JP2012508836A - 改善された圧縮性能を有するシート構造体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、熱安定性フロックおよび少なくとも40重量パーセントのアラミドフィブリドを有する複数のプライを含むプレスボードであって、その最終平均厚みが0.9mm以上であり、さらに25体積パーセント以下の空隙率および、次式
Y>2.97(X)(-0.25)
(式中、(X)はミリメートル単位のプレスボードの厚みである)によって定義されるメガパスカル単位のプライ接着力(Y)を有するプレスボードに関する。このプレスボードは、1.6パーセント以下の圧縮性および0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有し得る。

Description

本発明は、改善された局所的プライ剥離性能および圧縮性能を有するシート構造体、およびその製造方法に関する。これらのシート構造体には、電気絶縁、複合構造体およびその他の利用分野に適したものであり得る紙およびプレスボードが含まれる。
アラミドフィブリドを含む厚いシート構造体は、通常ウェットレイ技術を用いて材料のプライを製造し、その後多数の材料プライを高温圧縮または高密度化することによって形成される。最高約0.9〜1.0mmの最終平均または公称厚みを有するこのような多層シート構造体は、典型的に紙と呼ばれる。この最終平均または公称厚みが0.9〜1.0mmまたはそれ以上である場合には、このシート構造体は典型的にプレスボードと呼ばれる。
プライ層間の接着力(すなわちプライ接着力)が最終シート構造体内において適切な強さも均一性も有していない場合、細い条片への切断作業および/または小さい部品への打抜き作業など、このシート構造体について行なわれる追加の加工ステップは、シート構造体の剥離および部品の紛失をひき起こす可能性がある。特に、高速打抜き作業での使用と、より小さな打抜き部品への要望があることとを併せて考えると、局所的プライ接着力の改善が必要とされる。これらの打抜き作業には同様に、平担でゆがみのないシート構造体も求められる。そうでなければ、精確なサイズおよび所要の形状をもつ最終部品を製造することは不可能である。
プライ層を熱で積層してアラミドプレスボードを製造する例示的方法が、Provostに対する米国特許第4,752,355号明細書およびHendrenに対する米国特許第5,076,887号明細書および5,089,088号明細書の中で開示されている。これらの方法は全て、270℃〜320℃の温度での熱積層に先立ちプライから水分を除去することを必要としている。厚紙製造についてのHayesに対する米国特許第4,481,060号明細書は、積層に先立ちプライを完全に乾燥させる必要性を例示するものであり、従来より、加熱されたシート構造体がひとたび高温ゾーンを退出するとプライの中に含まれた余剰の水分は全て勢いよく蒸発して、当該技術分野で「ブリスタ」として知られているものを発生させ、紙またはプレスボードへの使用は不可能になると考えられていた。この効果は、Memegerに対する米国特許第4,515,656号明細書によって例示されており、そこでは、シート内の水分含有率(water content)を少なくとも60重量%まで増大させ、水を急速に蒸発させながらシートを膨張させる圧力および温度下で湿潤シートを加熱することによって、通常はプレスボードとして許容できない密着し膨張した高空隙率のシートが製造されている。この方法は、プライ内部そしてプライ間に無作為な膨張した巨視的セルを形成する。
しかしながら、特開昭54−50613号明細書は、水または水と水溶性有機溶媒の混合物を芳香族ポリアミド紙に添加して紙の含水率(moisture content)を最高6〜30重量%まで増大させる、芳香族ポリアミド紙積層材料の生産方法を開示している。これらの湿潤化された数葉の紙は次に層状に貼り合わされ、組立てられた層はその後、最初に常温(室温)で圧縮され、それに続いて層は低温まで加熱され、その間組合わされた層の圧縮は維持される。この低温は、この刊行物中「芳香族ポリアミドの融点」と呼ばれているものより低く、150〜230℃、好ましくは170〜190℃の範囲内にある。この低温熱プレス加工の後には、積層材料上に圧力を維持しながら100℃以下まで冷却する作業が続く。未加熱プレス内における室温での第1の圧縮ステップとそれに続いて低温で穏やかな加熱を加える第2のステップが関与する最初の2ステップは、その他の方法に比べて低い温度で積層材料を生産するものと言われている。
