JP2012251228A - 皮膜とその形成方法及び燃焼炉の炉内構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融灰に対する耐濡れ性と耐久性を高いレベルで満足する皮膜を提供すること。
【解決手段】基材表面に形成される皮膜であり、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とを含んで形成される多孔質皮膜の気孔を六方晶窒化ホウ素粒子が混合された浸透性と硬化性を有する樹脂材料で封孔してなるもの。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃焼炉の炉内壁面などに形成される皮膜とその皮膜の形成方法及び燃焼炉の炉内構造物に関する。
近年、日本国内の火力発電プラントにおいては、従来の瀝青炭に代わる低コスト燃料として亜瀝青炭の採用が進められている。しかし、亜瀝青炭の燃焼灰は融点が低く、炉内の壁面に燃焼灰などが付着しやすいことから、その付着した燃焼灰の除去作業に多くの時間を要しており、経済的な負担が大きい。
炉内の構造物への灰の付着を防止する技術として、例えば、構造物の表面に溶射を施してニッケル基合金からなるコーティング層を形成する技術が知られている(特許文献1参照。)。しかし、溶射法を導入した場合、施工費用が高くなるという問題がある。また、溶射法は施工対象が金属表面に限られるため、廃棄物焼却炉のモルタル素地などには施工できない。
一方、高温の溶融物、例えば、溶融酸化物、溶融金属、固体燃料の燃焼灰の溶融物などに対して、六方晶窒化ホウ素が難濡れ性を有しており、かつ高温安定性があることが報告されている(特許文献2,3参照。)。
しかしながら、被処理物の表面に六方晶窒化ホウ素粒子の皮膜を形成するには、バインダとなる物質が必要となる。つまり、六方晶窒化ホウ素粒子をバインダと混合して得られる塗料を被処理物の表面に塗布することで皮膜が形成される。バインダとしては、シリカを含むものや、アルコキシシラン類などを用いるものが知られている(特許文献4,5)。
特開2005−146409号公報 特開平11−171511号公報 特開昭59−126476号公報 特開平8−104535号公報 特開2008−290440号公報
ところで、このような六方晶窒化ホウ素を含む皮膜において、高温の溶融灰に対する耐濡れ性を向上させるためには、皮膜における六方晶窒化ホウ素の含有率を増加させる必要がある。しかし、六方晶窒化ホウ素の含有率が増加すると、バインダの含有率が減少するために、粒子間の結合力が弱くなり、皮膜の耐久性、つまり耐摩耗性や耐剥離性が損なわれてしまう。
本発明は、溶融灰に対する耐濡れ性と耐久性を高いレベルで満足する皮膜を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本願発明の皮膜は、基材表面に形成される皮膜であって、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とを含んで形成される多孔質皮膜の気孔を六方晶窒化ホウ素粒子が混合された浸透性と硬化性とを有する樹脂材料で封孔してなることを特徴とする。
すなわち、六方晶窒化ホウ素とシリカ粒子からなる多孔質皮膜には、六方晶窒化ホウ素の粒子間の隙間など多くの気孔が存在するため、この気孔内に比較的細かい六方晶窒化ホウ素粒子を浸透性と硬化性のある材料とともに充填して封孔することにより、六方晶窒化ホウ素の粒子同士の結合力を弱めることなく、六方晶窒化ホウ素粒子の含有率の高い皮膜を形成することができる。これにより、石炭などに代表される固体燃料の燃焼灰の溶融物に対する耐濡れ性と皮膜の耐久性を高いレベルで満足することができる。
また、基材表面に本発明の皮膜を形成する方法としては、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とが混合されてなる水系の第1の塗料を基材表面に塗布することで多孔質皮膜を形成し、次いで、この六方晶窒化ホウ素粒子よりも細かい六方晶窒化ホウ素粒子を分散させた第2の塗料を多孔質皮膜の気孔に含浸させた後、硬化させることを特徴とする。
すなわち、第1の塗料を基材表面に塗布し、これを乾燥させることにより、水系の溶媒が蒸発して六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子からなる多孔質皮膜が形成される。次に、多孔質皮膜の表面に第2の塗料を塗布することにより、細粒の六方晶窒化ホウ素粒子を含む第2の塗料が多孔質皮膜の気孔内に進入した状態で硬化される。
