JP2012506709A - 質量分析法による核酸分子の配列決定 - Google Patents

質量分析法による核酸分子の配列決定 Download PDF

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Abstract

本発明は、以下の工程:a)少なくとも1つの修飾を有する核酸分子の複数の分子を提供する工程;b)複数の修飾核酸分子をランダムに切断し、それにより修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片とを提供する工程;c)修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離する工程;d)修飾核酸分子断片をその長さ、質量および/または電荷によって分離または分別し、そのような分離または分別によって、修飾核酸断片のパターンが生成される工程;ならびにe)任意で修飾核酸断片のパターンを可視化する工程を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定するための方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、核酸分子のヌクレオチド配列を解析および/または決定する方法に関する。
核酸分子は、診断ツールとしておよび/または治療薬として使用されており、これらの核酸分子は、部分的にもしくは完全にランダム化された核酸分子ライブラリーのスクリーニングにより同定するか、またはアンチセンス、siRNAおよびmiRNAに対して行なわれるようなコンピュータアルゴリズムによって支援される相補的配列により予想することができる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖分子であることができ、構造化されていることも構造化されていないこともあり、ペプチド、タンパク質、多糖およびその他のより大きな分子にコンジュゲートさせることができ、その糖骨格は、リボース、デオキシリボースおよび/またはそれらの修飾誘導体からなることができる。
核酸分子の機能は、
a)アンチセンス核酸分子、触媒的核酸分子、siRNA分子およびマイクロRNA分子の形態でのmRNAへの配列特異的ハイブリダイゼーションおよびmRNAのスイッチオフ(Couzin,2004;Crooke,2004;Harmon,2002;Juliano et al,2008;Scherer & Rossi,2003;Schlosser et al,2006;Usman & Blatt,2000;Weigand et al,2006;Zhang & Farwell,2008);
b)あるいは核酸分子の標的分子への結合および/または核酸分子による標的分子の機能の阻止、ここで、これらの核酸分子は、アプタマー、シュピーゲルマーおよびデコイ核酸を含む(Carothers & Szostak,2006;Cload et al,2006;Eulberg et al,2006;Mann & Dzau,2000;Nimjee et al,2006;Realini et al,2006);
c)あるいは例えば、CpG−DNA(Weiner,2000)およびランダムオリゴヌクレオチドの形態での、免疫系に対するその刺激効果
に基づくことができる。
このような核酸分子の診断ツールとしてのおよび/または治療薬としての生産、開発および使用は、核酸分子のアイデンティティーを確認する方法を必要とし、そのため、感度がよく、正確で、かつ再現性のある分析が必要とされている。アイデンティティーの確認には、核酸分子の分子質量と分子長ならびにその塩基組成、配列、および糖部分とヌクレオチド間連結のアイデンティティーの決定が必要とされる。使用される方法は、特異的であるべきであり、それにより、修飾塩基および修飾糖部分、付加または欠失産物、ならびに脱プリン化産物の同定が可能になる。ヌクレオチド配列の決定は完全でなければならず、どの化学的または酵素的操作も塩基または骨格に悪影響を及ぼさないことが示されなければならない。修飾核酸分子がヌクレアーゼ安定性である場合、修飾核酸分子の特徴解析は特に困難である。このようなヌクレアーゼ安定性の核酸分子は、糖骨格の2’位で修飾されているか、または鏡像ヌクレオチドからなる。しかしながら、核酸分子のヌクレオチド配列を決定するために、とりわけ、電気泳動、酵素的および化学的分析、アレイ技術および質量分析法をはじめとする、いくつかの技術が開発されている。
酵素的および化学的分析による核酸のヌクレオチド配列決定
1970年代、3つの核酸分子配列決定技術が開発されたが、これらは、多くの実験室で実施される一般的でかつ比較的迅速な方法である。
MaxamとGilbertによるDNA配列決定方法。MaxamとGilbertによって記載された方法には、末端標識DNA分子がヌクレオ塩基特異的な様式で化学的に切断されるプロセスが記載されている。核酸分子配列中の各々の塩基位置は、その後、ヌクレオ塩基特異的切断によって生じた断片の分子量から決定される。個々の反応は、グアニン、アデニン、シトシンとチミン、およびシトシンでのみ選択的に切断するように考案された。これら4つの反応の産物が、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、増加する断片サイズの増加する負電荷によって分子量で分別されたとき、分別されたゲル上の断片のパターンからDNA分子の配列を解読することができる(Maxam & Gilbert,1977)。
SangerによるDNA配列決定方法。もう1つの方法−Sangerらによって開発された方法−は、ジデオキシヌクレオシド三リン酸(略称、ddNTP)の鎖停止能と、DNAポリメラーゼの天然基質である、デオキシヌクレオシド三リン酸(略称、dNTP)とほぼ同じ忠実さでddNTPを取り込むDNAポリメラーゼの能力とを利用する。簡潔には、通常オリゴヌクレオチド分子である、プライマー分子と鋳型DNA分子とを、有用な濃度の4つ全てのdNTPと限られた量の単一のddNTPの存在下でインキュベートする。DNAポリメラーゼは時々、成長する増幅鎖の中に鎖伸長を停止させるジデオキシヌクレオチドを取り込む。ジデオキシヌクレオチドには3’−ヒドロキシルがないので、このポリメラーゼ酵素の開始点は失われる。ポリメライゼーションにより、全てが同一の5’末端を有する、様々なサイズの核酸分子断片の混合物が生じる。例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるこの混合物の分画により、核酸分子中の各々のヌクレオチドの存在と位置を示すパターンが生じる。4つのddNTPの各々を用いる反応により、MaxamとGilbertによって開発された技術(Maxam & Gilbert,1977)を用いてなされるのと同じ様に分別されたゲルから核酸分子配列を解読することが可能になる(Sanger et al,1977)。
PeattieによるRNA配列決定方法。DNA分子と比較して、RNA分子の化学的特性が異なっており、かつRNA分子の不安定性がより大きいために、MaxamとGilbertの化学的方法はRNA分子には適用できない。Peattieは、RNA分子の配列を決定する化学的方法を開発した。この方法では、RNA分子を3’放射性標識し、ヌクレオ塩基特異的な様式で化学的に切断する。核酸分子の核酸配列中の各々のヌクレオチド位置は、その後、ヌクレオ塩基特異的切断により生じた核酸分子断片の分子量から決定される。個々の反応は、グアニン、アデニンまたはグアニン、シトシンとウラシル、およびウラシルでのみ選択的に切断するように考案された。これら4つの反応の産物が、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による移動度識別を用いて、分子量により分別されたとき、分別されたゲル上の断片のパターンからRNA分子の配列を解読することができる(Peattie,1979)。
Sanger法に基づくRNA配列決定方法。RNA分子の配列を同定する最も一般的な方法は、上記のSangerによる方法である。RNA分子の場合、ジデオキシ鎖停止反応は、RNA分子鋳型を解読し、相補的デオキシヌクレオチドを挿入する逆転写酵素によって触媒される。DNA配列決定で使用されるポリメラーゼの場合と同様に、逆転写反応は、ジデオキシヌクレオチドによって阻害される(Zimmern & Kaesberg,1978)。
RNAフィンガープリンティング。RNAフィンガープリンティングアプローチでは、RNA分子は、2以上のエンドヌクレアーゼによって別々に消化される。これらのエンドヌクレアーゼは特異的に切断する。各々の切断反応から得られるRNA分子の断片は、電荷によって(第1の次元)および長さ(第2の次元)によって分離される。電荷による分離は、セルロースアセテートストリップ上での高圧電気泳動の使用によってなされる。その後、RNA分子断片は、第2の次元での分離のためにDEAEセルロース紙に転写される。配列は、別々の酵素的消化反応に由来するクロマトグラフィーで分別された断片を重ね合わせることにより決定される(Branch et al,1989)。
Sanger、MaxamとGilbert、およびPeattieの方法(Maxam & Gilbert,1977;Peattie,1979;Sanger et al,1977)に基づいておよび/またはこれらの方法に関連して、これらのプロセスのいくつかの改良および/または修正、すなわち、放射性標識に代わる蛍光標識、ポストラベリング法、化学的切断に代わる酵素的切断、段階的ワンダリングスポット法、RNAとDNAの代替切断反応が開発された(Donis−Keller et al,1977;Gupta et al,1976;Gupta & Randerath,1977;Lockard et al,1978;Proudnikov & Mirzabekov,1996;Stanley & Vassilenko,1978;Tanaka et al,1980;Waldmann et al,1987;Wu et al,1996)。
しかしながら、各々の技術には固有の限界がある。例えば、MaxamとGilbert(Maxam & Gilbert,1977)およびPeattie(Peattie,1979)は、化学的分解アプローチを開示し、Sangerら(Sanger et al,1977)は、相補鎖プライマー伸長を用いた鎖停止法を開示している。これらの技術の各々は、4つの別々の反応混合物を用いて、結果として完全なヌクレオチド配列となる、長さが1ヌクレオチドだけ異なる入れ子状の断片の組を生み出す。そのサイズと停止ヌクレオチドとに基づく断片の分別をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって行ない、これらの断片の順番、したがって、核酸分子のヌクレオチド配列を決定する。ゲルの作製および核酸分子の電気泳動による分離は時間がかかる操作である。核酸分子の配列を決定するためのゲル電気泳動の使用は、バンド圧縮効果による誤差の潜在的な原因であり、この場合、核酸分子の近接断片が分別されず、各々の個々の鎖の同定は、相対値、すなわち、移動時間の測定に基づく。誤差の潜在的な原因は、例えば、核酸分子およびその断片の構造である。例えば、薄層クロマトグラフィー(略称、TLC)を使用するRNAフィンガープリンティングアプローチは、未知(修飾)構造の特徴解析には適さない(Limbach,1996)。
したがって、質量分析法による核酸分子の配列決定が、これらの限界を克服するための有望なアプローチとなった(Limbach,1996)。
質量分析法による核酸のヌクレオチド配列決定
質量分析法(略称、MS)は、化合物の分子質量を分析するための強力なツールである。核酸分子分析に関しては、MSは核酸分子配列決定、核酸分子修飾検出および核酸分子断片の決定に適用可能である。MSによる核酸の分析は、主に、イオン化効率によっておよびいくつかの適用可能な検出方法の分解能によって制限される。
荷電分子しか質量検出器によって分析することができない。それゆえ、分析される分子は、質量分析計に導入される前に、効率的にイオン化される必要がある。質量分析前の核酸分子の効率的なイオン化のために、以下の技術:エレクトロスプレーイオン化(略称、ESI)(Fenn et al,1989)およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(略称、MALDI)(Karas & Hillenkamp,1988)が一般に使用される。ESIは、主に溶液の帯電した液滴の気化による、溶液状態の分子またはイオンの気相イオンへの変換である。ESIは、市販の質量分析計の線形範囲内の質量電荷比を有する複数の荷電イオンの分布を生み出すことができる。溶液中に存在する化合物の混合物をESI−MSで直接分析することはできるが、この処理は、様々な化合物の複数の帯電、過剰な電荷の競合および塩付加物による干渉のために、例えば、複素スペクトルに悩まされることがある。それゆえ、エレクトロスプレーイオン化は、多くの場合、分離機構の下流に直接カップリングされる。流速、イオン化モード、緩衝剤、および溶媒付加物などの様々な臨界パラメータが最適化されたときに、この処理によって効率的なイオン化が促進される。
ESI−MSは感度がよく、フェムトモル量の試料しか必要としないが、効率的なイオン化を達成するために複数の電荷に依拠しており、単純な核酸分子についてさえも複雑でかつ解釈が難しい多価スペクトルを生じさせる。それゆえ、実際には、ESI−MSの適用は、データの「デコンボリューション」を可能にするソフトウェアパッケージの利用可能性に依存する。デコンボリューションは、多価質量スペクトルデータから分子の非荷電(中性)質量を決定するためのアルゴリズムに基づく計算プロセスの使用を含む。
例えば、飛行時間型(略称、TOF)質量分析計とともに使用されるマトリックス支援レーザー脱離イオン化(略称、MALDI)は、その質量範囲が比較的幅広くかつサンプリング速度が高いために、核酸分子の配列を決定する大きな潜在的可能性がある。質量の大きい生体分子は容易にイオン化し、分析することができるので、核酸分子のような質量の大きい生体分子のルーチン分析のためには、ESI−MSと比較してMALDI−MSが一般に好ましい。さらに、MALDI−MSは、主に、一価の種を生成させ、これにより、スペクトル、特にオリゴヌクレオチドの混合物を含有するスペクトルの解釈が大いに単純化される。
しかしながら、一般に、核酸分子のMALDI−MS分析は、高分子量核酸分子断片の分別不足、核酸の不安定性、および試料調製試薬による干渉によって悩まされ得る。MALDIによって高分子量のイオンにより大きい運動エネルギーが与えられるため、より長い核酸分子は、より幅広く、あまり強くないシグナルを与えることがある。高分子量核酸を分析するためにMALDI−MSを使用し得るが、MALDI−MSは核酸分子骨格の切断を誘導することがあり、これによって、得られるスペクトルがさらに複雑になる。MALDIは、ESIよりもイオン抑制に対して感度が低いが、イオン抑制は依然としてMALDI分析の問題であり、試料浄化戦略の使用、および/またはクロマトグラフィーによる分離を必要とする。しかしながら、MALDIは、簡単には溶液ベースの技術と直接カップリングすることができず、通常はオフラインモードまたはアットラインモードで操作される。
配列決定のための直接的質量分析法
外部反応に依存しないで配列特異的イオンを生成させる質量分析法のアプローチはいずれも直接的な配列決定方法とみなされる。上記のように、ESIおよびMALDIは、核酸分子用に選択されるイオン化方法である(Limbach,1996)。この方法の詳細な概略は、LimbachおよびNordhoffら(Limbach,1996;Nordhoffet al,1996)により示されている。
脱離/イオン化誘導性断片化。核酸分子の解離は、脱離/イオン化プロセスの間に核酸分子に与えられる過剰なエネルギーの結果として起こることがある。この解離は、比較的速い時間スケールで起こり、正確に同定することが通常は難しいイオンを生じさせる。ESIは主に、安定な、インタクトの分子イオンを生じさせる。脱離/イオン化誘導性解離のほとんどはMALDIで見られ、MALDI−TOF−MSには、脱離/イオン化誘導性解離のための4つの異なる時間スケール:迅速、高速、高速準安定および準安定が存在する。理論上は、これらの時間スケールのいずれか1つの間に起こる解離によって、核酸分子の配列を決定するために使用し得る核酸分子断片イオンが生成されることになる。実際は、分析者が断片化の程度を制御することはほとんどできない。これらの断片の大部分は、分子イオンピークの広がりを生じさせ、分解能と感度の損失をもたらす(Limbach,1996)。
タンデム質量分析法。MS−MS(タンデム質量分析法とも呼ばれる)は、質量分析計内で起こる化学反応の前後のイオンの質量電荷比(m/z)の測定を含み、m/zの変化が関与する(Baker et al,1993;Boschenok & Sheil,1996;Kawase et al,1991;Limbach et al,1995;Little et al,1995;Marzilli et al,1999;Ni et al,1996;Wu et al,1998b、W.M.A.Niessen,2002)。化学反応前に、m/z値が、第1段階の質量分析計で選択される(このイオンを前駆体イオンまたは親イオンと呼ぶ)。次に、通常は中性ガス分子との衝突を伴う化学反応(衝突誘導性解離またはCIDと呼ばれるプロセス)が起こる。主に、ヘリウムまたはアルゴンが衝突ガスに使用される。この反応は、2つの質量段階の質量分析計の間の中間帯(衝突セル)で起こり得る。この反応により、前駆体イオンの分解が様々な生成物イオンで生じ得る(これらは娘イオンまたは生成物イオンと呼ばれる)。荷電断片は、その後、第2段階の質量分析計によって検出することができる。MS−MSは、2つのモードで行なうことができる。第1に、「空間型」MS−MS、すなわち、2つの質量分析計を、例えば、QTOF(四重極−飛行時間型)機器によって、空間的に隔てることができる。第2に、「時間型」MS−MS、すなわち、プロセス中の異なる工程は同じ空間で起こることができるが、例えば、イオントラップ機器の中で、時間的に隔てられている。CIDプロセスの正確な説明は、W.M.A.Niessen(2006)により記載されている。
核酸分子の配列同定のためのタンデム質量分析法の適用可能性については、LimbachおよびNordhoffらの総説(Limbach,1996;Nordhoff et al,1996)で調べることができる。CIDは、MS−MSにおける断片化を誘導するために最も広く適用されている方法である。多価アニオン性ヌクレオチドの解離に基づき、この方法は、オリゴヌクレオチドの骨格が鎖に沿って順次解離するという仮定の下、両末端からの「双方向」配列決定という概念を利用している。得られる断片は、うまく適用されたときに、配列特異的な断片化パターンを表す。RNAの断片化に関する最初の報告の1つは、Cernyら(1987)によって示された。現在の知識による「双方向」概念では、5’→3’方向の配列を構築するcシリーズイオンと3’→5’方向の配列を構築するyシリーズイオンが利用される(Schurch et.al,2002)。にもかかわらず、他の娘イオンが形成されることがあり、この娘イオンによって、配列決定プロセスが複雑化するか、支援されるかまたは可能になる場合がある。断片化がリン酸、糖および塩基部位で起こり得るという事実のために、得られるスペクトルの解釈が複雑化し、この方法は25個未満のヌクレオチドを有する核酸に制限される(Alazard et al,2002)。この制限は、ニュートラルロス(イオン化されていない娘イオンは検出することができない)、検出限界の問題または検出器の限られた分解能などの様々な要因に帰することができる。衝突エネルギーも重要な役割を果たす。低い衝突エネルギーが、より少ない配列関連イオンを生じさせる一方、より高い衝突エネルギーは、データ解釈を複雑化する他のイオンシリーズを生じさせる場合がある。ここ数年、徹底的に研究されてきた、DNAのCIDとは対照的に、RNAを用いたCIDの態様は、まだ完全には解決されていない。
MSで核酸分子の配列を決定する「直接法」に限界があるので、質量分析法で核酸分子の配列を決定するために、以下の間接法が開発され、利用されている。
配列決定のための間接的質量分析法
本明細書で使用されることが好ましい配列決定のための「間接的質量分析法」とは、配列が決定されるべき核酸分子の調製が、試料の気相イオンが生成される前に行なわれることを意味する。
予測された核酸分子組成を確認するツールとしての質量測定のための間接的質量分析法は、本明細書で論じられていない。さらなる情報は、Limbachの総説(Limbach,1996)に示されている。
連続的な骨格切断に依拠する任意の質量分析配列決定法の有用性は、質量ラダーの形成に依存する。配列情報は、質量スペクトル中の連続するピーク間の質量差を決定することによって得られる。オリゴデオキシヌクレオチドの場合、連続するピーク間の予想される質量差は、dC=289.05、dT=304.05、dA=313.06、およびdG=329.05(精密質量に基づく値)の損失に対応する。オリゴリボヌクレオチドの場合、質量差は、C=305.04、U=306.03、A=329.05、およびdG=345.05(精密質量に基づく値)である。核酸配列決定方法は連続するn量体の質量測定に依拠しているので、4つのDNA分子残基間の質量差が比較的大きいゆえに、DNA分子はRNA分子よりも特徴解析が容易である。リボヌクレオチドのUとCの質量差がわずか1ダルトン単位と小さいために、UとCを正確に区別するための測定に要求される精度はずっと高い。質量ラダー法には、所望の情報をもたらす2つの質量測定値の差によって、ヌクレオチド残基のアイデンティティーが与えられるという配列決定にとっての1つの明確な利点がある(Limbach,1996)。
ヌクレアーゼ消化後の核酸分子ラダーの分析。DNAまたはRNA分子断片は、5’→3’ホスホジエステラーゼおよび/または3’→5’ホスホジエステラーゼを用いるヌクレオチドの加水分解によって生成される。通常、これら2つの組合せを用いて、全てのヌクレオチドを同定する。切断された(truncated)および/または切断された(cleaved)核酸分子は、MALDI−TOF−MSまたはESI−MSで分析される。ディレイド・エクストラクション、試料浄化、酵素、緩衝液pHおよびマトリックスの最適化などの技術の改良(Bentzley et al,1998;Bentzley et al,1996;Faulstich et al,1997;Glover et al,1995;Kirpekar et al,1994;Owens et al,1998;Pieles et al,1993;Schuette et al,1995;Smirnov et al,1996;Wu & Aboleneen,2001;Wu et al,1998a)によって、最大35ヌクレオチドまでの分解能の増強が達成された(Alazard et al,2002)。
しかしながら、酵素的配列決定は、その糖骨格に修飾を含まない核酸分子に限られる。その上、いくつかのヌクレアーゼは一本鎖特異的である。いくつかの核酸分子、とりわけ、アプタマーなどの長いオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ消化のより悪い基質となる分子内および/または分子間構造を生じさせる二本鎖配列部分を示す。
化学的消化後の核酸分子ラダーの分析。エキソヌクレアーゼに加えて、化学薬剤を質量分析測定前の核酸分子の制御分解に使用することができる。化学薬剤は、核酸分子が修飾されている場合に、特に必要とされる。この修飾は、酵素的消化に対する核酸分子の安定性を増加させるために特異的に選択される。酵素的消化方法と同様に、化学的切断反応は、DNAおよびRNA分子に対するその特異性や異なるヌクレオ塩基に対するその特異性によって分類される。MS分析前に使用することができるRNAおよびDNA分子に対する塩基特異的反応は、PeattieおよびMaxam−Gilbert(Maxam & Gilbert,1977;Peattie,1979)により記載されている。しかしながら、DNA分子のホスホジエステル骨格の非特異的な(ランダムな)切断は、酸加水分解によって行なわれ(Shapiro & Danzig,1972);RNA分子のホスホジエステル骨格の非特異的な(ランダムな)切断は、酸(例えば、ギ酸)(Farand & Beverly,2008)や、生理的pHのポリアミン(Komiyama & Yoshinari,1997)を用いて、塩基加水分解によって行なわれる。
任意の連結部位が化学薬剤によって切断される可能性があるので、DNAまたはRNA分子のホスホジエステル骨格の非特異的な(ランダムな)切断を用いる配列決定のための核酸分子の質量ラダーの生成は複雑化することがある。ヌクレオ塩基特異的な化学的切断も、それぞれのヌクレオ塩基がある核酸分子の全ての位置でランダムに起こることがある。単一の切断部位が生成されれば、5’末端から1つ、3’末端から1つの、2つの特異的断片が生じる。両方の断片が質量スペクトル中に検出されるならば、核酸分子の配列決定に必要とされるものよりも多くの情報が存在する。これら2つのイオンシリーズは、混乱のもとになり得る。他の混乱のもとは、内部切断から生じる。前述のように、核酸分子の骨格に沿った単一の切断によって、2つの断片−5’末端から生じる1つの断片と、3’末端から生じるもう1つの断片が生成される。核酸分子の骨格に沿ったもう1つの切断反応によって、3つの断片が生成される:第1の断片は5’末端であり、第2の断片は3’末端であり、第3の断片はどちらの末端も含まない。5’または3’末端が参照点として使用されるので、5’または3’末端を含む断片は質量ラダーの構築に使用することができる。対照的に、内部断片は質量ラダーの構築に使用することができない。加えて、内部断片と末端断片のうちの1つの質量が同一である場合、不正確な解釈が行なわれ得る。さらに、これらの内部断片の存在は、所望の5’または3’末端断片のイオン抑制をもたらすことがある。それゆえ、化学的消化のための反応条件を単一切断条件に注意深く合わせる必要があるが(Limbach,1996)、ランダムな切断反応の場合、これを制御する能力は限られている。
核酸配列決定は、化学的切断反応と、それに次ぐ質量分析法による切断反応の分析によって行なうことができる(Farand & Beverly,2008)。FarrandとBerverlyは、2’デオキシリボヌクレオチド、2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、無塩基リボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの混合物を含有する高度に修飾された核酸分子を使用し、ギ酸を用いて、リボヌクレオチドを分解し;水酸化ナトリウムを用いて、リボヌクレオチド、2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチドおよび無塩基残基を分解し;ピペリジンをリボヌクレオチド、2’−フルオロリボヌクレオチドおよびデオキシグアノシンに用いた。また、(Peattie、Maxam & Gilbertにより報告されたような)塩基特異的反応を用いて断片を得た。正確な質量分析の間、鎖の最後のヌクレオチドを含有する短い断片(1〜3ヌクレオチド長)は、LC−MSで保持されにくい。それゆえ、3’末端ヒドロキシルを含有する最後の2または3個のヌクレオチドを確認するために、タンデム質量分析法が必要とされた(Farand & Beverly,2008)。
エンドヌクレアーゼ消化および化学的消化後の核酸分子ラダーの分析。RNA分子中のUとCの質量差が小さい(1Da)ために、部分的エキソヌクレアーゼ消化と、それに次ぐMALDI−TOFを用いて(DNA分子で示されるような)一義的な帰属をすることが難しい。エキソヌクレアーゼ消化からは、曖昧な配列帰属が生じ、その場合、ピリミジン塩基のCとUを互いに区別することができない。それゆえ、TolsonとNicholsonは、こうしたRNA分子の配列の曖昧性を解決するために、配列特異的エンドヌクレアーゼと化学的方法とを組み合わせた方法を開発した(Tolson & Nicholson,1998)。酵素的反応の特異性が予想した通りではなかったので、著者らは、Uでの切断によって形成される特徴的断片を生じさせるRNAのヒドラジン/アニリン処置を用いた(Tolson & Nicholson,1998)。
Sangerのジデオキシ停止反応後の核酸分子ラダーの分析。Sangerの配列決定戦略により、MALDIまたはESI質量分析法などの質量分析法を用いて、ヌクレオ塩基特異的な鎖停止によって得られる入れ子状の断片をその異なる分子質量により分析することで、配列情報をまとめることが可能になる。この方法は、サイクルシークエンシングを用いて停止群の量を増加させること、反応条件を最適化すること、伸長産物を精製すること、塩付加物を除去すること、およびより良好な分別のためにディレイド・エクストラクションを利用することによって改良された(Fu et al,1998;Harksen et al,1999;Kirpekar et al,1998;Koster et al,1996;Monforte & Becker,1997;Mouradian et al,1996;Roskey et al,1996;Shaler et al,1995;Taranenko et al,1998;Taranenko et al,1997)。
このMALDI−TOF配列決定方法を用いて、100個よりも多いヌクレオチドからなるDNA分子の配列を分析することができた(Taranenko et al,1998)。
あるいは、米国特許第5,547,835号に示されるように、上記の方法の1つは、鋳型がビオチンで標識され、ストレプトアビジンコーティングした磁気ビーズと結合される固相配列決定アプローチと一体化されている。スループットは、オリゴヌクレオチドプライマー、鎖停止ヌクレオシド三リン酸および/または鎖伸長ヌクレオシド三リン酸に質量修飾を導入すること、ならびに質量が差別化された分子量を有するタグ特異的プローブのハイブリダイゼーションによる多重化を可能にする統合タグ配列を使用することによって増加させることができる。しかしながら、これらの「Sangerベースの」配列決定方法は全て、標的配列に関するいくらかの予備知識またはプライマー結合部位としての役割を果たす既知配列の導入のどちらかを必要とする。
したがって、本発明の根底にある問題は、特に、核酸分子がL−ヌクレオチドを含むまたはL−ヌクレオチドからなる場合に、核酸分子のヌクレオチド配列を決定する方法を提供することであった。
本発明の根底にあるさらなる問題は、核酸分子の、特に、L−ヌクレオチドを含むまたはL−ヌクレオチドからなる核酸分子の、ヌクレオチド配列を決定する方法を提供することであった。このような方法は、従来技術の方法の欠点の少なくとも一部を克服または回避する。
この問題は、独立クレームの内容によって解決される。好ましい実施形態は、従属クレームから導き出され得る。
本発明の根底にある問題は、以下の工程:
a)少なくとも1つの修飾を有する核酸分子の複数の分子を提供する工程;
b)複数の修飾核酸分子をランダムに切断し、それにより修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片とを提供する工程;
c)修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離する工程;
d)修飾核酸分子断片をその長さ、質量および/または電荷によって分離または分別し、そのような分離または分別によって、修飾核酸断片のパターンが生成される工程;
e)任意で修飾核酸断片のパターンを可視化する工程
を含む核酸分子のヌクレオチド配列を決定する方法によって、第1の態様の第1の実施形態でもある、第1の態様において解決される。
第1の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第2の実施形態では、本方法は、
f)修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程
をさらに含む。
第1の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第3の実施形態では、複数の分子の個々の核酸分子は、そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の5’末端に、3’末端にまたはヌクレオチド配列内に少なくとも1つの修飾を有する。
第1の態様の第1、第2および第3の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第4の実施形態では、切断は、化学的切断、酵素的切断、熱による切断および/または二価カチオンの使用による切断によって行なわれる。
第1の態様の第1、第2、第3および第4の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第5の実施形態では、切断は、化学的切断、好ましくはヌクレオチド非特異的切断である。
第1の態様の第1、第2、第3、第4および第5の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第6の実施形態では、切断は限定的切断である。
第1の態様の第1、第2、第3、第4、第5および第6の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第7の実施形態では、切断は、限定的なランダム切断、好ましくは限定的で化学的なランダム切断である。
第1の態様の第1、第2、第3、第4、第5、第6および第7の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第8の実施形態では、切断する工程は、断片、好ましくは修飾断片の混合物を提供し、そのような断片の混合物は、核酸分子の全てのあり得るヌクレオチド配列断片を含む。
第1の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第9の実施形態では、混合物は、そのヌクレオチド配列が決定される修飾された全長形態の核酸分子を含む。
第1の態様の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8および第9の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第10の実施形態では、修飾核酸分子断片は、修飾と相互作用パートナーとの相互作用によって非修飾核酸分子断片から分離され、このような相互作用パートナーは支持体に連結されている。
第1の態様の第10の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第11の実施形態では、支持体は固体支持体である。
第1の態様の第10および第11の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第12の実施形態では、非修飾核酸分子断片は、好ましくは洗浄によって、相互作用パートナーと相互作用する修飾核酸分子断片から除去される。
第1の態様の第10、第11および第12の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第13の実施形態では、修飾核酸分子断片は、好ましくは相互作用パートナーからの修飾の放出によるか、支持体からの相互作用パートナーからの放出によるか、あるいは核酸分子断片から修飾またはその一部もしくは部分を切断することによって、支持体から放出される。
第1の態様の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8および第9実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第14の実施形態では、修飾核酸分子断片は、質量識別、サイズ識別、疎水性識別、電荷識別、イオン識別、水素結合識別、およびまたは液相によって仲介される抽出による分離によって、非修飾核酸分子から分離され、好ましくは非標識核酸分子断片が除去される。
第1の態様の第1〜第14の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第15の実施形態では、修飾核酸断片のパターンは修飾核酸断片のラダーを含む。
第1の態様の第1〜第15の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第16の実施形態では、修飾核酸断片のパターンは、質量分析法によって生成され、好ましくは、核酸分子の核酸配列が推定される。
第1の態様の第1〜第15の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第17の実施形態では、修飾核酸断片のパターンが生成され、個々の断片の質量が質量分析法によって決定され、好ましくは、核酸分子の核酸配列が推定される。
第1の態様の第1〜第17の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第18の実施形態では、核酸分子のヌクレオチド配列は未知である。
第1の態様の第1〜第18の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第19の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列を決定する工程;
fb)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fc)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
fd)質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第1の態様の第19の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第20の実施形態では、工程fb)〜fd)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fb)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fc)において、修飾核酸分子断片n+xの質量と修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、かつ工程fd)において、質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される。
第1の態様の第20の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第21の実施形態では、工程fb)〜fd)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第1〜第17の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第22の実施形態では、核酸分子のヌクレオチド配列は既知であり、好ましくはこの方法は核酸分子のヌクレオチド配列を確認するためのものである。
第1の態様の第22の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第23の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fb)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
fc)質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第1の態様の第23の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第24の実施形態では、工程fa)〜fc)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fb)において、修飾核酸分子断片n+xの質量と修飾核酸分子断片n+(x−1)質量の質量差が決定され、かつ工程fc)において、質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される。
