JP2012251265A - 消臭性セルロース繊維織編物およびその製造方法 - Google Patents

消臭性セルロース繊維織編物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
布帛の風合いを損ねることがなく、アンモニアのような塩基性臭気や、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸系の臭気の両方において、家庭洗濯での耐久性が高い消臭性を持つセルロース繊維織編物を提供する。
【解決手段】
カルボン酸系ビニル系モノマーを15〜45%のグラフト率でグラフト重合したセルロース繊維を5〜50重量%含有し、かつアルカリ金属及び/又は二価金属を300〜7000mg/kg含有し、更に赤外線分光スペクトルにおけるカルボン酸由来の吸収ピークの吸光度Aに対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの吸光度Bの比率(B/A)が0.01〜0.3であることを特徴とする消臭性セルロース繊維織編物。
【選択図】なし

Description

本発明は、肌着、寝具、作業服、ユニフォーム、ドレスシャツ、ブラウス、スポーツシャツ、靴下、手袋等の衣料品や生活資材に用いられる汗消臭性に優れたセルロース繊維織編物およびその製造方法に関するものである。
セルロース繊維を改質するためにセルロース繊維に親水性ビニル系モノマーをグラフト重合することが提案されている(特許文献1参照)。
また、セルロース繊維に消臭性を付与する試みも従来から各種提案されている。例えば、親水性ビニル系モノマー(カルボン酸系ビニル化合物)がグラフト重合されたセルロース繊維を含有し、光触媒機能を有する金属化合物を付与した消臭性セルロース系繊維構造物が提案されている(特許文献2参照)。
この繊維構造物は、カルボキシル基とカルボン酸のアルカリ金属塩基を適度に(生地pHとして中性域に)バランスさせることにより、アンモニアのような塩基性低分子化合物と、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸の両臭気物質に対して同時に優れた消臭性を示すが、アルカリ性の家庭用洗剤で洗濯を繰返すと、このバランスが崩れて塩基性低分子化合物に対する消臭性が低下する場合があった。
また、特許文献3では、硫化水素やメチルメルカプタンなどのチオール基を含む化合物に対する消臭性を付与する方法として、酸基含有ビニルモノマーのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩と、酸基含有ビニルモノマーの亜鉛塩とがモル比として5:95〜95:5の割合でグラフトされているグラフト化繊維が提案されている。しかし、この方法を採用しても、酸と塩基性低分子化合物の両方に対して洗濯耐久性のある消臭性能を得るのは難しかった。
特開平6−184941号公報 特開2001−172868号公報 特開2004−292956号公報
本発明は、かかる従来技術の問題を克服するためになされたものであり、布帛の風合いを損ねることがなく、アンモニアのような塩基性臭気や、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸系の臭気の両方において、具体的には汗臭において、家庭洗濯での耐久性が高い消臭性を持つセルロース繊維織編物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来技術のように、洗濯初期に酸及び塩基性低分子化合物の両方に優れた消臭性を得られたとしても、洗濯の繰返しにより、酸及び塩基性の臭気に対する消臭性能のバランスが崩れて、一方の臭気成分の消臭性が低下してしまうという問題を解決するために鋭意検討した結果、セルロース繊維に対してカルボン酸系ビニル系モノマーを高い比率でグラフト重合した上で、カルボン酸塩としてアルカリ金属及び/又は特定の二価金属を好適な範囲で繊維に含有させることによって、家庭洗濯を繰返しても、酸・塩基性臭気の両方の消臭性能を高レベルで維持できることを見いだし、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)の構成を有するものである。
(1)カルボン酸系ビニル系モノマーを15〜45%のグラフト率でグラフト重合したセルロース繊維を5〜50重量%含有し、かつアルカリ金属及び/又は二価金属を300〜7000mg/kg含有し、更に赤外線分光スペクトルにおけるカルボン酸由来の吸収ピークの吸光度Aに対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの吸光度Bの比率(B/A)が0.01〜0.3であることを特徴とする消臭性セルロース繊維織編物。
(2)アルカリ金属としてナトリウムを300〜2000mg/kg含有することを特徴とする(1)に記載の消臭性セルロース繊維織編物。
(3)二価金属として亜鉛を3000〜6500mg/kg含有することを特徴とする(1)に記載の消臭性セルロース繊維織編物。
(4)洗濯30回後の酢酸の消臭性が85%以上であり、イソ吉草酸の消臭性が90%以上であり、アンモニアの消臭性が70%以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の消臭性セルロース繊維織編物。
(5)ワタ状態のセルロース繊維にカルボン酸系ビニル系モノマーを15〜45%のグラフト率でグラフト重合させる工程、及びグラフト重合された繊維をアルカリ金属塩で中和し、さらに所望により二価金属塩の水溶液に含浸して、グラフト重合したカルボン酸系ビニル化合物のカルボン酸の水素の少なくとも一部をアルカリ金属及び/又は二価金属に置換し、織編物に含まれるアルカリ金属及び/又は二価金属の含有量を3000〜7000mg/kgに調整する工程を含むことを特徴とする消臭性セルロース繊維織編物の製造方法。
