JP2013002326A - ローリングピストン型圧縮機 - Google Patents

ローリングピストン型圧縮機 Download PDF

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Abstract

【課題】円周漏れを低減し圧縮機の高効率化を実現できるようにした2段圧縮ローリングピストン型圧縮機を提供する。
【解決手段】ローリングピストン(42)の内外に2つの作動室を設けて2段圧縮ローリングピストン型圧縮機において、低段作動室(40)に対する高段作動室(41)の位相ずらし角度(φ)が、公転方向とは反対方向に計って200°から280°の範囲にあることを特徴とする。
【選択図】図9

Description

本発明は、1個のリング状のローリングピストンの内外に作動室を設けて2段圧縮するローリングピストン型圧縮機に関する。
1個のリング状のローリングピストンの内外に作動室を設けて2段圧縮するローリングピストン型圧縮機が、従来技術として特許文献1に開示されている。この従来技術では、リング状のローリングピストンとシリンダ間の円周漏れについて、充分な配慮がなされておらず、圧縮機として高効率を実現することができなかった。
この特許文献1に開示されている2段圧縮ローリングピストン型圧縮機については、本発明を説明するためにも必要なので、一例として少し詳しく説明しておく。
図1(a)は、特許文献1の従来技術を示す縦断面図であり、(b)は、図1(a)のA−A線に沿った断面図であり、(c)は、図1(a)の要部(円柱部47とエンドプレート4)の分解斜視図であり、(d)は、図1(a)の右側(リアハウジング3側)から見た従来技術の要部断面図である。
図1(a)において、フロントハウジング1に保持された軸受22、23にクランクシャフト5が回転自在に支持されている。このクランクシャフト5は、自動車エンジンの回転力を受けるようになっている。クランクシャフト5は、その回転中心より所定量偏心して円形状のクランク部6が一体形成され、このクランク部6に軸受29を介して円筒状のローリングピストン42が回転自在に支持されている。クランクシャフト5の回転を受けると、ローリングピストン42はクランク部6の偏心量に応じた公転運動(偏心回転)を行うことになる。クランクシャフト5にはバランスウェイト7が固定され、フロントハウジング1とクランクシャフト5の間にはシャフトシール24が配設されている。
ローリングピストン42のつば状部43の端面とフロントハウジング1の端面にはそれぞれ対面してリング状のプレート26、27が固定され、そしてこの両プレート26、27の間に多数のボール25およびこのボール25を保持するリテーナ28が配設され、ローリングピストン42に作用するスラスト荷重を受けるようになっている。
ミドルハウジング2は、フロントハウジング1に固定されており、このミドルハウジング2には、エンドプレート4およびリアハウジング3が固定されている。ミドルハウジング2内部に形成した円筒状のシリンダ44とローリングピストン42とエンドプレート4とにより第1作動室(低段作動室)40が形成されている。
エンドプレート4は、ローリングピストン42に対向した面に円柱部47が一体形成されている。この円柱部47は、シリンダ44と同一中心位置(クランクシャフト5の中心軸O1と同じ)を有するように形成され、ローリングピストン42の内周側に配設されている。この円柱部47とローリングピストン42の内周面のシリンダ42aと、エンドプレート4とにより第2作動室(高段作動室)41が形成されている。
ミドルハウジング2にはガイド溝45が穿設され、このガイド溝45に摺動自在に第1ベーン(低段ベーン)8が案内されている。ミドルハウジング2には第1ベーン8の軸方向略中央部に、ベーン8の摺動方向にスプリングガイド穴46が穿設されており、その内部にベーン押さえ板12とスプリング10が配設されている。このスプリング10の一端を支持するキャップ11がミドルハウジング2に固定されており、このキャップ11によってスプリングガイド穴46の上端が閉じられている。同様に、エンドプレート4に形成された円柱部47にガイド溝48を設け、このガイド溝48に第2ベーン(高段ベーン)9が摺動自在に案内され、円柱部47に設けたスプリングガイド穴49にベーン押さえ板15とスプリング13とキャップ14が配設されている。
