JP2013001590A - 導電性酸化物およびその製造方法、ならびに酸化物半導体膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】スパッタリング用ターゲットとして好ましく使用され得る導電性酸化物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下の導電性酸化物とし、In−Ga−Zn−O酸化物のスパッタリング用のターゲットとして用いること。
【選択図】なし
【解決手段】結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下の導電性酸化物とし、In−Ga−Zn−O酸化物のスパッタリング用のターゲットとして用いること。
【選択図】なし
Description
本発明は導電性酸化物およびその製造方法に関し、特に、酸化物半導体膜をスパッタリングで形成するためのターゲットとして好ましい導電性酸化物およびその製造方法に関する。また、本発明は、酸化物半導体膜に関し、特に、上記導電性酸化物を用いて成膜される酸化物半導体膜に関する。
液晶表示装置、薄膜EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、有機EL表示装置などにおいて、薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として、従来では主として非晶質シリコン膜が使用されてきた。
しかし、近年では、そのような半導体膜として、In−Ga−Zn系複合酸化物(IGZO)を主成分とする酸化物半導体膜が、非晶質シリコン膜に比べてキャリアの移動度が大きいという利点から注目されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1においては、酸化物半導体膜が、ターゲットを使用するスパッタリング法によって形成されることが開示されており、さらに、そのターゲットが導電性を示す酸化物粉末の焼結体であることが開示されている。
特許文献1に開示のターゲットを用いたスパッタリング法によれば、基板上の酸化物半導体膜は以下のようにして形成される。すなわち、真空状態のスパッタリング装置内に希ガスを導入しながら、装置内において対向するように配置される基板とターゲットとの間に高電圧を印加することにより、希ガスイオンが生成される。生成された希ガスイオンは、高速でターゲットの表面に衝突し、これによって、ターゲットの表面がスパッタリングされる。そして、スパッタリングされるターゲットの表面から、ターゲットを構成する原子が装置内に飛び出し、飛び出した原子は基板上に堆積される。このように、基板上にターゲット由来の原子が堆積されることによって、半導体膜としてのIn−Ga−Zn−O膜からなる酸化物半導体膜が形成される。
また、特許文献2には、InGaZnO4の結晶質とGa2ZnO4の結晶質とを含む焼結体からなるターゲットが開示されている。特許文献2において、上記焼結体をターゲットとしたスパッタリング法によって酸化物半導体膜を成膜することによって、スパッタリングの際の異常放電を抑制することができ、これにより、膜質異常がなく、表面平滑性に優れた酸化物半導体膜を提供できるとされている。
上述のような酸化物半導体膜は、たとえば、TFTのチャネル層として用いることができるが、このとき、TFTのサブスレッショルドスウィング(Sub-threshold swing)値(以下、「S値」という。)が低いことが望ましい。TFTのS値が低いほど、TFTは大きなスイッチング速度を有することができる。しかし、特許文献1および特許文献2に開示されるターゲットを用いて形成されたIn−Ga−Zn−O膜のS値は未だ十分に低いとはいえず、さらなる技術の開発が必要である。
そこで、本発明は、スパッタリング用ターゲットとして好ましく使用され得る導電性酸化物およびその製造方法を提供し、そのターゲットを用いることによって作製した酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いる場合にS値を低くすることを目的としている。
本発明者らは、スパッタリング法によってTFTのチャネル層を形成する場合に、ターゲットとして用いられる導電性酸化物の組成を改質することによって、TFTのS値を向上できる可能性に着目し、鋭意検討を重ねた。そして、その結果、本発明の導電性酸化物を用いて、TFTのチャネル層としてのIn−Ga−Zn−O膜を作製した場合に、TFTのS値を低くできることを見出した。また、本発明の導電性酸化物の製造方法によって、上記導電性酸化物を効率的に製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下である、導電性酸化物である。
上記導電性酸化物において、断面における、結晶質In2O3の面積と結晶質Ga2ZnO4の面積との合計面積の割合が、70%以上であることが好ましい。
上記導電性酸化物において、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、およびBiから選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含むことが好ましい。
上記導電性酸化物において、スパッタリング法のターゲットに用いられることが好ましい。
また、本発明は、上記導電性酸化物を製造するための方法であって、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子を準備する工程と、結晶質In2O3からなる第2粒子を準備する工程と、第1粒子と前記第2粒子とを混合して焼成する工程と、を含む、導電性酸化物の製造方法である。
また、本発明は、上記導電性酸化物を用いたスパッタリング法によって成膜される、酸化物半導体膜である。