第1の態様の第24の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第25の実施形態では、工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第1の態様の第22、第23、第24および第25の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第26の実施形態では、最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列は既知である。
第1の態様の第22の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第27の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fb)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させ、かつ個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第1の態様の第27の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第28の実施形態では、工程fa)〜fb)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、かつ工程fb)において、修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量が、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させられ、かつ個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの修飾核酸分子配列が生成される。
第1の態様の第28の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第29の実施形態では、工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第1の態様の第19〜第29の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第30の実施形態では、修飾が核酸分子断片の5’末端に存在し、かつ最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端5’ヌクレオチドを含むか、または修飾が核酸分子断片の3’末端に存在し、かつ最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端3’ヌクレオチドを含む。
第1の態様の第1〜第30の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第31の実施形態では、修飾は、1つの部分を含む一成分修飾である。
第1の態様の第31の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第32の実施形態では、部分は、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するときに使用される。
第1の態様の第32の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第33の実施形態では、部分は、パターンの生成において修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される。
第1の態様の第1〜第30の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第34の実施形態では、修飾は、少なくとも第1の部分と第2の部分を含む多成分修飾を含み、任意で少なくとも第1の部分と第2の部分がリンカーで連結されている。
第1の態様の第34の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第35の実施形態では、第1の部分は、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するときに使用され、第2の部分は、パターンの生成において修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される。
第1の態様の第31〜第35の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第36の実施形態では、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するときに使用される部分は、相互作用パートナーに対するリガンドを含み、そのような相互作用パートナーは支持体上に存在し、好ましくはそのような支持体に連結されており、リガンドと相互作用パートナーの相互作用は支持体上への修飾核酸分子断片の固定を仲介する。
第1の態様の第36の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第37の実施形態では、固定は、化学的固定、親和性固定、磁気固定を含む群から選択される。
第1の態様の第37の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第38の実施形態では、固定は親和性固定である。
第1の態様の第38の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第39の実施形態では、支持体上への核酸分子および核酸分子断片の固定を仲介する相互作用は、ビオチン−アビジン相互作用、ビオチン−ニュートロアビジン相互作用、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用、抗原−抗体相互作用、核酸分子が、DNA、RNA、LNA、PNA、またはその組合せからなる、2つのオリゴヌクレオチドの相互作用、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドの相互作用、アルブミンとシバクロンブルーの相互作用、金属キレーター剤と金属キレート化支持体の相互作用を含む群から選択される。
第1の態様の第31〜第39の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第40の実施形態では、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するときに使用される部分は、ビオチン、オリゴヌクレオチド、カルモジュリン結合ペプチド、アルブミンおよび金属キレーター剤を含む群から選択される。
第1の態様の第1〜第40の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第41の実施形態では、修飾核酸分子断片は、濾過、透析、クロマトグラフィー、磁場、遠心分離および沈殿を含む群から選択される手段によって非修飾核酸分子から分離される。
第1の態様の第41の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第42の実施形態では、クロマトグラフィーはサイズ排除クロマトグラフィーであり、修飾核酸断片はそのサイズによるかまたは修飾によってそれに与えられる修飾断片のサイズの増加によって、非修飾核酸分子から分離される。
第1の態様の第31〜第42の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第43の実施形態では、パターンの生成において修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される部分は、質量タグまたは親油性タグから選択される。
第1の態様の第1〜第43の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第44の実施形態では、修飾核酸分子断片は、好ましくは濾過および透析およびクロマトグラフィーおよび質量分析法を含む群から選択される質量またはサイズ識別のための方法によって分離または分別され、好ましくはそのような方法は、MS、LCMSまたはESI MSである。
第1の態様の第1〜第44の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第45の実施形態では、修飾核酸分子断片は、好ましくはRP−HPLCである疎水性相互作用に基づく方法によって分離または分別される。
第1の態様の第34〜第45の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第46の実施形態では、リンカーは疎水性リンカーである。
第1の態様の第34〜第46の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第47の実施形態では、リンカーは切断可能なリンカーである。
第1の態様の第47の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第48の実施形態では、リンカーは、選択的に切断可能なリンカーであり、より好ましくは、選択的に切断可能なリンカーは、酵素的に切断可能、化学的に切断可能、光切断可能または熱切断可能なものである。
第1の態様の第1〜第48の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第49の実施形態では、核酸分子は、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNAならびにそれらの組合せ、好ましくはRNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子およびデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含有する核酸分子の群から選択される。
第1の態様の第1〜第49の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第50の実施形態では、核酸分子は、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される。
第1の態様の第1〜第50の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第51の実施形態では、核酸分子は、RNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である。
第1の態様の第51の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第52の実施形態では、切断は、アルカリ加水分解、アミン、またはポリアミンによってなされるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の化学的切断である。
第1の態様の第51の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第53の実施形態では、切断は、ヌクレアーゼ、好ましくはリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の酵素的切断である。
第1の態様の第51の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第54の実施形態では、切断は、熱によるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の切断である。
第1の態様の第51の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第55の実施形態では、切断は、二価カチオンの使用によるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の切断である。
第1の態様の第1〜第50の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第56の実施形態では、核酸は、DNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子である。
第1の態様の第56の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第57の実施形態では、切断は、酸加水分解の使用によってなされるDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子の化学的切断である。
第1の態様の第56の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第58の実施形態では、切断は、ヌクレアーゼ、好ましくはデオキシリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされるDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子の酵素的切断である。
第1の態様の第16〜第58の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第59の実施形態では、質量分析法は、直接的質量分析法、LC−MSおよびMS/MSを含む群から選択される。
第1の態様の第1〜第59の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第60の実施形態では、核酸分子の特異的なマスフィンガープリントが決定される。
第1の態様の第60の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第61の実施形態では、特異的なマスフィンガープリントは、核酸分子の同定および/または品質管理に使用される。
第1の態様の第1〜第61の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第62の実施形態では、核酸分子または核酸分子の複数の分子の少なくとも1つの修飾は、工程a)またはb)の前に、核酸分子の5’末端または3’末端に付加される。
第1の態様の第1〜第62の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第1の態様の第63の実施形態では、核酸分子または核酸分子の複数の分子は非核酸部分を含む。
第1の態様の第63の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第64の実施形態では、非核酸部分は、工程a)またはb)の前に、核酸分子または核酸分子の複数の分子から除去される。
第1の態様の第64の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第65の実施形態では、第1の工程において、非核酸部分が、核酸分子または核酸分子の複数の分子から除去され、第2の工程において、核酸分子または核酸分子の複数の分子の修飾が、工程a)またはb)の前に、核酸分子または核酸分子の複数の分子の5’末端、3’末端またはヌクレオチド配列内のヌクレオチドに付加される。
本発明の根底にある問題は、以下の工程:
a)少なくとも1つの修飾を有する核酸分子の複数の分子を提供する工程;
b)複数の修飾核酸分子をランダムに切断し、それにより修飾核酸分子断片を提供する工程;
c)修飾核酸分子断片をその長さ、質量および/または電荷によって分離または分別し、そのような分離または分別が修飾核酸断片のパターンを生成させる工程;ならびに
d)任意で修飾核酸断片のパターンを可視化する工程
を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定する方法によって、第2の態様の第1の実施形態でもある、第2の態様において解決される。
第2の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第2の実施形態では、工程b)またはc)の後に得られる反応混合物は、該少なくとも1つの修飾を有さない1以上の核酸分子またはその断片を含有する。
第2の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第3の実施形態では、修飾核酸断片のパターンの可視化は、少なくとも1つの修飾を利用し、好ましくは修飾は、該修飾を有する核酸分子と該修飾を有さない核酸分子の識別を可能にする。
第2の態様の第1、第2および第3の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第4の実施形態では、修飾は、質量タグ、核酸分子の親油性部分よりも顕著に大きい所与の波長でのUV吸光度を有する部分、規定の分子質量を有するポリマー、放射性標識およびイオン移動度の変化を与える部分を含む群から選択される。
第2の態様の第4の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第5の実施形態では、核酸分子よりも顕著に大きい所与の波長でのUV吸光度を有する部分は、発色団、色素および蛍光標識を含む群から選択される。
第2の態様の第1〜第5の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第6の実施形態では、方法は、
e)修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程
をさらに含む
第2の態様の第1〜第6の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第7の実施形態では、複数の分子の個々の核酸分子は、そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の5’末端に、3’末端にまたはヌクレオチド配列内に少なくとも1つの修飾を有する。
第2の態様の第1〜第7の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第8の実施形態では、切断は、化学的切断、酵素的切断、熱による切断および/または二価カチオンの使用による切断によって行なわれる。
第2の態様の第1〜第8の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第9の実施形態では、切断は、化学的切断、好ましくはヌクレオチド非特異的切断である。
第2の態様の第1〜第9の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第10の実施形態では、切断は限定的切断である。
第2の態様の第1〜第10の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第11の実施形態では、切断は、限定的なランダム切断、好ましくは限定的で化学的なランダム切断である
第2の態様の第1〜第11の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第12の実施形態では、切断する工程は、断片、好ましくは修飾断片の混合物を提供し、そのような断片の混合物は、核酸分子の全てのあり得るヌクレオチド配列断片を含む。
第2の態様の第12の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第13の実施形態では、混合物は、そのヌクレオチド配列が決定される修飾された全長形態の核酸分子を含む。
第2の態様の第1〜第13の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第14の実施形態では、修飾核酸断片のパターンは、修飾核酸断片のラダーを含む。
第2の態様の第1〜第14の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第15の実施形態では、修飾核酸断片のパターンは、質量分析法、好ましくはLC−MSによって生成され、好ましくは核酸分子の核酸配列が推定される。
第2の態様の第1〜第14の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第16の実施形態では、修飾核酸断片のパターンが生成され、個々の断片の質量が質量分析法によって決定され、好ましくは核酸分子の核酸配列が推定される。
第2の態様の第1〜第16の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第17の実施形態では、核酸分子のヌクレオチド配列は未知である。
第2の態様の第1〜第17の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第18の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列を決定する工程;
fb)最小の修飾核酸分子断片n+1、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fc)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
fd)質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第2の態様の第18の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第19の実施形態では、工程fb)〜fd)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fb)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fc)において、修飾核酸分子断片n+xの質量と修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、かつ工程fd)において、質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される。
第2の態様の第19の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第20の実施形態では、工程fb)〜fd)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第2の態様の第1〜第16の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第21の実施形態では、核酸分子のヌクレオチド配列は既知であり、好ましくはこの方法は核酸分子のヌクレオチド配列を確認するためのものである。
第2の態様の第21の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第22の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fb)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
fc)質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第2の態様の第22の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第23の実施形態では、工程fa)〜fc)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fb)において、修飾核酸分子断片n+xの質量と修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量差が決定され、かつ工程fc)において、質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの配列が生成される。
第2の態様の第23の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第24の実施形態では、工程fa)〜fb)のm回目の反復で、xは次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第2の態様の第21〜第24の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第25の実施形態では、最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列は既知である。
第2の態様の第21の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第26の実施形態では、修飾核酸断片のパターンから核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、以下の工程:
fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
fb)修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させ、かつ個別のヌクレオチド種を最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
を含む。
第2の態様の第26の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第27の実施形態では、工程fa)〜fb)を反復し、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、かつ工程fb)において、修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量が、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させられ、個別のヌクレオチド種を修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの修飾核酸分子配列が生成される。
第2の態様の第27の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第28の実施形態では、工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xは次の通り、すなわち、x=m+1となる。
第2の態様の第18〜第28の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第29の実施形態では、修飾が核酸分子断片の5’末端に存在し、かつ最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端5’ヌクレオチドを含むか、または修飾が核酸分子断片の3’末端に存在し、かつ最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端3’ヌクレオチドを含む。
第2の態様の第1〜第29の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第30の実施形態では、修飾は、パターンの生成において修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される。
第2の態様の第1〜第30の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第31の実施形態では、修飾は、その波長吸光度が核酸分子のヌクレオ塩基の波長吸光度とは異なる、蛍光標識である。
第2の態様の第1〜第31の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第32の実施形態では、核酸分子は、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNAおよびそれらの組み合わせ、好ましくはRNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子およびデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含有する核酸分子の群から選択される。
第2の態様の第1〜第32の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第33の実施形態では、核酸は、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される。
第2の態様の第1〜第33の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第34の実施形態では、核酸分子は、RNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である。
第2の態様の第34の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第35の実施形態では、切断は、RNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の化学的切断であり、そのような切断はアルカリ加水分解によってなされる。
第2の態様の第34の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第36の実施形態では、切断は、ヌクレアーゼ、好ましくはリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の酵素的切断である。
第2の態様の第34の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第37の実施形態では、切断は、熱によるRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子の切断である。
第2の態様の第34の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第38の実施形態では、切断は、二価カチオンの使用によるRNA分子および/または修飾RNA分子の切断、あるいは熱および切断剤による切断の組合せである。
第2の態様の第1〜第33の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第39の実施形態では、核酸は、DNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子である。
第2の態様の第39の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第40の実施形態では、切断は、酸加水分解の使用によってなされるDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子の化学的切断である。
第2の態様の第39の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第41の実施形態では、切断は、ヌクレアーゼ、好ましくはデオキシリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされるDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子の酵素的切断である。
第2の態様の第1〜第41の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第42の実施形態では、核酸分子の特異的なマスフィンガープリントが決定される。
第2の態様の第42の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第43の実施形態では、特異的なマスフィンガープリントは、核酸分子の同定および/または品質管理に使用される。
第2の態様の第1〜第43の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第44の実施形態では、核酸分子または核酸分子の複数の分子の少なくとも1つの修飾は、工程a)またはb)の前に、核酸分子の5’末端または3’末端に付加される。
第2の態様の第1〜第44の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第2の態様の第45の実施形態では、核酸分子または核酸分子の複数の分子は非核酸部分を含む。
第2の態様の第45の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第46の実施形態では、非核酸部分は、工程a)またはb)の前に、核酸分子または核酸分子の複数の分子から除去される。
第2の態様の第46の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第47の実施形態では第1の工程において、非核酸部分が、核酸分子または核酸分子の複数の分子から除去され、第2の工程において、核酸分子または核酸分子の複数の分子の修飾が、工程a)またはb)の前に、核酸分子または核酸分子の複数の分子の5’末端、3’末端またはヌクレオチド配列内のヌクレオチドに付加される。
本発明の根底にある問題は、以下の工程:
a)核酸分子の複数の分子を提供する工程;
b)核酸分子の複数の分子をヌクレオ塩基選択的処置に供し、核酸分子を形成する1個または数個のヌクレオ塩基種を選択的に修飾し、そのようなヌクレオ塩基選択的処置の後で、核酸分子の選択的に処置可能なヌクレオ塩基のいくつかを修飾し、核酸分子の選択的に処置可能なヌクレオチドまたはヌクレオ塩基のいくつかを非修飾のままにする工程;
c)修飾ヌクレオ塩基の3’で選択的に核酸リン酸骨格を化学的に切断し、修飾ヌクレオ塩基の全てではない核酸リン酸骨格を切断する工程;
d)核酸分子断片をLC−MSおよび/またはLC−MS−MSにより分析する工程;ならびに
e)インタクトの末端を有する核酸分子断片をサイズが増加する順に同定し、それから核酸分子の配列を生成させ、ここで、好ましくは核酸分子断片が、同じインタクトの末端、より好ましくは同じインタクトの3’末端を有する、工程
を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定する方法によって、第3の態様の第1の実施形態でもある、第3の態様において解決される。
第3の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第2の実施形態では、核酸分子は、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNA、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含む核酸分子、ならびにそれらの組合せ、好ましくはRNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子の群から選択される。
第3の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第3の実施形態では、核酸分子は、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される。
第3の態様の第1、第2および第3の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第4の実施形態では、核酸分子は、RNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である。
第3の態様の第1〜第4の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第3の態様の第5の実施形態では、選択的に処置可能なヌクレオ塩基は、グアノシン、アデノシン、シチジン、チミジンおよびウラシルを含む群から選択される。
第3の態様の第1〜第5の実施形態のいずれか1つの一実施形態でもある第3の態様の第6の実施形態では、ヌクレオ塩基Uは、ヒドラジンと酢酸とアニリンの組合せで選択的に処置され、5’リン酸付加3’断片とアニリン修飾リボース5’断片とを生じさせる。
第3の態様の第6の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第7の実施形態では、5’リン酸付加3’断片とインタクトの核酸分子は、請求項113に記載の工程d)においてアニリン修飾リボース5’断片よりも効率的にイオン化される。
第3の態様の第7の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第8の実施形態では、5’リン酸付加3’断片は、請求項113に記載の工程d)においてアニリン修飾リボース5’断片よりも効率的にイオン化される。
第3の態様の8の実施形態の一実施形態でもある第3の態様の第9の実施形態では、5’リン酸付加3’断片は、請求項113に記載の工程e)において使用される。
本発明の第1、第2および第3の態様のいずれかの各々のおよびいずれかの一実施形態では、核酸分子は25個よりも多いヌクレオチドまたはヌクレオ塩基を含む。
本発明の第1、第2および第3の態様のいずれかの各々のおよびいずれかの一実施形態では、核酸分子は35個よりも多いヌクレオチドまたはヌクレオ塩基を含む。
本発明の第1、第2および第3の態様のいずれかの各々のおよびいずれかの一実施形態では、核酸分子は、26個〜50個のヌクレオ塩基、または36個〜50個のヌクレオ塩基、好ましくは26個〜45個のヌクレオ塩基、または36個〜45個のヌクレオ塩基を含む。ヌクレオ塩基およびヌクレオチドという用語は、本発明に関連して、互換的に使用され得ることが認識されるであろう。
本発明の第1、第2および第3の態様のいずれかの各々のおよびいずれかの一実施形態では、核酸分子の複数の分子の核酸分子の凝集が軽減される。
本発明の第1、第2および第3の態様のいずれかの各々のおよびいずれかの一実施形態では、凝集は、工程a)〜e)のいずれか、好ましくは工程a)およびb)のいずれかへのカオトロピック溶液の添加によって軽減される。
本発明者らは、驚くべきことに、複数の該核酸分子を不完全な形でランダムに切断することによりおよびこのようにして生成された該核酸分子の断片の混合物を核酸分子の断片のパターンに分別することにより、核酸分子のヌクレオチド配列を推定または決定することが可能であり、そのような断片のパターンから、該核酸分子の核酸配列を推定または決定することができることを発見した。断片の混合物は、通常、核酸分子の修飾断片も含み、核酸分子の該修飾断片は、通常、複数の該核酸分子から生成された、複数の該核酸分子の該ランダムでかつ不完全な切断によっても生成され、該核酸分子は修飾を含む。そのような核酸分子の断片のパターンは、核酸分子の修飾断片により形成または提示される。言い換えれば、ヌクレオチド配列が直接的にまたは間接的に推定されることに基づくパターンは、修飾核酸断片のパターンである。この方法に関連して、不完全な、好ましくはランダムな切断が、互いに1ヌクレオチドだけ異なる該核酸の全てのあり得る断片に相当するものを生成させることが好ましい。
本出願に関連して、核酸分子の断片および核酸分子断片という用語は、それとは矛盾することが明示されない限り、互換的に使用される。
この原則に基づき、本発明は、3つの基本的手順を包含する。第1の態様による本発明の方法の対象としての第1の手順では、修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片は分離される。この分離により、修飾核酸分子断片のパターンを生じさせる分離および/または分別工程に供される修飾核酸分子断片の混合物が得られる。この第1の手順では、修飾は、とりわけ、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するために直接的にまたは間接的に使用される可能性がある。
第2の態様による本発明の方法の対象としての第2の手順では、切断工程後に修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片は分離されない。それどころか、修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片の混合物は、修飾核酸分子断片のパターンを生じさせる分離および/または分別工程に供される。この第2の手順では、修飾は、とりわけ、アドレス指定プロセスで直接的にまたは間接的に使用される可能性がある。このようなアドレス指定プロセスは、混合物の個々の修飾核酸分子断片のターゲッティングを可能にするプロセスである。ターゲッティングは、通常、パターンを生じさせる分離工程または分別工程の後に、修飾核酸分子断片だけを提示し、その一方、混合物中にまだ存在するにもかかわらず、非修飾核酸分子を提示しないことである。好ましくは、このような提示は、少なくとも1つの修飾によって仲介されるかまたは生じる。したがって、その意味では、このターゲッティングのために、修飾核酸分子断片だけが、事実上、本発明による方法のさらなる工程の対象である。
