JP2012509078A - 二本鎖核酸特異色素を用いる固体表面でのリアルタイムマルチプレックスpcr検出 - Google Patents
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Abstract
本発明は、二本鎖核酸に特異的である色素を用いて、ひとつの反応で興味の対象である多数のターゲット核酸を検出することが可能な方法を提供する。
Description
本発明は、二本鎖核酸に特異的な色素を用いて、一つの反応で対象となる複数の核酸の増幅(マルチプレックス)のリアルタイム検出を可能とする方法を提供する。
非常に少量の核酸を検出し増幅するための技術は現代の分子生物学及び生化学研究においては必要欠くべからざるものである。この技術は、例えば疾患の診断及び検出、法医学、DNA配列及び再構成DNA技術において用いられている。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用は、特定の核酸配列の増幅のための迅速かつ便利な方法を提供する。当該技術は熱安定DNAポリメラーゼを用いる核酸の複製に基礎を置く。
基本的なPCRの準備には、いくつかの成分と試薬を必要とする。変性核酸サンプルは、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド及び2つのオリゴヌクレオチドプライマとインキュベートされる。これらのプライマは、増幅されるべき核酸フラグメントに結合し、DNAポリメラーゼが新たな相補鎖を合成する方向を決めるように選ばれる。
PCRは通常、即ち決められた一連の温度ステップでPCRサンプルを加熱と冷却を交互に適用するサーマルサイクルを含む。最も普通のPCRは、3つの異なる温度ステップを含む20−40サイクルが実行される。反応の最初のステップは、二本鎖核酸の相補的塩基間の水素結合を切って核酸テンプレートを融解させるために加熱(例えば94−98℃)される(変性ステップ)。次に、反応温度を使用するプライマの融解温度(例えば50℃−65℃)に低下させてプライマが、核酸テンプレートの一本鎖の相補的塩基配列にアニーリングさせる(アニーリングステップ)。第3ステップでは、DNAポリメラーゼが当該テンプレートの5’から3’方向に相補的なヌクレオチドを追加して新たな核酸鎖を合成する(増幅ステップ、例えば72℃で実行される)PCRが進行するにつれて、生成された核酸自体が複製のためのテンプレートとして作用する。これにより連鎖反応が起こり、核酸テンプレートが指数関数的に増幅される。PCRの約20サイクル増幅で、ターゲット配列は、高い特異性を持ち約百万倍の量に増加する。しかしながら、このPCR法は、最良でも準定量的であり、多くの場合生成物の量は投入したターゲット核酸の量とは関連しない。
いくつかの応用においては、例えば診断法や遺伝子発現研究では、増幅の際に増幅される核酸の増幅量をモニタすることが望ましい。これは、かなり最近導入された方法であり、「リアルタイムPCR]と呼ばれている定量的PCR法により達成可能である。この方法は通常のPCR法の一般的原理に従うものであり、それぞれのPCRサイクルで増幅される際に増幅された核酸をリアルタイムで定量化するものである。定量化は通常蛍光測定で行われる。PCRに際し核酸の増幅は蛍光強度の増加をもたらし、また所定の回数のサイクル又は各サイクルで測定されてそれにより核酸濃度の定量化を可能とする。
PCR反応が指数関数的増幅の際に存在する核酸の濃度は、例えば対数目盛り上のサイクル数に対してプロットすることで検出できる。核酸の量はその結果と、既知の量の核酸について一連の希釈液のリアルタイムPCRにより生成される標準曲線とを比較することで決められる。指数関数的増幅の際に存在する核酸の相対的濃度はまた例えば、バックグラウンド上の蛍光の検出閾値を決定し、サンプルのサイクル閾値に基づく核酸の相対的量を計算することにより計算される。
通常、上で説明したリアルタイムPCR法は、溶液中で実行される。この従来のリアルタイムPCRの欠点は、複数の核酸を平行(マルチプレックス)に検出するために適用することができないということである。というのは、種類が異なり、重ならない蛍光色素を異なるターゲット核酸に対して用いる必要があるからである。リアルタイムPCRのマルチプレックスPCRへの応用は、マルチプレックスPCRを実行しかつアレイ上の増幅されたターゲットを検出することで達成可能である。しかし、マルチプレックスPCRを実行しかつアレイ上の増幅されたターゲットを検出することにはそれ自体問題がある。その一部は、シグナル位置を決めることを阻害するバックグラウンドシグナルから生じるものである。
従って当該技術分野において、マルチプレックスリアルタイムPCR検出を可能とする新規方法開発への持続的な要求が存在する。
本発明は、1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅を同時にモニタする簡便かつ効果的な方法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をリアルタイム条件で、同時にモニタする簡便かつ効果的な方法を提供することを課題とする
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなる本発明のこれらの課題は、独立請求項の主題とされている。いくつかの好ましい実施態様については従属請求項により定義されている。
本発明の第一の側面は、1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をモニタする方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含む、プロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含む、プロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
より好ましい第二の側面において、本発明は請求項1による方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
さらにより好ましい第三の側面において、本発明は請求項1による方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする;
d.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次のステップ、
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
e.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
f.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
g.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする;
d.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次のステップ、
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
e.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
f.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
g.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
好ましくは実施態様において、前記第二の側面のステップ(d)及び前記第三の側面のステップ(e)による前記サンプル中の前記増幅されるターゲット核酸の濃度の決定は、増幅されたターゲット核酸に結合する二本鎖核酸に特異的に相互作用することができる色素から生成される前記シグナルを測定することでなされる。濃度の決定は、既定濃度の前記知られたターゲット核酸を用いて前記第二及び第三の側面の方法を実施して得られるキャリブレーションカーブを記録することを含んでいてよい。
他の好ましい実施態様においては、キャプチャプローブと増幅ターゲット核酸とのハイブルダイズの検出は、前記第二及び前記第三の側面のステップd.での前記増幅ターゲット核酸配列の濃度決定により増幅核酸濃度が、前記サンプル中で、ハイブリダイズ検出のための検出限界よりも大きいことが明らかな場合にのみ実行可能であり得る。
本発明のこの後者の応用の好ましい実施態様においては、ハイブリダイズの検出は、前記第二の側面のステップd.及び前記第三の側面のステップf.による前記サンプル中の前記増幅されるターゲット核酸配列の濃度決定が、前記増幅されるターゲット核酸が、少なくとも10pMより多く、好ましくは少なくとも約50pMより多く及びより好ましくは少なくとも約100pMより多いことが明らかな場合に、実施され得る。
本発明の第三の側面の好ましい実施態様において、前記コントロールプローブは、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを持つ。この実施態様の応用において、前記コントロールプローブの蛍光ラベルは、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)により検出されるように選ばれている。本発明のさらなる実施態様において、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを有する前記コントロールプローブは、ポリメラーゼ連鎖反応において使用されるポリメラーゼにより分解されるように選択される。そのようなコントロールプローブは、Taqmanプローブである。
本発明の第三の側面のさらに好ましい実施態様は、前記コントロールプローブが少なくとも1つの蛍光ラベルを有し及びもうひとつがクエンチャーラベルを有する。そのようなプローブは、スコピオンプライマ(scorpion primer)、ルックスプライマ(lux primer)又は分子ビーコン(molecular beacon)を含む群から選択されることができる。
本発明の第一から第三の側面の関する好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、複数の異なるターゲット核酸配列に特異的に結合することができる。
本発明の第一から第三の側面の関する好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、前記基板上にスポットを含むアレイを形成するように設けられており、それぞれのスポットは、既定配列の多数の核酸キャプチャプローブを含む。
好ましい実施態様のさらなる態様は、前記アレイのスポットのいくつか又は全てがお互いに相違し、それらの核酸キャプチャプローブが異なるターゲット核酸に特異的に結合する。
本発明の上で説明した実施態様のすべてにおいて、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な色素は、インターカレータ型色素、好ましくはSYBR Green1、EtBr及びPicogreenを含む群から選択される。
本発明の上で説明した他の好ましい実施態様において、増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイズの検出は、エバネッセント波検出系を用いる場合では基板表面から約100nmから約300nmの距離で、又は共焦点検出系を用いる場合では基板から約1μmの距離内でシグナルを検出することでなされる。
本発明の上で説明した側面の他の好ましい実施態様において、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能であり、キャプチャプローブと増幅ターゲット核酸とのハイブリッドに結合している色素により生成されるシグナルが、少なくとも2回のサーマルサイクルの際又は後、15回のサーマルサイクルの際又は後、少なくとも20回のサーマルサイクルの際又は後又は少なくとも25回のサーマルサイクルの際又は後で測定される。本発明の上で説明した側面の他の好ましい実施態様においては、本発明の第一及び第二の側面のステップc.及び第三の側面のステップd.は、約5から50回のサーマルサイクルを含む。
本発明を以下詳細に説明する前に、本発明はここで記載される特定の方法、プロトコル及び試薬に限定されるものではないことが理解されるべきである。ここで用いる用語は、特定の実施態様を説明するためだけを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されるということもまた理解されるべきである。特に定義されない限り、ここで使用される全ての技術的、科学的用語はこの技術分野の熟練者にとって通常理解されるものと同じ意味を有する。以下の定義が導入される。
この明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「ひとつの」はまた、文脈から明確に指示されない限り、それぞれの複数をも含む。
用語「含む」及びその変形用語、例えば「からなる」及び「有する」は、限定するものではない。本発明の目的において、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施態様として理解されるべきである。以下で、群が、ある数の実施態様を含むように定義されている場合、このことは、好ましくはこれらの実施態様のみを含む群を包含することを意味する。
用語「核酸」又は「核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマで、一本鎖又は二本鎖の形を示す。また知られた天然ヌクレオチドの類似体であって天然ヌクレオチドと同様の方法で機能するものも含む。
ここで使用される用語「ラベル」は、検出を可能とする性質又は特性を有する分子又は基を意味する。ラベルの例は、インターカレート型色素、蛍光色素、化学発光色素、蛍光マイクロ粒子などである。
用語「ターゲット核酸」は、しばしば生体サンプルから得られる核酸を意味し、基板上の核酸キャプチャプローブが特異的にハイブリダイズ可能か又は潜在的にハイブリダイズ可能なものを意味する。ターゲット核酸は、本質的にいかなる出発核酸からも得られるものである(例えば限定されるものではないが、化学合成物、増幅反応物、法医学サンプルが挙げられる)。
1又はそれ以上のターゲット核酸が存在するか又は存在しないか、の検出又は1又はそれ以上のターゲット核酸の量の定量化がここで開示される方法により可能となる。ターゲット核酸は好ましくは、特異的に結合可能な対応するキャプチャプローブの核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を含むものである。しかし、1又はそれ以上のターゲット核酸の存在の有無を検出する場合については、用語「ターゲット核酸」はまた、基板上のキャプチャプローブと潜在的にハイブリダイズ可能な問題のサンプルに存在する核酸を意味する。
1又はそれ以上のターゲット核酸が存在するか又は存在しないか、の検出又は1又はそれ以上のターゲット核酸の量の定量化がここで開示される方法により可能となる。ターゲット核酸は好ましくは、特異的に結合可能な対応するキャプチャプローブの核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を含むものである。しかし、1又はそれ以上のターゲット核酸の存在の有無を検出する場合については、用語「ターゲット核酸」はまた、基板上のキャプチャプローブと潜在的にハイブリダイズ可能な問題のサンプルに存在する核酸を意味する。
ターゲット核酸は例えば、遺伝子、DNA,cDNA、RNA、mRNA又はそれらの断片であり得る。
ここで使用される用語「核酸キャプチャプローブ」とは、特定のオリゴヌクレオチド配列であって、ターゲット核酸配列に相補性によりハイブリダイズすることができるものを意味する。通常かかる核酸キャプチャプローブの長さは、約10から約1000ヌクレオチド、約10から約800ヌクレオチド、約10から約500ヌクレオチド、約15から約400ヌクレオチド、約15から約300ヌクレオチド、約15から約200ヌクレオチド、約20から約150ヌクレオチド、約20から約100ヌクレオチド、約20から約90ヌクレオチド、約20から約80ヌクレオチド、約20から約70ヌクレオチド、約20から約60ヌクレオチド又は約20から約50ヌクレオチドである。通常かかる核酸キャプチャプローブ分子は、約20、30、40、50、60、70ヌクレオチドの長さを持つ。
ここで使用される用語「マルチプレックス」とは、興味のある多くの核酸を一組のプライマよりも多くのプライマを用いて、ひとつの反応で同時に増幅させることができるプロセスを意味する。
用語「バックグラウンド」、「バックグラウンドシグナル」、「バックグラウンド蛍光」とは、ターゲット核酸、キャプチャプローブとの非特異的結合又は例えば自己蛍光分子又は基板などの他の成分との相互作用により生じるシグナルを意味する。バックグラウンドシグナルはまた例えば、基板本来の蛍光やその部品によるもの、又は基板上の溶液に存在するあらゆる非結合分子による可能性がある。
ここで使用される用語「増幅産物」とは、例えばPCRやその他の核酸増幅に適した方法による核酸増幅の生成物を意味する。ひとつの実施態様においては、増幅産物の長さは、100から800塩基、好ましくは100から400塩基、より好ましくは100から200塩基である。
ここで記載される核酸キャプチャプローブ又はいかなる他の核酸分子が、ターゲット核酸又はいかなる他の核酸配列の「特異的」であるとされる場合、又はターゲット核酸又はいかなる他の核酸配列の「特異的に」結合するとされる場合には、これは、好ましい結合、二本鎖化又は前記キャプチャプローブ又はいかなる他の核酸分子と特定のヌクレオチド配列とのストリンジェントな条件でのハイブリダイズを意味する。用語「ストリンジェントな条件」とは、プローブがそのターゲット核酸と強く好ましく結合するが、他の配列とはあまり結合しないか全く結合しない条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境で異なるものである。
本明細書においては、ストリンジェントな条件は、特定のイオン強度及びpHで特定の配列について熱融解点(Tm)よりも約5℃低いように選ばれる。Tmは、平衡状態でターゲット核酸と相補的なプローブの50%がハイブリダイズする温度である(特定のイオン強度、pH及び核酸濃度の下で)。例えばストリンジェントな条件は、塩濃度が少なくとも約0.01から1.0MのNaイオン(又は他のイオン)濃度で、pHが7.0から8.3及び温度が少なくとも約30℃(短いプローブで例えば10から50ヌクレオチドの場合)である。ストリンジェントな条件はホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成されてもよい。
ここで使用される核酸の量又は濃度の用語「定量化」とは、絶対的又は相対的定量化を意味する。絶対的定量化は、例えば既知濃度の1又はそれ以上のターゲット核酸(コントロール核酸)を含め、未知の濃度のターゲット核酸のターゲット核酸シグナル強度を、既知の濃度のターゲット核酸と参照させる(例えば標準曲線を作成して)ことで達成することが可能である。相対的定量化は、例えば2又はそれ以上のターゲット核酸のシグナルを比較することで達成することが可能である。
