JP2012252963A - 固体酸化物形燃料電池用スタック構造体及びその製造方法 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池用スタック構造体及びその製造方法 Download PDF

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Mitsuya Hashimoto
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Abstract

【課題】電極中に均一でかつ微細なガス流路をパターン形成した電極を備える燃料電池用スタック構造体を提供する。
【解決手段】固体電解質4を挟んで対向状に配置されるそれぞれ多孔質性の燃料極層6と空気極層8とを含んで積層される複数個の単セル2と、積層される単セル2間に介在されるセパレータ7と、を備え、燃料極層6内及び/又は空気極層8内に15μm以上150μm以下の開口幅を有して所定パターンで貫通する複数本のガス流通路を備える、固体酸化物形燃料電池用スタック構造体20とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池用スタック構造体及びその製造方法等に関する。
固体酸化物形燃料電池(以下、単にSOFCともいう。)は、燃料極、固体電解質及び空気極からなるユニットを単セルと称し、これを積層してスタック構造体とすることで直列接続を実現して発電システムを構築している。
SOFCのスタック構造体としては、各種知られているが、単セルを共焼結により積層一体化したものが報告されている(特許文献1)。このスタック構造体では、薄膜化した単セルを積層することで、機械的強度を確保しつつスタック構造体のコンパクト化が可能となっている。
一般に、SOFCにおいて、高い電流密度を実現するには、十分量の燃料ガス及び酸素を燃料極及び空気極にそれぞれ供給する必要がある。このため、多孔質体である電極にさらにべつのガス流通路を形成することが行われている。例えば、電極材料に、球状あるいは紡錘形状等の高分子材料又は炭素系材料の粒子を添加して、熱処理の過程で生じるこれらの粒子由来の空孔の連続構造によってガス流路を形成することが行われている。また、高分子材料や炭素系材料を含む消失性スラリーをスクリーン印刷等でパターン形成して、それを熱処理することによってガス流路を形成することも行われている(特許文献1、特許文献2)。
国際公開第WO2009/119771号パンフレット 特開2009−252474号公報
しかしながら、空孔の連続構造による流路形成方法では、ガスの流通性が等方的であるため、効率的に特定方向にガスを流通させることは困難であった。また、消失性スラリーをスクリーン印刷する方法では、生成するガス流路の径や形状を均一化することが困難であり、ガスの流通が円滑に行われず、ガス流路が断絶することもあり、却ってガス流通状態が低下することもあった。
共焼結でスタック構造体の各単セルの電極に適切なガス流路を形成することは一層困難であり、特許文献1に開示されるような薄膜化した単セルを積層したスタック構造体にあっては、意図した方向性のガス流路の形成はさらに困難であった。
スタック構造体を共焼結で構築する場合には、適切なガス流路を一度の熱処理によって同時形成する必要がある。しかしながら、共焼結の場合には、こうした流路の形成自体困難であった。また、意図した大きさ及び形状の流路を形成できない場合には、流路の形成によりかえってガスの流通状態が不均一となってしまうこともあった。さらに、単セル自体が薄膜化されている場合には、ガスマイクロメーターオーターで微細なパターンでガス流路を形成する必要があるが、このようなガス流路を適切に形成することはさらに困難であった。
そこで、本発明は、良好なガス流通性を備える電極を有するSOFC用のスタック構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、電極材料を含むスラリーをキャスティングする際に、可撓性を有する消失性フィラメントを任意のパターンでスラリー層内に配設して熱処理することで、その消失性フィラメントの断面形状及び配設パターンに応じて貫通したガス流路を形成可能であることを見出した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
(1)固体電解質を挟んで対向状に配置されるそれぞれ多孔質性の燃料極層と空気極層とを含んで積層される複数個の単セルと、
積層される前記単セル間に介在されて前記単セル間を分離するセパレータと、
を備え、
前記燃料極層内及び/又は前記空気極層内に15μm以上150μm以下の開口幅を有して所定パターンで貫通する複数本のガス流通路を備える、固体酸化物形燃料電池用スタック構造体。
(2)前記所定パターンは、少なくとも一つの屈曲部位を有する、(1)に記載のスタック構造体。
(3)前記所定パターンは、少なくとも2つの屈曲部位を有する、(2)に記載のスタック構造体。
(4)前記ガス流通路の開口幅は、100μm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のスタック構造体。
(5)前記ガス流通路の開口形状は、略円形状である、(1)〜(4)のいずれかに記載のスタック構造体。
(6)前記単セルの前記固体電解質、前記燃料極層及び前記空気極層の厚みは、それぞれ150μm以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載のスタック構造体。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体を備える、固体酸化物形燃料電池。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体を備える、固体酸化物形燃料電池システム。
(9) 固体電解質を挟んで対向状に配置される多孔質性の燃料極層と空気極層とを含む単セルと積層される前記単セル間をセパレータで分離する固体酸化物形燃料電池のスタック構造体の製造方法であって、