第3の態様による本発明の方法の対象としての第3の手順では、そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の複数の分子は処置を受ける。基本的には、このような処置は、核酸分子を形成するヌクレオ塩基の1つの種を選択的な方法で修飾することである。例えば、処置は、核酸分子のUだけが−選択的に−修飾されるようなものである。しかしながら、核酸分子の全てのUが修飾されるわけではないことが重要である。しかしながら、核酸分子の複数の分子を考慮するならば、統計的には、このような核酸分子の選択的に修飾されたヌクレオ塩基の各々が修飾される。その後、核酸分子の複数の分子のこのように修飾された核酸分子は、核酸の骨格、好ましくは核酸リン酸骨格が、個々の修飾ヌクレオ塩基の3’方向で選択的に切断されるように、切断され、好ましくは化学的に切断される。そうすることによって、好ましくはその長さに関して直接的または間接的な分析の対象となり得る全てのあり得る断片が生成される。好ましい一実施形態では、この分析は、LC−MSおよび/またはLC−MS−MSによって行なわれる。
本発明による方法、より具体的には、それぞれ、本発明の3つの手順および態様のうちの1つに関連した方法の潜在的な特徴(これらは、該3つの態様のうちの1つに関連して本明細書で概説されている)は、本発明の任意の態様、ひいては手順、および本明細書で概説されている本発明の核酸分子のヌクレオチド配列を決定するための任意の方法の一部を形成し得ることが認識されるであろう。
本明細書で好ましく使用されるとき、分離とは、物質の混合物を2以上の個別の産物に変換、分割または単離することである。特定の実施形態では、分離は、5’断片と3’断片と内部断片の混合物を5’断片または3’断片だけの混合物に変換することを含む。他の実施形態では、分離は、例えば、ピークにより個々の断片または小さい断片群が表されるLCを用いてなされるように、5’断片または3’断片の混合物を、個々の成分などの、さらなる分割物に分割することを含む。他の実施形態では、分離は、5’断片と3’断片と内部断片の混合物から5’断片または3’断片を単離することを含み、その場合、例えば、LCにより上記の変換工程と分割工程の両方が行なわれる。分離が完全なものでない可能性があることが当業者に認識されるであろう。それどころか、分離された産物は、分離の対象であった出発材料にも含まれていた化合物を、レベルが減っているとはいえ、まだ含有している可能性がある。
本明細書で好ましく使用されるとき、分別は、個別の産物を物質の混合物からおよび/または互いに区別するか、検出するかまたは提示する能力である。特定の実施形態では、分別は、標識断片を非標識断片から区別/検出/提示する。他の実施形態では、分別は、標識断片を互いに区別するために、例えば、質量分析法だけでなく、断片2とは異なる保持時間の断片1を示すLCでも使用される。両方の実施形態は、原理上は、同じ工程で同時に達成することができる。
本明細書で好ましく使用されるとき、「核酸分子(nucleic acid molecule)」および「核酸分子(nucleic acid molecules)」は、デオキシリボ核酸(略称、DNA)やリボ核酸(略称、RNA)などのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを指す。さらに、「核酸分子(a nucleic acid molecule)」という用語は、複数の核酸分子も含む。「核酸分子(nucleic acid molecule)」および「核酸分子(nucleic acid molecules)」という用語は、ヌクレオチド類似体、一本鎖(センスもしくはアンチセンス)および二本鎖のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドでできているRNAまたはDNAのいずれかの変異体および類似体を等価物として含むことが理解されるべきである。デオキシリボヌクレオチドには、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシンおよびデオキシチミジンが含まれる。リボヌクレオチドには、アデノシン、シチジン、グアノシンおよびウリジンが含まれる。「ポリヌクレオチド」としての核酸分子への言及は、一本鎖または二本鎖分子を含む、共有結合で連結された2以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を意味するためにその最も広い意味で使用される。「オリゴヌクレオチド」という用語も、共有結合で連結された2以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を意味するために本明細書で使用されるが、本明細書で定義されるように、オリゴヌクレオチドは100個未満のヌクレオチドを含む。
本明細書で使用されるとき、核酸分子という用語は、一実施形態において、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含む。この種の核酸分子は、ハイブリッド、ハイブリッド核酸分子またはキメラ核酸分子とも呼ばれる。
本明細書に記載の本発明の方法による核酸分子の配列決定は、RNAと以下のもの:2’−O−メチル、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−アリルのような2’官能化RNA;DNA、LNA、D形核酸分子とL形核酸分子の組合せ、リンを含む位置で修飾を有するヌクレオチドのいずれかまたは全てとからなるハイブリッド、例えば、DNA+RNAである核酸分子を合成するための他の技術と組み合わせることもでき、交互になっていれば、アルカリ加水分解で半分の断片しか得られないが、これらの断片に対してMS/MS技術を使用することができ、分子全体の配列を確かに決定することができることが当業者に認識されるであろう。これが、DNAと、それに次ぐRNAのストレッチであるならば、RNAの配列を決定することができ、DNAに対してMS/MSを行なうことができ、などということになる。本発明を踏まえて、多くのバリエーションが当業者に直ちに明白になることも認識されるであろう。
修飾が3’または5’末端にはないが、このような末端から最大25ヌクレオチド離れたところにあり得る本明細書に記載の本発明の方法に従って核酸分子の配列を決定する可能性が残っていることも当業者に認識されるであろう。これは、標識が、例えば、DNA−MOD−RNAであるならば可能である。すなわち、修飾が、例えば、末端から5ヌクレオチド離れたところにあるならば、配列を決定することができる最小の断片は11merであり、残りの11merは、MS/MSで配列が決定される。最後に、修飾が、この実施形態または任意の他の実施形態のヌクレオ塩基上にあることができることも当業者に認識されるであろう。
また、本明細書で好ましく使用されるとき、本発明の方法の対象となる核酸は、少なくとも1つのLNAヌクレオチドを含むことができる。本発明の方法の一実施形態では、核酸は、LNAヌクレオチドからなる。
また、本明細書で好ましく使用されるとき、本発明の方法の対象となる核酸は、少なくとも1つのPNAヌクレオチドを含むことができる。本発明の方法の一実施形態では、核酸は、PNAヌクレオチドからなる。
核酸分子は、核酸分子を形成する連続するヌクレオチドが全て、1または2以上の共有結合によって互いに連結または接続されることを特徴とする。より具体的には、このようなヌクレオチドは各々、好ましくはホスホジエステル結合または他の結合を介して、2つの他のヌクレオチドに連結または接続され、連続するヌクレオチドのストレッチを形成する。しかしながら、このような配置において、2つの末端ヌクレオチド、すなわち、好ましくは5’末端のヌクレオチドと3’末端のヌクレオチドは各々、このような配置が、環状配置ではなく、線状配置であり、したがって、環状分子ではなく、線状分子であるという条件下では、単一のヌクレオチドのみに連結されている。
本出願の別の実施形態では、核酸分子は、少なくとも2つの連続するヌクレオチドの群を含み、各々の連続するヌクレオチドの群の中で、各々のヌクレオチドは、好ましくはホスホジエステル結合または他の結合を介して、2つの他のヌクレオチドに連結または接続され、連続するヌクレオチドのストレッチを形成する。しかしながら、このような配置において、2つの末端ヌクレオチド、すなわち、好ましくは5’末端のヌクレオチドと3’末端のヌクレオチドは各々、単一のヌクレオチドのみに連結される。しかしながら、このような実施形態では、2つの連続するヌクレオチドの群は、ある群の1つのヌクレオチドと別のまたは他の群の1つのヌクレオチドとを、共有結合、好ましくは、該2つのヌクレオチドのうちの一方の糖部分と該2つのヌクレオチドまたはヌクレオシドのうちのもう一方のリン部分との間で形成される共有結合を介して連結させる共有結合を介して互いに連結または接続されない。しかしながら、代わりの一実施形態では、2つの連続するヌクレオチドの群は、ある群の1つのヌクレオチドと別のまたは他の群の1つのヌクレオチドとを、共有結合、好ましくは、該2つのヌクレオチドのうちの一方の糖部分と該2つのヌクレオチドまたはヌクレオシドのうちのもう一方のリン部分との間で形成される共有結合を介して連結させる共有結合を介して互いに連結または接続される。好ましくは、少なくとも2つの連続するヌクレオチドの群は、どの共有結合によっても連結されない。別の好ましい実施形態では、少なくとも2つの群は、ホスホジエステル結合とは異なる共有結合を介して連結される。
核酸分子という用語は、好ましくは、D−核酸分子またはL−核酸分子も包含する。好ましくは、核酸分子はL−核酸分子である。さらに、核酸分子の1つまたはいくつかの部分がD−核酸分子として存在し、核酸分子の少なくとも1つまたはいくつかの部分がL−核酸分子であることが可能である。核酸分子の「部分」という用語は、最低1個のヌクレオチドを意味するものとする。このような核酸分子は、通常、それぞれ、D−核酸分子およびL−核酸分子と本明細書で呼ばれる。それゆえ、好ましい一実施形態では、本発明による核酸分子はL−ヌクレオチドからなり、かつ少なくとも1つのD−ヌクレオチドを含む。このようなD−ヌクレオチドは、好ましくは、核酸分子を規定するストレッチとは異なる部分、好ましくは、核酸分子の他の部分との相互作用に関与するその部分に付加される。好ましくは、このようなD−ヌクレオチドは、任意のストレッチのおよび任意の核酸の末端で付加される。
本明細書で使用されるL−核酸分子は、L−ヌクレオチドからなる、好ましくはL−ヌクレオチドから完全になる、核酸分子である。
本明細書で使用されるD−核酸分子は、D−ヌクレオチドからなる、好ましくはD−ヌクレオチドから完全になる、核酸分子である。
また、それとは矛盾することが示されない限り、任意のヌクレオチド配列は、本明細書において、5’→3’方向で示される。
核酸分子がD−ヌクレオチドからなるか、L−ヌクレオチドからなるか、または両方の組合せからなるか、その組合せが、例えば、ランダムな組合せであるか、または少なくとも1つのL−ヌクレオチドと少なくとも1つのD−核酸とからなるストレッチの規定の配列であるかに関係なく、核酸分子は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはその組合せからなり得る。
核酸分子が、D−核酸であるか、L−核酸であるか、その混合物であるか、DNAであるか、もしくはRNAであるか、またはその各々のおよび任意の組合せであるかに関係なく、本明細書で好ましく使用される核酸分子という用語は、一本鎖核酸分子および二本鎖核酸分子も包含するものとし、好ましくは本発明による方法に供される核酸分子は、一本鎖核酸である。そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子は、2つの別々の鎖、すなわち、第1の鎖と第2の鎖からなる二本鎖構造であり、このような鎖は、好ましくは分離され、各々の分離された鎖は、その後、本発明による方法に供される。あるいは、このような二本鎖核酸の分離は、該2つの鎖のうちの第1の鎖のみが、本発明による方法の第1の手順に従って、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離するために使用され、かつ本発明による方法の第2の手順に従って、アドレス指定プロセスで使用される修飾を示す場合は、必要でない。このような二本鎖核酸分子の第2の鎖のヌクレオチド配列は、好ましくは同時並行のアプローチで、該第2の鎖がこの種の修飾を示し、その一方で、第1の鎖が修飾を示さないように、決定することができることが理解されるであろう。さらに代わりのアプローチでは、第1の鎖の修飾と第2の鎖の修飾は異なる。
本明細書で好ましく使用される核酸分子という用語は、内部スペーサーを有する核酸分子も包含するものとする。好ましくは、内部スペーサーは、核酸分子の2つのヌクレオチドストレッチを連結するために使用される。このような内部スペーサーは、好ましくは、少なくとも1つの、好ましくは多数のエチレングリコール部分を含む親水性スペーサーである。様々な内部スペーサーは、それぞれ、当業者に公知であり、例えば、PiIsとMicura(PiIs & Micura,2000)によって記載された以下の基準を用いて選択することができる。内部スペーサーは、塩基対それ自体を妨げるべきではないまたは塩基対それ自体を妨げるものではない。芳香族炭素環を含有するスペーサータイプは末端塩基対に重なり、それゆえに、あまり好適ではない(Lewis et al,1999)。しかしながら、エチレングリコールベースのまたはエチレングリコール誘導性のスペーサーは、良好な水溶解性と高い立体構造柔軟性という利点を有するので、塩基対を妨げないという要件を満たす(Durand et al,1990;Ma et al,1993;Thomson et al,1993)。好ましくは、スペーサーは、酸素がCH、リン酸または硫黄に交換または置換されている、1つもしくはいくつかのエチレングリコール部分を含むかまたはこれらの部分からなる。
本明細書で好ましく使用される核酸分子という用語は、ヌクレオチド修飾核酸分子も包含するものとする。核酸分子は、ヌクレオチド修飾RNAまたはヌクレオチド修飾DNA分子であることができ、RNAまたはDNA分子は、ヌクレアーゼ耐性基、例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−Hによる修飾によって安定性を増強するために、個々のヌクレオチドで広範囲に修飾されている(参考のために、Usman & Cedergren,1992を参照されたい)。
塩基、糖骨格および/またはリン酸結合を含むヌクレオチドの修飾を有する核酸分子を化学合成することにより、血清リボヌクレアーゼによるその分解を防ぐことができ、それにより、核酸分子のインビボ効力を増加させることができる。
核酸分子に導入し、そのヌクレアーゼ安定性と効力を顕著に増強させることができる糖、塩基およびリン酸修飾を記載しているいくつかの例が当該技術分野にある。例えば、核酸分子が、ヌクレアーゼ耐性基、例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−Hによる修飾、およびヌクレオチド塩基修飾によって安定性を増強するおよび/または生物活性を増強するよう、修飾されている(参考のために、Burgin et al,1996;Usman & Cedergren,1992を参照されたい)。核酸分子の糖修飾は当該技術分野で広く記載されている(国際特許出願WO91/03162号、WO92/07065号、WO93/15187号、WO97/26270号;WO98/13526号;米国特許US5,334,711号、US5,716,824号;US5,627,053号;(Beigelman et al,1995;Pieken et al,1991;Usman & Cedergren,1992を参照されたい)。このような刊行物は、触媒作用を調節することなく、糖、塩基および/またはリン酸修飾などを核酸分子に組み込む位置を決定するための一般的な方法および戦略を記載しており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。このような教示を考慮して、このような核酸分子がそのそれぞれの標的に結合することができる限り、本発明の核酸分子を修飾するために同様の修飾を本明細書で記載の通りに使用することができる。
ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、および/または5’−メチルホスホネート連結によるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間連結の化学的修飾は安定性を改善させるが、過剰な修飾は、何らかの毒性または活性の低下を引き起こすことがある。それゆえ、核酸分子を設計する場合には、これらのヌクレオチド間連結の量を最小限に抑えるべきである。これらの連結の濃度を減らすことにより、毒性が低下するはずである。
本明細書で好ましく使用される核酸分子という用語は、完全に閉じた核酸分子も包含するものとする。核酸分子の完全に閉じた、すなわち、環状の構造は、本発明に従ってそのヌクレオチド配列が決定される核酸分子が、好ましくは共有結合を介して閉じている場合に実現され、このような共有結合は、本明細書で開示される核酸分子配列の5’末端と3’末端の間でなされることがより好ましい。
好ましく使用される核酸分子という用語は、非核酸分子部分を含む任意の核酸分子も包含するものとする。このような非核酸分子部分は、以下でより詳細に概説されるようなペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、様々な基を含む群から選択されてもよい。核酸分子という用語は、したがって、少なくとも1つの核酸部分と、細胞などの生物学的システムに核酸分子を送達しやすくするために使用することができる少なくとも1つのさらなる部分とを含むコンジュゲートおよび/または複合体も包含するものとする。提供されるコンジュゲートおよび複合体は、治療的化合物を細胞膜の向こうに運ぶこと、薬物動態を変化させること、および/または本発明の核酸分子の局在を調節することによって、治療活性を与えることができる。これらの種類のコンジュゲートおよび複合体は、好ましくは、小分子、脂質、リン脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、抗体、毒素、負の電荷を帯びたポリマーおよび他のポリマー、例えば、タンパク質、ペプチド、ホルモン、炭水化物、ポリエチレングリコール、またはポリアミンを含むが、これらに限定されない、分子を細胞膜の向こうに送達するのに好適である。一般に、記載された輸送体は、分解性リンカーとともにまたは分解性リンカーなしで、個々にまたは多成分システムの一部として使用されるようにデザインされている。これらの化合物は、血清の存在下または非存在下で、異なる組織から生じたいくつかの細胞型への核酸分子の送達および/または局在を改善させることが予想される(米国特許US5,854,038号を参照されたい)。本明細書で記載される分子のコンジュゲートは、生体分解性のリンカー、例えば、生体分解性の核酸リンカー分子を介して、生物活性分子に付加することができる。
その配列が決定される核酸分子に関連して以下で詳細に説明するように、非核酸部分は、PEG部分、すなわち、ポリ(エチレングリコール)部分、またはHES部分、すなわち、ヒドロキシエチルスターチ部分であってもよい。
非核酸部分、好ましくはPEGおよび/またはHES部分は、直接的にまたはリンカーを介して核酸分子に付加することができる。核酸分子が1以上の修飾、好ましくは1以上のPEGおよび/またはHES部分を含むことも本発明の範囲内である。一実施形態では、個々のリンカー分子は、2以上のPEG部分またはHES部分を核酸分子に付加する。本発明に関連して使用されるリンカーは、それ自体、線状または環状のいずれかであることができる。これらの種類のリンカーは当業者に公知であり、特許出願WO2005/074993号およびWO2003/035665号でさらに記載されている。
好ましい一実施形態では、リンカーは生体分解性リンカーである。生体分解性リンカーは、核酸分子から修飾を放出することによって、とりわけ、動物体内、好ましくはヒト体内での滞留時間に関して、核酸分子の特徴を改変することを可能にする。生体分解性リンカーの使用は、核酸分子の滞留時間のより良い制御を可能にし得る。このような生体分解性リンカーの好ましい一実施形態は、限定されるものではないが、国際特許出願WO2006/052790号、WO2008/034122号、WO2004/092191号およびWO2005/099768号に記載されているような生体分解性リンカーであり、国際特許出願WO2004/092191号およびWO2005/099768号では、リンカーは、本明細書に記載の1つまたは2つの修飾と核酸分子とその間の生体分解性リンカーとからなるポリマー状のオリゴヌクレオチドプロドラッグの一部である。
本明細書で好ましく使用されるとき、「ヌクレオチド」は、天然のDNAヌクレオシド一リン酸、二リン酸、および三リン酸:デオキシアデノシン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;デオキシグアノシン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;デオキシチミジン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;ならびにデオキシシチジン一リン酸、二リン酸、および三リン酸(本明細書では、それぞれ、dA、dG、dTおよびdCまたはA、G、TおよびCと呼ぶ)を含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドという用語はまた、天然のRNAヌクレオシド一リン酸、二リン酸、および三リン酸:アデノシン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;グアニン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;ウリジン一リン酸、二リン酸、および三リン酸;ならびにシチジン一リン酸、二リン酸、および三リン酸(本明細書では、それぞれ、A、G、UおよびCと呼ぶ)を含み、核酸分子、すなわち、DNA分子およびRNA分子の単量体単位である塩基−糖−リン酸の組合せを指す。しかしながら、言い換えれば、「ヌクレオチド」という用語は、5’位でリン酸化され、かつ−グリコシルC1’−N連結を介してC−1’糖位置で付加されたプリン型またはピリミジン型のいずれかの塩基を有する、環状のフラノシド型糖(RNA中のp−D/L−リボースおよびDNA中のP−D/L−2’−デオキシリボース)を含有する任意の化合物を指す。ヌクレオチドは天然のものであっても合成されたものであってもよく、合成されたものには、とりわけ、修飾塩基(例えば、5−メチルシトシン)および修飾糖基(例えば、2’−O−メチルリボシル、2’−O−メトキシエチルリボシル、2’−フルオロリボシル、2’−アミノリボシルなど)を含む修飾ヌクレオシドを有するヌクレオチドをはじめとする、質量修飾されたヌクレオチドが含まれる。
「ヌクレオ塩基」という用語は、天然ヌクレオ塩基であるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)ならびに非天然ヌクレオ塩基、例えば、キサンチン、ジアミノプリン、8−オキソ−N6−メチルアデニン、7−デアザキサンチン、7−デアザグアニン、N4,N4−エタノシトシン、N6,N6−エタノ−2,6−ジアミノプリン、5−メチルシトシン、5−(C3−C6)−アルキニル−シトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、シュードイソシトシン、2−ヒドロキシ−5−メチル−4−トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシンおよび米国特許US5,432,272号、Freier & Altmannの刊行物(Freier & Altmann,1997)に記載の「非天然」ヌクレオ塩基を含む。「ヌクレオ塩基」という用語は、したがって、既知のプリンおよびピリミジン複素環だけでなく、複素環類似体およびその互変異性体も含む。
第1の工程では、その配列が決定される複数の核酸分子を提供する。複数の核酸分子は、好ましくは、該複数の核酸分子のランダム切断によって、核酸分子の全てのあり得る断片または全ての関連する断片に相当するものを生成させるいくつかの個々の分子を含む。本明細書で好ましく使用される狭義の断片という用語は、全長核酸分子と比較して、ヌクレオチド配列に関して、全長核酸分子の1または2以上のヌクレオチドだけ短いヌクレオチド配列を含むかまたはこれらのヌクレオチド配列からなる核酸分子を指す。
その配列が決定される核酸分子は、本明細書で親核酸分子とも呼ばれる。
本明細書で好ましく使用される5’断片という用語は、インタクトの5’末端を有する断片、特に、親核酸分子の5’末端ヌクレオチドを含む断片を指す。同様に、本明細書で使用される3’断片という用語は、インタクトの3’末端を有する断片、すなわち、親核酸分子の3’末端ヌクレオチドを含む断片を指す。本明細書で使用される内部断片という用語は、インタクトの末端を含有せず、したがって、5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドの両方を欠く断片を指す。
5’末端および3’末端に関連して本明細書で好ましく使用されるインタクトという用語は、5’末端の場合、好ましくはそのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の5’末端ヌクレオチドが、核酸分子に、より好ましくは核酸分子の複数の分子、またはその断片に存在し、3’末端の場合、好ましくはそのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の3’末端ヌクレオチドが、核酸分子に、より好ましくは核酸分子の複数の分子、またはその断片に存在することを意味する。
断片という用語は、本発明を説明しやすくするために、好ましくは全長核酸分子も包含するものとする。したがって、核酸分子の断片は、最短で1ヌクレオチドであり得、かつ最長で全長核酸分子であり得る。
複数の断片は必ずしも核酸分子の全てのあり得る断片を含む必要がないことが当業者に理解されるであろう。本明細書に記載の方法のさらなる目的によっては、核酸分子のフィンガープリントの確立を可能にする限られた数の断片を有することで十分であり得、そのようなフィンガープリントは、核酸分子の同定に十分である。
本明細書で好ましく使用されるとき、「核酸分子の複数の分子」という用語は、核酸分子の複数のコピーおよびより好ましくは親核酸分子の複数のコピーを意味する。好ましくは、それに関連して、複数のコピーは、本発明の方法の実施を可能にするいくつかのコピーを意味する。必要とされるコピーの正確な数は、本発明の方法および工程の特定の実施形態ならびにそのような工程および方法と関連してそれぞれ使用される技術によって決まる。個々の断片の必要とされるコピー数の下限は、好ましくは該断片の核酸配列のパターンの生成と該断片の核酸配列の推定を依然として可能にする数である。一般的なコピー範囲は、1×10−18〜1×10−3モルである。
本明細書で好ましく使用されるとき、核酸分子のコピーは、本質的に同じヌクレオチド配列を有する核酸分子である。より好ましくは、核酸分子のコピーは、そのコピーが調製される核酸分子の物理化学的特徴の全てが同一である。
核酸分子の複数の分子は修飾を担持するまたは有する。本発明による第1の手順と第2の手順の両方に関連して、複数の該分子は、上で概説したように、該複数の分子のランダム切断によって、各々のあり得る断片または各々の関連する断片がこのような修飾を担持するまたは有する程度まで、修飾を担持するまたは有する。このような断片は、核酸分子の1つの種であり、このような種は、通常、単一コピーとしてだけでなく、複数の個々のコピーまたは分子としても存在するということも当業者に理解されるであろう。このような断片の1つ1つのコピーがこのような修飾を担持するまたは有する必要があるわけではないということも理解されるであろう。さらに、修飾を担持するまたは有する個々の断片のいくつかのコピーが存在すれば十分である。個々の断片の最小コピー数は、本発明による方法の後の工程で使用される方法、通常、パターンの生成で使用される方法によって決まる。個々の断片の必要とされるコピー数の下限は、好ましくは該断片の核酸配列のパターンの生成と該断片の核酸配列の推定を依然として可能にする数である。
本明細書における方法に記載されるように配列決定されるために、本明細書に記載の配列決定方法を通過する核酸分子は、そのヌクレオチド配列の5’または3’末端に修飾を含むかまたはそのヌクレオチド配列の5’または3’末端にある修飾で修飾されているかのいずれかである。それゆえ、未修飾核酸分子は、本明細書に記載の方法で配列決定されることができる前に、前もって修飾されていなければならない。
核酸分子の複数の分子が有する修飾を、合成中または合成前にオリゴヌクレオチドに直接的に組み込んでもよい(例えば、米国特許US5,736,626号および同US5,141,813号)。あるいは、例えば、1級脂肪族アミンなどの求核官能基を、核酸分子上の修飾付加部位、例えば、核酸分子の5’末端または3’末端に導入する。核酸分子の固体支持体合成が完了した後、核酸分子を支持体から切断し、全ての保護基を除去する。合成プロセスの後、核酸分子は修飾を含むが、この修飾は、別の実施形態では、別の修飾を付加するために使用することができる。合成された求核剤−核酸分子を、例えば、均一な溶液状態の下で求電子部分を含有する過剰の修飾試薬と反応させる。求電子部分を含有する修飾試薬は、例えば、イソチオシアネートまたはN−ヒドロキシスクシニミド(略称、NHS)(Hermanson,1996)などの活性化エステルである。
核酸分子の複数の分子が有する修飾を、オリゴヌクレオチドの合成後かつ核酸分子が本明細書に記載の方法によって配列決定される前にオリゴヌクレオチドにさらに組み込んでもよい。非修飾核酸分子の上に修飾を取り付けるために利用される方法の例としては、酵素的および化学的操作が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ヌクレオチドに付加される修飾を、リガーゼを用いて核酸分子に連結することが可能である。1つのそのような例は、T4 RNAリガーゼを用いて、修飾を担持するヌクレオチドまたはアミノ官能基を含有するヌクレオチドを核酸分子の5’末端に連結するものである(Kinoshita et al,1997)。例えば、オリゴヌクレオチドを付加するために臭化シアンを使用することによる化学的連結の使用も、確立された技術である(Dolinnaya et al,1991;Elov et al,1989)。この毒性のある化学物質を使用しないで核酸分子を修飾する他の方法が、最近開発された(Yoshimura et al,2007)。
RNA分子の3’末端に修飾を導入するための確立された技術は、末端2’、3’シスジオールを過ヨウ素酸ナトリウムで酸化して、ジアルデヒドを生成させ、次に、これをジアミンまたは標識官能化アミンで二重に還元アミノ化するという技術である(Proudnikov & Mirzabekov,1996)。前者の場合、修飾は、結果として生じる3’アミンを反応性修飾として用いて導入される。あるいは、ジアルデヒドを修飾カルバジド誘導体と反応させて、後の還元を必要とせずに修飾を取り付けることができる(Wu et al,1996)。
そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の長さに関して基本的に制限はない。したがって、核酸分子の長さは、最短で2ヌクレオチド、最長で数千ヌクレオチドである。好ましくは、核酸分子の長さは、15〜120ヌクレオチドである。15〜120の任意の整数が核酸分子の可能な長さであることが当業者に認識されるであろう。核酸分子の長さのより好ましい範囲は、約20〜100ヌクレオチド、約20〜80ヌクレオチド、約20〜60ヌクレオチド、約20〜50ヌクレオチドおよび約30〜50ヌクレオチドの長さである。
修飾は、本発明に関連して必要とされる効果を与えるのに好適な任意の修飾であることができる。より具体的には、本発明の方法の第1の手順に関連して必要とされる修飾は、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離することを可能にする。それとは対照的に、本発明の方法の第2の手順に関連して必要とされる修飾は、アドレス指定プロセスの実施を可能にする。第1の手順と第2の手順の両方において、修飾は、修飾核酸分子断片の分離または分別に関与することが認識されるべきである。修飾が二重の機能を有し得るまたは2つの機能を提供し得ることは本発明の範囲内である。そのような場合、修飾は、一成分修飾であり得る。あるいはおよび特に、二重の機能が必要とされる場合、修飾は、二成分または多成分修飾であり得る。二成分または多成分機能は、互いに直接またはリンカーの使用を介して接続され得る第1の部分と第2の部分を含む。このような場合、第1の部分または第2の部分のいずれかが、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離するために使用され、その一方で、第2の部分または第1の部分は修飾核酸分子断片の分離または分別に使用される。
さらなる工程では、複数の修飾核酸分子はランダムに切断される。このような切断によって、修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片が、それぞれ、生成および提供される。そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の化学的性質に応じて、様々な技術が適用可能であり、これらの技術は、それ自体として当該技術分野で公知である。切断は、以下の技術のいずれかまたはその組合せであり得る:物理的断片化、化学的切断、酵素的切断、熱による切断および/または二価カチオンの使用による切断。これらの様々の技術は、核酸分子中の特定のかつ予測可能な部位での切断を提供し、本明細書で概説されるような切断工程のさらなる要件と一致する限りにおいて、適用可能である。
核酸分子配列中の特定の位置での核酸分子の切断は、核酸分子の構造、核酸分子の特定のヌクレオチド間の共有結合の物理化学的性質、核酸分子の糖骨格の物理化学的性質、核酸分子の塩基の物理化学的性質、核酸分子の特定の塩基と糖骨格の間の共有結合の物理化学的性質、核酸分子の特定の原子;核酸分子の特定の塩基および/または修飾塩基に対する切断試薬の特異性;あるいはその組合せに依存する。
核酸分子の物理的断片化は、共有結合を壊すことができる任意の物理的力の使用によって達成することができ、好ましくは特定のかつ予測可能な断片化が起こる。このような物理的力としては、熱、X線、UV線、γ線などの電離放射線が挙げられるが、これらに限定されない。核酸分子断片のサイズは、放射線への曝露の強度や期間を調整することによって、調整することができる。曝露の強度や期間は、核酸分子への放射線の望ましくない影響を最小限に抑えるためにも調整することができる。
好ましくは水の沸騰間近の熱も、核酸分子の断片を生じさせることができる。核酸分子の溶液を加熱することによる核酸分子の断片化は、好ましくは、種々の標準的な緩衝液、例えば、限定するものではないが、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)などの1級アルキルアミン、トリシン(N−(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン)などの2級アミン、トリエチルアミン、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン)などの3級アミン、スペルミジンなどのポリアミン、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)およびPIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、テトラブチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなどの4級イオンの中でなされる。イミダゾールなどの芳香族アミンを含有する緩衝液も当該技術分野で公知である。このような緩衝液は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、クエン酸、フタル酸、酒石酸、ホウ酸および当該技術分野で公知の他の酸とともに使用することができる。アルカリ金属をを含有する他の好適な緩衝剤/溶液も当該技術分野で公知である。その例としては、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、フタル酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩および酢酸塩がある。好ましいpH範囲は、pH1〜pH15、より好ましくはpH4〜pH10である。好ましい濃度は、0.01〜100000OD/mL、より好ましくは10〜1000OD/mLである。反応は、0.1〜5000分、より好ましくは5〜100分行なわれる。
核酸分子の化学的切断は、二価カチオンにより触媒される核酸分子のホスホジエステル結合の切断によって、アルキル化によっておよび/または塩基加水分解や酸加水分解をはじめとする加水分解反応によって達成することができる。
二価カチオンにより触媒されるRNAのホスホジエステル結合の切断は、好ましくは、限定するものではないが、0.000001〜10M、より好ましくは0.00001〜1MのMg2+ Ca2+、Be2+、Ba2+、Fe2+、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Cd2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Pb2+の存在下でなされる。反応温度は、0℃〜150℃、より好ましくは10〜100℃である。反応は、0.1〜5000分間、より好ましくは1分〜120分間行なわれる。
RNAのホスホジエステル結合の切断は、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)などの1級アルキルアミン、トリシン(N−(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン)などの2級アミン、トリエチルアミン、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン)などの3級アミン、スペルミジンなどのポリアミン、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)およびPIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、テトラブチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなどの4級イオンを含有する溶液を用いて達成することもできる。イミダゾールなどの芳香族アミンを含有する緩衝液も当該技術分野で公知である。0.000001〜10M、より好ましくは0.00001〜1M。反応温度は、0℃〜150℃、より好ましくは10〜100℃である。反応は、0.1〜5000分間、より好ましくは1分〜120分間行なわれる。
核酸分子の断片化の方法としての核酸分子のアルキル化は、BrowneおよびGut & Beckによって記載された(Browne,2002;Gut & Beck,1995)。
RNAはアルカリ条件下で不安定なので、塩基加水分解を用いてRNA分子を切断することができる(Nordhoff et al,1993)。RNA分子の塩基加水分解は、好ましくは7.5〜15のpH範囲で、より好ましくは9〜15のpH範囲でなされる。反応温度は、0℃〜150℃、より好ましくは50〜150℃である。反応は、0.1〜5000分間、より好ましくは1〜100分間行なわれる。
