JP2012532159A - 気相におけるイソシアネートの調製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、反応器中で気相において少なくとも1つの不活性物質の存在下、対応するアミンとホスゲンとを反応させることによるイソシアネートの連続生産方法に関し、この方法では、ホスゲンを含有する流れおよびアミンおよび不活性物質を含有する流れが反応器に供給され、その流れの中の不活性物質のアミノ基に対するモル比は、大きく変動しない。

Description

本発明は、反応器中で気相において少なくとも1つの不活性物質の存在下、対応するアミンとホスゲンとの反応によるイソシアネートの連続調製方法に関し、この方法では、ホスゲン含有流と、アミンおよび不活性物質を含有する流れとを反応器に供給し、その流れにおけるアミノ基に対する不活性物質のモル比を大きく変動させない。
イソシアネートは、大量に調製され、主として、ポリウレタンの調製のための出発物質として働く。イソシアネートは、通常、対応するアミンとホスゲンとの反応によって調製される。イソシアネートの調製の一つの可能性は、アミンとホスゲンとの気相における反応である。これまで気相ホスゲン化と呼ばれてきたこの方法手順は、少なくとも反応成分のアミン、イソシアネートおよびホスゲン、好ましくは遊離体(educts)、補助物質、生成物および反応中間生成物のすべてが、選択された条件下でガス状であるように、反応条件が選択されることにより区別される。気相ホスゲン化の利点は、とりわけ、低減したホスゲンホールドアップ、ホスゲン化し難い中間生成物の回避、および増加した反応収量である。本発明は、もっぱら気相ホスゲン化に関する。
アミンとホスゲンとの気相における反応によるイソシアネートの様々な調製方法が、当技術分野において既知である。
欧州特許出願公開第289840号明細書には、気相ホスゲン化によるジイソシアネートの調製が記載されており、この調製は、可動部のない円筒空間中で、200℃および600℃の間の温度にて、乱流中で行われる。欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によると、欧州特許出願公開第289840号明細書に開示される方法の実施を可能にするために、管型反応器の寸法および反応空間中での流速は、欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によると少なくとも2,500のレイノルズ数を特徴とする乱流が該反応空間内で優勢であることが不可欠である。欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によると、この乱流は、一般に、気体反応パートナーが90m/秒より大きな流量で上記反応空間を通過する場合、確保される。上記円筒空間(管)中の乱流に起因して、壁に近い流体要素を無視すると、該管内での比較的良好な流れの等分配と、従って比較的狭い滞留時間分布とが得られ、欧州特許出願公開第570799号明細書(下記参照)に記載されているように、これが固体の形成の減少をもたらす。さらに、希釈形態でのアミンの使用が開示されており、不活性ガス(好ましくは窒素)、または不活性溶剤(例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、クロロナフタレンもしくはデカヒドロナフタレン等)の蒸気が、希釈剤として記載される。上記明細書では、1:0.5から1:2までのジアミン蒸気との不活性ガスまたは溶剤蒸気との体積比に従って希釈を行うことができると述べられている。それにもかかわらず、上記明細書では、用いる希釈剤の量が重量な役割を果たし得ることがはっきりと否定されている(第3頁第3欄第46〜48行)。
欧州特許出願公開第570799号明細書は、関連ジアミンとホスゲンとの反応を、管型反応器中で、該ジアミンの沸騰温度より高温で、0.5〜5秒までの平均接触時間内で行うことを特徴とする、芳香族ジイソシアネートの調製方法に関する。上記明細書に記載されているように、余りに長い反応時間も、余りに短い反応時間も、望ましくない固体形成につながる。従って、上記平均接触時間からの平均偏差が6%未満である方法が開示される。この接触時間の遵守は、4,000を越えるレイノルズ数または100を越えるボーデンシュタイン数のいずれかを特徴とする管の流れ(tubular flow)における反応を行うことによって達成される。管の流れが4,000を越えるレイノルズ数を特徴とする場合、必要な高い流量のため、極めて長い混合および反応器の管においてのみアミンの完全な反応に必要な滞留時間が実現可能であることもここでの欠点である。さらに、アミンの希釈の可能性が開示されており、欧州特許出願公開第289840号明細書の場合と同じ希釈剤が記載される。1:0.5〜1:2までの範囲の希釈剤のジアミンに対する典型的体積比のみ記載される。アミンに対する希釈剤の不利な比率が招き得る結果は、欧州特許出願公開第570799号明細書の教示の主題ではない。欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によると、上記平均接触時間からの小さな偏差であっても、望ましくない固体形成および反応器の耐用期間短縮につながる。
欧州特許出願公開第669657号明細書には、関連ジアミンとホスゲンとの反応が2つのゾーンを具備する反応器中で行われることを特徴とする、気相における芳香族ジイソシアネートの調製方法が記載されており、全反応器容積の約20%〜80%までを占める第一のゾーンは理想的に混合され、全反応器容積の80%〜20%までを占める第二のゾーンは、ピストン流を特徴とし得る。上記第二の反応ゾーンは、好ましくは管型反応器として設計される。しかし、その反応容積の少なくとも20%は理想的に逆混合されるため、不均一な滞留時間分布が生じる結果となり、それが望ましくない固体形成の増加をもたらすことがある。希釈剤中の3〜30%までの濃度でのアミンの使用がさらに開示される(実施例2において、オルト−ジクロロベンゼン)。アミンに対する希釈剤の不利な比率が招き得る結果は、欧州特許出願公告第699657号明細書の教示の主題ではない。