本発明によれば、汗消臭性(即ち、酸・塩基性臭気の両方の消臭性)に優れ、かつ家庭洗濯を繰返しても汗臭に対する消臭バランスが崩れないといった洗濯耐久性にも優れた消臭性セルロース繊維織編物を提供することができる。
以下、本発明の消臭性セルロース繊維織編物について具体的に説明する。
本発明の織編物は、カルボン酸系ビニル系モノマーを15〜40%の高いグラフト率でグラフト重合したセルロース繊維を5〜50重量%含有するものである。
本発明において使用されるセルロース繊維は、セルロース骨格の高分子構造を持つ繊維であり、例えば木綿、麻等の天然セルロース繊維、リヨセル、ビスコースレーヨン、ポリノジック、ハイウェットモジュラス等の再生セルロース(溶剤紡糸セルロースを含む)、銅アンモニアレーヨン、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維が挙げられる。このうち特に好ましいのは再生セルロースや木綿である。本発明の織編物においては、グラフト重合された繊維以外に、グラフト重合されていない通常のセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、半合成繊維、シルク、羊毛等の天然繊維などを混用することができる。
セルロース繊維にグラフト重合されるカルボン酸系ビニル系モノマーは、分子構造内に重合性のビニル基を有し、且つカルボン酸および/またはその塩を有するモノマーであり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸およびこれらの金属塩等が挙げられる。グラフト重合性の点でメタクリル酸およびアクリル酸が好ましい。また、これらのモノマーは単独もしくは2種以上を使用しても良い。また、カルボン酸以外のビニル化合物を含んでも構わない。
セルロース繊維におけるカルボン酸系ビニル系モノマーのグラフト率は15〜45%の高率であることが必要である。グラフト率の下限は17%であることが好ましく、18%であることがより好ましい。また、グラフト率の上限は40%であることが好ましく、35%であることがより好ましく、30%であることがさらに好ましい。グラフト率を上記範囲とすることによって、洗濯耐久性に優れた消臭効果を示すことができる。グラフト率が15%未満では、未洗濯で優れた消臭効果が得られたとしても、繰返し洗濯により酸、塩基系臭気の両方の臭気に対する消臭バランスが崩れてしまい、汗消臭に対する十分な性能が得られにくい。また、45%を超えると、綿の硬化や強伸度の低下が起こり、後の紡績工程の工程通過が悪くなる。なお、このグラフト率は下記式で求めることができる。
グラフト率(%)=(重合したグラフトポリマーの重量)/(重合前のセルロース繊維の重量)×100(但し、この重量は絶乾時重量である。)
グラフト重合されたセルロース繊維は、その後、苛性ソーダや炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質を使って中和処理することによって、塩基性低分子化合物と低級脂肪酸の両臭気物質に対して、同時に優れた消臭効果を示すことができる。カルボン酸系ビニル系モノマーでグラフト重合されたセルロース繊維は、中和することによって、カルボン酸型[−COOH]およびアルカリ金属塩型([−COONa]や[−COOK]等)のように、酸型/金属塩型の両方の基を存在させることができ、これにより、アンモニアおよびアミン化合物のような塩基性臭気と、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸の両臭気物質に対して同時に高い消臭効果を得ることができる。
また、更に亜鉛塩のような二価金属塩をセルロース繊維に添加することにより、この酸型カルボキシル基及び又はアルカリ金属塩型カルボキシル基を二価の金属塩型のカルボキシル基に置換することができる。二価金属塩としては、例えば亜鉛塩や銅塩が好ましいが、処理したセルロース繊維の変色が少ない点で亜鉛塩がより好ましい。亜鉛塩としては、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等を用いることができ、水への溶解性や毒性の点から酢酸亜鉛が好ましい。
また、二価金属塩を添加する方法としては、吸尽加工、パディング加工、スプレー加工、浸漬加工等が挙げられるが、繊維内部まで付着させやすい吸尽加工が好ましい。吸尽加工は常温〜135℃の加工温度で実施することができる。加工温度は常温〜99℃が好ましく、常温〜60℃がより好ましい。吸尽加工は、所定の濃度に調整した金属塩水溶液に繊維を浸漬し、所定の温度および時間で処理することにより、二価金属イオンをカルボキシル基の水素イオン又はアルカリ金属イオンと置換させることによって行われる。二価金属塩で処理する工程は、グラフト重合処理をした後の工程であればワタ、糸、布帛のどの工程で行っても良いが、好ましくは布帛になった後に行うのがよく、より好ましくは染色後に行うのが良い。通常、染色後は、堅牢度を向上させるためにフィックス剤(FIX剤)で処理を行なうが、本発明者らが検討した結果、二価金属塩で処理すると堅牢度を向上させる効果があることがわかった。即ち、本発明の二価金属塩で処理した織編物はFIX剤の処理をしなくても良好な湿潤堅牢度を得ることができる。この理由は、二価金属塩が、隣接するカルボキシル基同士を電気的に強く引きつける効果を持つため、染料を繊維内部に閉じ込めて抜けにくくしているためである。
