以下、本発明の発光装置について詳細に説明する。
本発明の発光装置は、発光素子と、該発光素子を覆う蛍光体層と、該蛍光体層上に配置された光トランスファー層とを有することを特徴とする。本発明の発光装置は、特に、蛍光体層の屈折率をn1、光トランスファー層の屈折率をn2としたとき、n2/n1≦1.07、かつ蛍光体層の中心軸を通る少なくとも1つの平面において、蛍光体層の中心軸から側面部までの長さをd、発光素子の厚みを除いた蛍光体層と光トランスファー層との合計した厚みをtとしたとき、t/d>0.4であることを特徴とする。なお、本発明における屈折率は、波長460nmの光における屈折率である。
図1(a)は、本発明の発光装置の一例を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す発光装置の発光素子と蛍光体層とを示す平面図である。
本発明の発光装置1は、例えば、平板状の基板2、該基板2の中央部に設けられる平面形状が四角形状の発光素子3、該発光素子3を覆うように設けられる平面形状が四角形状の蛍光体層4、および該蛍光体層4の側面部を囲むように設けられる筒状反射部5を有する。本発明の発光装置1は、さらに蛍光体層4の上部に、該蛍光体層4とほぼ同一の平面形状を有し、側面部が露出された光トランスファー層6を有する。
基板2としては、例えば、樹脂材料からなる電気絶縁板と配線パターンとからなるもの、熱伝導性の良好な金属材料、具体的にはアルミニウム板上にシリコーン樹脂等からなる電気絶縁層を介して配線パターンが形成されたものが挙げられる。また、基板2としては、公知のセラミックス基板、例えば、窒化ケイ素基板、窒化アルミニウム基板等が挙げられる。さらに、基板2としては、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物を焼成したガラスセラミックス基板、いわゆる低温同時焼成基板(LTCC基板)が挙げられる。筒状反射部5としては、樹脂材料、アルミニウム等の金属材料、窒化ケイ素基、窒化アルミニウム等のセラミックス材料、またはガラスセラミックス材料からなるものが挙げられる。
ここで、ガラスセラミックスは、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物の焼成物である。ガラス粉末としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を57〜65%、B2O3を13〜18%、CaOを9〜23%、Al2O3を3〜8%、K2OおよびNa2Oから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5〜6%含有するものが好ましい。
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマとなるものである。SiO2の含有量を57%以上とすることで、ガラスを安定化させ、また化学的耐久性を確保できる。一方、SiO2の含有量を65%以下とすることで、ガラス溶融温度やTgで表わされるガラス転移点の過度な上昇を抑制できる。SiO2の含有量は、好ましくは58%以上、より好ましくは59%以上、特に好ましくは60%以上である。また、SiO2の含有量は、好ましくは64%以下、より好ましくは63%以下である。本明細書では以下ガラス転移点をTgという。
B2O3は、ガラスのネットワークフォーマとなる。B2O3の含有量を13%以上とすることで、ガラス溶融温度やTgの過度な上昇を抑制できる。一方、B2O3の含有量を18%以下とすることで、ガラスを安定化させ、また化学的耐久性を確保できる。B2O3の含有量は、好ましくは14%以上、より好ましくは15%以上である。また、B2O3の含有量は、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下である。
Al2O3は、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を向上させる。Al2O3の含有量を3%以上とすることで、ガラスを安定化させることができる。一方、Al2O3の含有量を8%以下とすることで、ガラス溶融温度やTgの過度な上昇を抑制できる。Al2O3の含有量は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上である。また、Al2O3の含有量は、好ましくは7%以下、より好ましくは6%以下である。
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めるとともに、ガラス溶融温度やTgを低下させる。CaOの含有量を9%以上とすることで、ガラス溶融温度の過度な上昇を抑制できる。一方、CaOの含有量を23%以下とすることで、ガラスを安定化させることができる。CaOの含有量は、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上、特に好ましくは14%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22%以下、より好ましくは21%以下、特に好ましくは20%以下である。
K2O、Na2Oは、Tgを低下させる。K2OおよびNa2Oの合計した含有量を0.5%以上とすることで、ガラス溶融温度やTgの過度な上昇を抑制できる。一方、K2OおよびNa2Oの合計した含有量を6%以下とすることで、化学的耐久性、特に耐酸性を確保できるとともに、電気的絶縁性も確保できる。K2OおよびNa2Oの合計した含有量は、0.8%以上5%以下が好ましい。
セラミックス粉末は、ガラスセラミックスの反射率を向上させる。セラミックス粉末としては、従来からガラスセラミックスの製造に用いられるセラミックス粉末が挙げられ、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、安定化ジルコニア粉末、チタニア粉末、これらから選ばれる2種以上の混合物が挙げられる。
ガラス粉末とセラミックス粉末とは、例えば、ガラス粉末30〜50質量%、セラミックス粉末70〜50質量%の割合で配合し、混合して、ガラスセラミックス組成物とする。このガラスセラミックス組成物を成形し、焼成を行うことでガラスセラミックスを得ることができる。