RNAは、酸の存在下で、好ましくは、HClのような鉱酸、およびパラ−トルエン−スルホン酸などの有機酸などの強酸の存在下で加水分解することができるので、酸加水分解を用いてRNA分子を切断することもできる。RNA分子の酸加水分解は、好ましくは−1〜6.5のpH範囲で、より好ましくは1〜4のpH範囲でなされる。反応温度は、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20〜100℃である。反応は、0.1〜5000分間、より好ましくは1〜100分間行なわれる。厳しい条件下では、加水分解によって、両方のリン酸エステル結合、またリボースとプリンおよびピリミジン塩基との間のN−グリコシド結合が壊れることがある。
DNAは、酸の存在下で、好ましくは、HClのような鉱酸、およびパラ−トルエン−スルホン酸などの有機酸などの強酸の存在下で加水分解することができるので、酸加水分解を用いてDNA分子を切断することができる。DNA分子の酸加水分解は、好ましくは0〜5.5のpH範囲で、より好ましくは1〜2のpH範囲でなされる。反応温度は、0℃〜150℃、より好ましくは20〜100℃である。反応は、0.1〜5000分間、より好ましくは1〜100分間行なわれる。条件や反応時間の長さ次第で、核酸分子を、1ヌクレオチドの断片を含む様々なサイズに断片化することができる。特に、厳しい条件下では、加水分解によって、両方のリン酸エステル結合、またデオキシリボースとプリンおよびピリミジン塩基との間のN−グリコシド結合が壊れることがある。
酸加水分解および/または塩基加水分解に基づいて核酸分子の断片を生じさせるプロトコルは以前に記載された(Maxam & Gilbert,1977;Peattie,1979;Sargent,1988)。
酵素は核酸分子の断片化に有用であり、MSによる核酸の配列決定に関連して使用されることが多い(Alazard et al,2002;Bentzley et al,1998;Bentzley et al,1996;Faulstich et al,1997;Glover et al,1995;Kirpekar et al,1994;Owens et al,1998;Pieles et al,1993;Schuette et al,1995;Smirnov et al,1996;Wu & Aboleneen,2001;Wu et al,1998a)。核酸分子を切断する酵素は当該技術分野で公知であり(Sambrook,2001)かつ市販されている。使用される酵素次第で、核酸分子は、非特異的にかまたは特定のヌクレオチド配列で切断される。エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、リボザイム、およびDNAザイムを含むが、これらに限定されない、核酸分子を切断することができる任意の酵素を使用することができる。
エンドヌクレアーゼには核酸分子鎖内の結合を切断する能力があり、エンドヌクレアーゼは、二本鎖核酸分子または一本鎖核酸分子のいずれかに特異的であることができる。核酸分子の切断は、核酸分子内でランダムに起こることもあるし、または核酸分子の特定の配列で切断することもある。核酸分子の特異的な断片化は、1以上の酵素を用いて連続的な反応でまたは同時に達成することができる。制限エンドヌクレアーゼは、二本鎖核酸分子内の特定の配列を認識し、通常、認識配列の内部かまたは認識配列の近くで両方の鎖を切断するエンドヌクレアーゼのサブクラスである。エンドヌクレアーゼは、特定のタイプの核酸分子に特異的であり、好ましくはDNAまたはRNA分子に特異的であることができる。RNAまたはDNA分子に特異的なエンドヌクレアーゼの例には、リボヌクレアーゼH、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼTi、リボヌクレアーゼU、リボヌクレアーゼPおよび国際特許出願WO2004/097369号、43ページ、5行目から44ページ、4行目に論じられているリボヌクレアーゼがある。
配列決定における曖昧性を軽減するために、追加の限定的アルカリ加水分解を行なうことができる。これらの条件下では全てのホスホジエステル結合が切断される可能性があるので、省略された切断および/または特異的な切断に関する情報をこの方法で得ることができる(Donis−Keller et al,1977)。
エンドヌクレアーゼの代わりとして、DNA分子の断片化に、DNAグリコシラーゼを使用することができる。DNAグリコシラーゼは、特定のタイプのヌクレオ塩基を所与のDNA核酸分子から特異的に除去する。それによって、これらの酵素は、核酸分子の配列中に無塩基部位を生じさせることができ、無塩基部位は、露出したリン酸骨格を無塩基部位で特異的に切断し、この配列を示す1組のヌクレオ塩基特異的断片を生じさせる別の切断酵素によるか、あるいはアルカリ溶液およびまたは熱などの、化学的手段によるかのいずれかで認識され得る。DNAグリコシラーゼとその標的とされるヌクレオチドの1つの組合せを使用すれば、核酸分子の塩基特異的シグネチャーパターンを生成させるのに十分である。多くのDNAグリコシラーゼが公知であり、国際特許出願WO2004/097369号、44ページ、13行目から45ページ、7行目に論じられている。
しかしながら、DNA分子の塩基は、修飾塩基が特異的なDNAグリコシラーゼによって認識されるように特定の化学物質で修飾することができる(国際特許出願WO2004/097369号、45ページ、8行目から45ページ、26行目を参照されたい)。核酸分子の断片は、グリコシラーゼ処理とその後の無塩基部位の切断によって生じる。
本明細書における核酸分子の断片化は、当業者に公知でかつ参照により本明細書に組み込まれるジヌクレオチド特異的切断試薬によって達成することもできる(WO94/21663号;Cannistraro & Kennell,1989)。
デオキシリボヌクレアーゼ(略称、DNアーゼ)を用いて、DNA分子断片を生成させることもできる(Anderson,1981)。DNアーゼIは、二本鎖DNAおよび一本鎖DNAを消化してポリヌクレオチドおよびモノヌクレオチドにするエンドヌクレアーゼである。他のDNアーゼは、DNアーゼII、DNアーゼH、DNアーゼIT、DNアーゼIXなどであり、国際特許出願WO2004/097369号、46ページ、26行目から47ページ、6行目に論じられている。
エキソヌクレアーゼは、一本鎖または二本鎖核酸分子、例えば、DNA分子の末端からヌクレオチドを切断する酵素である。5’エキソヌクレアーゼ(DNA分子をその5’末端から切断する)と3’エキソヌクレアーゼ(DNA分子をその3’末端から切断する)がある。
上記のタンパク質ベースの酵素に加えて、DNAザイムとRNAザイムが当該技術分野で公知であり、これらを用いて核酸分子を切断し、核酸分子断片を生じさせることができる(Santoro & Joyce,1997;Schlosser et al,2008a;Schlosser et al,2008b);米国特許US6,326,174号、同US6,194,180号、同US6,265,167号、同US6,096,715;同US5,646,020号)。
核酸分子のイオン化断片化は、ランダムに切断するためのさらなる選択肢であり、例えば、質量分析計のイオン源の中で高圧を用いて、イオントラップ中での衝突誘導性解離を用いるMSによって断片化することによって質量分析法による分析で達成される。(Biemann,1990)。塩基配列は、MS中の個々のヌクレオチド残基と関連する公表されている質量を用いて核酸分子の得られるMS断片化パターン中に観測される分子量の差から推定される。
核酸分子の断片は、断片化方法の任意の組合せおよび酵素の任意の組合せを用いて形成することができる。したがって、全てのこれらの切断反応の任意の組合せ、例えば、熱、塩基性pH、ジアミン、または特に高温でRNAを分解することができる酸性pH、イオン化および1つまたはいくつかの酵素ならびに上記の組合せによるものが本発明に包含されることが当業者に認識されるであろう。さらに、核酸分子の特定の断片を生じさせる方法は、核酸分子のランダムな断片を生じさせる方法と組み合わせることができる。さらに、核酸分子を特定の部位で切断する1以上の酵素は、核酸分子を異なる部位で特異的に切断する1以上の酵素と組み合わせて使用することができる。別の例では、特定の種類の核酸分子を切断する酵素を組み合わせて使用することができる。別の例では、核酸分子をランダムに切断する酵素を、核酸分子を特異的に切断する酵素と組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用するというのは、核酸分子に対して1つまたは複数の方法を次々にまたは同時に実施することを意味する。
本発明に関連して、切断または断片化工程は、複数の修飾核酸分子をランダムに切断することを含む。本明細書で好ましく使用されるとき、「ランダムに」という用語は、各々の核酸分子が、そのヌクレオチド配列内、すなわち、その一次核酸構造内の1つまたはいくつかの部位で切断されることを示す。それに関連して、切断は、既知の部位で、統計的とはいえ、再現可能な形で起こることが必要不可欠である。本発明の実施については、全体としての切断によって、核酸分子の全てのあり得る断片または全ての関連する断片に相当するものが提供される限り、個々の分子が1回または数回切断されるかどうかということは重要でない。該切断に関連して、通常およびそれぞれの反応物中に存在する場合、修飾核酸分子種が切断されるだけでなく、このような修飾を担持しないまたは有さない核酸分子の種も切断されることが認識されるであろう。
その限りにおいて、非限定的な切断または完全な切断であれば、そのような全てのあり得る断片または全ての関連する断片に相当するものを提供するのに好適ではない単一のヌクレオチドまたは断片が生成されるので、切断は、ランダムな切断であるだけでなく、限定的な切断でもある。
さらなる工程では、本発明による方法は、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離する工程を含む。当業者に認識されるように、この工程は、好ましくは本発明による方法の第1の手順にのみ包含される。
この分離工程は、好ましくは全体としての修飾核酸分子断片を、これも好ましくは全体としての非修飾核酸分子断片から識別する原理に基づいて行なわれる。このような識別は、修飾核酸分子断片に付与された修飾に固有であるかもしくはこのような修飾に起因する、または修飾のために非核酸分子断片には存在しない質量、サイズまたは疎水性相互作用に基づくものであり得る。このような分離を可能にする技術は、とりわけ、濾過、透析およびその最も広義のクロマトグラフィー、すなわち、リガンドと該リガンドに対する相互作用パートナーの相互作用に基づく分離を含む。核酸分子の全てのあり得る断片または全ての関連する断片に相当するものが、基本的には、この分離工程で維持されることが好ましいことが認識されるであろう。
修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離するための特に好ましい原理は、リガンドを修飾として使用することであり、これは、リガンドを二成分または多成分修飾の第1または第2の部分として使用することを含む。
好ましい一実施形態では、修飾核酸分子の修飾は、核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドに直接的または間接的に連結されたリガンドである。間接的に連結されたとは、本明細書では、リガンドと核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドの間にリンカーが取り付けられていることを意味する。リガンドとは結合する何かを意味する。本明細書で使用されるリガンドは、核酸分子に連結された部分であり、リガンドは、リガンドと結合パートナーとの結合を可能にする結合パートナーと相互作用し、リガンドと結合パートナーの結合の結果として、リガンドに連結された核酸分子は固定される。
一実施形態では、相互作用パートナーは相に付着しており、このような相は、修飾核酸分子断片、好ましくは非修飾核酸分子断片も含む相とは異なるものである。好ましくは、このような相は固相である。このような固相は、例えば、固体支持体によって形成される。固体支持体は、好ましくは、ポリマー、好ましくはプラスチック、ガラス、アガロース、および金属を含む群から選択される。
リガンドと相互作用パートナーの相互作用によって、リガンド、ひいては修飾核酸分子断片が、相互作用パートナーが付着している相に固定される。リガンドと相互作用パートナーによって生成される相互作用の種類によって、固定は、好ましくは化学的固定、親和性固定、または磁気固定であり得る。
特に好ましい固定の形態は、以下の相互作用に基づく化学的固定であり、このような相互作用を与える一方の要素はリガンドであるが、このような相互作用を与えるもう一方の要素は相互作用パートナーである。当業者に公知の実施される例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
アミンおよび活性化カルボン酸、
アミン+活性化カルバメート、
アミンおよびイソシアネート/イソチオシアネート、
アミン+ハライド、
アミン+マレイミド部分、
アミン+アルデヒド/ケトン、
ヒドロキシルアミンまたはヒドラジン+ケトン/アルデヒド、
ヒドラジン誘導体および活性化カルボン酸、
ヒドラジンおよびイソシアネート/イソチオシアネート、
ヒドラジン+ハライド、
ヒドラジン+マレイミド部分、
ヒドラジン+アルデヒド/ケトン:
ヒドラジン+アルデヒド/ケトン、それに次ぐ還元アミノ化、
チオール+ハライド、
チオール+マレイミド、
チオール+活性化チオール、
チオール+ビニルスルホンおよび他のマイケル付加反応
アジド+アルキン+Cu塩および他の「クリック化学反応」相互作用パートナー(Kolb et.Al.2001)、
アルキルまたはアリールP(III)部分を用いたシュタウディンガー反応によるアジド+活性化カルボン酸、
アジド+求電子トラップに付着した三価ホスフィン(シュタウディンガーライゲーション)、
アジド+ホスフィノチオールエステル−無痕跡のシュタウディンガーライゲーション、
イミンを形成するアジド+アルデヒド/ケトン+PPh(シュタウディンガー)、このイミンはその後、任意で対応するアミンに還元することができる、
アミン+カルボキシル基
カルボン酸官能基+アミン、ヒドラジンなどのアミノ官能基、
酸化されてジアルデヒドになるシス−ジオール(例えば、RNA分子の3’末端に見られるもの)、このジアルデヒドは、その後、例えば、ホウ化水素を介する還元の後で、例えば、アミンまたはヒドラジン誘導体のいずれかとともに環状アミンを形成する、
チオエステル+システイン−ネイティブライゲーションおよび誘導体、
ホスホチオエート+α−ハロカルボニル含有結合体(conjugant)、
例えば、ホスフェート活性化を介してホスホロアミデートとなるホスフェート+アミン
例えば、活性化を介してホスホジエステルとなるホスフェート+アルコール、
(ホウ化水素で還元した後)2級アミンを形成するアルデヒド、ヒドラゾンを形成するヒドラジド基、セミカルバゾンを形成するセミカルバジド、
システイン誘導体+チオエステルペプチド
エポキシド+アミン
ディールズ・アルダー反応、および他のペリ環状反応のためのアルケン/アルキン+ジエン/ジイン
アルデヒドとヒドロキシアミンとを反応させることによるオキシム形成
ヒドロキシまたはアミノ+エポキシド。
上の反応または少なくともその一部は、とりわけ、Smith and March,2007およびHermanson,2008に記載されている。
標識/タグまたはリガンドの化学的付加も、限定するものではないが、上記の官能基相互作用に基づいて達成することができ、このような相互作用を与える要素の一方は核酸分子に付加されるが、このような相互作用を与えるもう一方の要素は、標識、相互作用パートナーに付加されることも認識される。
特に好ましい固定の形態は、以下の相互作用:ビオチン−アビジン相互作用、ビオチン−ニュートロアビジン相互作用、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用、抗体と抗原またはハプテンの相互作用、核酸分子がDNA、RNA、LNA、PNA、またはその組合せからなる2つのオリゴヌクレオチドの相互作用、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドの相互作用、アルブミンとシバクロンブルーの相互作用、金属キレーター剤と金属キレート化支持体の相互作用に基づく親和性固定であり、このような相互作用を与える要素の一方はリガンドであり、このような相互作用を与える要素の一方は相互作用パートナーである。
修飾核酸分子断片の固定により、非修飾核酸分子断片は、修飾核酸分子断片から除去される。このような除去は当業者に公知の標準的な手順である。好ましくは、非修飾核酸分子断片は、洗浄によるかまたはリガンドの相互作用が付着した相に固定された修飾核酸分子断片を含む相を、それぞれ、分離工程が行なわれている、反応液および反応容器から、それぞれ、新しい反応液および反応容器に移すことによって除去される。
本明細書で使用される洗浄という用語は、修飾断片が隔離されている相から非修飾断片または他の化学的実体を除去するために液体媒体を適用することを指す。
さらなるサブ工程では、固定された修飾核酸分子断片は、相互作用パートナーが付着している相から除去され、それにより修飾核酸分子断片が放出される。このような放出は、当業者に公知の任意の手段によって影響を及ぼすことができる。より具体的には、このような放出は、相に付着している相互作用パートナーへのリガンドの結合に競合するリガンドを相互作用パートナーを過剰に添加することによって影響を及ぼすことができる。この手順の代わりのものは、放出される修飾核酸分子断片が、このような放出の前に付着していた相からその時に放出される相互作用パートナーも含むように、相から相互作用パートナーを切り離すことである。さらなる実施形態では、相互作用パートナーとリガンドの相互作用は共有結合によって形成され、相互作用パートナーはリガンドから除去され、共有結合は、化学的におよび/または酵素的に切断されるか、あるいは光によって切断される。代わりの一実施形態では、相互作用パートナーとリガンドの相互作用は非共有結合によって形成され、相互作用パートナーはリガンドから除去され、非共有結合は、pH、温度および/またはイオン力の変化によって、リガンドおよび/または相互作用パートナーの変性によって、競合分子による溶出によって、有機溶媒およびカオトロピック剤の使用によって切断される。別の実施形態では、修飾核酸分子断片は、リガンドの(修飾)核酸分子断片への結合に使用されるリンカーを切断することによって相互作用パートナーが付着している相から除去される。このような実施形態では、修飾核酸分子断片が、修飾核酸分子断片の分離または分別を可能にする修飾を依然として含むことが保証されなければならない。
第1手順と第2の手順の両方に適用可能な、本発明による方法の次の工程では、修飾核酸分子断片は、その長さ、質量および/または電荷によって分離または分別され、このような分離または分別によって、修飾核酸断片のパターンが生成される。このような分離は、修飾核酸分子断片の一部であるそのまたは1つの修飾を使用することによって起こる。
このような分別工程では、非修飾核酸分子断片から分離した後に混合物として存在する修飾核酸分子断片である、個々の断片、すなわち、個々の断片種は、アドレス指定可能にされなければならない。この個々の断片種をアドレス指定可能にする工程は、その長さ、質量および/または電荷に関する該断片種の違いに基づくものである。したがって、個々の種が互いに分離されるように混合物を分別する技術が、修飾核酸分子断片の混合物に適用される。このような分離は、時間、空間、質量および/または質量電荷比での分離であってもよい。このような分離の実施方法は当業者に公知であり、序論をはじめ、本明細書にも記載されており、その開示は、不要な繰り返しを避けるために、本説明のこの部分に組み込まれるものとする。本明細書で好ましく使用されるとき、時間での分離は、ディスプレー中で、時間が経つと、断片の1つの種が別の種に続いて現れる分離である。所与の時点で、時間ウィンドウの幅やこのようなディスプレーが包含する時間ウィンドウによって、1つだけまたは限られた数のこのような種が、その時ディスプレー中に存在する。本明細書で好ましく使用されるとき、空間での分離は、ディスプレー中で、断片の1つの種が、2次元または3次元空間の場所に配置されるかまたは存在する分離であり、このような場所は、修飾核酸分子の様々な断片ごとに異なる。ディスプレーに含まれる空間によって、断片の全ての種またはそのほんの一部が含まれ得る、すなわち、提示され得る。
その限りにおいて、本明細書で好ましく使用されるパターンという用語は分別工程の結果を指し、好ましくはディスプレーに示される経時的な修飾核酸分子断片の配列か、あるいは2次元もしくは3次元空間での修飾核酸分子断片の配列の配置または質量もしくは質量電荷比のいずれかに基づく修飾核酸分子断片の配列の配置かのいずれかを示す。その限りにおいて、パターンは、好ましくは、時間軸に沿って配置されているか、2次元もしくは3次元空間に配置されているか、またはその組合せの修飾核酸分子断片のラダーである。
修飾核酸分子断片のパターンを利用する核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程は、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離する工程で使用された修飾を欠く修飾核酸分子断片を実際に利用することであることが本発明の範囲内である。より具体的には、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離した後、修飾を修飾核酸分子断片から除去し、それにより修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離するために使用された修飾を欠く修飾核酸分子断片のパターンを生成させる。修飾を欠くこのような修飾核酸分子断片は、修飾を修飾核酸分子断片に付加する無痕跡リンカーを使用することにより生成させ得る。このような無痕跡リンカーは、切断されたときに、修飾と核酸分子断片の両方を、一度は無痕跡リンカーを形成していた原子(複数可)、原子の基(複数可)または部分/部分(複数)を全て欠いた状態にするものである。このため、修飾と核酸分子断片は、無痕跡リンカーが切断され、除去された後、それぞれ、長さ、質量および/または電荷に何の変化も示さない。このような無痕跡リンカーの例を以下の式で模式的に示す。
Figure 2012506709
修飾核酸分子断片の1つの修飾またはそのような修飾の1つの部分を、好ましくは、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子断片から分離した後に、修飾核酸分子断片から除去し得、さらなる修飾または該修飾の部分が、なおも核酸分子断片に付加されていることは本発明の範囲内である。さらなる実施形態では、修飾の除去によって、修飾を核酸分子断片に付加するリンカー、または核酸分子断片に付加されたその部分が残り、そのような核酸分子断片は、好ましくはそのようなリンカーおよびその部分が、それぞれ、そのような核酸分子に修飾核酸分子断片の特徴を付与するのに好適であるという条件で、リンカーまたはその部分が存在するために、やはり修飾核酸分子断片とみなされ得る。
本発明による方法の第1の手順では、パターンが修飾核酸分子断片のみから本質的になることが当業者に認識されるであろう。しかしながら、いくつかの非修飾核酸分子断片も、通常は非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の不完全な分別による副産物として、分別工程に供される反応液に含まれることが排除できない。
本発明による方法の第2の手順に関連して、パターンが、修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片の両方によって形成されることも当業者に認識されるであろう。しかしながら、この修飾核酸分子断片を分別する工程という意味でのパターンは、これらの修飾核酸分子断片のみが、アドレス指定プロセスで使用され得る修飾を含むとき、修飾核酸分子断片のみから構成される。したがって、修飾核酸分子断片のパターンを生成させるために、修飾核酸分子断片のみが、時間、空間、質量、および/または質量電荷比で提示される可能性がある。
分別工程を可能にする、すなわち、修飾核酸分子断片、すなわち、種を、分離または分別するときに使用される修飾は、本明細書で定義された一成分修飾または二成分もしくは多成分修飾の部分であってもよい。
このような修飾は、好ましくは、標識、質量タグ、親油性タグまたは親和性タグである。
好ましい一実施形態では、修飾核酸分子の修飾は、核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドに直接的または間接的に連結された標識である。間接的に連結されたとは、本明細書では、標識と核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドの間にリンカーが取り付けられていることを意味する。本明細書で使用される「標識」という用語は、検出可能な(好ましくは定量可能な)シグナルを提供するために使用することができ、かつ核酸分子のヌクレオチドに付着させることができる任意の原子、分子および/または部分を指す。標識は、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、比色分析、X線回折または吸収、磁気、酵素活性などによって検出可能なシグナルを提供し得る。検出標識としては、蛍光基[特定の波長の電磁放射線、例えば、光またはX線を吸収することができ、かつその後、吸収されたエネルギーをより長い波長の放射線として再放出する基;実例となる例は、DANSYL(5−ジメチルアミノ)−1−ナフタレンスルホニル)、DOXYL(N−オキシル−4,4−ジメチルオキサゾリジン)、PROXYL(N−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン)、TEMPO(N−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、ジニトロフェニル、アクリジン、クマリン、Cy3およびCy5、エリスロシン、クマリン酸、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ローダミン、テトラメチルローダミン、ロックス、7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1−ジアゾール(NBD)、ピレン、フルオレセイン、ユーロピウム、ランテニウム、サマリウム、および他の希土類金属である]、シアニン色素(国際特許出願WO1997/45539号、米国特許US5,366,860号および同US5,18.934号)および化学発光色素(米国特許US4,931,223号;Bronstein et al,1994)、放射性同位体標識、ならびに化学発光標識(米国特許US4,931,223号;Bronstein et al,1994に示されているような化学反応中の光の放出によって検出可能な標識)が挙げられるが、これらに限定されない。
フルオレセイン色素の例としては、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン(TET)、2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)、2’−クロロ−5’−フルオロ−7’,8’−縮合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED)、および2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(VIC)が挙げられる。
この種の修飾、すなわち、標識は、本発明による方法の第2の手順に関連して特に有用であることが当業者に認識されるであろう。より好ましくは、このような標識は、核酸分子一般のうちの1つと異なる吸収または蛍光特性を示す。この種の修飾のために、修飾核酸分子断片は、非修飾核酸分子から識別されることができ、好ましくはディスプレーに提示され、アドレス指定プロセスに回される。
好ましい一実施形態では、修飾核酸分子の修飾は質量タグである。好ましい一実施形態では、修飾核酸分子の修飾は、核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドに直接的または間接的に連結される質量タグである。間接的に連結されたとは、本明細書では、質量タグと核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドの間にリンカーが取り付けられていることを意味する。質量タグは、その分子量が、配列決定される核酸分子の分子量よりも大きい何かを意味する。それゆえ、核酸分子に連結された質量タグ、すなわち、修飾が質量タグである修飾核酸分子は、未修飾核酸分子から修飾核酸分子を分離することを可能にする。未修飾核酸分子からの質量タグ分離修飾核酸分子の分離は、濾過、透析および/またはクロマトグラフィー法によって行なうことができる。
質量タグは、核酸分子に永久的に付加される部分を含み、そのタグ化断片は、正確な配列決定が可能になるような規定の質量である。このようなタグの例は、ペプチド、DNA、PNAなどの規定の親水性ポリマーである。質量タグは、単にタグ化断片を非タグ化断片から分離しやすくするために使用することもできる。分離されると、これらの質量タグは除去されて、所望の核酸分子断片だけを残す。非タグ化断片からの分離後に切断される質量タグは、規定の質量である必要はない。それゆえ、限定されるものではないが、PEG、タンパク質、抗体、多糖などの親水性ポリマーを、DNA、PNAおよびペプチドなどの規定のポリマーと同様に使用することができる。
質量タグは、その質量で区別可能なタグであるとみなすこともできる。このような区別を用いて、タグ化断片を同定することができる。同定は、MS/MS断片化を用いてタグの固有の質量を遊離させ、それにより親分子がタグ化されていたことを示すことにより達成することができる。このような概念は、「娘イオン」質量タグアプローチとして知られている。さらなる実施形態では、質量タグは、タグのアイデンティティーをさらに確立するために、規定の同位体分布からなっていてもよい。
さらに好ましい実施形態では、修飾は、核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドに直接的または間接的に連結される親油性タグである。間接的に連結されたとは、本明細書では、親油性タグと核酸分子の5’または3’末端ヌクレオチドの間にリンカーが取り付けられていることを意味する。親油性タグは、配列決定される核酸分子よりも親油性の高い何かを意味する。それゆえ、核酸分子に連結された親油性タグ、すなわち、修飾が親油性タグである修飾核酸分子は、未修飾核酸分子から修飾核酸分子を分離することを可能にする。未修飾核酸分子からの親油性タグ分離修飾核酸分子の分離は、濾過、透析および/またはクロマトグラフィー法によって行なうことができる。
親油性タグは、限定されるものではないが、2〜50個の炭素を有する脂肪族鎖、ステロイド、アルカロイド、芳香族環系から構成される。本明細書で使用される、「脂肪族」という用語は、1以上の官能基で任意に置換されている、飽和と不飽和の両方の、直鎖状(すなわち、非分岐状)、分岐状、非環式、環式、または多環式脂肪族炭化水素を含む。当業者に理解されるように、「脂肪族」は、限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことが本明細書で意図される。したがって、本明細書で使用されるとき、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐および環式アルキル基を含む。類似の慣例は、「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般用語にも当てはまる。さらに、本明細書で使用されるとき、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、飽和基と不飽和基の両方を包含する。したがって、実例となる脂肪族基としては、限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH−シクロプロピル、ビニル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CHb−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH−シクロヘキシル部分などが挙げられ、これらもやはり、1以上の置換基を担持していてもよい。アルケニル基としては、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどが挙げられる。代表的なアルキニル基としては、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどが挙げられる。一般に、本明細書で使用される、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、安定な単環式または多環式、複素環式、多環式、および多複素環式の不飽和部分を指す。置換基としては、限定されるものではないが、先に述べた置換基、すなわち、脂肪族部分について、または本明細書に開示されている他の部分について列挙された、安定な化合物を形成させる置換基のいずれかが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、「アリール」は、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含む、1または2個の芳香環を有する単環式または二環式炭素環系を指す。本発明の特定の実施形態では、本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、5〜10個の環原子を有する環式芳香族ラジカルを指し、これらの環原子のうち、1個の環原子は、S、O、およびNから選択され;0,1,または2個の環原子は、S、O、およびNから独立に選択される追加のヘテロ原子であり;残りの環原子は炭素であり、ラジカルは、これらの環原子のいずれかを介して、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどのような、分子の残りの部分に接続している。アリールおよびヘテロアリール基は、置換されていなくても置換されていてもよく、置換には、その上の1、2、3個、またはそれより多くの水素原子を、以下の部分、すなわち、限定されるものではないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(Rx);−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(Rx);−S(O);−NR(CO)R(ここで、各々のRの存在について、Rは、好ましくは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルから個別にかつ独立に選択され、上記のおよび本明細書中の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよく、環式であっても非環式であってもよく、上記のおよび本明細書中のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよい)のいずれか1つまたは複数と独立に置換することが含まれることが理解されるであろう。本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、具体的には、3〜7個、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する基を指す。好適なシクロアルキルとしては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられ、これは、他の脂肪族、ヘテロ脂肪族、または複素環式部分の場合と同様に、限定されるものではないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−CI;−Br;−I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(Rx);−S(O);−NR(CO)R(ここで、各々のRの存在について、Rは、好ましくは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルから個別にかつ独立に選択され、上記のおよび本明細書中の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよく、環式であっても非環式であってもよく、上記のおよび本明細書中のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよい)を含む置換基で任意に置換されていてもよい。通常適用される置換基のさらなる例は、本明細書に記載される実施例に示された特定の実施形態により説明されている。本明細書で使用される、「ヘテロ脂肪族」という用語は、例えば、炭素原子の代わりに1以上の酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素原子を含有する脂肪族部分を指す。ヘテロ脂肪族部分は、分岐状、非分岐状、環式または非環式であってもよく、また、飽和および不飽和複素環、例えば、モルホリノ、ピロリジニルなどを含んでいてもよい。特定の実施形態では、ヘテロ脂肪族部分は、その上の1以上の水素原子を、限定されるものではないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(Rx);−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(Rx);−S(O);−NR(CO)R(ここで、各々のRの存在について、Rは、好ましくは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルから個別にかつ独立に選択され、上記のおよび本明細書中の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよく、環式であっても非環式であってもよく、上記のおよび本明細書中のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよい)を含む1以上の部分と独立に置換することによって置換される。分別工程を可能にする、すなわち、修飾核酸分子断片、すなわち、種を分離または分別するときに使用される、本明細書で定義される一成分修飾は、リンカーによって核酸分子に連結されてもよい。
分別工程を可能にする、すなわち、修飾核酸分子断片、すなわち、種を分離または分別するときに使用される、本明細書で定義される二成分または多成分修飾は、リンカーによって、互いにまたは核酸分子に連結されてもよい。
「リンカー」は、それぞれ、核酸分子を修飾もしくはその部分/部分(複数)に接続する連結部分を形成するか、または互いに対するおよび核酸分子に対する修飾を形成する1以上の原子を指す。リンカーの機能は、恒久的にまたは非恒久的に該部分または分子を接続させることである。一実施形態では、非恒久的連結は切断可能な連結である。リンカーは、特性が、非環式、環式、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの組合せである。リンカーは、炭素原子骨格のみを含むものであってもよいし、または上で定義されたヘテロ脂肪族であってもよい。リンカーは、他の部分、例えば、限定されるものではないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(Rx);−S(O);−NR(CO)R(ここで、各々のRの存在について、Rは、好ましくは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルから個別にかつ独立に選択され、上記のおよび本明細書中の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよく、環式であっても非環式であってもよく、上記のおよび本明細書中のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれかは、置換されていても置換されていなくてもよい)を含有していてもよい。リンカーは、それぞれ、該リンカーによって接続または連結されている、分子および部分の分離を可能にする切断部位または切断可能部分を、好ましくはその骨格中に含有していてもよい。例えば、リンカーの切断によって、一実施形態では、標識などの修飾が、それぞれ、核酸分子および核酸分子断片から分離される。このような切断可能なリンカーは、酸、アルカリ、または還元条件の下で切断され得る。それらは、酵素的にまたは光によっても切断され得る。後者の場合、それらは光切断可能なリンカーである。
