まず、本発明に係る照明装置(バックライト)が備える主な構成について、各実施例を説明する前に、その概略を説明する。本発明に係る照明装置は、少なくとも、点状または線状の光を発する光源と、当該光源が発した光(以下、光源光と呼ぶ。)を面状光に変換して出射させる導光板と、導光板から出射した光の進行方向を変える光学シートと、を備える。
光源は導光板の一端面である光源光入射面に配置する。光学シートは導光板の表面である面状光出射面側に設けられ、導光板とは反対側の面に複数のプリズム列を有する。プリズム列の稜線の方向は光源が配置された導光板の光源光入射面の長手方向と略平行であり、プリズム列を形成するプリズムの断面形状は、プリズムの稜線からみて相対的に光源から遠い側の遠位面が少なくとも2種類の傾斜角度から構成されている。
また、望ましくはプリズムの稜線からみて相対的に前記光源に近い側の近位面の傾斜角度は、光源から遠い側の2つの遠位面のうち、いずれか一方の傾斜角度と略一致させる。
もしくは、プリズムの稜線からみて相対的に前記光源に近い側の面(近位面)が前記面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度は、前記複数の遠位面のうち、前記面状光入射面へ投影されたときに占める割合が最も高い遠位面が前記面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度に対して、0°以上10°以下の範囲で大きい角度とする。
上述の構成は、本発明に係る照明装置において以下のように作用する。光源から出射し、導光板の光源光入射面に入射した光は導光板内を導波しつつ、面状の光として導光板の表面側から出射する。導光板から出射する光は、輝度または光度が最大となる角度(ピーク角度)が導光板の面状光出射面に対して垂直な方向、即ち、正面方向からずれる。具体的には光源から出射し、導光板に入射した光が導光板内を進む主たる方向に向かって、輝度または光度が最大となる角度が60〜80度程度傾いた状態となる。このため、導光板から出射して、光学シートに入射する光は光学シートの裏面、すなわち面状光入射面に斜め方向から入射する。光学シートに入射した光は光学シートの面状光入射面および表面側(出光面側)に形成されたプリズムで屈折し、より正面方向に近い方向にその進行方向が変わる。
この際、導光板から出射し、輝度や光度が最大となる角度及びその近傍の角度の光は、その大部分がプリズムシートの表面側、すなわち出光側において、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面に入射して、正面方向に近い方向に屈折する。本発明ではプリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面は少なくとも2種類の異なる傾斜角度を有する。この場合、プリズムシートの表面側において正面方向及びその近傍の方向に屈折する光は、少なくとも2種類の屈折角度が混じり合った光となる。つまり、屈折の際に生じる異なる色の変化が混合し平均化されることでプリズムの波長分散に起因する色の変化が抑制される。
尚、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度の差Δφには最適な範囲が存在する。
ここで、プリズムの断面形状がプリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面が傾斜角度の異なる2種類の遠位面A及び遠位面Bから構成される場合について説明する。傾斜角度の差Δφが小さい場合、プリズムシートに入射した光が遠位面Aで屈折する方向と遠位面Bで屈折する方向の差が小さくなる。つまり、傾斜角度が異なる2つの遠位面で屈折する光の屈折角度の差は小さくなるため、異なる屈折角度の光が混じり合うことで得られる色変化の抑制効果が小さくなる。厳密にはプリズムを構成する透明材料の屈折率や波長分散に依存するが、概ね傾斜角度の差Δφが4°より小さい場合、観察する方向を変えたときの色の変化が明らかに認められるレベルとなる。このため、傾斜角度の差Δφは少なくとも4°以上とする必要がある。色の変化抑制の観点では、傾斜角度の差Δφは5°〜10°以上とすることが望ましい。
一方、傾斜角度の差Δφが大きい場合は、導光板から出射する光のうち輝度または光度が最大となる角度に進む光が、プリズムシートに入射して遠位面Aで屈折する方向と、遠位面Bで屈折する方向の違いが大きくなる。つまり、プリズムシートを通過する光は大きく広がり、正面方向またはその近傍の方向の輝度が低下する。極端な場合には輝度が極大値となる角度が2つ生じて正面方向またはその近傍の方向の輝度は著しく低下してしまう。厳密にはプリズムを構成する透明材料の屈折率や波長分散に依存するが、概ね、傾斜角度の差Δφが20°より大きい場合、輝度が極大値となる角度が明確に2つ現れ、正面方向またはその近傍の方向の輝度が大きく低下してしまう。このため、傾斜角度の差Δφは20°以下とする必要がある。正面方向またはその近傍の方向の輝度を高めるという観点では、傾斜角度の差Δφは15°以下とすることが望ましい。
以上からプリズムシートを構成するプリズムの断面形状は、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面が傾斜角度の異なる2種類の遠位面から構成される場合、その遠位面の傾斜角度の差Δφは以下の関係を満足することが望ましい。
4°≦Δφ≦20°
観察する方向の違いによる色の変化の抑制と、正面方向またはその近傍の方向における輝度を高めるため、傾斜角度の差Δφはより望ましくは以下の関係を満足することが望ましい。
5°≦Δφ≦15°
一方、プリズムの稜線からみて相対的に前記光源に近い側の近位面の傾斜角度は、光源から遠い側の2つの遠位面のうち、いずれか一方の傾斜角度と略一致させることが望ましい。あるいは、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の近位面が面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度は、複数の遠位面のうち、面状光入射面へ投影されたときに占める割合が最も高い遠位面が面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度に対して、0°以上10°以下の範囲で大きい角度とすることが望ましい。これは、本照明装置を液晶表示装置のバックライトとして用いる場合に正面方向の輝度を向上するためである。
液晶表示装置ではバックライトから出射する光の一部は液晶表示パネルの配線などにより反射してバックライト側に戻る。バックライトと液晶表示パネルとの間に反射型偏光板を用いる場合は特に液晶表示パネルの反射に加え、反射型偏光板の作用でより多くの光が反射してバックライト側に戻る。バックライト側に戻った光はバックライトで反射して再び液晶表示パネルに向かい再利用されて液晶表示装置の輝度に寄与する。
この際、バックライトの反射率、特に正面方向やその近傍の方向へ向かって反射する光が大きければ大きい程、液晶表示装置の正面方向やその近傍の方向における輝度は高くなる。
バックライトの正面方向の反射率には、液晶表示パネルに近い位置に配置するプリズムシートのプリズムの形状が関与する。具体的にはプリズムの断面形状をプリズムの稜線から見て相対的に光源に近い側の近位面の角度を、相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度と同じ値(但し、傾斜の方向は逆方向)で高められることを見出した。つまり、プリズムの稜線から導光板の面状光出射面に引いた垂線を仮定すると、プリズムの断面形状は、この線に対して、プリズムの稜線から見て相対的に光源に近い側の近位面の角度と、相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度が対称の関係にすることが望ましい。この場合、バックライトの正面方向の反射率が向上するため、このバックライトを用いる液晶表示装置ではより高い正面輝度を得ることができるようになる。
このようなバックライトの反射率が高まるという効果はプリズムを構成する近位面と遠位面が完全に対称な関係になっていなくても、この関係に近い条件にすることである程度は得ることができる。例えば、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の近位面が面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度を、複数の遠位面のうち、面状光入射面へ投影されたときに占める割合が最も高い遠位面が面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度に対し、0°以上10°以下の範囲で大きい角度とすることでも得られる。
尚、上述の構成のプリズムシートの場合、プリズムシートを通過する光はプリズムシートの裏面及び表面の2箇所において、空気との界面で屈折する。この屈折におけるp偏光成分の透過率はs偏光成分の透過率よりも高いため、プリズムシートを通過する光はp偏光成分の光量が多くなる。このため、所定の直線偏光成分(p偏光成分)の光量が大きな照明光を得ることができる。
なお、プリズムシートを構成するプリズムの断面形状については、必要に応じて以下の構造を採用することが望ましい場合がある。具体的にはプリズムの稜線からみて相対的に前記光源に近い側の近位面の傾斜角度は、光源から遠い側の2つの遠位面のうち、いずれの傾斜角度よりも大きくすることが望ましい。これは、照明装置から出射する光自体の正面方向の輝度を向上するためである。この場合、プリズムシートに入射した光がプリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の近位面に入射して屈折あるいは反射により正面以外の方向へ散逸する光の割合が減少し、結果として正面方向の輝度を高められる。
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1および図2は、本発明による実施例1の照明装置の概略構成を示す模式図である。図1は、本発明による実施例1の照明装置における主要部の概略構成を示す模式斜視図である。図2は、照明装置の平面構成の一例を示す模式平面図である。図1および図2に示すように、実施例1の照明装置100は、導光板20、複数の光源30、反射シート40、プリズムシート50を有し、必要に応じて拡散シート60を備えても良い。
導光板20は、光源30が発した光Lを面状光線に変換する透明な板状の光学部品である。導光板20は反射シート40とプリズムシート50との間に配置されており、光源30から発した光Lを主としてプリズムシート50と対向する面状光出射面22の領域ARから出射させる構成になっている。以下の説明では、導光板20においてプリズムシート50と対向している面を面状光出射面22と呼び、反射シート40と対向している面を裏面と呼ぶ。