本発明によれば、スパッタリング用ターゲットとして好ましく用いられ得る導電性酸化物およびその製造方法を提供することができる。この導電性酸化物をターゲットとしたスパッタリング法によって作製された酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いることにより、TFTのS値を低くすることができる。
なお、スパッタリングに用いられるターゲットとは、スパッタリングで成膜するための材料をプレート状に加工したものや、当該プレート状の材料をバッキングプレート(ターゲット材を貼り付けるための裏板)に貼り付けたものなどの総称である。バッキングプレートは、無酸素銅、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、モリブデン、チタンなどの素材を用いて作製することができる。ターゲットとして用いる導電性酸化物の形状は、たとえば、径が1cmの円板状(平板丸型)であってもよく、大型LCD(液晶表示装置)用のスパッタリングターゲットのように径が2mを超える円形状であってもよい。また、その形状は円形状に限られず、たとえば、角型(平板矩形)であってもよい。
<導電性酸化物>
以下、本発明の導電性酸化物の一実施形態について詳細に説明する。
以下、本発明の導電性酸化物の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態において、導電性酸化物は、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む焼結体である。結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とは、それぞれ知られている結晶体であるが、本実施形態の導電性酸化物は、これらの結晶質が所定の条件で混在する状態の、改質された導電性酸化物である。具体的には、導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下となるように、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とが焼結されて混在している。
本発明者らの実験によれば、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合のInの原子濃度比が0.4未満の場合には、電気抵抗が高くなりすぎるために、直流マグネトロンスパッタを行なうことができず、もって、スパッタリングのターゲットとして実用に適さなかった。また、Inの原子濃度比が1.8超の場合には、この導電性酸化物を用いたスパッタリング法によってTFTのチャネル層を形成した場合に、オフ電流が高すぎてスイッチング駆動することができなかった。また、Gaの原子濃度比が0.4未満の場合には、電気抵抗が高くなりすぎるために、直流マグネトロンスパッタを行なうことができず、もって、スパッタリングのターゲットとして実用に適さなかった。また、Gaの原子濃度比が1.8超の場合には、この導電性酸化物を用いたスパッタリング法によってTFTのチャネル層を形成した場合に、オフ電流が高すぎてスイッチング駆動することができなかった。
また、本発明の各種実験により、本実施形態の導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.8以上であることがさらに好ましく、Znの原子濃度比を1とした場合に、Gaの原子濃度比が0.8以上であることがさらに好ましい。また、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が1.3以下であることが好ましく、Znの原子濃度比を1とした場合に、Gaの原子濃度比が1.3以下であることが好ましいことが分かっている。さらに、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が1.2以下であることがより好ましく、Znの原子濃度比を1とした場合に、Gaの原子濃度比が1.2以下であることが好ましい。
上述のような原子濃度比は、導電性酸化物中の結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4との比の調整によって実現することができる。また、導電性酸化物が、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4との他に、GaおよびZnの少なくともいずれかを含む他の結晶質、たとえば、結晶質ZnOを含むことによっても実現することができる。
導電性酸化物において、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とが含まれているかどうかは、たとえば、X線回折測定によって知ることができる。また、導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合のInの原子濃度比、およびGaの原子濃度比は、ICP発光分析により測定される濃度値(単位:atom%)をもとに、Znの濃度値で規格化することによって、算出することができる。
また、導電性酸化物において、任意の断面における結晶質In2O3の面積と結晶質Ga2ZnO4の面積との合計面積の割合が70%以上であることが好ましい。なお、任意の断面とは、導電性酸化物を所望の部分で割ったときに出現する表面をいい、導電性酸化物のいずれの部分であってもよい。本発明者らの実験によれば、導電性酸化物の断面において、上記合計面積の割合が70%未満の場合には、その導電性酸化物をターゲットとして用いたスパッタリング法によってIn−Ga−Zn−O膜からなる酸化物半導体膜を作製し、その膜をTFTのチャンネル層として用いても、TFTのS値を低くすることはできなかった。また、断面積における上記合計面積の割合は、80%以上であることがより好ましい。