残念なことに、この方法は、この刊行物中の実施例が明らかにしているように、高い圧縮性をもつ積層材料を作り出す。この積層材料の圧縮性は、15〜23パーセントの範囲内にある。この材料は圧縮性が高すぎ、充分な剛性を有していないことから、スペーサーおよび/またはスティック(stick)などの電気絶縁材、あるいは最低限の圧縮性と圧縮永久歪を有するその他の構造体用部品としては適していない。
したがって、改善されたプライ接着力と適切な圧縮特性を有する厚紙およびプレスボードなどの高密度シート構造体を製造する改善された方法が必要とされている。
一実施形態において、本発明は、熱安定性フロックおよび少なくとも40重量パーセントのアラミドフィブリドを有する複数のプライを含むプレスボードであって、その最終平均厚みが0.9mm以上であり、さらに25体積パーセント以下の空隙率および、次式
Y>2.97(X)(-0.25)
(式中、(X)はミリメートル単位のプレスボードの厚みである)によって定義されるメガパスカル単位のプライ接着力(Y)を有するプレスボードに関する。このプレスボードは、1.6パーセント以下の圧縮性および0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有し得る。
本発明は、改善されたプライ接着力ひいては改善された局所的剥離性能を有しながらしかも改善された圧縮特性、特に改善された圧縮永久歪をも有する、プレスボードなどの改善された高密度シート構造体に関する。プライ接着力とは、ASTM D952−02に準じて測定した場合の、シートのz方向(平面外)での構造体の剥離におけるピーク荷重を意味する。
この改善された多層シート構造体は、アラミドフィブリドと熱安定性フロックを含み1.5〜7重量パーセントの含水率を有する複数のプライを組合わせるステップと;シート構造体を形成するのに充分な時間シートを加圧下に維持しながら高温で複数のプライを熱で積層し、その後シート構造体上に圧力を維持しながら100℃未満の温度まで構造体を冷却するステップとを含む方法を使用して製造される。一部の実施形態において、圧縮サイクルの終了時点で、結果として得られたシート構造体は、シート構造体中少なくとも1%の水分を有する。40重量パーセント以上のフィブリドを伴って作られ25体積パーセント以下の空隙率を達成するように高密度化された結果として得られたシート構造体は、次式
Y>2.97(X)(-0.25)
(式中、(X)はミリメートル単位のプレスボードの厚みである)によって定義されるメガパスカル単位のプライ接着力(Y)を有する。プレスボードは1.6パーセント以下の圧縮性と0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有し得る。
この方法によって作られたプレスボードは、意外にも非常に望ましい圧縮特性を有する。低圧縮性および低圧縮永久歪を有するプレスボードとは、そのプレスボードの厚み寸法が、電気装置の設計におけるスペーサーとしてのその機能においてより高効率でより安定したものであることを意味している。一部の実施形態においては、停電および一部のその他の事象の際に考えられる応力付加の間にプレスボードに起こる不可逆的な圧縮変形である圧縮永久歪は、0.18パーセント以下である。一部の実施形態においては、このプレスボードの圧縮性も同様に低く、1.6パーセント以下である。
シート構造体内で使用されるプライは、ドライレイドまたはウェットレイド方法によって形成可能である。一部の好ましい実施形態においては、ウェットレイド方法を用いて、実験室スクリーンから業務用サイズの製紙機械類例えば長網抄紙機(Fourdrinier)、円網抄紙機または傾斜ワイヤー抄紙機に至るまであらゆる規模の設備上でアラミドシートが形成される。一般的な方法には、水性液体中でアラミドフィブリド、熱安定性繊維およびその他の考えられる成分の分散を作るステップと、この分散から液体をドレンして湿潤組成物を生成するステップと、湿潤紙組成物を乾燥させるステップとが関与している。分散は、繊維を分散させ次にフィブリド材料を添加することによってか、またはフィブリドを分散させ次に繊維を添加することによって作ることができる。同様に、繊維の分散とフィブリドの分散を組合わせることによっても作ることができる。分散中の繊維の濃度は、分散の合計重量に基づいて0.01〜1.0重量パーセントの範囲内にあり得る。分散中のフィブリドの濃度は、合計固体重量に基づいて最高90重量パーセントであり得る。シートの伝導率およびその他の特性を調整するための充填材、顔料、酸化防止剤などの粉末または繊維形態の追加の成分を、組成物に加えることも可能である。