ジェットミキサー原理(Chemie−Ing.−Techn.44(1972) 第1055頁、図10)を用いる欧州特許出願公開第570799号明細書に基本的に開示の気相ホスゲン化のための管型反応器の使用の最適化は、極めて多くの出願の主題である。
欧州特許出願公開第1362847号明細書の教示によると、管型反応器の環状空間より供給される遊離体流を均等にすることと、2つの遊離体流を管型反応器のできる限り中央に供給することが、反応ゾーンの安定性、従って気相反応全体に非常に良い影響を及ぼす。より安定な反応手順の結果として、観察される温度変動は著しく減少し、測定値は開示されていないが、観察される温度分布の不均一さは実質的に完全になくなる。欧州特許出願公開第1362847号明細書の教示によると、温度変動および温度分布の不均一さは、副生成物の形成をもたらし、これらの副生成物が反応器中でのケーキングや閉塞、従って反応器の耐用期間の短縮をもたらす。しかし、開示されている方法の工業規模への転換についての具体的な指示は、欧州特許出願公開第1362847号明細書には開示されていない。さらに、希釈剤(不活性ガスまたは不活性溶剤の蒸気)の任意の使用が開示されているが、この出願では、流れの量や遵守すべき量の比率に関して詳細に記載されていない。
ジェットミキサー原理(Chemie−Ing.−Techn.44(1972) 第1055頁、図10)を用いる欧州特許出願公開第570799号明細書に基本的に開示されるような気相ホスゲン化のための管型反応器の使用のさらなる開発は、国際公開第2007/028715号パンフレットの主題である。国際公開第2007/028715号パンフレットは、反応器中での気相における対応するアミンのホスゲン化によるイソシアネートの調製方法を開示しており、この方法は、用いられる反応器が、混合装置および反応空間を有することを特徴とする。国際公開第2007/028715号パンフレットの教示によると、上記反応空間は、任意に不活性媒体と混合された気体遊離体ホスゲンとアミンとの混合が主に行われる混合空間を前方領域に具備し、概してこの混合に伴って反応が開始する。国際公開第2007/028715号パンフレットの教示によると、次いで、上記反応空間の後方部分で、本質的には反応のみが、そしてせいぜいわずかな混合が行われる。好ましくは、国際公開第2007/028715号パンフレットに開示される方法では、流れの方向に対して回転対称である反応空間であって、構造的には流れの進路で反応器の縦軸に沿って四つの縦セクションに本質的に分けることができる反応空間が用いられ、上記縦セクションは、貫流断面積のサイズが異なる。開示の方法の欠点は、気体反応混合物が反応空間を通過する、好ましくは10〜300m/秒まで、特に好ましくは40〜230m/秒まで、極めて特に好ましくは50〜200m/秒まで、特に150を超えて190m/秒まで、とりわけ160〜180m/秒までの高い流速である。欧州特許出願公開第570799号明細書に既に記載されているように、高い流速のため、アミンの完全な反応に必要な滞留時間の実現は、とりわけ芳香族第一級アミンを用いる場合、極めて長い反応器管でのみ可能である。反応空間の貫流断面積の変化が管型反応器中の容積体により発生する、従って、開示される反応器構造の工業規模への転換が構築の点でコストが嵩むこともまた欠点である。不活性媒体の任意の使用に関して、上記出願には、不活性媒体のアミンに対する、またはホスゲンに対する気体容積比が、0.0001を超えてから30まで、好ましくは0.01を超えて15まで、特に好ましくは0.1を超えて5までであることが開示されている。不活性媒体のアミンまたはホスゲンに対する不利な比率が及ぼし得る影響は、国際公開第2007/028715号パンフレットの教示の主題ではない。
欧州特許出願公開第1935876号明細書には、温度制御問題の回避および比較的高い空間/時間収率に存する、断熱反応手順の利点が記載されている。ここには、アミンの気化中の不活性媒体(不活性ガスまたは不活性溶剤の蒸気)の任意の使用も開示されるが、この出願では、流れの量および遵守すべき量の比率に関して詳細に記載されていない。この明細書は、出発温度、温度の断熱的上昇、用いる反応体、希釈ガス、アミンのモル比に基づいて特定のシステムの完全反応について一旦決定した最低滞留時間を20%未満、好ましくは10%未満超えない場合、二次反応生成物の形成を大部分回避することができることを教示している。
遊離体アミンおよび/またはホスゲンの希釈のための不活性物質の使用は、先に述べたように先行技術である。特に、アミンの希釈は、通常行われる。好適な不活性物質、多くの場合窒素が連行剤として働き、アミンの気化を促進し、その結果として分解反応(例えば、アンモニアの分解除去を伴うもの)が低減されることが、この理由である。一例として、例えば、トルイレンジアミン(概して様々な異性体の混合物、以降は略語TDAにより約言する)への少量にせよ窒素の添加には、気化温度を著しく低下させる効果がある。例えば、4wt%の窒素の添加は、TDAの気化温度を約8℃低下させる。このように、気化温度を低下させるには、少量の不活性ガスのみで十分である。