導電性酸化物の断面における結晶質In2O3の面積および結晶質Ga2ZnO4の面積は、分析型走査電子顕微鏡を用いて求めることができる。たとえば、導電性酸化物の断面に照射された入射電子ビームに起因してその断面から反射された電子(反射電子像)を観察する。そして、コントラストの異なる領域の蛍光X線分析を行なってGa2ZnO4領域と、In2O3領域とをそれぞれ特定することによって、結晶質In2O3の面積および結晶質Ga2ZnO4の面積割合を測定することができ、結果的に上記合計面積の割合を算出することができる。
さらに、導電性酸化物は、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、およびBiから選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含むことが好ましい。これにより、その導電性酸化物をターゲットに用いたスパッタリングによって作製した酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いる場合に、TFTのオン電流を高めることができる。導電性酸化物中におけるN、Al、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、およびBiなどの元素の含有量は、たとえば、SIMS(2次イオン質量分析法)で分析することによって、知ることができる。
このように、本実施形態の導電性酸化物は、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを上記の条件で含む焼結体であり、スパッタリングで酸化物半導体膜を堆積する場合のターゲットとして好ましく用いることができる。本発明の導電性酸化物を用いて、たとえばTFTのチャネル層を成膜した場合、TFTのS値を低下させることができる。
<導電性酸化物の製造方法>
以下、本発明の導電性酸化物の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
以下、本発明の導電性酸化物の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
本実施の形態において、導電性酸化物の製造方法は、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子を準備する工程と、結晶質In2O3からなる第2粒子を準備する工程と、第1粒子と第2粒子とを混合して焼成する工程と、を含む、導電性酸化物の製造方法である。この製造方法によれば、上述の本発明の導電性酸化物を製造することができる。各工程について、以下に詳細に説明する。
(第1粒子を準備する工程)
導電性酸化物の原料粉末の1つとして、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子を準備する。具体的には、まず、通常のボールミル、遊星ボールミル、ビーズミルなどを用いて、酸化ガリウム(Ga2O3)の粉末と酸化亜鉛(ZnO)の粉末とのモル混合比率が1:1となるように混合して、第1混合物を作成する。各粉末は99.9%以上の高純度であることが好ましい。また、各粉末の混合方式には乾式と湿式の何れの方式を用いてもよく、湿式の混合方式を用いた場合には、第1混合物の乾燥には、自然乾燥やスプレードライヤなどの乾燥方法を用いることが好ましい。
導電性酸化物の原料粉末の1つとして、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子を準備する。具体的には、まず、通常のボールミル、遊星ボールミル、ビーズミルなどを用いて、酸化ガリウム(Ga2O3)の粉末と酸化亜鉛(ZnO)の粉末とのモル混合比率が1:1となるように混合して、第1混合物を作成する。各粉末は99.9%以上の高純度であることが好ましい。また、各粉末の混合方式には乾式と湿式の何れの方式を用いてもよく、湿式の混合方式を用いた場合には、第1混合物の乾燥には、自然乾燥やスプレードライヤなどの乾燥方法を用いることが好ましい。
次に、得られた第1混合物を仮焼する。このときの仮焼温度は、仮焼後の粉末(結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子)に酸化ガリウムや酸化亜鉛などの未反応の粒子が残存するのを抑制する観点から、800℃以上であることが好ましい。また、仮焼温度を1200℃未満とすることにより、仮焼後の粉末の粒径が過剰に大きくなるのを抑制することができ、これにより、仮焼後の粉末の粉砕が容易となる。
また、仮焼は、大気雰囲気、酸素雰囲気、窒素−酸素混合雰囲気などで行なうことが好ましく、なかでも大気雰囲気または酸素雰囲気で行なうことが好ましい。なお、酸素雰囲気とは、雰囲気全体の40%以上が酸素である雰囲気をいう。また、ZnOの蒸発を抑制するために、CIP(冷間静水圧処理)、加圧ガス中での焼結、ホットプレス焼結、HIP(熱間静水圧処理)焼結などの各種方法を利用して仮焼を行ってもよい。
本工程により、導電性酸化物の原料粉末の1つである、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子が準備される。第1粒子の平均粒径は、0.1μm以上1.5μm以下が好ましい。なお、粒子の平均粒径は、BET比表面積法により求めることができる。
(第2粒子を準備する工程)
導電性酸化物の原料粉末の1つとして、結晶質In2O3からなる第2粒子を準備する。第2粒子は、たとえば、市販の酸化インジウムの粉末を用いることができる。酸化インジウムの粉末は99.9%以上の高純度であることが好ましく、その平均粒径は0.1μm以上1.5μm以下が好ましい。
導電性酸化物の原料粉末の1つとして、結晶質In2O3からなる第2粒子を準備する。第2粒子は、たとえば、市販の酸化インジウムの粉末を用いることができる。酸化インジウムの粉末は99.9%以上の高純度であることが好ましく、その平均粒径は0.1μm以上1.5μm以下が好ましい。
(第1粒子と第2粒子とを混合して焼成する工程)