ミドルハウジング2には図1(b)に示すように、第1作動室40の吸入口35が第1ベーン8に近接して配設され、この吸入口35より冷媒が吸入される。エンドプレート4には図1(c)に示すように、第1作動室40の吐出口37と第2作動室41の吸入口36および吐出口38が穿設されている。図1(d)に示すように、第1作動室40の吐出口37と第2作動室41の吸入口36はともにリアハウジング3に形成された中間圧力室30に連通し、第2作動室41の吐出口38はリアハウジング3に形成された吐出圧力室31に連通している。第1作動室40で圧縮された冷媒は吐出口37→中間圧力室30→吸入口36の経路を経て第2作動室41に吸入され、この室41内でさらに圧縮されることになる。第1作動室40と第2作動室41の圧縮開始のタイミングが約180度異なる位置関係でもって第1ベーン8と第2ベーン9は配設されている(後述の図10参照)。
中間圧力室30の中間圧力はエンドプレート4に設けた連通口32を通じてガイド溝45内に導かれ、スプリング10とともに第1ベーン8を適当な力でローリングピストン42の外周面に押付け、第1ベーン8とローリングピストン42の間の冷媒の漏れを防止する。同様に、吐出圧力室31の吐出圧力はエンドプレート4に設けた連通口33を通じてガイド溝48内に導かれ、スプリング13とともに第2ベーン9をローリングピストン42のシリンダ42aの内周面に押付けて、ベーン9とローリングピストン42の間の冷媒の漏れを防止する。
第1作動室40の吐出弁16は中間圧力室30内に配設され、弁止板17とともに、ボルト18によりエンドプレート4に固定され、吐出口37を開閉する。第2作動室41の吐出弁19は吐出圧力室31内に配設され、弁止板20とともにボルト21によりエンドプレート4に固定され、吐出口38を開閉する。リアハウジング3には吐出圧力室31に連通した吐出ポート34が形成され、この吐出ポート34を通り冷媒は外部に送り出される。図1(d)においては、リアハウジング3に中間圧力室30と吐出圧力室31とを連通するバイパスポート120が設けられ、このバイパスポート120の吐出圧力室31側に吐出圧力室31から中間圧力室30への冷媒の逆流を防止する逆止弁121および弁止板122がボルト123により固定されている。
次に、特許文献1の作動を説明する。図2は、特許文献1の圧縮機が吸入を完了した状態(a)から、ローリングピストン42の公転角度が約90度おきの状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示した説明図である。第1作動室40、第2作動室41はそれぞれベーン8、ベーン9により吸入側40A、41Aと吐出側40B、41Bとに分けられている。
ローリングピストン42の公転運動に伴い、第1作動室40の吐出側40Bの容積は次第に減少し、内部の冷媒は圧縮され、経路37→30→36を経て、第2作動室41に送り込まれる。公転角度が約180度の状態(c)で第2作動室41の吸入が完了したのち、第2作動室41の吐出側41Bの容積が次第に減少するので、冷媒は第2作動室41でさらに圧縮され、外部冷凍サイクルの凝縮器圧力の冷媒圧力に達したとき吐出弁19を押し開き、吐出口38より吐出圧力室31に吐出される。従って、吸入された冷媒はローリングピストン42の公転、すなわち、クランクシャフト5の回転がおおよそ2回転する間に圧縮される。
図3(a)は、特許文献1の他の従来技術を示す縦断面図であり、(b)は、(a)の部分構造の説明図である。図1(a)の場合では、クランクシャフト5にクランク部6が一体に形成されているが、この図3(a)の場合では、クランクシャフト5とクランク部6とを別体で形成している。すなわち、クランクシャフト5にその回転中心O1に対して偏心した位置(中心軸O2)に駆動ピン51が一体に形成され、この駆動ピン51にクランク部6が回転可能に取り付けられている。クランク部6には、バランスウェイト7が固定されており、サークリップ52によりクランク部6が駆動ピン51から抜けることを防止している。図3(b)に示すように、クランクシャフト5の中心軸O1に対して、駆動ピン51の中心軸O2は偏心している。クランク部6の中心軸O3は、駆動ピン51の中心軸O2回りに回動できるようになっている。ローリングピストン42は、クランク部6の中心軸O3と同軸である。
この他の従来技術においては、図3(b)に示すように、ローリングピストン42に作用する冷媒の圧縮反力により、駆動ピン51の中心軸O2に対して、ローリングピストン42が、ミドルハウジング2内周の円筒状のシリンダ44、又は、円柱部47に、押付けられるように回動自在になっている。これにより、ローリングピストン42とシリンダ44、又は、円柱部47間の冷媒漏れを防止し、圧縮効率の向上を図ろうとするものである。
図3(a)の特許文献1の他の従来技術は、円周漏れを防止するために、駆動ピン51を用いてローリングピストン42を押付け方向に回転させたものである。しかしながら、この従来技術では、駆動ピン51に働くモーメントが、クランクシャフト5の回転角によって反転する場合があり、ローリングピストン42をシリンダ44や円柱部47に押付けることができない場合が生じて、期待するような効果を得ることができなかった。