発光素子3としては、例えば青色光を発する青色発光ダイオード素子が挙げられる。発光素子3の大きさは必ずしも限定されないが、1辺の長さが0.2〜1mmの正方形状または矩形状が好ましい。また、厚さについても必ずしも限定されないが、0.05〜0.5mmが好ましい。
蛍光体層4としては、例えばシリコーン樹脂等の樹脂材料中に青色光により励起されて黄色光を発する黄色蛍光体が分散されたものが挙げられる。蛍光体層4の屈折率n1は、通常、1.41前後である。蛍光体層4の大きさは必ずしも限定されないが、1辺の長さが1〜15mmの正方形状、矩形状、または円形状が好ましい。発光素子3の厚みを除いた蛍光体層4の厚みは、t/d>0.4を満たす範囲内であれば必ずしも限定されないが、通常、0.3〜1.3mmが好ましい。
光トランスファー層6は、蛍光体層4の屈折率をn1、光トランスファー層6の屈折率をn2としたとき、n2/n1≦1.07を満たすものである。通常、蛍光体層4の屈折率n1に応じて、上記屈折率比を満たすように光トランスファー層6の屈折率n2が調整される。
また、光トランスファー層6は、蛍光体層4の中心軸を通る少なくとも1つの平面において、蛍光体層4の中心軸から側面部までの長さをd、発光素子3の厚みを除いた蛍光体層4と光トランスファー層6との合計した厚みをtとしたとき、t/d>0.4を満たすものである。通常、蛍光体層4の厚みに応じて、上記厚み比を満たすように光トランスファー層6の厚みが調整される。
上記平面としては、蛍光体層4の中心軸を通る平面であれば特に限定されないが、図1(b)に示すように蛍光体層4の平面形状が正方形状の場合、1対の対向する辺、例えば図1(b)における左右方向の1対の辺の各辺の中央部を通る平面が好ましい。この場合、長さdは、蛍光体層4の中心軸から側面部の1辺に引いた垂線の長さとなる。
蛍光体層4の中心軸を通る少なくとも1つの平面において上記した屈折率比および厚み比を満たすように光トランスファー層6を設けることで、生産性を良好としつつ、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる。図2は、従来の発光装置、すなわち光トランスファー層6を有しない発光装置の発光状態を説明する説明図である。なお、本発明の発光装置1と同様の部分には同一の符合を付している。従来の発光装置11については、発光素子3から出射される光のうち出射角度の比較的大きい光が蛍光体層4の上面で全反射されるために、結果として蛍光体層4からの取出し光量の低下が起こる。従来の発光装置11では、例えば発光素子3の光束に対して54%程度の取出し光量となり、かつ115°程度の配光角しか得ることができない。
図3は、本発明の発光装置1の発光状態を説明する説明図である。本発明の発光装置1によれば、蛍光体層4の中心軸を通る少なくとも1つの平面において上記した屈折率比および厚み比を満たすように光トランスファー層6を設けることで、発光素子3から出射される光のうち出射角度の比較的大きい光について、蛍光体層4の上面における全反射を抑制し、光トランスファー層6を通してその側面部から出射させることができる。これにより、従来の発光装置11に比べて、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる。なお、発光素子3から出射される光のうち出射角度の比較的小さい光については、従来の発光装置11と同様、光トランスファー層6を通してその上面から出射させることができる。また、本発明の発光装置1によれば、従来の発光装置11に光トランスファー層6を設けるだけで済むため、生産性も良好にできる。
ここで、n2/n1>1.07の場合、またはt/d≦0.4の場合、従来の発光装置11に比べて配光角および光束のいずれも増加できない。例えば、t/d≦0.4の場合、すなわち光トランスファー層6の厚みが過度に小さい場合、図4に示すように、発光素子3から出射される光のうち出射角度の比較的大きい光が光トランスファー層6の上面で全反射されやすく、配光角および光束のいずれも増加できない。なお、光トランスファー層6の屈折率n2は、空気の屈折率よりも大きければ必ずしも制限されないが、1.05以上が好ましい。すなわち、光トランスファー層6の屈折率n2は、0.74≦n2/n1≦1.07を満たすことが好ましい。また、光トランスファー層6の厚みtは、0.4<t/d≦1.7を満たすことが好ましい。光トランスファー層6は、0.74≦n2/n1≦1.03かつ0.5≦t/d≦1.7を満たすことがより好ましい。
従来の発光装置11に比べて配光角を効果的に大きくする観点からは、以下に示すように、所定の屈折率比n2/n1の範囲内となるように屈折率n2を調整するとともに、この屈折率比n2/n1の各範囲について所定の厚み比t/dとなるように厚みtを調整することが好ましい。
0.74≦n2/n1≦1.07であって、
0.74≦n2/n1<0.92の範囲では0.5≦t/d≦1.1、
0.92≦n2/n1≦1.07の範囲では0.5≦t/d≦1.7。
従来の発光装置11に比べて配光角を10°以上大きくする観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.74≦n2/n1≦1.03であって、
0.74≦n2/n1<0.75の範囲では0.7≦t/d≦0.9、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.5≦t/d≦0.9、
0.85≦n2/n1<0.92の範囲では0.5≦t/d≦1.1、
0.92≦n2/n1<0.97の範囲では0.5≦t/d≦1.3、
0.97≦n2/n1≦1.03の範囲では0.5≦t/d≦1.5。
一方、配光角を考慮せず、従来の発光装置11の光束を基準である100%としたとき、100%を超える光束を効果的に得る観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.74≦n2/n1≦1.07であって、
0.74≦n2/n1<0.75の範囲では0.5≦t/d≦1.7、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.7≦t/d≦1.7、
