JP2012518886A - 少なくとも1つの酸捕捉剤を含む変圧器油組成物 - Google Patents

少なくとも1つの酸捕捉剤を含む変圧器油組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、少なくとも1つの酸捕捉剤を含む変圧器油組成物に関する。さらに本発明は、安定性を改良するための変圧器油中の酸捕捉剤の使用に関する。

Description

本発明は、改良された安定性を有する変圧器油組成物に関する。さらに本発明は、変圧器油組成物中の安定剤として少なくとも1つの酸捕捉剤を提供する。さらに本発明は、変圧器油の酸化安定性を改良するための少なくとも1つの酸捕捉剤の使用に関する。また、最後に本発明は、相当する本発明の変圧器油を製造するための方法に関する。
変圧器は、誘導性結合回路間に低損失で電気エネルギーまたは情報を搬送する電気工学の構成部品である。外側から見ると、変圧器は、薄鋼板から製造された変圧器タンクからなる。タンク内に変圧器の能動部品、すなわち、鉄心に適用されたそのコイルまたは巻き線がある。鉄心は、巻き線を支持するリム、および磁路を完成する2つのヨークからなる。鉄心は、被覆された磁化可能な鉄板からなる。薄板の、例えば水ガラスからなる絶縁層が渦電流の方向に対して横方向にあるので、渦電流と関連損失、そして加熱を防ぐ。絶縁のために、低電圧巻き線が鉄心の内側にあり、高電圧巻き線が外側にある。巻き線は、油含浸紙を巻き付けられた保持装置からなる。
変圧器の全ての空隙には、電気絶縁用およびコイルの冷却用の変圧器油が充填されている。
変圧器は、電力供給の装置の最も重要かつ高価な部品の一部である。したがって、これらの構成部品に欠陥が生じると、電力供給の中断だけでなく、経済的損失にもつながる。変圧器の耐用年数は、紙から製造される絶縁材料に特に左右される。しかしながら、これらの高圧縮紙は、変圧器の運転中に分解し、水を形成する。この湿気が古い変圧器の絶縁に及ぼす影響は、変圧器の故障を調べる際に重要視されている。
装置の故障に対する保険を取り扱う米国の会社Hartford Steam Boiler lnspection and lnsurance Co.(HSB)によって公開された報告が出した結論は、過去10年間、絶縁の破損が変圧器の故障の2番目に多い原因となっているということである。絶縁の破損のために不良になった変圧器の平均寿命は17.8年であり、したがって、35〜40年の予想耐用年数をかなり下回る。
変圧器に使用された紙の固体絶縁は通常、セルロースをベースとしている。セルロースが老化するとき、その高分子構造は分解し、変圧器油と称される絶縁油中に水を徐々に放出する。変圧器の液体は、水を吸収することができない場合、巻き線内に残る。
米国特許第2,941,956号明細書 特公昭47−33279号公報
J.Org.Chem.28,2069−2075(1963年) Chemical Review、1981年、Vol.81、No.4、619〜621ページ
しかしながら、水はセルロースの老化をさらに促進して次に自触媒プロセスにおいて水を生じるので、湿気の発生は絶縁作用の低下に関してだけ不利なのではない。結果として変圧器の破壊がさらに増す。
「自由呼吸する」変圧器においては、さらに、より多くの湿気が大気から吸収されうる。
変圧器のセルロースのこの品質低下は、その電気的および機械的安定性の両方を低下させる。一般的には、変圧器油中の含水量が多くなればなるほど、変圧器のセルロースの機械的安定性の低下が大きくなる。
鉱油は、湿気を吸収する非常に低い能力しかもたない。変圧器のセルロースの老化の間に形成される水の大部分が巻き線内に残り、したがって、変圧器の絶縁抵抗を低くする。また、湿気は、運転中に生じる機械的応力および電気応力に対して、変圧器の抵抗を低下させる。
さらに、高い湿気レベルは鉱油の絶縁耐力をかなり低下させることがある。時間経過とともに、これは変圧器の故障および/または不可避的な出力の低下につながり、最終的に、変圧器の完全な故障を引き起こすことがある。
変圧器中のセルロースの分解は、短鎖脂肪酸の存在によって触媒される。短鎖脂肪酸は、紙の製造のために使用されたセルロースからの分解の結果として初期に形成される。変圧器油組成物中に存在する脂肪酸のレベルが高くなればなるほど、より急速に脂肪酸が分解する。化学的な観点からみれば、したがってこのプロセスは自触媒的である。分解が進んで変圧器中の紙の破損を引き起こすとき、変圧器は最悪の場合には破裂することもある。
さらに、変圧器油と呼ばれる変圧器中で使用された油は高価であり、したがって、水および/または脂肪酸の形成のために品質が低下した場合、再利用されるのがよい。変圧器油の再加工において、水および沈殿物などの物質は一般に除去され、変圧器油は典型的に油分離機と呼ばれる専用機内で加熱され、減圧下で噴霧によって乾燥される。この間に、変圧器油は濾過され、存在している沈殿物を取り除かれる。