分散の水性液体は一般には水であるが、さまざまなその他の材料例えばpH調整材料、形成助剤、表面活性剤、消泡剤などを含んでいてもよい。水性液体は通常、分散した固体を保持し液体を通すスクリーンまたはその他の有孔支持体上に分散を誘導することで分散からドレンされ、湿潤紙組成物を生成する。湿潤紙組成物は、支持体上でひとたび形成されると、通常、真空またはその他の圧力による力によってさらに脱水され、残った液体を蒸発させることでさらに乾燥させられて、シート構造体内で使用するプライが形成される。
プライは、少なくとも10重量パーセントのアラミドフィブリドを含み、残りは一般に熱安定性フロックである。本明細書中で使用されている「フィブリド」という用語は、およそ100〜1000マイクロメートルの長さと幅、およびおよそ0.1〜1マイクロメートルのわずかな厚みを有する小さくフイルム状の本質的に二次元の粒子の非常に細かく分割されたポリマー製品を意味する。フィブリドは、溶液の溶媒と非混和性である液体の凝固浴中にポリマー溶液を流すことによって作られる。ポリマー溶液の流れは、ポリマーが凝固するにつれて、激しいせん断力と乱流に付される。一部の実施形態では、プライは、少なくとも40重量パーセントのアラミドフィブリドを含む。これらのフィブリド含有量がさらに高いプライは、プレスボードの場合などの非常に高い剛性をもつシート構造体が望まれる場合に最も有用である。
アラミドフィブリドにおいて有用である適切なアラミドポリマーは、アミド(−CO−NH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香族環に直接付着されているポリアミドである。アラミドと共に添加剤を使用することができ、最高10重量パーセントものその他のポリマー材料をアラミドと配合できることが発見された。アラミドのジアミンに置き換わるその他のジアミン類を10パーセントも有するコポリマー、またはアラミドの二酸塩化物に置き換わるその他の二酸塩化物を10パーセントも有するコポリマーを使用することができる。一部の好ましい実施形態においては、アラミドフィブリドは、メタアラミドポリマーを含み、一部の最も好ましい実施形態においては、メタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。
個々のプライの組成は90重量パーセント以下の割合で、熱安定性フロックまたは熱安定性フロック混合物を含んでいる。「フロック」とは、2〜25ミリメートル、好ましくは3〜7ミリメートルの長さと、3〜20マイクロメートル、好ましくは5〜14マイクロメートルの直径を有する繊維を意味する。フロック長が3ミリメートル未満である場合、最終的積層構造体の強度に及ぼされるその影響は充分高いものとはならず、それが25ミリメートル超である場合には、ウェットレイ方法により均一なウェブを形成するのは困難である。フロック直径が5マイクロメートル未満である場合、それを充分な均一性および再現性で生産するのは困難であり得、それが20マイクロメートル超である場合には、低〜中秤量の均一な紙を形成するのはきわめて困難である。フロックは一般に、連続紡糸フィラメントを特定長の個片に切断することによって作られる。一部の実施形態において、プライは、60重量パーセント以下の熱安定性フロックまたは熱安定性フロック混合物を含み、残りはアラミドフィブリドである。この実施形態は、プレスボードなどの非常に剛性の高いシート構造体が所望される場合に特に有用である。一般には、プライは本質的に熱安定性フロックとアラミドフィブリドとで構成されるが、その他の紙添加物を約10重量パーセントまで添加してもよい。一部の好ましい実施形態において、熱安定性フロックなどのその他の材料は存在しない。しかしながら、一部の実施形態では、最終積層シート構造体またはプレスボードの温度安定性が損なわれないかぎり、最高20パーセントまでのその他のフロックが存在してよい。
「熱安定性」とは、繊維が空気中で10分間250℃に曝露された後その靭性を10パーセント以下しか失わないことを意味する。繊維が熱安定性であるか否かを判定するためには、繊維の試料の靭性を室温条件下で測定する。その後、試料を拘束した状態で10分間250℃まで空気中で加熱し、室温条件まで冷やし、次に靭性を測定し、未加熱繊維の靭性測定値と比較する。一部の実施形態では、熱安定性フロックは、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、フルオロポリマー繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維およびそれらの混合物からなる群から選択される。しかしながら、その他の材料由来のフロック、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアクリロニトリルなどを使用することもできる。一部の実施形態においては、好ましい熱安定性フロックには、アラミド繊維、ガラス繊維またはそれらの混合物が含まれる。1つの好ましい実施形態において、熱安定性フロックは、メタ−アラミドフロックであり、最も好ましい実施形態において、フロックはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)を含む。
