に形成されて後述する第2ナット3の第2対向面3Bに対向する第1対向面2C−2と、この第1対向面2C−2の中央に設けられて後述する第2ナット3の薄肉円筒部3Cが入るところの凹部2Eと、第1締結回転部2A内の中央に設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ2Dを備え、凹部2Eの内底を押圧受面2Cとする構成としてある。そして、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分は、凹部2Eに入った薄肉円筒部3Cを保護する保護部2Fとしている。しかも、第1締結回転部2Aの外周は、図7に示すように、六角形状としてある。また、凹部2Eは、図1と図2と図6からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状としてある。
第2ナット3は、図1〜図2及び図4〜図5に示すように、外周にスパナなどの工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部3Aと、この第2締結回転部3Aの内端面側に形成されて第1ナット2の第1対向面2C−2と対向する第2対向面3Bと、この第2対向面3Bの中央に設けられて第2締結回転部3Aより径小の薄肉円筒部3Cと、この薄肉円筒部3C及び第2締結回転部3A内の中央に連続して設けられて雄ネジ体Wの外周に形成された雄ネジ部W1に螺合する雌ネジ3D−1、3D−2を少なくとも備え、薄肉円筒部3Cの先端を、第1ナット2の凹部2Eの内底に形成した押圧受面2Cに圧接する押圧面3C−2とする構成としてある。しかも、第2締結回転部3Aの外周は、図5に示すように、六角形状としてある。なお、第2締結回転部3A内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−1と表示し、かつ、後述する厚みH及び長さLを有する薄肉円筒部3C内の中央に設けられるネジ孔部分を雌ネジ3D−2と表示することとする。
第1ナット本体2の第1対向面2C−2に設けた凹部2E内に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cを入れて第2ナット3の第2締結回転部3Aを第1ナット2に向かって締付けた際に、その薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2Eの押圧受面2Cに圧接可能となるように、薄肉円筒部3Cと凹部2Eの大きさが設定される。また、第1ナット2及び第2ナット3は、市販品M8ナットの材料などを加工することにより製作される。すなわち、第1ナット2は、市販品M8ナットの材料の一側面を切削又は型加工することで凹部2Eを設けることにより、かつ、第2ナット3は、市販品M8ナットの材料の外周の一部が径小となるように切削又は型加工することで薄肉円筒部3Cを設けることより、それぞれを簡単に製作できて製作性が優れていると共に、品質管理も容易となって生産性を向上させることができる。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図2に示すように、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第1ナット2の部材締結面2Bにより被締結部材Y、Zを締付けた後に、第1ナット2に突き合せた状態で雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合させた第2ナット3の薄肉円筒部3Cを、第1ナット2の第1対向面2C−2側に移動させることで、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2を圧接させてその薄肉円筒部3Cをねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形しながら雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるようになる。このときの薄肉円筒部3Cは、圧縮して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接しても破損しない形状の厚みH及び長さLにしてある。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、図1及び図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1を、第1対向面2C−2から凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って内径が縮小するようにした傾斜面とすると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cは、図4と図5からわかるように、薄肉円筒部3Cの外周面3C−1を薄肉円筒部3C内の中央に設けた雌ネジ3D−2の中心軸線と水平となる円筒状とし、しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの外径Dは、第1ナット2の凹部2E内の押圧受面2Cに圧接させてもその薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。
また、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2Eの押圧受面2Cに圧接した時に押圧面3C−2の周囲には、その押圧面3C−2が、第1ナット2の凹部2Eの内周壁2E−1に当って雌ネジ孔の拡張変形するのを防止するために、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2と凹部2Eの内周壁2E−1との間には隙間が生じるように設定してある。なお、第1ナット2の凹部2Eの設定に当っては、第1ナット2と第2ナット3との締付締結作業が完了した際に、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間にも隙間が必要である。