準備された第1粒子と第2粒子とを混合して焼成する。具体的には、まず、第1粒子と第2粒子とを混合して、第3混合物を作成する。第1粒子と第2粒子との混合割合は、作製する導電性酸化物に求められるIn、GaおよびZnの原子濃度比に基づいて決定される。第1粒子および第2粒子のみでは、導電性酸化物に求められる原子濃度比に設定するのが困難な場合などには、適宜、ZnO粒子、Ga2O3粒子などを混合させてもよい。
準備された第1粒子と第2粒子とを混合して焼成する。具体的には、まず、第1粒子と第2粒子とを混合して、第3混合物を作成する。第1粒子と第2粒子との混合割合は、作製する導電性酸化物に求められるIn、GaおよびZnの原子濃度比に基づいて決定される。第1粒子および第2粒子のみでは、導電性酸化物に求められる原子濃度比に設定するのが困難な場合などには、適宜、ZnO粒子、Ga2O3粒子などを混合させてもよい。
たとえば、In、GaおよびZnの組成の割合(モル比)が、In:Ga:Zn=1:1:1の割合の導電性酸化物を製造したい場合には、第1粒子:第2粒子:ZnO粒子=1:1:1のモル比となるように混合して、第3混合物を調整すればよい。また、各粒子の混合をより均一にする点で、各粒子はボールミルなどで粉砕した後に混合することが好ましい。
また、作製される導電性酸化物にN、Al、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、およびBiから選ばれた少なくとも1種の元素が含まれるように、第3混合物に、さらにAl2O3、SiO2などの粉末を粉砕して加えてもよい。この場合、作製された導電性酸化物をターゲットに用いたスパッタリングによって作製した酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いる場合に、TFTのオン電流を高めることができる。
次に、上記のように準備された第3混合物を焼成する。焼成を簡便に行なうために、第3混合物を所定の形状に成形して成形体を準備し、この成形体を焼成することが好ましい。このときの焼成温度は、焼結体の密度を向上させる観点から、1000℃以上であることが好ましい。焼結体の密度を向上させることによって、この焼結体を用いて作製された酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いた場合に、TFTのS値をさらに低下させることができる。また、焼成温度を1400℃以下とすることによって、結晶質InGaZnO4の単相が成長するのを抑制することができる。
また、焼成は、大気雰囲気、酸素雰囲気、窒素−酸素混合雰囲気などで行なうことが好ましく、なかでも大気雰囲気または酸素雰囲気で行なうことが好ましい。また、ZnOの蒸発を抑制するために、CIP(冷間静水圧処理)、加圧ガス中での焼結、ホットプレス焼結、HIP(熱間静水圧処理)焼結などの各種方法を利用して仮焼を行ってもよい。
以上の工程により、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下である、導電性酸化物を容易に歩留まりよく製造することができる。製造された導電性酸化物をターゲットに用いたスパッタリング法によって作製された酸化物半導体膜をTFTのチャネル層として用いることにより、TFTのS値を低くすることができる。
本発明による以下の種々の実施例においては、スパッタリングのターゲットとしての種々の導電性酸化物を作製した。また、作製した導電性酸化物をターゲットとして用いたスパッタリング法によってSi基板上に酸化物半導体膜を堆積し、これをチャネル層としたTFTを作製した。そして、作製されたTFTの特性を評価することによって、ターゲットとしての導電性酸化物の性能を評価した。
<検討1>
実施例1〜6において、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比および/またはGaの原子濃度比がそれぞれ異なる導電性酸化物を作製した。
実施例1〜6において、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比および/またはGaの原子濃度比がそれぞれ異なる導電性酸化物を作製した。
(実施例1)
ステップ1:結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末の準備
Ga2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:11m2/g)とZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)とを、モル混合比率が1:1となるように、ビーズミル装置の処理槽に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第1混合物としてのGa2O3−ZnO混合物を作製した。なお、第1混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
ステップ1:結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末の準備
Ga2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:11m2/g)とZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)とを、モル混合比率が1:1となるように、ビーズミル装置の処理槽に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第1混合物としてのGa2O3−ZnO混合物を作製した。なお、第1混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
次に、得られた第1混合物をアルミナ製ルツボに入れ、大気雰囲気中で900℃の温度にて5時間の仮焼を行なった。これにより、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末が準備された。