0.85≦n2/n1≦1.07の範囲では0.9≦t/d≦1.7。
配光角を考慮せず、105%以上の光束を得る観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.75≦n2/n1≦1.03であって、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.7≦t/d≦1.7、
0.85≦n2/n1≦1.03の範囲では0.9≦t/d≦1.7。
なお、配光角を考慮せず、単に95%以上の光束が得られる範囲は以下に示す通りである。
0.75≦n2/n1≦1.1であって、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.3≦t/d≦1.7、
0.85≦n2/n1<1.07の範囲では0.7≦t/d≦1.7、
1.07≦n2/n1≦1.1の範囲では0.9≦t/d≦1.7。
従来の発光装置11に比べて配光角が10°以上大きく、かつ95%以上の光束を得る観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.74≦n2/n1≦1.03であって、
0.74≦n2/n1<0.75の範囲では0.7≦t/d≦0.9、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.5≦t/d≦0.9、
0.85≦n2/n1<0.92の範囲では0.7≦t/d≦1.1、
0.92≦n2/n1<0.97の範囲では0.7≦t/d≦1.3、
0.97≦n2/n1≦1.03の範囲では0.7≦t/d≦1.5。
また、従来の発光装置11に比べて配光角が10°以上大きく、かつ100%以上の光束を得る観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.74≦n2/n1≦1.03であって、
0.74≦n2/n1<0.85の範囲では0.7≦t/d≦0.9、
0.85≦n2/n1<0.92の範囲では0.7≦t/d≦1.1、
0.92≦n2/n1<0.97の範囲では0.9≦t/d≦1.3、
0.97≦n2/n1≦1.03の範囲では0.9≦t/d≦1.5。
さらに、従来の発光装置11に比べて配光角が10°以上大きく、かつ105%以上の光束を得る観点からは、以下に示すものが好ましい。
0.75≦n2/n1≦1.03であって、
0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.7≦t/d≦0.9、
0.85≦n2/n1<0.92の範囲では0.9≦t/d≦1.1、
0.92≦n2/n1<0.97の範囲では0.9≦t/d≦1.3、
0.97≦n2/n1≦1.03の範囲では0.9≦t/d≦1.5。
光トランスファー層6の平面方向の大きさは、蛍光体層4の平面方向の大きさとほぼ同様が好ましい。蛍光体層4に比べて光トランスファー層6が過度に小さい場合、蛍光体層4の上面のうち光トランスファー層6により覆われていない部分で全反射が起こり、配光角および光束のいずれも有効に増加できない。また、蛍光体層4に比べて光トランスファー層6が過度に大きい場合、光トランスファー層6の上面のうち側面部に近い部分で全反射が起こり、配光角および光束のいずれも有効に増加できない。
ここで、配光角とは、発光装置1について出射角度ごとに光度を測定したときに、出射角度が0度、つまり発光装置1の表面に対して垂直方向のときの光度に対して、光度が半分になるときの出射角度、つまり半値幅を意味する。配光角の測定は、例えば、受光ファイバーと分光器とを組み合わせた光学装置を用い、出射角度毎に光量を測定することにより行うことができる。
光トランスファー層6の好適な厚さ、すなわち光トランスファー層6の上面における全反射を抑制し、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる厚さは、以下のような計算により求められる。すなわち、図5に示すように、光トランスファー層6の上面と下面は略平行として、蛍光体層4の屈折率n1、光トランスファー層6の屈折率n2、空気の屈折率n3、光トランスファー層6の下面における入射角θ1、屈折角θ2、光トランスファー層6の上面における入射角θ2、屈折角θ3には、以下の関係が成立する。
n1sinθ1=n2sinθ2
n2sinθ2=n3sinθ3
ここで、略平行とは面と面の平行からのずれが±3°であることを言う。
空気の屈折率n3=1であり、光トランスファー層6の上面で全反射が起きるときの条件はθ3=90°のときであることから、以下のようにθ1、θ2が求められる。
n2sinθ2=1
θ2=arcsin(1/n2)
θ1=arcsin(n2sinθ2/n1)=arcsin(1/n1)
一方、蛍光体層4において光が水平方向に進む距離d1、光トランスファー層6において光が水平方向に進む距離d2、発光素子3を除いた蛍光体層4の厚みt1、光トランスファー層6の厚みt2には、以下の関係が成立する。
d1=t1×tanθ1
d2=t2×tanθ2
d1+d2=t1×tanθ1+t2×tanθ2
光トランスファー層6の上面で全反射が起きず、該上面の外縁の角部で全反射が起きるときの条件は、距離d1、距離d2の合計が、蛍光体層4、つまり光トランスファー層6の中心軸から側面部までの長さdに等しいときであることから、以下の関係が成立する。
t2=(d−t1×tanθ1)/tanθ2
従って、蛍光体層4における長さd、蛍光体層4の屈折率n1、および光トランスファー層6の屈折率n2から、光トランスファー層6の上面における全反射を抑制し、代わりに側面部から光を出射させ、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる光トランスファー層6の好ましい厚さを求めることができる。なお、本発明における屈折率比n2/n1および厚み比t/dは、このようにして求められる光トランスファー層6の厚さを元にし、従来の発光装置11に比べて、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる範囲を規定したものである。