固体電解質の材料である固体電解質材料を含む固体電解質用シート、セパレータの材料であるセパレータ材料を含むセパレータ用シート、燃料極材料を含む燃料極用シート、空気極材料を含む空気極用シートを準備し、これらを積層して前記固体酸化物形燃料電池の前駆体である積層体を準備する積層工程と、
前記積層体を熱処理する熱処理工程と、
を備え、
前記積層工程は、前記燃料極用シート及び前記空気極用シートとして、それぞれ、燃料ガス及びは空気ガスのガス流路のための所定のパターンを形成するように、可撓性の消失性フィラメントが配設された燃料極用シート及び空気極用シートを準備することを含む、製造方法。
(10)前記消失性フィラメントは、タンパク質系フィラメントである、(9)に記載の製造方法。
(11)前記消失性フィラメントは、絹製フィラメントである、(9)又は(10)に記載の製造方法。
(12)前記(b)工程は、前記スラリーをキャスティングしつつキャスティング方向に沿って前記消失性フィラメントを配設することを含む、(9)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)(1)〜(6)のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体用シートの塗工装置であって、
キャスティングプレートに対して相対移動可能に配設可能なスラリー排出ユニットと、
前記スラリー排出ユニットの前記相対移動に伴って前記キャスティングプレート上に可撓性フィラメントを繰り出し可能に保持するフィラメント保持ユニットと、
を備える、装置。
本発明の固体酸化物形燃料電池用スタック構造体の一例を示す図である。 本発明の固体酸化物形燃料電池のスタック構造体の製造方法の一例を示す図である。 本発明の固体酸化物形燃料電池用スタック構造体の製造装置の一例を示す図である。 実施例で得られた積層体の構造を示す図である。 ナイロン製フィラメントによるガス流路の形成状態を示す図である。 異なる昇温速度で熱処理して得られるガス流路を示す図である。
本発明は、固体酸化物形燃料電池用スタック構造体、積層型固体酸化物形燃料電池及びその製造方法等に関する。本発明のスタック構造体は、その燃料極層内及び/又は空気極層内に15μm以上150μm以下の開口幅を有して所定パターンで貫通する複数本のガス流路を備えるため、電極中に均一でかつ微細なガス流路を備えることができる。こうした形態のガス流路によれば、電極内において意図した方向性で良好なガス流通状態を得ることができ、優れた発電特性の固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池システムを得ることができる。
本発明の製造方法によれば、前記(b)工程において、燃料ガス又は空気ガスの流路の所定パターンを形成するように、可撓性の消失性フィラメントを配設するため、共焼結によっても、電極中に均一でかつ微細なガス流路を備えることができる。
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体)
本発明のスタック構造体20は、スタック構造自体については特に限定されないで、従来公知の各種のスタック構造を有する構造体を包含している。好ましくは、本発明のスタック構造体は、全体として平板型であって、薄膜化された単セルの積層体であることが好ましい。こうしたスタック構造体としては、例えば、特許文献1(国際公開第WO2009/19771号パンフレット)に記載の積層型固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体が挙げられる。このスタック構造体によれば、固体電解質層、燃料極層、空気極層がそれぞれ薄膜化される一方、特定積層構造で積層されているために共焼結により良好な機械的強度と発電特性を発揮しうる。
図1に示すように、本発明のスタック構造体は、単セル2と、積層されるこれら単セル間に介在されて前記単セル間を分離するセパレータ14と、を備えることができる。単セル2は、固体電解質4と燃料極層6と空気極層8とを含んでいる。単セル2は、いわゆる電解質支持型でもなく電極支持型でもないことが好ましく、例えば、固体電解質4の厚みに対して燃料極層6及び空気極層8の厚みがそれぞれ30%以上300%以下であることが好ましい。この範囲であると、焼成の際に反りや剥離が生じにくいからである。
(固体電解質)
固体電解質4は、スタック構造体20の平面形態に近似した平面形態を有する層状体に形成されていることが好ましい。平面形態は、スタック構造体20の形状に依拠して、方形状、長方形状、円形状等の各種の形状を取ることができる。固体電解質4としては、SOFCに通常使用されるもとして公知のものを使用することができる。例えば、サマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などの酸化物イオン伝導性セラミックス材料が挙げられる。
固体電解質4の熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、8×10-6-1以上〜12×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、焼成の際にはく離や割れがしょうじにくいからである。スタック構造体の残留応力を考慮すると、より好ましくは、10.5×10-6-1以上11.5×10-6-1以下である。
固体電解質4の厚みは特に限定されないが、1μm以上150μm以下とすることができる。この範囲であると、後述する燃料極層6及び空気極層8ともに単セル2を構成し、さらにセパレータ14とともにスタック構造体20を構成するとき、適切な機械的強度と発電特性を得ることができる。より好ましくは、1μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上40μm以下であり、一層好ましくは1μm以上20μm以下である。
(燃料極層)
