JP2012251177A - 熱伝導性に優れたバルブシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェイス面側層が、基地相中に硬質粒子が分散した基地部を有し、該基地部が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、Co、Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で40%以下を含有する組成と、基地相中に硬質粒子をフェイス面側層全量に対する質量%で、5〜40%分散させてなる組織とを有する鉄系焼結合金製とし、着座面側層が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鉄系焼結合金製とし、着座面側層を、バルブシート全量に対する体積%で、55〜90%とする。そして、上記した鉄基焼結体の空孔にカーボン粉を体積%で0.5〜15%含浸させる。これにより、優れた耐摩耗性と、高い熱伝導性とを兼備したバルブシートとすることができる。
【選択図】なし
Description
また、例えば、特許文献1には、座面を含む内側部材と外側部材とが冶金的に接合され、内側部材が鉄系焼結合金からなり、外側部材が基地中または気孔中に潤滑成分を含有する銅または銅合金の焼結材料からなる弁座が提案されている。これによれば、耐摩耗性と熱伝達性がともに優れた弁座が得られるとしている。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、鉄基焼結体製で、簡便な方法で製造可能な、耐摩耗性と熱伝導性とを兼備した内燃機関用バルブシートを提供することを目的とする。
(1)鉄基焼結体製のバルブシートであって、着座面側層とフェイス面側層との2層を一体化してなり、該バルブシートの空孔に、カーボン粉を含浸させてなることを特徴とする熱伝導性に優れたバルブシート。
(2)(1)において、前記カーボン粉を体積率で0.5〜15%含浸させてなることを特徴とするバルブシート。
(3)(1)または(2)において、前記着座面側層が、バルブシート全量に対する体積率で55〜90%であることを特徴とするバルブシート。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記着座面側層の密度が、6.0〜7.4g/cm3であることを特徴とするバルブシート。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記フェイス面側層が、基地相中に硬質粒子が分散した基地部を有し、該基地部が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、Co、Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上を、合計で40%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、前記基地相中に硬質粒子をフェイス面側層全量に対する質量%で5〜40%分散させてなる組織とを有する鉄基焼結体層であり、前記着座面側層が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鉄基焼結体層であることを特徴とするバルブシート。
(6)(5)において、前記着座面側層が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo、Si、Cr、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上を、合計で10%以下含有する組成を有することを特徴とするバルブシート。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記フェイス面側層が、前記基地相中に前記硬質粒子に加えてさらに、固体潤滑剤粒子が分散した基地部を有し、前記基地部組織が前記硬質粒子に加えてさらに固体潤滑剤粒子をフェイス面側層全量に対する質量%で0.3〜5.0%分散させてなる基地部組織を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバルブシート。
(8)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記着座面側層が、前記基地相中に、固体潤滑剤粒子が分散した基地部を有し、前記基地部組織が固体潤滑剤粒子を、着座面側層全量に対する質量%で0.3〜5.0%分散させてなる基地部組織を有することを特徴とするバルブシート。
(9)着座面側層とフェイス面側層との2層を一体化してなる鉄基焼結体製バルブシートを、大気圧より低い圧力に保持された雰囲気中に保持したのち、該バルブシートに、溶媒中にカーボンを分散させた溶液を注入し、または該バルブシートを溶媒中にカーボンを分散させた溶液中に浸漬し、ついで、前記雰囲気の圧力を大気圧もしくは大気圧以上に加圧してとして、前記バルブシートの空孔に前記溶液を含浸させ、しかる後に150℃以下の温度に加熱し溶媒を蒸発させる蒸発処理を施すことを特徴とする熱伝導性に優れる鉄基焼結体製バルブシートの製造方法。
本発明のバルブシートでは、着座面側層の密度を、6.0〜7.4g/cm3の範囲に限定することが好ましい。着座面側層の密度が、6.0g/cm3未満では、強度が低く、シリンダーヘッドへの圧入時に、割れや亀裂が発生しやすくなる。一方、7.4g/cm3を超えて密度が大きくなると、空孔率が低下して、空孔に含浸されるカーボン量が減少し、熱伝導性の向上が望めない。このため、着座面側層の密度を、6.0〜7.4g/cm3の範囲に限定した。なお、好ましくは6.8〜7.2g/cm3である。