ここで、第1の塗料は、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の六方晶窒化ホウ素粒子と粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子を含むバインダとが混合されたものであり、第2の塗料は、粒子径範囲が20μm以下の六方晶窒化ホウ素とテトラアルコキシシラン又はその加水分解物と該テトラアルコキシシラン又はその加水分解物を硬化させる硬化剤とアルコール系溶媒とが混合されたものであることが好ましい。
すなわち、第1の塗料には、粒子径が比較的大きな六方晶窒化ホウ素粒子を配合することにより、多数の微小気孔を含み、高濃度の六方晶窒化ホウ素粒子からなる多孔質皮膜を形成することができる。ここで、第1の塗料には、六方晶窒化ホウ素粒子が45重量%以上の含有率で含まれていることが好ましい。また、第2の塗料には、粒子径が比較的小さな六方晶窒化ホウ素をテトラアルコキシシラン又はその加水分解物及び硬化剤とともに配合することにより、六方晶窒化ホウ素粒子を多孔質皮膜の気孔内に充填し易くすることができる。これにより、第2の塗料による封孔効果を高めることができる。
また、多孔質皮膜の気孔内に六方晶窒化ホウ素粒子を含浸させるにあたり、第2の塗料における六方晶窒化ホウ素粒子の含有率が低すぎると、気孔に充填するための六方晶窒化ホウ素粒子の量が不足し、高すぎると、第2の塗料の粘性が増大するために気孔内への粒子の充填性が悪くなる。このため、第2の塗料においては、六方晶窒化ホウ素粒子の含有率を10重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。
本発明の皮膜を、ボイラなどの燃焼炉の炉内構造物の表面などに形成すれば、施工費用を低く抑えながらメンテナンスコストを大幅に低減することが可能となる。
本発明によれば、溶融灰に対する耐濡れ性と耐久性とを高いレベルで満足する皮膜を提供することができる。
溶融ソーダガラスの濡れ難さを評価する評価方法を説明する図である。
本発明は、ボイラ火炉などの燃焼炉の炉内構造物の表面などに形成される皮膜に関するものである。この皮膜は、石炭に代表される固体燃料の燃焼灰などの溶融物に対して難濡れ性、つまり濡れ難い性質を有するため、燃焼灰の付着を抑制することができ、しかも、高い耐久性を有するため、メンテナンスを施すことなく長期間に渡り、燃焼灰の付着抑制機能を維持することができるものである。
すなわち、本発明に係る皮膜は、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とを含んで形成される多孔質皮膜の気孔を六方晶窒化ホウ素粒子が混合された浸透性と硬化性とを有する樹脂材料で封孔してなるものである。
また、本発明に係る皮膜の形成方法は、比較的粗い六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とが混合されてなる水系の第1の塗料を基材の表面に塗布して、乾燥、硬化させることにより多孔質皮膜を形成し、続いて、比較的細かい六方晶窒化ホウ素粒子を分散させた第2の塗料を多孔質皮膜の表面に塗布することにより、多孔質皮膜に含まれる気孔(粒界を含む)内に、細粒の六方晶窒化ホウ素粒子を含む第2の塗料を含浸させ、硬化させることである。
以下、本発明の皮膜の効果について検証結果を述べるとともに、皮膜の具体的な構成と製造方法について説明する。まず、燃焼炉内の構造物に形成される皮膜として要求される3つの指標(耐摩耗性、耐割れ性、耐濡れ性)について説明する。
(1)耐摩耗性
JIS SUS304板材(30×35×6mmt)の表面に膜厚300μmの塗膜を形成し、これに球状のシリカ粒子(粒子径範囲10μm以上100μm以下)を、粒子濃度200g/m、粒子速度10m/s、粒子衝突角度45°の条件下で、0.5時間継続して衝突させ、摩耗試験後にできた摩耗痕の深さを測定した。
(2)耐剥離性
φ55×200mmLのSUS304J1HTB管材の中央部、170mmLの範囲に刷毛塗りをして、厚みが100μm以上300μm以下の塗膜を形成した。この試験片を電気炉で加熱し、600℃に保持後、水中投入を10回繰り返した後の表面を観察した。
(3)耐濡れ性(濡れ難さ)
試験用の塗料のみを硬化して、□10mm×3mmtの塗膜試料を作成し、模擬溶融灰として、融点が950℃のソーダガラス粉末をφ3mm×3mmの円柱状に成形して塗膜試料の表面に設置した。大気中、1100℃で1時間保持後、室温まで冷却し、図1に示す塗膜試料1に付着したガラス半球2について、接触角3を測定した。
上記3つの指標に対し検証した結果を、それぞれ表1に示す基準で○、△、×の3段階で評価した。
Figure 2012251228
次に、本発明に係る皮膜に含まれる多孔質皮膜を形成するための第1の塗料について評価した結果を説明する。