本発明の試作品の実験結果によれば、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が、凹部2Eの押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2の雌ネジ2Dのネジ孔が拡張変形したり、その周辺に張力が加わって雌ネジ2Dのネジ孔の部分が変化したりして、緩み止めナットの緩み止め効果が悪くなることがわかった。そこで、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2Eは、図1〜図2と図6〜図7からわかるように、その凹部2Eの内周壁2E−1を凹部2Eの押圧受面2Cに向かうに従って径小とすることで、その内周壁2E−1を傾斜面とした円錐台状とすることにより、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が、凹部2Eの押圧受面2Cを押圧する力によって、第1ナット2の雌ネジ2Dが拡張変形したりするのを防止する強度を増すように補強している。また、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分に該当する保護部2Fは、第1ナット2の雌ネジ2Dが拡張変形したりするのを防止する強度を増すように補強する役目をすると共に、凹部2Eに入った薄肉円筒部3Cを外部から障害物が当らないように保護する役目もするものである。
第2ナット3は、第2締結回転部3Aの第2対向面の中央に、長さLを雌ネジ3D−2のネジピッチの150%〜700%の範囲以内に設定してなる薄肉円筒部3Cを、雌ネジ3D−2の中心軸線と平行に設けることによって、第2締結回転部3Aを締付けると、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2は第1ナット2の押圧受面2Cに当り薄肉円筒部3Cはねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cの長さLが短くなるように変形することで、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1のネジ山を挟むように変形して雌ネジ3D−2と雄ネジ部W1は圧接されて雄ネジ部W1から雌ネジ3D−2の動きが阻止されて薄肉円筒部3C内でのネジの緩み止め効果が発生される。
さらに、この薄肉円筒部3Cをねじり圧縮することで薄肉円筒部3C内では雌ネジ3D−2は雄ネジ部W1を挟むように圧接して弾性変形するが、第2締結回転部3A内では雌ネジ3D−1のネジ山は雄ネジ部W1を挟むようには圧接変形しないことによって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内とでは雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−1と雌ネジ3D−2が圧接したときの働きが異なってくる。したがって、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで雌ネジ3D−1、3D−2と雄ネジ部W1の圧接の仕方が異なる作用が生じるものであり、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとでは一般にいう普通の緩み止め仕掛けを有しない二つのナットを用いた、一般のナットによる二重ナットと同じようなナットの緩み止め効果が発生する。
上述したように、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1と薄肉円筒部3Cの3D−2とで、雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なる作用が生じることによって、第3図のように本発明の一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締結した状態であっても、一つのナットに締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cを設けると、後述する図12の特性線S3のように、締付トルクに対して戻しトルクが同じくなるようなナットの緩み止め効果を生じることを、本願発明者が見出した。このことにより、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみでも、後述する従来例の特性線P2よりも優れたナットの緩み止め効果が得られることを確認できた。
さらに、第2ナット3のみの第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するネジ部の緩み止め効果の実験結果によれば、締付トルクに対し戻しトルクは、図12に示す特性線S3のように、締付トルクに対する戻しトルクは同値を示しており、第2ナット3のみでは、標準締付トルクが13Nmの時点で戻しトルクが13.0Nmとなる。それに対して、緩み止め防止策なしの場合(緩み止め防止策なしとはナットに緩み止めとなる仕掛けを設けないナットの場合をいう。)の締付トルクに対する戻しトルクの特性は、図12の特性線Rのようになり、標準締付トルクが13Nmの時点で戻しトルクが10.1Nmとなる。したがって、第2ナット3のみ場合でも、緩み止め防止策なしの場合よりも、戻しトルクが28.7%も上回り、第2ナット3のみでの緩み止め効果が向上していることが明らかである。
したがって、第1ナット2に第2ナット3を組み合わせて被締結部材X、Yを締付けた状態で振動や衝撃を与えると、始めは第1ナット2が緩み始めるので、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第2ナット3の薄肉円筒部3Cのねじり圧縮部分を第1ナット2の押圧受面2Cで押すように働くので、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に強く圧接するように働き、第2ナット3は緩まなくなる。そのために、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3C内との間に生じるネジ部の緩み止めの効果が向上するので、第2ナット3の緩み止め効果が発揮されるものである。それゆえに、本発明は、第1ナット2に第2ナット3を組み合わせも、第2ナット3によるナットの緩み止め効果と振動や衝撃に耐える効果が得られると同時に、第1ナット2と第2ナット3の接触面積が小さいので、この部分は振動や衝撃を消去する作用も発生するため、第1ナット2から第2ナット3は緩まない効果が得られるものである。