導光板20は、面状光出射面の平面形状が照射対象物である液晶表示パネルの表示領域と同様の長方形とする。尚、本明細書では、導光板20において光源30が近接配置される光源光入射面21の長手方向をx軸方向、これと直交する方向をy軸とする。また、本明細書では、面状光出射面の垂線方向をz軸方向とし、かつ、面状光出射面(出光面)からプリズムシート50に向かうz軸方向を+z方向とする。導光板20の具体的な構成については、後述する。
光源30は、小型、高発光効率、低発熱といった条件を満たすものが望ましく、このような光源としては、たとえば、冷陰極蛍光管や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diodes)が挙げられる。実施例1では、光源30として発光ダイオードを用いた場合を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではないことはもちろんである。
光源30として発光ダイオードを用いる場合、発光ダイオードは点状の光源であるため、たとえば、図1および図2に示したように、導光板20の光源光入射面21に沿って複数個(図1および図2では4個)の光源30を並べて配置する。なお、光源30の数および配置する側面が適宜変更可能であることはもちろんである。
また、光源30としては、たとえば、白色の光を発する発光ダイオードを用いることができる。このような発光ダイオードとしては、たとえば、青色の光を発する発光ダイオードチップと、当該発光ダイオードチップが発した青色の光で励起され黄色の光を発する蛍光体とを組み合わせることで白色発光を実現するものが知られている。また、白色の光を発する発光ダイオードには、たとえば、青色の光または紫外線を発する発光ダイオードチップと、当該発光ダイオードチップが発した光で励起され発光する蛍光体とを組み合わせることで、青色、緑色、および赤色に発光ピーク波長を有する白色発光を実現するものもある。
また、実施例1の照明装置100は、薄型で、所定の偏光成分の割合が大きい照明光を出射することができるものであり、液晶表示装置のバックライトとして好適である。例えば、光源30として、白色発光の発光ダイオードを用い、カラーフィルターを備えたカラー液晶表示パネルと組み合わせることでカラー表示に対応した液晶表示装置を実現できる。また、光源30は白色発光の代わりに赤色、緑色、および青色の三原色を発光する発光ダイオードを組み合わせて用いても良い。この場合、液晶表示パネルにおけるカラーフィルタの透過スペクトルに対応した発光ピーク波長を有する光源30を用いることで、色再現範囲が広い表示装置が実現できる。
或いは、フィールドシーケンシャルカラーによりカラー表示を実現する表示パネルと実施例1の照明装置を組み合わせることでカラー表示装置を実現しても良い。この場合、光損失の原因となるカラーフィルタを設ける必要がないため、赤色、緑色、および青色の三原色を発光する発光ダイオードを光源30として用いることで光の損失が少なく色再現範囲が広い表示装置が実現できる。
また、図示は省略しているが、光源30は、配線を通じて電源および点灯/消灯を制御する制御手段に接続されている。
導光板20の裏面側に配置された反射シート40は、導光板20の裏面から出射した光を導光板20に戻して有効利用するためのものである。反射シート40としては、たとえば、高い反射率を有する反射層を、樹脂板または高分子フィルム等の支持基材上に形成したものを用いることができる。反射層は、たとえば、支持基材上にアルミニウムや銀等の反射率の高い金属薄膜を蒸着法やスパッタリング法等により成膜する、支持基材上に増反射膜となるように誘電体多層膜を形成する、あるいは支持基材上に光反射性の塗料をコートするなどの方法で形成することができる。また、反射層は、たとえば、屈折率の異なる透明媒体を複数層積層することで反射手段として機能するようにしたものであってもよい。
導光板20の面状光出射面側に配置されたプリズムシート50は、導光板20の面状光出射面(領域AR)から出射した光の進行方向を変える機能を備える光学シートである。プリズムシート50は、複数のプリズムからなるプリズム列を備えており、図1および図2に示したように、それぞれのプリズム51における稜線は、導光板20の光源30を近接配置した光源光入射面21の長手方向と平行な方向に延びている。プリズムシート50は、本発明において最も重要な部材であり、その詳細については後述する。
導光板20から見てプリズムシート50の上側に配置する拡散シート60は、プリズムシート50により進行方向が変わった光を拡散させて、たとえば、照明装置100から出射する光Lの出射角度の分布を広げたり、照明装置100の光出射面内の輝度分布の均一性を向上するためである。拡散シート60は、必要に応じて設けるものであり、従来の照明装置において用いられているものでよいので、具体的な説明は省略する。
また、図2には以下の説明で用いる方位角θの定義を併記した。方位角θは、導光板20の光源30が近接配置される光源光入射面21の長手方向を0度とし、導光板20を出光面の上から見たときの反時計回り方向を正とする。
図3は、実施例1の照明装置における導光板の断面構成の一例を示す概略断面図である。
なお、図3には、図1に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面で見た断面構成、および当該断面の奥行き方向に見える構成を示している。導光板20の材料としては、可視光に対して透明で光の損失が少ないものを用いればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。
導光板20は、たとえば、図3に示すように、光源30から出射し、光源光入射面21から入射した光Lを導波させつつ、その一部を面状光出射面22から出射させることで、光Lを面状に変換する機能を有するものである。このとき、導光板20は可視光に対して透明な略矩形の板状部材から構成され、かつ、光源光入射面21から入射して導光板20を導波する光Lを面状光出射面22から出射させるための構造23(以下、光取り出し構造と呼ぶ。)を有する。実施例1では、光取り出し構造23の一例として、図3に示したように、導光板20の裏面に設けたV字型の構造を挙げる。
なお、光取り出し構造23は公知技術を用いればよく、たとえば、導光板20の裏面に微細な段差や、凹凸形状、レンズ形状などを形成したり、あるいは白色顔料によるドット印刷を施したりするなどの、導光板20を導波する光Lの進行角度(面状光出射面への入射角度)を変える構造により実現することができる。なお、導光板20の製造コストや導光板20から出射する光の効率を考慮すると、導光板20の裏面に導波する光の進行角度を変化させる微細な形状を形成することが望ましい。微細な形状は、導光体内を導波する光の進行角度を変えることができる傾斜面を備えるものであれば良く、段差、凹凸、レンズ状などの形状により実現できる。
光源光入射面21から導光板20に入射した光Lは、面状光出射面22および裏面で全反射をしながら、主としてy軸方向に導波する。このとき、光Lが光取り出し構造23で反射すると、反射した後の進行角度β(面状光出射面22への入射角度)は反射前よりも小さくなる。またこのとき、進行角度βが臨界角、すなわち全反射条件を満たす最小の角度よりも小さくなると、光Lの一部(光L1)は面状光出射面22で屈折して導光板20から出射角度αで出射する。このとき、導光板20から出射した光L1は、p偏光成分およびs偏光成分を有する。ここで、導光板20における面状光出射面22の垂線と光L1の進行方向とを含む面内に光の電気ベクトルの振動方向が含まれる直線偏光成分がp偏光成分、これと電気ベクトルの振動方向が直交する直線偏光成分がs偏光成分と定義される。すなわち、図3では、光L1に付している太い実線の両矢印がp偏光成分の電気ベクトルの振動方向を示しており、中に黒丸がある丸印がs偏光成分の電気ベクトルの振動方向を示している。
また、光源30から出射して導光板20に入射する光Lには、図2に例示したように、進行方向がy軸方向と平行でない成分も含まれている。しかしながら、大部分の光は光源30が近接配置される導光板の光源光入射面21から、光源光入射面21に対向する端面の方向に向かって進行する。すなわち、本明細書における導光板20を導波する光の主たる進行方向は、導光板20の光源光入射面21に直交する方向(y軸方向)である。
図4は、導光板における光取り出し構造の形状を説明するための模式側断面図であり、図1に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板20を導波する光の主たる進行方向と平行な断面で見た断面構成、および当該断面の奥行き方向に見える構成を示している。
実施例1では、光取り出し構造23の一例としてV字型の構造を挙げている。導光板20の裏面に設ける光取り出し構造23としては、たとえば、図4に示すように、2つの傾斜面で構成されたV字型の構造を用いることができる。光取り出し構造23を構成するV字型構造の稜線は方位角θがほぼ0度の方向に延びている。また、隣接する2つの光取り出し構造23の間にある領域24は、導光板20の面状光出射面22がなす平面と略平行な平坦面である。このとき、光源30は導光板20の左手側に配置されており、2つの傾斜面のうちの光源30から近い方の傾斜面の角度η1と遠い方の傾斜面の角度η2とは異なり、かつ、角度η1の方が大きい。なお、傾斜面の角度η1,η2は、それぞれ、導光板20の面状光出射面と平行な面に対する傾斜角度である。
実施例1の照明装置100における導光板20は、導光板20の面状光出射面22から出射する光の量に関する指標値(たとえば輝度や光度)が最大値となる方向が、方位角θがほぼ90度の方位において、導光板20の面状光出射面22の垂線方向からずれた方向となるように構成する。ここで、導光板20の面状光出射面22から出射する光の出射角度αを導光板20の面状光出射面22の垂線に対する角度として定義する。また、導光板20内を進む光の進行角度βも同様に、導光板20の面状光出射面22の垂線に対する角度として定義する。
本発明の照明装置では導光板20の面状光出射面22から出射する光の指標値が、方位角θが略90度、出射角度αが65度から85度の方向において最大値となるように構成する。このような導光板20は、たとえば、光取り出し構造23を構成する傾斜面の角度η2を0.5度から15度程度にすることで実現できる。一方、光取り出し構造23を構成する傾斜面の角度η1は導光板20を導波する光の損失が小さくなるような角度を選択すればよく、具体的には20度から90度の範囲から適切な角度を選択すればよい。
尚、光取り出し構造23は、導光板20から出射する光が面状光出射面22の面内で略均一となるようにその配列ピッチPや構造の大きさ(高さ)hを定めればよい。例えばピッチPは数十μmから百数十μm、高さhは数μmから数百μmの範囲から選択することが現実的であり、導光板20の位置によりそれらを適切に変化させるようにしても良い。