「二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な色素」とは、二本鎖核酸と相互作用が可能で、一本鎖核酸又は核酸とは異なる物質に伴う場合よりもより強い強度のシグナル、好ましくは蛍光シグナルを与えることができるラベル分子を意味する。 かかる色素の例は、例えばDNAの二本鎖核酸の塩基間にインターカレート可能な色素である。そのような色素の例として、SYBR Green1,EtBr,SYTOX Blue,SYTOX Green,SYTOX Orange,POP−I,BOBO−I,YOYO−I,TOTO−I,JOJO−I,POPO−2,LOLO−I,BOBO−I,Y0Y0−3,TOTO−3,PO−PRO−I,BO−PRO−I,TO−PRO−I,JO−PRO−I,PO−PRO−3,LO−PRO−I,BO−PRO−3,YO−PRO−3,TO−PRO−3,TO−PRO−5,SYTO40青色−蛍光核酸色素,SYTO41青色−蛍光核酸色素,SYTO42青色−蛍光核酸色素,SYTO43青色−蛍光核酸色素,SYTO44青色−蛍光核酸色素,SYTO45青色−蛍光核酸色素,SYTO9緑色−蛍光核酸色素,SYTO10緑色−蛍光核酸色素,SYTO11緑色−蛍光核酸色素,SYTO12緑色−蛍光核酸色素,SYTO13緑色−蛍光核酸色素,SYTO14緑色−蛍光核酸色素,SYTO15緑色−蛍光核酸色素,SYTO16緑色−蛍光核酸色素,SYTO20緑色−蛍光核酸色素,SYTO21緑色−蛍光核酸色素,SYTO22緑色−蛍光核酸色素,SYTO23緑色−蛍光核酸色素,SYTO24緑色−蛍光核酸色素,SYTO25緑色−蛍光核酸色素,SYTO26緑色−蛍光核酸色素,SYTO27緑色−蛍光核酸色素,SYTO BC緑色−蛍光核酸色素,SYTO80橙色−蛍光核酸色素,SYTO81橙色−蛍光核酸色素,SYTO82橙色−蛍光核酸色素,SYTO83橙色−蛍光核酸色素,SYTO84橙色−蛍光核酸色素,SYTO85橙色−蛍光核酸色素,SYTO86橙色−蛍光核酸色素,SYTO17赤色−蛍光核酸色素,SYTO59赤色−蛍光核酸色素,SYTO61赤色−蛍光核酸色素,SYTO17赤色−蛍光核酸色素,SYTO62赤色−蛍光核酸色素,SYTO63赤色−蛍光核酸色素,SYTO64赤色−蛍光核酸色素,アクリジンホモダイマ,アクリジンオレンジ,7−AAD(7−アミノ−アクチノマイシンD),アクチノマイシンD,ACMA,DAPI,ジヒドロエチジウム,エチジウムブロミド,エチジウムホモダイマ−1(EthD−1),エチジウムホモダイマ−2(EthD−2),エチジウムモノアジド,ヘキサジウムイオダイド,Hoechst33258(ビス−ベンズイミド),Hoechst33342,Hoechst34580,ヒドロキシスチルバミジン,LDS751又はかくNuclear yellowが挙げられる。これら全ての化合物は、例えば、Invitrogen GmbH,Germanyから入手可能である。本発明の目的の好ましい色素は、SYBR Green1及びピコグリーン(picogreen)である。
この技術分野に知られているように、キャプチャプローブが堆積されるアレイ上でPCR反応を実施することは、大きなバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある。通常例えばPCR条件は、蛍光ラベル化プライマを用いて行われる。増幅産物はその後固定化されたキャプチャプローブとハイブリダイズされて検出される。
しかし、PCR溶液がハイブリダイズの前に除かれない場合には、伸張しなかったラベル化プライマは、アレイ基板に非特異的に吸着されてバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある。
本発明はある程度において、アレイ系リアルタイムPCR(即ちマルチプレックスリアルタイムPCR)の際に二本鎖と特異的に相互作用することができる色素を用いることで、他の方法で知られているよりもより優れたシグナル対ノイズ比を達成することができるという知見に基づくものである。何ら理論にしばられることを意味するものではないが、以下のことが考えられる。二本鎖核酸に結合されるとシグナル強度が増加するという点から、二本鎖核酸に特異的に結合することができる色素を使用して、増幅されるターゲット核酸と固定化されたキャプチャプローブとのハイブリッドに結合する色素のシグナルを、キャプチャプローブが固定されている基板表面近くで測定することで、より優れたシグナル対ノイズ比を得ることガ可能となる、ということである。
本発明の第一の側面は、従って1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をモニタする方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
本発明で使用する基板は、いかなる形状であってもよい。基板は例えば、平面形状又は球面状(例えばビーズ)であってよい。それはまた、粒子、ひも、シート、チューブ、球、容器、キャピラリ、板、顕微鏡スライド、ビーズ、膜、フィルタ等の形であってよい。
好ましい実施態様においては、基板は平面で固体である。本明細書の文脈で、固体とは、基板が実質的に非圧縮性であることを意味する。適切な材料には、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、シリカ、金属又はポリマが含まれる。ひとつの実施態様においては、基板は磁気性であってよい。
好ましい実施態様において、ポリマ及び/又はガラス表面が使用される。基板に適したポリマは例えば、環状オレフィンポリマ(COP)又は環状オレフィンコポリマ(COC)である。
好ましくは、基板は熱的に安定であり(例えば100℃まで)、PCRで使用される通常の温度条件に耐えることができるものである。さらに好ましくは、基板はキャプチャプローブを付加する修飾を可能とするものである。キャプチャプローブは好ましくは基板上に共有結合により固定化される。
キャプチャプローブ及び/又は基板表面は、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ホスファート、アルデヒド又はアミノ基の官能基により修飾され得る。
ひとつの実施態様においては、キャプチャプローブと基板を結ぶする化学リンカーを、基板にキャプチャプローブを共有結合的に付着させるために使用してもよい。例えば核酸キャプチャプローブを基板に付着させるためにチミン尾部(thymine tail)がリンカーとして使用できる。チミン尾部は、例えば約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20又は20よりも多いチミンを含む。好ましい実施態様においては、チミンリンカーは、16チミンを含む。ひとつの好ましい実施態様においては、リンカーはさらに、チミン尾部とキャプチャプローブとの間に位置する脱塩基サイトを含んでいてよい。例えばそのようなリンカーは、1から20の脱塩基サイトを含むことができる。
一般的に、すべてのヌクレオチドリンカー又はすべての他のリンカーでこの技術分野の熟練者に知られたリンカーを使用することができる。リンカーが使用される場合、好ましくは、リンカーはキャプチャプローブの5’末端に付加される。
またキャプチャプローブは、サーマルサイクル条件で安定に付着しているならば、基板の表面に吸着されていてもよい。
キャプチャプローブは、一本鎖ヌクレオチド分子、例えば一本鎖DNA又はRNA分子であってよい。
本発明による方法がひとつの一本鎖ターゲット核酸の増幅をモニタするために使用される場合、基板表面に固定化された全ての核酸キャプチャプローブは同じターゲット核酸について特異的であってよい。しかし、本発明の方法は、好ましくは、複数の異なったターゲット核酸の検出のために使用される。従って好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、複数の異なるターゲット核酸と特異的に結合することができる。
ひとつの実施態様においては、基板上に固定化されたそれぞれのキャプチャプローブは、ひとつだけのターゲット核酸に特異的であってよい。または、基板上に固定化されたキャプチャプローブは一つ以上のターゲット核酸に対して特異的であってよい。
例えば個々のキャプチャプローブは、種々の相同性配列と特異的であってよい。ひとつの核酸キャプチャプローブは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い又は50より多いターゲット核酸に対して特異的であってよい。ひとつの核酸キャプチャプローブが1より多い(即ち数個)のターゲット核酸に対して特異的である場合、以下説明するように、これらのターゲット核酸が類似していることが好ましい。
ひとつのキャプチャプローブが、ひとつのターゲット核酸、例えば遺伝子、cDNA又はRNAと結合する場合、キャプチャプローブは、前記ターゲット核酸の翻訳領域の5’又は3’末端に特異的に結合することが好ましい。
翻訳領域(ORF)は、mRNA、cDNA又は遺伝子の一部分であり、前記mRNA、cDNA又は遺伝子のスタートコドン(又は開始コドン)とストップコドン(又は停止コドン)を含むそれらの間に位置する。ひとつのORFは通常、ひとつのタンパク質をコードする。従ってひとつのORFは、対応するタンパク質へリボソームにより変換される配列の一部であろう。
マルチプレックスにとっては、基板の表面を例えば、基板の異なる領域に固定化キャプチャプローブが位置するようにパターン化することが好ましい。従って本発明の好ましい実施態様において、多数のキャプチャプローブは、基板の分離された領域に位置させることが可能である。ここで「分離された領域」又は「空間的分離」とは、基板の表面で重ならない領域を意味する。「分離領域」は、基板上でお互いに接触するように又は基板表面にお互いが接触しないように配置されることも可能である。
好ましくは、分離領域は、独立してアクセス可能な領域であり、それはまた「スポット」と参照される。好ましい実施態様では、ひとつのスポットは少なくとも1、2、3、4、5、10、20,30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、5000、10000、100000又は少なくとも1000000キャプチャプローブを含む。それぞれのスポットが、正確に同じ数のキャプチャプローブを含む必要はないが、全てのスポットが同じ数のキャプチャプローブを有し、測定の際に全てのスポットのシグナルがお互いに比較できるようにすることが好ましい。例えば、基板の表面は、それぞれがハイブリダイズステップの際に検出されるために十分な数のキャプチャプローブからなる複数のスポットを含むことができる。
ひとつの実施態様において、固体基板は、約1、2、3、4、5、6、7−10、10−50、50−100、100−500、500−1000、1000−5000、5000−10000、10000−50000、50000−100000、100000−500000、500000−1000000又は1000000よりも多いスポットを含んでいてよい。 ひとつの実施態様においては、基板は、cm2あたり、4から100000スポット及び好ましくは20から1000のスポットを含んでいてよい。
好ましくは、スポットの直径は50から250μmである。さらに好ましい実施態様では、スポットの直径は、直径50から90μm、90から120μm、120から150μm、150から180μm、180から200μm、200から220μm、又は220から250μmである。
さらに好ましくは、スポットのピッチは100から500μmを有する。スポットのピッチはまた、100から200μm、200から300μm、300から400μm又は400から500μmである。
特に好ましい実施態様においては、スポットの直径が50から250μmであり、ピッチが100から500μmである。最も好ましくは、スポット直径が約200μmであり、ピッチが約400μmである。
本発明の方法において、それぞれの個々の領域内のキャプチャプローブが、同じ又は類似のターゲット核酸に特異的に結合することができることがさらに好ましい。2つのターゲット核酸が「類似」とは、それらが少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%の配列相同性を持つことを意味する。2つの配列の相同性%の決定は、好ましくは、Karlin及びAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873−5877に記載の数学的アルゴリズムを用いることにより達成可能である。かかるアルゴリズムは、Altschul等(1990) J.MoI.Biol.215:403−410(NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)から入手可能)のBLASTn及びBLASTpプログラムに導入されている。
本発明の方法の他の好ましく実施態様においては、基板上のいくつか又は全部の領域がお互いに相違し、それらのキャプチャプローブが異なるターゲット核酸に特異的に結合される。好ましくは基板上の領域の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の領域がお互いに相違し、それらのキャプチャプローブが、異なるターゲット核酸を特異的に結合することができる。
好ましい実施態様において、キャプチャプローブは、その5’末端を基板に付着させるものであり、従ってさらなるラベル化が必要な場合、その3’末端をプライマ伸張反応に自由に関与させることができる。かかるラベルは例えば、蛍光ラベル化されたヌクレオチドであってキャプチャプローブを永久にラベル化することを可能とする。
キャプチャプローブは直接基板上に合成することができる。又はまず合成してその後基板に付着することも可能である。キャプチャプローブは基板の上に、例えばスポッティングや、この技術分野の平均的な技術者に知られた技術に含まれる他の方法により堆積させることができる。従って有利なことに、基板の製造には何らの困難もなく、高価でもなく又は時間を要する製造ステップを必要とせず、キャプチャプローブを基板に付着させることを含むのみである。さらに前記固定化キャプチャプローブを含む基板は保存が容易であり長期の貯蔵寿命を示す。さらに、製造された基板は乾燥条件下で保存できる。
本発明の方法のステップb)では、1又はそれ以上のターゲット核酸及びさらにポリメラーゼ連鎖反応で核酸増幅に必要な試薬(及び場合によりラベル試薬)が基板に添加される。これにより核酸増幅反応のセットアップに供される。
ステップb)による1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルは、本発明により検出されるべき又は測定されるべき1またはそれ以上のターゲット核酸を含んでいてよい。
好ましい実施態様においては、ステップb)の1又はそれ以上のターゲット核酸は、デオキシリボ核酸及び/又はリボ核酸を含む。
ステップb)による核酸サンプルが1以上のターゲット核酸を含む場合、ターゲット核酸は、同じ物又は異なる物例えば異なる生物種から由来する誘導体であってよい。1以上のターゲット核酸は通常、異なる配列を持つ核酸を含む。好ましい実施態様において、1またはそれ以上のターゲット核酸は、基板上に固定化されたキャプチャプローブの1またはそれ以上と相補的である。しかし、サンプルに含まれる全てのターゲット核酸が基板上のキャプチャプローブと結合することができることは要求されない。例えば、本発明による方法は、ひとつの実施態様において、サンプル中の特定のターゲット核酸の有無を決定するために使用され得る。かかる場合1またはそれ以上のあり得るターゲット核酸の問題のサンプルはステップb)で基板に添加され、サンプルが1またはそれ以上の興味あるターゲット核酸があるかどうかを決定される。かかるターゲット核酸がサンプル中に存在する場合、それらは基板表面のキャプチャプローブに結合することができるであろう。しかし、問題となるサンプルに興味あるターゲット核酸が全く存在しない場合には、又は問題となるサンプルに興味あるターゲット核酸と特に興味の無い追加の核酸が存在する場合には、サンプル中のいずれも又はいくつかの核酸のみが基板上のキャプチャプローブと結合するであろう。
本発明の方法のひとつの有利な点は、マルチプレックス分析が可能であることである。例えば、ターゲット核酸のサンプルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い、50より多い、60より多い、70より多い、80より多い、90より多い、100より多い、150より多い、200より多い、300より多い、400より多い、500より多い、1000より多い、5000より多い、10000より多い、100000より多い、1000000より多い異なるターゲット核酸を含むことができる。
1またはそれ以上のターゲット核酸は、真核生物細菌又はウイルス起源であってよい。
1またはそれ以上のターゲット核酸に加えて、ポリメラーゼ連鎖反応において(場合により)ラベル化する核酸増幅に必要なさらなる試薬が基板に添加される。この技術分野の熟練者にとっては、前記核酸ターゲットを増幅するためにどのような試薬を核酸ターゲットに添加する必要があるかは知られている。
好ましくは、核酸増幅(及び場合によりステップb)で)必要な試薬は溶液で、好ましくは反応混合物の形で供給される。さらに好ましくは、基板が増幅の際に溶液と接触することである。
さらに好ましい実施態様では、核酸増幅(及び場合によりラベル化)で必要な試薬は、オリゴヌクレオチドプライマのペア又は複数の異なるオリゴヌクレオチドプライマのペア、ヌクレオチド、少なくともひとつのポリメラーゼ及び場合により検出可能なラベルである。核酸増幅及びラベル化の試薬はさらに反応緩衝液を含んでいてよい。
さらに場合によりひとつの実施態様において、検出可能なラベルは、蛍光ラベル化ヌクレオチドである。「ヌクレオチド」とは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドであり得る。好ましくは、ヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。蛍光ラベル化ヌクレオチドが試薬に含まれる場合、サーマルサイクルの間に伸張された固定化キャプチャプローブに取り込まれる。従って好ましい実施態様においては、固定化キャプチャプローブが伸張ステップの間に蛍光ラベル化される。
適切な蛍光ラベルは、例えばシアニン3、シアニン5又はシアニン7を含むシアニン色素、例えばアレクサ594、アレクサ488、アレクサ680、アレクサ532を含むアレクサ蛍光色素(Alexa Fluoro dyes)、フルオレセイン類色素、テキサスレッド、アット655、アット680及びローダミンが挙げられる。いくつかの実施態様においては、ヌクレオチドは2またはそれ以上の異なる色素でラベル化されていてよい。ひとつの好ましい実施態様において、ヌクレオチドはひとつの色素のみでラベル化される。蛍光ラベル化ヌクレオチドを用いる場合、ラベル化されていないヌクレオチドと蛍光ラベル化されたヌクレオチドの混合物を用いることが可能である。ひとつの実施態様において、ラベル化されていないヌクレオチドは過剰量用いられる。即ち蛍光ラベル化されたヌクレオチドの量よりも多い量で用いられる。好ましくはラベル化されていないヌクレオチドは3又は4倍ラベル化されたヌクレオチオドよりも多く用いられる。
上で説明したとおり、核酸増幅(場合によりラベル化)で必要な試薬は、オリゴヌクレオチドプライマのペア又は複数の異なるオリゴヌクレオチドプライマのペアである。核酸増幅とラベル化に必要な試薬は、複数の異なるプライマのペアを含み、かかる異なるプライマのペアは好ましくは異なるターゲット核酸に対して特異的である。試薬は例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い、50より多い、60より多い、70より多い、80より多い、90より多い、100より多い、150より多い、200より多い、300より多い、400より多い、500より多い、1000より多い、5000より多い、10000より多い、100000より多い、1000000より多いプライマのペアを含むことができる。
核酸増幅とラベル化に必要な試薬は、前記1またはそれ以上のターゲット核酸に特異的な前方及び/後方プライマを含む。前方及び後方プライマが試薬中に含まれる場合は、これにより溶液中で起こる反応を開始させて増幅産物を生じるであろう。
増幅産物の相補鎖は、本発明の第一及び第二の側面のステップc、及び第三の側面のステップdでのサーマルサイクルの際のオリゴヌクレオチドプライマとアニールされることが可能であり、従って前記オリゴヌクレオチドプライマの伸張に利用可能なターゲット核酸の追加の副生物を提供することができる。
「前方プライマ」及び「後方プライマ」とは、通常の意味で用いられ当該技術分野ではよく知られている。
核酸増幅(及び場合によりラベル化)に必要な試薬はさらにDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施態様において、試薬はDNAポリメラーゼに加えてさらに逆転写酵素を含んでよい。逆転写酵素は、ステップb)で1またはそれ以上の核酸プローブがメッセンジャRNAを含む場合に好ましい。さらに以下詳細に記載する。
ステップb)からの1またはそれ以上のターゲット核酸の増幅は、サーマルサイクルを含むプロセスにより達成される。ここで使用される用語、サーマルサイクルとは、反応混合物を交互に加熱・冷却することを含み、それにより1またはそれ以上のターゲット核酸を増幅させることを意味する。交互に加熱・冷却が数回繰り返され、ここではサーマルサイクルと参照する。