これらの再加工の選択に関係なく、変圧器油の耐用年数を総合的にみて延ばすように、および変圧器油の再加工が後の段階まで必要とされないかまたは全く必要とされないように変圧器油の安定性を改良することは大きな関心の的である。
本発明の目的は、少なくとも1つの変圧器油と、添加剤として、少なくとも1つの酸捕捉剤とを含む組成物によって達成される。本発明の文脈において、使用される酸捕捉剤は、特に、カルボジイミド、エポキシ化トリグリセリド、例えばエポキシ化大豆油およびエポキシ化ナタネ油、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、ピリジンまたはピリジン誘導体、ジアザビシクロオクタン、およびポリビニルピリジンであってもよい。本発明の好ましい実施形態において、酸捕捉剤は少なくとも1つのカルボジイミド化合物である。カルボジイミド化合物は好ましくはモノマー、ダイマーまたはポリマーカルボジイミドである。
少なくとも1つの酸捕捉剤、特に、少なくとも1つのカルボジイミド化合物の添加は変圧器油中に既に形成された脂肪酸の除去をもたらすことが本発明によって見出されたが、脂肪酸は、上に説明されたように、セルロースの分解の触媒作用を引き起こし、したがって、望ましくない水の形成につながる。したがって、少なくとも1つの酸捕捉剤、例えば少なくとも1つのカルボジイミド化合物の添加は、変圧器中のセルロースの自触媒分解の停止につながり、したがって、変圧器油組成物の水の形成の低減にもつながる。したがって、本発明の文脈において、酸捕捉剤、例えばカルボジイミドは、変圧器油組成物を安定化し、したがって、変圧器の耐用年数および変圧器油組成物の有効寿命を増加させる。
本発明によって提供された酸捕捉剤、例えばカルボジイミドは、選択的に脂肪酸と反応する。したがってそれらは、老化した変圧器のセルロース中の脂肪酸の含有量を低減し、そして次に、セルロースの水への分解を触媒する。
したがって、本発明の文脈において、酸捕捉剤は、セルロースからの脂肪酸の形成を抑えることができるか、または少なくとも変圧器油中の脂肪酸の濃度を一定に保ち、好ましくはそれを低減することができる任意の化合物を意味すると理解される。
本発明の文脈において、変圧器油組成物の安定化は特に、変圧器油組成物の電気絶縁性および除熱性質が添加剤を使用しない場合よりも長く維持されることを意味すると理解される。
より詳しくは、酸捕捉剤による変圧器油組成物の安定化は、酸捕捉剤、例えばカルボジイミドが組成物中に存在する脂肪酸を捕集することができ、組成物中の含水量を一定に保ち、好ましくはそれを低減することができることを意味すると理解される。
さらに、酸捕捉剤による変圧器油組成物の安定化はまた、変圧器の構成部品が腐蝕から保護されることを意味すると理解される。
図1は、実施例の結果をグラフの形で示す。
本発明によって特に好ましいカルボジイミド酸捕捉剤は、以下に最初に詳細に説明される。
カルボジイミド化合物
本発明の添加剤の使用としてのカルボジイミド化合物の要求条件は第一に、例えばエステル基油または鉱油であってもよい変圧器油へのその溶解度に関する。カルボジイミド化合物は好ましくは、60℃の温度において、相当する変圧器油への溶解度が0.001〜2.5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%、特に0.2〜0.5質量%である。
さらに、カルボジイミド化合物は、変圧器油組成物中の長時間安定性を有するのがよい。長時間安定性は、変圧器油の使用条件下で、すなわち特に湿気の存在下で、また変圧器油が使用される温度においても存続するのがよい。したがって、本発明によって使用されるカルボジイミド化合物が、60℃で使用される変圧器油中の長時間安定性を有し、鉱油の場合は好ましくは多くとも30ppmおよびエステル系絶縁油の場合は400ppmの含水量を有するとき、それは特に好ましい。
さらに、カルボジイミド化合物は、急速におよび選択的に短鎖酸と、特に乳酸および/または酪酸と反応するのがよい。
その化学構造に関して、本発明によって使用されるのが好ましいカルボジイミド化合物は、カルボジイミドが本発明の目的のために変圧器油組成物を安定化することができる限り、すなわちより詳しくは、変圧器油中に存在する脂肪酸と反応することができる限り、初めは一切の特定の要求条件を受けない。
本発明において使用されうるカルボジイミド化合物は、一般に公知の方法によって合成されるカルボジイミド化合物であってもよい。化合物は、例えば、一切の溶剤を用いずにまたは不活性溶剤を用いて、約70℃以上の温度で、触媒として有機リン化合物または有機金属化合物を用いて、異なったポリイソシアネートの脱カルボキシル化縮合反応を行なうことによって得られる。
上述のカルボジイミド化合物中に存在するモノカルボジイミド化合物の例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドおよびジ−β−ナフチルカルボジイミドであり、工業的使用に関して特に好ましいのはジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。
