JP2013007093A - 化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有する水溶液中で鋼板を陰極として電解処理し、鋼板表面に亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物を、金属亜鉛量に換算して70〜500mg/m2かつ鋼板表面の被覆率:60%以上となるように形成する。次いで、リンを含有する水溶液で前記鋼板を水洗する。
【選択図】なし
Description
すなわち、特許文献4は、鋼板表面に亜鉛酸化物及び/または亜鉛水酸化物を、亜鉛イオンを含有する水溶液中で鋼板を陰極として電解処理することにより形成し、皮膜量を金属亜鉛換算で70〜500mg/m2、被覆率を60%以上とすることが化成処理性および耐型かじり性の向上に対して有効であることを見出したものである。
[1]亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有する水溶液中で鋼板を陰極として電解処理し、鋼板表面に亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物を、金属亜鉛量に換算して70〜500mg/m2かつ鋼板表面の被覆率:60%以上となるように形成し、次いで、リンを含有する水溶液で前記鋼板を接触することを特徴とする化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記鋼板はSiを0.1質量%以上含有することを特徴とする化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記リンを含有する水溶液のリン含有率が5〜5000mass ppmであることを特徴とする化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記リンを含有する水溶液のpHが4〜12であることを特徴とする化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
また、本発明は、冷延鋼板、中でもSiを含有する高強度冷延鋼板に対して効果を奏しており、高強度冷延鋼板の化成処理性および耐型かじり性を両立させる有効な技術として、工業的に極めて価値の高いものである。
本発明で対象とする鋼板は熱延鋼板および冷延鋼板である。中でも自動車分野等で多く用いられる冷延鋼板に対して、本発明は最適である。機械特性等の諸特性を向上させるために鋼中に各種元素を添加した鋼板(例えば、高強度鋼板)は、表面に存在する添加元素の影響により化成処理時のリン酸塩結晶が不均一になることがある。一方で、鋼板に対しては常に均一な化成処理皮膜が要求されている。このような観点から、前記各種元素を添加した鋼板に本発明を適用することは価値があり、本発明により安定した化成処理皮膜が得られることになる。
特に、Siを0.3質量%以上含有し、Si含有量/Mn含有量≧0.4の鋼板の場合には、従来では化成処理性が著しく劣化してしまう。しかし、本発明を適用することにより化成処理性が著しく良好になるため、Siを0.3質量%以上含有し、Si含有量/Mn含有量≧0.4の鋼板に対しても好適に使用される。
さらに、陰極電解処理は亜鉛系酸化物の形成量を制御する観点からも有効である。
水溶液中の亜鉛イオン量は、0.1〜1mol/L、硝酸イオンは硝酸として0.1〜1mol/L、電流密度は1〜30A/dm2、液温は30〜70℃、めっき液の相対流速は0.5〜2.0m/secが最適範囲である。これらの範囲内で電解処理を行うことで、本発明の亜鉛系酸化物が形成されやすくなる。亜鉛イオンや硝酸イオンを添加する化合物に特に限定は無く、亜鉛イオン供給化合物として硫酸亜鉛や塩化亜鉛、硝酸亜鉛などが挙げられ、硝酸イオンの供給化合物として、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどが挙げられる。
また、鋼板表面に亜鉛系酸化物が形成されたことは、X線光電子分光装置により確認することができる。亜鉛の結合エネルギーの調査により金属亜鉛と酸化亜鉛・水酸化亜鉛は区別することが可能である。具体的には、金属亜鉛の結合エネルギーは494eV付近にピークをもち、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛の結合エネルギーはそれぞれ499、500eV付近にピークを持つため、本発明の亜鉛系酸化物は494eV付近にピークが無く、499、500eV付近にのみピークが認められることになり、このピークから、亜鉛系酸化物であることが明らかとなる。さらに、イオンエッチングにより深さ方向(表層から皮膜/下地鋼板界面まで)の分析を実施した場合、本発明では、いずれの深さにおいても亜鉛系酸化物は494eV付近にピークが無く、499、500eV付近にのみピークが認められ、皮膜全体が亜鉛系酸化物となる。
70mg/m2より少ない場合、化成処理時の核発生サイトを十分に供給できないために化成処理性向上効果が小さい。一方、500mg/m2より多い場合、プレス時の金型と鋼板との凝着は抑制するものの、亜鉛系酸化物自体が変形を受けるために、亜鉛系酸化物の脱離量が多くなり、脱離した亜鉛系酸化物が摺動抵抗となる。
以上より、化成処理性および耐型かじり性を安定して向上させるための亜鉛系酸化物は70mg/m2〜500mg/m2、好ましくは100〜300mg/m2とする。
なお、上記は蛍光X線を用いてZnの強度を測定し、既知のZn量の強度と比較することにより算出する。
なお、本発明において、亜鉛系酸化物の被覆率とは亜鉛系酸化物が鋼板表面を被覆している面積率を示しており、具体的には被覆率は電子線マイクロアナライザーを用いて100μm四方の亜鉛元素マッピングを行い、測定面積(10000μm2)から亜鉛の存在面積の比率により算出することが出来る。
このようなリンを含有する水溶液による水洗処理の方法には特に制限はない。めっき鋼板を浸漬する方法、スプレーする方法、塗布ロールを介して塗布する方法などがあげられる。中でも鋼板表面にスプレーする方法は、必要な処理液が少量で済むと同時に、液の流動効果との相乗効果で比較的短時間で処理が完了するため、最も望ましい方法である。