第1の塗料は、六方晶窒化ホウ素粒子をバインダに分散させて得られるものである。バインダとしては、粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子(水性コロイダルシリカ)と分散剤及び水溶媒からなるバインダ(以下、バインダAという。)、テトラアルコキシシラン又はその加水分解物とこれらを重合させて硬化させる硬化触媒とアルコール系溶媒からなるバインダ(以下、バインダBという。)の2種類を比較した。ここで、バインダBにおいて硬化とは、化学反応によりテトラアルコキシシラン又はその加水分解物が重合してシリコン樹脂となることをいう。
また、六方晶窒化ホウ素粒子は、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の粗粒と、20μm以下の細粒の2種類を用意した。粒子径範囲が10μm以上100μm以下のものについては、気相成長法で作製した六方晶窒化ホウ素の一次粒子を焼結・粉砕法にて作製し、粒子径範囲が20μm以下のものについては、同じく気相成長法で作製した六方晶窒化ホウ素の一次粒子を造粒・焼結法にて作製した。
表2は、六方晶窒化ホウ素粉末とバインダを混合し、塗料粘度の簡易測定法である、岩田粘度カップNK−2による粘度測定で約40秒の粘度となるように六方晶窒化ホウ素粉末とバインダを組み合わせた塗料について、乾燥後の皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素の含有量(重量%)を表している。
Figure 2012251228
表2のNo.1に示すように、バインダAと比較的粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末を混合した塗料では、乾燥して硬化させた後の皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素含有量は4つの組み合わせのうちで最大の71重量%となった。なお、この組み合わせにおいては、溶媒である水の量を増やすだけで六方晶窒化ホウ素粒子の含有量を増大させることができるため、六方晶窒化ホウ素を高密度で含有する皮膜を比較的容易に形成することができる。
表2のNo.2に示すように、バインダAと比較的細粒の六方晶窒化ホウ素粉末を混合した塗料では、乾燥して硬化させた後の皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素含有量は59重量%となった。これは、粒子径が小さいために表面積が大きくなり、分散性が低下したことによる。
表2のNo.3に示すように、バインダBと比較的粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末を混合した塗料では、乾燥して硬化させた後の皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素含有量は66重量%となった。アルコキシシラン類はアルコール系の物質のために水よりも六方晶窒化ホウ素粒子をよく分散するものの、溶媒が揮発せずに皮膜として硬化することから、水性のバインダAを使用する場合よりも六方晶窒化ホウ素粒子の含有量が少なくなる。
表2のNo.4に示すように、バインダBと比較的細粒の六方晶窒化ホウ素粉末を混合した塗料では、乾燥して硬化させた後の皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素含有量は61重量%となった。これは、No.2の場合と同様に、粒子径が小さいために表面積が大きくなり、分散性が低下したことによる。
次に、表2の組み合わせによってそれぞれ形成した皮膜(多孔質皮膜)について、耐摩耗性、耐剥離性、濡れ難さについて比較した結果を表3に示す。なお、表において、hBN粉末とは、六方晶窒化ホウ素粉末のことであり、粗粒とは、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の粉末、細粒とは、粒子径範囲が20μm以下の粉末をいう。また、バインダについては、表2と同じく、粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子を含む水系のバインダをバインダA、アルコキシシラン類を含むアルコール系のバインダをバインダBとして示す。
Figure 2012251228
表3のNo.1に示すように、粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末とバインダAを組み合わせると、皮膜に含まれる六方晶窒化ホウ素の含有量が増大するために溶融ソーダガラスが濡れ難い皮膜が得られた反面、耐摩耗性は非常に低くなった。六方晶窒化ホウ素粒子を水溶媒と混合することにより、多孔質皮膜には微小な気孔が多く導入されている。気孔の存在は熱衝撃の緩和に有効で高い耐剥離性が得られるものの、粒子間の結合力低下のために、耐摩耗性は低くなる。