導光板20から出射する光のうちの輝度または光度が最大値となる光の出射角度αが導光板20における面状光出射面22の垂線(法線)方向に対して傾いている場合、当該出射角度αで出射する光は、p偏光成分の割合が大きくなる。このように、導光板20の面状光出射面22の垂線方向に対して傾いた方向に出射する光L1において、p偏光成分がs偏光成分よりも多くなるのは、導光板20の面状光出射面22と空気層との界面で光が屈折する際の透過率がp偏光とs偏光とで異なることに起因するものであって、一般的に知られていることである。なお、前述したように、導光板20から出射する光L1の輝度や光度が最大値となるのは、光L1の進行方向の方位角θが90度の場合なので、以下ではこの方向に進む光に着目することにし、特にことわりが無い限り、導光板20の面状光出射面22の垂線(法線)と方位角θが90度の方向(y軸方向)を含む平面内に電気ベクトルの振動方向を有する直線偏光をp偏光、これと電気ベクトルの振動方向が直交する直線偏光をs偏光と呼ぶこととする。
ここで、導光板20やプリズムシート50などから出射する光の輝度を、検光子(偏光板)を回転させながら、検光子を通して測定したときの最大輝度をImax、最小輝度をIminとすると、偏光度ρは下記数式1で表される。
ρ=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)・・・(数式1)
また、本明細書では、前述のように、検光子の吸収軸とp偏光とが互いに直交するときの輝度をIpmax、互いに平行なときの光の輝度をIpminとし、p偏光に対する偏光度(p偏光の偏光度)ρpを下記数式2で定義する。
ρp=(Ipmax−Ipmin)/(Ipmax+Ipmin)・・・(数式2)
例えば、ポリカーボネートを材料とし、η2を約2°とした導光板20では、出射する光は輝度が最大値となる角度がα=74°、その角度におけるp偏光に対する偏光度がρp=10%程度となり、p偏光成分の割合が高い光を出射する導光板を実現できる。
次に、本発明のプリズムシート50の構造について詳細に述べる。図5は、本発明による実施例1の照明装置におけるプリズムシートの概略構成の一例を示す模式断面図である。なお、図5には、図1に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板20を導波する光の主たる進行方向と平行な断面で見た断面構成を示している。
プリズムシート50は、図5に例示する様に、面状光入射面53を有する透明なフィルムを基材52とし、その表面にプリズム51を列状に形成したものを用いることが生産性など産業上の有用性を考慮すると現実的である。但し、本発明はプリズムの断面形状を規定するものであり、その構造や製法を限定するものではない。例えば基材部分とプリズム部分が不可分な一体成型されたものでも良い。
プリズムシート50として透明なフィルムを基材52とし、その表面にプリズム51を列状に形成したものを用いるとき、基材52及びプリズム51には、プリズムシート50を通過する光のp偏光成分に位相差が生じない透明体を用いることが望ましい。これは、導光板20から出射してプリズムシート50を通過するp偏光に変化が生じてp偏光成分が損失することを抑制し、プリズムシート50からp偏光成分の割合がより大きい光を出射させるためである。
基材52には、たとえば、トリアセチルセルロースフィルムや無延伸のポリカーボネートフィルムなど、少なくとも面内の屈折率異方性がほとんどない光学的に等方な透明体を用いることができる。また、基材52には、たとえば、ポリカーボネート系樹脂やオレフィン系樹脂などからなるフィルムを一方向に延伸することで面内に屈折率の一軸異方性を持つ透明体を用いることもできる。なお、屈折率の一軸異方性を持つ透明体を基材52として用いる場合は、プリズムシート50を通過するp偏光に位相差が生じないようにするために、プリズムシート50を配置する際に、基材52の遅相軸の方向を方位角θが0度の方向または90度の方向とすることが重要である。
また、基材52としては、比較的安価で取り扱いやすいPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いることが産業上は極めて有用である。ただし、PETフィルムは二軸異方性を有するので、PETフィルムを基材52として用いる場合、プリズムシート50を通過するp偏光に位相差が生じないようにするためには特別の配慮が必要となる。
基材52として二軸異方性の透明体を用いる場合、その遅相軸を方位角θが0度または90度とすることで、方位角θが90度の方向に進むp偏光に対しては、位相差が生じ、p偏光成分が少なくなることを防止できる。さらに、遅相軸の方位角θを0度とすることで、方位角90度を含むより広い方位角の範囲でp偏光に生じる位相差が小さくなるため、より広い角度範囲においてp偏光の損失が抑制できるという効果がある。
ところで、透明体をプリズムシート50の基材52として用いる場合、導光板20から出射する光の角度分布を考慮すると、プリズムシート50を通過する光として特に検討すべき角度範囲は、方位角θが0度±15度、入射角度αが60度から85度の範囲である。そのため、プリズムシート50の基材52としてPETフィルムのような二軸異方性の透明体を用いる場合は、その遅相軸の方位角を0度または90度とする、すなわち遅相軸の方向をプリズム51の稜線方向と平行または直交にすることが望ましい。またさらに、上述のように遅相軸の方位角を0度とすれば、より多くのp偏光をプリズムシート50から出射させることができるようになるので、透明体(基材52)の遅相軸の方向はプリズム51の稜線方向と平行にすることがより望ましい。なお、より高い効果を得るには、プリズム51の稜線方向と基材52の遅相軸の方向とは上述の条件に一致させることが望ましいが、実際の製品ではばらつきが生じて角度がずれることが考えられ、この場合は±5度程度の変動であれば許容される。
このようにプリズムシート50の基材52として二軸異方性の透明体を用いる場合に、遅相軸の方位角を0度にしたときと90度にしたときとで効果に大きな差が生じることは、基材52として一軸異方性の透明体を用いた場合の遅相軸の方位角が90度であっても0度のときと同様にp偏光の損失が抑制されることと対照的である。
図6は、プリズムシートにおけるプリズムの断面形状の一例を示す模式断面図であり、図5に示したプリズムシート50におけるプリズム51部分を拡大して示している。ここで、本発明に係る照明装置100におけるプリズムシート50は、その表面側に形成されたプリズム列を構成しているプリズムの断面形状が、プリズムの稜線RLからみて相対的に光源から遠い側の傾斜面である遠位面DSが少なくとも2種類の傾斜角度から構成されていることを特徴とする。さらに望ましくはプリズムの断面形状は、プリズムの稜線RLからみて相対的に前記光源に近い側の傾斜面である近位面PSの傾斜角度が、遠位面DSの傾斜角度のうち、いずれかひとつの傾斜角度と略一致していることを特徴とする。
実施例1はこの構造を2種類のプリズム列を組み合わせることで実現している。具体的には、プリズムの断面形状を底角が異なる2種類の二等辺三角形を並置した形状で実現している。
実施例1のプリズムシート50におけるプリズム51は2つの稜線RL1と稜線RL2を有し、それぞれの稜線からみて相対的に光源30から遠い側の遠位面DS1及び遠位面DS2の傾斜角度φ1及びφ3を互いに異ならせている。プリズム51の断面形状を構成している遠位面DS1と遠位面DS2は共に、導光板から出射する光のうち輝度あるいは光度が最大となる角度の光がプリズムシートに入射した際に、この光を正面或いはその近傍の方向(+z方向)へ屈折させる機能を有し、そのための傾斜角度を備える。
一方、プリズム51を構成する2つの稜線RL1と稜線RL2からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1及び近位面PS2の傾斜角度φ2及びφ4は、それぞれ傾斜角度φ1及びφ3と略等しいか、或いは傾斜角φ1またはφ3のどちらか一方と略等しい角度である。
次に、図7を参照して実施例1のプリズムシート50の作用について説明する。図7はプリズムシートにおけるプリズムの断面形状の一例を示す模式断面図である。導光板20から出射し、プリズムシート50に入射する光L1の大部分はプリズムの遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する。遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する光は空気との界面で屈折して、正面またはその近傍の方向(図中+z軸方向)へ向かう。
この際、遠位面DS1を通過する光L11と遠位面DS2を通過するは光L12は各遠位面の傾斜角度が異なることから、プリズムシート50を通過後に同じ方向に進む光であっても、通過する傾斜面が異なればプリズムでの屈折角度が異なることになる。ここで、プリズムで屈折する光はプリズムを構成する透明材料の屈折率の波長依存性(波長分散)のため、屈折角度に応じて波長(色)が異なる。このため、異なる屈折角度の光が混合されると、屈折の際に生じる色の変化が平均化されて観察する方向による色の変化が抑制されるという効果が得られる。
尚、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度の差Δφ(=|φ1-φ3|)には最適な範囲が存在する。傾斜角度の差Δφが小さい場合、プリズムシートに入射した光が遠位面DS1で屈折する方向と遠位面DS2で屈折する方向の差が小さくなる。つまり、傾斜角度が異なる2つの遠位面で屈折する光の屈折角度の差が小さくなるため、異なる屈折角度の光が混じり合うことで得られる色変化の抑制効果が小さくなる。
厳密にはプリズムを構成する透明材料の屈折率の絶対値や波長分散に依存するが、概ね傾斜角度の差Δφが4°より小さい場合、観察する方向を変えたときの色の変化が明らかに認識できる。このため、傾斜角度の差Δφは少なくとも4°以上とする必要がある。色の変化抑制の観点では、傾斜角度の差Δφは5°以上とすることが望ましい。
一方、傾斜角度の差Δφが大きい場合は、導光板から出射する光のうち輝度または光度が最大となる角度に進む光が、プリズムシートに入射して遠位面DS1で屈折する方向と、遠位面DS2で屈折する方向の違いが大きくなる。つまり、プリズムシートを通過する光は大きく広がり、正面方向またはその近傍の方向の輝度が低下する。特に傾斜角度の差Δφが20°より大きい場合には輝度が極大値となる角度が2つ生じて正面方向またはその近傍の方向の輝度は著しく低下してしまう。
このため厳密にはプリズムを構成する透明材料の屈折率や波長分散に依存するが、傾斜角度の差Δφは20°以下とする必要がある。正面方向またはその近傍の方向の輝度を高めるという観点では、傾斜角度の差Δφは15°以下とすることが望ましい。