上述のように、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2と第2ナット3との間でも発生するところの普通に一般に言う二重ナットの緩み止め効果と、第2ナット3の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで発生するナットの緩み止め効果によって、きわめて有効な緩み止めナットとなる相乗効果を発揮する緩み止めナットが得られる。なお、ここで、二重ナットとは、従来一般に工事現場等で昔から使用している緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個用いて緩み止めとして使用しているものをいう。この二重ナットでは、始めに第1のナットを締付けた後に、次に第2のナットを締付けることで、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って、雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することにより、ナットの緩み止め効果が発生する。このナットの緩み止め効果のことを、本願明細書では、二重ナットによる緩み止め効果と称することとする。
本発明の一実施形態例の緩み止めナット1における第2ナット3の薄肉円筒部3Cの厚みH及び長さLは、次のような第一から第六の点を考慮して、決められる。
すなわち、第一に、薄肉円筒部3Cの厚みHが薄すぎると、薄肉円筒部3Cが破損したり、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に圧接する力が弱くなったりするので、薄肉円筒部3Cによる緩み止めの働きが小さくなる。
第二に、薄肉円筒部3Cの厚みHが薄くても薄肉円筒部3Cが破損しない厚みHであれば、薄肉円筒部3Cが雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に噛合っているので、薄肉円筒部3Cの圧縮度を増せば薄肉円筒部3Cが破損することなく雄ネジ体Wの軸が破断するようになる。
第三に、薄肉円筒部3Cの厚みHが厚すぎると、薄肉円筒部3Cが圧縮しても変形しなくなるので、雄ネジ部W1に対して薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が挟むように圧接しなくなり、薄肉円筒部3Cのみでの緩み止め効果が得られないが、薄肉円筒部3Cの厚みHは、薄肉円筒部3Cを圧縮して雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2が挟むように変形するものであれば、薄肉円筒部3Cの厚みHは厚ければ厚いほど、緩み止めナットの緩み止め効果は向上する。
第四に、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の長さLが短すぎると、雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2で挟むように接触する部分が少なくなり、雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−2の動きを阻止する働きが少なくなるので、薄肉円筒部3Cの長さを、最小では、雌ネジ3D−2のネジピッチの150%の長さがなければ、薄肉円筒部3Cでのネジの緩み止め効果が発揮されない。
第五に、雄ネジ部W1を雌ネジ3D−2で挟むように接触する部分の長さが長すぎると、雄ネジ部W1から雌ネジ3D−2が浮き上がってしまうため、雌ネジ3D−2が雄ネジ部W1を挟むように圧接する部分が少なくなるので、雄ネジ部W1に対して雌ネジ3D−2の動きを阻止する働きが少なくなるため、薄肉円筒部3Cの長さLを、最大では、雌ネジ3D−2のネジピッチの700%に設定する必要がある。
第六に、薄肉円筒部3Cの厚みHは、材質によって異なり、鉄類系では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の呼び径の7%〜25%の範囲以内で、ステンレス類系では薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2の呼び径の5%〜20%の範囲以内で、それぞれ設定するとよい。
さらに、本発明の一実施形態例の緩み止めナット1を構成する第1ナット2と第2ナット3の具体的寸法関係は、図8に示すようになっている。すなわち、第1ナット2は、第1締結回転体部2Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの入口径を11.0φに、第1ナット2の凹部2Eの内底の押圧受面2Cの径を10.7φに、第1ナット2の凹部2Eの入口(第1対向面2C−2)から第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cまでの深さを2.8mmに、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの横幅寸法を3.8mmに、第1ナット2全体の横幅寸法を6.6mmに、内周壁2E−1の傾斜角度Rを約5度となるように、それぞれ、設定してある。
さらに、第2ナット3は、図8に示すように、第2締結回転部3Aの対面外形寸法(外形寸法)を12.8mmに、薄肉円筒部3Cの外径寸法Dを10.5φに、薄肉円筒体部3Cの長さLを3.5mmに、第2締結回転部3Aの横幅寸法を3.6mmに、第2ナット3全体の横幅寸法を7.1mmに、薄肉円筒部3Cの厚みHを1.25mmに、それぞれ設定してある。第2ナット本体3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの径は、M8ネジ径と同じ径としてある。第2ナット3の雌ネジ3D−1、3D−2及び第1ナット2の雌ネジ2Dの雌ネジのピッチは、1.25mmとしてある。また、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cの厚みH及び長さLは、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに、第2ナット3の薄肉筒部3Cが圧接することによって、その薄肉円筒部3Cが圧縮変形しても、その薄肉円筒部3Cが破損することがないように設定されている。しかも、この第1ナット2と第2ナット3の締付締結作業完了後において、押圧面3C−2が押圧受面2Cに押圧後は、第2対向面3Bと第1対向面2C−2との間には、隙間が生じるように設定してある。