燃料極層6は、その少なくとも一部に多孔質性の燃料極7を含有している。燃料極7を構成する燃料極材料としては、特に限定しないで公知のSOFCにおいて燃料極材料として用いられているものを用いることができる。例えば、金属触媒と酸化物イオン伝導体からなるセラミックス粉末材料との混合物又はその複合粉末が挙げられる。このとき用いられる金属触媒としては、ニッケル、鉄、コバルトや、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等の還元性雰囲気中で安定であって水素酸化活性を有する材料を用いることができる。また、酸化物イオン伝導体としては、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有するものを好ましく用いることができる。蛍石型構造を有するものとしては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などを挙げることができる。また、ペロブスカイト型構造を有するものとしてはストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物が挙げられる。上記材料の中では、酸化物イオン伝導体とニッケルとの混合物で、燃料極7を形成することが好ましい。また、上述したセラミックス材料は、1種類を単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。また、燃料極7は、金属触媒を単体で用いて構成することもできる。なお、燃料極層6も、固体電解質4と同様、スタック構造体20の平面形態に依存した層状体に形成されている。
燃料極層6の熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、8×10-6-1以上〜12.5×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、固体電解質との界面ではく離がおきにくいからである。スタック構造体の残留応力を考慮すると、より好ましくは、10×10-6-1以上12×10-6-1以下である。
燃料極層6の厚みは特に限定されないが、1μm以上200μm以下とすることができる。この範囲であると、単セル2を構成し、さらにセパレータ14とともにスタック構造体20を構成するとき、適切な機械的強度と発電特性を得ることができる。より好ましくは、1μm以上150μm以下とすることができる。さらに好ましくは、1μm以上100μm以下であり、一層好ましくは5μm以上40μm以下であり、さらに一層好ましくは5μm以上20μm以下である。
(燃料ガス流路)
図1に示すように、燃料極7は、燃料ガス流路16を1又は複数備えることができる。燃料ガス流路16は、燃料極7の厚みの範囲内(層内)に形成されていることが好ましい。すなわち、燃料ガス流路16は燃料極7を構成する材料で囲繞された状態で燃料極7内に内在されていることが好ましい。こうすることで、燃料極7の全体に効率的に燃料ガスを供給することができる。好ましくは、燃料極7の厚み方向において燃料ガス流路16が均等に配置されている。例えば、燃料極7の厚み方向のほぼ中央に少なくとも1本の燃料ガス流路16の中心部分が配置されている形態であってもよいし、同厚み方向に沿って均等に2本以上の燃料ガス流路16が配置されている形態であってもよい。
燃料ガス流路16の開口部の大きさは、特に限定しない。燃料極7の厚みによるが、15μm以上150μm以下の開口幅を有することが好ましい。ここで開口幅とは、燃料極7の厚み方向又は面方向に沿う燃料ガス流路16の最大開口寸法を意味するものとする。開口幅が上記範囲以内であると、小さい圧力損失で燃料ガスをガス流路に導入することができるとともに、スタック構造体の共焼結時において燃料ガス流路を形成しやすい。燃料ガス流路の開口幅は、好ましくは100μm以下である。より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは70μm以下であり、一層好ましくは60μm以下である。また、燃料ガス流路16の厚み方向の開口幅は、燃料極7の厚みに対して15%以上85%以下であることが好ましい。この範囲であると、燃料ガス流路16に流れた燃料ガスを燃料極7内に効率的に分配でき、発電特性の向上に効果的に寄与できる。
燃料ガス流路16の開口形状は、特に限定しない。略円形、楕円形、方形状、不定形状等が挙げられるが、好ましくは、略円形状である。略円形状であると、燃料ガス流路16から燃料極7へのガスの拡散方向が等方的であり均一な拡散が可能だからである。
燃料ガス流路16は、燃料極7において意図した方向性で燃料ガスを供給可能に形成されている。すなわち、燃料極7は、1又は2以上の燃料ガス流路16について、1種又は2種以上のパターンを組み合わせて備えることができる。パターンは、1又は2以上の燃料ガス流路16の燃料極7の面方向に沿う2次元の配置形態であってもよく、面方向及び厚み方向に渡る三次元の配置形態であってもよい。
燃料ガス流路16のパターンは、少なくとも一つの屈曲部位を有することが好ましい。こうしたパターンによれば、より燃料ガスの供給をより高い設計自由度で実現できる。屈曲部位の屈曲又は湾曲程度は特に問わない。鈍角から鋭角、丸みを帯びていてもよい。さらに、パターンは、少なくとも2つの屈曲部位を有していてもよい。
パターンの例としては、例えば、図1に示すストレート状のほか、コの字状、ジグザグ状、放射状、螺旋状、ネットワーク(格子)状等が挙げられる。
(燃料極層におけるシール部)
燃料極層6におけるシール部としては、公知のものを適宜選択して使用できるほか、例えば、図1に示すような、燃料極層6が、燃料極7とともにシール部10aを備える形態を採ることもできる。シール部10aは、燃料極7の周縁部に一体化されて、全体として燃料極層6を構成することができる。シール部10aは、少なくとも空気ガス及び燃料ガスに対して、SOFCにおいて要求される程度の気密性を発揮できる程度の非多孔質に形成されており、燃料極層6の燃料極7がその対極である空気極9に供給される空気ガスへ暴露されるのを回避し、燃料ガス及び空気ガスのそれぞれ独立した流通形態を確保できるように形成されている。したがって、燃料極7の周縁部のいずれの箇所に形成されるかは、燃料ガス流路16や空気ガス流路18のパターン及びこれらの二つのガス流路16、18のスタック構造体20における配置形態に依存している。