特開平06−159278号公報
本発明は、上記問題に鑑み、円周漏れを低減し圧縮機の高効率化を実現できるようにした2段圧縮ローリングピストン型圧縮機を提供するものである。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、内部にシリンダ(44)を有するハウジング、前記ハウジングに回転自在に支持されたクランクシャフト(5)、前記クランクシャフト(5)の第1中心軸(O1)と同軸に前記ハウジングに固定された円柱部(47)、前記クランクシャフト(5)の第1中心軸(O1)に対して、所定量偏心した第2中心軸(O2)に、前記クランクシャフト(5)と一体に設けられた駆動ピン(51)、前記クランクシャフト(5)と別体に設けられて、前記駆動ピン(51)を介して回転自在に連結されるクランク部(6)、前記クランク部(6)に回転自在に嵌合される円筒状のローリングピストン(42)であって、前記ローリングピストン(42)の内周側に前記円柱部(47)を内蔵して前記シリンダ(44)内に配置され、前記クランクシャフト(5)の回転を受けて前記シリンダ(44)の内周面、及び、前記円柱部(47)の外周面に対して公転運動を行うローリングピストン(42)、並びに、前記シリンダの内周面と前記ローリングピストン(42)の外周面との間の低段作動室(40)を吸入側と吐出側とに分離する第1ベーン(8)、及び、前記ローリングピストン(42)の内周面と前記円柱部(47)の外周面との間の高段作動室(41)を吸入側と吐出側とに分離する第2ベーン(9)を具備する、前記ローリングピストン(42)の内外に2つの作動室を設けて2段圧縮ローリングピストン型圧縮機において、低段作動室(40)に対する高段作動室(41)の位相ずらし角度(φ)が、公転方向とは反対方向に計って200°から280°の範囲にあることを特徴とする2段圧縮ローリングピストン型圧縮機である。
これにより、高段の位相ずらし角度φを200〜280°に設定して、駆動ピン回りのローリングピストンに働くモーメントが一定方向に維持できるようにしたもので、押付け力Fが、常にシリンダ44を押付けるように作用して(負になることが無くなり)、円周方向の漏れを低減することができる。そして、ローリングピストン42とシリンダ44および円柱部47間の漏れを防止し、圧縮効率の向上を図ることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1ベーン(8)に対して、前記第2ベーン(9)が公転方向とは反対方向に計って20°から100°の範囲にあることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記位相ずらし角度(φ)が、公転方向とは反対方向に計って255°から265°の範囲にあることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、不釣合い遠心力に対して釣合わせるバランサ(7)を設けたことを特徴とする。これにより、シャフトの回転による不釣合い遠心力に対して釣合わせることができ、振動を低減することができる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記バランサ(7)を前記クランク部(6)に設けたことを特徴とする。
これにより図4(a)に示すモータバランサ7’を小さくすることができ、小型化を図ることができる。
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の発明において、前記ローリングピストン(42)が、前記シリンダの内周面に押し付ける方向と反対側に所定許容量以上に動くことを防止するストッパ機能が設けられたことを特徴とする。これにより、押付けモーメントMとは反対方向の反転モーメントM’が一時的に働いて、クランク部6が、シリンダ44との隙間を拡げるように動いた場合でも、ストッパ機能により隙間を一定以上拡がらないようにし、円周方向の漏れが大きくならないよう制御することができる。
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の発明において、前記駆動ピン(51)が根元側の径が太くなっている段差ピンであることを特徴とする。これにより、駆動ピンの根元にかかる応力を低減することができる。
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