C:0.2〜2.0%
Cは、焼結体の強度、硬さを増加させ、所望の強度、硬さの確保に寄与する元素である。このような効果を確保するためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、基地相中にセメンタイトが生成しやすくなるとともに、焼結時に液相が発生しやすく、寸法精度の劣化を招く。このため、Cは0.2〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.9〜1.1%である。
Co、Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sは、混合する鉄系粉末、合金元素粉、硬質粒子粉および固体潤滑剤粉起因の元素であり、焼結体の基地部の強度を向上するために、選択して1種または2種以上を合計で40%以下含有させる。これら元素の合計量が40%を超えると、成形性が低下する。なお、好ましくは合計で25〜35%である。
本発明におけるフェイス面側層では、基地相に硬質粒子を、フェイス面側層全量に対する質量%で5〜40%分散させてなる組織を有する。基地相に硬質粒子を分散させることにより、所望の耐摩耗性を有するフェイス面側層とすることができる。分散量が、フェイス面側層全量に対する質量%で5%未満では、所望の耐摩耗性を保持することができない。一方、40%を超えて分散させると、効果が飽和し、添加量に見合う効果が期待できなくなる。このため、フェイス面側層における硬質粒子の分散量をフェイス面側層全量に対する質量%で、5〜40%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは15〜25%である。なお、フェイス面側層の基地相中に分散させる硬質粒子としては、Co基金属間化合物粒子、ステライト系硬質粒子、Fe−Mo系硬質粒子のいずれか、またはそれらの複合とすることが好ましい。なかでも、Co基金属間化合物粒子は、比較的軟らかなCo基地中に硬さの高い金属間化合物が分散した粒子であり、相手攻撃性が低いという特徴がある。好ましいCo基金属間化合物粒子としては、Si−Cr−Mo系Co基金属間化合物粒子、Mo−Ni−Cr系Co基金属間化合物粒子等が例示できる。
Cは、焼結体の強度、硬さを増加させる元素であり、本発明では、バルブシートとして所望の強度、硬さを確保するために、着座面側層では0.2%以上含有することが望ましいが、2.0%を超える含有は、基地中にセメンタイトが生成しやすくなるとともに、焼結時に液相が発生しやすく、寸法精度が低下するという問題がある。このため、Cは0.2〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.9〜1.1%である。
Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上:合計で10%以下
Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sはいずれも、着座面側層の強度、硬さを増加させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、合計で0.5%以上含有することが望ましいが、これら元素の含有量が合計で10%を超えると、成形性が低下し、また強度も低下する。このため、含有する場合には合計で10%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5〜5.0%である。
つぎに、本発明バルブシートの好ましい製造方法について説明する。
フェイス面側層用の原料粉としては、鉄系粉末と、さらに、鉄系粉末と黒鉛粉末と合金用粉末と硬質粒子と固体潤滑剤粉末との合計量に対し、質量%で、0.9〜1.1%の黒鉛粉末と、3〜10%の合金用粉末と、15〜25%の硬質粒子粉末と、あるいはさらに、0.5〜2.5%の固体潤滑剤粒子粉末と、を上記したフェイス面側層組成となるように、所定量配合して、フェイス面側層用の混合粉とする。鉄系粉末は、純鉄粉としても、特定組成の鋼系粉末としてもよい。特定組成の鋼系粉末としては高速度鋼系粉末とすることが好ましい。使用する鉄系粉末は、アトマイズ粉とすることが好ましい。なお、必要に応じて、成形体の強度確保、金属潤滑のために、鉄系粉末、黒鉛粉末、合金用粉末、硬質粒子粉末、固体潤滑剤粉末の合計量100質量部に対して、1.0〜3.0質量部の潤滑剤粒子粉を混合してもよい。
そして、得られた圧粉体に、ついで焼結処理を施して上下2層構造の焼結体とする。焼結処理の条件としては、還元雰囲気中で行なうこと以外は、所望の特性に応じて適宜、決定すればよく、とくに限定する必要はない。なお、焼結温度は、1100〜1200℃とすることが焼結拡散の観点から好ましい。
上記したような工程で得られた、バルブシート用鉄基焼結体には、ついで、焼結体の空孔に、カーボン粉を含浸させる処理が施される。鉄基焼結体の空孔に、カーボン粉を含浸させる方法として、つぎの方法とすることが好ましいが、これに限定されないことは言うまでもない。本発明では、着座面側層の密度を、フェース面側層に比べて、低い密度として、空孔をより多く存在させ、カーボン粉の含浸を多くし、熱伝達性を向上させる。