シール部10aは、少なくとも熱膨張収縮特性に関してセパレータ14又は固体電解質4と均等に形成されている。こうすることで、セパレータ14で単セル2間を分離するときや燃料極層6で単セル2を構成するとき、積層されるべき材料との熱膨張収縮特性の相違を回避して、一体性及び耐熱衝撃性に優れるスタック構造体20を得ることができる。なお、熱膨張収縮特性とは、熱膨張係数を少なくとも包含するものである。また、熱膨張収縮特性に関し均等であるとは、SOFCの作製及び運転にあたってSOFCに付与される温度範囲において、セパレータ14又は固体電解質4と同一又はスタック構造体20の一体性を大きく阻害しない範囲である。なお、本発明者らの実験によれば、スタック構造体20の一体性を大きく阻害しない程度に相違する範囲とは、セパレータ14又は固体電解質4の熱膨張係数に対して0.85倍以上から1.18倍以下程度であることがわかっている。
シール部10aは、好ましくはセパレータ14又は固体電解質4と同一の組成を有している。これらのいずれかと同一の組成であれば、いずれかと一体化されるとき、良好に一体化され、スタック構造体20の耐熱衝撃性を向上させるほか、機械的強度を向上させることができる。シール部10aが、セパレータ14又は固体電解質4と同一組成であるとき、こうしたシール部10aは、セパレータ14又は固体電解質4の一部を含んでいる、あるいは当該一部からなるということができる。すなわち、セパレータ14又は固体電解質4が燃料極層6の燃料極7以外の部分に及んだ部分によってシール部10aが構成されているといえる。
(空気極層)
空気極層8は、その少なくとも一部に多孔質性の空気極9を含んでいる。空気極9を構成する空気極材料としては、特に限定しないで公知の固体酸化物形燃料電池において空気極材料として用いられているものを用いることができる。例えば、ペロブスカイト型構造等を有するCo,Fe,Ni,Cr又はMnなどからなる金属酸化物を用いることができる。具体的には(Sm,Sr)CoO3,(La,Sr)MnO3,(La,Sr)CoO3,(La,Sr)(Fe,Co)O3,(La,Sr)(Fe,Co,Ni)O3などの酸化物が挙げられ、好ましくは、(La,Sr)MnO3である。上述したセラミックス材料は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
空気極層8の熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、8×10-6-1以上〜15×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、固体電解質との界面ではく離がおきにくいからである。スタック構造体の残留応力を考慮すると、より好ましくは、10×10-6-1以上12×10-6-1以下である。
空気極層8の厚みは特に限定されないが、1μm以上200μm以下とすることができる。この範囲であると、単セル2を構成し、さらにセパレータ14とともにスタック構造体20を構成するとき、適切な機械的強度と発電特性を得ることができる。より好ましくは、1μm以上150μm以下とすることができる。さらに好ましくは、1μm以上100μm以下であり、一層好ましくは5μm以上40μm以下であり、より一層好ましくは5μm以上20μm以下である。
(空気ガス流路)
図1に示すように、空気極9は、空気ガス流路18を1又は複数備えることができる。空気ガス流路18については、空気極9において空気ガスを流通させる点をのぞき、燃料極9における燃料ガス流路16と同様の実施形態を適用することができる。なお、空気ガス流路18は、燃料ガス流路16と同様のパターンを有していなくてもよく、異なるパターンを有していてもよい。
(空気極層におけるシール部)
空気極層9におけるシール部としては、公知のものを適宜選択して使用できるほか、例えば、図1に示すような、空気極層8が、空気極9とともにシール部10bを備える形態を採ることもできる。シール部10bは、空気極層8の厚みの範囲内においてシール部10bを有している。シール部10bについては、シール部10bが空気極9の燃料ガスへの暴露を防止する点以外は、シール部10aと同様の構成を採ることができる。すなわち、既に説明したシール部10aの非多孔質性、空気極層8及び熱膨張係数に関しての各種態様をそのまま適用できる。
(セパレータ)
スタック構造体20においては、複数の単セル2がセパレータ14で互いに分離された状態で積層されている。セパレータ14は、固体電解質4、燃料極層6及び空気極層8と同様にして積層可能な平板状であることが好ましい。セパレータ14の材料としては、SOFCのセパレータとして公知の各種導電性材料を用いることができる。例えば、ステンレス系の金属材料のほか、ランタンクロマイト系のセラミックス材料を使用することができる。
セパレータ14が比較的低温で焼結するセラミックス材料であることが好ましい。こうしたセラミックス材料としては、焼結性を向上させるために、例えば、ランタンクロム系酸化物(LaCrO3)、ランタンストロンチウムクロム系酸化物(La(1-x)SrxCrO3,0<x≦0.5)などのランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物,又はこうしたランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物と希土類元素を固溶させたジルコニアとを含むセラミックスを用いることが好ましい。希土類固溶ジルコニア(一般式(1−x)ZrO2・xY23、式中Yは希土類元素を表し、0.02≦x≦0.20である。)を含んで焼成することで、従来に比べて低温でランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物を緻密に焼結できる。この結果、セル構成要素を共焼結可能な1400℃以下程度の温度で、セパレータを緻密化することができる。