(a)は、特許文献1の従来技術を示す縦断面図であり、(b)は、図1(a)のA−A線に沿った断面図であり、(c)は、図1(a)の要部(円柱部47とエンドプレート4)の分解斜視図であり、(d)は、図1(a)の右側(リアハウジング3側)から見た従来技術の要部断面図である。 特許文献1の圧縮機が吸入を完了した状態(a)から、ローリングピストン42の公転角度が約90度おきの状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示した説明図である。 (a)は、特許文献1の他の従来技術を示す縦断面図であり、(b)は、(a)の部分構造の説明図である。 (a)は、本発明の一実施形態を示す断面図であり、(b)は、図4(a)のB−B線に沿った断面図である。 (a)は、クランクシャフト5が、駆動ピン51を介して、クランク部に連結する構造を説明する分解斜視図であり、(b)は中心軸O1〜O3の関係を説明する説明図である。 (a)は、本発明の一実施形態の低段吸入完了を示す図であり、(b)は、高段吸入完了を示す図である。 低段吸入完了時からクランクシャフト5の回転角度ψ(ローリングピストンの公転角度)が90度おきの状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示した説明図である。 図7(a)〜(d)に対応して、高段作動室の状態を示した図である。 クランクシャフト5の回転角度ψと高段の位相ずらし角度φを図示した説明図である。 高段の位相ずらし角度φと、クランクシャフト5の回転角度ψ=0のときの位置関係と、圧力グラフとの関係を示した説明図である。 ローリングピストンの押付け力Fを解析した説明図である。 (a)、(b)は、それぞれ、従来技術(φ=180°)の圧力グラフと押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフであり、(c)、(d)は、それぞれ、本発明の一実施形態(φ=260°)の圧力グラフと押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフである。 (a)は、本発明の一実施形態φ=200°の押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフであり、(b)は、本発明の一実施形態φ=280°の押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフである。 押付けモーメントMとは反対方向の反転モーメントM’が、クランク部に働いた場合のストッパ機能を説明する図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。従来技術に対する各実施態様の同一構成の部分には、同様に同一の符号を付してその説明を省略する。
図4(a)は、本発明の一実施形態を示す断面図であり、(b)は、図4(a)のB−B線に沿った断面図である。図5(a)は、クランクシャフト5が、駆動ピン51を介して、クランク部に連結する構造を説明する分解斜視図であり、(b)は中心軸O1からO3の関係を説明する説明図である。
本実施形態は、密閉型の電動圧縮機に適用した場合の実施形態である。これに限らず、特許文献1の従来技術のように、ベルト駆動式の圧縮機に適用しても良い。本発明の一実施形態は、図3に示すような特許文献1の従来技術と、基本的に同じ構造である。本発明の一実施形態では、特許文献1の従来技術とは異なり、転がり軸受22、23は、すべり軸受22’、23’であり、プレート26、27及びボール25が構成しているスラスト軸受は、背圧で受けるすべり軸受である。なお、本発明の一実施形態において、本発明と技術思想を同一とする限り、特許文献1に示されるような変形例が含まれることは当然である。
本発明は、従来技術とは異なり、圧縮の位相を低段と高段で適正にずらすことよって、駆動ピン51回りのローリングピストン42に働くモーメントを、常に押付け方向に保ち、円周漏れを低減し圧縮機の高効率化を実現できるようにしたものである。
以下、図4、5を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
ハウジングは、フロントハウジング1、ミドルハウジング2、リアハウジング3からなる。ミドルハウジング2は、フロントハウジング1に固定されており、このミドルハウジング2には、エンドプレート4およびリアハウジング3が固定されている。ミドルハウジング2内部に形成した円筒状のシリンダ44とローリングピストン42とエンドプレート4とにより低段作動室40が形成されている。ミドルハウジング2の端板部43’は、ローリングピストン42の側面42cと対面し、ローリングピストン42の反対側の側面は、エンドプレート4に対面する。端板部43’とエンドプレート4は、それぞれ、ローリングピストン42に対して、作動室に漏れが問題とならないようなクリアランスに設定されている。