表1は、上記計算により求められた光トランスファー層6の厚みt2を示すものである。なお、光トランスファー層6の厚みt2は、光トランスファー層6の屈折率n2を1〜1.53の範囲で変化させて求めた。また、蛍光体層4の構成は、以下に示すものとした。
蛍光体層4の大きさ:5mm×5mm(d=2.5mm)
蛍光体層4の厚みt1:0.5mm
蛍光体層4の屈折率n1:1.41
光トランスファー層6の構成材料は、蛍光体層4の屈折率n1に応じてn2/n1≦1.07を満たすものであれば必ずしも限定されないが、樹脂材料が好ましく、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、中空状シリカを含有するアクリル系樹脂等が好ましい。また、蛍光体層4の屈折率n1に応じてn2/n1≦1.07を満たす範囲内で、蛍光体層4に含まれる蛍光体と同様の蛍光体を含有することもできる。すなわち、蛍光体層4と光トランスファー層6とは同一材料から構成することもできる。
フッ素樹脂としては、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニルエーテル−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられ、屈折率が低い点から、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体またはETFEが好ましく、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が特に好ましい。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体は、無定形または非結晶性の重合体である。主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するとは、重合体における含フッ素脂肪族環の環を構成する炭素原子の1個以上が重合体の主鎖を構成する炭素原子であることをいう。含フッ素脂肪族環の環を構成する原子は、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子等を含んでいてもよい。含フッ素脂肪族環としては、1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は、4〜7個が好ましい。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体は、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体を形成し得る含フッ素単量体を含む単量体成分を重合して得られる。該含フッ素単量体としては、炭素−炭素二重結合および含フッ素脂肪族環構造を有し、かつ炭素−炭素二重結合を構成する少なくとも1つの炭素原子が含フッ素脂肪族環構造の一部を構成する環状単量体、炭素−炭素二重結合を2つ有する線状のジエン系単量体が挙げられる。
主鎖を構成する炭素原子は、環状単量体を重合させて得た重合体である場合には炭素−炭素二重結合の炭素原子に由来し、ジエン系単量体を環化重合させて得た重合体である場合には2個の炭素−炭素二重結合の4個の炭素原子に由来する。
環状単量体およびジエン系単量体において、炭素原子に結合した水素原子および炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合は、それぞれ、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。
環状単量体としては、化合物(1)または化合物(2)が好ましい
ただし、X1は、フッ素原子または炭素原子数1〜3のペルフルオロアルコキシ基を示し、R1およびR2は、それぞれフッ素原子または炭素原子数1〜6のペルフルオロアルキル基を示し、X2およびX3は、それぞれフッ素原子または炭素原子数1〜9のペルフルオロアルキル基を示す。
化合物(1)の具体例としては、化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。
化合物(2)の具体例としては、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
ジエン系単量体としては、化合物(3)が好ましい。
CF2=CF−Q−CF=CF2 …(3)。
ただし、Qは、炭素原子数1〜3のペルフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)を示す。エーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基である場合、エーテル性酸素原子は該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子の間に存在していてもよい。環化重合性の点からは、該基の一方の末端に存在しているのが好ましい。
化合物(3)の環化重合により、下式(I)〜(III)のうちの1種以上のモノマー単位を有する含フッ素重合体が得られる。
化合物(3)の具体例としては、化合物(3−1)〜(3−9)が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF=CF2 …(3−1)、
CF2=CFOCF(CF3)CF=CF2 …(3−2)、
CF2=CFOCF2CF2CF=CF2 …(3−3)、
CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2 …(3−4)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2 …(3−5)、
CF2=CFOCF2OCF=CF2 …(3−6)、
CF2=CFOC(CF3)2OCF=CF2 …(3−7)、
CF2=CFCF2CF=CF2 …(3−8)、