本発明に関連して、様々な核酸分子断片種が、その長さ、質量または電荷によって修飾により分別される分別工程では、その限りにおいて好適な任意の技術が使用され得る。このような技術は、限定されるものではないが、クロマトグラフィーおよび質量分析法を含み、本発明による方法の第1の手順と第2の手順の両方に関連して使用され得る。特に好ましい技術は、クロマトグラフィーと組み合わせ得る質量分析技術である。
本明細書で使用されるとき、質量分析法に対する言及は、当業者に公知の任意の好適な質量分析フォーマットを包含する。核酸分子の正確な分析を可能にする質量分析技術が好ましい。例えば、核酸分子の過度の断片化が起こるため、電子イオン化および高速原子衝撃(FAB)イオン化の方法などのいわゆる「ハードな」イオン化技術は、核酸分子の分析には好適ではない。ソフトなイオン化技術を用いた、様々な質量分析フォーマット(様々な質量分析計と組み合わせたイオン化原理)が当業者に公知である。このようなフォーマットとしては、エレクトロスプレー、大気圧光イオン化(略称、APPI)、大気圧化学イオン化(略称、APCI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(略称、MALDI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(略称、MALDI−TOF)、赤外マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(略称、IR−MALDI)、直交−TOF(略称、O−TOF)、軸方向−Tof(略称、A−TOF)、イオンサイクロトロン共鳴(略称、ICR)、フーリエ変換線形/レフレクトロン(略称、RETOF)、レーザー脱離イオン化(略称、LDI)、高速原子衝撃(略称、FAB)、脱離エレクトロスプレーイオン化(略称、DESI)、シリカ上脱離イオン化(略称、DIOS)、液体二次イオン質量分析法(略称、LSIMS)が挙げられる。
エレクトロスプレーイオン化(略称、ESI)は、高電位が印加されるキャピラリーの先端から分析物の希釈溶液を噴霧することを含む。次に、噴霧は、液体表面で電荷を分離させ、それにより出現した液滴(テイラーコーン)を変形させる静電力によって達成される。これが最終的に崩壊して、多数のマイクロメートルサイズの液滴を生じさせ、これがさらに、電荷を帯びた分子に発展し、次に、これが分析される。この技術は穏やかでかつ極性化合物やイオン性化合物を好むので、生体ポリマー分析の分野ですぐに適用された。
大気圧光イオン化(略称、APPI)は、イオン化が困難なステロイドなどの非極性実体のイオン化に用いられることが多いが、この技術は、極性実体に適用することもできる。これは、大気圧で加熱器を用いてLC溶離液を蒸発させるLC/MSイオン化技術である。得られた気体は、放電ランプ(例えば、UVランプ)により発生した光子のビームの中に通され、このビームによって気体分子がイオン化される。
大気圧化学イオン化(略称、APCI)は、分析物を含有する溶液(通常、HPLCの移動相)を400℃を超える温度に加熱し、高流速の窒素で噴霧し、得られたエアロゾル雲をコロナ放電生成イオンに供することを含む。これは、液相のイオン化プロセスではなく、気相のイオン化プロセスであるという点でESIとは異なる。通常、APCIは、ESIよりも多くの断片化を生じさせる。
高速原子衝撃(略称、FAB)は、固体マトリックスを含有する試料に衝突して、脱離とイオン化を生じさせる中性原子、通常、XeまたはArの高エネルギービームの使用を含む。これは、気相になりにくい大きい生体分子に用いられる。原子ビームは、イオン源から電荷交換セルを通してイオンを加速させることによって生成される。イオンは、中性原子との衝突で電子を獲得し、高エネルギー原子のビームを形成させる。FABスペクトルは、通常、わずかな断片と疑似分子イオン(例えば、[M+H]+、[M+Na]+、付加物)のシグナルとを含み、このために、FABは分子量決定に有用なものとなっている。しかしながら、マトリックスは、多くの低m/zシグナルの一因となっており、シグナルの再現性がないために、スペクトルの解釈が複雑になる。さらに、この方法は、わずかな不純物による抑制効果を受けやすい。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(略称、MALDI)は、レーザーを介してタンパク質またはDNA断片などの大きい生体分子を蒸発させ、イオン化する方法である。生体分子を3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)などの固体マトリックスに分散させる。UVレーザーパルスにより、大きい分子の一部を担持するマトリックスが切断されてイオン化形態で気相に入り、そのため、これらの分子を質量分析計に抽出することができる。MALDIの範囲が広いので、分析器次第で、最大500kDaの分子量、通常は5〜100kDaの分子量(すなわち、例えば、ポリマー、生体分子、複合体、酵素)を決定することができる。MALDI技術は、例えば、飛行時間型分析器またはフーリエ変換質量分析計と合わせることができる。前者は分解能と精度が低く、一方、後者は非常に精度が高いが、ダイナミックレンジは低く、その操作はより複雑である。
レーザー脱離イオン化(略称、LDI)は、分子に高強度レーザーパルスを照射して、後に分析されるイオンを形成させることである。この初期の技術の限界は、約5〜10kDaと質量のカットオフが鋭いことであり、TOF質量分析器と合わせる必要がある。
脱離エレクトロスプレーイオン化(略称、DESI)、は、エレクトロスプレー源が、数ミリメートルから数センチメートル離れた固体試料に向けられる帯電した液滴を生成させるイオン化技術である。帯電した液滴は、表面との相互作用を通して試料を獲得し、その後、質量分析計に抽出することができる高度に帯電したイオンを形成させる。
シリカ上脱離イオン化(略称、DIOS)は、多孔質シリコン表面上に沈着した試料のレーザー脱離/イオン化である。
改良型の表面増強レーザー脱離/イオン化(略称、SELDI)は、MALDIと似ているが、生化学的親和性標的を使用する。
表面増強ニート脱離(略称、SEND)は、マトリックスが標的表面に共有結合される、改良型のMALDIである。
表面支援レーザー脱離/イオン化(略称、SALDI)は、液体+微粒子マトリックスを使用するMALDIと説明することができる。
二次イオン質量分析法(略称、SIMS)は、分析物をコーティングした表面に高エネルギーの一次イオンを衝突させて、試料(二次)イオンを生成させることを含む。エネルギー移動により、試料分子が脱離して気相に入り、そこで、イオン/分子反応を受けて二次イオンを形成させる。ひとたび形成されれば、高電圧を印加することによって、試料をその源から抽出および集束レンズへと加速させることができる。液体二次イオン質量分析法(略称、LSIMS)として知られる、この方法の一般的な変法では、プローブ先端に置く前に、分析物を不揮発性の液体マトリックスに溶解させる。この混合物を一次イオン(通常35keVのCs+)に衝突させると、マトリックスイオンが形成され、間接的に試料がイオン化される。この点で、LSIMSは、同じくマトリックスを使用する高速原子衝突(略称、FAB)として知られるより古い技術とよく似ている。その名が示すように、FABイオン化は、イオンビームではなく、高速中性原子(例えば、Ar)のビームを利用するが、FABとLSIMSにおけるイオン化のメカニズムは同じであり、実際、この2つの用語は混同されることが多い。
上記のようなイオン源は、一定期間、溶離剤とともに生じ得るが、この溶離剤は、液体クロマトグラフィーまたはキャピラリー電気泳動によって混合物から分離されたものである。
断片のアイデンティティーのさらなる確認の役割を果たすために、タンデム質量分析法を用いて、上記の方法を強化することもできる。MS/MSとしても知られるタンデム質量分析法は、何らかの形態の断片化が段階と段階の間に生じる、複数の質量分析選別工程を含む。核酸分子の配列同定のためのタンデム質量分析法の適用性については、いくつかの総説で調べることができる(Limbach,1996;Nordhoff et al,1996;Wu & McLuckey,2004)。衝突誘導性解離(CID)による気相断片化は、例えば、イオントラップ型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型および三連四重極型の分析器を用いるタンデム質量分析法を用いて行なうことができる(Baker et al,1993;Boschenok & Sheil,1996;Kawase et al,1991;Limbach et al,1995;Little et al,1995;Marzilli et al,1999;Ni et al,1996)。このような未修飾および修飾核酸分子の断片は、MALDI−MS後のポストソース分解と迅速な断片化によって生成させることができる(Juhasz et al,1996;Stemmler et al,1993;Talbo & Mann,1996)。
液体クロマトグラフィー−質量分析法(略称、LC−MS)は、質量分析計への導入前に非揮発性化合物の複合混合物を分離することを可能にする。これは、高分子量の化合物または熱に対する感受性が高すぎてGCでは分析できない化合物に広く用いられている。LCに接続される最も一般的なイオン化方法は、ポジティブイオンモードおよびネガティブイオンモードのESIおよび大気圧化学イオン化(略称、APCI)である。LCは、ほとんどの場合、逆相高速液体クロマトグラフィー(略称、RP−HPLC)で行なわれる。
様々な種の修飾核酸分子種を分別するときにも使用され得るフーリエ変換質量分析法(略称、FTMS)の基盤は、電子衝突イオン化、化学イオン化、MALDI、およびESIのような技術によって形成されたイオンを蓄積し、何分間も保存することを可能にするイオントラップ(ペニングセル)である。この間、イオンと中性分子との反応を追跡することができる。この方法は、質量分析の分解能が最も高く、質量の上限が高く、感度が高く、検出が非破壊的で、かつ質量測定の精度が高い。これはフーリエ変換検出を用いるので、シグナルを平均化することや同時に広範な質量を検出することが可能である。
質量スペクトルが、質量分析法による核酸分子またはその断片の分析から得られたデータを(グラフまたは暗号化された数値のいずれかで)示すものであることも本発明の範囲内である。質量スペクトルが、分離または分別工程で生成されるパターンの一実施形態であることも本発明の範囲内である。
質量スペクトルに関する核酸分子の断片化パターンは、特徴的な分布とシグナルの数(例えば、ピークまたはそのデジタル表示)を指す。一般に、本明細書で使用される断片化パターンは、核酸分子の特異的切断によって生成される1組の断片を指す。このような断片パターンは、分離または分別工程で生成されるパターンの一実施形態である。
連続的な骨格切断に依拠する任意の質量分析による配列決定法の有用性は、質量ラダーの形成に依存する。配列情報は、質量スペクトル中の連続するピーク間の質量差を決定することによって得られる。オリゴデオキシヌクレオチドの場合、連続するピーク間の予想される質量差は、dC=289.05、dT=304.05、dA=313.06、およびdG=329.05(精密質量に基づく値)の損失に対応する。オリゴリボヌクレオチドの場合、質量差は、C=305.04、U=306.03、A=329.05、およびdG=345.05(精密質量に基づく値)である。
本明細書で使用するとき、質量分析法に関連する質量シグナルは、特定の質量を有する分子の数または相対数である、出力データを指す。シグナルには、「ピーク」およびそのデジタル表示が含まれる。質量分析計が、試料成分の実際の「分子質量」の代わりに「質量電荷比」(m/z)を測定することは周知である。使用される特定の質量分析計のキャリブレーションは、実験前に行なわれるべきである。多価分子を検出する質量分析計では(例えば、エレクトロスプレーイオン化を用いる場合)、例えば、得られた質量電荷値に分子上の電荷の数を掛けることによって、大雑把な推定質量を決定することができる。実際には、中性分子質量の計算は、デコンボリューションと呼ばれるプロセスを用いるソフトウェアパッケージを適用することによって行なわれる。したがって、質量を検出、決定および/または計算する当該技術分野で公知の方法の各々を、本明細書に提供された方法により包含される質量を得るために使用することができる。
本明細書で使用するとき、「デコンボリューションされた質量」は、平均分子質量またはモノアイソトピック精密分子質量のいずれかを指す。精密分子質量の使用は、質量分析器の分解能によって制限される。より大きい分子質量の分子を分析する場合、化合物の同位体パターンを解明することはより難しくなる。このような場合、平均質量を、より大きい分子質量を示す化合物の同定に使用することができる。しかしながら、精密質量を使用する場合、モノアイソトピック質量を適用する必要があるが、それは、これによってCとUの識別が可能になるからである。しかしながら、同定されるためには、モノアイソトピック質量が好適な存在量で存在することが確認されなければならない。
本明細書で使用するとき、「ピーク」という用語は、質量分析計スペクトル(「質量スペクトル」)のベースラインシグナルから突き出した上向きの突起を指し、これは、断片の質量と強度に対応する。ピークは、手動または自動の「ピーク発見」手順によって質量スペクトルから抽出することができる。
本明細書で使用するとき、質量スペクトル中のピークの質量は、「ピーク発見」手順によって計算される質量を指す。
本明細書で使用するとき、質量スペクトル中のピークの強度は、「ピーク発見」手順によって計算される強度を指し、これは、限定されるものではないが、質量スペクトル中のピークの高さやそのシグナル・ノイズ比を含むパラメータによって決まる。
本明細書で好ましく使用される計算質量は、その分子式により決定される、分子が構成されている個々の元素からの質量寄与を合計することによって決定される分子または断片の理論質量として定義される。計算される質量は、元素の精密質量が使用されるか、それとも平均質量が使用されるかによって、精密質量または分子質量のいずれかとなり得る。例えば、分子式C3H6O2の分子の計算質量は、方程式:(3×12.000)+(6×1.0078)+(2×15.9949)から導かれる、74.037ダルトンという計算されたモノアイソトピック精密質量を有するが、天然に最も多く存在する同位体を考慮すると、平均質量は74.079ダルトンである。
本明細書で好ましく使用される観測質量は、質量分析計で実験的に見出される質量値である。
本明細書で好ましく使用される精密質量は、分子の精密分子質量であり、この場合、各原子の原子質量は、各元素について最も多く見られる同位体のモノアイソトピック形態に基づく。
本明細書で好ましく使用される観測される精密質量は、質量分析計を用いて実験的に決定される、分子の精密モノアイソトピック分子質量である。
本明細書で好ましく使用される計算される精密質量は、その分子式により決定される、分子が構成されている個々のモノアイソトピック元素からの質量寄与を合計することによって理論的に決定される、分子の精密モノアイソトピック分子質量である。
本明細書で好ましく使用される平均分子量は、構造体の平均分子質量であり、この場合、原子質量は、元素の全ての同位体の天然存在度に基づく。
本明細書で好ましく使用される観測される平均分子量は、質量分析計を用いて実験的に決定される、分子の平均分子質量である。
本明細書で好ましく使用される計算される平均分子量は、その分子式により決定される、分子が構成されている全ての元素の原子質量を用いて理論的に決定される、分子の平均分子質量である。
本発明による方法は、特定の核酸分子に関連しても使用し得ることが認識されるであろう。このような特定の核酸分子は、例えば、アプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス分子、リボザイム、デコイオリゴヌクレオチドおよびsiRNA分子である。好ましい実施形態では、この種の特定の核酸分子は、治療、診断および/または美容の分野で使用される。
一本鎖核酸分子が個別的でかつ安定な3次元構造を形成し、抗体のように標的分子に特異的に結合することができることは本発明の範囲内である。D−ヌクレオチドから構成されるこのような核酸分子は、アプタマーと呼ばれる。いくつかの標的分子、例えば、小分子、タンパク質、核酸に対するアプタマーや、細胞、組織および生物に対するアプタマーすら同定することができ、これらは、特定の標的分子のインビトロおよび/またはインビボ機能を阻害することができる。アプタマーは、インビトロ選択または指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(略称、SELEX)と呼ばれる標的指向性の選択プロセスによって同定される(Bock et al,1992;Ellington & Szostak,1990;Tuerk & Gold,1990)。アプタマーが元来低分子量である結果として、主にヌクレアーゼ分解されたり、腎臓によって体内からクリアランスされるために、修飾されていないアプタマーは、数分から数時間の半減期で血流から速やかに排除される。したがって、アプタマーを治療的に使用するために、それらを糖(例えば、リボース)骨格の2’位で修飾する必要がある(Cload et al,2006)。
アプタマーの不安定性の原因となる遍在するヌクレアーゼは、キラルな構成要素、すなわち、L−アミノ酸からなる。その結果として、ヌクレアーゼの構造は、そもそも同様にキラルとなり、立体特異的に基質を認識することになる。したがって、これらの酵素は、適切なキラル形状の基質分子のみを受容する。アプタマーや天然の核酸分子はD−ヌクレオチドから構成されるので、L−オリゴヌクレオチドは、酵素による認識やその後の分解から逃れるはずである。同じ原理により、この場合は残念なことであるが、自然は、このような鏡像核酸を増幅する酵素活性を発達させなかった。したがって、L−核酸アプタマーは、SELEXプロセスを用いて直接得ることができない。しかし、立体化学の原理により、最終的には所望の機能的なL−核酸アプタマーにたどり着く迂回路が明らかにされている。
インビトロ選択された(D−)アプタマーがその天然の標的に結合する場合、このアプタマーの構造的鏡像は、同じ特徴をもって、天然の標的の鏡像に結合する。このとき、両方の相互作用パートナーは同じ(非天然の)キラリティーを有する。生命に関する、最も生化学的な化合物のホモキラリティーのために、このようなエナンチオ−RNAリガンドは、当然、実用が限定されるであろう。他方、SELEXプロセスが(非天然の)鏡像標的に対して行なわれた場合、この(非天然の)標的を認識するアプタマーが得られるであろう。同じく、該アプタマー−所望のL−アプタマー−の対応する鏡像形状は、天然の標的を認識する。生体安定性核酸分子を作製するためのこの鏡像選択プロセスは、1996年に最初に発表され(Klussmann et al,1996;Nolte et al,1996)、所与の標的分子に対する高い親和性と特異性だけでなく、生物学的安定性も同時に示す機能的な鏡像核酸分子リガンドを生み出すことになった。一本鎖核酸分子が、「シュピーゲルマー」と呼ばれる(ドイツ語の単語、「シュピーゲル」、鏡に由来する)(Eulberg et al,2006)ようなリガンド結合性L−核酸分子であることは本発明の範囲内である。
本明細書に開示されている核酸分子、好ましくは、シュピーゲルマーまたはアプタマーが、好ましくは高分子量部分であるおよび/または好ましくは、とりわけ、動物体内、好ましくはヒト体内での滞留時間に関して核酸分子の特徴を改変することが可能である部分を含むことは本発明の範囲内である。このような修飾の特に好ましい一実施形態は、本明細書で使用される核酸分子のPEG化およびHES化であり、PEGはポリ(エチレングリコール)を表し、HESはヒドロキシエチルスターチを表す。本明細書で好ましく使用されるPEG化は、核酸分子の修飾であり、このような修飾は、核酸分子に付着したPEG部分からなる。本明細書で好ましく使用されるHES化は、核酸分子の修飾であり、このような修飾は、核酸分子に付着したHES部分からなる。これらの修飾およびこのような修飾を用いて核酸分子を修飾するプロセスは、欧州特許出願EP 1 306 382号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくは、高分子量部分からなるかまたは高分子量部分を含む修飾の分子量は、約2,000〜250,000Da、好ましくは20,000〜200,000Daである。PEGがこのような高分子量部分である場合、分子量は、好ましくは20,000〜120,000Da、より好ましくは40,000〜80,000Daである。HESがこのような高分子量部分である場合、分子量は、好ましくは20,000〜200,000Da、より好ましくは40,000〜150,000Daである。HES修飾のプロセスは、例えば、ドイツ特許出願DE 1 2004 006 249.8号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
PEGおよびHESのいずれかが、特許出願WO2005/074993号およびWO2003/035665号にさらに記載されているような線状形態または分岐状形態のいずれかで使用され得ることは本発明の範囲内である。このような修飾は、原理上、核酸分子に対して任意のその位置で行なうことができる。好ましくは、このような修飾は、5’末端ヌクレオチド、3’末端ヌクレオチドおよび/または核酸分子の5’ヌクレオチドと3’ヌクレオチドの間の任意のヌクレオチドに対して行なわれる。
修飾および好ましくはPEGおよび/またはHES部分は、直接的にまたはリンカーを介して本発明の核酸分子に付着させることができる。本発明による核酸分子が、1以上の修飾、好ましくは1以上のPEGおよび/またはHES部分を含むことも本発明の範囲内である。一実施形態では、個々のリンカー分子は、2以上のPEG部分またはHES部分を本発明による核酸分子に付着させる。本発明に関連して使用されるリンカーは、それ自体、線状または分岐状のいずれかであることができる。この種のリンカーは当業者に公知であり、特許出願WO2005074993号およびWO2003035665号にさらに記載されている。
好ましい一実施形態では、リンカーは生体分解性リンカーである。生体分解性リンカーは、本発明による核酸から修飾を放出するので、とりわけ、動物体内、好ましくはヒト体内での滞留時間に関して、本発明による核酸の特徴を改変することを可能にする。生体分解性リンカーの使用は、本発明による核酸の滞留時間のより良好な制御を可能にし得る。このような生体分解性リンカーの好ましい一実施形態は、限定されるものではないが、国際特許出願WO2006/052790号、WO2008/034122号、WO2004/092191号およびWO2005/099768号に記載されているような生体分解性リンカーであり、国際特許出願WO2004/092191号およびWO2005/099768号では、リンカーは、本明細書に記載の1つまたは2つの修飾と核酸分子とその間の生体分解性リンカーとからなるポリマー状のオリゴヌクレオチドプロドラッグの一部である。
核酸分子の修飾は生体分解性修飾であり、生体分解性修飾は、直接的にまたはリンカーを介して本発明の核酸分子に付着させることができることは本発明の範囲内である。生体分解性修飾は、核酸分子から修飾を放出するので、とりわけ、動物体内、好ましくはヒト体内での滞留時間に関して、核酸分子の特徴を改変することを可能にする。生体分解性修飾の使用は、核酸分子の滞留時間のより良好な制御を可能にし得る。このような生体分解性修飾の好ましい一実施形態は、限定されるものではないが、国際特許出願WO2002/065963号、WO2003/070823号、WO2004/113394号およびWO2000/41647号に記載されているような生体分解性のものである。
本明細書で使用される「生体分解性」という用語は、生物学的システムにおける分解、例えば、酵素的分解または化学的分解を指す。
上記の修飾に加えて、他の修飾を用いて、本発明による核酸の特徴を改変することができ、このような修飾は、タンパク質、コレステロールなどの脂質およびアミラーゼ、デキストランなどの糖鎖の群から選択される。
アンチセンス核酸分子もまた、一本鎖核酸分子である。アンチセンス核酸分子は、mRNA鎖に特異的に結合し、それにより、mRNAは、mRNAの遺伝子産物への転写が阻止される。さらに、mRNAは、RNアーゼH消化によって分解される(Scherer & Rossi,2003)。アンチセンス核酸分子は、RNA、修飾RNA、DNA、修飾DNA、PNA、LNAおよびそれらの組合せのようなD−核酸分子から構成される。
リボザイムは、化学的反応を触媒する一本鎖D−核酸分子である。多くの天然リボザイムは、それ自身の切断または他のRNA、例えば、mRNAの切断を触媒する。リボザイムは、mRNA鎖に結合し、それを特異的に切断する。こうした標的特異的mRNA分子の切断または分解によって、標的分子の発現が無効にされる(Usman & Blatt,2000)。
遺伝子発現の変化が正常発生や疾患病因のより良く理解された構成要素になるにつれて、転写因子や他の遺伝子発現の調節因子は、潜在的な治療的介入のますます魅力的な標的となってきた。転写因子は、通常、遺伝子調節において重要な役割を果たし、遺伝子発現に正または負のいずれかの効果を及ぼすことができる核タンパク質である。これらの調節タンパク質は、その標的遺伝子のプロモーター領域に見られる特異的配列に結合する。これらの結合配列は、通常、長さ6〜10塩基対であり、複数反復して見られることもある。転写因子は、周囲のゲノムDNAがなくても、その比較的短い結合配列を認識することができるので、コンセンサス結合部位を担持する短い放射性標識オリゴデオキシヌクレオチド(略称、ODN)は、核抽出物中の転写因子結合活性を同定および定量する電気泳動移動度シフトアッセイにおいてプローブとしての役割を果たすことができる。最近では、特定の転写因子のコンセンサス結合配列を担持するODNは、生きた細胞で遺伝子発現を操作するためのツールとして検証されている。この戦略は、後に標的因子により認識および結合されるこのような「デコイ」ODNの細胞内送達を含む。デコイが転写因子のDNA結合部位を占めることで、タンパク質はその後、標的遺伝子のプロモーター領域に結合することができなくなる(Mann & Dzau,2000)。遺伝子発現の治療的操作へのデコイODNの使用は、1995年に、Morishitaらによって最初に記載された(Morishita et al,1995)。彼らは、E2Fファミリーの転写因子のコンセンサス結合部位を担持するODNによるバルーン障害時のラット頸動脈の処置を報告し、E2F−1に特異的なデコイによってこの上方調節が抑制され、障害血管における平滑筋増殖と新生内膜過形成が阻止されることを発見した(Morishita et al,1995)。この初期のインビボ適用に加えて、転写因子デコイが、マウス顎下腺においてレニン遺伝子のプロモーター内の負の調節エレメントを遮断するために使用され、デコイが、インビボでの遺伝子活性の増大および抑制に使用することができることが示された(Tomita et al,1999)。
主にサイズが異なる、siRNA分子、miRNA分子またはRNAi分子の基本的なデザインは、基本的には、核酸分子が二本鎖構造を含むようにするということである。二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖を含む。より好ましくは、第1の鎖は、第1の連続するヌクレオチドのストレッチを含み、第2の鎖は、第2の連続するヌクレオチドのストレッチを含む。少なくとも第1のストレッチと第2のストレッチは、互いに本質的に相補的である。このような相補性は、通常、ワトソン−クリック塩基対合または限定されるものではないが、フーグスティーン塩基対合や他の塩基対合を含む、当業者に公知の他の塩基対合メカニズムに基づく。このような二本鎖構造の長さによっては、塩基相補性に関する完全一致が必ずしも必要とされないことが当業者に認識されるであろう。しかしながら、このような完全な相補性は、いくつかの実施形態では好ましい。主に、二本鎖構造が、RNA干渉メカニズムを誘発するためになおも好適であり、かつ好ましくはこのような二本鎖構造が、それぞれ、このような細胞、組織および器官を含有するまたは原理上は含有する細胞、組織および生物で見られる生理的条件下でなおも安定に形成される条件では、ミスマッチも許容される。より好ましくは、二本鎖構造は、生理的緩衝液中、37℃で安定である。
第1のストレッチは、通常、少なくとも部分的に標的核酸に相補的であり、第2のストレッチは、特に、塩基相補性に関して、それぞれ第1のストレッチと第2のストレッチの関係を所与として、少なくとも部分的に標的核酸と同一である。標的核酸は、好ましくはmRNAであるが、hnRNAなどの他の形態のRNAもこのような目的に好適である。このようなsiRNA分子、miRNA分子およびRNAi分子は、それぞれ、標的分子のmRNAのノックダウンをもたらすRNA干渉応答を誘発するのに好適である。その限りにおいて、この種の核酸分子は、mRNAのレベルで発現を減少させることにより標的分子の発現を減少させるのに好適である。
RNA干渉は、それぞれ、数十個および時には数百個のヌクレオチドおよびヌクレオチド対さえも含む長い核酸分子を使用したときに見られるが、より短いsiRNA分子、miRNA分子およびRNAi分子が通常好ましい。第1のストレッチおよび/または第2のストレッチの長さのより好ましい範囲は、約15〜29個の連続するヌクレオチド、好ましくは19〜25個の連続するヌクレオチドおよびより好ましくは19〜23個の連続するヌクレオチドである。より好ましくは、第1のストレッチと第2のストレッチの両方の長さは同じである。さらなる実施形態では、二本鎖構造は、好ましくは15〜29個、好ましくは18〜25個、より好ましくは19〜23個および最も好ましくは19〜21個の塩基対を含む。
siRNA分子、miRNA分子、RNAi分子およびRNAiを仲介する他の核酸の特定のデザインは、それぞれ、現在および将来のデザイン原理によって変り得ることが当業者に認識されるであろう。現在のところ、siRNA分子、miRNA分子、RNAi分子およびRNAiを仲介する他の核酸のいくつかのデザイン原理が、それぞれ存在する。siRNA分子、miRNA分子、RNAi分子およびRNAiを仲介する他の核酸のデザイン原理は、国際特許出願WO/2008/052774号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
siRNAのこれらの様々なデザインとは無関係に、その起源または機能によって、3つのタイプの天然の小RNA、すなわち、短干渉RNA(略称、siRNA)、反復関連短干渉RNA(略称、rasiRNA)およびマイクロRNA(略称、miRNA)が記載されていることが当業者に認識されるであろう。本来、dsRNAは、RNAを鋳型にしたRNAポリメライゼーション(例えば、ウイルスによるもの)によるか、または重なり合う転写物のハイブリダイゼーション(例えば、トランスジーン配列またはトランスポゾンなどの反復配列によるもの)によって生成され得る。このようなdsRNAは、siRNAまたはrasiRNAを生じさせ、通常、これによって、mRNA分解および/またはクロマチン修飾が導かれる。さらに、相補的またはほとんど相補的な20〜50塩基対の逆向き反復を含有する内在性転写物は、それ自身に折り重なって、dsRNAヘアピンを形成させる。これらのdsRNAは、翻訳の抑制を仲介するmiRNAへとプロセッシングされるが、それらはmRNA分解も導き得る。最後に、長いdsRNAまたはsiRNAの人為的導入は、培養細胞と生きた生物の両方において、遺伝子発現を不活性化するためのツールとして採用されている(Meister & Tuschl,2004)。
好ましく使用されるとき、質量識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間の質量の差に基づき、かつこのような差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、サイズ識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間のサイズの差に基づき、かつこのような差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、疎水性識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間の疎水性の差に基づき、かつこのような差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、電荷識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間の電荷の差に基づき、かつこのこのような差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、イオン識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間のイオン強度の差に基づき、かつこのような差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、水素結合識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間の水素結合の差、好ましくはこのような水素結合の程度の差に基づき、かつこのような水素結合の差や水素結合の程度の差に対して行なわれることを意味する。
好ましく使用されるとき、質量識別という用語は、未修飾または非修飾核酸分子断片からの修飾核酸分子断片の分離が、修飾核酸分子断片と未修飾核酸断片の両方の間の質量の差に基づき、かつこの質量の差に対して行なわれることを意味する。
この種の特定の核酸分子が、治療、診断および/または美容の分野で使用されるという事実に関して、本発明による方法は、核酸分子のヌクレオチド配列の決定だけでなく、この種の特定の核酸分子の1つまたはいくつかを含有する調製物の品質管理にも使用され得る。その限りにおいて、本発明は、本発明による核酸分子のヌクレオチド配列を決定する工程を含む品質管理の方法に関するものでもあり、このような核酸分子は、調製物または試料に含まれ、この調製物または試料は、それぞれ、前の工程で提供される。
そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子が必ずしも全長核酸分子である必要はないことは本発明の範囲内である。それどころか、このような全長核酸分子の1つまたはいくつかの部分だけが、本発明による方法によってそのヌクレオチド配列が決定される核酸分子として使用されるだけで十分な場合がある。
本発明の方法が、核酸分子のフィンガープリントを決定するための方法であることも本発明の範囲内である。本明細書で好ましく使用される核酸分子のフィンガープリントは、核酸分子の断片の特徴的なパターンである。言い換えれば、核酸分子またはそのフィンガープリントを同定するために、正確なヌクレオチド配列を知ることが必要なのではなく、このような特徴的パターンを知ることが必要なこともある。このような特徴的パターンは、好ましい一実施形態では、それぞれ、修飾核酸分子断片が分別および分離される本発明による方法の工程で得られるパターンである。核酸分子のフィンガープリントを同定または決定するためのこのような方法が、別の形で、本発明によるヌクレオチド配列を決定するための方法と同じ工程を含むことも認識されるべきである。
様々な配列番号、本明細書で使用される核酸分子の化学的性質、その実際の配列および内部参照番号を以下の表にまとめる。
表1(A)本出願で参照されるオリゴヌクレオチド配列
Figure 2012506709
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Figure 2012506709


上記は、本発明に関連して使用された分子に相当するものであることが理解されるであろう。添付の配列表は、その単なるヌクレオチド配列を反映するものであって、上記の表に示すような該分子のさらなる特徴を何ら反映するものではない。
さらなる特徴、実施形態および利点を得ることのできる図面、実施例および配列表により、本発明をさらに説明する。