個々のプライは、積層に先立ち、少なくとも25体積パーセントの空隙率を有する。この空隙率によって、プライの多層スタックがその後フィブリドポリマーのガラス転移温度(Tg)近くまたはそれより高い温度で高温積層プロセスにおいて圧縮された場合に1つのプライ内のフィブリドが別のプライ内に部分的に侵入できるようになる、と考えられている。一部の実施形態において、個々のプライ内の空隙率は、35体積パーセント以上である。一部の実施形態において、空隙率は、95体積パーセントという高いものであり得る。一実施形態では、全ての個別プライが少なくとも25体積パーセントの空隙容量を有する。
プライの多層スタックは、熱積層ステップに入る時点で1.5〜7重量パーセントの含水率を有する。最終積層構造体中で所望のより優れたプライ接着力を得るためには、熱積層の間にプライスタック内に少なくとも1重量パーセントの水分を維持しなければならないと考えられている。熱積層以前のプライスタックの含水率が1.5重量パーセント未満である場合、積層サイクル全体を通して積層品の中に少なくとも1重量パーセントを維持すること、ひいてはプライ接着力の改善および意外な圧力特性を得ることは困難である。熱積層に進むプライの含水率が7重量パーセントを超える場合、加熱および冷却ステップにより多くのエネルギーが必要となるという望ましくない状況だけが存在し、付加的な利点は全く無いと考えられている。
プライは、1つのプライを他のプライ上に層状化することで組合わせることが可能であり、一部の実施形態においては、典型的に2〜12プライを層状に貼り合わせることができる。これは、バッチプロセスではバッチ圧縮用に加熱した段プレス内に設置するために個々のプライ(シート)を手作業で積み重ねて貼り合わせることによって達成できる。あるいは、連続プロセスでは、2重ベルトプレスまたは連続熱積層用のその他の設備のニップ内の入口でプライを巻き出しながら、自動的かつ連続的にこれらを一緒に組合わせることができる。
プライは、250〜400℃の表面接触温度で作動する加熱されたプレスに提供される。一部の実施形態では、この温度は290〜360℃である。この加熱ステップ中、プライスタックは、少なくとも1.3MPaの圧力で、熱で積層され、この圧力は、シート構造体の加熱ステップ全体を通して維持される。一部の実施形態において、圧力は3.5〜5MPaに維持される。ベルトプレスなどの連続オンラインプロセスが用いられる一部の実施形態において、熱積層は、約30秒〜3分間実施される。段プレスが使用される一部の実施形態において、熱積層は、数分間、または10分間、あるいは非常に厚い構造体についてはさらに長い時間にわたり実施される。熱積層の後、積層構造体が100℃未満に冷却される一方で、少なくとも1.3MPaの積層圧力が維持される。一部の実施形態では、冷却中、3.5〜5MPaの圧力が維持される。加熱および冷却ステップを通して高い圧力を維持することにより、ひとたび積層品に対する圧力が解放された時点で積層構造体内に保持された水分が勢いよく蒸発することはなくなる。一般に、冷却時間は、積層シート構造体の秤量に左右される。或る種の段プレスを用いて手作業バッチプロセスで積層シート構造体が作られる場合、積層シート構造体の重量のみならずプレスの能力に応じて、冷却時間は、熱積層時間よりも著しく長いものであり得る。バッチ方法を用いる一部の実施形態においては、冷却時間は、わずか30分から2時間にまで及ぶ可能性がある。
一部の実施形態において、熱積層および冷却は、シート構造体を実質的に定圧下に維持しながら、加熱用ゾーンと冷却用ゾーンを有するベルトプレス上において実施する。一部の好ましい実施形態においては、冷却は、少なくとも1つの加熱した区分と少なくとも1つの冷却した区分を有するベルトプレス上で連続的に実施される。この場合、冷却の所要時間は熱積層のための時間と同じであり得、あるいはそれより短いかまたは長い可能性もある。一部の実施形態では、冷却ステップにおける所要時間が熱積層時間より短いことが有利である。一部の実施形態においては、これは3分未満であり得る。