この手順において、気化すべきアミンに対する不活性物質の比率が大きく変動しないことが重要である。例えば、TDAの気化を促進するために窒素を使用するTDAのホスゲン化の場合、窒素の流れが、誤作動の結果として突然降下する場合、この突然の降下は、TDAの気化温度の突然の上昇および気化するTDAの量の一時的な低下をもたらす。この結果として生じる反応器に入るTDAガス流の不安定性は、高い気相ホスゲン化率の結果として壊滅的な帰結となる。TDA流の減少のため、その反応に伴って生成物として遊離する塩化水素ガスの流れも、一時的に極めて著しく減少する。これは、反応の化学量論比を根拠に、TDAに対して4倍のHClガスが遊離し、そしてまたこのことが、窒素量減少と共に、反応器中の圧力の有意な降下をもたらすからである。さらに、反応体のモル比が変化し、この結果として、断熱反応手順の温度が断熱的に急上昇する。欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によって要求されるわずか6%の平均接触時間からの小さな偏差は、遵守されない。
窒素の流れの一時的な増加もまた、反応に対して劇的な影響を及ぼす。この場合、一時的により多くのTDAが気化し、反応に伴って生成物として遊離する塩化水素ガスの量が一時的に急激に増加し、これが、反応圧の一時的増加をもたらす。この場合も、反応体のモル比が乱され、反応の断熱的温度急上昇を引き起こし、さらに、欧州特許出願公開第570799号明細書により要求されるわずか6%の平均接触時間からの小さな偏差は遵守されない。
このように、窒素流の減少と増加の両方が、特に、反応体に求められる化学量論比を乱すことにより、気相ホスゲン化反応の乱れをもたらし、先行技術からの教示によると、この乱れが、副生成物の形成および固体堆積物の形成の増加をもたらし、この増加は、反応を大きく損なうことがあり、最悪の場合、反応器の運転停止が必要となることがある。上記システムについて当初決定した最低滞留時間は遵守されず、先行技術の教示によると、これは、反応の二次生成物の形成につながる。気相ホスゲン化の速度のため、反応のフラッシュ温度が極めて急速に変化すると共に温度の変動が発生し、先行技術による教示によると、この変動が副生成物の形成をもたらし、それらの副生成物が反応器中でのケーキングや反応器の閉塞、従って反応器の耐用期間の短縮をもたらす。
上記方法を実際に行うとき、長時間にわたって安定しない不活性物質と遊離体との間の比は、結果として、気相反応手順について先行技術から不利な帰結を伴う上記平均接触時間からの偏差をもたらし得る。これらの問題に関して開示される明細書は今までのところなく、従って、これらの解決を先行技術から導き出すことはできない。
欧州特許出願公開第289840号明細書 欧州特許出願公開第570799号明細書 欧州特許出願公開第669657号明細書 欧州特許出願公開第1362847号明細書 国際公開第2007/028715号パンフレット 欧州特許出願公開第1935876号明細書
従って、本発明の目的は、運転の進行を損なう上記の問題を伴わずに、不活性物質でのアミンの希釈の利点を利用するアミンの気相ホスゲン化のための方法を提供することであった。
上記目的は、反応器中で気相において少なくとも1つの不活性物質の存在下、対応するアミンとホスゲンとの反応によるイソシアネートの連続調製方法であって、ホスゲン含有流と、アミンおよび不活性物質を含有する流れとを反応器に供給すること、および上記の流れにおけるアミノ基に対する不活性物質のモル比が、
(i)常に>0かつ<45mol%、好ましくは0.05mol%から25mol%、特に好ましくは0.1mol%から10mol%であり、
(ii)20分の期間内に、該20分の期間の開始時を基準として最大99%変化する、好ましくは80%以下変化する、特に好ましくは60%以下変化する
ことを特徴とする方法により、達成することがきることが判明した。
アミンおよび不活性物質を含有する流れが2以上の不活性物質を含有する場合、(i)および(ii)におけるモル比は、該不活性物質のモル数の合計を用いて計算する。
好ましくは、ここでは第一級アミンを用いる。好ましくは、本質的に分解することなく気相に変換することができる第一級芳香族アミンを用いる。第一級芳香族ジアミンが特に好ましい。
好ましい芳香族アミンの例は、トルイレンジアミン(TDA)、特に2,4−TDAおよび2,6−TDAならびにこれらの混合物、ジアミノベンゼン、ナフチルジアミン(NDA)および2,2’−、2,4’−もしくは4,4’−メチレンジフェニルジアミン(MDA)またはこれらの異性体混合物である。トルイレンジアミン(TDA)、特に、2,4−TDAおよび2,6−TDAならびにこれらの混合物が、特に好ましい。
2〜18個の炭素原子を有する、脂肪族または脂環式炭化水素に基づく、第一級アミン、特に第一級ジアミンは、さらに特に好適である。極めて特に好適なアミンは、1,6−ジアミノヘキサン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルアミンである。
本発明における不活性物質は、反応温度にて気体形態で反応空間内に存在し、反応の過程で発生する化合物と実質的に反応しない物質である。これは、不活性物質の10mol%未満、好ましくは5mol%未満、特に好ましくは3mol%未満、極めて特に好ましくは1mol%未満しか反応条件下で化学的に反応しないことを意味する。本発明における不活性物質は、非常に特に好ましくは、反応条件下で全く化学的に反応しない。可能な不活性物質は、例えば、一方では、室温で既に気体である物質、つまり、例えば窒素、希ガス、例えばヘリウムまたはアルゴン等、および他のガス、例えば二酸化炭素または一酸化炭素等である。他方で、可能な不活性物質は、室温より高い温度でのみ気体であるもの、つまり、例えば、芳香族、例えばクロロベンゼン、クロロトルエン(o−、m−、p−異性体)、ジクロロベンゼン(o−、m−、p−異性体)、トルエン、キシレン(o−、m−、p−異性体)、クロロナフタレン(すべての異性体)またはデカヒドロナフタレンでもある。室温で既に気体である物質の群の中では、窒素が特に好ましく、窒素は、化学的不活性性に関する基準を極めてよく満たすからであり、またここでは(同程度の大きさの効果を生じさせる結果となり、さらにいっそう低い反応性を有する)希ガスより相当に安価であるからである。室温より高温でのみ気体である物質の群の中では、上記方法において溶剤としても使用される物質が好ましい。クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンが特に好ましい。本発明における不活性物質は、さらに、気相プロセスにおけるそれらの所在に従って特徴づけることができる。室温で既に気体である物質、例えば窒素、希ガス、例えばヘリウムまたはアルゴン等、および他のガス、例えば二酸化炭素または一酸化炭素などは、本質的には、塩化水素(その反応に伴って形成される気体生成物)と共に気体形態でプロセスから放出されるため、常に新たに供給しなければならない。他方で、室温より高温でのみ気体である物質は、塩化水素(その反応に伴う気体生成物)と共に気体形態で放出されずにプロセスに残存し、必要に応じて蒸留による精製後、アミンの希釈のための不活性物質として再び使用することができる。