さらに、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの厚みH及び長さLは、上述した第一から第六の点を考慮して、第2ナット3の材質に応じて、薄肉円筒体部3Cの厚みHを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1の呼び径の5%〜25%の範囲以内で、かつ、薄肉円筒部3Cの長さLを、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1のネジピッチの150%〜700%の範囲以内で適宜設定するようにしている。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1によれば、第1ナット2の第1締結回転部2Aを工具等で回転させることで被締結部材Y、Zを締付けた後、第2ナット3の第2締結回転部3Aを工具等で回転させることで第2ナット3の薄肉円筒体部3Cを第1ナット2の凹部2E内に第2ナット3の薄肉円筒部3Cを入れると、図2に示すように、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに第2ナット3の薄肉円筒部3Cが圧接することで、その薄肉円筒部3Cがねじれながら圧縮変形することにより、雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間とが弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられる。
そして、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2Eの押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2が圧接して第2ナット3の薄肉円筒部3Cがねじれ圧縮変形して薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接することによる緩み防止効果と、第2ナット3の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの作用による、すなわち、第2締結回転部3Aの雌ネジ3D−1と薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2とで、雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なることによる緩み防止効果と、第1ナット2と第2ナット3との間での二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果が生じているので、後述の図12の特性線S1、S2に示すような、強力な緩み防止効果を生じさせることができる。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2の凹部2E内で圧縮変形した第2ナット3の薄肉円筒部3Cは変形して弾性力を有していることと、第1ナット2の凹部2Eと第2ナット3の薄肉円筒部3Cが別体であることと、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第1ナット2の押圧受面2Cとの接触面が少ないことが、相俟って、第1ナット2から第2ナット3への、雄ネジ体Wや被締結部材Y、Zに加えられた振動や衝撃の伝達がしにくくなっている。
なお、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように噛合ってもその噛合った部分の雌ネジ3D−2のネジ山と雄ネジ部W1との隙間が小さいために、雌ネジ3D−2のネジ山と雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山が圧接しても雌ネジ3D−2の部分は弾性変形するので、薄肉円筒部3Cの部分は弾性力を有することと、図2示すように、第1ナット2と第2ナット3とが、薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2と凹部2Eの押圧受面2Cが接触するだけであるために、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が小さいことにより、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくく、第2ナット3は緩み難くなっている。また、第1ナット2が緩む時は、雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を、薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2で圧縮するように働くので、第1ナット2は緩まなくなって、振動や衝撃を伝達しにくくなって振動や衝撃を消去する作用も生じるものである。
さらに、上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1では、第1ナット2側に凹部2Eを、かつ、第2ナット3側に薄肉円筒部3Cを形成するのみであって、上述した従来例のように、第1ナットの凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させなくともよいので、生産性や製作性に優れている。しかも、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を、第1ナット2の押圧受面2Cに圧接させることで、薄肉円筒部3Cを圧縮変形させることにより、薄肉円筒部3C内に形成された雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように圧接させるため、第2ナット3の薄肉円筒部3Cと第2締結回転部3Aとの間で、二重ナットのような緩み止め効果が生じると共に、第2ナット3の薄肉円筒部3Cが弾性を有しているので、その薄肉円筒部3Cがスプリングワッシャの作用を奏し得るという利点を備えた緩み止めナット1が得られる。