表3のNo.2に示すように、細粒の六方晶窒化ホウ素粉末とバインダAを組み合わせると、No.1の組み合わせと同様に、溶融ソーダガラスが濡れ難い皮膜が得られたが、耐剥離性が著しく低下した。これは、六方晶窒化ホウ素の粒子径が小さいために凝集しやすく、六方晶窒化ホウ素粒子の間にバインダであるコロイダルシリカ粒子が進入できないために、結合が不十分となるからである。このため、皮膜として必要な強度が得られない。
表3のNo.3に示すように、粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末とバインダBを組み合わせると、耐濡れ性がバインダAを用いる場合よりも低下した。これは、六方晶窒化ホウ素粒子の表面の一部をアルコキシシラン類が重合したシリコン樹脂が覆ってしまうからである。また、耐摩耗性は、バインダAを使用した場合よりも改善されたが、耐剥離性は劣る結果となった。これは、アルコキシシラン類のみをバインダとした場合、皮膜には気孔が生じにくいために、熱衝撃による剥離が生じやすくなるからである。
表3のNo.4に示すように、細粒の六方晶窒化ホウ素粉末とバインダBを組み合わせると、No.3と同様の傾向となるが、皮膜はより硬くなり、耐摩耗性が増大するものの、耐剥離性が低下した。
以上の結果より、耐濡れ性と耐剥離性に優れた多孔質皮膜を形成するには、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末と粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子と分散剤及び水溶液からなるバインダAの組み合わせによる第1の塗料が最も適していることがわかった。なお、シリカ粒子については、粒径が5μmを超えると沈殿しやすくなり、0.1μmより小さくなると高価になるため、0.1μm以上5μm以下の粒径範囲としている。
次に、このように粗粒の六方晶窒化ホウ素粉末とバインダAからなる第1の塗料を塗布して得られる多孔質皮膜に対し、強度を増大させるための封孔剤となる第2の塗料について検討する。
表4は、表3のNo.1の組み合わせで作製された多孔質皮膜に対し、バインダ(表3のバインダA、B)と六方晶窒化ホウ素の粒子径が異なる5種類の組み合わせからなる封孔剤をそれぞれ塗布して10時間以上室内に放置し、皮膜が完全に硬化したことを確認後、表面に残留した余分な樹脂を研磨して除去した。なお、この実験ではバインダに対して重量比で10重量%の六方晶窒化ホウ素粉末を配合したものを使用した。
Figure 2012251228
表4のNo.1及びNo.2に示すように、水性コロイダルシリカを含むバインダAを用いた場合は、皮膜の耐摩耗性の向上はみられなかった。これは、多孔質皮膜の気孔に対して、コロイダルシリカの粒子が浸入できないからである。
表4のNo.3に示すように、六方晶窒化ホウ素粒子を含まず、アルコキシシラン類のバインダBのみを用いた場合は、耐摩耗性が向上したが、溶融ソーダガラスの濡れ難さは低下した。これは、シリコン樹脂には溶融ソーダガラスに対して濡れの抑制効果がないからであり、このような物質が多孔質皮膜の気孔内に充填されることで、濡れ難さが低下したものと考えられる。また、皮膜の密度が上昇したために、耐剥離性の低下も見られる。
表4のNo.4に示すように、バインダBに粗粒の六方晶窒化ホウ素粒子を配合したものを用いた場合は、No.3と同様に濡れ難さが低下した。これは、多孔質皮膜の気孔内に粗粒の六方晶窒化ホウ素粒子が浸入できないからであり、この配合の封孔剤を用いた場合でも、気孔内にはシリコン樹脂だけが充填された状態となる。
表4のNo.5に示すように、バインダBに細粒の六方晶窒化ホウ素粒子を配合したものを用いた場合は、耐摩耗性、耐剥離性、溶融ソーダガラスの濡れ難さはともに向上した。この皮膜は、多孔質皮膜の気孔に対して、シリコン樹脂と細粒の六方晶窒化ホウ素粒子の混合物が充填された状態となっている。さらに、気孔内部に充填された六方晶窒化ホウ素粒子間には、微小な空間が形成されており、このような微細な気孔の存在が耐剥離性の向上に寄与したものと考えられる。