上記2つの群のどちらから不活性物質を選択するかは、フレームワーク生産条件によって決まる。生産環境に基づく特別な要件がなければ、概して窒素が好ましいが、これは、窒素は、その低い分子量に基づき、アミンの気化温度を低下させることに関してジクロロベンゼンより著しく大きな効果があり、その結果として、必要とされる不活性物質の流れを著しく減ずることができるためである。しかし、他の生産環境によって特別な要件が課される場合、例えば、ホスゲン化において形成される気体塩化水素の処理の際、室温より高温でのみ気体である化合物の群からの不活性物質、例えばジクロロベンゼンを用いることが有利であることもある。塩化水素は、例えば、文献(国際公開第2004/014845号パンフレット)から既知のディーコン(Deacon)法により、すなわち、触媒の存在下で酸化的に処理して塩素に仕上げることができる。塩化水素をディーコン法によって処理して塩素を得、その塩素の少なくとも一部を一酸化炭素と塩素との反応によるホスゲンの調製に再び使用する場合、不活性物質の流れの正確な量によっては、ジクロロベンゼンのような凝縮することができる不活性物質を用いることが有利であることがあるが、この場合、ホスゲン化プロセスからの窒素の放出がディーコン法では不要になるからである。イソシアネートプロセスからの気体塩化水素流が比較的大量の窒素を含有する場合、結果として、価値のある生成物HClガスがディーコン法では希釈されるので、装置のガス負荷量が増加し、これはより高い装置コストがもたらされる。さらに、ディーコン法での塩化水素流からのかなりの量の窒素の放出は、些細ではない支出を伴い、運転コストを増加させる。しかし、室温で既に気体である用いる不活性物質の量が多過ぎなければ、形成される塩化水素の処理にディーコン法を用いると、窒素または室温で気体である他の不活性物質の利用が有利である場合もある。不活性ガス流の変動がアミンの気化の際に招く上記の問題に加えて、イソシアネート生産後にディーコン法によって塩化水素を酸化的に回収して塩素を得る場合、不活性ガス流の変動が、さらにまたディーコン法での塩化水素の処理を困難にするため、本発明による方法の使用は、この点で極めて特に有利である。
従って、本発明による方法の好ましい実施形態では、さらに、
(iii)ホスゲンとアミンとの反応において形成されるHClの少なくとも一部をディーコン法で塩素に変換する。
一方で、気相ホスゲン化中のアミンの気化への不活性化合物の添加の利点を、それによるディーコン法での塩化水素ガスの塩素への変換における塩化水素ガス(反応に伴う生成物)の希釈の欠点を伴わずに利用することは、特に好ましい。この場合、好ましくは、不活性物質を、
(iv)アミンを含有する流れと共に反応器に導入される不活性物質の、ディーコン法に供されるHClに対するモル比が常に、>0および25mol%の間、好ましくは>0および11mol%の間、特に好ましくは0.025および0.5mol%の間である
ような量で添加する。
本発明による方法に従えば、ホスゲンと芳香族アミンとの反応は気相で行う。気相における反応は、計量供給される遊離体、反応中間生成物および生成物ならびに不活性物質が、反応の過程で反応空間を通過中に、主として気相中に、特に、それぞれの場合の反応混合物の重量に対して、≧95wt%の程度まで、好ましくは≧98wt%の程度まで、特に好ましくは≧99wt%、極めて特に好ましくは≧99.8wt%、とりわけ≧99.9wt%の程度まで残るように反応条件が選択されることを意味すると、ここでは解されるべきである。ここでの中間生成物は、例えばジアミンを用いた場合に形成されるモノアミノ−モノカルバモイルクロライド、ジカルバモイルクロライド、モノアミノ−モノイソシアネートおよびモノイソシアナト−モノカルバモイルクロライドならびに上記特定のアミノ化合物の塩酸塩である。
ホスゲンと芳香族アミンとの本発明による反応は、反応器中に配置される少なくとも1つの反応空間において行う。すなわち、反応空間は、遊離体と中間生成物との反応が行われる空間を意味すると解され、反応器は、その反応空間を有する技術的装置を意味すると解される。本発明では、反応器は、幾つかの反応空間を有する場合もある。計量供給される遊離体および不活性物質を、一般に、少なくとも1つの混合装置を経由して反応空間に供給する。本発明による方法は、原則として、任意の反応空間および反応器幾何形状に適用することができる。
本発明による方法のさらに好ましい実施形態において、反応器は、遊離体の混合後に80%、好ましくは90%、特に好ましくは99%、極めて特に好ましくは99.5%のイソシアネート基へのアミン基の変換が達成される反応空間の後に、一定および/または拡大貫流断面積を有する回転対称反応空間を有する。
本発明による方法は、原則として、任意の手順に適用することができる。欧州特許出願公開第1935876号明細書に記載の断熱手順が好ましい。しかし、記載の方法は、恒温手順においても有利である。これは、恒温手順が例えば発熱反応を外部から冷却することにより達成することができる手順であるにもかかわらず、気相反応の速度のため、反応器温度の非常に速い変化が生じる結果となり、この温度変化を不活発な冷媒系のため十分迅速に補正することができず、そのため、先行技術分野において記載されている欠点を伴う反応器中での反応温度の変動が恒温手順の場合にも発生するからである。