上記構成の一実施形態例の緩み止めナット1によれば、生産性に優れ、しかも、第1ナット2の押圧受面2Cに第2ナット3である薄肉円筒部3Cの先端の押圧面3C−2を押圧させてその薄肉円筒部3Cをねじれ圧縮変形させた際、第1ナット2の押圧受面2Cに薄肉円筒部3Cが圧接して雌ネジ3D−2のネジ山が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1のネジ山を挟むように強く圧接させられることによる緩み止め効果と、第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとで雄ネジ部W1への圧接の仕方が異なることによる緩み止め効果と、第1ナット2と第2ナット3とによる二重ナットの緩み止め効果とによる相乗効果により、図12の特性線S1、S2に示すように、強力な緩み止め効果を奏し得る緩み止めナットが得られる。
次に、図12及び図13に基づき、本発明の上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と図14に示す従来例の緩み止めナットに関する締付トルクと戻しトルクの測定結果と測定方法を説明する。なお、従来例の緩み止めナットとは、図14に示すように、第1ナットと第2ナットとからなり、前記第1ナットには、ネジ孔の周りにテ−パー状の外周面を有する凸部が形成され、前記凸部の外周面をネジ孔に対して微少量偏心させ、かつ、前記第2ナットには、第1ナットの凸部が嵌合する凹部がネジ孔周りをテ−パー状にして形成され、前記凹部の内周面を前記ネジ孔と同心状とするテ−パー状に形成したものをいう。
図12は、上記一実施形態例を示す緩み止めナット1と上述した従来例の緩み止めナットにつき、標準締付トルク(規定値)に対する戻しトルクを測定した結果を示した図であって、横軸を締付トルク(Nm)とし、かつ、縦軸を戻しトルク(Nm)としてある。
図12において、特性線S1は、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材を締付けた状態にした後、第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図12において、特性線S2は、図2に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2及び第2ナット3で被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみに工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。図12において、特性線S3は、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態にした後、第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図12において、特性線P1は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Yを締付けた状態にした後、第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図12において、特性線P2は、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材Yを締付けた状態にした後、第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルク及び戻しトルクの測定値を示している。
図12において、特性線Qは、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線(一点鎖線)を示し、かつ、特性線Rは、緩み止め防止策なしの場合の締付トルクに対する戻しトルクの特性を示している。
従来、実用的な振動や衝撃力を長時間与えて緩み止めナットの緩みを確かめることが、実際上は、時間や経費がかさんでしまい困難なために、緩み止めナットの緩み具合を読み取る簡易的試験として、締付トルクに対し戻しトルクがどれほど有するかによって判断することが一般に行われている。
そこで、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1と上述した従来例の緩み止めナットに係る締付トルク及び戻しトルクの測定方法は、図13に示すところの測定方法で行うようにした。その測定方法は、図13に示すように、始めに、万力4でボルト(雄ネジ体)5を動かないように固定した上に被締結部材Yを乗せる。さらに、その被締結部材Yの上からワッシャ6を介して供試品であるM8二重ナット7をボルト(雄ネジ体)5に嵌める。さらに、そのM8二重ナット7の締付回転部にトルクレンチ8を取り付ける。その後、そのトルクレンチ8を右回転して規定値までトルクを加えた時の、そのトルクを締付トルクとして測り、かつ、逆に、そのトルクレンチ8を左回転して動き始めた時のトルクを戻しトルクとして測ることによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにした。
そして、図13に示すところの測定方法において、トルクレンチを右回転してM8二重ナットに加えるトルクの規定値を、標準締付トルクとしてある。標準締付トルクした理由は、ネジ(従来のナット)の呼び径の大きさによって、標準締付トルクが異なり、例えば、M6で5Nm、M8で13Nm、M10で25Nmなどのように標準締付トルクが規定されるので、従来、ナットは、全て少なくとも、標準締付トルクの規定値までは締付けるようにしているからである。
図13において、供試品であるM8二重ナット7に変えて、上記構成の一実施形態例を示す緩み止めナット1を設置し、あるいは、上述した従来例の緩み止めナットを設置することによって、締付トルク及び戻しトルクの測定を行うようにすることで、図12の測定結果が得られた。
図12の特性線S1からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具(締付工具)を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約22.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図12の特性線P1からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約17.3Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2と第2ナット3を締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第1ナットと第2ナットを締付トルクの規定値まで締付けた状態から第1ナットにのみ工具を掛けてその第1ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、28.9%以上も上回ることがわかる。