いくつかの実施態様において、サーマルサイクルは、例えば3つの異なる温度ステップを含む。例えば最初の温度が約90℃から約100℃(変性)、次の温度が約40℃から約75℃、好ましくは50℃ぁら70℃(アニーリング)、さらに次の温度が70℃から80℃、好ましくは72℃から75℃(伸張)である。サーマルサイクルの変形は、当該技術分野でよく知られており、より少ない温度ステップ又は異なる温度ステップが含まれ得る。
好ましくは、本発明の第一及び第二の側面のステップc及び本発明の第三の側面のステップdでのサーマルサイクルは、5回サーマルサイクルよりも多い、10回サーマルサイクルよりも多い、20回サーマルサイクルよりも多い、30回サーマルサイクルよりも多い又は50回サーマルサイクルよりも多い。最も好ましくは、サーマルサイクルは約50サーマルサイクルである。
好ましい実施態様においては、サーマルサイクルを含むプロセスは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。上で説明したサーマルサイクルに加えてPCRは、反応混合物を約92℃から100℃に加熱する単一の開始ステップ及び/又はサーマルサイクルが完了した後に約4℃に冷却するステップをさらに含むことができる。
ひとつの実施態様において、1又はそれ以上のターゲット核酸と対応するオリゴヌクレイトドプライマとのアニールは、例えば温度ステップ約40℃から約75℃で、及びオリゴヌクレオチドプライマ伸張では例えば約70℃から80℃、好ましくは上で記載された約72℃から75℃で達成することができる。他の実施態様では、アニールは伸張反応と同じ温度で起こり得る。
サーマルサイクルは、通常適切な装置例えばサーマルサイクラーで実施される。
ひとつの実施態様では、遺伝子発現分析を実施することが望ましい場合である。例えばひとつまたはいくつかの異なる遺伝子の転写レベルを決定するためである。mRNA転写がその後cDNAに逆転写されてもよい。ひとつの実施態様において、逆転写は上記サーマルサイクル反応に先立って別の逆転写PCR反応で実施されてもよい。かかる反応からのcDNAはその後、ステップb)で基板に添加されてターゲット核酸として作用することができる。
ひとつの好ましい実施態様では、cDNA合成及びサーマルサイクルでの増幅ステップは、同じ反応混合物内で実施されることができる。これらの場合、ステップb)での一つ又はそれ以上のターゲット核酸はメッセンジャRNAを含み、さらにDNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼに加えて核酸増幅とラベル化に必要な試薬として逆転写酵素を含むことが好ましい。
かかる方法が用いられる場合、上で説明したサーマルサイクルに先立つ増幅プロセスは、cDNA合成を可能とする約40℃から60℃で行われる単一のインキュベーションを含む。ひとつの実施態様においては、かかるインキュベーションステップは、10分から45分で実施されることができる。ひとつの実施態様においては、反応は、cDNA合成ステップに先立って約20℃から25℃でインキュベーションされることができる。かかるインキュベーションステップは、例えば5から20分で実行され得る。
ひとつの実施態様においては、ターゲット核酸及び核酸キャプチャプローブは例えば蛍光ヌクレオチドで永続的にラベル化することが想定されているが、ターゲット核酸又はキャプチャプローブの永続的ラベル化(例えばラベル化剤による共有結合修飾)はされないことが好ましい。
サーマルサイクルにより得られる二本鎖の一つ又はそれ以上のターゲット核酸と、核酸キャプチャプローブとのハイブリダイズ(本発明の第一の側面のステップd、第二の側面のステップe、第三の側面のステップf参照)は、サーマルサイクルのアニールステップの際に実行され得る。その代わりに又はそれに加えて、本発明による方法は、ハイブリダイズステップを追加のステップとして実行することもできる。この方法は、例えば、増幅ターゲット核酸がPCR反応で使用されるプライマよりも非常に長鎖である場合に、勧められる。かかる場合には、増幅ターゲット配列へのプライマのアニールは、かかるプライマがPCRテンプレートにアニールする際に要求されるものとは異なる可能性があるからである。
サーマルサイクルにより得られる二本鎖の一つ又はそれ以上のターゲット核酸と、核酸キャプチャプローブとのハイブリダイズ(本発明の第一の側面のステップd、第二の側面のステップe、第三の側面のステップf参照)は、サーマルサイクルのアニールステップの際に実行され得る。その代わりに又はそれに加えて、本発明による方法は、ハイブリダイズステップを追加のステップとして実行することもできる。この方法は、例えば、増幅ターゲット核酸がPCR反応で使用されるプライマよりも非常に長鎖である場合に、勧められる。かかる場合には、増幅ターゲット配列へのプライマのアニールは、かかるプライマがPCRテンプレートにアニールする際に要求されるものとは異なる可能性があるからである。
増幅ターゲット核酸とキャプチャプローブ分子とのハイブリダイセーションの検出は異なる方法でも可能である。シグナル検出でしばしば生じる問題のひとつは、高いバックグラウンド蛍光による妨害である。例えば高い蛍光バックグラウンドは、例えばラベル化されたヌクレオチドである非結合の蛍光ラベル化分子、ラベル化プライマ及び/又はサーマルサイクル中に反応溶液中に存在するラベル化された増幅産物により生じる。これにより、測定がより低感度となる。
従って、ひとつの好ましい実施態様においては、高感度の表面検出技術が用いられる。かかる技術は、測定を基板の表面近くの小さな容積に限定し、基板の表面にあるラベル化された分子を検出することを可能とし、同時に溶液中のラベル化分子の検出を大部分避けることを可能としてシグナル対バックグラウンドノイズ比を改良する。
好ましい実施態様において、シグナル検出は、共焦点蛍光スキャナ又はエバネセント波顕微鏡技術を用いることで達成される。エバネセント波は、近接場に位置する波であり距離に対して指数関数的に減衰する。例えば、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡をシグナル測定に使用することができうる。他の好ましい実施態様において、シグナル検出は、発光センサにより達成可能である。かかる装置は例えばWO2007/010428に記載されており、この内容は参照により本明細書の一部となる。または、シグナルは例えば共焦点顕微鏡により検出されることができる。
従って、好ましい実施態様において、ハイブリダイセーション検出は、エバネセント検出系を用いる場合には基板表面から約100nmから約300nmの距離内、好ましくは、100nmから200nm内及び最も好ましくは100nmから150nmの距離であり、又は共焦点検出系を用いる場合には約1μm内の距離で実施される。
二本鎖核酸と特異的に相互作用する色素、即ち一本鎖核酸と結合する場合や他の分子構造と非特異的に結合する場合のシグナル強度よりも二本鎖DNAと結合する場合により高いシグナル強度を有する色素を用いることにより、バックグラウンドが減少するという利益を得る。このことは、アレイ系マルチプレックスリアルタイムPCR反応で通常観測されるバックグラウンドの75%が、アレイの表面に非特異的に結合するDNAからの結果であるということから、特に重要である(以下実施例2参照)。
キャプチャプローブが、サーマルサイクルの際にさらにラベル化される場合、シグナル対ノイズレベル比はさらにより改良されるであろう。ハイブリダイセーション検出はその後さらに、伸張されラベル化されたキャプチャプローブの検出を含むことができる。かかる測定は、少なくとも一回のサーマルサイクルの間又は後で行ってもよい。
ハイブリダイセーションは、少なくとも5回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも10回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも15回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも20回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも25回のサーマルサイクルの間又は後に測定されてもよい。
核酸の量の増加はこのようにして増幅されるに従いモニタされる。即ち、核酸の量の増幅がリアルタイムに測定される。
「リアルタイム測定」にはグナルの速度論的生成の検出を含み、ある時間を通じてシグナルを特徴付けるために複数の測定を行うことを含む。それぞれの増幅反応の蛍光強度は、例えば電荷結合素子(即ちCCDカメラ又は検出器)又は他の適切な装置であって使用されるラベル化分子の発光スペクトルの検出が可能な装置を用いて検出されることができる。
それぞれの増幅反応で、蛍光サンプリングから得られた測定された発光スペクトルは、増幅データセットを形成する。ひとつの実施態様において、それぞれのサイクルでハイブリダイセーションを検出してサンプル中の一つ又はそれ以上のターゲット核酸の存在又は不存在を決定すること(それぞれのシグナルが存在しないということはそれぞれのターゲット核酸が存在しないことに対応する)が望ましいであろう。
他の実施態様においては、増幅データセットは、定量化、即ち一つ又はそれ以上ターゲット核酸の初期濃度を決定するために処理され得る。ひとつの実施態様においては、増幅データセットはさらに、それらは例えばmRNAエンコード酵素GAPDHで初期濃度既知の、ひとつ又はそれ以上のコントロール核酸ターゲットから得られる蛍光強度データを含む。それにより、未知の濃度のターゲット核酸のシグナル強度と既知濃度のターゲット核酸と、例えば標準曲線を作成して比較することで可能となる。
本発明の目的において、キャプチャプローブとハイブリダイズし、基板表面から500nmよりも小さい距離でエバネセント検出系で検出されるか、1μmより小さい距離で共焦点レーザー手段で検出されるターゲット核酸の濃度は、「表面濃度」と考えられる。
コンピュータが、データ収集及びデータ処理に用いられてもよい。データ処理は、例えば適切なイメージングソフトウエアを用いることで達成可能である。
リアルタイムPCR法のさらなる詳細とシグナル検出及び定量化については、Dorak, M. Tevfik (ed.), Real−Time PCR, April 2006, Taylor & Francis; Routledge, 978−0−415−37734−8を参照できる。
エバネセント波検出方法が用いられる場合、励起波は指数関数的減衰を示し、従って基板の表面からさらに離れた位置から(例えば、色素が取り込まれた溶液中の増幅ターゲット核酸から)のシグナルは減衰した発光シグナルを与えることとなる。または共焦点(限定回折)検出では、基板の表面から約1μm又はそれより小さい距離内に位置する色素のみが測定される。
本発明の第一の側面の、しかし以下説明する第二及び第三の側面とも関連するが、特に好ましい実施態様において、キャプチャプローブはさらに蛍光マーカーでラベル化される。当該マーカーは、二本鎖核酸と相互作用することが可能な色素と、ターゲット核酸が二本鎖核酸に結合する、即ちターゲット核酸がキャプチャプローブとハイブリダイズする際に、相互作用して蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)効果を与えるものである。この実施態様の利点は、Cy5及びSYBR Green1に関して説明されるが、本実施態様はこの具体的な組み合わせに限定されない。
キャプチャプローブは、Cy5でラベル化される。ハイブリダイズの結果、キャプチャプローブとターゲット核酸との二本鎖となる。結合されたDNAの二本鎖部分近くで他の部分よりも実質的により高い蛍光シグナルを与える、例えばSYBR Green1(520nm付近の緑色)であるインターカレーション型色素が存在することとなり、青色励起波長(例えば440から490nmの間)で照射することにより、SYBR Green1の励起状態の励起が生じる結果となる。SYBRGreen1の励起状態のエネルギは、効果的にCy5色素分子にFRET手段で伝達されることができる。FRETは、Cy5とSYBR Green1との距離に強く依存するため、FRETは本質的に、キャプチャプローブのCy5ラベルと十分近接するSYBR Green1分子との間でのみ生じる。SYBR Green1色素分子の励起と、SYBR Green1色素分子とCy5色素分子の結合プロセス(これはまたiFRETとされる)は、キャプチャプローブとハイブリダイズしたターゲット核酸の二本鎖に結合するSYBR Green1にのみ効果的である。iFRETにより生成されるCy5の励起状態は赤領域(約660nmのピーク)での蛍光を生じる結果となり、本質的に、Cy5でラベル化されかつターゲット核酸とハイブリダイズしたキャプチャプローブにおいてのみに存在する。一本鎖DNA、二本鎖であっても非特異的に結合したDNA及びバルク中に存在する一本鎖及び二本鎖DNAについては、本質的に赤色蛍光ピークを生じることはなく、従ってCy5ラベル化キャプチャプローブとハイブリダイズしたターゲット核酸を容易に識別することができる。
本発明の他の第二の側面において、本発明の方法は次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
本発明の第一の側面につき上で記載されたすべての側面、即ち、基板の特性、スポットの数、核酸配列の性質、サーマルサイクルステップ等、ハイブリダイゼーション及びそれらの検出については、本発明の第二の側面に適用され得る。本発明の第二の側面は、本発明の第一の側面とは、サンプル中の増幅されたターゲット核酸の濃度を測定するステップを追加する点である。
本発明において、「サンプル中の増幅されたターゲット核酸の濃度を決定する」とは、キャプチャプローブの上のPCR溶液中にある増幅されたターゲット核酸の濃度を意味し、即ち、通常「バルク濃度」と記載される濃度である。対照的に、基板上でキャプチャプローブとハイブリダイズした増幅されたターゲット核酸の濃度は通常表面濃度と記載される(上参照)。サンプル中で増幅される核酸配列の量を決定することがさらに次の利益を与える。すなわち、決定された濃度により、変性増幅ターゲット核酸の濃度とキャプチャプローブと、何時ハイブリダイズさせるか及び/又は増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイズの検出を何時開始するべきかを決定することが可能となる。
通常、キャプチャプローブ/ターゲット核酸二本鎖及びキャプチャプローブの濃度比は、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度と関連定数との積に等しいということは、ハイブリダイセーションアッセイで知られている。これらの関連定数は105l/s/Mのオーダーであり、この数値は、合理的な時間(数分)内でハイブリダイゼーション検出が通常少なくとも1nMの濃度で可能であることを意味する。
初期低濃度のターゲット核酸を増幅し、増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブのハイブリダイゼーションを実施し及びPCR反応のそれぞれのサーマルサイクル後にこのハイブリダイゼーションを検出するために使用されるPCR反応は、ある場合には、アレイ系リアルタイムPCR方法の全所要時間を不必要に延長することがあるであろう。むしろ望ましいことは、増幅ターゲット核酸がある閾値レベルの濃度であって、ハイブリダイゼーションがある時間枠内(例えば5−10分)で検出可能であると予想される濃度に到達したときに一度だけハイブリダイゼーションを開始し及び/又はハイブリダイゼーションの検出を行うことである。
従って、本発明による方法は、以下の追加のステップを含む。増幅されたターゲット核酸の濃度が決定され、この濃度に依存して、ターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションが開始され及び/又はその検出が開始される。
サンプル中の増幅ターゲット核酸の濃度測定に依存して、ハイブリダイゼーション(及び/又はその検出)を開始するべきかどうかの問題は、キャプチャプローブの性質に依存する。キャプチャプローブが、増幅に用いるプローブと、長さやヌクレイトド成分との点から大きく相違する場合、ハイブリダイゼーションの要求は、プライマのアニールの要求とは異なるであろう。かかる場合では、増幅ターゲット核酸とキャプチャプローブ核酸配列とのハイブリダイゼーションは、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度の決定によりある閾値に到達したことが明らかとなるまでは延期することが合理的であろう。しかしながら、キャプチャプローブ核酸配列とPCR増幅に用いるプライマがハイブリダイゼーション要求においてそれほど大きくは異ならない場合、ハイブリダイゼーションは、PCR反応のアニールステップの際にも生じる可能性があり、この場合サンプル中の増幅ターゲット核酸の濃度を決定して、その後ハイブリダイゼーションのみを開始するかを決定するために用いられることができる。
本発明の第二の側面のひとつの利点は、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度、即ちバルク濃度の決定及びキャプチャプローブ核酸配列とハイブリダイズされたターゲット核酸の濃度、即ち表面濃度の決定を、二本鎖核酸に特異的に相互作用することができる色素を用いて実施することができるということである。従って、異なる色素を用いることはかならずしも必要ではない。
当該技術分野の熟練者は次のことは明らかであろう。すなわち、増幅されたターゲット核酸配列の濃度決定は、既知濃度の既知ターゲット核酸を用いて本発明の第二の側面による方法の実施から得られる検量線の記録を含むということである。
ハイブリダイゼーション及び/又は増幅されたターゲット核酸のキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの検出のいずれかを開始させるべき閾値濃度は、サンプル中の増幅されたターゲット核酸の濃度が、ハイブリダイゼーション検出の検出限界を超えて増加した際に到達した際のものであり得る。
通常増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの低濃度検出限界は、少なくとも10pM、少なくとも50pM、少なくとも75pM、少なくとも100pM、少なくとも150pM又は少なくとも200pMである。
本発明の第三の側面は、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする;
d.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次のステップ、
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
e.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
f.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
g.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする;
d.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次のステップ、
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
e.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
f.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
g.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
本発明の第一及び第二の側面につき上で記載されたすべての側面、即ち、基板の特性、スポットの数、核酸配列の性質、サーマルサイクルステップ等、ハイブリダイゼーション及びそれらの検出については、本発明の第三の側面に適用され得る。
本発明の第三の側面はさらに、本発明の第二の側面及び本発明の第一の側面のさらなる詳細である。二本鎖核酸に特異的に結合可能な色素を用いて、例えば基板の表面での非特異的な相互作用によるバックグラウンドを減少させることができる。サンプル中での増幅されたターゲット核酸の濃度決定により、増幅されたターゲット核酸配列とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの開始及び/又は検出することを、キャプチャプローブで検出されるべき十分な量のターゲット核酸の存在が予想される時点まで延期することが可能となる。本発明の第三の側面は、しかしながら、次の追加のステップを含む。即ち、PCR溶液に既知配列の二本鎖核酸(ポジティブコントロールターゲット核酸配列)及びコントロールプローブを添加することで、二本鎖核酸と特異的に相互作用することが可能な色素とは異なる波長で増幅されたコントロール核酸の検出を可能とする。