以上からプリズムシート50を構成するプリズム51の断面形状は、傾斜角度の差Δφが以下の関係を満足する必要がある。
4°≦Δφ≦20°
観察する方向の違いによる色の変化の抑制と、正面方向またはその近傍の方向における輝度を高めるため、傾斜角度の差Δφはより望ましくは以下の関係を満足することが望ましい。
5°≦Δφ≦15°
一方、プリズムの稜線RL1及びRL2からみて相対的に光源に近い側の近位面PS1およびPS2の傾斜角度φ2及びφ4は、遠位面DS1及びDS2のうち、いずれか一方の傾斜角度と略一致させる。これは、本照明装置を表示装置のバックライトとして用いる場合に正面方向の輝度を向上するためである。
表示装置ではバックライトから出射する光の一部は表示パネルの配線などにより反射してバックライト側に戻る。また、バックライトと表示パネルとの間に必要に応じて反射型偏光板を設ける場合は特に表示パネルの反射に加え、反射型偏光板の作用でより多くの光が反射してバックライト側に戻る。バックライト側に戻った光はバックライトで反射して再び表示パネルに向かい再利用されて表示装置の輝度に寄与する。
この際、バックライトの反射率、特に正面方向やその近傍の方向へ向かって反射する光が大きければ大きい程、表示装置の正面方向やその近傍の方向における輝度は高くなる。バックライトの正面方向の反射率には、表示パネルに近い位置に配置するプリズムシートのプリズムの形状が関与する。具体的にはプリズムの断面形状をプリズムの稜線RLから見て相対的に光源に近い側の近位面PSの角度を、相対的に光源から遠い側の遠位面DSの傾斜角度と同じ値にすること(但し、傾斜の方向は逆方向)で高められる。つまり、プリズムの稜線RLから面状光出射面22に引いた垂線を仮定すると、プリズムの断面形状は、この線に対して、近位面PSの傾斜角度と、遠位面DSの傾斜角度とが対称の関係になるようにすることが望ましい。
実施例1ではプリズムの稜線RL1及びRL2からみて、それぞれ相対的に光源に近い側の近位面PS1およびPS2の傾斜角度φ2およびφ4は、相対的に光源から遠い側の遠位面DS1およびDS2の傾斜角度φ1およびφ3とそれぞれ略等しくする。この場合、図7に例示するように、例えばプリズムシート50の光出射方向(+z軸方向)側から近位面PS1に入射する光LR1がプリズムシート50の裏面(導光板側の面)などで反射して、再びプリズム51に戻った際、その光の一部は遠位面DS1に入射して、光出射方向(+z軸方向)へ向かう。このため、照明装置100の正面またはその近傍の方向へ向かう光の反射率が向上する。
このように反射率が高い照明装置をバックライトとして用いる液晶表示装置では、液晶表示パネルまたは反射型偏光板で反射して、バックライト側へ戻る光は再び正面もしくはその近傍の方向へ反射し再利用されることで正面またはその近傍の方向において輝度がより高い液晶表示装置を実現できるという効果が得られる。
尚、実施例1のプリズムシート50の場合、プリズムシート50を通過する光はプリズムシートの裏面及び表面の2箇所において、空気との界面で屈折する。この屈折におけるp偏光成分の透過率はs偏光成分の透過率よりも高いため、プリズムシートを通過する光はp偏光成分の光量が多くなる。このため、所定の直線偏光成分(p偏光成分)の光量が大きな照明光を得ることができる。
なお、プリズム列のピッチ(全体の幅W1)およびプリズム51の高さh1は、数十μm程度が実用的である。プリズム51の具体的な寸法および傾斜角度は、プリズムシート50において基材52やプリズム51を構成する透明体の屈折率に応じて、光学シミュレーション等を駆使して選択すればよい。
プリズム51の寸法および傾斜角度の一例を挙げると、以下の通りである。まず、プリズム51における全体の幅W1は35μm、高さh1は約36.7μmとし、遠位面DS1および近位面PS1の傾斜角度φ1および傾斜角度φ2は69.1°、遠位面DS2および近位面PS2の傾斜角度φ3および傾斜角度φ4は64°とする。この場合、傾斜角度の差Δφは5.1°であり上述の条件を満足する。また、遠位面DS1に対応するxy平面内における幅(y軸、すなわち面状光入射面へ投影される幅)W2は28μm、遠位面DS2に対応するxy平面内における幅(y軸、すなわち面状光入射面へ投影される幅)W3は7μmとする。また、遠位面DS2および近位面PS2の高さ(z軸へ投影される高さ)h2は約7.18μmである。
尚、遠位面DS1と遠位面DS2の割合は各遠位面に対応する幅W2とW3の比に相当する。本実施例ではW2:W3=4:1(W3の割合が20%)としている。W2の割合を増やすと正面またはその近傍の方向における輝度は高くなるが、観察する方向を変えたときの色の変化は大きくなる。一方、W2の割合を減らすと観察する方向を変えたときの色の変化が小さくなるが、正面またはその近傍の方向における輝度は低くなる。つまり、観察する方向を変えたときの色の変化と、正面またはその近傍の方向における輝度は遠位面DS1と遠位面DS2の割合に対してトレードオフの関係にある。このため、遠位面DS1と遠位面DS2の割合は本発明を適用する製品に求められる性能と、プリズムシート50において基材52やプリズム51を構成する透明体の屈折率や波長分散に応じて、光学シミュレーション等を駆使して最適な条件を選択すればよい。
具体的には、プリズムの稜線からみて、相対的に光源から遠い側の遠位面が2つの異なる傾斜角度から構成される場合、一方の遠位面の占める割合が10〜30%であれば、観察する方向を変えたときの色の変化の抑制と、正面またはその近傍の方向における輝度の向上のバランスが保たれる。より望ましくは、一方の遠位面の占める割合を20〜25%とすることで観察する方向を変えたときの色の変化の抑制と、正面またはその近傍の方向における輝度の高さをより高いレベルで両立できる。
プリズム51の形状を上述のようにした場合、プリズムシート50の屈折率を1.6とすると、上述の導光板20(出射光の輝度が最大となる角度が約78°)から出射する光はプリズムシート50を通過する際、その作用を受けて正面またはその近傍の方向へ屈折し、輝度が最大値となる角度が10°以下の正面またはその近傍の方向となる。
導光板20から出射してプリズムシート50に入射した光の大部分は、遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する。遠位面DS1及び遠位面DS2はその傾斜角度が5度程度異なる。このため、プリズムシート50を通過して同じ方向に進む光は、プリズムにおいて異なる屈折角度で屈折した光が混合した光となる。この場合、プリズムシート50を構成する透明体の屈折率の波長依存性に起因して、光の屈折の際に生じる色の変化の一部が平均化されるため、観察する方向を変えたときの色の変化を抑制することができる。
また、プリズムシート50には、上述のように、透明で光学的に等方な透明体、または通過するp偏光に対して有害な位相差を生じさせない透明体を用いることが望ましい。これは導光板20から出射してプリズムシート50を通過するp偏光に変化が生じてp偏光成分が損失することを抑制し、プリズムシート50からよりp偏光成分の割合の大きい光を出射するためである。この場合、導光板20から出射する光がp偏光成分が多いことも寄与し、プリズムシート50を通過後の光ではp偏光の偏光度ρpが約30%と高偏光度の照明光を得ることができる。
尚、本発明に係る照明装置100では、図1や図5に示したように、導光板20から見たプリズムシート50の上に、必要に応じて拡散シート60を配置しても良い。拡散シート60はプリズムシート50を出射した光を拡散することで、出射角度の分布を広げる、あるいは、輝度の面内均一性を高める機能を有する。拡散シート60としては、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)等の透明な高分子フィルムの表面に凹凸を形成したもの、透明媒体中に当該透明媒体とは屈折率の異なる透光性の微粒子を混合した拡散層を高分子フィルムの表面に形成したもの、板もしくはフィルム内部に気泡を混入して拡散性を持たせたもの、アクリル樹脂等の透明部材中に白色顔料を分散させたもの、等が使用できる。また、プリズムシート50のプリズム形成面は傷が付きやすいため、拡散シート60をプリズムシート50の保護層として機能させても良い。
なお、拡散シート60としてPETフィルムやPCフィルム等の光学異方性を有するフィルムを使用する場合は、その遅相軸の方向を方位角θが0度または90度の方向とすることで、プリズムシート50を出射したp偏光の状態を維持するようにすることが、所定の直線偏光成分の光量が大きい照明光を実現するために重要である。
また、拡散シート60は、その表面にマイクロレンズを形成することで、これを通過する光の指向性を変えるようにしても良い。また、拡散シート60は、その表面に微細な構造を形成し、これを通過する光の指向性を回折効果を利用して変えるようにしてもよい。
図8は、本発明による実施例2の照明装置200における主要部の概略構成を示す模式斜視図である。実施例1で挙げた照明装置100ではプリズムシートを1枚使用していたのに対し、実施例2の構成ではプリズムシートを2枚使用する例について説明する。また、導光板の構造についても一部変更した例について説明する。尚、その他の構成については基本的に実施例1と同様なため詳細な説明は省略する。また、以後の説明においても実施例1の説明(図1や図2など)で用いた座標系や方位角、極角を利用する。つまり、図8に示したxyz座標系におけるx軸方向、y軸方向、およびz軸方向は、それぞれ、図1に示したxyz座標系におけるx軸方向、y軸方向、およびz軸方向と同じ方向である。
実施例2の照明装置200は、図8に示すように、導光板220、複数の光源30、反射シート40、プリズムシート250及びプリズムシート70を有し、必要に応じて拡散シート60を備えても良い。
導光板220の面状光出射面側に配置されたプリズムシート250およびプリズムシート70は、導光板220の面状光出射面(領域AR)から出射した光の進行方向を変える機能を備える光学シートである。プリズムシート250及びプリズムシート70は、ともに複数のプリズムからなるプリズム列を備えている。図8に示すように、プリズムシート250を構成するプリズムの稜線の方向は、導光板220の光源30を近接配置した光源光入射面221の長手方向と平行な方向に延びている。即ちプリズムの稜線方向はx軸と略平行である。一方、プリズムシート250と導光板220の間に配置するプリズムシート70のプリズムの稜線の方向はプリズムシート250のプリズムの稜線方向と直交する方向に延びている。すなわち、プリズムシート70のプリズムの稜線の方向は導光板220の光源30を近接配置した光源光入射面221の長手方向と直交する方向(y軸方向)に延びている。
プリズムシート70はプリズムの断面形状が頂角90°、底角が45°の二等辺三角形のものを用いる。プリズムシート70は広く一般に使用されているものであり説明は省略する。プリズムシート250は、本発明において最も重要な部材であり、その詳細については後述する。