カルボジイミドおよび相応して適した化合物を調製するための相当する方法は、例えば、米国特許第2,941,956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28,2069−2075(1963年)およびChemical Review、1981年、Vol.81、No.4、619〜621ページに記載されている。
ポリカルボジイミド化合物を調製するための出発原料としての有機ジイソシアネートには、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートまたはそれらの混合物などがあり、特にナフタレン1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン4,4’−ジイソシアネート、フェニレン1,3−ジイソシアネート、フェニレン1,4−ジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、トリレン2,6−ジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネートとトリレン2,6−ジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニレンイソシアネートおよび1,3,5−トリイソプロピルベンゼン2,4−ジイソシアネートなどがある。
さらに、上述のポリカルボジイミド化合物において、ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と反応しうる、モノイソシアネートなどの化合物を用いてその重合度を適したレベルに制御することができる。
ポリカルボジイミド化合物の末端基の保護によって重合度を制御するためのモノイソシアネートには、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートなどがある。
さらに、ポリカルボジイミド化合物の末端基を保護することによって重合度を制御するための末端保護剤は、上述のモノイソシアネートに限定されず、イソシアネートと反応しうる活性水素を有する化合物、例えば(i)−OH基を有する脂肪族、芳香族または脂環式化合物、例えばメタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、オリゴ−、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルおよびオリゴ−、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、脂肪アルコールおよびオレイルアルコール、(ii)=NH基を有する化合物、例えばジエチルアミンおよびジシクロヘキシルアミン、(iii)=NH基を有する化合物、例えばブチルアミンおよびシクロヘキシルアミン、(iv)−COOH基を有する化合物、例えばコハク酸、安息香酸およびシクロヘキサンカルボン酸、(v)−SH基を有する化合物、例えばエチルメルカプタン、アリルメルカプタンおよびチオフェノール、および(vi)エポキシ基を有する化合物などがある。
上述の有機ジイソシアネートの脱カルボキシル化縮合反応は適したカルボジイミド化触媒の存在下で行なわれる。使用に好ましいカルボジイミド化触媒は、有機リン化合物および有機金属化合物[一般式M−(OR)によって表される化合物であり、Mがチタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)等であり、Rが、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基である]であり、活性の観点から特に好ましいのは有機リン化合物の中ではホスホレンオキシド、有機金属化合物の中ではチタン、ハフニウムおよびジルコニウムのアルコキシドである。強塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物または酸化物、アルコキシドおよびフェノキシドについてさらに言及されるべきである。
上述のホスホレンオキシドには、特に、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスホレン1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスホレン1−オキシド、1−フェニル−2−ホスホレン1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン1−オキシドおよびそれらの二重結合異性体などがある。これらの中で、容易に工業的に入手できるため特に好ましいのは3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン1−オキシドである。