CF2=CFCF2CF2CF=CF2 …(3−9)。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体において、全モノマー単位(100モル%)に対する含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位とは、環状単量体の重合により形成されたモノマー単位、またはジエン系単量体の環化重合により形成されたモノマー単位である。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体としては、例えば旭硝子社製の商品名「サイトップ」が挙げられ、その屈折率は1.34である。また、上記したエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の屈折率は1.36である。
フッ素樹脂からなる光トランスファー層6の形成は、例えば、該フッ素樹脂を形成し得る単量体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、該活性エネルギー線硬化性組成物を所定の形状に成形し、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して行う。また、フッ素樹脂を溶融させて所定の形状に成形し、冷却して形成してもよいし、またフッ素樹脂を溶媒に溶解させて塗布液を調製し、該塗布液を所定の形状に塗布し、該塗布液から溶媒を揮発させて形成してもよい。
中空状シリカを含有するアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物および中空状シリカを少なくとも含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物、例えば特開2010−2572号公報に記載されるような組成物中の固形分100質量部中の中空状シリカの割合が30〜45質量部である活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、耐摩耗性に優れた硬化膜を形成できるという理由から、(メタ)アクリロイル基を、1分子中に2個以上有することが好ましく、2〜50個有することがより好ましく、3〜30個有することが特に好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基とメタクリロイル基の両者を意味する総称として使用する。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては以下の(1)〜(4)の化合物が一例として挙げられる。
(1)ペンタエリスリトールやその多量体であるポリペンタエリスリトールと、ポリイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、の反応生成物であるアクリルウレタンであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上、より好ましくは4〜20個有する多官能性化合物。
(2)ペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートと、の反応生成物であるアクリルウレタンであり、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2個以上、より好ましくは4〜20個有する多官能性化合物。
(3)ペンタエリスリトール又はポリペンタエリスリトールと、(メタ)アクリル酸とのポリエステルであるペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートであり、好ましくは(メタ)アクリロイル基を4〜20個有する多官能性化合物。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート。
(4)トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート又はトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートの1モルに、1〜6モルのカプロラクトン又はアルキレンオキシドを付加して得られる化合物と、(メタ)アクリル酸とのポリエステルであるイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートである、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2〜3個有する多官能性化合物。
中空状シリカは、屈折率が1.2〜1.4のものが好ましく、さらに好ましくは1.25〜1.35である。なお、ここでの屈折率は、粒子全体としての屈折率を表しており、外殻のシリカのみの屈折率ではない。中空状シリカの屈折率は、中空状シリカの分散液をプラスチック基板上に、乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布・乾燥した後、片面反射スペクトルを測定することにより求める。
中空状シリカの平均粒径は、特に限定されないが、5〜150nmの範囲が好ましい。平均粒径が5nm未満であると、外殻のシリカの厚さが薄くなり、粒子の物理強度が弱くなる傾向にある。平均粒径が150nmを超えると、硬化膜の透明性が低下する傾向にある。
中空状シリカは、溶媒に分散させて、中空状シリカの分散液として、活性エネルギー線硬化性組成物の調製に用いてもよい。中空状シリカの分散に用いる溶媒としては、特に限定されないが、保存安定性の点から極性溶媒が好ましく、水、低級アルコール類、グリコールエーテル類が好ましく挙げられる。低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。これらの極性溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような中空状シリカやその分散液は、例えば、特開2001−233611号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−335881号公報などに記載されている方法により製造することができる。
中空状シリカは、その表面を、分子末端にパーフルオロアルキル基、またはパーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物で表面処理したものを用いてもよい。このような表面処理を施すことによって、中空状シリカの表面張力を下げることができる。