導光板220は、上述の実施例で説明したように光源30から出射され、一方の光源光入射面221から入射した光Lを導波させつつ、その一部を面状光出射面222から出射することで、光Lを面状に変換する機能を有するものである。導光板220は可視光に対して透明な略矩形の板状部材から構成され、かつ、光源光入射面221から入射して導光板220を導波する光Lを面状光出射面222から出射させるための光取り出し構造223を有する。
実施例2では、光取り出し構造223の一例として、図9に示したように、導光板220の面状光出射面222に設けたV字型の構造を挙げる。図9は、導光板における光取り出し構造223の形状を説明するための模式側断面図である。なお、図9には、図8に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板220を導波する光の主たる進行方向と平行な断面で見た断面構成を示している。光取り出し構造223を構成するV字型構造の稜線は方位角θがほぼ0度の方向に延びている。また、隣接する2つの光取り出し構造223の間にある領域224は、導光板220の面状光出射面222がなす平面と略平行な平坦面である。
このとき、光源30は導光板220の左手側に配置されており、2つの傾斜面のうちの光源30から近い方の傾斜面の角度η3と遠い方の傾斜面の角度η4とは異なり、かつ、角度η3の方が大きい。なお、傾斜面の角度η3,η4は、それぞれ、導光板220の面状光出射面が成す平面と平行な面に対する傾斜角度である。
実施例2の照明装置200における導光板220は、導光板220の面状光出射面222側から出射する光の量に関する指標値(たとえば輝度や光度)が最大値となる方向が、方位角θがほぼ90度の方位において、導光板220の面状光出射面222の垂線方向からずれた方向となるように構成する。
本発明の照明装置では導光板220の面状光出射面222から出射する光の指標値が、方位角θが略90度、出射角度αが65度から85度の方向において最大値となるように構成する。このような導光板220は、たとえば、光取り出し構造223を構成する傾斜面の角度η4を0.5度から15度程度にすることで実現できる。一方、光取り出し構造223を構成する傾斜面の角度η3は導光板220を導波する光の損失が小さくなるような角度を選択すればよく、具体的には20度から90度の範囲から適切な角度を選択すればよい。
例えば、導光板220の材料としてポリカーボネートを用いる場合は、η4を約5°、η3を約40°とすることで導光板220から効率よく光を取り出すことができる。なお、光取り出し構造223は、導光板220から出射する光が面状光出射面222の面内で略均一となるようにその配列ピッチPや構造の大きさ(高さ)hを定めればよい。例えばピッチPは数十μmから百数十μm、高さhは数μmから数百μmの範囲から選択することが現実的であり、導光板220の位置によりそれらを適切に変化させるようにしてもよい。
次に、本発明のプリズムシート250の構造について詳細に述べる。図10は、本発明による実施例2の照明装置におけるプリズムシートの概略構成の一例を示す模式断面図であり、図8に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板220を導波する光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な断面で見た断面構成を示している。
プリズムシート250は、実施例1で説明したプリズムシート50と基本的には同じ思想で構成される。但し、実施例2ではプリズムシート250と導光板220の間に、基材72とその上のプリズム71により構成される別のプリズムシート70が配置され、プリズムシート250に入射する光の状態が実施例1とは異なる。つまり、実施例1では導光板220から出射角度αで出射する光Lはプリズムシート250に角度αで入射するが、実施例2では導光板220から出射角度αで出射する光Lはプリズムシート70の作用を受けて、角度αよりも小さな角度γでプリズムシート250に入射する。このため、実施例2のプリズムシート250ではそのプリズムの断面形状を変化させている。
実施例2のプリズムシート250は図10に例示する様に、その裏面が面状光入射面253となる透明なフィルムを基材252とし、その表面にプリズム251を列状に形成したものを用いることが生産性など産業上の有用性を考慮すると現実的である。但し、本発明はプリズムの断面形状を規定するものであり、その構造や製法を限定するものではない。例えば基材部分とプリズム部分が不可分な一体成型されたものでも良い。
尚、プリズムシート250として透明なフィルムを基材252とし、その表面にプリズム251を列状に形成したものを用いるとき、実施例1のプリズムシート50では導光板20から出射するp偏光成分の割合が大きい光の偏光状態を維持し有効利用するため、基材252はp偏光成分に位相差が生じない透明体を用いることが望ましかった。これに対し、実施例2のプリズムシート250では基材252として、プリズムシート250を通過する光の偏光状態が変化するような透明体を用いても良い。
これは、実施例2の照明装置100では、プリズムシート250と導光板220の間にプリズムシート70を配置しており、導光板220から出射する光の偏光状態がプリズムシート70によって変化し、格別に維持されないからである。
図11は、プリズムシートにおけるプリズムの断面形状の一例を示す模式断面図であり、図10に示したプリズムシート250におけるプリズム251部分を拡大して示している。ここで、本発明に係る照明装置におけるプリズムシートは、その表面側に形成されたプリズム列を構成しているプリズムの断面形状が、プリズムの稜線からみて相対的に光源から遠い側である遠位面が少なくとも2種類の傾斜角度から構成されていることを特徴とする。このため、本実施例のプリズムシート250もこの特徴を備える。
ただし、実施例2では、実施例1のように断面形状が2つの3角形を並置した構造ではなく、2つの三角形の一部を互いに重ねた様な断面形状により、上述の特徴を実現している。
また、本発明に係る照明装置200のプリズムシートでは、より望ましくはプリズムの断面形状が、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の傾斜面の傾斜角度が、光源から遠い側の2つの傾斜面のうち、いずれか一方の傾斜角度と略一致していることを特徴とする。この特徴については本実施例では、照明装置200から出射する光の正面またはその近傍の方向における輝度の高さを、照明装置の反射率の高さよりも優先させるために採用していない。これはプリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の傾斜面の傾斜角度を、光源から遠い側の傾斜面と一致させた場合、導光板220やプリズムシート70の状況によっては、プリズムシート250に入射した光の一部が相対的に光源に近い側の傾斜面にも入射し、屈折あるいは反射することで正面またはその近傍の方向以外に散逸し、結果として正面またはその近傍の方向の輝度が低下するためである。
このため、実施例2では特に相対的に光源に近い側の傾斜面の傾斜角度を光源から遠い側の傾斜面の傾斜角度よりも大きくしている。この場合、プリズムシート250に入射した光が相対的に光源に近い側の傾斜面に入射する割合が下がり、正面またはその近傍の方向の輝度を高められる。
実施例2のプリズムシート250におけるプリズム251は2つの稜線、稜線RL1と稜線RL2を有し、それぞれの稜線からみて相対的に光源30から遠い側の遠位面DS1及び傾斜面DS2の傾斜角度φ1及びφ3を互いに異ならせている。
プリズム251の断面形状を構成している遠位面DS1と遠位面DS2は共に、導光板から出射する光のうち輝度あるいは光度が最大となる角度の光がプリズムシートに入射した際に、この光を正面或いはその近傍の方向(+z方向)へ屈折させる機能を有し、そのための傾斜角度を備える。
一方、プリズム251を構成する2つの稜線RL1と稜線RL2からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1及び近位面PS2の傾斜角度φ2及びφ4は傾斜角度φ1及びφ3のいずれよりも大きな角度としている。つまり、φ2>φ1,φ2>φ3,φ4>φ1、φ4>φ3の関係を満たす。この角度は導光板220から出射して、プリズムシート70を通過する光のうち輝度あるいは光度が最大となる角度の光がプリズムシート250に入射した際に、この光が直接入射しない傾斜角度である。
次に、プリズムシート250の作用について説明する。導光板220から出射し、プリズムシート70を通過してプリズムシート250に入射する光の大部分は近位面PS1およびPS2に入射することなく、遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する。遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する光は空気との界面で屈折して、正面またはその近傍の方向(図中+z軸方向)へ向かう。
この際、遠位面DS1を通過する光と遠位面DS2を通過する光は各傾斜面の傾斜角度が異なることから、プリズムシート250を通過後に同じ方向に進む光であっても、通過する傾斜面が異なればプリズムでの屈折角度が異なることになる。このため、観察する方向による色の変化が抑制されるという効果が得られる。
尚、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の傾斜面の傾斜角度の差Δφ(=|φ1-φ3|)には最適な範囲が存在する。この条件は実施例1と同様である。すなわちプリズムシート250を構成するプリズム251の断面形状は、傾斜角度の差Δφが以下の関係を満足する必要がある。
4°≦Δφ≦20°
また、観察する方向の違いによる色の変化の抑制と、正面方向またはその近傍の方向における輝度を高めるため、傾斜角度の差Δφはより望ましくは以下の関係を満足することが望ましい。
5°≦Δφ≦15°
一方、プリズム251を構成する2つの稜線RL1と稜線RL2からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1及び近位面PS2の傾斜角度φ2及びφ4は傾斜角度φ1及びφ3のいずれよりも大きな角度としている。つまり、φ2>φ1,φ2>φ3,φ4>φ1、φ4>φ3の関係を満たす。これにより照明装置から出射する光自体の輝度が向上する。
尚、実施例2のプリズムシート250においても、プリズムシート250を通過する光はプリズムシートの裏面及び表面の2箇所において、空気との界面で屈折する。この屈折におけるp偏光成分の透過率はs偏光成分の透過率よりも高いため、プリズムシートを通過する光はp偏光成分の光量が多くなる。このため、所定の直線偏光成分(p偏光成分)の光量が大きな照明光を得ることができる。