カルボジイミド化合物は特に4,4’−ジシクロヘキシル−メタンカルボジイミド(重合度=2〜20)、テトラメチルキシリレンカルボジイミド(重合度=2〜20)、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド(重合度=2〜20)およびN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド(重合度=2〜20)等であり、化合物が、この機能を有するカルボジイミド基を分子中に少なくとも1つ有する限り、特に制限されない。
本発明の文脈において適したカルボジイミドは特にモノマー、ダイマーまたはポリマーカルボジイミドである。
カルボジイミド化合物のいくつかの好ましい構造は、以下に詳細に説明される。
第1の構成において、本発明の文脈において、モノマーカルボジイミドが使用される。
本発明のこの構成において、カルボジイミドは好ましくは、一般式(I)
Figure 2012518886
[式中、R〜R基が各々独立に、直鎖状または分枝状C〜C20−アルキル基、C〜C20−シクロアルキル基、C〜C15−アリール基またはC〜C15−アラルキル基である]を有する。
〜R基については、C〜C20−アルキルおよび/またはC〜C20−シクロアルキル基が好ましい。
〜R基については、C〜C20−アルキル基が特に好ましい。
〜C20−アルキルおよび/またはC〜C20−シクロアルキル基は本発明の文脈においては特にエチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシルおよびドデシル基を意味すると理解され、特に好ましいのはイソプロピル基である。
〜C15−アリールおよび/またはC〜C15−アラルキル基は本発明の文脈においては特にフェニル、トリル、ベンジルおよびナフチル基を意味すると理解される。
相当するカルボジイミドは、Additin(登録商標)8500、Stabaxol(登録商標)1IまたはStabaxol(登録商標)I LFの名称でRhein Chemie Rheinau GmbHから市販されている。安定剤3000、7000および7000Aの名称でRaschigによって販売されている製品も、本発明において使用可能である。
第2の構成において、本発明の文脈において、ポリマーカルボジイミドが使用される。
相当するポリマーカルボジイミドは、一般式(II)
R’−(−N=C=N−R−)−R’’(II)
[式中、Rが芳香族、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族(araliphatic)基であり、芳香族または芳香脂肪族(araliphatic)基の場合、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して1つのオルト位、好ましくは両方のオルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分枝状または環状脂肪族基、特にイソプロピル基を有してもよく、
− R’がアリール、アラルキルまたはR−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONRおよびR−NHCOORであり、
− R’’が−N=C=N−アリール、−N=C=N−アルキル、−N=C=N−脂環式、−N=C=N−アラルキル、−NCO、−NHCONHR、−NHCONRまたはNHCOORであり、
− R’およびR’’においては独立に、RおよびRが同一であるかまたは異なっており、各々、アルキル、シクロアルキルまたはアラルキル基であり、RがRの定義の1つを有するか、またはポリエステルまたはポリアミド基であり、
− nが1〜5000、好ましくは1〜500の整数である]を有する。
これらのポリマーカルボジイミドの第1の好ましい実施形態において、Rが芳香族または芳香脂肪族(araliphatic)基でありカルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して少なくとも1つのオルト位、好ましくは両方のオルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分枝状または環状脂肪族基、特にイソプロピル基を有してもよい。
特に適したカルボジイミドは一般式(I)および(II)のカルボジイミドであり、カルボジイミド基に対してこの芳香族または芳香脂肪族(araliphatic)基上のオルト位においてイソプロピルによって置換され、同じく、カルボジイミド基に対してパラ位においてイソプロピルによって置換される。
これらのポリマーカルボジイミドの第2の好ましい実施形態において、Rは、C〜C−アルキル基、好ましくはC〜C−アルキル基を介してカルボジイミド基(−N=C=N−)に結合される芳香族基である。