シート構造体熱積層は、段プレス、2重ベルトプレスまたは、圧力放出の中間ステップ無しで構造体に対する連続的圧力を維持しながら加熱と冷却の両方をシート構造体に対して行なうことができるようにするその他のあらゆる装置を用いて達成可能である。有用な方法は、米国特許第4,336,096号明細書;4,334,468号明細書;5,098,514号明細書;5,141,583号明細書;および5,149,394号明細書で一般的に開示されているタイプの、またはこれらの特許中で示された装置から導出されたタイプのベルトプレスを利用することができる。
一部の好ましい実施形態においては、ベルトプレスが使用される場合、ベルトプレスの同じ表面は、シート構造体の加熱および冷却の両方を提供する。換言すると、プライスタックがひとたびベルトプレスに入った時点で、ベルトプレスの同じ表面はプライスタックに対する連続的圧力と加熱した積層構造体を製造するための加熱の両方を提供し、次にその同じ積層構造体が100℃未満に冷却されるにつれてそれに対し連続的圧力を提供し続ける。それによって、プライ内の水分が、改善された局所的剥離性能と意外な圧縮特性を有する積層構造体の形成を支援することが可能になる。
一部の実施形態においては、プロセスから退出する冷却された積層構造体の含水率は、少なくとも1重量パーセントであり、最終積層構造体内の空隙率は25体積パーセント以下である。最終積層構造体中の比較的小さい空隙率は、高水準のプライ接着力および低い圧縮性ならびに圧縮永久歪にとって重要である。プレスボードタイプの積層構造体の場合、好ましい空隙率は10〜20体積パーセントである。10体積パーセント未満の空隙は通常、材料の脆性および10パーセント未満の破断点伸びを結果としてもたらす。
複数のプライは、冷却後のシート構造体が0.90mm以上の厚みを有するプレスボードとなるように選択される。1つの非常に有用な実施形態において、プレスボードの厚みは0.90および10.0mmである。
プレスボードは、熱安定性フロックおよび少なくとも40重量パーセントのアラミドフィブリドを含みかつ0.9mm以上の厚みを有する複数のプライを含み、このプレスボードは、25体積パーセント以下の空隙率および、次式
Y>2.97(X)(-0.25)
(式中、(X)はミリメートル単位のプレスボードの厚みである)によって定義されるメガパスカル単位のプライ接着力(Y)を有する;プレスボードは1.6パーセント以下の圧縮性と0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有し得る。
一部の実施形態においては、最終的プレスボードは、10〜20体積パーセントの空隙率を有する。上述のように、空隙率が10体積パーセント未満である場合、材料は脆弱になり、たとえプレスボードが良好なレベルのプライ接着力を有していても、プレスボードを最終的部品に加工するための加工性は、その過度の脆性に起因して低いものであり得る。同様に、10体積パーセント未満の空隙率は、このプレスボードを油入変圧器内の電気絶縁体として使用する場合プレスボードに油を含浸させることを困難にすると考えられている。このようにプレスボードの空隙内に油を含浸できなかった場合、絶縁体内に一部局所的放電が発生し、これが経時的に使用中のプレスボード破損の原因となり得る。
加工中および最終的な使用中の許容可能な性能については、最終積層構造体のz方向でのプライ接着力または引張り強度が非常に重要である。プライ接着力が不適切であると材料および最終的電気装置の剥離やさらなる故障を結果としてもたらす可能性がある。
積層構造体の平担度は、通常、反り度という反対の特性によって測定される。積層構造体は反り度が小さければ小さいほど、平担度が高い。好ましい実施形態においては、先に記述した要領で製造した積層構造体またはプレスボードは、高圧縮抵抗をもつプレスボードを生産する公知の方法を用いて製造された積層構造体に比べ、平担度が高く反りが少ない。品質管理として一般に使用されている積層シート構造体の反りの相対量を決定する1つの方法は、プレスの幅と同じ幅およびこの幅の恐らく30〜50パーセントの長さを有する積層シート構造体の矩形試料を、このシート構造体がプレスから取り出される時に採取することにある。しかしながら、所望される場合、50×50cmの正方形の試料も使用することができる。積層シート構造体は、試料より大きい上面表面積をもつ頑丈な金属テーブルなどの均一に平担な表面上に設置される。次にシートの1コーナーを平担な金属テーブル上に手でしっかりと押しつける。積層構造体の1区分が何らかの反りを有する場合、その区分は上方に強制され、積層シートがテーブルから隆起している距離を測定することができる。この測定技術を用いた一部の実施形態においては、プレスボードは、50×50cmの試料上で測定した場合に2mm以下の反りを有する。