クランクシャフト5は、すべり軸受22’、23’に回転支持されており、フロントハウジング1に固定されたステータモータ53と、クランクシャフト5に固定されたロータモータ54により、回転駆動される。図5(a)、(b)に示すように、クランクシャフト5の第1中心軸O1に対して、所定量偏心した第2中心軸O2に、クランクシャフト5と一体に設けられた駆動ピン51が設置されている(図3の特許文献1と同じ構造である)。ローリングピストン42は、クランク部6に回転自在に嵌合されている。図5(b)に示すように、ローリングピストン42は、駆動ピン51の第2中心軸O2回りに揺動自在である。しかしながら、後述するように、ローリングピストン42にはモーメントMが働き、シリンダ44に押付けられた状態で、シリンダ44の内周面に沿って公転する。このようにして、クランクシャフト5の回転を受けると、ローリングピストン42は、第1中心軸O1に対して、クランク部6の偏心量(O1−O3)に応じた公転運動(偏心回転)を行うことになる。クランク部6にはバランスウェイト7が固定されている。
エンドプレート4は、ローリングピストン42に対向した面に円柱部47が一体形成されている。この円柱部47は、シリンダ44と同一中心位置O1を有するように形成され、ローリングピストン42の内周側に配設されている。この円柱部47とローリングピストン42の内周面のシリンダ42aと、エンドプレート4とにより第2作動室41が形成されている。ミドルハウジング2にはガイド溝45が穿設され、このガイド溝45に摺動自在に第1ベーン8が案内されている。同様に、エンドプレート4に形成された円柱部47にガイド溝48を設け、このガイド溝48に第2ベーン9が摺動自在に案内されている。本実施形態においては、第1ベーン8に対して、第2ベーン9が公転方向とは反対方向に見て20°から100°の範囲にある(図1(b)の従来技術では0°)。第1ベーン8と第2ベーン9の角度位置は、本発明の特徴である位相ずらし角度φと関連するので、後ほど詳細に説明する。
図4(a)、(b)に示すように、ミドルハウジング2には、第1作動室40の吸入口35が第1ベーン8に近接して配設され、この吸入口35より冷媒が吸入される。エンドプレート4には、低圧作動室40の吐出口37と高圧作動室41の吸入口36および吐出口38が穿設されている。低圧作動室40の吐出口37と高圧作動室41の吸入口36はともにリアハウジング3に形成された中間圧力室(図示せず)に連通し、第2作動室41の吐出口38はリアハウジング3に形成された吐出圧力室(図示せず)に連通している。低圧作動室40で圧縮された冷媒は吐出口37→中間圧力室→吸入口36の経路を経て高圧作動室41に吸入され、高圧作動室41内でさらに圧縮されることになる。
本実施形態の作動を説明するために、一例として、第1ベーン8に対して、第2ベーン9が公転方向とは反対方向に100°の位置にある場合(高段の位相ずらし角度φ=280°)で説明する。ここで、ψは、クランクシャフト5の回転角度(ローリングピストンの公転角度)であり、ローリングピストン42が上死点(シリンダ44の内周面への接点位置)に来たときをゼロと定めている。
図6(a)は、本発明の一実施形態の低段吸入完了を示す図であり、(b)は、高段吸入完了を示す図である。図7は、低段吸入完了時からクランクシャフト5の回転角度ψが90度おきの状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示した説明図である。図8は、図7(a)〜(d)に対応して、高段作動室の状態を示した図である。
図7(a)で、図6(a)に示す低段吸入完了が行われた後、図7(b)〜(d)に示すように、低段作動室40において、低段圧縮が進行する。圧縮された作動流体(冷媒)は、低段の吐出口37から、高段作動室41の吸入口36に送り出される。図6(b)に示す高段吸入完了(ψ=80°)が行われた後、図8(b)〜(a)に示すように、高段作動室41において、高段圧縮が進行して、高段の吐出口38から吐出圧力室に吐出され、吐出ポート34から次工程に送り出される。
次に、本発明の特徴である高段の位相ずらし角度φについて説明する。図9は、クランクシャフト5の回転角度ψと位相ずらし角度φを図示した説明図である。図10は、高段の位相ずらし角度φと、クランクシャフト5の回転角度ψ=0°のときの位置関係と、圧力グラフとの関係を示した説明図である。ここで、高段の位相ずらし角度φは、図9に示すように定義される。図9の場合、高段の位相ずらし角度φは、φ=0°(図10のψ=0°の状態)から公転方向(シャフトの回転方向)と反対方向に測った角度である。