本発明の織編物においては、グラフト重合によって導入されたカルボキシル基の状態が極めて重要である。グラフト重合されてセルロース繊維に導入されたカルボキシル基は酸型([−COOH])と金属塩型([−COONa]や[−COOZn2+等)の状態で存在するが、本発明では、この酸型と金属塩型の存在比率を一定の範囲に制御することが必要である。
繊維中のカルボキシル基の酸型と金属塩型の存在比率は赤外線分光スペクトル(IRスペクトル)で測定することができる。IRスペクトルにおける1709cm−1付近に位置するピークの吸光度は、酸型のカルボキシル基([−COOH])に由来する吸収である。IRスペクトルにおける1545cm−1付近に位置するピークの吸光度は、金属塩型のカルボキシル基(即ち、カルボン酸[−COOH]が[−COONa]等のアルカリ金属塩になったとき)に由来する吸収である。前記カルボン酸/アルカリ金属塩のバランスの調整は、一般的な有機や無機の酸、アルカリを用いて、セルロース繊維を浸漬した水溶液の液pHを調整することによって行うことができる。このときに使用可能な酸としては、酢酸や蓚酸、塩酸等が挙げられ、アルカリとしては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
本発明の織編物のカルボン酸系ビニル系モノマーでグラフト重合したセルロース繊維では、IRスペクトルにおいて、酸型カルボキシル基に由来するピークの吸光度Aに対するカルボキシル基のアルカリ金属塩に由来するピークの吸光度Bの比率(B/A)は、0.01〜0.3の範囲にあることが必要である。より好ましくは0.03〜0.3、更に好ましくは0.05〜0.25である。この範囲であれば、汗臭に対して洗濯耐久性のある消臭効果を十分に得ることができる。前記吸光度比の適正な範囲からずれると、アンモニアおよびアミン化合物のような塩基性低分子化合物と、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸のどちらかに対する消臭効果が低下しやすい。なお、ワタ又は糸でグラフト重合されたセルロース繊維を用いた織編物は、通常の染色加工の工程で下晒、染色されることが多いが、この際に酸型カルボキシル基と金属塩型カルボキシル基の存在比率のバランスが崩れてしまうので、前述の酸又はアルカリで中和処理を行い、両者のバランスを戻すことが必要である。中和処理を終えたときの液pHは、好ましくは4〜10、より好ましくは5〜9、更に好ましくは6〜8に調整すれば良い。これにより、カルボキシル基の酸型と金属塩型の存在比率のバランス(吸光度の比率(B/A))を上記の範囲に制御することができる。こうして後加工を行い仕上げた後の生地pHは5.0〜9.0とする。好ましくは6.0〜8.0とする。この生地pH範囲が5未満の場合又は9を超える場合、酸又は塩基の消臭バランスが低下しやすい。
カルボン酸系ビニル系モノマーでグラフト重合された繊維の酸型カルボキシル基を金属塩型に置換するとき、金属塩がアルカリ金属の場合はセルロース繊維総重量に対して好ましくは100〜3000mg/kg、より好ましくは300〜2000mg/kg、更に好ましくは500〜1500mg/kgの範囲にするのがよい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられるが、ナトリウムが消臭性能の点で好ましく用いられる。また、カルボン酸系ビニル系モノマーでグラフト重合された繊維の酸型カルボキシル基及び/又はアルカリ金属塩型カルボキシル基を二価金属塩に置換する場合の二価金属は、セルロース繊維総重量に対して好ましくは1000〜7000mg/kg、より好ましくは3000〜6500mg/kgの範囲にするのがよい。なお、二価金属でカルボキシル基のアルカリ金属を置換した場合、繊維中のアルカリ金属塩は上記の範囲を下回っても構わない。二価金属としては、亜鉛、銅等が好ましく用いられる。特に、亜鉛を使用すると変色が少なく好ましい。ここで、セルロース繊維中のナトリウム、亜鉛等の金属含有量は、IPC発光法により求めることができる。
本発明の織編物においては、セルロース繊維のグラフト率と、導入したカルボキシル基の酸型/金属塩型の比率の二つの要件が非常に重要であるが、製品からグラフト加工セルロースのグラフト率を測定することは難しいため、グラフト加工製品(生地,糸,ワタ等)における特定金属の含有量と、酸型/金属塩型の比率の二つの指標を用いて、本発明で規定した範囲内にあるかを間接的に判断することができる。これにより、出来上がった製品においても品質確認を容易に行うことができる。
グラフト重合されたセルロース繊維は、例えばワタの状態でグラフト重合処理を行った場合、他の繊維と混紡、混繊等の方法で混用してから織編物に使用することができる。他の繊維としては、グラフト重合されていないセルロース繊維(即ち、未加工綿)や、前記例示したセルロース繊維以外の合成繊維、半合成繊維、天然繊維が挙げられる。
グラフト重合されたセルロース繊維の織編物における使用比率(混用率)は高くなるほど、塩基性低分子化合物や低級脂肪酸に対する消臭効果は大きくなるが、混用率が高すぎると風合いが硬くなり淡色化する傾向がある。これらのことを考慮すると、織編物における使用比率の下限は5重量%、好ましくは10重量%であり、また、上限は50重量%、好ましくは45重量%である。コストと性能のバランスから、使用比率は10〜45重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明の編織物は、基本的には組織に制限は無く、編地ではフライス組織や片袋組織、織物では平織りやサテン組織を一般的に用いることができる。