セパレータ14の熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、8×10-6-1以上〜12×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、空気極層あるいは燃料極層とのはく離を抑えることができるからである。スタック構造体の残留応力を考慮すると、より好ましくは、9.5×10-6-1以上11.5×10-6-1以下である。
セパレータ14の厚みは特に限定されないが、1μm以上200μm以下とすることができる。この範囲であると、単セル2間を分離するように積層してスタック構造体20を構成するとき、適切な機械的強度と発電特性を得ることができる。好ましくは10μm以上50μm以下であり、より好ましくは10μm以上40μm以下である。
以上の固体電解質4、燃料極層6及び空気極層8の厚みは、それぞれ、5μm以上40μm以下、5μm以上150μm以下及び5μm以上150μm以下であることが好ましい。また、セパレータ14の厚みが5μm以上120μm以下であることが好ましい。これらの要素がこの範囲の厚みであると、これらの焼成時及び使用時における熱膨張収縮特性の相違を調整することに大きく制限されないでこれらを一体化し、良好なガス流路を備える単セルを形成できる。より好ましくは、燃料極層6及び空気極層8の厚みが5μm以上120μm以下である。さらに好ましくは、5μm以上100μm以下である。
本発明の積層型SOFCは、以上説明した各種形態のスタック構造体により構成できる。例えば、構築したスタック構造体に対して、当業者に公知の適切な集電のための要素を付与することで積層型SOFCとして構成することができる。
スタック構造体20に含まれる積層により形成する単セル2の数は特に限定されない。必要な機械的強度が発現されるように積層されることが好ましい。
(SOFC)
本発明のSOFCは、本発明のスタック構造体を備えることができる。本発明のスタック構造体に対して、適宜必要な部材、すなわち、スタック構造体への燃料ガス及び空気ガスの供給源からのガス供給系、集電部材やケーシング等を備えることでSOFCを構築できる。
(SOFCシステム)
本発明のSOFCシステムは、本発明のSOFCを備えることができる。SOFCは、単体であってもよいが、通常、意図した電力を出力するように、SOFCを複数組み合わせたモジュールを1個又は複数個を備えている。SOFCシステムは、さらに、燃料ガス改質装置、熱交換器及びタービン等、公知のSOFCシステムの要素を備えることができる。
(SOFC用のスタック構造体の製造方法)
本発明のSOFC用スタック構造体の製造方法は、スタック構造体の前駆体である積層体を準備する積層工程と、この積層体を熱処理する工程と、を備えることができる。図1に示すスタック構造体20の製造工程の一例を記載している。
(積層工程)
積層工程は、(1)固体電解質材料を含む固体電解質用シート、(2)セパレータ材料を含むセパレータ用シート、(3)燃料極材料を含む電極材料帯と、少なくとも熱膨張収縮特性に関して前記固体電解質又は前記セパレータと均等な非多孔質性のシール部を形成するためのシール材料帯と、を有する燃料極用シート、及び(4)空気極材料を含む電極材料帯と、少なくとも熱膨張収縮特性に関して前記固体電解質又は前記セパレータと均等な非多孔質性のシール部を形成するためのシール材料帯と、を有する空気極用シートを、単セルの積層体を構成するように積層して積層体を準備する工程である。なお、これらのシートは、いずれも積層後の加熱処理により意図したセラミックスとなるような未焼成セラミックスシートである。
セパレータ用又は固体電解質用シートは、既に説明したセパレータ材料又は固体電解質材料を常法に従ってシート化することにより得ることができる。このようなシートは、例えば、セパレータ材料を主成分として、さらにバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えたスラリーを、ナイフコート、ドクターブレードなどの塗工装置を用いたテープキャスト法などのキャスティングによるシート成形法を用いて得ることができる。得られたシートを、常法に従い、乾燥後、必要に応じて加熱処理することで未焼成のセラミックスグリーンシートを得ることができる。
セパレータ材料は、ランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物と希土類元素固溶ジルコニアとを含むセラミックス粉末を用いることが好ましい。希土類元素安定化ジルコニアを含むことで、1400℃以下程度の焼成温度でも、ランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物を緻密に焼結させることができ、セル構成要素との共焼結が可能となる。また、高い導電率も維持できる。この材料において、希土類固溶ジルコニアは、ランタン−クロム系ペロブスカイト型酸化物セラミックスの質量に対して0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.05質量%未満であると、焼結温度低下効果が十分得られにくく、10質量%を超えても導電性が低下するおそれが生じるからである。
燃料極用シート及び空気極用シートは、それぞれ電極材料帯とシール材料帯とを備えており、電極材料帯には、ガス流路となる可撓性の消失性フィラメントを所定のパターンで含んでいる。
消失性フィラメントとしては、モノあるいはマルチフィラメントを用いることができる。なお、フィラメントには、紡績糸を包含していない。本発明では、消失性材料の形態を、フィラメントとすることで、ガス流路の開口幅が小さくても開口形状をガス流路の長さにわたっておおよそ維持でき、ボトルネックの発生を回避又は抑制できる。