さらに、図12の特性線S2からわかるように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、標準締付トルク13Nmの時点で、約14.3Nmである。それに対して、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクは、図12の特性線P2からわかるように、標準締付トルク13Nmの時点で、約12.0Nmである。
したがって、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させることにより得られる戻しトルクは、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けてその第2ナットを回転させることにより得られる戻しトルクに比べて、19.1%以上も上回ることがわかる。
このことからいえることは、実際に緩み止めナットを使用して振動や衝撃等で緩み始めるのは、後から締付け取付けた第2ナット3から緩み始めるので、この第2ナット3が緩み難いことが振動や衝撃に耐えられることで実用上において重要である。
さらに、上記一実施形態例の緩み止めナット1では、図12に示すように、特性線S1及び特性線S2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる仮想トルク線を示す特性線Qよりも上方に位置しており、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第1ナット2にのみ工具を掛けてその第1ナット2を回転させる場合でも、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3にのみ工具を掛けてその第2ナット3を回転させる場合でも、大きな戻りトルクが得られることがわかる。
さらに、図3に示すように、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた状態の場合の締付トルク及び戻しトルクは、図12の特性線S3に示すようになり、上記従来例の緩み止めナットの第1ナット及び第2ナットで被締結部材を締付けた状態にした後、第2ナットのみに工具をかけてその第2ナットを回転させることにより得られる締付トルクに対する戻しトルクの大きさは、図12の特性線P2よりも、遥かに上回っているので、上記一実施形態例の緩み止めナット1の第2ナット3のみで被締結部材Y、Zを締付けた場合であっても、緩み止めとなる効果が大きいことがわかる。
その点、図12に示すように、上述した従来例の緩み止めナットの第2ナットにのみ工具を掛けて、その第2ナットを回転させることにより得られる締付トルクに対する戻しトルクの大きさを示す特性線P2は、締付トルクと戻しトルクが同じくなる図3の第2ナット3のみの実施形態例にして測定した特性線S3と同じ仮想トルク線を示す特性線Qよりも下方に位置しており、上述した従来例の緩み止めナットでは、上記一実施形態例の緩み止めナット1のような大きな戻しトルクが得られないことがわかる。
以上のように、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、上述した従来例の緩み止めナットよりも優れたナットの緩み止めを防止する効果が得られると共に、市販品のナットの材料からも切削加工や型加工によって簡単に製作することができて、品質管理も容易となり、かつ、生産性が向上する。なお、上記一実施形態例の緩み止めナット1によれば、圧縮変形した薄肉筒体部3Cの外周が第1ナット2の凹部2Eによって覆われた状態になるので、第2ナット3の締結完了時は薄肉筒体部3Cを外部の障害物から保護することができるものである。
さらに、上述した従来例の二つからなる緩み止めナット(図14参照)は、第1ナットのテ−パー状の外周面を有する微少量偏心させた凸部に、第2ナットの凹部の内周面をネジ孔と同心状に設けたテ−パー状の凹部をねじり入れると、第2ナットのネジ孔周りが拡張変形するので第2ナットが緩み易くなる。これによって、雄ネジ体の雄ネジ部に雌ネジが嵌っての隙間が大きくなってガタツキが大きくなり雄ネジ体の雄ネジ部に雌ネジが圧接する働きが小さくなることによって、ナットの緩み止めとなる効果が少なくなるように推測される。
その点、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接した時、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間及び凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3Cの外周面3C−1との間及びその連成部に隙間が生じているので、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2を凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接させても、凹部2Eの内周壁2E−1が外周方向に薄肉円筒部3Cによって押されることがないため、第1ナット2の雌ネジ孔が拡張変形して第1ナット2が弛み易くなることがない。
しかも、本発明の上記一実施形態例の緩み止めナット1では、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が凹部2E内底の押圧受面2Cに圧接した時、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bとの間及び凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3Cの外周面3C−1との間及びその連成部に隙間が生じる構成とすることで、薄肉円筒部3C先端の押圧面3C−2と凹部2Eの内底の押圧受面2Cとが圧接しても、図2に示すように、第1ナット2の第1対向面2C−2と第2ナット3の第2対向面3Bが接触せず、かつ、凹部2Eの内周壁2E−1と薄肉円筒部3C及びその連成部が接触しないため、第1ナット2と第2ナット3との接触面積が少ないと共に、薄肉円筒部3Cは弾性力を有してねじり圧縮変形しているので、第1ナット2が振動や衝撃を受けて第1ナット2が緩もうとすると、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの雌ネジ3D−2が雄ネジ体Wの雄ネジ部W1に螺合して弾性力を有している部分のねじり圧縮変形している雌ネジ3D−2が雄ネジ部W1を圧接するように働くため、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝わる間に振動や衝撃が消去される。そのために、第1ナット2から第2ナット3に振動や衝撃が伝達しにくくなるので、第2ナット3は緩み難くなっている。