この図は、RNA分子をヒドラジン、次いで酢酸/アニリンで連続的に処理することによって生じる切断産物を表したものである。Ehresmannらによって提唱されているように、ウリジン部分は、リン酸骨格を切断し、ウリジン位置で5’リン酸付加型3’断片とアニリン誘導性シッフ塩基を有する5’断片とを生じさせる修飾を受けやすい(「修飾ウリジン」、略称、Umod)(Ehresmann et al,1987)。 A:NOX−E36中間体(配列番号2)をヒドラジン、次いで酢酸/アニリンで連続的に処理することによって生成させることができる全てのあり得る3’末端断片(配列番号4〜10)を示す。矢印は、標準的なMS/MS配列決定技術を用いて通常得ることができる配列情報(10〜15ヌクレオ塩基)を示す。断片が短くなるにつれて、断片全体の配列を決定する能力が増す。B.ヒドラジン処理が注意深く制御されない場合、親分子の完全な切断が起こる。これらの断片は、断片間の関係性が壊されるので、配列決定に用いることができない。 この図は、インタクトの核酸分子のシュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)のトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を示す。 この図は、図3A中の4.2分のメインピークの質量スペクトルから得られるインタクトの核酸分子のシュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)のデコンボリューションされた質量を示す。この質量は、配列番号2の質量と一致する。 この図は、逆相HPLCカラムクロマトグラフィーによって認識される、シュピーゲルマーNOX−E36中間体の明確に規定された断片を示す。 この図は、断片5(観測可能な精密質量=7494.03Da)、断片6(観測可能な平均分子質量=9738.83Da)およびインタクトの核酸分子のNOX−E36中間体(配列番号2、観測可能な平均分子質量=12995.84Da)について示された個々のピークのデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。 ヒドラジン−アニリン/酢酸処理(実施例2)により生成された核酸分子NOX−E36中間体(配列番号2)の断片を示す表を示し、この表は、断片を同定するためのTIC(図4および5)からの配列、計算質量および観測質量を含む。 核酸分子および選択されたその断片の固定を伴う核酸分子の配列決定を示す。この核酸分子および選択された断片は、親和性標識またはタグを有する。核酸分子は、親和性標識もしくはタグを付加するのに使用される選択的反応性官能基(I)を有するか、または一般的な標識/タグ化核酸構造で示されるような親和性標識(II)を既に有しているかのいずれかである。標識核酸分子IIは、化学的切断による限定的なランダム切断を受けて、ランダム鎖切断物+未切断全長材料に相当する断片の混合物を生じさせる。その後、標識断片を、この例では、相互作用パートナーとの相互作用を通じて固体支持体上に固定し、非標識断片を洗い流す。その後、標識断片を固体支持体から放出させ、LCMSまたは他の適切な技術によって分析することができる。 この図は、核酸分子の固定を伴う核酸分子の配列決定の例のスキームを示す。核酸分子は、シュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の5’−アミノ修飾誘導体である、核酸分子シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)である。NOX−E36中間体(配列番号2)の5’−アミノ部分をビオチン親和性タグで修飾した後、塩基性溶液を用いて、ビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)を化学的にランダムに切断した。切断が最後まで進まないように、切断を注意深く制御した。ビオチン化NOX−E36中間体(配列番号64)の5’断片、3’断片およびランダムな内部断片を生じさせるランダムな断片化が起こることより、NOX−E36中間体の全てのビオチン化5’断片と残りのビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)(すなわち、全長産物[略称、FLP])が固定用のタグ特異的な固体支持体(この場合、ニュートロアビジンビーズ)を用いて、親和性タグ(この場合、ビオチン)によって混合物から選択的に抜き出された。結合していない断片、すなわち、親和性タグを有さない3’断片およびランダムな内部断片を洗い流すことができ、その後、ビオチン部分と核酸を接続するリンカー内のジスルフィド結合を還元的に切断することにより、結合した5’断片をビーズから遊離させる。これらの断片は、全てのリボヌクレオシド位置間の鎖切断物に対応する。このスキーム中の5’断片は、式“R”−NH−(CH−OP(O)(OH)−G(X) cpを用いて網羅されており、式中、“R”は、構造に描かれている切断可能なビオチン親和性タグまたは切断された断片であり、太字および下線付きの文字は、それぞれ、核酸配列を表し、Xは、この配列の5’から3’へと読み取られた特定のヌクレオチド(A、C、G、U)のアイデンティティーを示し、yは、何個の追加のヌクレオチドが第1の断片よりも多く断片中に存在するかを示す。例えば、断片2は、y=1(1個の追加のヌクレオチド)である。第1の断片よりも多い追加のヌクレオチドXは1個(C)であり、それゆえ、断片の断片2は、“R”−NH−(CH−OP(O)(OH)−GCcpである。同様に、断片15は、y=14であり、それゆえ、第1の断片を上回る追加のヌクレオチドXは14個(CACGUCCCUCACCG)であり、それゆえ、断片15のアイデンティティーは、“R”−NH−(CH−OP(O)(OH)−GCACGUCCCUCACCGcpである。放出された5’断片をさらに表したものが図13に見られる。 この図は、ビオチン化反応に使用された粗NOX−E36中間体(配列番号2)の陰イオン交換HPLCクロマトグラムを示す。 この図は、60分の反応時間後の粗ビオチン化反応物の陰イオン交換HPLCクロマトグラムを示す。 この図は、ビオチン標識NOX−E36中間体(配列番号63)が実施例3に示すプロトコルの工程3.3.2〜3.3.5に供された後、LCMS実験から得られたトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を示す。 この図は、断片(質量ピーク値=10237.1897 Da)、この場合、断片31(図13D、[配列番号41])のデコンボリューションされた分子量の例を示す。2’,3’−環状リン酸が加水分解された断片29(図13C、配列番号39)の少量のデコンボリューションされた分子量(質量ピーク値=9603.77)を検出することもできる。 この図は、放出されるアシル化NOX−E36中間体、配列番号50の全ての予想される5’断片(配列番号11〜50)を示す。この表は、既知分子の配列確認のために観測質量値を比較するために使用することができる。 この図は、放出されるアシル化NOX−E36中間体、配列番号50の全ての予想される5’断片(配列番号11〜50)を示す。この表は、既知分子の配列確認のために観測質量値を比較するために使用することができる。 この図は、放出されるアシル化NOX−E36中間体、配列番号50の全ての予想される5’断片(配列番号11〜50)を示す。この表は、既知分子の配列確認のために観測質量値を比較するために使用することができる。 この図は、放出されるアシル化NOX−E36中間体、配列番号50の全ての予想される5’断片(配列番号11〜50)を示す。この表は、既知分子の配列確認のために観測質量値を比較するために使用することができる。 この図は、放出されるアシル化NOX−E36中間体、配列番号50の全ての予想される5’断片(配列番号11〜50)を示す。この表は、既知分子の配列確認のために観測質量値を比較するために使用することができる。 この図は、TICから得られたデコンボリューションされた観測可能な質量、およびこれらの質量が観測された保持時間が記載された配列確認表を示す。図13A〜Eに示される各々の予想される断片の精密質量または分子量が含まれ、これらの断片が同定されている。 この図は、TICから得られたデコンボリューションされた観測可能な質量、およびこれらの質量が観測された保持時間が記載された配列確認表を示す。図13A〜Eに示される各々の予想される断片の精密質量または分子量が含まれ、これらの断片が同定されている。 この図は、図11の注釈付きのバージョンを示す。同定された環状リン酸断片および放出されるアシル化NOX−E36中間体のピークが示されている。各々の断片について、対応する2’,3’−環状リン酸が対応する2’(3’)リン酸誘導体よりもたくさんあるので、クロマトグラムが大いに単純化され、同定や配列決定がより簡単にできる。 配列決定/確認のフローチャートを示す。このフローチャートは、配列に関する予備知識を持たない配列同定に使用することができる。 この図は、NOX−E36ミスマッチ対照01(配列番号3)が実施例3に示すプロトコルの工程3.3.1〜3.3.5に供された後、LCMSから得られたトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を示す。 この図は、配列決定表を示す。図16に示されるフローチャートは、図17のTICから得られる観測質量に適用される。親配列のNOX−E36と比較して、交換されたC/U対を強調した。 この図は、配列決定表を示す。図16に示されるフローチャートは、図17のTICから得られる観測質量に適用される。親配列のNOX−E36と比較して、交換されたC/U対を強調した。 この図は、配列決定表を示す。図16に示されるフローチャートは、図17のTICから得られる観測質量に適用される。親配列のNOX−E36と比較して、交換されたC/U対を強調した。 この図は、塩基を介する限定的なランダム切断後のFITC標識NOX−E36中間体のLCMSを示す。標識は、495nmで選択的な波長吸光度を有する。図19Aには、495nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Bには、260nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Cには、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)が示されている。 この図は、塩基を介する限定的なランダム切断後のFITC標識NOX−E36中間体のLCMSを示す。標識は、495nmで選択的な波長吸光度を有する。図19Aには、495nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Bには、260nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Cには、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)が示されている。 この図は、塩基を介する限定的なランダム切断後のFITC標識NOX−E36中間体のLCMSを示す。標識は、495nmで選択的な波長吸光度を有する。図19Aには、495nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Bには、260nmで抽出されたUVクロマトグラムが示されている。図19Cには、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)が示されている。 Aは、図19Bの拡大を示す。Bは、図19Aの拡大を示す。 Aは、それぞれ、6.31分および7.13分に見られるA:断片1(配列番号51、図23A)、およびB:断片2(配列番号52、図23A)のデコンボリューションされた精密質量を示す。Bは、それぞれ、6.31分および7.13分に見られるA:断片1(配列番号51、図23A)、およびB:断片2(配列番号52、図23A)のデコンボリューションされた精密質量を示す。 この図は、それぞれ、5.54分(4106.55Da)、6.53分(4451.60Da)、7.77分(4780.64Da)に見られる非標識断片のデコンボリューションされた精密質量を示す。 この図は、それぞれ、5.54分(4106.55Da)、6.53分(4451.60Da)、7.77分(4780.64Da)に見られる非標識断片のデコンボリューションされた精密質量を示す。 この図は、それぞれ、5.54分(4106.55Da)、6.53分(4451.60Da)、7.77分(4780.64Da)に見られる非標識断片のデコンボリューションされた精密質量を示す。 図25A−Cは、図19A〜C(16.6〜18.5分)の拡大を示し、FITC標識とFITC非標識断片の共溶出を示している。A:FITC標識核酸断片を示す495nmにおける抽出された波長クロマトグラム。B:全ての核酸断片(標識および非標識)を示す260nmにおける抽出された波長クロマトグラム。C:試料材料中の全てのイオンを示すTIC。25Aで決定されるような、標識断片のマークした部分(破線を参照)に、他の種が存在し(図25B)、それがイオンを産生する(図25C)ことがはっきりと分かる。 この図は、図25中の破線と破線の間の部分の未加工の質量スペクトルを示す。 この図は、対応する未加工の質量スペクトル(図26)のデコンボリューションされた平均質量スペクトルを示す。矢印付きのピークは、標識断片(4666.21Da、断片13、図23、配列番号73)である。他の質量は、配列決定ラダーの漸進的増加により予想されるものよりも著しく値が高い(7693.26、9335.48、9664.90Da)ので、無視することができる。 この図は、(図13の表と似た)FITC標識断片(配列番号51〜55、66〜100)の配列確認用の例示的な表を示す。 この図は、(図13の表と似た)FITC標識断片(配列番号51〜55、66〜100)の配列確認用の例示的な表を示す。 この図は、(図16のフローチャートと似た)FITC標識RNA分子の配列決定用の例示的なフローチャートを示す。 TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量および(495nmの抽出された波クロマトグラムから得られる)これらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図24に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。 TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量および(495nmの抽出された波クロマトグラムから得られる)これらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図24に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。 TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量および(495nmの抽出された波クロマトグラムから得られる)これらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図24に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。 この図は、ビオチン化反応に使用された粗NOX−A12中間体(配列番号65)の陰イオン交換HPLCクロマトグラムを示す。ショートマーの存在は、工程5.3.1〜5.3.5を実施する能力やNOX−A12中間体(配列番号65)の配列を決定する能力に影響を及ぼさない。 この図は、60分の反応および脱塩後のビオチン化反応物の陰イオン交換HPLCクロマトグラムを示す。 この図は、ビオチン標識NOX−A12中間体が工程5.3.2〜5.3.5に供された後のLCMSからのトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を示す。 この図は、断片(質量ピーク値=10910.65Da)、この場合、断片33(図33Cおよび34A、[配列番号133])のデコンボリューションされた分子量の例を示す。 この図は、TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量およびこれらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図16に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。提案される断片アイデンティティーの予想質量に関する誤差を示す絶対誤差が含まれる。 この図は、TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量およびこれらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図16に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。提案される断片アイデンティティーの予想質量に関する誤差を示す絶対誤差が含まれる。 この図は、TICから得られたデコンボリューションされた精密質量または分子量質量およびこれらの質量が観測された保持時間が記載された配列決定表を示す。図16に示すフローチャートを用い、観測質量を用いて配列を決定する。提案される断片アイデンティティーの予想質量に関する誤差を示す絶対誤差が含まれる。 この図は、NOXA12の配列確認表を示す。放出されるアシル化NOX−A12中間体、配列番号145の全ての予想される5’断片(配列番号101〜145)が記載されている。この表は、配列が既知の核酸分子の配列確認のために観測質量値と比較するために使用することができる。 この図は、NOXA12の配列確認表を示す。放出されるアシル化NOX−A12中間体、配列番号145の全ての予想される5’断片(配列番号101〜145)が記載されている。この表は、配列が既知の核酸分子の配列確認のために観測質量値と比較するために使用することができる。 この図は、図31の注釈付きのバージョンを示す。同定された環状リン酸断片および放出されるアシル化NOX−A12中間体(配列番号145)のピークがその対応する断片番号に割り当てられている。
図面を参照しながら、実施例3、4および5により詳細に記載される2つの特に好ましい実施形態を以下の節で説明する。
本明細書および実施例3(シュピーゲルマーNOX−E36)および実施例5(NOX−A12)でより詳細に概説されるように、ただし、以下では、実施例3に対してのみ言及するものであるが、質量分析法で核酸分子の配列を決定する方法であって、核酸および選択される断片が配列決定のプロセスを用いて固定される方法が提供される。本発明によれば、第1の工程で、核酸分子およびその断片の固定に使用することができる親和性標識またはタグなどの修飾(図7、I)が核酸分子に与えられる。第2の工程は、(原理的には図7に示すような)ランダムな鎖切断物に相当する断片と未切断の全長材料の混合物を生成させるための化学的切断による核酸分子の限定的なランダム切断である。このランダムな混合物から、固体支持体に結合しているか、カラム中にあるか、チップ上にあるか、またはビーズフォーマットの、親和性標識またはタグを手段として用いて、標識を含有する未切断の全長材料の断片と分子を混合物から抜き出す。標識を含有しない他の断片は洗い流される。第3の工程で、固定された断片を固相からの切断または溶出によって放出させ、LCMS、直接注入MSまたはMALDIおよび本明細書に記載の他のMS法により分析される断片を提供する。結果は、核酸分子の全てのヌクレオチドの3’での切断物に相当する全てのあり得る断片を表す質量ラダーである。修飾が5’末端に付加されているならば、得られる質量ラダーは5’断片のみからなるであろうし、同様に修飾が3’末端付加されているならば、得られる質量ラダーは3’ 断片のみからなるであろう。該質量ラダーは、実際に、ひと並びの5’断片または3’断片から形成されるかまたは生じている。
この方法を試験するために、40ヌクレオチド長のRNA分子である、シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)を用いた(実施例1に従って合成した)。NOX−E36中間体(配列番号2)は、NOX−E36(配列番号1)の5’−アミノ修飾誘導体である。NOX−E36中間体(配列番号2)の5’−アミノ部分をビオチン親和性タグで修飾した後、塩基性溶液を用いて、ビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)を化学的にランダムに切断した(反応スキームは図8に示す)。切断が最後まで進まないように、切断を注意深く制御した。ランダムな断片化が起こることより、ビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)の5’断片、3’断片およびランダムな内部断片が生成された。全てのビオチン化5’断片(図8、シリーズ1)と残りのビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)を、固定用のタグ特異的な固体支持体を用いて、親和性タグ(この場合、ビオチン)によって混合物から選択的に抜き出した。結合していない断片、すなわち、親和性タグを有さない3’断片およびランダムな内部断片を洗い流す。その後、ビオチン部分とNOX−E36中間体を接続するリンカー内のジスルフィド結合を還元的に切断することにより、結合した5’断片および全長分子をビーズから遊離させる。これらの放出された断片は、全てのリボヌクレオシド位置間の鎖切断物に対応する(図8および13参照)。鎖切断は、2’,3’−環状リン酸を含有する断片をまず形成させ、この環状リン酸は、2’(3’)リン酸にゆっくりと加水分解される。その後、遊離した断片をLC−(ESI)MSにより分析し、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を分析した。試料クロマトグラムは、図11に示すように、生成された全ての5’−断片とインタクトの放出されたアシル化NOX−E36中間体(配列番号50)に対応する個別のピークを示す。その後、各々の個別のピークに関する得られた質量スペクトルのデコンボリューションによって、個別のピークに含まれる質量を得た。その後、この質量情報を用いて、親オリゴヌクレオチドと呼ばれることもある親核酸配列の配列を決定することができる。
通常、見られる質量は、2’,3’−環状リン酸の質量であるが、場合によっては、加水分解された2’(3’)リン酸を含有する少量の断片を検出することもでき、これらの断片は、生成された断片のアイデンティティーをさらに確認するのに役立つ。通常、記載された分析パラメータ(実施例3)を用いると、これらの加水分解断片は、親2’,3’−環状リン酸よりも後に溶出される。
まず第1に、生成された断片の質量を、放出されたNOX−E36中間体(配列番号50)の計算された5’断片の予想質量と比較して、配列を確認することができる。あるいは、生成された断片間の違いによって、配列に関する予備知識を持たずに、配列を得ることができる。このシナリオでは、修飾(HS−(CHC(O)−NH(CH−OP(O)(OH)−)が既知であるので、核酸分子の第1の断片を容易に予測することができ、それゆえ、この断片については、限られた個別の質量値しかあり得ない(例えば、未修飾のD−またはL−RNAの場合、A、C、G、Uを表す4つ)。次に、図16および実施例3の「配列決定/確認用のフローチャート」に示すように、後で得られる断片の増分差を用いて、核酸分子の配列を決定することができる。断片1が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片2が同定される。次の断片の断片2のアイデンティティー、したがって、その配列は、断片2と断片1の計算された精密質量または分子量との質量差から得られる。質量差は、(図16に示すように)各ヌクレオシドA、C、G、Uに固有である。断片2が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片3が同定される。断片2を同定するために使用したものと同一の手順で、断片3のアイデンティティーが、断片3と断片2の計算された精密質量または分子量との質量差から得られる。この反復プロセスを用いて、全ての5’断片を同定する。前の断片の計算された質量値を使用する必要性は、観測値のみを使用したときに生じ得る潜在的蓄積誤差に起因する。例えば、0.3Daの誤差であれば、断片の一義的な同定がなおも可能であろうが、この誤差をリセットしなければ、同定された断片の計算値を用いることで、さらに0.3Daの誤差が蓄積し、CヌクレオシドとUヌクレオシドの質量差がわずか1Daであるために、一義的な同定ができない可能性がある。
最後のヌクレオシドを同定するために、同じプロセスを用い、このプロセスでは、インタクトの放出されるアシル化NOX−E36中間体(配列番号50)と最後の環状リン酸を含有する断片の計算質量の間の質量差を用いて、最後のヌクレオチドのアイデンティティーを確認する。放出されるアシル化NOX−E36中間体は2’,3’環状リン酸を有さないので、質量差は、前に計算された断片についてのものと同じではない。質量差は、最後のヌクレオシドの質量に対応する。
この方法の能力を示す試験として、2カ所でシトシンとウリジンの配置が入れ替えられていることを除けば、NOX−E36中間体(配列番号2)と配列が同一である、NOX−E36ミスマッチ対照01(配列番号3)を、実施例3に記載のプロトコルを用いて処理し、図16に示す「配列決定/確認用のフローチャート」を用いて配列を同定した。シトシン/ウリジン交換は最も検出しづらいものなので、これが選ばれた。記載される方法は、親配列に対する2つの突然変異を容易に同定することができた(実施例3,図17および18参照)。
特許請求の範囲および実施例4でさらに詳細に概説されるように、質量分析法で核酸分子の配列を決定する代わりの方法であって、核酸が固定されない方法が、本明細書で提供される。本発明によれば、第1の工程で、修飾、この例では、ヌクレオ塩基が吸収しない選択的な波長吸光度を有する標識が核酸分子に与えられる。次の工程は、ランダムな鎖切断物に相当する断片とインタクトの全長材料の混合物を生成させるための化学的切断による核酸分子の限定的なランダム切断である。その後、この粗反応混合物をLC−MSで分析する。標識の選択的な波長吸光度では、この分子またはその断片の核酸成分に起因するUV吸光度はない。それゆえ、この波長で、核酸分子の全てのヌクレオチドの3’での切断物に相当する全てのあり得る断片を示す質量ラダーが選択的に観測される。これらの5’断片の保持時間を同定し、かつこれらの5’断片の保持時間における質量スペクトルを得、デコンボリューションすることにより、核酸分子の配列を確認することまたは配列に関する予備知識を持たずにそれを決定することができる。標識断片は単離されないので、非標識断片の存在のために、TICは複雑である。すなわち、より小さい断片はカラムで十分に分別され、非標識断片から標識断片を完全に分離することができるのに対し、より大きな標識断片は、非標識断片(これもまた、質量シグナルを発生させる)と共溶出し、それゆえ、所望の5’断片の同定を妨害する可能性がある。しかしながら、標識が親油性であるために、特定の質量値の標識断片は、通常、同様の質量値の非標識断片よりも後に溶出する。したがって、この理由により、共溶出する非標識断片から得られた偽の質量を排除し、意図した標識断片を同定することができる。
この方法の実行可能性を示すために、フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC異性体I)標識をNOX−E36中間体(配列番号2)に付加し、FITC−NOX−E36(配列番号100)を生じさせた。NOX−E36中間体(配列番号2)は、NOX−E36(配列番号1)の5’−アミノ修飾誘導体である。次に、標識されたNOX−E36中間体を、塩基を介する限定的なランダム切断に供し、試料をLCMSで分析した。標識は、その最大値が約495nmにある選択的な波長吸光度を有しており、それゆえ、インタクトの5’末端を含有する核酸分子だけが、この吸光度で観測される。495nmで抽出されるUVクロマトグラム(図19A)と、260nm(この波長で全ての核酸が検出される)で抽出される対応するUVクロマトグラム(図19B)とを比較することにより、後者のUVクロマトグラム上に、核酸分子の5’断片ではない多くの断片が試料中に存在することがはっきりと分かる。図19Bと図19C(図19Aと19Bの対応するTIC)とを比較することにより、標識があるまたは標識がない核酸分子の全ての断片が質量データを生成させることが分かる。495nmで抽出されるクロマトグラムから決定されるように、核酸分子の第1の5’断片は、6.31分で溶出する断片であると容易に同定することができる(図19Aおよび引き伸ばした図20B、デコンボリューションされた精密質量図21A)。図19Aと19Bとを比較することにより(また、拡大図の図20Aと20Bを用いてより容易に)、このピークよりも早く溶出する非標識断片がたくさんあることがはっきりと分かる。しかしながら、これらは、その観測質量によって推定したとき長さ8〜14ヌクレオチドの断片に相当する(1つのこのようなピークの例については、図22Aを参照されたい)。それゆえ、標識断片に与えられた親油性のために、特定の断片サイズに対して予想された質量との相当な質量差(約2000〜6000Da)によって、標識断片と共溶出する任意の非標識断片を排除することができる(図25〜27、実施例4参照)。偽の質量を無視するこの能力、または言い換えれば、非標識断片と共溶出する場合に標識断片の質量を決定する能力によって、この方法による核酸分子の配列確認(図24)と配列決定(図28A〜C)の両方が可能になる。
それゆえ、断片間の個別の質量差から配列を決定する原理は、実施例3で提供される原理と類似しているので、実施例3と同様の方法で、配列確認または配列に関する予備知識を持たない配列決定(図28)のための類似の配列確認表または類似のフローチャートを作成することができる(図23および24参照)。
40個のヌクレオチドを含むシュピーゲルマーNOX−E36の代わりに、45個のヌクレオチドを含むシュピーゲルマーNOX−A12の配列決定が記載されていることを除き、実施例5は実施例3と類似している。
実施例1:シュピーゲルマーの合成および誘導体化
1.1 小規模合成
シュピーゲルマーは、2’TBDMS RNAホスホロアミダイト化学(Damha and Ogilvie,1993)を用いて、ABI394合成器(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)で、固相合成により作製した。L形のrA(N−Bz)−、rC(Ac)−、rG(N−ibu)−、およびrU−ホスホロアミダイトは、ChemGenes,Wilmington,MAから購入した。シュピーゲルマーは、ゲル電気泳動により精製した。
1.2 大規模合成+修飾
シュピーゲルマーは、2’TBDMS RNAホスホロアミダイト化学(Damha & Ogilvie,1993)を用いて、AktaPilot100合成器(Amersham Biosciences;General Electric Healthcare,Freiburg)で、固相合成により作製した。L−rA(N−Bz)−、L−rC(Ac)−、L−rG(N−ibu)−、およびL−rU−ホスホロアミダイトは、ChemGenes(Wilmington,MA,USA)から購入した。5’−アミノ−修飾物質は、American International Chemicals Inc.(Framingham,MA,USA)から購入した。シュピーゲルマーの合成は、それぞれ、L−リボG;L−リボC、L−リボA、L−リボUで修飾されたCPG、細孔径1000Å(Link Technology,Glasgow,UK)の上で開始された。カップリングするために(1サイクルにつき15分間)、アセトニトリル中の0.3Mベンジルチオテトラゾール(American International Chemicals Inc.,Framingham,MA,USA)、および3.5当量のそれぞれのアセトニトリル中の0.2Mホスホロアミダイト溶液を用いた。酸化−キャッピングサイクルを用いた。オリゴヌクレオチド合成用のさらなる標準的な溶媒および試薬は、Biosolve(Valkenswaard,NL)から購入した。シュピーゲルマーを、DMT−ONを用いて合成し;脱保護した後、Source 15RPCミディアム(Amersham,Freiburg,Germany)を用いて、分取RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)(Wincott et al,1995)で精製した。5’DMT基を80%酢酸(RTで90分)で除去した。その後、2M NaOAc水溶液を添加し、5K再生セルロースカラム(Millipore,Bedford,MA)を用いて、接線流濾過でシュピーゲルマーを脱塩した。
実施例2:ヌクレオ塩基特異的切断反応を用いた核酸分子の固定を伴わない核酸分子の配列決定
2.1 本方法の原理
核酸分子を固定せずに核酸分子の配列を決定するために、以下の工程を行なった。
1)具体的に選択されたヌクレオ塩基(すなわち、A、C、G、TまたはU)を修飾するための、核酸分子の塩基選択的処理、次いで、核酸リン酸骨格を修飾ヌクレオ塩基の3’で選択的に化学的に切断する第2の工程。この場合、非修飾ヌクレオ塩基を含有する核酸分子の断片がなおも存在する(このことは、修飾および/または化学的切断の核心ではなかった)ように、断片化反応を最後までは促進しない条件を開発する必要がある。
2)LCMSおよびLC/MS/MSで生成される、核酸分子の断片の分析。
断片化の結果は、修飾ヌクレオ塩基の全ての存在の3’での切断物に相当する1組の核酸分子の断片である。1組の生成された予想断片(例えば、核酸分子の3’断片または5’断片)を同定することにより、これらの断片に対するタンデム質量分析実験を行なうことができ、これらの断片の重複する性質、およびインタクトの核酸分子(すなわち、全長分子)との関係によって、核酸分子の配列を確認することができる。この場合、この関係性が保存されるように化学的切断の程度を制御することや、好ましくはMS/MS実験が実施可能なインタクトの5’または3’末端を有する特定の組の断片を同定することが必要である。
2.2 シュピーゲルマーNOX−E36の配列決定
記載した方法を試験するために、RNA分子のNOX−E36中間体(配列番号2)を用いた。NOX−E36中間体はシュピーゲルマーであり、NOX−E36中間体は、シュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の5’−アミノ修飾誘導体である。選択的に修飾するためにウリジンヌクレオ塩基が選ばれた。修飾は、ウリジン部分の後ろでRNA分子を化学的に切断し、RNA分子の断片を生じさせる2工程のヒドラジン−酢酸/アニリン処理を用いて達成される。通常、ヒドラジン−酢酸/アニリン処理後の反応産物は、RNA分子の5’リン酸付加3’断片と、図1および2Bに示すような修飾リボース部分[略称、Umod(ヌクレオ塩基切断部位を強調する)]を担持するRNA分子のアニリン修飾リボース5’断片の反応産物である。このような構造は、Ehresmannら(Ehresmann et al,1987)によって提唱されている(図1参照)。シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)をヒドラジン−酢酸/アニリン処理に供し、断片化産物を分析することにより、驚くべきことに、3’断片とインタクトの核酸分子(図2A)が、5’断片と内部断片よりも効率的にイオン化され、したがって、生成されるデータの解釈が大いに単純化され、目的の断片が同定されることが明らかになった(図4〜6)。結果として、毎回ウリジンヌクレオチドが出現する後ろの切断に相当する5’リン酸を含有する重なり合う3’断片とインタクトの出発分子NOX−E36中間体(配列番号2)を、各ピークに関する得られた質量データ(例えば、図5参照)のデコンボリューションによって容易に同定することができる(図6)。デコンボリューションは当業者に周知の一般的な技術である。デコンボリューションでは、アルゴリズムを質量スペクトルに適用して、単一種の多価イオンを同定し、それらをこの種の質量とするよう再構成する。この技術は、大きい分子を多価イオンの分布として観測するESIや他のイオン化技術と組み合わせると極めて有用である。適用されるアルゴリズムによって、(精密質量を得るための)同位体分解質量または分子量のいずれかが得られる。通常、オリゴヌクレオチドについて、5ppmで校正される質量分析計は、イオン化効率次第で、約6〜10kDaまでの分解同位体スペクトルを生成させることができる。この質量を超えると、通常、種の分子量(平均分子質量)に対してデコンボリューションするための、Maxentアルゴリズムなどの、アルゴリズムを用いる。
当業者によく知られているMS/MS技術(説明を参照)を用いることにより、最小の断片の配列確認を達成することができる。次に、参照として生成されたデータを用いて、「重複原理」を次の核酸分子断片に利用することができ、その結果、追加の配列情報、すなわち、次の断片の未知の部分だけが、この断片の配列確認に必要とされる。このような方法で、この重複原理を、分子全体の配列を確認するために利用することができるが、それは、どの1つの特定のヌクレオ塩基(RNAシリーズ中のA、C、G、U)間の間隔も、通常せいぜい10〜15ヌクレオ塩基であるからである(図2A)。さらに、この重複原理は、核酸分子の断片またはインタクトの分子が(5’先端と3’先端の両方とは対照的に)その5’先端から配列決定されることしか必要としないようにし、したがって、MS/MS分析をより単純なものにする。この重複原理が利用されるためには、断片のこの重複関係が壊されないように化学的切断の程度を制御する必要がある。反応が最後まで促進されると(図2B)、断片間の関係性を解明することができない、すなわち、断片の位置を確認することができず、それゆえ、配列を確認することができない。したがって、本明細書に記載のプロトコルは、シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)の制御された断片化を表す。これらの断片のMS/MSは、LC/MS/MSによるかまたは標準的な液体クロマトグラフィーで個々の3’断片を単離し、その後、それらをMS/MS実験用の質量分析計に注入することによって達成することができる。
2.3 プロトコル
8μl(0.85OD/μl水)シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)、すなわち、5’アミノリンカーを有するシュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の誘導体を、500μl微量遠心チューブに入れ、氷上で冷やし、その後すぐに、24μlのヒドラジン水和物50〜60%(22,581−9,Sigma Aldrich,Taufkirchen,Germany)を添加した。45分後、4μlの10M酢酸アンモニウムp.a.(Sigma Aldrich,Taufkirchen,Germany)を添加し、溶液を短くボルテックスし、冷エタノール(300μl)を添加した。この溶液を再度ボルテックスし、冷凍庫の中で−18℃で2時間冷やし、その後すぐに、4℃で15分間遠心分離し(12,000g)、上清をデカントで捨てた。ペレットを300μlの冷エタノールでボルテックスにより洗浄し、5分間遠心分離した(12,000g)。上清を除去し、ペレットをConcentrator 5301(Eppendorf AG,Hamburg,Germany)の中で乾燥させ、その後、反応液から光を排除しながら、65℃で40分間、170μlの水、18μlのアニリン(>99.5%,242284 Sigma Aldrich,Taufkirchen,Germany)、11μlの酢酸(>99% A6283,Sigma Aldrich,Taufkirchen,Germany)の溶液で処理した。その後、溶液をConcentrator 5301(Eppendorf AG,Hamburg,Germany)の中で乾燥させ、滅菌水(70μl)に再懸濁し、LCMS分析に供した。
LCMS分析:上のプロトコルから生成された断片のLCMS分析を、高速分別ポンプを備えた6520 Accurate Mass Q−TOF LCMSシステム(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)とAcquity BEH C18カラム(1.7μm,130Å孔径,2.1×30mm,Waters,Eschenbronn,Germany)とを用いて分析した。勾配は7.7分で0〜70%Bである。緩衝液A:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、1%メタノール、緩衝液B:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、50%メタノール。カラム温度65℃、流速1.2ml/分。
2.4 結果
図3Aは、1つの主要ピークを表示するインタクトの核酸分子シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)のトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を示す。このピークのデコンボリューションされた観測質量は12995.84Daである(図3B)。上のプロトコル(第2.3節参照)に記載されたようなシュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)の処理とLCMSを用いた分析とにより、TICで明らかにされ(図4)、その後、断片5、6およびインタクトの核酸分子NOX−E36中間体(配列番号2)に対して示された個々のピークのデコンボリューションされた質量スペクトルから同定される(図5)ように質量分析法と組み合わせた逆相HPLCカラムクロマトグラフィーでまず第1に識別可能な明確に規定された断片が得られた。驚くべきことに、様々な産物(5’断片、3’断片および内部断片)が可能であるにもかかわらず、3’末端に由来する断片が主要な産物であり、5’断片や内部断片などの他の断片が存在するにもかかわらず、明確に区別可能であることが観察されることが分かった。結果的に、予想された3’断片、すなわち、ウリジン部分での3’の鎖切断から得られた断片は全て、質量値を予測された断片から計算される質量値と比較することにより、容易に同定された(図6)。したがって、先に記載したような3’断片に対してタンデムMS/MS実験を行ない、以下のように配列の確認を得ることが可能であろう。
ESI−MS機器などの当該技術水準の質量分析機器により、通常、確立したMS/MS技術を用いて核酸分子の各末端から最初の10〜15ヌクレオチドの配列確認が可能である。それゆえ、最小の断片(断片1、配列番号4)に対してMS/MSを行なうことにより、この断片の配列を容易に確認することができる。次に、断片2(配列番号5)の配列アイデンティティーも確認することができる。断片2の場合、しかしながら、その3’先端で重複するので、3’断片の5’先端上の追加のヌクレオチドに関する情報を得ることだけが必要である(図2A)。断片3の配列を同様の方法で確認することができる。この反復プロセスを用いて、シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)全体の配列を確認することができる。