本発明では、このような微細なカーボン粉を、ケイ酸塩、ヨウ素酸を含む水、アルコール、熱硬化性樹脂の液体等の溶媒中に、5〜35質量%ほど均一分散させた溶液を用いることが好ましい。溶媒中のカーボン粉の量が、5%未満では、所望の含浸量が得られず、熱伝導性の向上が認められない。一方、35%を超えて多くなると、カーボン粉の含浸率が低下し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、溶媒中のカーボン粉は5〜35質量%に限定することが好ましい。なお、この際、溶液には、カーボン粉の均一分散のために、界面活性剤を添加してもよい。
カーボン粉が含浸された鉄基焼結体は、所望の寸法に切削加工され、あるいは加工することなく、製品(バルブシート)とされる。
また、得られた焼結体について、各層から試験片を採取し、アルキメデス法を用いて密度を測定した。
また、焼結体断面の観察から、各層の断面積をもとめ、バルブシートにおけるフェース面側層と着座面側層のそれぞれの体積率を算出した。
体積%=(質量%)×(鉄の理論密度)/(カーボンの理論密度)×100
さらに、得られたバルブシート(焼結体)を、図2に示す単体リグ摩耗試験機に装入し、下記の試験条件で運転した。なお、バルブシートのバルブフェース面に取り付けた熱電対によりバルブフェース面の温度を測定し、サチュレーションした温度をバルブフェース面温度とした。
試験時間:8hr
カム回転数:3000 rpm
バルブ回転数:10 rpm
スプリング荷重:35kgf(345N)(セット時)
リフト量:7.5 mm
バルブ材質:SUH35
なお、LPG+Air量、冷却水量は一定とした。
また、試験後の試験片(バルブシート)の凹み深さを測定し、摩耗量(μm)を算出した。焼結体No.1の摩耗量を基準として、単体摩耗試験の試験バラツキを考慮して、当該焼結体の摩耗量が+20%以内であれば、耐摩耗性の評価は○とし、それ以外の場合には×とした。
1a フェイス面側層
1b 着座面側層
2 セティングプレート
3 熱源(LPG+Air)
4 バルブ
Claims (9)
- 鉄基焼結体製のバルブシートであって、着座面側層とフェイス面側層との2層を一体化してなり、該バルブシートの空孔に、カーボン粉を含浸させてなることを特徴とする熱伝導性に優れたバルブシート。
- 前記カーボン粉を体積率で0.5〜15%含浸させてなることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性に優れたバルブシート。
- 前記着座面側層が、バルブシート全量に対する体積率で55〜90%であることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブシート。
- 前記着座面側層の密度が、6.0〜7.4g/cm3であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバルブシート。
- 前記フェイス面側層が、基地相中に硬質粒子が分散した基地部を有し、該基地部が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、Co、Mo、Si、Cr、Ni、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上を、合計で40%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、前記基地相中に硬質粒子をフェイス面側層全量に対する質量%で5〜40%分散させてなる組織とを有する鉄基焼結体層であり、前記着座面側層が、質量%で、C:0.2〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鉄基焼結体層であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバルブシート。
- 前記着座面側層が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo、Si、Cr、Mn、W、V、Sのうちから選ばれた1種または2種以上を、合計で10%以下含有する組成を有することを特徴とする請求項5に記載のバルブシート。
- 前記フェイス面側層が、前記基地相中に前記硬質粒子に加えてさらに、固体潤滑剤粒子が分散した基地部を有し、前記基地部組織が前記硬質粒子に加えてさらに固体潤滑剤粒子をフェイス面側層全量に対する質量%で0.3〜5.0%分散させてなる基地部組織を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバルブシート。
- 前記着座面側層が、前記基地相中に、固体潤滑剤粒子が分散した基地部を有し、前記基地部組織が固体潤滑剤粒子を、着座面側層全量に対する質量%で0.3〜5.0%分散させてなる基地部組織を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のバルブシート。
- 着座面側層とフェイス面側層との2層を一体化してなる鉄基焼結体製バルブシートを、大気圧より低い圧力に保持された雰囲気中に保持したのち、該バルブシートに、溶媒中にカーボンを分散させた溶液を注入しまたは該バルブシートを、溶媒中にカーボンを分散させた溶液中に浸漬し、ついで、前記雰囲気の圧力を大気圧もしくは大気圧以上に加圧して、前記バルブシートの空孔に前記溶液を含浸させ、しかる後に150℃以下の温度に加熱し溶媒を蒸発させる蒸発処理を施すことを特徴とする熱伝導性に優れる鉄基焼結体製バルブシートの製造方法。
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