消失性フィラメントは、空気中で加熱した際、熱分解により消失しやすい材料であることが好ましい。例えば、熱分解温度が、200℃以上450℃以下であることが好ましい。この範囲内にあると、セル構造を破壊するあるいは開口が大きく収縮することなく、ガス流路を構築できるからである。より好ましくは200℃以上420℃以下である。なお、熱分解温度は、空気中で1分あたりの昇温速度を10℃としたときに重量変化が最も大きい温度とする。また、加熱に際して、明確な融点を持たないで熱分解するものであることが好ましい。加熱により溶融しその後熱分解に至る場合、溶融物が電極材料に浸透し、そこで熱分解すると、電極構造が破壊される場合があるからである。
こうした消失性フィラメントの材料としては、天然繊維あるいは天然繊維由来材料が挙げられる。天然由来材料は、熱安定性が低い傾向があるからである。典型的には、綿、麻、レーヨンなどの各種の植物由来材料、動物の器官、毛(ウール)などの動物の一部、絹などの動物の生産物、コラーゲン、ケラチンなどの各種の動物由来材料が挙げられる。なお、人工的に合成されたものであってもよい。好ましくは、セルロース系材料又はタンパク質系材料である。より具体的には、綿、レーヨン及び絹であり、さらに好ましくは絹である。絹は、開口形状に優れたガス流路を形成できる。
消失性フィラメントの直径は特に限定しないで、形成しようとするガス流路の大きさ等に応じて適宜選択することができる。例えば、15μm以上180μm以下とすることができる。この範囲であるとセルを破壊することなくガス流路を形成できるからである。また、消失性フィラメントの断面形状は、ガス流路の開口形状にもよるが、略円形状であることが好ましい。
消失性フィラメントは可撓性である。消失性フィラメントが可撓性であると、屈曲部を有するパターンを容易に形成できる。消失性フィラメントが、既に述べた材料や直径等を有することで、通常、可撓性を有することとなる。
電極材料帯に可撓性の消失性フィラメントを所定パターンで配設する方法は特に限定されない。例えば、塗工すべきスラリーの厚みの一部(例えば、約半分)に相当するスラリーを塗工した後、当該スラリー表面に消失性フィラメントを所定パターンで配置し、その後、残余のスラリーを塗工してもよい。配置する消失性フィラメントは、予め、所定パターンに形成されていてもよいし、2以上の消失性フィラメントが組み合わせられていてもよい(適宜、消失性フィラメントが接着又は固定手段で固定されていてもよい。)。消失性フィラメントは、所定パターンで消失性フィラメントをその券回体から繰り出すことのできる装置を用いて配置されてもよい。例えば、排出されたスラリー上に2次元的に移動可能なプロッターにおいて、プロット先に移動に伴って消失性フィラメントが繰り出されるようなフィラメントのプロッターを用いてもよい。
(塗工装置)
また、スラリーの排出とともに、所定高さに消失性フィラメントが繰り出されて配置されるように構成した塗工装置を用いて燃料極材料帯用スラリー又は空気極材料帯用スラリーをキャスティングしてもよい。このような塗工装置の概略を図3に示す。図3に示す装置30では、スラリー排出ユニット32の近傍に消失性フィラメントを繰り出し可能に保持するフィラメント保持ユニット34を有している。このフィラメント保持ユニット34は、消失性フィラメントを巻回状態で保持して繰り出し可能となっている消失性フィラメント保持部36と消失性フィラメントの繰り出し方向を案内するガイド38とを備えている。
スラリー排出ユニット32は、スラリー排出口を有するスラリー貯留部32aと、排出したスラリーの厚みを規制するブレード部32bとを備えている。図3に示す例では、ブレード32bを2枚備え、スラリー貯留部32aを一つ備えているが、スラリー貯留部32aやブレード32bの個数や形態は特に限定されるものではなく、必要に応じて備えられる。消失性フィラメント保持部36は、消失性フィラメントの券回体を回転可能に支持する支持部材を有し、券回体のフィラメントの自由端がキャスティングプレート40などの塗工基板の一部に固定された状態で当該固定部位から離れるように塗工装置30が相対移動すると、その移動距離に応じて消失性フィラメントがその券回体から繰り出されるようになっている。ガイド38は、排出されたスラリーに対して適切な位置(高さ及び幅)にフィラメントを案内するように構成されている。具体的には、券回体からスラリー排出口近傍に至る範囲において、連続的にあるいは部分的に、スリーブ状、レール状、リング状等に設けられている。
こうした塗工装置30によれば、排出されたスラリーの表面又は内部に消失性フィラメントが配設される。消失性フィラメントが排出されたスラリー表面に繰り出される場合、電極層内にガス流路を形成するには、さらにスラリーを塗工する。消失性フィラメントが排出されたスラリー内部に繰り出される場合、特にスラリーを追加で塗工しなくても、電極層内にガス流路が形成されうる。
なお、燃料極材料帯用スラリー及び空気極材料帯用のスラリーは、既に説明した電極材料を常法に従いスラリー化することで得ることができる。なお、燃料極材料帯用スラリー及び空気極材料帯用のスラリーには必要に応じて発泡材料等を添加することができる。また、シール材料帯用には、セパレータ材料又は固体電解質材料を用いて適当なスラリーとし、それを塗工に用いることができる。
電極材料帯とシール材料帯との配置は、本発明のSOFCについて既に説明したシール部の設計思想により決定することができる。また、このような異なる帯(バンド)を同一層内に有するシートは、ドクターブレードなどの塗工装置を使用してテープキャスティング法などのキャスティングによるシート成形法により得ることができる。例えば、キャスティング方向に沿って異なる組成のスラリーが同時に排出されかつキャスティング後に異種のスラリー帯が混合することなく一体化されるようにして塗工するようにする。このとき、異なる帯を形成するためのスラリーの流動性を調整することでこのような異種組成帯の一体塗工が可能となる。こうして得られた塗工物を、常法に従い、乾燥し、必要に応じて加熱処理することで燃料極層用シート及び空気極用シートを得ることができる。
こうして得られた各種のシートを用いて、意図したスタック構造となるように積層する。積層体を得るには、適当な温度(例えば、40℃〜160℃程度)に加熱するとともに加圧して熱圧着することが好ましい。積層工程における積層順序は、スタック構造体を得られる範囲で任意に行うことができ、特に限定されない。例えば、順次積層してもよいし、部分的な積層体を作製した上で、これらの積層体同士を積層するようにしてもよい。