要約すると、ヌクレオ塩基特異的鎖切断を誘導する化学反応を用いて、断片が互いに明確な関係性をもって産生されるように注意深く制御された方法で核酸分子を断片化することが可能であり、この関係性を用いて、上記の「重複原理」に従って核酸分子の配列を決定することができることが示されている。これは、相当な量の5’および内部断片が存在するにもかかわらず、粗混合物をLCMSで分析したときに、1組の断片(3’断片)だけがTICに主に現れるという驚くべき発見のおかげで、非常にやり易くなっている。
実施例3:核酸分子および選択されたその断片の固定を伴う核酸分子の配列決定
3.1 原理
核酸分子および選択されたその断片を固定せずに核酸分子の配列を決定するために、以下の工程を行なった:(まだ付加されていない場合)親和性標識またはタグによる核酸分子の標識、図7に示すスキームによるランダムな鎖切断物に相当する断片+未切断の全長材料の混合物を生成させるための化学的切断による核酸分子の限定的なランダム切断。このランダムな混合物から、固体支持体に結合しているか、カラム中にあるか、チップ上にあるか、またはビーズフォーマットの、親和性標識を手段として用いて、標識を含有する核酸分子の断片を混合物から抜き出し、他の断片を洗い流す。所望の核酸分子断片の切断または溶出による固相からの放出により、質量分析法で分析される分子が提供される。この例は、核酸分子の配列決定に好適な質量分析技術としてのLCMSの使用を示している。得られる結果は、全てのあり得る核酸分子の断片に相当する、より正確には、核酸分子の全てのヌクレオチドの3’での切断に相当するラダーである。この例で使用される分析方法により、まず液体クロマトグラフィー、すなわち、LCMSのLC部分による、およびその後の質量分析によるこれらの断片の分離が可能になる。この2次元アプローチにより、個々の断片が同定しやすくなり、それにより、容易に分離される断片の2次元同定が可能にある。
3.2 シュピーゲルマーNOX−E36の配列決定
この方法を試験するために、核酸分子シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)を用いた。NOX−E36中間体(配列番号2)は、シュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の5’−アミノ修飾誘導体である。図8に示すように、NOX−E36中間体(配列番号2)の5’−アミノ部分をビオチン親和性タグで修飾した後、塩基性溶液を用いて、ビオチン化NOX−E36中間体(配列番号63)を化学的にランダムに切断した。切断が最後まで進まないように、切断を注意深く制御した。NOX−E36中間体(配列番号2)の5’断片、3’断片およびランダムな内部断片を生じさせるランダムな断片化が起こることより、NOX−E36中間体の全てのビオチン化5’断片(図8,シリーズ1)と残りのビオチン化NOX−E36中間体(すなわち、全長産物[略称、FLP])が固定用のタグ特異的な固体支持体(この場合、ニュートロアビジンビーズ)を用いて、親和性タグ(この場合、ビオチン)によって混合物から選択的に抜き出された。結合していない断片、すなわち、親和性タグを有さない3’断片およびランダムな内部断片を洗い流すことができる。その後、ビオチン部分とNOX−E36中間体(配列番号2)を接続するリンカー内のジスルフィド結合を還元的に切断することにより、結合したシュピーゲルマーNOX−E36の5’断片とFLP(配列番号63)をビーズから遊離させる。これらの放出された断片は、全てのリボヌクレオシド位置間での鎖切断に対応する(図8および13参照)。鎖切断は、2’,3’−環状リン酸を含有する断片をまず形成させ、この環状リン酸は、2’(3’)リン酸にゆっくりと加水分解される。その後、遊離した断片をLC−(ESI)MSにより分析し、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を分析した。試料クロマトグラムは、図11に示すように、生成された全ての5’断片とインタクトの放出されたアシル化NOX−E36中間体(配列番号50)に対応する個別のピークを提示する。その後、各々の個別のピークに関する得られた質量スペクトルのデコンボリューションによって、個別のピークに含まれる質量を得た。
デコンボリューションは当業者に周知の一般的な技術である。デコンボリューションでは、アルゴリズムを質量スペクトルに適用して、単一種の多価イオンを同定し、それらをこの種の質量とするよう再構成する。この技術は、大きい分子を多価イオンの分布として観測するESIや他のイオン化技術と組み合わせると極めて有用である。適用されるアルゴリズムによって、(精密質量を得るための)モノアイソトピック分解質量または分子量のいずれかが得られる。通常、オリゴヌクレオチドについて、5ppmで校正される質量分析計は、約6〜10kDaまでの分解同位体スペクトルを生成させることができる。この質量を超えると、通常、種の分子量に対してデコンボリューションするMaxentアルゴリズムなどのアルゴリズムを用いる。
通常、見られる質量は、2’,3’−環状リン酸の質量であるが、場合によっては、加水分解された2’(3’)リン酸を含有する少量の断片を検出することもでき、この断片は、生成された断片のアイデンティティーをさらに確認するのに役立つ。通常、これらの加水分解断片は、親2’,3’−環状リン酸よりも後に溶出される。
まず第1に、生成された断片の質量を、放出されたNOX−E36中間体(配列番号50)の予測された5’断片の計算質量と比較して、配列を確認することができる(図13A〜E)。あるいは、生成された断片間の違いによって、配列に関する予備知識を持たずに、配列を得ることができる。このシナリオでは、核酸分子の第1の断片を容易に予測することができ、「配列決定/確認用のフローチャート」(図16)に示すように、後で得られる断片の増分差を用いて、核酸分子の配列を決定することができる。このフローチャートには段階的なプロセスが記載されているが、このプロセスでは、最小の断片(断片1と命名する)がまず同定される。第1の断片は、図8(シリーズ2、y=0)および図13A(配列番号11)に示すような5’−付加アシル化アミノヘキシルリンカーと2’,3’−環状リン酸の両方を有する第1の5’ヌクレオチドに相当する。結果的に、第1の断片について、全てのあり得るRNA順列(A、C、GまたはU)を計算するのが簡単である(図16)。IP RP−HPLCの技術(Azarani et al.2001およびその中に引用されている参考文献)を熟知する者には知られているように、イオン対逆相HPLC(略称、IP RP−HPLC)を用いると、断片1が最も早く溶出する5’断片となることを知っていれば、この第1の断片の同定は容易になる。断片1が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片2が同定される。次の断片の断片2のアイデンティティー、したがって、その配列は、断片2と断片1の計算された精密質量または分子量との質量差から導き出される。質量差は、各ヌクレオシドA、C、G、Uに固有である(図16)。断片2が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片3が同定される。断片2を同定するために使用したものと同一の手順で、断片3のアイデンティティーが、断片3と断片2の計算された精密質量または分子量との質量差から導き出される。この反復プロセスを用いて、全ての5’断片を同定する。前の断片の計算質量値を使用する必要性は、観測値のみを使用したときに生じ得る潜在的蓄積誤差に起因する。例えば、0.3Daの誤差であれば、断片の一義的な同定がなおも可能であろうが、この誤差をリセットしなければ、同定された断片の計算値を用いることで、さらに0.3Daの誤差が蓄積し、CヌクレオシドとUヌクレオシドの質量差がわずか1Daであるために、一義的な同定ができない可能性がある。
最後のヌクレオシドを同定するために、同じプロセスを用い、このプロセスでは、インタクトの放出されるアシル化NOX−E36中間体(図8)と最後の環状リン酸を含有する断片の計算質量の間の質量差(長さ40ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドの場合、X=39、シリーズ2、図8)を用いて、最後のヌクレオチドのアイデンティティーを確認する。放出されるアシル化NOX−E36中間体は2’,3’環状リン酸を有さないので、質量差は、前に計算された断片についてのものと同じではない。質量差は、最後のヌクレオシドの質量に対応する(図16)。
この方法の能力を示す試験として、2カ所でシトシンとウリジンの配置が入れ替えられていることを除けば、NOX−E36中間体(配列番号2)と配列が同一である、NOX−E36ミスマッチ対照01(配列番号3)を、本実施例に記載のプロトコルを用いて処理し、「配列決定/確認用のフローチャート」(図16)を用いて配列を同定した。シトシン/ウリジン交換は最も検出しづらいものなので、これが選ばれた。記載された方法は、親配列に対する2つの突然変異を容易に同定することができた(クロマトグラムについては図17および配列決定については図18を参照されたい)。
3.3 プロトコル
3.3.1 シュピーゲルマーNOX−E36中間体のビオチン化
10mg(250OD)の粗シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)、すなわち、5’アミノリンカーを有するシュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の誘導体を反応チューブに入れ、260μlのTheorell and Stenhagenの汎用緩衝液pH8.5(33mMクエン酸ナトリウム、33nMリン酸ナトリウム、57mMホウ酸ナトリウム、pH8.5)に溶解させた。これに、200μlのN,N−ジメチルホルムアミド(略称、DMF)を添加した。この溶液をボルテックスし、スピンダウンし、その後すぐに、50μlのDMFに予め溶解させた2.2mgのビオチンジスルフィドΝ−ヒドロキシ−スクシニミドエステル(Sigma B4531,Taufkirchen,Germany)を添加した。この溶液を室温で60分間インキュベートし、その後すぐに、アリコートを取って、陰イオン交換HPLC(Dionex DNA−Pac 200カラム、緩衝液A:HO中の100mM Tris;10%ACN 緩衝液B:HO中の1M NaCl、100mM Tris;25mM NaClO;10%ACN。勾配は6分で10〜30%B、次いで、35分で30〜70%B、カラム温度80℃)で分析し、これにより、反応が完了したことが明らかにされた。粗反応混合物をNAP25カラム(Amersham Biosciences,Freibug,Germany)を用いて脱塩し、凍結乾燥させた。
3.3.2 ビオチン標識シュピーゲルマーNOX−E36中間体の塩基加水分解
20μlのビオチン化シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)(0.54OD/μl)に、30μlの滅菌水および2.5μlの0.5M KCOを室温で添加した。この溶液をボルテックスし、その後、Eppendorf Thermomixer Comfortマシーン(Eppendorf,Hamburg,Germany)にて、70℃、1350rpmで、12.5分間インキュベートし、その後すぐに、液体窒素中で凍結させ、そして解凍させておいた。その後、4μlの1M AcOHを添加して(約pH7)、反応をクエンチし、溶液をボルテックスし、スピンダウンした。
3.3.3 ニュートロアビジンビーズに対するビオチン化断片の結合
ニュートロアビジンアガロースビーズを以下のように処理した:150μlのニュートロアビジンビーズスラリー(Pierce,Milwaukee,MI,USA)を500μl反応チューブに入れた。ビーズをスピンダウンし、上清を注意深く除去した。その後すぐに、300μlの1M Tris HCl pH8.0(Ambion;Huntindon,UK)を添加した。スラリーをボルテックスし、スピンダウンし、上清を注意深く除去した。その後、ビーズを2×300μlの滅菌HOで同じように洗浄した。その後、上記のように調製したクエンチした加水分解混合物をビーズに添加し、得られたスラリーを10℃で2時間激しく(1350rpm)混合した。その後、ビーズを回転微量遠心チューブ(Ultrafree−MC GV,0,22μm,Millipore,Schwalbach,Germany)を用いた濾過により単離し、2×300μlの滅菌HOで洗浄した。
3.3.4 ニュートロアビジンビーズからのビオチン化断片の切断
NOX−E36中間体(配列番号2)のビオチン標識断片のジスルフィドリンカーを、5μlの1M DTT溶液を含む100μlの0.05Mリン酸Na緩衝液(pH8.5)を用いて切断した。これをEppendorf Thermomixer Comfortマシーンにて、25℃で2時間激しく混合した。スラリーを回転微量遠心チューブ(Ultrafree−MC GV,0,22μm,Millipore,Schwalbach,Germany)を用いて濾過し、ビーズを50μl滅菌水でさらに洗浄した。UV測定を行なって、260nmでの光学密度単位を決定し、そのうち、0.25ODをLCMSで分析した。
3.3.5 断片のLCMS分析
上記のプロトコルから生成されたNOX−E36中間体(配列番号2)の5’断片のLCMS分析を、高速分別ポンプを備えた6520 Accurate Mass Q−TOF LCMSシステム(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)とAcuity BEH C18カラム(1.7μm,130 Å孔径,2.1×30mm,Waters,Eschborn,Germany)とを用いて分析した。勾配は22分で0〜20%B、40分で20〜30%Bである。緩衝液A:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、1%メタノール、緩衝液B:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、50%メタノール。カラム温度65℃、流速0.2ml/分:各ピークについてTICからの質量スペクトルを得、その後、当業者に公知の標準的な技術に従ってデコンボリューションした。
3.4 結果
陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、後から溶出するピーク(30.65分、参考までに、出発材料の溶出時間は28.82分、図9)の出現から明らかにされるように、粗NOX−E36中間体(配列番号2)(図9)は、実験の節で記載された切断可能なビオチン部分(図10)で効率的に標識された。NOX−E36中間体[配列番号2]の固相合成からの破損配列、および他の不純物の存在によって、工程3.3.1〜3.3.5を実施する能力や核酸分子の配列を決定する能力は影響を受けない。粗標識混合物は、サイズ排除精製カラム(NAP25、実験参照)を用いた初歩的な脱塩工程を除いて、精製されなかった。その後、この粗材料を断片化し、標識断片を固定し、洗浄し、その後、記載したような固体支持体から放出させた(第3.3.2節〜第3.3.4節)。その後、得られた反応混合物をLCMSを用いて分析した(第3.3.5節)。トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC、図11)は、各々のあり得る5’断片(配列番号11〜50、図13A〜E)に相当するピークパターンを示す。TICで観測される個別のピークの各々について、生の質量データ、およびその後の対応するデコンボリューションされた質量を得た。図12は、断片(質量ピーク値=10237.1897Da)、この場合、断片31(図13D、[配列番号41])のデコンボリューションされた分子量の例を示す。その2’,3’−環状リン酸が加水分解されている(質量ピーク値=9603.77)断片29(図13C、配列番号39)の少量のデコンボリューションされた分子量も検出することができる。
得られた/観測された質量と、図13A〜Eに示す計算質量とを比較することにより、NOX−E36の配列を確認した(図14)。
図15は、断片を図11のTIC中のピークに帰属させることによって利用される2次元(LC+MS)アプローチの能力を示す。帰属は、放出されるアシル化NOX−E36中間体と対応する同定された環状リン酸断片に限定される。各断片について、対応する2’,3’−環状リン酸は対応する2’(3’)リン酸誘導体よりも多く、したがって、クロマトグラムを大いに単純化し、より簡単な同定と配列決定を可能にする。図に見られるように、保持時間が増加するにつれて断片サイズが増加する明瞭な傾向がある。このような傾向は、TIC処理から実際の質量を得る前に断片のサイズの目視による推定を可能にすることによって、未知分子の配列決定を容易にする。
本実施例で記載した配列決定方法の能力を試験するために、2つの特定のC/U交換だけ親NOX−E36配列と異なるNOX−E36ミスマッチ対照01(配列番号3)を、実験の節でNOX−E36中間体(配列番号2)について記載した配列決定プロトコルに供した。工程3.3.1〜3.3.5を記載されたのと同じように正確に実施して、対応するトータルイオンクロマトグラム(図17)を得た。先の通りに、断片の質量スペクトルを得、デコンボリューションしたが、今回は、化合物を未知として処理した。図16に記載のフローチャートに従って、得られた質量を用いて配列を一義的に決定し、図18A〜Cに示される配列決定表で例示されているように、親NOX−E36配列と比較した配列中の2つのC/U交換(強調付き、図18A〜C)を明らかにした。提案される断片アイデンティティーの予想質量との関連で誤差を示す絶対誤差も含まれている。
要約すると、上記の固定の原理を適用することにより、NOX−E36中間体(配列番号2)の配列が容易に決定され、かつNOX−E36ミスマッチ対照01(配列番号3)の配列が、一義的な決定の許容限界の十分に範囲内の誤差をもって容易に決定された。
実施例4:選択的な波長吸光度標識を用いた、核酸分子またはその断片の固定を伴わない核酸分子の配列決定
4.1 原理
核酸分子を固定せずに核酸分子の配列を決定するために、以下の工程を行なった:ヌクレオ塩基が吸収しない選択的な波長吸光度を有する標識による核酸の標識、(図7に示すものと同様の)ランダムな鎖切断物に相当する断片とインタクトの全長材料の混合物を生成させるための化学的切断による核酸分子の限定的なランダム切断。粗反応混合物をLCMSで分析する。標識の選択的な波長吸光度では、核酸分子またはその断片に起因するUV吸光度はない。それゆえ、この波長で、核酸分子の全てのヌクレオチドの3’での切断物に相当する全てのあり得る断片を示す質量ラダーが、付着した標識の選択的な波長吸光度によって選択的に観測される。これらの5’断片の保持時間を同定し、かつこれらの5’断片の保持時間における質量スペクトルを得、デコンボリューションすることにより、核酸分子の配列を確認することまたは配列に関する予備知識を持たずにそれを決定することができる。標識断片は単離されないので、非標識断片の存在のために、質量スペクトルは複雑である。すなわち、より小さい断片はカラムで十分に分別され、非標識断片から標識断片を完全に分離する(図19、A〜C)ことができるのに対し、より大きな標識断片は、非標識断片(これもまた、質量シグナルを発生させる)と共溶出し、所望の5’断片の同定を妨害する可能性がある(図25〜27)。しかしながら、標識が親油性であるために、特定の質量値の標識断片は、通常、同様の質量値の非標識断片よりも後に溶出する。(図21、22、26、27)。したがって、この理由により、共溶出する特定の質量を排除し、意図した標識断片を同定することができる。
4.2 シュピーゲルマーNOX−E36の配列決定
この方法の実行可能性を示すために、フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC異性体I)標識をNOX−E36中間体(配列番号2)に付加した。その後、標識されたNOX−E36中間体を、塩基を介する限定的なランダム切断に供し、試料をLCMSで分析した。標識は、495nmでの選択的な波長吸光度を有する(供給業者によって提供されたデータ)。それゆえ、495nmでは、インタクトの5’末端を含有する核酸分子(核酸分子の5’断片および全長産物[略称、FLP])だけが観測される。図19Aから分かるように、このクロマトグラムは、実施例3(図11)の観測されたクロマトグラムによく似ている。しかしながら、495nmで抽出されるUVクロマトグラム(図19A)と、260nmで抽出される対応するUVクロマトグラム(図19、B)とを比較すると、核酸分子の5’断片ではない多くの断片が存在することがはっきりと分かる。260nmで抽出されるUVクロマトグラムとトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)(図19、C)とを比較することにより、2つのクロマトグラムBとCがよく似ていることが示される。これは、標識があるまたは標識がない全ての断片が質量データを生成させることを示す。495nmで抽出されるクロマトグラムから決定されるように、第1の5’断片(この例では、FITC−NH−(CH−OP(O)(OH)−Gcp、図23A、断片1、配列番号51に相当する)は、6.31分で溶出する断片であると容易に同定することができる(図19Aおよび引き伸ばした図20B)。図19Aと19Bとを比較することにより(また、拡大図の図20Aと20Bを用いてより容易に)、このピークよりも早く溶出する非標識断片がたくさんあることもはっきりと分かるが、これらは、その観測質量によって推定したとき長さ8〜14ヌクレオチドの断片に相当する。それゆえ、標識断片に与えられた親油性のために、特定の断片サイズに対して予想された質量との相当な質量差(約2000〜6000Da大きい)によって、標識断片と共溶出する任意の非標識断片を排除することができる。この説明を図25に示す。ここで、図25Aは、抽出される波長が495nmなので、FITC標識核酸断片を表し、図25Bは、抽出される波長が260nmなので、TIC(図25C)と同様に、全ての核酸断片を表す。標識断片の質量スペクトルを取得し、このスペクトルをデコンボリューションするための典型的なイオンウインドウを表す2つの点線(図26)でマークされた範囲内のイオンについての質量スペクトルを得ることによって、2以上のピークを観測することが可能となる。しかしながら、ピークの質量値は非常に様々であり、したがって、1つの、この場合、平均分子質量のデコンボリューションされた値4666.205Daだけを標識断片の候補とする。偽の質量を無視するこの能力、または言い換えれば、非標識断片と共溶出する場合に標識断片の質量を決定する能力によって、この方法による核酸分子の配列確認(図24)と配列決定(図28A〜C)の両方が可能になる。それゆえ、断片間の個別の質量差から配列を決定する原理が実施例3で適用される原理と類似しているので、実施例3と同じような方法で、配列に関する予備知識を持たない配列の確認または決定(図28A〜C参照)のための類似の配列確認表または類似のフローチャートを作成することができる(図23および図24参照)。
4.3 プロトコル
4.3.1 シュピーゲルマーNOX−E36中間体のフルオレセイン−5−イソチオシアネート標識
848ODの粗シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)、すなわち、5’アミノリンカーを有するシュピーゲルマーNOX−E36(配列番号1)の誘導体を反応チューブに入れ、250μlのHOに溶解させた。これに、250μlのN,N−ジメチルホルムアミド(略称、DMF)に予め溶解させた3mgのフルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC異性体I)(Sigma,Taufkirchen,Germany)を添加した。この溶液をボルテックスし、スピンダウンし、その後すぐに、6mgの重炭酸ナトリウム(Merck,Darmstadt,Germany)を添加した。この溶液を室温で6時間インキュベートし、その後すぐに、粗混合物を、NAP2カラム(Amersham Biosciences,Freiburg,Germany)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで脱塩し、凍結乾燥させた。凍結乾燥物を水に再溶解させ、Source 15RPCミディアム(Amersham,Freiburg,Germany)を用いた分取RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)(Wincott et al,1995)で精製し、NAP25カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて脱塩した。
4.3.2 フルオレセイン−5−イソチオシアネート標識シュピーゲルマーNOX−E36中間体の限定的なランダム塩基加水分解
13.5μl(1OD)のFITC標識シュピーゲルマーNOX−E36中間体(配列番号2)に、室温で1.5μlの0.5 M KCOを添加した。この溶液をボルテックスし、その後、Eppendorf Thermomixer Comfortマシーン(Eppendorf,Hamburg,Germany)にて、70℃、1350rpmで、5分間インキュベートし、その後すぐに、液体窒素中で凍結させ、そして解凍させておいた。その後、2.5μlの1M AcOHを添加して(最終pH約7)、反応をクエンチし、溶液をボルテックスし、スピンダウンし、LCMSで分析した。
4.3.3 断片のLCMS分析
上記のプロトコルから生成されたNOX−E36中間体(配列番号2)の5’断片のLCMS分析を、高速分別ポンプを備えた6520 Accurate Mass Q−TOF LCMSシステム(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)とAcuity BEH C18カラム(1.7μm,130 Å孔径,2.1×30mm,Waters,Eschborn,Germany)とを用いて分析した。勾配は22分で0−20%のB、40分で20−30%のBである。緩衝液A:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、1%メタノール、緩衝液B:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、50%メタノール。カラム温度65℃、流速1.2ml/分。495nmで抽出されたUVクロマトグラムからの各ピークについてTICからの質量スペクトルを得、その後、デコンボリューションした。
4.4 結果
NOX−E36中間体(配列番号2)を工程4.3.1〜4.3.3に示す配列決定プロトコルに供して、図19A〜Cに示すように以下のデータを得た:
A)495nmで抽出されたUVクロマトグラム。
B)260nmで抽出されたUVクロマトグラム。
C)トータルイオンクロマトグラム(TIC)。
標識(5’)断片の位置/保持時間が495nmで明らかになっており(図19、A)、6.31分での第1の5’断片の位置がはっきりと分かる。260nmで抽出された対応するUVクロマトグラム(図19、B)は、全ての断片:5’(標識)断片、3’断片および内部断片を示している。第1の標識断片よりも早く溶出する断片がたくさん存在することが分かる。これらは、3’断片または内部断片に相当する。TIC(図19、C)により、260nmのUVクロマトグラムで観測される全ての断片がTICでシグナルを生じさせる、または言い換えれば、全ての核酸断片が質量データを生じさせることが明らかになっている。
495nmで抽出されたクロマトグラムから決定されるように、第1の5’断片は、6.31分で溶出する断片であると容易に同定することができる(図19A、図20B)。TIC(図21A)中の対応するピークの質量スペクトルをデコンボリューションし、その質量値と配列確認表(断片1、図23A)中の第1の断片の予想質量値とを比較するか、または図24に示す配列決定フローチャートに従うかのいずれかによって確認が得られた(ラダー断片1、図28A)。495nmで抽出されるクロマトグラム中の7.13分で観測される次の5’断片を繰り返し処理し、第2の断片を同定した(図21B;断片2 図23Aおよびラダー断片2 図28A)。全ての他の5’断片についてこのプロセスを反復した。このプロセスでは、記載されたフローチャート(図24)および構築された配列決定表(図28A〜C)を用いて配列を決定し、それにより、配列を決定することができた。配列が既知である場合、(図24で説明されているように)配列確認表を用いることもできた。図28A〜Cから分かるように、配列決定に伴う誤差は完全に、一義的な配列決定の範囲内である。本実施例でこれまで論じたように、図25に示すような、共溶出する非標識断片という事象において、このような非標識断片は、配列が既知であるか、それとも未知であるかを問わず、標識断片の予想される質量値の範囲よりも有意に高い質量値を有する。図21、22、26、27を比較することにより分かるように、この質量差は、通常、3〜6kDaの範囲である。要約すると、選択的修飾、この特定の実施例では、選択的な波長吸光度が与えられた修飾を用いた核酸分子の配列決定は、一義的な決定の許容限界の十分に範囲内の実験を用いてデノボの方法でそのFITC誘導体(配列番号100)を介してNOX−E36中間体(配列番号2)の配列を決定することにより示すことができた。
実施例5:核酸分子および選択されたその断片の固定を伴う核酸分子の配列決定。NOX A12
5.1 原理
核酸分子および選択されたその断片の固定を伴う核酸分子の配列決定については、その原理が、これまでに実施例3で記載されている。この追加の実施例では、異なる核酸配列である、NOX−A12(配列番号64)の核酸配列を用いる。この追加の実施例は、オリゴヌクレオチドの凝集特性のために標識断片と共固定され得る(第5.3.3節参照)非標識断片の完全な除去を確実にするために修正された洗浄工程も有する。これを達成するために、カオトロピック溶液、本実施例では、8M尿素を用いる。
5.2 シュピーゲルマーNOX−A12の配列決定
この方法を試験するために、核酸分子シュピーゲルマーNOX−A12中間体(配列番号65)を用いた。NOX−A12中間体(配列番号65)は、シュピーゲルマーNOX−A12(配列番号64)の5’−アミノ修飾誘導体である。NOX−E36について図8で示したように、ビオチン親和性タグで5’−アミノ部分を修飾した後、塩基性溶液を用いて、ビオチン化シュピーゲルマーを化学的にランダムに切断する。切断が最後まで進まないように、切断を注意深く制御した。5’断片、3’断片およびランダムな内部断片を生じさせるランダムな断片化が起こることより、NOX−A12中間体の全てのビオチン化5’断片と残りのビオチン化NOX−A12中間体(すなわち、全長産物[略称、FLP])が固定用のタグ特異的な固体支持体(この場合、ニュートロアビジンビーズ)を用いて、親和性タグ(この場合、ビオチン)によって混合物から選択的に抜き出される。結合していない断片、すなわち、親和性タグを有さない3’断片およびランダムな内部断片を洗い流すことができる。いくつかの配列、特に、自己凝集する傾向のある配列の場合、固定された標識断片に結合するので、非標識断片が共固定されることがあり得る。その除去を確実にするために、結合断片をカオトロピック剤で洗浄する。その後、ビオチン部分とNOX−A12中間体(配列番号65)を接続するリンカー内のジスルフィド結合を還元的に切断することにより、結合したシュピーゲルマーNOX−A12の5’断片とFLP(配列番号63)をビーズから遊離させて、断片(101〜145)を提供する。これらの断片は、全てのリボヌクレオシド位置間の鎖切断に対応する(NOX−E36の例については、図8参照)。鎖切断は、2’,3’−環状リン酸を含有する断片をまず形成させ、この環状リン酸は、2’(3’)リン酸にゆっくりと加水分解される。その後、遊離した断片をLC−(ESI)MSにより分析し、トータルイオンクロマトグラム(略称、TIC)を分析する。見出されるのは、生成された全ての5’断片とインタクトの放出されたアシル化NOX−A12中間体(配列番号101〜145)に対応する個別のピークである(試料クロマトグラムについては図31参照)。その後、各々の個別のピークに関する得られた質量スペクトルのデコンボリューションによって、個別のピークに含まれる質量を得る(例えば、図32参照)。デコンボリューションは当業者に周知の一般的な技術である。デコンボリューションでは、アルゴリズムを質量スペクトルに適用して、単一種の多価イオンを同定し、それらをこの種の質量とするよう再構成する。この技術は、大きい分子を多価イオンの分布として観測するESIや他のイオン化技術と組み合わせると極めて有用である。適用されるアルゴリズムによって、(精密質量を得るための)同位体分解質量または分子量のいずれかが得られる。通常、オリゴヌクレオチドについて、5ppmで校正される質量分析計は、約6〜10kDaまでの分解同位体スペクトルを生成させることができる。この質量を超えると、通常、種の分子量に対してデコンボリューションするMaxentアルゴリズムなどのアルゴリズムを用いる。
通常、見られる質量は、2’,3’−環状リン酸の質量であるが、場合によっては、加水分解された2’(3’)リン酸を含有する少量の断片を検出することもでき、この断片は、生成された断片のアイデンティティーをさらに確認するのに役立つ。通常、これらの加水分解断片は、親2’,3’−環状リン酸よりも後に溶出される。
まず第1に、生成された断片の質量を、NOX−A12中間体(配列番号34A+B)の5’断片の計算質量と比較して、配列を確認することができる(NOX−E36の例、図13A〜Eと同様である)。あるいは、生成された断片間の違いによって、配列に関する予備知識を持たずに、配列を得ることができる。このシナリオでは、核酸分子の第1の断片を容易に予測することができ、「配列決定/確認用のフローチャート」(図16)に示すように、後で得られる断片の増分差を用いて、核酸分子の配列を決定することができる。このフローチャートには段階的なプロセスが記載されているが、このプロセスでは、最小の断片(断片1と命名する)がまず同定される。第1の断片は、図34 A(配列番号101)に示すような5’−付加アシル化アミノヘキシルリンカーと2’,3’−環状リン酸の両方を有する第1の5’ヌクレオチドに相当する。結果的に、第1の断片について、全てのあり得るRNA順列(A、C、GまたはU)を計算するのが簡単である(図16)。IP RP−HPLCの技術を熟知する者には知られているように、イオン対逆相HPLC(略称、IP RP−HPLC)を用いると、断片1が最も早く溶出する5’断片となることを知っていれば、この第1の断片の同定は容易になる。断片1が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片2が同定される。次の断片の断片2のアイデンティティー、したがって、その配列は、断片2と断片1の計算された精密質量または分子量との質量差から導き出される。質量差は、各ヌクレオシドA、C、G、Uに固有である(図16)。断片2が同定されれば、計算された精密質量および分子量を用いて、次の断片の断片3が同定される。断片2を同定するために使用したものと同一の手順で、断片3のアイデンティティーが、断片3と断片2の計算された精密質量または分子量との質量差から導き出される。この反復プロセスを用いて、全ての5’断片を同定する。前の断片の計算質量値を使用する必要性は、観測値のみを使用したときに生じ得る潜在的蓄積誤差に起因する。例えば、0.3Daの誤差であれば、断片の一義的な同定がなおも可能であろうが、この誤差をリセットしなければ、同定された断片の計算値を用いることで、さらに0.3Daの誤差が蓄積し、その結果、CヌクレオシドとUヌクレオシドの質量差がわずか1Daであるために、一義的な同定ができない可能性がある。
最後のヌクレオシドを同定するために、同じプロセスを用い、このプロセスでは、インタクトの放出されるアシル化NOX−A12中間体(配列番号145)と最後の環状リン酸を含有する断片の計算質量の間の質量差を用いて、最後のヌクレオチドのアイデンティティーを確認する。放出されるアシル化NOX−A12中間体は2’,3’環状リン酸を有さないので、質量差は、前に計算された断片についてのものと同じではない。質量差は、最後のヌクレオシドの質量に対応する(図16)。
NOX−E36よりも長いシュピーゲルマーであるNOX−A12をさらなる試験物として用いて、この配列決定法を評価した。本実施例に記載のプロトコルを用いてNOX−A12を処理した。「配列決定/確認用のフローチャート」(図16)を用いて、配列を同定し、この結果を配列決定表に蓄積した(図33A〜C)。
5.3 プロトコル
5.3.1 シュピーゲルマーNOX−A12中間体のビオチン化
10mg(250OD)の粗シュピーゲルマーNOX−A12中間体(配列番号65)、すなわち、5’アミノリンカーを有するシュピーゲルマーNOX−A12(配列番号64)の誘導体を反応チューブに入れ、260μlのTheorell and Stenhagenの汎用緩衝液pH8.5(33mMクエン酸ナトリウム、33nMリン酸ナトリウム、57mMホウ酸ナトリウム、pH8.5)に溶解させた。これに、200μlのN,N−ジメチルホルムアミド(略称、DMF)を添加した。この溶液をボルテックスし、スピンダウンし、その後すぐに、50μlのDMFに予め溶解させた2.2mgのビオチンジスルフィドΝ−ヒドロキシ−スクシニミドエステル(Sigma B4531,Taufkirchen,Germany)を添加した。この溶液を室温で60分間インキュベートし、その後すぐに、アリコートを取って、陰イオン交換HPLC(Dionex DNA−Pac 200カラム、緩衝液A:HO中の100mM Tris;10%ACN。緩衝液B:HO中の1M NaCl、100mM Tris;25mM NaClO;10%ACN。勾配は6分で10〜30%B、次いで、35分で30〜70%B、カラム温度80℃)で分析し、これにより、反応が完了したことが明らかにされた。粗反応混合物をNAP25カラム(Amersham Biosciences,Freibug,Germany)を用いて脱塩し、凍結乾燥させた。
5.3.2 ビオチン標識シュピーゲルマーNOX−E36中間体の塩基加水分解
20μlのビオチン化シュピーゲルマーNOX−A12中間体(配列番号65)(0.5OD/μl)に、30μlの滅菌水および2.5μlの0.5M KCOを室温で添加した。この溶液をボルテックスし、その後、Eppendorf Thermomixer Comfortマシーン(Eppendorf,Hamburg,Germany)にて、70℃、1350rpmで、20分間インキュベートした。その後すぐに、これを液体窒素中で凍結させ、そして解凍させておいた。その後、4μlの1M AcOHを添加して(約pH7)、反応をクエンチし、溶液をボルテックスし、スピンダウンした。
5.3.3 ニュートロアビジンビーズに対するビオチン化断片の結合
ニュートロアビジンアガロースビーズを以下のように処理した:150μlのニュートロアビジンビーズスラリー(Pierce,Milwaukee,MI,USA)を500μl反応チューブに入れた。ビーズをスピンダウンし、上清を注意深く除去した。その後すぐに、300μlの1M Tris HCl pH8.0(Ambion;Huntindon,UK)を添加した。スラリーをボルテックスし、スピンダウンし、上清を注意深く除去した。その後、ビーズを2×300μlの滅菌HOで同じように洗浄した。その後、上記のように調製したクエンチした加水分解混合物をビーズに添加し、得られたスラリーを10℃で2時間激しく(1350rpm)混合した。その後、ビーズをスピンダウンし、上清を除去した。1×300μlの8M尿素を添加し、混合物をボルテックスし、スピンダウンした。上清を注意深く除去し、ビーズを滅菌水でさらに4回洗浄した。
5.3.4 ニュートロアビジンビーズからのビオチン化断片の切断
NOX−A12中間体(配列番号65)のビオチン標識断片のジスルフィドリンカーを、5μlの1M DTT溶液を含む100μlの0.05Mリン酸Na緩衝液(pH8.5)を用いて切断した。これをEppendorf Thermomixer Comfortマシーンにて、25℃で2時間激しく混合した。スラリーを回転微量遠心チューブ(Ultrafree−MC GV,0,22μm,Millipore,Schwalbach,Germany)を用いて濾過し、ビーズを50μl滅菌水でさらに洗浄した。UV測定を行なって、260nmでの光学密度単位を決定し、そのうち、0.25ODをLCMSで分析した。