さらに、例えばイソホロンジイソシアネートをベースとしたポリマー脂肪族カルボジイミドまたはNishinboから得られるH12-MDI(水素化MDI)を使用することも可能である。
一般式(I)または(II)のカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドを調製するために、触媒の存在下で高温で、例えば40℃〜200℃で二酸化炭素を除去して縮合によって相当するカルボジイミドに変換されるモノイソシアネートおよび/またはジイソシアネートを使用することができる。適した方法は、独国特許出願公開A−11 30 594号明細書および仏国特許出願公開 1 180 370号明細書に記載されている。有用な触媒は、例えば、強塩基またはリン化合物であることがわかっている。ホスホレンオキシド、ホスホリジンまたはホスホリンオキシド、同じく相当するスルフィドを使用することが好ましい。さらにまた、使用される触媒は第三級アミン、塩基性金属化合物、カルボン酸金属塩および非塩基性有機金属化合物であってもよい。
全てのイソシアネートが、使用されるカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドの調製のために適しており、本発明の文脈において使用が好ましいのは、C〜C−アルキル置換芳香族イソシアネート、例えば2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリエチルフェニル1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニル1,3−ジイソシアネート、2,4’−ジイソ−シアナトジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはそれらの混合物をベースとしたカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミド、および置換アラルキル、例えば1,3−ビス(1−メチル−1−イソシアナトエチル)ベンゼンをベースとしたカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドである。カルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドが2,4,6−トリイソプロピルフェニル1,3−ジイソシアネートをベースとしているときにそれは特に好ましい。
また、ポリカルボジイミドは、イソシアネートから調製されたとき、反応性NCO基および錯体結合モノマーイソシアネートをさらに含有する場合がある。
NCO基を含有するこれらのポリカルボジイミドは、存在するイソシアネート基が反応性の水素含有化合物、例えばアルコール、フェノールまたはアミンで除去される方法で改質されうる(独国特許出願公開第11 56 401 A号明細書および独国特許出願公開第24 19 968 A号明細書を参照のこと)。この点に関して、より詳しくは、エンドキャッピングのためにポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、および脂肪アルコールおよびオレイルアルコール残基の使用も参照されるとよい。
また、一般式(II)のポリマーカルボジイミドはイソシアネート化合物でエンドキャップされてもよい。
本発明の文脈において、ポリマーカルボジイミドはStabaxol(登録商標)P、Stabaxol(登録商標)P100、Stabaxol(登録商標)P200およびStabaxol(登録商標)P400の名称でRhein Chemie Rheinau GmbHから市販されている。本発明の文脈において、安定剤2000、9000および11000の名称でRaschingによって販売されている製品を使用することもできる。
また、カルボジイミドは本発明の文脈において、いくつかのカルボジイミドの混合物として使用することができる。
本発明のさらなる実施形態において、異なったカルボジイミドの混合物を使用することもできる。カルボジイミドの混合物が使用されるとき、使用されたカルボジイミドは、モノマー、ダイマーまたはポリマーカルボジイミドの群から選択されてもよく、モノマーカルボジイミドおよびポリマーカルボジイミドに関して一般式(I)および(II)の化合物に関する上述の記載が参照される。
さらに、遊離イソシアネートの低減された含有量を含有するカルボジイミドが使用されるとき、本発明の文脈においてそれは好ましい。好ましいカルボジイミドは、好ましくは1重量%未満の遊離イソシアネートを含有する。
さらに、他の酸捕捉剤ならびにカルボジイミドを使用することも可能である。
本発明の変圧器油組成物は、少なくとも1つのカルボジイミドを広範囲の様々な添加された量において含んでもよい。しかしながら、効率の理由のために、少なくとも1つのカルボジイミドが、本発明の変圧器組成物に基づいて少なくとも0.01重量%の量で組成物中に存在するのが好ましい。経済的な理由のために、変圧器油組成物中の少なくとも1つのカルボジイミドの量が本発明の変圧器組成物に基づいて10重量%を超える場合は利益がない。