次に、図9により、本発明の他実施形態例その1の緩み止めナット1Xを説明する。図9において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。この発明が上記一実施形態例の緩み止めナット1と異なるのは第1ナット2Xの凹部2Eの内周壁2E−1から押圧受面2Cに至る部分の内周壁2E−1を直進面として図9に示すように、第1ナット2Xの第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。これにより、薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が押圧受面2Cに圧接した状態では、図9に示すように、薄肉円筒部3Cが、凹部2Eの内周壁2E−1の外周部分に該当する円筒状の保護部2Fで覆われるようになる。このようにすれば、第1ナット2Xの雌ネジ2Dの拡張変形を阻止するためにその雌ネジ2Dのネジ孔周辺を補強する役目と、薄肉円筒部3Cに外部からの障害物が当らないように保護する役目が果たされる。
さらに、図10及び図11により、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20を示す。図10及び図11において、図1から図3と同一符号は同一内容を表している。本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20と上記一実施形態例の緩み止めナット1とは、第2ナット3の薄肉円筒体部3Cと第1ナット2の第1対向面に設けた凹部2Eの形状を異にするのみで、他は全く同一である。
すなわち、本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20は、図10及び図11に示すように、第1ナット21と第2ナット22とからなり、その第2ナット22の薄肉円筒体部3Cの先端外周部に、その薄肉円筒部3Cの先端面の破損を防止するためのリング状の補強部23を設け、しかも、図11に示すように、第1ナット21の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの内側壁2E−1を、傾斜面とすることなく、第1締結回転部2A内の中央に設けた雌ネジ2Dの中心軸線と平行となるようにしたものである。それに対して、上記一実施形態例の緩み止めナット1は、図1及び図2に示すように、第1ナット2と第2ナット3とからなり、第2ナット3の薄肉円筒部3Cの先端外周部にリング状の補強部23を設けず、しかも、第1ナット2の第1対向面2C−2に設けた凹部2Eの形状が円錐台状となるようにその凹部2Eの内側壁2E−1を傾斜面としている。
本発明の他実施形態例その2の緩み止めナット20によれば、図11に示すように、第2ナット22の薄肉円筒部3Cの押圧面3C−2が、第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに、強く圧接するようになり、しかも、薄肉円筒部3Cが第1ナット21の凹部2Eの押圧受面2Cに強く圧接することで、その薄肉円筒部3Cの外周面3C−1が圧縮変形しても、その押圧面3C−2から薄肉円筒部3Cが破損するのを補強部23によって阻止されるようにしてある。
上記本発明の各実施形態例では、第1ナット2、2X、21の凹部2Eの押圧受面2Cから部材締結面2Bまでの厚みは、第1ナット2、2X、21を締付けたときに第1ナット2、2X、21の締付け保持機能が有効に働く厚みとしている。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第1ナット2、2X、21の外形状及び第2ナット3、3X、22の外形状を、六角形状としているが、締付工具が使用できる形状であればよく、丸形状でもよい。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナット3、3X、22の薄肉円筒部3Cは弾性を有しているので一度使用した緩み止めナットを繰り返し使用しても性能が低下しないので何回でも使用できることを確かめているものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、本発明が成り立つ一つの要因は次の通りでもある。すなわち、一般に工事現場等で昔から使用している従来の緩み止め仕掛けを有しない普通のナットを二個使用して、始めに一つの第1のナットを締付けた後に、もう一つの第2のナットを締付けることによって、その二つのナットは雄ネジ体の雄ネジに対して第1のナットと第2のナットが押し合って雄ネジ体の雄ネジのネジ山に雌ネジのネジ山が噛合った部分が圧接して接触することからナットの緩み止めとなる作用が発生するからである。
そして、図14の従来例の構造では、その前記ナットの緩み止めとなる作用と共に、軸の径方向に偏心を有することで偏心部を軸の径方向に強く圧接させることによって前記ナットの緩み止めとなる作用よりも緩み止めとなる作用を増している効果はあるが、後から締付ける凹みを有する第2ナットは、第1ナットの凸部に嵌ると第2ナットのネジ孔が拡張変形する方向に力が働き、第2ナットのネジ孔が拡張変形するために、第2ナットのみでは、著しく、締付トルクに対する戻しトルクの特性が低下する欠点を有するものである。