かかる内部コントロールを含むことは、特に、PCR反応が正しく進行しているかをチェックすることにもなる。さらに、実施例で示されるように、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能な色素から得られるシグナルが、それにもかかわらず、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度の決定にも使用できる。
さらに、本発明の第三の側面で使用するコントロールプローブは、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを有する。これらのラベルは、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)により検出され得るものを選択されることができる。
上で説明した通り、本発明の第二及び第三の側面の特に好ましい実施態様においては、キャプチャプローブは、さらに蛍光マーカーでラベル化される。このマーカーは次のように選択される。すなわち、二本鎖核酸と相互作用可能な色素と相互作用することができ、この色素が二本鎖核酸と結合する際、即ちターゲット核酸がキャプチャプローブとハイブリダイズする際に、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)を生じるものである。この実施態様は、Cy5とSYBR Green1との組み合わせで説明されてきたが、実施態様はこの特別の組み合わせに限定されるものではない。
第二、第三の側面において、インターカレーションSYBR Green1色素はまた、バルク中でのPCR反応のモニタにも使用でき、Cy5の赤色蛍光シグナルは、あるターゲットへの特定のキャプチャプローブとあるスポットでのハイブリダイズDNAの量を決定するために用いることができる。
特に好ましくは、プローブが、FRETにより、及びかかるプローブがポリメラーゼ連鎖反応で用いられて分解された位置で検出されることが可能である少なくとも2つの蛍光ラベルを持つことである。このようなタイプのプローブは通常いわゆる「Taqmanプローブ」と言われている。Taqmanプローブは、ターゲット核酸とハイブリダイズする。しかしPCRの際のプライマ伸張の際、Taqmanプローブは分解されFRETシグナルを消失する。コントロールプローブの蛍光ラベルが、二本鎖核酸配列に特異的に結合され得る色素と異なる波長で発光する場合、コントロールターゲット核酸へのPCR反応は、2つのシグナルで追跡可能となる。即ち色素の挿入と、例えばTaqmanプローブの分解である。加えて色素は、異なる核酸配列増幅からの結果の二本鎖核酸に挿入される。従って、色素から生成されるシグナルは、コントロールターゲット核酸配列と同様に未知のターゲット核酸配列をも意味するであろう。一方例えばTaqmanであるコントロールプローブにより生成されるシグナルは、コントロールターゲット核酸配列のみを意味するであろう。
実施例5(図8及び9参照)に示されるように、コントロールプローブシグナルから決定される閾値濃度は、色素から生成されるシグナルに対応する。色素からの全シグナルが、その後コントロール核酸配列からの色素シグナルにつき補正されると、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度、即ちターゲット核酸配列バルク濃度が得られ、かつこの濃度に基づいてターゲット核酸配列とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーション及び/又はハイブリダイゼーションの検出につき決定することが可能となる。
この技術分野の熟練者は、他のコントロールプローブもまた同じ目的で使用することができることは理解できるであろう。従ってコントロールプローブは、少なくともひとつの蛍光ラベルとひとつのクエンチングラベルを含むことができる。例えば、さそり型プライマ(scorpion primers)、Luxプライマ又は分子ビーコンプローブ(molecular beacon)である。そのようなプローブは、ある場合にはまた、Taqmanプローブとして記載される。
本発明は、以下本発明の好ましい実施態様に関する実施例により説明される。これらの実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
実施例1
以下の実施例では、バックグラウンドシグナルの効果を示す。
以下の実施例では、バックグラウンドシグナルの効果を示す。
図2は、アレイ系のPCRを、例えばDNAターゲット配列のために蛍光ラベルを含むプライマを用いて実施される際のステップを模式的に示す。a)は、伸張ステップを示し、b)は変性ステップを示し及びc)はアニール/ハイブリダイゼーションステップを示す。ステップc)の間、プライマは一本鎖DNAとアニールし、一方増幅産物はキャプチャプローブとハイブリダイズする。さらに、プライマ及び/又は増幅産物は、例えばキャプチャプローブスポットの外側で非特異的に結合してバックグラウンドシグナル(図示されていない)を導くであろう。
実施例は、かかるバックグラウンドの程度と性質を決定するために実行された。
最初に、標準PCRをターゲット核酸DNA及びラベル化されていない前方プライマとCy5ラベル化された後方プライマを用いて行った。得られたPCR生成物を希釈して最終的に5nM a1xマスタミックスとした。
平行して、ターゲット核酸配列と正確に相補的なキャプチャプローブを、Superamine2ArreyItマイクログラススライド上に堆積させた。キャプチャプローブは、その5’末端に16のチミン尾部を持つ。プリント後、400mJ/cm2の254nmUVで露光し、続いて過剰のプローブを5xSSC、0.1%SDS及び0.1mg/mlンシンスペルムDNAで洗浄した。その後スライドを水で軽くリンスし30分間オーブン中で乾燥した。
その後、PCRサンプルをPCR緩衝液中でキャプチャプローブと、46℃で一時間ハイブリダイゼーションさせた。
シグナル検出は、共焦点スキャニングを用いて行った。図3a)は、キャプチャプローブスポットとそれらのスポット周りのバックグラウンドシグナルを示す。
光学スポットの位置が固定されたところのバックグラウンドの性質を決めるため、消光実験をその後実施した。蛍光シグナルがその後このスポットでの時間の関数として測定された。
この実験は、非特異的にマイクロスライド上に固定化された蛍光ラベル化プライマ(いわゆる表面バックグラウンド)及び、全測定中スポットに焦点されている蛍光ラベル化プライマは消光される一方、溶液中のラベル化プライマはスポットの焦点にはほんの短い時間のみ存在し、絶えず拡散で入れ替わっている(いわゆる容積バックグラウンド)ということに解釈される。これらの拡散可能なプライマによるバックグラウンドシグナルは、従って永久消光ではない。その結果、スポットの測定の直後の蛍光シグナルは、表面及び容積バックグラウンドの和に比例する。一方消光曲線のベースラインは、容積バックグラウンドにのみ依存する。
この実験から、バックグラウンドの3/4が表面バックグラウンドであることが決定された(図3b参照)。
実施例2
次の実験は、二本鎖核酸に特異的である色素は、色素の非特異的結合及び/又は基板表面へキャプチャプローブとハイブリダイズしない核酸により、低いバックグラウンドシグナルであることを示すために行われた。
次の実験は、二本鎖核酸に特異的である色素は、色素の非特異的結合及び/又は基板表面へキャプチャプローブとハイブリダイズしない核酸により、低いバックグラウンドシグナルであることを示すために行われた。
2つのタイプのキャプチャプローブを持つスポットのアレイが、ArrayItアミノ修飾ガラス基板にプリントされた。ひとつのキャプチャプローブは、配列5’−ACTTTTACTGGAGTCGTCGA−3’(SEQ ID NO.:1)及び他のキャプチャプローブは、配列5’−TTTTTTTTTTTTTTTTAAGGCACGCTGATATGTAGGTGA−3’(SEQ ID No.:2)であった。
このアレイを用いて、10nMの配列5’−TCGACGACTCCAGTAAAAGT−3’(SEQ ID No.:3)(これは最初のキャプチャプローブと完全に相補的である)をハイブリダイズさせた。この実験のセットアップにより、アレイ上の液中には二本鎖DNAは存在せず、従って、バックグラウンドとスポットでのシグナルの違いは、色素によるddDNAに対するssDNAについての特異性の違いによることが予想された。最悪の事態を再現するためにハイブリダイゼーションを室温で実施した。この条件では非特異的表面バックグラウンドが最も高くなるであろうと考えられるからである。ハイブリダイゼーション条件は一夜室温であった。
これらの実験には共に、表面特異的検出を保証するために共焦点スキャニング顕微鏡を用いた。SYBR Green1を用いる実験のために、Arレーザー線488nmが励起光源として使用された。蛍光は500−600nmの波長範囲で検出された。
図4は、室温で一夜ハイブリダイゼーションさせた後のSEQ IDNo.:1のスポット及びSYBR Green1色素についての例を示す。
スポット及びバックグラウンドのコントラスト値は000倍よりも高かった。このことは明らかに、SEQ IDNo.:3の結合表面での非特異的結合は蛍光シグナルに対して非常に小さな寄与しかないことを示す。
スポット及びバックグラウンドのコントラスト値は000倍よりも高かった。このことは明らかに、SEQ IDNo.:3の結合表面での非特異的結合は蛍光シグナルに対して非常に小さな寄与しかないことを示す。
蛍光シグナルはまた、ネガティブコントロール(即ちSEQ ID No.:2)と比較された。これから、ハイブリダイゼーションスポットの蛍光シグナルは、ネガティブコントロールの蛍光シグナルよりも約16倍であることが結論できる。ネガティブコントロールの蛍光は、主にSEQ ID No.:3の、E.Coliキャプチャプローブ(即ちSEQ ID No. 2)への非特異的結合による。
実施例3
次の実験は、例えばインターカレーション型」色素SYBR Green1である二本鎖核酸に特異的に相互作用できる色素が、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度を決定するために使用できることを示す。
次の実験は、例えばインターカレーション型」色素SYBR Green1である二本鎖核酸に特異的に相互作用できる色素が、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度を決定するために使用できることを示す。
実験は、2つのターゲット配列と2つのターゲット用の異なるプライマを用いて行った。300nMの前方及び後方プライマが含まれていた。ひとつのターゲットのために200nMのTaqmanプローブが含まれていた。このTaqmanプローブは、蛍光レポータ(ヤキマ(Yakima)黄色)を5’末端に、またクエンチャー(ブラックホールクエンチャ(Black hole quencher))を3’末端に有する。異なる量のインプットテンプレート濃度を用いた。PCRはサーマルサイクラーを用いて行った。SYBRの緑色とヤキマ黄色をシグナルを共に測定した。
3つの異なるアプローチをリアルタイムPCR検出で行った。
1.単一のウェルにSYBR Green1のみを添加して測定
2.単一のウェルにヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブのみを添加して測定
3.単一のウェルに、SYBR Green1とヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブを添加して測定
シグナルはPCR中、市販サーマルサイクラー、Applied Biosystem7300及びSDSソフトウェアを用いて記録した。閾値レベルは、ソフトウェアの示唆に従って設定した。濃度決定のために、次の検量実験を実行した。
1.単一のウェルにSYBR Green1のみを添加して測定
2.単一のウェルにヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブのみを添加して測定
3.単一のウェルに、SYBR Green1とヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブを添加して測定
シグナルはPCR中、市販サーマルサイクラー、Applied Biosystem7300及びSDSソフトウェアを用いて記録した。閾値レベルは、ソフトウェアの示唆に従って設定した。濃度決定のために、次の検量実験を実行した。
図5は、インプット濃度の関数として閾値サイクル数を与える。検出にSYBR Green1のみ又はYYのみを用いた場合の実験から、SYBR Green1の閾値サイクル数(Ct)は、YYのそれよりもわずかに低かった(1.5サイクル)。SYBR Green1及びYY−Tamanプローブを共にPCR反応(「組合せ」)に用いた場合に得られたシグナルは、混合物の個々色素による結果を与える。
組合せ実験でのシグナルと単一での実験とを比較すると、YY−TaqmanプローブとSYBR Green1との干渉は小さいことがわかる。SYBR Green1のCtは、約2.0に増加し、一方YYシグナルのCtは約1.3増加する。これらの数はインプット濃度に依存せず、このために補正が可能であることを意味する。
従って、SYBR Green1及びYYとの間には一定の相違があり、補正することが可能である。それぞれに対する色素には限定的な影響のみ存在する。
両方のラベルが同様の結果を与えることから、増幅されるターゲット核酸のバルク濃度の測定のために、例えばインターカレーション型色素である二本鎖核酸に特異的な色素を用いることができることが明らかである。
仮定的実施例4
この仮定的実施例は、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能である色素からの波長とは異なる蛍光検出を可能とするコントロールプローブを、キャプチャプローブでのハイブリダイゼーション検出を何時行うべきであるかを決定するために、どのようにして使用することができるかを示す。
この仮定的実施例は、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能である色素からの波長とは異なる蛍光検出を可能とするコントロールプローブを、キャプチャプローブでのハイブリダイゼーション検出を何時行うべきであるかを決定するために、どのようにして使用することができるかを示す。
図6は、この仮定的実施例を示す。この場合、高インプット濃度(106cp/μl)の既知の二本鎖核酸(コントロール核酸、この反応は品質管理(QC)アッセイと呼ばれる)及び低インプットのターゲット核酸(102cp/μl)のPCR曲線についての例が与えられる。
「全バルクシグナル」と印される線では、インターカレート色素SYBR Breen1の全シグナルが与えられており、測定されることができる。このシグナルは、増幅ターゲット核酸及びコントロール核酸の和である。コントロール核酸の全濃度のみ、Taqmanプローブにより特異的に測定されることができ(「QCアッセイシグナル」)、SYBR Green1に比べて異なる波長で検出されることができる。その後、ターゲット核酸のみのシグナルが、ターゲット核酸とコントロール核酸両方のシグナル(「全バルクシグナル」)を、コントロール核酸のシグナル(「QCアッセイシグナル」)で補正して得られ、これにより所定のシグナルが得られる(「検出されるべきターゲット」)。絶対濃度は、適正な検量処理を用いて決定される。
この情報は、表面検出を用いる場合に特定するために使用することができる。増幅産物のキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションは比較的遅い。表面特異的検出が検出限界よりも上でのみ行うことができる場合には、PCRはできるだけ迅速に行うことができる(表面特異的検出を検出限界以下に残す)。バルク検出により、ターゲット核酸濃度を測定することができ、かかる濃度が検出限界以上となるときを結論できる。同時に品質管理アッセイは、PCR反応が実際に作用したことにつき独立した読出し情報を提供する。
図7は、図6の拡大図である。
理論的検出限界10−7任意単位が与えられている。全バルクシグナル(ターゲット核酸及びコントロール核酸)はサイクル17で検出限界に到達する。しかし、ターゲット核酸濃度は、サイクル31付近で検出限界に到達する。これは、バルクシグナルに基づくと、表面特異的検出はサイクル18から開始されることを意味する。しかし、表面上のスポット(マイクロアレイ)で検出可能なシグナルを実際に与えるにはさらに13サイクルを要する。従ってこの決定が補正されたシグナルシグナル(「検出されるべきターゲット」)に基づくものであるならば、表面特異的検出が開始される。このことは、総PCR/ハイブリダイゼーションに要する時間を十分に短縮させる。通常ハイブリダイゼーション/検出測定に5分を要するとすると、このことは総リアルタイムアレイPCR反応を70分短縮することになる(31−17=14サイクル、ハイブリダイゼーション/検出測定に約5分とすると=70分)。
実施例5
内部コントロールの使用を証明するために、次の実験を行った。
内部コントロールの使用を証明するために、次の実験を行った。
それぞれのターゲットにつき特定のプライマを用いた2重PCRを実施した。ひとつにインプットDNAは、内部コントロールを表す(常に同じインプット濃度、104コピー/μl)。他のインプットDNAはターゲット核酸を表す(インプット濃度は、101−105コピー/μlの範囲で可変)。増幅内部コントロールの検出のために、ヤキマ黄色色素(Yakima Yellow−dye)とクエンチャーを含むTaqmanプローブをサンプルに含めた。増幅された内部コントロール及びターゲット核酸DNAは共に、SYBR Green1を用いて測定された。
図8は、YYについて測定された結果を与える。再び、閾値サイクル数は上で設定されたように決められた。総インプット濃度(即ち内部及びターゲット核酸インプットDNA)と内部コントロールの閾値サイクル数とは関係しない、ということが明らかである。このことは、内部コントロールは同じサイクル数を有することを意味し、これはPCRの内部コントロールとして使用することかできることを意味する。
実験は、内部コントロールを含むことは、二本鎖核酸に特異的である色素(例えばSYBR Green1であるインターカレーション型の色素)を用いた際にもシグナル曲線の形状は変わらないこと、を示す。このことは、コントロール配列をPCR効率を保証するために使用することができ、また同時に色素のシグナル形状を、コントロールプローブにより生成されるシグナルにつき補正することだけで、ターゲット核酸濃度を決定するために使用することができる、ことを意味する。
本発明は、二本鎖核酸に特異的な色素を用いて、一つの反応で対象となる複数の核酸の増幅(マルチプレックス)のリアルタイム検出を可能とする方法を提供する。
非常に少量の核酸を検出し増幅するための技術は現代の分子生物学及び生化学研究においては必要欠くべからざるものである。この技術は、例えば疾患の診断及び検出、法医学、DNA配列及び再構成DNA技術において用いられている。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用は、特定の核酸配列の増幅のための迅速かつ便利な方法を提供する。当該技術は熱安定DNAポリメラーゼを用いる核酸の複製に基礎を置く。
基本的なPCRの準備には、いくつかの成分と試薬を必要とする。変性核酸サンプルは、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド及び2つのオリゴヌクレオチドプライマとインキュベートされる。これらのプライマは、増幅されるべき核酸フラグメントに結合し、DNAポリメラーゼが新たな相補鎖を合成する方向を決めるように選ばれる。