ホスゲン化を行う前、出発アミンを好ましくは気化し、200℃〜600℃、好ましくは200℃〜500℃、特に好ましくは250℃〜450℃に加熱し、上記の定義による少なくとも1つの不活性物質で希釈した形態で反応空間に供給する。
好ましくは、不活性物質を供給して気化し、特に好ましくは、アミンを液体から気相に少なくとも完全にまたは部分的に変換する点で不活性物質を供給して気化する。しかし、液体から気相へのアミンの少なくとも部分的な変換の位置の下流で不活性物質を供給して気化することも、原則として考えられる。さらに、まずアミンと不活性物質とを混合すること、それにこれを投入すること、または好適な容器内のそれを不活性物質でバブリングすること、およびこのようにして得た流れを供給して気化することが可能である。
室温で既に気体である不活性物質は、好ましくは、気体状態で気化に供される。室温より高温でのみ気体である不活性物質は、液体形態または気体形態、すなわち事前の気化後のいずれでもアミン気化に導入することができる。しかし、室温より高温でのみ気体である不活性物質は、まず任意に、所望の比率で好適な容器内でアミンと混合することや、このようにして得た流れを共に気化することも可能である。
供給する不活性物質が、室温で気体である場合、好ましくは、それを−30℃〜600℃、好ましくは0〜500℃、特に好ましくは50〜400℃の温度で供給して気化する。例えば冷媒もしくは加熱剤を有する管束熱交換器、または電動ヒーターまたは他の装置などの、様々な装置がこの温度の達成に好適である。室温で気体である、供給される不活性物質は、特に好ましくは、所与の気化圧でのアミンの沸点との150℃より大きい、好ましくは100℃より大きい温度差を有しない。
供給する不活性物質が、室温より高温でのみ気体である場合、それを気体形態で反応器に供給する場合には、それをまず気化し、好ましくは、200℃〜600℃の温度で、特に好ましくは250℃〜500℃の温度でアミン気化に供する。室温より高温でのみ気体である、供給される気体不活性物質は、特に好ましくは、所与の気化圧でアミンの沸点との150℃より大きい、好ましくは100℃より大きい温度差を有しない。
当業者に既知のあらゆる装置が、室温より高温でのみ気体である物質の気体不活性流を生成するのに好適である。
室温より高温でのみ気体である物質をまずアミンと混合する場合、該不活性物質の温度は非常に様々であり得る。−30℃〜200℃、好ましくは0〜180℃までの温度範囲が可能である。アミンおよび室温より高温でのみ気体である不活性物質から得た混合物を一緒に加熱して、混合物として気化に進ませることも可能である。しかし、それら2つの流れを別々に加熱し、気化の際にはじめて合わせることも可能である。
様々な不活性物質の混合物を用いることも原則的に可能である。室温で既に気体である物質と室温より高温でのみ気体である物質との混合物が有利であることがある。詳細には、これは、一方で、気化温度低下の利点を高純度の塩化水素ガス(付随する気体生成物)と併用できる場合、好ましいことがある。
流れの比率についての本発明による十分な一定性は、好ましくは、それらの流れの一定かつ均一な、好ましくは長時間にわたって均一な混合により得られる。詳細には、上記流れの比率についての十分な一定性は、量が少ないほうの流れ、すなわち供給する不活性物質を、長時間にわたって一定した量で安定した様式で供給する手順により得られる。
室温で既に気体である不活性化合物を長時間にわたって絶えずかつ安定した様式で供給することができる好適な手段は、当業者に既知である。しかし、供給されるガス流のガス圧が、調整され安定した供給を可能にする十分に高いものであることを、限定としてではなく例としてここで述べることができる。従って、供給される不活性物質の供給路における、すなわち、気化器に入る直前の供給ラインにおける圧力は、好ましくは気化装置内で支配的である圧力よりも高い。特に好ましくは、上記圧力は、気化装置内の圧力より少なくとも10mbar、極めて特に好ましくは少なくとも50mbar、特に好ましくは少なくとも150mbar高い。一般に、上記圧力は、100barを超えて高くはない。特に好ましくは、気体形態で反応器に供給される不活性物質を測定し、調整された様式で攪拌しながら反応器に送る。好適な測定計器および調整器械は、先行技術である。他の手段もまた可能である。
室温より高温でのみ気体である物質を不活性物質として使用し、この物質を液体形態で気化前のアミンと混合する場合、それらの流れの比率の十分な一定性は、液体流の混合により達成される。このために、量が少ない方の流れ、すなわち、不活性流を長時間にわたって一定した量で安定した様式で供給する。一定した様式での液体流を計量供給するための好適な手段は、当業者に既知である。一定した量かつ長時間にわたる安定した様式での好適な計量供給は、例えば定量ポンプによって行うことができるが、容器への充填、および例えば攪拌機による混合も考えられる。他の手段もまた可能である。
好ましくは、これらの手段は、20分の期間内に不活性物質のモル流(molar stream)または全不活性物質のモル流の合計が、99%より大きく、好ましくは80%より大きく、特に好ましくは60%より大きく変化しないことを確実にする。結果として、全不活性物質のモル流の合計の、モル流に対するアミン基の比率の顕著な変動は回避され、そのため20分の期間内に、この比率は、99%より大きく、好ましくは80%より大きく、特に好ましくは60%より大きく変化しない。その結果として、不活性ガス流の乱れに関連した上記の問題は、有効に低減または完全に回避される。>0および<45mol%、好ましくは>0〜25mol%、特に好ましくは0.1〜10mol%までという反応器へのアミンおよび不活性物質を含有する流れにおけるアミン基に対する不活性物質のモル比を遵守することにより、アミンの穏やかな気化が保証される。