実プレス時のビード通過部を想定した面圧の高い条件下での耐かじり性を評価するため、図1の摩擦係数測定装置を用いて平板の同一部位繰返し摺動試験を行った。図1に示すように供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。耐型かじり性試験の押し付け荷重はN:1200kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。
図2は、耐型かじり性評価に使用したビード形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。このビードを用いると、プレス成形時のビード通過部での摩擦係数を評価できる。
耐型かじり性評価試験条件は、試験前にスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを表面に塗布した試料1の同一部位を最大40回の繰り返し摺動試験を実施し、摺動可能回数により耐型かじり性の指標とした。ここで摺動可能回数とは、鋼板と金型との凝着、すなわち型かじりが発生した場合に摩擦係数測定装置が自動的に停止するように設定しており、設定値として摺動抵抗力Fが500kgfを超えた場合に停止するように設定した。
×:摺動可能回数が17回未満(型かじり発生による摩擦係数測定装置の停止)。
○:摺動可能回数が17回〜29回(型かじり発生による摩擦係数測定装置の停止)。
◎:30回の摺動が可能
ここで、摺動回数17回は、現在型かじりが発生せずに使用されている270MPa級の冷延鋼板を400kgfの押し付け荷重にて上記の耐型かじり性評価を行った場合に型かじりが発生する平均回数であり、17回以上摺動が可能な場合には実用上型かじりは発生しないと考えられる為、摺動回数が17回以上を基準とした。
市販の化成処理薬剤(日本パーカライジング株式会社製 パルボンドPB−L3065システム)を用いて、浴温35℃、時間120秒の条件で化成処理を行い、化成処理後の表面SEM観察を行うことにより化成処理結晶の均一性を評価した。ここで表面SEM観察は300倍の視野にて評価し、その評価面積はおよそ0.1mm2である。化成処理結晶の均一性評価は以下の基準により判定した。
××:ほぼ全面に化成処理結晶が認められない。
×:およそ半面が化成処理結晶が認められない。
△:ミクロなスケが3箇所以上認められる。
○:ミクロなスケが2箇所以下及び/又は粗大化結晶が3箇所以上認められる。
◎:化成処理結晶にスケが無く、粗大化結晶が2箇所以下である。
尚、上記記載のミクロなスケの大きさは200μm2以下とする。さらに粗大化結晶とは、化成処理結晶の長辺が15μm以上のものと規定する。
(1)No.1〜6は通電時間を変更することで亜鉛系酸化物の量を変化させて比較した結果である。No.1、No.2の比較例1、2は亜鉛系酸化物の量が少ないために、化成処理性が不良であることが分かる。また、No.6の比較例3は亜鉛系酸化物の量が多いために耐型かじり性が低下していることが分かる。一方、亜鉛系酸化物の量が好適であるNo.3〜5の本発明例1〜3の場合、耐型かじり性、化成処理性が共に優れていることが分かる。
(2)No.7は、No.4とほぼ同程度の亜鉛系酸化物の量を有しているが、被覆率が低い比較例4である。耐型かじり性及び化成処理性が不良であることが分かる。No.8はNo.7と同じ通電条件下ではあるが通電時間を長くすることで亜鉛系酸化物の量及び被覆率を本発明範囲内とした本発明例4である。耐型かじり性及び化成処理性が良好となっていることが分かる。
(3)No.4およびNo.9〜14はリンを含有する水溶液で水洗処理を行わない場合もしくはリン含有率を変化させた場合の例である。リンを含有する水溶液で水洗処理を行わないNo.9及び10の比較例5、6は化成処理性が不良であることが分かる。一方、No.4及びNo.11〜14の本発明例2、5〜8は好適な条件でリンを含有する水溶液で水洗処理を行っており、化成処理性および耐型かじり性が優れていることが分かる。
(4)No15〜17の本発明例9〜11は、リンを含有する水溶液で水洗処理のpHを変化させた例である。いずれも良好な化成処理性と耐型かじり性が得られていることが分かる。
(5)No.4及びNo.18〜20の本発明例2、12〜14は電解浴へのイオン供給化合物を変化させた例である。いずれの化合物を用いた場合でも良好な耐型かじり性と化成処理性が得られていることが分かる。
(6)No.4及びNo.24〜28の本発明例2、15〜19は鋼板の種類を変化させた例である。いずれも良好な化成処理性と耐型かじり性が得られていることが分かる。
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力
Claims (4)
- 亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有する水溶液中で鋼板を陰極として電解処理し、鋼板表面に亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物を、金属亜鉛量に換算して70〜500mg/m2かつ鋼板表面の被覆率:60%以上となるように形成し、
次いで、リンを含有する水溶液に前記鋼板を接触させることを特徴とする化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。 - 前記鋼板はSiを0.1質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
- 前記リンを含有する水溶液のリン含有率が5〜5000mass ppmであることを特徴とする請求項1または2に記載の化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
- 前記リンを含有する水溶液のpHが4〜12であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化成処理性および耐型かじり性に優れた鋼板の製造方法。
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