本発明の特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物中の少なくとも1つのカルボジイミドの量は、本発明の変圧器組成物の各場合に基づいて0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、特に0.1〜1.5重量%である。
酸捕捉剤、特にカルボジイミドをマスターバッチとして使用することも可能であり、その場合、酸捕捉剤は変圧器油中に高い濃度で溶解されてもよく、適用時に希釈される。
本発明の組成物に使用されるのが好ましい変圧器油のより詳細な説明は以下の通りである。
変圧器油
本発明の文脈において、いかなる変圧器油も使用できる。変圧器油が規格IEC61099:1992を満たす場合が好ましい。この文書“Specifications for unused synthetic organic esters for electrical purposes”は、新規な電子用途の合成有機酸エステルへの要求が規定される一般的な基準である。
一般的には、変圧器油は、鉱油系の油、エステル系の油およびトリグリセリド系の油からなる群から選択される。
使用された変圧器油が鉱油であるとき、鉱油は好ましくは、基油のATIEL−API分類によってグループIIIの流動ナフテン系低硫黄基油であり、良好な低温および酸化性質を有する。相当する鉱油は、例えば、Nynaes(Sweden)から商品名Nytro(登録商標)としてまたはShellから商品名Shell Diala Dとして入手可能である。これらの変圧器油はIEC 60296:2003−“Fluids for electrotechnical applications − Unused mineral insulating oils for transformers and switchgears”を満たす。
低い可燃性を有し生分解性であり比較的高い吸水度を示す変圧器油の要求条件があるとき、好ましくは低酸価を有する分枝状または直鎖状飽和流動ポリオールエステルをベースとした変圧器油を使用することが好ましい。それらの例は、商品名Midel(登録商標)としてM&Jによって販売されているシステムである。この場合、大豆油、ナタネ油またはヒマワリ油も適している。
本発明の好ましい実施形態において、変圧器油は、一般式(III)
Figure 2012518886
のトリメチロールプロパンエステル(TMP)である。
相当するトリメチロールプロパンエステルは、独国特許出願公開第10 2004 025 939 A1号明細書から公知である。上の一般式(III)において、R、RおよびR基は同一であるかまたは異なっており、各々、5〜11個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である。本発明のさらに好ましい実施形態において、R、RおよびR基は同一であるかまたは異なっており、各々、7〜9個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である。
一般式(III)のトリメチロールプロパンエステル(TMP)は、40℃において23mm/秒未満の粘度および300℃超の燃焼点を特徴とする。したがって、これらのエステルは、変圧器のための誘電体絶縁液として非常に適している。
低い粘度は、エステル化において、選択された酸成分によって達成されうる。式(I)のR、RおよびR基は、5〜11個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基からなる。7〜9個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を有する基の使用が好ましい。この基は、必要な酸化安定性を達成するために飽和していなければならない。ポリオールエステル中の全ての基が同一であってもよく、2つの基だけが同一であるかまたはそれらの全てが異なっていてもよい。C〜C10−脂肪酸の酸混合物によるトリメチロールプロパノールのエステル化において生じる7〜9個の炭素原子を有する基の分布が好ましく、そこで燃焼点は300℃超でなければならず、粘度は40℃において23mm/秒未満の記載された好ましい範囲に達する。炭素原子の数が多くなればなるほど燃焼点が高くなるが、粘度が高くなる。これらの値は逆方向に向かうので、各対の値についてR、RおよびR基の最適な炭素鎖長の分布がある。
トリメチロールプロパンエステルのこのクラスは、標準IEC61099の要求を満たし、それらは、ドイツ連邦環境庁(German Federal Emvironment Agency, UBA、Berlin)によって水に対して危険でない(NWG)と分類されている。本発明のさらなる実施形態において、変圧器油はまた、ペンタエリトリチルエステルであってもよい。このようなエステル系変圧器油は、例えばMidel(登録商標)7131として市販されている。しかしながら、添加剤を使用しない形では、これらの変圧器油は、絶縁紙から酸の形成をもたらし、したがって、水の形成につながり、そして次に変圧器の激しい破損につながる。