中空状シリカの表面修飾に用いる上記加水分解性シラン化合物としては、例えば、C6F13−C2H4−OSi(OC2H5)3、CF3O−(CF2CF2O)x−CF2CH2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3、CF3O−(CF2CF2O)x−CF2CONH(CH2)3Si(OCH3)3等の化合物が挙げられる。ただし、xは1〜100の整数である。
中空状シリカの表面を、上記加水分解性シラン化合物で修飾する方法としては、特に限定されない。例えば、中空状シリカと加水分解性シラン化合物とを攪拌混合し、必要に応じて、酸やアルカリなどの触媒を加えて処理する方法などが挙げられる。
中空状シリカを表面修飾する際に用いる加水分解性シラン化合物の使用割合は、中空状シリカ100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。加水分解性シラン化合物の使用割合が1質量部未満であると、上記表面修飾による効果が十分得られないことがある。50質量部を超えると、硬化膜の透明性が低下する傾向にある。
中空状シリカと加水分解性シラン化合物との反応温度は、特に限定されないが、5〜60℃程度が好ましい。温度が低すぎると加水分解速度が遅くなり時間がかかる傾向にある。また、温度が高すぎると、中空状シリカの分散媒(水、低級アルコール類、グリコールエーテル類等)が揮発しやすくなり、中空状シリカの保存安定性や、取り扱い性が低下する傾向にある。
中空状シリカの含有量は、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物中の固形分100質量部に対し30〜45質量部であり、32質量部以上が好ましく、34質量部以上が特に好ましい。中空状シリカの含有量が前記比率で30質量部未満であると、中空状シリカの含有量が少ないため、屈折率が十分に低下せず、また反射防止機能等が十分に得られないとともに、反射光に着色が付きやすくなる。一方、中空状シリカの含有量が前記比率で45質量部を超えると、形成される硬化膜の透明性が低下する傾向にある。中空状シリカの含有量を上記範囲とすることで、屈折率が低く、透明性、物理強度、反射防止性等を兼ね備え、反射光による着色等のない硬化膜を生産性よく形成できる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、上記した(メタ)アクリロイル基を有する化合物および中空状シリカ、その他に活性エネルギー線重合開始剤、溶媒等を混合して調製する。この活性エネルギー線硬化性組成物を所定の形状に成形し、活性エネルギー線を照射して硬化させることで、光トランスファー層6とする。
活性エネルギー線重合開始剤としては、特に限定されず、公知の光重合開始剤を使用できる。具体例としては、アリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシルオキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド類系光重合開始剤(例えば、アシルジアリールホスフィンオキシド等)が挙げられる。これらは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アミン類などの光増感剤と組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましい。活性エネルギー線重合開始剤の量が該範囲にあると、プラスチック被覆用組成物の硬化性が充分であり、硬化の際に全ての活性エネルギー線重合開始剤が分解するため好ましい。
溶媒は、特に限定はないが、水と、25℃における水に対する溶解度が10%以上の有機溶媒と、を少なくとも含むものが好ましい。溶媒の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物100質量部に対し、75〜90質量部が好ましい。
水は、中空状シリカの保存安定性の観点から好ましく用いることができる。水の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物100質量部に対し、5〜30質量部が好ましい。水の含有量が5質量部未満であると、中空状シリカの保存安定性が低下するおそれがある。また、水の含有量が30質量部を超えると、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する際に、被塗布表面ではじきが生じ、均一な硬化膜を形成できないことがある。
水に対する溶解度が10%以上の有機溶媒(以下、「水溶性有機溶媒」と記す)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を溶解させることができ、また、水とも分相するおそれも少ないので、均一な組成物が得られやすくなる。このような、水溶性有機溶媒としては、低級アルコール類、グリコールエーテル類、ケトン類が挙げられる。低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物100質量部に対し、45〜85質量部が好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が、45質量部未満であると、水の含有量が多くなりすぎて、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した際に、被塗布表面ではじきが生じ、均一な硬化膜を形成できないことがある。また、水溶性有機溶媒の含有量が、85質量部を超えると、活性エネルギー線硬化性組成物中の水の含有量が少なくなりすぎて、中空状シリカの保存安定性が低下するおそれがある。
また、活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて、撥水撥油剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料(有機着色顔料、無機顔料)、着色染料、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、分散剤、防曇剤、カップリング剤からなる群から選ばれる1種以上の機能性配合剤を含めてもよい。