好ましくは、さらに、これらの手段により、塩化水素(反応に伴う気体生成物)の材料流における組成の変動を確実に回避する。このようにして長時間にわたって安定化される塩化水素のガス流の組成により、ディーコン法での乱れは回避される。
出発アミンの気化は、あらゆる既知の気化装置で行うことができる。出発アミンの熱への曝露を最少にするために、少なくとも1つの不活性物質の供給により気化動作を支援する流下薄膜型気化器を用いて高い循環アウトプットで少ない作業量を導く気化システムを、好ましくは用いる。
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つのマイクロ熱交換器またはマイクロ気化器を用いて少ない作業量を循環させる気化システムを用いる。アミンの気化のための適切な熱交換器の使用は、例えば欧州特許出願公開第1754698号明細書に開示されている。好ましくは、欧州特許出願公開第1754698号明細書の段落[0007]〜[0008]および[0017]〜[0039]に開示されている装置を、本発明による方法において用いる。
アミンと少なくとも1つの不活性物質との気化混合物は、アミンの気化していない液滴の内容物も含有することがあり、室温より高温でのみ気体である不活性物質を用いる場合、一定の環境下では気化していない不活性物質の内容物もさらに含有することがある。従って、アミンと不活性物質との気化混合物は、エアロゾルの形態である場合がある。しかし、好ましくは、アミンと不活性物質との気化混合物は、気化していないアミンおよび/または気化していない不活性物質の液滴を本質的に含有しない、つまり、アミンと不活性物質との気化混合物の総重量に対して、アミンと不活性物質との気化混合物の最大0.5wt%、特に好ましくは最大0.05wt%が、気化していない液滴の形態である。アミンと不活性物質との気化混合物の残部は、蒸気の形態である。極めて特に好ましくは、アミンと少なくとも1つの不活性物質との気化混合物は、気化していない内容物の液滴を含有しない。好ましくは、気化後、アミンと少なくとも1つの不活性物質の混合物をアフター・ヒーターによって所望の使用温度にする。
さらに、好ましくは、出発アミン/不活性物質の気化および過熱を数段階で行って、アミンおよび少なくとも1つの不活性物質のガス流中の気化していない液滴を避ける。液滴分離器が気化システムと過熱システムとの間に組み込まれている、および/または気化装置が液滴分離機能も有する、多段気化および過熱工程が、特に好ましい。好適な液滴分離器は、例えば、「Droplet Separation」、A. Buerkholz、VCH Verlagsgesellschaft、Weinheim(ニューヨーク、バーゼル、ケンブリッジ)、1989年に記載されている。低い圧力損失を生じさせる液滴分離器が特に好ましい。極めて特に好ましくは、アミンと少なくとも1つの不活性物質との気化混合物を少なくとも1つのアフター・ヒーターによって所望の温度にする。特に好ましくは、このアフター・ヒーターは、上記セパレーターを確実に絶えず空にするための液体排液路を有する。流れ方向に最後の過熱器を出た後、その所期の温度に予熱されたアミンと少なくとも1つの不活性物質との混合物を、好ましくは0.01〜60秒、極めて特に好ましくは0.01〜30秒、特に好ましくは0.01〜15秒の平均滞留時間で、反応器または反応のためのそれらの混合装置に供給する。液滴の新たな形成を、ここでは技術的手段、例えば放射による損失を回避するための適切な断熱によって防止する。反応器運転時間は、該反応器に入る前のアミンおよび少なくとも1つの不活性物質の本質的に液滴のないガス流の生成により、著しく増加する。
好ましい実施形態では、アミンと少なくとも1つの不活性物質とのガス流の反応器への、またはそれらの少なくとも1つの混合装置への供給を、調整装置を用いずに低い圧力損失で行い得る。しかし、調整供給もまた可能である。アミンと少なくとも1つの不活性物質とのガス流を幾つかの部分流に分割し、その後、それらを、例えば欧州特許出願公開第1449826号明細書の段落[0019]〜[0022]に記載されているように反応空間に供給すること、または例えば国際公開第2008/055898号パンフレット第8頁、第25〜15行目、第31行目および特に第23頁、第19〜31行目に記載されるように幾つかの混合装置に供給することも可能である。アミンと少なくとも1つの不活性物質とのガス流を分割する場合、好ましくは、部分流の供給も、追加の調整装置を用いずに低い圧力損失で行う。しかし、部分流の別個の調整供給も可能である。
本発明による方法では、反応させるアミン基に対して過剰にホスゲンを用いることが有利である。好ましくは、1.1:1〜20:1、好ましくは1.2:1〜5:1のホスゲンに対するアミン基のモル比が存在する。ホスゲンも200℃〜600℃の温度に加熱し、任意に、上記の定義に従って少なくとも1つの不活性物質で同様に希釈し、反応空間に供給する。
好ましい実施形態では、ホスゲン流の反応器への、またはその少なくとも1つの混合装置への調整供給を行う。しかし、調整装置を用いない低い圧力損失での供給もまた可能である。ホスゲン流を幾つかに分割し、その後、それらを、例えば国際公開第2008/055898号パンフレット第8頁第25行目〜第15頁第31行目、特に第23頁第19〜31行目)に記載されているように反応器の幾つかの混合装置に供給することも可能である。幾つかの反応器への部分流の供給も可能である。ホスゲン流を分割する場合、好ましくは、ホスゲン部分流の別個の調整供給を行う。