本発明の織編物の目付は80g/m以上が好ましく、より好ましくは110g/m以上、さらに好ましくは120g/m〜250g/mの範囲である。80g/m未満の場合、消臭性セルロース繊維の絶対重量が少なくなるため、高い消臭性能を十分に発揮できない可能性がある。また、250g/mより重い場合は、衣料用途としては重すぎて実用的ではない。
本発明の織編物は、グラフト重合されたセルロース繊維をその織編物の単位面積(m)あたり、好ましくは10〜200g/m、より好ましくは15〜150g/m、更に好ましくは20〜100g/m含む。上記範囲より少ないと十分な消臭性を得られない可能性があり、200g/mより多いと性能は十分であるが、コストが高くなりすぎたり、風合が硬くなったりしやすい。
次に、本発明の消臭性セルロース繊維織編物の製造方法について説明する。
本発明では、セルロース繊維をグラフト重合処理する方法として、ワタの状態でオーバーマイヤー染色機等を用いてグラフト重合処理を行う方法、糸としてカセやチーズの形態でグラフト重合処理を行う方法、更には織編物をビーム染色機を用いたり、スチーマを使って連続工程で処理する方法等が利用できるが、本発明ではワタの状態で処理する方法を好ましく使用できる。これは、他の繊維と混用することで工程通過性や消費性能を向上させやすく、品質の安定したものが得られやすいためである。
本発明の消臭性セルロース繊維織編物の製造方法として、例えばワタの状態でグラフト重合する場合は、セルロース繊維のワタにカルボン酸系ビニル系モノマーをグラフト重合させる工程、カルボン酸系ビニル系モノマーがグラフト重合されたセルロース繊維を用いて織編物を作製する工程、及びグラフト重合して導入されたカルボキシル基を中和処理する工程を含むものが挙げられる。この方法には更に亜鉛塩等の二価金属塩の水溶液で処理する工程を含んでもよい。
ワタの状態のセルロース繊維にカルボン酸系ビニル系モノマーをグラフト重合させる工程に用いる機械は特に限定されないが、オーバーマイヤー加工機等の加工浴中に浸漬して加熱処理することが好ましい。グラフト重合に先だって精練・漂白等を通して、セルロース繊維に含まれる夾雑物はあらかじめ除去しておくことが好ましい。加工浴には、グラフト率が15〜45%となるようにカルボン酸系ビニル系ポリマーを含有させておく。溶媒は特に限定されないが、水を用いることが好ましい。グラフト重合の処理条件は、通常50℃〜150℃で5分〜180分であり、好ましくは60℃〜120℃で30分〜120分である。加工雰囲気は窒素ガス雰囲気であることが好ましい。重合方法としては、熱エネルギー以外に、放射線、電子線、紫外線、マイクロウェーブ等の活性エネルギー線を利用する方法を採用することができる。
カルボン酸系ビニル系モノマーと共に使用される重合開始剤としては、過酸化水素と二価鉄塩などのレドックス系、有機過酸化物や過硫酸カリウムやアンモニウムなどの過酸化物、2,2−アゾビス塩酸塩などのアゾ系重合開始剤、硝酸二アンモニウムセリウムなどのセリウム塩などが使用できる。重合開始剤は、加工浴中に添加する方法や予め繊維に付与する方法等が採用できる。
前記したようにワタの状態でグラフト重合されたセルロース繊維は、他の繊維と混紡、混繊等で混用して使用することによって、風合い硬化や淡色化傾向が少なく、堅牢度の低下も極力抑えたセルロース繊維織編物が得られる。一方、織物、編物の状態でグラフト重合を実施しても構わないが、反応効率が悪くなったり、加工斑が目立ちやすくなるので、高いグラフト率を得ることが難しくなる。グラフト重合させた後、重合開始剤の失活処理と洗浄処理、油剤付与、乾燥処理などを必要に応じて実施することができる。
ワタの状態でグラフト重合されたセルロース繊維から織編物を作製する工程では、グラフト重合されたセルロース繊維は、未加工綿や前記例示した合成繊維、半合成繊維、天然繊維などの他の繊維と混紡、混繊等を行った後で織編物に使用する。紡績糸として、グラフト重合されたセルロース繊維と未加工綿および/または他の繊維とを混綿して、通常の方法で紡績糸にした上で使用することができる。前記紡績糸を単独あるいは他の繊維からなる紡績糸や長繊維と共に生地に用いることもできる。
本発明の消臭性セルロース繊維織編物は、上述の特定の消臭性セルロース繊維を用いたものであり、風合いと消臭性に優れ、かつ家庭洗濯を繰返しても汗臭に対する消臭バランスが崩れずに洗濯耐久性が極めて高いものである。その具体的な使用例としては、肌着、寝具、作業服、ユニフォーム、ドレスシャツ、ブラウス、スポーツシャツ、カーテン、靴下、手袋等が挙げられる。
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更実施が可能である。
本発明の実施例および比較例における織編物の評価方法は以下の通りである。
初期および洗濯30回後のアンモニア、酢酸、イソ吉草酸の消臭性は、(社)繊維評価技術協議会消臭加工繊維製品認証基準、機器分析実施マニュアル(検知管法、ガスクロマトグラフィー法)に基づいて行った。
<洗濯方法>
JIS−L−0217の103法に準じて、30回の洗濯を行った。
<アンモニア消臭率の測定>
テドラーバック(ポリフッ化ビニリデンフィルム製)に織編物10cm×10cmを入れて密封し、アンモニアを100ppmの濃度になるように封入し、120分間放置した後、ガス検知管を使用してアンモニア濃度を測定した。濃度の減少率から、アンモニアの消臭率を算出した。
<酢酸消臭率の測定>
テドラーバック(ポリフッ化ビニリデンフィルム製)に織編物10cm×10cmを入れて密封し、酢酸を50ppmの濃度になるように封入し、120分間放置した後、ガス検知管を使用して酢酸濃度を測定した。濃度の減少率から、酢酸の消臭率を算出した。
<イソ吉草酸消臭率の測定>