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化に用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、および高周波線等が好ましく挙げられ、特に180〜500nmの波長を有する紫外線が経済的に好ましい。活性エネルギー線の光量としては、特に限定されないが、50〜2000mJ/cm2が好ましい。活性エネルギー線の光量が50mJ/cm2未満であると、硬化膜の硬化が不充分となり、硬化膜の物理強度が低下する恐れがある。一方、活性エネルギー線の光量が2000mJ/cm2を超えると、光量が強すぎて、硬化膜等が加熱変形してしまう恐れがある。
図6(a)は、本発明の発光装置1の変形例を示す断面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す発光装置1の発光素子3と蛍光体層4とを示す平面図である。
基板2に搭載される発光素子3は、図6に示すように複数でもよく、必ずしも図1に示すように1つに限られない。複数の発光素子3を有する場合、複数の発光素子3を覆うように設けられる蛍光体層4の全体における中心軸が上記した蛍光体層4の中心軸となる。
また、蛍光体層4の平面形状は、必ずしも正方形状に限られず、図7(b)に示すような長方形状であってもよい。この場合についても、蛍光体層4の中心軸を通る少なくとも1つの平面においてt/d>0.4を満たせばよいが、1対の対向する短辺、例えば図7(b)では左右方向の1対の短辺の各辺の中央部を通る平面についてt/d>0.4を満たすことが好ましい。蛍光体層4の平面形状が長方形状の場合についても、該蛍光体層4の中心軸を通る少なくとも1つの平面においてt/d>0.4を満たすことで、従来の発光装置11に比べて、配光角および光束の少なくとも一方を増加できる。
光トランスファー層6には、その上面における反射を抑制して発光効率を向上させる観点から、蒸着法による反射防止層、特に低温蒸着法による反射防止層、または複数の凸部からなる反射防止構造を設けることが好ましい。通常、光トランスファー層6は樹脂材料から構成され、耐熱性が比較的に低いことから、これらの中でも形成時に光トランスファー層6を損傷させにくい低温蒸着法による反射防止層や複数の凸部からなる反射防止構造が好ましい。特に、複数の凸部からなる反射防止構造によれば、その形成時の光トランスファー層6の損傷を抑制しやすく、また光トランスファー層6の形成と同時に形成、具体的には光トランスファー層6の成形および硬化等と同時に成形および硬化等ができるために好ましい。以下、複数の凸部からなる反射防止構造を単に反射防止構造と記す。
反射防止構造としては、例えば、図8に示すような光トランスファー層6の上面に形成された複数の凸部7aからなる反射防止構造7が挙げられる。なお、反射防止構造7は、図示しないが、光トランスファー層6とは別体の支持基材上に形成されたものであってもよい。このような反射防止構造7が形成された支持基材は、光トランスファー層6の上面に積層されて用いられる。
凸部7aとしては、図示されるような長尺の凸条の他、点在する突起等が挙げられる。凸条は、反射防止の点から、複数が平行に存在して縞状をなすことが好ましい。凸条の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられ、反射防止の点から直線が好ましい。凸条の長手方向に直交する断面の形状としては、三角形、台形、長方形、半円形等が挙げられ、反射防止の点から三角形、または台形が好ましい。また、突起の形状は、円錐形、角錐形、角錐台形、角柱形、円柱形、半球形等が挙げられ、反射防止の点から、円錐形、角錐形、または角錐台形が好ましい。図9に突起の一例として円錐形の凸部7aを有する反射防止構造7を示す。
凸部7aのピッチPは、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。凸部7aのピッチPは、成形性等の点から、50nm以上が好ましい。なお、凸部7aのピッチPとは、凸部7aの底部の幅Wと、凸部7a間に形成される溝の底部の幅との合計である。図8に示されるように凸部7aが隙間なく配列される場合、凸部7aのピッチPは凸部7aの底部の幅Wと同じになる。
凸部7aのアスペクト比(凸部7aの高さH/凸部7aのピッチP)は、凸部7aの成形性および耐擦傷性の点からは、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。凸部7aのアスペクト比は、反射率を低く抑える点からは、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。
凸部7aの底部の幅Wは、凸部7aのピッチPに対して、0.5〜1倍が好ましく、1倍が特に好ましい。既に説明したように、凸部7aの底部の幅Wは凸部7aが隙間なく配列している場合、凸部7aのピッチPと同じになる。凸部7aの底部の幅Wとは、凸条の場合は、長手方向に直交する断面における底辺の長さであり、突起の場合は、突起の底面における最大長さである。
反射防止構造7の構成材料は樹脂材料が好ましく、該樹脂材料としては光トランスファー層6の構成材料である樹脂材料と同様のものが挙げられる。樹脂材料の中でも、フッ素系樹脂が好ましく、屈折率が低い点から、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体またはETFEが好ましく、特に主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。また、反射防止構造7は、蛍光体層4に含まれる蛍光体と同様の蛍光体を含有することもできる。すなわち、蛍光体層4、光トランスファー層6、および反射防止構造7の全てを同一材料から構成することもできる。
次に、光トランスファー層6、反射防止構造7の形成方法について説明する。
光トランスファー層6は、例えば、予め上記したような樹脂材料からなる所定形状の光トランスファー層用シートを製造しておき、これを図10に示すように粘着剤層8を介して蛍光体層4に積層および粘着して形成する。