図10に示すように、高段の位相ずらし角度φ=0°の時には、高段の圧縮サイクルが、低段の圧縮サイクルと同位相で進行する。また、高段の位相ずらし角度φがゼロから大きくなると、図10に示すように、高段の圧縮サイクルが低段に比べて進むように推移する。高段の位相ずらし角度は、第1ベーン8に対して、第2ベーン9が公転方向とは反対方向に計った角度で置き換えても良い。特許文献1の従来技術の場合は、図10に示すように、φ=180°である。
図10に示すように、φ=0のとき、第1、第2ベーンはともに下方を向いており、低段作動室40と高段作動室41の圧力グラフの位相差はゼロである。高段の位相ずらし角度φを90°毎変化させたときの高段側の圧力グラフは、図10に示すとおりである。高段の位相ずらし角度φ=180°のときは、特許文献1の従来技術(図1(b)参照)を示している。
これに対して、本実施形態では、高段の位相ずらし角度φを200〜280°に設定したものである。高段作動室41の位相ずらし角度φが、公転方向とは反対方向に計って200°から280°の範囲にあることは、第1ベーン8に対して、第2ベーン9が公転方向とは反対方向に計って20°から100°の範囲にあるということに言い換えることができる。
図11は、ローリングピストンの押付け力Fを解析した説明図である。
図5(b)、図11を参照して、ローリングピストン42の押付け力Fを求める。クランク部6の重心Gに働く力は、高段作動室41に発生した高段圧縮反力F1、高段側第2ベーン9の押付け力F2、低段作動室40に発生した低段圧縮反力F3、低段側第1ベーン8の押付け力F4の合力Ftotalとなり、図11に示したとおりである。この場合、クランクシャフト5の第1中心軸O1に対して、駆動ピン51の第2中心軸O2の位置は、ローリングピストン42の第3中心軸O3より公転方向に進み位置(一例として、∠O312=40〜60°程度)となっている。この角度は、ベクトルO12とベクトルO13に挟まれる角度をベクトルO13から公転方向に図ったときの角度のことである。
駆動ピン51の第2中心軸O2から、合力Ftotalのベクトル方向に垂線を下ろし、その距離をh1(合力との法線距離)とすれば、押付けモーメントM=Ftotal*h1となる。この押付けモーメントMによって、ローリングピストン42がシリンダ44に接する接点において、発生する法線方向の力が、押付け力Fである。駆動ピン51の第2中心軸O2から、押付け力Fのベクトル方向に垂線を下ろし、その距離をh2(接点との法線距離)とすれば、押付け力F=M/h2となる。
本実施形態においては、高段の位相ずらし角度φを200〜280°に設定したことにより、押付け力Fが、常にシリンダ44を押付けるように作用して、円周方向の漏れを低減することができる。高段の位相ずらし角度φは260°がベストであり、その前後プラスマイナス5度の範囲(公転方向とは反対方向に見て255°から265°の範囲)が、極めて良好である。
図12(a)、(b)は、それぞれ、従来技術(φ=180°)の圧力グラフと押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフであり、(c)、(d)は、それぞれ、本発明の一実施形態(φ=260°)の圧力グラフと押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフである。図13は、(a)は、φ=200°の押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフであり、(b)は、φ=280°の押付け力をクランクシャフトの回転角ψ=0〜360°にわたって表したグラフである。
図12(a)、(b)に示すように、従来技術の図12(b)では、押付け力が角度によっては負になっているが、図12(d)に示すように、本発明の一実施形態(φ=260°)では、負になることが無くなっている。押付け力Fが、常にシリンダ44を押付けるように作用して、円周方向の漏れを低減することができる。高段の位相ずらし角度φを200〜280°に設定するとき、図13に示すように、図12(d)と同様な結果が得られた。
このように、本発明の一実施形態と従来技術とで効果が相違する理由は次のように考えられる。従来技術は、高段の位相ずらし角度φが180°ずれている場合に相当する。そのため、クランクシャフトの回転角ψが0°や180°のときには、低段か高段のどちらかにおいて圧縮反力が働かず、ベーンの押付け力のみが働くことになる。ベーンの押付け力の作用角度は一定なので、ベーンの押付け力が0°、180°に働く場合には、図11で説明した合力Ftotalの角度が、駆動ピン51の角度位置で変化してしまい、モーメントを一定方向に維持できない。
これに対して、本発明の一実施形態においては、高段の位相ずらし角度φを200〜280°に設定して、モーメントが一定方向に維持できるようにしたもので、押付け力Fが、常にシリンダ44を押付けるように作用して、円周方向の漏れを低減することができる。