テドラーバック(ポリフッ化ビニリデンフィルム製)に織編物6cm×8cmを入れて密封し、さらに窒素ガスを2L入れた。その後、イソ吉草酸を約38ppmの濃度になるように封入し、120分間放置した後、ガスクロマトグラフィー法にてイソ吉草酸濃度を測定した。濃度の減少率から、イソ吉草酸の消臭率を算出した。
<消臭評価>
洗濯30回後で酢酸、イソ吉草酸、アンモニアの消臭性能が消臭性能1を満たすが消臭性能2を満たさない場合は○、消臭性能2を満たす場合は◎、消臭性能1を満たさない場合は×と判定した。
○消臭性能1:酢酸消臭率≧85%,イソ吉草酸≧90%,アンモニア消臭率≧70%
◎消臭性能2:酢酸消臭率≧90%,イソ吉草酸≧95%,アンモニア消臭率≧80%
<風合いの評価>
織編物の風合い(柔らかさ)は、専門家により下記の3段階評価法に基づいて評価した。
○:硬くない。
△:若干硬い。
×:硬い。
<生地pHの測定>
JIS−L−1096に準拠して測定した。
<IRスペクトルの測定>
測定機器
FT−IR分析装置 Digilab社製 FTS7000
検出器 MCT 分解能8cm−1 積算回数128回
赤外顕微鏡 Digilab社製 UMA600
(吸光度の求め方:1709cm−1付近のピークの吸収より高波数側の最初の谷付近と1545cm−1のピークの吸収より低波数側の最初の谷付近を結ぶ接線をベースラインとし、1709cm−1付近のピークトップにおけるベースラインからの高さを1711cm−1の吸光度、1545cm−1付近のピークトップにおけるベースラインからの高さを1558cm−1の吸光度とする。明確な吸収ピークが観測されない場合は、1711cm−1もしくは1558cm−1の位置でのベースラインからの高さをその吸収の吸光度とする。)
測定方法
織編物より紡績糸を抜きだし、繊維をほぐした後、圧力をかけフィルム状に成型し、KBr板上に載せて、顕微透過法によりIRスペクトルを測定した。それぞれから得られたスペクトルより、1711cm−1(カルボン酸に由来する吸収)の吸光度に対する1558cm−1(カルボン酸アルカリ金属塩に由来する吸収)の吸光度の比を次式により求めた。
吸光度比=1711cm−1の吸光度/1558cm−1の吸光度
なお、生地pHはカルボン酸と金属塩の量比によって決まってくるので、生地pHが同じであれば、前記吸光度比も同じとなる。
<ICP発光測定による繊維中の金属濃度の測定>
試験試料の準備
1.繊維試料を秤量して白金製るつぼに入れる。電気コンロで繊維を炭化したあと、マッフル炉で550℃×8時間の条件で灰化した。
2.灰化後のサンプルを6M塩酸で酸処理の後、1.2M塩酸により20mlに定容した。
測定
ICP発光分光分析法により試料中の金属濃度を求めた。
測定装置:SPECTORO社製CIROS−120
プラズマ出力:1400W
プラズマガス:13.0L/分
補助ガス:2.0L/分
ネブライザー:クロスフローネブライザー
チャンバー:サイクロンチャンバー
測定波長 Na:588.995nm,Zn:213.856nm
<グラフト率(GT率)の測定>
グラフト率(GT率)は、グラフト重合反応前の繊維の絶乾重量(W0)から、グラフト重合して水酸化ナトリウム水溶液で処理した後の絶乾重量(W1)への重量増加率を下記式に基づいて計算した。
グラフト率(GT率)=100%×(W1−W0)/W0
試料ワタは、グラフト加工前のワタをおおよそ20g採取して秤量瓶に入れ、絶乾してから標準状態に設定した環境試験室に24時間放置した後の試料重量(W0)を精秤する。このワタを綿金巾3号の晒布の袋に入れて、n=3でオーバーマイヤー染色機でワタグラフト加工時に加工ワタ本体と一緒に同時処理して水洗後に取出す。取出した試料を乾燥させて、金巾袋から試料を全部取出して秤量瓶に入れて、標準状態で放置して水分率が平衡水分になるまで放置したあと、秤量して上記式からグラフト率を求める。
(実施例1)
精練されたレーヨン短繊維(ダイワボウレーヨン製ブライトタイプ、0.6Tデシテックス、繊維長32mm)を鈴木製作所のオーバーマイヤー染色機に100kg浸漬し、処方1にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗して繊維と反応していないモノマー及びポリマーを除去した。その後、炭酸ナトリウム5g/L,浴比1:10,60℃×10分の条件で中和処理を行った上で更に水洗を行った。最後の水洗液のpHは6.5であった。得られた改質繊維のグラフト率は18.3%であった。このワタ状態の繊維を赤外線分光スペクトル分析したところ、カルボン酸由来の吸収ピークの吸光度に対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの吸光度の比率は0.11であった。グラフト加工されたレーヨン短繊維と綿コーマスライバーをOHARA製混打綿機を用いて混綿した後に石川製作所カード機を用いてカードスライバーとした。
処方1
過酸化水素:0.48%solution、
硫酸第一鉄アンモニウム六水和物:0.05%solution、
メタクリル酸:4.0%solution、
キレストNTB:0.05%solution、
硫酸(60°Be′):0.08%solution
液量940L、浴比 1:9.4
別途、綿(東洋紡製スーピマ)を混打綿機、カード機、コーマ機を経てコーマスライバーを作った。上記のグラフト加工されたレーヨン短繊維カードスライバー30重量%と綿コーマスライバー70重量%とを合わせて原織機製錬条機に2回通して250ゲレン/6ydのスライバーとした。更にこのスライバーを豊田自動織機製粗紡機に通して80ゲレン/15ydの粗糸を作成した。そして、豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト40倍、トラベラ回転数9000rpmで紡出して英式番手60′sの紡績糸を得た。そのときの撚係数(K)は3.8(撚数29T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で470mm/100Wとした。編成されたフライス編地を(株)ニッセンのスイングエースを用いて開反せず後加工処方1で加工した。