粘着剤層8の構成材料としては、該粘着剤層8の屈折率をn4としたとき、n2≦n4≦n1を満たすものが好ましく、例えば、光トランスファー層6の構成材料と同様のシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましい。なお、粘着剤層8の厚みは、配光角および光束の低下を抑制する観点から0.1mm以下が好ましい。
反射防止構造7を設ける場合、蛍光体層4への積層前に予め光トランスファー層用シートに設けてもよいし、蛍光体層4に光トランスファー層用シートを積層してから反射防止構造7を形成してもよい。
また、光トランスファー層6は、図11に示すように、光トランスファー層6を形成し得る未硬化の樹脂組成物、例えば活性エネルギー線硬化性組成物、その他の光トランスファー層6を形成し得る溶融物または塗布液を蛍光体層4の上面に所定の形状および厚みとなるように直接塗布および成形し、硬化または固化させて形成してもよい。反射防止構造7を設ける場合、光トランスファー層6の形成、例えば成形および硬化または固化等と同時に反射防止構造7の形成、例えば成形および硬化または固化等を行ってもよいし、光トランスファー層6を形成してから反射防止構造7を形成してもよい。
さらに、蛍光体層4の構成材料と光トランスファー層6の構成材料とが同一の場合、例えば図12に示すように、蛍光体層4および光トランスファー層6を形成し得る未硬化の樹脂組成物、例えば蛍光体組成物を筒状反射部5に充填するとともに、所定の高さとなるように成形し、硬化させて、蛍光体層4と光トランスファー層6とを同時に形成してもよい。反射防止構造7を設ける場合、蛍光体層4および光トランスファー層6の形成、すなわち成形および硬化と同時に反射防止構造7の形成、すなわち成形および硬化を行ってもよいし、蛍光体層4および光トランスファー層6を形成してから反射防止構造7を形成してもよい。
以下、反射防止構造7の形成方法について説明する。なお、以下では、反射防止構造7のみを形成する場合について説明するが、反射防止構造7は必ずしも単独で形成する必要はなく、光トランスファー層用シートや光トランスファー層6の形成、例えば成形および硬化と同時に成形および硬化を行って形成することもできる。
(α)光インプリント法:凸部7aの反転形状である凹部を有するモールドを用い、該凹部に凸部7aを形成し得る未硬化の樹脂組成物、具体的には活性エネルギー線硬化性組成物を充填し、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて凸部7aを形成する。
(β)熱インプリント法:凸部7aの構成材料、例えばフッ素樹脂からなる樹脂膜に、凸部7aの反転形状である凹部を有するモールドを、該樹脂膜およびモールドの少なくとも一方を加熱しながら押し付けて凸部7aを形成する。
(γ)射出成形法:凸部7aの反転形状である凹部を有するモールドを用い、該モールドのキャビティ内に、凸部7aの構成材料、例えばフッ素樹脂の溶融物を射出し、冷却して、凸部7aを形成する。
(δ)キャスト法:凸部7aの反転形状である凹部を有するモールドを用い、該凹部に凸部7aの構成材料、例えばフッ素樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を塗布し、溶媒を揮発させて凸部7aを形成する。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。
図1に示す構成の発光装置1について、光トランスファー層6の厚みt2と屈折率n2とを変化させて計算により配光角を求めた。なお、基板2および筒状反射部5はアルミニウムからなるものとし、発光素子3は、大きさ0.5mm×0.5mm、厚み=0.1mmの青色発光ダイオード素子、蛍光体層4は、シリコーン樹脂中に青色光により励起されて黄色光を発する黄色蛍光体が分散され、屈折率n1=1.41、大きさ5mm×5mm、発光素子3を除いた厚みt1=0.5mmのものとした。また、配光角の計算は、図1(b)に示すように正方形状の蛍光体層4の左右方向の1対の対向する辺の各辺の中央部を通る平面(d=2.5mm)について行った。結果を表2、図11に示す。なお、光トランスファー層6を設けないときの配光角は115°である。
表2、図13から明らかなように、n2/n1≦1.07かつt/d>0.4とすることで、光トランスファー層6を設けないときに比べて配光角を大きくできる。特に、0.74≦n2/n1≦1.07であって、0.74≦n2/n1<0.92の範囲では0.5≦t/d≦1.1、0.92≦n2/n1≦1.07の範囲では0.5≦t/d≦1.7とすることで、配光角を効果的に大きくできる。
次に、同構成の発光装置1について、光トランスファー層6の厚みt2と屈折率n2とを変化させて光束を計算により求めた。結果を表3、図14に示す。なお、結果は、光トランスファー層6を設けないときの光束を100%として表示した。
表3、図14から明らかなように、n2/n1≦1.07かつt/d>0.4とすることで、光トランスファー層6を設けないときに比べて光束を大きくできる。特に、0.74≦n2/n1≦1.07であって、0.74≦n2/n1<0.75の範囲では0.5≦t/d≦1.7、0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.7≦t/d≦1.70、0.85≦n2/n1≦1.07の範囲では0.9≦t/d≦1.7とすることで、効果的に光束を大きくできる。
表4に、配光角が125°以上かつ光束が95%以上を満たすものを示す。表中、「○」は、配光角が125°以上かつ光束が95%以上を満たし、「×」は、配光角が125°未満または光束が95%未満であることを示す。
表4から明らかなように、0.74≦n2/n1≦1.03であって、0.74≦n2/n1<0.75の範囲では0.7≦t/d≦0.9、0.75≦n2/n1<0.85の範囲では0.5≦t/d≦0.9、0.85≦n2/n1<0.92の範囲では0.7≦t/d≦1.1、0.92≦n2/n1<0.97の範囲では0.7≦t/d≦1.3、0.97≦n2/n1≦1.03の範囲では0.7≦t/d≦1.5を満たすことで、125°以上の配光角かつ95%以上の光束を得られる。