その他の実施形態として、不釣合い遠心力に対して釣合わせるバランサ7を設ける。バランサ7はクランク部6に設けると良いが、これに限定されずに、ロータモータ54などに設けても良い。
また、ローリングピストン42が、前記シリンダの内周面と反対側に動くことを防止するストッパピン59を設けても良い。図13は、押付けモーメントMとは反対方向の反転モーメントM’が、クランク部に働いた場合のストッパ機能を説明する図である。押付けモーメントMとは反対方向の反転モーメントM’が一時的に働いて、クランク部6が、シリンダ44との隙間を拡げるように動いた場合でも、ストッパピン59(ストッパ機能)がごく僅か大きい穴59’に接触して、隙間を一定以上拡がらないようにすることができる。ストッパ機能としては、ストッパピン59だけに限定されずに、ローリングピストン42が、シリンダの内周面に押し付ける方向と反対側に所定許容量以上に動くことを防止するようなストッパが設置されていれば良い。
駆動ピン51は、根元の径が太く形成されている段差ピン(図3(a)の従来技術の51参照)とすれば、駆動ピン51の根元が太くなり、駆動ピンの根元にかかる応力を低減することができる。
5 クランクシャフト
6 クランク部
8 第1ベーン
9 第2ベーン
40 低段作動室
41 高段作動室
42 ローリングピストン
47 円柱部
51 駆動ピン

Claims (7)

  1. 内部にシリンダ(44)を有するハウジング、
    前記ハウジングに回転自在に支持されたクランクシャフト(5)、
    前記クランクシャフト(5)の第1中心軸(O1)と同軸に前記ハウジングに固定された円柱部(47)、
    前記クランクシャフト(5)の第1中心軸(O1)に対して、所定量偏心した第2中心軸(O2)に、前記クランクシャフト(5)と一体に設けられた駆動ピン(51)、
    前記クランクシャフト(5)と別体に設けられて、前記駆動ピン(51)を介して回転自在に連結されるクランク部(6)、
    前記クランク部(6)に回転自在に嵌合される円筒状のローリングピストン(42)であって、前記ローリングピストン(42)の内周側に前記円柱部(47)を内蔵して前記シリンダ(44)内に配置され、前記クランクシャフト(5)の回転を受けて前記シリンダ(44)の内周面、及び、前記円柱部(47)の外周面に対して公転運動を行うローリングピストン(42)、並びに、
    前記シリンダの内周面と前記ローリングピストン(42)の外周面との間の低段作動室(40)を吸入側と吐出側とに分離する第1ベーン(8)、及び、前記ローリングピストン(42)の内周面と前記円柱部(47)の外周面との間の高段作動室(41)を吸入側と吐出側とに分離する第2ベーン(9)を具備する、前記ローリングピストン(42)の内外に2つの作動室を設けて2段圧縮ローリングピストン型圧縮機において、
    低段作動室(40)に対する高段作動室(41)の位相ずらし角度(φ)が、公転方向とは反対方向に計って200°から280°の範囲にあることを特徴とする2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  2. 前記第1ベーン(8)に対して、前記第2ベーン(9)が公転方向とは反対方向に計って20°から100°の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  3. 前記位相ずらし角度(φ)が、公転方向とは反対方向に計って255°から265°の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  4. 不釣合い遠心力に対して釣合わせるバランサ(7)を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  5. 前記バランサ(7)を前記クランク部(6)設けたことを特徴とする請求項4に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  6. 前記ローリングピストン(42)が、前記シリンダの内周面に押し付ける方向と反対側に所定許容量以上に動くことを防止するストッパ機能が設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
  7. 前記駆動ピン(51)が根元側の径が太くなっている段差ピンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の2段圧縮ローリングピストン型圧縮機。
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