後加工処方1
処理条件:浴比1:15 95℃×40分
精練漂白:浸透精練剤 1g/L、金属封鎖剤 1g/L、浴中柔軟剤 1g/L、
過酸化水素 9g/L、アルカリ 6g/L
中和処理:10%酢酸 1g/L、酢酸亜鉛 0.01g/L
湯洗い後、中和処理を行い、十分に水洗いした。その後、液中にて柔軟剤で柔軟処理を施した後、処理機から取出した。遠心脱水し、シュリンク乾燥し、ヒートセットにて丸仕上げし、目付112g/mの編地を得た。この編地中のグラフト重合処理されたセルロース(GTセルロース)の理論含有重量は33.6g/mである。生地pHは6.5であった。
この編地の赤外線分光スペクトルの測定を行ったところ、カルボン酸由来の吸収ピークの吸光度に対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの吸光度の比率は0.11であった。また、ICP発光分光分析法によるナトリウム含有量は550mg/kgであった。亜鉛含有量は19mg/kgと微量に検出されるのみであった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸95%、アンモニア91%、イソ吉草酸96%と優れた結果を得た。実施例1の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例2)
精練されたスーピマ綿を実施例1の染色機に100kg浸漬し、処方1にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗してモノマー及びホモポリマーを除去して乾燥した。得られた改質繊維のグラフト率は18.3%であった。
グラフト加工された綿を実施例1と同様に混綿・カードしてカードスライバーを作成した。別途、綿(東洋紡製スーピマ)を混打綿機、カード機、コーマ機を経てコーマスライバーを作成した。グラフト綿のカードスライバー30重量%と綿コーマスライバー70重量%を用いて、練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例1と同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は165g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は49.5g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸94%、アンモニア84%、イソ吉草酸97%と優れた結果を得た。実施例2の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2と同じ方法にて得られたグラフト加工綿のスライバー30重量%と通常綿のコーマスライバー(東洋紡製スーピマ)70重量%を実施例1と同じ方法で練条機で混紡した。次に粗紡機、精紡機を経て60′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数29T/in)であった。この糸とエステル加工糸84デシテックス36フィラメントを1:1で交編し18′′−18Gフライスを編成した。この生地を実施例1と同様の加工で仕上げ、目付125g/mの編地を得た。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は20.3g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸88%、アンモニア71%、イソ吉草酸95%と優れた結果を得た。実施例3の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例4)
精練されたスーピマ綿を実施例1の染色機に100kg浸漬し、処方2にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗してモノマー及びホモポリマーを除去して乾燥した。得られた改質繊維のグラフト率は30%であった。
処方2
過酸化水素:0.48%solution、
硫酸第一鉄アンモニウム六水和物:0.05%solution、
メタクリル酸:7.0%solution、
キレストNTB:0.05%solution、
硫酸(60°Be′):0.08%solution
液量940L、浴比1:9.4
グラフト加工された綿を実施例1と同様にカードスライバーとした。カードスライバー15重量%と綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバー85重量%を実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例1と同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は163g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は24.5g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸93%、アンモニア78%、イソ吉草酸95%と優れた結果を得た。実施例4の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例5)