本発明による方法は、好ましくは、別々に加熱された反応パートナーを少なくとも1つの混合装置経由で少なくとも1つの反応空間に導入し、混合し、適切な反応時間を考慮して、好ましくは断熱反応手順に従って反応させるように行う。その後、ガス流を冷却する(対応するカルバミン酸塩化物、つまり、例えばTDAの場合にはトルイレンジアミン酸塩化物の分解温度より高い温度への冷却を行う)ことにより、イソシアネートを凝縮する。
アミン基とホスゲンとが反応してイソシアネートを得るための必要滞留時間は、用いられるアミンの性質、出発温度、適切な場合には反応空間内の温度の断熱的上昇、用いられるアミンとホスゲンとのモル比、少なくとも1つの不活性物質の性質および量、ならびに選択される反応圧に応じて、0.05〜15秒である。
ジェットミキサー原理(Chemie−Ing.−Techn.44(1972)、第1055頁、図10参照)に従って気体遊離体および少なくとも1つの不活性物質が少なくとも1つの混合空間に供給される、本質的に回転対称反応空間を有する反応器が、特に好ましく用いられる。これに関連して、供給される物質流(すなわち、一方ではアミンと少なくとも1つの不活性物質、ならびに他方では不活性物質で任意に希釈されたホスゲン)は、好ましくは、2〜20、特に好ましくは3〜15、極めて特に好ましくは4〜12の回転比で反応器の少なくとも1つの混合空間に入る。好ましくは、これに関連して、アミンと少なくとも1つの不活性物質との混合物は、より高い流量で、反応器の少なくとも1つの混合空間に供給される。
好ましくは、上記反応空間も、いずれの混合ユニットおよび混合空間も、加熱面(これは、熱への曝露を生じさせ、その結果、イソシアヌレートまたはカルボジイミド形成などの二次反応を生じさせ得る)および冷却面(これは、凝縮を生じさせ、その結果、付着物を生じさせ得る)を有しない。放射および伝導による任意の損失を除き、このようにして上記成分を好ましくは断熱的に反応させる。これに関連して、混合ユニットと反応器、または反応器中の断熱温度上昇は、遊離体流の温度、組成および相対計量ならびに該混合ユニットおよび該反応器中での滞留時間によってのみ確立される。
ホスゲン化反応を反応空間において行った後、少なくとも1つのイソシアネートと、ホスゲンと、少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの不活性物質と、塩化水素とを好ましくは含む気体反応混合物を、形成されたイソシアネートから好ましくは除去する。これは、例えば、反応空間から継続的に出てくる反応混合物を、他の気相ホスゲン化について既に推奨される(欧州特許出願公開第0749958号明細書)ように、不活性溶剤中での凝縮に付すことにより行うことができる。
しかし、好ましくは、上記凝縮は、本発明による方法において用いられる反応空間が、用いられるアミンとホスゲンとの反応を停止させて対応するイソシアネートを得るために液体(「急冷液」)の1つ以上の好適な流れが噴霧される少なくとも1つのゾーンを有する手順により行う。これにより、欧州特許出願公開第1403248号明細書に記載されるように、冷表面を使用せずにガス混合物の急冷を行うことができる。
本発明による方法の特に好ましい形態では、少なくとも1つのゾーン(冷却ゾーン)を、欧州特許出願公開第1403248号明細書に記載されるものなどの急冷ステージに統合する。特に好ましい形態では、幾つかの冷却ゾーンを用いる。これらの少なくとも2つの冷却ゾーンの統合および運転を、好ましくは急冷ステージを用いて行う。これは、構築および運転に関して欧州特許出願公開第1935875号明細書に開示される。
欧州特許出願公開第1935875号明細書に開示されるものなどの、反応器の少なくとも1つの冷却ゾーンと急冷ステージとの統合された併用ではなく、幾つかの反応器の冷却ゾーンと急冷ステージとの対応する統合された併用もまた可能である。しかし、好ましくは、少なくとも1つの冷却ゾーンを有する反応器と急冷ステージとの統合された併用が好ましい。
本発明による方法の好ましい実施形態において、本発明によって必要とされる反応条件下で用いられる反応器の処理能力は、>1tのアミン/時、好ましくは2〜15tのアミン/時、特に好ましくは2〜12tのアミン/時である。これらの値は、特に好ましくは、トルイレンジアミン、1,6−ジアミノヘキサンに、およびイソホロンジアミンにあてはまる。これに関連して、処理能力は、反応器中で1時間に反応させることができるアミンの前述の処理能力を意味すると解するものとする。
選択される冷却の性質にかかわらず、少なくとも1つの冷却ゾーンの温度は、好ましくは、一方ではイソシアネートに対応するカルバモイルクロライドの分解温度より高くなるように、他方では室温より高温でのみ気体である、用いられるイソシアネートおよび不活性物質が、最も凝縮するまたは溶剤に最も溶解するように選択する。室温で気体である過剰なホスゲン、塩化水素および不活性物質は、好ましくは、凝縮および急冷ステージでは最大には凝縮されず、溶解しない。80〜200℃、好ましくは80〜180℃の温度で保持される溶剤、例えば、この温度範囲で保持されるクロロベンゼンおよび/またジクロロベンゼン、あるいはイソシアネートまたはイソシアネートとクロロベンゼンおよび/もしくはジクロロベンゼンとの混合物などは、上記気体反応混合物からのイソシアネートの選択的単離に特に好適である。所与の温度、圧力および組成での物理的データに基づき、当業者は、イソシアネートの如何ほどの重量含有率が急冷で凝縮されるのか、または凝縮されずにこれを通過するのかを容易に予測することができる。過剰なホスゲン、塩化水素および少なくとも1つの不活性物質の如何ほどの重量含有率が、凝縮されずに急冷を通過するのか、または急冷液に溶解するのかもまた容易に予測される。