変圧器油中のカルボジイミドの酸捕捉剤の作用による既に言及された安定効果に加えて、カルボジイミドはまた、銅、鉛、スズおよび亜鉛に対して、変圧器に使用されたこれらの金属の腐蝕を防ぐことによって相乗的に作用し、したがって、これらの金属と接触する変圧器油を老化から保護する。本発明の相乗効果は、紙の絶縁に欠陥があり巻き線が変圧器油と接触する時に特に生じる。本発明の相乗効果は、材料として銅を含む巻き線の場合に特に有利である。
本発明の変圧器油組成物はこの分野に通例使用される有用な添加剤をさらに含んでもよい。例えば、これらは、酸化防止剤または金属不活性化剤であってもよい。
さらなる実施形態において、したがって、本発明の組成物は変圧器油の各場合に基づいて酸化防止剤0.005〜1.0重量%および/または金属不活性化剤0.01〜2.0重量%をさらに含有する。
酸化防止剤の好ましい量は、変圧器油に基づいて0.1〜0.5重量%、特に0.1重量%である。
金属不活性化剤の好ましい量は、変圧器油に基づいて0.1〜1.0重量%、特に0.1重量%である。
酸化防止剤は好ましくは、ビスヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、4−t−ブチルカテコール、ナフトール、フェニルナフチルアミン、ジフェニルアミン、フェニルチオエーテル、トコフェロールおよび列挙された物質の混合物からなる群から選択される。適した酸化防止剤は特に2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)であり、Lanxess Deutschland GmbHによって商品名Baynox(登録商標)として販売されている。
金属活性剤は好ましくは、有機ヘテロ化合物、例えばトリアゾール、トリルトリアゾール、ジメルカプトチアジアゾールおよび列挙された物質の混合物からなる群から選択される。
さらに本発明は、変圧器油を少なくとも1つの酸捕捉剤、特に少なくとも1つのカルボジイミドと混合することによって、相当する本発明の変圧器油組成物を製造するための方法に関する。この目的のために、酸捕捉剤を変圧器油に添加し、得られた組成物を場合により加熱し、標準装置で酸捕捉剤を変圧器油中に掻き混ぜる。変圧器油の通常の作業温度(約60℃)において、酸捕捉剤を同じように変圧器油中に全体に溶解するため、その使用前に変圧器油を加熱する、および/または添加剤を掻き混ぜることをしないで済ますことも可能である。
さらに本発明は、変圧器油組成物中の安定剤として少なくとも1つの酸捕捉剤、特にカルボジイミドの使用に関する。カルボジイミドおよび変圧器油組成物に関して、上記の記載が参照される。
さらに本発明は、特に、変圧器油組成物中の酸捕捉剤として少なくとも1つのカルボジイミドの使用に関する。少なくとも1つのカルボジイミドおよび変圧器油の説明に関して、上記の記載が参照される。
さらに本発明は、特に、腐蝕からの変圧器の保護のための少なくとも1つのカルボジイミドの使用に関する。少なくとも1つのカルボジイミドおよび変圧器油の説明に関して、上記の記載が参照される。
本発明によって提供されたカルボジイミドを初めて使用される新しい変圧器油または既に使用中である変圧器油のどちらにでも添加することができる。より詳しくは、添加剤として本発明によって提供された酸捕捉剤、特にカルボジイミドをすでに再生された変圧器油に添加することもできる。
使用された変圧器油を再生するための相当する方法は当業者に本質的に公知であり、この主題に関する広範囲にわたる公知の先行技術が参照される。
さらに本発明は、上述の変圧器油組成物を含む変圧器を提供する。変圧器は、電力変圧器、配電変圧器、柱上変圧器、タップ切換え器または切換スイッチであってもよい。
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それらに制限されない。
作業の実施例
以下の試料を老化特性に関して検査した。
試料1:100重量%のShell Diala D(比較例)
試料2:100重量%のShell Diala D+1%のAdditin(登録商標)RC 8500(式Iのカルボジイミド(式中、R、R、RおよびR=イソプロピル)、Rheinchemie Rheinau GmbHから入手可能)(本発明の実施例として)
試料1および2を40日間にわたり密閉容器内で20重量の絶縁紙(Weidmann Plastics Technology AG製)の存在下で、145℃で老化させた。
絶縁紙の老化による解重合(DIN EN 60450に従って測定された)を進行する老化のための尺度とした。図1は、グラフの形で結果を示す。重合度が長時間にわたり測定された。カルボジイミドの添加が絶縁紙の解重合を出発点から遅らせることは明らかである。