5.3.5 断片のLCMS分析
上記のプロトコルから生成されたNOX−A12中間体(配列番号65)の5’断片のLCMS分析を、高速分別ポンプを備えた6520 Accurate Mass Q−TOF LCMSシステム(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)とAcuity BEH C18カラム(1.7μm,130Å孔径,2.1×30mm,Waters,Eschborn,Germany)とを用いて分析した。勾配は22分で0〜20%B、40分で20〜30%Bである。緩衝液A:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、1%メタノール、緩衝液B:水中の10mMトリエチルアミン、100mMヘキサフルオロイソプロパノール、10μM EDTA(NH 形態)、50%メタノール。カラム温度65℃、流速0.2ml/分:各ピークについてTICからの質量スペクトルを得、その後、デコンボリューションした。
5.4 結果
陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、出発材料(図29、28.21分)と比較して粗反応混合物中の後から溶出するピーク(図30、29.82分)の出現から明らかにされるように、粗NOX−A12中間体(配列番号65)は、実験の節で記載された切断可能なビオチン部分で効率的に標識された。NOX−A12中間体[配列番号65]の固相合成からの破損配列、および他の不純物の存在によって、標識またはその後の工程5.3.2〜5.3.5を実施する能力や核酸分子の配列を決定する能力は影響を受けない。粗標識混合物は、サイズ排除精製カラム(NAP25、実験参照)を用いた初歩的な脱塩工程を除いて、精製されなかった。その後、この粗材料を断片化し、標識断片を固定し、洗浄し、その後、記載したような固体支持体から放出させた(第5.3.2節〜第5.3.4節)。その後、得られた反応混合物をLCMSを用いて分析した(第5.3.5節)。得られたトータルイオンクロマトグラム(略称、TIC、図31)は、各々のあり得る5’断片(配列番号101〜145、図34)に相当するピークパターンを示す。TICで観測される個別のピークの各々について、生の質量データ、およびその後の対応するデコンボリューションされた質量を得た。図32は、断片(質量ピーク値=10910.65Da)、この場合、断片33(図34A、[配列番号133])のデコンボリューションされた分子量の例を示す。図16に記載のフローチャートに従って、観測質量を用いてNOX−A12(図33A〜C)の配列を一義的に決定した。図34A+Bは対応する配列確認表を示し、図35は注釈付きTICを示し、ピークは、配列決定表(図33A〜C)と配列確認表(図34A+B)中の対応する断片番号に帰属させられる。
要約すると、上記の固定の原理を適用することにより、NOX−A12中間体(配列番号65)の配列が、一義的な決定の許容限界の十分に範囲内の誤差をもって容易に決定された。
参考文献
本明細書に列挙された文書の完全な書誌データは、それとは矛盾することが示されない限り、以下の通りである。該参考文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
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本明細書、特許請求の範囲および/または図面に開示された本発明の特徴は、別々および任意のその組合せの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための材料であり得る。

Claims (126)

  1. 以下の工程:
    a)少なくとも1つの修飾を有する前記核酸分子の複数の分子を提供する工程;
    b)複数の修飾核酸分子をランダムに切断し、それにより修飾核酸分子断片と非修飾核酸分子断片とを提供する工程;
    c)前記修飾核酸分子断片を前記非修飾核酸分子断片から分離する工程;
    d)前記修飾核酸分子断片をその長さ、質量および/または電荷によって分離または分別し、そのような分離または分別によって、修飾核酸断片のパターンが生成される工程;ならびに
    e)任意で前記修飾核酸断片のパターンを可視化する工程
    を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定するための方法。
  2. 前記方法が、
    f)前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 複数の分子の個々の核酸分子が、そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の5’末端に、3’末端にまたはヌクレオチド配列内に少なくとも1つの修飾を有する、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
  4. 前記切断が、化学的切断、酵素的切断、熱による切断および/または二価カチオンの使用による切断によって行なわれる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記切断が、化学的切断、好ましくはヌクレオチド非特異的切断である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記切断が限定的切断である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記切断が、限定的なランダム切断、好ましくは限定的で化学的なランダム切断である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 切断する工程が、断片、好ましくは修飾断片の混合物を提供し、そのような断片の混合物が、前記核酸分子の全てのあり得るヌクレオチド配列断片を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記混合物が、そのヌクレオチド配列が決定される修飾された全長形態の前記核酸分子を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記修飾核酸分子断片が、修飾と相互作用パートナーとの相互作用によって非修飾核酸分子断片から分離され、そのような相互作用パートナーが支持体に連結される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記支持体が固体支持体である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記非修飾核酸分子断片が、好ましくは洗浄によって、前記相互作用パートナーと相互作用する前記修飾核酸分子断片から除去される、請求項10〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記修飾核酸分子断片が、好ましくは前記相互作用パートナーからの前記修飾の放出によるか、前記支持体からの前記相互作用パートナーからの放出によるか、あるいは前記核酸分子断片から前記修飾またはその一部もしくは部分を切断することによって、前記支持体から放出される、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記修飾核酸分子断片が、質量識別、サイズ識別、および/または疎水性識別、電荷識別、イオン識別、水素結合識別、あるいは液相によって仲介される抽出による分離によって、前記非修飾核酸分子から分離され、好ましくは前記非標識核酸分子断片が除去される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  15. 前記修飾核酸断片のパターンが修飾核酸断片のラダーを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記修飾核酸断片のパターンが質量分析法によって生成され、好ましくは前記核酸分子の核酸配列が推定される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記修飾核酸断片のパターンが生成され、個々の断片の質量が質量分析法によって決定され、好ましくは前記核酸分子の核酸配列が推定される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  18. 前記核酸分子のヌクレオチド配列が未知である、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列を決定する工程;
    fb)前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fc)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
    fd)前記質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、前記個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 工程fb)〜fd)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fb)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fc)において、前記修飾核酸分子断片n+xの質量と前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、かつ工程fd)において、前記質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される、請求項19に記載の方法。
  21. 工程fb)〜fd)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項20に記載の方法。
  22. 前記核酸分子のヌクレオチド配列が既知であり、好ましくは前記方法が、前記核酸分子のヌクレオチド配列を確認するためのものである、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  23. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fb)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
    fc)前記質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、前記個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 工程fa)〜fc)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる前記修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fb)において、前記前記修飾核酸分子断片n+xの質量と前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、かつ工程fc)において、前記質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される、請求項23に記載の方法。
  25. 工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項24に記載の方法。
  26. 前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列が既知である、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
  27. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fb)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させ、前記個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項22に記載の方法。
  28. 工程fa)〜fb)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、かつ工程fb)において、前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの修飾核酸分子配列が生成される、請求項27に記載の方法。
  29. 工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項28に記載の方法。
  30. 前記修飾が核酸分子断片の5’末端に存在し、かつ前記最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端5’ヌクレオチドを含むか、または前記修飾が核酸分子断片の3’末端に存在し、かつ前記最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端3’ヌクレオチドを含む、請求項19〜29のいずれかに記載の方法。
  31. 前記修飾が1つの部分を含む一成分修飾である、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
  32. 前記部分が、前記修飾核酸分子断片を前記非修飾核酸分子から分離するときに使用される、請求項31に記載の方法。
  33. 前記部分が、パターンの生成において前記修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される、請求項32に記載の方法。
  34. 前記修飾が、少なくとも第1の部分と第2の部分を含む多成分修飾であり、任意で前記少なくとも第1の部分と第2の部分がリンカーで連結されている、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
  35. 前記第1の部分が、修飾核酸分子断片を非修飾核酸分子から分離するときに使用され、前記第2の部分が、パターンの生成において前記修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される、請求項34に記載の方法。
  36. 前記修飾核酸分子断片を前記非修飾核酸分子から分離するときに使用される部分が、相互作用パートナーに対するリガンドを含み、そのような相互作用パートナーが支持体上に存在し、好ましくはそのような支持体に連結され、前記リガンドと前記相互作用パートナーの相互作用が前記支持体上への前記修飾核酸分子断片の固定を仲介する、請求項31〜35のいずれかに記載の方法。
  37. 前記固定が、化学的固定、親和性固定、磁気固定を含む群から選択される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記固定が親和性固定である、請求項37に記載の方法。
  39. 前記支持体上への前記核酸分子および前記核酸分子断片の固定を仲介する相互作用が、ビオチン−アビジン相互作用、ビオチン−ニュートロアビジン相互作用、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用、抗原−抗体相互作用、前記核酸分子が、DNA、RNA、LNA、PNA、またはその組合せからなる、2つのオリゴヌクレオチドの相互作用、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチドの相互作用、アルブミンとシバクロンブルーの相互作用、金属キレーター剤と金属キレート化支持体の相互作用を含む群から選択される、請求項38に記載の方法。
  40. 前記修飾核酸分子断片を前記非修飾核酸分子から分離するときに使用される部分が、ビオチン、オリゴヌクレオチド、カルモジュリン結合ペプチド、アルブミンおよび金属キレーター剤を含む群から選択される、請求項31〜39のいずれかに記載の方法。
  41. 前記修飾核酸分子断片が、濾過、透析、クロマトグラフィー、磁場、遠心分離および沈殿を含む群から選択される手段によって、前記非修飾核酸分子から分離される、請求項1〜40のいずれかに記載の方法。
  42. クロマトグラフィーがサイズ排除クロマトグラフィーであり、前記修飾核酸断片が、そのサイズによるかまたは前記修飾によってそれに与えられる修飾断片のサイズの増加によって、前記非修飾核酸分子から分離される、請求項41に記載の方法。
  43. 前記パターンの生成において前記修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される部分が、質量タグまたは親油性タグから選択される、請求項31〜42のいずれかに記載の方法。
  44. 前記修飾核酸分子断片が、好ましくは濾過および透析およびクロマトグラフィーおよび質量分析法を含む群から選択される質量またはサイズ識別のための方法によって分離または分別され、好ましくはそのような方法がMS、LCMSまたはESI MSである、請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
  45. 前記修飾核酸分子断片が、好ましくはRP−HPLCである疎水性相互作用に基づく方法によって分離または分別される、請求項1〜44のいずれかに記載の方法。
  46. 前記リンカーが疎水性リンカーである、請求項34〜45のいずれかに記載の方法。
  47. 前記リンカーが切断可能なリンカーである、請求項34〜46のいずれかに記載の方法。
  48. 前記リンカーが、選択的に切断可能なリンカーであり、より好ましくは、前記選択的に切断可能なリンカーが、酵素的に切断可能、化学的に切断可能、光切断可能または熱切断可能なものである、請求項47に記載の方法。
  49. 前記核酸分子が、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNAならびにそれらの組合せ、好ましくは、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子およびデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含有する核酸分子の群から選択される、請求項1〜48のいずれかに記載の方法。
  50. 前記核酸分子が、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される、請求項1〜49のいずれかに記載の方法。
  51. 前記核酸分子がRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である、請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
  52. 前記切断が、アルカリ加水分解、アミン、またはポリアミンによってなされる前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の化学的切断である、請求項51に記載の方法。
  53. 前記切断が、ヌクレアーゼ、好ましくはリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされる前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の酵素的切断である、請求項51に記載の方法。
  54. 前記切断が、前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の熱による切断である、請求項51に記載の方法。
  55. 前記切断が、二価カチオンの使用による前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の切断である、請求項51に記載の方法。
  56. 前記核酸がDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子である、請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
  57. 前記切断が、酸加水分解の使用によってなされる前記DNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾DNA分子の化学的切断である、請求項56に記載の方法。
  58. 前記切断が、ヌクレアーゼ、好ましくはデオキシリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされる前記DNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾DNA分子の酵素的切断である、請求項56に記載の方法。
  59. 質量分析法が、直接質量分析法、LC−MSおよびMS/MSを含む群から選択される、請求項16〜58のいずれかに記載の方法。
  60. 核酸分子の特異的なマスフィンガープリントが決定される、請求項1〜59のいずれかに記載の方法。
  61. 前記特異的なマスフィンガープリントが、核酸分子の同定および/または品質管理に使用される、請求項60に記載の方法。
  62. 前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子の前記少なくとも1つの修飾が、工程a)またはb)の前に、前記核酸分子の5’末端または3’末端に付加される、請求項1〜61のいずれかに記載の方法。
  63. 前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子が非核酸部分を含む、請求項1〜62のいずれかに記載の方法。
  64. 前記非核酸部分が、工程a)またはb)の前に、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子から除去される、請求項63に記載の方法。
  65. 第1の工程において、前記非核酸部分が、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子から除去され、第2の工程において、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子の修飾が、工程a)またはb)の前に、5’末端、3’末端または前記核酸分子もしくは前記核酸分子の複数の分子のヌクレオチド配列内のヌクレオチドに付加される、請求項64に記載の方法。
  66. 以下の工程:
    a)少なくとも1つの修飾を有する核酸分子の複数の分子を提供する工程;
    b)複数の修飾核酸分子をランダムに切断し、それにより修飾核酸分子断片を提供する工程;
    c)前記修飾核酸分子断片をその長さ、質量および/または電荷によって分離または分別し、そのような分離または分別が修飾核酸断片のパターンを生成させる、工程;ならびに
    d)任意で前記修飾核酸断片のパターンを可視化する工程
    を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定するための方法。
  67. 工程b)またはc)の後に得られる反応混合物が、該少なくとも1つの修飾を有さない1以上の核酸分子またはその断片を含有する、請求項66のいずれかに記載の方法。
  68. 前記修飾核酸断片のパターンの可視化が、前記少なくとも1つの修飾を利用し、好ましくは前記修飾が、該修飾を有する核酸分子と該修飾を有さない核酸分子の識別を可能にする、請求項66および67の1つに記載の方法。
  69. 前記修飾が、質量タグ、核酸分子の親油性部分よりも顕著に大きい所与の波長でのUV吸光度を有する部分、規定の分子質量を有するポリマー、放射性標識およびイオン移動度の変化を与える部分を含む群から選択される、請求項66〜68のいずれかに記載の方法。
  70. 前記核酸分子よりも顕著に大きい所与の波長でのUV吸光度を有する部分が、発色団、色素および蛍光標識を含む群から選択される、請求項69に記載の方法。
  71. 前記方法が、
    e)前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程
    をさらに含む、請求項66〜70のいずれかに記載の方法。
  72. 複数の分子の個々の核酸分子が、そのヌクレオチド配列が決定される核酸分子の5’末端に、3’末端にまたはヌクレオチド配列内に少なくとも1つの修飾を有する、請求項66〜71のいずれかに記載の方法。
  73. 前記切断が、化学的切断、酵素的切断、熱による切断および/または二価カチオンの使用による切断によって行なわれる、請求項66〜72のいずれかに記載の方法。
  74. 前記切断が、化学的切断、好ましくはヌクレオチド非特異的切断である、請求項66〜73のいずれかに記載の方法。
  75. 前記切断が限定的切断である、請求項66〜74のいずれかに記載の方法。
  76. 前記切断が、限定的なランダム切断、好ましくは限定的で化学的なランダム切断である、請求項66〜75のいずれかに記載の方法。
  77. 切断する工程が、断片、好ましくは修飾断片の混合物を提供し、断片のそのような混合物が前記核酸分子の全てのあり得るヌクレオチド配列断片を含む、請求項66〜76のいずれかに記載の方法。
  78. 前記混合物が、そのヌクレオチド配列が決定される修飾された全長形態の前記核酸分子を含む、請求項77に記載の方法。
  79. 前記修飾核酸断片のパターンが修飾核酸断片のラダーを含む、請求項66〜78のいずれかに記載の方法。
  80. 前記修飾核酸断片のパターンが質量分析法、好ましくはLC−MSによって生成され、かつ好ましくは前記核酸分子の核酸配列が推定される、請求項66〜79のいずれかに記載の方法。
  81. 前記修飾核酸断片のパターンが生成され、個々の断片の質量が質量分析法によって決定され、かつ好ましくは、前記核酸分子の核酸配列が推定される、請求項66〜79のいずれかに記載の方法。
  82. 前記核酸分子のヌクレオチド配列が未知である、請求項66〜81のいずれかに記載の方法。
  83. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列を決定する工程;
    fb)前記最小の修飾核酸分子断片n+1、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fc)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
    fd)前記質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、前記個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項66〜82のいずれかに記載の方法。
  84. 工程fb)〜fd)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fb)において、前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fc)において、前記修飾核酸分子断片n+xの質量と前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、工程d)において、前記質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより前記修飾核酸分子断片n+xの配列が生成される、請求項83に記載の方法。
  85. 工程fb)〜fd)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項84に記載の方法。
  86. 前記核酸分子のヌクレオチド配列が既知であり、好ましくは、前記方法が前記核酸分子のヌクレオチド配列を確認するためのものである、請求項66〜81のいずれかに記載の方法。
  87. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fb)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量と前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量の質量差を決定する工程;
    fc)前記質量差を個別のヌクレオチド種に帰属させ、前記個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項86に記載の方法。
  88. 工程fa)〜fc)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fb)において、前記修飾核酸分子断片n+xの質量と前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量の質量差が決定され、工程fc)において、質量差が個別のヌクレオチド種に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの配列が生成される、請求項87に記載の方法。
  89. 工程fa)〜fb)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項88に記載の方法。
  90. 前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量および/またはヌクレオチド配列が既知である、請求項86〜89のいずれかに記載の方法。
  91. 前記修飾核酸断片のパターンから前記核酸分子のヌクレオチド配列を推定する工程が、以下の工程:
    fa)最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を決定する工程;
    fb)前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量を、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の前記核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させ、個別のヌクレオチド種を前記最小の修飾核酸分子断片n+x、x=0の配列に付加することにより修飾核酸分子断片n+x、x=1の配列を生成させる工程
    を含む、請求項86に記載の方法。
  92. 工程fa)〜fb)が反復され、各々の反復で、1の加数によりxが増加し、1回目の反復で、xが2となり、工程fa)において、前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の質量と1ヌクレオチドだけ異なる修飾核酸分子断片n+xの質量が決定され、工程fb)において、前記修飾核酸分子断片n+x、x=1の質量が、そのヌクレオチド配列が既知である核酸分子の核酸分子断片n+x、x=1の計算質量に帰属させられ、前記個別のヌクレオチド種を前記修飾核酸分子断片n+(x−1)の配列に付加することにより断片n+xの修飾核酸分子配列が生成される、請求項91に記載の方法。
  93. 工程fa)〜fc)のm回目の反復で、xが次の通り、すなわち、x=m+1となる、請求項92に記載の方法。
  94. 前記修飾が前記核酸分子断片の5’末端に存在し、かつ前記最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端5’ヌクレオチドを含むか、または前記修飾が前記核酸分子断片の3’末端に存在し、かつ前記最小の修飾核酸分子断片が全長核酸分子の末端3’ヌクレオチドを含む、請求項83〜93のいずれかに記載の方法。
  95. 前記修飾が、パターンの生成において前記修飾核酸分子断片を分離または分別するときに使用される、請求項66〜94のいずれかに記載の方法。
  96. 前記修飾が、その波長吸光度が前記核酸分子のヌクレオ塩基の波長吸光度とは異なる蛍光標識である、請求項66〜95のいずれかに記載の方法。
  97. 前記核酸分子が、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNAおよびそれらの組合せ、好ましくはRNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子、ヌクレオチド修飾DNA分子およびデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含有する核酸分子の群から選択される、請求項66〜96のいずれかに記載の方法。
  98. 前記核酸分子が、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される、請求項66〜97のいずれかに記載の方法。
  99. 前記核酸分子がRNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である、請求項66〜98のいずれかに記載の方法。
  100. 前記切断が、前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の化学的切断であり、かつそのような切断がアルカリ加水分解によってなされる、請求項99に記載の方法。
  101. 前記切断が、ヌクレアーゼ、好ましくはリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされる前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の酵素的切断である、請求項99に記載の方法。
  102. 前記切断が、前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の熱による切断である、請求項99に記載の方法。
  103. 前記切断が、二価カチオンの使用による前記RNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾RNA分子の切断、あるいは熱および切断剤による切断の組合せである、請求項99に記載の方法。
  104. 前記核酸がDNA分子および/またはヌクレオチド修飾DNA分子である、請求項66〜98のいずれかに記載の方法。
  105. 前記切断が、酸加水分解の使用によってなされる前記DNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾DNA分子の化学的切断である、請求項104に記載の方法。
  106. 前記切断が、ヌクレアーゼ、好ましくはデオキシリボヌクレアーゼ、および/または核酸ベースの酵素、好ましくは核酸ベースの酵素の使用によってなされる前記DNA分子および/または前記ヌクレオチド修飾DNA分子の酵素的切断である、請求項104に記載の方法。
  107. 核酸分子の特異的なマスフィンガープリントが決定される、請求項66〜106のいずれかに記載の方法。
  108. 前記特異的なマスフィンガープリントが、核酸分子の同定および/または品質管理に使用される、請求項107に記載の方法。
  109. 前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子の前記少なくとも1つの修飾が、工程a)またはb)の前に、前記核酸分子の5’末端または3’末端に付加される、請求項66〜108のいずれかに記載の方法。
  110. 前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子が非核酸部分を含む、請求項66〜109のいずれかに記載の方法。
  111. 前記非核酸部分が、工程a)またはb)の前に、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子から除去される、請求項110に記載の方法。
  112. 第1の工程において、前記非核酸部分が、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子から除去され、第2の工程において、前記核酸分子または前記核酸分子の複数の分子の修飾が、工程a)またはb)の前に、前記核酸分子もしくは前記核酸分子の複数の分子の5’末端、3’末端またはヌクレオチド配列内のヌクレオチドに付加される、請求項111に記載の方法。
  113. 以下の工程:
    a)核酸分子の複数の分子を提供する工程;
    b)前記核酸分子の複数の分子をヌクレオ塩基選択的処置に供し、前記核酸分子を形成する1個または数個のヌクレオ塩基種を選択的に修飾し、そのようなヌクレオ塩基選択的処置の後で、前記核酸分子の選択的に処置可能なヌクレオ塩基のいくつかを修飾し、前記核酸分子の選択的に処置可能なヌクレオチドまたはヌクレオ塩基のいくつかを非修飾のままにする工程;
    c)修飾ヌクレオ塩基の3’で選択的に核酸リン酸骨格を化学的に切断し、前記修飾ヌクレオ塩基の全てではない前記核酸リン酸骨格を切断する工程;
    d)核酸分子断片をLC−MSおよび/またはLC−MS−MSにより分析する工程;ならびに
    e)インタクトの末端を有する核酸分子断片をサイズが増加する順に同定し、それから核酸分子の配列を生成させ、ここで、好ましくは、前記核酸分子断片が同じインタクトの末端、より好ましくは同じインタクトの3’末端を有する、工程
    を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定する方法。
  114. 前記核酸分子が、RNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子、PNA、LNA、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含む核酸分子、ならびにそれらの組合せ、好ましくはRNA分子、DNA分子、ヌクレオチド修飾RNA分子およびヌクレオチド修飾DNA分子の群から選択される、請求項113に記載の方法。
  115. 前記核酸分子が、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイム、シュピーゲルザイム、アンチセンス分子、siRNA分子およびデコイ分子からなる群、好ましくはシュピーゲルマーから選択される、請求項113〜114のいずれかに記載の方法。
  116. 前記核酸分子が、RNA分子および/またはヌクレオチド修飾RNA分子である、請求項113〜115のいずれかに記載の方法。
  117. 前記選択的に処置可能なヌクレオ塩基が、グアノシン、アデノシン、シチジン、チミジンおよびウラシルを含む群から選択される、請求項113〜116のいずれかに記載の方法。
  118. ヌクレオ塩基Uが、ヒドラジンと酢酸とアニリンの組合せで選択的に処置され、5’リン酸付加3’断片とアニリン修飾リボース5’断片が生じる、請求項113〜117のいずれかに記載の方法。
  119. 前記5’リン酸付加3’断片とインタクトの核酸分子が、請求項113に記載の工程d)においてアニリン修飾リボース5’断片よりも効率的にイオン化される、請求項118に記載の方法。
  120. 前記5’リン酸付加3’断片が、請求項113に記載の工程d)においてアニリン修飾リボース5’断片よりも効率的にイオン化される、請求項119に記載の方法。
  121. 前記5’リン酸付加3’断片が、請求項113に記載の工程e)において使用される、請求項120に記載の方法。
  122. 前記核酸分子が25個よりも多いヌクレオチドまたはヌクレオ塩基を含む、請求項1〜121のいずれかに記載の方法。
  123. 前記核酸分子が35個よりも多いヌクレオチドまたはヌクレオ塩基を含む、請求項1〜122のいずれかに記載の方法。
  124. 前記核酸分子が、26個〜50個のヌクレオ塩基、または36個〜50個のヌクレオ塩基、好ましくは26個〜45個のヌクレオ塩基または36個〜45個のヌクレオ塩基を含む、請求項1〜123のいずれかに記載の方法。
  125. 前記核酸分子の複数の分子の核酸分子の凝集が軽減される、請求項1〜124のいずれかに記載の方法。
  126. 前記凝集が、工程a)〜e)のいずれか、好ましくは工程a)およびb)のいずれかへのカオトロピック溶液の添加によって軽減される、請求項125に記載の方法。
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