ステップ2:結晶質In2O3からなる第2粉末の準備
結晶質In2O3からなる第2粉末として、純度99.99%、BET比表面積が5m2/gの結晶質In2O3粉末を準備した。
結晶質In2O3からなる第2粉末として、純度99.99%、BET比表面積が5m2/gの結晶質In2O3粉末を準備した。
ステップ3:導電性酸化物の作製
第1粉末、第2粉末および結晶質ZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)とのモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:1となるように、各粉末をビーズミル装置の処理槽内に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第3混合物としてのGa2ZnO4−In2O3−ZnO混合物を作製した。第3混合物の粒径を光散乱法で測定したところ、平均粒径は0.8μmであった。なお、第3混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
第1粉末、第2粉末および結晶質ZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)とのモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:1となるように、各粉末をビーズミル装置の処理槽内に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第3混合物としてのGa2ZnO4−In2O3−ZnO混合物を作製した。第3混合物の粒径を光散乱法で測定したところ、平均粒径は0.8μmであった。なお、第3混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
次に、第3混合物をプレスによって成形し、さらにCIPにより加圧成形して、直径100mm、厚さ9mmの円板状の成形体を作製した。そして、作製された成形体を大気雰囲気中にて1426℃で5時間焼成し、導電性酸化物としての焼結体を作製した。
ステップ4:X線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析
得られた焼結体の一部からサンプルを採取して、X線回折法によってサンプルの断面に対して結晶解析を行ない、焼結体に含まれる結晶質を分析した。なお、X線としてはCuのKα線が用いられ、回折角2θと回折強度Iが測定された。
得られた焼結体の一部からサンプルを採取して、X線回折法によってサンプルの断面に対して結晶解析を行ない、焼結体に含まれる結晶質を分析した。なお、X線としてはCuのKα線が用いられ、回折角2θと回折強度Iが測定された。
また、得られた焼結体の一部からサンプルを採取して、分析型走査電子顕微鏡を用いて蛍光X線分析を行い、導電性酸化物の断面における、結晶質In2O3の面積と結晶質Ga2ZnO4の面積との合計面積の割合を算出した。
また、導電性酸化物をICP発光分析することで測定される濃度値(単位:atom%)を基に、焼結された導電性酸化物に含まれるIn、GaおよびZnの原子濃度比を算出した。なお、InおよびGaの原子濃度比は、Znの原子濃度比を1として規格化した。
ステップ5:ターゲットの作製
得られた焼結体を、直径3インチ(76.2mm)、厚さ5mmの円板状に加工し、これをスパッタリング用のターゲットとした。
得られた焼結体を、直径3インチ(76.2mm)、厚さ5mmの円板状に加工し、これをスパッタリング用のターゲットとした。
ステップ6:スパッタリング法による成膜
得られたターゲットを用いたスパッタリング法によって酸化物半導体膜としてのIn−Ga−Zn−O膜を成膜した。
得られたターゲットを用いたスパッタリング法によって酸化物半導体膜としてのIn−Ga−Zn−O膜を成膜した。
具体的には、まず、スパッタリング装置(DC(直流)マグネトロンスパッタ装置)の成膜室内の水冷されている基板ホルダ上に、成膜用基板として、25mm×25mm×0.25mmの低抵抗(0.02Ω・cm以下)のSiウエハ上に100nm膜厚の熱酸化SiO2が形成された基板を設置した。また、基板に対向するように、基板上にターゲットを配置した。このとき、基板とターゲットとの距離は40mmであった。
次に、成膜室内の圧力が1×10-4Paとなるように成膜室内を真空引きし、その後、ターゲットのプレスパッタを行なった。すなわち、基板とターゲットとの間にシャッターを配置した状態で、成膜室内へArガスを0.5Paの圧力まで導入して30Wの直流電力を印加してスパッタリング放電を起こした。これによって、ターゲット表面のクリーニング(プレスパッタ)が20分間行なわれた。なお、ターゲットの直径3インチの平面をスパッタ面とした。
プレスパッタ後、流量比で15%の酸素ガスを含むArガスを成膜室内へ所定の圧力まで導入し、120Wのスパッタ電力で成膜することにより、基板の熱酸化膜SiO2上に、膜厚70nmのIn−Ga−Zn−O膜が成膜された。
ステップ7:酸化物半導体膜のエッチング
得られたIn−Ga−Zn−O膜が所定のチャネル幅、チャネル長さを得るように、In−Ga−Zn−O膜上へのレジストの塗布、露光、現像を行い、In−Ga−Zn−O膜上に所定の形状のレジストを形成した。そして、リン酸:酢酸:水=4:1:100のエッチング水溶液を調製し、所定の形状のレジストが作成された基板をエッチング水溶液に浸漬させて、露出するIn−Ga−Zn−O膜をエッチングした。これにより、In−Ga−Zn−O膜からなる半導体層が形成された。この半導体層がTFTのチャネル層として機能し得る。