Claims (14)

  1. 少なくとも1つの変圧器油と少なくとも1つの酸捕捉剤とを含む組成物。
  2. 前記少なくとも1つの酸捕捉剤が、カルボジイミド、エポキシ化トリグリセリド、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、ピリジンおよびピリジン誘導体、ジアザビシクロオクタン、およびポリビニルピリジンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記酸捕捉剤が少なくとも1つのカルボジイミドであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記少なくとも1つのカルボジイミドが、一般式(I)
    Figure 2012518886
    [式中、R〜R基が各々独立に、直鎖状または分枝状C〜C20−アルキル基、C〜C20−シクロアルキル基、C〜C15−アリール基またはC〜C15−アラルキル基である]のモノマーカルボジイミドであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記少なくとも1つのカルボジイミドが、一般式(II)
    R’−(−N=C=N−R−)−R’’(II)
    [式中、
    − Rが芳香族、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族基であり、芳香族または芳香脂肪族基の場合、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して1つのオルト位、好ましくは両方のオルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分枝状または環状脂肪族基、特にイソプロピル基を有してもよく、
    − R’がアリール、アラルキルまたはR−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONRおよびR−NHCOORであり、
    − R’’が−N=C=N−アリール、−N=C=N−アルキル、−N=C=N−脂環式、−N=C=N−アラルキル、−NCO、−NHCONHR、−NHCONRまたはNHCOORであり、
    − R’およびR’’において独立に、RおよびRが同一であるかまたは異なっており、各々、アルキル、シクロアルキルまたはアラルキル基であり、RがRの定義の1つを有するか、またはポリエステルまたはポリアミド基であり、
    − nが1〜5000、好ましくは1〜500の整数である]のカルボジイミドであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
  6. 前記カルボジイミドが混合物として使用されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記組成物中の前記少なくとも1つのカルボジイミドの量が0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、特に0.1〜1.5重量%であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記変圧器油が鉱油系、エステル系またはトリグリセリド系の油から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記変圧器油が一般式(III)
    Figure 2012518886
    [式中、R、RおよびRが同一であるかまたは異なっており、各々、5〜11個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である]のトリメチロールプロパンエステル(TMP)であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 前記変圧器油がペンタエリトリチルエステルであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 腐蝕からの変圧器の保護のためのまたは変圧器油中の安定剤としての、請求項2に記載の少なくとも1つの酸捕捉剤の使用。
  12. 酸捕捉剤としての、請求項3〜5のいずれか一項に記載の規定に相当する少なくとも1つのカルボジイミドの使用。
  13. 変圧器油が少なくとも1つの酸捕捉剤と混合されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造するための方法。
  14. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む変圧器。
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