PCRは通常、即ち決められた一連の温度ステップでPCRサンプルを加熱と冷却を交互に適用するサーマルサイクルを含む。最も普通のPCRは、3つの異なる温度ステップを含む20−40サイクルが実行される。反応の最初のステップは、二本鎖核酸の相補的塩基間の水素結合を切って核酸テンプレートを融解させるために加熱(例えば94−98℃)される(変性ステップ)。次に、反応温度を使用するプライマの融解温度(例えば50℃−65℃)に低下させてプライマが、核酸テンプレートの一本鎖の相補的塩基配列にアニーリングさせる(アニーリングステップ)。第3ステップでは、DNAポリメラーゼが当該テンプレートの5’から3’方向に相補的なヌクレオチドを追加して新たな核酸鎖を合成する(増幅ステップ、例えば72℃で実行される)PCRが進行するにつれて、生成された核酸自体が複製のためのテンプレートとして作用する。これにより連鎖反応が起こり、核酸テンプレートが指数関数的に増幅される。PCRの約20サイクル増幅で、ターゲット配列は、高い特異性を持ち約百万倍の量に増加する。しかしながら、このPCR法は、最良でも準定量的であり、多くの場合生成物の量は投入したターゲット核酸の量とは関連しない。
いくつかの応用においては、例えば診断法や遺伝子発現研究では、増幅の際に増幅される核酸の増幅量をモニタすることが望ましい。これは、かなり最近導入された方法であり、「リアルタイムPCR]と呼ばれている定量的PCR法により達成可能である。この方法は通常のPCR法の一般的原理に従うものであり、それぞれのPCRサイクルで増幅される際に増幅された核酸をリアルタイムで定量化するものである。定量化は通常蛍光測定で行われる。PCRに際し核酸の増幅は蛍光強度の増加をもたらし、また所定の回数のサイクル又は各サイクルで測定されてそれにより核酸濃度の定量化を可能とする。
PCR反応が指数関数的増幅の際に存在する核酸の濃度は、例えば対数目盛り上のサイクル数に対してプロットすることで検出できる。核酸の量はその結果と、既知の量の核酸について一連の希釈液のリアルタイムPCRにより生成される標準曲線とを比較することで決められる。指数関数的増幅の際に存在する核酸の相対的濃度はまた例えば、バックグラウンド上の蛍光の検出閾値を決定し、サンプルのサイクル閾値に基づく核酸の相対的量を計算することにより計算される。
通常、上で説明したリアルタイムPCR法は、溶液中で実行される。この従来のリアルタイムPCRの欠点は、複数の核酸を平行(マルチプレックス)に検出するために適用することができないということである。というのは、種類が異なり、重ならない蛍光色素を異なるターゲット核酸に対して用いる必要があるからである。リアルタイムPCRのマルチプレックスPCRへの応用は、マルチプレックスPCRを実行しかつアレイ上の増幅されたターゲットを検出することで達成可能である。しかし、マルチプレックスPCRを実行しかつアレイ上の増幅されたターゲットを検出することにはそれ自体問題がある。その一部は、シグナル位置を決めることを阻害するバックグラウンドシグナルから生じるものである。
従って当該技術分野において、マルチプレックスリアルタイムPCR検出を可能とする新規方法開発への持続的な要求が存在する。
本発明は、1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅を同時にモニタする簡便かつ効果的な方法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をリアルタイム条件で、同時にモニタする簡便かつ効果的な方法を提供することを課題とする
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなる本発明のこれらの課題は、独立請求項の主題とされている。いくつかの好ましい実施態様については従属請求項により定義されている。
本発明の第一の側面は、請求項1による方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含み、前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度がハイブリダイゼーション検出の検出限界よりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施する、方法に関する。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含み、前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度がハイブリダイゼーション検出の検出限界よりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施する、方法に関する。
さらにより好ましい第二の側面において、本発明は請求項1による方法に関し、ステップb.とステップc.の間にさらに次のステップ:
前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする、を含むものである。
前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする、を含むものである。
好ましくは実施態様において、前記第一の側面のステップ(d)及び前記第二の側面のステップ(e)による前記サンプル中の前記増幅されるターゲット核酸の濃度の決定は、増幅されたターゲット核酸に結合する二本鎖核酸に特異的に相互作用することができる色素から生成される前記シグナルを測定することでなされる。濃度の決定は、既定濃度の前記知られたターゲット核酸を用いて前記第二の側面の方法を実施して得られるキャリブレーションカーブを記録することを含んでいてよい。
本発明のこの後者の応用の好ましい実施態様においては、ハイブリダイズの検出は、前記第一及び第二の側面のステップd.及び前記第二の側面のステップf.による前記サンプル中の前記増幅されるターゲット核酸配列の濃度決定が、前記増幅されるターゲット核酸が、少なくとも10pMより多く、好ましくは少なくとも約50pMより多く及びより好ましくは少なくとも約100pMより多いことが明らかな場合に、実施され得る。
本発明の第二の側面の好ましい実施態様において、前記コントロールプローブは、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを持つ。この実施態様の応用において、前記コントロールプローブの蛍光ラベルは、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)により検出されるように選ばれている。本発明のさらなる実施態様において、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを有する前記コントロールプローブは、ポリメラーゼ連鎖反応において使用されるポリメラーゼにより分解されるように選択される。そのようなコントロールプローブは、Taqmanプローブである。
本発明の第二の側面のさらに好ましい実施態様は、前記コントロールプローブが少なくとも1つの蛍光ラベルを有し及びもうひとつがクエンチャーラベルを有する。そのようなプローブは、スコピオンプライマ(scorpion primer)、ルックスプライマ(lux primer)又は分子ビーコン(molecular beacon)を含む群から選択されることができる。
本発明の第一から第二の側面の関する好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、複数の異なるターゲット核酸配列に特異的に結合することができる。
本発明の第一から第二の側面の関する好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、前記基板上にスポットを含むアレイを形成するように設けられており、それぞれのスポットは、既定配列の多数の核酸キャプチャプローブを含む。
好ましい実施態様のさらなる態様は、前記アレイのスポットのいくつか又は全てがお互いに相違し、それらの核酸キャプチャプローブが異なるターゲット核酸に特異的に結合する。
本発明の上で説明した実施態様のすべてにおいて、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な色素は、インターカレータ型色素、好ましくはSYBR Green1、EtBr及びPicogreenを含む群から選択される。
本発明の上で説明した他の好ましい実施態様において、増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイズの検出は、エバネッセント波検出系を用いる場合では基板表面から約100nmから約300nmの距離で、又は共焦点検出系を用いる場合では基板から約1μmの距離内でシグナルを検出することでなされる。
本発明の上で説明した側面の他の好ましい実施態様において、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能であり、キャプチャプローブと増幅ターゲット核酸とのハイブリッドに結合している色素により生成されるシグナルが、少なくとも2回のサーマルサイクルの際又は後、15回のサーマルサイクルの際又は後、少なくとも20回のサーマルサイクルの際又は後又は少なくとも25回のサーマルサイクルの際又は後で測定される。本発明の上で説明した側面の他の好ましい実施態様においては、本発明の第一及び第二の側面のステップc.及び第二の側面のステップd.は、約5から50回のサーマルサイクルを含む。
本発明を以下詳細に説明する前に、本発明はここで記載される特定の方法、プロトコル及び試薬に限定されるものではないことが理解されるべきである。ここで用いる用語は、特定の実施態様を説明するためだけを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されるということもまた理解されるべきである。特に定義されない限り、ここで使用される全ての技術的、科学的用語はこの技術分野の熟練者にとって通常理解されるものと同じ意味を有する。以下の定義が導入される。
この明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「ひとつの」はまた、文脈から明確に指示されない限り、それぞれの複数をも含む。
用語「含む」及びその変形用語、例えば「からなる」及び「有する」は、限定するものではない。本発明の目的において、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施態様として理解されるべきである。以下で、群が、ある数の実施態様を含むように定義されている場合、このことは、好ましくはこれらの実施態様のみを含む群を包含することを意味する。
用語「核酸」又は「核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマで、一本鎖又は二本鎖の形を示す。また知られた天然ヌクレオチドの類似体であって天然ヌクレオチドと同様の方法で機能するものも含む。
ここで使用される用語「ラベル」は、検出を可能とする性質又は特性を有する分子又は基を意味する。ラベルの例は、インターカレート型色素、蛍光色素、化学発光色素、蛍光マイクロ粒子などである。
用語「ターゲット核酸」は、しばしば生体サンプルから得られる核酸を意味し、基板上の核酸キャプチャプローブが特異的にハイブリダイズ可能か又は潜在的にハイブリダイズ可能なものを意味する。ターゲット核酸は、本質的にいかなる出発核酸からも得られるものである(例えば限定されるものではないが、化学合成物、増幅反応物、法医学サンプルが挙げられる)。
1又はそれ以上のターゲット核酸が存在するか又は存在しないか、の検出又は1又はそれ以上のターゲット核酸の量の定量化がここで開示される方法により可能となる。ターゲット核酸は好ましくは、特異的に結合可能な対応するキャプチャプローブの核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を含むものである。しかし、1又はそれ以上のターゲット核酸の存在の有無を検出する場合については、用語「ターゲット核酸」はまた、基板上のキャプチャプローブと潜在的にハイブリダイズ可能な問題のサンプルに存在する核酸を意味する。
1又はそれ以上のターゲット核酸が存在するか又は存在しないか、の検出又は1又はそれ以上のターゲット核酸の量の定量化がここで開示される方法により可能となる。ターゲット核酸は好ましくは、特異的に結合可能な対応するキャプチャプローブの核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を含むものである。しかし、1又はそれ以上のターゲット核酸の存在の有無を検出する場合については、用語「ターゲット核酸」はまた、基板上のキャプチャプローブと潜在的にハイブリダイズ可能な問題のサンプルに存在する核酸を意味する。
ターゲット核酸は例えば、遺伝子、DNA,cDNA、RNA、mRNA又はそれらの断片であり得る。
ここで使用される用語「核酸キャプチャプローブ」とは、特定のオリゴヌクレオチド配列であって、ターゲット核酸配列に相補性によりハイブリダイズすることができるものを意味する。通常かかる核酸キャプチャプローブの長さは、約10から約1000ヌクレオチド、約10から約800ヌクレオチド、約10から約500ヌクレオチド、約15から約400ヌクレオチド、約15から約300ヌクレオチド、約15から約200ヌクレオチド、約20から約150ヌクレオチド、約20から約100ヌクレオチド、約20から約90ヌクレオチド、約20から約80ヌクレオチド、約20から約70ヌクレオチド、約20から約60ヌクレオチド又は約20から約50ヌクレオチドである。通常かかる核酸キャプチャプローブ分子は、約20、30、40、50、60、70ヌクレオチドの長さを持つ。
ここで使用される用語「マルチプレックス」とは、興味のある多くの核酸を一組のプライマよりも多くのプライマを用いて、ひとつの反応で同時に増幅させることができるプロセスを意味する。
用語「バックグラウンド」、「バックグラウンドシグナル」、「バックグラウンド蛍光」とは、ターゲット核酸、キャプチャプローブとの非特異的結合又は例えば自己蛍光分子又は基板などの他の成分との相互作用により生じるシグナルを意味する。バックグラウンドシグナルはまた例えば、基板本来の蛍光やその部品によるもの、又は基板上の溶液に存在するあらゆる非結合分子による可能性がある。
ここで使用される用語「増幅産物」とは、例えばPCRやその他の核酸増幅に適した方法による核酸増幅の生成物を意味する。ひとつの実施態様においては、増幅産物の長さは、100から800塩基、好ましくは100から400塩基、より好ましくは100から200塩基である。
ここで記載される核酸キャプチャプローブ又はいかなる他の核酸分子が、ターゲット核酸又はいかなる他の核酸配列の「特異的」であるとされる場合、又はターゲット核酸又はいかなる他の核酸配列の「特異的に」結合するとされる場合には、これは、好ましい結合、二本鎖化又は前記キャプチャプローブ又はいかなる他の核酸分子と特定のヌクレオチド配列とのストリンジェントな条件でのハイブリダイズを意味する。用語「ストリンジェントな条件」とは、プローブがそのターゲット核酸と強く好ましく結合するが、他の配列とはあまり結合しないか全く結合しない条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境で異なるものである。
本明細書においては、ストリンジェントな条件は、特定のイオン強度及びpHで特定の配列について熱融解点(Tm)よりも約5℃低いように選ばれる。Tmは、平衡状態でターゲット核酸と相補的なプローブの50%がハイブリダイズする温度である(特定のイオン強度、pH及び核酸濃度の下で)。例えばストリンジェントな条件は、塩濃度が少なくとも約0.01から1.0MのNaイオン(又は他のイオン)濃度で、pHが7.0から8.3及び温度が少なくとも約30℃(短いプローブで例えば10から50ヌクレオチドの場合)である。ストリンジェントな条件はホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成されてもよい。
ここで使用される核酸の量又は濃度の用語「定量化」とは、絶対的又は相対的定量化を意味する。絶対的定量化は、例えば既知濃度の1又はそれ以上のターゲット核酸(コントロール核酸)を含め、未知の濃度のターゲット核酸のターゲット核酸シグナル強度を、既知の濃度のターゲット核酸と参照させる(例えば標準曲線を作成して)ことで達成することが可能である。相対的定量化は、例えば2又はそれ以上のターゲット核酸のシグナルを比較することで達成することが可能である。
「二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な色素」とは、二本鎖核酸と相互作用が可能で、一本鎖核酸又は核酸とは異なる物質に伴う場合よりもより強い強度のシグナル、好ましくは蛍光シグナルを与えることができるラベル分子を意味する。 かかる色素の例は、例えばDNAの二本鎖核酸の塩基間にインターカレート可能な色素である。そのような色素の例として、SYBR Green1,EtBr,SYTOX Blue,SYTOX Green,SYTOX Orange,POP−I,BOBO−I,YOYO−I,TOTO−I,JOJO−I,POPO−2,LOLO−I,BOBO−I,Y0Y0−3,TOTO−3,PO−PRO−I,BO−PRO−I,TO−PRO−I,JO−PRO−I,PO−PRO−3,LO−PRO−I,BO−PRO−3,YO−PRO−3,TO−PRO−3,TO−PRO−5,SYTO40青色−蛍光核酸色素,SYTO41青色−蛍光核酸色素,SYTO42青色−蛍光核酸色素,SYTO43青色−蛍光核酸色素,SYTO44青色−蛍光核酸色素,SYTO45青色−蛍光核酸色素,SYTO9緑色−蛍光核酸色素,SYTO10緑色−蛍光核酸色素,SYTO11緑色−蛍光核酸色素,SYTO12緑色−蛍光核酸色素,SYTO13緑色−蛍光核酸色素,SYTO14緑色−蛍光核酸色素,SYTO15緑色−蛍光核酸色素,SYTO16緑色−蛍光核酸色素,SYTO20緑色−蛍光核酸色素,SYTO21緑色−蛍光核酸色素,SYTO22緑色−蛍光核酸色素,SYTO23緑色−蛍光核酸色素,SYTO24緑色−蛍光核酸色素,SYTO25緑色−蛍光核酸色素,SYTO26緑色−蛍光核酸色素,SYTO27緑色−蛍光核酸色素,SYTO BC緑色−蛍光核酸色素,SYTO80橙色−蛍光核酸色素,SYTO81橙色−蛍光核酸色素,SYTO82橙色−蛍光核酸色素,SYTO83橙色−蛍光核酸色素,SYTO84橙色−蛍光核酸色素,SYTO85橙色−蛍光核酸色素,SYTO86橙色−蛍光核酸色素,SYTO17赤色−蛍光核酸色素,SYTO59赤色−蛍光核酸色素,SYTO61赤色−蛍光核酸色素,SYTO17赤色−蛍光核酸色素,SYTO62赤色−蛍光核酸色素,SYTO63赤色−蛍光核酸色素,SYTO64赤色−蛍光核酸色素,アクリジンホモダイマ,アクリジンオレンジ,7−AAD(7−アミノ−アクチノマイシンD),アクチノマイシンD,ACMA,DAPI,ジヒドロエチジウム,エチジウムブロミド,エチジウムホモダイマ−1(EthD−1),エチジウムホモダイマ−2(EthD−2),エチジウムモノアジド,ヘキサジウムイオダイド,Hoechst33258(ビス−ベンズイミド),Hoechst33342,Hoechst34580,ヒドロキシスチルバミジン,LDS751又はかくNuclear yellowが挙げられる。これら全ての化合物は、例えば、Invitrogen GmbH,Germanyから入手可能である。本発明の目的の好ましい色素は、SYBR Green1及びピコグリーン(picogreen)である。
この技術分野に知られているように、キャプチャプローブが堆積されるアレイ上でPCR反応を実施することは、大きなバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある。通常例えばPCR条件は、蛍光ラベル化プライマを用いて行われる。増幅産物はその後固定化されたキャプチャプローブとハイブリダイズされて検出される。
しかし、PCR溶液がハイブリダイズの前に除かれない場合には、伸張しなかったラベル化プライマは、アレイ基板に非特異的に吸着されてバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある。
本発明はある程度において、アレイ系リアルタイムPCR(即ちマルチプレックスリアルタイムPCR)の際に二本鎖と特異的に相互作用することができる色素を用いることで、他の方法で知られているよりもより優れたシグナル対ノイズ比を達成することができるという知見に基づくものである。何ら理論にしばられることを意味するものではないが、以下のことが考えられる。二本鎖核酸に結合されるとシグナル強度が増加するという点から、二本鎖核酸に特異的に結合することができる色素を使用して、増幅されるターゲット核酸と固定化されたキャプチャプローブとのハイブリッドに結合する色素のシグナルを、キャプチャプローブが固定されている基板表面近くで測定することで、より優れたシグナル対ノイズ比を得ることガ可能となる、ということである。