得られたIn−Ga−Zn−O膜が所定のチャネル幅、チャネル長さを得るように、In−Ga−Zn−O膜上へのレジストの塗布、露光、現像を行い、In−Ga−Zn−O膜上に所定の形状のレジストを形成した。そして、リン酸:酢酸:水=4:1:100のエッチング水溶液を調製し、所定の形状のレジストが作成された基板をエッチング水溶液に浸漬させて、露出するIn−Ga−Zn−O膜をエッチングした。これにより、In−Ga−Zn−O膜からなる半導体層が形成された。この半導体層がTFTのチャネル層として機能し得る。
ステップ8:電極形成
得られた半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成するために、半導体層上の電極形成部のみが露出するように、半導体層が形成された基板へのレジストの塗布、露光、現像を行い、所定の形状のレジストを形成した。なお、電極形成部とは、半導体層上であってソース電極およびドレイン電極が形成されるための表面をいう。そして、スパッタリング法によって半導体層の露出している電極形成部上に、Ti、Al、Moをこの順で析出させ、その後レジストを剥離することによって、半導体層上の電極形成部にTi/Al/Moからなるソース電極およびドレイン電極が形成された。以上のステップ6〜8により、In−Ga−Zn−O膜をチャネル層として備えるTFTが作製された。
得られた半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成するために、半導体層上の電極形成部のみが露出するように、半導体層が形成された基板へのレジストの塗布、露光、現像を行い、所定の形状のレジストを形成した。なお、電極形成部とは、半導体層上であってソース電極およびドレイン電極が形成されるための表面をいう。そして、スパッタリング法によって半導体層の露出している電極形成部上に、Ti、Al、Moをこの順で析出させ、その後レジストを剥離することによって、半導体層上の電極形成部にTi/Al/Moからなるソース電極およびドレイン電極が形成された。以上のステップ6〜8により、In−Ga−Zn−O膜をチャネル層として備えるTFTが作製された。
得られたTFTにおいて、ソース電極とドレイン電極との間に5Vの電圧を印加し、Siウエハからなるゲート電極とソース電極との間に印加する電圧を−10Vから20Vにまで変化させて、TFTの伝達特性を得た。得られたTFTの伝達特性に基づいて、各TFTのS値(mV/dec)を算出した。具体的には、各TFTのゲート電極とソース電極との間に印加した電圧(Vgs)と、そのときのドレイン電流(Ids)とを下記式(1)に代入し、最も小さい値となった数値をそのTFTのS値とした。
S=ln(10)・dVgs/{d[ln(Ids)]}・・・式(1)
また、各TFTのゲート電極とソース電極との間に10Vの電圧を印加し、そのときのドレイン電流をオン電流(Ion)とした。
S=ln(10)・dVgs/{d[ln(Ids)]}・・・式(1)
また、各TFTのゲート電極とソース電極との間に10Vの電圧を印加し、そのときのドレイン電流をオン電流(Ion)とした。
(実施例2)
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:4となるように混合し、焼結温度を1404℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:4となるように混合し、焼結温度を1404℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(実施例3)
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=9:9:1となるように混合し、焼結温度を1393℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=9:9:1となるように混合し、焼結温度を1393℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(実施例4)
ステップ3において、各粉末の第モル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1.2:1となるように混合し、焼結温度を1372℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ3において、各粉末の第モル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1.2:1となるように混合し、焼結温度を1372℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(実施例5)
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1.2:1:0.8となるように混合し、焼結温度を1488℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1.2:1:0.8となるように混合し、焼結温度を1488℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(実施例6)
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:1.5となるように混合し、焼結温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ3において、各粉末のモル混合比率が、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=1:1:1.5となるように混合し、焼結温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(比較例1)
比較例1においては、ステップ1〜3の代わりに、以下のステップ1aおよび2aを行なった以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