なお、プリズム列のピッチ(全体の幅W1)およびプリズム251の高さh1は、数十μm程度が実用的である。プリズム251の具体的な寸法および傾斜角度は、プリズムシート250において基材252やプリズム251を構成する透明体の屈折率に応じて、光学シミュレーション等を駆使して選択すれば良い。
プリズム251の寸法および傾斜角度の一例を挙げると、以下の通りである。まず、プリズム251における全体の幅W1は35μm、高さh1は約26.7μmとし、遠位面DS1の傾斜角度φ1は57.7°、近位面PS1の傾斜角度φ2は69.1°、遠位面DS2の傾斜角度φ3は47.6°、近位面PS2の傾斜角度φ4は69.1°とする。この場合、傾斜角度の差Δφは10.1°であり上述の条件を満足する。また、遠位面DS1に対応するxy平面内における幅(y軸へ投影される幅)W2は16.9μm、遠位面DS2に対応するxy平面内における幅(y軸へ投影される幅)W3は5・6μmとする。また、近位面PS2の高さ(z軸へ投影される高さ)h2は13.9μmである。
尚、遠位面DS1と遠位面DS2の割合は各傾斜面が含まれるW2とW3の比に相当する。本実施例ではW2:W3=約3:1(全遠位面がy軸へ投影される幅におけるW3の割合が約25%)としている。W2の割合を増やすと正面またはその近傍の方向における輝度は高くなるが、観察する方向を変えたときの色の変化が大きくなる。一方、W2の割合を減らすと観察する方向を変えたときの色の変化が小さくなるが、正面またはその近傍の方向における輝度は低くなる。つまり、観察する方向を変えたときの色の変化と、正面またはその近傍の方向における輝度は遠位面DS1と遠位面DS2の割合に対してトレードオフの関係にある。このため、遠位面DS1と遠位面DS2の割合は本発明を適用する製品に求められる性能と、プリズムシート250において基材252やプリズム251を構成する透明体の屈折率や波長分散に応じて、光学シミュレーション等を駆使して最適な条件を選択すれば良い。
具体的には、プリズムの稜線からみて、相対的に光源から遠い側の傾斜面が2つの異なる傾斜角度から構成される場合、一方の傾斜面の占める割合が10〜30%であれば、観察する方向を変えたときの色の変化の抑制と、正面またはその近傍の方向における輝度の向上のバランスが保たれる。より望ましくは、一方の傾斜面の占める割合を20〜25%とすることで観察する方向を変えたときの色の変化の抑制と、正面またはその近傍の方向における輝度の高さをより高いレベルで両立できる。プリズム251の形状をこのようにした場合、プリズムシート250の屈折率を1.6、プリズムシート70の屈折率を1.65とすると、プリズムシート250を通過後の光は輝度が最大値となる角度が10°以下の正面またはその近傍の方向となる。
導光板220から出射してプリズムシート250に入射した光の大部分は、遠位面DS1及び遠位面DS2に入射する。遠位面DS1及び遠位面DS2はその傾斜角度が10度程度異なる。このため、プリズムシート250を通過して同じ方向に進む光は、プリズム251において異なる屈折角度で屈折した光が混合した光となる。この場合、プリズムシート250を構成する透明体の屈折率の波長依存性に起因して、光の屈折の際に生じる色の変化の一部が平均化されるため、観察する方向を変えたときの色の変化を抑制することができる。
また、プリズムシート250を通過する光は、プリズムシート250の表面および裏面における屈折の際の反射率の偏光依存性によってp偏光の偏光度ρpが約20%と偏光度が高い照明光を得ることができる。
尚、本実施例とは異なる設計思想として、正面またはその近傍の方向における輝度の高さと照明装置の反射率の高さの両立を考慮すると、プリズムシート250を構成するプリズム251の断面形状はプリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の面(近位面)が面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度は、複数の遠位面のうち、面状光入射面へ投影されたときに占める割合が最も高い遠位面が前記面状光入射面となす0°〜90°の範囲で表される角度に対して、0°以上10°以下の範囲とすることが望ましい。近位面の傾斜角度をこの条件にすると、正面またはその近傍方向における輝度は実施例2に劣ることになるが、照明装置の反射率は実施例2よりも高くなる。この場合、照明装置単体の輝度は低くなるが、表示パネルとしてその裏面反射率が高いものを用いると、表示パネルの裏面で反射する光のリサイクル効果によって表示装置全体としては高い輝度を得ることができる。
図12は、本発明による実施例3の照明装置における主要部の概略構成を示す模式斜視図である。実施例3は実施例2の照明装置200において、プリズムシート250のプリズムの断面形状を変更したものである。その他の構成については基本的には実施例2と同様なため詳細な説明は省略する。実施例3の照明装置300は、図12に示すように、導光板20、複数の光源30、反射シート40、プリズムシート350及びプリズムシート70を有し、必要に応じて拡散シート60を備えてもよい。
導光板20の面状光出射面側に配置されたプリズムシート350およびプリズムシート70は、導光板20の面状光出射面(領域AR)から出射した光の進行方向を変える機能を備える光学シートである。プリズムシート350及びプリズムシート70は、ともに複数のプリズムからなるプリズム列を備えている。図12に示すように、プリズムシート350を構成するプリズムの稜線の方向は、導光板20の光源30を近接配置した光源光入射面21の長手方向と平行な方向に延びている。即ちプリズムの稜線方向はx軸方向と略平行である。一方、プリズムシート350と導光板20の間に配置するプリズムシート70のプリズムの稜線の方向はプリズムシート350のプリズムの稜線方向と直交する方向に延びている。すなわち、プリズムシート70のプリズムの稜線の方向は導光板20の光源30を近接配置した光源光入射面21の長手方向と直交する方向(y軸方向)に延びている。
プリズムシート70はプリズムの断面形状が頂角90°、底角が45°の二等辺三角形のものを用いる。プリズムシート70は広く一般に使用されているものであり説明は省略する。
次に、本発明のプリズムシート350の構造について詳細に述べる。図13は、本発明による実施例3の照明装置におけるプリズムシートの概略構成の一例を示す模式断面図であり、図12に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板20を導波する光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な断面で見た断面構成を示している。
プリズムシート350は、実施例1で説明したプリズムシート50と基本的には同じ思想で構成される。ただし、実施例1では導光板20から出射角度αで出射する光Lはプリズムシート50に角度αで入射するが、実施例3では導光板20から出射角度αで出射する光Lはプリズムシート70の作用を受けて、角度αよりも小さな角度γでプリズムシート350に入射する。このため、実施例2のプリズムシート350ではそのプリズムの断面形状を実施例1とは異ならせている。
実施例3のプリズムシート350は図13に例示する様に、面状光入射面353を有する透明なフィルムを基材352とし、その表面にプリズム351を列状に形成したものを用いることが生産性など産業上の有用性を考慮すると現実的である。但し、本発明はプリズムの断面形状を規定するものであり、その構造や製法を限定するものではない。例えば基材部分とプリズム部分が不可分な一体成型されたものでも良い。
図14は、プリズムシート350におけるプリズムの断面形状の一例を示す模式断面図であり、図13に示したプリズムシート350におけるプリズム351部分を拡大して示している。ここで、本発明に係る照明装置におけるプリズムシートは、その表面側に形成されたプリズム列を構成しているプリズムの断面形状が、プリズムの稜線からみて相対的に光源から遠い側の傾斜面が少なくとも2種類の傾斜角度から構成されていることを特徴とする。このため、本実施例のプリズムシート350もこの特徴を備える。
また、本発明に係る照明装置のプリズムシートでは、より望ましくはプリズムの断面形状が、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の傾斜面の傾斜角度が、光源から遠い側の傾斜面のうち、いずれかひとつの傾斜面の傾斜角度と略一致していることを特徴とする。本実施例ではこの特徴も備える。具体的には、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の傾斜面の傾斜角度を全て、相対的に光源から遠い側の傾斜面のうち最もその面積割合が大きい傾斜面の傾斜角度と一致させている。
これは、照明装置の反射率を高めるためである。本照明装置を表示装置のバックライトとして用いる場合、バックライトの反射率が高くなれば、表示パネル側からバックライト側へ戻る光が再利用される割合が向上し、表装置の正面方向の輝度を向上できる。
照明装置(バックライト)の正面方向の反射率には、表示パネルに近い位置に配置するプリズムシートのプリズムの形状が関与する。基本的にはプリズムの断面形状をプリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の傾斜面(近位面)の傾斜角度を、相対的に光源から遠い側の傾斜面(遠位面)の傾斜角度と同じ値にすること(但し、傾斜の方向は逆)で反射率を高めることができる。
つまり、プリズムの稜線から導光板の面状光出射面に引いた垂線を仮定すると、プリズムの断面形状は、この線に対して対称な関係になるようにすることが望ましい。
これは、プリズムシートの表面側(導光板とは反対側)から入射した光がプリズムシートの裏面などで反射して再びプリズムシートの表面側へ向かう場合、例えばプリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の面から入射した光が、相対的に光源から遠い側の面から出射する場合に再帰反射しやすくなるからである。
実施例3のプリズムシート350では上述の特徴を備えるプリズム351の断面形状を3つの3角形がその一部を互いに重ねた様な形状により実現している。このため、実施例3ではプリズムが複数の稜線を有し、複数の傾斜面を有する。このような場合、プリズム351の各稜線からみて相対的に光源に近い側の近位面の傾斜角度を全て、相対的に光源から遠い側の遠位面のうち面積比率が最も高い遠位面の傾斜角度と一致させることで再帰反射の割合が高くなり、照明装置の反射率を高くすることができる。