以上より、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の粗粒の六方晶窒化ホウ素粒子を粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子と分散剤と水溶媒とからなるバインダに混合してなる第1の塗料を処理対象物の表面に塗布し、これを乾燥、硬化させて得られた多孔質皮膜に対し、さらに、粒子径範囲が20μm以下の細粒の六方晶窒化ホウ素粒子をテトラアルコキシシラン又はその加水分解物とこれらを重合させて硬化させる硬化触媒とアルコール系溶媒からなるバインダに混合してなる第2の塗料を塗布し、これを多孔質皮膜の気孔内(粒界を含む)に充填して硬化させることにより、耐摩耗性だけではなく、耐剥離性、溶融ソーダガラスの濡れ難さを同時に満たす皮膜を得ることができる。
また、本実施形態では、第2の塗料のバインダとして、テトラアルコキシシラン又はその加水分解物とこれらを重合させて硬化させる硬化触媒とアルコール系溶媒からなるバインダを用いる例を説明したが、細粒の六方晶窒化ホウ素粒子を多孔質皮膜の気孔に充填させて硬化する封孔機能を有するものであれば、他の硬化性を有する樹脂材料を用いても構わない。なお、テトラアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等があげられる。
次に、第2の塗料に配合される細粒の六方晶窒化ホウ素の量について検討した結果を表5に示す。
Figure 2012251228
表5のNo.1に示すように、六方晶窒化ホウ素の配合量が5重量%では、気孔に充填するための六方晶窒化ホウ素粒子が不足するため、溶融ソーダガラスの濡れ難さは低下する。このため、第2の塗料に配合される細粒の六方晶窒化ホウ素の量は10重量%以上であることが好ましい。
一方、表5のNo.5に示すように,六方晶窒化ホウ素の配合量が25重量%では、第2の塗料の粘性が増大するために、六方晶窒化ホウ素粒子が気孔内に充填し難くなり、耐摩耗性及び耐剥離性が低下する。さらに、第2の塗料の一部が多孔質皮膜に浸透するため、耐濡れ性も低下する。このため、第2の塗料に配合される細粒の六方晶窒化ホウ素の量は20重量%以下であることが好ましい。
以上の結果から、第2の塗料における六方晶窒化ホウ素粒子の好ましい含有率は、10重量%から20重量%の範囲である。
上述したように、本実施形態によれば、高温の溶融灰などに対する耐濡れ性を向上させるために皮膜の六方晶窒化ホウ素粒子の含有率を増加させても、皮膜の耐久性、つまり耐摩耗性及び耐剥離性を高いレベルで満足することができる。例えば、多孔質皮膜に形成される気孔を封孔処理することにより、無処理の場合と比べて、摩耗速度が1/10以下という高い耐久性が発現される。このため、長期間に渡って灰付着抑制機能を維持することができる。
また、本実施形態によれば、溶射法と比べて、皮膜の耐久性は劣るものの、成膜費用が非常に安価(約1/50以下)であり、経年劣化した場合も、工期・費用に影響を及ぼさない範囲で再成膜が可能であるから、メンテナンスコストを低く抑えることができる。さらに、本実施形態の皮膜は、素地の種類を選ばないため、適用範囲が拡げることができる。
また、本実施形態の皮膜を石炭焚きボイラなどの炉内構造物の表面に適用することにより、従来は燃焼灰の付着性が高く燃料として使用できなかった低質燃料を使用することができるようになる。また、廃棄物燃焼炉の火炉内壁などに本実施形態の皮膜を適用すれば、炉内からの付着灰の排出作業の頻度を減少させ、プラントの稼働率向上を図ることができる。
1 塗膜試料
2 ガラス半球
3 接触角

Claims (5)

  1. 基材表面に形成される皮膜であって、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とを含んで形成される多孔質皮膜の気孔を六方晶窒化ホウ素粒子が混合された浸透性と硬化性を有する樹脂材料で封孔してなる皮膜。
  2. 基材表面に皮膜を形成するにあたり、六方晶窒化ホウ素粒子とシリカ粒子とが混合されてなる水系の第1の塗料を前記基材表面に塗布することにより多孔質皮膜を形成し、前記六方晶窒化ホウ素粒子よりも細かい六方晶窒化ホウ素粒子を分散させた第2の塗料を前記多孔質皮膜の気孔に含浸させた後、硬化させる皮膜の形成方法。
  3. 前記第1の塗料は、粒子径範囲が10μm以上100μm以下の六方晶窒化ホウ素粒子と粒子径範囲が0.1μm以上5μm以下のシリカ粒子を含むバインダとが混合されたものであり、前記第2の塗料は、粒子径範囲が20μm以下の六方晶窒化ホウ素とテトラアルコキシシラン又はその加水分解物と該テトラアルコキシシラン又はその加水分解物を硬化させる硬化剤とアルコール系溶媒とが混合されたものである請求項2に記載の皮膜の形成方法。
  4. 前記第2の塗料は、前記六方晶窒化ホウ素粒子の含有率が10重量%以上20重量%以下である請求項2又は3に記載の皮膜の形成方法。
  5. 請求項1に記載の皮膜が壁面に形成されてなる燃焼炉の炉内構造物。
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