比較例1においては、ステップ1〜3の代わりに、以下のステップ1aおよび2aを行なった以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ1a:結晶質InGaZnO4からなる粉末の準備
In2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:5m2/g)、Ga2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:11m2/g)、およびZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)を、モル混合比率がIn2O3粉末:Ga2O3粉末:ZnO粉末=1:1:2となるように、ビーズミル装置の処理槽に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、In2O3−Ga2O3−ZnO混合物を作製した。なお、In2O3−Ga2O3−ZnO混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
In2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:5m2/g)、Ga2O3粉末(純度:99.99%、BET比表面積:11m2/g)、およびZnO粉末(純度:99.99%、BET比表面積:4m2/g)を、モル混合比率がIn2O3粉末:Ga2O3粉末:ZnO粉末=1:1:2となるように、ビーズミル装置の処理槽に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、In2O3−Ga2O3−ZnO混合物を作製した。なお、In2O3−Ga2O3−ZnO混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
次に、得られたIn2O3−Ga2O3−ZnO混合物をアルミナ製ルツボに入れ、大気雰囲気中で900℃の温度にて5時間の仮焼を行なった。これにより、結晶質InGaZnO4からなる粉末が準備された。
ステップ2a:導電性酸化物の作製
次に、結晶質InGaZnO4からなる粉末を一軸加圧成形によって成形し、さらにCIPにより加圧成形して、直径100mm、厚さ9mmの円板状の成形体を作製した。そして、作製された成形体を大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼成し、導電性酸化物としての焼結体を作製した。
次に、結晶質InGaZnO4からなる粉末を一軸加圧成形によって成形し、さらにCIPにより加圧成形して、直径100mm、厚さ9mmの円板状の成形体を作製した。そして、作製された成形体を大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼成し、導電性酸化物としての焼結体を作製した。
(比較例2)
比較例2においては、ステップ1〜3の代わりに、以下のステップ1b〜3bを行なった以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
比較例2においては、ステップ1〜3の代わりに、以下のステップ1b〜3bを行なった以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
ステップ1b:結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末の準備
実施例1のステップ1と同様の方法で、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末を作製した。
実施例1のステップ1と同様の方法で、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末を作製した。
ステップ2b:結晶質InGaZnO4からなる粉末の準備
比較例1のステップ1aと同様の方法で、結晶質InGaZnO4からなる仮焼粉末を作製した。
比較例1のステップ1aと同様の方法で、結晶質InGaZnO4からなる仮焼粉末を作製した。
ステップ3b:導電性酸化物の作製
結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末と結晶質InGaZnO4からなる粉末とのモル混合比率が、第1粉末:結晶質InGaZnO4からなる粉末=0.2:1となるように、各粉末をビーズミル装置の処理槽内に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第3混合物としてのGa2ZnO4−InGaZnO4からなる混合物を作製した。第3混合物の粒径を光散乱法で測定したところ、平均粒径は0.8μmであった。なお、第3混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
結晶質Ga2ZnO4からなる第1粉末と結晶質InGaZnO4からなる粉末とのモル混合比率が、第1粉末:結晶質InGaZnO4からなる粉末=0.2:1となるように、各粉末をビーズミル装置の処理槽内に入れた。そして、この処理槽内に分散溶媒としての水を加えながら、処理槽内の粉末を30分間粉砕混合することによって、第3混合物としてのGa2ZnO4−InGaZnO4からなる混合物を作製した。第3混合物の粒径を光散乱法で測定したところ、平均粒径は0.8μmであった。なお、第3混合物はスプレードライヤで乾燥させた。
次に、第3混合物をプレスによって成形し、さらにCIPにより加圧成形して、直径100mm、厚さ9mmの円板状の成形体を作製した。そして、作製された成形体を大気雰囲気中にて1300℃で5時間焼成し、導電性酸化物としての焼結体を作製した。
(比較例3)
比較例3においては、ステップ3において、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=0.95:0.95:0.05となるように各粉末を用い、成形体の焼成温度を1430℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