実質的に逆混合せずに反応空間を通る流れのような、気体反応混合物の、本発明による方法に好ましい流れの生成は、該反応空間の圧力勾配によって確保される。上記圧力勾配は、好ましくは、一方での混合前の遊離体供給ラインと、他方での凝縮または急冷ステージからの出口との間に存在する。好ましくは、混合前の遊離体供給ライン絶対圧は、200〜3,000mbarであり、凝縮または急冷ステージ後は、150〜2,500mbarである。しかし、述べた有向流れおよび遊離体の良好な混合を確保するために不可欠であるのは、好ましくは少なくとも50mbarの遊離体供給ラインから反応空間を経て凝縮または急冷工程後までの圧力差を維持することだけである。
凝縮または急冷ステージから出てくるガス混合物を、好ましくは、好適な洗浄液での下流のガス洗浄で残留イソシアネートから除去し、好ましくはその後、それ自体既知の手法で過剰なホスゲンから除去する。これは、冷却トラップによって、不活性溶剤(例えばクロロベンゼンもしくはジクロロベンゼン)への吸収、または活性炭での吸着および加水分解によって行うことができる。ホスゲン回収ステージを通過する塩化水素ガスは、ホスゲン合成に必要な塩素の回収のためにそれ自体既知の手法で再循環させることができる。ガス洗浄のためのその使用後に得られる洗浄液は、その後、好ましくは少なくとも一部は、反応空間の対応するゾーン内でのガス混合物の冷却のための急冷液として用いられる。
続いて、イソシアネートが、凝縮または急冷ステージからの溶液または混合物の蒸留による処理により純粋な形態で好ましく調製される。
実施例1(比較例)
80%対20%の重量比で2.4−および2,6−トルイレンジアミンを含む混合物20.5kmol/時を、17.85kmol/時の窒素と一緒に約280℃で気化させ、300℃より高い温度を有する下流イソシアネート凝縮ステージを含む回転対称管型反応器に気体形態で通過させる。同時に、これと並行して気体ホスゲンを、やはり300℃より高い温度を有する管型反応器に供給する。これらの流れをノズルによって混合ゾーンに注入し、混合し、その混合物が反応空間に入る。この反応空間での反応は、10秒未満の滞留時間内に断熱的に行う。そのガス混合物を凝縮ステージに通し、それによって約165℃のガス温に冷却する。得られた凝縮物を蒸留シーケンスに供し、純粋なTDIを得る。非凝縮ガス混合物を後続の洗浄でo−ジクロロベンゼンで洗浄し、副生成物HClを吸収により過剰なホスゲンから分離する。
8分以内に、窒素量は、まず元の値の約20%に減少し、その後、元の値の約150%に増加する。結果として、TDAの量は、まず元の量の約40%に減少して、その後、元の量の約125%に増加する。結果として、反応器中での平均滞留時間は、+−10%を超えて変化する。混合ノズルを調べると、堆積物が認められる。反応器の外壁上で測定される温度変動は、+−3℃である。
実施例2(本発明によるもの)
80%対20%の重量比で2.4−および2,6−トルイレンジアミンを含む混合物20.5kmol/時を、17.85kmol/時の窒素と一緒に約280℃で気化させ、300℃より高い温度を有する下流イソシアネート凝縮ステージを含む回転対称管型反応器に気体形態で通過させる。同時に、これと並行して気体ホスゲンを、やはり300℃より高い温度を有する管型反応器に供給する。これらの流れをノズルによって混合ゾーンに注入し、混合し、その混合物が反応空間に入る。この反応空間での反応は、10秒未満の滞留時間内に断熱的に行う。そのガス混合物を凝縮ステージに通し、それによって約165℃のガス温に冷却する。得られた凝縮物を蒸留シーケンスに供し、純粋なTDIを得る。非凝縮ガス混合物を後続の洗浄でo−ジクロロベンゼンで洗浄し、副生成物HClを吸収により過剰なホスゲンから分離する。
20分以内に、TDAガス量を基準にして窒素の量は+/−5%より大きく変化しない。反応器中での平均滞留時間は、6%より大きく変動せず、反応器壁上で温度変化は測定されない。混合ノズルを調べると、堆積物は認められない。

Claims (7)

  1. 反応器中で気相において少なくとも1つの不活性物質の存在下、対応するアミンとホスゲンとの反応によるイソシアネートの連続調製方法であって、ホスゲン含有流と、アミンおよび不活性物質を含有する流れとを反応器へ供給し、および該流れにおけるアミノ基に対する不活性物質のモル比は、
    (i)常に>0および<45mol%であり、
    (ii)20分の期間内に、該20分の期間の開始時を基準として最大99%変化する
    ことを特徴とする、方法。
  2. 前記不活性物質として、窒素もしくは1以上の希ガスまたはその混合物を、不活性物質として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレンもしくはデカヒドロナフタレンまたはこれらの混合物を、前記不活性物質として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. (iii)ホスゲンとアミンとの反応により形成されるHClを、ディーコン法により塩素へ少なくとも部分的に変換する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. (iv)ディーコン法へ供給するHClに対する、アミンを含有する流れと共に反応器に導入する不活性物質のモル比は常に、>0および25mol%の間である
    ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. アミンおよび不活性物質を含有する流れを、アミンを気化しおよび不活性物質を気体形態で供給する気化器から除去し、気化器に入る直前の供給物中における不活性物質の圧力は、該気化器における圧力より少なくとも10mbar高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. トルイレンジアミン、ジアミノヘキサンまたはイソホロンジアミンを、アミンとして用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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