(熱処理工程)
熱処理工程は、積層工程で得られたスタック構造体の前駆体としての積層体を熱処理する工程である。熱処理は、積層体を構成するセラミックス材料が少なくとも一部が焼結されて緻密質又は多孔質の所望の焼成体を得られるように実施する。好ましくは、セル構成要素及びセパレータの全てを共焼結させる。例えば、1250℃以上1550℃以下の温度で加熱処理することができ、好ましくは1300℃以上1500℃以下である。より好ましくは1300℃以上1400℃以下である。なお、空気中で焼成することができる。
熱処置工程では、昇温工程を含んで実施できる。昇温工程を実施するとき、500℃までの昇温工程を、50℃/時間以下の昇温速度で実施することが好ましい。50℃/時間を超えると、消失性フィラメントの種類によっては(例えば、絹)、周囲の電極材料が速やかに浸透してしまって、流路形状が維持しにくくなるからである。より好ましくは、40℃/時間であり、さらに好ましくは30℃/時間である。500℃を超えると、消失性フィラメントはほどんど消失し流路が形成されているため、500℃を超えれば、昇温速度を50℃/時間を超えて昇温することができる。
この熱処理によって積層体を構成するシートが一体化され本発明のスタック構造体を得ることができる。すなわち、単セルがセパレータで分離されるとともに、単セルの燃料極層又は空気極層には、シール部として機能する部分が予め一体化された状態で備えるスタック構造体を一挙に得ることができる。
また、この熱処理によって、燃料極用シート及び空気極用シート内の消失性フィラメントが熱処理工程において分解消失するため、電極内を貫通するガス流路を容易に形成できる。フィラメントが消失して得られるため、開口形状が安定したガス流通性に優れるガス流路を形成できる。また、薄膜である電極層内においても電極構造を破壊することなくガス流路を形成できる。
本発明のSOFC用スタック構造体の製造方法は、スタック構造体にSOFCとしての構成要素を付加してSOFCを構築する工程を追加して備えることで、SOFCの製造方法としても実施できる。また、本発明のSOFCスタック構造体の製造方法において作成した燃料極用シート及び空気極用シートは、燃料極材料又は空気極材料を含む電極材料帯と、前記SOFCにおいて非多孔質性のシール部を形成するためのシール材料帯と、を備え、前記電極材料帯に、可撓性の消失性フィラメントを所定のパターンで有するシートとしても実施できる。
なお、以上の説明では、シール部を電極層内に備える実施形態について説明したが、本発明の製造方法はこれに限定するものではなく、燃料極用シート及び空気極用シートをシール材料帯を含むことなく作製して積層体を得ることもできる。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
以下、発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定するものではない。
それぞれ構成部材の組成として,燃料極として,Ni/8YSZのサーメット(Ni:8YSZ = 80:20(モル比)),空気極はLa0.8Sr0.2MnO3(LSM),電解質として8YSZ,セパレータとしてLa0.85Sr0.15CrO3(LSCr)を用いて、それぞれのスラリーを調製した。燃料極用のスラリーの調製にあたっては、メタクリル酸メチルポリマーの造孔材のほか、エタノール、アリルエーテルコポリマー、及びポリビニルブチラールを用いた。空気極用のスラリーの調製にあたっては、メタクリル酸メチルポリマーの造孔材のほか、エタノール、アリルエーテルコポリマー及びポリビニルブチラールを用いた。固体電解質用のスラリーの調製にあたっては、エタノール、アリルエーテルコポリマー、及びポリビニルブチラールを用いた。セパレータ用のスラリーの調製にあたっては、エタノール、アリルエーテルコポリマー及びポリビニルブチラールを用いた。
各スラリーを、図3に示す塗工装置に供給して、セラミックスグリーンシートを作製した。燃料極用シート及び空気極用シートを作製するにあたっては、消失性フィラメント保持部に保持された直径約55μmの絹製フィラメントを、シート厚みのほぼ中央にキャスティング方向に直線状に一定間隔で複数本埋設しながらスラリーをキャスティングするようにした。また、セパレータ用シート及び固体電解質用シートの作製にあたっては、フィラメントを埋設しないでシートを作製した。
こうして得られた各電極用シート、固体電解質用シート及びセパレータ用シートを積層して、最終的に5セルを積層して、40℃〜100℃、10分間加熱しつつ加圧することで積層体(スタック構造体前駆体)を構築した。この積層体を、空気中で、200℃/時間の速度で200℃まで昇温し、5時間200℃で保持する。さらに40℃/時間の速度で500℃まで昇温し、5時間保持する。さらに、200℃/時間の速度で1350〜1400℃まで昇温し、5〜20時間焼成して、スタック構造体を作製した。焼成後のスタック構造体における燃料極、空気極、固体電解質及びセパレータの厚みは、それぞれ約80μm、約90μm、約20μm及び約30μmであった。得られたスタック構造体の側面を図4に示す。
図4に示すように、得られたスタック構造体は、そりもなく一体化されており、層間剥離もなく極めて高い一体性の構造体を得ることができた。また、燃料極の厚みのほぼ中央には、直径約50μmの直行したガス流路(貫通孔)の形成を確認できた。なお、空気極においても同様のガス流路(貫通孔)を確認できた。
以上の結果から、膜厚が90μm程度の電極においても、消失性フィラメントを用いることで所望の直径で膜厚の範囲内で貫通孔を意図したパターンで形成できることを確認できた。
本実施例では、実施例1と同様の操作により、消失性フィラメントの種類について評価した。本実施例では、絹製フィラメントに替えて直径60μmのポリアミド繊維フィラメントを用いた以外は実施例1と同様に操作して積層体を準備し、さらに、室温から昇温して、消失性フィラメントの変化を観察しつつ、最終的にスタック構造体を得た。室温及び270℃における積層体側面を図5に示す。