積層構造体またはプレスボードの適切な引張り強度は、材料の良好な加工性および最終的利用分野におけるその耐久性を保証する一助となる。一部の実施形態においては、プレスボードは80MPaより高い引張り強度を有する。
積層構造体またはプレスボードの破断点伸びの測定値は、その堅牢性または脆性度を特徴づける。一部の実施形態においては、プレスボードは、熱安定性フロックが3000cN/tex未満の初期モジュラスを有する場合、少なくとも10パーセントの破断時伸びを有する。
プレスボードの圧縮特性には、標準条件での合計圧縮変形を特徴づける圧縮性と、不可逆的圧縮変形を特徴づける圧縮永久歪が含まれる。低い圧縮性と低い圧縮永久歪の両方を有するプレスボードはより安定した厚みを有し、電気装置および機械の設計の際の絶縁用スペーサーとしてのその機能に関してさらに高効率である。一部の実施形態においては、プレスボードは1.6パーセント以下の圧縮性を有し、一部の実施形態では、プレスボードは0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有する。好ましい実施形態においては、圧縮永久歪は0.15パーセント未満である。
プレスボードは、電動機、発電機および変圧器を含む異なる電気装置と同様にサンドイッチパネル用の表面板およびコアを含めた異なる構造体用複合材料のための電気絶縁システムの一部として有用である。これらの利用分野においては、プレスボードは、所望の通り、含浸用樹脂を伴ってまたは伴わずに使用可能である。
試験方法
シート構造体のz方向におけるプライ接着力または引張り強度を、直径7.06cmの円形状の試料を用いてASTM D952−02に基づいてInstron(登録商標)タイプの試験機上で決定した。
シートおよびシート構造体の厚みを、ASTM D374−99にしたがって決定した。
シートおよびシート構造体の密度、圧縮性および圧縮永久歪をASTM D3394−94にしたがって決定した。50.8mm×39.1mmの面内寸法および約51mmの合計スタック高さを有する矩形試料を用いて、圧縮性および圧縮永久歪を決定した。
シートおよびシート構造体の引張り特性を、ASTM D202にしたがって決定した。
実施例1
より厚い積層構造体内のプライとして使用する予定の中密度のアラミドプレスボード(空隙率は約40体積パーセント)を、米国特許第4,752,355号明細書中に記載されている通りに作製した。このプレスボードの作製において使用された固体材料は、60重量パーセントのメタ−アラミドフィブリドおよび40重量パーセントのメタ−アラミドフロックであった。米国特許第3,756,908号明細書中に記載されている通りにポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から、メタアラミドフィブリドを製造した。メタ−アラミドフロックは、線密度0.22tex(2.0デニール)、長さ0.64cmで、初期モジュラスが約800cN/texであるポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フロック(商標名NOMEX(登録商標)としてDu Pont社から販売)であった。この中密度プレスボードの坪量は1214g/m2、厚みは1.5mm、そして密度は0.81g/cm3であった。
50×50cmの面内寸法を有するこのプレスボードの2枚のシートを空気中で、4.5重量パーセントの含水率に平衡化し、285℃に加熱した段プレス内に互いに積重ねて投入した。2層構造体を2分間285℃の温度および350psiの圧力で圧縮した。その後、同じ圧力を維持しながら90℃の温度までプレスを冷却し、10分間この温度に保った。
最終的ボードの含水率は約3重量パーセント、厚みは2.0mmそして密度は1.14g/cm3であり、これは約16体積パーセントの空隙率に相当していた。プライ接着力は3.2MPa、圧縮性は1.14パーセントそして圧縮永久歪は0.12パーセントであった。最終的ボードの試料を、反りの測定を目的として段プレスから直接採取した。この最終的ボードには、感知できるほどの反りは発見されなかった。プレスボードのその他の特性は、以下の表1に記載されている。
比較例A
より厚い積層構造体内でプライとして使用する予定の、実施例1の中密度のアラミドプレスボードを約2時間、160℃にてオーブン内で乾燥させて、プレスボードから本質的に全ての水分を除去した。実施例1の場合と同様に、285℃に加熱した段プレス内に互いに積重ねてこのプレスボードの2枚のシートを投入した。2層構造体を2分間285℃の温度と350psiの圧力で圧縮した。高温プレスを開放した後、高温の圧縮ボードを高温プレスから取り出し、低温プレスへと移送し、ここで約90℃まで冷却した。