比較例3においては、ステップ3において、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=0.95:0.95:0.05となるように各粉末を用い、成形体の焼成温度を1430℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
(比較例4)
比較例4においては、ステップ3において、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=0.15:0.15:0.85となるように各粉末を用い、成形体の焼成温度を1420℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
比較例4においては、ステップ3において、第1粉末:第2粉末:結晶質ZnO粉末=0.15:0.15:0.85となるように各粉末を用い、成形体の焼成温度を1420℃とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれにおける各条件、測定結果などについて、表1に示す。
表1を参照し、実施例1〜6の導電性酸化物は、比較例1〜4の導電性酸化物に比べて、TFTのチャネル層をスパッタリング形成する場合のターゲットとして用いることにより、TFTのS値を低くすることができることがわかった。また、導電性酸化物の断面における、結晶質In2O3の面積と結晶質Ga2ZnO4の面積との合計面積の割合が、70%以上である場合に、TFTのS値を十分に低くできることがわかった。なお、比較例1による導電性酸化物は非晶質であり、X線測定において明瞭な回折ピークは現れなかった。
<検討2>
実施例7〜20において、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、さらに、添加元素を含む導電性酸化物を作製した。
実施例7〜20において、結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、さらに、添加元素を含む導電性酸化物を作製した。
(実施例7)
実施例7では、ステップ3において、さらにGaN粉末(純度99.99%、BET比表面積2m2/g)を加えて第3混合物を作製し、焼結温度を1415℃、焼結雰囲気を窒素雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
実施例7では、ステップ3において、さらにGaN粉末(純度99.99%、BET比表面積2m2/g)を加えて第3混合物を作製し、焼結温度を1415℃、焼結雰囲気を窒素雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICP分析によって分析し、さらに、TFTを作製した。
実施例8〜20においても、実施例7と同様に、ステップ3において、さらに酸化物粉末(Al2O3、SiO2、TiO2、V2O5、Cr2O3、ZrO2、Nb2O3、MoO2、HfO2、Ta2O3、WO3、SnO2、Bi2O3のいずれか)を加え、焼結温度を変更した以外は、実施例1と同様の方法によって導電性酸化物を作製し、導電性酸化物の組成などをX線回折測定、蛍光X線分析およびICPによって分析し、さらにTFTを作製した。各実施例における添加元素、および焼結温度は表2に示す。なお、添加元素の各原子濃度は、導電性酸化物をSIMSで分析することによって、1cm3当りの原子数(atom/cm3)として求めた。
表2を参照し、実施例7〜20の導電性酸化物は、比較例1および2の導電性酸化物に比べて、TFTのチャネル層をスパッタリング形成する場合のターゲットとして用いることにより、TFTのS値を低くすることができることがわかった。また、導電性酸化物が添加元素を含むことにより、TFTのオン電流を高めることができることがわかった。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明による導電性酸化物は、スパッタリング成膜のターゲットとして好ましく用いることができ、成膜された酸化物半導体膜を備えるTFTのS値の向上を可能にすることができる。
Claims (6)
- 結晶質In2O3と、結晶質Ga2ZnO4とを含む導電性酸化物であって、前記導電性酸化物において、Znの原子濃度比を1とした場合に、Inの原子濃度比が0.4以上1.8以下であり、かつ、Gaの原子濃度比が0.4以上1.8以下である、導電性酸化物。
- 前記導電性酸化物の断面における、前記結晶質In2O3の面積と前記結晶質Ga2ZnO4の面積との合計面積の割合が、70%以上である請求項1に記載の導電性酸化物。
- N、Al、Si、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、およびBiから選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含む、請求項1または2に記載の導電性酸化物。
- スパッタリング法のターゲットに用いられることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の導電性酸化物。
- 請求項1から4のいずれかに記載の導電性酸化物を製造するための方法であって、結晶質Ga2ZnO4からなる第1粒子を準備する工程と、結晶質In2O3からなる第2粒子を準備する工程と、前記第1粒子と前記第2粒子とを混合して焼成する工程と、を含む、導電性酸化物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の導電性酸化物を用いたスパッタリング法によって成膜される、酸化物半導体膜。
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