本発明の第一の側面は、従って1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をモニタする方法に関し、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む。
本発明で使用する基板は、いかなる形状であってもよい。基板は例えば、平面形状又は球面状(例えばビーズ)であってよい。それはまた、粒子、ひも、シート、チューブ、球、容器、キャピラリ、板、顕微鏡スライド、ビーズ、膜、フィルタ等の形であってよい。
好ましい実施態様においては、基板は平面で固体である。本明細書の文脈で、固体とは、基板が実質的に非圧縮性であることを意味する。適切な材料には、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、シリカ、金属又はポリマが含まれる。ひとつの実施態様においては、基板は磁気性であってよい。
好ましい実施態様において、ポリマ及び/又はガラス表面が使用される。基板に適したポリマは例えば、環状オレフィンポリマ(COP)又は環状オレフィンコポリマ(COC)である。
好ましくは、基板は熱的に安定であり(例えば100℃まで)、PCRで使用される通常の温度条件に耐えることができるものである。さらに好ましくは、基板はキャプチャプローブを付加する修飾を可能とするものである。キャプチャプローブは好ましくは基板上に共有結合により固定化される。
キャプチャプローブ及び/又は基板表面は、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ホスファート、アルデヒド又はアミノ基の官能基により修飾され得る。
ひとつの実施態様においては、キャプチャプローブと基板を結ぶする化学リンカーを、基板にキャプチャプローブを共有結合的に付着させるために使用してもよい。例えば核酸キャプチャプローブを基板に付着させるためにチミン尾部(thymine tail)がリンカーとして使用できる。チミン尾部は、例えば約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20又は20よりも多いチミンを含む。好ましい実施態様においては、チミンリンカーは、16チミンを含む。ひとつの好ましい実施態様においては、リンカーはさらに、チミン尾部とキャプチャプローブとの間に位置する脱塩基サイトを含んでいてよい。例えばそのようなリンカーは、1から20の脱塩基サイトを含むことができる。
一般的に、すべてのヌクレオチドリンカー又はすべての他のリンカーでこの技術分野の熟練者に知られたリンカーを使用することができる。リンカーが使用される場合、好ましくは、リンカーはキャプチャプローブの5’末端に付加される。
またキャプチャプローブは、サーマルサイクル条件で安定に付着しているならば、基板の表面に吸着されていてもよい。
キャプチャプローブは、一本鎖ヌクレオチド分子、例えば一本鎖DNA又はRNA分子であってよい。
本発明による方法がひとつの一本鎖ターゲット核酸の増幅をモニタするために使用される場合、基板表面に固定化された全ての核酸キャプチャプローブは同じターゲット核酸について特異的であってよい。しかし、本発明の方法は、好ましくは、複数の異なったターゲット核酸の検出のために使用される。従って好ましい実施態様においては、多数の核酸キャプチャプローブが、複数の異なるターゲット核酸と特異的に結合することができる。
ひとつの実施態様においては、基板上に固定化されたそれぞれのキャプチャプローブは、ひとつだけのターゲット核酸に特異的であってよい。または、基板上に固定化されたキャプチャプローブは一つ以上のターゲット核酸に対して特異的であってよい。
例えば個々のキャプチャプローブは、種々の相同性配列と特異的であってよい。ひとつの核酸キャプチャプローブは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い又は50より多いターゲット核酸に対して特異的であってよい。ひとつの核酸キャプチャプローブが1より多い(即ち数個)のターゲット核酸に対して特異的である場合、以下説明するように、これらのターゲット核酸が類似していることが好ましい。
ひとつのキャプチャプローブが、ひとつのターゲット核酸、例えば遺伝子、cDNA又はRNAと結合する場合、キャプチャプローブは、前記ターゲット核酸の翻訳領域の5’又は3’末端に特異的に結合することが好ましい。
翻訳領域(ORF)は、mRNA、cDNA又は遺伝子の一部分であり、前記mRNA、cDNA又は遺伝子のスタートコドン(又は開始コドン)とストップコドン(又は停止コドン)を含むそれらの間に位置する。ひとつのORFは通常、ひとつのタンパク質をコードする。従ってひとつのORFは、対応するタンパク質へリボソームにより変換される配列の一部であろう。
マルチプレックスにとっては、基板の表面を例えば、基板の異なる領域に固定化キャプチャプローブが位置するようにパターン化することが好ましい。従って本発明の好ましい実施態様において、多数のキャプチャプローブは、基板の分離された領域に位置させることが可能である。ここで「分離された領域」又は「空間的分離」とは、基板の表面で重ならない領域を意味する。「分離領域」は、基板上でお互いに接触するように又は基板表面にお互いが接触しないように配置されることも可能である。
好ましくは、分離領域は、独立してアクセス可能な領域であり、それはまた「スポット」と参照される。好ましい実施態様では、ひとつのスポットは少なくとも1、2、3、4、5、10、20,30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、5000、10000、100000又は少なくとも1000000キャプチャプローブを含む。それぞれのスポットが、正確に同じ数のキャプチャプローブを含む必要はないが、全てのスポットが同じ数のキャプチャプローブを有し、測定の際に全てのスポットのシグナルがお互いに比較できるようにすることが好ましい。例えば、基板の表面は、それぞれがハイブリダイズステップの際に検出されるために十分な数のキャプチャプローブからなる複数のスポットを含むことができる。
ひとつの実施態様において、固体基板は、約1、2、3、4、5、6、7−10、10−50、50−100、100−500、500−1000、1000−5000、5000−10000、10000−50000、50000−100000、100000−500000、500000−1000000又は1000000よりも多いスポットを含んでいてよい。 ひとつの実施態様においては、基板は、cm2あたり、4から100000スポット及び好ましくは20から1000のスポットを含んでいてよい。
好ましくは、スポットの直径は50から250μmである。さらに好ましい実施態様では、スポットの直径は、直径50から90μm、90から120μm、120から150μm、150から180μm、180から200μm、200から220μm、又は220から250μmである。
さらに好ましくは、スポットのピッチは100から500μmを有する。スポットのピッチはまた、100から200μm、200から300μm、300から400μm又は400から500μmである。
特に好ましい実施態様においては、スポットの直径が50から250μmであり、ピッチが100から500μmである。最も好ましくは、スポット直径が約200μmであり、ピッチが約400μmである。
本発明の方法において、それぞれの個々の領域内のキャプチャプローブが、同じ又は類似のターゲット核酸に特異的に結合することができることがさらに好ましい。2つのターゲット核酸が「類似」とは、それらが少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%の配列相同性を持つことを意味する。2つの配列の相同性%の決定は、好ましくは、Karlin及びAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873−5877に記載の数学的アルゴリズムを用いることにより達成可能である。かかるアルゴリズムは、Altschul等(1990) J.MoI.Biol.215:403−410(NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)から入手可能)のBLASTn及びBLASTpプログラムに導入されている。
本発明の方法の他の好ましく実施態様においては、基板上のいくつか又は全部の領域がお互いに相違し、それらのキャプチャプローブが異なるターゲット核酸に特異的に結合される。好ましくは基板上の領域の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の領域がお互いに相違し、それらのキャプチャプローブが、異なるターゲット核酸を特異的に結合することができる。
好ましい実施態様において、キャプチャプローブは、その5’末端を基板に付着させるものであり、従ってさらなるラベル化が必要な場合、その3’末端をプライマ伸張反応に自由に関与させることができる。かかるラベルは例えば、蛍光ラベル化されたヌクレオチドであってキャプチャプローブを永久にラベル化することを可能とする。
キャプチャプローブは直接基板上に合成することができる。又はまず合成してその後基板に付着することも可能である。キャプチャプローブは基板の上に、例えばスポッティングや、この技術分野の平均的な技術者に知られた技術に含まれる他の方法により堆積させることができる。従って有利なことに、基板の製造には何らの困難もなく、高価でもなく又は時間を要する製造ステップを必要とせず、キャプチャプローブを基板に付着させることを含むのみである。さらに前記固定化キャプチャプローブを含む基板は保存が容易であり長期の貯蔵寿命を示す。さらに、製造された基板は乾燥条件下で保存できる。
本発明の方法のステップb)では、1又はそれ以上のターゲット核酸及びさらにポリメラーゼ連鎖反応で核酸増幅に必要な試薬(及び場合によりラベル試薬)が基板に添加される。これにより核酸増幅反応のセットアップに供される。
ステップb)による1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルは、本発明により検出されるべき又は測定されるべき1またはそれ以上のターゲット核酸を含んでいてよい。
好ましい実施態様においては、ステップb)の1又はそれ以上のターゲット核酸は、デオキシリボ核酸及び/又はリボ核酸を含む。
ステップb)による核酸サンプルが1以上のターゲット核酸を含む場合、ターゲット核酸は、同じ物又は異なる物例えば異なる生物種から由来する誘導体であってよい。1以上のターゲット核酸は通常、異なる配列を持つ核酸を含む。好ましい実施態様において、1またはそれ以上のターゲット核酸は、基板上に固定化されたキャプチャプローブの1またはそれ以上と相補的である。しかし、サンプルに含まれる全てのターゲット核酸が基板上のキャプチャプローブと結合することができることは要求されない。例えば、本発明による方法は、ひとつの実施態様において、サンプル中の特定のターゲット核酸の有無を決定するために使用され得る。かかる場合1またはそれ以上のあり得るターゲット核酸の問題のサンプルはステップb)で基板に添加され、サンプルが1またはそれ以上の興味あるターゲット核酸があるかどうかを決定される。かかるターゲット核酸がサンプル中に存在する場合、それらは基板表面のキャプチャプローブに結合することができるであろう。しかし、問題となるサンプルに興味あるターゲット核酸が全く存在しない場合には、又は問題となるサンプルに興味あるターゲット核酸と特に興味の無い追加の核酸が存在する場合には、サンプル中のいずれも又はいくつかの核酸のみが基板上のキャプチャプローブと結合するであろう。
本発明の方法のひとつの有利な点は、マルチプレックス分析が可能であることである。例えば、ターゲット核酸のサンプルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い、50より多い、60より多い、70より多い、80より多い、90より多い、100より多い、150より多い、200より多い、300より多い、400より多い、500より多い、1000より多い、5000より多い、10000より多い、100000より多い、1000000より多い異なるターゲット核酸を含むことができる。
1またはそれ以上のターゲット核酸は、真核生物細菌又はウイルス起源であってよい。
1またはそれ以上のターゲット核酸に加えて、ポリメラーゼ連鎖反応において(場合により)ラベル化する核酸増幅に必要なさらなる試薬が基板に添加される。この技術分野の熟練者にとっては、前記核酸ターゲットを増幅するためにどのような試薬を核酸ターゲットに添加する必要があるかは知られている。
好ましくは、核酸増幅(及び場合によりステップb)で)必要な試薬は溶液で、好ましくは反応混合物の形で供給される。さらに好ましくは、基板が増幅の際に溶液と接触することである。
さらに好ましい実施態様では、核酸増幅(及び場合によりラベル化)で必要な試薬は、オリゴヌクレオチドプライマのペア又は複数の異なるオリゴヌクレオチドプライマのペア、ヌクレオチド、少なくともひとつのポリメラーゼ及び場合により検出可能なラベルである。核酸増幅及びラベル化の試薬はさらに反応緩衝液を含んでいてよい。
さらに場合によりひとつの実施態様において、検出可能なラベルは、蛍光ラベル化ヌクレオチドである。「ヌクレオチド」とは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドであり得る。好ましくは、ヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。蛍光ラベル化ヌクレオチドが試薬に含まれる場合、サーマルサイクルの間に伸張された固定化キャプチャプローブに取り込まれる。従って好ましい実施態様においては、固定化キャプチャプローブが伸張ステップの間に蛍光ラベル化される。
適切な蛍光ラベルは、例えばシアニン3、シアニン5又はシアニン7を含むシアニン色素、例えばアレクサ594、アレクサ488、アレクサ680、アレクサ532を含むアレクサ蛍光色素(Alexa Fluoro dyes)、フルオレセイン類色素、テキサスレッド、アット655、アット680及びローダミンが挙げられる。いくつかの実施態様においては、ヌクレオチドは2またはそれ以上の異なる色素でラベル化されていてよい。ひとつの好ましい実施態様において、ヌクレオチドはひとつの色素のみでラベル化される。蛍光ラベル化ヌクレオチドを用いる場合、ラベル化されていないヌクレオチドと蛍光ラベル化されたヌクレオチドの混合物を用いることが可能である。ひとつの実施態様において、ラベル化されていないヌクレオチドは過剰量用いられる。即ち蛍光ラベル化されたヌクレオチドの量よりも多い量で用いられる。好ましくはラベル化されていないヌクレオチドは3又は4倍ラベル化されたヌクレオチオドよりも多く用いられる。
上で説明したとおり、核酸増幅(場合によりラベル化)で必要な試薬は、オリゴヌクレオチドプライマのペア又は複数の異なるオリゴヌクレオチドプライマのペアである。核酸増幅とラベル化に必要な試薬は、複数の異なるプライマのペアを含み、かかる異なるプライマのペアは好ましくは異なるターゲット核酸に対して特異的である。試薬は例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多い、20より多い、30より多い、40より多い、50より多い、60より多い、70より多い、80より多い、90より多い、100より多い、150より多い、200より多い、300より多い、400より多い、500より多い、1000より多い、5000より多い、10000より多い、100000より多い、1000000より多いプライマのペアを含むことができる。
核酸増幅とラベル化に必要な試薬は、前記1またはそれ以上のターゲット核酸に特異的な前方及び/後方プライマを含む。前方及び後方プライマが試薬中に含まれる場合は、これにより溶液中で起こる反応を開始させて増幅産物を生じるであろう。
増幅産物の相補鎖は、本発明の第一及び第二の側面のステップc、及び第二の側面のステップdでのサーマルサイクルの際のオリゴヌクレオチドプライマとアニールされることが可能であり、従って前記オリゴヌクレオチドプライマの伸張に利用可能なターゲット核酸の追加の副生物を提供することができる。
「前方プライマ」及び「後方プライマ」とは、通常の意味で用いられ当該技術分野ではよく知られている。
核酸増幅(及び場合によりラベル化)に必要な試薬はさらにDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施態様において、試薬はDNAポリメラーゼに加えてさらに逆転写酵素を含んでよい。逆転写酵素は、ステップb)で1またはそれ以上の核酸プローブがメッセンジャRNAを含む場合に好ましい。さらに以下詳細に記載する。
ステップb)からの1またはそれ以上のターゲット核酸の増幅は、サーマルサイクルを含むプロセスにより達成される。ここで使用される用語、サーマルサイクルとは、反応混合物を交互に加熱・冷却することを含み、それにより1またはそれ以上のターゲット核酸を増幅させることを意味する。交互に加熱・冷却が数回繰り返され、ここではサーマルサイクルと参照する。
いくつかの実施態様において、サーマルサイクルは、例えば3つの異なる温度ステップを含む。例えば最初の温度が約90℃から約100℃(変性)、次の温度が約40℃から約75℃、好ましくは50℃ぁら70℃(アニーリング)、さらに次の温度が70℃から80℃、好ましくは72℃から75℃(伸張)である。サーマルサイクルの変形は、当該技術分野でよく知られており、より少ない温度ステップ又は異なる温度ステップが含まれ得る。
好ましくは、本発明の第一の側面のステップc及び本発明の第二の側面のステップdでのサーマルサイクルは、5回サーマルサイクルよりも多い、10回サーマルサイクルよりも多い、20回サーマルサイクルよりも多い、30回サーマルサイクルよりも多い又は50回サーマルサイクルよりも多い。最も好ましくは、サーマルサイクルは約50サーマルサイクルである。
好ましい実施態様においては、サーマルサイクルを含むプロセスは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。上で説明したサーマルサイクルに加えてPCRは、反応混合物を約92℃から100℃に加熱する単一の開始ステップ及び/又はサーマルサイクルが完了した後に約4℃に冷却するステップをさらに含むことができる。
ひとつの実施態様において、1又はそれ以上のターゲット核酸と対応するオリゴヌクレイトドプライマとのアニールは、例えば温度ステップ約40℃から約75℃で、及びオリゴヌクレオチドプライマ伸張では例えば約70℃から80℃、好ましくは上で記載された約72℃から75℃で達成することができる。他の実施態様では、アニールは伸張反応と同じ温度で起こり得る。
サーマルサイクルは、通常適切な装置例えばサーマルサイクラーで実施される。
ひとつの実施態様では、遺伝子発現分析を実施することが望ましい場合である。例えばひとつまたはいくつかの異なる遺伝子の転写レベルを決定するためである。mRNA転写がその後cDNAに逆転写されてもよい。ひとつの実施態様において、逆転写は上記サーマルサイクル反応に先立って別の逆転写PCR反応で実施されてもよい。かかる反応からのcDNAはその後、ステップb)で基板に添加されてターゲット核酸として作用することができる。
ひとつの好ましい実施態様では、cDNA合成及びサーマルサイクルでの増幅ステップは、同じ反応混合物内で実施されることができる。これらの場合、ステップb)での一つ又はそれ以上のターゲット核酸はメッセンジャRNAを含み、さらにDNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼに加えて核酸増幅とラベル化に必要な試薬として逆転写酵素を含むことが好ましい。
かかる方法が用いられる場合、上で説明したサーマルサイクルに先立つ増幅プロセスは、cDNA合成を可能とする約40℃から60℃で行われる単一のインキュベーションを含む。ひとつの実施態様においては、かかるインキュベーションステップは、10分から45分で実施されることができる。ひとつの実施態様においては、反応は、cDNA合成ステップに先立って約20℃から25℃でインキュベーションされることができる。かかるインキュベーションステップは、例えば5から20分で実行され得る。