プレスから取り出した最終的ボードは、測定できる水分を全く含まず、2.0mmの厚みおよび1.13g/cm3の密度を有し、これは約16体積パーセントの空隙率に相当していた。プライ接着力は2.3MPa、圧縮性は1.40パーセントであり、圧縮永久歪は0.20パーセントであった。最終的ボードの測定された反りは3mmであった。プレスボードのその他の特性は、以下の表1に記載の通りである。
実施例2
密度が0.27g/cm3で空隙率が約80体積パーセントである低密度アラミド紙を、米国特許第3,756,908号明細書に記載されている一般的方法を使用して。このプレスボードを作製する上で使用した固体材料は、60重量パーセントのメタ−アラミドフィブリドおよび40重量パーセントのメタ−アラミドフロックであり、実施例1の場合と同じであった。紙の坪量は128g/m2であった。
3.5〜4重量パーセントの含水率をもつこの紙のロール9本を、長さ2.1メートルの加熱ゾーンと長さ0.95メートルの冷却ゾーンを有する等圧2重ベルトプレスの巻き出しスタンド上に設置し、速度2m/分および圧力42バールでプレスの加熱ゾーンおよび冷却ゾーン内にプライスタックを通過させることにより、9枚の紙プライを積層して貼り合わせる。加熱されたゾーンの温度は312℃であり、冷却されたゾーンの端部の温度は95℃であった。
最終積層構造体の含水率は3.2重量パーセント、厚みは0.99mmそして密度は1.14g/cm3であり、これは約16体積パーセントの空隙率に相当していた。プライ接着力は4.3MPa、圧縮性は1.20%そして圧縮永久歪は0.12%であった。プレスボードのその他の特性は、以下の表1に記載されている。
実施例3
実施例2と同様に低密度アラミド紙を作製した。ただしこの紙は約78体積パーセントの空隙率を有し、54重量パーセントのメタ−アラミドフィブリドおよび46重量パーセントのメタ−アラミドフロックから作られ、その坪量は196g/m2であった。3.5〜4重量パーセントの含水率を有するこの紙のロール4本を、速度6m/分、圧力30バールで実施例2の場合と同じ等圧2重ベルトプレス上で積層し、その後冷却した。加熱ゾーンの温度は312℃であり、冷却ゾーンの端部の温度は60℃であった。最終的紙の含水率は2.8重量パーセント、厚みは0.73mmそして密度は1.07g/cm3であり、これは約22体積パーセントの空隙率に相当していた。プライ接着力は4.0MPaであった。紙のその他の特性は、以下の表1に記載されている。
表1
Figure 2012508836
T=厚み、mm
D=密度、g/mm3
V=空隙率、体積%
C=圧縮性、%
CS=圧縮永久歪、%
PA=プライ接着力、MPa
S MD/CD=引張り強度 流れ方向/横断方向、MPa
E MD/CD=破断点伸び 流れ方向/横断方向、%

Claims (8)

  1. 熱安定性フロックおよび少なくとも40重量パーセントのアラミドフィブリドを有する複数のプライを含むプレスボードであって、その最終平均厚みが0.9mm以上であり、25体積パーセント以下の空隙率および、次式
    Y>2.97(X)(-0.25)
    (式中、(X)はミリメートル単位の前記プレスボードの厚みである)によって定義されるメガパスカル単位のプライ接着力(Y)を有するプレスボード。
  2. さらに1.6パーセント以下の圧縮性を有する、請求項1に記載のプレスボード。
  3. さらに0.18パーセント以下の圧縮永久歪を有する、請求項1に記載のプレスボード。
  4. 80MPa超の引張り強度および10パーセント超の破断点伸びを有する、請求項1に記載のプレスボード。
  5. 前記アラミドフィブリドがポリ(メタフェニレンイソフタミド)フィブリドである、請求項1に記載のプレスボード。
  6. 前記熱安定性フロックが3000cN/tex未満の初期モジュラスを有する、請求項1に記載のプレスボード。
  7. 熱安定性フロックが、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、フルオロポリマー繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維およびその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプレスボード。
  8. 前記アラミド繊維がポリ(メタフェニレンイソフタミド)繊維である、請求項5に記載のプレスボード。
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