精練されたスーピマ綿を実施例1の染色機に100kg浸漬し、処方3にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗してモノマー及びホモポリマーを除去して乾燥した。得られた改質繊維のグラフト率は40%であった。
処方3
過酸化水素:0.48%solution、
硫酸第一鉄アンモニウム六水和物:0.05%solution、
メタクリル酸:9.0%solution、
キレストNTB:0.05%solution、
硫酸(60°Be′):0.08%solution
液量940l、浴比1:9.4
グラフト加工された綿のカードスライバー15重量%と綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバー85重量%を実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例1と同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は166g/mとなった。このGTセルロースの理論含有重量は24.9g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸98%、アンモニア86%、イソ吉草酸97%と優れた結果を得た。実施例5の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例2のグラフト加工された綿を用いたカードスライバー15重量%と綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバー85重量%を実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を中和処理に酢酸亜鉛を加えないこと以外は実施例1と同様の加工を施して仕上げ、最終的に生地の目付は165g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は24.8g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸96%、アンモニア73%、イソ吉草酸97%と優れた結果を得た。実施例6の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例2のグラフト加工された綿を用いたカードスライバー45重量%と綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバー55重量%を実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例1同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は162g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は72.9g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸93%、アンモニア88%、イソ吉草酸95%と優れた結果を得た。実施例7の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例2の生地を用い、精練漂白後の中和処理では、酢酸濃度を3g/Lとして処理後の液pHを酸性領域とした上で水洗を行った。最終的に生地の目付は161g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は48.3g/mである。生地pHは6.0であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸92%、アンモニア87%、イソ吉草酸95%と優れた結果を得た。実施例8の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例2の生地を用い、精練漂白後の中和処理を行わずに湯洗・水洗を繰返した。最終的に生地の目付は165g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は49.5g/mである。生地pHは8.0であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸97%、アンモニア79%、イソ吉草酸98%と優れた結果を得た。実施例9の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例2の生地を用い、精練漂白後にカルボキシル基の水素イオン又はアルカリ金属イオンと置換させる処理として酢酸亜鉛4g/L,浴比1:10,60℃×20分の条件にて吸尽加工で処理した。最終的に生地の目付は163g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は48.9g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸98%、アンモニア88%、イソ吉草酸97%と優れた結果を得た。実施例10の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例6の生地を用い、精練漂白後にカルボキシル基の水素イオン又はアルカリ金属イオンと置換させる処理として、酢酸亜鉛1g/L,浴比1:10,60℃×20分の条件にて吸尽加工で処理した。最終的に生地の目付は166g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は24.9g/mである。生地pHは6.5であった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸93%、アンモニア78%、イソ吉草酸95%と優れた結果を得た。実施例11の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(比較例1)