ひとつの実施態様においては、ターゲット核酸及び核酸キャプチャプローブは例えば蛍光ヌクレオチドで永続的にラベル化することが想定されているが、ターゲット核酸又はキャプチャプローブの永続的ラベル化(例えばラベル化剤による共有結合修飾)はされないことが好ましい。
サーマルサイクルにより得られる二本鎖の一つ又はそれ以上のターゲット核酸と、核酸キャプチャプローブとのハイブリダイズ(本発明の第一の側面のステップe、第二の側面のステップf参照)は、サーマルサイクルのアニールステップの際に実行され得る。その代わりに又はそれに加えて、本発明による方法は、ハイブリダイズステップを追加のステップとして実行することもできる。この方法は、例えば、増幅ターゲット核酸がPCR反応で使用されるプライマよりも非常に長鎖である場合に、勧められる。かかる場合には、増幅ターゲット配列へのプライマのアニールは、かかるプライマがPCRテンプレートにアニールする際に要求されるものとは異なる可能性があるからである。
増幅ターゲット核酸とキャプチャプローブ分子とのハイブリダイセーションの検出は異なる方法でも可能である。シグナル検出でしばしば生じる問題のひとつは、高いバックグラウンド蛍光による妨害である。例えば高い蛍光バックグラウンドは、例えばラベル化されたヌクレオチドである非結合の蛍光ラベル化分子、ラベル化プライマ及び/又はサーマルサイクル中に反応溶液中に存在するラベル化された増幅産物により生じる。これにより、測定がより低感度となる。
従って、ひとつの好ましい実施態様においては、高感度の表面検出技術が用いられる。かかる技術は、測定を基板の表面近くの小さな容積に限定し、基板の表面にあるラベル化された分子を検出することを可能とし、同時に溶液中のラベル化分子の検出を大部分避けることを可能としてシグナル対バックグラウンドノイズ比を改良する。
好ましい実施態様において、シグナル検出は、共焦点蛍光スキャナ又はエバネセント波顕微鏡技術を用いることで達成される。エバネセント波は、近接場に位置する波であり距離に対して指数関数的に減衰する。例えば、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡をシグナル測定に使用することができうる。他の好ましい実施態様において、シグナル検出は、発光センサにより達成可能である。かかる装置は例えばWO2007/010428に記載されており、この内容は参照により本明細書の一部となる。または、シグナルは例えば共焦点顕微鏡により検出されることができる。
従って、好ましい実施態様において、ハイブリダイセーション検出は、エバネセント検出系を用いる場合には基板表面から約100nmから約300nmの距離内、好ましくは、100nmから200nm内及び最も好ましくは100nmから150nmの距離であり、又は共焦点検出系を用いる場合には約1μm内の距離で実施される。
二本鎖核酸と特異的に相互作用する色素、即ち一本鎖核酸と結合する場合や他の分子構造と非特異的に結合する場合のシグナル強度よりも二本鎖DNAと結合する場合により高いシグナル強度を有する色素を用いることにより、バックグラウンドが減少するという利益を得る。このことは、アレイ系マルチプレックスリアルタイムPCR反応で通常観測されるバックグラウンドの75%が、アレイの表面に非特異的に結合するDNAからの結果であるということから、特に重要である(以下実施例2参照)。
キャプチャプローブが、サーマルサイクルの際にさらにラベル化される場合、シグナル対ノイズレベル比はさらにより改良されるであろう。ハイブリダイセーション検出はその後さらに、伸張されラベル化されたキャプチャプローブの検出を含むことができる。かかる測定は、少なくとも一回のサーマルサイクルの間又は後で行ってもよい。
ハイブリダイセーションは、少なくとも5回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも10回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも15回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも20回のサーマルサイクルの間又は後、少なくとも25回のサーマルサイクルの間又は後に測定されてもよい。
核酸の量の増加はこのようにして増幅されるに従いモニタされる。即ち、核酸の量の増幅がリアルタイムに測定される。
「リアルタイム測定」にはグナルの速度論的生成の検出を含み、ある時間を通じてシグナルを特徴付けるために複数の測定を行うことを含む。それぞれの増幅反応の蛍光強度は、例えば電荷結合素子(即ちCCDカメラ又は検出器)又は他の適切な装置であって使用されるラベル化分子の発光スペクトルの検出が可能な装置を用いて検出されることができる。
それぞれの増幅反応で、蛍光サンプリングから得られた測定された発光スペクトルは、増幅データセットを形成する。ひとつの実施態様において、それぞれのサイクルでハイブリダイセーションを検出してサンプル中の一つ又はそれ以上のターゲット核酸の存在又は不存在を決定すること(それぞれのシグナルが存在しないということはそれぞれのターゲット核酸が存在しないことに対応する)が望ましいであろう。
他の実施態様においては、増幅データセットは、定量化、即ち一つ又はそれ以上ターゲット核酸の初期濃度を決定するために処理され得る。ひとつの実施態様においては、増幅データセットはさらに、それらは例えばmRNAエンコード酵素GAPDHで初期濃度既知の、ひとつ又はそれ以上のコントロール核酸ターゲットから得られる蛍光強度データを含む。それにより、未知の濃度のターゲット核酸のシグナル強度と既知濃度のターゲット核酸と、例えば標準曲線を作成して比較することで可能となる。
本発明の目的において、キャプチャプローブとハイブリダイズし、基板表面から500nmよりも小さい距離でエバネセント検出系で検出されるか、1μmより小さい距離で共焦点レーザー手段で検出されるターゲット核酸の濃度は、「表面濃度」と考えられる。
コンピュータが、データ収集及びデータ処理に用いられてもよい。データ処理は、例えば適切なイメージングソフトウエアを用いることで達成可能である。
リアルタイムPCR法のさらなる詳細とシグナル検出及び定量化については、Dorak, M. Tevfik (ed.), Real−Time PCR, April 2006, Taylor & Francis; Routledge, 978−0−415−37734−8を参照できる。
エバネセント波検出方法が用いられる場合、励起波は指数関数的減衰を示し、従って基板の表面からさらに離れた位置から(例えば、色素が取り込まれた溶液中の増幅ターゲット核酸から)のシグナルは減衰した発光シグナルを与えることとなる。または共焦点(限定回折)検出では、基板の表面から約1μm又はそれより小さい距離内に位置する色素のみが測定される。
本発明の好ましい実施態様において、キャプチャプローブはさらに蛍光マーカーでラベル化される。当該マーカーは、二本鎖核酸と相互作用することが可能な色素と、ターゲット核酸が二本鎖核酸に結合する、即ちターゲット核酸がキャプチャプローブとハイブリダイズする際に、相互作用して蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)効果を与えるものである。この実施態様の利点は、Cy5及びSYBR Green1に関して説明されるが、本実施態様はこの具体的な組み合わせに限定されない。
キャプチャプローブは、Cy5でラベル化される。ハイブリダイズの結果、キャプチャプローブとターゲット核酸との二本鎖となる。結合されたDNAの二本鎖部分近くで他の部分よりも実質的により高い蛍光シグナルを与える、例えばSYBR Green1(520nm付近の緑色)であるインターカレーション型色素が存在することとなり、青色励起波長(例えば440から490nmの間)で照射することにより、SYBR Green1の励起状態の励起が生じる結果となる。SYBRGreen1の励起状態のエネルギは、効果的にCy5色素分子にFRET手段で伝達されることができる。FRETは、Cy5とSYBR Green1との距離に強く依存するため、FRETは本質的に、キャプチャプローブのCy5ラベルと十分近接するSYBR Green1分子との間でのみ生じる。SYBR Green1色素分子の励起と、SYBR Green1色素分子とCy5色素分子の結合プロセス(これはまたiFRETとされる)は、キャプチャプローブとハイブリダイズしたターゲット核酸の二本鎖に結合するSYBR Green1にのみ効果的である。iFRETにより生成されるCy5の励起状態は赤領域(約660nmのピーク)での蛍光を生じる結果となり、本質的に、Cy5でラベル化されかつターゲット核酸とハイブリダイズしたキャプチャプローブにおいてのみに存在する。一本鎖DNA、二本鎖であっても非特異的に結合したDNA及びバルク中に存在する一本鎖及び二本鎖DNAについては、本質的に赤色蛍光ピークを生じることはなく、従ってCy5ラベル化キャプチャプローブとハイブリダイズしたターゲット核酸を容易に識別することができる。
本発明の他の第一の側面において、本発明の方法は次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出することを含み、前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度がハイブリダイゼーション検出の検出限界よりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施するものである。
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出することを含み、前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度がハイブリダイゼーション検出の検出限界よりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施するものである。
基板の特性、スポットの数、核酸配列の性質、サーマルサイクルステップ等、ハイブリダイゼーション及びそれらの検出に関する上で記載された全ての側面は、本発明の第一の側面に適用され得る。
本発明において、「サンプル中の増幅されたターゲット核酸の濃度を決定する」とは、キャプチャプローブの上のPCR溶液中にある増幅されたターゲット核酸の濃度を意味し、即ち、通常「バルク濃度」と記載される濃度である。対照的に、基板上でキャプチャプローブとハイブリダイズした増幅されたターゲット核酸の濃度は通常表面濃度と記載される(上参照)。サンプル中で増幅される核酸配列の量を決定することがさらに次の利益を与える。すなわち、決定された濃度により、変性増幅ターゲット核酸の濃度とキャプチャプローブと、何時ハイブリダイズさせるか及び/又は増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイズの検出を何時開始するべきかを決定することが可能となる。
通常、キャプチャプローブ/ターゲット核酸二本鎖及びキャプチャプローブの濃度比は、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度と関連定数との積に等しいということは、ハイブリダイセーションアッセイで知られている。これらの関連定数は105l/s/Mのオーダーであり、この数値は、合理的な時間(数分)内でハイブリダイゼーション検出が通常少なくとも1nMの濃度で可能であることを意味する。
初期低濃度のターゲット核酸を増幅し、増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブのハイブリダイゼーションを実施し及びPCR反応のそれぞれのサーマルサイクル後にこのハイブリダイゼーションを検出するために使用されるPCR反応は、ある場合には、アレイ系リアルタイムPCR方法の全所要時間を不必要に延長することがあるであろう。むしろ望ましいことは、増幅ターゲット核酸がある閾値レベルの濃度であって、ハイブリダイゼーションがある時間枠内(例えば5−10分)で検出可能であると予想される濃度に到達したときに一度だけハイブリダイゼーションを開始し及び/又はハイブリダイゼーションの検出を行うことである。
従って、本発明による方法は、以下の追加のステップを含む。増幅されたターゲット核酸の濃度が決定され、この濃度に依存して、ターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションが開始され及び/又はその検出が開始される。
サンプル中の増幅ターゲット核酸の濃度測定に依存して、ハイブリダイゼーション(及び/又はその検出)を開始するべきかどうかの問題は、キャプチャプローブの性質に依存する。キャプチャプローブが、増幅に用いるプローブと、長さやヌクレイトド成分との点から大きく相違する場合、ハイブリダイゼーションの要求は、プライマのアニールの要求とは異なるであろう。かかる場合では、増幅ターゲット核酸とキャプチャプローブ核酸配列とのハイブリダイゼーションは、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度の決定によりある閾値に到達したことが明らかとなるまでは延期することが合理的であろう。しかしながら、キャプチャプローブ核酸配列とPCR増幅に用いるプライマがハイブリダイゼーション要求においてそれほど大きくは異ならない場合、ハイブリダイゼーションは、PCR反応のアニールステップの際にも生じる可能性があり、この場合サンプル中の増幅ターゲット核酸の濃度を決定して、その後ハイブリダイゼーションのみを開始するかを決定するために用いられることができる。
本発明の第一の側面のひとつの利点は、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度、即ちバルク濃度の決定及びキャプチャプローブ核酸配列とハイブリダイズされたターゲット核酸の濃度、即ち表面濃度の決定を、二本鎖核酸に特異的に相互作用することができる色素を用いて実施することができるということである。従って、異なる色素を用いることはかならずしも必要ではない。
当該技術分野の熟練者は次のことは明らかであろう。すなわち、増幅されたターゲット核酸配列の濃度決定は、既知濃度の既知ターゲット核酸を用いて本発明の第一の側面による方法の実施から得られる検量線の記録を含むということである。
ハイブリダイゼーション及び/又は増幅されたターゲット核酸のキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの検出のいずれかを開始させるべき閾値濃度は、サンプル中の増幅されたターゲット核酸の濃度が、ハイブリダイゼーション検出の検出限界を超えて増加した際に到達した際のものであり得る。
通常増幅されたターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの低濃度検出限界は、少なくとも10pM、少なくとも50pM、少なくとも75pM、少なくとも100pM、少なくとも150pM又は少なくとも200pMである。
本発明の第二の側面は、第一の側面よる方法であり、ステップb.とステップc.の間にさらに次のステップ:
前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする、を含む。
前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする、を含む。
本発明の第一の側面につき上で記載されたすべての側面、即ち、基板の特性、スポットの数、核酸配列の性質、サーマルサイクルステップ等、ハイブリダイゼーション及びそれらの検出については、本発明の第二の側面に適用され得る。
本発明の第二の側面はさらに、本発明の第一の側面のさらなる詳細である。二本鎖核酸に特異的に結合可能な色素を用いて、例えば基板の表面での非特異的な相互作用によるバックグラウンドを減少させることができる。サンプル中での増幅されたターゲット核酸の濃度決定により、増幅されたターゲット核酸配列とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションの開始及び/又は検出することを、キャプチャプローブで検出されるべき十分な量のターゲット核酸の存在が予想される時点まで延期することが可能となる。本発明の第二の側面は、しかしながら、次の追加のステップを含む。即ち、PCR溶液に既知配列の二本鎖核酸(ポジティブコントロールターゲット核酸配列)及びコントロールプローブを添加することで、二本鎖核酸と特異的に相互作用することが可能な色素とは異なる波長で増幅されたコントロール核酸の検出を可能とする。
かかる内部コントロールを含むことは、特に、PCR反応が正しく進行しているかをチェックすることにもなる。さらに、実施例で示されるように、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能な色素から得られるシグナルが、それにもかかわらず、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度の決定にも使用できる。
さらに、本発明の第二の側面で使用するコントロールプローブは、少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを有する。これらのラベルは、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)により検出され得るものを選択されることができる。
上で説明した通り、本発明の第二の側面の特に好ましい実施態様においては、キャプチャプローブは、さらに蛍光マーカーでラベル化される。このマーカーは次のように選択される。すなわち、二本鎖核酸と相互作用可能な色素と相互作用することができ、この色素が二本鎖核酸と結合する際、即ちターゲット核酸がキャプチャプローブとハイブリダイズする際に、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)を生じるものである。この実施態様は、Cy5とSYBR Green1との組み合わせで説明されてきたが、実施態様はこの特別の組み合わせに限定されるものではない。
第一、第二の側面において、インターカレーションSYBR Green1色素はまた、バルク中でのPCR反応のモニタにも使用でき、Cy5の赤色蛍光シグナルは、あるターゲットへの特定のキャプチャプローブとあるスポットでのハイブリダイズDNAの量を決定するために用いることができる。
特に好ましくは、プローブが、FRETにより、及びかかるプローブがポリメラーゼ連鎖反応で用いられて分解された位置で検出されることが可能である少なくとも2つの蛍光ラベルを持つことである。このようなタイプのプローブは通常いわゆる「Taqmanプローブ」と言われている。Taqmanプローブは、ターゲット核酸とハイブリダイズする。しかしPCRの際のプライマ伸張の際、Taqmanプローブは分解されFRETシグナルを消失する。コントロールプローブの蛍光ラベルが、二本鎖核酸配列に特異的に結合され得る色素と異なる波長で発光する場合、コントロールターゲット核酸へのPCR反応は、2つのシグナルで追跡可能となる。即ち色素の挿入と、例えばTaqmanプローブの分解である。加えて色素は、異なる核酸配列増幅からの結果の二本鎖核酸に挿入される。従って、色素から生成されるシグナルは、コントロールターゲット核酸配列と同様に未知のターゲット核酸配列をも意味するであろう。一方例えばTaqmanであるコントロールプローブにより生成されるシグナルは、コントロールターゲット核酸配列のみを意味するであろう。
実施例5(図8及び9参照)に示されるように、コントロールプローブシグナルから決定される閾値濃度は、色素から生成されるシグナルに対応する。色素からの全シグナルが、その後コントロール核酸配列からの色素シグナルにつき補正されると、サンプル中のターゲット核酸配列の濃度、即ちターゲット核酸配列バルク濃度が得られ、かつこの濃度に基づいてターゲット核酸配列とキャプチャプローブとのハイブリダイゼーション及び/又はハイブリダイゼーションの検出につき決定することが可能となる。
この技術分野の熟練者は、他のコントロールプローブもまた同じ目的で使用することができることは理解できるであろう。従ってコントロールプローブは、少なくともひとつの蛍光ラベルとひとつのクエンチングラベルを含むことができる。例えば、さそり型プライマ(scorpion primers)、Luxプライマ又は分子ビーコンプローブ(molecular beacon)である。そのようなプローブは、ある場合にはまた、Taqmanプローブとして記載される。