その点、上記本発明の各実施形態例では、昔から使用している従来の一般の普通の二つのナットの組合せによる二重ナットの作用と同じであるところの、第1ナット2、2X、21と第2ナット3、3X、22による緩み止め作用と、さらに、第2ナット3、3X、22のみによる図3に示す実施形態の第2ナット3、3X、22のみの特性によって、図12で示すように、締付トルクに対する戻しトルクは特性線S3のように向上することによって、上述した従来例(図14参照)の特性線P2(図12参照)よりも、優れた特性を得ることが可能となったものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例では、第2ナットに薄肉円筒部3Cを設けることで、第2ナットは第2締結回転部3Aに対し薄肉円筒部3Cがねじり圧縮されて薄肉円筒部3Cが変形して、第2ナットの雌ネジのネジ山と雄ネジ体のネジ山がそれぞれ異なって圧接して生じる第2ナットの内部の緩み止め効果を有することによって、第2ナット3、3X、22の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間で雌ネジ3D−1、3D−2のネジ山と雄ネジ体Wの雄ネジW1との間にナットの緩み止めとなる作用が生じるものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例の緩み止めナット1、1X、20は、第1ナット2、2X、21と第2ナット3、3X、22による二重ナットの緩み止め効果と、第2ナット3、3X、22の内部の第2締結回転部3Aと薄肉円筒部3Cとの間で発生する緩み止め効果による、この二つの緩み止めとなる相乗効果が働くことによって、緩み止めナットの緩み止めとなる効果を向上させることができるものである。
さらに、上記本発明の各実施形態例において、第1ナット2、2X、21及び第2ナット3、3X、22の材質及び形状を限定することなく、材質及び形状を適宜選定することで、緩み止め効果をさらに一層向上させることが可能である。
1 本発明の一実施形態例の緩み止めナット
1X 本発明の他実施形態例その1を示す緩み止めナット
2 第1ナット
2X 本発明の他実施形態例その1の第1ナット
2A 第1締結回転部
2B 部材締結面
2C 押圧受面
2C−2 第1対向面
2D 雌ネジ
2E 凹部
2E−1 内周壁
2F 保護部
3 第2ナット
3X 本発明の他実施形態例その1の第2ナット
3A 第2締結回転部
3B 第2対向面
3C 薄肉円筒部
3C−1 外周面
3C−2 押圧面
3D−1、3D−2 雌ネジ
20 本発明の他実施形態例その2を示す緩み止めナット
21 本発明の他実施形態例その2の第1ナット
22 本発明の他実施形態例その2の第2ナット
23 補強部
D 外径
H 薄肉円筒部の厚み
L 薄肉円筒部の長さ
Y、Z 被締結部材
W 雄ネジ体
W1 雄ネジ部

Claims (7)

  1. 雄ネジ体の外周に形成された雄ネジ部に螺合させる第1ナットと、この第1ナットに隣接した状態で前記雄ネジ体の雄ネジ部に螺合される第2ナットとからなる緩み止めナットにおいて、
    前記第1ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第1締結回転部と、この第1締結回転部の外端面に形成された部材締結面と、前記第1締結回転部の内端面側に形成された前記第2ナットに対向する押圧受面と、前記第1締結回転部内の中央に設けけられて前記雄ネジ体が螺合する雌ネジとを備える構成とし、
    かつ、前記第2ナットを、外周に工具を嵌合させることを可能にした第2締結回転部と、この第2締結回転部の内端面側に形成された前記第1ナットに対向する第2対向面と、この第2対向面の中央に設けられて前記第2締結回転部より径小の薄肉円筒部とその薄肉円筒部の先端を押圧面として、前記雄ネジ体の雄ネジに螺合する雌ネジとを備える構成とし、
    しかも、前記第1ナットの部材締結面で、締結部材を締め付けた後、前記第2ナットの第2締結回転部を前記第1ナットの押圧受面に向って締付けて前記薄肉円筒部をねじり圧縮変形させても前記薄肉円筒部は破損することなく、
    前記薄肉円筒部がねじり圧縮変形させることで、薄肉円筒部内に形成された雌ネジのネジ山とネジ山との間が弾性変形して雄ネジ体の雄ネジ部のネジ山を挟むように圧接させることによりナットの緩み止めとなってる部分と、第2締付回転部の雌ネジと雄ネジ体の雄ネジ部が圧接した部分とがナットの緩み止めとなるように働く部分とからなるナットの緩み止めと、第1ナットと第2ナットによって生じる二重ナットの緩み止めを得たことを特徴とする緩み止めナット。
  2. 前記薄肉円筒部の長さLをそのネジのネジピッチの150%〜700%の範囲以内にすると共に、薄肉円筒部の厚みHをそのネジの呼び径の、鉄類系では7%〜25%の範囲以内に、ステンレス類系では5%〜20%の範囲以内にしたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
  3. 第1ナットと第2ナットとを一体の部材から薄肉円筒部の厚みHよりも薄くした連成部で前記第1ナットの押圧受面と前記第2ナットの前記薄肉円筒部の押圧面とを連成させて構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
  4. 第1ナットと第2ナットとを一体の部材から連成した連成部を設けた連成部から破断させて、第2ナットの薄肉円筒部との連成部の破断した先端を押圧面として、第1ナットの連成部の破断した面を押圧受面となるように構成したことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
  5. 第2ナットの薄肉円筒部を外部の障害物から保護する共に、第1ナットの雌ネジ孔の拡張を防止するようにした保護部を第1ナットに設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
  6. 第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接する際に、前記薄肉円筒部のねじり圧縮変形を容易にするところの凹溝を、前記薄肉円筒部の外周面に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
  7. 第2ナットの薄肉円筒部の押圧面を第1ナットの押圧受面に圧接してもその前記薄肉円筒部を破損することなく圧縮変形させた際に、前記薄肉円筒部の端面の破損を防止するところの補強部を、前記薄肉円筒部の外周部に設けたことを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
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