このように反射率が高い照明装置をバックライトとして用いる表示装置では、表示パネルまたは必要に応じて配置する反射型偏光板で反射して、バックライト側へ戻る光は再び正面もしくはその近傍の方向へ反射し再利用されることでより正面またはその近傍の方向においてより輝度が高い表示装置を実現できるという効果が得られる。
実施例3のプリズムシート350におけるプリズム351は3つの稜線、稜線RL1、稜線RL2および稜線RL3を有し、それぞれの稜線からみて相対的に光源30から遠い側の遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3の傾斜角度φ1、φ3およびφ5を互いに異ならせている。
プリズム351の断面形状を構成している遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3はいずれも、導光板から出射する光のうち輝度あるいは光度が最大となる角度の光がプリズムシート350に入射した際に、この光を正面或いはその近傍の方向(+z方向)へ屈折させる機能を有し、そのための傾斜角度を備える。
一方、プリズム351を構成する3つの稜線、稜線RL1、稜線RL2および稜線RL3からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1、近位面PS2および近位面PS3の傾斜角度φ2、φ4およびφ6は傾斜角度φ1と一致させている。つまり、φ2=φ4=φ6=φ1の関係を満たす。傾斜角度φ1は、プリズム351の各稜線からみて相対的に光源から遠い側の遠位面のうち最も面積比率が大きな遠位面DS1の傾斜角度である。
次に、プリズムシート350の作用について説明する。導光板20から出射し、プリズムシート70を通過してプリズムシート350に入射する光の大部分は遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3に入射する。遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3に入射する光は空気との界面で屈折して、正面またはその近傍の方向(図中+z軸方向)へ向かう。
この際、遠位面DS1を通過する光、遠位面DS2を通過する光および遠位面DS3を通過する光は各遠位面の傾斜角度が異なることから、プリズムシート350を通過後に同じ方向に進む光であっても、通過する傾斜面が異なればプリズム351での屈折角度が異なることになる。つまり、屈折角度が異なる光が平均化された光が観察されるため、観察する方向による色の変化が抑制されるという効果が得られる。
実施例1および実施例2ではプリズムの各稜線からみて相対的に光源から遠い側の遠位面は2種類の傾斜角度から構成されていたが、実施例3では3種類の傾斜角度から構成される。このため実施例3では、プリズムシート350を通過後に同じ方向に進む光は、より多くの屈折角度を経た光が平均化された光となるため、観察する方向による色の変化の抑制効果がより高くなる。
また、導光板20から出射する光に観察する方向に依存して変化するような輝度のむらがある場合には、本発明のプリズムシート350を用いるとプリズムシート350を通過後に同じ方向に進む光は複数の屈折角度を経た光が平均化された光となるため、輝度のむらが緩和される。尚、プリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度の差には最適な範囲が存在する。ここで、実施例3ではプリズムの稜線から見て相対的に光源から遠い側の遠位面の傾斜角度が3種類存在する。この場合は、傾斜角度が近い2つの傾斜角度の差Δφ13(=|φ1−φ3|)およびΔφ35(=|φ3−φ5|)を考慮すれば良い。この場も傾斜角度の差の最適な範囲は実施例1や実施例2と同様である。
すなわちプリズムシート350を構成するプリズム351の断面形状は、傾斜角度の差Δφ13及びΔφ35が以下の関係を満足する必要がある。
4°≦Δφ13≦20°, 4°≦Δφ35≦20°
また、観察する方向の違いによる色の変化の抑制と、正面方向またはその近傍の方向における輝度を高めるため、傾斜角度の差Δφはより望ましくは以下の関係を満足することが望ましい。
5°≦Δφ13≦15°, 5°≦Δφ35≦15°
一方、プリズム351を構成する3つの稜線RL1、稜線RL2及び稜線RL3からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1、近位面PS2及び近位面PS3の傾斜角度φ2、φ4及びφ6は傾斜角度φ1と等しくしている。つまり、φ2=φ4=φ6=φ1の関係を満たす。これにより照明装置の反射率が向上する。
尚、実施例2のプリズムシート350においても、プリズムシート350を通過する光はプリズムシートの裏面及び表面の2箇所において、空気との界面で屈折する。この屈折におけるp偏光成分の透過率はs偏光成分の透過率よりも高いため、プリズムシートを通過する光はp偏光成分の光量が多くなる。このため、所定の直線偏光成分(p偏光成分)の光量が大きな照明光を得ることができる。
なお、プリズム列のピッチ(全体の幅W1)およびプリズム351の高さh1は、数十μm程度が実用的である。プリズム351の具体的な寸法および傾斜角度は、プリズムシート350において基材352やプリズム351を構成する透明体の屈折率に応じて、光学シミュレーション等を駆使して選択すれば良い。
プリズム351の寸法および傾斜角度の一例を挙げると、以下の通りである。まず、プリズム351における全体の幅W1は35μm、高さh1は約16μmとし、遠位面DS1の傾斜角度φ1、近位面PS1の傾斜角度φ2、近位面PS2の傾斜角度φ4および近位面PS3の傾斜角度φ6はいずれも57.7°とし、遠位面DS2の傾斜角度φ3は48°、遠位面DS3の傾斜角度φ5は33°とする。この場合、傾斜角度の差Δφ13は9.7°、Δφ35は15°であり上述の条件を満足する。また、遠位面DS1に対応するxy平面内における幅(y軸へ投影される幅)W2は8.75μm、遠位面DS2に対応するxy平面内における幅(y軸へ投影される幅)W3は7.37μm、遠位面DS3に対応するxy平面内における幅(y軸へ投影される幅)W4は3.52μm、とする。また、遠位面DS1の高さ(z軸へ投影される高さ)h2は13.8μm、近位面PS3の高さ(z軸へ投影される高さ)h3は6.4μm、である。
尚、遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3の割合は各遠位面が含まれるW2とW3とW4の比に相当する。本実施例では遠位面DS1、遠位面DS2および遠位面DS3が占める割合はそれぞれ44.6%、37.4%、18.0%であり、遠位面DS1が最も大きい。このため、プリズムの稜線からみて相対的に光源に近い側の近位面の傾斜角度を全て遠位面DS1の傾斜角度と一致させた。
本実施例では導光板20から出射して、プリズムシート70を通過後にプリズムシート350に入射する光の大部分は、遠位面DS1、遠位面DS2及び遠位面DS3に入射する。遠位面DS1、遠位面DS2及び遠位面DS3はその傾斜角度が異なる。このため、プリズムシート350を通過して同じ方向に進む光は、プリズムにおいて異なる屈折角度で屈折した光が混合した光となる。従って、プリズムシート350を構成する透明体の屈折率の波長依存性に起因して、光の屈折の際に生じる色の変化は平均化され、観察する方向を変えたときの色の変化を抑制することができる。
また、本実施例ではプリズム351を構成する3つの稜線、稜線RL1、稜線RL2および稜線RL3からみて相対的に光源30に近い側の近位面PS1、近位面PS2および近位面PS3の傾斜角度φ2、φ4およびφ6を傾斜角度φ1と一致させている。傾斜角度φ1はプリズムの各稜線からみて相対的に光源から遠い側の遠位面のうち最も面積比率が大きな遠位面DS1の傾斜角度である。
この場合、上述のとおり、照明装置の反射率を高めることができる。このように反射率が高い照明装置をバックライトとして用いる表示装置では、表示パネルまたは必要に応じて配置する反射型偏光板で反射して、バックライト側へ戻る光は再び正面もしくはその近傍の方向へ反射し再利用されることでより正面またはその近傍の方向においてより輝度が高い表示装置を実現できるという効果が得られる。
また、プリズムシート350を通過する光は、プリズムシート350の表面および裏面における屈折の際の反射率の偏光依存性によってp偏光成分が多い照明光を得ることができる。
尚、プリズムの稜線からみて相対的に光源に遠い側の遠位面の傾斜角度を4種類以上にすると正面方向の輝度を高め難くなる。このため、プリズムの稜線からみて相対的に光源に遠い側の遠位面の傾斜角度は2または3種類とすることが望ましい。
図15および図16は、本発明による実施例4の表示装置の概略構成の一例を説明するための模式図である。
図15は、本発明による実施例4の表示装置の断面構成の一例を示す模式断面図である。図16は、照明装置から出射する光と液晶表示パネルにおける偏光板の透過軸との関係の一例を示す模式平面図である。なお、図15には、図1もしくは図8もしくは図12に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板20における光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な断面で見た断面構成を示している。
実施例1乃至実施例3で挙げた照明装置100、200及び300は、当該照明装置から出射する面状光線が、p偏光成分が多い光となっている。このような照明装置は、たとえば、液晶パネルを用いた表示装置である液晶表示装置のバックライトとして用いるのが好適である。そこで、実施例4では、実施例1で挙げた照明装置100を有する液晶表装置の概略構成および作用効果について簡単に説明する。
実施例4の液晶表示装置は、たとえば、図15に示すように、液晶表示パネル80と、照明装置100とを有する。このとき、液晶表示パネル80は、照明装置100における光の出射方向、すなわち導光板20からみてプリズムシート50の上方に配置される。
液晶表示パネル80は、液晶層の配向状態を制御することで入射する光の透過光量を調節し、画像を表示する表示パネルであり、一対の基板81,82と、当該一対の基板81,82の間に挟持された液晶層83、およびこれらを挟んで配置される一対の偏光板84,85を有する。実施例4の液晶表示装置における液晶表示パネル80は、たとえば、従来のバックライトを有する液晶表示装置に用いられている液晶表示パネルのいずれかであればよい。そのため、実施例4では、液晶表示パネル80の構成や動作に関する詳細な説明を省略する。
また、照明装置は、上記のように実施例1乃至実施例3で挙げた照明装置100、200及び300のいずれかを用いることができる。このとき、照明装置から出射して液晶表示パネル80に入射する光は、前述のように、p偏光成分の非常に多い光である。すなわち、本実施例で説明に用いる照明装置100から液晶表示パネル80側に出射する光は、たとえば、図16に示すように、振動面OSの方向の方位角が90度、すなわち導光板20における光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な直線偏光成分が多い光である。