本発明は、以下本発明の好ましい実施態様に関する実施例により説明される。これらの実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
実施例1
以下の実施例では、バックグラウンドシグナルの効果を示す。
以下の実施例では、バックグラウンドシグナルの効果を示す。
図2は、アレイ系のPCRを、例えばDNAターゲット配列のために蛍光ラベルを含むプライマを用いて実施される際のステップを模式的に示す。a)は、伸張ステップを示し、b)は変性ステップを示し及びc)はアニール/ハイブリダイゼーションステップを示す。ステップc)の間、プライマは一本鎖DNAとアニールし、一方増幅産物はキャプチャプローブとハイブリダイズする。さらに、プライマ及び/又は増幅産物は、例えばキャプチャプローブスポットの外側で非特異的に結合してバックグラウンドシグナル(図示されていない)を導くであろう。
実施例は、かかるバックグラウンドの程度と性質を決定するために実行された。
最初に、標準PCRをターゲット核酸DNA及びラベル化されていない前方プライマとCy5ラベル化された後方プライマを用いて行った。得られたPCR生成物を希釈して最終的に5nM a1xマスタミックスとした。
平行して、ターゲット核酸配列と正確に相補的なキャプチャプローブを、Superamine2ArreyItマイクログラススライド上に堆積させた。キャプチャプローブは、その5’末端に16のチミン尾部を持つ。プリント後、400mJ/cm2の254nmUVで露光し、続いて過剰のプローブを5xSSC、0.1%SDS及び0.1mg/mlンシンスペルムDNAで洗浄した。その後スライドを水で軽くリンスし30分間オーブン中で乾燥した。
その後、PCRサンプルをPCR緩衝液中でキャプチャプローブと、46℃で一時間ハイブリダイゼーションさせた。
シグナル検出は、共焦点スキャニングを用いて行った。図3a)は、キャプチャプローブスポットとそれらのスポット周りのバックグラウンドシグナルを示す。
光学スポットの位置が固定されたところのバックグラウンドの性質を決めるため、消光実験をその後実施した。蛍光シグナルがその後このスポットでの時間の関数として測定された。
この実験は、非特異的にマイクロスライド上に固定化された蛍光ラベル化プライマ(いわゆる表面バックグラウンド)及び、全測定中スポットに焦点されている蛍光ラベル化プライマは消光される一方、溶液中のラベル化プライマはスポットの焦点にはほんの短い時間のみ存在し、絶えず拡散で入れ替わっている(いわゆる容積バックグラウンド)ということに解釈される。これらの拡散可能なプライマによるバックグラウンドシグナルは、従って永久消光ではない。その結果、スポットの測定の直後の蛍光シグナルは、表面及び容積バックグラウンドの和に比例する。一方消光曲線のベースラインは、容積バックグラウンドにのみ依存する。
この実験から、バックグラウンドの3/4が表面バックグラウンドであることが決定された(図3b参照)。
実施例2
次の実験は、二本鎖核酸に特異的である色素は、色素の非特異的結合及び/又は基板表面へキャプチャプローブとハイブリダイズしない核酸により、低いバックグラウンドシグナルであることを示すために行われた。
次の実験は、二本鎖核酸に特異的である色素は、色素の非特異的結合及び/又は基板表面へキャプチャプローブとハイブリダイズしない核酸により、低いバックグラウンドシグナルであることを示すために行われた。
2つのタイプのキャプチャプローブを持つスポットのアレイが、ArrayItアミノ修飾ガラス基板にプリントされた。ひとつのキャプチャプローブは、配列5’−ACTTTTACTGGAGTCGTCGA−3’(SEQ ID NO.:1)及び他のキャプチャプローブは、配列5’−TTTTTTTTTTTTTTTTAAGGCACGCTGATATGTAGGTGA−3’(SEQ ID No.:2)であった。
このアレイを用いて、10nMの配列5’−TCGACGACTCCAGTAAAAGT−3’(SEQ ID No.:3)(これは最初のキャプチャプローブと完全に相補的である)をハイブリダイズさせた。この実験のセットアップにより、アレイ上の液中には二本鎖DNAは存在せず、従って、バックグラウンドとスポットでのシグナルの違いは、色素によるddDNAに対するssDNAについての特異性の違いによることが予想された。最悪の事態を再現するためにハイブリダイゼーションを室温で実施した。この条件では非特異的表面バックグラウンドが最も高くなるであろうと考えられるからである。ハイブリダイゼーション条件は一夜室温であった。
これらの実験には共に、表面特異的検出を保証するために共焦点スキャニング顕微鏡を用いた。SYBR Green1を用いる実験のために、Arレーザー線488nmが励起光源として使用された。蛍光は500−600nmの波長範囲で検出された。
図4は、室温で一夜ハイブリダイゼーションさせた後のSEQ IDNo.:1のスポット及びSYBR Green1色素についての例を示す。
スポット及びバックグラウンドのコントラスト値は000倍よりも高かった。このことは明らかに、SEQ IDNo.:3の結合表面での非特異的結合は蛍光シグナルに対して非常に小さな寄与しかないことを示す。
スポット及びバックグラウンドのコントラスト値は000倍よりも高かった。このことは明らかに、SEQ IDNo.:3の結合表面での非特異的結合は蛍光シグナルに対して非常に小さな寄与しかないことを示す。
蛍光シグナルはまた、ネガティブコントロール(即ちSEQ ID No.:2)と比較された。これから、ハイブリダイゼーションスポットの蛍光シグナルは、ネガティブコントロールの蛍光シグナルよりも約16倍であることが結論できる。ネガティブコントロールの蛍光は、主にSEQ ID No.:3の、E.Coliキャプチャプローブ(即ちSEQ ID No. 2)への非特異的結合による。
実施例3
次の実験は、例えばインターカレーション型」色素SYBR Green1である二本鎖核酸に特異的に相互作用できる色素が、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度を決定するために使用できることを示す。
次の実験は、例えばインターカレーション型」色素SYBR Green1である二本鎖核酸に特異的に相互作用できる色素が、増幅されたターゲット核酸のバルク濃度を決定するために使用できることを示す。
実験は、2つのターゲット配列と2つのターゲット用の異なるプライマを用いて行った。300nMの前方及び後方プライマが含まれていた。ひとつのターゲットのために200nMのTaqmanプローブが含まれていた。このTaqmanプローブは、蛍光レポータ(ヤキマ(Yakima)黄色)を5’末端に、またクエンチャー(ブラックホールクエンチャ(Black hole quencher))を3’末端に有する。異なる量のインプットテンプレート濃度を用いた。PCRはサーマルサイクラーを用いて行った。SYBRの緑色とヤキマ黄色をシグナルを共に測定した。
3つの異なるアプローチをリアルタイムPCR検出で行った。
1.単一のウェルにSYBR Green1のみを添加して測定
2.単一のウェルにヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブのみを添加して測定
3.単一のウェルに、SYBR Green1とヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブを添加して測定
シグナルはPCR中、市販サーマルサイクラー、Applied Biosystem7300及びSDSソフトウェアを用いて記録した。閾値レベルは、ソフトウェアの示唆に従って設定した。濃度決定のために、次の検量実験を実行した。
1.単一のウェルにSYBR Green1のみを添加して測定
2.単一のウェルにヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブのみを添加して測定
3.単一のウェルに、SYBR Green1とヤキマ黄色(Yakima−yellow)(YY)付きのTaqmanプローブを添加して測定
シグナルはPCR中、市販サーマルサイクラー、Applied Biosystem7300及びSDSソフトウェアを用いて記録した。閾値レベルは、ソフトウェアの示唆に従って設定した。濃度決定のために、次の検量実験を実行した。
図5は、インプット濃度の関数として閾値サイクル数を与える。検出にSYBR Green1のみ又はYYのみを用いた場合の実験から、SYBR Green1の閾値サイクル数(Ct)は、YYのそれよりもわずかに低かった(1.5サイクル)。SYBR Green1及びYY−Tamanプローブを共にPCR反応(「組合せ」)に用いた場合に得られたシグナルは、混合物の個々色素による結果を与える。
組合せ実験でのシグナルと単一での実験とを比較すると、YY−TaqmanプローブとSYBR Green1との干渉は小さいことがわかる。SYBR Green1のCtは、約2.0に増加し、一方YYシグナルのCtは約1.3増加する。これらの数はインプット濃度に依存せず、このために補正が可能であることを意味する。
従って、SYBR Green1及びYYとの間には一定の相違があり、補正することが可能である。それぞれに対する色素には限定的な影響のみ存在する。
両方のラベルが同様の結果を与えることから、増幅されるターゲット核酸のバルク濃度の測定のために、例えばインターカレーション型色素である二本鎖核酸に特異的な色素を用いることができることが明らかである。
仮定的実施例4
この仮定的実施例は、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能である色素からの波長とは異なる蛍光検出を可能とするコントロールプローブを、キャプチャプローブでのハイブリダイゼーション検出を何時行うべきであるかを決定するために、どのようにして使用することができるかを示す。
この仮定的実施例は、二本鎖核酸と特異的に相互作用可能である色素からの波長とは異なる蛍光検出を可能とするコントロールプローブを、キャプチャプローブでのハイブリダイゼーション検出を何時行うべきであるかを決定するために、どのようにして使用することができるかを示す。
図6は、この仮定的実施例を示す。この場合、高インプット濃度(106cp/μl)の既知の二本鎖核酸(コントロール核酸、この反応は品質管理(QC)アッセイと呼ばれる)及び低インプットのターゲット核酸(102cp/μl)のPCR曲線についての例が与えられる。
「全バルクシグナル」と印される線では、インターカレート色素SYBR Breen1の全シグナルが与えられており、測定されることができる。このシグナルは、増幅ターゲット核酸及びコントロール核酸の和である。コントロール核酸の全濃度のみ、Taqmanプローブにより特異的に測定されることができ(「QCアッセイシグナル」)、SYBR Green1に比べて異なる波長で検出されることができる。その後、ターゲット核酸のみのシグナルが、ターゲット核酸とコントロール核酸両方のシグナル(「全バルクシグナル」)を、コントロール核酸のシグナル(「QCアッセイシグナル」)で補正して得られ、これにより所定のシグナルが得られる(「検出されるべきターゲット」)。絶対濃度は、適正な検量処理を用いて決定される。
この情報は、表面検出を用いる場合に特定するために使用することができる。増幅産物のキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションは比較的遅い。表面特異的検出が検出限界よりも上でのみ行うことができる場合には、PCRはできるだけ迅速に行うことができる(表面特異的検出を検出限界以下に残す)。バルク検出により、ターゲット核酸濃度を測定することができ、かかる濃度が検出限界以上となるときを結論できる。同時に品質管理アッセイは、PCR反応が実際に作用したことにつき独立した読出し情報を提供する。
図7は、図6の拡大図である。
理論的検出限界10−7任意単位が与えられている。全バルクシグナル(ターゲット核酸及びコントロール核酸)はサイクル17で検出限界に到達する。しかし、ターゲット核酸濃度は、サイクル31付近で検出限界に到達する。これは、バルクシグナルに基づくと、表面特異的検出はサイクル18から開始されることを意味する。しかし、表面上のスポット(マイクロアレイ)で検出可能なシグナルを実際に与えるにはさらに13サイクルを要する。従ってこの決定が補正されたシグナルシグナル(「検出されるべきターゲット」)に基づくものであるならば、表面特異的検出が開始される。このことは、総PCR/ハイブリダイゼーションに要する時間を十分に短縮させる。通常ハイブリダイゼーション/検出測定に5分を要するとすると、このことは総リアルタイムアレイPCR反応を70分短縮することになる(31−17=14サイクル、ハイブリダイゼーション/検出測定に約5分とすると=70分)。
実施例5
内部コントロールの使用を証明するために、次の実験を行った。
内部コントロールの使用を証明するために、次の実験を行った。
それぞれのターゲットにつき特定のプライマを用いた2重PCRを実施した。ひとつにインプットDNAは、内部コントロールを表す(常に同じインプット濃度、104コピー/μl)。他のインプットDNAはターゲット核酸を表す(インプット濃度は、101−105コピー/μlの範囲で可変)。増幅内部コントロールの検出のために、ヤキマ黄色色素(Yakima Yellow−dye)とクエンチャーを含むTaqmanプローブをサンプルに含めた。増幅された内部コントロール及びターゲット核酸DNAは共に、SYBR Green1を用いて測定された。
図8は、YYについて測定された結果を与える。再び、閾値サイクル数は上で設定されたように決められた。総インプット濃度(即ち内部及びターゲット核酸インプットDNA)と内部コントロールの閾値サイクル数とは関係しない、ということが明らかである。このことは、内部コントロールは同じサイクル数を有することを意味し、これはPCRの内部コントロールとして使用することかできることを意味する。
実験は、内部コントロールを含むことは、二本鎖核酸に特異的である色素(例えばSYBR Green1であるインターカレーション型の色素)を用いた際にもシグナル曲線の形状は変わらないこと、を示す。このことは、コントロール配列をPCR効率を保証するために使用することができ、また同時に色素のシグナル形状を、コントロールプローブにより生成されるシグナルにつき補正することだけで、ターゲット核酸濃度を決定するために使用することができる、ことを意味する。
Claims (15)
- 1又はそれ以上のターゲット核酸の増幅をモニタする方法であり、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含む、プロセスにより増幅し;
d.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
e.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む方法。 - 請求項1による方法であり、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次の
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
d.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
e.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
f.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む方法。 - 本発明は請求項2による方法であり、次のステップ:
a.多数の核酸キャプチャプローブが表面に固定化された基板であり、
それぞれの核酸キャプチャプローブはターゲット核酸と相補的であり、異なる個性を有する核酸キャプチャプローブが空間的にお互いに分離されて固定化されている基板を準備し;
b.前記基板に、1又はそれ以上のターゲット核酸のサンプルを添加し、さらに前方及び後方プライマ及び二本鎖核酸と特異的に相互作用し得る少なくともひとつの色素を含むポリメラーゼ連鎖反応で核酸を増幅させるために必要な試薬を添加し;
c.前記サンプルに、前方プライマ、後方プライマ及びコントロールプライマを含む、知られた二本鎖核酸及びポリメラーゼ連鎖反応で拡散増幅に必要な更なる試薬を加え、それにより前記色素からの異なる波長で蛍光検出が可能となり、二本鎖核酸と前記プライマとの特定の相互作用を可能とし、前記コントロールプローブを前記知られた二本鎖核酸に対して特異的とする;
d.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を、次のステップ、
i.前記1又はそれ以上のターゲット核酸を変性し;
ii.前記1又はそれ以上のターゲット核酸の前記変性鎖の前記それぞれの鎖と前記前方及び後方プライマとアニールさせ;
iii.前記アニールさせた前記前方及び後方プライマを伸張させる、
ステップを含むサーマルサイクルを含むプロセスにより増幅し;
e.前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度を決定し;
f.ステップc.i.、場合により前記伸張ステップc.ii.と共に、での前記変性した1又はそれ以上のターゲット核酸と前記核酸キャプチャプローブとをハイブルダイズさせ;
g.前記1又はそれ以上の増幅ターゲット核酸と前記キャプチャプローブとのハイブリダイズを、二本鎖核酸に特異的に相互作用可能な少なくとも一つの色素から生じるシグナルを決定することにより検出する、ことを含む方法。 - 請求項2又は3のいずれかに記載の方法であり、
前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度決定が、既知濃度の既知ターゲット核酸配列を用いて請求項2又は3の方法を実施することから得られる検量曲線を記録する、ことを含む方法。 - 請求項2乃至4のいずれか1項に記載の方法で、
前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度がハイブリダイゼーション検出の検出限界よりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施する、方法。 - 請求項5に記載の方法で、
前記サンプル中の前記増幅されたターゲット核酸の濃度が、前記増幅されたターゲット核酸濃度が50pMよりも大きいことを明らかとする場合に、ハイブリダイゼーション検出を実施する、方法。 - 請求項3乃至6のいずれか1項に記載の方法で、
前記コントロールプローブが少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを含む、方法。 - 請求項7に記載の方法で、
前記少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを含むコントロールプローブの蛍光ラベルが、蛍光共鳴エネルギ移動により検出可能であるように選択される、方法。 - 請求項8に記載の方法で、
前記少なくとも2つの異なる蛍光ラベルを含むコントロールプローブが、前記ポリメラーゼ連鎖反応で使用される際にポリメラーゼで分解されるものであるように選択される、方法。 - 請求項9に記載の方法で、
前記コントロールプローブが、Taqmanプローブである、方法。 - 請求項3乃至6のいずれか1項に記載の方法で、
前記コントロールプローブが、少なくとも1つの蛍光ラベルとひとつのクエンチャーラベルを含む、方法。 - 請求項11に記載の方法で、
前記コントロールプローブが、スコーピオンプライマ、ラックスプライマ、モレキュラービーコン又はTaqmanを含む群から選択される、方法。 - 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法で、
前記基板が、核酸キャプチャプローブのアレイである、方法。 - 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法で、
キャプチャプローブにハイブリダイズするターゲット核酸の前記濃度の決定が、共焦点レーザー顕微鏡又はエバネッセント波による、方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法で、
前記キャプチャプローブが、蛍光ラベルでラベルされ、当該ラベルが、二本鎖核酸に特異的に結合可能な色素と、前記色素が、ターゲット核酸とキャプチャプローブとのハイブリッドに結合する際に、FRETが可能である、方法。
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