精練されたスーピマ綿を実施例1の染色機に100kg浸漬し、処方4にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗してモノマー及びホモポリマーを除去して乾燥した。得られた改質繊維のグラフト率は7.1%であった。
処方4
過酸化水素:0.48%solution、
硫酸第一鉄アンモニウム六水和物:0.05%solution、
メタクリル酸:1.0%solution、
キレストNTB:0.05%solution、
硫酸(60°Be′):0.08%solution
液量940L、浴比1:9.4
グラフト加工された綿を用いたカードスライバー55重量%と綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバー45重量%を実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例1同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は162g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は89.1g/mである。生地pHは6.5であった。この編地の赤外線分光スペクトルの測定を行ったところ、カルボン酸由来の吸収ピークに対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの比率は0.11であった。また、ICP発光分光分析法によるナトリウム含有量は280mg/kgであった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸90%、アンモニア63%、イソ吉草酸89%と消臭性が低下した。比較例1の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
(比較例2)
綿(東洋紡製スーピマ)のコーマスライバーを100重量%使って実施例2と同じ方法で練条機で混紡し、粗紡機、精紡機を経て30′sの糸を得た。その時の撚係数Kは3.8(撚数21T/in)であった。この紡績糸を用いて18′′−18Gのフライス機(永田精機製)によりフライスを編成した。編成時の条件は、編成糸長で550mm/100Wとした。編成されたフライス編地を実施例2同様の加工により仕上げ、最終的に生地の目付は165g/mとなった。この編地中のGTセルロースの理論含有重量は0g/mである。生地pHは6.5であった。この編地の赤外線分光スペクトルの測定を行ったところ、カルボン酸由来の吸収ピーク及びカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークが見られなかった。また、ICP発光分光分析法によるナトリウム含有量は60mg/kgであった。この生地のJAFET基準で定められている洗濯方法で30回洗濯後の消臭性を測定したところ、消臭率が酢酸75%、アンモニア55%、イソ吉草酸65%と消臭性が低下した。比較例2の素材、加工の詳細、性量・性能、評価結果を表1に示す。
Figure 2012251265
本発明の消臭性セルロース繊維織編物は、風合いを損ねることなく、汗消臭性とその洗濯耐久性に優れている。従って、この消臭性セルロース繊維織編物は、肌着、寝具、作業服、ユニフォーム、ドレスシャツ、ブラウス、スポーツシャツ、カーテン、靴下、手袋等の繊維製品に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. カルボン酸系ビニル系モノマーを15〜45%のグラフト率でグラフト重合したセルロース繊維を5〜50重量%含有し、かつアルカリ金属及び/又は二価金属を300〜7000mg/kg含有し、更に赤外線分光スペクトルにおけるカルボン酸由来の吸収ピークの吸光度Aに対するカルボン酸金属塩に由来する吸収ピークの吸光度Bの比率(B/A)が0.01〜0.3であることを特徴とする消臭性セルロース繊維織編物。
  2. アルカリ金属としてナトリウムを300〜2000mg/kg含有することを特徴とする請求項1に記載の消臭性セルロース繊維織編物。
  3. 二価金属として亜鉛を3000〜6500mg/kg含有することを特徴とする請求項1に記載の消臭性セルロース繊維織編物。
  4. 洗濯30回後の酢酸の消臭性が85%以上であり、イソ吉草酸の消臭性が90%以上であり、アンモニアの消臭性が70%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭性セルロース繊維織編物。
  5. ワタ状態のセルロース繊維にカルボン酸系ビニル系モノマーを15〜45%のグラフト率でグラフト重合させる工程、及びグラフト重合された繊維をアルカリ金属塩で中和し、さらに所望により二価金属塩の水溶液に含浸して、グラフト重合したカルボン酸系ビニル化合物のカルボン酸の水素の少なくとも一部をアルカリ金属及び/又は二価金属に置換し、織編物に含まれるアルカリ金属及び/又は二価金属の含有量を3000〜7000mg/kgに調整する工程を含むことを特徴とする消臭性セルロース繊維織編物の製造方法。
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