このとき、照明装置100から出射した光(バックライト光)の利用効率を高めるには、液晶表示パネル80が有する一対の偏光板84,85のうちの照明装置100から近い位置にある偏光板84における透過軸AX1の方向が照明装置100から出射する光における振動面OSの方向と概ね平行になるようにすればよい。このとき、偏光板84は、たとえば、吸収軸AX2の方向が、照明装置100が有するプリズムシート50におけるプリズム51の稜線の方向(導光板20における光源30が配置された光源光入射面の長手方向)と平行になるようにすればよい。
一方、照明装置100から遠い位置にある偏光板85は、例えば吸収軸AX3の方向を、照明装置100が有するプリズムシート50のプリズム51の稜線の方向(偏光板84における吸収軸AX2の方向)と直交させる。
なお、図16に示した例では、偏光板85における吸収軸AX3を偏光板84における吸収軸AX2と直交させているが、液晶表示パネル80における画素の構成(表示モード)によっては、これに限らず、偏光板85における吸収軸AX3を偏光板84における吸収軸AX2と平行になるようにしてもよいことはもちろんである。
照明装置100から出射する光は、上述の通り、照明装置100が有するプリズムシート50におけるプリズム51の稜線方向(図16におけるx軸方向)に対し、直交する方向(図16におけるy軸方向)に電気ベクトルの振動面OSを有する直線偏光(p偏光)が多い光である。そのため、液晶表示パネル80において照明装置100側に配置される偏光板84の吸収軸AX2をプリズム51の稜線方向と平行にすると、偏光板84で吸収されて損失となる光の量を小さくすることができる。すなわち、実施例4の液晶表示装置では、照明装置100から出射する光に対する液晶表示パネル80の透過率が向上するので、バックライト光の利用効率が向上し、より明るい画像表示を実現できるという効果がある。また、実施例4の液晶表示装置では、バックライト光の利用効率が向上するので、たとえば、従来の液晶表示装置と同じ明るさの画像表示を行う場合には、照明装置100(バックライト)の消費電力を下げられるという効果がある。
なお、図16に示した例では、偏光板84における吸収軸AX2が端辺と平行になっているが、液晶表示パネル80における画素の構成によっては、吸収軸AX2が偏光板84の端辺に対して斜めになることがある。その場合は、偏光板84の吸収軸AX2の方向は、プリズム51の稜線方向(導光板20における光源光入射面21の長手方向)となす角が当該稜線方向と直交する方向となす角よりも小さくなるようにすればよい。液晶表示パネル80において偏光板84の吸収軸AX2が端辺に対して斜めになる場合、吸収軸AX2の方向と端辺とのなす角は、たとえば、5度から15度程度である。そのため、上述の条件を満たすように配置すればバックライト光の利用効率が向上する。
図17および図18は、本発明による実施例5の液晶表示装置の概略構成の一例を説明するための模式図である。図17は、本発明による実施例5の液晶表示装置の断面構成の一例を示す模式断面図である。図18は、照明装置から出射する光と液晶表示パネルにおける偏光板の透過軸と反射型偏光板の透過軸との関係の一例を示す模式平面図である。
なお、図17には、図1もしくは図8もしくは図12に示したxyz座標系におけるyz平面と平行な断面、すなわち導光板20における光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な断面で見た断面構成を示している。
なお、本実施例は実施例4で説明した液晶表示パネル80において、さらに反射型偏光板86と必要に応じて拡散粘着層87を配置したものである。このため、実施例4と共通な部分については詳細な説明は省略する。
実施例5の液晶表示装置は、液晶表示パネル80の照明装置100側に反射型偏光板86を有する。また、必要に応じて反射型偏光板86と液晶表示パネル80を構成する偏光板84との間に拡散粘着層87を備える。
拡散粘着層87は例えば透明な粘着剤中に粘着剤とは屈折率が異なる微粒子を分散させることで実現するものを用いることができる。拡散粘着層87は照明装置100から出射する光の出射角度の分布を広げたり、輝度分布の面内の均一性を向上するために備えるものである。このため、液晶表示装置として拡散粘着層87を備える場合には、照明装置100には同様の機能を有する拡散シート60は使用しないことが望ましい。
反射型偏光板86は所定の直線偏光成分は反射し、これと直交する直線偏光成分は透過する機能を有するものである。このような反射型偏光板86としては例えばコレステリック液晶と位相差フィルムの積層体、屈折率異方性が異なるフィルムを多層積層したフィルム、または、ワイヤーグリッド偏光子を利用することができる。
反射型偏光板86は照明装置100から出射する光が、液晶表示パネル80が備える一対の偏光板84,85のうちの照明装置100から近い位置にある偏光板84で吸収されて損失となる光を低減するために配置する。
このため、図18に示すように反射型偏光板86の透過軸AX4は偏光板84の透過軸AX1と一致させる。換言すれば反射型偏光板86の反射軸AX5は偏光板84の吸収軸AX2と一致させる。
本実施例の表示装置においても照明装置として、実施例1乃至実施例3で挙げた照明装置のいずれかを用いることができる。このとき、照明装置から出射して液晶表示パネル80に入射する光は、前述のように、p偏光成分の非常に多い光である。すなわち、本実施例において説明に用いる照明装置100から液晶表示パネル80側に出射する光は、図18に示すように、振動面OSの方向の方位角が90度、すなわち導光板20における光の主たる進行方向(y軸方向)と平行な直線偏光成分が多い光である。
このとき、照明装置100から出射した光(バックライト光)の利用効率を高めるには、液晶表示パネル80が有する一対の偏光板84,85のうちの照明装置100から近い位置にある偏光板84における透過軸AX1と反射型偏光板86の透過軸AX4の方向を共に照明装置100から出射する光における振動面OSの方向と概ね平行になるようにすればよい。
なお、図18に示した例では、偏光板85における吸収軸AX3を偏光板84における吸収軸AX2と直交させているが、液晶表示パネル80における画素の構成(表示モード)によっては、これに限らず、偏光板85における吸収軸AX3を偏光板84における吸収軸AX2と平行になるようにしてもよいことはもちろんである。
照明装置100から出射する光は、上述の通り、照明装置100が有するプリズムシート50におけるプリズム51の稜線方向(図18におけるx軸方向)に対し、直交する方向(図18におけるy軸方向)に電気ベクトルの振動面OSを有する直線偏光(p偏光)が多い光である。そのため、液晶表示パネル80において照明装置100側に配置される偏光板84の吸収軸AX2および反射型偏光板86の反射軸AX5をプリズム51の稜線方向と平行にすると、偏光板84で吸収されて損失となる光の量を小さくすることができる。
また、照明装置100から出射する光のうち、偏光板84で吸収される偏光成分は偏光板84で吸収される前に反射型偏光板86で反射して、照明装置100に戻る。
照明装置100に戻った光は照明装置100で反射して再び液晶表示パネル80の方向へ向かう。この際、照明装置100で反射した光はその偏光状態が変化しており、その一部は反射型偏光板86および偏光板84を透過して表示光として有効利用される。
特に実施例1や実施例3で説明した照明装置ではプリズムシート50、或いはプリズムシート350を構成するプリズムの断面形状を工夫することで照明装置の正面方向の反射率を高くすることができる。この場合、反射型偏光板86で反射して、照明装置側へ戻る光は、再び正面もしくはその近傍の方向へ高い効率で反射し再利用できる。このため正面またはその近傍の方向においてより輝度が高い液晶表示装置を実現できるという効果が得られる。
なお、液晶表示パネル80側から照明装置側へ向かう光の正面方向の反射率を高めるには、液晶表示パネル80と照明装置の最表面に配置するプリズムシート50の間に光を拡散する部材を設けないことが望ましい。すなわち、液晶表示パネル80の裏面に備える反射型偏光板86と照明装置のプリズムシート50との間には光拡散性の部材は何も設けないことが望ましい。
本実施例では照明装置100から出射する光の輝度の均一性を高めるための光拡散性の部材は偏光板84と反射型偏光板86の間に設けた拡散粘着層87により実現する。このため、反射型偏光板86で反射した光が照明装置100に戻ったときの、正面方向の反射率を高くできる。
つまり、実施例5の液晶表示装置では、照明装置100から出射する光に対する液晶表示パネル80の透過率の向上と、反射型偏光板86の作用効果が高まる。このため、バックライト光の利用効率が向上し、より明るい画像表示を実現できるという効果がある。
換言すると、実施例5の液晶表示装置では、バックライト光の利用効率が向上するので、たとえば、従来の液晶表示装置と同じ明るさの画像表示を行う場合には、照明装置100(バックライト)の消費電力を下げられるという効果がある。
なお、図18に示した例では、偏光板84における吸収軸AX2が端辺と平行になっているが、液晶表示パネル80における画素の構成によっては、吸収軸AX2が偏光板84の端辺に対して斜めになることがある。その場合は、偏光板84の吸収軸AX2の方向は、プリズム51の稜線方向(導光板20における光源光入射面21の長手方向)となす角が当該稜線方向と直交する方向となす角よりも小さくなるようにすればよい。液晶表示パネル80において偏光板84の吸収軸AX2が端辺に対して斜めになる場合、吸収軸AX2の方向と端辺とのなす角は、たとえば、5度から15度程度である。そのため、上述の条件を満たすように配置すればバックライト光の利用効率が向上する。
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
また、前記実施例1乃至実施例3では、導光板20の構成例として、導波する光の主たる進行方向における厚さが概ね均一である平板状の基材に光取り出し構造23を設けた構成を挙げている。しかしながら、導光板20の構成は、これに限らず、導波する光の主たる進行方向における厚さが光源30から遠ざかるにつれて薄くなるくさび状であっても良いし、導光板の面状光出射面である表面、あるいは裏面に光取り出し構造とは異なる構造、例えば導波する光の主たる進行方向と平行な方向に稜線を有するV字状あるいは半円状の構造を設けた構成でもよいことはもちろんである。
また、上述の実施形態において本発明の照明装置が利用される表示装置を液晶表示装置としたが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッター表示装置等の照明装置を要する他の表示装置であってもよい。