図5に示すように、ポリアミド繊維を用いた場合、270℃に至るまでに、ポリアミド繊維が軟化溶融して本来的に存在していた電極層を超えて浸透した。さらに、浸透した部位において熱分解を起こしており、その結果、スタック構造を破壊していることがわかった。従って,消失性フィラメントの材料は、ナイロンに代表されるポリアミド繊維のように軟化溶融し、その後熱分解する材料よりも、絹や綿(セルロース)などなどの天然繊維のように低熱安定性で、明確な融点がなく熱分解する材料であることが好ましいことがわかった。
本実施例では、実施例1と同様に操作して熱処理条件について検討した。具体的には、500℃までの昇温条件。絹製フィラメントが完全に消失する500℃までの昇温速度を異ならせて、昇温速度のガス流路形成に対する影響を調べた。結果を図6に示す。
図6に示すように、消失性フィラメントが燃焼するまでの昇温速度によって,得られるガス流路の形態が大きく異なることがわかった。また、特に消失性フィラメントが燃焼する前の昇温速度が極めて重要であることがわかった。すなわち、100℃/時間以上になると、流路を形成できないことがわかった。したがって、特に適当なガス流通性を示すガス流路を構築するためには、消失性フィラメントの消失温度(熱分解温度)に至るまでの昇温工程において遅く、より具体的には、少なくとも昇温速度を100℃/時間未満に設定するようにし、早期あるいは急激な消失を抑制することが重要であることがわかった。本実施例によれば、昇温速度は、50℃/時間以下であることが好ましく、より好ましくは40℃/時間であり、さらに30℃/時間以下、さらにまた25℃/時間であることがわかった。
2 単セル、4 固体電解質、6 燃料極層、7 燃料極、8 空気極層、9 空気極、10a、10b シール部、14 セパレータ、16 燃料ガス流路、18 空気ガス流路
20 スタック構造体、30 塗工装置、32 スラリー排出ユニット、34 消失性フィラメント保持ユニット、36 消失性フィラメント保持部、38 ガイド、40 キャスティングプレート

Claims (13)

  1. 固体電解質を挟んで対向状に配置されるそれぞれ多孔質性の燃料極層と空気極層とを含んで積層される複数個の単セルと、
    積層される前記単セル間に介在されて前記単セル間を分離するセパレータと、
    を備え、
    前記燃料極層内及び/又は前記空気極層内に15μm以上150μm以下の開口幅を有して所定パターンで貫通する複数本のガス流通路を備える、固体酸化物形燃料電池用スタック構造体。
  2. 前記所定パターンは、少なくとも一つの屈曲部位を有する、請求項1に記載のスタック構造体。
  3. 前記所定パターンは、少なくとも2つの屈曲部位を有する、請求項2に記載のスタック構造体。
  4. 前記ガス流通路の開口幅は、100μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のスタック構造体。
  5. 前記ガス流通路の開口形状は、略円形状である、請求項1〜4のいずれかに記載のスタック構造体。
  6. 前記単セルの前記固体電解質、前記燃料極層及び前記空気極層の厚みは、それぞれ150μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のスタック構造体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体を備える、固体酸化物形燃料電池。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体を備える、固体酸化物形燃料電池システム。
  9. 固体電解質を挟んで対向状に配置される多孔質性の燃料極層と空気極層とを含む単セルと積層される前記単セル間をセパレータで分離する固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体の製造方法であって、
    固体電解質の材料である固体電解質材料を含む固体電解質用シート、セパレータの材料であるセパレータ材料を含むセパレータ用シート、燃料極材料を含む燃料極用シート、空気極材料を含む空気極用シートを準備し、これらを積層して前記固体酸化物形燃料電池の前駆体である積層体を準備する積層工程と、
    前記積層体を熱処理する熱処理工程と、
    を備え、
    前記積層工程は、前記燃料極用シート及び前記空気極用シートとして、それぞれ、燃料ガス及びは空気ガスのガス流路のための所定のパターンを形成するように、可撓性の消失性フィラメントが配設された燃料極用シート及び空気極用シートを準備することを含む、製造方法。
  10. 前記消失性フィラメントは、セルロース系又はタンパク質系のフィラメントである、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記消失性フィラメントは、絹製フィラメントである、請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 前記(b)工程は、前記スラリーをキャスティングしつつキャスティング方向に沿って前記消失性フィラメントを配設することを含む、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 請求項1〜6のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用のスタック構造体用シートの塗工装置であって、
    キャスティングプレートに対して相対移動可能に配設可能なスラリー排出ユニットと、
    前記スラリー排出ユニットの前記相対移動に伴って前記キャスティングプレート上に可撓性フィラメントを繰り出し可能に保持するフィラメント保持ユニットと、
    を備える、装置。
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